以下、図面を参照して、実施形態に係る引き出し式加熱調理器であるグリルを備えたコンロについて説明する。
なお、本発明の引き出し式加熱調理器としては、以下に説明するような、コンロに用いられ、加熱庫としてグリル庫を設けたグリルに限定されるものではなく、調理物を加熱する加熱庫を備えたものであればよい。例えば、加熱水蒸気による加熱調理を行う加熱庫を備えたものでもよい。また、例えば、バーナを備えず、グリル機能だけを備えたものであってもよい。また、ガス調理器の他、電気調理器であってもよい。
まず、図1〜図7を参照して、実施形態に係るグリル4を備えたコンロSの概略構成について説明する。
図1に示すように、コンロSは、システムキッチンのカウンタトップ(不図示)に組み込むビルトイン式コンロである。コンロSは、カウンタトップに開設した開口に落とし込むようにして設置するコンロ本体1と、コンロ本体1の上面を覆うようにしてカウンタトップに載置する天板2とを備えている。
コンロ本体1には、天板2上に露出して、前側の2個と後側の1個の計3個のコンロバーナ3が設けられている。また、コンロ本体1には、グリル4が内蔵されている。コンロ本体1の前面部分には、グリル扉5と、グリル扉5の左右に設けられた2つの前面パネル6とが設けられている。
グリル扉5は、グリル4の前面開口を開閉する。グリル扉5の前面下部には、グリル扉5を開閉するための取手5aが取り付けられている。グリル扉5の両側の各前面パネル6の後方には、コンロバーナ3及びグリル4を操作するための操作盤7が出没自在に収納されている。操作盤7が収納されている状態では、操作盤7の前板7aは、前面パネル6とともに平面を形成する。
図2に示すように、グリル4は、コンロ本体1内に設置されるグリル庫4aを備えている。グリル庫4aの後部には排気ダクト4bが取り付けられている。
図3の横方向断面図及び図4の縦方向断面図に示すように、グリル庫4a内には、グリル皿4cと、グリル皿4cに載置された焼き網4dと、グリル皿4cを支持する皿支持枠4eとが収納されている。皿支持枠4eは、グリル扉5の裏側に連結されている。焼き網4dは、その前後に垂設された脚片部4d1を介してグリル皿4cに載置されている。
皿支持枠4eは、棒材を平面視略方形に折り曲げて形成した枠体4e1と、枠体4e1の前端部に取り付けられ、グリル皿4cの前端の第1フランジ4c1を支持する前支持板4e2と、枠体4e1の後方の端部に取り付けられ、グリル皿4cの後端の第2フランジ4c2を支持する後支持板4e3とで構成されている。
グリル庫4aの天井部には、上火バーナ4fが装着されている。グリル庫4aの天井部の上方には、上火バーナ4fを覆うようにして遮熱カバー4a1が設けられている。グリル庫4aの横方向両側の側壁部には、グリル皿4cと焼き網4dとの間となる位置に、横方向内方に凹入する第1凹入部4a2が形成されている。
第1凹入部4a2内には、第1凹入部4a2の横方向内側面に設けた窓部4a3に臨むように、下火バーナ4gが配置されている。
グリル4の一方の側方には、上火バーナ4fに接続される第1混合管4f1、及び、下火バーナ4gに接続される第2混合管4g1が設けられている。グリル4では、上火バーナ4fと下火バーナ4gとによって、焼き網4d上の調理物を上下から焼成する両面焼きグリルが構成されている。
グリル庫4aの下方には、グリル庫4aの底壁部との間に空隙を存して遮熱板4hが設置されている。遮熱板4hの横方向両側部には、グリル庫4aの横方向外側に位置する部分を上方に屈曲させることによって、取付板4h1が形成されている。取付板4h1の横方向外方を向く面には、スライドレール8の固定メンバー80が取り付けられている。
固定メンバー80には、複数の第1ボール81を介して、中間メンバー82が前後方向に移動自在に係合している。中間メンバー82には、複数の第2ボール83を介して、移動メンバー84が前後方向に移動自在に係合している。すなわち、移動メンバー84は、中間メンバー82を介して固定メンバー80に前後方向に移動自在に支持されている。
移動メンバー84には、固定メンバー80及び移動メンバー84を覆うカバー部材85が取り付けられている。カバー部材85は、移動メンバー84及び固定メンバー80を上方から覆う上板部85aと、固定メンバー80に対向する側板部85bとを有している。
図4に示すように、グリル庫4aの横方向両外側の一対のスライドレール8の移動メンバー84は、レール連結枠9を介して、前端で互いに連結されている(図6参照。)。レール連結枠9には、皿支持枠4eの前端部が係止されている。また、レール連結枠9には、グリル扉5が着脱自在に連結されている。また、グリル庫4aの底壁部には、皿支持枠4eの枠体4e1の左右各側の側辺部を滑動自在に支持する前後複数の支持部4iが形成されている。
そのため、グリル扉5の前面下部の取手5aに指を掛けて手前に引いたり後方に押したりすることにより、移動メンバー84が中間メンバー82を介して固定メンバー80に案内されて前後動し、これに連動して皿支持枠4eも前後動して、皿支持枠4eに支持されるグリル皿4cがグリル庫4aにスムーズに出し入れされる。
図5に示すように、スライドレール8は、グリル4のグリル庫4aを収容する筐体4j(図3及び図4では不図示)の側壁4j1と、グリル庫4aの下方の遮熱板4hを屈曲させて形成した取付板4h1との間の領域に配置されている。
グリル庫4aの横方向の幅は、取付板4h1の側方の位置では、一対の取付板4h1の間に収容される幅W1となっている(すなわち、取付板4h1によって幅が規定されている)。また、取付板4h1よりも上方の位置では、グリル4のグリル庫4aを収容する筐体4jの側壁4j1同士の間に収容される幅W2となっている(すなわち、側壁4j1によって幅が規定されている)。
そのため、グリル4では、筐体4jの内部に左右一対のスライドレール8を備えた構成でありながら、グリル庫4a内の左右方向の広さが十分なものとなっている。また、筐体4jの側壁4j1と取付板4h1とグリル庫4aの下面とによって区画された空間は十分な広さを有しているので、その空間内に配置されたスライドレール8の移動メンバー84や後述する引き込み機構86は、引き込み動作時に、側壁4j1やグリル庫4aに干渉することがない。
なお、グリル庫4aの幅を規定する側壁としては、上記のように、グリル庫4aを収容する筐体4jの側壁4j1の他、コンロ本体1の側壁を用いてもよい。
図6及び図7に示すように、レール連結枠9の上縁には、グリル扉5の背面に形成した扉側係合孔5bに係合する左右一対の爪部9aが形成されている。下縁中央部には、グリル扉5の背面下部に取り付けた板バネ部材5c(図4参照)を係合させる凹欠部9bが形成されている。中央部には、板バネ部材5cをグリル扉5に締結するビス5dの頭部に対応するようにして、逃げ孔9cが形成されている。逃げ孔9cの両側には、皿支持枠4e用の左右一対の枠側係合孔9dが形成されている。
グリル扉5は、グリル扉5の背面の扉側係合孔5bに爪部9aを係合させた状態で、板バネ部材5cを凹欠部9bに係合させることにより、レール連結枠9に着脱自在に連結される。
皿支持枠4eの前支持板4e2の前端には左右一対の爪片4e4が突設されている。その爪片4e4をレール連結枠9の枠側係合孔9dに挿入係止することで、レール連結枠9に皿支持枠4eが連結される。
グリル扉5の背面には、レール連結枠9にグリル扉5を連結した状態で枠側係合孔9dに挿入される突起状の抜止部5eが設けられている。抜止部5eは、爪片4e4に干渉することにより、爪片4e4が浮き上がって枠側係合孔9dから抜け出ることを防止している。
次に、図8〜図15を参照して、グリル4が備えるスライドレール8について詳細に説明する。
図8に示すように、スライドレール8は、グリル庫4a(加熱庫)に固定される固定メンバー80と、固定メンバー80に対して前後方向に移動自在に取り付けられ、皿支持枠4e(載置部)を保持する移動メンバー84とを備えている。
固定メンバー80の移動メンバー84側とは反対側の側面には、係止爪80aが形成されている。固定メンバー80は、グリル庫4a(加熱庫)の下方の遮熱板4hの横方向両側部の取付板4h1に係止爪80aを係止させることにより、グリル4に対し固定される(図3参照)。
また、固定メンバー80の上方側(鉛直方向一方側)には、レール部80bが形成されている。レール部80bの後方の端部は、下方側(鉛直方向他方側)に向かって傾斜している。具体的には、その傾斜部分は、上方側に凸となる曲線形状となっている。これは、後述するように、移動メンバー84を移動させる際に必要となる荷重を緩やかに変化させるためである。
なお、レール部80bの傾斜部分の形状は、後述する引き込み機構86が設けられている側とは反対側に向かって傾斜している形状であれば良く、上方側に凸となる曲線形状以外の形状であってもよい。そして、レール部80bの傾斜部分の形状は、例えば、収納スペースの大きさや引き込み機構86の形状に応じて、適宜変更してもよい。
移動メンバー84は、固定メンバー80に対して、中間メンバー82を介して前後方向に移動自在に取り付けられている。具体的には、図9に示すように、中間メンバー82が、複数の第1ボール81を介して、固定メンバー80の横方向外側に前後方向に移動自在に係合しており、移動メンバー84が、複数の第2ボール83を介して、中間メンバー82の横方向外側に前後方向に移動自在に係合している。
なお、グリル4では、スライドレール8として、固定メンバー80、中間メンバー82及び移動メンバー84の3つの部材からなるスライドレールを採用している。これは、そのような3つの部材からなるスライドレールは、収納状態における長さに対する引き出し距離が長く、収納スペースの省スペース化を図り易いためである。
しかし、本発明の引き出し式加熱調理器はそのような構成に限定されるものではなく、固定メンバーとそれに対して前後方向に移動自在な移動メンバーを備えるものであればよい。そのため、例えば、中間メンバーを省略し、固定メンバー及び移動メンバーの2つの部材からなるスライドレールを採用してもよい。
また、図8に示すように、移動メンバー84の前端部には、横方向内側に向かって延設された固定部84aが設けられている。固定部84aには、レール連結枠9が固定される。これにより、移動メンバー84は、レール連結枠9を介して、皿支持枠4e(載置部)を保持する(図3及び図6参照)。
また、移動メンバー84の、収納状態で固定メンバー80のレール部80bの傾斜部分に対応する位置には、移動メンバー84を引き込むように後方に移動させるための引き込み機構86が設けられている。
なお、グリル4では、引き込み機構86を収納状態で固定メンバー80及び移動メンバー84の後方に位置させるために、移動メンバー84の後方の端部に設けている。しかし、本発明の引き出し式加熱調理器の引き込み機構はそのような構成に限定されるものではなく、レール部の傾斜部分に対応する位置に設けられていればよい。例えば、レール部の中央部に傾斜部分が設けられている場合には、それに対応して、移動メンバーの中央部分に引き込み機構を設ければよい。
図8Bに示すように、引き込み機構86は、移動メンバー84が最も引き出された状態で、グリル庫4aの前面(図8Bにおいて二点鎖線で示す線)よりも後方に位置する。そのため、複雑な構造の引き込み機構が使用者の目に触れることがなく、引き込み機構86を設けたことによって、美観が損なわれることがない。
図10及び図11に示すように、引き込み機構86は、移動メンバー84から上方に延設されている延設部86aと、延設部86aから固定メンバー80側に延びる第1軸部86bと、第1軸部86bに回動自在に軸支され、引き出し時に後方に回動するアーム部86cと、アーム部86cの先端部から固定メンバー80側に延びる第2軸部86dと、第2軸部86dに回転自在に軸支され、レール部80bの上方側に位置するローラ86eと、ローラ86eがレール部80bに圧接するようにアーム部86cを付勢するコイルバネ86f(付勢部材)とを有している。
図10に示すように、延設部86aは、収納状態で、固定メンバー80の後方の端部よりも後方に位置するように形成されている。また、ローラ86eは、収納状態で、固定メンバー80の後方、且つ、固定メンバー80の鉛直方向の高さの範囲内に位置している。これにより、収納状態においては、ローラ86eは、固定メンバー80の後方に収納された状態になる。
なお、本発明の引き出し式加熱調理器では、収納状態において、必ずしも固定メンバーの後方にローラが収納された状態となるように構成する必要はなく、収納スペース(例えば、スライドレールを覆うカバー部材の形状)に応じて、収納状態におけるアーム部の位置を適宜変更してもよい。例えば、ローラがレール部の傾斜している部分に接した状態で収納されるようにしてもよい。
また、レール部80bの傾斜部分(引き込み機構86による引き込み動作が生じる部分にローラ86eが位置する部分)は、図11Aに示すように、引き込み動作が開始する前の時点でアーム部86cが水平となり、図10Aに示すように、引き込み動作が完了した後の時点でアーム部86cが垂直となるように傾斜している。
レール部80bがこのように傾斜しているので、アーム部86cを収納するためのスペースは、小さく抑えられている。また、引き込み動作時におけるアーム部86cの移動距離に対する姿勢の変化の度合いも大きくなっているので、それに伴って引き込む力も大きくなっている。
コイルバネ86fは、延設部86aから固定メンバー80側に延びる第1軸部86bに巻き付けられている。コイルバネ86fの一端は、延設部86aに設けられた第1係止部86gに係止されている。コイルバネ86fの他端は、アーム部86cに設けられた第2係止部86hに係止されている。
引き込み機構86では、付勢部材としてこのように設置されたコイルバネ86fを用いているので、スライドレール8をグリル4に設置する際に、付勢部材を配置するためのスペースを別途設ける必要がない。また、コイルバネ86fの端部を係止させるための第1係止部86gは、延設部86aの後方の端部に設けられている。そのため、コイルバネ86fは、容易に組み付けられるようになっている。
なお、本発明の引き出し式加熱調理器の付勢部材としては、ローラ86eをレール部80bに圧接させるように付勢するものであればよく、上記のようなコイルバネ86fに限定されるものではない。例えば、ゴム等の弾性体や磁石等を用いて付勢部材を構成してもよい。また、付勢する位置もアーム部ではなく、第2軸部等であってもよい。
上記の構成を備えるグリル4では、付勢部材であるコイルバネ86fの付勢力によってローラ86eがレール部80bに圧接されているので、移動メンバー84が収納位置近傍に位置した際(すなわち、ローラ86eがレール部80bの傾斜している部分に位置した際)には、ローラ86eがレール部80bの傾斜に沿って滑るように後方に移動する。これにより、引き込み機構86が設けられている移動メンバー84は、収納位置まで移動させられる。
また、上記の構成を備えるグリル4では、引き込み機構86全体が、固定メンバー80及び移動メンバー84の上方側に位置している。そのため、引き込み機構86を配置しても、グリル庫4a内のスペースが左右方向において狭くなってしまうことがなく、十分なスペースを確保することができる。
したがって、グリル4では、レール部80b及び引き込み機構86によって、移動メンバー84に保持されている皿支持枠4e(ひいては、グリル皿4c)の収納が不完全な状態になってしまうことや、地震等の外部からの影響によって意図せず皿支持枠4eがグリル庫4aから飛び出してしまうことが防止される。また、引き込み機構86を設けても、グリル庫4a内のスペースが狭くなってしまうこともない。
なお、グリル4では、引き込み機構86をスライドレール8の上方側に位置するように設けているが、下方側に位置するように設けてもよい。また、左右方向外側に位置するように設けてもよい。
ところで、上記の引き込み機構86では、付勢部材であるコイルバネ86fのバネ定数を低減させると、引き出し始めにおいて必要となる荷重が軽減され、レール部80bとローラ86eとの摺動抵抗も低減される。これにより、スライドレール8の操作感(ひいては、グリル庫4aから皿支持枠4eを出し入れする際の操作感)の向上を図ることができる。
コイルバネ86fのバネ定数を低減させるためには、その巻き数を増加させればよい。しかし、コイルバネ86fの巻き数を増加させるためには、コイルバネ86fの巻き付けられている第1軸部86bを長くしなければならない。
第1軸部86bが長くなると、第1軸部86bに接続されているアーム部86cの第1軸部86bから離れた側の端部(すなわち、その端部に接続されている第2軸部86d)に対し、コイルバネ86fによって荷重が加えられた際に発生するモーメントが大きくなる。
その結果として、第2軸部86dに軸支されているローラ86eからレール部80bに対して意図しない負荷が加わり、逆に操作感を悪化させてしまったり、レール部80bの耐久性を低下させてしまったりするおそれがある。
例えば、図12A及び図12Bに示す第1の参考例に係る引き込み機構861のように、延設部86aから延びる第1軸部861bが短く形成されている場合、第1軸部861bに接続されているアーム部861cの第1軸部861bから離れた側の端部(すなわち、その端部に設けられている第2軸部86d及び第2軸部に86dに軸支されているローラ86e)に対し、コイルバネ861fによって荷重が加えられた際に発生するモーメント(M1)は、それほど大きなものとはならない。
しかし、引き込み機構861では第1軸部861bが短いので、第1軸部861bに巻き付けられているコイルバネ861fの巻き数が少なく、コイルバネ861fのバネ定数が高くなっている。その結果、引き込み機構861では、引き出し始めにおいて必要となる荷重が大きく、レール部80bとローラ86eとの摺動抵抗も大きい。
引き込み機構861で発生し得るこのような問題を解消するための方法としては、図12C及び図12Dに示す第2の参考例に係る引き込み機構862のように、延設部86aから延びる第1軸部862bを長くするという方法が考えられる。
このように構成した場合には、コイルバネ862fの巻き数を十分な巻き数とすることができるので、引き出し始めにおいて必要となる荷重が軽減され、レール部80bとローラ86eとの摺動抵抗も十分に低減される。
しかし、第1軸部862bが長くなったことに伴い、第1軸部862bに接続されているアーム部862cの第1軸部862bから離れた側の端部(すなわち、その端部に接続されている第2軸部86d)に対し、コイルバネ86fによって荷重が加えられた際に発生するモーメント(M2)が、第1軸部が短い場合のモーメント(M1)よりも大きくなる。
そこで、図12E及び図12Fに示すように、グリル4のスライドレール8の引き込み機構86では、アーム部86cの第1軸部86bに接続される端部が第2軸部86dに接続される端部よりも固定メンバー80側に位置するように、アーム部86cを屈曲させている。具体的には、アーム部86cを、中間部で移動メンバー84側に屈曲させるとともに、その屈曲位置よりも後方の位置で再度後方に向かって屈曲させている。
これにより、第1軸部86bを長くしつつ(すなわち、コイルバネ86fの巻き数を増加させつつ)、アーム部86cの第2軸部86dに接続される端部に加わるモーメント(M3)を抑えることができる。
また、スライドレール8では、固定メンバー80のレール部80bの後方の端部に設けた傾斜部分の形状を、上方に凸となる曲線形状としている、これにより、移動メンバー84を移動させる際に必要となる力が、レール部80bの傾斜部分と平坦な部分との間で、緩やかに変化するようになっている。
その結果、図13のグラフに示すように、本実施形態の引き込み機構86では、引き出し時においても、引き込み時においても、引き出しに必要な荷重が安定したものとなる。すなわち、引き込み機構86では、レール部80bの耐久性を損なうことなく、また、コイルバネ86fからの荷重によるモーメントに阻害されることなく、操作感が向上している。
具体的には、図13に一点鎖線で示したように、一般的な引き込み機構を備えているスライドレールでは、ストローク量が所定の値を超えた際に、操作のために必要な荷重が急激に低下する。そのため、使用者に違和感を与えたり、レールが勢いよく引き込まれて衝撃音が生じたりしてしまうという問題がある。
これに対し、図13に実線及び破線で示したように、本実施形態の引き込み機構86を備えているスライドレール8や先行技術文献に記載のような構成の引き込み機構を備えているスライドレールは、引き込み機構が傾斜する端部を有するレール部とローラとで構成されているので、操作のために必要な荷重が緩やかに変化する。そのため、使用者に違和感を与えることがなく、レールが勢いよく引き込まれて衝撃音が生じたりしてしまうことがない。
さらに、本実施形態の引き込み機構86では、アーム部86cを屈曲させ、レール部80bの後方の傾斜部分の形状を上方に凸となる曲線形状としているので、先行技術文献に記載のような構成の引き込み機構よりも、さらに、操作のために必要な荷重の変化が緩やかなものになっている。また、引き込み時に必要な荷重と引き出し時に必要な荷重の差も、先行技術文献に記載のような構成の引き込み機構のものよりも小さくなっている。
なお、引き込み機構86では、アーム部86cの第1軸部86bに接続される端部の位置を変更するために、アーム部86cを屈曲させている。しかし、アーム部86cを湾曲させることにより、端部の位置を変更してもよい。
また、付勢部材であるコイルバネ86fの材質を変更すること等により、少ない巻き数で十分に低減されたバネ定数を得ることができる場合には、第1の参考例のように、第1軸部を短くするだけでも、操作感の向上を図ることができる。
また、ローラ86eの材質を柔らかくする等によって、コイルバネ86fによって発生するモーメントによる影響を低減することができる場合には、第2の参考例のように、アーム部を屈曲又は湾曲させずに、第1軸部を長くするだけでも、操作感の向上を図ることができる。
ところで、図14に示すように、上記の引き込み機構86では、第2軸部86dは、軸86d1とヘッド86d2とで構成されている。そして、ローラ86eは、その第2軸部86dによって回転自在に軸支されている。
このような構成を備えるローラ86eでは、一般に、ローラ86eの回転を阻害しないように、ローラ86eの端面とヘッド86d2との間にガタが設けられている。しかし、このガタが大きすぎると、引き込み機構86を構成する他の部材のクリアランスと合わさって、ローラ86eが軸線方向に大きく移動して、レール部80bから脱輪してしまうおそれがある。
また、ローラ86eを軸支する軸86d1の長さが短すぎる場合、ローラ86eの内周径と軸86d1の外径とのクリアランスにより、ローラ86eの傾きが大きくなり、レール部80bへの押し付け力が不安定になるおそれがある。逆に、軸86d1の長さが長すぎる場合、ローラ86eの内周面と軸86d1の外周面との間に摩擦が生じてしまい、ローラ86eの回転が阻害されてしまうおそれがある。
そして、いずれの場合においても、操作感の悪化、ローラ86eやレール部80bの耐久性が低下してしまうおそれが生じることになる。
そこで、引き込み機構86では、ローラ86eの径方向の中央部86e1を窪ませることにより、中央部86e1の軸線方向の長さを外周部の軸線方向の長さよりも短くしている。これにより、ローラ86eが軸線方向に大きく移動しても、ローラ86eがレール部80bから脱輪することが防止される。また、ローラ86eの内周面と軸86d1の外周面との間の摩擦を低減することができる。
また、引き込み機構86では、ローラ86eとレール部80bとの接触面積が小さすぎるとローラ86eが空回りしてしまうおそれがある。一方、接触面積が大きすぎるとローラ86eとレール部80bとの間で大きな摩擦が生じ、ローラ86eやレール部80bの耐久性が低下してしまうおそれがある。
そこで、図10及び図11に示すように、引き込み機構86では、ローラ86eの形状をレール部80bの形状に対応する鼓状とする(具体的には、周面部86e2を軸線方向中央に向かって縮径する形状とする)ことによって、ローラ86eとレール部80bとが線接触するように構成している。これにより、ローラ86eとレール部80bとの間の摩擦を適度な大きさとして、ローラ86eの空回りやローラ86eやレール部80bの耐久性の低下を防止している。
なお、グリル4では、適切な接触面積を得るために、ローラ86e及びレール部80bを上記のような形状としているが、その形状は上記の形状に限定されるものではなく、相互に線接触できる形状であればどのような形状であってもよい。ローラ86eの素材等を変更することにより、ローラ86eとレール部80bとの摩擦を調整できる場合には、必ずしも相互に線接触させなくてもよい。
ところで、上記のように引き込み機構86を上方側に設けた場合、引き込み機構86を介して、移動メンバー84の上方側の部分と固定メンバー80の上方側の部分との間に、相互に離れる方向の力が加わってしまうおそれがある。
そこで、図15Aに示すように、引き込み機構86では、ローラ86eを鼓状とすることによって、ローラ86eから固定メンバー80に対して、移動メンバー84に近づく方向の力を加え、離れる方向の力を低減している。
なお、ローラ86eの形状は、鼓状に限定されるものではなく、例えば、図15Bに示す第1の変形例に係る引き込み機構863のローラ863eのように、外周面を移動メンバー84側に向かって縮径するような形状としてもよい。このように構成した場合であっても、移動メンバー84が固定メンバー80から離れる方向の力を低減することができる。
また、図15Cに示す第2の変形例に係る引き込み機構864のように、延設部864aを屈曲させて、第2軸部86dを固定メンバー80側ほど下方側に向かって傾斜させてもよい。このように構成した場合であっても、移動メンバー84が固定メンバー80から離れる方向の力を低減することができる。
また、図15Dに示す第3の変形例に係る引き込み機構865のように、延設部865aを屈曲させて、第2軸部86dを固定メンバー80側ほど下方側に向かって傾斜させた場合には、ローラ865eの形状を平坦な筒状としてもよい。
なお、本実施形態に係る引き込み機構86、第1の変形例に係る引き込み機構863、第2の変形例に係る引き込み機構864及び第3の変形例に係る引き込み機構865においても、レール部80bの形状は、図示の形状に限定されるものではなく、背面視で、固定メンバーがローラによって移動メンバー側に押し付けられるように傾斜した円弧形状であればよい。