JP6741988B2 - 封止用エポキシ樹脂組成物、封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び半導体装置 - Google Patents

封止用エポキシ樹脂組成物、封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び半導体装置 Download PDF

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本発明は、封止用エポキシ樹脂組成物、前記封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物、及び前記封止用エポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置に関する。
従来、トランジスタ、IC等の半導体素子の封止に当たり、生産性向上、コスト低減等の目的で、樹脂封止が行われている。樹脂封止は、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂系硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材を含有する封止用エポキシ樹脂組成物を成形して封止材を作製することで行われている。
難燃性の高い封止用エポキシ樹脂組成物として、分子中にビフェニル誘導体を含むノボラック構造のフェノール樹脂と、分子中にビフェニル誘導体および/またはナフタレン誘導体を含むノボラック構造のエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
特開2003−176335号公報
特許文献1に開示されている特定のフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物の粘度は上昇しやすく、そのため、エポキシ樹脂組成物の保存安定性が低下しやすくなり、また、エポキシ樹脂組成物を成形して半導体装置を製造する際にはワイヤースイープ、未充填といった不良が生じやすかった。
一方、エポキシ樹脂組成物の粘度上昇抑制のために、硬化促進剤としてテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(以下、TPP−Kという)を配合することが知られている。TPP−Kはそのままでは非常に安定で触媒活性が低いため、TPP−Kをあらかじめフェノール樹脂とともに加熱することで得られたフェノール樹脂塩をエポキシ樹脂組成物に配合している。しかし、TPP−Kのフェノール樹脂塩の生成時には微量のベンゼンが生成してしまう。このベンゼンがエポキシ樹脂組成物から環境に放出されて環境が悪化してしまう。
本発明の目的は、分子中にビフェニル誘導体を含むノボラック構造のフェノール化合物と、分子中にビフェニル誘導体を含むノボラック構造のエポキシ化合物とを含有しながら、流動性、硬化性及び保存安定性に優れ、硬化促進剤に起因するベンゼンの放出が抑制された封止用エポキシ樹脂組成物及びその製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物、及びこの硬化物を含む封止材を備える半導体装置を提供することでもある。
本発明の一態様に係る封止用エポキシ樹脂組成物は、下記式(1)で示されるエポキシ化合物(A1)を含有するエポキシ化合物(A)、下記式(2)で示されるフェノール化合物(B1)を含有するフェノール化合物(B)、及び下記式(3)で示されるホスホニウム塩(C)を含有する。
式(1)中のnは平均1.0〜3.5の範囲内であり、mは平均1.0〜9.0の範囲内である。
式(2)中のnは平均1.0〜2.0の範囲内であり、mは平均1.0〜9.0の範囲内である。
式(3)において、R1〜R3は各々独立に炭素数6〜12のアリール基であり、R4は炭素数1〜4のアルキル基であり、R6及びR8は各々独立にカルボキシル基、又は水酸基であり、R5及びR7は各々独立にH又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R9及びR11の各々はHであり、R10はカルボキシル基、又は水酸基であり、p、q及びrは、p≧1、q≧1、r≧1、及びq≧rの関係を満たす数である。
本発明の一態様に係る硬化物は、前記封止用エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる。
本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材とを備え、前記封止材が前記封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物を含む。
本発明によれば、分子中にビフェニル誘導体を含むノボラック構造のフェノール樹脂と、分子中にビフェニル誘導体を含むノボラック構造のエポキシ化合物とを含有しながら、流動性、硬化性及び保存安定性に優れ、硬化促進剤に起因するベンゼンの放出が抑制された封止用エポキシ樹脂組成物が得られる。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る封止用エポキシ樹脂組成物(以下、組成物(X)という)は、エポキシ化合物(A)、フェノール化合物(B)、及びホスホニウム塩(C)を含有する。
エポキシ化合物(A)は、下記式(1)で示されるエポキシ化合物(A1)を含有する。
式(1)中のnは平均1.0〜3.5の範囲内であり、mは平均1.0〜9.0の範囲内である。
フェノール化合物(B)は、下記式(2)で示されるフェノール化合物(B1)を含有する。
式(2)中のnは平均1.0〜2.0の範囲内であり、mは平均1.0〜9.0の範囲内である。
ホスホニウム塩(C)は、下記式(3)で表される。
式(3)において、R1〜R3は各々独立に炭素数6〜12のアリール基である。R4は炭素数1〜4のアルキル基である。R6及びR8は各々独立にカルボキシル基、又は水酸基である。R5及びR7は各々独立にH又は炭素数1〜4のアルキル基である。R9及びR11の各々はHである。R10はカルボキシル基、又は水酸基である。p、q及びrは、p≧1、q≧1、r≧1、及びq≧rの関係を満たす数である。
組成物(X)がエポキシ化合物(A1)及びフェノール化合物(B1)を含有するため、組成物(X)の硬化物は高い難燃性を有するとともに、高い耐熱性も有することができる。このため、硬化物を含む封止材を備える半導体装置は、高い信頼性を有することができる。また、エポキシ化合物(A1)及びフェノール化合物(B1)はこれらを含有する樹脂組成物の粘度上昇を引き起こしやすいが、組成物(X)はホスホニウム塩(C)を含有するため、エポキシ化合物(A1)及びフェノール化合物(B1)を含有するにもかかわらず、組成物(X)の粘度上昇が抑制される。このため、組成物(X)は高い保存安定性を有することができる。さらに、組成物(X)は成形時に高い流動性を有することができ、このため、組成物から半導体装置の封止材を作製する場合にワイヤースイープ、未充填といった不良が生じにくい。
組成物(X)の組成について、更に詳しく説明する。
エポキシ化合物(A)について説明する。エポキシ化合物(A)は、上記の通り、式(1)で示されるエポキシ化合物(A1)を含有する。式(1)中のnは上記のように平均1.0〜3.5の範囲内である。このため、組成物(X)の成形時の良好な流動性と硬化物の良好な耐熱性とが、バランス良く実現できる。また、式(1)中のmは平均1.0〜3.0の範囲内であることが好ましい。この場合は組成物(X)の成形時の良好な流動性と硬化物の良好な耐熱性とが、よりバランス良く実現できる。
エポキシ化合物(A)は、エポキシ化合物(A1)以外の成分(以下、エポキシ化合物(A2)という)を含有できる。エポキシ化合物(A2)は、例えばグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂及びオレフィン酸化型(脂環式)エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。より具体的には、エポキシ樹脂は、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂といったアルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格といった骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;フェニレン骨格、ビフェニレン骨格といった骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂といった多官能型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂といったビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ビスフェノールA型ブロム含有エポキシ樹脂といったブロム含有エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸といったポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;並びにフタル酸、ダイマー酸といった多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。
封止材62の耐湿信頼性向上のためには、エポキシ化合物(A)中のNaイオン、Clイオン等のイオン性不純物が極力少ない方が好ましい。
組成物(X)全体に対する、エポキシ化合物(A)の量は、5〜35質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、成形時の組成物(X)の流動性及び封止材62の物性が向上する。
フェノール化合物(B)について説明する。フェノール化合物(B)は、上記の通り、式(2)で示されるフェノール化合物(B1)を含有する。式(2)中のnは上記のように平均1.0〜2.0の範囲内である。このため、組成物(X)の成形時の良好な流動性と硬化物の良好な耐熱性とが、バランス良く実現できる。また、式(1)中のmは平均1.0〜3.0の範囲内であることが好ましい。この場合は組成物(X)の成形時の良好な流動性と硬化物の良好な耐熱性とが、よりバランス良く実現できる。
フェノール化合物(B)は、フェノール化合物(B1)以外の成分(以下、フェノール化合物(B2)という)を含有できる。フェノール化合物(B2)は、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂といったノボラック型樹脂;フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂;フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂といったアラルキル型樹脂;トリフェノールメタン型樹脂といった多官能型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂といったジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFといったビスフェノール型樹脂;並びにトリアジン変性ノボラック樹脂、からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。特にフェノール化合物(B2)がフェノールアラルキル型フェノール樹脂とビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。
フェノール化合物(B)の1当量に対して、エポキシ化合物(A)は0.9〜1.5当量の範囲内であることが好ましい。この場合、封止材62は高温時でも特に高い密着性を有しうるとともに、組成物(X)は良好な保存安定性を有しうる。エポキシ化合物(A)が1.0〜1.3当量の範囲内であれば更に好ましい。
エポキシ化合物(A)全体に対する、エポキシ化合物(A1)の量が、80〜100質量%の範囲内であり、フェノール化合物(B)全体に対する、フェノール樹脂の量が、49質量%以下であることが、好ましい。この場合、半導体装置が特に高い信頼性を有することができるとともに、半導体装置におけるワイヤースイープが特に抑制できる。フェノール樹脂の量が30〜49質量%の範囲内であれば、より好ましい。
エポキシ化合物(A)全体に対する、エポキシ化合物(A1)の量が、79質量%以下であり、フェノール化合物(B)全体に対する、フェノール樹脂の量が、50〜100質量%の範囲内であることも好ましい。この場合、半導体装置が特に高い信頼性を有することができるとともに、半導体装置におけるワイヤースイープが特に抑制できる。エポキシ化合物(A)全体に対する、エポキシ化合物(A1)の量が、50〜79質量%の範囲内であれば、より好ましい。
ホスホニウム塩(C)について説明する。ホスホニウム塩(C)は、下記式(3.1)に示す第4級ホスホニウムカチオン(C1)と、下記式(3.2)に示す有機カルボキシラートアニオン(C2)と、下記式(3.3)に示すフェノール化合物(C3)とから構成される。
ホスホニウム塩(C)において、第4級ホスホニウムカチオン(C1)と、有機カルボキシラートアニオン(C2)とは、イオン結合している。さらに、有機カルボキシラートアニオン(C2)と式フェノール化合物(C3)とは、水素結合しており、このためホスホニウム塩(C)は錯体状の化合物である。このホスホニウム塩(C)の構造の概念的なモデルの一例を下記式(4)に示す。
ホスホニウム塩(C)を含有することで、組成物(X)は、高い流動性、高い硬化性、及び高い保存安定性を有することができる。これは、ホスホニウム塩(C)を構成する第4級ホスホニウムカチオン、有機カルボキシラートアニオン及びフェノール化合物という三つの要素間に働く次のような相互作用に起因すると考えられる。
式(4)に示すように、有機カルボキシラートアニオン(C2)とフェノール化合物(C3)の各々は、1,3位に水素結合可能な置換基である水酸基又はカルボニル基を有するため、有機カルボキシラートアニオン(C2)とフェノール化合物(C3)との間に水素結合による相互作用が強力に働く。これにより有機カルボキシラートアニオン(C2)の酸強度が見かけ上強くなり、有機カルボキシラートアニオン(C2)と第4級ホスホニウムカチオン(C1)とが解離しにくくなる。このため、常温下ではホスホニウム塩(C)中の第4級ホスホニウムカチオン(C1)と有機カルボキシラートアニオン(C2)とが解離しない状態が維持されることで、組成物(X)の硬化が抑制される。このため、組成物(X)は優れた保存安定性を有すると考えられる。組成物(X)が加熱されても、当初は有機カルボキシラートアニオン(C2)とフェノール化合物(C3)との間の強い相互作用が維持されることで、第4級ホスホニウムカチオン(C1)と有機カルボキシラートアニオン(C2)との解離が抑制される。このため、組成物(X)が加熱されても、すぐには硬化反応は進行せず、組成物(X)の溶融粘度の上昇が抑制される。これにより、組成物(X)は成形時に優れた流動性を有すると考えられる。加熱を開始してからしばらくすると、有機カルボキシラートアニオン(C2)とフェノール化合物(C3)との間の相互作用は次第に弱まり、第4級ホスホニウムカチオン(C1)と有機カルボキシラートアニオン(C2)とが解離する。これにより、組成物(X)の硬化が促進される。このため、組成物(X)の高い流動性と高い硬化性とが両立すると考えられる。
本実施形態では、式(3)において、R1〜R3が各々独立に炭素数6〜12のアリール基であり、R4が炭素数1〜4のアルキル基であることで、ホスホニウム塩(C)における第4級ホスホニウムカチオン(C1)と有機カルボキシラートアニオン(C2)との立体障害が少なく、そのため、ホスホニウム塩(C)の安定性が高い。また、R6及びR8が各々独立にカルボキシル基、又は水酸基であり、更にR10がカルボキシル基、又は水酸基であることで、有機カルボキシラートアニオン(C2)とフェノール化合物(C3)との間の相互作用が強力に働き、上記のような組成物(X)の優れた保存安定性、成形時の優れた流動性及び優れた硬化性がもたらされる。また、R5及びR7が各々独立にH又は炭素数1〜4のアルキル基であることで、芳香環上でエポキシ樹脂と反応する官能基同士が隣接せず、しかもエポキシ樹脂と反応する官能基の周りの立体障害が抑制される。このため、組成物(X)が硬化する際にエポキシ化合物(A)と反応する官能基が未反応で残る確率が低くなり、組成物(X)に高い硬化物特性が付与される。
式(3)において、R6とR8の少なくとも一方はカルボキシル基であることが好ましい。この場合、組成物(X)の保存安定性、成形時の流動性及び硬化性が更に向上するとともに、硬化物を含む封止材とリードフレームとの密着性が更に向上する。その理由は次の通りであると推察される。カルボキシル基及びカルボキシラートアニオン基は、水酸基よりも求核性が低いため、R6とR8の少なくとも一方がカルボキシル基であると、ホスホニウム塩(C)がエポキシ化合物(A)と反応する際には、当初は急激な反応は生じない。反応が進んでも、カルボキシラートアニオン基が先に反応し、カルボキシル基は反応せずに残存しやすい。そのため、組成物(X)の保存安定性、成形時の流動性が良好である。反応がある程度進むと、有機カルボキシラートアニオン(C2)からフェノール化合物(C3)が解離して、このフェノール化合物(C3)中の水酸基の高い求核反応性が発現し、そのため組成物(X)の硬化が促進される。これにより、組成物(X)は高い硬化性を有する。有機カルボキシラートアニオン(C2)中のカルボキシル基は組成物(X)の硬化後も硬化物中に残存しやすい。このため、硬化物が金属表面と接触すると、組成物(X)中のカルボキシル基が金属元素と結合してカルボン酸塩を形成しやすく、金属表面に水酸基又は酸化膜が存在する場合にはカルボキシル基が金属表面と水素結合しやすい。このため、硬化物は金属表面との間の高い密着性を有することができ、これにより、封止材はリードフレームとの間の高い密着性を有することができる。
式(3)において、R10が水酸基であることも好ましい。この場合、組成物(X)が、より高い保存安定性、成形時のより高い流動性及びより高い硬化性を有することができる。これは、ホスホニウム塩(C)内において、有機カルボキシラートアニオン(C2)とフェノール化合物(C3)との水素結合による相互作用が、より強く生じやすいからだと考えられる。特に、R6とR8の少なくとも一方がカルボキシル基であるとともにR10が水酸基である場合に、高い効果が得られる。これは、ホスホニウム塩(C)内における有機カルボキシラートアニオン(C2)に対してフェノール化合物(C3)が、有機カルボキシラートアニオン(C2)におけるカルボキシラートアニオン基及びカルボキシル基とフェノール化合物(C3)における二つの水酸基とが近接するように配置されやすいため、水素結合による相互作用が更に強く生じやすいからだと考えられる。
また、ホスホニウム塩(C)はベンゼンを含まず、ホスホニウム塩(C)の合成時にベンゼンが生成されてホスホニウム塩(C)に混入されることもない。このため、組成物(X)からの、硬化促進剤に由来するベンゼンの放出が抑制される。
また、原料の加熱混練によって組成物(X)を調製する際に、ホスホニウム塩(C)は組成物(X)中で分散及び融解しやすい。このため、組成物(X)で半導体素子を封止する場合、ホスホニウム塩(C)の粒子がワイヤー間やバンプ間にひっかかって絶縁不良を引きおこすようなことが、抑制される。
ホスホニウム塩(C)の融点又は軟化点が200℃以上という比較的高い温度であっても、ホスホニウム塩(C)は組成物(X)中で分散及び融解しやすい。これは、何らかの分子間相互作用によって、組成物(X)中でのホスホニウム塩(C)の分散性が高められているためであると考えられる。
組成物(X)中でホスホニウム塩(A)が特に分散及び融解しやすくなるためには、ホスホニウム塩(C)の融点又は軟化点は200℃以下であることが好ましく、70〜140℃の範囲内であればより好ましい。融点又は軟化点が140℃以下であると、組成物(X)中でホスホニウム塩(C)が特に分散及び融解しやすくなる。また、融点又は軟化点が70℃以上であると、ホスホニウム塩(C)を粉砕して粉末状にする場合の融着が特に抑制されるとともに、保存中に粉末状のホスホニウム塩(C)がブロック化しにくくなる。融点又は軟化点は、80〜120℃の範囲内であれば更に好ましく、90〜100℃の範囲内であれば特に好ましい。
なお、ホスホニウム塩(C)の融点又は軟化点を測定するためには、空気雰囲気下、昇温速度20℃/分の条件でホスホニウム塩(C)の示差走査熱量測定を行うことで、DSC曲線を得る。このDSC曲線における吸熱ピークが現れる温度を、融点又は軟化点とする。
ホスホニウム塩(C)の融点又は軟化点を下げる方法として、ホスホニウム塩(C)をフェノール樹脂でマスターバッチ化することが挙げられる。フェノール樹脂は低粘度であることが好ましい。フェノール樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が挙げられる。マスターバッチ化のためには、公知の方法が利用可能である。
ホスホニウム塩(C)が粉末状であることも好ましい。この場合も、ホスホニウム塩(C)が、組成物(X)中で特に分散及び融解しやすくなる。ホスホニウム塩(C)を粉末状にする方法としては、ホスホニウム塩(C)を衝撃式粉砕機等で粉砕することが挙げられる。粉末状のホスホニウム塩(C)が、100メッシュパス95%以上であることが好ましい。すなわち、粉末状のホスホニウム塩(C)の95質量%以上が、100メッシュ(目開き212μm)を通過することが好ましい。この100メッシュパスは、エアージェットシーブ法で測定される。この場合、ホスホニウム塩(C)が、組成物(X)中で非常に分散及び融解しやすくなる。
ホスホニウム塩(C)の合成方法は、特に限定されない。例えばまず第4級ホスホニウムカチオン(C1)と有機カルボキシラートアニオン(C2)とから構成される中間体を合成し、この中間体とフェノール化合物(C3)とを混合することで、ホスホニウム塩(C)が得られる。
中間体は、例えば特許第4429768号公報に開示されている方法で製造できる。具体的には、例えばまず第4級ホスホニウムカチオン(C1)に対応する第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩と、有機カルボキシラートアニオン(C2)に対応する有機カルボン酸との塩交換反応で、中間体が合成される。
第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩は、例えば第4級ホスホニウムに対応する第3級ホスフィンと炭酸ジエステル類とを反応させることで得られる。第3級ホスフィンとしては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、及び2−(ジフェニルホスフィノ)ビフェニルが挙げられる。炭酸ジエステルとしては、例えばジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、及びジフェニルカーボネートが挙げられる。反応を速やかに収率良く完結させるためには、溶媒中で反応させることが好ましい。溶媒としては、例えばメタノール及びエタノールが挙げられる。第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩を合成するためには、例えば第3級ホスフィンと炭酸ジエステル類を溶媒に加えて反応溶液を調製し、この反応溶液をオートクレーブ中で、50〜150℃の範囲内の温度で10〜200時間反応させる。
中間体は、第4級ホスホニウムカチオン(C1)に対応する第4級ホスホニウムの水酸化物と、有機カルボキシラートアニオン(C2)に対応する有機カルボン酸との塩交換反応で合成されてもよい。
第4級ホスホニウムの水酸化物は、例えば第4級ホスホニウムに対応する第3級ホスフィンとハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリールとを反応させた後に、無機アルカリで塩交換することで得られる。第3級ホスフィンとしては、第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩を得る場合と同じものが挙げられる。ハロゲン化アルキルとしては、例えば臭化エチル、塩化ブチル、2−エチルヘキシルブロマイド、2−ブチルエタノール、及び2−クロロプロパノールが挙げられる。ハロゲン化アリールとしては、例えばブロモベンゼン、ブロモナフタレン、及びブロモビフェニルが挙げられる。無機アルカリとしては、例えば水素化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム及び水酸化アルミニウムが挙げられる。反応を速やかに収率良く完結させるためには、溶媒中で反応させることが好ましい。溶媒としては、例えばメタノール及びエタノールが挙げられる。第4級ホスホニウムの水酸化物を合成するためには、例えば第3級ホスフィンとハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリールと無機アルカリとを溶媒に加えて反応溶液を調製し、この反応溶液をオートクレーブ中で、20〜150℃の範囲内の温度で1〜20時間反応させる。
第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩又は水酸化物と有機カルボン酸とを反応させる場合、例えば第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩又は水酸化物と有機カルボン酸とを含有する溶液を、例えば30〜170℃の範囲内の温度で1〜20時間反応させながら、副生成するアルコール、水、炭酸ガス及び必要に応じて溶媒を除去する。これにより、塩交換反応によって中間体が得られる。
中間体は、特に第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩と有機カルボン酸との塩交換反応で合成されることが好ましい。この場合、最終生成物であるホスホニウム塩(C)中へのハロゲンイオンなどのイオン性不純物の混入が抑制される。このため、ホスホニウム塩(C)を含有する組成物(X)から作製される封止材におけるマイグレーションの発生が抑制され、このため封止材を備える半導体装置は、高い信頼性を有する。
上述の通り、中間体とフェノール化合物(C3)とを混合することで、ホスホニウム塩(C)が得られる。そのためには、例えば中間体とフェノール化合物(C3)とを、メタノール、エタノール等の溶媒中で、50〜200℃で1〜20時間混合させてから、溶媒を除去する。溶媒を除去するためには、例えば溶液を減圧下又は常圧下で、50〜200℃で加熱する。これにより、ホスホニウム塩(C)が得られる。
ホスホニウム塩(C)中の不純物であるハロゲンイオン含量は、ホスホニウム塩(C)に対して5ppm以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)から作製される封止材におけるマイグレーションが特に抑制され、このため封止材を備える半導体装置が特に高い信頼性を有する。このような低いハロゲンイオン含量は、上記のようにホスホニウム塩(C)が特に第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩と有機カルボン酸との塩交換反応を含む方法で合成されることで達成可能である。
ホスホニウム塩(C)は、エポキシ化合物(A)100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。ホスホニウム塩(C)が1質量部以上であれば、組成物(X)に特に優れた硬化性が付与される。また、ホスホニウム塩(C)が20質量部以下であれば、組成物(X)に特に優れた成形時の流動性が付与される。ホスホニウム塩(C)が2〜15質量部の範囲内であれば特に好ましい。
組成物(X)は、本発明の目的を逸脱しない範囲において、ホスホニウム塩(C)に加えて、ホスホニウム塩(C)以外の硬化促進剤を含有してもよい。例えば組成物(X)は、ホスホニウム塩(C)以外の硬化促進剤として、トリアリールホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。ホスホニウム塩(C)を含めた硬化促進剤全体に対して、ホスホニウム塩(C)以外の硬化促進剤は50質量%以下であることが好ましい。
組成物(X)は、無機充填材(D)を含有することが好ましい。無機充填材(D)は、一般にエポキシ樹脂組成物に配合される材料を特に制限なく含有できる。例えば無機充填材(D)は、溶融シリカ、球状シリカ、球状溶融シリカ、破砕シリカ、結晶シリカ、球状アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等;チタン酸バリウム、酸化チタン等の高誘電率フィラー;ハードフェライト等の磁性フィラー;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、グアニジン塩、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、スズ酸亜鉛等の無機系難燃剤;並びに、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、雲母粉等からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。特に無機充填材(D)は、球状溶融シリカを含有することが好ましい。無機充填材(D)の平均粒径は3〜40μmの範囲内であることが好ましく、この場合、成形時の組成物(X)の流動性が特に良好である。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定される。
無機質充填材(D)の量は、組成物(X)全体に対して70〜95質量%の範囲内であることが好ましい。無機質充填材(D)が95質量%以下であると、組成物(X)の成形時の流動性が特に優れ、ワイヤースイープ、未充填等の不良が特に抑制される。無機質充填材(D)が70質量%以上であると、組成物(X)の成形時の溶融粘度が過剰に高くなることが抑制されることで、組成物(X)から作製される封止材におけるボイドなどによる外観不良が抑制される。無機質充填材(D)が組成物(X)全体に対して85〜92質量%の範囲内であれば特に好ましい。
組成物(X)は、シランカップリング剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、イオントラップ剤、カーボンブラック等の顔料、着色剤、低応力化剤、粘着付与剤、シリコーン可撓剤といった、添加剤を含有してもよい。
シランカップリング剤は、2個以上のアルコキシ基を有することが好ましい。シランカップリング剤は、例えばβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニルーγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、及びヘキサメチルジシラザンからなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
難燃剤は、ノボラック型ブロム化エポキシ樹脂、金属水酸化物等を含有できる。特に難燃剤は、三酸化二アンチモン及び五酸化二アンチモンのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。
離型剤は、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウム等を含有できる。例えば、離型剤は、カルナバワックス及びポリエチレン系ワックスのうち少なくとも一方を含有できる。
イオントラップ剤は、イオントラップ能力を有する公知の化合物を含有できる。例えば、イオントラップ剤は、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等を含有できる。
低応力化剤の例は、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等のブタジエン系ゴム、並びにシリコーン化合物を含む。
組成物(X)の製造方法について説明する。エポキシ化合物(A)、硬化剤(C)及びホスホニウム塩(C)、並びに必要により無機充填材(D)、添加剤等を混合してから、熱ロール、ニーダー等の混練機を用いて加熱状態で溶融混合し、続いて室温に冷却し、更に公知の手段で粉砕することで、粉末状の組成物(X)を得ることができる。この粉末状の組成物(X)を打錠することで、成形条件に見合った寸法及び質量を有するタブレット状の組成物(X)を得てもよい。
組成物(X)を熱硬化させて得られる硬化物は、半導体装置における半導体チップを封止する封止材として好適である。このような封止材を備える半導体装置について説明する。
半導体装置は、ICチップなどの半導体チップと、半導体チップを封止する封止材とを備える。封止材は、組成物(X)の硬化物である。半導体装置は、半導体チップを支持する基材を更に備えてもよい。基材は、例えばリードフレーム、配線板等である。封止材は、トランスファーモールド法、コンプレッションモールド法、インジェクションモールド法などの公知の成形法で作製されうる。
半導体装置を製造する場合、例えばまず基材に半導体チップを搭載する。半導体チップは、フリップチップボンディング、ワイヤボンディング等の方法で、基材に電気的に接続される。この半導体チップが搭載されている基材をトランスファーモールド用の金型にセットする。この状態で、組成物(X)を加熱して溶融させてから、この組成物(X)を金型に注入し、更に金型内で組成物(X)を加熱する。これにより、組成物(X)が熱硬化して、封止材が作製される。
トランスファーモールド法で封止材を作製する場合、例えば金型温度は160〜185℃の範囲内、成形時間は60〜120秒の範囲内である。なお、成形条件は、組成物(X)の組成等に応じて、適宜に変更してよい。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(1)組成物の調製
次の方法で、組成物である実施例及び比較例を調製した。無機充填材をカップリング剤で表面処理した。処理後の無機充填材と、硬化促進剤と、エポキシ樹脂と、フェノール化合物と、離型剤と、着色剤とを、ミキサーで十分混合することで混合物を得た。この混合物をニーダーで100℃の設定温度で溶融混練し、冷却後、粉砕機で粉砕してから打錠することで、タブレット状の組成物を得た。
組成物を調製するために使用した成分及びその量は後掲の表1に示す通りである。表1中では成分の量は質量部で示されている。また、表1中の「(A1)/(A)*100」の欄の数値は、組成物中のエポキシ化合物全体に対する、式(1)で示されるエポキシ化合物の量を示し、「(B1)/(B)*100」の欄の数値は、組成物中のフェノール化合物全体に対する、式(2)で示されるフェノール化合物の量を示す。表1に示す成分の詳細は次に示す通りである。
・エポキシ化合物1:三菱化学株式会社製、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、品番YX4000H。
・エポキシ化合物2:日本化薬株式会社製、式(1)に示す構造(nは平均1.0〜1.5、mは平均1.0〜3.0)を有するエポキシ化合物、品番NC3000。
・エポキシ化合物3:日本化薬株式会社製、式(1)においてnが平均2.0〜3.5、mが平均1.0〜3.0である構造を有する多官能ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、品番NC3500。
・フェノール化合物1:明和化成株式会社製、ノボラック型フェノール樹脂、品番H−3M。
・フェノール化合物2:明和化成株式会社製、式(2)に示す構造(nは平均1.0〜2.0、mは平均1.0〜3.0)を有するフェノール化合物、品番MEH7851SS。
・フェノール化合物3:明和化成株式会社製、式(2)に示す構造(nは平均1.5〜2.5、mは平均1.0〜3.0)を有するフェノール化合物、品番MEH7403H。
・硬化促進剤1:パナソニック株式会社製、TPP−Kとフェノールノボラック樹脂との反応物。
・硬化促進剤2:北興化学工業株式会社製、TPP−K。
・硬化促進剤3:サンアプロ株式会社製、MeTPP−5HIPA−THB PN樹脂MB RP−701。
・硬化促進剤4:サンアプロ株式会社製、MeTPP−PN樹脂塩。
・無機充填材:電気化学工業株式会社、球状溶融シリカ、品番FB940。
・カップリング剤:信越シリコーン製、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシ
・離型剤:大日化学工業株式会社製、カルナバワックス、品番F1−100。
シラン、品番KBM573。
・着色剤:三菱化学株式会社製、カーボンブラック、品番MA600。
表に示す硬化促進剤の更なる詳細について説明する。
硬化促進剤1:
TPP−Kと低粘度フェノールノボラック樹脂(明和化成工業株式会社、品番H−4)とを、窒素雰囲気下、170〜180℃で加熱し、得られた生成物を冷却してから粉砕することで得られた、ホスホニウムカチオン濃度10質量%の化合物である。
硬化促進剤2:
北興化学工業株式会社製の市販のテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(TPP−K)である。
硬化促進剤3:
第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩と有機カルボン酸との塩交換反応を含む方法で合成された下記式(5)に示すホスホニウム塩を、合成時に添加したフェノールノボラック樹脂でマスターバッチ化して得られ、フェノールノボラック樹脂の割合が15質量%である生成物を、目開き212μmのメッシュを通過させることで得られた粉体状の硬化促進剤である。
硬化促進剤4:
下記式(6)に示す構造を有し、融点110℃、ホスホニウムカチオン濃度15質量%である樹脂塩を粉砕してから、目開き212μmのメッシュを通過させることで得られた粉体状の硬化促進剤である。
硬化促進剤5:
第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩と有機カルボン酸との塩交換反応を含む方法で合成された下記式(7)に示すホスホニウム塩を、合成時に添加したフェノールノボラック樹脂でマスターバッチ化して得られ、フェノールノボラック樹脂の割合が15質量%である生成物を、目開き212μmのメッシュを通過させることで得られた粉体状の硬化促進剤である。
硬化促進剤6:
第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩と有機カルボン酸との塩交換反応を含む方法で合成された下記式(8)に示すホスホニウム塩を、合成時に添加したフェノールノボラック樹脂でマスターバッチ化して得られ、フェノールノボラック樹脂の割合が15質量%である生成物を、目開き212μmのメッシュを通過させることで得られた粉体状の硬化促進剤である。
(2)評価試験
(2−1)不純イオン分析
硬化促進剤1〜5を、95℃の熱水中に入れて15時間保持することで、抽出水を得た。この抽出水のイオンクロマトグラフ分析を行った。その結果に基づいて、各硬化促進剤における塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン及びナトリウムイオンの含有割合を算出した。なお、イオンが検出限界のために検出できなかった場合をNDとした。
(2−2)ベンゼン発生量評価
組成物を密封容器内で90℃で30分加熱してから、密封容器内の気体を採取し、この気体中のベンゼン量をヘッドスペースGC/MS法で測定した。
(2−3)スパイラルフロー長さ
株式会社神藤金属工業所製のトランスファー成形機ETA−D型に、ASTMD3123に準じたスパイラルフロー測定金型をセットし、これを用いて、製造直後の組成物のスパイラルフロー長さを、金型温度170℃、注入圧力6.9MPa、成形時間120秒の条件で測定した。
(2−4)スパイラルフロー保持率
組成物を、温度25℃下に96時間放置してから、組成物のスパイラルフロー長さを測定した。この放置後のスパイラルフロー長さの、製造直後のスパイラルフロー長に対する百分率を、スパイラルフロー保持率とした。
(2−5)ゲルタイム評価
組成物の170℃でのゲルタイムを測定した。測定は、株式会社JSR製のキュラストメータを用いて行った。なお、本評価試験におけるゲルタイムは、測定開始時からトルクが9.81mN・m(0.1kgf・cm)になるまでに要する時間である。
(2−6)ワイヤースイープ評価
銅合金製のリードフレームに半導体素子を搭載し、リードフレームと半導体素子とを銅製のワイヤで接続した。続いて、組成物をトランスファ成形法で金型温度175℃、注入圧力7.0MPa、硬化時間120秒の条件で成形することで封止材を作製した。これにより半導体装置としてDIP 16pinを作製した。この半導体装置内のワイヤを軟X線観察装置(日立建機製、マイクロフォーカスX線観察装置、型番:MF−100C)で観察し、その結果からワイヤの変形量を求めた。なお、変形量は、半導体チップ側のワイヤの接続位置とリードフレーム側のワイヤの接続位置とをつなぐ直線の長さに対する、この直線からのワイヤの最大曲点のズレ量の、百分比である。
(2−7)信頼性評価A
銅合金製のリードフレームに半導体素子を搭載し、リードフレームと半導体素子とを銅製のワイヤで接続した。続いて、組成物をトランスファ成形法で金型温度175℃、注入圧力7.0MPa、硬化時間120秒の条件で成形することで封止材を作製した。続いて、封止材を175℃で3時間加熱することで後硬化させた。これにより半導体装置としてDIP 16pinを作製した。この半導体装置を乾燥機に配置して200℃に2000時間保ちながら、半導体装置の端子間の電気抵抗を測定した。電気抵抗の測定値が初期値の1.5倍になるまでに要した時間を調査した。なお、2000時間経過しても電気抵抗値が初期値の1.5倍に達しなかった場合は、「良」と評価した。
(2−8)信頼性評価B
銅合金製のリードフレームに半導体素子を搭載し、リードフレームと半導体素子とを銅製のワイヤで接続した。続いて、組成物をトランスファ成形法で金型温度175℃、注入圧力7.0MPa、硬化時間120秒の条件で成形することで封止材を作製した。これにより半導体装置としてDIP 16pinを作製した。この半導体装置に、130℃、85%RHの条件でバイアスなし高度加速ストレス試験(UHAST)を2000時間実施しながら、半導体装置の端子間の電気抵抗を測定し、電気抵抗の測定値が初期値の1.5倍になるまでに要した時間を調査した。なお、2000時間経過しても電気抵抗値が初期値の1.5倍に達しなかった場合は、「良」と評価した。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で示されるエポキシ化合物(A1)を含有するエポキシ化合物(A)、
    下記式(2)で示されるフェノール化合物(B1)を含有するフェノール化合物(B)、及び
    下記式(3)で示されるホスホニウム塩(C)を含有する
    封止用エポキシ樹脂組成物、
    式(1)中のnは平均1.0〜3.5の範囲内であり、mは平均1.0〜9.0の範囲内であり、
    式(2)中のnは平均1.0〜2.0の範囲内であり、mは平均1.0〜9.0の範囲内であり、
    式(3)において、
    1〜R3は各々独立に炭素数6〜12のアリール基であり、
    4は炭素数1〜4のアルキル基であり、
    6及びR8は各々独立にカルボキシル基、又は水酸基であり、
    5及びR7は各々独立にH又は炭素数1〜4のアルキル基であり、
    9及びR11の各々はHであり、
    10はカルボキシル基、又は水酸基であり、
    p、q及びrは、p≧1、q≧1、r≧1、及びq≧rの関係を満たす数である。
  2. 前記式(3)中のR6及びR8は少なくとも一方はカルボキシル基である、
    請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  3. 前記式(3)中のR10は水酸基である、
    請求項1又は2に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  4. 無機充填材(D)を含有する、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  5. 前記エポキシ化合物(A)全体に対する、前記エポキシ化合物(A1)の量は、80〜100質量%の範囲内であり、
    前記フェノール化合物(B)全体に対する、前記フェノール化合物(B1)の量は、49質量%以下である、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  6. 前記エポキシ化合物(A)全体に対する、前記エポキシ化合物(A1)の量は、79質量%以下であり、
    前記フェノール化合物(B)全体に対する、前記フェノール化合物(B1)の量は、50〜100質量%の範囲内である、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  7. 前記ホスホニウム塩(C)のハロゲンイオン含量は、5ppm以下である、
    請求項1から6のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法であり、
    前記ホスホニウム塩(C)、第4級ホスホニウムのアルキル炭酸塩と有機カルボン酸との塩交換反応で合成することを含む、
    封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
  10. 半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材とを備え、前記封止材は、請求項9に記載の硬化物を含む
    半導体装置。
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