JP6739202B2 - 塩化ビニリデン系樹脂フィルムの製造方法および該製造方法に用いるパイル液の再生方法 - Google Patents
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Description
塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出して中空部を有する樹脂(パリソン)を得る押出工程と、
該パリソンを、該中空部に貯留された、水と相溶して一液化する界面活性剤(1)を含む透明なパイル液に接触させて冷却固化する工程と、
該冷却固化後のパリソンをインフレーションする工程を含み、
該透明なパイル液が白濁した場合には、該白濁したパイル液に、該白濁したパイル液が透明なパイル液になるまで、水と相溶して一液化する界面活性剤(2)を添加する工程を含むことを特徴とする。
塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出して中空部を有する樹脂(パリソン)を得る押出工程と、
該パリソンを、該中空部に貯留された、水と相溶して一液化する界面活性剤を含む透明なパイル液に接触させて冷却固化する工程と、
該冷却固化後のパリソンをインフレーションする工程を含み、
該透明なパイル液中の界面活性剤の全量が、該パイル液100質量%に対して、0.1質量%を超えて0.7質量%未満であることを特徴とする。
水と相溶して一液化する界面活性剤(1)を含む白濁したパイル液に、水と相溶して一液化する界面活性剤(2)を添加する処理を行う、白濁したパイル液の再生方法であり、
該白濁したパイル液は、塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出して中空部を有する樹脂(パリソン)の該中空部に貯留して、該パリソンと接触させることで該パリソンを冷却固化させる際に使用した液であることを特徴とする。
得られるフィルムが、塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムであることが好ましい。
また、本発明によれば、環境負荷低減に大きく寄与できる。
[塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム]
本実施形態の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは、塩化ビニリデン系樹脂組成物をダイから管状に溶融押出して円筒状に流出した中空部を有するパリソンを作製する工程(押出工程)と、水と相溶して一液化する界面活性剤を含む透明なパイル液を、パリソンの中空部(円筒状の内部)に貯留した状態で、該パリソンと接触させることで該パリソンを冷却固化する工程(冷却固化工程)と、冷却固化したパリソンをインフレーションして塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを得る工程(インフレーション工程)とを含むことで得られる。
該ラップフィルムの厚さは、特に制限はされないが、通常5〜20μmである。
本実施形態で用いる塩化ビニリデン系樹脂組成物は、具体的には、塩化ビニリデン系樹脂を含むものであり、必要に応じて、各種添加剤を含有していてもよい。該組成物は、例えば、塩化ビニリデン系樹脂と種々の添加剤とを、必要に応じてリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で均一に混合させて得ることができる。このようにして得られた樹脂組成物は、溶融状態として、押出工程で使用することができる。
なお、これらの添加剤は、製膜までのいずれの段階で添加してもよい。これらの添加剤は、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態で用いる塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン単位を含むものであれば特に制限されず、塩化ビニリデン単独重合体を使用しても良いし、塩化ビニリデン系共重合体を使用しても良い。塩化ビニリデン系共重合体としては、懸濁重合により得られたものを用いることが好ましく、例えば、塩化ビニリデンと塩化ビニリデンと共重合可能な少なくとも1種のエチレン系不飽和単量体との共重合体であることが好ましい。このようなエチレン系不飽和単量体としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びこれらの酸のアルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ビニルアルキルケトン、アクロレイン、アリルエステル、アリルエーテル、スチレン等のモノエチレン系不飽和単量体;ブタジエン、クロロプレン等のジエン系不飽和単量体及びこれらエチレン系不飽和単量体を二種以上共重合させた共重合体を例示することができる。
・可塑剤
可塑剤としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、グリセリンジアセチルモノラウレート(GDAML)、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルセバケート及びジアセチル化モノグリセライド(DALG)等が挙げられる。本発明では、該白濁したパイル液を透明なパイル液へ好適に処理できるとの理由から、可塑剤としては、ATBC、DALGを含むことが好ましい。
可塑剤は、単量体質量基準の含有量が通常500〜100000ppm、多くの場合5000〜80000ppmの割合で用いられる。
安定剤としては、従来、塩化ビニリデン系樹脂に含有されている安定剤を使用することができる。例えば、エポキシ化大豆油(ESBO)またはエポキシ化亜麻仁油(ELO)等のエポキシ化油;脂肪酸アルキルエステルのアミド誘導体;水酸化マグネシウム;ピロリン酸四ナトリウムなどが挙げられる。本発明では、該白濁したパイル液を透明なパイル液へ好適に処理できるとの理由から、安定剤としては、ESBOを含むことが好ましい。
安定剤は、単量体質量基準の含有量が通常300〜50000ppm、多くの場合1000〜40000ppmの割合で用いられる。
抗酸化剤としては、従来、塩化ビニリデン系樹脂に含有されている抗酸化剤を使用することができる。例えば、トリエチレングリコールビス−3−(3−ターシャリブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート等のフェノール系抗酸化剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のアルキル基の炭素数が12〜18のチオジプロピオン酸アルキルエステル;トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のホスファイト系抗酸化剤;などが挙げられる。好ましくはトリエチレングリコールビス−3−(3−ターシャリブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネートとチオジプロピオン酸アルキルエステルの併用である。
本実施形態では、透明なパイル液を用いた冷却固化工程を含む。パイル液は、パリソンの冷却固化や、パリソンの開口剤(抗ブロッキング剤)としての潤滑効果を機能し得る。また、パイル液は一液化しているので、塗布斑の発生が抑制される。
以下、図1を参照しつつ、塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムの製造方法について説明する。
冷却水(13)に投入されたパリソン(3)の内部には、循環チューブ(不図示)を介してパイル液(14)が循環して供給される。パイル液(14)は、界面活性剤が添加された透明な水道水が使用される。パリソン(3)は、第1ピンチローラー(15)に挟圧されて扁平となる。扁平なパリソン(3)の内部には、表面に付着する程度のパイル液(14)が残留している。第1ピンチローラー(15)を通過した扁平なパリソン(3)は、冷却水(13)内にあるうちは引き続き冷却され、その後、第2ピンチローラー(16)を通過する。
日本電飾工業(株)のHaze Meter(濁度計)NDH2000に液体測定用のセルをセットして、パイル液のHaze値をJIS K7136に準拠して測定し、15%以上を白濁、15%未満を透明と判断した。
ラップフィルムの密着性は、湯飲み茶碗にフィルムをパイル液が接触した面で覆い被せた後、フィルムの剥がれ具合を見て判断した。
評価:
〇:剥れなし。
×:剥れあり。
重合するモノマーとして、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)とを塩化ビニリデン:塩化ビニル=82:18(質量比)で混合し、更に添加剤として、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の100質量部に対して、ATBC、DALG、ESBOを合計で8質量部を加え、常法に従って重合し、塩化ビニリデン系樹脂組成物を作製した。ついで、真空ホッパーを備える径100mmの単軸押出機を使用して、温度190℃で環状に溶融押出し、温度10℃の冷却槽で急冷した後、室温でインフレーション二軸延伸を行って、厚み10μmのラップフィルムを得た。該製法において、パイル液は、ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製のエマール(登録商標)2Fペースト)を水道水に0.2質量%添加したものを用いた。
該製法において用いた41時間経過後のパイル液について、白濁の測定を行った。
界面活性剤濃度を0.3質量%とした以外は実施例1と同様に塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを作成し、41時間経過後のパイル液について評価した。
界面活性剤濃度を0.5質量%とした以外は実施例1と同様に塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを作成し、65時間経過後のパイル液について評価した。
界面活性剤濃度を0.6質量%とした以外は実施例1と同様に塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを作成し、41時間経過後のパイル液について評価した。
界面活性剤濃度を0.1質量%とした以外は実施例1と同様に塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを作成し、42時間経過後のパイル液について評価した。
界面活性剤濃度を0.7質量%とした以外は実施例1と同様に塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを作成し、41時間経過後のパイル液について評価した。
表1に各実施例および各比較例の結果を示す。
比較例1のパイル液に界面活性剤の濃度が0.2質量%になるまでラウリル硫酸ナトリウムを添加した結果、パイル液は透明になった。
該パイル液を用いて塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを作製し、評価したところ、得られたラップフィルムの密着性の評価結果は「○」であった。
比較例1のパイル液に界面活性剤の濃度が0.3質量%になるまでラウリル硫酸ナトリウムを添加した結果、パイル液は透明になった。
該パイル液を用いて塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを作製し、評価したところ、得られたラップフィルムの密着性の評価結果は「○」であった。
比較例1のパイル液に界面活性剤の濃度が0.6質量%になるまでラウリル硫酸ナトリウムを添加した結果、パイル液は透明になった。
該パイル液を用いて塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを作製し、評価したところ、得られたラップフィルムの密着性の評価結果は「○」であった。
本発明の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは食品等の簡易包装等のラップ用途のフィルムとして広く且つ有効に利用可能である。
2 押出機
3 パリソン(筒状樹脂)
4 冷却装置
5 筒状フィルム
6 延伸装置
7 緩和装置
8 巻取装置
9 ホッパー
10 スクリュー
11 ダイ
12 冷却バス
13 冷却水
14 パイル液
15 第1ピンチローラー
16 第2ピンチローラー
17 第3ピンチローラー
18 第4ピンチローラー
19 巻取りローラー
Claims (5)
- 塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出して中空部を有する樹脂(パリソン)を得る押出工程と、
該パリソンを、該中空部に貯留された、水と相溶して一液化する界面活性剤(1)を含む透明なパイル液に接触させて冷却固化する工程と、
該冷却固化後のパリソンをインフレーションする工程を含み、
該透明なパイル液が白濁した場合には、該白濁したパイル液に、該白濁したパイル液が透明なパイル液になるまで、水と相溶して一液化する界面活性剤(2)を添加する工程を含み、
前記白濁したパイル液は、JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が15%以上であり、
前記透明なパイル液は、JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が15%未満であり、
前記界面活性剤(2)を添加した後のパイル液中の界面活性剤(1)および(2)の全量が、該パイル液100質量%中に、0.1質量%を超えて0.7質量%未満である、
塩化ビニリデン系樹脂フィルムの製造方法。 - 前記界面活性剤(1)および/または(2)が、ラウリル硫酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の塩化ビニリデン系樹脂フィルムの製造方法。
- 得られるフィルムが、塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムである、請求項1または2に記載の塩化ビニリデン系樹脂フィルムの製造方法。
- 水と相溶して一液化する界面活性剤(1)を含む白濁したパイル液に、水と相溶して一液化する界面活性剤(2)を添加する処理を行う、白濁したパイル液の再生方法であり、
該白濁したパイル液は、塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出して中空部を有する樹脂(パリソン)の該中空部に貯留して、該パリソンと接触させることで該パリソンを冷却固化させる際に使用した液であり、
前記白濁したパイル液の、JIS K7136に準拠して測定したヘイズ値が15%以上であり、
前記界面活性剤(2)を添加した後のパイル液中の界面活性剤(1)および(2)の全量が、該パイル液100質量%中に、0.1質量%を超えて0.7質量%未満である、
ことを特徴とする白濁したパイル液の再生方法。 - 前記界面活性剤(1)および/または(2)が、ラウリル硫酸ナトリウムを含む、請求項4に記載の白濁したパイル液の再生方法。
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