JP6734678B2 - 量子型赤外線センサ - Google Patents

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Description

本発明は、量子型赤外線センサに関する。
一般に、赤外線センサは、熱型赤外線センサと量子型赤外線センサとに分けられる。熱型赤外線センサは、赤外線のエネルギーを熱として利用したセンサであり、赤外線の熱エネルギーによりセンサ自体の温度が上昇し、その温度上昇による効果(抵抗変化、容量変化、起電力、自発分極)を電気信号に変換する素子である。この熱型赤外線センサには、焦電型(PZT、LiTaO)、熱起電力型(サーモパイル、熱電対)、導電型(ボロメータ、サーミスタ)などがあり、感度に波長依存性がなく、冷却は不要である。しかし、応答速度が遅く、検出能力もあまり高くない。
一方、量子型赤外線センサは、半導体に赤外線が照射されると、その光量子によって発生する電子や正孔を利用するセンサであり、光導電型(HgCdTeなど)や光起電力型(InAsなど)がある。この量子型赤外線センサは、感度の波長依存性があり、高感度で、応答速度が速いという特長があるが、冷却する必要があり、ペルチェ素子やスターリングクーラーなどの冷却機構とともに用いるのが一般的であった。
量子型赤外線センサは、上述したように、光導電効果や光起電力効果等を利用し、赤外線を電気信号に変換する素子であり、一般に冷却して用いられるが、室温で動作可能な量子型赤外線センサも提案されている。例えば、特許文献1に記載の量子型赤外線センサは、基板上に設けられた化合物半導体層により赤外線を検知して電気信号を出力する化合物半導体センサ部と、この化合物半導体センサ部からの電気信号を演算する集積回路部とを備え、この化合物半導体センサ部と集積回路部とを同一パッケージ内に収納したものである。
これにより、電磁ノイズや熱ゆらぎの影響を受けにくくするとともに、室温での検知を可能とし、モジュールの小型化を可能にしたものである。ここで、化合物半導体センサ部の光吸収層の材料は、主としてInSb、InAsSb、InAsNなどである。
これらの量子型赤外線センサの応用例としては、人を検知することによって、照明やエアコン、TVなどの家電機器の自動オンオフを行う人感センサや、防犯用の監視センサなどが代表的な例である。最近、省エネルギーや、ホームオートメーション、セキュリテイシステム等への応用面で非常に注目されてきている。
国際公開第2005/027228号
特許文献1によれば、光吸収層の材料としてInAsSbを用いた場合、その混晶組成を変えることで、赤外線検出のピーク波長を7.3μmから10μmまで制御可能であることから、例えば10μm帯に大きな感度をもつ赤外線センサとして、人感センサなどへの応用が期待されている。
しかしながら、InAsSbはInSbと比較すると、良好な結晶を得るのが非常に難しく、赤外線センサにおいて、期待されているような良好な特性が得られていないのが実情である。特に、量子型赤外線センサにおいて、赤外線を吸収する光吸収層の結晶性は、赤外線センサの特性に非常に重要である。光吸収層の結晶性が低い(すなわち欠陥が多い)場合には、欠陥が、赤外線吸収で発生した電子、正孔が再結合してしまう要因となるため、キャリアのライフタイムの低下を招く。その結果、取り出せる光電流は減少してしまい、赤外線センサの特性が悪化する。従って、量子型の赤外線センサにおいては、光吸収層の結晶性を向上させることで、赤外線センサ自体の特性を向上させることが可能となる。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、良好な特性を有する量子型赤外線センサを実現することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の発明により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一態様に係る量子型赤外線センサは、基板と、前記基板の一方の面上に形成されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成され、InAsSb1−x(0<x<1)からなる第1の層と、前記第1の層上に形成された中間層と、前記中間層上に形成され、InAsSb1−y(0<y<1)からなる第2の層と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、良好な特性を有する量子型赤外線センサを実現することができる。
本発明の実施形態に係る化合物半導体積層体の構成例を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサの構成例を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサの製造方法を工程順に示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。また、本発明の実施形態は、以下で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<量子型赤外線センサ>
図1は、本発明の実施形態に係る化合物半導体積層体の構成例を示す断面図である。図1に示す化合物半導体積層体は、本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサを作製するための積層体である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る化合物半導体積層体は、基板1と、基板1の一方の面(以下、表面)上に形成されたバッファ層2と、バッファ層2上に形成された第1の層3と、第1の層3上に形成された中間層4と、中間層4上に形成された第2の層5と、第2の層5上に形成されたp型バリア層6と、p型バリア層6上に形成されたp型コンタクト層7とを備える。すなわち、基板1の上に、バッファ層2、第1の層3、中間層4、第2の層5、p型バリア層6、p型コンタクト層7が順次積層されている。
本発明の実施形態において、第1の層3は、InAsSb1−x(0<x<1)からなる。また、第2の層5は、InAsSb1−y(0<y<1)からなる。また、例えば、バッファ層2、第1の層3及び中間層4のうちの少なくとも一つの層の導電型はn型である。
図1に示す化合物半導体積層体は、各種の成膜方法を用いて形成される。例えば、分子線エピタキシー(MBE)法や有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法などは好ましい方法である。これらの方法により、化合物半導体積層体を形成することが可能である。
図2は、本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサの構成例を示す断面図である。図2に示すように、本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサは、図1を参照しながら説明した化合物半導体積層体を備える。
また、図2に示すように、この量子型赤外線センサは、基板1上に形成されて化合物半導体積層体を覆うパッシベーション層8と、このパッシベーション層8に形成された開口部を通して化合物半導体積層体に電気的に接続する電極9とを備える。
以下、本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサを構成する各構成部について、より具体的に説明する。
(1)基板
基板1は、一般に単結晶を成長できるものであれば特に制限されず、GaAs基板、Si基板などの単結晶基板などが好ましく用いられる。また、それらの単結晶基板がドナー不純物やアクセプタ不純物によって、n型やp型にドーピングされていても良い。
単結晶基板の面方位は、特に制限はないが、(100)、(111)、(110)等が好ましい。また、これらの面方位に対して1°から5°傾けた面方位を用いることもある。
基板1の表面上に形成された複数個の量子型赤外線センサを、電極9で直列接続して用いる場合、各量子型赤外線センサは電極9以外の部分では絶縁分離されていることが好ましい。従って、基板1は単結晶を形成できるものであって、かつ、半絶縁性か、または化合物半導体積層体部分と基板1とが絶縁分離可能であるような基板を用いることが好ましい。
さらに、基板1として、赤外線を透過するような材料を用いることにより、赤外線を基板1の裏面側から入射させることが可能となる。この場合、電極9により赤外光が遮られることがないため、素子の受光面積をより広く取ることができて好ましい。このような基板1の材料としては、半絶縁性のSiやGaAs等が好ましく用いられる。
通常行われるように、基板の表面を平坦化させ、清浄化させる目的で、基板と同じ材質の半導体を形成したものを本発明の「基板」として使用しても良い。GaAs基板上にGaAs層を形成したものを「基板」として使用することは、この最も代表的な例である。
(2)バッファ層
バッファ層2は基板1の表面上に形成される。ここで「基板1の表面上に形成され」とは、基板1の表面上にバッファ層2が直接形成されていてもよく、また、基板1とバッファ層2との間にその他の層が形成されていてもよい。本発明において、「〜上に形成され」という表現はすべてこの意味を表すものである。
バッファ層2は、その上に形成される第1の層3の結晶性を改善するための層として機能する。これにより、第1の層3上に形成される中間層4の欠陥を軽減することができる。その結果、中間層4による、第2の層5の欠陥低減効果をより顕著なものとすることができる。
バッファ層2の材料としては、InSb、InAs、InAsSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSb、AlSb、GaSb、AlGaSb、AlAsSb、GaAsSb、AlGaAsSbなどが挙げられる。バッファ層2は、これらのうちの一つの単層でも良いし、これらの複数の層が積層された多層でも良い。また、材料の組成を連続的或いは階段状に変化させながら、格子定数を第1の層3の組成に近づけるような、グレーデッドバッファ層を用いても良い。
バッファ層2の材料としては、第1の層3及び第2の層5と同じ構成元素を含むInAsz1Sb1−z1(0≦z1≦1)であることがより好ましい。これにより、第1の層3及び第2の層5の結晶性をより向上させることが可能となる。この場合、バッファ層2のAsの組成比z1は、第1の層3及び第2の層5のAsの組成比と同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
また、第1の層3及び第2の層5のAsの組成比が0.5よりも小さいような場合には、バッファ層2の材料としては、InSbであることがさらに好ましい。InSbは、良好な結晶性を得るのが容易であるため、本発明の効果をより得ることが可能となる。
また、第1の層3及び第2の層5のAsの組成比が0.5よりも大きいような場合には、バッファ層2の材料としては、InAsであることがさらに好ましい。InAsは、良好な結晶性を得るのが容易であるため、本発明の効果をより得ることが可能となる。
また、第1の層3及び第2の層5のAsの組成比が0.5よりも小さいような場合には、バッファ層2の材料としては、InSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、InAsSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSbのうちの一つの単層でも良いし、これらの複数の層が積層された多層であることも好ましい。これにより、第1の層3及び第2の層5としてAsの組成比が小さいInAsSbを形成する場合に、その結晶性を向上させることが可能となる。
また、第1の層3及び第2の層5のAsの組成比が0.5よりも大きいような場合には、バッファ層2の材料としては、InAs、AlSb、GaSb、AlGaSb、InAsSb、AlAsSb、GaAsSb、AlGaAsSbのうちの一つの単層でも良いし、これらの複数の層が積層された多層であることも好ましい。これにより、第1の層3及び第2の層5としてAsの組成比が大きいInAsSbを形成する場合に、その結晶性を向上させることが可能となる。
バッファ層2の膜厚は、薄すぎると第2の層5の結晶性改善の効果がなくなり、厚すぎると形成に時間がかかり、かつ、素子分離のためのメサエッチング工程が困難になるため、0.3μm以上1μm以下が好ましい。
赤外線を基板1の裏面側から入射させる場合、バッファ層2での光吸収を低減する目的で、バッファ層2をn型ドーピングしても良い。バッファ層2にある程度の高濃度ドーピングをすると、バースタイン‐モス効果が生じ、バッファ層2における光の無駄な吸収を防ぐことが可能になる。ドーピング量が多い程効果が得られるが、多すぎると結晶性の劣化を招くので、バッファ層2へのドーピング量は、1×1018/cm以上1×1019/cm以下が好ましい。n型ドーパントは何でも良いが、Si、Sn、S、Se、Te、Geなどが挙げられる。特にSnは活性化率が高く好ましい。
(3)第1の層
第1の層3は、バッファ層2上に形成され、InAsSb1−x(0<x<1)からなるものである。InAsSb1−xからなる層は、混晶系であることと、GaAs等の基板材料とは格子定数が大きく異なるため、基板1上に直接形成した場合には、その結晶性は非常に悪い。一方、本発明のように、基板1と第1の層3との間にバッファ層2を形成することで、第1の層3の結晶性を向上させることが可能となる。これにより、第1の層3上に形成される中間層4による、第2の層5の欠陥低減効果もより顕著となる。
第1の層3のInAsSb1−x(0<x<1)におけるAsの組成比xについては、特に限定されない。光を吸収する層の材料に応じて適宜最適な組成比xを選択することが可能である。第1の層3の膜厚は、薄すぎると中間層4による結晶性改善の効果がなくなり、厚すぎると形成に時間がかかり、かつ、素子分離のためのメサエッチング工程が困難になるため、0.3μm以上1μm以下が好ましい。
赤外線を基板1の裏面側から入射させる場合、第1の層3での光吸収を低減する目的で、第1の層3にn型ドーピングしても良い。第1の層3にある程度の高濃度ドーピングをすると、バースタイン‐モス効果が生じ、第1の層3における光の無駄な吸収を防ぐことが可能になる。ドーピング量が多い程効果が得られるが、多すぎると結晶性の劣化を招くので、第1の層3へのドーピング量は、1×1018/cm以上1×1019/cm以下が好ましい。n型ドーパントは何でも良いが、Si、Sn、S、Se、Te、Geなどが挙げられる。特にSnは活性化率が高く好ましい。
(4)中間層
中間層4は、第1の層3上に形成される。中間層4は、第1の層3の形成時に発生した欠陥が、膜厚方向に伝搬するのを防ぐ機能を有するものである。中間層4を形成することで、中間層4の上に形成される、第2の層5中の欠陥は低減され、第2の層5の結晶性を改善することができる。結晶性改善の効果は、中間層4の格子定数と、第1の層3及び第2の層5の各格子定数とが異なり、且つ、中間層4の膜厚が臨界膜厚以上のとき、顕著となる。
中間層4の材料は、第1の層3及び第2の層5と同じ構成元素を含むInAsz2Sb1−z2(0≦z2≦1)であることが好ましい。この場合、中間層4のAsの組成比z2は、第1の層3及び第2の層5のAsの組成比と異なる値であってもよい。
また、混晶系の材料を用いて良好な結晶性を保つのが難しい場合には、良好な結晶性を得るのが容易で、本発明の効果をより得ることのできるInSbやInAsが、中間層4の材料としてはより好ましい。
第1の層3及び第2の層5のAsの組成比が0.5よりも小さいような場合には、中間層4の材料としては、InSbが特に好ましい。
また、第1の層3及び第2の層5のAsの組成比が0.5よりも大きいような場合には、中間層4の材料としては、InAsが特に好ましい。
中間層4の膜厚は、薄すぎると第2の層5の結晶性改善の効果がなくなり、厚すぎると形成に時間がかかり、かつ、素子分離のためのメサエッチング工程が困難になるため、0.1μm以上1μm以下が好ましい。
赤外線を基板1の裏面側から入射させる場合、中間層4での光吸収を低減する目的で、中間層4にn型ドーピングしても良い。中間層4にある程度の高濃度ドーピングをすると、バースタイン‐モス効果が生じ、中間層4における光の無駄な吸収を防ぐことが可能になる。
また、高濃度にn型ドーピングされた中間層4は、抵抗も小さいので、電極形成時の接触抵抗を小さくすることができる。このことから、高濃度にn型ドーピングされた中間層4は、量子型赤外線センサのn型コンタクト層に用いるのが好ましい。また、第1の層3をn型コンタクト層に用いてもよい。
中間層4へのドーピング量が多い方が、中間層4での光吸収の低減、n型コンタクトとの接触抵抗低減の効果が得られるが、多すぎると結晶性の劣化を招く。それゆえ、中間層4へのn型ドーピング量は、1×1018/cm以上1×1019/cm以下が好ましい。n型ドーパントは何でも良いが、Si、Sn、S、Se、Te、Geなどが挙げられる。特にSnは活性化率が高く好ましい。
(5)第2の層
第2の層5は、中間層4上に形成され、InAsSb1−y(0<y<1)からなるものである。第2の層5は、中間層4の効果で欠陥が低減され、結晶性の改善された層であることが好ましい。この結晶性の良い第2の層5を量子型赤外線センサの光吸収層として用いることが好ましい。欠陥は、赤外線吸収で発生した電子、正孔が再結合してしまう要因となるため、キャリアのライフタイムの低下を招く。その結果、取り出せる光電流は減少してしまい、赤外線センサの特性が悪化する。欠陥が十分に低減された第2の層5を量子型赤外線センサの光吸収層として用いることで、良好な特性を有する量子型赤外線センサの実現が可能となる。
但し、第2の層5中の一部にn型ドーピングし、n型コンタクト層として用いても良い。この場合には、第2の層5上に光吸収層を形成することで、量子型赤外線センサとして動作することが可能となる。光吸収層の材料としては、InAsSbなどを用いることが可能である。n型コンタクト層である第2の層5の結晶性を向上させることで、その上に形成する光吸収層の結晶性を向上させることが可能となり、量子型赤外線センサの特性向上に寄与する。また、第2の層5へのドーピング量が多い方が、n型コンタクトの接触抵抗低減の効果が得られるが、多すぎると結晶性の劣化を招く。このため、第2の層5へのドーピング量は、1×1018/cm以上1×1019/cm以下が好ましい。n型ドーパントは何でも良いが、Si、Sn、S、Se、Te、Geなどが挙げられる。特にSnは活性化率が高く、好ましい。また、第2の層5中の高濃度にn型ドーピングされた箇所は、バースタイン‐モス効果で、無駄な光吸収も防ぐことができる。
第2の層5のInAsSb1−y(0<y<1)におけるAsの組成比yは、特に限定されないが、Asの組成比yを所望の値に設定することで、赤外線検出のピーク波長を、3μmから10μmの広範囲にわたり制御することが可能である。また、本発明により結晶性改善の効果が特に得られることの観点から、Asの組成比yは、0<y≦0.35または、0.65≦y<1の範囲が好ましい。一般的に、Asの組成比が50%付近に近くなるにつれて、InAsSbの結晶性は悪化する傾向があるため、0<y≦0.35または、0.65≦y<1の範囲では、特に本発明の効果が顕著となる。
第2の層5の膜厚は、光吸収量を増やすには厚くした方が良いが、厚すぎると形成に時間がかかり、かつ、素子分離のためのメサエッチング工程が困難になるため、0.5μm以上3μm以下が好ましい。また、第2の層5のInAsSb1−y(0<y<1)におけるAsの組成比yは、第1の層3のInAsSb1−x(0<x<1)におけるAsの組成比xと近い値である程、本発明の効果がより得られるため好ましい。特に、上記Asの組成比xと、上記Asの組成比yとが、−0.1≦x−y≦0.1の関係を満たす場合には、第2の層5の結晶性がより向上するため好ましい。また、上記Asの組成比xと、上記Asの組成比yとが同じ数値である場合(つまり、x−y=0)がより好ましい。
InAsSbはバンドギャップが非常に小さいため、真性キャリア密度が非常に大きい。このことは、拡散電流の増大や、オージェ再結合過程の促進をもたらす。これらの影響を低減するために、第2の層5にp型ドーピングしても良い。ドーピング量は適宜選択することができる。p型ドーパントとしては、Be、Zn、Cd、C、Mg、Geなどが好ましく用いられる。p型ドーパントとして、特に、Znは活性化率が高く、毒性も低いため、より好ましく用いられる。
(6)p型バリア層
本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサは、第2の層5上にp型バリア層6をさらに備えてもよい。第2の層5を光吸収層として用いる場合には、p型バリア層6は拡散電流を防ぐための層として機能する。従って、基板1上から見た場合に、p型バリア層6は光吸収層よりも上(すなわち、光吸収層よりも遠い側)に形成される。この場合、p型バリア層6は、光吸収層である第2の層5に対し、十分な伝導帯のバンドオフセットが取れればよく、バンドギャップが広い材料を選択することが好ましい。
p型バリア層6の材料としては、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSbなどが挙げられるが特にこれには限定されない。光吸収層とp型バリア層6の格子定数が異なる場合、p型バリア層6の膜厚が臨界膜厚を超えてしまうと、結晶性の劣化を招くので、材料選択の際には、伝導帯のバンドオフセット、結晶性の劣化の効果の両方を考慮の上、適宜選択される。
p型バリア層6の膜厚は、センサの抵抗を下げるために、なるべく薄い方が良いが、電極と光吸収層との間にトンネルリークが発生しないだけの膜厚が必要である。このため、p型バリア層6の膜厚は0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.02μm以上である。なお、p型バリア層6の膜厚の上限については、光吸収層とp型バリア層6との格子定数との差によって決まる臨界膜厚によって制限される。
p型バリア層6では、拡散電流を防ぐことの他、光吸収層で発生した正孔が、p型バリア層6側へ流れ込むことも重要である。そのため、p型バリア層6には十分なp型ドーピングをする必要があり、ドーピング濃度は1×1018/cm以上が好ましい。p型ドーパントとしては、Be、Zn、Cd、C、Mg、Geなどが好ましく用いられる。p型ドーパントとして、特に、Znは活性化率が高く、毒性も低いため、より好ましく用いられる。
(7)p型コンタクト層
本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサは、p型バリア層6上にp型コンタクト層7をさらに備えてもよい。p型コンタクト層7は、光吸収層が赤外線を吸収することにより発生した光電流を取り出すための、電極とのコンタクト層7として機能する。p型コンタクト層7の材料としては、InSb、InAsSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSbなどが挙げられる。p型コンタクト層7のシート抵抗は、熱ノイズであるジョンソンノイズの原因となるため、シート抵抗はできるだけ小さい方が良い。その観点からは、p型コンタクト層7の材料は、InSb及びInAsSbであることが好ましい。
p型コンタクト層7の膜厚は、シート抵抗を下げるために、なるべく厚い方が好ましい。しかし、厚すぎると形成に時間がかかり、かつ、素子分離のためのメサエッチング工程が困難になる。このため、p型コンタクト層7の膜厚は0.1μm以上1μm以下が好ましい範囲として挙げられる。
p型コンタクト層7には、コンタクト抵抗を下げるために十分なp型ドーピングがされることが必要である。そのため、p型ドーピング濃度としては、1×1018/cm以上が好ましい。またp型ドーパントとしては、Be、Zn、Cd、C、Mg、Geなどが好ましく用いられる。p型ドーパントとして、特に、Znは活性化率が高く、毒性も低いため、より好ましく用いられる。
(8)パッシベーション層
パッシベーション層8は、絶縁性の膜であればよい。パッシベーション層として、シリコン窒化膜(Si)、シリコン酸化膜(SiO)又はシリコン酸化窒化膜(SiON)などが挙げられる。
(9)電極
電極9は、例えば、p型コンタクト層7に電気的に接続する第1の電極と、中間層4に電気的に接続する第2の電極とを有する。電極9は、導電性の膜で構成されていればよい。電極9を構成する導電性の膜として、Au/Tiや、Au/Cr等の積層膜などが挙げられる。なお、上記の積層膜では、Auが上層の膜で、Ti又はCrが下層の膜である。
<量子型赤外線センサの製造方法>
本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサの製造方法を説明する。本発明の実施形態では、図1に示した化合物半導体積層体を用いて、図2に示した量子型赤外線センサを作製することが可能である。
図3は、本発明の実施形態に係る量子型赤外線センサの製造方法を工程順に示す断面図である。図3(a)に示すように、まずは、基板1の表面上に、MBE(分子線エピタキシー)法を用いて化合物半導体積層体を形成後、酸によるウェットエッチングまたはイオンミリング法などを用いて、p型コンタクト層7と、p型バリア層6と、第2の層5とを順次、部分的に除去して、中間層4とコンタクトを取るための段差形成を行う。
次いで、図3(b)に示すように、段差形成がされた化合物半導体積層体に対して、素子分離のためのメサエッチングを行う。ここでは、段差の底部に現れている中間層4と、第1の層3と、バッファ層2とを順次、部分的に除去する。これにより、素子分離領域では、基板1の表面が露出する。
次いで、SiNやSiOなどのパッシベーション層8を形成して、基板1の表面及び素子分離された化合物半導体積層体の表面及び側面を覆う。次いで、図3(c)に示すように、パッシベーション層8のうち電極9を形成する部分をエッチングして除去し、貫通穴11を形成する。(すなわち、窓開けする)。そして、この貫通穴11を埋め込むように、Au/TiやAu/Cr等の電極9を形成する。電極9はリフトオフ法などで形成する。このようにして、図2に示した量子型赤外線センサを作製する。
本発明の実施形態では、基板1上に作製した複数の量子型赤外線センサを、電気的に直列接続する構造とすることも好ましい。このような構造とすることで、単一の量子型赤外線センサの出力を足し合わせることが可能となり、出力を飛躍的に向上させることができる。
量子型赤外線センサは、この量子型赤外線センサから出力される電気信号を処理する集積回路部と、同一パッケージ内にハイブリッドに形成しても良い。量子型赤外線センサと集積回路部との電気的な接続法は特に限定されない。パッケージに関しても、赤外線の透過率が高い材料であれば特に制限はなく、中空パッケージなどを用いても良い。また、特定の光の影響を完全に避けるため、量子型赤外線センサの受光面(例えば、基板1の裏面側)にフィルタを取り付けてもよい。さらに、検知する距離や方向性を定め、集光性をより高めるため、量子型赤外線センサの受光面(例えば、基板1の裏面側)にフレネルレンズを設けてもよい。
<実施形態の効果>
本発明の実施形態によれば、バッファ層2と、InAsSb1−x(0<x<1)からなる第1の層3と、中間層4と、InAsSb1−y(0<y<1)からなる第2の層5と、を備える。基板1と第1の層3との間にバッファ層2が配置されることにより、第1の層3上に形成される中間層4の欠陥を軽減することができる。その結果、中間層4による、第2の層5の欠陥低減効果をより顕著なものとすることができ、第2の層5の結晶性を良好なものとすることができる。
これにより、第2の層5が光吸収層として用いられる量子型赤外線センサでは、光吸収層の欠陥が少なく、赤外線吸収で発生した電子、正孔の再結合を抑制することができる。それゆえ、キャリアのライフタイムの低下を防ぐことができ、取り出せる光電流の減少を抑制することができる。したがって、良好な特性を有する量子型赤外線センサを実現することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、その発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは言うまでもない。
(実施例1)
MBE法により、半絶縁性のGaAs単結晶基板上に、バッファ層と、第1の層と、中間層と、第2の層と、p型バリア層と、p型コンタクト層とを順次積層した。この積層工程では、バッファ層としてSnを7×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成した。また、第1の層として、Snを7×1018/cmドーピングしたInAs0.038Sb0.962層を0.5μm形成した。また、中間層としてSnを7×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成した。また、第2の層として、ノンドープのInAs0.038Sb0.962層を2μm形成した。また、p型バリア層として、Znを3×1018/cmドーピングしたAl0.2In0.8Sb層を0.02μm形成した。また、p型コンタクト層として、Znを3×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、380arcsecであった。
この化合物半導体積層体を用いて、量子型赤外線センサを作製した。
ここでは、中間層であるInSb層をn型コンタクト層として用い、第2の層を光吸収層として用いた。
まず、n型コンタクト層とのコンタクトをとるための段差形成を酸によるウェットエッチングまたはイオンミリング法などを用いて行った。次いで、段差形成がされた化合物半導体積層体に対して、素子分離のためのメサエッチングを行った。その後、全面(GaAs基板及びGaAs基板上に形成された化合物半導体積層体)をSiNパッシベーション層で覆った。次いで、形成されたSiNパッシベーション層上で、電極形成部分のみ窓開けを行った。次いで、n型コンタクト層の段差部分上及びp型コンタクト層上の2箇所に、Au/TiをEB(電子ビーム)蒸着し、リフトオフ法により電極を形成した。
(比較例1)
比較例1は、実施例1のバッファ層と中間層とを省略し、第1の層の膜厚を2倍、すなわち1μmにした。また、第1の層をn型コンタクト層として用いた。これ以外は、実施例1と同様の条件で、化合物半導体積層体及び量子型赤外線センサを作製した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、590arcsecであった。比較例1は、実施例1と比較して、結晶性が悪いことが理解される。すなわち、バッファ層、中間層を挿入することで、結晶性改善の効果が得られることが理解される。
(比較例2)
比較例2は、実施例1のバッファ層を省略したこと以外は実施例1と同様の条件で、化合物半導体積層体及び量子型赤外線センサを作製した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、450arcsecであった。比較例2は、中間層を挿入することで、比較例1よりは結晶性は改善しているものの、バッファ層にInSbを用いた実施例1と比較すると、結晶性が悪いことがわかる。
(実施例2)
MBE法により、半絶縁性のGaAs単結晶基板上に、バッファ層と、第1の層と、中間層と、第2の層と、p型バリア層と、p型コンタクト層とを順次積層した。この積層工程では、バッファ層としてSnを7×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成した。また、第1の層として、Snを7×1018/cmドーピングしたInAs0.15Sb0.85層を0.5μm形成した。また、中間層として、Snを7×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成した。また、第2の層として、ノンドープのInAs0.15Sb0.85層を2μm形成した。また、p型バリア層として、Znを3×1018/cmドーピングしたAl0.2In0.8Sb層を0.02μm形成した。また、p型コンタクト層として、Znを3×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、490arcsecであった。
この化合物半導体積層体を用いて、量子型赤外線センサを作製した。
ここでは、中間層であるInSb層をn型コンタクト層、第2の層を光吸収層として用いた。
まず、n型コンタクト層とのコンタクトをとるための段差形成を酸によるウェットエッチングまたはイオンミリング法などを用いて行った。次いで、段差形成がされた化合物半導体積層体に対して、素子分離のためのメサエッチングを行った。その後、全面(GaAs基板及びGaAs基板上に形成された化合物半導体積層体)をSiNパッシベーション層で覆った。次いで、形成されたSiNパッシベーション層上で、電極形成部分のみ窓開けを行った。次いで、n型コンタクト層の段差部分上及びp型コンタクト層上の2箇所に、Au/TiをEB蒸着し、リフトオフ法により電極を形成した。
(比較例3)
比較例3は、実施例2のバッファ層と中間層を省略し、第1の層の膜厚を2倍、すなわち1μmにした。また、第1の層をn型コンタクト層として用いた。これ以外は実施例2と同様の条件で、化合物半導体積層体及び量子型赤外線センサを作製した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、1040arcsecであった。比較例3は、実施例2と比較して、結晶性が悪いことが理解される。すなわち、バッファ層、中間層を挿入したことで、結晶性改善の効果が得られることが理解される。
(比較例4)
比較例4は、実施例2のバッファ層を省略した以外は実施例2と同様の条件で、化合物半導体積層体及び量子型赤外線センサを作製した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、750arcsecであった。比較例4は、中間層を挿入したことで、比較例3よりは結晶性は改善しているものの、バッファ層も挿入した実施例2と比較すると、結晶性が悪いことが理解される。
(実施例3)
MBE法により、半絶縁性のGaAs単結晶基板上に、バッファ層と、第1の層と、中間層と、第2の層と、p型バリア層と、p型コンタクト層とを順次積層した。この積層工程では、バッファ層として、Snを7×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成し、更にその上に、Asの組成比を0.1から0.25まで連続的に変化させ、同じくSnを7×1018/cmドーピングしたグレーデッドInAsSb層を0.4μm形成した。また、第1の層として、Snを7×1018/cmドーピングしたInAs0.31Sb0.69層を0.5μm形成した。また、中間層として、Snを7×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成した。また、第2の層として、ノンドープのInAs0.31Sb0.69層を2μm形成した、また、p型バリア層として、Znを3×1018/cmドーピングしたAl0.2In0.8Sb層を0.02μm形成した。また、p型コンタクト層として、Znを3×1018/cmドーピングしたInSb層を0.5μm形成した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、750arcsecであった。
この化合物半導体積層体を用いて、量子型赤外線センサを作製した。
ここでは、中間層であるInSb層をn型コンタクト層、第2の層を光吸収層として用いた。
まず、n型コンタクト層とのコンタクトをとるための段差形成を酸によるウェットエッチングまたはイオンミリング法などを用いて行った。次いで、段差形成がされた化合物半導体積層体に対して、素子分離のためのメサエッチングを行った。その後、全面(GaAs基板及びGaAs基板上に形成された化合物半導体積層体)をSiNパッシベーション層で覆った。次いで、形成されたSiNパッシベーション層上で、電極形成部分のみ窓開けを行った。次いで、n型コンタクト層の段差部分上及びp型コンタクト層上の2箇所に、Au/TiをEB蒸着し、リフトオフ法により電極を形成した。
(比較例5)
比較例5は、実施例3のバッファ層と中間層を省略し、第1の層の膜厚を2倍、すなわち1μmにした。また、第1の層をn型コンタクト層として用いた。これ以外は実施例3と同様の条件で、化合物半導体積層体及び量子型赤外線センサを作製した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、1200arcsecであった。比較例5は、実施例3と比較して、結晶性が悪いことが理解される。すなわち、バッファ層として、InSbとグレーデッドInAsSb層の積層構造、中間層としてInSbを用いることで、結晶性改善の効果を得ることができることが理解される。
(比較例6)
比較例6は、実施例3のバッファ層を省略した以外は実施例3と同様の条件で、化合物半導体積層体及び量子型赤外線センサを作製した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、1050arcsecであった。比較例6は、中間層としてInSbを用いたことで、比較例5よりは結晶性は改善しているものの、バッファ層にInSbとグレーデッドInAsSb層の積層構造を用いた実施例3と比較すると、結晶性が悪いことが理解される。
(実施例4)
MBE法により、半絶縁性のGaAs単結晶基板上に、バッファ層と、第1の層と、中間層と、第2の層と、p型バリア層と、p型コンタクト層とを順次積層した。この積層工程では、バッファ層としてSnを7×1018/cmドーピングしたInAs層を0.5μm形成した。第1の層として、Snを7×1018/cmドーピングしたInAs0.8Sb0.2層を0.5μm形成した。中間層として、Snを7×1018/cmドーピングしたInAs層を0.5μm形成した。第2の層として、ノンドープのInAs0.8Sb0.2層を2μm形成した。p型バリア層として、Znを3×1018/cmドーピングしたAl0.2In0.8As0.8Sb0.2層を0.02μm形成した。p型コンタクト層として、Znを3×1018/cmドーピングしたInAs層を0.5μm形成した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、600arcsecであった。
この化合物半導体積層体を用いて、量子型赤外線センサを作製した。
ここでは、中間層であるInAs層をn型コンタクト層、第2の層を光吸収層として用いた。
まず、n型コンタクト層とのコンタクトをとるための段差形成を酸によるウェットエッチングまたはイオンミリング法などを用いて行った。次いで、段差形成がされた化合物半導体積層体に対して、素子分離のためのメサエッチングを行った。その後、全面(GaAs基板及びGaAs基板上に形成された化合物半導体積層体)をSiNパッシベーション層で覆った。次いで、形成されたSiNパッシベーション層上で、電極形成部分のみ窓開けを行った。次いで、n型コンタクト層の段差部分上及びp型コンタクト層上の2箇所に、Au/TiをEB蒸着し、リフトオフ法により電極を形成した。
(比較例7)
比較例7は、実施例4のバッファ層と中間層を省略し、第1の層の膜厚を2倍、すなわち1μmにした。また、第1の層をn型コンタクト層として用いた。これ以外は実施例4と同様の条件で、化合物半導体積層体及び量子型赤外線センサを作製した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、1100arcsecであった。比較例7は、実施例4と比較して、結晶性が悪いことが理解される。すなわち、バッファ層、中間層としてInAsを用いることで、結晶性改善の効果を得ることができる。
(比較例8)
比較例8は、実施例4のバッファ層を省略した以外は実施例4と同様の条件で、化合物半導体積層体及び量子型赤外線センサを作製した。
光吸収層として用いる第2の層のX線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、850arcsecであった。比較例8は、中間層としてInAsを用いたことで、比較例7よりは結晶性は改善しているものの、バッファ層にInAs層を用いた実施例4と比較すると、結晶性が悪いことが理解される。
(対比)
実施例1〜4及び比較例1〜8について、第1の層におけるAsの組成比x、第2の層におけるAsの組成比y、バッファ層の有無、中間層の有無、ロッキングカーブの半値幅をそれぞれ表1、2に示す。
Figure 0006734678
Figure 0006734678
表1、2から、例えば実施例1と、比較例1、2とのように、第1の層(InAsSb1−x層)が互いに同一組成であり、かつ、第2の層(InAsSb1−y層)も互いに同一組成である場合、バッファ層及び中間層の両方が存在することによって、第2の層の結晶性が著しく改善されていることがわかる。
(付記)
以上、本発明について実施形態及び実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態及び実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に多様な変更または改良を加えることが可能であり、また、上記実施形態及び実施例を任意に組み合わせてもよい。その様な変更等が加えられた態様も本発明の技術的範囲に含まれ得る。
1 基板
2 バッファ層
3 第1の層
4 中間層
5 第2の層
6 p型バリア層
7 p型コンタクト層
8 パッシベーション層
9 電極
11 貫通穴

Claims (7)

  1. 基板と、
    前記基板の一方の面上に形成されたInSbからなるバッファ層と、
    前記バッファ層上に形成され、InAsSb1−x(0<x<1)からなる第1の層と、
    前記第1の層上に形成されたInSbからなる中間層と、
    前記中間層上に形成され、InAsSb1−y(0<y<1)からなる第2の層と、
    を備え、
    前記第1の層の厚みが、0.3μm以上1μm以下であり、
    前記中間層の厚みが、0.1μm以上1μm以下であり、
    前記第2の層の厚みが0.5μm以上3μm以下である、量子型赤外線センサ。
  2. 前記バッファ層、前記第1の層及び前記中間層のうちの少なくとも一つの層の導電型はn型であり、
    前記第2の層上に形成されたp型バリア層と、
    前記p型バリア層上に形成されたp型コンタクト層と、をさらに備える請求項1に記載の量子型赤外線センサ。
  3. 基板と、
    前記基板の一方の面上に形成されたバッファ層と、
    前記バッファ層上に形成され、InAs Sb 1−x (0<x<1)からなる第1の層と、
    前記第1の層上に形成されたInSbからなる中間層と、
    前記中間層上に形成され、InAs Sb 1−y (0<y<1)からなる第2の層と、
    を備え、
    前記第1の層の厚みが、0.3μm以上1μm以下であり、
    前記中間層の厚みが、0.1μm以上1μm以下であり、
    前記第2の層の厚みが0.5μm以上3μm以下であり、
    前記バッファ層が、
    InSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、InAsSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSbのうちの何れか一つの単層からなる、又は、
    InSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、InAsSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSbのうちの複数が積層された多層からなる、量子型赤外線センサ。
  4. 前記InAsSb1−x(0<x<1)におけるAsの組成比xと、
    前記InAsSb1−y(0<y<1)におけるAsの組成比yとが、
    −0.1≦x−y≦0.1
    の関係を満たす請求項1から請求項の何れか一項に記載の量子型赤外線センサ。
  5. 前記InAsSb1−x(0<x<1)におけるAsの組成比xと、
    前記InAsSb1−y(0<y<1)におけるAsの組成比yとが、同じ数値である請求項1から請求項の何れか一項に記載の量子型赤外線センサ。
  6. 前記基板が、GaAsまたはSiである請求項1から請求項の何れか一項に記載の量子型赤外線センサ。
  7. 前記バッファ層の厚みが0.3μm以上1μm以下である請求項1から請求項の何れか一項に記載の量子型赤外線センサ。
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