JP6750996B2 - 赤外線センサ - Google Patents

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Description

本発明は赤外線センサに関する。
赤外線センサは、光導電効果や光起電力効果等を利用し、赤外線を電気信号に変換する素子であり、一般に冷却して用いられるが、室温で動作可能な量子型赤外線センサも提案されている。
例えば、特許文献1に記載された量子型赤外線センサは、基板上に設けられた化合物半導体層により赤外線を検知して電気信号を出力する化合物半導体センサ部と、この化合物半導体センサ部からの電気信号を演算する集積回路部とを備え、この化合物半導体センサ部と集積回路部とを同一パッケージ内に収納したものである。化合物半導体センサ部の光吸収層(活性層)の材料としては、InSb、InAsSb、InAsNなどが使用されている。
赤外線センサの光吸収層の材料としてInAsSbを用いた場合、InAsSbのAs組成比を変えることで、赤外線検出のピーク波長を3μmから10μmの範囲で制御可能である。
特許文献2には、InAsSb(バッファ層)/InAs(中間層)/InAsSb(光吸収層)構造の化合物半導体からなる赤外線センサについて、InAsの膜厚を臨界膜厚より大きくすることでInAsSbからなる光吸収層の結晶性を改善し、検出特性を向上することが記載されている。特許文献2の赤外線センサでは、光吸収層の上にAlInAsSbからなるp型バリア層を設けている。
国際公開第2005/027228号パンフレット 特開2015−90901号公報
赤外線センサには、検出特性の向上と量産性の向上の両方が求められているが、特許文献1および2に記載された赤外線センサには、この点で改善の余地がある。
本発明の課題は、検出特性と量産性の両方が改善された赤外線センサを提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の第一態様の赤外線センサは、基板と、基板上に形成されたn型コンタクト層と、AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなりn型コンタクト層上に形成されたn型バリア層と、InAsxSb(1-x)(0≦x≦1)を主成分とする化合物半導体層からなりn型バリア層上に形成された活性層と、AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなり活性層上に形成されたp型バリア層と、を備える。
上記課題を解決するために、本発明の第二態様の赤外線センサは、基板と、基板上に形成されたp型コンタクト層と、AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなりp型コンタクト層上に形成されたp型バリア層と、InAsxSb(1-x)(0≦x≦1)を主成分とする化合物半導体層からなりp型バリア層上に形成された活性層と、AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなり活性層上に形成されたn型バリア層と、を備える。
なお、「○○を主成分とする化合物半導体層」とは「ドーパントおよび成膜時に不可避的に混在する不純物以外には、実質的に○○からなる化合物半導体層」を意味する。
本発明の第一態様および第二態様によれば、検出特性と量産性の両方が改善された赤外線センサが得られる。
第一態様の赤外線センサの構成を示す断面図である。 第二態様の赤外線センサの構成を示す断面図である。 第一実施形態の赤外線センサの構成を示す断面図である。 第二実施形態の赤外線センサの構成を示す断面図である。
〔第一態様〕
<構成>
図1に示すように、第一態様の赤外線センサは、基板1と、基板1の一方の面(基板上)に形成されたn型コンタクト層2と、n型コンタクト層2の基板とは反対側の面(n型コンタクト層上)に形成されたn型バリア層3と、n型バリア層3のn型コンタクト層2とは反対側の面(n型バリア層上)に形成された活性層4と、活性層4のn型バリア層3とは反対側の面(活性層上)に形成されたp型バリア層5と、を備えている。n型バリア層3は、AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなる。活性層4は、InAsxSb(1-x)(0≦x≦1)を主成分とする化合物半導体層からなる。p型バリア層5は、AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなる。
<作用、効果>
第一態様の赤外線センサによれば、AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなるp型バリア層と、AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなるn型バリア層と、を備えることで、活性層とp型バリア層との伝導体のバンドオフセット、活性層とn型バリア層との価電子帯のバンドオフセットを十分大きくすることができる。
さらに、p型バリア層の材料としてAlGaSbを主成分とする化合物半導体を、n型バリア層の材料としてAlInAsSbを主成分とする化合物半導体を用いることで、n型ドーパントおよびp型ドーパントの両方としてSiが使用可能となる。Siは、蒸気圧が低いため制御性が容易であるとともに、毒性のないIV族元素である。
これにより、第一態様の赤外線センサは、バリア層によるバリア機能が向上しているとともに、各層を形成する際のドーパント制御性に優れている。つまり、本発明の第一態様によれば、検出特性と量産性の両方が改善された赤外線センサが得られる。
<好ましい形態>
第一態様の赤外線センサにおいて、n型コンタクト層が含むn型ドーパント、n型バリア層が含むn型ドーパント、およびp型バリア層が含むp型ドーパントは、Siであることが好ましい。
第一態様の赤外線センサは、基板がGaAs基板であり、AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなり基板とn型コンタクト層との間に形成されたバッファ層をさらに備えることが好ましい。
第一態様の赤外線センサは、GaSbまたはGaInSbを主成分とする化合物半導体層からなりp型バリア層上に形成されたp型コンタクト層を、さらに備えることが好ましい。p型コンタクト層が含むp型ドーパントはSiであることが好ましい。
〔第二態様〕
<構成>
図2に示すように、第一態様の赤外線センサは、基板1と、基板1の一方の面(基板上)に形成されたp型コンタクト層6と、p型コンタクト層6の基板とは反対側の面(p型コンタクト層上)に形成されたp型バリア層5と、p型バリア層5のp型コンタクト層6とは反対側の面(p型バリア層上)に形成された活性層4と、活性層4のp型バリア層5とは反対側の面(活性層上)に形成されたn型バリア層3と、を備えている。n型バリア層3は、AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなる。活性層4は、InAsxSb(1-x)(0≦x≦1)を主成分とする化合物半導体層からなる。p型バリア層5は、AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなる。
<作用、効果>
第二態様の赤外線センサによれば、AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなるp型バリア層と、AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなるn型バリア層と、を備えることで、活性層とp型バリア層との伝導体のバンドオフセット、活性層とn型バリア層との価電子帯のバンドオフセットを十分大きくすることができる。
さらに、p型バリア層の材料としてAlGaSbを主成分とする化合物半導体を、n型バリア層の材料としてAlInAsSbを主成分とする化合物半導体を用いることで、n型ドーパントおよびp型ドーパントの両方としてSiが使用可能となる。Siは、蒸気圧が低いため制御性が容易であるとともに、毒性のないIV族元素である。
これにより、第二態様の赤外線センサは、バリア層によるバリア機能が向上しているとともに、各層を形成する際のドーパント制御性に優れている。つまり、本発明の第二態様によれば、検出特性と量産性の両方が改善された赤外線センサが得られる。
<好ましい形態>
第二態様の赤外線センサにおいて、p型コンタクト層が含むp型ドーパント、p型バリア層が含むp型ドーパント、n型バリア層が含むn型ドーパントは、Siであることが好ましい。
第二態様の赤外線センサは、基板がGaAs基板であり、p型コンタクト層がGaSbを主成分とする化合物半導体層からなることが好ましい。
第二態様の赤外線センサは、InAsSbを主成分とする化合物半導体層からなりn型バリア層上に形成されたn型コンタクト層を、さらに備えることが好ましい。n型コンタクト層のn型ドーパントはSiであることが好ましい。
〔第一態様および第二態様に共通〕
<知見に至る経緯>
良好な特性を有する赤外線センサを実現するためには、バリア層が重要な役割を果たす。バリア層は活性層に接して形成される層であり、拡散電流を防ぐ機能を有する。p型バリア層は、活性層との伝導帯のバンドオフセットが十分大きいことが好ましい。n型バリア層は、活性層との価電子帯のバンドオフセットが十分大きいことが好ましい。電子はホールに比べ拡散長も長いことから、特にp型バリア層においては、バリア層の膜厚も十分に厚いことが好ましい。
バリア層の材料としては、活性層よりもバンドギャップの大きいものを選択することが考えられるが、活性層の材料にAlやGaを一定量加え、その混晶組成を大きくすることでバンドギャップ、伝導帯のバンドオフセット、価電子帯のバンドオフセットを大きく稼ぐ場合が多い。
しかしながら、バリア層のAlやGaの混晶組成を大きくするほど、活性層との格子不整合は大きくなる傾向にあり、その結果、バリア層の臨界膜厚は小さくなるので、十分な膜厚のバリア層を形成できなくなるという問題が生じる。すなわち、特にp型バリア層においては、活性層との格子定数も近く、且つ伝導帯のバンドオフセットを大きくとれる材料を選択することが重要である。そして、p型バリア層としてAlInAsSbを用いる特許文献2の赤外線センサは、十分な膜厚のバリア層が形成できなくなるという問題を有している。
これに対して、第一態様および第二態様の赤外線センサでは、AlGaSbをp型バリア層の材料としたことで、活性層との伝導帯のバンドオフセットを大きくとることができる。また、AlGaSbは活性層の材料であるInAsSbとの格子定数が近いため、p型バリア層の膜厚を大きくすることが可能となる。また、n型バリア層の材料としてAlInAsSbを用いることで、活性層との価電子帯のバンドオフセットを大きくすることが可能となる。これにより、拡散電流を防ぐ機能を高め、赤外線センサの特性を向上させることが可能となる。
p型バリア層の形成時に使用されるp型ドーパントとしては、Be、Zn、Cd、C、Mg、Geなどが一般的である。特に、Znは、活性化率が高く、毒性も低いため、好んで用いられる。しかし、Znは、蒸気圧が高く制御が困難であることや、チャンバ内に残留するなどの懸念がある。また、n型ドーパントとp型ドーパントを同じにできれば、量産性の向上にもつながる。
第一態様および第二態様の赤外線センサでは、n型バリア層の材料としてAlInAsSbを用い、p型バリア層の材料としてAlGaSbを用いたことにより、n型バリア層とp型バリア層の両方において、ドーパントとしてSiを用いることができる。Siは制御性の良いドーパントであるため、各化合物半導体層を所望のドーピング濃度で形成することが容易になる。さらに、単一のドーパントでn型バリア層およびp型バリア層の両方のドーピングが可能となるため、量産性にも優れる。
<製法>
第一態様および第二態様の赤外線センサは、基板上に各層を形成する工程を経て製造されるが、この工程は、例えば、分子線エピタキシー(MBE)法や有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法などで行うことができる。
<追加の構成>
第一態様および第二態様の赤外線センサは、n型バリア層及びp型コンタクト層上に形成される電極と、パッシベーション膜とをさらに備えることができる。
第一態様および第二態様の赤外線センサは、基板上に複数形成して、電気的に直列接続する構造としてもよい。このような構造とすることで、単一の赤外線センサの出力を足し合わせることが可能となり、出力を飛躍的に向上させることができる。
また、第一態様または第二態様の赤外線センサと、この赤外線センサから出力される電気信号を処理する集積回路部とを、同一パッケージ内にハイブリッドに形成しても良い。赤外線センサと集積回路部との電気的な接続法は特に限定されない。パッケージに関しても、赤外線の透過率が高い材料であれば特に制限はなく、中空パッケージなどを用いても良い。
また、特定の光の影響を完全に避けるため、赤外線センサの受光面(例えば、基板の裏面側)にフィルタを取り付けてもよい。さらに、検知する距離や方向性を定め、集光性をより高めるため、赤外線センサの受光面(例えば、基板の裏面側)にフレネルレンズを設けてもよい。
<各構成についての詳述>
(基板)
基板は、その上に化合物半導体層を成長できるものであれば特に制限されず、GaAs基板、Si基板などの単結晶基板などが好ましい。また、それらの単結晶基板がドナー不純物やアクセプタ不純物によって、n型やp型にドーピングされていても良い。
単結晶基板の面方位は、特に制限はないが、(100)、(111)、(110)等が好ましい。また、これらの面方位に対して1°から5°傾けた面方位を用いることもできる。
基板の表面上に形成された複数個の赤外線センサを、電極で直列接続して用いる場合、各赤外線センサは電極以外の部分では絶縁分離されていることが好ましい。従って、基板としては、半絶縁性の基板か、基板上に形成する各層の積層体と基板とを絶縁分離可能な基板を用いることが好ましい。
さらに、基板として、赤外線を透過する材料を用いることにより、赤外線を基板の裏面側から入射させることが可能となる。この場合、電極により赤外光が遮られることがないため、素子の受光面積をより広く取ることができる点で好ましい。このような基板の材料としては、半絶縁性のSiやGaAs等が好ましい。
通常行われるように、基板の表面を平坦化させ、清浄化させる目的で、基板と同じ材質の半導体層を基板上に形成したものを、基板として使用しても良い。GaAs基板上にGaAs層を形成したものを基板として使用することは、この最も代表的な例である。
(バッファ層)
第一態様の赤外線センサは、基板とn型コンタクト層との間にバッファ層をさらに備えることが好ましい。バッファ層は基板の表面上に形成される。バッファ層は、その上に形成される全ての結晶性を改善するための層として機能する。これにより、結晶性の良い(欠陥の少ない)活性層を得ることができる。
また、第二態様の赤外線センサにおいて、基板とp型コンタクト層との間にバッファ層をさらに備えてもよい。
バッファ層の材料としては、InSb、InAs、InAsSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSb、AlSb、GaSb、AlGaSb、AlAsSb、GaAsSb、AlGaAsSbなどが挙げられる。バッファ層は、これらのうちの一つの材料からなる単層でも良いし、複数の層が積層された多層でも良い。また、材料の組成を連続的或いは階段状に変化させながら、格子定数をその上に形成する層(n型コンタクト層やp型コンタクト層)の組成に近づけるように形成された、グレーデッドバッファ層を用いても良い。
GaSb単層膜及びAlGaSb単層膜は、(a)結晶性が良好な膜を成膜し易い、(b)InAsSbを含む活性層との格子不整合をゼロに近づけることが可能、(c)単層膜の方が、グレーデッド層などと比較して膜厚が薄くて済むので、形成時間が短くて済む、などの観点から、バッファ層の材料として好ましい。
バッファ層がAlGaSb単層膜の場合、AlyGa(1-y)Sb(0≦y≦1)のAl組成比yが大きくなると電気抵抗は高くなるが、結晶性は悪くなる傾向がある。そのためAl組成比yは所望の抵抗、結晶性に応じて適宜選択する。AlyGa(1-y)Sb(0≦y≦1)のAl組成比yが大きすぎると酸化腐食しやすくなるため、酸化、腐食のしやすさの観点からは、Al組成比yを0以上0.8以下とすることが好ましい。
また、GaSb単層膜はAlGaSb単層膜よりも、結晶性が良好な膜に成膜できるため、良好な結晶性を得るという観点からは、GaSb単層膜を用いることがより好ましい。
第一態様の赤外線センサの好ましい形態である「基板がGaAs基板であり、基板とn型コンタクト層の間に、AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなるバッファ層をさらに備える構成」では、AlGaSbをバッファ層の材料として用い、上述のようにAl組成比を大きくしてバッファ層の電気抵抗を高くすることで、バッファ層がノンドープで絶縁層として機能する。これにより、バッファ層はPIN構造に寄与しない層とすることができるため好ましい。
バッファ層の膜厚は、薄すぎると活性層の結晶性改善の効果がなくなり、厚すぎると形成に時間がかかるとともに素子分離のためのメサエッチング工程が困難になるため、0.3μm以上2μm以下が好ましい。
GaSb単層膜及びAlGaSb単層膜をバッファ層として用いる場合、ノンドープでも良いし、n型或いはp型にドーピングしても良い。
バッファ層上にn型コンタクト層を形成する場合、ノンドープのGaSb、AlGaSbの単層膜上にn型コンタクト層を形成しても良いし、n型にドープしたGaSb、AlGaSbの単層膜をそのままn型コンタクト層として兼用しても良い。
但し、GaSbやAlGaSbの単層膜をn型化するためには、蒸気圧が低いSiやSnなどのIV族元素は、p型ドーパントとして働くため用いることはできず、蒸気圧が高く、毒性もあるVI族元素であるTeなどを用いなければならない。Teなどを用いる場合には、蒸気圧が高いためその制御が難しい、或いは成膜装置のチャンバ汚染などの懸念がある。
すなわち、バッファ層上にn型コンタクト層を形成する場合には、ノンドープのGaSbやAlGaSbの単層膜をバッファ層として用いることが好ましい。
一方、バッファ層上にp型コンタクト層を形成する場合には、p型にドープしたGaSb、AlGaSbの単層膜をそのままp型コンタクト層として兼用しても良い。GaSb、AlGaSbの単層膜のp型化に関しては、蒸気圧が低く、最も一般的に用いられるIV族元素であるSiをドーパントとして用いることができるので好ましい。
(n型コンタクト層)
n型コンタクト層は、活性層が赤外線を吸収することにより発生した光電流を取り出すための、電極とのコンタクト層として機能する。n型コンタクト層の材料としては、InSb 、InAs 、InAsSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSb、AlSb、GaSb、AlGaSb、AlAsSb、GaAsSb、AlGaAsSbなどが挙げられる。
n型コンタクト層のシート抵抗は、熱ノイズであるジョンソンノイズの原因となるため、シート抵抗はできるだけ小さい方が良い。n型コンタクト層には、コンタクト抵抗を下げるために十分なドーピングがされることが必要である。そのため、ドーピング濃度としては、1×1018/cm3以上が好ましい。n型ドーパントとしてはSi、Sn、S、Se、Te、Geなどが挙げられる。
n型コンタクト層の材料としては、(d)活性層をなすInAsSbと格子定数が近い、(e)蒸気圧が低く、最も一般的に用いられるIV族元素であるSiをドーパントとして用いることができる、(f)シート抵抗を小さくできる、という観点から、InAsまたはInAsSbであることが特に好ましい。活性層と同じ材料であるInAsSbを用いると格子定数を完全に一致させることができるため、さらに好ましい。
n型コンタクト層の膜厚は、シート抵抗を下げるために、なるべく厚い方が好ましい。しかし、厚すぎると形成に時間がかかるとともに素子分離のためのメサエッチング工程が困難になる。このため、n型コンタクト層の膜厚としては、0.1μm以上1μm以下が好ましい範囲として挙げられる。
(n型バリア層)
第一態様および第二態様赤外線センサのn型バリア層は、AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなり、活性層からの拡散電流を防ぐ機能を有する。InAsSbからなる活性層に対してバンドギャップの大きいAlInAsSbをn型バリア層として用いることで、価電子帯のバンドオフセットが大きく取れる。
活性層とn型バリア層の格子定数が異なる場合、n型バリア層の膜厚が臨界膜厚を超えると、n型バリア層の結晶性が劣化するため、材料選択の際には、伝導帯或いは価電子帯のバンドオフセットおよび結晶性劣化の両方を考慮する必要がある。n型バリア層の膜厚を厚くするという観点からは、活性層とn型バリア層の格子定数の差はなるべく小さい方が好ましい。
また、n型バリア層は、拡散電流を防ぐ機能を有するだけでなく、活性層で発生した電子、正孔が、光電流として流れ込む機能も有する。そのため、n型バリア層は十分なドーピングがなされている必要があり、ドーピング濃度は1×1018/cm3以上であることが好ましい。n型ドーパントとしてはSi、Sn、S、Se、Te、Geなどが挙げられる。
n型バリア層の材料としてAlInAsSbを用いることで、InAsSbからなる活性層とn型バリア層との格子定数が近くなるとともに、蒸気圧が低く、最も一般的に用いられるIV族元素であるSiをn型ドーパントとして用いることができる。
この場合、AlInAsSbのAl組成比が小さすぎると十分な価電子帯のバンドオフセットを確保できず、また、AlInAsSbのAl組成比が大きすぎるとInAsSbを含む活性層との格子定数の差が大きくなり、n型バリア層の臨界膜厚が小さくなるため、n型バリア層として十分な膜厚を確保できなくなる。そのため、AlInAsSbのAl組成比は0.1以上0.5以下が好ましい。
n型バリア層の膜厚は、赤外線センサの抵抗を下げるために、なるべく薄い方が良いが、電極と活性層との間にトンネルリークが発生しないだけの膜厚は必要となる。このため、n型バリア層の膜厚は0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.02μm以上である。なお、n型バリア層の膜厚の上限については、活性層とn型バリア層との格子定数との差によって決まる臨界膜厚によって制限される。
(活性層)
第一態様および第二態様赤外線センサの活性層はInAsxSb(1-x)(0≦x≦1)からなる。活性層のAs組成比xは、特に限定されないが、As組成比xを所望の値に設定することで、赤外線検出のピーク波長を、3μmから10μmの広範囲にわたり制御することが可能である。バッファ層としてAlGaSb、GaSbを用いた場合には、活性層のInAsSbの格子定数がバッファ層の格子定数に近い方が良好な結晶が得られるため、As組成比xは0.7以上1以下が好ましい。
活性層の膜厚は、光吸収量を増やすためには厚い方が好ましいが、厚すぎると形成に時間がかかるとともに素子分離のためのメサエッチング工程が困難になるため、0.5μm以上3μm以下が好ましい。
活性層はノンドープのものでも良いし、n型やp型にドーピングされたものでもよい。InAsSbはバンドギャップが非常に小さいため、真性キャリア密度が非常に大きい。このことは、拡散電流の増大や、オージェ再結合過程の促進をもたらす。活性層をp型にドーピングすることで、これらの影響を低減することができる。ドーピング量は適宜設定される。
InAsxSb(1-x)(0≦x≦1)からなる活性層のp型ドーパントとしては、一般的にはBe、Zn、Cd、C、Mg、Geなどが好ましく用いられるが、Znは活性化率が高く、毒性も低いため、より好ましく用いられる。
(p型バリア層)
第一態様および第二態様赤外線センサのp型バリア層は、AlGaSb主成分とする化合物半導体層からなり、活性層からの拡散電流を防ぐ機能を有する。InAsSbからなる活性層に対してバンドギャップの大きいAlGaSbをp型バリア層の材料として用いることで、伝導帯のバンドオフセットが大きく取れる。
また、p型バリア層は、拡散電流を防ぐ機能を有するだけでなく、活性層で発生した電子、正孔が、光電流として流れ込む機能も有する。そのため、p型バリア層は十分なドーピングがなされている必要があり、ドーピング濃度は1×1018/cm3以上であるが好ましい。
p型ドーパントとしては、Be、Zn、Cd、C、Mg、Geなどが挙げられる。Siは、一般的にはn型ドーパントとして知られているが、AlGaSbに対してはp型ドーパントとして用いることができる。
p型バリア層の材料としてAlGaSbを用いることで、InAsSbからなる活性層とp型バリア層との格子定数が近くなるとともに、蒸気圧が低く、最も一般的に用いられるIV族元素であるSiをp型ドーパントとして用いることができ、さらに、伝導帯のバンドオフセットを大きくできる。
活性層をなすInAsSbとの格子定数の差が十分小さいため、p型バリア層のAlGaSbのAl組成比は臨界膜厚によって制約されないが、Al組成比が大きすぎると酸化、腐食などの懸念があるため、Al組成比は0以上0.8以下が好ましい。
p型バリア層の膜厚は、センサの素子抵抗を下げるために、なるべく薄い方が良いが、電極と活性層との間にトンネルリークが発生しないだけの膜厚が必要である。このため、p型バリア層の膜厚は0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.02μm以上である。なお、p型バリア層の膜厚の上限については、活性層とn型バリア層との格子定数との差によって決まる臨界膜厚によって制限される。
(p型コンタクト層)
p型コンタクト層は、活性層が赤外線を吸収することにより発生した光電流を取り出すための、電極とのコンタクト層として機能する。p型コンタクト層の材料としては、InSb、InAs、InAsSb、AlInSb、GaInSb、AlGaInSb、AlInAsSb、GaInAsSb、AlGaInAsSb、AlSb、GaSb、AlGaSb、AlAsSb、GaAsSb、AlGaAsSbなどが挙げられる。
p型コンタクト層のシート抵抗は、熱ノイズであるジョンソンノイズの原因となるため、シート抵抗はできるだけ小さい方が良い。p型コンタクト層には、コンタクト抵抗を下げるために十分なドーピングがされることが必要である。そのため、ドーピング濃度としては、1×1018/cm3以上が好ましい。p型ドーパントとしては、Be、Zn、Cd、C、Mg、Geなどが挙げられる。
p型コンタクト層の材料としては、(d)活性層をなすInAsSbと格子定数が近い、(e)蒸気圧が低く、最も一般的に用いられるIV族元素であるSiをドーパントとして用いることができる、(f)シート抵抗を小さくできる、という観点から、AlGaSb、GaSbが好ましい。p型コンタクト層の材料がGaSbであると、AlGaSbである場合よりもシート抵抗を小さくできるため、好ましい。
また、In組成を制御することでInAsSbと格子整合が可能であるため、GaInSbをp型コンタクト層の材料として用いることも好ましい。
p型コンタクト層の膜厚は、シート抵抗を下げるために、なるべく厚い方が好ましい。しかし、厚すぎると形成に時間がかかり、かつ、素子分離のためのメサエッチング工程が困難になる。このため、p型コンタクト層の膜厚は0.1μm以上1μm以下が好ましい範囲として挙げられる。
(パッシベーション膜)
パッシベーション膜は、絶縁性の膜であれば特に限定されない。パッシベーション膜の材料として、シリコン窒化膜(Si34)、シリコン酸化膜(SiO2)又はシリコン酸化窒化膜(SiON)などが挙げられる。
(電極)
電極としては、p型コンタクト層に電気的に接続するp型電極と、n型コンタクト層に電気的に接続するn型電極がある。電極は、導電性の膜で構成されていれば特に限定されず、Au/TiやAu/Cr等の積層膜(上層/下層)などが挙げられる。
〔実施形態〕
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定はこの発明の必須要件ではない。
なお、以下の説明で使用する図において、図示されている各部の寸法関係は、実際の寸法関係と異なる場合がある。
<第一実施形態>
(構成)
第一実施形態の赤外線センサは、図3に示すように、基板1と、バッファ層7と、n型コンタクト層2と、n型バリア層3と、活性層4と、p型バリア層5と、p型コンタクト層6と、n型電極8と、p型電極9と、パッシベーション膜10とを備えている。
基板1上に、バッファ層7、n型コンタクト層2、n型バリア層3、活性層4、p型バリア層5、およびp型コンタクト層6が、この順に形成されている。つまり、バッファ層7、n型コンタクト層2、n型バリア層3、活性層4、p型バリア層5、およびp型コンタクト層6からなる化合物半導体積層体が、基板1上に形成されている。
バッファ層7およびn型コンタクト層2の幅は、n型バリア層3、活性層4、p型バリア層5、およびp型コンタクト層6の幅より大きい。つまり、n型コンタクト層2とn型バリア層3との間に段差を有する。この段差により生じたn型コンタクト層2の上面にn型電極8が形成され、p型コンタクト層6の上面にp型電極9が形成されている。
パッシベーション膜10により、基板1の上面、化合物半導体積層体の側面および上面が覆われている。n型電極8とp型電極9の上部はパッシベーション膜10から露出している。
基板1はGaAsからなる。バッファ層7はAlGaSbからなる。n型コンタクト層2はSi(n型ドーパント)を含むInAsSbからなる。n型バリア層3はSi(n型ドーパント)を含むAlInAsSbからなる。活性層4はInAsxSb(1-x)(0≦x≦1)からなる。p型バリア層5はSi(p型ドーパント)を含むAlGaSbからなる。p型コンタクト層6はSi(p型ドーパント)を含むGaSbまたはGaInSbからなる。n型電極8はAu/Tiからなる。p型電極9はAu/Tiからなる。パッシベーション膜10はシリコン窒化物からなる。
(作用、効果)
第一実施形態の赤外線センサによれば、Siを含むAlGaSbからなるp型バリア層5を備えることで、活性層4とp型バリア層5との伝導体のバンドオフセットを十分大きくすることができる。また、AlGaSbからなるバッファ層7を有することで、InAsxSb(1-x)(0≦x≦1)からなる活性層4の結晶性が改善される。また、n型コンタクト層2が活性層4と同じInAsSbからなるため、n型コンタクト層2と活性層4の格子定数が一致する。
また、n型バリア層3が、活性層4をなすInAsxSb(1-x)(0≦x≦1)に対するバンドギャップエネルギーが大きいAlInAsSbからなるため、価電子帯のバンドオフセットが大きく取れる。また、p型コンタクト層6が、活性層4をなすInAsxSb(1-x)(0≦x≦1)と格子定数が近いGaSbまたはGaInSbからなる。
以上のことから、第一実施形態の赤外線センサによれば、良好な検出特性が得られる。
また、第一実施形態の赤外線センサは、n型ドーパントおよびp型ドーパントの両方として制御性なSiを使用しているため、量産性にも優れている。
(製造方法)
先ず、GaAsウエハ(基板1)の上面に、MBE(分子線エピタキシー)法を用いて、バッファ層7、n型コンタクト層2、n型バリア層3、活性層4、p型バリア層5、およびp型コンタクト層6を形成する。次に、酸によるウェットエッチングまたはイオンミリング法などにより、素子毎に、n型バリア層3、活性層4、p型バリア層5、およびp型コンタクト層6を、部分的に除去して、n型コンタクト層2とn型電極8とのコンタクトを取るための段差形成を行う。これにより、GaAsウエハ上に、段差を有する複数の化合物半導体積層体が形成される。
次に、段差を有する複数の化合物半導体積層体に対して、素子分離のためのメサエッチングを行う。ここでは、段差の底部に現れているn型コンタクト層とバッファ層を順次、部分的に除去する。これにより、素子分離領域には基板1の上面が露出する。
次に、シリコン窒化物からなるパッシベーション膜10により、基板1の上面及び素子分離された化合物半導体積層体の上面及び側面を覆う。
次に、パッシベーション膜10のうちn型電極8およびp型電極9を形成する部分をエッチングして貫通穴を形成する。次に、リフトオフ法などでこの貫通穴を埋めるようにAu/Ti電極を形成する。
<第二実施形態>
(構成)
第二実施形態の赤外線センサは、図4に示すように、基板1と、p型コンタクト層6と、p型バリア層5と、活性層4と、n型バリア層3と、n型コンタクト層2と、n型電極8と、p型電極9と、パッシベーション膜10とを備えている。
基板1上に、p型コンタクト層6と、p型バリア層5と、活性層4と、n型バリア層3と、n型コンタクト層2が、この順に形成されている。つまり、p型コンタクト層6と、p型バリア層5と、活性層4と、n型バリア層3と、およびn型コンタクト層2からなる化合物半導体積層体が、基板1上に形成されている。
p型コンタクト層6の幅は、p型バリア層5と、活性層4と、n型バリア層3と、n型コンタクト層2の幅より大きい。つまり、p型コンタクト層6とp型バリア層5との間に段差を有する。この段差により生じたp型コンタクト層6の上面にp型電極9が形成され、n型コンタクト層2の上面にn型電極8が形成されている。
パッシベーション膜10により、基板1の上面、化合物半導体積層体の側面および上面が覆われている。n型電極8とp型電極9の上部はパッシベーション膜10から露出している。
基板1はGaAsからなる。n型コンタクト層2はSi(n型ドーパント)を含むInAsSbからなる。n型バリア層3はSi(n型ドーパント)を含むAlInAsSbからなる。活性層4はInAsxSb(1-x)(0≦x≦1)からなる。p型バリア層5はSi(p型ドーパント)を含むAlGaSbからなる。p型コンタクト層6はSi(p型ドーパント)を含むGaSbからなる。n型電極8はAu/Tiからなる。p型電極9はAu/Tiからなる。パッシベーション膜10はシリコン窒化物からなる。
(作用、効果)
第二実施形態の赤外線センサによれば、Siを含むAlGaSbからなるp型バリア層5を備えることで、活性層4とp型バリア層5との伝導体のバンドオフセットを十分大きくすることができる。
また、n型コンタクト層2が活性層4と同じInAsSbからなるため、n型コンタクト層2と活性層4の格子定数が一致する。また、n型バリア層3が、活性層4をなすInAsxSb(1-x)(0≦x≦1)に対するバンドギャップエネルギーが大きいAlInAsSbからなるため、価電子帯のバンドオフセットが大きく取れる。また、p型コンタクト層6が、活性層4をなすInAsxSb(1-x)(0≦x≦1)と格子定数が近いGaSbからなることで、活性層4をなすInAsxSb(1-x)(0≦x≦1)の結晶性を良好にすることができる。
以上のことから、第二実施形態の赤外線センサによれば、良好な検出特性が得られる。
また、第二実施形態の赤外線センサは、n型ドーパントおよびp型ドーパントの両方として制御性なSiを使用しているため、量産性にも優れている。
(製造方法)
第二実施形態の赤外線センサは第一実施形態の赤外線センサと化合物半導体積層体の構成が異なるため、各層の形成順が異なるが、基本的には第一実施形態に記載された方法で製造できる。
以下、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
図3に示す構造の赤外線センサを以下のようにして作製した。
MBE法により、半絶縁性のGaAs単結晶からなる基板1上に、バッファ層7と、n型コンタクト層2と、n型バリア層3と、活性層4と、p型バリア層5と、p型コンタクト層6を順次積層することにより、PIN構造の化合物半導体積層体を形成した。
この積層工程では、バッファ層7としてノンドープのAl0.55Ga0.45Sb層を0.5μm形成した。n型コンタクト層2として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたn型のInAs0.91Sb0.09層を0.7μm形成した。n型バリア層3としてSiを7×1018/cm3ドーピングしたn型のAl0.3In0.7As0.91Sb0.09層を0.02μm形成した。活性層4として、ノンドープのInAs0.91Sb0.09層を2μm形成した。p型バリア層5として、Siを3×1018/cm3ドーピングしたp型のAl0.4Ga0.6Sb層を0.02μm形成した。p型コンタクト層6として、Siを3×1018/cm3ドーピングしたp型のGaSb層を0.5μm形成した。
この積層工程では、蒸気圧が低いため制御が簡単で、毒性もなく一般的に用いられるSiのみをドーパントとして用いている。つまり、この方法は、PIN構造の化合物半導体積層体の作製方法として、量産性に優れた方法である。
得られた化合物半導体積層体のInAs0.91Sb0.09からなる活性層4について、X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、304arcsecであった。
この化合物半導体積層体に対して以下の工程を行うことにより、実施例1の赤外線センサを作製した。
まず、n型コンタクト層2とのコンタクトをとるための段差形成を、酸によるウェットエッチングまたはイオンミリング法などにより行った。次いで、段差形成がされた化合物半導体積層体に対して、素子分離のためのメサエッチングを行った。その後、SiNからなるパッシベーション膜10により、基板1の上面及び素子分離された化合物半導体積層体の上面及び側面を覆った。次いで、パッシベーション膜10の電極形成部分に貫通穴を形成した。次いで、n型コンタクト層2の段差部分上及びp型コンタクト層6上の2箇所に、Au/TiをEB(電子ビーム)蒸着し、リフトオフ法により各貫通穴にn型電極8およびp型電極9をそれぞれ形成した。
このようにして、図3に示す構造の赤外線センサを得た。
[実施例2]
n型コンタクト層2として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたn型のInAs0.87Sb0.13層を0.7μm形成した。また、n型バリア層3としてSiを7×1018/cm3ドーピングしたn型のAl0.3In0.7As0.87Sb0.13層を0.02μm形成した。また、活性層4として、ノンドープのInAs0.87Sb0.13層を2μm形成した。また、p型コンタクト層6として、Siを3×1018/cm3ドーピングしたp型のGa0.96In0.04Sb層を0.5μm形成した。これ以外は実施例1と同じ方法でPIN構造の化合物半導体積層体を形成した。
得られた化合物半導体積層体のInAs0.87Sb0.13からなる活性層4について、X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、306arcsecであった。
この化合物半導体積層体に対して実施例1と同じ工程を行うことにより、実施例2の赤外線センサを作製した。
[実施例3]
図4に示す構造の赤外線センサを以下のようにして作製した。
MBE法により、半絶縁性のGaAs単結晶からなる基板1上に、バッファ層を兼ねたp型コンタクト層6と、p型バリア層5と、活性層4と、n型バリア層3と、n型コンタクト層2を順次積層することにより、PIN逆構造の化合物半導体積層体を形成した。
この積層工程では、バッファ層を兼ねたp型コンタクト層6として、Siを3×1018/cm3ドーピングしたp型のGaSb層を1.0μm形成した。また、p型バリア層5として、Siを3×1018/cm3ドーピングしたp型のAl0.4Ga0.6Sb層を0.02μm形成した。また、活性層4として、ノンドープのInAs0.87Sb0.13層を2μm形成した。また、n型バリア層3として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたn型のAl0.3In0.7As0.87Sb0.13層を0.02μm形成した。また、n型コンタクト層2として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたn型のInAs0.87Sb0.13層を0.5μm形成した。
この積層工程では、蒸気圧が低いため制御が簡単で、毒性もなく一般的に用いられるSiのみをドーパントとして用いている。つまり、この方法は、PIN逆構造の化合物半導体積層体の作製方法として、量産性に優れた方法である。
得られた化合物半導体積層体のInAs0.87Sb0.13からなる活性層4について、X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、184arcsecであった。この値は、実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の値と比較して小さい。つまり、実施例3で得られた化合物半導体積層体の活性層4は実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の活性層4よりも結晶性が良好であった。
この効果が得られた理由は、実施例1および2ではAlGaSbからなるバッファ層7を厚さ0.5μmで基板1上に形成しているのに対して、実施例3ではバッファ層を兼ねたGaSbからなるp型コンタクト層6を厚さ1.0μmで形成していることによるものと推測される。
この化合物半導体積層体に対して以下の工程を行うことにより、実施例4の赤外線センサを作製した。
まず、p型コンタクト層6とのコンタクトをとるための段差形成を、酸によるウェットエッチングまたはイオンミリング法などにより行った。次いで、段差形成がされた化合物半導体積層体に対して、素子分離のためのメサエッチングを行った。その後、SiNからなるパッシベーション膜10により、基板1の上面及び素子分離された化合物半導体積層体の上面及び側面を覆った。次いで、パッシベーション膜10の電極形成部分に貫通穴を形成した。次いで、p型コンタクト層6の段差部分上及びn型コンタクト層2上の2箇所に、Au/TiをEB(電子ビーム)蒸着し、リフトオフ法により各貫通穴にp型電極9およびn型電極8をそれぞれ形成した。
このようにして、図4に示す構造の赤外線センサを得た。
[実施例4]
活性層4として、ノンドープのInAs0.91Sb0.09層を2μm形成した。また、n型バリア層3として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたn型のAl0.3In0.7As0.91Sb0.09層を0.02μm形成した。また、n型コンタクト層2として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたInAs0.91Sb0.09層を0.5μm形成した。これ以外は実施例3と同じ方法でPIN逆構造の化合物半導体積層体を形成した。
得られた化合物半導体積層体のInAs0.91Sb0.09からなる活性層4について、X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、199arcsecであった。この値は、実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の値と比較して小さい。つまり、実施例4で得られた化合物半導体積層体の活性層4は実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の活性層4よりも結晶性が良好であった。
この効果が得られた理由は、実施例1および2ではAlGaSbからなるバッファ層7を厚さ0.5μmで基板1上に形成しているのに対して、実施例4ではバッファ層を兼ねたGaSbからなるp型コンタクト層6を厚さ1.0μmで形成していることによるものと推測される。
この化合物半導体積層体に対して実施例3と同じ工程を行うことにより、実施例4の赤外線センサを作製した。
[実施例5]
活性層4として、ノンドープのInAs0.96Sb0.04層を2μm形成した。また、n型バリア層3として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたAl0.3In0.7As0.96Sb0.04層を0.02μm形成した。また、n型コンタクト層2として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたInAs0.96Sb0.04層を0.5μm形成した。これ以外は実施例3と同じ方法でPIN逆構造の化合物半導体積層体を形成した。
得られた化合物半導体積層体のInAs0.96Sb0.04からなる活性層4について、X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、203arcsecであった。この値は、実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の値と比較して小さい。つまり、実施例5で得られた化合物半導体積層体の活性層4は実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の活性層4よりも結晶性が良好であった。
この効果が得られた理由は、実施例1および2ではAlGaSbからなるバッファ層7を厚さ0.5μmで基板1上に形成しているのに対して、実施例5ではバッファ層を兼ねたGaSbからなるp型コンタクト層6を厚さ1.0μmで形成していることによるものと推測される。
この化合物半導体積層体に対して実施例3と同じ工程を行うことにより、実施例5の赤外線センサを得た。
[実施例6]
活性層4として、ノンドープのInAs0.98Sb0.02層を2μm形成した。また、n型バリア層3として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたAl0.3In0.7As0.98Sb0.02層を0.02μm形成した。また、n型コンタクト層2として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたInAs0.98Sb0.02層を0.5μm形成した。これ以外は実施例3と同じ方法でPIN逆構造の化合物半導体積層体を形成した。
得られた化合物半導体積層体のInAs0.98Sb0.02からなる活性層4について、X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、248arcsecであった。この値は、実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の値と比較して小さい。つまり、実施例6で得られた化合物半導体積層体の活性層4は実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の活性層4よりも結晶性が良好であった。
この効果が得られた理由は、実施例1および2ではAlGaSbからなるバッファ層7を厚さ0.5μmで基板1上に形成しているのに対して、実施例6ではバッファ層を兼ねたGaSbからなるp型コンタクト層6を厚さ1.0μmで形成していることによるものと推測される。
この化合物半導体積層体に対して実施例3と同じ工程を行うことにより、実施例6の赤外線センサを得た。
[実施例7]
活性層4として、ノンドープのInAs層を2μm形成した。また、n型バリア層3として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたAl0.3In0.7As層を0.02μm形成した。また、n型コンタクト層2として、Siを7×1018/cm3ドーピングしたInAs層を0.5μm形成した。これ以外は実施例3と同じ方法でPIN逆構造の化合物半導体積層体を形成した。
得られた化合物半導体積層体のInAsからなる活性層4について、X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅(FWHM値)を評価したところ、265arcsecであった。この値は、実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の値と比較して小さい。つまり、実施例7で得られた化合物半導体積層体の活性層4は実施例1および2で得られた化合物半導体積層体の活性層4よりも結晶性が良好であった。
この効果が得られた理由は、実施例1および2ではAlGaSbからなるバッファ層7を厚さ0.5μmで基板1上に形成しているのに対して、実施例7ではバッファ層を兼ねたGaSbからなるp型コンタクト層6を厚さ1.0μmで形成していることによるものと推測される。
この化合物半導体積層体に対して実施例3と同じ工程を行うことにより、実施例7の赤外線センサを得た。
実施例1〜2の赤外線センサの基板以外の各層の構成と、得られた活性層のFWHM値を表1に、実施例3〜7の赤外線センサの基板以外の各層の構成と、得られた活性層のFWHM値を表2にそれぞれまとめて示す。
Figure 0006750996
Figure 0006750996
1 基板
2 n型コンタクト層
3 n型バリア層
4 活性層
5 p型バリア層
6 p型コンタクト層
7 バッファ層
8 n型電極
9 p型電極
10 パッシベーション膜

Claims (10)

  1. 基板と、
    前記基板上に形成されたn型コンタクト層と、
    AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなり、前記n型コンタクト層上に形成されたn型バリア層と、
    InAsxSb(1-x)(0≦x≦1)を主成分とする化合物半導体層からなり、前記n型バリア層上に形成された活性層と、
    AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなり、前記活性層上に形成されたp型バリア層と、
    を備える赤外線センサ。
  2. 前記n型コンタクト層が含むn型ドーパント、前記n型バリア層が含むn型ドーパント、および前記p型バリア層が含む型ドーパントは、Siである請求項1に記載の赤外線センサ。
  3. 前記基板はGaAs基板であり、
    AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなり、前記基板と前記n型コンタクト層との間に形成されたバッファ層を、さらに備える請求項1または請求項2に記載の赤外線センサ。
  4. GaSbまたはGaInSbを主成分とする化合物半導体層からなり、前記p型バリア層上に形成されたp型コンタクト層を、さらに備える請求項1から請求項3の何れか一項に記載の赤外線センサ。
  5. 前記p型コンタクト層が含むp型ドーパントはSiである請求項4に記載の赤外線センサ。
  6. 基板と、
    前記基板上に形成されたp型コンタクト層と、
    AlGaSbを主成分とする化合物半導体層からなり、前記p型コンタクト層上に形成されたp型バリア層と、
    InAsxSb(1-x)(0≦x≦1)を主成分とする化合物半導体層からなり、前記p型バリア層上に形成された活性層と、
    AlInAsSbを主成分とする化合物半導体層からなり、前記活性層上に形成されたn型バリア層と、
    を備える赤外線センサ。
  7. 前記p型コンタクト層が含むp型ドーパント、前記p型バリア層が含むp型ドーパント、および前記n型バリア層が含むn型ドーパントは、Siである請求項6に記載の赤外線センサ。
  8. 前記基板はGaAs基板であり、
    前記p型コンタクト層が、GaSbを主成分とする化合物半導体層からなる請求項6または請求項7に記載の赤外線センサ。
  9. InAsSbを主成分とする化合物半導体層からなり、前記n型バリア層上に形成されたn型コンタクト層を、さらに備える請求項6から請求項8の何れか一項に記載の赤外線センサ。
  10. 前記n型コンタクト層が含むn型ドーパントはSiである請求項9に記載の赤外線センサ。
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