JP6733839B2 - 亜鉛系電気めっき鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、亜鉛系電気めっき鋼板に関する。
本願は、2018年4月3日に、日本に出願された特願2018−071944号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
電気機器、建材、及び、自動車をはじめとして、人々の目に触れる物品は、一般的に意匠性が求められる。意匠性を高める方法としては、物品の表面に対して塗装を施したりフィルムを張り付けたりする方法が一般的であるが、近年、自然志向の欧米を中心に、金属の質感を活かした材料の適用が増加している。金属の質感を活かすという観点からすると、塗装や樹脂被覆は金属の質感を損なうため、物品の素材として、無塗装のままでも耐食性に優れるステンレス鋼材やアルミ材が用いられている。また、ステンレス鋼材やアルミ材の意匠性を向上させるために、バイブレーションと呼ばれる円弧状の細かい凹凸を付与したり、エンボス加工などが施されたりするが、ヘアラインと呼ばれる細かい線状の凹凸を付与した外観が、特に好まれて多用されている。
ヘアライン仕上げ(HL仕上げ)は、ステンレス鋼材の表面仕上げの一つとして、JIS G4305:2012において、「適当な粒度の研磨材で連続した磨き目が付くように研磨して仕上げたもの」と定義されている。
しかしながら、ステンレス鋼材やアルミ材は高価であるため、これらステンレス鋼材やアルミ材に替わる安価な材料が望まれている。このような代替材料の一つとして、ステンレス鋼材やアルミ材と同様な高意匠性及び適度な耐食性を備え、かつ、電気機器や建材等に使用するのに適した、ヘアライン外観を有する、金属の質感(金属光沢感、メタリック感。以下、「メタリック感」と呼称する)に優れた鋼材がある。
鋼材に適度な耐食性を付与する技術として、鋼材に対して犠牲防食性に優れる亜鉛めっき、又は、亜鉛合金めっきを付与する技術が広く用いられている。このような亜鉛めっき又は亜鉛合金めっき(以下、亜鉛めっきと亜鉛合金めっきとを総称して、「亜鉛系めっき」と呼称する場合がある)にヘアライン意匠を付与した鋼材に関する技術として、例えば、ヘアラインに直角方向の表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.1〜1.0μmであるめっき層の表面に対し、透光性を有する接着剤層と透光性を有するフィルム層めっき層とを形成する技術(以下の特許文献1を参照。)や、Zn−Al−Mg系溶融めっき層の表層に形成されたヘアライン方向及びヘアラインと直交方向の粗さパラメータ(Ra及びPPI)を特定の範囲とし、かつ、Zn−Al−Mg系溶融めっき層の表面に透明樹脂皮膜層を形成する技術(以下の特許文献2を参照。)や、Zn及びZn系合金めっきに圧延でテクスチャを転写した鋼板に対し、表面粗度が一定範囲内となるような樹脂を被覆する技術(以下の特許文献3を参照。)が提案されている。
日本国登録実用新案第3192959号公報 日本国特開2006−124824号公報 日本国特表2013−536901号公報 国際公開第2015/125887号
しかしながら、上記特許文献1〜特許文献3で提案されているようなヘアライン意匠が付与された鋼板に有機樹脂を被覆する技術では、ヘアライン意匠を実現でき、かつ、一定の耐食性を発現することはできるものの、その樹脂被覆に起因してメタリック感が喪われてしまうという問題があった。
ここで、ヘアラインを形成する方法としては、ヘアラインを形成したいめっき鋼板を所定の粗度を有する圧延ロール等により圧延する鋼板圧延法と、ヘアラインを形成したいめっき鋼板の表面を研削するめっき研削法と、がある。上記のようなメタリック感の喪失は、特に、上記の鋼板圧延法によりヘアラインを形成しためっき鋼板に顕著であった。メタリック感の喪失が顕著である理由は定かではないが、ヘアラインを鋼板圧延法により作製しためっき鋼板では、めっき層の最表面に存在するめっきの結晶粒子によって、入射してきた光がめっき層表面全体で乱反射するためであると考えられる。そのため、ヘアラインを形成しためっき鋼板の表面に対して、以下で述べるような樹脂被覆を行うことを想定した場合、鋼板圧延法によるヘアラインの形成は、適切ではないとも考えられる。
光沢感を向上させるための方法として、電気めっき液中に所定の有機物添加剤を添加して、めっき結晶粒を微細化する方法が知られている(例えば、上記特許文献4を参照。)。しかしながら、めっきの結晶粒子を微細化すると、めっき上層を樹脂被覆した際に、樹脂皮膜との加工密着性が低下するという問題があった。また、上記特許文献4に記載の方法では、平滑なめっきを得るために有機物添加剤を用いる必要があり、めっき液のドラッグアウト(廃液)処理費用が増大するという問題があった。
なお、ステンレス鋼材は、その表面に存在する酸化膜によってステンレス鋼材そのものの耐食性が良いために、耐食性向上のための塗装は不要である。すなわち、金属素地そのものを表面に使用できることから、樹脂被覆によるメタリック感の喪失という課題がそもそも存在しない。一方、ステンレス鋼材に対して樹脂被覆を施す場合には、着色や別の質感を付与することが目的である。そのため、ステンレス鋼材においては、本発明者らが知見したようなメタリック感の喪失は、問題とはならなかった。かかる事情は、アルミ材についても同様である。
また、用途によっては、落ち着いた質感として、メタリック感を有しつつ光沢が抑制されたマットな外観が好まれることがある。上記のように、ヘアラインは、通常、研磨・研削ベルト等により表面を研磨・研削したり、圧延ロールを用いて圧延したりすることで形成されるが、研磨・研削(以下、「研磨等」という。)により粗度が低くなった箇所は、不可避的に高光沢となり、光沢の低いマットな外観を実現することは困難であった。
更に、亜鉛系めっき鋼板では、耐食性と美観維持のために、樹脂被覆が施されることが多いが、ヘアラインの形成に伴い、亜鉛系めっき層と樹脂被膜との密着性が低下することがあった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ヘアライン外観を有しながら光沢の上昇が抑制され、かつ、めっき上層に樹脂被膜が形成された際にメタリック感を維持しつつ高い被膜密着性を実現することが可能な、亜鉛系電気めっき鋼板を提供することにある。
本発明者らは、メタリック感を向上させるための方法について鋭意検討し、めっき層の最表面における乱反射を抑制することが出来れば、めっき層の表面を樹脂被覆した場合であっても、メタリック感を向上させることが可能であると考えた。本発明者らは、かかる着想のもと更なる検討を行った結果、乱反射を抑制するために、微視的範囲の表面粗さが所定の閾値以下である平滑部をめっき層表面に設けることで、乱反射を抑制可能であるとの知見を得るに至った。
また、本発明者らは、めっき層の表面において微視的範囲の表面粗さが所定の閾値超である粗部と平滑部との割合を適切に調整することで、メタリック感及び被膜密着性を両立させつつ、光沢の過度な上昇を抑制できるとの知見を得ることができた。なお、「微視的範囲の表面粗さ」については、後述する。
本発明者らは、上記のような各種知見のもと、粗部及び平滑部の分布状態について鋭意検討を行い、亜鉛系電気めっき層の上層に有機樹脂被覆層が設けられた場合であってもメタリック感及び被膜密着性を両立させつつ、光沢の過度な上昇を抑制するための条件に想到し、本発明を完成した。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)本発明の一態様に係る亜鉛系電気めっき鋼板では、鋼板と、前記鋼板の少なくとも一方の表面に位置し、表面に所定の方向に延伸するヘアラインを有する亜鉛系電気めっき層と、を備える。
前記亜鉛系電気めっき層において、前記ヘアラインが延伸しているヘアライン方向、及び、前記ヘアライン方向に対して直交するヘアライン直交方向のそれぞれに沿って、50μm×50μmの領域の3次元平均表面粗さSa(50μm)を連続して測定して、隣り合う2つの前記領域により形成される隣接領域で前記Sa(50μm)の比率であるR50を算出し、前記R50が0.667未満又は1.500以上の前記隣接領域を隣接領域Aとしたときに、前記ヘアライン方向及び前記ヘアライン直交方向のいずれにおいても、前記隣接領域Aの個数割合が30%以上である。
前記ヘアライン方向に測定した光沢度G60の値であるGlと、前記ヘアライン直交方向に測定した光沢度G60の値であるGcとが、0.3≦Gc/Gl≦0.85を充足し、 前記有機樹脂被覆層のL 表色系による色調を、CIE標準光源D65を用いた色差計を用いて正反射光除去方式で測定したときに、彩度を示す(a *2 +b *2 0.5 の値が10以下である。
)()に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記有機樹脂被覆層が、着色剤を含有してもよい。
)()又は()に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記有機樹脂被覆層が存在する状態において、前記ヘアライン直交方向に沿って測定した表面粗さRa(CC)と、前記有機樹脂被覆層を剥離した後における、前記ヘアライン直交方向に沿って測定した前記亜鉛系電気めっき層の表面粗さRa(MC)と、が、以下の式(1)で表される関係を満足してもよい。
Ra(CC)<Ra(MC)<5×Ra(CC) ・・・式(1)
)(1)〜()の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層の地鉄露出率が、5%未満であってもよい。
)(1)〜()の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層の付着量が、10g/m〜60g/mであってもよい。
)(1)〜()の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層、又は、前記亜鉛系電気めっき層の上層として設けられた有機樹脂被覆層及び前記亜鉛系電気めっき層の双方を除去した後の触針式の粗さ計で測定した前記鋼板の表面粗さRaが、1.0μm以上1.7μm以下であってもよい。
)(1)〜()の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層が、Fe、Ni、及び、Coからなる群より選択される何れか1以上の元素を、合計で5質量%〜20質量%含有してもよい。
)(1)〜()の何れか一態様に記載の亜鉛系電気めっき鋼板では、前記亜鉛系電気めっき層、又は、前記亜鉛系電気めっき層の上層として設けられた有機樹脂被覆層及び前記亜鉛系電気めっき層の双方を除去した後の触針式の粗さ計で測定した前記鋼板の表面粗さRaが、前記亜鉛系電気めっき層の厚みの60%以下であってもよい。
以上説明したように本発明によれば、ヘアライン外観を有しメタリック感に優れながら光沢の過度な上昇が抑制され、かつ、めっき上層に樹脂被膜が形成された際の被膜密着性を実現することが可能となる。
本発明の実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板の構造の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板の構造の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板が有する亜鉛系電気めっき層の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した際の画像の一例である。 同実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板が有する亜鉛系電気めっき層の表面を通常のカメラで観察した際の画像の一例である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(亜鉛系電気めっき鋼板の全体構成について)
以下では、まず、図1A及び図1Bを参照しながら、本発明の実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板の全体構成について詳細に説明する。図1A及び図1Bは、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板の構造の一例を模式的に示した説明図である。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板は、基材である鋼板と、鋼板のある一方の表面に位置する亜鉛系電気めっき層と、を少なくとも有しており、かかる亜鉛系電気めっき層の表面にヘアライン加工が施されている。
一般的なヘアライン加工は、ヘアラインに対応する平滑部(即ち、ヘアライン加工により押し潰され、平滑化された部分)が所定の方向に沿って物理的に連続するように設けられ、かかる平滑部の繋がりが、ヘアラインとして認識される。しかしながら、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層の表面に施されるヘアライン加工は、平滑部が物理的には連続していないにも関わらず、人が本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層の表面を観察すると、所定の方向にヘアラインが繋がっているように認識するような特徴を有している。以下、このような特徴を有する本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板について、詳細に説明する。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1は、図1Aに模式的に示したように、基材である鋼板11と、鋼板11のある一方の表面に位置する亜鉛系電気めっき層13と、を少なくとも有している。また、図1Bに示したように、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1は、亜鉛系電気めっき層13の表面側に、透光性を有する有機樹脂被覆層15を更に有していることが好ましい。
<基材について>
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1の基材である鋼板11は、特に限定されるものではなく、亜鉛系電気めっき鋼板に求められる機械的特性(例えば、引張強度等)等に応じて、公知の各種の鋼板を適宜利用することが可能である。
[基材の表面形状について]
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1において、亜鉛系電気めっき層13、又は、亜鉛系電気めっき層13の上層側に位置する有機樹脂被覆層15及び亜鉛系電気めっき層13の双方を除去した後の鋼板11の表面粗さRaは、1.0μm以上1.7μm以下であることが好ましい。ここで、Raは、JIS B 0601:2013に規定された算術平均粗さである。表面粗さRaが1.0μm未満である場合には、以下で詳述するような表面形状を有する亜鉛系電気めっき層13を設けにくくなる可能性があるため好ましくない。表面粗さRaが1.7μmを超える場合には、以下で詳述するような表面形状を有する亜鉛系電気めっき層13を設けたとしても、所定の方向にヘアラインが延伸していると認識されにくくなる可能性があるため好ましくない。
本実施形態に係る鋼板11において、亜鉛系電気めっき層13、又は、亜鉛系電気めっき層13の上層側に位置する有機樹脂被覆層15及び亜鉛系電気めっき層13の双方を除去した後の鋼板11の表面粗さRaは、1.1μm以上1.5μm以下であることがより好ましい。
なお、本発明においては、上記の表面粗さRaは、ヘアラインが延伸していると視認される方向と、ヘアラインに直交する方向と、で大差はないが、上記の表面粗さRaの範囲に関しては、ヘアラインと直交する方向で測定する。
また、鋼板11の表面粗さRaは、亜鉛系電気めっき層13、又は、亜鉛系電気めっき層13の上層側に位置する有機樹脂被覆層15及び亜鉛系電気めっき層13の双方を除去した後において、亜鉛系電気めっき層13の厚みの60%以下となっていることが好ましい。表面粗さRaが、亜鉛系電気めっき層13の厚みの60%超の場合には、以下で詳述するような表面形状を有する亜鉛系電気めっき層13を設けた場合に、耐食性を損なう可能性があるため好ましくない。
本実施形態に係る鋼板11において、亜鉛系電気めっき層13、又は、亜鉛系電気めっき層13の上層側に位置する有機樹脂被覆層15及び亜鉛系電気めっき層13の双方を除去した後の鋼板11の表面粗さRaは、亜鉛系電気めっき層13の厚みの40%以下であることがより好ましい。
なお、亜鉛系電気めっき層13の厚みは次のようにして求める。まず、めっき鋼板をインヒビターを含有する酸液に浸漬して、亜鉛系電気めっき層13を溶解する。次に、このようにして得られた亜鉛系電気めっき層13の付着量と、亜鉛系電気めっき層13に含まれる金属の比重と、から亜鉛系電気めっき層13の厚さを換算する。
なお、亜鉛系電気めっき層13、又は、亜鉛系電気めっき層13の上層として形成された有機樹脂被覆層15及び亜鉛系電気めっき層13の双方を除去した後の鋼板11の表面粗さRaが、上記の範囲内となる場合には、亜鉛系電気めっき層13や有機樹脂被覆層15を形成する前における鋼板11の表面粗さRaも、上記の範囲内となる。
以上説明したような表面粗さRaは、触針式の粗さ計で測定可能である。ここで、後述する亜鉛系電気めっき層13や有機樹脂被覆層15を形成した後に、鋼板11の表面粗さを測定する際には、鋼板を侵さない溶剤やリムーバーなどの剥離剤で亜鉛系電気めっき層13や有機樹脂被覆層15を除去してから、表面粗さRaを測定すればよい。
<亜鉛系電気めっき層について>
また、上記のような鋼板11の一方の表面には、亜鉛系電気めっき層が形成されている。本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13は、図1Aに模式的に示したように、所定の方向(図1Aの下部に矢印で記載した方向)に延伸するヘアラインとして視認される平滑部103と、ヘアラインではない部分として視認される粗部101a,101bと、を有している。ここで、以下の説明では、「ヘアラインが延伸していると視認される方向」のことを、「ヘアライン方向」と略記し、「ヘアラインの延伸方向と視認される方向に対して直交する方向」のことを、「ヘアライン直交方向」と略記する。
図1Aにおいて、粗部101aは、窪んだ部分であり、かつ、ヘアライン加工に伴う研磨等の影響を免れた部分である。また、粗部101bは、亜鉛系電気めっき層13中で、その表面が鋼板11表面から深さ方向に離れた位置にあるにもかかわらず、ヘアライン加工後に残存した部分であり、通常は、粗部101bの部分も、ヘアライン方向に一定の範囲以上にわたって連続している。図1Aの粗部101bでは、亜鉛系電気めっき層13の表面部分においても、粗部が存在する場合があることを、模式的に示している。また、上記の粗部及び平滑部については、以下で改めて詳細に説明する。
[亜鉛系電気めっき層の種別及び組成について]
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13としては、電気亜鉛めっき、又は、電気亜鉛合金めっき(以下、「亜鉛系電気めっき」と総称する。)を使用する。
まず、めっき金属に関して、亜鉛系めっき以外のめっきでは、犠牲防食性に劣るために、使用にあたって切断端面が不可避的に露出する用途には適さない。また、亜鉛系電気めっき層13中の亜鉛濃度が低くなり過ぎると犠牲防食能を喪失するため、亜鉛合金めっきは、亜鉛系電気めっき層13の全質量に対して、亜鉛を65質量%以上含有することが好ましい。
めっき方法としては、電気めっきの他に、溶融めっき法や溶射法や蒸着めっき法などが存在する。しかしながら、溶融めっき法では、スパングルなどの凝固模様やめっき層中に不可避的に混入するドロスにより、外観品位に劣るため、不適である。また、溶射法では、めっき皮膜内部の空隙により外観の均一性を担保できず、不適である。また、蒸着法は、成膜速度が遅いために生産性に乏しいため、不適である。
従って、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1では、鋼板表面に亜鉛系めっきを施すために、電気めっきを利用する。
ここで、電気亜鉛合金めっきを使用して本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13を形成する場合、かかる電気亜鉛合金めっきは、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、P、Sn、Mn、Mo、V、W、Zrからなる元素群から選択される少なくとも1以上の元素と、Znと、を含むことが好ましい。特に、電気亜鉛合金めっきは、Fe、Ni、及び、Coからなる元素群から選択される1以上の元素を、合計で5質量%以上20質量%以下含有することが好ましい。電気亜鉛合金めっきが、Fe、Ni、Coからなる元素群から選択される1以上の元素を上記の合計含有量の範囲内で含有することで、より優れた耐食性を実現することが可能となる。
電気亜鉛めっき及び電気亜鉛合金めっきは、不純物を含有していてもよい。ここで、不純物とは、亜鉛系電気めっき成分として意識的に添加したものではなく、原料中に混入しているか、或いは、製造工程において混入するものであり、Al、Mg、Si、Ti、B、S、N、C、Nb、Pb、Cd、Ca、Pb、Y、La、Ce、Sr、Sb、O、F、Cl、Zr、Ag、W、H等を挙げることができる。また、電気亜鉛めっきを実施する際には、同一の製造設備で製造される電気めっき鋼板の品種にもよるが、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、P、Sn、Mn、Mo、V、W、Zrが不純物として混入する場合がある。本実施形態において、不純物が、全めっきの質量に対して合計で1質量%程度存在しても、めっきによって得られる効果は損なわれることはない。
なお、本発明における亜鉛系電気めっき層13において、Zn含有量が過度に減少すると犠牲防食能が低下するため、亜鉛系電気めっき層13中のZn含有量は、亜鉛系電気めっき層13の全質量に対して、好ましくは前述のように65%以上であり、より好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上である。
亜鉛系電気めっき層13の組成は、例えば以下のような方法で分析することが可能である。すなわち、めっきを侵さない溶剤やリムーバー(例えば、ネオリバーS−701:三彩化工株式会社製)などの剥離剤で有機樹脂被膜層を除去した後に、インヒビター入りの塩酸などで亜鉛系電気めっき層を溶解し、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分光分析装置により亜鉛系電気めっき層13の組成を分析すればよい。
[亜鉛系電気めっき層13の付着量について]
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層の付着量は、10g/m以上であることが好ましい。所望の耐食性を担保できれば、亜鉛系電気めっき層の付着量は問われないが、亜鉛系電気めっき層の付着量が10g/m未満の場合、ヘアラインの付与時に地鉄露出率が5%を越える可能性が高くなるため好ましくない。
亜鉛系電気めっき層の付着量は、より好ましくは15g/m以上であり、更に好ましくは20g/m以上である。なお、亜鉛系電気めっき層の付着量の上限値については、特に規定されず、本実施形態に係るめっき鋼板の製造コスト等に鑑みて、適宜決定すればよく、例えば、60g/m程度とすることができる。
[地鉄露出率について]
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1は、亜鉛系電気めっき層13の表面に対し、研磨等によりヘアライン加工を施すことを前提としている。そのため、研磨等の工程段階で、亜鉛系電気めっき層13の一部が除去され、研磨・研削厚さ次第では、部分的に地鉄(すなわち、鋼板11)が露出する場合も生じ得る。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の地鉄露出率は、5%未満であることが好ましい。本実施形態において、耐食性は、亜鉛又は亜鉛合金めっきによって十分確保されるものの、ヘアラインの付与時に地鉄が露出した場合、ガルバニック腐食の影響で長期耐食性が低下する場合があり、好ましくないためである。本実施形態では、亜鉛系電気めっき層13の地鉄露出率が5%未満であることによって、一般に鋼板に求められる適度な耐食性に加えて、長期耐食性にも優れるため、極めて良好な耐食性を有する。
亜鉛系電気めっき層13の地鉄露出率は、より好ましくは3%以下であり、0%であることが更に好ましい。
なお、地鉄露出率は、めっきを侵さない溶剤やリムーバーなどの剥離剤で有機樹脂被覆層15を除去してから、任意の1mm四方5ヶ所をEPMA分析し、分析面積に対するZnが検出されない面積率を画像解析することで、求めることができる。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の表面には、特定のヘアライン加工が施されているため、表面はヘアライン加工に伴う特徴的な表面形状となっている。かかる表面形状については、以下で改めて詳細に説明する。
<有機樹脂被覆層について>
上記のようなヘアラインを付与された亜鉛系電気めっき層13の表面は、図1Bに模式的に示したように、透明な樹脂(換言すれば、透光性を有する樹脂)で被覆されることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の表面側には、有機樹脂被覆層15が設けられることが好ましい。ここで、本実施形態において、「樹脂が透光性を有する」とは、亜鉛系電気めっき鋼板1の表面に光を当て、亜鉛系電気めっき鋼板1を鉛直方向から10°の角度で観察した際に、亜鉛系電気めっき層13に付与されたヘアラインを視認できることを意味する。
[有機樹脂被覆層の成分について]
有機樹脂被覆層15の形成に用いられる樹脂は、十分な透明性を保持するものであれば特に限定されない。有機樹脂被覆層15の形成に用いられる樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、メラミンアルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
更に、上記有機樹脂被覆層15と亜鉛系電気めっき層13との密着性を向上させる手段として、外観を損なわない範囲で、上記鋼板11及び上記亜鉛系電気めっき層13からなるめっき鋼板に対して、無機処理や有機無機複合処理や表面改質処理等を施してもよい。ここで、「外観を損なう」とは、透明度を減少させたり、光沢むらを生じさせたり、異常な凹凸感を生じたりといった、メタリック感を減少させることを意味する。このような処理としては、例えば、酸化Zr処理や、酸化Zn処理や、シランカップリング剤処理や、弱酸浸漬処理や、弱アルカリ浸漬処理等が挙げられる。
有機樹脂被覆層15に所望の性能を付加するために、透光性及び外観を損なわない範囲、かつ、本発明で規定される範囲を逸脱しない範囲で、種々の添加剤を含有させてもよい。有機樹脂被覆層15に付加する性能としては、例えば、耐食性、摺動性、耐疵付き性、導電性、色調などが挙げられる。例えば耐食性であれば、防錆剤やインヒビターなどを含有させてもよく、摺動性や耐疵付き性であれば、ワックスやビーズなどを含有させてもよく、導電性であれば、導電剤などを含有させてもよく、色調であれば、顔料や染料などの公知の着色剤を含有させてもよい。
なお、本実施形態に係る有機樹脂被覆層15に対して、顔料や染料などの公知の着色剤を含有させる場合、ヘアラインが視認でき、かつ、メタリック感が失われない程度に着色剤を含有させることが好ましい。ここで、ヘアラインが視認でき、かつ、メタリック感が失われない程度とは、CIE標準光源D65を用いた市販の色差計により、10度視野で有機樹脂被覆層15の色調(L表色系による色調)をSCE(Specula Component Excluded:正反射光除去)方式で測定したときに、彩度(a*2+b*20.5≦10という関係が成立する範囲を意味する。
[有機樹脂被覆層の厚みについて]
本実施形態に係る有機樹脂被覆層15の厚みは、10μm以下であることが好ましい。有機樹脂被覆層15の厚みが10μmを超えると、光が有機樹脂被覆層15内を通る距離が長くなることによって反射光が減少し、ヘアライン方向の光沢度が低下する結果、ヘアラインが視認しづらくなる可能性が高くなるため好ましくない。また、加工に伴う樹脂の変形によって、亜鉛系電気めっき層13表面のテクスチャと、有機樹脂被覆層15の表面の形状とのずれが、発生しやすくなるため好ましくない。
以上の理由により、有機樹脂被覆層15の厚みは、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。
一方、耐食性の観点から、有機樹脂被覆層15の断面から見て最も薄い部分の厚み(すなわち、有機樹脂被覆層15の厚みの最小値)が、0.1μm以上であり、かつ、有機樹脂被覆層15の平均厚みが、1.0μm以上であることが好ましい。ここで、「最も薄い部分」とは、ヘアラインに対して直交する方向に任意の位置で5mmの長さを切り出して断面試料を作成し、100μm間隔で20点測定した膜厚の最小値を意味し、「平均厚み」とは、20点の平均を意味する。
有機樹脂被覆層15の最も薄い部分の厚みは、0.5μm以上であることがより好ましく、有機樹脂被覆層15の平均厚みは、3.0μm以上であることがより好ましい。
以上、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1の全体構成について、詳細に説明した。なお、図1A及び図1Bでは、鋼板11の一方の表面に亜鉛系電気めっき層13及び有機樹脂被覆層15が形成される場合について図示しているが、鋼板11の互いに対向する二つの表面上に亜鉛系電気めっき層13及び有機樹脂被覆層15が形成されてもよい。
(亜鉛系電気めっき層13の表面形状について)
次に、図1Aを参照しながら、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の表面形状について、詳細に説明する。
以下では、亜鉛系電気めっき層13の上層に有機樹脂被覆層15が存在した場合であっても好適なメタリック感及び好適な加工部密着性と光沢の過度な上昇抑制とを両立させるために、亜鉛系電気めっき層13に求められる各種条件について、詳細に説明する。
[粗部と平滑部の分布状態]
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13において、平滑部103がヘアライン方向に長い距離にわたって連続して存在していると、光沢が高くなりすぎるため好ましくない。一方、粗部101a,101bが過度に連続していると、ヘアラインの連続性が損なわれるため好ましくない。そのため、ヘアラインを形成する平滑部103を、粗部101a,101bが適切な割合で分断していることが重要である。
高さ方向の表示分解能が10nm以上であり、かつ、幅方向の表示分解能が10nm以上であるレーザー顕微鏡を用いて、50μm×50μmの領域の3次元平均表面粗さSa(50μm)を測定したとき3次元平均表面粗さSa(50μm)が高い領域、又は、3次元平均表面粗さSa(50μm)が低い領域が連続していると、平滑部103又は粗部101a,101bが連続していると判断できる。
ここで、「3次元平均表面粗さSa(50μm)が高い領域、又は、3次元平均表面粗さSa(50μm)が低い領域が連続している」とは、ヘアライン方向又はヘアライン直交方向に沿って、3次元平均表面粗さSa(50μm)を連続して測定したとき、隣り合う2つの領域(以下、隣接領域と呼称する場合がある)で3次元平均表面粗さSa(50μm)の比率であるR50を算出したときに、R50の値が、0.667以上1.500未満の範囲にあることをいう。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13において、ヘアライン方向に3次元平均表面粗さSa(50μm)をn箇所で測定し、ヘアライン方向の隣接領域において3次元平均表面粗さSa(50μm)の比率R50の値を(n−1)箇所で算出したとき、0.667以上1.500未満の範囲外となる(換言すれば、比率R50の値が、0.667未満又は1.500以上である)隣接領域(比率R50の値が、0.667未満又は1.500以上である隣接領域を隣接領域Aと呼称する場合がある)の個数割合が、30%以上である(つまり、(隣接領域Aの個数)/(n−1)が0.3以上である)。言い換えれば、R50が0.667以上1.500未満である隣接領域(以下、隣接領域Bと呼称する場合がある)の個数割合が70%未満である。
ヘアライン方向の隣接領域Aの個数割合が30%未満である(つまり、隣接領域Bの個数割合が70%以上である)場合、平滑部103が連続しすぎて光沢が高くなりすぎ、かつ、有機樹脂被覆層15を設けた場合の加工部密着性が低下するか、又は、粗部101a,101bが連続しすぎて連続したヘアラインと認識できなくなり、かつ、ヘアライン方向の光沢度が低下しすぎることによってメタリック感を損なってしまうため好ましくない。
一方、ヘアライン方向の隣接領域Aの個数割合の上限は無く、当該個数割合は100%であってもよい。
ヘアライン方向の隣接領域Aの個数割合を30%以上とすることで、メタリック感を損なわずに光沢を適度に抑制し、かつ、優れた被膜密着性を実現することができる。当該個数割合は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは40%以上である。
ヘアライン直交方向においてもヘアライン方向と同様に、隣接領域Aの個数割合を30%以上とする。ヘアライン直交方向の隣接領域Aの個数割合が30%未満である場合も、平滑部103が連続しすぎて光沢が高くなりすぎ、かつ、有機樹脂被覆層15を設けた場合の加工部密着性が低下するか、又は、粗部101a,101bが連続しすぎてヘアラインと認識できなくなるため好ましくない。
一方、ヘアライン直交方向の隣接領域Aの個数割合についても上限は無く、当該個数割合は100%であってもよい。
当該個数割合を30%以上とすることで、メタリック感を損なわずに光沢を適度に抑制し、かつ、優れた被膜密着性を実現することができる。
当該個数割合は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは40%以上である。
なお、本発明では、ヘアライン方向及びヘアライン直交方向での隣接領域Aの個数割合を30%以上とし、例えば図1Aのように、亜鉛系電気めっき層13の断面形態に凹凸を付与し、ヘアラインの連続性を遮断するための手法として、後述するように、鋼板粗度に対する研磨・研削厚さを所定の割合に制限している。また、前述のように、母材である鋼板11の表面粗さRaを特定範囲とすることが好ましい。
[粗部101a,101bにおける表面粗さについて]
前述のように、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13では、隣接領域Aの個数割合を30%以上とすることにより、亜鉛系電気めっき層13の上層に有機樹脂被覆層15が設けられた際の被膜密着性を担保している。
[平滑部における表面粗さについて]
また、先だって言及したように、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13では、平滑部103が適切な割合で存在していることで、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板1は好適なメタリック感を有している。ここで、平滑部103によるメタリック感の向上効果を実現するためには、平滑部103が、適切な表面粗さを有し、かつ適切な広さの領域を有することが好ましい。
[有機樹脂被覆層の形成前後での亜鉛系電気めっき層の表面粗さ]
また、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13において、有機樹脂被覆層15が存在する状態において、ヘアライン直交方向に沿って測定した表面粗さRa(CC)[単位:μm]と、有機樹脂被覆層15を剥離した後における、ヘアライン直交方向に沿って測定した亜鉛系電気めっき層13の表面粗さRa(MC)[単位:μm]と、が、以下の式(101)で表される関係を満足することが好ましい。
Ra(CC)<Ra(MC)<5×Ra(CC) ・・・式(101)
ここで、上記式(101)におけるそれぞれのRaは、任意の10ヶ所を測定し、最大側2ヶ所と最小側2ヶ所を除いた6ヶ所のRaの平均値である。
表面粗さRa(MC)とRa(CC)が、上記式(101)で表される関係を満足することで、ヘアライン外観を有しながらメタリック感をより確実に実現することが可能となる。
表面粗さRa(MC)及びRa(CC)は、より好ましくは、以下の式(103)で表される関係を満足する。
1.5×Ra(CC)<Ra(MC)<3.0×Ra(CC) ・・・式(103)
なお、以上説明したような、各方向における表面粗さRaは、すべて触針式の粗さ計で測定可能である。ここで、後述する有機樹脂被覆層15を形成した後に、亜鉛系電気めっき層13の表面粗さを測定する際には、めっきを侵さない溶剤やリムーバーなどの剥離剤で有機樹脂被覆層15を除去してから、測定を行えばよい。
以上、図1Aを参照しながら、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の表面形状について、詳細に説明した。
(亜鉛系電気めっき鋼板の製造方法について)
続いて、以上説明したような本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板の製造方法について、簡単に説明する。
以下では、まず、図1A及び図1Bに示したような構造を有する亜鉛系電気めっき鋼板の製造方法について、簡単に説明する。
まず、表面粗さが所定の範囲内となるように調整された鋼板に対し、アルカリ溶液による脱脂と塩酸や硫酸等を用いた酸による酸洗とを施し、亜鉛系電気めっき層を形成する。ここで、鋼板の表面粗さの調整は、公知の方法を利用することが可能であり、例えば、表面粗さが所望の範囲となるように調整されたロールで圧延して転写する方法、などの方法を用いることができる。
亜鉛系電気めっき層13の形成方法としては、既知の電気めっき法を用いることができる。
電気めっき浴としては、例えば、硫酸浴、塩化物浴、ジンケート浴、シアン化物浴、ピロリン酸浴、ホウ酸浴、クエン酸浴、その他錯体浴及びこれらの組合せ等を使用できる。
電気亜鉛合金めっき浴には、Znイオンの他に、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、P、Sn、Mn、Mo、V、W、Zrから選ばれる1つ以上の単イオン又は錯イオンを添加することで、Co、Cr、Cu、Fe、Ni、P、Sn、Mn、Mo、V、W、Zrを所望量含有する電気亜鉛合金めっき層を形成することができる。めっき浴中のイオンの安定化やめっきの特性を制御するために、上記めっき浴に対して添加剤を加えることが、さらに好ましい。
上記電気めっき浴の組成、温度、流速、及び、めっき時の電流密度や通電パターン等は、所望のめっき組成となるように適宜選択すればよく、特に限定されない。また、亜鉛めっき層及び電気亜鉛合金めっき層の厚みは、亜鉛めっき層や電気亜鉛合金めっき層が所望の組成となる電流密度の範囲内で電流値と時間とを調整することにより、制御することができる。
得られた亜鉛系電気めっき層13を備える鋼板11に対し、本実施形態に係るヘアラインを形成する。ヘアラインを付与する方法については、研磨ベルトで研磨する方法、砥粒ブラシで研磨する方法、研磨・研削機器で研磨等する方法等を挙げることができる。
ヘアラインの深さや頻度は、研磨ベルトや砥粒ブラシの粒度、及び、圧下力や相対速度や回数を調整することによって、所望の状態に制御することができる。
ここで、上記のような研磨処理において、めっきを施したままの結晶粒子が存在している凹部がそのまま保持されるか、凹部が適宜研削等されることで、図1A及び図1Bに模式的に示したような、平滑部103を分断するように粗部101a,101bを存在させることができる。
本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13では、鋼板11の表面粗さRaに対するヘアライン形成時の研磨・研削厚さ(つまり、研磨・研削率)を10〜80%とすることで、表面に所望のヘアラインを形成することができる。ここで、研磨・研削率とは、亜鉛系電気めっき層13を鋼板表面粗さに対してどれだけ研磨・研削したかを、亜鉛系電気めっき層13の表面を起点とした深さ方向の長さで表した量である。研磨・研削厚さは、研磨紙の粒度、圧下力及び研磨回数を調整することで変化させることができる。
10〜80%の研磨・研削率でヘアラインを形成することにより、基材である鋼板11の表面上の凹凸が残ったままの状態でヘアラインが形成されるため、平滑部が物理的には連続していないにも関わらず、所定の方向に繋がって見えるヘアラインを形成することができる。
研磨・研削率が10%未満の場合、ヘアライン方向及び/又はヘアライン直交方向の隣接領域Aの個数割合が30%未満となってしまう可能性が高いため好ましくない。研磨・研削率は10%以上とし、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。
研磨・研削率が80%超の場合、ヘアライン方向及び/又はヘアライン直交方向の隣接領域Aの個数割合が30%未満となってしまう可能性が高いため好ましくない。研磨・研削率は80%以下とし、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。
鋼板11の表面粗さRaは、上述したように、触診式の粗さ計で測定可能である。また、研磨・研削率は、隣接する2か所について、一方にはヘアラインを付与し、もう一方にはヘアラインを付与せず、その両者のめっき付着量の差から算出する。なお、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層の場合、付着量から長さに変換する際には比重7.1を用いる。
ヘアラインを付与した亜鉛系電気めっき層13の表面に、必要に応じて、有機樹脂を被覆する。ここで、有機樹脂被覆層15の形成に使用する塗料は、亜鉛系電気めっき層13に塗布した瞬間には亜鉛系電気めっき層13の表面形状に追従し、一旦亜鉛系電気めっき層13の表面形状を反映した後のレベリングは遅いことが好ましい。すなわち、高いせん断速度では粘度が低く、低いせん断速度では粘度が高い塗料であることが望ましい。具体的には、せん断速度0.1[1/sec]では10[Pa・s]以上の粘度を有し、せん断速度1000[1/sec]では0.01[Pa・s]以下のせん断粘度を有することが望ましい。
上記の範囲にせん断粘度を調整するには、例えば水系のエマルジョン樹脂を用いた塗料であれば、水素結合性の粘度調整剤を加えて調整することができる。このような水素結合性の粘度調整剤は、低せん断速度時には水素結合によって互いに拘束しあうため、塗料の粘度を高めることができるが、高せん断速度では水素結合が切断されるため、粘度が低下する。これにより、求める塗装条件に応じたせん断粘度に調整することが可能となる。
有機樹脂を被覆する方法は、特に限定されず、既知の方法を用いることができる。例えば、上記のような粘度に調整された塗料を使用し、吹き付け法やロールコーター法やカーテンコーター法やダイコーター法や浸漬引き上げ法で塗布した後に、自然乾燥又は焼付け乾燥されて形成することができる。なお、乾燥温度及び乾燥時間、並びに、焼付け温度及び焼付け時間は、形成する有機樹脂被覆層15が所望の性能を備えるように、適宜決定すればよい。このとき、昇温速度が遅いと、樹脂成分の軟化点から焼付け完了までの時間が長くなってレベリングが進んでしまうため、昇温速度は、速い方が好ましい。
(亜鉛系電気めっき層の具体例について)
続いて、以上説明したような方法により形成される、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13の具体例について、図2A及び図2Bを参照しながら、簡単に説明する。図2Aは、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき鋼板が有する亜鉛系電気めっき層の表面をSEMで観察した際の画像の一例である。また、図2Bは、図2Aに示した亜鉛系電気めっき層13の表面について、目視した場合と同様に見えるように通常のカメラで撮影した画像である。
以上説明したような製造方法で亜鉛系電気めっき層13を形成すると、例えば図2Aに示したような表面形状を有する亜鉛系電気めっき層13を形成することができる。図2Aに示した顕微鏡写真において、写真の高さ方向がヘアライン方向に対応し、写真の幅方向がヘアライン直交方向に対応している。図2Aの顕微鏡写真から明らかなように、本実施形態に係る亜鉛系電気めっき層13では、平滑部103は、ヘアライン方向に沿って連続的に繋がって分布しているとは限らず、粗部101中に分散して存在していることがわかる。
しかしながら、図2Aに示したような亜鉛系電気めっき層13を備える亜鉛系電気めっき鋼板1をマクロ的に観察すると、図2Bに示したように、ヘアライン方向に沿って、無数のヘアラインが存在しているように認識される。かかる現象は、前述のように、粗部101が所定の割合となるように分布していることに起因する。
以下、本発明の効果を、発明例により具体的に説明する。なお、以下に示す実施例に記載の内容により、本発明の内容が制限されるものではない。
基材としては、厚さが0.6mmである、焼鈍及び調質圧延済みの鋼板(成分組成として、質量%で、C:0.05%、Si:0.001%、Mn:0.15%、P:0.01%、S:0.01%、sol.Al:0.04%をそれぞれ含有し、残部がFe及び不純物からなるAlキルド鋼板)を用いた。上述の鋼板に対して、濃度30g/LのNaSiO処理液を用い、処理液60℃、電流密度20A/dm、処理時間10秒の条件で電解脱脂し、水洗した。次いで、電解脱脂した鋼板を、60℃の濃度50g/LであるHSO水溶液に10秒間浸漬し、更に水洗することで、めっき前処理を行った。なお、鋼板の表面粗さRa(算術平均粗さ)は、それぞれ、表に示す通りであった。また、市販のSUS304鋼板(B4ブライト仕上げの鋼板)に#180砥粒でヘアラインを付与したものを、比較材として用いた(「No.SUS」と表示されている)。No.SUSでは亜鉛系電気めっき層を形成せず、かつ、ヘアラインも付与しなかった。また、No.SUSでは有機樹脂被覆層も形成しなかった。
次いで、上記の鋼板に対し、表に示すめっきを施して、亜鉛系電気めっき層を形成した。
亜鉛系電気めっき層としては、Znめっき皮膜、Zn―Niめっき皮膜、Zn−Feめっき皮膜、Zn−Coめっき皮膜、Zn−Ni−Feめっき皮膜、Zn−Co−Moめっき皮膜を用いた。それぞれのめっき皮膜の形成条件は、次の通りである。
<Znめっき皮膜(No.1〜15、62、66)>
Znめっき皮膜は、硫酸Zn七水和物1.0Mと、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、浴温50℃、電流密度50A/dmで、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
<Zn―Niめっき皮膜(No.16〜29、63、67)>
浴温50℃、電流密度50A/dmでめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Ni六水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Ni六水和物(合計で1.2M)と、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
<Zn−Feめっき皮膜(No.30〜43、64、68)>
浴温50℃、電流密度50A/dmでめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Fe(II)七水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Fe(II)七水和物(合計で1.2M)と、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
<Zn−Coめっき皮膜(No.44〜57、65、69)>
浴温50℃、電流密度50A/dmでめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Co七水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Co七水和物(合計で1.2M)と、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
<Zn−Ni−Feめっき皮膜(No.58〜59)>
浴温50℃、電流密度50A/dmでめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Ni六水和物と硫酸Fe(II)七水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Ni六水和物と硫酸Fe(II)七水和物(合計で1.2M)と、無水硫酸ナトリウム50g/Lと、を含むpH2.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
<Zn−Co−Moめっき皮膜(No.60〜61)>
浴温50℃、電流密度50A/dmでめっきしたときに、表の「めっき種」の列に記載した組成となるように、硫酸Zn七水和物と硫酸Co七水和物とモリブデン酸ナトリウム二水和物との混合比率を調整した。上述の混合比率で調整した硫酸Zn七水和物と硫酸Co七水和物とモリブデン酸ナトリウム二水和物(合計で1.2M)と、ギ酸ナトリウム25g/Lと、ほう酸50g/Lと、を含むpH4.0のめっき浴を用い、付着量が表に示した値となるように、めっき時間を調整して形成した。
上記の全てのめっき処理に際して、相対流速が1m/secとなるように、めっき液を流動させた。
<めっき皮膜の組成の測定>
得られためっき皮膜の組成は、めっきした鋼板をインヒビター(朝日化学製 NO.700AS)入りの10質量%塩酸に浸漬して溶解剥離し、溶解した溶液をICPで分析することで確認した。
上記の試薬は、全て一般試薬を用いた。
<ヘアラインの形成>
得られためっき鋼板に対して、鋼板のL方向(圧延方向)に沿って、ヘアラインを付与した。ヘアラインは研磨紙を鋼板に押し当てることで形成した。研磨紙の粒度、圧下力及び研磨回数を調整して、表に記載の研磨・研削率となるようにヘアラインを形成した。
なお、研磨・研削率は、鋼板幅方向に隣接する100mm幅の2か所の一方にヘアラインを付与し、もう一方にはヘアラインを付与せずにそれぞれのめっき付着量を求め、ヘアライン付与前のめっき付着量ともう一方のヘアライン付与後の付着量の差から算出した。また、この時のめっき比重の値は7.1を用いた。
ヘアライン付与後のめっき粗度及びめっき付着量は、表に示すとおりである。
<表面粗さRaの測定>
めっき層を除去した後の鋼板の表面粗さRaは、3次元表面粗さ測定機(東京精密製 サーフコム1500DX3)で測定し、めっき鋼板の3次元表面粗さSaは、高さ方向の表示分解能が1nm以上であり、かつ、幅方向の表示分解能が1nm以上であるキーエンス社製レーザー顕微鏡/VK−9710を用いて上記の方法に則して測定した。
<ヘアライン付与前のめっき層の付着量の測定>
ヘアライン付与前のめっき付着量は、めっき層を形成した後の鋼板を、インヒビター(朝日化学製 NO.700AS)入りの10質量%塩酸に浸漬して、溶解剥離する前後の重量差から算出した。
<R50の測定>
50μm×50μmの領域の3次元平均表面粗さSa(50μm)を、ヘアライン方向に21箇所、ヘアライン直交方向に21箇所それぞれ連続して測定した。隣接領域での3次元平均表面粗さSa(50μm)の比率R50を、合計20の隣接領域で算出した。合計20の隣接領域のうち、R50が0.667未満又は1.500以上である隣接領域Aが占める個数割合を、各表に記載した。
<ヘアライン付与後のめっき層の付着量の測定>
ヘアライン付与後のめっき層の付着量の測定は、ヘアライン付与前のめっき層の付着量の測定と同様にして行った。
ここで、ヘアライン付与前後でのめっき層の付着量の差分は、ヘアラインを付与する過程での、めっき層の減少分に相当する。
<地鉄露出率の測定>
上述の製法で得られためっき鋼板を切り出し、1mm四方の視野5か所をEPMA(日本電子製 JXA8230)で画像を解析した。画像解析により、Znが検出されず、Feが検出される領域は地鉄が露出していると見なし、当該領域の面積率を地鉄露出率とした。EPMA分析は、加速電圧15kV、照射電流30nAの条件で実施した。Znの検出強度が標準試料(純Zn)を測定した場合の1/16以下となる領域をZnが検出されないと判断し、Feの検出強度が標準試料(純Fe)を測定した場合の14/16を超える領域をFeが検出されたと判断した。
得られたこれらの結果を、表に示した。
<有機樹脂被覆層の形成>
ヘアラインを付与した上記のめっき鋼板に対し、透明な有機樹脂被覆層を形成した。有機樹脂形成用処理液としては、ウレタン系樹脂(株式会社ADEKA製、HUX−232)を水に分散させた、種々の濃度と粘度の処理液を用いた。処理液をロールですくい上げ、焼付け乾燥後に表に示す厚みとなるようにめっき鋼板に転写した。処理液を転写しためっき鋼板を250℃に保持した炉に入れ、鋼板の到達温度が210℃に到達するまで1分〜5分間保持した後、取り出して冷却した。また、No.62〜69については、有機樹脂被膜層に対し、着色剤としてカーボンブラック(三菱ケミカル製:#850)とシアニンブルー(大日精化工業製:AFブルーE−2Bを添加した。
<有機樹脂形成用処理液の調整>
有機樹脂形成用処理液に粘度調整剤としてBYK−425(ビッグケミー製)を添加し、せん断速度0.1[1/sec]では10[Pa・s]以上の粘度を有し、せん断速度1000[1/sec]では0.01[Pa・s]以下のせん断粘度を有するように調整した。なお、条件6、9、25、39、53に対応する処理液にのみ粘度調整剤を加えず、せん断速度0.1[1/sec]における粘度が10[Pa・s]を下回るように調整した。
<有機樹脂被覆層の表面粗さRa(CC)の測定>
有機樹脂被覆層の表面粗さRa(CC)は、めっき層を除去した後の鋼板の表面粗さRaの測定と同様に、3次元表面粗さ測定機(東京精密製 サーフコム1500DX3)で測定した。
<光沢度の測定>
有機樹脂被覆層形成後のめっき鋼板の60°光沢度G60は、光沢度計(スガ試験機製:グロスメーターUGV−6P)によりL方向(鋼板の圧延方向)及びC方向(圧延方向に垂直な方向)のそれぞれで測定した。得られたG60の値を表に示した。
ヘアライン方向(用いた試料ではヘアラインがL方向に沿って形成されているので、L方向と同じ方向を表す)に測定した光沢度G60(Gl)が70以上150以下の場合を適度な光沢度が得られていると判断した。
<透光性の評価>
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板の透光性は、以下の方法により評価した。
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板に対して、45°の角度から蛍光灯の光を当て、鋼板に対して鉛直方向から10°の角度で15cmの距離から観察し、下記の評価基準で透光性を評価した。A又はBと評価されたものを合格とした。得られた結果を、表に示した。
(評価基準)
A:長さ20mm以上のヘアラインを明瞭に視認できる
B:輪郭が不明瞭な長さ20mm以上のヘアラインを視認できる
C:20mm以上のヘアラインを視認できない
D:ヘアラインをまったく視認できない
<被膜密着性の評価>
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板の被膜密着性は、以下の方法により評価した。
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板から、幅50mm×長さ50mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して180°の折り曲げ加工を施した後、折り曲げ部の外側に対してテープ剥離試験を実施した。テープ剥離部の外観を拡大率10倍のルーペで観察し、下記の評価基準で評価した。折り曲げ加工は、20℃の雰囲気中において、0.5mmのスペーサーを間に挟んで実施した。A又はBと評価されたものを合格とした。得られた結果を、表に示した。
なお、No.SUSでは、有機樹脂被覆層を形成していないため、被膜密着性を評価しなかった。そのため、No.SUSの被膜密着性の評価結果を「−」で示している。
(評価基準)
A:テープの粘着面に有機樹脂被覆層及び/又は亜鉛系電気めっき層の剥離が認められない
B:テープの粘着面の極一部に有機樹脂被覆層及び/又は亜鉛系電気めっき層の剥離が認められる(剥離面積≦2%)
C:テープの粘着面の一部に有機樹脂被覆層及び/又は亜鉛系電気めっき層の剥離が認められる(2%<剥離面積≦20%)
D:テープの粘着面に有機樹脂被覆層及び/又は亜鉛系電気めっき層の剥離が認められる(剥離面積>20%)
<耐食性の評価>
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板の耐食性(より詳細には、長期耐食性)を評価する際は、まず、得られた試料を75mm×100mmの大きさに切断し、端面及び裏面をテープシールで保護した。端面及び裏面をテープシールで保護した試料を、35℃−5%NaClの塩水噴霧試験(JIS Z 2371:2015)に供した。240時間後の錆発生率が5%以下の試料をOKとし、5%を越えた試料をNGとした。得られた結果を、表に示した。
<メタリック感の評価>
有機樹脂被覆層形成後の亜鉛系電気めっき鋼板のメタリック感は、以下の方法により評価した。
ヘアライン方向に測定した光沢度G60(Gl)及びヘアライン直交方向に測定したG60(Gc)の値、及び、分光測色計(コニカミノルタ製:CM−2600d)を用いてCIE標準光源D65条件でのL表色系による色調をSCE(Specula Component Excluded:正反射光除去)方式で測定したa及びbの値を用い、下記の評価基準でメタリック感を評価した。A又はBと評価されたものを合格とした。得られた結果を、表に示した。
(評価基準)
A:0.3≦Gc/Gl≦0.75 かつ (a*2+b*20.5≦5
B:0.3≦Gc/Gl≦0.85 かつ 5<(a*2+b*20.5≦10、又は、0.75<Gc/Gl≦0.85 かつ (a*2+b*20.5≦10
C:0.3>Gc/Gl、又は、Gc/Gl>0.85、又は、10<(a*2+b*20.5
表1〜表6から明らかなように、本発明の実施例に該当する亜鉛系電気めっき鋼板は、優れた透光性を有し、適度な光沢度を有しつつ、優れたメタリック感及び被膜密着性を有していることがわかる。一方、本発明の比較例に該当する亜鉛系電気めっき鋼板は、透光性、光沢度、メタリック感、被膜密着性の少なくとも何れかの項目について、優れた結果を得ることができなかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 亜鉛系電気めっき鋼板
11 鋼板
13 亜鉛系電気めっき層
15 有機樹脂被覆層
101a,101b 粗部
103 平滑部

Claims (8)

  1. 鋼板と;
    前記鋼板の少なくとも一方の表面に位置し、表面に所定の方向に延伸するヘアラインを有する亜鉛系電気めっき層と;
    前記亜鉛系電気めっき層の上層に位置し、透光性を有し、かつ、厚みが10μm以下である有機樹脂被覆層と;
    を備え、
    前記亜鉛系電気めっき層において、前記ヘアラインが延伸しているヘアライン方向、及び、前記ヘアライン方向に対して直交するヘアライン直交方向のそれぞれに沿って、50μm×50μmの領域の3次元平均表面粗さSa(50μm)を連続して測定して、隣り合う2つの前記領域により形成される隣接領域で前記Sa(50μm)の比率であるR50を算出し、前記R50が0.667未満又は1.500以上の前記隣接領域を隣接領域Aとしたときに、前記ヘアライン方向及び前記ヘアライン直交方向のいずれにおいても、前記隣接領域Aの個数割合が30%以上であり、
    前記ヘアライン方向に測定した光沢度G60の値であるGlと、前記ヘアライン直交方向に測定した光沢度G60の値であるGcとが、0.3≦Gc/Gl≦0.85を充足し、
    前記有機樹脂被覆層のL 表色系による色調を、CIE標準光源D65を用いた色差計を用いて正反射光除去方式で測定したときに、彩度を示す(a *2 +b *2 0.5 の値が10以下である
    ことを特徴とする、亜鉛系電気めっき鋼板。
  2. 前記有機樹脂被覆層が着色剤を含有することを特徴とする、請求項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
  3. 前記有機樹脂被覆層が存在する状態において、前記ヘアライン直交方向に沿って測定した表面粗さRa(CC)と、前記有機樹脂被覆層を剥離した後における、前記ヘアライン直交方向に沿って測定した前記亜鉛系電気めっき層の表面粗さRa(MC)と、が、以下の式(1)で表される関係を満足する
    ことを特徴とする、請求項又はに記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
    Ra(CC)<Ra(MC)<5×Ra(CC) ・・・式(1)
  4. 前記亜鉛系電気めっき層の地鉄露出率が、5%未満である
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
  5. 前記亜鉛系電気めっき層の付着量が、10g/m〜60g/mである
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
  6. 前記亜鉛系電気めっき層、又は、前記亜鉛系電気めっき層の上層として設けられた有機樹脂被覆層及び前記亜鉛系電気めっき層の双方を除去した後の触針式の粗さ計で測定した前記鋼板の表面粗さRaが、1.0μm以上1.7μm以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
  7. 前記亜鉛系電気めっき層が、Fe、Ni、及び、Coからなる群より選択される何れか1以上の元素を、合計で5質量%〜20質量%含有する
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
  8. 前記亜鉛系電気めっき層、又は、前記亜鉛系電気めっき層の上層として設けられた有機樹脂被覆層及び前記亜鉛系電気めっき層の双方を除去した後の触針式の粗さ計で測定した前記鋼板の表面粗さRaが、前記亜鉛系電気めっき層の厚みの60%以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の亜鉛系電気めっき鋼板。
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