<第1の実施の形態>
以下、図面に沿って、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る乗用型のマルチ移植機100は、前輪1と後輪(車輪)2とによって支持される走行機体3を有し、走行機体3の後部には、昇降リンク機構5を介して植付作業機6が昇降自在に支持される。昇降リンク機構5は、走行機体3と植付作業機6との間に介設されたリフトシリンダ7を有し、後述する油圧コントロール機構25(図2参照)によるリフトシリンダ7の伸縮動作に応じて植付作業機6が昇降される。
植付作業機6は、昇降リンク機構5によって支持される作業機フレーム8、マット苗が載置される苗載台9、芯に巻きつけられるロール状のシートを横架収納するシート収納部10、苗を圃場に植付ける植付機構11、圃場面を滑走する円筒状のローラフロート12並びに紙押さえロール13及びカッタレバー15の操作により圃場面を被覆したシートS(図5及び図10参照)とロール状のシートとを適宜分断するカッタ16等を備えて構成されている。
植付機構11は、走行機体3の走行に伴い連続的に繰出されて圃場面を被覆するシートSの上からマット苗より掻取った苗を圃場に植付ける。ローラフロート12は、左右に延びる円筒状に形成されて前後に並列して設けられ、紙押さえロール13は、左右に延びる円筒状に形成されてローラフロート12より後方に配置される。ローラフロート12及び紙押さえロール13は、繰出されたシートSを圃場面に押圧しながら圃場面を滑走し、紙押さえロール13は、ローラフロート12より小さな接地面積となるように構成されている。
上記走行機体3の中央部には、オペレータが搭乗して走行機体3や植付作業機6を操作する運転部17が配置されている。該運転部17には運転座席19、ステアリングハンドル20、作業機操作具21(図7参照)、表示パネル22(図7参照)、植付距離設定手段84を有する入力パネル23(図7参照)等が配置されている。なお、本実施の形態では、特に記載が無い限りは運転座席19に着座したオペレータが向いている正面方向を前方とし、これを基準に前後左右方向を定義する。
走行機体3の前部にはエンジン(図示せず)やトランスミッション(図示せず)が搭載されている。エンジンが出力する動力は、トランスミッションで変速され、前輪1及び後輪2に伝達されると共に、油圧コントロール機構25(図2参照)を介して植付作業機6に伝達される。トランスミッションの内部には、植付クラッチ(作業機クラッチ、図示せず)が設けられており、該植付クラッチの断接に伴い植付作業機6への動力伝達が断接される。
ついで、油圧コントロール機構25について、図2に沿って説明する。油圧コントロール機構25は、作業機操作具21(図7参照)の操作により駆動する作業機操作カムモータ30と、作業機操作カムモータ30の駆動に基づいて回動する作業機操作カム31と、回動ピン33を中心に揺動し、作業機操作カム31の回動に伴い姿勢が変化するクラッチアーム35と、クラッチアーム35の姿勢変化に伴い開閉する油圧コントロールバルブ29と、作業機操作カム31の回動位置を検出する作業機操作カムポテンショ32と、を備える。
作業機操作カム31は、上昇位置、固定位置、下降位置及び植付位置の各回動位置を有し、それぞれの回動位置は作業機操作カムポテンショ32により検出される。作業機操作カム31の各回動位置に従いクラッチアーム35が揺動して油圧コントロールバルブ29が開閉されると、トランスミッションに設けられた油圧ポンプ(図示せず)の油圧を開放又は遮断することによりリフトシリンダ7が伸縮して、植付作業機6が昇降する。また、植付作業機6の昇降高さは、昇降リンク機構5の角度に基づいてリフト角ポテンショ27(図8参照)により検出される。作業機操作カム31が上昇位置に位置する際には、植付作業機6が上昇し、固定位置に位置する際には、植付作業機6は任意の高さで固定され、下降位置に位置する際には、植付作業機6が下降する。作業機操作カム31が上昇位置に位置する際に、植付作業機6が所定高さ(上端位置)まで上昇したことをリフト角ポテンショ27により検出されると、作業機操作カム31が固定位置となり、植付作業機6の上昇は停止する。また、作業機操作カム31が下降位置に位置する際には、ローラフロート12が接地する高さまで植付作業機6が下降し、作業機操作カム31は植付位置へ移行可能となる。
作業機操作カム31が下降位置及び植付位置に位置する状態かつローラフロート12が接地している状態においては、植付作業機6は、圃場面への追従に伴うローラフロート12の姿勢及び高さの変化に基づいて油圧コントロールバルブ29が開閉されて植付作業機6が自動的に昇降され、植付深さが一定に保たれる自動昇降状態となる。作業機操作カム31が植付位置以外に位置する際には植付クラッチは切断されて植付機構11は作動せず、植付位置に位置する際には植付クラッチが接続されて植付機構11が作動する。
図3に示すように、エンジンで発生した動力は、前後に延びる入力軸36を介して、後輪2を支持するリヤアクスルケース37に伝達される。リヤアクスルケース37の内部には、入力軸36と一体的に回転する検出ギヤ41と、入力軸36の回転を制動する走行ブレーキ43と、が設けられている。入力軸36には、検出ギヤ41が固定されており、検出ギヤ41の回転量は、回転センサ42によって検出される。すなわち、検出ギヤ41と同量だけ回転する入力軸36の回転量は、検出ギヤ41及び回転センサ42によって構成される走行距離測定機構(走行距離測定手段)39によって検出され、この検出結果は制御部(制御手段、図8参照)40へ出力される。
図4に示すように、シート収納部10は、左右端が開閉可能でロール状のシートを横架収納する紙ロールケース45と、作業機フレーム8に固定される検知機構支持片50と、シート収納部10からシートが繰出されているか否かを検出する紙切れ検知機構46と、を備える。紙切れ検知機構46は、板状に形成され、紙ロールケース45から繰出されたシートS(図5参照)に接触して揺動するシート検出片47と、シート検出片47の揺動を検出する紙切れ検出スイッチ49と、を備える。紙切れ検知機構46は、調整ボルト55によって検知機構支持片50に固定されており、調整ボルト55を締緩することにより、検知機構支持片50に設けられた長穴(図示せず)に沿って紙ロールケース45に対する紙切れ検知機構46の前後位置を変更できる。
シート検出片47は、紙ロールケース45に収納されたロール状のシートの中心軸より後方に配置された揺動軸51を中心として揺動可能に支持され、シート検出片47の下端がシートに接近する方向である前方へ向けて検出ばね52により付勢されている。紙ロールケース45に収納されているシートが紙ロールケース45から繰出されてシート検出片47と接触すると、シート検出片47の下端が検出ばね52の付勢力に抗して後方へ傾動する。紙切れ検出スイッチ49は、板状に形成されてシート検出片47に接触するスイッチレバー53を有しており、シート検出片47の傾動に伴ってスイッチレバー53の姿勢が変化すると、紙切れ検出スイッチ49のオンとオフとが切り替わる。そして、紙切れ検出スイッチ49は、シート収納部10からシートが繰出されている状態でオフとなり、シートが繰出されていない状態でオンとなる。
紙ロールケース45に収納されたロール状のシートの中心軸とシート検出片47の下端との相対位置が適切でないときには、紙ロールケース45からシートが繰出されているにもかかわらず紙切れ検出スイッチ49がオンとなる場合や、シート検出片47が抵抗となってシートが適切に繰出されない場合等がある。この場合には、調整ボルト55の締緩によりシート検出片47の下端と調整ガイド56の隙間(A寸法)が適切な寸法となるように紙切れ検知機構46の位置を調整することにより、上記問題を解決することができる。
また、図5に示すように、シート収納部10は、紙ロールケース45の近傍から後方へ延出し、植付作業機6が上昇したときに紙ロールケース45から繰出されたシートSを支える紙ホルダ57と、揺動可能に支持されて紙ホルダ57を開閉操作する紙ホルダ操作レバー59と、回転させることにより紙ロールケース45に収納されているシートが回転して、シートを手動でシート収納部10の外部へ繰出すことが可能な紙繰出ノブ61と、を備える。
紙ホルダ57は、移植作業を行うための閉鎖状態(図5(b))と、紙ロールケース45に収納されているシートを手動で繰出すことが可能な開放状態(図5(a))と、を有する。閉鎖状態において、紙ホルダ操作レバー59の先端を左側面視で時計回りに操作すると、紙ホルダ57の後端が下降して開放状態(図5(a))となる。紙ホルダ操作レバー59の先端を左側面視で反時計回りに操作すると、紙ホルダ57の後端が再び上昇して移植作業を行うための閉鎖状態(図5(b))となる。
図6に示すように、走行機体3の左右両側には、紙ロールケース45に収納されているシートを使い切った際に使用するためのロール状の予備のシートPを支持可能な補助ロール台62が配置されている。補助ロール台62はロール状の予備のシートPの中心軸が略前後方向となるように予備のシートPを支持し、補助ロール台62に支持された予備のシートPの後端付近に設けられた上下方向の軸を中心に回動可能に構成されている。植付作業機6が上端位置にある場合において、補助ロール台62を回動すると、補助ロール台62に支持されたロール状の予備のシートPの端部が紙ロールケース45の端部と近接させることが可能に設けられている。
図7に示すように、運転部17の前方には、表示パネル22が配置されており、その左後側に入力パネル23が配置され、表示パネル22の右後側には、植付作業機6を昇降するための作業機上操作スイッチ66及び作業機下操作スイッチ67を操作する作業機操作具21が配置されている。
表示パネル22は、燃料の残量を表示する燃料表示ランプ69、シートの補給時期を報知する警報ランプ(報知手段)70、警報ランプ状態表示灯71及び警報ブザー状態表示灯72等を有する。警報ランプ70は、走行機体3に設けられた警報ブザー(報知手段、
図8参照)73と共に、制御部40から出力される信号を受けて作動し、警報ランプ70の点滅又は点灯や、警報ブザー73が発する音により、オペレータにシートの補給時期を報知するよう構成されている。
入力パネル23は、後述する予備警報距離α(図9参照)を調節可能なタイミング調節ダイヤル75(調節手段)、シート収納部10に収納される使用前のシートの長さL1を入力するロール長設定ダイヤル(シート長入力手段)76、警報ランプ70並びに警報ブザー73による報知可否状態を切り替える予備警報モード切替プッシュスイッチ77、植付作業機6の駆動を規制し得る作業準備スイッチ79、警報ランプ70並びに警報ブザー73への信号の出力を停止する警報停止スイッチ80及び圃場を走行して移植作業を行う際の片道の植付距離L0を設定する植付距離設定手段84を有する。該植付距離設定手段84は、測定開始スイッチ81、測定終了スイッチ82、測定中表示ランプ83及び片道の植付距離L0を表示する表示部85を有する。
図8は、本形態における制御ブロック図を示しており、走行機体3は、各入出力に基づいて紙切れ警報制御(図9参照)を含む移植作業に使用する各装置の制御を行う制御部40を備えている。該制御部40は、CPU40a、ROM40b、RAM40c、インターフェース(I/F)40d等を含むマイクロコンピュータを備えている。制御部40の入力側には、作業準備スイッチ79、作業機上操作スイッチ66並びに作業機下操作スイッチ67、ロール長設定ダイヤル76、タイミング調節ダイヤル75、警報停止スイッチ80、作業機操作カムポテンショ32、リフト角ポテンショ27、紙切れ検出スイッチ49、予備警報モード切替プッシュスイッチ77、回転センサ42、測定開始スイッチ81及び測定終了スイッチ82等が接続されている。制御部40の出力側には、作業機操作カムモータ30、警報ランプ70、警報ブザー73、警報ランプ状態表示灯71、警報ブザー状態表示灯72、表示部85及び測定中表示ランプ83等が接続されている。制御部40は、紙切れ検知機構46により、シート収納部10からシートが繰出されていないことを検知したときに紙切れ警報の信号を出力して、警報ランプ70及び警報ブザー73を作動させる。
ロール長設定ダイヤル76は、入力パネル23に向かって前後方向に進退可能で、入力パネル23から突出して設けられている。ロール長設定ダイヤル76は、押圧により入力パネル23の方向へ後退し、ロール長設定ダイヤル76が後退すると、入力パネル23の内部に設けられた予備警報モード切替プッシュスイッチ77が操作される。ロール長設定ダイヤル76の押圧力を解除すると、予備警報モード切替プッシュスイッチ77の内部に設けられた弾性体(図示せず)の反力により復帰する。
ついで、紙切れ警報制御について、図9及び図10に沿って説明する。また、本フローは、予備警報モード又は非予備警報モードのみのフローを示すが、後述する予備警報ランプモード又は予備警報ブザーモードのフローは、予備警報モードと同様のフロー(ステップS15のYES)となり、その説明は省略する。紙切れ警報制御が開始されると(ステップS1)、制御部40は、作業準備スイッチ79がオンであるか否かを判断して(ステップS11)、オフの場合には処理をステップS1に戻し、オンの場合には、警報停止フラグがセットされているか否かを判断する(ステップS12)。制御部40は、警報停止フラグがセットされていない場合、警報停止スイッチ80の操作があるか否かを判断し(ステップS13)、操作がない場合、紙切れ検出スイッチ49によりシート収納部10からシートが繰出されているか否かを判断する(ステップS14)。
制御部40は、シート収納部からシートが繰出されており紙切れ検出スイッチ49がオフの場合、予備警報モードであるか否かを判断する(ステップS15)。予備警報モード切替プッシュスイッチ77の操作により、制御部40は予備警報モード→予備警報ランプモード→予備警報ブザーモード→非予備警報モード→予備警報モード→・・・と順次切り替えられる。予備警報モードでは警報ランプ70及び警報ブザー73が共に作動可能で、予備警報ランプモードでは警報ランプ70のみ作動可能で、予備警報ブザーモードでは警報ブザー73のみ作動可能で、非予備警報モードでは警報ランプ70又は警報ブザー73の何れも作動しない。制御部40が予備警報の信号を警報ランプ70に出力し得る状態である場合には警報ランプ状態表示灯71が点灯し、制御部40が予備警報の信号を警報ブザー73に出力し得る状態である場合には警報ブザー状態表示灯72が点灯する。
制御部40は、予備警報モードでない場合(ステップS15のNO)には処理をステップS1に戻し、予備警報モードである場合(ステップS15のYES)には、植付距離設定手段84による片道の植付距離L0の設定操作の有無を判断する(ステップS29)。ここで、片道の植付距離L0の設定方法について説明する。オペレータは、予備警報モード切替プッシュスイッチ77を操作して予備警報モードをオンにした状態で、測定開始位置である圃場端にマルチ移植機100を停止させる。この状態において、オペレータが測定開始スイッチ81を押すと(ステップS29のYES)、制御部40は新たな片道の植付距離L0の測定を開始する。片道の植付距離L0の測定中は測定中表示ランプ83が点灯し、測定開始スイッチ81が押されてから入力軸36の回転を検出する走行距離測定機構39の検知結果に基づいて測定された走行機体3の走行距離が表示部85に点滅表示される。マルチ移植機100が圃場の片道の植付を行う距離を走行して、測定終了位置である他の圃場端に到達した時に、オペレータが測定終了スイッチ82を押すと、測定開始スイッチ81が押されてから測定終了スイッチ82が押されるまでの走行機体3の走行距離が新たな片道の植付距離L0として設定されて制御部40に記憶されると共に、表示部85に表示されている片道の植付距離L0は点滅表示から点灯表示へ切り替わり、片道の植付距離L0の設定が終了し(ステップS30)、処理がステップS1に戻る。
制御部40は、植付距離設定手段84による片道の植付距離L0の設定操作が無い場合(ステップS29のNO)、ロール長設定ダイヤル76の回転操作の有無を判断する(ステップS16)。オペレータが、ロール長設定ダイヤル76を回転させて(ステップS16のYES)、市販されているシートの規定長さの100(m)、125(m)及び170(m)の3つの長さから1つの長さを選択すると、制御部40は、選択された長さを新たなシートの長さL1として制御部40に記憶し(ステップS17)、処理をステップS1に戻す。
ロール長設定ダイヤル76の回転操作がない場合(ステップS16のNO)、制御部40は、タイミング調節ダイヤル75の操作の有無を判断する(ステップS18)。オペレータがタイミング調節ダイヤル75を操作すると(ステップS18のYES)、制御部40は、タイミング調節ダイヤル75の回動角度に対応した予備警報距離αを記憶し(ステップS19)、処理をステップS1に戻す。具体的には、オペレータがタイミング調節ダイヤル75を反時計回りに回し切ると、予備警報距離αが0(m)となり、時計回りに回すと回動させた角度に従って徐々に予備警報距離αが大きくなり、0(m)〜30(m)の間で予備警報距離αの調節が可能となっている。
なお、通常、オペレータは、シートを繰り出しつつ移植作業を行うマルチ移植作業の開始前に、上述した片道の植付距離L0、シートの長さL1及び予備警報距離αの設定操作を行う。
制御部40は、タイミング調節ダイヤル75の操作がない場合(ステップ18のNO)、植付作業機6の自動昇降状態であるか否かを判断し(ステップS20)、自動昇降状態である場合(ステップS20のYES)、走行距離の測定を開始して、測定結果を総走行距離Lに加算する(ステップS22)。制御部40は、植付作業機6の自動昇降状態でない場合は(ステップS20のNO)、作業機操作カム31が植付位置(植付クラッチが接続状態)であるか否かを判断して(ステップS21)、植付位置でない場合は処理をステップS1に戻し、植付位置である場合は、ステップS20で自動昇降状態である場合と同様に、走行距離の測定を開始して、測定結果を総走行距離Lに加算する(ステップS22)。そして、制御部40は、総走行距離Lと、片道の植付距離L0の2倍の長さとして算出される往復の植付距離(L0×2)と予備警報距離αとをシートの長さL1から減算した報知距離(L1−L0×2−α)と、を比較する(ステップS23)。制御部40は、報知距離(L1−L0×2−α)が総走行距離Lよりも大きい場合には(ステップS23のNO)、処理をステップS1に戻す。総走行距離Lと報知距離(L1−L0×2−α)が等しくなった際には(ステップS23のYES)、制御部40は、警報ランプ70及び警報ブザー73を作動させる予備警報の信号の出力を開始し(ステップS24)、処理をステップS1に戻す。すなわち、制御部40は、総走行距離Lが、シート収納部10に収納される使用前のシートの長さL1と往復の植付距離(L0×2)との差より、予備警報距離αだけ短い距離となった時に予備警報の信号の出力を開始する。
ステップS14にてシート収納部10からシートが繰出されておらず紙切れ検出スイッチ49がオンである場合、制御部40は予備警報の信号の出力を停止し、警報ランプ70及び警報ブザー73へ紙切れ警報の信号の出力を開始して、制御部40に積算して記憶された総走行距離Lを0(m)に書き換える(ステップS25)。これにより、総走行距離Lの新たな積算が開始可能な状態となり、制御部40は処理をステップS1に戻す。
図11に示す通り、制御部40から予備警報の信号が出力されると、警報ランプ70が点滅すると共に、警報ブザー73が断続音を発する。予備警報が開始されてから、制御部40から紙切れ警報の信号が出力されるまでは、マルチ移植機100が進むにつれてランプの点滅の間隔と断続音の間隔が小さくなる。また、制御部40から紙切れ警報の信号が出力されると、警報ランプ70は連続点灯し、警報ブザー73は連続音を発する。
ステップS13にて警報停止スイッチ80の操作がある場合、制御部40は予備警報及び紙切れ警報の信号の出力を停止し、警報停止フラグをセットし(ステップS26)、処理をステップS1に戻す。制御部40は、ステップS12にて警報停止フラグがセットされている場合、一度植付作業機6を上端位置まで上昇した後で所定高さ、例えばローラフロート12が接地する高さまで下降した時に(ステップS27)警報停止フラグを解除し(ステップS28)、処理をステップS1に戻す。これにより、制御部40は、再び予備警報又は紙切れ警報の信号を出力可能な状態となる。また、片道の植付距離L0の設定操作及び総走行距離Lの積算が一度も行われていない状態においては、片道の植付距離L0及び総走行距離Lのいずれも制御部40に0(m)として記憶されており、ロール長設定ダイヤル76の操作が一度も行われていない状態においては、シートの長さL1は100(m)に設定されている。なお、片道の植付距離L0の設定操作及びロール長設定ダイヤル76の設定操作が一度も行われていない状態において予備警報モードに設定された場合、制御部40は、表示部85に片道の植付距離L0及びシートの長さL1の初期設定を促すメッセージを表示させ、片道の植付距離L0及びシートの長さL1の初期設定がなされるまでは予備警報の信号の出力を禁止する制御を行ってもよい。
紙切れ警報制御によって警報ランプ70及び警報ブザー73によってシート収納部10に収納されているシートの残り長さが少ないことを報知されたオペレータは、例えばシート収納部10にシートを補給する。この場合、事前に補助ロール台62又はマルチ移植機100の外に準備しておいた予備のシートPが使用される。オペレータは、補助ロール台62に支持された予備のシートPを使用する場合、まずは植付作業機6を上端位置まで上昇させ、紙ホルダ操作レバー59を操作して紙ホルダ57を開放状態とする。これにより、紙ホルダ57が邪魔にならず紙ロールケース45に収納されているシートを繰出し易くなる。次いで、オペレータは、紙ロールケース45の右端又は左端を開放し、紙ロールケース45の内部に残っているシートや芯等を搬出して紙ロールケース45の内部を空にする。オペレータは、この状態で、補助ロール台62に支持された予備のシートPを補助ロール台62ごと回動させ、予備のシートPの端部と紙ロールケース45の端部を近接させて、予備のシートPを空になった紙ロールケース45の内部に搬入することにより、補助ロール台62のシートを紙ロールケース45の内部に補給することができる。その後、オペレータは、紙ロールケース45の右端及び左端を閉鎖し、紙繰出ノブ61を回転させて紙ロールケース45から十分な長さのシートSを繰出す。該十分な長さとは、前後のローラフロート12が接地した際に少なくとも前方のローラフロート12の接地部分より後方まで延出する長さをいう。オペレータは、シートを手動で繰出した後、紙ホルダ操作レバー59を操作して紙ホルダを閉鎖状態とし、繰出されたシートSをローラフロート12と紙ホルダ57で挟むように保持することで、シート収納部10へシートの補給が完了する。
以上より、本実施の形態は、入力軸36の回転量に基づいて算出した植付作業機6がシートを敷ける状態における総走行距離Lをシートの使用長さとみなし、該シートの使用長さがシート収納部10に収納される使用前のシートの長さL1から往復の植付距離(L0×2)を減算した長さに達したとき又は更に予備警報距離αだけ減算された長さに達した際に、オペレータに報知できる。これにより、オペレータはシートの残り長さが次の1往復の植付距離L0の分よりも少ないことを知ることができる。このため、オペレータは、次に移植作業の起点となる一方の圃場端に到着した際にシート収納部10に収納されているシートを交換することで、シートを効率よく使用しつつ速やかにシートの交換作業を済ますことができ、効率よく移植作業を行うことができる。また、上記一方の圃場端にのみ予備のシートPを準備しておけばよいので、予備のシートPの運び出し作業を簡便にできる。更に、シートを使い切りたい場合には、オペレータは警報ランプ70及び警報ブザー73が作動した後に上記一方の圃場端へ達した際に一つの予備のシートPのみを補助ロール台62に搭載して作業を続行することで、予備のシートPを搭載した状態での移植作業の距離を短くすることができ、移植作業精度の低下、圃場へのマルチ移植機100の沈み込みの増大及び走行時の燃費低下等を低減することができる。
オペレータが圃場長測定開始スイッチ81を押してから測定終了スイッチ82を押すまでの走行機体3が走行する距離を片道の植付距離L0として設定するよう構成したので、オペレータは片道の植付距離L0を簡単に測定することができ、利便性を向上できる。また、片道の植付距離L0の測定には走行距離測定手段39を使用しているので、新たな測定手段を設ける必要が無く、コストダウンできる。片道の植付距離L0の測定中は、表示部85に表示された長さが測定開始スイッチ81を押した以降の走行距離に基づいて増加し、測定中表示ランプ83が点灯するので、オペレータが片道の植付距離L0の測定中であることを容易に認識できる。なお、表示部85の表示は数字で表しても良いし、棒グラフ等で表示しても良い。また、オペレータに対する片道の植付距離L0の測定中であることの表示は、上記方法に限られず、測定中表示ランプ83の点滅によって行っても良いし、ブザー等による音や、これらの組み合わせによって行っても良い。
なお、報知距離(L1−L0×2−α)に含まれる往復の植付距離(L0×2)は、片道の植付距離L0と置き換えても良い。このように置き換えた報知距離(L1−L0−α)を設定する場合は、往復走行を行う圃場の両端でシートの補給が行えるように圃場の両端に予備のシートPを備えることにより、予備のシートPを搭載した状態での移植作業の距離を短くすることができる。また、上記往復の植付距離(L0×2)の設定するにあたり、片道の植付距離L0の2倍の距離として算出する代わりに、実際に圃場を往復走行した走行距離の測定結果を用いても、結果が何ら変わるものではない。また、片道の植付距離L0の設定操作(ステップS29、ステップS30)は、紙切れ警報制御の一部として構成したが、紙切れ警報制御と独立した制御としてもよい。この場合は、移植作業を行いながら片道の植付距離L0の測定を行うことができ、作業時間を短縮できる。
植付作業機6の自動昇降状態であるときの総走行距離Lに基づいて制御部40が予備警報の信号を出力する場合は、移植作業を行わずにシートの被覆作業を行う際においてもシートの使用長さの算出を行うことができる。また、本実施の形態では、後輪2の回転に伴って回転する入力軸36の回転量を検出することにより、後輪2の回転量を間接的に検出したが、走行距離の算出にあたっては当然ながら前輪1又は後輪2の回転量を直接的に検出しても良いし、前輪1又は後輪2の回転に伴って回転する入力軸36以外の部材の回転量を検出してもよい。
制御部40は、シート収納部10からシートが繰出されていることを検知しなくなった際に、積算して記憶した総走行距離Lを0(m)に書き換えるので、オペレータがシートの補給後における総走行距離Lの初期化操作を行う手間を省くと共に、オペレータが初期化操作を行い忘れてシートの残り長さが分からなくなるということを防止することができる。また、上記総走行距離Lを0(m)に書き換える契機として紙切れ検出スイッチ49のオン信号を使用したので、別途の検出手段や入力手段等を必要とせず、部品点数の削減によりコストダウンできる。
また、オペレータが予備警報距離αをタイミング調節ダイヤル75で調節可能としたことにより、後輪2のスリップその他の理由により制御部40が積算した総走行距離Lと実際のシートの使用長さとに発生し得る差異を考慮した報知時期の調整や、オペレータが好みにより報知時期を調節可能となるので、利便性を向上できる。
シート収納部10に収納されるシートの長さL1の入力に際し、予め定められた3つの長さの中からオペレータが1つの長さを選択可能としたので、規格等により定められた未使用のシートの複数の長さを予め記憶させておくことで、シートの長さL1を直接的に数値入力する場合と比べて、ロール長設定ダイヤル76によるシートの長さL1を入力するオペレータの手間を省くと共に、数値の入力ミスを減らすことができる。なお、シートの長さL1の入力手段は、上記3つの長さの中から選択する構成に限らず、2つの長さから選択する構成でも3つより多い長さの中から選択する構成でも構わないことは言うまでもないが、無段階的に長さを入力する構成としても良い。例えば、オペレータがロール長設定ダイヤル76を入力パネル23に向かって時計回りに回転させると、回転した角度に基づいて入力されるシートの長さL1の値が無段階的に拡大し、反時計回りに回すと、回転した角度に基づいて入力されるシートの長さL1の値が無段階的に減少するような構成が考えられる。この場合は入力されたシートの長さL1の値をドットマトリクスや7セグメント表示機等によりデジタル的に表示する表示装置を表示パネル22に設けると、入力されたシートの長さL1の視認性を向上できる。
オペレータがロール長設定ダイヤル76と予備警報モード切替プッシュスイッチ77を一つの入力装置で操作可能に構成したので、操作の際にオペレータが入力装置を探す手間を省き、部品点数の削減によりコストダウンできる。制御部40は、予備警報の信号を総走行距離Lと報知距離(L1−α)との差の減少に伴って、警報ランプ70の点滅や警報ブザー73の断続音を徐々に間隔が短くなるように変化させて出力し、紙切れ警報の信号を、警報ランプ70の点灯や警報ブザー73の連続音として出力するので、シート収納部10に収納されているシートの残り長さが徐々に短くなっていく様子や該シートを使い切ったことをオペレータが感覚的に理解しやすい。なお、予備警報又は紙切れ警報の信号が出力されたことによるオペレータへの報知は、運転座席19やステアリングハンドル20等を振動させることによって行っても良い。この場合は、移植作業中に周囲の騒音が大きい場合でも、オペレータが警報に気づきやすくすることができる。なお、制御部40はディスクリート回路により形成されていてもよいし、半導体集積回路素子として一体に形成されていてもよい。
<第2の実施の形態>
次に、図12及び図13に沿って、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係る乗用型のマルチ移植機101は、第1の実施の形態に対して入力パネル123、制御部140及び植付距離設定手段184が異なるのみで、その他の構成は同一であるため、第1の実施の形態と同様な構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明を省略する。
図12に示すように、運転部17の前方には、表示パネル22が配置されており、その左後側に入力パネル123が配置され、表示パネル22の右後側には、植付作業機6を昇降するための作業機上操作スイッチ66及び作業機下操作スイッチ67を操作する作業機操作具21が配置されている。
入力パネル123は、予備警報距離(図9参照)αを調節可能なタイミング調節ダイヤル75(調節手段)、シート収納部10に収納される使用前のシートの長さL1を入力するロール長設定ダイヤル(シート長入力手段)76、警報ランプ70並びに警報ブザー73による報知可否状態を切り替える予備警報モード切替プッシュスイッチ77、植付作業機6の駆動を規制し得る作業準備スイッチ79、警報ランプ70並びに警報ブザー73への信号の出力を停止する警報停止スイッチ80及び圃場を走行して移植作業を行う際の片道の植付距離L0を設定する植付距離設定手段184を有する。該植付距離設定手段184は、数値減スイッチ181、数値増スイッチ182、決定スイッチ183及び表示部85を有する。該表示部85は、数値減スイッチ181、数値増スイッチ182及び決定スイッチ183により設定される片道の植付距離L0を表示する。
図13は、第2の実施の形態における制御ブロック図を示しており、走行機体3は、各入出力に基づいて紙切れ警報制御(図9参照)を含む移植作業に使用する各装置の制御を行う制御部140を備えている。該制御部140は、CPU140a、ROM140b、RAM140c、インターフェース(I/F)140d等を含むマイクロコンピュータを備えている。制御部140の入力側には、作業準備スイッチ79、作業機上操作スイッチ66並びに作業機下操作スイッチ67、ロール長設定ダイヤル76、タイミング調節ダイヤル75、警報停止スイッチ80、作業機操作カムポテンショ32、リフト角ポテンショ27、紙切れ検出スイッチ49、予備警報モード切替プッシュスイッチ77、回転センサ42、数値減スイッチ181、数値増スイッチ182及び決定スイッチ183等が接続されている。制御部140の出力側には、作業機操作カムモータ30、警報ランプ70、警報ブザー73、警報ランプ状態表示灯71、警報ブザー状態表示灯72及び表示部85等が接続されている。制御部140は、紙切れ検知機構46により、シート収納部10からシートが繰出されていないことを検知したときに紙切れ警報の信号を出力して、警報ランプ70及び警報ブザー73を作動させる。
次に、本実施の形態における片道の植付距離L0の設定方法について説明する。制御部140は、制御部140に記憶されている片道の植付距離L0を変更する植付距離変更モード及び片道の植付距離L0を変更しない植付距離維持モードを有し、決定スイッチ183を押す毎に、植付距離変更モードと植付距離維持モードとが切り替わる。植付距離維持モードにおいては、表示部85には制御部140に記憶されている片道の植付距離L0の長さが点灯表示され、植付距離変更モードにおいては、表示部85に片道の植付距離L0が点滅表示されて、制御部140が植付距離変更モードであることをオペレータに知らせる。オペレータが植付距離変更モードにおいて数値減スイッチ181を押す毎に、表示部85に表示されている片道の植付距離L0が所定長さずつ減少し、数値増スイッチ182を押す毎に、表示部85に表示されている片道の植付距離L0が所定長さずつ増加する。表示部85の表示を、圃場を往復走行して移植作業を行う際の片道走行距離に相当する長さに合わせた状態で、オペレータが決定スイッチ183を押すと、その時に表示部85に表示されている長さが新たな片道の植付距離L0として設定されて制御部140に記憶されると共に、表示部85の片道の植付距離L0が点滅表示から点灯表示に切り替わる。なお、制御部140による紙切れ警報制御は、図9において既述したものと同様である。
以上より、本実施の形態では、植付距離変更モードにおいて数値減スイッチ181及び数値増スイッチ182により片道の植付距離L0の値を設定するよう構成したことにより、オペレータは、予め片道の植付距離L0が分かっている場合には逐一走行機体3に圃場を走行させながら片道の植付距離L0を測定する必要が無い。そのため、オペレータの操作負担の軽減や、作業時間の短縮ができる。植付距離変更モードにおける片道の植付距離L0の変更中は、表示部85の表示内容が数値減スイッチ181及び数値増スイッチ182を押した回数に基づいて変化すると共に表示内容が点滅するので、オペレータは、植付距離変更モードであることを容易に認識できる。なお、表示部85の表示は数字で表しても良いし、棒グラフ等で表示しても良い。植付距離の設定操作は、上記設定手段に限られず、ダイヤル等の回転により直接入力するように構成しても良い。
また、報知距離の算出にあたり、往復の植付距離(L0×2)を使用する場合には、上記の実施の形態のように植付距離設定手段184により設定された片道の植付距離L0を制御部で2倍の距離として算出しても、植付距離設定手段184により直接往復の走行距離を設定するようにしても、結果が何ら変わるものではない。