JP6731141B2 - 吊り荷のスキュー振れ止め制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、コンテナクレーン等により搬送される吊り荷のスキュー振れ(旋回振れ)を減衰させるための振れ止め制御装置に関する。
クレーン搬送される吊り荷のスキュー振れ止め制御装置として、例えば特許文献1には、吊り荷の左右両端の運動状態から検出したスキュー振れ変位に応じてスキューシリンダを駆動することにより、トロリーから吊り荷までの巻き上げロープ長を変化させて吊り荷を鉛直軸回りに旋回させ、スキュー振れを減衰させる技術が開示されている。
図5は、特許文献1に記載されたスキュー振れ止め制御装置において、巻き上げロープの長さを変化させるための機構部を上面から見た概念図である。
図5において、50はスキューシリンダ、51は連結機構、52〜55は巻き上げロープであり、これらの巻き上げロープ52〜55は、図示されていないトロリー上の滑車を介して吊り荷を支持している。
図5に示す構造では、例えばシリンダ50の位置を矢印方向に伸長させることにより、連結機構51が一点鎖線に示すように変形する。これにより、ロープ52,54が引かれると共にロープ53,55が押し出される結果、吊り荷は、鉛直軸60を中心として矢印c方向の何れかに旋回する。特許文献1では、シリンダ50に対する速度指令をスキュー振れ変位及びスキュー振れ速度(スキュー角及びスキュー角速度)等の線形結合を用いて演算し、その速度指令に従ってシリンダ50を駆動することにより、吊り荷の振れ止めを行っている。
特許第2948473号公報(段落[0022]〜[0024]、図1,図2,図5等)
特許文献1に記載された振れ止め制御装置によると、一般に、スキュー振れが大きい時ほど、シリンダ50を高速で移動させる必要が生じる。しかし、シリンダ50の中には、巻き上げロープ長の微調整を目的として設けられているものがあり、このようなシリンダ50は動作速度に限界があるため、速度指令に十分に追従することができない。
このため、振れ止め制御を目的としてシリンダ50に所定の速度指令を与えたとしても、シリンダ50の動作速度や位置を指令通りに制御できない場合が生じる。
例えば、シリンダの速度指令を積分して得たシリンダ位置指令aが図6に示すように変化する場合、シリンダ実際位置bは、位置指令aに対して同じ振幅で変化できないだけでなく位相差(時間差)αだけ遅れる形になり、その結果、安定したスキュー振れ止め制御を実現することができない。
このような場合、スキュー振れ角が大きくても位置指令通りにシリンダが動作できる程度に制御ゲインを低く設定すれば、上述した問題は回避することが可能になるが、制御ゲインを低くする分、スキュー振れ止めに要する時間が長くなるという問題がある。
そこで、本発明の解決課題は、シリンダ位置指令に対するシリンダ実際位置の位相差を補償するシリンダ位置指令に従ってシリンダを動作させることにより、安定的かつ迅速なスキュー振れ止めを実現可能としたスキュー振れ止め制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、吊り荷を支持するロープの長さをスキューシリンダの動作によって調整することにより前記吊り荷を鉛直軸回りに旋回させ、前記吊り荷のスキュー角を制御してスキュー振れを減衰させるようにしたスキュー振れ止め制御装置において、
前記スキュー角を検出するスキュー角検出手段と、
前記スキューシリンダの実際の位置を検出するシリンダ実際位置検出手段と、
前記スキュー角検出手段により検出したスキュー角に基づいてシリンダ位置指令の振幅を演算する手段と、
前記スキューシリンダの速度相当値と、前記吊り荷のスキュー振動周期と、前記シリンダ位置指令の振幅と、からなる関数の逆三角関数を求めることにより、前記シリンダ位置指令とシリンダ実際位置との間に生じる位相差を予測演算し、位相差予測値として出力する位相差演算手段と、
前記位相差予測値と、前記スキュー角と、所定の制御ゲインとが入力され、前記シリンダ位置指令と前記シリンダ実際位置との位相差が存在しない場合に出力するべき理想位置指令に対して、前記位相差予測値だけ位相が進んだシリンダ位置指令を生成するスキュー制御手段と、
前記スキュー制御手段により生成されたシリンダ位置指令と前記シリンダ実際位置との差に基づいて、所定の速度以下で前記シリンダを駆動することにより前記スキューシリンダの位置を制御するシリンダ位置制御手段と、を備えたものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したスキュー振れ止め制御装置において、
前記スキュー制御手段は、前記シリンダ実際位置の位相遅れがない条件で設計したスキュー角を入力として前記シリンダ位置制御手段に与えるシリンダ位置指令を演算する比例微分制御手段を備え、
前記比例微分制御手段における比例ゲイン及び微分ゲインを、前記位相差予測値だけ出力信号の位相が進むように設定するものである。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載したスキュー振れ止め制御装置において、
前記比例微分制御手段は、スキュー角速度(dψ/dt)に対して目的とするシリンダ位置がK(dψ/dt)なる形で表される場合に、以下の数式によりシリンダ位置指令uを演算するものである。
u=(Kcosα)(dψ/dt)−(Ksinα)ωψ
(ただし、K:制御ゲインとしての比例ゲイン、α:位相差予測値、ψ:スキュー角、ω:スキュー振動角周波数)
本発明においては、シリンダ位置指令とシリンダ実際位置との位相差が存在しない場合に出力するべき理想位置指令に対して、位相差予測手段により演算された位相差予測値だけ位相を進めたシリンダ位置指令を生成し、このシリンダ位置指令に従ってシリンダを動作させるものである。
このため、従来よりも高い制御ゲインを維持しつつ、シリンダ速度が不十分な場合であっても振れ止め制御に必要なシリンダ動作が可能となり、その結果として、安定的かつ速やかに吊り荷のスキュー振れ止めを実現することができる。
本発明の実施形態に係るスキュー振れ止め制御装置の主要部を示すブロック図である。 本発明の実施形態の作用を説明するための、シリンダ位置指令、シリンダ実際位置等の説明図である。 本発明の実施形態の作用を説明するための、シリンダ位置指令、シリンダ実際位置値等の説明図である。 本発明の実施形態及び従来技術によるスキュー振れ止め制御のシミュレーション結果を示す図である。 特許文献1に記載されたスキュー振れ止め制御装置の機構部を上面から見た概念図である。 シリンダ実際位置の位相遅れを説明するための図である。
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。まず、図1は、この実施形態に係るスキュー振れ止め制御装置のブロック図である。
図1において、位相差演算手段10は、シリンダ速度Vと、スキュー振動周期Tと、シリンダ位置指令の振幅Aとに基づいて、位相差αを演算する。ここで、シリンダ速度Vはシリンダ速度検出値またはシリンダ速度指令を使用することができ、スキュー振動周期Tは、角度センサ等を用いて検出可能である。
位置指令の振幅Aは、角度センサ等により検出した吊り荷のスキュー角ψの振幅を振幅演算手段11により求め、この振幅演算手段11の出力と所定の制御ゲインKとを乗算手段12により乗算して求められる。
位相差演算手段10は、シリンダ速度Vと、スキュー振動周期Tと、シリンダ位置指令の振幅Aとを用いて、数式1により位相差αを予測演算する。なお、数式1において、VT>4Aである場合には、α=0として扱う。
[数式1]
α=cos−1(VT/4A)
上記の位相差αは、図6に示したように、シリンダ位置指令aに従ってシリンダ位置を制御した場合の、シリンダ位置指令aに対するシリンダ実際位置bの位相差、言い換えれば、シリンダ位置指令aの変化率とシリンダ速度実際値との差によって発生する位相差に相当する。
従って、この位相差αをなくすためには、図2に示すように、位相遅れが存在しない場合に出力するべき適切なシリンダ位置指令u’(位相進み演算前のシリンダ位置指令であり、これを理想位置指令という)に対して、位相差演算手段10により演算した位相差(位相差予測値)αだけ位相を進ませたシリンダ位置指令uを生成し、このシリンダ位置指令uに従ってシリンダを動作させれば、シリンダ実際位置bは理想位置指令u’と位相が一致することになる。
なお、前述した数式1は、以下のようにして導出することができる。
図3によれば、スキュー振動周期Tの1/4の期間すなわち(T/4)におけるシリンダ実際位置bの変位は、シリンダ速度Vをシリンダ実際位置bの傾きと考えれば、VT/4である。シリンダ位置指令uの振幅AをAにより除算して1に正規化すると、上記の変位は(VT/4)/Aとなる。この変位はcosαに相当するので、cosα=VT/4Aとなり、これを変形すれば数式1が得られる。
図1に戻って、スキュー制御手段13には、上記位相差α、スキュー角ψ、及び適宜設定された制御ゲインKが入力されている。
このスキュー制御手段13は、前述したように、位相遅れが存在しない場合に出力するべき理想位置指令u’に対して、予測演算された位相差αだけ位相を進ませたシリンダ位置指令uを生成し、シリンダ位置制御手段14に出力する。なお、シリンダ位置制御手段14は、図5に示したシリンダ50を駆動するための電気回路または油圧回路、空圧回路等を含み、シリンダ50は、図5に示したような連結機構51及び巻き上げロープ等を駆動して吊り荷を鉛直軸回りに旋回させ、スキュー角を制御するものである。
ここで、スキュー制御手段13及びシリンダ位置制御手段14によりシリンダ50を駆動してスキュー振れ止め動作を行うためには、スキュー角ψとその時間微分値であるスキュー角速度(dψ/dt)に対してシリンダ位置を決定するような、比例微分(PD)制御系を基本とした制御手段を構成することが望ましい。この場合、位相遅れがない条件で設計したスキュー角を入力とする比例微分制御手段を対象として、シリンダ位置指令に対して、シリンダ実際位置が遅れる分だけ出力信号の位相が進むように比例ゲイン及び微分ゲインを修正することにより、吊り荷のスキュー角に対して本来与えるべき位置(変位)指令とシリンダ実際位置との位相が一致し、適切なスキュー振れ止め制御を実現することができる。
特に、位相差αが存在しない場合にスキュー振れ止めを適切に実現するためには、スキュー角速度(dψ/dt)に比例するようにシリンダを駆動することが望ましい場合が多い。すなわち、与えるべきシリンダ位置は、制御ゲイン(比例ゲイン)Kを用いてK(dψ/dt)という形で表すことができる。この場合、K(dψ/dt)よりαだけ位相が進んだ信号、すなわち、スキュー制御手段13が生成するシリンダ位置指令uは、スキュー振動角周波数をωとすると、数式2のように表される。
[数式2]
u=(Kcosα)(dψ/dt)−(Ksinα)(ωψ)
よって、図1のスキュー制御手段13は、比例ゲインK、スキュー角ψ、位相差α、及びスキュー振動角周波数ωを用いて、数式2によりシリンダ位置指令uを求め、このシリンダ位置指令uをシリンダ位置制御手段14に与えることにより、シリンダ位置指令に対するシリンダ実際位置bの位相差をなくした状態で適切なスキュー振れ止め制御を実現することができる。
図4は、本実施形態と従来技術とを対比して示した吊り荷のスキュー角及びシリンダ変位のシミュレーション結果を示している。図4(a)は本実施形態による制御結果であり、図4(b)は、従来技術によりシリンダ位置指令変化率の最大値が動作速度以下にとどまるように(シリンダ実際位置に位相遅れが生じない程度に)制御ゲインを設定した場合の制御結果である。
図4(a),(b)を比較すると、本実施形態では、従来技術よりも速やかにスキュー振れ止めを実現できることがわかる。
本発明は、コンテナクレーン等における吊り荷のスキュー振れ止め制御に利用することができる。
10:位相差演算手段
11:振幅演算手段
12:乗算手段
13:スキュー制御手段
14:シリンダ位置制御手段
50:スキューシリンダ
51:連結機構
52〜55:巻き上げロープ

Claims (3)

  1. 吊り荷を支持するロープの長さをスキューシリンダの動作によって調整することにより前記吊り荷を鉛直軸回りに旋回させ、前記吊り荷のスキュー角を制御してスキュー振れを減衰させるようにしたスキュー振れ止め制御装置において、
    前記スキュー角を検出するスキュー角検出手段と、
    前記スキューシリンダの実際の位置を検出するシリンダ実際位置検出手段と、
    前記スキュー角検出手段により検出したスキュー角に基づいてシリンダ位置指令の振幅を演算する手段と、
    前記スキューシリンダの速度相当値と、前記吊り荷のスキュー振動周期と、前記シリンダ位置指令の振幅と、からなる関数の逆三角関数を求めることにより、前記シリンダ位置指令とシリンダ実際位置との間に生じる位相差を予測演算し、位相差予測値として出力する位相差演算手段と、
    前記位相差予測値と、前記スキュー角と、所定の制御ゲインとが入力され、前記シリンダ位置指令と前記シリンダ実際位置との位相差が存在しない場合に出力するべき理想位置指令に対して、前記位相差予測値だけ位相が進んだシリンダ位置指令を生成するスキュー制御手段と、
    前記スキュー制御手段により生成されたシリンダ位置指令と前記シリンダ実際位置との差に基づいて、所定の速度以下で前記シリンダを駆動することにより前記スキューシリンダの位置を制御するシリンダ位置制御手段と、
    を備えたことを特徴とする、吊り荷のスキュー振れ止め制御装置。
  2. 請求項1に記載したスキュー振れ止め制御装置において、
    前記スキュー制御手段は、前記シリンダ実際位置の位相遅れがない条件で設計したスキュー角を入力として前記シリンダ位置制御手段に与えるシリンダ位置指令を演算する比例微分制御手段を備え、
    当該比例微分制御手段における比例ゲイン及び微分ゲインを、前記位相差予測値だけ出力信号の位相が進むように設定することを特徴とする、吊り荷のスキュー振れ止め制御装置。
  3. 請求項2に記載したスキュー振れ止め制御装置において、
    前記比例微分制御手段は、スキュー角速度(dψ/dt)に対して目的とするシリンダ位置がK(dψ/dt)なる形で表される場合に、以下の数式によりシリンダ位置指令uを演算することを特徴とする、吊り荷のスキュー振れ止め制御装置。
    u=(Kcosα)(dψ/dt)−(Ksinα)ωψ
    (ただし、K:制御ゲインとしての比例ゲイン、α:位相差予測値、ψ:スキュー角、ω:スキュー振動角周波数)
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