JP4460526B2 - ロープトロリー式クレーンの振れ止め制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、トロリーが停止したときにおける運搬物の揺れを抑制するためのロープトロリー式クレーンの振れ止め制御装置に関する。
しかし、専用の検出装置を設けても、検出精度は使用環境により変化するため誤差も大きく、また、振れ角検出までのタイムラグがあり、高速で振れ制御を行うことは難しかった。しかも、検出精度を維持するためには、検出装置のメンテナンス作業を頻繁に行うことが必要であり、設備維持のために余分な作業工数を必要としていた。
通常、振れ止め制御は、運搬物の揺れができるだけ短時間で停止するように行われるのであるが、最短時間で揺れを停止させるように制御した場合、トロリーの減速中に加速が必要となる場合もある。前後2本もしくは4本のロープによりトロリーが牽引されている場合、トロリーが減速状態から加速されると、減速時に緩んでいた前側ロープが急に張り、逆に、減速時に張っていた後側ロープが緩む状況、いわゆるシャクリ現象が発生する。そして、シャクリ現象が発生するとロープ等に振動が発生し、この振動による駆動力の振動が振れ角検出に対してノイズとなり、算出される振れ角に誤差が生じてしまうため、ロープ振れ角が正確に検出できず、うまく振れ止めすることができなかった。
この技術では、トロリーの走行抵抗等の測定信号に含まれるノイズを、振子運動方程式を用いたオブザーバ演算を利用して除去することによって算出される振れ角の誤差を抑えている。すると、誤差の小さい振れ角に基づいてトロリーの移動を制御できるから、運搬物の揺れを抑えることができるのである。
また、オブザーバ演算は運転開始までの調整が非常に面倒であり、また、作動条件が変化するたびにその調整を行わなければならないので、作動条件を変更してから作業開始までの時間が長くなり、作業効率が低下する。
第2発明のロープトロリー式クレーンの振れ止め制御装置は、第1発明において、前記振れ角算出部が、前記トロリーを走行させる横行装置の駆動力から、前記トロリーに加わる負荷のうち計算上求められる全ての負荷を計算して減算することにより運搬物の加速に寄与する運搬物加速力のみを抽出し、抽出された運搬物加速力に基づいて、前記ロープの現在振れ角を算出するものであることを特徴とする。
第3発明のロープトロリー式クレーンの振れ止め制御装置は、第1発明において、前記必要振れ角算出部において、運搬物の初期揺れがないと仮定した場合において、前記トロリーを現在位置から前記減速度算出部が算出した減速度で減速させたときに、前記目標位置で前記トロリーが停止するまでの時間および振子周期に基づいて振子振動の位相角φを算出し、前記必要振れ角sinθrefを、前記位相角φと前記減速度算出部が算出した減速度αと重力加速度gからなる式sinθref=α/g×(1-cosφ) に基づいて算出することを特徴とする。
図2は本実施形態の振れ止め制御装置10が設けられるロープトロリー式クレーン1の概略説明図である。まず、本実施形態の振れ止め制御装置10を説明する前に、本実施形態の振れ止め制御装置10が設けられるロープトロリー式クレーン1を簡単に説明する。
このため、横行ドラム9を作動すれば、トロリー5を、桁3上で前進、後退、つまり、横行させて運搬物Cを移動させることができ、巻上ドラム7を作動すれば、運搬物Cを昇降させることができるのである。上記の横行ドラム9と横行ドラム9を駆動する図示しないモータおよび横行ドラム9の駆動を制御する横行インバータが、特許請求の範囲にいう横行装置に相当する。
本実施形態の振れ止め制御装置10は、トロリー5の桁3上を横行する速度(以下、単に横行速度という)を目標とする位置(目標位置)において所定の速度(目標速度)となるように減速し、トロリー5が目標位置に到達したときに、運搬物Cの振れが停止した状態となるように横行速度を制御するものであり、図2には図示していないが、振れ止め制御装置10は、巻上ドラム7の駆動を制御する巻上インバータや、横行ドラム9の駆動を制御する横行インバータに接続されている。
なお、本実施形態の振れ止め制御装置10では、トロリー5を減速する場合に限られず、トロリー5を加速する場合にも採用できるのは言うまでもない。そして、以下では、説明を簡単にするために、目標位置においてトロリー5が停止する場合、つまり、トロリー5の目標速度が0の場合を説明するが、目標位置においてトロリー5に加速度が加わらなくなる条件であれば本実施形態の振れ止め装置10による制御を行うことができるのは、いうまでもない。
この原理は、減速または加速開始に運搬物に初期振れがないことが条件となるが、本発明の振れ止め制御装置では、初期振れがある場合でも、移動体の減速または加速が終了したときに運搬物の揺れをほぼ停止させることができる点に特徴がある。
図1は本実施形態の振れ止め制御装置10の概略ブロック図である。同図に示すように本実施形態の振れ止め制御装置10は、減速度算出部11と、振れ角算出部12と、必要振れ角算出部13と、誤差算出部14と、調整減算度算出部15と、速度制御部16とを備えている。
(数1)
αp=Vt 2/2L
ここで、トロリー5の横行装置の駆動力F1、つまり、横行ドラム9を駆動させるモータ等の駆動力は、トロリー5に加わる負荷(横行負荷)と釣り合うのであるが、横行負荷は、(1)トロリー5の走行抵抗F2、(2)ロープ6のしごき抵抗F3、(3)運搬物加速力からなるため、(1),(2)と、横行装置の駆動力が把握できれば、運搬物Cを加速する運搬物加速力のみを抽出することができる。
そして、運搬物加速力が抽出できれば、以下の数2に基づいて、現在のロープ振れ角θreaを求めることができる。なお、数2中Tは運搬物Cの振り子周期であり、tはトロリー5が現在位置から停止位置まで移動するのに要する時間である。また、振り子周期Tの算出には、ロープ6において、トロリー5に設けられているシーブから下方に垂れ下がってる部分の長さが必要であるが、これは、巻上ドラム7に取り付けられている巻上ドラム取付エンコーダからの信号に基づいて算出される。数2中FTは、駆動力F1から、走行抵抗F2としごき抵抗F3を減算したものである。
(数2)
θrea=sin-1 (FT/(g・M))
FT=F1−F2−F3
g:重力加速度
M:運搬物Cの質量
また、横行装置の駆動力F1は、横行ドラム9を駆動させるモータの作動を制御する横行インバータの出力トルクと横行装置の機械効率から求めることができる。
さらに、ロープ6のしごき抵抗F3は、ロープ張力、つまり、吊り下げされている運搬物Cの重量Mと、シーブ枚数やシーブ径、シーブ軸受けの種類等から求められるしごき抵抗率によって求められる。
必要振れ角算出部13では、まず、トロリー5を現在位置から停止減速度αpで一定減速したときに、停止位置で運搬物Cの振れを停止させるために理論上必要な理論位相角φが算出される。この理論位相角φは、トロリー5を停止位置で停止させるために一周期減速法によってトロリー5の横行速度が制御されていると仮定した場合(つまり、運搬物Cの初期振れがない場合)において、トロリー5を停止位置で停止したときに運搬物Cの振れが停止するために必要な、現在位置における運搬物Cの鉛直振子振動の位相角であり、以下の数3により求められる。
(数3)
φ=2π t/T
(数4)
Sinθref=αp/g×(1−cosφ)
なお、数4から得られる必要振れ角θrefにすれば停止位置で運搬物Cの振れを停止できることは、市販のシミュレーションソフト(例えば、ViSim Version1.5e:Design Science Inc.製や、CSMP:IBM製等)によって検証することができる。
トロリー5が定速V 0 で移動している状態で、減速開始点を目標位置より距離L(L=V 0 ×T/2:T=振子周期)だけ手前に減速開始点を設定する。減速開始点に到達すると、減速状態に移行し、本実施形態の振れ止め制御装置10による振れ止め制御を開始する。
まず、横行インバータからの信号が制御信号に入力されると、この信号に基づいて、減速度算出部11は、現在のトロリー5の位置とトロリー5の移動速度Vtを算出する。そして、目的位置までの移動距離Lが算出され、この移動距離Lと移動速度Vtから、図3中(6),(7)式により停止減速度αpと目的位置までの移動時間tが算出される(SO1)。
また、減速度算出部11から算出された目的位置までの移動時間tが入力されると、前述した数3に基づいて、現在時間での理論位相角φが算出される(SO2-2)。
そして、理論位相角φが算出されると、減速度算出部11から入力される停止減速度αpと位相角φを用いて、数4に基づいて必要振れ角θrefが算出される(SO3)。
すると、このトロリー5の移動速度Vtの変化により、運搬物Cの揺動角度が変化するから、再び、SO1〜SO6の手順がトロリー5が目的位置に停止するまで繰り返される。
すると、トロリー5が停止したときには、運搬物Cの振れも停止させることができる。
しかも、ロープ8等に発生する振動を抑えることができ、複雑な演算などを行わなくても、現在のロープ振れ角θreaの誤差を小さくすることができるから、高速作業を行う設備や振れ止め制御にそれほど高い性能が要求されない装置にも使用可能である
そして、作動条件を変更しても、調整減速度αcを算出するための制御ゲインを変更するだけでよく特別な調整作業も必要ないから、作動条件を変更してから迅速に作業に復帰できるので、作動条件の変更による作業効率が低下を防ぐことができる。
この実施例は、ロープトロリー式アンローダによって、船舶上の積荷をアンローダによって掴み、その状態からロープを巻き上げながらトロリーを移動させ、機内に設けられたホッパの上方にトロリーを移動させる作業において、本発明の振れ止め制御を行ったものである。
なお、振れ止め制御は、トロリーが減速を開始してから制御を開始している。
したがって、本発明の振れ止め制御装置によれば、減速開始前に初期振れがあったとしても、トロリーが停止した時に、運搬物の振れをほほ停止させることができる。
6 ロープ
10 振れ止め制御装置
11 減速度算出部
12 振れ角算出部
13 必要振れ角算出部
14 誤差算出部
15 調整減速度算出部
16 速度制御部
φ 理論位相角
θref 現在の振れ角
θrea 必要振れ角
θdef 差
αp 停止減速度
αc 調整減速度
αr 実減速度
Vt 現在の移動速度
Vr 調整速度
Claims (3)
- 桁上を走行するトロリーを備え、該トロリーから繰り出し巻上げ可能に吊り下げられたロープとを備え、該ロープに運搬物を取り付けた状態で前記トロリーを移動させて運搬物を運搬するクレーンにおいて、前記トロリーを所定の目標位置に停止させたときにおける前記ロープの振れを止める制御を行う制御装置であって、
鉛直方向に対する前記ロープの現在の振れ角を算出する振れ角算出部と、
現在位置から一定の減速度で前記トロリーを減速する場合において、所定の目標位置において前記トロリーが停止する減速度を求める減速度算出部と、
該減速度算出部が算出した減速度で前記トロリーを減速している期間において、前記目標位置において前記ロープの振れが停止するために必要となる現在位置における鉛直方向に対する前記ロープの必要振れ角を算出する必要振れ角算出部と、
前記ロープの現在の振れ角と前記必要振れ角との差を算出する誤差算出部と、
前記ロープの現在の振れ角から前記必要振れ角に変更させるために必要な前記トロリーの調整減速度を算出する調整減速度算出部と、
前記減速度算出部が算出した減速度に前記調整減速度を加算して実減速度を算出し、現在のトロリー移動速度と前記実減速度に基づいて、前記トロリーの移動速度を指示する速度指令信号を送信する速度制御部とを備えている
ことを特徴とするロープトロリー式クレーンの振れ止め制御装置。 - 前記振れ角算出部が、
前記トロリーを走行させる横行装置の駆動力から、前記トロリーに加わる負荷のうち計算上求められる全ての負荷を計算して減算することにより運搬物の加速に寄与する運搬物加速力のみを抽出し、抽出された運搬物加速力に基づいて、前記ロープの現在振れ角を算出するものである
ことを特徴とする請求項1記載のロープトロリー式クレーンの振れ止め制御装置。 - 前記必要振れ角算出部において、
運搬物の初期揺れがないと仮定した場合において、前記トロリーを現在位置から前記減速度算出部が算出した減速度で減速させたときに、前記目標位置で前記トロリーが停止するまでの時間および振子周期に基づいて振子振動の位相角φを算出し、
前記必要振れ角sinθrefを、
前記位相角φと前記減速度算出部が算出した減速度αと重力加速度gからなる式
sinθref=α/g×(1-cosφ) に基づいて算出する
ことを特徴とする請求項1記載のロープトロリー式クレーンの振れ止め制御装置。
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