式(1)で表される酸変性エポキシ(メタ)アクリレートにおいて、環Arで表される芳香族炭化水素環は、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環であってもよく、縮合多環式芳香族炭化水素環としては、例えば、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素などが挙げられる。なお、2つの環Arは異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。好ましい環Arは、ベンゼン環、ナフタレン環である。屈折率及び耐熱性を高めたるためには、ナフタレン環が有利である。
R1で表される置換基としては、非反応性置換基、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]、アシル基(例えば、アセチル、エチルカルボニル、ペンチルカルボニルなどのアルキルカルボニル基)などが挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−8アルキル基(例えば、C1−6アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。
係数kは0〜4の整数であり、係数kが複数(2〜4)である場合、複数の基R1の種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、異なるベンゼン環に置換した基R1の種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位、7−位、2−および7−位などが挙げられる。好ましい係数kは、0〜1、特に0である。なお、2つの係数kは、同一又は異なっていてもよい。
置換基R2としては、炭化水素基[アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−8アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)など];アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−8アルコキシ基など);シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など);アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基);アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基);アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基など);シクロアルキルチオ基;アリールチオ基;アラルキルチオ基;アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。置換基R2は、通常、非反応性置換基であり、好ましい置換基R2は、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。さらに好ましい置換基R2は、C1−4アルキル基(特にメチル基)、C6−10アリール基(特にフェニル基)である。なお、置換基R2がアリール基であるとき、置換基R2は、環Arとともに、環集合炭化水素環(ビフェニル環、テルフェニル環、ビナフチル環などのビ又はテルC6−10アレーン環)を形成してもよく、置換基R2がフェニル基であるとき、環Arとともに、ビフェニル環を形成してもよい。
mは0以上の整数を示し、環Arの種類に応じて選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Arにおいて、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。mが複数(2以上)である場合、基R2の種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、2つの環Arにおいて、基R2の種類は同一又は異なっていてもよい。
前記式(1a)において、R3で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。
オキシアルキレン基(OR3)の数(付加モル数)nは0以上の整数を示し、0又は1以上(例えば、0〜20)であればよく、例えば、0〜15(例えば、1〜12)、好ましくは0〜10(例えば、1〜8)、さらに好ましくは0〜7(例えば、1〜6)、特に0〜5(例えば、0〜2)であってもよい。なお、nが2以上であるとき、各繰り返し単位において、アルキレン基の種類は異なっていてもよく、通常、同一のアルキレン基であってもよい。また、2つの芳香族炭化水素環Arにおいて、基R3の種類は同一又は異なっていてもよい。
R4は水素原子又はメチル基を示す。好ましい基R4は水素原子であり、アクリロイル基を形成してもよい。
炭化水素基Zは、酸無水物の残基に対応し、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、1,2−ブタン−ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基)、直鎖状又は分岐鎖状アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン−1,2−ジイル基、ブテン−1,2−ジイル基などのC2−10アルケニレン基、好ましくはC2−6アルケニレン基、さらに好ましくはC2−4アルケニレン基)、シクロアルキレン基(シクロヘキサン−1,2−ジイル基などのC5−12シクロアルキレン基、好ましくはC6−10シクロアルキレン基、さらに好ましくはC6−8シクロアルキレン基)、シクロアルケニレン基(4−シクロヘキセン−1,2−ジイル基、4−ノルボルネン−1,2−ジイル基などのC5−12シクロアルケニレン基、好ましくはC6−10シクロアルケニレン基、さらに好ましくはC6−8シクロアルケニレン基)、アリーレン基(フェニレン−1,2−ジイル基などのC6−12アリーレン基、好ましくはC6−10アリーレン基)であってもよい。アルキレン基及びアルケニレン基は、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートを低粘度化するのに有用であるとともに、9,9−ビスアリールフルオレン骨格に基づく特性及び効果をさほど低下させることなく、カルボキシル基を導入して酸価(又はアルカリ可溶性)を高めるのに有用であり、シクロアルキレン基及びシクロアルケニレン基は光学特性を向上するのに有用であり、アリーレン基は屈折率及び耐熱性を向上させるのに有用である。特に、アルキレン基及びアルケニレン基は、環Arがナフタレン環などの縮合多環式炭化水素環である化合物でも、低粘度化するのに適している。
置換基R5としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ−カルボニル基)、アルキルカルボニル基又はアシル基(アセチル基、エチルカルボニル基、ブチルカルボニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル−カルボニル基)などが例示できる。
係数qは0以上の整数を示し、通常、0〜6の整数、例えば、0〜4、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2(例えば、0又は1)であってもよい。なお、置換基R5がハロゲン原子があるとき、係数qは4〜6程度であってもよく、置換基R5が他の基であるとき、係数qは0〜2程度であってもよい。
係数pは1以上の整数を示し、通常、1〜3の整数(例えば、1又は2)である。
前記式(1)において、基Xの置換位置は、特に限定されず、環Arの種類に応じて置換していればよく、例えば、基Xは、環Arがベンゼン環である場合、フェニル基の2−位〜6−位(例えば、3−位、4−位、3,5−位など)に置換していてもよく、環Arが縮合多環式炭化水素環である場合、フルオレンの9−位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5−位、6−位など)に置換していてもよい。
式(1)で表される化合物のうち、好ましい化合物としては、下記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(下記式(4)で表されるエポキシ化合物)に対応する化合物が例示できる。
(a)9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン類:例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−グリシジルオキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ポリグリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,5−ジグリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジグリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジグリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリグリシジルオキシフェニル)フルオレン]など。
(b)9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン類:例えば、前記9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレン]など。
(c)9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類:例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−グリシジルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1a)において、nが1である化合物);9,9−ビス(グリシジルオキシジアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1a)において、nが2〜10である化合物)など。
(d)9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類:例えば、前記9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシナフチル)フルオレン類など。
式(1)において、k=0,R4が水素原子又はメチル基、q=0である酸変性エポキシ(メタ)アクリレートのうち、好ましい化合物は、例えば、下記表1に示すことができる。
上記表1のnは平均値であってもよく、n=2〜10である化合物において、通常、n=2〜8、好ましくはn=2〜7(例えば、2〜5)程度であってもよい。
さらに、前記式(1)で表される酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、単量体に限らず、二量体、三量体などの多量体であってもよい。この多量体は、エポキシ(メタ)アクリレートとジカルボン酸無水物との反応により生成してもよい。
なお、9,9−ビス(モノヒドロキシアリール)フルオレン類から誘導される酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、多量体も含め、例えば、下記式(1-1)で表すことができる。
(式中、FLは、下記式(1-2)
(環Ar、R1及びR2、k、mは前記に同じ)で表される二価の炭化水素基、係数aは0または1以上の整数、X1は下記式(1-1a)
(Z、R5、qは前記に同じ)で表される基を示し、bは0又は1を示し、少なくとも1つのbは1であり、R3、R4、nは前記に同じ)
繰り返し単位を示す係数aは、例えば、0〜10(例えば、0〜7)、好ましくは0〜5(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2程度の整数であってもよい。また、複数の係数bのうち、少なくとも1つの係数bは1であり、係数bの合計は、2+aであり、好ましくは2〜7(例えば、2〜5)、さらに好ましくは2〜4(例えば、2〜3)程度であってもよい。
なお、酸変性エポキシ(メタ)アクリレート(1)において、エポキシ(メタ)アクリレートの少なくとも一部のヒドロキシル基(二級ヒドロキシル基)が(メタ)アクリル酸でエステル化されていればよく、一部のヒドロキシル基が残存していてもよい。
酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの酸価(mgKOH/g)は、JIS K 0070の記載の中和滴定法に準じて測定したとき、例えば、30〜250、好ましくは50〜200、さらに好ましくは75〜180(例えば、80〜170)程度であってもよく、通常、100〜200(例えば、125〜175)程度であってもよい。このような酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、アルカリ可溶性であり、パターン露光及びアルカリ現像により、所定のパターンを形成できる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、1500〜20000(例えば、2000〜15000)程度の範囲から選択でき、例えば、3000〜12000、好ましくは3500〜10000、さらに好ましくは4000〜8000程度であってもよい。分子量が大きすぎると、粘度が高くなり取り扱い性が低下しやすい。
前記式(1)で表される酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、粘度が低く、取扱性に優れているとともに、高い屈折率及び耐熱性を発現する。酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの粘度(20℃)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを溶媒とし、固形分濃度50重量%において、TV−22形粘度計(コーンプレートタイプ)で測定したとき、例えば、50〜600mPa・s、好ましくは100〜500mPa・s、さらに好ましくは200〜450mPa・s(例えば、300〜400mPa・s)程度であってもよい。
さらに、前記酸変性エポキシ(メタ)アクリレートの屈折率は、温度25℃、波長589nmで測定したとき、1.55〜1.75、好ましくは1.57〜1.72、さらに好ましくは1.58〜1.70(例えば、1.6〜1.68)程度であってもよい。
前記式(1)で表される酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、下記反応工程式に従って調製できる。
(式中、環Ar、R1、R2、R3、R4、R5、Z、k、m、n、p、qは前記に同じ)
前記式(4)で表されるエポキシ化合物と前記式(5)で表される(メタ)アクリル酸との反応で、式(2)で表されるエポキシ(メタ)アクリレートを調製できる。このエポキシ(メタ)アクリレートと式(3)で表される酸無水物との反応により、前記式(1)で表される酸変性エポキシ(メタ)アクリレートを調製できる。
前記式(4)で表されるエポキシ化合物は、慣用のエポキシ化合物の調製方法に従って調製でき、例えば、式(4)で表されるエポキシ化合物に対応するヒドロキシル含有フルオレン化合物とエピクロルヒドリンとの反応により調製できる。代表的なエポキシ化合物としては、例えば、前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物が例示できる。これらのエポキシ化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、エポキシ化合物は、単量体に限らず、二量体、三量体などの多量体であってもよい。
エポキシ化合物(4)と(メタ)アクリル酸(5)との反応において、(メタ)アクリル酸の割合は、前記エポキシ化合物のオキシラン環1モルに対して、0.7〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.3モル(例えば、0.9〜1.2モル)程度であってもよい。エポキシ化合物(4)と(メタ)アクリル酸(5)との反応は、慣用の方法、例えば、触媒の存在下で行ってもよく、触媒は、酸触媒(p−トルエンスルホン酸など)であってもよいが、塩基性触媒を用いる場合が多い。
塩基性触媒としては、例えば、三級アミン類[トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン類、脂環族アミン、芳香族アミン(ジエチルアニリンなど)、複素環式アミン(4−ジメチルアミノピリジンなど)]、第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)、金属アルコキシド(例えば、カリウムt−ブトキシドなど)などが挙げられる。これらの塩基性触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩基性触媒のうち、4−ジメチルアミノピリジンなどの複素環式アミン類、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライドなどが汎用される。
触媒の使用量は、前記エポキシ化合物100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部(例えば、0.2〜0.5重量部)程度であってもよい。
反応は熱重合禁止剤の存在下で行ってもよい。熱重合禁止剤としては、慣用の成分、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、ピロガロール、t−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが例示できる。これらの熱重合禁止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱重合禁止剤のうち、メトキノンなどが汎用される。熱重合禁止剤の使用量は、前記エポキシ化合物及び(メタ)アクリル酸の総量100重量部に対して、例えば、0.01〜1重量部、好ましくは0.03〜0.7重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部(例えば、0.075〜0.25重量部)程度であってもよい。
前記エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応は、溶媒の非存在下で行ってもよく、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な又は非反応性の溶媒、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルムなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、セロソルブアセテート類(メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテートなど)、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテートなど)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプジロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、セロソルブアセテート類、プロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテートなどが汎用される。
溶媒の使用量は、反応が円滑に進行する限り特に制限されず、例えば、固形分又は不揮発分濃度10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%程度となる量であってもよい。
反応温度は、例えば、50〜150℃、好ましくは80〜120℃程度であってもよく、反応時間は、例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜36時間(例えば、2〜24時間)程度であってもよい。なお、反応は、不活性雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンなどの雰囲気)下で行ってもよい。
上記反応で生成したエポキシ(メタ)アクリレート(2)は反応系から単離してジカルボン酸無水物(3)と反応させてもよく、単離することなく、エポキシ(メタ)アクリレート(2)を含む反応系でエポキシ化合物とジカルボン酸無水物(3)と反応させてもよい。
式(3)で表されるジカルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸などのアルカンジカルボン酸無水酸(例えば、C2−4アルカン−ジカルボン酸無水物など)、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸などのアルケンジカルボン酸無水物(例えば、C2−4アルケン−ジカルボン酸無水物など)、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物などのシクロアルケンジカルボン酸無水物(例えば、ハロゲン原子、アルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基などの前記置換基R5を有していてもよいC6−12シクロアルケン−ジカルボン酸無水物など)、ヘキサヒドロ無水フタル酸などのシクロアルカンジカルボン酸無水物(例えば、ハロゲン原子、アルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基などの前記置換基R5を有していてもよいC6−12シクロアルカン−ジカルボン酸無水物など)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水トリメリット酸などのアレーンジカルボン酸無水物(例えば、ハロゲン原子、アルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基などの前記置換基R5を有していてもよいC6−12アレーン−ジカルボン酸無水物など)などが挙げられる。無水物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのジカルボン酸無水物のうち、アルカンジカルボン酸無水物、アルケンジカルボン酸無水物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートの特性をさほど低下させることなく、カルボキシル基を有効に導入して酸価(又はアルカリ可溶性)を高めるのに有用であり、シクロアルカンジカルボン酸無水物、シクロアルケンジカルボン酸無水物は、光学特性を向上(屈折率をさほど低下させることなく複屈折を低減)するのに適しており、アレーンジカルボン酸無水物は、屈折率及び耐熱性を向上させるのに適している。
ジカルボン酸無水物(3)の使用量は、エポキシ(メタ)アクリレート(2)のヒドロキシル基1モルに対して、0.7〜2モル(例えば、0.75〜1.7モル)、好ましくは0.8〜1.5モル(例えば、0.9〜1.2モル)程度であってもよく、0.8〜1.2モル程度であってもよい。
反応は、触媒の非存在下で行ってもよく、前記エポキシ化合物(4)と(メタ)アクリル酸(5)との反応と同様の触媒の存在下で行うことできる。触媒の使用量は、エポキシ(メタ)アクリレート(2)100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部(例えば、0.2〜0.5重量部)程度であってもよい。反応は、通常、熱重合禁止剤の存在下で行うことができる。熱重合禁止剤の使用量は、エポキシ(メタ)アクリレート(2)及びジカルボン酸無水物(3)の総量100重量部に対して、例えば、0.01〜1重量部、好ましくは0.03〜0.7重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部(例えば、0.075〜0.25重量部)程度であってもよい。さらに、反応は、溶媒の非存在下で行ってもよく、前記エポキシ化合物(4)と(メタ)アクリル酸(5)との反応と同様の反応に不活性な溶媒中で行うこともできる。溶媒の使用量は、前記エポキシ化合物(4)と(メタ)アクリル酸(5)との反応での使用量と同様であってもよい。
反応温度は、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜125℃、さらに好ましくは70〜120℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜36時間(例えば、2〜24時間)程度であってもよい。なお、反応は、不活性雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンなどの雰囲気)下で行ってもよい。
このようにして生成した前記式(1)で表される酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、9,9−ビスアリールフルオレン骨格特有の特性(高屈折率、高耐熱性、低線膨張性など)を有しており、フルオレン骨格を有しているにも拘わらず、低粘度であり取扱性(ハンドリング性)が高く、熱又は光硬化性を有している。そのため、本発明の酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは、熱又は光硬化性樹脂として使用でき、重合開始剤、重合成分(多官能性(メタ)アクリレート、単官能性ビニル単量体)などと組み合わせて樹脂組成物(熱硬化性又は光硬化性樹脂組成物、特に感光性樹脂組成物)を調製してもよい。
重合開始剤には、熱重合開始剤、光重合開始剤が含まれ、熱重合開始剤と光重合開始剤とを組み合わせてもよい。熱重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類(ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなど)、過酸エステル類(過酢酸t−ブチルなど)、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;アゾニトリル化合物[2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)など]、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物などのアゾ化合物などが含まれる。熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなど)、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、慣用の第3級アミン類、例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなど]、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなど]などのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
重合開始剤の使用量は、重合成分(酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート、単官能性ビニル単量体などの重合性化合物)の総量100重量部に対して0.1〜30重量部(例えば、1〜30重量部)、好ましくは1〜20重量部(例えば、5〜15重量部)、さらに好ましくは1.5〜10重量部程度であってもよい。また、光増感剤の使用量は、重合開始剤(光重合開始剤)100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは20〜100重量部程度であってもよい。
前記樹脂組成物は、前記酸変性エポキシ(メタ)アクリレートと重合開始剤とで構成してもよく、さらに、多官能性(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート{アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートなど}、三官能以上の多官能性(メタ)アクリレート[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレートなどのトリ又はテトラオールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなど]、多官能オリゴ(メタ)アクリレート(ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
多官能性(メタ)アクリレートの割合は、前記酸変性エポキシ(メタ)アクリレート(又は酸変性(メタ)アクリル系樹脂)100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは5〜60重量部(例えば、5〜50重量部)、さらに好ましくは10〜50重量部(例えば、20〜40重量部)程度であってもよい。
前記樹脂組成物は、単官能性ビニル単量体(又は反応性希釈剤)を含んでいてもよい。単官能性ビニル単量体は、ビニル単量体であってもよく、(メタ)アクリル系単量体であってもよい。ビニル単量体としては、N−ビニルピロリドンなどが例示できる。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル[(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]、(メタ)アクリル酸アリール[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、(メタ)アクリル酸アラルキル[(メタ)アクリル酸ベンジルなど]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)、N−置換(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらの化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。単官能性ビニル単量体の割合は、前記酸変性エポキシ(メタ)アクリレート100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
さらに、必要であれば、樹脂組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、エポキシ(メタ)アクリレートとジカルボン酸無水物との反応で例示の溶媒に加え、アルコール類(エタノール、イソプロパノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのC1−4アルキルセロソルブなど)、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテル、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのC1−4アルキルカルビトールなど)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのジプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルなどから選択できる。溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒の割合は、樹脂組成物の粘度やコーティング性などに応じて選択でき、例えば、固形分又は不揮発分濃度1〜60重量%(例えば、3〜50重量%)、好ましくは5〜40重量%(例えば、10〜30重量%)程度となる量であってもよい。
樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤(又は熱重合禁止剤)、界面活性剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
本発明には、前記樹脂組成物(熱又は光硬化性樹脂組成物)を硬化させた硬化物も含まれる。このような硬化物は、樹脂組成物を、加熱処理、光照射処理などの硬化処理に供することにより形成でき、加熱処理と光照射処理を組み合わせて硬化物を形成してもよい。加熱処理において、加熱温度は、例えば、50〜250℃、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃程度であってもよい。光照射処理(露光処理)には、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などの活性光線が利用でき、エキシマレーザーなどの単波長の光線も利用できる。紫外線を利用するとき、光照射エネルギー量は、0.1〜10000mJ/cm2、好ましくは1〜8000mJ/cm2、さらに好ましくは10〜5000mJ/cm2程度であってもよい。なお、加熱雰囲気及び光照射雰囲気は、空気中であってもよく、不活性ガス雰囲気中であってもよい。
硬化物の形態は特に制限されず、線状、薄膜状又はフィルム状(シート状、板状を含む)、立体形状などであってもよい。例えば、薄膜又はフィルム状の硬化物は、基材(プラスチック、ガラス、セラミックス、金属などの基材)に対して、樹脂組成物を塗布して塗膜(又は薄膜)を形成した後、必要により乾燥させ、塗膜を硬化処理することにより形成できる。本発明では、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートがカルボキシル基を有するため、基材に対して高い密着性を有する塗膜を形成できる。フィルム状塗膜(又は薄膜)の厚みは、用途に応じて選択でき、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜300μm程度であってもよい。
本発明では、酸変性エポキシ(メタ)アクリレートを使用するため、多量の多官能性(メタ)アクリレートや希釈剤(単官能性ビニル単量体、溶媒など)で希釈したり、加熱して低粘度化する必要がなく、効率よく硬化物を形成できる。そのため、9,9−ビスアリールフルオレン骨格の導入量を増大させることができ、優れた特性(高屈折率、高耐熱性など)を有する硬化物を形成できる。特に、アルカリ現像性を有するため、樹脂組成物の塗膜にパターン露光し、アルカリ現像液で現像することにより、所定のパターンの硬化膜(例えば、所定のパターン状微細加工された薄膜)を形成できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例において、各種特性は、以下のようにして測定した。
[固形分濃度]
ハロゲン水分計(メトラー・トレド(株)製 HG53)にて、乾燥温度180℃で加熱残分を測定することにより、固形分濃度を測定した。
[固形分酸価]
溶媒を除去した試料について、JIS K0070に記載された中和滴定法に準拠して酸価を測定した。
[粘度]
25℃での粘度を、TV−22形粘度計(コーンプレートタイプ、東機産業(株)製「TVE−22L」)を用い、オプションロータ(01:1゜34×R24)を選択し、回転数5〜20rpmで測定した。
[屈折率]
屈折計((株)アタゴ製、DR−M2<循環式恒温水槽 60−C3使用>)を用い、25℃、589nmでの屈折率を測定した。
[重量平均分子量]
溶出液として10%酢酸含有テトラヒドロフラン溶液を用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(カラム:HLC−8220GPC(東ソー(株)製))によりポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
比較例1
300mLセパラブルフラスコに、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(共栄社化学(株)製、「エポキシエステル3000A」)48.45g(100mmol)、無水コハク酸20.01g(200mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)68g、テトラエチルアンモニウムブロミド(TEAB)0.42g(2mmol)を加え、アルゴンガス雰囲気下、120℃で8時間撹拌した。反応終了後、放冷し、無色透明溶液を得た。なお、反応の進行を液体クロマトグラフィ(LC)分析で追跡し、原料「エポキシエステル3000A」のピークが消失したとき、反応終点とした。得られた酸変性エポキシアクリレートの重量平均分子量は、1600であった。
なお、「エポキシエステル3000A」はビスフェノールAジグリシジルエーテルのグリシジル基1モルに対してアクリル酸1モルが付加したエポキシアクリレートである。
実施例1
300mLセパラブルフラスコに9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレンとアクリル酸の付加体(BNFGA)49.44g(70mmol)、無水コハク酸14.01g(140mmol)、PGMEA 63g、TEAB 0.29g(1.4mmol)を加え、アルゴンガス雰囲気下、120℃で8時間撹拌した。反応終了後、放冷し、黄色透明液体を得た。反応進行はLC分析にて確認し、原料BNFGAピークの消失を終点とした。得られた酸変性エポキシアクリレートの重量平均分子量は、1700であった。
なお、BNFGAは、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン(BNFG)のグリシジル基1モルに対してアクリル酸1モルが付加したエポキシアクリレートである。
実施例2
BNFGA 50.0g(70.7mmol)、無水フタル酸22.0g(148.5mmol)、PGMEA 72g、TEAB 0.33g(1.6mmol)を用いる以外、実施例1と同様にして、淡褐色液体を得た。得られた酸変性エポキシアクリレートの重量平均分子量は、1800であった。
実施例3
BOPPFGA 50.0g(65.9mmol)、無水コハク酸13.9g(138.4mmol)、PGMEA 64g、TEAB 0.56g(2.0mmol)を用い、120℃で20時間反応させる以外、実施例1と同様にして、淡黄色透明液体を得た。得られた酸変性エポキシアクリレートの重量平均分子量は、1700であった。
なお、BOPPFGAは、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン(BOPPFG)のグリシジル基1モルに対してアクリル酸1モルが付加したエポキシアクリレートである。
得られた酸変性エポキシアクリレートの特性を表2に示す。
表2に示すように、比較例1に比べて、実施例1の酸変性エポキシアクリレートは、高い屈折率を有している。しかも、粘度もさほど高くなく、取扱性が高い。