JP6724321B2 - 積層電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、積層電子部品に関する。
近年、携帯電話などのデジタル電子機器に使用される電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化に対する要求は高く、当該回路を構成する積層電子部品の小型化、大容量化が急速に進んでいる。
積層セラミックコンデンサなどの積層電子部品においては、素子本体内に複数の内部電極が配置されており、特許文献1では、矩形のセラミックグリーンシートの全幅に至るように導電ペーストを印刷し、該導電ペーストが印刷された複数枚のセラミックグリーンシートを積層し、切断することで、導体層の両側端縁が露出している積層体を得ている。
そして、特許文献1では、この積層体を焼成することにより、導体層端縁が、外部電極との接続が予定されている端面だけでなく、一対の側面にも露出しているセラミック焼結体を得る。次に、セラミック焼結体の側面にセラミックを塗布、形成する。このような構造を有する積層セラミック電子部品とすることで、耐湿特性などが低下せず、内部欠陥が発生せず、外部電極形成時、放射クラックの発生可能性を減らすことができ、外部衝撃に対する機械的強度を確保することができる。
しかしながら、積層セラミック電子部品は側面にセラミックを焼き付けると、側面と側面に塗布・形成したセラミック(サイドギャップ)の接着性が悪いために、コンデンサの構造欠陥が起きやすい。また弾性率の高いセラミックはコンデンサ特有の電歪の変化時に音鳴きが発生しやすくなるという問題があった。
また、特許文献2には、音鳴き対策として、コンデンサ本体の両端にそれぞれ断面L字形上の金属端子を取り付けて、リップルコンデンサを構成し、コンデンサ本体を基板表面より浮かすように各金属端子を基盤にはんだ付けする技術が記載されている。これにより、コンデンサ本体のリップルによる振動を直接基板に伝搬させないようにして振動音を抑圧できる。
しかしながら、特許文献2に記載のものでは、コンデンサ本体を基板表面から浮かすようにリップルコンデンサを基盤に実装する為、リップルコンデンサの高さ寸法が大きくならざるを得ず、高さ方向に制限のある実装構造には不向きである。
特開2012−191159号公報 特開2004−153121号公報
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであり、耐熱衝撃性が良好であり、音鳴きが低減された積層電子部品を提供することを目的とする。
上記目的を解決するため、本発明の積層電子部品は、以下の通りである。
[1]第1軸および第2軸を含む平面に実質的に平行な内部電極層と誘電体層とが第3軸の方向に沿って交互に積層された素子本体を備える積層電子部品であって、
前記素子本体の前記第1軸の方向に相互に向き合う一対の端面(側面)にそれぞれ絶縁層が備えられており、
前記素子本体の前記第2軸の方向に相互に向き合う一対の端面に、前記内部電極層と電気的に接続される外部電極がそれぞれ備えられており、
前記絶縁層の弾性率は、12GPa以上140GPa以下であることを特徴とする積層電子部品。
本発明によれば、耐熱衝撃性が良好であり、音鳴きが低減された積層電子部品を提供できる。
上記[1]の具体的態様として、下記の態様が例示される。
[2]前記絶縁層は、前記素子本体の前記第3軸の方向に相互に向き合う端面(主面)の一部を覆う絶縁層延長部を一体的に有し、
前記外部電極が前記絶縁層延長部の少なくとも一部を覆っている前記[1]に記載の積層電子部品。
[3]前記素子本体の前記第1軸に沿う幅をW0とし、
前記絶縁層延長部の前記第1軸に沿う幅をW1とした場合に、
W1/W0は下記式(1)を満たす前記[2]に記載の積層電子部品。
1/30≦W1/W0<1/2 (1)
[4]前記素子本体の前記第3軸方向の端面(主面)からの前記絶縁層における前記第3軸方向の最大厚みをMfとして、
前記素子本体の前記第1軸方向の端面(側面)からの前記絶縁層における前記第1軸方向の最大厚みをMtとした場合に、
Mf/Mtは下記式(2)を満たす前記[2]または[3]のいずれかに記載の積層電子部品。
0.5≦Mf/Mt≦2.0 (2)
[5]前記絶縁層がガラス成分で構成されている前記[1]〜[4]のいずれかに記載の積層電子部品。
[6]前記絶縁層は、BiおよびNaOをそれぞれ5質量%未満含む前記[1]〜[5]のいずれかに記載の積層電子部品。
[7]第1軸の方向に連続し、第1軸および第2軸を含む平面に実質的に平行な内部電極パターン層が形成されたグリーンシートを第3軸の方向に積層してグリーン積層体を得る工程と、
前記グリーン積層体を第2軸および第3軸を含む平面に平行な切断面が得られるように切断してグリーンチップを得る工程と、
前記グリーンチップを焼成して、内部電極層と誘電体層とが交互に積層した素子本体を得る工程と、
前記素子本体の第1軸方向の端面に絶縁層用ペーストを塗布して、焼き付けることにより、絶縁層が形成されたセラミック焼結体を得る工程と、
前記セラミック焼結体の第2軸方向の端面に外部電極用ペーストを焼き付けることにより、外部電極が形成された積層電子部品を得る工程と、を有し、
前記絶縁層の弾性率は、12GPa以上140GPa以下であることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
図1は、本発明の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。 図2は、図1に示すII‐II線に沿う断面図である。 図3(A)は、図2の絶縁層のMf/Mt比を説明するための模式図であり、図3(B)は、図2の絶縁層のMf/Mt比を説明するための模式図である。 図4は、図1に示す積層セラミックコンデンサの製造過程におけるグリーンシートの積層工程を示す概略断面図である。 図5A(a)は、図4に示すV‐V線に沿うn層目の内部電極パターン層の一部を示す平面図であり、図5A(b)は、n+1層目の内部電極パターン層の一部を示す平面図である。 図5Bは、図4に示すV‐V線に沿う内部電極パターン層の一部を示す平面図である。 図6Aは図4に示すグリーンシートを積層後の積層体のX‐Z軸平面に平行な概略断面図である。 図6Bは図4に示すグリーンシートを積層後の積層体のY‐Z軸平面に平行な概略断面図である。 図7は本実施例の固着強度の測定方法を説明する模式図である。
本実施形態に基づき、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態のみに限定されない。
また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
積層セラミックコンデンサの全体構成
本実施形態に係る積層電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、セラミック焼結体4と、第1外部電極6と、第2外部電極8とを有する。また、図2に示すように、セラミック焼結体4は、素子本体3と絶縁層16とを有する。
素子本体3は、X軸およびY軸を含む平面に実質的に平行な内側誘電体層10と内部電極層12とを有し、内側誘電体層10の間に内部電極層12がZ軸の方向に沿って交互に積層してある。ここで、「実質的に平行」とは、ほとんどの部分が平行であるが、多少平行でない部分を有していてもよいことを意味し、内部電極層12と内側誘電体層10は、多少、凹凸があったり、傾いていたりしてもよいという趣旨である。
内側誘電体層10と、内部電極層12とが交互に積層される部分が内装領域13である。
また、素子本体3は、その積層方向Z(Z軸)の両端面に、外装領域11を有する。外装領域11は、内装領域13を構成する内側誘電体層10よりも厚い外側誘電体層を複数積層して形成してある。
なお、以下では、「内側誘電体層10」および「外側誘電体層」をまとめて、「誘電体層」と記載する場合がある。
内側誘電体層10および外装領域11を構成する誘電体層の材質は、同じでも異なっていても良く、特に限定されず、たとえば、ABOなどのペロブスカイト構造の誘電体材料やニオブ酸アルカリ系セラミックを主成分として構成される。
ABOにおいて、Aは、たとえばCa、Ba、Srなどの少なくとも一種、Bは、Ti、Zrなどの少なくとも一種である。A/Bのモル比は、特に限定されず、0.980〜1.020である。
このほか、副成分として、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのようなアルカリ金属化合物、酸化マンガン、希土類元素酸化物、酸化バナジウム等が挙げられるがこれらに限定されない。その含有量も組成等に応じて適宜決定すればよい。
なお、副成分として、二酸化珪素、酸化アルミニウムを用いることで、焼成温度を低下させることができる。また、副成分として、酸化マグネシウムのようなアルカリ金属化合物、酸化マンガン、希土類元素酸化物、酸化バナジウムを用いることで、寿命を改善させることができる。
交互に積層される一方の内部電極層12は、セラミック焼結体4のY軸方向第1端部の外側に形成してある第1外部電極6の内側に対して電気的に接続してある引出部12Aを有する。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、セラミック焼結体4のY軸方向第2端部の外側に形成してある第2外部電極8の内側に対して電気的に接続してある引出部12Bを有する。
内装領域13は、容量領域14と引出領域15A,15Bとを有する。容量領域14は、積層方向に沿って内部電極層12が内側誘電体層10を挟んで積層する領域である。引出領域15Aは、外部電極6に接続する内部電極層12の引出部12Aの間に位置する領域である。引出領域15Bは、外部電極8に接続する内部電極層12の引出部12Bの間に位置する領域である。
内部電極層12に含有される導電材は特に限定されず、Ni、Cu、Ag、Pd、Al、Ptなどの金属、またはそれらの合金を用いることができる。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
内部電極層12は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよく、内部電極層12の厚みは用途等に応じて適宜決定すればよい。
図2に示すように、セラミック焼結体4のX軸方向の両端面には、素子本体3の内部電極層12の端面を覆う絶縁層16が備えられている。
本実施形態では、絶縁層16と内側誘電体層10との界面に、絶縁層16の構成成分の少なくとも一つが内側誘電体層10に拡散した反応相が形成されていてもよい。絶縁層16と内側誘電体層10との界面に反応相を有することで、素子本体3の側面がガラスで埋められ、界面の空隙率を最小限に抑えることができる。これにより、素子本体3の端面の絶縁性が向上し、耐電圧性を向上できる。また、誘電体層10と絶縁層16の界面に反応相を有することで、誘電体層と絶縁層16の界面の接着性を向上させることができる。これにより、素子本体3と絶縁層16のデラミネーションを抑制し、その抗折強度を高めることができる。
反応相の認定については、例えば、セラミック焼結体の誘電体層と絶縁層の界面について、Si元素のSTEM−EDS分析を行い、Si元素のマッピングデータを得て、Si元素が存在する箇所を反応相と認定できる。
また本実施形態では、積層方向(Z軸方向)に隣接する誘電体層10で挟まれる内部電極層12のX軸方向端部は、素子本体3のX軸方向端面、すなわち、誘電体層10のX軸方向端部から内側に所定の引き込み長さで凹んでいる。引き込み長さは、各内部電極層12毎に異なっていても良いが、その平均は、たとえば0以上であり、好ましくは0.1〜5.0μmである。
なお、絶縁層16を形成する前の素子本体3のX軸方向端面を、バレル研磨などで研磨することで、内部電極層12のX軸方向端部の引き込みを無くすことも可能である。内部電極層12のX軸方向端部の引き込みは、たとえば内部電極層12を形成する材料と誘電体層10を形成する材料との焼結収縮率の違いにより形成される。
本実施形態の絶縁層16は、素子本体3のZ軸方向の端面(主面)のX軸方向の両端部を覆う絶縁層延長部16aを一体的に有することが好ましい。図示省略してあるが、外部電極6,8のZ軸方向の両端部は、絶縁層延長部16aのY軸方向の両端部を覆っている。また、本実施形態では、図1に示す外部電極6,8のX軸方向の両端部は、図2に示す絶縁層16のY軸方向の両端部をX軸方向の両側からは覆ってはいないが、覆うように構成しても良い。
本実施形態の絶縁層16の弾性率は12GPa以上140Gpa以下である。これにより、電歪による構造欠陥や音鳴きを低減できる。そのため、本実施形態の積層セラミックコンデンサは、高さ方向に制限がある実装部分にも、端子金具などを用いることなく実装することができ、音鳴きを抑制できる。本発明者らは、このような効果が得られる要因を次のように考えている。
素子本体から露出している内部電極層にセラミックを焼き付けると、セラミックと素子本体の端面との接着性が低く、また、セラミックの弾性率が高いことから、電歪による構造欠陥および音鳴きが発生しやすい原因となっていた。
これに対して、本実施形態の絶縁層16は、素子本体3のZ軸方向の両端面のX軸方向の両側部分を覆う絶縁層延長部16aを一体的に有するとともに、セラミックに比べて弾性率が低い。絶縁層16のこのような構成により、電歪による素子本体3の変形を抑えることができる。また、絶縁層16の弾性率を低くすることで、電歪による応力を緩和することができる。その結果、従来技術の課題であった電歪による構造欠陥と音鳴きの低減が可能となったと考えられる。
また、絶縁層16は、素子本体3におけるY軸方向の両端面のX軸方向の端部を一部覆っていてもよい。
絶縁層16の軟化点は500℃〜1000℃であることが好ましい。これにより、前後の工程で発生しうる構造欠陥の影響を減らすことができる。
本実施形態の絶縁層16を構成する成分は、上記した弾性率を満たせば、特に限定されず、例えば、セラミック、アルミニウム、ガラス、チタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、ガラス成分で構成されていることが好ましい。絶縁層16をガラス成分で構成することにより、固着強度が良好になる。これは、ガラスと素子本体3との界面に反応相が形成されるため、ガラスと素子本体3の密着性が他の絶縁性物質に比べて優れているためであると考えられる。
素子本体3のX軸方向の端面を絶縁層16で被覆することにより、絶縁性が高められるだけでなく、外部からの環境負荷に対して、耐久性、耐湿性が増す。また、焼成後のセラミック焼結体4のX軸方向の端面を絶縁層16が被覆するため、サイドギャップの幅が小さく、かつ、均一な絶縁層16を形成することができる。
本実施形態の絶縁層16を構成するガラス成分は特に限定されず、例えば、BaO、SiO、Naなどのアルカリ金属酸化物、Bi、ZrO、Al、CaOを含む。
また、本実施形態の絶縁層16は、BiおよびNaOをそれぞれ5質量%未満含むことが好ましい。これにより、耐めっき性を向上させることができる。
外部電極6,8の材質も特に限定されないが、Cu、Ag、Pd、Pt、Auあるいはこれらの合金、導電性樹脂など公知の導電材を用いることができる。外部電極の厚みは用途等に応じて適宜決定すれば良い。
なお、図1において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸が、内側誘電体層10および内部電極層12の積層方向に一致し、Y軸が、引出領域15A,15B(引出部12A,12B)が形成される方向に一致する。
本実施形態では、図2に示すように、絶縁層16のうち、セラミック焼結体4の幅方向(X軸方向)に沿って、素子本体3のX軸方向の端面から絶縁層16の外面までの区間をギャップ部としている。
本実施形態では、ギャップ部のX軸方向の幅Wgapは、セラミック焼結体4の幅方向(X軸方向)に沿って、素子本体3のX軸方向の端面から絶縁層16のX軸方向の端面までの寸法に一致するが、幅Wgapは、Z軸方向に沿って均一である必要はなく、多少変動していても良い。幅Wgapは、好ましくは、0.1μm〜40μmであり、素子本体3の幅W0に比較すれば、きわめて小さい。本実施形態では、従来に比較して、幅Wgapをきわめて小さくすることが可能になり、しかも、内部電極層12の引き込み距離が十分に小さい。そのため、本実施形態では、小型でありながら、大きな容量の積層コンデンサを得ることができる。
なお、素子本体3の幅W0は、内側誘電体層10のX軸方向に沿う幅に一致する。
Wgapを上記の範囲内とすることで、クラックが発生しにくくなると共に、セラミック焼結体4がより小型化されても、静電容量の低下が少ない。
本実施形態では、図3(A)、図3(B)に示すように、絶縁層16のZ軸方向の両端部では、素子本体3のZ軸方向の両端面のX軸方向端部を覆う絶縁層延長部16aが絶縁層16に一体的に形成してある。素子本体3のX軸方向の両端面からの絶縁層延長部16aのX軸方向のぞれぞれの幅W1とW0の比は、好ましくは1/30≦W1/W0<1/2である。
W1/W0が1/30以上であることで、電歪による構造欠陥や音鳴きをより減らすことができる。また、W1/W0が1/2であってもよいが、その場合には、一方の絶縁層延長部16aと他方の絶縁層延長部16aがつながっている構成となる。すなわち、絶縁層16が素子本体3の主面と側面との4面で覆う構成となる。このような場合には、絶縁層16の塗布方法などによっては、素子本体3におけるX軸方向の端面を被覆する絶縁層が薄くなる可能性があり、電歪の緩和の効果が下がる傾向にある。
また、図3(A)に示すように、素子本体3のZ軸方向の端面からの絶縁層16におけるZ軸方向の最大厚みをMfとして、素子本体3のX軸方向の端面からの絶縁層16におけるX軸方向の最大厚みをMtとした場合に、Mf/Mtは0.5≦Mf/Mt≦2.0であることが好ましい。
これにより、固着強度が良好で、実装性に優れた積層コンデンサを得ることができる。
Mf/Mtが0.5以上の場合、Mf/Mtが0.5未満の場合に比べて、Z軸方向の端面の被覆が十分となり、音鳴きを低減できる。
Mf/Mtが2.0以下の場合、Mf/Mtが2.0を超える場合に比べて、実装の際のはんだノリが良好であり、固着強度が良好である。
なお、素子本体3のX軸方向の端面に形成された絶縁層16は、図3(B)に示すように、中央部が凹んでいる形状であってもよい。この場合、絶縁層16のZ−X平面に平行な断面では、凸状になっている箇所が2箇所現れる。この場合は、2箇所の凸状の箇所のうち、より厚みがある方を最大厚みMtとする。
セラミック焼結体4のX軸方向の両側の幅Wgapは相互に同じでも異なっていてもよい。また、セラミック焼結体4のX軸方向の両側の幅W1も相互に同じでも異なっていてもよい。また、絶縁層16は、図1に示す素子本体3のY軸方向の両端面は広く覆っていないことが好ましい。素子本体3のY軸方向の両端面には、外部電極6,8が形成されて内部電極12と接続される必要があるからである。また、本実施形態の外部電極6,8は、絶縁層延長部16aを覆う構成となっている。
内側誘電体層10の厚みtdは特に限定されず、好ましくは0.1μm〜5.0μmである。
内部電極層12の厚みteは特に限定されず、好ましくは0.1μm〜5.0μmである。
外装領域11の厚みtoは特に限定されず、好ましくは0.1μm〜40.0μmである。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について具体的に説明する。
まず、焼成後に図1に示す内側誘電体層10を構成することになる内側グリーンシート10aおよび外側誘電体層を構成することになる外側グリーンシート11aを製造するために、内側グリーンシート用ペーストおよび外側グリーンシート用ペーストを準備する。
内側グリーンシート用ペーストおよび外側グリーンシート用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
セラミック粉末の原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末の原料は、本実施形態では、平均粒子径が0.45μm以下、好ましくは0.1〜0.3μm程度の粉体として用いられる。なお、内側グリーンシートをきわめて薄いものとするためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、アルコール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、グリーンシート用ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
次に、焼成後に図1に示す内部電極層12A,12Bを構成することになる内部電極パターン層12aを製造するために、内部電極層用ペーストを準備する。内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
導電材としてNiを用いる場合は、例えば、市販のCVD法、湿式化学還元法等を用いて作製したNiの粉体を用いてもよい。
焼成後に図1に示す外部電極6,8を構成することになる外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記にて調整した内側グリーンシート用ペーストおよび内部電極層用ペーストを使用して、図4に示すように、内側グリーンシート10aと、内部電極パターン層12aと、を交互に積層し、内部積層体13aを製造する。そして、内部積層体13aを製造した後に、外側グリーンシート用ペーストを使用して、外側グリーンシート11aを形成し、積層方向に加圧してグリーン積層体を得る。
なお、グリーン積層体の製造方法としては、上記の他、外側グリーンシート11aに直接内側グリーンシート10aと内部電極パターン層12aとを交互に所定数積層して、積層方向に加圧してグリーン積層体を得てもよい。
具体的には、まず、ドクターブレード法などにより、支持体としてのキャリアシート(たとえばPETフィルム)上に、内側グリーンシート10aを形成する。内側グリーンシート10aは、キャリアシート上に形成された後に乾燥される。
次に、図4に示すように、内側グリーンシート10aの表面に、内部電極層用ペーストを用いて、内部電極パターン層12aを形成し、内部電極パターン層12aを有する内側グリーンシート10aを得る。
この際、図5A(a)に示すように、n層目において、Y軸方向に内部電極パターン層12aの隙間32を形成し、X軸方向には連続する平坦な内部電極パターン層12aを形成する。
次に、図5A(b)に示すように、n+1層目においてもY軸方向に内部電極パターン層12aの隙間32を形成し、X軸方向には連続する平坦な内部電極パターン層12aを形成する。この際、n層目とn+1層目の内部電極パターン層の隙間32は積層方向であるZ軸方向において、重ならないように形成される。
このようにして、内部電極パターン層12aを有する内側グリーンシート10aを複数積層して、内部積層体13aを製造した後に、内部積層体13aの上下に外側グリーンシート用ペーストを使用して、適宜の枚数の外側グリーンシート11aを形成し、積層方向に加圧してグリーン積層体を得る。
次に、図5A(a)、図5A(b)、図6A、図6BのC1切断面およびC2切断面に沿って、グリーン積層体を切断してグリーンチップを得る。C1は、Y‐Z軸平面に平行な切断面であり、C2は、Z−X軸平面に平行な切断面である。
図5A(a)に示すように、n層目において内部電極パターン層12aを切断するC2切断面の両隣のC2切断面は、内部電極パターン層12aの隙間32を切断する。また、n層目において内部電極パターン層12aを切断したC2切断面は、n+1層目においては内部電極パターン層12aの隙間32を切断する。
このような切断方法によりグリーンチップを得ることで、グリーンチップのn層目の内部電極パターン層12aは、グリーンチップのC2切断面において、一の切断面では露出し、他の切断面では露出しない構成となる。また、グリーンチップのn+1層目の内部電極パターン層12aは、グリーンチップのC2切断面において、n層目で内部電極パターン層12aが露出した方の切断面では、内部電極パターン層12aは露出せず、n層目で内部電極パターン層12aが露出していない方の切断面では、内部電極パターン層12aが露出する構成となる。
さらに、グリーンチップのC1切断面においては、全ての層で内部電極パターン層12aが露出する構成となる。
また、内部電極パターン層12aの形成方法としては、特に限定されず、印刷法、転写法の他、蒸着、スパッタリングなどの薄膜形成方法により形成されていてもよい。
また、内部電極パターン層12aの隙間32に段差吸収層20を形成してもよい。段差吸収層20を形成することで、グリーンシート10aの表面で内部電極パターン層12aによる段差がなくなり、最終的に得られるセラミック焼結体4の変形防止に寄与する。
段差吸収層20は、たとえば内部電極パターン層12aと同様にして、印刷法などで形成される。段差吸収層20は、グリーンシート10aと同様なセラミック粉末と有機ビヒクルを含むが、グリーンシート10aと異なり、印刷により形成されるために、印刷しやすいように調整してある。印刷法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷などが例示される。
グリーンチップは、固化乾燥により可塑剤が除去され固化される。固化乾燥後のグリーンチップは、メディアおよび研磨液とともに、バレル容器内に投入され、水平遠心バレル機などにより、バレル研磨される。バレル研磨後のグリーンチップは、水で洗浄され、乾燥される。乾燥後のグリーンチップに対して、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を行うことにより、素子本体3が得られる。
脱バインダ工程は、公知の条件とすればよく、たとえば、保持温度を200℃〜900℃とすればよい。
本実施形態において、焼成工程およびアニール工程は、公知の条件とすればよく、たとえば、焼成の保持温度は1100℃〜1300℃であり、アニールの保持温度は500℃〜1100℃である。
脱バインダ工程、焼成工程およびアニール工程は、連続して行なっても、独立して行なってもよい。
焼成工程またはアニール工程の後、内部電極層の端部の絶縁処理を行う。本実施形態では、大気雰囲気での焼成を行うことで、内部電極層の端部の絶縁処理を行うが、下記の条件で行うことが好ましい。絶縁処理条件は、昇温(降温)速度:10℃〜5000℃/時間、保持温度:500℃〜1000℃で、雰囲気は大気中とする。
上記のようにして得られた素子本体3のY軸方向の両端面および/またはZ軸方向の両端面に、必要に応じて、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施す。
次に、上記素子本体3のX軸方向の両端面に、絶縁層用ペーストを塗布し、焼き付けることにより、絶縁層16を形成し、図1および図2に示すセラミック焼結体4を得る。この絶縁層16により、絶縁性が高められるだけでなく、耐湿性も良好とされる。絶縁層用ペーストを塗布する場合には、ペーストが、素子本体3のX軸方向の両端部のみではなく、素子本体3のZ軸方向の両端面でX軸方向の両端部にも塗布されるようにする。
絶縁層をガラスで構成する場合には、この絶縁層用ペーストは、例えば上記したガラス原料と、エチルセルロースを主成分とするバインダと分散媒であるターピネオールおよびアセトンとをミキサーで混練して得る。
素子本体3への絶縁層用ペーストの塗布方法は特に限定されず、例えば、ディップ、印刷、塗布、蒸着、スパッタリング等が挙げられるが、W1/W0やMf/Mtを調整する観点から、ディップにより塗布することが好ましい。
素子本体3に絶縁層用ペーストを塗布して、乾燥、脱バインダ処理、焼き付けを行い、セラミック焼結体4を得る。
焼き付け時に液状化したガラス成分は、内側誘電体層10の端部から内部電極層12の端部までの空隙に毛細管現象により容易に入り込む。従って、絶縁層16により、上記空隙が確実に満たされ、絶縁性が高められるだけでなく、耐湿性も良好とされる。
上記のようにして得られたセラミック焼結体4のY軸方向の両端面および/またはZ軸方向の両端面に、必要に応じて、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施す。
次に、絶縁層16が焼き付けられたセラミック焼結体のY軸方向の両端面に、外部電極用ペーストを塗布して焼き付けし、外部電極6,8を形成する。外部電極6,8の形成については、絶縁層16の形成に先立ち行っても良く、絶縁層16の形成後に行っても良く、絶縁層16の形成と同時に行ってもよいが、好ましくは、絶縁層16を形成した後が良い。
また、外部電極6,8の形成方法についても特に限定されず、外部電極用ペーストの塗布・焼付け、メッキ、蒸着、スパッタリングなどの適宜の方法を用いることができる。
そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
従来は、誘電体層の一部をギャップ部としていたため、グリーンシートの表面のうち、焼成後にギャップ部となる部分には、X軸方向に沿って所定間隔で内部電極パターン層を形成しない余白パターンを形成していた。
これに対して、本実施形態では、内部電極パターン層はX軸方向に沿って連続して形成され、ギャップ部は、素子本体に絶縁層を形成することにより得られる。このため、ギャップ部を形成するための余白パターンを形成しない。したがって、従来の方法とは異なり、グリーンシートに平坦な内部電極パターン層の膜が形成される。このため、グリーンシートの面積当りのグリーンチップの取得個数が従来に比べて増加できる。
また、本実施形態では、従来と異なり、グリーン積層体の切断時に余白パターンを気にせずに済むため、従来に比べて、切断歩留まりが改善されている。
さらに、従来は、グリーンシートを積層すると、余白パターン部分は、内部電極パターン層が形成されている部分に比べて厚みが薄く、切断する際に、グリーンチップの切断面付近が湾曲してしまう問題があった。また、従来は内部電極パターン層の余白パターン部分近くに、盛り上がりが形成されるため、内部電極層に凹凸が生じ、これらを積層することで、内部電極またはグリーンシートが変形するおそれがあった。これに対して、本実施形態では、余白パターンを形成せず、内部電極パターン層の盛り上がりも形成されない。
さらに、本実施形態は、内部電極パターン層が平坦な膜であり、内部電極パターン層の盛り上がりが形成されず、また、ギャップ部付近において、内部電極パターン層の滲みやカスレが生じないため、取得容量を向上できる。この効果は、素子本体が小さければ小さいほど顕著である。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、内部電極パターン層12aは、図5A(a)、図5A(b)に示したパターンの他、図5Bに示すように、格子状の内部電極パターン層12aの隙間32を有するパターンであってもよい。
また、本発明の積層電子部品は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の積層電子部品に適用することが可能である。その他の積層電子部品としては、誘電体層が内部電極を介して積層される全ての電子部品であり、たとえばバンドパスフィルタ、チップインダクタ、積層三端子フィルタ、圧電素子、チップサーミスタ、チップバリスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品などが例示される。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
下記の通り、試料番号1〜試料番号8のコンデンサ試料を作製して、弾性率の測定ならびに耐熱衝撃性および音圧の評価を行った。
まず、BaTiO系セラミック粉末:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、内側グリーンシート用ペーストを得た。
また、上記とは別に、Ni粒子44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
上記にて作製した内側グリーンシート用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが7μmとなるように内側グリーンシート10aを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、内部電極パターン層12aを所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、内部電極パターン層12aを有する内側グリーンシート10aを得た。
図4に示すように、内部電極パターン層12aを有する内側グリーンシート10aを積層して、内部積層体13aを製造した後に、内部積層体13aの上下に外側グリーンシート用ペーストを使用して、適宜の枚数の外側グリーンシート11aを形成し、積層方向に加圧接着してグリーン積層体を得た。外側グリーンシート用ペーストは、内側グリーンシート用ペーストと同様の方法により得た。
次に、図5A(a)、図5A(b)、図6A、図6Bに示すように、グリーン積層体をC1切断面およびC2切断面に沿って切断してグリーンチップを得た。
次に、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、素子本体3を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:60℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃〜1200℃とし、温度保持時間を2時間とした。冷却速度は200℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN+H混合ガスとした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:500℃〜1000℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガスとした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを使用した。
次に、内部電極層の端部の絶縁処理を行った。
次に、表1に示される組成および軟化点のガラス粉末と、エチルセルロースを主成分とするバインダと分散媒であるターピネオールおよびアセトンとをミキサーで混練し、絶縁層用ペーストを調製した。
素子本体3のX軸方向の端面の全面とY軸方向の端面のX軸方向の端部とZ軸方向の端面のX軸方向の端部に絶縁層用ペーストをディップにより塗布した後、乾燥させ、得られたチップについて、ベルトコンベア炉を用いて、脱バインダ処理、焼き付けを行い、素子本体3に絶縁層16を形成してセラミック焼結体4を得た。絶縁層用ペーストの乾燥、脱バインダ処理、焼き付け条件は以下の通りとした。
乾燥
温度:180℃
脱バインダ処理
昇温速度:1000℃/時間
保持温度:500℃
温度保持時間:0.25時間
雰囲気:空気中
焼き付け
昇温速度:700℃/時間
保持温度:700℃〜1000℃
温度保持時間:0.5時間
雰囲気:加湿したNガス
得られたセラミック焼結体4のY軸方向の端面をバレル処理により研磨した。
次に、平均粒径0.4μmの球状のCu粒子とフレーク状のCu粉の混合物100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂5重量部をブチルカルビトール95重量部に溶解したもの)30重量部、およびブチルカルビトール6重量部とを混練し、ペースト化した外部電極用ペーストを得た。
得られた外部電極用ペーストをセラミック焼結体4のY軸方向の端面に転写し、N雰囲気で850℃にて10分間焼成して外部電極6,8を形成し、積層セラミックコンデンサ2を得た。なお、得られた積層セラミックコンデンサ2の外部電極6,8は絶縁層延長部16aの少なくとも一部を覆っていた。
上記のようにして製造したコンデンサ試料(積層セラミックコンデンサ2)のサイズは、3.2×2.5×1.5mmであり、内側誘電体層10は10層であった。なお、内側誘電体層10の厚みは5.0μmであり、内部電極層12の厚みは約1.2μmであり、絶縁層16で構成されるギャップ部のX軸方向の幅Wgapは約20.0μmであった。
得られたコンデンサ試料等を下記の方法で測定または評価した。
<弾性率>
弾性率は、コンデンサ試料の絶縁層が形成されているX軸方向の端面に対して、ナノインデンテーションによる押し込み深さ試験を行い、測定した。結果を表2に示す。
具体的な方法は次の通りである。なお、押し込み試験装置には、ENT−2100(エリオニクス製)を使用した。
(1)まず、コンデンサ試料のX軸方向の端面を上に向けた状態でサンプルステージに設置し、ホットワックスにて固定した。
(2)次に、コンデンサ試料のX軸方向の端面の中央にダイヤモンド圧子が位置するようにし、押し込み最大荷重が500mNの測定条件にて押し込み試験を行った。
<耐熱衝撃性>
コンデンサ試料100個について、250℃の溶融はんだに10cm/secの速度で浸漬し、10秒後、10cm/secにて引き上げ、これを10回繰り返した後、絶縁抵抗を測定して、ショート不良率を調べた。結果を表2に示す。250℃でのショート不良率が0%である場合を良好であると判断した。
<音圧>
FAV‐3簡易型無響箱(国洋電気工業製)、信号発生器、確認用のオシロスコープおよび解析ソフトDS‐0221(小野測器製)を用い、無響箱内にマイクおよびコンデンサ試料が実装された回路基板を入れ、サンプルをマイクから5cm離して配置した状態で、信号発生器によって周波数:1kHz、0.5kHz刻み、DCバイアス:20Vという発信条件で交流電圧を印加し、2〜4kHzの間において、回路基板に発生する音圧を測定した。結果を表2に示す。なお、音圧の評価基準としては、40dB未満をより良好、40dB以上50dB未満を良好と判断した。音圧が低いほど、音鳴きが低減されていると判断できる。
Figure 0006724321
Figure 0006724321
弾性率が10GPa超180GPa未満の場合(試料番号2〜試料番号6)、弾性率が10GPaの場合(試料番号1)に比べて耐熱衝撃性が良好であることが確認できた。弾性率が10GPaの場合は、弾性の影響が強過ぎて、熱衝撃に耐えることができず、クラックやショートが発生することが確認できた。
弾性率が10GPa超180GPa未満の場合(試料番号2〜試料番号6)、弾性率が180GPa以上の場合(試料番号7および試料番号8)の場合に比べて音圧が良好であり、音鳴きを低減できることが確認できた。
実施例2
絶縁層用ペーストの塗布方法を以下の通りとした以外は実施例1と同様にして試料番号9〜試料番号16のコンデンサ試料を作製して、弾性率および素子本体3のX軸に沿う幅W0に対する絶縁層延長部16aのX軸に沿う幅W1の比(W1/W0)の測定ならびに耐熱衝撃性および音圧の評価を行った。結果を表3に示す。なお、試料番号9〜試料番号16の弾性率の測定ならびに耐熱衝撃性および音圧の評価は実施例1と同様に行った。W1/W0の測定方法は後述の通りである。
素子本体3のY軸方向の端面のX軸方向の中央部とZ軸方向の端面のX軸方向の中央部にマスキング用ペーストをディップで塗布した。その後、素子本体3のX軸方向の端面の全面とY軸方向の端面のX軸方向の端部とZ軸方向の端面のX軸方向の端部に絶縁層用ペーストをディップで塗布した。その際の素子本体3の降下時間を一定(30秒)にして、絶縁層用ペーストのX軸方向の厚みを調節することでW1を調節した。
<W1/W0>
コンデンサ試料がY軸方向の端面を下にして立つように樹脂埋めを行い、他方の端面を積層セラミックコンデンサ2のY軸方向に沿って研磨し、素子本体3のY軸方向の長さが、1/2L0となる研磨断面を得た。次に、この研磨断面に対しイオンミリングを行い、研磨によるダレを除去した。このようにして、観察用の断面を得た。
次に、断面において、図2に示す素子本体のX軸に沿う幅W0および絶縁層延長部のX軸に沿う幅W1を測定した。幅の測定には、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHXマイクロスコープ)を使用し、5000倍レンズで観察および測定を行った。
1つの試料について2つの絶縁層16のW0を測定し、1つの試料について絶縁層16の隅の4箇所でW1を測定した。この作業をコンデンサ試料30個に対して行い、W1/W0の平均を求めた。結果を表3に示す。ただし、絶縁層が欠損している箇所についてはカウントしなかった。
Figure 0006724321
絶縁層延長部を有する場合(試料番号10〜試料番号16)は、絶縁層延長部が無い場合(試料番号9)に比べて、音圧が良好であることが確認できた。これは、絶縁層延長部を有することで、電歪による構造欠陥をより減らせたためだと考えられる。
また、絶縁層延長部を有し、W1/W0が1/2未満の場合(試料番号10〜試料番号15)は、絶縁層延長部が無い場合(試料番号9)または、W1/W0が1/2の場合に比べて、音圧が特に良好であることが確認できた。W1/W0を1/2とすると、一方の絶縁層延長部と他方の絶縁層延長部がつながっている構成となり、X軸方向の端面を被覆する絶縁層が薄くなることで、電歪の緩和の効果が下がることによるものであると考えられる。
実施例3
絶縁層用ペーストの塗布方法を以下の通りとした以外は実施例1と同様にして試料番号17〜試料番号22のコンデンサ試料を作製して、弾性率、W1/W0および素子本体3のX軸方向の端面からの絶縁層16におけるX軸方向の最大厚みMtに対する素子本体3のZ軸方向の端面からの絶縁層16におけるZ軸方向の最大厚みMfの比(Mf/Mt)の測定ならびに耐熱衝撃性、音圧および固着強度の評価を行った。結果を表4に示す。なお、試料番号17〜試料番号22の弾性率の測定ならびに耐熱衝撃性および音圧の評価は実施例1と同様に行った。Mf/Mtの測定方法と固着強度の評価方法は後述の通りである。
素子本体3のY軸方向の端面のX軸方向の中央部とZ軸方向の端面のX軸方向の中央部にマスキング用ペーストをディップで塗布した。その後、素子本体3のX軸方向の端面の全面とY軸方向の端面のX軸方向の端部とZ軸方向の端面のX軸方向の端部に絶縁層用ペーストをディップで塗布した。その際の素子本体3の絶縁層用ペーストのX軸方向の厚み、素子本体3のディップ時間(降下時間)およびディップ回数を調節することで、Mtを調節した。
<Mf/Mt>
コンデンサ試料がY軸方向の端面を下にして立つように樹脂埋めを行い、他方の端面を積層セラミックコンデンサのY軸方向に沿って研磨し、素子本体のY軸方向の長さが、1/2L0となる研磨断面を得た。次に、この研磨断面に対しイオンミリングを行い、研磨によるダレを除去した。このようにして、観察用の断面を得た。
次に、断面において、図3に示す素子本体のZ軸方向の端面からの絶縁層におけるZ軸方向の最大厚みMfおよび素子本体のX軸方向の端面からの絶縁層におけるX軸方向の最大厚みMtを測定した。厚みの測定には、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHXマイクロスコープ)を使用し、5000倍レンズで観察および測定を行った。
1つの試料について絶縁層16の隅の4箇所でMfを測定した。図3(A)に示すように一方の絶縁層16の断面に凸状の箇所が1箇所現れる場合は、Mtはその1箇所を測定し、同じ絶縁層の2箇所のMfのそれぞれの分母としてMf/Mtを求めた。また、図3(B)に示すように一方の絶縁層16の断面に凸状の箇所が2箇所現れる場合は、Mtは2箇所を測定し、より厚みのある方を採用し、採用された方の凸状の箇所のMfを分子としてMf/Mtを求めた。
1つのコンデンサ試料に形成された2つの絶縁層について、それぞれMf/Mtを求めた。この作業をコンデンサ試料30個に対して行い、平均を求めた。結果を表4に示す。ただし、絶縁層が欠損している箇所についてはカウントしなかった。
<固着強度測定>
固着強度試験は、図7に示すように、コンデンサ試料102を回路基板104に実装した状態で、超硬の加圧治具106をコンデンサ試料102のX軸方向の端面に向けて30mm/minの速度で移動させて、加圧治具106により、矢印P1方向からコンデンサ試料102を加圧した。このとき、10Nの荷重でコンデンサ試料102が破壊するか否かによって固着強度を評価した。コンデンサ試料100個について試験を行った。結果を表4に示す。評価基準としては、固着強度の不良率が、10%未満をより良好、10%以上15%未満を良好とした。なお、本実施例に係るコンデンサ試料102の内部構造は、図1および図2に示す積層セラミックコンデンサ2と同様である。
Figure 0006724321
Mf/Mtが0.1より大きい場合(試料番号18〜試料番号21)は、Mf/Mtが0.1の場合(試料番号17)に比べて、音圧が良好であることが確認できた。これはMf/Mtが0.1より大きい場合、Mf/Mtが0.1の場合に比べて、素子本体のZ軸方向の端面へ絶縁層延長部が十分に被覆することにより、構造欠陥を防ぐことができたためであると考えられる。したがって、Mf/Mtが0.1より大きい場合は、Mf/Mtが0.1の場合に比べて、音鳴きが低減できていると考えられる。
Mf/Mtが2.5未満の場合(試料番号18〜21)は、Mf/Mtが2.5の場合(試料番号22)に比べて、固着強度が良好であることが確認できた。このため、Mf/Mtが2.5未満の場合(試料番号18〜21)は、Mf/Mtが2.5の場合(試料番号22)に比べて、実装の際のはんだのノリが良好であると考えられる。
実施例4
絶縁層を構成する成分を表5に示す成分とした。絶縁層が樹脂(試料番号23)の場合は、絶縁層用ペーストではなく、ビスフェノール型エポキシ樹脂をX軸方向の端面の全面とY軸方向の端面のX軸方向の端部とZ軸方向の端面のX軸方向の端部に塗布し、180℃の乾燥のみとして、脱バインダ処理と焼き付けは行わなかった。絶縁層がセラミックの場合(試料番号25)は、ガラスではなくセラミックを含む絶縁層用ペーストを用いた。絶縁層がガラスの場合(試料番号23)は焼き付けの際の保持温度を700℃とし、絶縁層がセラミックの場合(試料番号25)は焼き付けの保持時間を1000℃とした。以上の点以外は、実施例1と同様にして試料番号23〜試料番号25のコンデンサ試料を作製して、弾性率、W1/W0およびMf/Mtの測定ならびに耐熱衝撃性、音圧および固着強度の評価を行った。結果を表6に示す。なお、試料番号23〜試料番号25の弾性率、W1/W2およびMf/Mtの測定ならびに耐熱衝撃性、音圧および固着強度の評価は実施例1〜実施例3と同様にして行った。
Figure 0006724321
絶縁層がガラスの場合(試料番号23)は、絶縁層が樹脂の場合(試料番号24)またはセラミックの場合(試料番号25)に比べて耐熱衝撃性、音圧および固着強度の全てにおいて良好であることが確認できた。これはガラスと素子本体との密着性が樹脂またはセラミックと素子本体の密着性に比べて優れているためであると考えられる。
実施例5
ガラス粉末の組成および軟化点を表6に示す組成として、焼き付けの際の保持温度を700℃とした以外は実施例1と同様にして試料番号26〜試料番号30のコンデンサ試料を作製して、弾性率、W1/W0およびMf/Mtの測定ならびに耐熱衝撃性、音圧、固着強度および耐めっき性の評価を行った。結果を表7に示す。なお、試料番号26〜試料番号30の弾性率、W1/W0およびMf/Mtの測定ならびに耐熱衝撃性、音圧および固着強度の評価は実施例1〜実施例3と同様に行った。耐めっき性の評価方法は以下の通りである。また、表6の試料番号26〜試料番号30のガラス粉末中のBaO、SiO、NaOおよびBiの組成は、合計が100質量%になっていないが、これは、ガラス粉末がBaO、SiO、NaOおよびBi以外の微少成分を含むためである。
<耐めっき性>
コンデンサ試料をNiめっき液に浸漬温度50℃、浸漬時間120minでNiめっき付を行い、その後、Snめっき液に浸漬温度25℃、浸漬時間80minでSnめっき付を行い、絶縁抵抗を測定して、ショート不良率を調べた。上記の試験を100個のコンデンサ試料に対して行った。結果を表7に示す。ショート不良率が0%である場合を良好であると判断した。
Figure 0006724321
Figure 0006724321
NaOおよびBiをそれぞれ5質量%未満含む場合(試料番号29および試料番号30)は、NaOまたはBiを5質量%以上含む場合(試料番号26〜28)に比べて耐めっき性が良好であることが確認できた。
以上のように、本発明に係る積層セラミック電子部品は、小型高容量で使用されることが多いノートパソコンやスマートフォンに用いる電子部品として有用である。
2,102… 積層セラミックコンデンサ
3… 素子本体、
4… セラミック焼結体
6… 第1外部電極
8… 第2外部電極
10… 内側誘電体層
10a… 内側グリーンシート
11… 外装領域
11a… 外側グリーンシート
12… 内部電極層
12A,12B… 引出部
12a… 内部電極パターン層
13… 内装領域
13a… 内部積層体
14… 容量領域
15A,15B…引出領域
16… 絶縁層
16a… 絶縁層延長部
20… 段差吸収層
32… 内部電極パターン層の隙間
104… 基板
106… 加圧治具

Claims (5)

  1. 第1軸および第2軸を含む平面に実質的に平行な内部電極層と誘電体層とが第3軸の方向に沿って交互に積層された素子本体を備える積層電子部品であって、
    前記素子本体の前記第1軸の方向に相互に向き合う一対の側面にそれぞれ絶縁層が備えられており、
    前記側面には、前記内部電極層の前記第1軸方向端部が露出しており、
    前記絶縁層は前記内部電極層の露出した前記第1軸方向端部を覆い、
    前記絶縁層は、前記素子本体の前記第3軸の方向に相互に向き合う主面の一部を覆う絶縁層延長部を一体的に有し、
    前記外部電極が前記絶縁層延長部の少なくとも一部を覆っており、
    前記素子本体の前記第2軸の方向に相互に向き合う一対の端面に、前記内部電極層と電気的に接続される外部電極がそれぞれ備えられており、
    前記誘電体層はチタン酸バリウムを含み、
    前記絶縁層の弾性率は、12GPa以上140GPa以下であり、
    前記絶縁層がガラス成分で構成されていることを特徴とする積層電子部品。
  2. 前記素子本体の前記第1軸に沿う幅をW0とし、
    前記絶縁層延長部の前記第1軸に沿う幅をW1とした場合に、
    W1/W0は下記式(1)を満たす請求項に記載の積層電子部品。
    1/30≦W1/W0<1/2 (1)
  3. 前記素子本体の前記主面からの前記絶縁層における前記第3軸方向の最大厚みをMfとして、
    前記素子本体の前記側面からの前記絶縁層における前記第1軸方向の最大厚みをMtとした場合に、
    Mf/Mtは下記式(2)を満たす請求項またはのいずれかに記載の積層電子部品。0.5≦Mf/Mt≦2.0 (2)
  4. 前記絶縁層と前記誘電体層との界面に、前記絶縁層の構成成分の少なくとも一つが前記誘電体層に拡散した反応相が形成されている請求項1〜のいずれかに記載の積層電子部品。
  5. 前記絶縁層は、BaO、SiO、NaO、Bi、ZrO、AlおよびCaOからなる群から選ばれる少なくともいずれか1つを含み、
    前記絶縁層は、BiおよびNaOをそれぞれ5質量%未満含む請求項1〜のいずれかに記載の積層電子部品。
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