図1に示す研削装置1は、チャックテーブル30上に保持されたウエーハWを、粗研削手段7A及び仕上げ研削手段7Bによって研削する装置である。研削装置1のベース10上の前方(−Y方向側)は、チャックテーブル30に対してウエーハWの着脱が行われる領域である着脱領域Aとなっており、ベース10上の後方(+Y方向側)は、チャックテーブル30上に保持されたウエーハWに対して粗研削手段7A及び仕上げ研削手段7Bによる研削が行われる領域である研削領域Bとなっている。
研削領域Bには、コラム11が立設されており、コラム11には、粗研削手段7Aをチャックテーブル30に対して離間又は接近する上下方向に研削送りする研削送り手段5Aと、仕上げ研削手段7Bをチャックテーブル30に対して離間又は接近する上下方向に研削送りする研削送り手段5Bとが並んで配設されている。
研削送り手段5Bの構成と研削送り手段5Aの構成とは同様であるため、以下に研削送り手段5Aの構成についてのみ説明し、研削送り手段5Bについては研削送り手段5Aと同一の符合を付し、その説明は省略する。研削送り手段5Aは、鉛直方向(Z軸方向)の軸心を有する図示しないボールネジと、ボールネジと平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジの上端に連結しボールネジを回動させるモータ52と、内部のナットがボールネジに螺合し側部がガイドレール51に摺接する昇降板53とを備えており、モータ52がボールネジを回動させると、これに伴い昇降板53がガイドレール51にガイドされてZ軸方向に往復移動し、昇降板53上に固定された粗研削手段7AがZ軸方向に研削送りされる。
粗研削手段7Aは、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)であるスピンドル70と、スピンドル70を回転可能に支持し昇降板53上に固定されたハウジング71と、スピンドル70を回転駆動するモータ72と、スピンドル70の下端に接続された円形状のマウント73と、マウント73の下面に着脱可能に接続された研削ホイール74とを備える。研削ホイール74の底面には環状に略直方体形状の複数の研削砥石742が固定されており、研削砥石742は、例えば、レジンボンドやメタルボンド等でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。なお、研削砥石742の形状は、環状に一体に形成されているものでもよい。研削砥石742は、粗研削に用いられる砥石であり、砥石中に含まれる砥粒が比較的大きな砥石である。
例えば、スピンドル70の内部には、研削水の通り道となる流路が、スピンドル70の軸方向(Z軸方向)に貫通して形成されており、流路は、一端に研削水を供給する研削水供給手段が接続されており、他端がマウント73を通り研削砥石742に向かって研削水を噴出できるように開口している。
図1に示す仕上げ研削手段7Bは、砥石中に含まれる砥粒が比較的小さな仕上げ研削用の研削砥石743を備えており、その他の構成は粗研削手段7Aと同様の構成になっている。仕上げ研削手段7Bについては、研削砥石743以外の部位に粗研削手段7Aと同一の符号を付し、その説明は省略する。
図1に示すように、ベース10上には、ターンテーブル17が配設され、ターンテーブル17の上面には、例えば4つのチャックテーブル30が周方向に等間隔を空けて配設されている。ターンテーブル17の中心には、ターンテーブル17を自転させるための図示しない回転軸が配設されており、回転軸を中心としてターンテーブル17を水平に自転させることができる。ターンテーブル17が自転することで、4つのチャックテーブル30を公転させ、着脱領域Aから、粗研削手段7Aの下方、及び仕上げ研削手段7Bの下方へと順次移動させることができる。
チャックテーブル30は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等からなりウエーハWを吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。吸着部300は図示しない吸引源に連通し、吸着部300の露出面である保持面300a上でウエーハWを吸引保持する。チャックテーブル30は、図示しない回転手段によりターンテーブル17上で自転可能となっている。
ベース10上の前方(−Y方向側)の両側には、例えば、加工前のウエーハWが収容される第1のカセット150と加工後のウエーハWを収容する第2のカセット151とがそれぞれ設置されている。第1のカセット150と第2のカセット151との間には、第1のカセット150から加工前のウエーハWを搬出するとともに加工後のウエーハWを第2のカセット151に搬入するロボット6が配設されている。
第1のカセット150の後方でロボット6の可動範囲内には、位置合わせ手段153が配設されている。位置合わせ手段153は、第1のカセット150から搬出されてくるウエーハWを所定の位置に位置合わせする。
位置合わせ手段153と隣接する位置には、ウエーハWを保持した状態で旋回するローディングアーム154aが配置されている。ローディングアーム154aは、位置合わせ手段153において位置合わせされたウエーハWを保持し、着脱領域Aに位置しているいずれかのチャックテーブル30へ搬送する。ローディングアーム154aの隣には、加工後のウエーハWを保持した状態で旋回するアンローディングアーム154bが設けられている。アンローディングアーム154bと近接する位置には、アンローディングアーム154bにより搬送された加工後のウエーハWを洗浄する枚葉式の洗浄手段156が配置されている。洗浄手段156により洗浄されたウエーハWは、ロボット6により第2のカセット151に搬入される。
ベース10の正面側(−Y方向側)には、オペレータが研削装置1に対して加工条件等を入力するための操作手段19が配設されている。また、研削装置1は、CPUとメモリ等の記憶素子とから構成され装置全体の制御を行う制御手段9を備えており、制御手段9は、図示しない配線によって、研削送り手段5A、5B及びロボット6等に接続されており、制御手段9の制御の下で、研削送り手段5Aによる粗研削手段7Aの研削送り動作や、ロボット6によるウエーハWの搬送動作等が制御される。
図1、2に示すウエーハWは、例えば、外形が円形板状の半導体ウエーハであり、表面Waには、複数の分割予定ラインによって区画された複数の格子状の領域にIC、LSI等のデバイスが形成されている。そして、ウエーハWの表面Waは、保護テープTが貼着されて保護された状態となっており、ウエーハWの裏面Wbは、研削加工が施される被研削面となる。例えば、ウエーハWは、裏面Wbが上側を向いた状態で、第1のカセット150内に収容されている。
保護テープTは、例えば、ウエーハWの外径と同径の円形板状のフィルムであり、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)からなる基材層と、紫外線非硬化型の粘着糊からなる粘着層とを備えている。例えば、保護テープTの総厚は150μmであって、基材層の厚みが135μmとなっており、粘着層の厚みが15μmとなっている。保護テープTの色は青色であり、基材層の露出面Tbは滑らかでなく粗くざらついた状態である。
図2に示すように、第1のカセット150は、底板150aと、天板150bと、2枚の側壁150dと、開口150eとを有しており、開口150eからウエーハWを搬出入できる構成となっている。第1のカセット150の内部には、複数の棚部150fが上下方向に所定の間隔をあけて形成されており、棚部150fにおいてウエーハWを水平な状態で一枚ずつ収容することが可能となっている。例えば、各棚部150fは、その中央領域が略長方形状に切り欠かれた平板で形成されており、各棚部150fにより各ウエーハWの外周部を支持した状態でウエーハWを第1のカセット150内に収容できる。
図2に示すように、ウエーハWを第1のカセット150内から搬出するロボット6は、ウエーハWを吸引保持するロボットハンド60と、ロボットハンド60を所定の位置に旋回移動させる駆動部61と、ロボットハンド60を所定の高さ位置に位置付けるZ軸方向移動機構62とを備えている。駆動部61は、例えば、第1のアーム611と、第2のアーム612と、ロボットハンド60を水平方向に旋回させるロボットハンド旋回手段613と、第1のアーム旋回手段614と、第2のアーム旋回手段615とから構成されており、制御手段9によってその動作が制御されている。
ロボットハンド旋回手段613には、第1のアーム611の一端の上面が連結されている。第1のアーム611のもう一端の下面には、第1のアーム旋回手段614を介して、第2のアーム612の一端の上面が連結されている。第2のアーム612のもう一端には、第2のアーム旋回手段615が連結されている。そして、第2のアーム旋回手段615は、Z軸方向移動機構62上に接続されている。
ロボットハンド旋回手段613は、図示しない旋回駆動源が発生させる回転力によりロボットハンド60を第1のアーム611に対して水平に旋回させるものである。第1のアーム旋回手段614は、図示しない旋回駆動源が発生させる回転力により、第1のアーム611を第2のアーム612に対して水平に旋回させるものである。第2のアーム旋回手段615は、図示しない旋回駆動源が発生する回転力により、第2のアーム612をZ軸方向移動機構62に対して水平に旋回させるものである。そして、Z軸方向移動機構62は、制御手段9によりその動作が制御されており、ロボットハンド60を任意の高さ位置に位置付けることができる。
ロボットハンド60は、例えば、アクリルやポリカーボネート等のエンプラ又はステンレス鋼等からなり、基部600から第1の支持部601及び第2の支持部602が同方向に突出したU字の平板状に形成されており、第1の支持部601及び第2の支持部602cの先端側から図2に示す第1のカセット150の内部に進入していく。
ロボットハンド60の基部600は、例えば図示しないスピンドルを介してロボットハンド旋回手段613に接続されており、スピンドルを回転させることによって、ロボットハンド60の表面と裏面とを上下に反転させることができる。
ロボットハンド60の表面において、第1の支持部601の上面根元部分と第2の支持部602の上面根元部分には、それぞれ矩形状の吸引孔603が開口しており、吸引孔603は、真空発生装置及びコンプレッサー等から構成される図示しない吸引源と連通している。
図1に示す研削装置1によってウエーハWの研削を行うにあたっては、例えば、まず、オペレータが、保護テープTの厚みを含めたウエーハWの粗研削後の厚み及び仕上げ研削後の厚みの設定を、操作手段19から研削装置1に対して入力する。制御手段9は、この入力値に基づいて、研削送り手段5Aによる粗研削手段7Aの研削送り速度や下降位置及び研削送り手段5Bによる仕上げ研削手段7Bの研削送り速度や下降位置等を制御する。かかる入力が終了した後、オペレータが操作手段19を操作して研削の開始を指示すると、第1のカセット150から、研削加工前のウエーハWがロボット6によって一枚搬出される。
ここで、第1のカセット150内に収容されている複数枚のウエーハWは、基本的にはみな同一の保護テープTが表面Waに貼着されたウエーハである。しかし、誤って異なる種類の保護テープがウエーハWに貼られて第1のカセット150内に収容されてしまっている場合もある。
このような異なる保護テープが貼着されたウエーハが第1のカセット150内に混在して収容されている場合に、そのウエーハWが搬出され、先に研削装置1に設定された保護テープTの厚みを含めたウエーハWの研削加工条件に基づいて研削加工が行われると、例えば、図1に示す研削砥石742がその異なる保護テープに当接してしまい、粗研削手段7Aのスピンドル70がかじってしまうか、又は、研削後のウエーハWが所望の厚みに形成されていない等の問題が発生し得る。このような問題が発生してしまうことを防止するために、本発明に係るウエーハの処理方法を実施するが、本発明に係るウエーハの処理方法を実施するための基準データが研削加工開始前に作成され、図2に示す研削装置1の識別手段8の記憶部89に記憶される。
(基準データの作成)
研削装置1は、ウエーハWに貼着された保護テープに特定の波長の光を照射し保護テープで反射した反射光を受光して検出する分光光度計2と、分光光度計2から送信される情報に基づき反射率を測定し、測定した反射率によってウエーハWに貼着された保護テープの種類を識別する識別手段8とを備えている。例えば、図2に示すロボットハンド60の第1の支持部601の上面先端には、分光光度計2を構成しウエーハWに貼着された保護テープに対して測定光を投光する投光部28と、保護テープで反射された反射光を受光する受光部27とが並んで配設されている。
図4に一例を示す基準データは、例えば、図3に示すミラーシリコンウエーハMWの鏡面処理した測定面MWaに光を当てた際の反射率を基準として、保護テープT、保護テープT1、及び保護テープT2についてそれぞれ以下のように作成され、記憶部89に記憶される。ここで、保護テープTは、ウエーハWの裏面Wbの研削時に表面Waに貼着されているべき保護テープであり、保護テープT1、T2は、ウエーハWの裏面Wbの研削時に表面Waに貼着されているべきでない保護テープである。
保護テープT1は、例えば、ウエーハWの外径と略同径の円形板状のフィルムであり、ポリオレフィン樹脂及びポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂の合材からなる基材層と、紫外線硬化型の粘着糊からなる粘着層とを備えている。例えば、保護テープT1の総厚は120μmであって、基材層の厚みが80μmとなっており、粘着層の厚みが40μmとなっている。保護テープT1の色は青色であり、基材層の露出面T1bは滑らかな状態である。
保護テープT2は、例えば、ウエーハWの外径と略同径の円形板状のフィルムであり、ポリオレフィン樹脂からなる基材層と、紫外線非硬化型の粘着糊からなる粘着層とを備えている。例えば、保護テープT2の総厚は145μmであって、基材層の厚みが100μmとなっており、粘着層の厚みが45μmとなっている。保護テープT2の色は青色であり、基材層の露出面T2bは滑らかな状態である。
図3に模式的に示す分光光度計2は、例えば、測定光の光源20として、可視波長領域である350nm〜3000nm付近の測定光(連続光)を発するハロゲンランプ200と、紫外領域180nm〜400nm付近までの測定光(連続光)を発する重水素ランプ201とを備えている。光源20におけるハロゲンランプ200と重水素ランプ201との切り替えは、例えば波長360nmの前後で自動的に行われる。なお、光源20を、185nm〜2000nm付近までの測定光(連続光)を発するキセノンフラッシュランプのみからなる構成としてもよい。
重水素ランプ201又はハロゲンランプ200のどちらかから発せられた光は、集光鏡210で反射した後に、高次光をカットする高次光カットフィルター211を通過し、入射スリット212により光束が制限され、分光光度計2の分光器22に入る。
光源20が発する光は、特定波長の光ではなく、可視領域又は紫外領域において連続する波長領域の光の混合(連続光)となっているため、分光器22は、その内部に、反射光の干渉を利用して連続光から特定波長の光を取り出す役割を果たす回動可能な回析格子220を備えている。回折格子220は、例えば、アルミニウム等からなる金属板又はガラス板の鏡面加工した表面に、多数の溝(格子)が等間隔で平行に刻まれた構成となっている。回析格子220に入射した連続光は、隣り合う格子からの反射光の光路差が波長の整数倍になる方向で強められ各特定波長の光が一定の角度で反射するため、この反射する角度の異なりを利用した分光を行うことができる。なお、回折格子220は、所望の光分散能を有するガラスで作成したプリズムを用いてもよい。
分光器22内に入った連続光は、図示しないコリメータ鏡等により平行光となり、回折格子220に照射される。その結果、回折格子220に照射された光は、回折格子220で反射することより、波長成分に応じて反射角が異なる特定波長の光(単色光)に分散する。分光された各特定波長の光は、図示しないレンズ等の光学系によって、出射スリット230に集光され、出射スリット230によって各特定波長の光(単色光)が選択的に取り出される。
分光器22で選択的に取り出された特定波長の光は、例えば、ミラー231及びミラー232において反射し、ロボットハンド60の第1の支持部601上(図3においては不図示)に形成された投光部28から、投光部28の上方に位置付けられたミラーシリコンウエーハMWに所定の入射角で照射される。
例えば、投光部28の上方に位置付けられたミラーシリコンウエーハMWの測定面MWaに対して、投光部28から所定の入射角(本実施形態においては、入射角5度)で照射された特定波長の光は、ミラーシリコンウエーハMWにおいて反射する。なお、例えば、投光部28には、投光部28から照射される各特定波長の光の強度(電磁気的エネルギー)を検出して電気信号に変換する受光素子280が備えられている。例えば、第1の支持部601上に形成された図3に示す受光部27は、第一の支持部601上で移動可能となっており、受光部27をミラーシリコンウエーハMWからの反射光が入射する位置に移動させることで、ミラーシリコンウエーハMWからの反射光が受光部27によって受光される。
受光部27が受光した反射光は、分光光度計2の検出器26に照射される。検出器26は、例えば、190nm〜1100nmで強い感度を示すSiフォトダイオード検出器及び1000nm〜3200nmの広い波長域に感度を示すPbS検出器等から構成されており、ミラーシリコンウエーハMWからの反射光を特定波長毎に検出し、これら特定波長毎の反射光の強度を電流又は電圧に変換して電気信号として、識別手段8の反射率測定部85に送信する。なお、例えば、内壁に高反射率素材(例えば、硫酸バリウム)を塗布した図示しない積分球を検出器26に接続することで、反射光が積分球内面で多重反射することでトラップされ、その積分球の壁に配置された検出器26により、トラップされた反射光の強度をより精度良く測定できるにしてもよい。
反射率測定部85は、検出器26に接続されていると共に、受光素子280にも接続されており、例えば、所定のプログラムを実行することにより演算処理を実施し、ミラーシリコンウエーハMWからの各特定波長の反射光毎の反射率の測定を行う。反射率の測定は、例えば、投光部28から発せられる各特定波長の光の強度、すなわち、受光素子280からの電気信号の出力をLaとし、受光部27が受光した反射光の強度、すなわち、検出器26からの電気信号の出力をLbとした場合に、反射率=(Lb/La)×100%で求められる。そして、シリコンミラーウエーハMWの反射率は、例えば、250nmから2000nmまでの各特定波長毎の光ごとにそれぞれ計測される。
シリコンミラーウエーハMWに各特定波長毎の光を照射して、各特定波長毎の光の各反射率を測定したのと同様に、図2に示す第1の支持部601の上方に、保護テープT、保護テープT1、又は保護テープT2を位置付け、保護テープT、保護テープT1、及び保護テープT2についても、それぞれ、シリコンミラーウエーハMWと同様に分光された各特定波長毎の光を照射して、各特定波長毎の光の各反射率を測定する。
そして、反射率測定部85は、例えば、図4のグラフGaを作成する。図4に示すグラフGaは、横軸が波長(nm)であり、縦軸は、シリコンミラーウエーハMWにおける250nmから2000nmまでの各特定波長毎の光ごとの各反射率を基準(例えば、100%として規定)とした場合の、保護テープT、保護テープT1、及び保護テープT2の相対的な反射率を示している。反射率測定部85は、このグラフGaについての情報を、図3に示す識別手段8の記憶部89に送信し、記憶部89がこのグラフを記憶することで、基準データの作成が完了する。なお、グラフGaにおいて、保護テープTの反射率についてのグラフは実線で示しており、保護テープT1の反射率についてのグラフは点線で示しており、保護テープT2の反射率についてのグラフは一点鎖線で示している。
以下に、図1に示す研削装置1において、ウエーハWを研削する場合の研削装置1の動作について説明する。例えば、まず、オペレータが、保護テープTの厚みを含めたウエーハWの粗研削後の厚み及び仕上げ研削後の厚みの設定を、操作手段19から研削装置1に対して入力する。
次いで、図2に示すZ軸方向移動機構62が、ロボットハンド60をZ軸方向に移動させて、ロボットハンド60と第1のカセット150内のウエーハWとのZ軸方向における位置合わせが行われる。また、図示しないスピンドルが回転し、ロボットハンド60の吸引孔603が形成された表面が上側を向いた状態にセットされる。
また、駆動部61がロボットハンド60を旋回させて、第1の支持部601(第2の支持部602)を第1のカセット150の開口150eに対して対向させる。さらに、ロボットハンド60が駆動部3によってY軸方向に駆動され、ウエーハWの中心がロボットハンド60の第1の支持部601と第2の支持部602との間の中間線上に位置するように、ロボットハンド60がY軸方向において位置付けられる。次いで、駆動部61が、ロボットハンド60を+X方向に移動させて、ロボットハンド60が開口150eから第1のカセット150の内部の所定の位置まで進入していく。
第1のカセット150の内部において、ロボットハンド60は、ウエーハWの下方の棚部150fの切り欠かれた領域を+X方向に移動していき、例えば、ウエーハWの中心とロボットハンド60の2つの吸引孔603とを結ぶ三角形が正三角形になる位置に位置付けられる。
ここで、第1のカセット150内に収容されている複数枚のウエーハWは、基本的にはみな同一の保護テープTが表面Waに貼着されたウエーハである。しかし、誤って異なる種類の保護テープT1又は保護テープT2が表面Waに貼られたウエーハWが、第1のカセット150内に混在して収容されてしまっている場合もある。このような場合に、保護テープの認識間違いに基づいた研削加工条件設定によって発生し得る、研削加工時又は研削加工後における問題の発生を防止するために、本発明に係るウエーハの処理方法を実施する。
(1)識別ステップ
ウエーハWに貼着された保護テープに光を照射し、保護テープで反射した反射光を受光して反射率を測定し、反射率によって、ウエーハWに貼着された保護テープの種類を識別する識別ステップを以下に実施する。本識別ステップにおいては、まず、基準データを作成した場合と同様に、ロボットハンド60の上方に位置するウエーハWに貼着された保護テープに対して、特定波長毎の光が照射される。すなわち、図3に示す分光光度計2の光源20から、例えば、1000nm〜1500nmの範囲の連続光が、集光鏡210、高次光カットフィルター211、及び入射スリット212を介して、分光器22に照射される。そして、分光器22内に入った光は、回折格子220によって分光され、出射スリット230に集光され、出射スリット230によって1000nm〜1500nmの範囲内の各特定波長の光が選択的に取り出される。選択的に取り出された特定波長の光は、ミラー231及びミラー232において反射し、ロボットハンド60の第1の支持部601上(図3においては不図示)に形成された投光部28から、投光部28の上方に位置付けられたウエーハWに貼着されている保護テープに対して所定の入射角(本実施形態においては、入射角5度)で照射される。そして、ウエーハWに貼着されている保護テープにおいて反射し、受光部27で受光した反射光は、分光光度計2の検出器26に照射される。検出器26は、これら1000nm〜1500nmの範囲内の特定波長毎の反射光の強度を、電気信号として識別手段8の反射率測定部85に送信する。
反射率測定部85は、ウエーハWに貼着されている保護テープにおける各特定波長の反射光毎の反射率の測定を行う。反射率の測定は、例えば、1000nm、1250nm、及び1500nmの3つの波長の光について行われる。例えば、反射率測定部85が測定した反射率が、波長1000nmの光の反射率が3.2%、波長1250nmの光の反射率が3.3%、波長1500nmの光の反射率が8.2%となる。なお、本実施形態においては、反射率の測定は、1000nm〜1500nmの範囲内の1000nm、1250nm、及び1500nmの3つの波長の光について行っているが、これに限定されるものではなく、ウエーハWに貼着されている可能性がある保護テープの種類によって、例えば、500nm〜2000nmの範囲内4つ以上の波長の光について反射率の測定を行ってもよい。
次いで、識別手段8の判別部83が、記憶部89に記憶されている図4に示すグラフGaに基づいて、ウエーハWに貼着されている保護テープが、保護テープT、保護テープT1、又は保護テープT2の中のどの保護テープであるかを判別する。図4に示すグラフGaより、基準データに基づく各保護テープの反射率は、波長1000nmの光の反射率は、保護テープTでは約3%、保護テープT1では約49%、保護テープT2では約17%である。波長1250nmの光の反射率は、保護テープTでは約3%、保護テープT1では約49%、保護テープT2では約22%である。波長1500nmの光の反射率は、保護テープTでは約8%、保護テープT1では約56%、保護テープT2では約30%である。判別部83は、例えば、基準データに基づく保護テープTの3つの波長の光の反射率と、今回測定した保護テープの3つの波長の光の反射率との差が、各々許容範囲内(例えば、±2%以内)の差であるため、ウエーハWに貼着されている保護テープは保護テープTであると判別する。そして、識別手段8が制御手段9に対してこの情報を送信する。
なお、判別部83は、例えば、基準データに基づく保護テープTの3つの波長の光の反射率と、今回測定した保護テープの3つの波長の光の反射率との差が、例えば1つでも大幅にずれているような場合には、ウエーハWに貼着されている保護テープは保護テープTでないと判別し、識別手段8が、制御手段9に対してこの情報を送信したり、外部に向かって保護テープの認識間違い、すなわち、第1のカセット150内部に保護テープT以外の保護テープT1又は保護テープT2が貼着されたウエーハが収容されている旨のエラーを発報したりする。
また、判別部83は、ウエーハWに貼着されている保護テープは保護テープTでないと判別した場合には、さらに、図4に示すグラフGaより、基準データに基づく保護テープT1又は保護テープT2のそれぞれの3つの波長の光の反射率と、今回測定した保護テープの3つの波長の光の反射率との差を照合して、ウエーハWに貼着されている保護テープが、保護テープT1又は保護テープT2のいずれであるかを判別する。そして、識別手段8が、制御手段9に対してこの情報を送信したり、外部に向かってウエーハWに貼着されている保護テープがどの保護テープであるかを発報したりする。
このように、本発明に係るウエーハの処理方法においては、例えば、研削加工等の加工処理が開始される前に、ウエーハWに貼着された保護テープの種類を判別することができる。
(2)処理ステップ
次いで、例えば、識別ステップの結果に基づいてウエーハWを処理する処理ステップが実施される。図1に示す制御手段9は、ウエーハWに貼着されている保護テープは保護テープTであるとする情報が識別手段8から送信されてくることで、オペレータにより入力された保護テープTの厚みを含めたウエーハWの粗研削後の厚み及び仕上げ研削後の厚みの設定が正確であるとして、当初の加工条件のまま研削加工を進行させていく処理を行う。すなわち、ロボット6に第1のカセット150から研削加工前のウエーハWを一枚搬出させる処理をそのまま実行させる。すなわち、第1のカセット150内部において、ウエーハWの下方の棚部150fの切り欠かれた領域に位置付けられた状態となっているロボットハンド60が上昇して、ウエーハWに貼着されている保護テープTの基材面Tbに接触する。また、図示しない吸引源が吸引することにより生み出された吸引力が、ロボットハンド60の2つの吸引孔603に伝達され、ロボットハンド60によりウエーハWが吸引保持される。そして、ウエーハWを吸引保持したロボットハンド60が+X方向に移動し、ウエーハWがロボット6により第1のカセット150の内部から搬出される。
例えば、ウエーハWに貼着されている保護テープは保護テープTではないとする情報が識別手段8から制御手段9に送信されてきた場合には、オペレータにより入力された保護テープTの厚みを含めたウエーハWの粗研削後の厚み及び仕上げ後の厚みの設定が正確でないとして、制御手段9からロボット6に対して、第1のカセット150からのウエーハWの搬出を停止させる指令が送られ、ロボット6による第1のカセット150からのウエーハWの搬出を停止させる処理が実行される。なお、警報音を鳴らすなどして、誤った保護テープがウエーハWに貼着されている旨をオペレータに報知するようにしてもよい。
または、例えば、ウエーハWに貼着されている保護テープは保護テープTではなく、保護テープT1であるとする情報が識別手段8から制御手段9に送信されてきた場合には、制御手段9は、ロボット6に、第1のカセット150から保護テープT1が貼着された研削加工前のウエーハWを一枚搬出させる処理を実行させる。さらに、制御手段9が演算処理を行い、オペレータにより入力された保護テープTの厚みを含めたウエーハWの粗研削後の厚み及び仕上げ後の厚みの設定を、保護テープT1の厚みを含めたウエーハWの粗研削後の厚み及び仕上げ後の厚みへと設定変更し、変更後の加工条件で研削加工を進行させていく処理を行う。
保護テープTが貼着されていると判別されたウエーハWがロボット6により第1のカセット150から搬出された後、図1に示すターンテーブル17が自転することで、ウエーハWが載置されていない状態のチャックテーブル30が公転し、チャックテーブル30がローディングアーム154aの近傍まで移動する。ロボット6がウエーハWを位置合わせ手段153に移動させ、位置合わせ手段153においてウエーハWが所定の位置に位置決めされた後、ローディングアーム154aが、位置合わせ手段153上のウエーハWをチャックテーブル30上に移動させる。そして、チャックテーブル30の中心とウエーハWの中心とが略合致するように、ウエーハWが、保護テープT側を下にして保持面300a上に載置される。そして、図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面300aに伝達されることにより、チャックテーブル30が保持面300a上でウエーハWを吸引保持する。
例えば、+Z軸方向から見て反時計回り方向にターンテーブル17が自転することで、ウエーハWを保持したチャックテーブル30が公転し、研削領域B内の粗研削手段7Aの下まで移動して、粗研削手段7Aに備える研削ホイール74とチャックテーブル30に保持されたウエーハWとの位置合わせがなされる。
粗研削手段7Aに備える研削ホイール74とウエーハWとの位置合わせが行われた後、スピンドル70が回転駆動されるのに伴って研削ホイール74が回転する。また、粗研削手段7Aが研削送り手段5Aにより−Z方向へと送られ、回転する研削ホイール74の研削砥石742がウエーハWの裏面Wbに当接することで粗研削加工が行われる。粗研削中は、図示しない回転手段がチャックテーブル30を回転させるのに伴って、保持面300a上に保持されたウエーハWも回転するので、研削砥石742がウエーハWの裏面Wbの全面の粗研削加工を行う。また、研削水を研削砥石742とウエーハWとの接触部位に対して供給して、研削砥石742とウエーハWの裏面Wbとの接触部位を冷却・洗浄する。
一枚のウエーハWを所定の研削量だけ粗研削して、一枚のウエーハWの粗研削を完了させた後、図1に示すターンテーブル17が+Z方向から見て反時計回り方向に自転することで、粗研削後のウエーハWを保持するチャックテーブル30が公転し、チャックテーブル30が仕上げ研削手段7Bの下方まで移動する。仕上げ研削手段7Bに備える研削ホイール74とウエーハWとの位置合わせが行われた後、仕上げ研削手段7Bが研削送り手段5Bにより−Z方向へと送られ、回転する研削ホイール74の研削砥石743がウエーハWの裏面Wbに当接することで仕上げ研削加工が行われる。仕上げ研削中は、図示しない回転手段がチャックテーブル30を回転させるのに伴って、保持面300a上に保持されたウエーハWも回転するので、研削砥石743がウエーハWの裏面Wbの全面の仕上げ研削加工を行う。
次いで、図1に示すターンテーブル17が+Z方向から見て時計回り方向に自転することで、チャックテーブル30がアンローディングアーム154bの近傍まで移動する。そして、チャックテーブル30上に吸引保持されている仕上げ研削加工が施されたウエーハWを、アンローディングアーム154bがチャックテーブル30から搬出し、洗浄手段156のスピンナーテーブルに載置する。
このように、本発明に係るウエーハの処理方法においては、識別ステップにおけるウエーハWに貼着された保護テープの種類の識別結果に基づいてウエーハWを処理する処理ステップを備えるものとすることで、適切な加工条件(本実施形態においては、ウエーハWの粗研削後の厚み及び仕上げ研削後の厚みへと適切な設定)の下で、ウエーハWに対する研削加工等の加工処理を行うことが可能となる。
なお、本発明に係るウエーハの処理方法は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されている研削装置1、ロボット6及び分光光度計2の構成等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態においては、分光光度計2及び識別手段8はロボット6に接続されているが、これに限定されるものではなく、分光光度計2及び識別手段8が、例えば、第1のカセット150内、位置合わせ手段153、又はローディングアーム154a等に接続されており、保護テープの種類を識別する識別ステップが、第1のカセット150内、位置合わせ手段153上等で実施されるものとしてもよい。
また、本実施形態において図3に示す分光光度計2は、分光器22から出た特定波長毎の光がミラーシリコンウエーハMWに照射され、ミラーシリコンウエーハMWからの反射光がそのまま検出器26に入る、いわゆるシングルビーム方式の分光光度計であるが、これに限定されるものではなく、分光器22から出た特定波長毎の光をビームスプリッターで2光束に分け、例えば保護テープTとミラーシリコンウエーハMWとに並行して照射し、ミラーシリコンウエーハMWからの反射光が検出器26に入り、保護テープTからの反射光が図3において二点鎖線で示す検出器26Aに入る、いわゆるダブルビーム方式の分光光度計であってもよい。分光光度計2をダブルビーム方式の分光光度計とすることで、反射率測定の過程で、光源20の光量変動による影響を原理的に相殺することが可能であるため、反射率測定の精度をより高めることができる。
この場合においては、例えば、図2に示すロボットハンド60の第2の支持部602の上面先端には、分光光度計を構成し測定光を投光する図3に示す投光部28Aと、反射光を受光する受光部27Aとが並んで配設される。そして、反射率測定のための基準データの作成時には、例えば、ロボットハンド60の第1の支持部601の上方にミラーシリコンウエーハWが位置付けられ、かつ、第2の支持部602の上方に保護テープTが位置付けられた状態で反射率の測定が行われていく。図3に示す、分光光度計2がダブルビーム方式の分光光度計である場合には、ミラー232は、入射した光の一部を反射し一部は透過するビームスプリッターで形成される。そして、分光器22で選択的に取り出された特定波長の光は、ミラー232で2光束に分けられ、保護テープTへと照射される方の特定波長の光は、図3に示すミラー233を介して投光部28Aへと反射される。受光素子280Aを備える投光部28Aから所定の入射角(本実施形態においては、入射角5度)で保護テープTに照射された特定波長の光は、保護テープTで反射し、受光部27Aでその反射光が受光され、検出器26Aに照射される。そして、検出器26Aから、特定波長毎の反射光の強度を示す電気信号が、識別手段8の反射率測定部85に送信される。並行して、ミラーシリコンウエーハMWで反射し検出器26に照射される反射光の強度を示す電気信号が、識別手段8の反射率測定部85に送信され、反射率測定部85が自動でブランク補正しながら、ミラーシリコンウエーハMWの反射率を基準とした保護テープTの反射率を測定することができる。