以下、本発明に基づき構成された研削装置、及び研削方法について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る研削装置の全体斜視図である。図に示すように、研削装置1は、被加工物である板状ワークWに対して搬入処理、粗研削加工、仕上げ研削加工、洗浄処理、搬出処理からなる一連の作業を実施するように構成されている。板状ワークWは、図2(a)に示すように略円板状に形成されており、図2(b)に一部拡大断面図を示すように、下面からシリコン(Si)からなる支持板として採用されるシリコンキャリア230、接着剤層220、及び配線基板の上に積層したシリコンチップをモールド樹脂で封止したデバイス層210から形成されている。接着剤層220は例えば、エポキシ系樹脂からなる接着剤を使用することができる。このような板状ワークWが複数収容されたカセットCが研削装置1に搬入される。
研削装置1の基台11の前側には、複数の板状ワークWが収容された一対のカセットCが載置される。一対のカセットCの後方には、カセットCに対して板状ワークWを出し入れするカセットロボット16が設けられている。カセットロボット16の右方斜め後方には、加工前の板状ワークWを位置決めする位置決め機構21、また、カセットロボット16の左方斜め後方には、加工済みの板状ワークWを洗浄する洗浄機構26と、が設けられている。位置決め機構21と洗浄機構26の間には、加工前の板状ワークWを保持テーブル41に搬入する搬入手段31と、保持テーブル41から加工済みの板状ワークWを搬出する搬出手段36とが設けられている。
カセットロボット16は、多節リンクからなるロボットアーム17の先端に図示しない吸引機構を備えたハンド部18を設けて構成されている。カセットロボット16では、カセットCから位置決め機構21に加工前の板状ワークWが搬送される他、洗浄機構26からカセットCに加工済みの板状ワークWが搬送される。
位置決め機構21は、仮置きテーブル22の周囲に、仮置きテーブル22の中心に対して進退可能な複数の位置決めピン23を配置して構成される。位置決め機構21では、仮置きテーブル22上に載置された板状ワークWの外周縁に複数の位置決めピン23が突き当てられることで、板状ワークWの中心が仮置きテーブル22の中心にセンタリングされる。
本実施形態における位置決め機構21には、本発明に基づいて構成された厚み測定手段100が配設されており、厚み測定手段100から出力される信号は、制御部85に送られる。厚み測定手段100は、図に示すように仮置きテーブル22の下面側内部に配設され、仮置きテーブル22には、厚みを測定する際の測定光が通過する開口24が形成されている。
図3を参照しながら、厚み測定手段100の構成について説明する。厚み測定手段100は、図に示すように、板状ワークWに対して測定光121を放射する発光源としての発光部101と、発光部101が放射した測定光121を上方、すなわちZ方向へ反射するミラー102と、測定光121を透過するセンサーヘッド103と、測定光121が板状ワークWにて反射して戻ってきた反射光125を分光する回折格子104と、回折格子104で分光された光126を波長毎に受光するイメージセンサー105(受光部)とを備えている。なお、図示は省略するが、センサーヘッド103から照射される測定光121を平行光に変換して板状ワークWに照射するコリメートレンズも配置されている。
発光部101は、例えばスーパールミネッセントダイオード(SLD)であり、発光部101が放射する測定光121は、比較的広いスペクトル幅を有する。測定光121の波長領域は、板状ワークWを構成するシリコンキャリア、接着剤層の材質(本実施形態ではエポキシ系樹脂。)を透過する波長領域から選択される。本実施形態では、測定光121として、赤外線領域の光が採用されている。
板状ワークWに照射される測定光121は、最も下面側に位置するシリコンキャリア230の下面で反射する光122(第1の反射光)と、シリコンキャリア230の中へ入射する光とに分かれる。シリコンキャリア230の中へ入射した光は、シリコンキャリア230と接着剤層220の界面で反射する光123(第2の反射光)と、接着剤層220の中へ入射する光とに分かれる。さらに接着剤層220の中へ入射した光は、接着剤層220とデバイス層210との界面で反射し光124(第3の反射光)となる。したがって、板状ワークWで反射して戻る反射光125は、シリコンキャリア230の表面で反射した光122と、シリコンキャリア230と接着剤層220の界面で反射した光123と、接着剤層220とデバイス層210との界面で反射した光124とが合成された合成光であり、光122〜124は、それぞれ光路長が異なるので、この合成光は、異なる位相の光が合成されたものとなる。光122〜124の位相が揃う場合は、振幅が大きくなり、位相がずれる場合は、振幅が小さくなる。波長が異なると光路長差が同じでも位相差が異なるので、反射光125は測定光の波長によって振幅が異なるものとなる。したがって、反射光125のスペクトルを解析することにより、光122〜124の光路長差を求めることができる。
回折格子104は、波長によって異なる方向に反射光125を反射させることにより、反射光125を分光する。イメージセンサー105は、複数の受光素子が直線状に配置されて構成されており、反射光125が回折格子104によって反射し波長毎に分光された光126を受光する。受光素子の位置により、回折格子104で反射光125が反射する反射点に対する角度が異なるので、各受光素子は、反射光125のうち特定の波長の成分を受光する。イメージセンサー105は、各受光素子が受光した光の強さを示す信号を出力する。すなわち、イメージセンサー105が出力する信号は、反射光125のスペクトルを解析した結果を示す。厚み測定手段100は概ね上記したとおりの構成を備えている、厚みを算出する方法についてはおって補足する。
図1に戻り説明を続けると、搬入手段31は、基台11上で旋回可能な搬入アーム32の先端に図示しない吸引手段を備えた搬入パッド33を設けて構成される。搬入手段31では、搬入パッド33によって仮置きテーブル22から板状ワークWを吸引して持ち上げ、搬入アーム32によって搬入パッド33が旋回されることで搬入位置にある保持テーブル41に板状ワークWが搬入される。
搬出手段36は、基台11上で旋回可能な搬出アーム37の先端に図示しない吸引手段を備えた搬出パッド38を設けて構成される。搬出手段36では、搬出パッド38によって保持テーブル41から板状ワークWを吸引して持ち上げ、搬出アーム37によって搬出パッド38が旋回されることで搬出位置にある保持テーブル41から板状ワークWが搬出される。なお、この搬出位置と、上記した搬入位置は同じ位置である。
洗浄機構26は、回転可能に構成されたスピンナーテーブル27に向けて洗浄水及び乾燥エアーを噴射する各種ノズル(図示は省略する。)を設けて構成される。洗浄機構26では、板状ワークWを保持したスピンナーテーブル27が基台11内に降下され、基台11内で洗浄水が噴射されて板状ワークWがスピンナー洗浄された後、乾燥エアーが吹き付けられて板状ワークWが乾燥される。
搬入手段31及び搬出手段36の後方には、3つの保持テーブル41が周方向に均等間隔で備えられたターンテーブル40が設けられている。保持テーブル41の下方には保持テーブル41を回転させる回転手段(図示は省略する。)が設けられている。各保持テーブル41の上面には、板状ワークWの下面を吸引保持するための保持面42が形成されている。
ターンテーブル40が回転することで、保持テーブル41に保持された板状ワークWが搬入及び搬出される搬入出位置、粗研削手段46に対応する粗研削位置、仕上げ研削手段51に対応する仕上げ研削位置に順に位置づけられる。
また、ターンテーブル40の周囲には、コラム12、13が立設されている。コラム12には、粗研削手段46を上下動させる移動機構61が設けられている。移動機構61は、コラム12の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール62と、一対のガイドレール62にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル63とを有している。
Z軸テーブル63の前面には、ハウジング64を介して粗研削手段46が支持されている。Z軸テーブル63の背面側にはボールネジ65が螺合されており、ボールネジ65の一端には駆動モータ66が連結されている。駆動モータ66によってボールネジ65が回転駆動され、粗研削手段46がガイドレール62に沿ってZ軸方向に移動される。
同様に、コラム13には、仕上げ研削手段51を上下動させる移動機構71が設けられている。移動機構71は、コラム13の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール72と、一対のガイドレール72にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル73とを有している。
Z軸テーブル73の前面には、ハウジング74を介して仕上げ研削手段51が支持されている。Z軸テーブル73の背面側にはボールネジ75が螺合されており、ボールネジ75の一端には駆動モータ76が連結されている。駆動モータ76によってボールネジ75が回転駆動され、仕上げ研削手段51がガイドレール72に沿ってZ軸方向に移動される。
粗研削手段46及び仕上げ研削手段51は、円筒状のスピンドルの下端にマウント47、52を設けて構成されている。粗研削手段46では、保持テーブル41に保持された板状ワークWの上面を形成するデバイス層210を粗研削する。粗研削手段46のマウント47の下面には、複数の粗研削砥石48が環状に配設された研削ホイール49が回転可能に装着される。粗研削砥石48は、例えば、ダイヤモンド砥粒をレジンボンドやビトリファイドボンド等の結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成される。
また、仕上げ研削手段51では、保持テーブル41に保持された板状ワークWのデバイス層210の上面を仕上げ研削する。仕上げ研削手段51のマウント52の下面には、複数の仕上げ研削砥石53が環状に配設された仕上げ研削用の加工具としての研削ホイール54が装着される。仕上げ研削砥石53は、粗研削砥石48よりも粒径が細かい砥粒で形成される。粗研削加工及び仕上げ研削加工では、研削砥石48、53によって板状ワークWのデバイス層210が所定の目標厚みまで研削されて薄化される。
このような研削装置1では、カセットC内から板状ワークWが位置決め機構21に搬送されて、位置決め機構21で板状ワークWがセンタリングされる。次に、保持テーブル41上に板状ワークWが搬入され、ターンテーブル40の回転によって、保持テーブル41に保持された板状ワークWが粗研削位置、仕上げ研削位置の順に位置づけられる。粗研削位置では板状ワークWが粗研削加工され、仕上げ研削位置では板状ワークWが仕上げ研削加工される。そして、洗浄機構26で板状ワークWが洗浄され、洗浄機構26からカセットCへ板状ワークWが搬出される。
本実施形態では、粗研削位置の近傍には、保持テーブル41の上面(保持面42)高さを測定する保持テーブル高さ測定用ゲージ(第1のゲージ)91と、保持テーブル41が保持する板状ワークWの上面(被研削面)高さを測定する板状ワーク高さ測定用ゲージ(第2のゲージ)92とが設けられている。第1のゲージ91及び第2のゲージ92は接触式のゲージで構成される。第1のゲージ91及び第2のゲージ92によって得られた各測定値は、装置各部を統括制御する制御部85に出力される。
また、仕上げ研削位置の近傍にも、保持テーブル41の上面(保持面)高さを測定する保持テーブル高さ測定用ゲージ(第3のゲージ)93と、保持テーブル41が保持する板状ワークWの上面(被研削面)高さを測定する板状ワーク高さ測定用ゲージ(第4のゲージ)94とが設けられている。第3のゲージ93及び第4のゲージ94は、接触式のゲージで構成される。第3のゲージ93及び第4のゲージ94によって得られた各値(測定値)は、制御部85に出力される。
上記した制御部85は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略する。)。制御部85は、算出部86を備えている。算出部86はROMに記憶された複数の制御プログラムにより実現されるものであり、例えば、各ゲージ91、92、93、94によって測定された値から板状ワークWの総厚みを算出すると共に、おって説明するシリコンキャリア230、接着剤層220の厚みの算出等も行う。制御部85は、算出部86からの出力結果に応じ、粗研削手段46及び仕上げ研削手段51のZ軸方向における移動量を制御する。
本発明の研削装置1は概ね上記したとおりの構成を備えており、その作用について以下に説明する。
研削装置1において板状ワークWに研削加工を施すに際し、まず、カセットロボット16のロボットアーム17の先端に配設されたハンド部18を作動して、カセットCに収容されている加工前の板状ワークWを取り出す。カセットCから取り出された板状ワークWは位置決め機構21の仮置きテーブル22に搬送され、板状ワークWは、下面からシリコンキャリア230、接着剤層220、デバイス層210となるよう載置される。そして、仮置きテーブル22上に載置された板状ワークWの外周縁に複数の位置決めピン23が突き当てられることで、板状ワークWの中心が仮置きテーブル22の中心になるようにセンタリングされる。
板状ワークWの位置決めがなされたならば、厚み測定手段100を作動して、シリコンキャリア230と接着剤層220の厚みを測定する。
厚み測定手段100は、板状ワークWが仮置テーブル22に保持された状態で、開口24を介して発光部101から放射される測定光121を照射する。図3に基づき説明したように、開口24から照射された測定光121が板状ワークWの各層にて反射した光122〜124の合成光である反射光125が回折格子104で分光され、分光された光126がメージセンサー105で受光される。イメージセンサー105で受光された反射光125の信号は制御部85に送られ、算出部86により解析され、フーリエ変換するなどして、光122〜光124の各光路長差を算出する。
反射光125は、3つの光122〜124の合成光であるため、算出部86は、3つの光122〜124の中から2つを選ぶ組み合わせの数である3個の光路長差を算出する。光122と光123との光路長差は、シリコンキャリア230の厚さの2倍である。光123と光124との光路長差は、接着剤層220の厚さの2倍である。光122と光124との光路長差はシリコンキャリア230と接着剤層220の厚さを合算した厚みの2倍である。よって各光路長差の半分が各層の厚みということになる。ここで、本実施形態の板状ワークWを構成する各層についてみると、シリコンキャリア230の厚みに対して、接着剤層220の厚みは上記した許容される厚み誤差を考慮したとしても小さい値であることが分かっている。よって、上記した3つの光路長差をみると、光122と光124との光路長差が最も大きく、光122と光123との光路長差が次に大きく、光123と光124との光路長差がもっとも小さくなる。すなわち、3個の光路長差が判明すれば、それぞれがいずれの光路長差を示すものであるのかが容易に判明する。これに基づき、厚み算出部86は、シリコンキャリア230の厚みT1を算出し(第1の測定工程)、接着剤層220の厚みT2を算出し(第2の測定工程)、シリコンキャリア230と接着剤層220との厚みを合算した合算値T1+T2を算出することができる。上記した算出部86は、第1の測定工程を実施する第1の測定部、第2の測定工程を実施する第2の測定部を備えている。算出部86によって算出された各厚みT1、T2、T1+T2は制御部85のメモリに記憶される。なお、上記したシリコンキャリア230と接着剤層220との厚みを合算した合算値T1+T2の算出は、シリコンキャリア230の厚みT1と接着剤層220の厚みT2を個別に算出して合算してもよいし、光122と光124との光路長差から直接的に算出してもよい。その場合は、光122と光124との光路長差からシリコンキャリア230と接着剤層220との厚みを合算した合算値T1+T2を算出することで、第1の測定工程、第2の測定工程が同時に実施されることになる。
なお、光の波長は光が通過する物質の屈折率によって変化し、物質の屈折率は温度によって影響を受けるため、研削装置1が置かれた環境の温度変化が大きい場合は、温度に応じた補正を行ってもよい。また、物質によっても屈折率が異なるため、本実施形態では、測定した値に係数をかけて実際の厚みに換算させている。具体的には、本実施形態の厚み測定手段100は、シリコンの厚みが正確に測定できるように設定されている。シリコンの屈折率は3.88であるのに対し、接着剤層を構成するエポキシ樹脂の屈折率は1.55であることから、厚み測定手段100が測定して算出した接着剤層の厚みの値に対し、3.88/1.55=2.5の係数を掛けて接着剤層T2の厚みを算出するようにしている。
図1に戻り説明を続けると、上記したように、各板状ワークWの各層の厚みT1、T2、及びその合算値(T1+T2)が測定されたならば、仮置テーブル22上の板状ワークWを、搬入手段31の搬入パッド33で吸着し、搬入位置に位置付けられた保持テーブル41上に搬入し、保持テーブル41の保持面42に板状ワークWの下面、すなわちシリコンキャリア230側を吸引保持する(保持工程)。
保持テーブル41がウエーハWの搬入位置から粗研削位置に移動して、研削ホイール49の外周が板状ワークWの中心を通過する位置に位置づけられると、板状ワークWの外側で保持テーブル41の上面部分に第1のゲージ91が接触し、保持テーブル41の上面の高さH1を測定する。さらに板状ワークWの上面、すなわち、デバイス層210の上面には第2のゲージ92が接触し、板状ワークWの上面の高さH2を測定する。測定結果は制御部85の算出部86に出力され、第2のゲージ92で測定されたH2の値と、第1のゲージ91で測定されたH1の値との差ΔH1から板状ワークWの総厚みTを算出する(ワーク厚み算出工程)。このワーク厚み算出工程を実施する制御プログラムが算出部86に備えられており、本発明のワーク厚み算出部となる。
次に、保持テーブル41が回転しつつ研削ホイール48が回転し、研削ホイール49が板状ワークWの上面に近付けられ、研削ホイール49が板状ワークWの上面に接触されて、板状ワークWの上面が研削ホイール49によって粗研削される。粗研削を実行しながら第2のゲージ92によって板状ワークWの上面81の高さH2がリアルタイムに測定され、板状ワークWの粗研削開始直前に測定した保持テーブル41の高さH1との差ΔH1から粗研削により変化した現在の板状ワークWの総厚みTが算出される。さらに、本実施形態では、算出部86は、この板状ワークWの総厚みTから、予め測定して記憶されたシリコンキャリア230と接着剤層との合算値(T1+T2)を差し引くことで、研削途中のデバイス層210の厚みT3を算出(デバイス層厚み算出工程)するデバイス層算出部を備えている。そして、リアルタイムで算出されるデバイス層210の厚みT3に基づき制御部85によって粗研削手段46の移動量が制御される(研削工程)。この制御によって、デバイス層23の厚みT3が粗研削における所定の目標厚みになるまでウエーハWの粗研削が続けられ、所定の目標厚みになると粗研削手段46が上昇し、板状ワークWから研削ホイール49が離されて板状ワークWの粗研削が完了する。なお、粗研削における所定の目標厚みは、最終的に目標とするデバイス層の厚みに対し、次工程の仕上げ研削で研削される厚みを加えた厚みである。
上記した粗研削が行われた後、ターンテーブル40(図1参照)の回転によって保持テーブル41に保持された板状ワークWが仕上げ研削位置に位置づけられる。研削ホイール54の外周が板状ワークWの中心を通過する位置に位置づけられると、保持テーブル41の板状ワークWの外側の上面に第3のゲージ93が接触し、保持テーブル41の高さH3を測定する。板状ワークWの上面すなわち粗研削後のデバイス層210の上面には第4のゲージ94が接触し、板状ワークWの上面の高さH4を測定する。測定結果は制御部85に出力される。
次に、保持テーブル41が回転しつつ研削ホイール54が回転し、研削ホイール54が板状ワークWの上面に近付けられ、研削ホイール54が板状ワークWの上面に接触されて、板状ワークWの上面が研削ホイール54によって仕上げ研削される。
このとき算出部86では、第4のゲージ94で測定されたH4の値と第3のゲージ93で測定されたH3の値との差から、板状ワークWの上面の高さH4と保持テーブル41の上面の高さH3との差ΔH3が算出される。そして、このΔH3から、予め測定し記憶されたシリコンキャリア230の厚みと、接着剤層の厚みとの合算値を差し引くことで、研削途中のデバイス層210の厚みT3をリアルタイムで算出することができる。そして、算出されたデバイス層210の厚みT3に基づき算出部86によって仕上げ研削手段51の移動量が制御される。この制御によって、デバイス層230の厚みT3が仕上げ研削における所定の目標厚み、すなわち、デバイス層210の表面から適切に金属ポストが露出する状態になるまで板状ワークWの仕上げ研削が続けられ、所定の目標厚みになると仕上げ研削手段51が上昇し、板状ワークWから研削ホイール54が離されて板状ワークWの仕上げ研削が完了する。
板状ワークWに対する仕上げ研削が完了したならば、保持テーブル41が搬出位置に移動させられ、搬出手段36により板状ワークWが搬出されて、加工済みの板状ワークWを洗浄する洗浄機構26に搬送される。洗浄機構26に搬送された板状ワークWは、図示しない洗浄ノズルから噴射される洗浄水によってスピンナー洗浄され、乾燥される。乾燥された板状ワークWは、カセットロボット16のロボットアーム17によってカセットCの所定の収容位置に搬送され、研削加工が完了する。
上記した実施形態によれば、仕上げ研削手段51においてデバイス層210の厚みを所定の目標厚みに正確に研削することができる。このため、板状ワークWに形成されたデバイス層210の厚みが固体ごとに相違しても、この相違に応じて、仕上げ研削手段51の移動量を調節するように制御でき、板状ワークWのデバイス層210を予定の目標厚みに正確に研削できる。
なお、上記した第一の実施形態では、リアルタイムに算出されるデバイス層210の厚みT3に基づき制御部85によって粗研削手段46、仕上げ研削手段51の移動量を制御したが、本発明はこれに限定されない。研削工程を実施する前に、デバイス層210の厚みT3が算出された場合、デバイス層210の所定の目標厚みと加工前のデバイス層210の厚みT3との差に基づいて研削すべき必要研削量ΔTが確定する。この必要研削量ΔTが確定した後は、この必要研削量ΔTに基づき、リアルタイムに算出される板状ワークWの総厚みTから必要研削量ΔTだけ研削されるように板状ワークWの上面の高さH2、H4を第2のゲージ、第4のゲージによって研削量を監視しながら研削工程を実施することができる。
次に、図4、5に基づいて、第二の実施形態について説明する。なお、第一の実施形態と、第二の実施形態とは、搬入位置にある保持テーブル41に板状ワークWを保持させる前に板状ワークWのシリコンキャリア230と接着剤層220の厚みを測定する点で共通するものであり、厚み測定手段の配設位置のみが相違している。よって、第二の実施形態の説明では、この相違点を中心に説明し、その他の同一構成についての説明は省略する。
上記した第一の実施形態では、厚み測定手段を仮置テーブル22の直下に配置し、仮置テーブル22の開口24から測定光121を照射して板状ワークWのシリコンキャリア230、接着剤層220の厚みを測定していた。これに対し、第二の実施形態では、図4に示すように、板状ワークWを仮置テーブル22から搬入位置に位置付けられた保持テーブル41に搬入する経路上、より具体的には、位置決め機構21に隣接する位置であって、基台11とターンテーブル40との間の位置に厚み測定手段300を配置した。
厚み測定手段300は、厚み測定手段100と略同様の構成を有している。具体的には、図5に示すように、板状ワークWに対して測定光321を放射する発光部301と、発光部301が放射した測定光321を上方、すなわちZ方向へ反射するミラー302と、測定光321を透過するセンサーヘッド303と、測定光321が板状ワークWにて反射した反射光325を分光する回折格子304と、回折格子304で分光された光326を受光するイメージセンサー305とを備えている。
発光部301は、例えばスーパールミネッセントダイオード(SLD)であり、発光部301が放射する測定光321は、比較的広いスペクトル幅を有する。測定光321の波長領域は、板状ワークWを構成するシリコンキャリア230、接着剤層220の材質を透過する波長領域が選択される。本実施形態では、測定光321として、赤外線領域の測定光が採用される。
上記したとおり、第一の実施形態では、仮置テーブル22上に板状ワークWが載置された状態で厚み測定手段100を作動させてシリコンキャリア230、接着剤層220の厚みを算出していた。これに対し、第二の実施形態では、板状ワークWが位置決め機構21においてセンタリングされた後、仮置テーブル22上の板状ワークWを、搬入手段31の搬入パッド33の下面に配設された吸引保持面33aで吸着し、搬入位置に位置付けられた保持テーブル41に向けて移動させる経路途中で厚みを測定する。具体的には、板状ワークWが保持テーブル41に向けて移動される経路途中でセンサーヘッド303の上方に位置付けられたならば、搬入手段31の搬送動作を停止し、厚み測定手段300から測定光321を照射する。
測定光321は、最も下面側に位置するシリコンキャリア230で反射する光322(第1の反射光)と、シリコンキャリア230の中へ入射する光とに分かれる。シリコンキャリア230の中へ入射した測定光321は、シリコンキャリア230と接着剤層220の界面で反射する光323(第2の反射光)と、接着剤層220の中へ入射する光とに分かれる。接着剤層220の中へ入射した光は、接着剤層220とデバイス層210との界面で反射する光324(第3の反射光)となる。したがって、板状ワークWで反射して戻る反射光325は、シリコンキャリア230の表面で反射した光322と、シリコンキャリア230と接着剤層220の界面で反射した光323と、接着剤層220とデバイス層210との界面で反射した光324とが合成された合成光である。光322〜324は、それぞれ光路長が異なるので、この合成光は、異なる位相の光が合成されたものとなる。光322〜324の位相が揃う場合は、振幅が大きくなり、位相がずれる場合は、振幅が小さくなる。発光部301から照射される測定光321は所定の範囲の幅をもった波長で構成されている。波長が異なると光路長差が同じでも位相差が異なるので、反射光325は測定光321の波長によって振幅が異なるものとなる。したがって、イメージセンサー305によって受光された反射光325のスペクトルを解析することにより、光322〜324の光路長差を求めることができる。第一の実施形態と同様にして、これらの各光路長差を用いて、シリコンキャリア230の厚みT1、接着剤層220の厚みT2、及びそれらの合算値(T1+T2)を算出することができる。
シリコンキャリア230の厚み(T1)、接着剤層220の厚み(T2)、及びシリコンキャリア230の厚みと接着剤層220の厚みの合算値(T1+T2)を算出したならば、制御部85に記憶する。各層の厚みが算出されたならば、搬入手段31を再び作動して、板状ワークWを保持テーブル41に移動して載置し、保持テーブル41にて吸引保持させる。板状ワークWを保持テーブル41に吸引保持させた後は、上記合算値(T1+T2)に基づいてデバイス層210の厚みを算出し、上記第一の実施形態にて説明したとおりの各工程を実施することにより、板状ワークWを所定の目標厚みに研削することができる。なお、測定光321を照射して各層の厚みを算出する際に、必ずしも搬入手段31の動作を停止させる必要はなく、測定光321の照射と各層の厚みの算出が、搬入手段31の動作中でも実施が可能であれば搬入手段31を停止させなくてもよい。上記した第二の実施形態においても、第一の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。