以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,図1に示す画像形成装置1に本発明を適用したものである。図1の画像形成装置1は,外観的には本体部6とその上のスキャナー部5とから構成されている。本体部6は,印刷用紙(記録媒体)を供給する用紙供給部2や画像形成を行うプロセス部3を内蔵しており,画像形成装置1の外観上の主要部をなす部分である。プロセス部3は,例えば特開2013−130628号公報の図1に示されるような画像形成部である。本体部6にはこの他,排紙トレイ7が設けられている。また,制御部8や給紙路4が内蔵されている。スキャナー部5は,原稿の画像を読み取ってその画像データを出力するものである。すなわち画像形成装置1は,原稿の画像をコピーするコピー機である。
図2に,スキャナー部5の内部構造を示す。スキャナー部5は,原稿トレイ9と,自動搬送機構10と,原稿排出トレイ11とを有している。自動搬送機構10は,ピックローラー13,捌きローラー14,レジストローラー27,第1読取ローラー33,表(おもて)面読取器15,第2読取ローラー36,裏面読取器21,第3読取ローラー22,排出ローラー23を有している。表面読取器15のある場所が表面の読取箇所で,裏面読取器21のある場所が裏面の読取箇所である。かかる自動搬送機構10における原稿搬送経路Pは,図2中で2点鎖線で示されるようにU字形に湾曲した形状となっている。原稿の表面が湾曲の外面側となる。スキャナー部5には,制御基板39および環境センサー40も搭載されている。
自動搬送機構10では,原稿トレイ9に置かれた原稿束のうち最上の原稿をピックローラー13により搬出し,捌きローラー14で1枚ずつ分離して送り出すようになっている。送り出された原稿は,レジストローラー27で一旦止められることで斜行の矯正がなされた上で読取箇所へ向けて搬送される。レジストローラー27から送り出された原稿はさらに,第1読取ローラー33,第2読取ローラー36,第3読取ローラー22により搬送される。その間に,表面読取器15および裏面読取器21による画像読取が行われる。読取が済んだ原稿は最終的に,排出ローラー23により原稿排出トレイ11上に排出される。以下,表裏の読取箇所のうち,表面の読取箇所(表面読取器15)に主眼を置いて説明する。
自動搬送機構10の詳細事項について説明する。原稿トレイ9には,原稿サイズセンサー12と,エンプティセンサー17とが備えられている。原稿搬送経路Pにおける捌きローラー14付近の位置には,レジストセンサー18と,重送センサー20とが設けられている。レジストセンサー18は,現在,原稿トレイ9から原稿を送出中か否かを検知するセンサーである。重送センサー20は,原稿トレイ9から送出された原稿における重送の有無を検知するセンサーである。重送センサー20は図3に示すように,発信器24と受信器25とにより構成されており,発信器24から超音波を発振して受信器25で受信するものである。受信器25は,受信した超音波のレベルに応じた電圧信号を出力する。重送があると,重送がない場合と比較して受信器25の出力レベルが大幅に下がる(図4参照)ので,重送の有無を検知できる。重送されている2枚の原稿間の空気層での超音波の減衰が大きいからである。
レジストローラー27は,紙厚検出機能を有している。このためレジストローラー27には,図5に示すように紙厚検出アクチュエーター26が備えられている。レジストローラー27は,駆動ローラー28と従動ローラー29とで構成されており,さらに,従動ローラー29を駆動ローラー28に押圧する押圧機構30を備えている。従動ローラー29の駆動ローラー28からの距離が紙厚により変動するので,紙厚検出アクチュエーター26でこれを検出するのである。
すなわち図6に示すように,紙厚検出アクチュエーター26には,変位センサー31が設けられている。変位センサー31にはスリット群32が形成されている。原稿Dの厚さにより,従動ローラー29を介して紙厚検出アクチュエーター26が変位するので,スリット群32を利用してこの変位を検出する。これにより原稿Dの厚さが検出される。ただしこうして検出される厚さは,原稿Dが重送されている場合には複数枚の合計での厚さである。なお,紙厚の検出は,原稿トレイ9にセットされた原稿の1枚1枚について個々に行われることが望ましい。1つの原稿束を構成する複数枚の原稿であっても,紙種がまちまちであることがありうるからである。
図7に,レジストセンサー18,重送センサー20,紙厚センサー(紙厚検出アクチュエーター26,変位センサー31)の検知位置の関係を示す。図7に示されるように,これらのうち最も上流に位置するのはレジストセンサー18の検知位置である。その少し下流側に重送センサー20の検知位置があり,さらに下流に紙厚センサーの検知位置(レジストローラー27)がある。
第1読取ローラー33および第2読取ローラー36は,図8に示すようにいずれもローラー対である。すなわち,第1読取ローラー33は駆動ローラー34と従動ローラー35とで構成されている。同様に第2読取ローラー36も,駆動ローラー37と従動ローラー38とで構成されている。そして,前述のように湾曲している原稿搬送経路Pに対して,駆動ローラー34,37が内側に位置している。また,駆動ローラー34,37は,共通の読取モーター16から駆動されるようになっている。なお図8では,原稿Dが重送されている状態を描いている。また,第1読取ローラー33のすぐ下流側の位置に,読取前センサー42が設けられている。
上記のように構成された第1読取ローラー33および第2読取ローラー36では,搬送速度およびローラー圧(圧接力の線密度)に次のような関係が設定されている。すなわち,第1読取ローラー33の搬送速度をV1,ローラー圧をG1とし,第2読取ローラー36の搬送速度をV2,ローラー圧をG2としたとき,次の2つの式が成り立つようになっている。
V1 < V2
G1 > G2
つまり,搬送速度に関しては上流側より下流側の方が速いのである。ただしその速度差はわずかである。一方,ローラー圧に関しては,上流側の方が下流側より高くなっている。これにより,読取箇所(表面読取器15)における原稿Dにある程度の張力が掛かった状態で読取がなされるようになっている。読取精度の向上のためである。
また,上流側の第1読取ローラー33は図9に示すように,駆動ローラー34,従動ローラー35ともにコロ構成となっている。すなわち,全幅よりも短い複数個のコロ19が,幅方向に対して離散的に配置された構成である。ただし,駆動ローラー34と従動ローラー35とでコロ19同士が対向するようになっている。なお,第1読取ローラー33以外の他のローラーもコロ構成であってもよい。
さらに,図2に戻って,第1読取ローラー33には,圧接解除機構45が設けられている。これにより,図8中に矢印Fで示すように,第1読取ローラー33の圧接状態を一時的に解除し,また復帰できるようにしている。圧接状態の解除とは,第1読取ローラー33のローラー圧を通常時よりも下げること,あるいは従動ローラー35を駆動ローラー34から離間させることである。前述の第2読取ローラー36とのローラー圧の関係はむろん,圧接を解除していない状態でのものである。圧接解除機構45による圧接状態の解除および復帰は,後述するメインIC41により自動操作される。ただしそれとは別に,原稿搬送停止時にはユーザーが手動で圧接状態を解除し,また復帰させられるようになっている。ジャム処理時の便宜のためである。
図10にスキャナー部5の制御系の構成を示す。図10の制御系は,制御基板39を中心に構成されている。制御基板39には,メインIC41が搭載されている。メインIC41は,CPU,ROM,RAMの機能を有している。メインIC41は,重送センサー20の受信器25,変位センサー31,レジストセンサー18,読取前センサー42,原稿サイズセンサー12,環境センサー40と接続されており,それらから検出信号の入力を受けるようになっている。メインIC41はまた,重送センサー20の発信器24,圧接解除機構39,給紙モーター43,レジストモーター44,読取モーター16にも接続されており,それらへ指令信号を出力するようになっている。これにより後述する重送時の制御が行われるようになっている。給紙モーター43はピックローラー13や捌きローラー14の駆動源であり,レジストモーター44はレジストローラー27の駆動源である。
続いて,画像形成装置1の動作を説明する。画像形成装置1の通常動作は,自動搬送機構10により原稿トレイ9に置かれた原稿束から1枚ずつ原稿を送出し,画像を読み取った上で原稿排出トレイ11上へ排出することである。当然ながらこの通常動作は,第1読取ローラー33を圧接状態のままとして行われる。こうして表面読取器15および裏面読取器21により画像データが取得される。取得された画像データは,図1に示した制御部8に送付される。これにより,プロセス部3での画像形成が行われる。あるいは,画像形成装置1から公衆回線を経由して他の画像形成装置に,当該画像データに係る印刷ジョブとして送付することもできる。
ここで,原稿トレイ9から原稿Dが送出されると,最初にレジストセンサー18がそのことを検知する(図7)。すると,重送センサー20では重送の検知を開始する。すなわち発信器24による超音波の発振を開始する。これにより図4に示したように,受信器25の出力レベルを監視することで重送の発生を検知できる。重送が発生しない場合には,前述の通常動作がそのまま行われる。
しかしながら重送が発生した場合には,そのまま通常動作を続行すると,原稿の画像の読取漏れが発生する。このため本形態の画像形成装置1では,重送が発生した場合にはメインIC41の制御により,次のような動作が行われる。すなわち,重送が発生した場合には,第1読取ローラー33の圧接状態を解除する。ただし圧接状態の解除は,重送の発生が検知されると直ちにではなく,重送されている当該原稿の先端が第2読取ローラー36に到達してからなされる。第1読取ローラー33の圧接状態が解除された後も,第2読取ローラー36等による原稿の搬送は続行される。これにより,重送された当該原稿は,原稿排出トレイ11上に排出される。一方,原稿トレイ9からの後続の原稿の送出は停止される。
ここで,重送された原稿も読取箇所(表面読取器15,裏面読取器21)を通過するが,その時には画像の読取は行わない。ここで画像を読み取っても,重送によりページ抜けが起こっているからである。そこで,原稿排出トレイ11上に排出された重送原稿をユーザーが原稿トレイ9に戻して,読取をやり直すことになる。なお,表裏面のうち表面のみ読み取る場合には,重送された原稿のうちの1枚目の画像は読み取ることとしてもよい。この場合には重送された原稿のうちの2枚目以降をユーザーが原稿トレイ9に戻すこととなる。
上記の読取動作を図11に示す。すなわち,入力処理(S1,ユーザーによる読取開始指示の操作を受け付けること)の後,原稿の給紙処理(S2,ピックローラー13による最上の原稿の送出のこと)がなされる。そして搬送処理が行われる(S3)。この搬送処理の中に,重送の判断およびそれに基づく種々の処理が含まれている。そしてそのための搬送系の駆動処理(S4,読取モーター16等の駆動のこと)がなされ,出力処理(S5,取得した画像データの制御部8への送付のこと)がなされる。
より具体的には,図12に示す手順により重送判断およびそれに基づく処理がなされる。読取ジョブの開始とともに(S11:Yes),このフローの処理が開始される。するとまず,重送の検出を開始する(S12)。すなわち,重送センサー20の発信器24をオンし,重送の検出が可能な状態とする。そして,レジストセンサー18の出力がオンしてから(S13:Yes),重送の判定を実施する(S14)。すなわち,原稿トレイ9からの原稿の送出が開始されたことが確認されてから,重送センサー20の受信器25の出力信号をメインIC41に取り込む。そして,図4に示したようにして重送の有無を判定する(S15)。実際には,受信器25の出力信号値があらかじめ定めた時間以上にわたって閾値以下であり続けた場合に重送ありと判定する。ノイズによる誤判定を防止するためである。
重送がない場合には(S15:No),レジストセンサー18の出力がオフしてから(S16:Yes),次原稿の有無をチェックする(S17)。つまり,搬送中の原稿の後端がレジストセンサー18の検知位置を抜けたら,エンプティセンサー17で残原稿の有無を確認するのである。すべての原稿の読取が終了した場合には(S17:Yes),本フローの処理を終了する。未だ原稿トレイ9に原稿が残っている場合には(S17:No),S13へ戻る。すなわち,次原稿の送出が開始されるのを待って処理を反復する。
重送が発生した場合には(S15:Yes),搬送中の原稿の先端が第2読取ローラー36に到達するのを待って(S18:Yes),第1読取ローラー33の圧接状態を解除する(S19)。原稿の先端の第2読取ローラー36への到達タイミングは,読取前センサー42を原稿の先端が通過したタイミングからの予測により得られる。原稿の搬送速度と,読取前センサー42の検知位置から第2読取ローラー36までの距離とがいずれも自動搬送機構10の仕様により既知だからである。また,ピックローラー13による原稿トレイ9からの次原稿の送出は停止される。ただし,搬送中の原稿の,第1読取ローラー33,第2読取ローラー36による搬送自体は継続される。
そして,搬送中の原稿の後端が第1読取ローラー33を抜けたら(S20:Yes),第1読取ローラー33を本来の圧接状態に復帰させる(S21)。原稿の後端の第1読取ローラー33の通過タイミングは,原稿の後端が読取前センサー42の検知位置を抜けたタイミングをもって代用すればよい。あるいは,読取前センサー42を原稿の先端が通過したタイミングから,原稿の搬送速度と,第1読取ローラー33から読取前センサー42の検知位置までの距離と,原稿の長さとから予測してもよい。
その後,重送された原稿を原稿排出トレイ11から原稿トレイ9へユーザーが戻した上でユーザーが読取再開指示の操作を行うと,S17から処理が再開される。この時点では,重送して戻された原稿が必ず原稿トレイ9上にあるので,S17でNoと判定されS13以下の処理が反復される。こうして,すべての原稿が読み取られるまで処理が行われる。
このように本形態では,重送が発生した原稿でも搬送を停止しないで原稿排出トレイ11に排出してしまう。このためユーザーとしては,重送した原稿を原稿排出トレイ11から容易に回収して原稿トレイ9に戻すことができる。その上で読取を再開すればよい。したがって,ジャム処理の場合のように自動搬送機構10の外板パネルを開いて原稿を取り出すようなことは不要である。これにより,重送の場合の読取の再開を容易にできるスキャナー部5となっている。
ここで重送の場合に第1読取ローラー33の圧接状態を解除する(S19)のは,原稿の皺寄りを未然に防止するためである。すなわち,前述のように第1読取ローラー33と第2読取ローラー36との間には速度差が設定されている。このため読取箇所(表面読取器15)における原稿には次第に引っ張り応力が掛かってくるが,通常はこの引っ張り応力による原稿の歪みが過大となる前に原稿の後端が第1読取ローラー33から抜けることになる。しかしながら重送の場合には,上記引っ張り応力による原稿の歪みが通常より大きいので,原稿の後端付近で皺寄りが発生してしまうことがありうる。
特に,重送されている原稿のうちU字形の湾曲の外側となっているものに皺が寄りやすい。第1読取ローラー33,第2読取ローラー36での搬送は内側(34,37)から行われるため,外側では搬送力が不足気味になるからである。さらに,第1読取ローラー33が前述のコロ構成(図9)であることも,皺寄りが発生しやすい要因である。第1読取ローラー33による原稿Dへの圧接が,幅方向に対して離散的な特定箇所(コロ19のある箇所)にて集中的に行われるからである(図13)。
しかしながら上記のように第1読取ローラー33の圧接状態を解除することで,原稿が重送された場合であっても皺寄りが発生しないようになっている。ただし上記は最も基本的な動作であり,これだけなら紙厚検出機能や環境センサー40,原稿サイズセンサー12を使用する必要はない。しかしながらこれらの機能を併用することでより優れた動作を行うことができる。
まず,紙厚検出機能を併用する場合について説明する。紙厚検出機能を併用することによる利点は,前述の皺寄りの発生のしやすさが,原稿の紙厚によっても異なることにある。一般的に,紙厚が厚いということは腰が強く皺寄りしにくいが,紙厚が薄いと腰が弱く皺寄りしやすい。このため,原稿が厚めの紙である場合には,重送の場合でも第1読取ローラー33の圧接解除をしなくてよいといえる。
図14に紙種ごと,また重送枚数ごとの紙厚の例を示す。図14に示す紙厚は標準的なものであり,実際の紙厚は,原稿として使用されている紙のメーカーの違い等によりばらつきがある。また,紙厚だけでは,厚めの紙が1枚だけなのか,薄めの紙が重送されているのか,判定しづらいケースもある。そのこともあり,前述の重送判断と紙厚検出とを併用するのである。
図15に,紙厚検出機能を併用する場合の処理手順を示す。図15のフローは,図12のフローに対して,S22,S23,S24を追加したものである。S22は,S12とともに行われるステップであり,紙厚の検出を開始するステップである。すなわち,変位センサー31をオンし,紙厚の検出が可能な状態とする。S12とS22とは順序を入れ替えてもよい。S23は,S14とともに行われるステップであり,紙厚の測定を実施するステップである。すなわち,変位センサー31の出力信号をメインIC41に取り込む。S14とS23とは順序を入れ替えてもよい。
S24は,測定された紙厚に基づいて原稿の紙種を判定するステップである。ここでは,図16に示す手順で紙種を判定する。まず,測定された紙厚が165μm未満であるか否かをチェックする(S41)。165μm未満であれば(S41:Yes),図14より,薄紙2枚の重送といえる(S42)。ここでは重送がある場合のみを判定対象としているからである。つまり165μm未満というのは,2枚重ね分ではあるが,薄紙に相当する紙厚の範囲としてあらかじめ定められた範囲であるといえる。165μm未満でなかった場合には(S41:No),1つ前に読み取った原稿の紙種が薄紙であったか否かをチェックする(S43)。薄紙であった場合には(S43:Yes),今回測定された紙厚が250μm未満であるか否かをチェックする(S44)。
250μm未満であれば(S44:Yes),図14より,薄紙3枚の重送といえる(S45)。1つの原稿束中に紙種の異なる原稿が混在している可能性はあるが,その確率は高いものではないからである。S43とS44とのいずれか一方でNoであった場合には,測定された紙厚が290μm未満であるか否かをチェックする(S46)。290μm未満であれば(S46:Yes),図14より,普通紙2枚の重送といえる(S47)。290μm以上であった場合には(S46:No),図14より,厚紙2枚の重送といえる(S48)。つまり290μm以上というのが,2枚重ね分ではあるが,厚紙に相当する紙厚の範囲としてあらかじめ定められた範囲であるといえる。
図15に戻ってS24では,図16の判定結果がS42またはS45であった場合にYesと判定され,S47またはS48であった場合にNo判定される。S24の判定がYesだと,S18へ進む。つまり,重送があり(S15:Yes),かつ紙種が薄紙であった場合に限り(S24:Yes),S18以下の第1読取ローラー33の圧接解除処理が行われる。
重送があっても(S15:Yes),紙種が普通紙もしくは厚紙であった場合には(S24:No),第1読取ローラー33の圧接解除を行うことなくそのまま当該原稿を排出する。普通紙や厚紙は,薄紙よりも腰が強いため,重送状態でそのまま搬送しても皺寄りはほとんど発生しないからである。ただしこの場合でも,画像の読取は行わず,また後続の原稿の送出も停止する。重送が起こっている以上,読取漏れ防止のためには再読取が必要だからである。これにより,圧接の解除を,真に必要な場合に限り行うようにしたスキャナー部5となっている。
なお,S24の紙種判定で,薄紙か否かではなく,厚紙か否かの判定となるようにしてもよい。そのためには,図16の判定結果がS48であった場合に限りS24でNoと判定し,それ以外の場合にはYesと判定するようにすればよい。これにより,重送があり,かつ紙種が普通紙であった場合にも第1読取ローラー33の圧接解除処理が行われることとなる。また,上記では4枚以上の重送があった場合については考慮していないが実際上はそのことはあまり問題とならない。4枚以上の重送が起こり第1読取ローラー33にまで到達する確率は低いからである。
なお,3枚の重送が発生する確率は無視できるほど低いとするならば,S24の紙種判定をもっと簡単に行うこともできる。すなわち,単純に134μmより大きく168μmより小さい判定閾値をあらかじめ定めておけばよい。この場合図16のような判定フローは不要である。むろん,厚紙かそれ以外かで分かれるような判定域値の設定も可能である。
図17に,薄紙原稿の重送により圧接解除動作が行われる場合のシーケンスの一例を示す。図17では,横方向左側が時間軸の過去側で,右側が未来側である。原稿Dの搬送方向としては,右側から左側への流れとなる。図17では,薄紙3枚の原稿束の読取において,1枚目の原稿D1は正常に搬送されたが2枚目の原稿D2と3枚目の原稿D3とが重送された場合を示している。図17に示されるように,原稿D1の搬送中および原稿D2,D3の搬送中に,レジストセンサー18の検知結果(図15のS13)がYesとなり,それ以外のときにはNoとなる。この,(S13:Yes)の期間が通紙期間である。そしてこの期間が,重送検出期間(重送センサー20,図15のS14,S15)でもある。
しかしながら,1回目の通紙期間においては,重送検出の結果は重送なし(S15:No)のままである。搬送されている原稿が1枚(D1)だけだからである。そしてこのとき,測定される紙厚T1(変位センサー31,図15のS23)は,薄紙1枚分の厚みとなる。また,第1読取ローラー33は本来の圧接状態とされる。重送が起こっていない(S15:No)からである。これにより,通常通りの読取が行われる。
一方,2回目の通紙期間においては,重送検出の結果が重送あり(S15:Yes)となる。搬送されている原稿が2枚(D2,D3)だからである。そしてこのとき,測定される紙厚T2は,薄紙2枚分の厚みとなる。このため,第1読取ローラー33の圧接状態が解除される。重送が起こっており(S15:Yes),かつ紙種が薄紙(S24:Yes)だからである。ただし,実際に圧接が解除されるのは,当該重送原稿の先端が第2読取ローラー36に到達(S18:Yes)する時刻t0を待ってから,とされる。これにより重送原稿を,皺寄りが生じないように原稿排出トレイ11に排出する。このとき読取は行われず,後続原稿の送出はなされない。そして,原稿の後端が第1読取ローラー33を抜ける(S20:Yes)時刻t1の到来により,第1読取ローラー33が圧接状態に復帰する。
続いて,原稿サイズセンサー12の機能を併用する場合について説明する。原稿サイズの情報を併用することによる利点は,前述の皺寄りの発生のしやすさが,原稿のサイズ,特に搬送方向の長さによっても異なることにある。すなわち,搬送方向に長い原稿ほど皺寄りしやすい傾向がある。長い原稿では,前述の原稿の歪みが,原稿の後端付近で蓄積されてくるからである。逆に言えば短い原稿では皺寄りが生じにくく,重送の場合でも第1読取ローラー33の圧接解除をしなくてよいといえる。
このため原稿サイズセンサー12は,原稿トレイ9に載置された原稿が,あらかじめ定めた基準長以上の長さの大サイズ原稿であるか否かについての信号を出力するようになっている。具体的には例えば,A3サイズ原稿やA4サイズ縦置き(長辺方向と搬送方向が平行)原稿の場合に大サイズ原稿であるとの検知信号を出力し,それ以外の原稿の場合には大サイズ原稿でないとの検知信号を出力するようになっている。
図18に,原稿サイズ検出機能を併用する重送判断の処理手順を示す。図18のフローは,図12のフローに対して,S25,S26,S27を追加したものである。S25は,S12とともに行われるステップであり,原稿サイズの検出を開始するステップである。S12とS25とは順序を入れ替えてもよい。S26は,S14とともに行われるステップであり,原稿サイズの検出を実施するステップである。すなわち,原稿サイズセンサー12の出力信号をメインIC41に取り込む。S14とS26とは順序を入れ替えてもよい。
S27は,検出された原稿サイズに基づいて処理内容を切り替えるステップである。S27で大サイズ原稿であった場合には(S27:Yes),S18へ進む。つまり,重送があり(S15:Yes),かつ原稿サイズが大であった場合に限り(S27:Yes),S18以下の第1読取ローラー33の圧接解除処理が行われる。
重送があっても(S15:Yes),原稿サイズが大でなかった場合には(S27:No),第1読取ローラー33の圧接解除を行うことなくそのまま当該原稿を排出する。原稿が小サイズであれば,重送状態でそのまま搬送しても皺寄りはほとんど発生しないからである。前述の原稿の歪みが顕著になる前に後端が第1読取ローラー33を抜けてしまうからである。ただしこの場合でも,画像の読取は行わず,また後続の原稿の送出も停止する。重送が起こっている以上,読取漏れ防止のためには再読取が必要だからである。これにより,圧接の解除を,真に必要な場合に限り行うようにしたスキャナー部5となっている。なお,上記では原稿サイズセンサー12を利用して原稿サイズを判定したが,代わりに,レジストセンサー18のオン時間の長さで判定してもよい。そうすると,1枚1枚の原稿について個々に原稿サイズを判定できる。
次に,環境センサー40の検知情報を併用する場合について説明する。環境情報を併用することによる利点は,前述の皺寄りの発生のしやすさが,機内の環境因子(温度,湿度)によっても異なることにある。すなわち,高温高湿条件下や低温低湿条件下では,中温中湿条件下と比較して皺寄りが発生しやすい傾向がある。高温高湿条件下では,紙の吸湿により原稿の腰が弱くなるため皺寄りしやすいのである。低温低湿条件下では,紙のカール癖が強くなるため,搬送時における前述の原稿の歪みが大きく,皺寄りしやすいのである。
図19に,環境情報を併用する重送判断の処理手順を示す。図19のフローは,図12のフローに対して,S28,S29,S30を追加したものである。S28は,S12とともに行われるステップであり,原稿サイズの検出を開始するステップである。S12とS28とは順序を入れ替えてもよい。S29は,S14とともに行われるステップであり,環境条件が,あらかじめ定めた高温高湿(HH)条件もしくは低温低湿(LL)条件に該当するか否かを判定するステップである。すなわち,温度と湿度とにそれぞれ2水準の判定域値をあらかじめ定めておくことにより,この判定を行うことができる。S14とS29とは順序を入れ替えてもよい。
S30は,環境条件の判定(S29)に基づいて処理内容を切り替えるステップである。高温高湿条件または低温低湿条件であった場合には(S30:Yes),S18へ進む。つまり,重送があり(S15:Yes),かつ皺寄りしやすい環境条件であった場合に限り(S30:Yes),S18以下の第1読取ローラー33の圧接解除処理が行われる。高温高湿条件か否かの判定域値としては例えば,温度35℃以上かつ相対湿度60%以上,といった具合に定めておけばよい。低温低湿条件か否かの判定域値としては例えば,温度5℃以下かつ相対湿度20%以下,といった具合に定めておけばよい。
重送があっても(S15:Yes),皺寄りしやすい環境条件でなかった場合には(S30:No),第1読取ローラー33の圧接解除を行うことなくそのまま当該原稿を排出する。環境条件が過酷でないため,重送状態でそのまま搬送しても皺寄りはほとんど発生しないからである。ただしこの場合でも,画像の読取は行わず,また後続の原稿の送出も停止する。重送が起こっている以上,読取漏れ防止のためには再読取が必要だからである。これにより,圧接の解除を,真に必要な場合に限り行うようにしたスキャナー部5となっている。なお,上記では温度と湿度との両方が過酷条件であった場合に限り圧接解除を行うこととしたが,温度と湿度とのいずれか一方でも過酷条件であれば圧接解除を行うこととする制御も可能である。さらには,温度情報と湿度情報とのいずれか一方のみを用いて圧接解除の判定を行う制御も可能である。
さらに,上記の紙厚(図15),原稿サイズ(図18),環境条件(図19)のうち2つ以上を併用する制御も可能である。その場合,使用する因子のうちすべてが圧接解除をすべき条件になっている場合に限り圧接解除を実行する,という制御も可能であるし,使用する因子のうちいずれか1つでも圧接解除をすべき条件になっていれば圧接解除を実行する,という制御も可能である。したがって例えば,紙厚検出機能と原稿サイズ検出機能とを併用し,薄紙でかつ大サイズ原稿である場合に限り,重送時の第1読取ローラー33の圧接解除を行う,という制御も可能である。
続いて,原稿の一部重送が起こった場合のシーケンスについて,図20の例により説明する。図20では,1枚の原稿が原稿トレイ9から送出されたが,その途中で後続の原稿1枚が連れ送りされて部分的な重送状態になった場合を想定している。部分重送された2枚の原稿のうちの1枚目が薄紙原稿D4で,2枚目が普通紙原稿D5であったものとする。このような部分重送の場合には,レジストセンサー18の検知結果(図15のS13)がYesであり続ける期間,すなわち通紙期間が,図17中の通紙期間(1枚通紙もしくは完全重送)より長くなる。重送センサー20(図15のS14,S15)で実際に重送が検出される期間はそのうちの一部である。
そして,重送の検出に基づく第1読取ローラー33の離間は,2枚目の原稿D5の先端E1が第2読取ローラー36に到達(S18:Yes)する時刻t2を待ってから行われる。時刻t2は,重送センサー20で先端E1が検知されたタイミングと,搬送速度と,重送センサー20の検知位置から第2読取ローラー36までの搬送経路長とから予測できる。
第1読取ローラー33の離間状態から圧接状態への復帰は,次の2通りのうちいずれか一方のタイミングで行われる。まず,部分重送の程度によっては,レジストセンサー18で原稿D5の後端E3が検出されるよりも前に,重送センサー20の重送の検出が終了する,すなわち1枚目の原稿D4の後端E2が重送センサー20を抜ける場合がある。重送期間が比較的短い(通紙期間はさほど長くない)場合にこのようなことになる。この場合には,後端E2が第1読取ローラー33を抜けた時点t3にて,第1読取ローラー33の圧接を回復させればよい。もはや原稿D4の皺寄りの可能性はなくなったからである。
一方,重送期間が比較的長い(通紙期間はかなり長い)場合には,レジストセンサー18で原稿D5の後端E3が検出されても,その時点では重送センサー20が重送を検出し続けていることになる。原稿D4の後端E2が重送センサー20をまだ抜けていないからである。この場合には,原稿D5の後端E3が第1読取ローラー33を抜ける(時刻t4)を待ってから,第1読取ローラー33の圧接を回復させるのがよい。原稿D4の後端E2が第1読取ローラー33を抜けた時点(時刻t3)で早々に第1読取ローラー33を圧接させると,原稿D5の後端E3に至近の位置が急に圧接されることになる。後端E3はこのとき自由端状態なので,急な圧接により搬送が不安定になるおそれがあるからである。
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,重送の発生が検出された場合には,当該重送原稿の先端が第2読取ローラー36に達したら第1読取ローラー33の圧接を解除するとともに,当該重送原稿の搬送自体はその後も継続することとしている。これにより,重送原稿における皺寄りの発生を防止しつつ,当該重送原稿を原稿排出トレイ11上へ排出することとしている。これにより,原稿を傷つけずに,かつ,ジャム処理時のような繁雑な作業をユーザーに強いることなく,容易に読取を再開できるようにしている。つまり,重送が発生した場合でもその原稿が,皺寄りなく排出されるようにしたスキャナー部5(原稿読取装置)およびそれを備えた画像形成装置1が実現されている。さらに,紙厚情報や原稿サイズ情報,環境情報を併用することで,第1読取ローラー33の圧接解除を,真に必要な場合に限り行う制御も実現している。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,図1に示した画像形成装置1におけるプロセス部3の構成は任意で,カラーでもモノクロでもよいし,発色材の種類も問わない。また,図1中の本体部6の部分を有しない読み取り専用機であってもよい。また,本形態ではスキャナー部5のいわゆる置き撮り機能には言及しなかったが,流し撮りの他に置き撮りも可能なものであってもよい。また,第1読取ローラー33の圧接解除に代えて,駆動ローラー34と従動ローラー35とが離間するに至らない程度にローラー圧を軽減するに留めてもよい。