JP6718489B2 - ハイドロゲルシート及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、ハイドロゲルシート及びその用途に関する。更に詳しくは、本発明は、デンドライトの成長の抑制が可能なハイドロゲルシート、それを用いたゲル状電解質、セパレータ及びアルカリ電池に関する。
近年の環境問題への世界的な関心の高まりを背景に、再生可能エネルギーの活用、ガソリン車から電気自動車への移行やスマートグリッドの活用の流れが加速している。そのような動きに伴い高エネルギー密度を示す蓄電池(二次電池)の重要性が高まっている。
空気中の酸素を正極活物質として利用する金属空気電池は、電池内に正極活物質を充填する必要がなく、負極活物質を電池内部に多く充填できる。そのため、金属空気電池は、高いエネルギー密度を有する次世代二次電池として注目されている。金属空気電池として、リチウム空気電池、亜鉛空気電池、アルミニウム空気電池、鉄空気電池、マグネシウム空気電池等が知られている。
しかしながら、金属空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を利用するため、正極から電解液が蒸散しやすく、電池内が乾燥しやすいことが問題となっている。また、電解液として強アルカリ溶液を用いる場合が多く、電解液の漏液等も問題となっている。
更に、金属空気電池の中でも亜鉛やリチウム等のデンドライトを発生しうる負極を用いた空気電池は、高い理論エネルギー密度を持つことから注目を集めている。しかし、亜鉛空気電池は、繰返し充放電を行った際に、負極上に成長するデンドライトによって内部短絡を起こすため、電池寿命に課題があることが知られている。
従来のアルカリ二次電池の分野では、イオン伝導性を保ちながら乾燥や液漏れを防止するために、ゲル化した電解質を電池用材料として使用する検討が行われていた。例えば、特開2005−322635号公報(特許文献1)には、ポリビニルアルコールとアニオン性架橋共重合体とからなる重合体組成物に、水酸化アルカリを含有させてなるアルカリ電池用高分子ハイドロゲル電解質が記載されている。また、国際公開WO2017/51734号(特許文献2)及び特開2017−183204号公報(特許文献3)には、ポリアクリル酸系重合体の架橋体から構成されるシート状のハイドロゲルが記載されている。
また、亜鉛二次電池のようなデンドライトを発生しうる負極を用いた二次電池において、デンドライトによる内部短絡を抑制する方法として、例えば、特開2015−95286号公報(特許文献4)に記載の方法がある。特許文献4には、結晶層間に水酸化物イオンを取り込んだ構造をもつハイドロタルサイト等を用いたアニオン伝導性膜をセパレータとして使用することが記載されている。このアニオン伝導性膜は、水酸化物イオン伝導性を保持しながら高い機械強度を有するため、デンドライトの成長を抑制できるとされている。
特開2005−322635号公報 国際公開WO2017/51734号 特開2017−183204号公報 特開2015−95286号公報
特許文献1に記載のハイドロゲルは、アニオン性架橋共重合体とポリビニルアルコールとを混合し、乾燥することで得られたハイドロゲルである。そのため、骨格を構成する重合体が互いに独立している。しかしながら、このようなハイドロゲルは、水分を含ませた際に伸びがなく、脆くなるという課題があった。
また、特許文献2及び3記載のハイドロゲルは、シート状のハイドロゲルであるため強度や伸びに優れており、亜鉛二次電池用のセパレータとして用いることが可能である。しかしながら、これらハイドロゲルは、デンドライトの成長抑制については改善の余地があった。
また、特許文献4記載のアニオン伝導性膜は、選択的なイオン伝導性を持ち、機械強度に優れるため、デンドライトの成長を抑制する性能が高く、亜鉛二次電池のサイクル特性を向上できる。しかしながら、アニオン伝導性膜の大部分がポリマーや無機物から構成されているため、保水性とイオン伝導性が低いという課題があった。
そのため、保水性とイオン伝導性に優れ、デンドライトの成長を抑制可能なイオン伝導性膜を提供することが望まれていた。
本発明の発明者等は、ハイドロゲルシートを構成する高分子マトリックス形成用のモノマーについて、種々検討した。その結果、エステル結合を有さずアミド基を有する多官能性モノマーが、網目の緻密性を向上させ、正極方向へのデンドライトの成長を物理的に阻害することで、デンドライトの成長を抑制可能な高分子マトリックスを備え、保水性とイオン伝導性に優れたハイドロゲルシートを提供できることに気付いた。ところで、例えば、特開2017−68933号公報では、アルカリ二次電池用のセパレータの分野において、ポリアミド系不織布をセパレータとして使用した場合、それはアルカリ電解液中で徐々に分解することで分解生成物を生じ、その分解生成物は電池特性の低下をもたらすことが記載されている。つまり、この公報では、アルカリ二次電池の構成物として、アミド結合を有する物質を使用することは、適切でないことは技術常識であるとされていた。ところが、このような技術常識にもかかわらず、本発明において、アミド基を有する多官能性モノマーに由来する成分を含む高分子マトリックスが、保水性とイオン伝導性に優れ、デンドライトの成長を抑制可能なイオン伝導性膜を提供できることは、極めて意外なことである。
かくして本発明によれば、水と高分子マトリックスとを含むハイドロゲルシートであって、
前記高分子マトリックスは、親水性基と1個のエチレン性不飽和基を有する単官能モノマーと、エステル結合を有さずアミド基と3〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体とを含み、
前記水及び高分子マトリックスが、前記ハイドロゲル100質量部中に、それぞれ、40〜95質量部及び5〜60質量部含まれ、
前記ハイドロゲルが、25℃の温度下で4MのKOH水溶液に14日間浸漬した場合、650%以下の膨潤度を示すことを特徴とするハイドロゲルシートが提供される。
更に、本発明によれば、上記ハイドロゲルシートと、前記ハイドロゲルシートに含ませた電解質成分とを含むゲル状電解質が提供される。
また、本発明によれば、上記ハイドロゲルシート又は上記ゲル状電解質を用いたセパレータが提供される。
更に、本発明によれば、上記ハイドロゲル、上記ゲル状電解質、及び上記セパレータのいずれかを含むアルカリ電池が提供される。
本発明によれば、網目の緻密性を向上させ、正極方向へのデンドライトの成長を物理的に阻害することで、デンドライトの成長を抑制可能な高分子マトリックスを備え、保水性とイオン伝導性に優れたハイドロゲルシートを提供できる。
本発明のハイドロゲルシートは、デンドライトの成長を抑制可能であるから、ゲル状電解質及びセパレータとして用いた場合、アルカリ電池の充放電繰り返し数を増加できる。
また、本発明によれば、以下の構成を有する場合、よりデンドライトの成長を抑制可能な高分子マトリックスを備え、保水性とイオン伝導性に優れたハイドロゲルシートを提供できる。
(1)多官能性モノマー中の3〜6個のエチレン性不飽和基が、下記式(X)
Figure 0006718489
で表されるビニルアミド由来の2価の基に含まれる。
(2)多官能性モノマーが、直線状又は分岐状の炭化水素鎖から構成されるモノマーであり、炭化水素鎖は、それを構成する炭素原子が、酸素原子及び又は窒素原子で置き換えられていてもよく、
前記ビニルアミド由来の2価の基が、
(i)下記式(X−I)
Figure 0006718489
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を意味する)
として前記炭化水素鎖の末端に位置する、及び/又は
(ii)前記炭化水素鎖の炭素原子を置き換える窒素原子と共に前記式(X)で表される基として位置する。
(3)多官能性モノマーが、10〜40個の炭素原子を有し、かつ70〜150℃の融点を有する水溶性のモノマーである。
(4)共重合体が、単官能モノマーに由来する単位100質量部と、多官能性モノマーに由来する単位0.1〜5質量部とを含む。
(5)ハイドロゲルシートが、それを酸化亜鉛で飽和させた4MのKOH水溶液に浸漬させた後、間隔200μmの亜鉛極板間に位置させた状態で、亜鉛極板間に1mA/cmの直流電流を通電する直流分極試験に付した場合、700分以上の通電時間を示す。
(6)ハイドロゲルシートが、それを酸化亜鉛で飽和させた4MのKOH水溶液に浸漬させた後、間隔200μmの亜鉛極板間に位置させた状態で、亜鉛極板間に1mA/cmの直流電流を通電する直流分極試験に付した場合、通電開始から40分経過したときの亜鉛極板1cmあたり2.0〜15mVの電圧を示す。
(ハイドロゲルシート)
ハイドロゲルシートは、それを酸化亜鉛で飽和させた4MのKOH水溶液に浸漬させた後、間隔200μmの亜鉛極板間に位置させた状態で、亜鉛極板間に1mA/cmの直流電流を通電する直流分極試験に付した場合、700分以上の通電時間を示すことが好ましい。通電時間が長いことは、例えば、負極の亜鉛板から成長するデンドライトが正極に到達しにくいこと、言い換えると、デンドライトによる短絡抑制性能に優れることを意味している。通電時間が700分未満の場合、デンドライトによる短絡を十分抑制できないことがある。通電時間は、800分以上であることがより好ましく、900分以上であることが更に好ましく、1000分以上であることが特に好ましい。
ハイドロゲルシートは、それを酸化亜鉛で飽和させた4MのKOH水溶液に浸漬させた後、間隔200μmの亜鉛極板間に位置させた状態で、亜鉛極板間に1mA/cmの直流電流を通電する直流分極試験に付した場合、通電開始から40分経過したときの亜鉛極板1cmあたり2.5〜15mVの電圧を示す。この範囲内の電圧を示すことで、アルカリ二次電池のセパレータとして用いた際の抵抗を低減できるため、電池特性を向上できる。電圧は、2.5〜12.5mVであることがより好ましく、2.5〜10.0mVであることが更に好ましい。
ハイドロゲルシートは、それを25℃又は60℃の温度下4MのKOH水溶液に14日間、21日間及び35日間浸漬させた場合、測定される6種の膨潤度が650%以下を示すことが好ましい。膨潤度が低いことは、ハイドロゲルシートを構成する高分子マトリックスの骨格の網目が緻密であることを意味しており、緻密性が高いほど、即ち膨潤度が低いほど、デンドライトの成長を抑制できると発明者等は考えている。膨潤度が650%よりも大きい場合、ハイドロゲルシートが膨潤により強度低下することがある。膨潤度は、100〜650%であることがより好ましく、100〜600%であることが更に好ましく、100〜550%であることが特に好ましい。
ハイドロゲルシートは、それを25℃又は60℃の温度下4MのKOH水溶液に14日間、21日間及び35日間浸漬させた場合、測定される6種の突刺強度が0.25N以上を示すことが好ましい。ここでの突刺強度は、ハイドロゲルシートに直径3mmの治具の先端が貫通するまでの最大応力の平均値を意味する。突刺強度が0.25N未満の場合、機械強度が低くなり自立膜として扱えなくなることがある。突刺強度は、0.25〜20.0Nであることがより好ましい。
ハイドロゲルシートは、10〜3000μmの厚さを有することが好ましい。厚さが10μm未満の場合、電池を組立てる場合に、正極とハイドロゲルシートと負極とを積層後にプレスした際、正極あるいは負極上の凸部がハイドロゲルシートを突き破り、短絡を起こすことがある。3000μmより厚い場合、電極間の抵抗が増大し、ハイドロゲルシートを電池材料として用いたときの電池特性が低下することがある。厚さは、次の降順、10〜2000μm、20〜1000μm、20〜750μm、20〜550μm、20〜450μm、20〜400μm、20〜350μm、30〜350μm、及び30〜300μmで好ましい。
ハイドロゲルシートは、水と高分子マトリックスとを含む。
(1)高分子マトリックス
高分子マトリックスは、親水性基と1個のエチレン性不飽和基を有する単官能モノマーと、エステル結合を有さずアミド基と3〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体を含む。この共重合体は各種モノマーを重合し架橋することで形成できる。
高分子マトリックスは、ハイドロゲルシート100質量部中に5〜60質量部含まれる。含有量が5質量部未満の場合、ハイドロゲルシートの強度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。60質量部より多いと、イオンの移動が阻害されてしまうため、抵抗が高くなることがある。含有量は、5〜50質量部が好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。
また、高分子マトリックス中の共重合体の含有量は、45質量部以上であることが好ましく、55質量部以上であることがより好ましい。高分子マトリックスは、共重合体のみから構成されていてもよい。
(a)単官能モノマー
単官能モノマーは、親水性基と1個のエチレン性不飽和基を有する限りは限定されない。親水性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。ここでカルボキシル基及びスルホン酸基には、塩の形態で単官能モノマー中に存在する場合も含まれる。更に、単官能モノマーは、塩の形態でないモノマーと塩の形態のモノマーとの混合物であってもよい。例えば、単官能モノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸リチウム、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸ナトリウム、ビニル安息香酸カリウム、ビニル安息香酸リチウム、ビニル酢酸、ビニル酢酸ナトリウム、ビニル酢酸カリウム、ビニル酢酸リチウム、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸カリウム、ビニルスルホン酸リチウム、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸カリウム、p−スチレンスルホン酸リチウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸カリウム、アリルスルホン酸リチウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸カリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム等が挙げられる。
(b)多官能性モノマー
多官能性モノマーは、エステル結合を有さずアミド基と3〜6個のエチレン性不飽和基を有している。この多官能性モノマーは、架橋剤の役割を有するため、ハイドロゲルシートを構成する高分子マトリックスの骨格の網目の緻密性を向上できる。この向上の結果、正極方向へのデンドライトの成長を物理的に阻害することで、負極上に発生するデンドライトによる内部短絡を抑制できると発明者等は考えている。エチレン性不飽和基の数が2個以下の場合、骨格の網目の緻密性が低下することにより、デンドライトの成長を抑制する性能が低下することがある。7個以上の場合、骨格に局所的に網目が密になった箇所ができることで、ハイドロゲルシートに局所的に高い応力が加わるため、ハイドロゲルシートが脆くなることがある。エチレン性不飽和基の数は、3個又は4個であることが好ましい。
多官能性モノマー中の3〜6個のエチレン性不飽和基は、下記式(X)
Figure 0006718489
で表されるビニルアミド由来の2価の基に含まれることが好ましい。ビニルアミド由来の2価の基を有する多官能性モノマーを使用することで、高分子マトリックスの主骨格を形成する単官能モノマーと、多官能性モノマーとの反応性を向上できる。その結果、高分子マトリックスを形成する網目の緻密性を向上できるため、デンドライトによる内部短絡の抑制性能を高めたハイドロゲルシートを得ることができる。
また、多官能性モノマーは、直線状又は分岐状の炭化水素鎖から構成されるモノマーであり、炭化水素鎖は、それを構成する炭素原子が、酸素原子及び又は窒素原子で置き換えられていてもよい。そして、ビニルアミド由来の2価の基が、
(i)下記式(X−I)
Figure 0006718489
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を意味する)
として炭化水素鎖の末端に位置する、及び/又は
(ii)炭化水素鎖の炭素原子を置き換える窒素原子と共に式(X)で表される基として位置する
ことが好ましい。
また、多官能性モノマーは、10〜40個の炭素原子を有し、かつ70〜150℃の融点を有する水溶性のモノマーであることが好ましい。
具体的な多官能性モノマーとしては、
N,N’−{[(2−アクリルアミド−2−[(3−アクリルアミドプロポキシ)メチル]プロパン−1,3−ジイル)ビス(オキシ)]ビス(プロパン−1,3−ジイル)}ジアクリルアミド(CAS No.1393329−90−2)、
N,N’,N’’−トリアクリロイルジエチレントリアミン(CAS No.34330−10−4)、
N,N’,N’’,N’’’−テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン(CAS No.158749−66−7)等が挙げられる。
多官能性モノマーは、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
多官能性モノマー由来の単位は、単官能モノマー由来の単位100質量部に対して、0.1〜5質量部の割合で含まれていることが好ましい。多官能性モノマー由来の単位の割合が0.1質量部未満の場合、架橋密度が低くなることがある。5質量部より多い場合、多官能性モノマー由来の単位が相分離してしまい、架橋構造が不均一なハイドロゲルシートとなることがある。割合は0.2〜4.5質量部であることが好ましく、0.4〜4.0質量部であることがより好ましい。
なお、共重合体は、単官能モノマーと多官能性モノマーに由来する単位を含むが、共重合体製造時の各モノマーの使用量と、共重合体中の各単位の含有量とは、ほぼ同じである。また、共重合体中の多官能性モノマー由来の単位の含有量は、熱分解GC及び/又はIRにより測定できる。
(c)他の重合体
本発明の効果を阻害しない範囲で、上記単官能モノマーと多官能性モノマーの共重合体以外の他の重合体が、前記共重合体と重合しない形態で高分子マトリックスに含まれていてもよい。他の重合体としては、ポリビニルスルホン酸系重合体、ポリアクリル酸系重合体、セルロース誘導体等が挙げられる。高分子マトリックス100質量部中に占める他の重合体の割合は、50質量部未満であることが好ましい。
(2)水
水は、ハイドロゲルシート100質量部中に40〜95質量部含まれる。含有量が40質量部未満の場合、電解質成分を含有できる量が少なくなり、電池のゲル電解質として使用した場合、インピーダンスが高く、望む電池特性が得られないことがある。95質量部より多いと、ハイドロゲルシートの強度が低くなることがある。含有量は、50〜90質量部であることがより好ましく、60〜90質量部であることが更に好ましい。
(3)電解質成分
水には電解質成分が溶解していてもよい。電解質成分を含むハイドロゲルシートは、ゲル状電解質として使用できる。電解質成分としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)、塩化カリウム(KCl)、臭化カリウム(KBr)、塩化カルシウム(CaCl)等が挙げられる。電解質成分の溶解量は、水100質量部に対して、70質量部までの量であることが好ましい。溶解量が70質量部より多い場合、電解質濃度が高くなりすぎるため、インピーダンスが高くなることがある。好ましい溶解量は、4〜70質量部である。
(4)その他の成分
(a)中間基材
ハイドロゲルシートは、織布、不織布、多孔質シート等の中間基材を含んでいてもよい。中間基材を含むことで、ハイドロゲルシートの形状を容易に維持できる。中間基材の材質としては、セルロース、絹、麻等の天然繊維やポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、それらの混紡が挙げられる。電解質成分を含ませる場合、電解質成分により分解する成分を持たないレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維、それらの混紡が好ましい。中間基材は、ハイドロゲルシートの表面、裏面及び中間のいずれに位置していてもよい。
中間基材は、ハイドロゲルシートの厚みをAとし、中間基材の厚みをBとするとき、0.45≦B/A<1の関係を満たすことが好ましい。B/Aが0.45未満の場合、電解質を含浸させるためにハイドロゲルシートを電解液に浸漬させた場合、中間基材のハイドロゲルシート内の偏在によって生じるシート表裏での膨潤差によって、巻きや反りが発生することがある。1以上の場合、ハイドロゲルシート表面から中間基材がむき出しているため、電解液の保湿性の低下や電極との密着性が低下することがある。B/Aの関係は、0.45≦B/A<1であることがより好ましく、0.5≦B/A<1であることが更に好ましい。
(b)保護フィルム
ハイドロゲルシートは、その表面及び/又は裏面に保護フィルムを備えていてもよい。保護フィルムをセパレータとして用いる場合は、離型処理されていることが好ましい。表面及び裏面の両方に保護フィルムを備える場合、表裏異なる剥離強度に調製してもよい。また、保護フィルムを中間基材として用いる場合は離型処理の必要はない。
保護フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、紙、樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)をラミネートした紙等からなるフィルムが挙げられる。離型処理としては、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが挙げられる。
(c)添加剤
ハイドロゲルシートは、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、電解質、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、薬効成分(例えば、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等)、ゲル強度向上剤(例えば、セルロースナノファイバー)等が挙げられる。
(ハイドロゲルシートの製造方法)
ハイドロゲルシートは、例えば、
(i)水、単官能モノマー、多官能性モノマー及び重合開始剤を含むハイドロゲルシート前駆体を調製する工程(調製工程)
(ii)単官能モノマー及び多官能性モノマーを重合させることによりハイドロゲルシートを得る工程(重合工程)
を経ることにより製造できる。
(1)成形工程
この工程での重合開始剤には、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれも使用できる。この内、重合前後での成分の変化の少ない光重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:Omnirad 1173,BASF・ジャパン社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:Omnirad 184,BASF・ジャパン社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:Omnirad 2959,BASF・ジャパン社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:Omnirad 907,BASF・ジャパン社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:Omnirad 369,BASF・ジャパン社製)等が挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
重合開始剤の使用量は、全モノマー(単官能モノマー、多官能性モノマー及び任意に他のモノマー)の合計100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましい。使用量が0.05質量部未満の場合、重合反応が十分に進行せず、得られたハイドロゲルシート中に、未重合のモノマーが残存することがある。5質量部より多いと、重合反応後の重合開始剤の残物により、臭気を帯びたり、残物の影響により物性が低下したりすることがある。使用量は、0.06〜3質量部であることがより好ましく、0.07〜1.5質量部であることが更に好ましい。
ハイドロゲルシートを製造する場合、ハイドロゲル前駆体のシート状への成形は、例えば、(i)ハイドロゲル前駆体を型枠に注入する方法、(ii)保護フィルム間にハイドロゲル前駆体を流し込み、一定の厚みに保持する方法、(iii)保護フィルム上にハイドロゲル前駆体をコーティングする方法、等が挙げられる。方法(i)は、任意の形状のハイドロゲルシートを得ることができる利点がある。方法(ii)及び(iii)は、比較的薄いハイドロゲルシートを得ることができる利点がある。中間基材を含むハイドロゲルシートは、方法(i)により製造することが適切である。なお、ハイドロゲル前駆体には、上記の他のモノマー、添加剤等が含まれていてもよい。
(2)重合工程
ハイドロゲル前駆体中の単官能モノマー及び多官能性モノマーを熱付与又は光照射により重合させることにより網目構造を得ることができる。熱付与及び光照射の条件は、網目構造を得ることができる限り、特に限定されず、一般的な条件を採用できる。
(3)その他の工程
その他の工程として、電解質成分含有工程が挙げられる。電解質成分含有工程では、重合後のハイドロゲルシートを電解質成分水溶液に浸漬することで、ハイドロゲルシート中の水にアルカリ水溶液中の電解質成分が溶解される。この浸漬は、所望する電解質成分量のハイドロゲルシートを得るための条件下で行われる。例えば、浸漬温度としては、4〜80℃の冷却、常温(約25℃)及び加温下で行うことができる。浸漬時間は、常温下では、6〜336時間とすることができる。
浸漬後に、ハイドロゲルシートを乾燥させることで、含水量の調整を行ってもよい。その調整としては、例えば、浸漬前後のハイドロゲルシートの質量をほぼ同一にすることが挙げられる。
(ハイドロゲルシートの用途)
ハイドロゲルシートは、アルカリ電池(例えば、ゲル状電解質、セパレータ等)に使用できる。
ここでのアルカリ電池は、正極及び負極間の電解質層及び/又はセパレータとしてハイドロゲルシートを使用し得る二次電池である。そのような二次電池としては、ニッケル−水素二次電池、ニッケル−亜鉛二次電池、亜鉛空気電池、リチウム空気電池、アルミニウム空気電池、マグネシウム空気電池、カルシウム空気電池等が挙げられる。これら二次電池は、電解液としてアルカリ水溶液を使用しているため、二次電池からの液漏れをハイドロゲルシートにより防止できる。
アルカリ電池の構成は、特に限定されず、一般的な構成をいずれも使用できる。例えば、ニッケル−水素二次電池の正極としてはニッケル又はニッケル合金を、負極としては水素吸蔵合金を、ニッケル−亜鉛二次電池の正極としてはニッケル又はニッケル合金を、負極としては亜鉛又は酸化亜鉛を使用できる。正極及び負極は、ニッケル、アルミニウム、銅等からなる集電体上に形成されていてもよい。
ハイドロゲルシートが、セパレータである場合、ハイドロゲルシートは中間基材を備えていることが好ましい。
アルカリ電池は、実施例に記載した充放電サイクル試験において、充放電効率が60%以下になるサイクル数が、65サイクル以上であることが好ましく、70サイクル以上であることがより好ましく、75サイクル以上であることが更に好ましく、80サイクル以上であることが特に好ましい。サイクル数が多いことは、負極上に発生するデンドライトによる内部短絡を抑制することを意味する。
また、40回充放電後の充放電効率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%であることが更に好ましい。
アルカリ電池以外の用途として、コンデンサ用材料や電気二重層キャパシタ用材料やコンクリート防食工法用の材料等の用途が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。まず、実施例で測定する各種物性の測定方法を記載する。
(膨潤度)
アルカリ浸漬前のハイドロゲルシートを5mm角に切り、計量した。その後、250メッシュのポリエチレン製ティーバッグにハイドロゲルシートを入れ、ティーバッグを100mLの4MのKOH水溶液に浸漬した。その後、25℃と60℃の温度下で、14日間、21日間、35日間浸漬した後、10分間水切りをしたものを計量し、4MのKOH水溶液に膨潤させたハイドロゲルシート入りティーバッグを得た。なお、水切り時にハイドロゲルシートが柔らかくなってメッシュを通り抜ける場合は、「液状化」したと記載した。膨潤度は、4MのKOH水溶液に浸漬したハイドロゲルシートが入っていないティーバッグの質量をブランクとし、4MのKOH水溶液に膨潤させたハイドロゲルシート入りティーバッグの質量から、ブランクの質量を減じた値を、膨潤前のハイドロゲルシートの質量で除して、100を掛けた値を膨潤度(%)として算出した。25℃で14日間浸漬後、21日間浸漬後、35日間浸漬後の膨潤度を、それぞれB25℃[14日間]、B25℃[21日間]、B25℃[35日間]とし、60℃で14日間浸漬後、21日間浸漬後、35日間浸漬後の膨潤度を、それぞれB60℃[14日間]、B60℃[21日間]、B60℃[35日間]とした。ハイドロゲルが中間基材として不織布等を用いている場合は、中間基材からハイドロゲルを0.3g削り取り、それを測定サンプルとして上記方法と同様にして、膨潤度を算出した。
(突刺強度)
得られたハイドロゲルシートを30mm×30mm×2mm厚に切り取った。切り取ったハイドロゲルシートを25℃と60℃の温度下で100mLの4MのKOH水溶液に14日間、21日間、35日間浸漬した後、アルカリ溶液浸漬後のハイドロゲルシートとした。アルカリ溶液に所定の時間浸漬させた後に引き上げた各種ハイドロゲルシートを23℃湿度50%の環境下で3時間おいた後、テクスチャーアナライザーTA.XT Plus(英弘精機社製)を用いて突刺試験を実施した。直径7mmの穴を有する台にハイドロゲルシートをのせ、直径3mmのステンレス製円柱の治具が台の穴の中心を通る位置に調整した。その後、1.0mm/秒の速度で突刺し、治具の先端が貫通するまでの最大応力を測定した。この測定を5つの試験片について行い、最大応力を算出し、これらの平均を突刺強度とした。このとき、25℃で14日間浸漬後、21日間浸漬後、35日間浸漬後の突刺強度を、それぞれF25℃[14日間]、F25℃[21日間]、F25℃[35日間]とし、60℃で14日間浸漬後、21日間浸漬後、35日間浸漬後の突刺強度を、それぞれF60℃[14日間]、F60℃[21日間]、F60℃[35日間]とした。なお、シートの厚みが2mmに満たない場合は、シートを積層させて2mm厚みに調整した。
(直流分極測定における通電時間)
対向する幅15mm、長さ40mm、厚み300μmの亜鉛極板間にハイドロゲルシートを介在させた状態で2枚の亜鉛極板を重ね合わせることで、亜鉛極板とハイドロゲルシートとの積層体を作製した。更に2枚の70mm角のアクリル板で前記積層体を挟持して固定することで直流分極測定用セルを作製した。なお、2枚のアクリル板の間の亜鉛極板とハイドロゲルシートとの積層体が存在しない箇所に幅10mm、長さ30mm、厚み800μmテフロン(登録商標)製のシートをアクリル板間に挟むことで、亜鉛極板間が間隔200μmとなるように調整した。この直流分極測定用セルを、酸化亜鉛を飽和溶解させた4MのKOH水溶液に25℃で72時間浸漬した。浸漬後の直流分極測定用セルを酸化亜鉛を飽和溶解させた4MのKOH水溶液が入ったアクリル製溶液に入れ、測定装置HJ1010SD8(北斗電工社製)を用いて、直流分極測定用セルの亜鉛極板間に1mA/cmの直流定電流を通電させ、経時での電圧の変化を測定した。このとき測定電圧が0.014V以上であることを通電状態とし、測定開始から通電状態を保持している時間を通電時間とした。また、測定電圧が0.014V未満となったときを短絡状態とした。
(直流分極測定における40分経過後の亜鉛極板1cmあたりの電圧)
上記直流分極測定において、通電開始から40分経過したときの電圧を亜鉛極板の面積で除することで算出した値を「直流分極測定における40分経過後の亜鉛極板1cmあたりの電圧」とした。
(充放電試験)
ハイドロゲルシートを酸化亜鉛を飽和溶解させた4MのKOH水溶液(電解質成分)に25℃で72時間浸漬することで、電解質成分含浸ハイドロゲルシートを得た。
酸化亜鉛80質量部、炭酸カルシウム5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)10質量部を混合後、固形分量が40質量%になるように適当量のNMP(n−メチル−2−ピロリドン)を加えた。得られた混合物を更に自公転式ミキサーで2000rpm20分間混合することで、負極合剤を調製した。得られた負極合剤をセルメット(住友電工社製)に固定し、150℃で5時間以上乾燥後、ロールプレスし、20mm×30mmにカットすることで負極を得た。負極の厚さは平均700μmであり、単位面積あたりの負極容量は25mAh/cmであり、作製した負極の容量は150mAhであった。
水酸化ニッケル91.5質量部、水酸化コバルト3.15質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル社製、2260)を0.13質量部、分散剤としてポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル(ナカライテスク社製、トリトンX)0.22質量部、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5質量部を混合後、固形分量が50質量%になるように適当量のイオン交換水を加えた。得られた混合物を更に自公転式ミキサーで2000rpm20分間混合することで、正極合剤を調製した。得られた正極合剤をセルメット(住友電工社製)に固定し、80℃で5時間以上乾燥後、ロールプレスし、20mm角にカットすることで正極を得た。正極の厚さは平均600μmであり、単位面積あたりの正極容量は32mAh/cmであり、作製した正極の容量は128mAhであった。
前記負極の両面を40mm×30mmの上記電解質成分含浸ハイドロゲルシートで挟み込み、その外側に前記正極を配し、更に全体をアクリル板で固定することで、充放電試験用のニッケル−亜鉛蓄電池セルを得た。このセルは、正極容量を負極容量に対して大過剰とした正極容量規制のセルであった。ニッケル−亜鉛蓄電池セルを正極容量に対して1/4C率で1時間充電し、1/4C率で1時間放電した後、1/4C率で2時間充電し、1/4C率で1時間放電した。1/2C率で1時間充電し、1/2C率で1時間充放電する充放電サイクル試験に付した。充放電回数は、1/2C率での充放電回数とした。
充放電サイクル試験は充電1時間及び放電1時間とし、放電カットオフ電圧は1.0Vとした。ここで1C率とは負極の全容量を1時間で放電又は充電できるだけの電流量とした。例えば、正極の容量が128mAhとすると1C率は128mA、1/2C率は68mA、1/4C率は32mAとなった。
(融点)
多官能性モノマーの融点は、示差走査熱量測定(DSC測定)によって算出した。
<実施例1>
単官能モノマーとしてアクリル酸(東亞合成社製)20質量部、多官能性モノマーとしてN,N’,N’’−トリアクリロイルジエチレントリアミン(富士フィルム社製、FAM301、融点89℃)0.34質量部、イオン交換水80質量部を容器に入れ攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.20質量部を加え、マクネチックスターラー(アズワン社製、RS−6AR)を用いて攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。剥離性PETフィルム上に2mm厚のシリコン枠を置き、枠内にハイドロゲル前駆体を流し込んだ後、ハイドロゲル前駆体上に剥離性PETフィルムを載せた。その後、小型UV重合機(JATEC社製、J−cure1500、メタルハライドランプ型名MJ−1500L)にてコンベアー速度0.4m/分、ワーク間距離150mmの条件でエネルギー7000mJ/cmの紫外線を照射する工程を3回行うことで、2mm厚のシート状のハイドロゲルシートを作製した。作製したハイドロゲルシートにアルカリ溶液浸漬後の突刺試験を行った。
また、直流分極測定及び充放電試験に用いたハイドロゲルシートは以下の手順で作製した。2枚の剥離性PETフィルムの間に中間基材として厚みが103μm、目付けが45g/mのポリオレフィン不織布(日本バイリーン社製 OA−18738P)を配置し、前述のハイドロゲル前駆体を流し込んだ後、ローラーで厚みが200μmとなるように調整した後、UVランプシステム(ヘレウス社製、装置名:Light Hammer 10)を用いて、照射条件65mW/cm、/7000mJ/cmの紫外線を照射することで、200μm厚のハイドロゲルシートを作製した。作製したハイドロゲルシートの膨潤特性評価、直流分極試験、充放電試験及び電解液浸漬後の外観評価を行った。
<実施例2>
多官能性モノマーをN,N’−{[(2−アクリルアミド−2−[(3−アクリルアミドプロポキシ)メチル]プロパン−1,3−ジイル)ビス(オキシ)]ビス(プロパン−1,3−ジイル)}ジアクリルアミド(富士フィルム社製、FAM401、融点107℃)0.66質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートの膨潤特性評価、アルカリ溶液浸漬後の突刺試験、直流分極試験、充放電試験及び電解液浸漬後の外観評価を行った。
<実施例3>
多官能性モノマーをN,N’,N’’,N’’’−テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン(富士フィルム社製、FAM402、融点110℃)0.47質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートの膨潤特性評価、アルカリ溶液浸漬後の突刺試験、直流分極試験、充放電試験及び電解液浸漬後の外観評価を行った。
<実施例4>
単官能モノマーを2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(MCCユニッテック社製、AMPS)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートの膨潤特性評価、アルカリ溶液浸漬後の突刺試験、直流分極試験、充放電試験及び電解液浸漬後の外観評価を行った。
<実施例5>
単官能モノマーを2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートの膨潤特性評価、アルカリ溶液浸漬後の突刺試験、直流分極試験、充放電試験及び電解液浸漬後の外観評価を行った。
<比較例1>
多官能性モノマーをジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製、DVBS)0.3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートの膨潤特性評価、アルカリ溶液浸漬後の突刺試験、直流分極試験及び充放電試験を行った。
<比較例2>
多官能性モノマーをジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.6質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートの膨潤特性評価、アルカリ溶液浸漬後の突刺試験、直流分極試験及び充放電試験を行った。
<比較例3>
多官能性モノマーを2個のエチレン性不飽和基とエステル結合を有するA−200(新中村化学工業社製 ポリエチレングリコール#200ジアクリレート)0.3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートはアルカリ溶液浸漬時に液状化したため、各種物性を測定できなかった。
<比較例4>
多官能性モノマーを2個のエチレン性不飽和基とエステル結合を有するA−400(新中村化学工業社製 ポリエチレングリコール#400ジアクリレート)0.4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートはアルカリ溶液浸漬時に液状化したため、各種物性を測定できなかった。
<比較例5>
多官能性モノマーを3個のエチレン性不飽和基とエステル結合を有するを有するA−GLY−9EA(新中村化学工業社製 Ethoxylated glycerine triacrylate)0.45質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートはアルカリ溶液浸漬時に液状化したため、各種物性を測定できなかった。
<比較例6>
多官能性モノマーを4個のエチレン性不飽和基とエステル結合を有するA−TMMT(新中村化学工業社製 ペンタエリスリトールテトラアクリレート)0.3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートはアルカリ溶液浸漬時に液状化したため、各種物性を測定できなかった。
<比較例7>
特開2015−95286号公報に記載の内容に従い、層状複水酸化物としてのハイドロタルサイト2.5gに対し、60質量%濃度のポリテトラフルオロエチレンエマルション水溶液(ダイキン工業社製 ポリフロン PTFE D−210C)5g、及び20質量%濃度のポリエチレンイミン(日本触媒社製 EPOMIN SP200)水溶液2.5gを混錬し、圧延することで、200μmのシートを得た。得られたシートの膨潤特性評価、アルカリ溶液浸漬後の突刺試験、直流分極試験及び充放電試験を行った。
実施例及び比較例の原料種及びその使用割合を表1に、実施例及び比較例の結果を表2に示す。
Figure 0006718489
Figure 0006718489
表2から、エステル結合を有さずアミド基と3〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーを共重合体の構成成分として用いることで、通電時間が長く、充放電サイクル特性に優れるハイドロゲルシート、即ちデンドライトの成長を抑制する性能に優れるハイドロゲルシートを提供できることが分かる。
<比較例8>
多官能性モノマーをジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)を0.6質量部、中間基材を80μm厚のポリプロピレン−ポリエチレン系不織布(シンワ社製 9515F)に変更したこと以外は実施例1と同様にして200μm厚のハイドロゲルシートを得た。得られたハイドロゲルシートの電解液浸漬後の外観評価を行った。結果を実施例1〜5の結果と合わせて表3に示す。なお、外観評価は、以下の反り巻きの評価とした。
(反り巻きの評価)
得られたハイドロゲルシートを30mm角に切り取った。切り取ったハイドロゲルを25℃の温度下で100mLの4MのKOH水溶液に3日間浸漬した。浸漬後のハイドロゲルの隣り合う頂点の距離を計測し、頂点間距離Dを求めた。頂点間距離Dを30mmで除したときに、その値が0.75未満である場合は電解液浸漬後のハイドロゲルシートが反っているあるいは巻いていることを意味するため、×と評価した。一方で、0.75以上の場合は電解液浸漬後にハイドロゲルのシートは形状的に変化していないことを意味するため、○と評価した。
Figure 0006718489
表3から、実施例のハイドロゲルシートは、反りや巻きが生じない、取扱い性の良好なシートであることが分かる。

Claims (7)

  1. 水と高分子マトリックスとを含むハイドロゲルシートであって、
    前記高分子マトリックスは、親水性基と1個のエチレン性不飽和基を有する単官能モノマーと、エステル結合を有さずアミド基と3〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体とを含み、
    前記単官能モノマーが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸リチウム、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸カリウム、ビニルスルホン酸リチウム、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸カリウム、p−スチレンスルホン酸リチウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸カリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウムから選ばれる少なくとも1種であり、
    前記多官能性モノマーが、N,N’,N’’−トリアクリロイルジエチレントリアミン、N,N’−{[2−アクリルアミド−2−[(3−アクリルアミドプロポキシ)メチル]プロパン−1,3−ジイル)ビス(オキシ)]ビス(プロパン−1,3−ジイル)}ジアクリルアミド、N,N’,N’’,N’’’−テトラアクリロイルトリエチレンテトラミンから選ばれる少なくとも1種であり、
    前記水及び高分子マトリックスが、前記ハイドロゲル100質量部中に、それぞれ、40〜95質量部及び5〜60質量部含まれ、
    前記ハイドロゲルが、25℃の温度下で4MのKOH水溶液に14日間浸漬した場合、650%以下の膨潤度を示すことを特徴とするハイドロゲルシート。
  2. 前記共重合体が、前記単官能モノマーに由来する単位100質量部と、前記多官能性モノマーに由来する単位0.1〜5質量部とを含む請求項1に記載のハイドロゲルシート。
  3. 前記ハイドロゲルシートが、それを酸化亜鉛で飽和させた4MのKOH水溶液に浸漬させた後、間隔200μmの亜鉛極板間に位置させた状態で、前記亜鉛極板間に1mA/cmの直流電流を通電する直流分極試験に付した場合、700分以上の通電時間を示す請求項1または2のいずれか1つに記載のハイドロゲルシート。
  4. 前記ハイドロゲルシートが、それを酸化亜鉛で飽和させた4MのKOH水溶液に浸漬させた後、間隔200μmの亜鉛極板間に位置させた状態で、前記亜鉛極板間に1mA/cmの直流電流を通電する直流分極試験に付した場合、通電開始から40分経過したときの亜鉛極板1cmあたり2.0〜15mVの電圧を示す請求項1〜のいずれか1つに記載のハイドロゲルシート。
  5. 請求項1〜のいずれか1つに記載のハイドロゲルシートと、前記ハイドロゲルシートに含ませた電解質成分とを含むゲル状電解質。
  6. 請求項1〜のいずれか1つに記載のハイドロゲルシート又は請求項に記載のゲル状電解質を用いたセパレータ。
  7. 請求項1〜のいずれか1つに記載のハイドロゲルシート、請求項に記載のゲル状電解質、及び請求項に記載のセパレータのいずれかを含むアルカリ電池。
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