JP6576870B2 - アルカリ亜鉛蓄電池 - Google Patents

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Description

本発明は、アルカリ亜鉛蓄電池に関する。更に詳しくは、本発明は、亜鉛析出物の成長が抑制されたアルカリ亜鉛蓄電池に関する。
アルカリ蓄電池は、電解液にアルカリ性水溶液を使用した二次電池であり、ニッケル−カドミウム蓄電池やニッケル−水素蓄電池が実用化されており、古くから注目されている。アルカリ蓄電池は、電解液に水溶液を使用しているため、非水溶液を電解質として用いるリチウムイオン電池と比べて、発火する危険性が低い反面、エネルギー密度が低いことが課題として挙げられる。この課題を解決し得る蓄電池として、亜鉛を負極に使用した、ニッケル−亜鉛蓄電池や空気亜鉛蓄電池等のアルカリ亜鉛蓄電池が期待されている。亜鉛は安価で豊富な資源であり、かつ還元電位が低いため、電池の高容量化が図れる魅力的な材料である。これら蓄電池としては、例えば、特開2011−171112号公報(特許文献1)に記載された不織布からなるセパレーターを備えた蓄電池が知られている。
しかし、亜鉛は、充電時に発生する樹枝状析出物が内部短絡を起こすという課題がある。
この亜鉛析出物の成長を抑制したアルカリ亜鉛蓄電池の例としては、例えば、特開2005−235674号公報(特許文献2)に記載された吸水性ポリマー、撥水剤、酸化物を混合し、アルカリ水溶液を用いてゲル化し、乾燥により多孔質化したセパレーターを使用した蓄電池が挙げられる。
特開2011−171112号公報 特開2005−235674号公報
特許文献2では、吸水性ポリマー、撥水剤、酸化物及びアルカリ水溶液を含むセパレーター層により、自己放電が少なく、サイクル寿命を長くすることができると記載されている。しかしながら、この方法では、乾燥により多孔質化セパレーターとなり、吸水性ポリマーの使用により亜鉛の移動は制限できることが考えられるが、多孔質部には亜鉛の移動制限がない。そのため、亜鉛析出物の成長起点となり、サイクル寿命の大幅な伸長は期待できないという課題があった。
かくして本発明によれば、正極、亜鉛を含む負極、及びそれらに挟持されたアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを備え、
前記アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが、それを間隔200μmの亜鉛極板間に位置した状態で、前記亜鉛極板間に1mA/cm2の直流定電流を通電した場合、500分間以上通電しうる性質を有し、空隙を備えないことを特徴とするアルカリ亜鉛蓄電池が提供される。
本発明のアルカリ亜鉛蓄電池に使用されるアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートは、それ自体がミクロゲルの集合体ではなく、1つのバルクゲルで構成されているため、高い機械的な強度と保水性を有しており、ミクロゲルの集合体に比べて均一性が高い。そのため、本発明に使用されるアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートは、亜鉛極板表面の電位を均一にさせやすいため、亜鉛析出物の成長抑制効果が高い。その結果、アルカリ亜鉛蓄電池のサイクル寿命を長くすることができる。
また、本発明によれば、以下の構成を有する場合、より長いサイクル寿命のアルカリ亜鉛蓄電池を提供できる。
(1)アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが、それを負極表面に固定し、亜鉛を含むアルカリ水溶液中に浸漬した状態で、負極に1mA/cmの直流定電流を2時間通電することで、負極表面に析出させた亜鉛析出物を非破壊検査用X線CTシステムで測定した場合、亜鉛析出物の高さを100μm以下としうる。
(2)アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが、水と、水に溶解したアルカリ成分と、それらを含有した高分子マトリックスとから構成されている。
(3)高分子マトリックスが、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーと2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体を含み、共重合体がその主鎖内にエステル結合及びアミド結合を備えず、かつ主鎖に結合する親水性基を有する。
(4)アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが、10〜500μmの厚さを有する。
(5)高分子マトリックスが、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート100重量部中に、1〜30重量部含まれる。
本発明の蓄電池が亜鉛析出物の発生を抑制できることを説明するための概略図である。 実施例1と比較例1の直流分極測定の結果を示すグラフである。 実施例1と比較例1の負極充電試験片の概略図及びX線CT画像である。 実施例1と比較例1のニッケル-亜鉛蓄電池の充放電サイクル特性の測定結果を示すグラフである。 実施例1の空気亜鉛蓄電池の充放電試験結果を示すグラフである。
アルカリ亜鉛蓄電池(以下、単に蓄電池ともいう)は、正極、亜鉛を含む負極、及びそれらに挟持されたアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを備えている。
(アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート)
アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートは、それを間隔200μmの亜鉛極板間に位置した状態で、亜鉛極板間に1mA/cmの直流定電流を通電した場合、500分間以上通電しうる性質を有している。この性質を有することで、正極と負極間の亜鉛析出物の成長による短絡が抑制され、サイクル寿命の長い(充放電繰り返し可能数の多い)蓄電池を提供できる。なお、この性質の測定は、直流分極測定と称し、この測定に使用されるアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートとそれを挟む一対の亜鉛極板とからなる構成は、直流分極測定用セルと称する。
なお、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの厚みが200μm厚以下である場合、スペーサーを用いて亜鉛極板の間隔が200μmとなるように調整する。アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの厚みが200μm厚を超える場合、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを圧縮して亜鉛極板間が200μmとなるように調整する。
また、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを負極表面に固定し、亜鉛を含むアルカリ水溶液中に浸漬した状態で、負極に1mA/cmの直流定電流を2時間通電することで、負極表面に析出させた亜鉛析出物を非破壊検査用X線CTシステムで測定した場合、亜鉛析出物の高さを100μm以下としうる。
これらの性質は、正極と負極との間に位置するセパレーター部に特定の性質を有するアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを使用することにより奏される。奏される理由を図1(a)及び(b)を用いて説明する。図1(a)は不織布をセパレーターに使用した従来の蓄電池の概略図であり、図1(b)はアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートをセパレーターに使用した本発明の蓄電池の概略図である。これら図中、1は正極、2は負極、3は亜鉛析出物、4は不織布製セパレーター、5は亜鉛析出物の成長方向、6はアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート製セパレーターを意味する。図1(a)及び(b)では、負極2から正極1に向かって亜鉛析出物3が成長する様子が示されている。不織布製セパレーター4は、空隙が多いため、亜鉛析出物3が成長し負極2と正極1を短絡させることを防ぐことが困難である。これに対して、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート製セパレーター6は、空隙がなく、中実であるため亜鉛析出物3の成長を物理的に抑制できる。その結果、充放電反応に寄与しない亜鉛析出物の発生を抑制できるので、サイクル寿命を長くすることができる。
アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートは、水と、水に溶解したアルカリ成分と、それらを含有した高分子マトリックスとから構成されている。
(1)高分子マトリックス
高分子マトリックスは、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーと2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体とを含むことが好ましい。
高分子マトリックスは、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート100重量部中に1〜30重量部含まれることが好ましい。含有量が1重量部未満の場合、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが柔らかくなるため、蓄電池使用時にアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが壊れて通電しなくなることがある。30重量部より多いと、蓄電池の内部抵抗が高くなり、出力が低下しやすくなる。より好ましい含有量は2〜25重量部であり、更に好ましい含有量は5〜15重量部である。
共重合体は、その主鎖内にエステル結合及びアミド結合を備えず、かつ主鎖に結合する親水性基を有していることが好ましい。親水性基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。親水性基は、機械的強度の向上の観点から、主鎖以外の高分子鎖と結合していないことが好ましい。親水性基の数は、高分子マトリックスを構成する単官能性モノマーの親水性官能基当量(官能基1つあたりの分子量)が300g/mol以下であることが好ましい。
共重合体は、高分子マトリックス100重量部中に60〜100重量部含まれることが好ましい。含有量が60重量部未満の場合、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの強度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。高分子マトリックスは共重合体のみからなっていることがより好ましい。
(a)単官能性モノマー
単官能性モノマーは、1個のエチレン性不飽和基を有する限り特に限定されない。単官能性モノマーは、水に対して可溶性を有するモノマーが好ましい。ここで、可溶性とは、100gの水に1g以上溶解することを意味する。例えば、単官能性モノマーとしては、アクリル酸、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸亜鉛、ジメチルアクリルアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。単官能性モノマーは、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
(b)多官能性モノマー
多官能性モノマーは、2〜6個のエチレン性不飽和基を有する限り特に限定されない。多官能性モノマーは、エチレン性不飽和基間にエステル結合及びアミド結合を備えないモノマーが好ましい。例えば、多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジビニルビフェニル、ジビニルスルホン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド等が挙げられる。多官能性モノマーは、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
(c)多官能性モノマーの割合
多官能性モノマー由来の重合体は、共重合体100重量部に対して、0.1〜5重量部の割合で含まれる。共重合体中の多官能性モノマー由来の重合体の含有量は、熱分解GCにより測定できる。熱分解GCによる測定は、例えば、以下の手順で行うことができる。
(多官能性モノマーとしてのジビニルベンゼン由来重合体のジビニルベンゼン含有量測定)
重合後のハイドロゲル約0.05gをできるだけ小さな大きさにカット後、遠沈管に精秤し、メタノール約10mlを加えて10hr以上常温静置する。約15分間超音波洗浄抽出して再度よく混合した後、3,500rpm×30min遠心分離し、上澄み液を捨てて沈殿物を取り出し、沈殿物を絶乾することでハイドロゲルに含まれる共重合体樹脂成分の分離を行い、これを測定試料とする。
試料を0.1〜0.5mg精秤し、キューリー点が590℃の強磁性金属体(パイロホイル:日本分析工業社製)に圧着するように包み、キューリーポイントパイロライザーJPS−700型(日本分析工業社製)熱分解装置で下記条件にて測定して生成したジビニルベンゼンモノマーをガスクロマトグラフ GC7820(アジレント・テクノロジー社製)(検出器:FID)を用いて測定し、ジビニルベンゼン単独重合体を同様に測定して得られたジビニルベンゼンモノマーピーク面積を使用して予め準備した検量線より含有量を算出する。
(測定条件)
・加熱(590℃−5sec)
・オーブン温度(300℃)
・ニードル温度(300℃)
・カラム(GRACE社製 EC−5(φ0.25mm×30m×膜厚0.25μm))
(カラム温度条件)
・温度条件(50℃で0.5分保持後、200℃まで10℃/分で昇温し、更に320℃まで20℃/分で昇温し320℃にて0.5分保持)
・キャリアーガス(He)
・He流量(39.553ml/分)
・注入口圧力(100kPa)
・注入口温度(300℃)
・検出器温度(300℃)
・スプリット比(1/50)
検量線作成用標準試料は、積水化成品工業社製のジビニルベンゼン単独重合体を使用する。
(ジビニルベンゼン単独重合体粒子の作製方法)
攪拌機、温度計を備えた重合器にラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部を溶解させた脱イオン水2000重量部を入れ、そこへ第三リン酸カルシウム200重量部を分散させた。これに予め調製しておいたジビニルベンゼン(商品名「DVB−810」新日鉄住金化学社製)1000重量部に2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)10重量部を溶解させた混合液を入れて、その液をT.Kホモミキサー(特殊機化工業社製)にて4000rpmで10分間攪拌して重合器を65℃に加熱して攪拌しながら懸濁重合を行った後、室温まで冷却した。ここで得られた懸濁液を吸引濾過により10000重量部の脱イオン水で洗浄した後、乾燥してジビニルベンゼン重合体粒子を得た。粒度分布測定装置Multisizer3(ベックマン・コールター社製)で測定したジビニルベンゼン単独重合体粒子の平均粒子径は11.5μmだった。
多官能性モノマー由来の重合体の割合が0.1重量部未満の場合、架橋密度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。5重量部より多い場合、多官能性モノマー由来の重合体が相分離してしまい、架橋構造が不均一なハイドロゲルシートとなることがある。好ましい割合は0.2〜3重量部であり、より好ましい割合は0.4〜1.5重量部である。
なお、共重合体は、単官能性モノマーと多官能性モノマーに由来する成分からなるが、共重合体製造時の各モノマーの使用量と、共重合体中の各成分の含有量とは、ほぼ同じである。
(d)他のモノマー
本発明の効果を阻害しない範囲で、上記単官能性モノマーと多官能性モノマー以外の他のモノマー由来の成分が、共重合体に上記単官能性モノマー及び/又は多官能性モノマーと共重合する形態で含まれていてもよい。他のモノマーとしては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。全モノマー100重量部中に占める他のモノマーの割合は、5重量部以下であることが好ましい。全モノマーが上記単官能性モノマーと多官能性モノマーからなることがより好ましい。
(e)他の重合体
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記単官能性モノマーと多官能性モノマーの共重合体以外の他の重合体が、前記共重合体と重合しない形態で高分子マトリックスに含まれていてもよい。他の重合体としては、ポリビニルアルコールやセルロース誘導体等が挙げられる。高分子マトリックス100重量部中に占める他の重合体の割合は、40重量部未満であることが好ましい。
(2)水
水は、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート100重量部中に5〜99重量部含まれることが好ましい。含有量が5重量部未満の場合、アルカリ成分を含有できる量が少なくなるため、内部抵抗が高くなり、出力が低下しやすくなるため好ましくない。99重量部より多いと、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの強度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。より好ましい含有量は10〜95重量部であり、更に好ましい含有量は20〜90重量部である。
水にはアルカリ成分が溶解している。アルカリ成分が溶解していることで、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが低インピーダンスとなり、蓄電池用の電解質に使用可能となる。アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。アルカリ成分は、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。アルカリ成分の溶解量は、水100重量部に対して、70重量部までの量であることが好ましい。溶解量が70重量部より多い場合、電解質濃度が高くなりすぎるため、電池の内部抵抗が高くなることがある。溶解量は、4〜70重量部とすればよい。
また、水には酸化物が溶解していてもよい。酸化物を溶解させることで、自然放電を抑制できる。酸化物としては、酸化亜鉛等が挙げられる。
(3)その他の成分
(a)多価アルコール
アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートは、多価アルコールを含むことで、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの保水性を向上できる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールの他、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体が挙げられる。多価アルコールは、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
多価アルコールの含有量は、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート100重量部に対して、1〜70重量部であることが好ましい。1重量部より少ないと、十分な保水性が得られず、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの安定性が低下することがある。70重量部より多いと、高分子マトリックスが保持できる多価アルコールの量を超えてしまうことがあるため、多価アルコールがブリードアウトして物性変動が生じることがある。より好ましい含有量は2〜65重量部であり、更に好ましい含有量は5〜60重量部である。
(b)支持材
アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートは、織布、不織布、多孔質シート等の支持材を含んでいてもよい。支持材を含むことで、シートの形状を容易に維持できる。支持材の材質としては、セルロース、絹、麻等の天然繊維やポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、それらの混紡が挙げられる。アルカリ成分を含ませる場合、アルカリ成分により分解する成分を持たないレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維、それらの混紡が好ましい。支持材は、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの表面、裏面及び中間のいずれに位置していてもよい。
(4)アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの製造方法
アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートは、例えば、
(i)水、多価アルコール、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマー、2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマー及び重合開始剤を含むハイドロゲル前駆体をシート状に成形する工程(成形工程)
(ii)単官能性モノマー及び多官能性モノマーを重合させることによりハイドロゲルシートを得る工程(重合工程)
(iii)ハイドロゲルシートにアルカリ成分を含有させる工程(含有工程)
を経ることにより製造できる。
(i)成形工程
この工程での重合開始剤には、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれも使用できる。この内、重合前後での成分の変化の少ない光重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア1173,BASF・ジャパン社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:イルガキュア184,BASF・ジャパン社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959,BASF・ジャパン社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:イルガキュア907,BASF・ジャパン社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:イルガキュア369,BASF・ジャパン社製)等が挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
重合開始剤の使用量は、全モノマー(単官能性モノマー、多官能性モノマー及び任意に他のモノマー)の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましい。使用量が0.1重量部未満の場合、重合反応が十分に進行せず、得られたハイドロゲルシート中に、未重合のモノマーが残存することがある。5重量部より多いと、重合反応後の重合開始剤の残物により、臭気を帯びたり、残物の影響により物性が低下したりすることがある。より好ましい使用量は0.2〜3重量部であり、更に好ましい使用量は0.4〜1.5重量部である。
ハイドロゲル前駆体のシート状への成形は、例えば、(ア)ハイドロゲル前駆体を型枠に注入する方法、(イ)保護フィルム間にハイドロゲル前駆体を流し込み、一定の厚みに保持する方法、(ウ)保護フィルム上にハイドロゲル前駆体をコーティングする方法、等が挙げられる。方法(ア)は、任意の形状のハイドロゲルシートを得ることができる利点がある。方法(イ)及び(ウ)は、比較的薄いハイドロゲルシートを得ることができる利点がある。支持材を含むハイドロゲルシートは、方法(ア)により製造することが適切である。
なお、ハイドロゲル前駆体には、上記の他のモノマー、添加剤等が含まれていてもよい。
(ii)重合工程
シート状に成形されたハイドロゲル前駆体を熱付与又は光照射により重合させることでハイドロゲルシートを得ることができる。熱付与及び光照射の条件は、ハイドロゲルシートを得ることができる限り、特に限定されず、一般的な条件を採用できる。
なお、以下の実施例1では、単官能性モノマーとしてアクリル酸を、多官能性モノマーとしてジビニルベンゼンを使用してハイドロゲルシートが得られている。ここで、特開2003−178797号公報では、これらの2種のモノマーは、溶媒を使用しない塊状重合で重合可能であるが、この場合、重合時の温度制御ができず、両モノマーを実用的なレベルで均質に重合できない、とされている。しかしながら、本願の発明者等によれば、そのようなことはなく、保湿剤として添加した多価アルコールが相溶化剤として働くことで、意外にも液系で重合可能であることを見出している。
(iii)含有工程
含有工程では、重合後のハイドロゲルシートを、アルカリ水溶液に浸漬することで、ハイドロゲルシート中の水にアルカリ水溶液中のアルカリ成分が溶解される。この浸漬は、所望するアルカリ成分量のアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを得るための条件下で行われる。例えば、浸漬温度としては、4〜80℃の冷却、常温(約25℃)及び加温下で行うことができる。浸漬時間は、常温下では、6〜336時間とすることができる。浸漬時間が6時間より短いと、アルカリ成分の含有が不十分となることがある。336時間より多いと必要時間が多くなり生産性が悪くなることがある。
浸漬後に、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを乾燥させることで、含水量の調整を行ってもよい。その調整としては、例えば、浸漬前後のハイドロゲルシートの重量をほぼ同一にすることが挙げられる。
(正極及び負極)
正極及び負極(併せて電極ともいう)は、アルカリ亜鉛蓄電池に通常使用されているものをいずれも使用できる。アルカリ亜鉛蓄電池の正極活物質としては、一次電池や二次電池の正極活物質として通常用いられるものを用いることができ、酸素、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等のニッケル化合物、二酸化マンガン等のマンガン化合物、酸化銀、鉄含有化合物等を使用できる。これらの中でも、酸素、ニッケル化合物、又は、マンガン化合物が好ましい。負極活物質としては亜鉛又は酸化亜鉛を使用できる。負極には、酸化鉛、酸化インジウム、酸化ビスマスなどの酸化物を添加することができる。これらの酸化物の添加により、水素過電圧を大きくし、充電時の水素発生副反応を抑制することができる。正極及び負極は、銅、銅めっき、ニッケル、ニッケルめっき、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等からなる集電体上に形成されていてもよい。
正極及び負極の固体活物質は、板状、膜状、粒子状等の各種形態を取り得る。板状の場合は、集電体を必ずしも備える必要はない。膜状の場合は、集電体上に蒸着法やめっき法、電析法等の公知の方法により電極を形成できる。粒子状の場合は、結着材と混合して箔状の集電体上に塗布することや、多孔状の集電体に充填することで電極を形成できる。集電体としては、カーボンペーパー、金属メッシュ等の多孔質構造、網目状構造、繊維、不織布等、従来から集電体として用いられる形態の材料を、特に限定されず用いることができる。たとえば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン等から形成した金属メッシュを用いることができる。結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース、アクリル系樹脂、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。また、粒子状の場合は、導電材を加えることで、負極の導電性を向上させてもよい。導電材としては、黒鉛、グラッシーカーボン、アモルファス炭素、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、炭素繊維、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、バルカン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
正極活物質に酸素を用いる場合は、上記の固体活物質に替えて空気極触媒を用いて同様の正極(空気極)を形成しうる。空気極触媒材料としては、負極で生成した電子を受け取り、酸素を還元する物質であれば、種々の触媒を何れも用いることができる。白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウムなどの貴金属、これら貴金属を主成分とする貴金属合金、およびこれら貴金属を主成分とする酸化物、ランタンマンガナイト等のペロブスカイト型複合酸化物、Mn、Mn等のマンガン低級酸化物、あるいは活性炭、カーボン、カーボンナノチューブ等の炭素系材料は、酸素還元能と導電性を兼ね備えており好ましい。
(蓄電池の構成)
正極、負極、及び正極と負極間に挟持されたアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートから構成される積層体は、セルと称される。このセルは、蓄電池内に複数存在してもよい。複数のセルは、直列及び/又は並列に接続されていてもよい。セルを電池容器の中に収納し、蓄電池とする。電池容器を密閉し、セルを外気から遮断することで密閉型蓄電池とすることができる。正極活物質に酸素を用いる電池を、空気電池と称する。特に、繰り返し充放電が可能な空気電池を空気蓄電池と称する。空気電池は空気極が十分に空気と接触可能な構造を要する。上記の構造を達成しうる形状として、空気極が直接空気に面する開放型空気電池や、電池容器を密閉し、別途、空気の導入管及び排気管を設けた形状が挙げられる。
(密閉型蓄電池の構成)
セルを蓄電池に使用される各種の電池容器内に配置する。電池容器の形状としては、例えば、コイン型、角型、平板型、円筒型、ラミネート型等が挙げられる。円筒型や角型の蓄電池を作成する場合、セルは、その平面形状を短冊状とし、巻き取ることで電池容器内に配置してもよい。
セルの正極及び負極は、電池容器の正極外部端子及び負極外部端子にそれぞれ接続される。電池容器は、セルを外気より遮断するために密封される。密封の方法は、円筒型の場合、電池容器の開口部に樹脂製のパッキンを有する蓋をはめ込み、電池容器と蓋とをかしめる方法が一般的である。また、角型の場合、金属性の封口板と呼ばれる蓋を開口部に取りつけ、溶接を行う方法を使用できる。これらの方法以外に、結着材で密封する方法、ガスケットを介してボルトで固定する方法も使用できる。更に、金属箔に熱可塑性樹脂を貼り付けたラミネートフィルムで密封する方法も使用できる。なお、密封時にアルカリ水溶液注入用の開口部を設けてもよい。開口部を設けた場合、そこからアルカリ水溶液を注入した後、開口部を封止すればよい。
(空気電池の構成)
セルを蓄電池に使用される各種の電池容器内に配置する。電池容器の形状としては、例えば、コイン型、角型、平板型、円筒型、ラミネート型等が挙げられる。たとえば、コイン型の開放型空気電池を製造する場合は、負極容器に負極、その上にアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを配置し、次に、空気極を配置し、次に、空気を取り込むために開孔した空気極側電池容器を配置し、これらを最後にかしめる方法等を挙げることができるが、これに限定されない。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
実施例1
<アルカリ水溶液含有前のハイドロゲルシート製造>
アクリル酸(日本触媒社製)20重量部、ジビニルベンゼン(新日鉄住金化学社製)0.20重量部、グリセリン(日本油脂社製)60重量部、イオン交換水19.80重量部、重合開始剤としてイルガキュア1173(BASF・ジャパン社製)0.20重量部を容器に入れて混合し、ハイドロゲルシート前駆体を作製した。次に、ハイドロゲルシート前駆体を150μm厚のポリプロピレン/ポリエチレン混合サーマルボンド不織布(シンワ社製)に含浸した。含浸後、剥離性PETフィルムで挟み込み、小型UV重合機(JATEC社製、J−cure1500、メタルハライドランプ型名MJ−1500L)にてコンベアー速度0.4m/min、ワーク間距離150mmの条件でエネルギー1500mJ/cmの紫外線を照射する工程を3回行うことで、150μm厚のアルカリ水溶液含有前のハイドロゲルシートを作製した。
<直流分極測定>
2枚の300μm厚の亜鉛極板間に上記アルカリ水溶液含有前のハイドロゲルシートを挟持し、更にアクリル板で亜鉛極板を挟持して固定することで直流分極測定用セルを作製した。亜鉛極板間はスペーサーを用いて間隔200μmとなるように調整した。この直流分極測定用セルを、酸化亜鉛を飽和溶解させた4mol/Lの水酸化カリウム水溶液に室温で72時間浸漬することで、ハイドロゲルシートにアルカリ成分を含有させてアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを得た。ハイドロゲルシートにアルカリ成分を含有させた直流分極測定用セルの亜鉛極板間に1mA/cmの直流定電流を通電させ、電圧の変化を経時観察した。通電時間毎の電圧の変化を図2(a)に示す。なお、電圧が0.01V以上であることを通電状態(短絡が防止できている状態)とした。図2(a)から、1500分程度までは、成長した亜鉛析出物の成長による短絡を防止できていることがわかる。
<非破壊検査用X線CTシステムでの測定>
グラッシーカーボンを樹脂製ガイドに圧入し、その表面をエメリー紙#2000で研磨し、負極基材とした。この負極基材の上にアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを乗せ、先端に開口部を有した樹脂製おさえで固定し、負極充電試験片とした。この負極充電試験片と、白金線からなる正極とを、酸化亜鉛を飽和溶解させた4mol/Lの水酸化カリウム水溶液に室温で72時間浸漬し電解セルを構築した。電解セルの概略図を図3(a)に示す。図3(a)中、11はグラッシーカーボン、12は樹脂製ガイド、13はアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート、14は樹脂製おさえ、15は開口部、16は白金線、17は酸化亜鉛を飽和溶解させた4mol/Lの水酸化カリウム水溶液を意味する。この電解セルを用いて、負極基材1cmあたり1mAの定電流で2時間通電した。2時間通電後の負極充電試験片をX線CTスキャナ(東芝社製、TOSCANER−32300μFD、管電圧140kV、管電流80μA)を用いてX線CT画像を取得した。取得した画像を図3(b)に示す。図3(b)中、18は負極基材、19はアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート、20は亜鉛析出物を意味する。X線CTスキャナの解析ソフト(VG Studio Max2.2、独国Volume Graphics社)による測長から、成長した亜鉛析出物の高さは70〜80μm(画素分解能9μm)であった。また、亜鉛析出物は負極基材とアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートの界面に存在し、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート内部には侵入してないことが認められた。
<ニッケル−亜鉛蓄電池の作製及び充放電サイクル特性の測定>
酸化亜鉛88重量部、酸化鉛2重量部、導電助剤としてアセチレンブラック5重量部、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5重量部を混合後、適当量のイオン交換水を加えて、負極合剤を調製した。合剤を銅網(100メッシュ)に固定し、60℃で1時間以上乾燥後したものを負極に用いた。負極の厚さは平均300μmとした。
負極の両面を上記アルカリ水溶液含有前のハイドロゲルシートで挟み込み、その外側に汎用のニッケル−水素蓄電池より取り出した水酸化ニッケル正極を配し、更に全体をアクリル板で固定した。水酸化ニッケル正極はあらかじめ予備充電したものを用い、正極容量を負極容量に対して大過剰とした負極容量規制の電池とした。得られた固定物を4mol/Lの水酸化カリウム水溶液に室温で72時間浸漬することで、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを得ると共に充放電サイクル特性の測定用のニッケル−亜鉛蓄電池セルを得た。ニッケル−亜鉛蓄電池セルを1/4C率で1時間充電した後、1/2C率で放電する充放電サイクル試験に付した。充放電サイクルは充電1時間及び放電1時間とし、放電カットオフ電圧は1.0Vとした。ここで1C率とは負極の全容量を1時間で放電又は充電できるだけの電流量である。例えば、負極の容量が100mAhとすると1C率は100mA、1/4C率は25mAとなる。得られた結果を図4(a)に示す。図4(a)から、充放電サイクルを10回程度繰り返すことが可能であることがわかる。
<空気亜鉛蓄電池の作製及び充放電サイクル特性の測定>
酸化亜鉛88重量部、酸化鉛2重量部、導電助剤としてアセチレンブラック5重量部、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5重量部を混合後、適当量のイオン交換水を加えて、負極合剤を調製した。合剤を銅網(100メッシュ)に固定し、60℃で1時間以上乾燥したものを負極に用いた。負極の厚さは平均300μmとした。
空気極触媒にLaMn0.5Co0.5の化学式で表されるペロブスカイト酸化物80重量部、導電助剤としてアセチレンブラック10重量部、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)10重量部を混合して作製したペーストを、ニッケル金網(200メッシュ)に塗工して空気極を作製した。上記アルカリ水溶液含有前のハイドロゲルシートを4mol/Lの水酸化カリウム水溶液に室温で72時間浸漬することで、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを得た。負極の両面を得られたアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートで挟み込み、片側に空気極を配置し、更にアクリル板で固定して空気亜鉛蓄電池(空気電池)を作製した。空気極側のアクリル板には空気取り込み穴を開けた。あらかじめ空気電池を充電電流0.1C率で3時間30分充電し、その後、更に充電電流0.1C率で3時間充電した後、放電電流0.1C率で3時間放電した。この充放電試験を5回繰り返した。得られた結果を図5に示す。図5から、アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートをセパレーターとして用いる空気電池では可逆的に充放電が行えることがわかる。
比較例1
アルカリ水溶液含有前のハイドロゲルシートに代えて汎用のニッケル−水素蓄電池より取り出した不織布セパレーターを使用すること以外は実施例1と同様にして直流分極測定、非破壊検査用X線CTシステムでの測定、ニッケル-亜鉛蓄電池の充放電サイクル特性の測定を行った。直流分極測定の結果を図2(b)に、非破壊検査用X線CTシステムでの測定で取得したX線CT画像を図3(c)に示す。図3(c)中、21は負極基材、22は不織布セパレーター、23は亜鉛析出物を意味する。また、ニッケル-亜鉛蓄電池の充放電サイクル特性の測定結果を図4(b)に示す。
図2(b)から、成長した亜鉛析出物による短絡が測定の開始直後120分程度から生じていることがわかる。図3(c)より、X線CTスキャナの解析ソフト(VG Studio Max2.2、独国Volume Graphics社)による測長から、成長した亜鉛析出物の高さは150〜250μmであり、一部は不織布セパレーターを貫通して上部まで成長していた。また、X線CT画像より、亜鉛析出物はセパレーター層内部への侵入が認められる。これは、不織布の隙間に沿って亜鉛析出物が成長していることを示している。また、図4(b)から、充放電サイクルを2回以上繰り返すことができないことがわかる。
充放電サイクルを、実施例1では10回程度繰り返すことができ、比較例1では2回以上繰り返すことができないのは、以下の理由によると発明者等は考えている。
1サイクル目の放電時には、下記式(1)の反応により亜鉛酸イオン(Zn(OH) 2−)が生成し、つづいて下記式(2)の反応がおこり、酸化亜鉛(ZnO)が生成する。
Zn+4OH → Zn(OH) 2−+2e (1)
Zn(OH) 2−→ ZnO+2OH+HO (2)
また、充電時には、下記式(3)の反応により、負極表面の酸化亜鉛が反応し、亜鉛が負極表面に析出する。
ZnO+HO+2e → Zn+2OH (3)
不織布セパレーターを使用した場合は、亜鉛酸イオンが電解液中に自由に拡散する。よって、充電時に、上記式(2)が負極表面で進行せず、酸化亜鉛が負極表面に十分析出しない。従って、上記式(3)が進行せず、放電に必要な亜鉛が不足するため、結果として充放電を2回以上繰り返すことができない。
これに対して、ハイドロゲルシートは、不織布セパレーターと異なり、亜鉛酸イオンが電解液中で自由に拡散することを防ぎ、負極付近で亜鉛酸イオンを留める(負極近傍の亜鉛酸イオンを濃化する)ことが可能となる。よって、上記式(2)が負極表面で進行し、亜鉛を酸化亜鉛として負極表面に固定できるため、充電反応に伴う上記式(3)が進行し、結果として充放電サイクル数を10回以上に増やすことができる。
1 正極、2 負極、3 亜鉛析出物、4 不織布製セパレーター、5 亜鉛析出物の成長方向、6 アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート製セパレーター、11 グラッシーカーボン、12 樹脂製ガイド、13 アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート、14 樹脂製おさえ、15 開口部、16 白金線、17 酸化亜鉛を飽和溶解させた4mol/Lの水酸化カリウム水溶液、18及び21 負極基材、19 アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート、20及び23 亜鉛析出物、22は不織布セパレーター

Claims (6)

  1. 正極、亜鉛を含む負極、及びそれらに挟持されたアルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートを備え、
    前記アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが、それを間隔200μmの亜鉛極板間に位置した状態で、前記亜鉛極板間に1mA/cm2の直流定電流を通電した場合、500分間以上通電しうる性質を有し、空隙を備えないことを特徴とするアルカリ亜鉛蓄電池。
  2. 前記アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが、それを負極表面に固定し、亜鉛を含むアルカリ水溶液中に浸漬した状態で、前記負極に1mA/cm2の直流定電流を2時間通電することで、前記負極表面に析出させた亜鉛析出物を非破壊検査用X線CTシステムで測定した場合、前記亜鉛析出物の高さを100μm以下としうる請求項1に記載のアルカリ亜鉛蓄電池。
  3. 前記アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが、水と、前記水に溶解したアルカリ成分と、それらを含有した高分子マトリックスとから構成されている請求項1又は2に記載のアルカリ亜鉛蓄電池。
  4. 前記高分子マトリックスが、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーと2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体を含み、前記共重合体がその主鎖内にエステル結合及びアミド結合を備えず、かつ前記主鎖に結合する親水性基を有する請求項3に記載のアルカリ亜鉛蓄電池。
  5. 前記アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシートが、10〜500μmの厚さを有する請求項1〜4のいずれか1つに記載のアルカリ亜鉛蓄電池。
  6. 前記高分子マトリックスが、前記アルカリ水溶液含有ハイドロゲルシート100重量部中に、1〜30重量部含まれる請求項3〜5のいずれか1つに記載のアルカリ亜鉛蓄電池。
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