JP2014165159A - 二次電池用多孔膜、二次電池多孔膜用スラリー、及び二次電池用多孔膜の製造方法、並びに二次電池用電極、二次電池用セパレータ、及び二次電池 - Google Patents

二次電池用多孔膜、二次電池多孔膜用スラリー、及び二次電池用多孔膜の製造方法、並びに二次電池用電極、二次電池用セパレータ、及び二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】二次電池用多孔膜において、高温短絡防止性能を十分に向上すると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちを更に抑制して二次電池用多孔膜を用いて構成した二次電池のサイクル特性を向上することが可能な、二次電池用多孔膜を提供する。
【解決手段】重合性単量体と水性媒体とを含むエマルジョンにシード粒子を添加して、シード粒子に重合性単量体を吸収させる工程、末端にチオール基を有する水溶性高分子をエマルジョンに添加する工程、及び吸収させた重合性単量体を重合させる工程を経て得られる樹脂粒子である非導電性粒子、および多孔膜用バインダーを含む二次電池用多孔膜である。
【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池用多孔膜、二次電池多孔膜用スラリー、及び二次電池用多孔膜の製造方法、並びにかかる二次電池用多孔膜を用いた二次電池用電極、二次電池用セパレータ、及び二次電池に関するものである。
二次電池、なかでもリチウムイオン二次電池は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。リチウムイオン二次電池には、一般に正極と負極との間の短絡を防ぐためにセパレータが用いられている。通常のセパレータは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の材料からなり、200℃以下で溶融する物性を有している。そのため、電池が高温になる場合には、セパレータは収縮や溶融などの体積変化を起こす虞がある。かかる現象は、正極及び負極の短絡、電気エネルギーの放出などを招くおそれがある。
したがって、セパレータや、電極(正極及び負極)上に、これらの耐熱性や強度を向上させることができる多孔膜を設けることが提案されてきた。このような多孔膜には、有機微粒子や無機微粒子などの非導電性粒子をバインダーで結着して形成したものがある。ここで、非導電性粒子のなかでも、有機微粒子は、無機微粒子に比べ、多孔膜に水分及び金属イオンを混入させて電池性能に悪影響を及ぼすおそれが低いため、電池性能の観点からして、多孔膜への使用に適している。
しかし、有機微粒子を含有する多孔膜は、強度が低く、高温の使用環境下での電池の短絡を防止する性能が低いという問題があった。また、有機微粒子を含有する多孔膜は、膜厚の分布及び強度の分布を均一にすることが難しいため、部分的な割れが生じやすく、また、二次電池の製造時に多孔膜を裁断及び湾曲させる際に粉落ち(多孔膜からの微小な粉体の脱落)が生じやすかった。そして、粉落ち等が生じると、例えばサイクル特性などの二次電池の性能が低下するという問題があった。
そこで、従来、有機微粒子を含有する多孔膜について、高温環境下での電池の短絡を防止する性能を高めると共に、膜厚及び強度の分布を均一化する技術が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、二次電池用多孔膜に含まれる有機微粒子の形状等のばらつきを所定範囲内とすることで、二次電池用多孔膜の高温での短絡を低減し、強度の分布を均一とすることができる。
国際公開第2012/020737号
しかし、近年では、電池の更なる高性能化が求められている。そのため、有機微粒子を含有する多孔膜についても、高温環境下での電池の短絡を防止する性能(以下、「高温短絡防止性能」と称することがある。)を更に高めると共に、粉落ちの発生を更に抑制してサイクル特性などの二次電池の性能を向上し得るようにすることが求められている。
かかる点に鑑み、本発明は、二次電池用多孔膜において、高温短絡防止性能を十分に向上すると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちを更に抑制して当該二次電池用多孔膜を用いて構成した二次電池のサイクル特性などの電池性能を更に向上することが可能な、二次電池用多孔膜を提供することを目的とする。また、本発明はかかる二次電池用多孔膜を提供する二次電池多孔膜用スラリー及び二次電池用多孔膜の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、かかる二次電池用多孔膜を有する二次電池用電極、二次電池用セパレータ、及び二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、非導電性粒子として用いる有機微粒子をシード重合により調製する際に、チオール基を末端に有する水溶性高分子を使用することにより、二次電池用多孔膜において、有機微粒子と多孔膜用バインダーとの結着性が改善され、多孔膜の強度を向上し得ることを見出した。そして、有機微粒子と多孔膜用バインダーとの結着性が改善されて多孔膜の強度が向上する結果、高温短絡防止性能が十分に向上すると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちが更に抑制され、ひいては、当該二次電池用多孔膜を用いた二次電池のサイクル特性なども更に向上することを確認して、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用多孔膜は、非導電性粒子および多孔膜用バインダーを含む二次電池用多孔膜であって、前記非導電性粒子が、重合性単量体と水性媒体とを含むエマルジョンにシード粒子を添加して、前記シード粒子に前記重合性単量体を吸収させる工程、末端にチオール基を有する水溶性高分子を前記エマルジョンに添加する工程、及び前記吸収させた重合性単量体を重合させる工程を経て得られる樹脂粒子であることを特徴とする。このように、シード重合を用いて調製した樹脂粒子であって、チオール基を有する水溶性高分子をエマルジョンに添加して調製した樹脂粒子を非導電性粒子として用いれば、高温短絡防止性能を十分に向上させると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちを十分に抑制して、当該二次電池用多孔膜を用いて構成した二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
ここで、本発明の二次電池用多孔膜は、前記末端にチオール基を有する水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類及びポリビニルピロリドンのチオール誘導体からなる群から選ばれるものであることが好ましい。これらの水溶性高分子を用いることにより、高温短絡防止性能を更に向上させると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちを更に抑制することができるからである。
また、本発明の二次電池用多孔膜は、前記多孔膜用バインダーが(メタ)アクリル重合体であり、前記二次電池用多孔膜中の前記多孔膜用バインダーの含有割合が、1〜20質量%であることが好ましい。二次電池用多孔膜に、多孔膜用バインダーとして(メタ)アクリル重合体を1〜20質量%の範囲で配合することにより、二次電池用多孔膜の強度を十分に向上させるとともに、二次電池用多孔膜における空隙を確保することができ、当該二次電池用多孔膜を用いて構成した二次電池のサイクル特性の低下を抑制することができるからである。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池多孔膜用スラリーは、非導電性粒子、多孔膜用バインダー及び水分散媒を含み、前記非導電性粒子が、重合性単量体と水性媒体とを含むエマルジョンにシード粒子を添加して、前記シード粒子に前記重合性単量体を吸収させる工程、末端にチオール基を有する水溶性高分子を前記エマルジョンに添加する工程、及び前記吸収させた重合性単量体を重合させる工程を経て得られる樹脂粒子であることを特徴とする。このように、シード重合を用いて調製した樹脂粒子であって、チオール基を有する水溶性高分子をエマルジョンに添加して調製した樹脂粒子を非導電性粒子として二次電池多孔膜用スラリーに含有させることにより、当該二次電池多孔膜用スラリーを用いて製造した二次電池用多孔膜の温短絡防止性能を十分に向上させると共に、粉落ちを十分に抑制して、かかる二次電池用多孔膜を用いて構成した二次電池のサイクル特性を更に向上させることができる。
また、本発明の二次電池多孔膜用スラリーにおいて、前記末端にチオール基を有する水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類及びポリビニルピロリドンのチオール誘導体からなる群から選ばれることが好ましい。これらの水溶性高分子を用いることにより、高温短絡防止性能を更に向上させると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちを更に抑制することができるができるからである。
また、本発明の二次電池多孔膜用スラリーにおいて、前記多孔膜用バインダーが(メタ)アクリル重合体であり、固形分換算で、前記多孔膜用バインダーの含有割合が、1〜20質量%であることが好ましい。固形分換算で、二次電池多孔膜用スラリー中に、多孔膜用バインダーとして(メタ)アクリル重合体を1〜20質量%の範囲で配合することにより、当該二次電池多孔膜用スラリーを用いて製造した二次電池用多孔膜の強度を十分に向上させるとともに、二次電池用多孔膜における空隙を確保することができ、かかる二次電池用多孔膜を用いて構成した、二次電池のサイクル特性の低下を抑制することができるからである。
なお、固形分換算での二次電池多孔膜用スラリー中の多孔膜用バインダーの含有割合は、多孔膜用スラリーの固形分全量中の、非導電性粒子、多孔膜用バインダー、及び任意成分(多孔膜の任意成分として上述した成分)の含有割合は、本発明の多孔膜について上述した通りの割合とすることができる。
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用多孔膜の製造方法は、上述の二次電池多孔膜用スラリーのいずれかを基材上に塗布してスラリー層を形成する工程と、前記スラリー層を乾燥する工程と、を含むことが好ましい。上述したような二次電池多孔膜用スラリーを基材上に塗布し、乾燥して二次電池用多孔膜を製造することで、高温短絡防止性能が高く、かつ、二次電池用多孔膜の粉落ちを十分に抑制可能な二次電池用多孔膜を得ることができる。
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用電極は、集電体、 電極活物質及び電極合剤層用結着剤を含み、前記集電体上に付着する電極合剤層、並びに前記電極合剤層の表面に積層された、上述の二次電池用多孔膜のいずれかを有することを特徴とする。二次電池用電極が上述のような二次電池用多孔膜を有することにより、当該二次電池用電極を備える二次電池の高温短絡防止性能およびサイクル特性を向上させることができる。
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用セパレータは、有機セパレータ層、及び前記有機セパレータ層上に積層された上述の二次電池用多孔膜の何れかを有することを特徴とする。二次電池用セパレータが上述のような二次電池用多孔膜を有することにより、当該二次電池用セパレータを備える二次電池の高温短絡防止性能およびサイクル特性を向上させることができる。
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかが、上述の二次電池用多孔膜の何れかを有することを特徴とする。二次電池の正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかが上述のような二次電池用多孔膜を有することにより、高温短絡防止性能およびサイクル特性を向上させることができる。
本発明によれば、二次電池用多孔膜において、高温短絡防止性能を十分に向上すると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちを更に抑制して二次電池用多孔膜を用いて構成した二次電池のサイクル特性などの電池性能を更に向上することが可能な、二次電池用多孔膜を提供することができる。また、本発明によれば、高温短絡防止性能が高く、かつ、粉落ちの低減された二次電池用多孔膜を提供する二次電池多孔膜用スラリー及び二次電池用多孔膜の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、かかる二次電池用多孔膜を有する、高温短絡防止性能およびサイクル特性が改善された二次電池用電極、二次電池用セパレータ、及び二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の二次電池多孔膜用スラリーは、二次電池用の多孔膜を形成する際に用いられる。そして、本発明の二次電池用多孔膜の製造方法は、本発明の二次電池多孔膜用スラリーを調製し、当該二次電池多孔膜用スラリーから二次電池多孔膜を製造する際に用いることができる。
また、本発明の二次電池用電極、二次電池用セパレータ、及び二次電池は、本発明の二次電池用多孔膜を用いたことを特徴とする。
(二次電池用多孔膜)
本発明の二次電池用多孔膜は、非導電性粒子および多孔膜用バインダーを含む二次電池用多孔膜である。そして、本発明の二次電池用多孔膜は、非導電性粒子が、重合性単量体と水性媒体とを含むエマルジョンにシード粒子を添加して、シード粒子に重合性単量体を吸収させる工程、末端にチオール基を有する水溶性高分子をエマルジョンに添加する工程、及び吸収させた重合性単量体を重合させる工程を経て得られる樹脂粒子であることを特徴とする。
そして、上述した所定の樹脂粒子を非導電性粒子として用いた本願の二次電池用多孔膜では、多孔膜用バインダーと所定の樹脂粒子(非導電性粒子)との結着性が改善され、多孔膜の強度が向上する。従って、高温短絡防止性能が十分に向上すると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちが更に抑制され、ひいては、当該二次電池用多孔膜を用いた二次電池の電池性能(例えば、サイクル特性など)も更に向上する。
<重合性単量体>
非導電性粒子の調製に使用する重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン又はその誘導体;塩化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸又はそのエステル誘導体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類等の単官能性単量体の他、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体が挙げられる。これら重合性単量体は、単独で用いられてもよく、二種以上併用されてもよい。
なお、本願において、「(メタ)アクリル」はアクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
<水性媒体>
非導電性粒子の調製に使用する水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
<シード粒子>
非導電性粒子の調製に使用するシード粒子としては、スチレン系、スチレン・ブタジエン系、(メタ)アクリル酸エステル系、酢酸ビニル系、スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合体等の重合体からなる粒子が挙げられる。また、シード粒子は、上述した重合性単量体と水性媒体とを含むエマルジョンに含まれる重合性単量体の一部を予め重合させることにより形成したものであっても良い。
シード粒子としては、個数平均粒子径0.05μm〜1.0μmで、かつCv値〔(粒子径標準偏差/平均粒子径)×100で表される〕が15%以下の非架橋型の粒子が好ましい。シード粒子は、特に限定されず、公知の方法により製造できる。例えば、ソープフリー乳化重合又は分散重合法等を用いて製造できる。 シード粒子の個数平均粒子径が1.0μmを超えると、二次電池用多孔膜の厚みが大きくなり、二次電池の内部抵抗が高くなる虞がある。また、シード粒子の個数平均粒子径が0.05μm未満となると、二次電池用多孔膜に適度な空孔ができず、二次電池の内部抵抗が高くなる虞がある。
<末端にチオール基を有する水溶性高分子>
非導電性粒子の調製に使用する末端にチオール基を有する水溶性高分子としては、水溶性で、末端にチオール基を有する任意の高分子を用いることができる。なかでも、末端にチオール基を有する水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等のチオール誘導体が好ましい。これらの水溶性高分子を用いれば、高温短絡防止性能を更に向上させると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちを更に抑制することができる。なお、これら水溶性高分子のなかでも、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのチオール誘導体が好ましく、特にケン化度80〜98%、重合度50〜3000のポリビニルアルコールが特に好ましい。末端にチオール基を有するポリビニルアルコールとしては、例えば、クラレ社から市販されているポバールMシリーズが挙げられる。ポバールMシリーズ中でも、M115、M205が好適である。
また、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子も末端にチオール基を有する水溶性高分子と併用できる。
<非導電性粒子の製造方法>
重合性単量体を重合して非導電性粒子を得る方法は特に限定されないが、例えば、上述の水性媒体からなる分散媒に重合性単量体及び必要に応じて他の任意の成分を溶解又は分散させてエマルジョンを得て、かかるエマルジョン中で重合する方法を好ましく挙げることができる。
非導電性粒子の製造方法の概略は以下の通りである。
エマルジョンに対してシード粒子を添加し、続いてシード粒子に他の重合性単量体を吸収させ、続いて末端にチオール基を有する水溶性高分子をエマルジョンに添加し、その状態で重合性単量体の重合を行い、非導電性粒子を製造することができる。
以下、非導電性粒子の製造方法を詳細に説明する。
まず、重合性単量体と水性媒体を含むエマルジョンにシード粒子を添加する。エマルジョンは、公知の方法により調製できる。例えば、重合性単量体を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により分散させることで、エマルジョンを得ることができる。エマルジョンは、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、一般の水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。使用可能な重合開始剤は、例えば、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、重合性単量体100質質量部に対して、0.1〜1.0質質量部の範囲で使用することが好ましい。
重合開始剤は、重合性単量体に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られたエマルジョン中の重合性単量体の液滴の粒子径は、シード粒子よりも小さい方が、重合性単量体がシード粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
シード粒子は、エマルジョンに直接添加してもよく、シード粒子を水性分散媒に分散させた形態で添加してもよい。シード粒子のエマルジョンへの添加後、シード粒子へ重合性単量体を吸収させる。この吸収は、通常、シード粒子添加後のエマルジョンを、室温(約20℃)で1〜12時間攪拌することで行うことができる。また、エマルジョンを30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
もちろん、本発明の非導電性粒子を製造するにあたり、エマルジョン中へのシード粒子の添加は、上述したように予め形成しておいたシード粒子をエマルジョン中に投入することにより行ってもよいが、シード粒子をエマルジョン中で形成することにより行ってもよい。当該シード粒子の形成において、重合をさらに複数の段階に分けて行うことも可能である。
具体的には、例えば、エマルジョンに含まれる重合性単量体の一部を用いてシード粒子(1)を形成し、かかるシード粒子(1)と、エマルジョンに含まれる重合性単量体の別の一部を用いてより大きなシード粒子(2)を形成し、さらに、かかるシード粒子(2)と、エマルジョンに含まれる重合性単量体の残余とを用いて、非導電性粒子を形成することができる。このように、シード粒子を2段階の反応で形成し、それからさらに非導電性粒子を形成することにより、安定して所望の粒子径及び所望の粒子径および形状を有する重合体粒子を得られるという利点がある。
シード粒子は、重合性単量体の吸収により膨潤する。シード粒子の膨潤度は、重合性単量体とシード粒子との混合比率を変えることにより調節することが可能である。混合比率は、シード粒子1質量部に対して重合性単量体5〜200質量部の範囲であることが好ましく、10〜100質量部がより好ましい。重合性単量体の混合比率が小さくなると重合による粒子径の増加は小さく、大きくなると完全にシード粒子に吸収されず、水性媒体中で独自に懸濁重合し異常粒子を生成することがある。ここでいう膨潤度とは、膨潤前のシード粒子に対する膨潤後のシード粒子の体積比を意味する。なお、吸収の終了は光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定できる。
そして、非導電性粒子の製造においては、末端にチオール基を有する水溶性高分子がエマルジョンに添加される。末端にチオール基を有する水溶性高分子は、重合性単量体がシード粒子に吸収されている間にエマルジョンに添加されることが好ましい。このようなタイミングで末端にチオール基を有する水溶性高分子をエマルジョンに添加することで、重合性単量体を吸収させたシード粒子の表面近傍において、末端にチオール基を有する水溶性高分子を局在させることができることが推測されるからである。
末端にチオール基を有する水溶性高分子の添加時期は、重合性単量体のシード粒子への吸収の完了時間を100とすると、20〜80の間であることが好ましく、25〜75の間であることがより好ましい。上記添加時期の定義は、例えば、重合性単量体を10時間かけてシード粒子に吸収させる場合、末端にチオール基を有する水溶性高分子の添加時期が吸収開始から2〜8時間の範囲内であることを意味する。
末端にチオール基を有する水溶性高分子の添加量は上記重合性単量体100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.15〜5質量部が更に好ましい。また、末端にチオール基を有する水溶性高分子はそのまま加えても良いが、水に溶解して添加するのが好ましい。このとき水の温度を40〜80℃で溶解すると末端にチオール基を有する水溶性高分子が容易に溶けるので好ましい。水100質量部に対し水溶性高分子を0.1〜10質量部溶解するのが好ましい。また、この時、必要に応じてラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を水に添加してもよい。
次に、シード粒子に吸収させた重合性単量体を重合させることで、樹脂粒子が得られる。そして、このようにして得られた樹脂粒子は、末端にチオール基を有する水溶性高分子をエマルジョンに添加して調製しているので、当該チオール基の作用により、後述する多孔膜用バインダーとの結着性が優れたものとなる。
なお、重合温度は、重合性単量体、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜90℃である。重合反応は、シード粒子に重合性単量体、任意に重合開始剤が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。重合完了後、必要に応じて樹脂粒子を遠心分離して水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥、単離する。
上述のエマルジョンに対して、適宜、重合性単量体、水性媒体及び重合開始剤の他に、任意成分を加えることができる。具体的には、連鎖移動剤、懸濁保護剤、界面活性剤、高分子分散安定剤等の成分を加えることができる。
連鎖移動剤は、樹脂の分子量を調整することを目的として添加される。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素及びα-メチルスチレンダイマー等が使用される。
界面活性剤としては通常のものを用いることができ、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などのアニオン系乳化剤を例示することができる。さらに、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレートなどのノニオン系界面活性剤を併用することも可能である。なお、界面活性剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましい。また、界面活性剤は、シード粒子に重合性単量体と、任意に重合開始剤とを吸収させた後で添加してもよいし、重合性単量体を水系媒体に分散させる時に添加してもよい。分散時の添加によって、分散時の重合性単量体の液滴の分散安定化と重合時の樹脂粒子の分散安定化との両方を得ることができる。
好ましい懸濁保護剤としては、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムあるいは微粉末無機化合物などを挙げることができる。
高分子分散安定剤としては、例えば、ゼラチン、デンプン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等である。またトリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
<非導電性粒子の粒子径>
なお、非導電性粒子として用いる樹脂粒子の粒子径は、シード粒子の粒子径、重合性単量体とシード粒子との混合割合によって自由に設計可能である。本発明では、樹脂粒子は、個数平均粒子径が0.1〜1.0μmの樹脂粒子であることが好ましい。
<多孔膜中の非導電性粒子の含有割合>
本発明の二次電池用多孔膜の全質量を基準とした、非導電性粒子の含有割合の範囲は、その下限が好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。一方上限は好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下である。二次電池用多孔膜中の非導電性粒子の含有割合をこの範囲内とすることにより、非導電性粒子同士が接触部を有しつつ、イオンの移動が阻害されない程度に、非導電性粒子同士の隙間を形成できる。
<多孔膜用バインダー>
本発明の二次電池用多孔膜は、多孔膜用バインダーを含む。
本発明に用いる多孔膜用バインダーとしては、結着性を有するものであれば種々のものを用いることができる。例えば、ジエン重合体、(メタ)アクリル重合体、フッ素重合体、シリコン重合体などが挙げられる。中でも、得られる多孔膜における非導電性粒子の保持性や、柔軟性に優れ、かつ、酸化還元に安定であり寿命特性が優れる電池を得易い点から、(メタ)アクリル重合体が好ましい。(メタ)アクリル重合体は、アルミナ等の無機の粒子ではなく有機の重合体粒子を非導電性粒子として用いる多孔膜において、上記の特性が特に優れるため、本発明において特に好ましく用いうるものである。
(メタ)アクリル重合体とは、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマー由来の重合単位を含む重合体である。
アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、国際公開第2012/020737号に記載のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、電解液に溶出せずに電解液への適度な膨潤によるイオンの伝導性を示すこと、加えて導電性微粒子の分散においてポリマーによる橋架け凝集を起こしにくいことから、アルキル基の炭素数が4〜13のアクリル酸アルキルエステルである、n−ブチルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレートが好ましく、n−ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレートがより好ましい。
(メタ)アクリル重合体における(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の重合単位の含有割合は、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは60〜97.5質量%、特に好ましくは70〜95質量%である。
また、(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の重合単位に加えて他の任意のモノマー由来の重合単位を含むことが好ましい。
任意のモノマー由来の重合単位としては、酸性基を有するビニルモノマー由来の重合単位、α,β−不飽和ニトリルモノマー由来の重合単位、架橋性基を有するモノマー由来の重合単位が挙げられる。
酸性基を有するビニルモノマーとしては、カルボン酸基を有する単量体、水酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、−PO基を有する単量体、−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)を有する単量体、及び低級ポリオキシアルキレン基を有する単量体が挙げられる。また、加水分解によりカルボン酸基を生成する酸無水物も同様に使用することができる。これらの各基を有する単量体としては、国際公開第2012/020737号に記載のものが挙げられる。中でも、二次電池の基材、電極合剤層、及び有機セパレータ層への密着性に優れることからカルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でも、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボン酸基を有する炭素数5以下のモノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸などのカルボン酸基を一分子あたり2つ有する炭素数5以下のジカルボン酸が好ましい。さらには、作製したスラリーの保存安定性が高いという観点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましい。
また、多孔膜用バインダーにおける酸性基を有するビニルモノマー由来の重合単位の含有割合は、好ましくは1.0〜3.0質量%、より好ましくは1.5〜2.5質量%である。
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式CH=CR−COO−(CnH2nO)m−H(mは2ないし9の整数、nは2ないし4の整数、R1は水素又はメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコール(メタ)モノアリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲン及びヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;などが挙げられる。
α,β−不飽和ニトリルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。中でも、多孔膜の機械的強度及び多孔膜中の結着力の向上という観点から、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましい。
また、多孔膜用バインダーにおけるα,β−不飽和ニトリルモノマー由来の重合単位の含有割合は、好ましくは1.0〜50質量%、より好ましくは1.5〜40質量%である。
架橋性基を有するモノマーとしては、架橋性基と、一分子あたり1つのオレフィン性二重結合とを持つ単官能性単量体、一分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を持つ多官能性単量体が挙げられる。
架橋性基と一分子あたり1つのオレフィン性二重結合とを持つ単官能性単量体に含まれる架橋性基としては、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキセタニル基、及びオキサゾリン基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エポキシ基が架橋及び架橋密度の調節が容易な点でより好ましい。
架橋性基を有するモノマーに含まれる、エポキシ基を含有する単量体としては、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を含有する単量体と、ハロゲン原子及びエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
これらの単量体としては、国際公開第2012/020737号に記載のものが挙げられる。中でも、架橋密度が向上しやすいことから、エポキシ基を含有する単量体や一分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体が好ましく、更に架橋密度の向上及び共重合性が高いという理由でアリルアクリレート又はアリルメタクリレート等のアリル基を有するアクリレート又はメタアクリレートが好ましい。
多孔膜用バインダーにおける架橋性基を有するモノマー由来の重合単位の含有割合は、好ましくは0.01〜3.5質量%、より好ましくは0.05〜3.5質量%、特に好ましくは0. 1〜3.5質量%の範囲である。多孔膜用バインダーにおける架橋性基を有するモノマー由来の重合単位の含有割合を前記範囲とすることにより、電解液への溶出を抑制し、優れた多孔膜強度とサイクル特性とを示すことができる。
なお、多孔膜用バインダーは、上述した単量体に基づく重合単位以外に、国際公開第2012/020737号に記載の単量体のような、上述した単量体と共重合可能な単量体に基づく重合単位を含んでいてもよい。
本発明の二次電池用多孔膜の全質量を基準とした、多孔膜用バインダーの含有割合の範囲は、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは、5〜15質量%である。多孔膜用バインダーの含有割合をこのような範囲とすることで、多孔膜の強度を維持するとともに、多孔膜における空隙を確保することができる。その結果、本発明の二次電池用多孔膜を用いて構成した二次電池の高温短絡防止性能と電池性能とを向上することができる。二次電池用多孔膜中の多孔膜用バインダーの含有割合が1質量%未満では、多孔膜の強度が不足し、電池の短絡が発生しやすくなり、また、二次電池用多孔膜中の多孔膜用バインダーの含有割合が20質量%以上では、多孔膜の空隙率が低下し、十分な電池性能が得られない虞がある。
本発明の二次電池用多孔膜においては、非導電性粒子の含有量と、多孔膜用バインダーの含有量との比率は、(非導電性粒子重量)/(多孔膜用バインダー重量)の比として、5〜30の範囲内であることが好ましい。かかる比率をこの範囲とすることにより、耐高温短絡性と、優れたサイクル特性とを両立して維持することができる。
本発明に用いる多孔膜用バインダーは、通常、水分散媒に分散された状態の分散液として調製及び保存され、これを多孔膜用スラリーの製造において材料として使用される。多孔膜用バインダーが分散媒に粒子状で分散している場合において、粒子状で分散しているバインダーの個数平均粒径(分散粒子径)は、50〜500nmが好ましく、70〜400nmがさらに好ましく、最も好ましくは100〜250nmである。多孔膜用バインダーの個数平均粒径がこの範囲であると得られる多孔膜の強度及び柔軟性が良好となる。
多孔膜用バインダーが分散媒に粒子状で分散している場合において、分散液中の固形分濃度は、通常15〜70質量%であり、20〜65質量%が好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。固形分濃度がこの範囲であると、後述する多孔膜用スラリーを製造する際における作業性が良好である。
本発明に用いる多孔膜用バインダーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50〜25℃、より好ましくは−45〜15℃、特に好ましくは−40〜5℃である。多孔膜用バインダーのTgが前記範囲にあることにより本発明の多孔膜が優れた強度と柔軟性を有するため、その結果として該多孔膜を用いた二次電池の出力特性を向上させることができる。なお、多孔膜用バインダーのガラス転移温度は、様々な単量体を組み合わせることによって調製可能である。
本発明に用いるバインダーである重合体の製造方法は特に限定はされず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。重合に用いる重合開始剤としては、たとえば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピパレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α'-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、又は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどがあげられる。
この他に、本発明の二次電池用多孔膜は、国際公開第2012/020737号に記載の、重金属補足化合物、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、増粘剤、消泡剤、及び電解液添加剤等の成分を添加することができる。
<二次電池用多孔膜の製造方法>
本発明の二次電池用多孔膜を製造する方法としては、1)非導電性粒子、多孔膜用バインダー及び分散媒体を含む多孔膜用スラリーを所定の基材上に塗布してスラリー層を得、次いでスラリー層を乾燥する方法;2)非導電性粒子、多孔膜用バインダー及び分散媒体を含む多孔膜用スラリーに基材を浸漬後、これを乾燥する方法;が挙げられる。中でも、1)の方法は、多孔膜の膜厚を制御しやすく好ましい。以下、1)の方法を本発明の二次電池用多孔膜の製造方法として説明する。
<多孔膜用スラリー>
本発明の多孔膜用スラリーは、上述のようにして製造した非導電性粒子、多孔膜用バインダー及び分散媒体としての水分散媒を含む。なお、水分散媒としては、特に限定されることなく、水や、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体を用いることができる。
多孔膜用スラリーの固形分濃度は、該スラリーの塗布、浸漬が可能な程度でかつ、流動性を有する粘度になる濃度に適宜調整することができるが、一般的には10〜50質量%程度である。
固形分以外の成分は、乾燥の工程により揮発する成分であり、前記媒体に加え、例えば、非導電性粒子及び多孔膜用バインダーの調製及び添加に際しこれらを溶解又は分散させていた媒質をも含む。
本発明の多孔膜用スラリーは、本発明の多孔膜を形成するためのものであるので、多孔膜用スラリーの固形分全量中の(すなわち、固形分換算の)、非導電性粒子、多孔膜用バインダー、及び任意成分(多孔膜の任意成分として上述した成分)の含有割合は、本発明の多孔膜について上述した通りの割合とすることができる。
また、多孔膜用スラリーには、非導電性粒子、多孔膜用バインダー、分散媒体(水分散媒)及び多孔膜の任意成分として上述した任意成分のほかに、さらに分散剤や電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤等の任意の成分が含まれていてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
多孔膜用スラリーの製法は、特に限定はされず、上記非導電性粒子、多孔膜用バインダー、及び水分散媒と必要に応じ添加される任意の成分を混合して得られる。
混合装置は、上記成分を均一に混合できる装置であれば特に限定されず、ホモミキサー、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、措潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどを使用することができるが、中でも適度な分散シェアを加えることができる、ホモミキサーを使用することが特に好ましい。
多孔膜用スラリーの粘度は、均一塗工性、スラリー経時安定性の観点から、好ましくは10mPa・s〜10,000mPa・s、更に好ましくは50〜500mPa・sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
本発明において、多孔膜は、膜状の形状を有する。多孔膜は、独立して(即ち、基材による支持を伴わずに)膜としての形状を保ちうる物品であってもよい。しかしながら多孔膜は、独立して膜としての形状を保たない、基材の上に形成される層であってもよい。本発明において、多孔膜は通常後者としうる。多孔膜と、多孔膜の形成に用いた基材との複合体を、そのまま、例えばセパレータや電極として、電池における使用に供することができる。
本発明の多孔膜の製造方法のある態様において、基材は、電池中の構成要素であって、多孔膜を有することが好ましい構成要素である。具体的には、二次電池用の電極若しくは有機セパレータを基材とし、この上に多孔膜を形成することが好ましい。
本発明の多孔膜の製造方法においては、多孔膜は、電極や有機セパレータ層以外の基材上に形成してもよい。本発明の多孔膜を、電極や有機セパレータ層以外の基材上に形成した場合は、多孔膜を基材から剥離し、直接電池を組み立てる時に、電極上や有機セパレータ層上に積層することにより使用することが出来る。この場合、基材としては、公知の剥離フイルム等の、適切な剥離フイルムを用いることができる。
多孔膜用スラリーを基材上へ塗布及び乾燥する方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。中でも、均一な多孔膜が得られる点でディップ法やグラビア法が好ましい。塗布により得られたスラリー層を乾燥する方法としては、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。
塗布により得られたスラリー層の乾燥温度は、使用する媒体の種類によって変えることができる。媒体を完全に除去するために、例えば、N一メチルピロリドン等の揮発性の低い媒体を用いる場合には送風式の乾燥機で120℃以上の高温で乾燥させてもよい。逆に揮発性の高い媒体を用いる場合には100℃以下の低温において乾燥させることもできる。多孔膜を後述する有機セパレータ上に形成する際は、有機セパレータの収縮を起こさずに乾燥させることが必要である為、100℃以下の低温での乾燥が好ましい。
得られる多孔膜の膜厚は、特に限定はされず、多孔膜の用途あるいは適用分野に応じて適宜に設定されるが、薄すぎると均一な膜を形成できず、逆に厚すぎると電池内での体積(重量)あたりの容量(capacity)が減ることから、1〜10μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。
<二次電池用電極>
本発明の二次電池用電極は、集電体と、電極活物質及び電極合剤層用結着剤を含み、集電体上に付着する電極合剤層と、並びに電極合剤層上に積層された本発明の二次電池用多孔膜とを有する。この二次電池用電極は、本発明の二次電池用多孔膜を有しているので、当該二次電池用電極を用いた二次電池の高温短絡防止性能およびサイクル特性を向上させることができる。
<集電体>
集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されず、例えば、国際公開第2012/020737号に記載の材料で構成されうる。
<電極合剤層>
電極合剤層は、電極活物質と、結着剤(電極合剤層用結着剤)とを含む。結着剤を含むことにより電極中の電極合剤層の結着性が向上し、電極の巻き回し時等の工程上においてかかる機械的な力に対する強度が上がり、また電極中の活物質等が脱離しにくくなることから、脱離物による短絡等の危険性が小さくなる。
本発明の二次電池用電極に用いられる電極活物質は、電極が利用される二次電池や電極の種類(正極または負極)に応じて選択すればよい。前記二次電池としては、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池が挙げられる。
本発明の二次電池用電極を、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池の電極用に用いる場合、国際公開第2012/020737号に記載の電極活物質を使用することができる。
電極合剤層用結着剤としては、例えば、国際公開第2012/020737号に記載の様々な樹脂成分や、軟質重合体成分を、同パンフレットに記載の調整粘度及び割合で使用することができる。
なお、集電体上への電極合剤層の形成は、既知の方法を用いて行うことができる。また、電極合剤層上への多孔膜の積層は、前述したようにして行うことができる。
<二次電池用セパレータ>
本発明の二次電池用セパレータは、有機セパレータ層、及び有機セパレータ層上に積層された本発明の二次電池用多孔膜を有する。この二次電池用セパレータは、本発明の二次電池用多孔膜を有しているので、当該二次電池用セパレータを用いた二次電池の高温短絡防止性能およびサイクル特性を向上させることができる。
有機セパレータ層としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂を含んでなるセパレータなどの公知のものが用いられる。有機セパレータ層は、例えば国際公開第2012/020737号の記載に従って得ることができる。
本発明のセパレータは、有機セパレータ層の片面のみに多孔膜を有していてもよく、有機セパレータ層の両面に多孔膜を有していてもよい。
なお、有機セパレータ上への多孔膜の積層は、前述したようにして行うことができる。
<二次電池>
本発明の二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかが、二次電池用多孔膜を有するものである。この二次電池では、本発明の二次電池用多孔膜を有することにより、高温短絡防止性能およびサイクル特性を向上させることができる。
二次電池としては、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池等挙げられるが、安全性向上が最も求められており多孔膜導入効果が最も高いこと、加えてレート特性向上が課題として挙げられていることからリチウムイオン二次電池が好ましい。以下、本発明の多孔膜をリチウムイオン二次電池に使用する場合について説明する。
<二次電池用電解液>
リチウムイオン二次電池用の電解液としては、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。有機溶媒及び支持電解質としては、国際公開第2012/020737号に記載の有機溶媒及びリチウム塩を使用することができる。
<セパレータ及び電極>
セパレータとしては、多孔膜を有する本発明のセパレータを用いることができるが、正極および負極の少なくとも一方が本発明の多孔膜を有する場合には、その他のセパレータを用いることもできる。例えば、有機セパレータ層として上に例示したものをそのままセパレータとして用いることができる。
正極及び負極としては、多孔膜を有する本発明の二次電池用電極を用いることができるが、電極の何れか一方またはセパレータが本発明の多孔膜を有する場合には、その他の電極を用いることもできる。例えば、上で述べた、集電体及びその上に付着する電極合剤層からなる積層物を、そのまま電極として用いることができる。
ただし、本発明の二次電池においては、正極、負極及びセパレータの少なくともいずれか、好ましくは全てが、本発明の多孔膜を有する。
リチウムイオン二次電池の具体的な製造方法としては、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。本発明の多孔膜は正極、負極およびセパレータのいずれかに形成されてなる。また独立で多孔膜のみでの積層も可能である。必要に応じてエキスバンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、偏平型など何れであってもよい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、多孔膜付二次電池用電極及び多孔膜付二次電池用有機セパレータの粉落ち性、多孔膜付二次電池用電極及び多孔膜付二次電池用有機セパレータの信頼性、及び二次電池の高温サイクル特性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
<多孔膜付二次電池用電極の粉落ち性>
多孔膜付二次電池用電極を5cm角で切り出して、500mlのガラス瓶に入れ、振とう機で300rpmにて3時間振とうさせた。振とう前の多孔膜付二次電池用電極の質量をa、振とう後の多孔膜付二次電池用電極の質量をbとし、落ちた粉の比率X[質量%]を下記式で計算し、以下の基準で評価した。
X=(a−b)/a×100 [質量%]
(評価基準)
A:Xが2質量%未満
B:Xが2質量%以上5質量%未満
C:Xが5質量%以上7質量%未満
D:Xが7質量%以上
<多孔膜付二次電池用有機セパレータの粉落ち性>
多孔膜付二次電池用有機セパレータを5cm角で切り出して、500mlのガラス瓶に入れ、振とう機で300rpmにて3時間振とうさせた。振とう前の二次電池用有機セパレータの質量をa、振とう後の二次電池用有機セパレータの質量をbとし、落ちた粉の比率X[質量%]を下記式で計算し、以下の基準で評価した。
X=(a−b)/a×100 [質量%]
(評価基準)
A:Xが1質量%未満
B:Xが1質量%以上3質量%未満
C:Xが3質量%以上5質量%未満
D:Xが5質量%以上
<多孔膜付二次電池用電極の信頼性試験>
有機セパレータ(単層のポリプロピレン製セパレータ、気孔率55%、厚さ25μm)を直径19mmの円形に打ち抜き、非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)の3質量%メタノール溶液中に浸漬して風乾した。一方、測定対象の多孔膜付二次電池用電極を直径19mmの円形に打ち抜いた。これらに電解液を含浸させ、これらを重ねて、一対の円形のSUS板(直径15.5mm)に挟み、(SUS板)/(円形の有機セパレータ)/(円形の多孔膜付二次電池用電極)/(SUS板)という構成に重ね合わせてサンプルを作成した。円形の多孔膜付二次電池用電極は、その多孔膜側の面が有機セパレータ側となるよう配置した。ここで電解液はエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。上述のサンプル及び電解液を2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。振幅10mV、1kHzの周波数の交流を印加しながら、昇温速度1.6℃/分で200℃まで昇温させ、この間のセル抵抗を測定することで短絡の発生状況を確認した。本試験では温度上昇と共にシャットダウンにより抵抗値が上昇し少なくとも1000Ω/cm以上になる。その後、10Ω/cm以下まで急激に低下した場合に短絡が発生したものとした。なお、試験対象の多孔膜付二次電池用電極について、それぞれ10個のサンプルを得て試験を実施し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
A:短絡発生数0個
B:短絡発生数1〜2個
C:短絡発生数3個以上
D:短絡発生数4個以上
<多孔膜付二次電池用有機セパレータの信頼性試験>
多孔膜付二次電池用有機セパレータを直径19mmの円形に打ち抜き、非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)の3質量%メタノール溶液中に浸漬して風乾した。この円形の多孔膜付二次電池用有機セパレータに電解液を含浸させ、一対の円形のSUS板(直径15.5mm)に挟み、(SUS板)/(円形の多孔膜付二次電池用有機セパレータ)/(SUS板)という構成に重ね合わせてサンプルを作成した。ここで電解液はエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。上述のサンプル及び電解液を2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。振幅10mV、1kHzの周波数の交流を印加しながら、昇温速度1.6℃/分で200℃まで昇温させ、この間のセル抵抗を測定することで短絡の発生状況を確認した。本試験では温度上昇と共にシャットダウンにより抵抗値が上昇し、少なくとも1000Ω/cm以上になる。その後、10Ω/cm以下まで急激に低下した場合に短絡が発生したものとした。なお、試験対象の多孔膜付二次電池用有機セパレータのそれぞれについて、10個のサンプルを得て試験を実施し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
A:短絡発生数0個
B:短絡発生数1個
C:短絡発生数2〜3個
D:短絡発生数4個以上
<二次電池の高温サイクル特性>
得られた二次電池(ラミネートセル型電池)を、60℃で0.2Cの定電流で4.2Vまで充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電する操作を1サイクルとし、充放電を繰り返した。2サイクル目における放電容量に対する100サイクル目おける放電容量の割合を百分率で算出して充放電サイクル特性とし、下記の基準で判定した。この値が大きいほど繰り返し充放電による容量減が少なく、高温サイクル特性に優れることを示す。
(評価基準)
A:充放電サイクル特性が95%以上
B:充放電サイクル特性が90%以上95%未満
C:充放電サイクル特性が85%以上90%未満
D:充放電サイクル特性が85%未満
<実施例1>
(シード粒子Aの製造)
温度計と窒素導入管とを装着した容量5リットルのオートクレーブに、重合性単量体であるメタクリル酸エチル100部にノルマルオクチルメルカプタン1部を溶解したものと、イオン交換水600部とを入れた。得られた混合物を攪拌しながら窒素気流中で70℃に昇温し、重合開始剤として過硫酸カリウム0.7部を投入し、70℃ で12時間ソープフリーの重合反応を行った。この重合反応により、個数平均粒子径が0.2μm、Cv値が10%の単分散ポリメタクリル酸メチル粒子(シード粒子A)の分散液を得た。
(シード粒子Aの個数平均粒子径測定方法)
シード粒子Aの個数平均粒子径は、既知の方法で測定できるが、例えば、ベックマン・コールター社製のレーザー回折散乱粒度分布測定装置(レーザー回折散乱法粒度分布測定装置、LS-230)等を用いてコールター原理に従って測定する。同様に、コールター原理に従って粒子径標準偏差を得て、[(粒子径標準偏差/個数平均粒子径)×100]の値を算出することで、Cv値を算出する。
(樹脂粒子Aの製造)
重合性単量体としてスチレン45部、メタクリル酸メチル5部、エチレングリコールジメタクリレート50部に、重合開始剤としてジメチル−2,2−アゾビスイソブチルニトリル0.6部、ベンゾイルパーオキサイド0.6部を溶解して単量体組成物を得た。
得られた単量体組成物を、界面活性剤としてコハクスルホン酸ナトリウム0.5部を含むイオン交換水100部に混合し、混合液をT.K ホモミキサーMark2.5(特殊機化工業社製)にて8000rpmで10分間攪拌処理することでエマルジョンを得た。このエマルジョンに個数平均粒子径が0.2μmのシード粒子Aを10部含む分散液を固形分相当量で15部を攪拌しながら加え、シード粒子Aへの重合性単量体の吸収を開始させた。
更に1時間攪拌後イオン交換水10部に末端にチオール基を有するポリビニルアルコール(クラレ社製ポバールM−115)0.5部を溶解した水溶液を添加した。このとき液中のシード粒子を光学顕微鏡で確認したが、粒度分布は1〜10μmの範囲でブロードであった。更に攪拌を3時間続け、液中のシード粒子を光学顕微鏡で観察したところ、エマルジョン中の重合性単量体はシード粒子に吸収されていることが認められた。この場合、重合性単量体のシード粒子への吸収が完了する時間(4時間)を100とすると、末端にチオール基を有するポリビニルアルコールは、25に対応する時間(1時間)経過後に分散液に添加されたことになる。
その後、高分子分散安定剤としてポリビニルアルコール(クラレ社製PVA−217EE)20部を含む水溶液200部をオートクレーブに入れ、攪拌しながら70℃で4時間重合を行った。得られた樹脂粒子の粒度分布をコールター社製のコールターカウンターで測定したところ、個数平均粒子径が0.5μmでCv値が9.0%であり、粒子径が非常に良く揃っていることを認めた。得られた樹脂粒子分散液を脱水、洗浄、乾燥し、篩分けすることで樹脂粒子Aを単離した。
(多孔膜用バインダー1の製造)
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部及び過硫酸カリウム0.3部を入れ、混合して混合物とし、60℃に昇温した。一方、別の容器中でイオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、2−エチルヘキシルアクリレート77.8部、アクリロニトリル20部、メタクリル酸2部、及びアリルメタクリレート0.2部を混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を4時間かけて、上で得た混合物中に、連続的に添加して重合させた。連続的な添加中の反応系の温度は60℃に維持し、反応を行った。連続的な添加の終了後、さらに70℃で3時間反応を継続させ、バインダーを含む水分散液を得た。
得られたバインダー水分散液を25℃に冷却後、これにアンモニア水を添加してpHを7に調整し、その後スチームを導入して未反応の単量体を除去した。その後、直ちに、バインダーの固形分100部に対して、EDTA0.25部を添加し、これらを混合し、イオン交換水で固形分濃度調整を更に行いながら、200メッシュ(目開き約77μm)のステンレス製金網でろ過を行い、個数平均粒子径100nm、固形分濃度40%の多孔膜用バインダー1の水分散液を得た。
(多孔膜用スラリーの製造)
上記で得た非導電性粒子としての樹脂粒子Aを水に分散させて得た水分散体樹脂粒子A、上記で得た多孔膜用バインダー1の水分散液及びカルボキシメチルセルロース(ダイセル化学社製、商品名:ダイセル1220)を、固形分質量比が樹脂粒子:多孔膜用バインダー:カルボキシメチルセルロース=83:12:5となるように水中で混合して、多孔膜用スラリーを得た。
(正極の製造)
正極活物質としての層状構造を有するLiCoO95部に、正極合剤層用結着材としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン、呉羽化学社製、商品名:KF−1100)を固形分換算量で3部となるように加え、さらに、アセチレンブラック2部、及びN−メチルピロリドン20部を加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、スラリー状の正極用電極組成物を得た。この正極用電極組成物を厚さ18μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして全厚みが100μmの、正極合剤層を有する正極を得た。
(負極の製造)
負極活物質としての粒径20μm、比表面積4.2m/gのグラファイト98部と、負極合剤層用結着材としてのSBR(スチレン−ブタジエンゴム、ガラス転移温度:−10℃)1部(固形分換算量)とを混合し、この混合物にさらにカルボキシメチルセルロースを1.0部加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、スラリー状の負極用電極組成物を調製した。この負極用電極組成物を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして全厚みが100μmの、負極合剤層を有する負極を得た。
(多孔膜付二次電池用有機セパレータの製造)
乾式法により製造された単層のポリプロピレン製セパレータ(気孔率55%、厚さ25μm)を、有機セパレータ層として用意した。この有機セパレータ層の一方の面に、上記で得た多孔膜用スラリーを、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得、スラリー層を50℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成した。続いて、有機セパレータ層のもう一方の面にも、同様に多孔膜を形成し、両面に多孔膜を有する、多孔膜付有機セパレータを得た。
(リチウムイオン二次電池)
上記正極を4×4cmの正方形に切り出し、正極を得た。上記負極を4.2×4.2cmの正方形に切り出し、負極を得た。また、上記多孔膜付有機セパレータを5×5cmの正方形に切り出し、二次電池用セパレータを得た。
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。上記で得られた正極を、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。正極の正極活物質層の面上に、上記で得られた正方形のセパレータを配置した。さらに、上記で得られた負極を、セパレータ上に、負極活物質層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。これに電解液を空気が残らないように注入した。この電解液の溶媒はエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びビニレンカーボネートの混合溶媒(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5(体積比))であり、電解質は濃度1MのLiPFであった。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。
(評価)
得られた多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性、および信頼性を評価した。また、得られたリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例2>
樹脂粒子の製造の際に、末端にチオール基を有するポリビニルアルコール( クラレ社製ポバールM−115)の添加量を0.1部としたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例3>
樹脂粒子の製造の際に、末端にチオール基を有するポリビニルアルコール( クラレ社製ポバールM−115)の添加量を4.0部としたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例4>
(シード粒子Bの製造)
撹拌機を備えた反応器に、スチレン95.0部、アクリル酸5.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、イオン交換水100部、及び過硫酸カリウム0.5部を入れ、80℃で8時間重合させた。
これにより、個数平均粒子径58nmのシード粒子Bの水分散体を得た。
シード粒子として、シード粒子Aに替えて上記シード粒子Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子(樹脂粒子B)を得、多孔膜用スラリーの調製時に樹脂粒子Aに替えて樹脂粒子Bを用いた以外は実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。なお、得られた樹脂粒子Bの個数平均粒子径は0.2μmであった。
<実施例5>
末端にチオール基を有するポリビニルアルコール(クラレ社製ポバールM−115)に替えて末端にチオール基を有するポリカルボン酸を使用した以外は、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例6>
多孔膜中の多孔膜用バインダーの含有割合を3質量%にした以外は、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。このとき、二次電池多孔膜用スラリー中の固形分質量比は、樹脂粒子:多孔膜用バインダー:カルボキシメチルセルロース=91.5:3:5.5であった。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例7>
多孔膜中の多孔膜用バインダーの含有割合を18質量%にした以外は、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。このとき、二次電池多孔膜用スラリー中の固形分質量比は、樹脂粒子:多孔膜用バインダー:カルボキシメチルセルロース=77.3:18:4.7であった。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例8>
(多孔膜用バインダー2の製造)
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部及び過硫酸カリウム0.3部を入れ、混合して混合物とし、60℃に昇温した。一方、別の容器中でイオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、2−エチルヘキシルアクリレート67.8部、アクリロニトリル30部、メタクリル酸2部、及びアリルメタクリレート0.2部を混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を4時間かけて、上で得た混合物中に、連続的に添加して重合させた。連続的な添加中の反応系の温度は60℃に維持し、反応を行った。連続的な添加の終了後、さらに70℃で3時間反応を継続させ、バインダーを含む水分散液を得た。
得られたバインダー水分散液を25℃に冷却後、これにアンモニア水を添加してpHを7に調整し、その後スチームを導入して未反応の単量体を除去した。その後、直ちに、バインダーの固形分100部に対して、EDTA 0.25部を添加し、これらを混合し、イオン交換水で固形分濃度調整を更に行いながら、200メッシュ(目開 約77μm)のステンレス製金網でろ過を行い、個数平均粒子径100nm、固形分濃度40%の多孔膜用バインダー2の水分散液を得た。
多孔膜用スラリーの調製時に多孔膜用バインダー1に替えて多孔膜用バインダー2を使用した以外は、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例9>
(多孔膜用バインダー3の製造)
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部及び過硫酸カリウム0.3部を入れ、混合して混合物とし、60℃に昇温した。一方、別の容器中でイオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、2−エチルヘキシルアクリレート77.8部、アクリロニトリル20部、イタコン酸2部、及びアリルメタクリレート0.2部を混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を4時間かけて、上で得た混合物中に、連続的に添加して重合させた。連続的な添加中の反応系の温度は60℃に維持し、反応を行った。連続的な添加の終了後、さらに70℃で3時間反応を継続させ、バインダーを含む水分散液を得た。
得られたバインダー水分散液を25℃に冷却後、これにアンモニア水を添加してpHを7に調整し、その後スチームを導入して未反応の単量体を除去した。その後、直ちに、バインダーの固形分100部に対して、EDTA 0.25部を添加し、これらを混合し、イオン交換水で固形分濃度調整を更に行いながら、200メッシュ(目開約77μm)のステンレス製金網でろ過を行い、個数平均粒子径100nm、固形分濃度40%の多孔膜用バインダー3の水分散液を得た。
多孔膜用スラリーの調製時に多孔膜用バインダー1に替えて多孔膜用バインダー3を使用した以外は、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例10>
(多孔膜用バインダー4の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン46部、イタコン酸3.5部、スチレン50.5部、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した。その後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、個数平均粒子径150nm、固形分濃度40%の多孔膜用バインダー4を含む水系分散液を得た。
多孔膜用スラリーの調製時に多孔膜用バインダー1に替えて多孔膜用バインダー4を使用した以外は、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<実施例11>
(多孔膜付二次電池用負極の製造)
実施例1で得た負極の負極合剤層側の面に、実施例1で得た多孔膜用スラリーを、負極合剤層が完全に覆われ、乾燥後の多孔膜厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得た。スラリー層を50℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成し、多孔膜付負極を得た。得られた多孔膜付負極は、(多孔膜)/(負極合剤層)/(銅箔)の層構成を有していた。そして、製造した多孔膜付二次電池用負極について、粉落ち性および信頼性を評価した。
(二次電池等の製造)
下記の点を変更した他は、実施例1と同様にして二次電池を製造した。そして、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
実施例1で使用した多孔膜付有機セパレータに代えて、多孔膜を有さない有機セパレータ層(単層のポリプロピレン製セパレータ、気孔率55%、厚さ25μm、実施例1で有機セパレータ層として用いられているものと同じ)をそのままセパレータとして用いた。
電池の製造において、負極に替えて、上記で得た多孔膜付二次電池用負極を用いた。なお、負極は、多孔膜側の面がセパレータ側を向き、銅箔側の面が上側に向くよう載置した。
<実施例12>
(多孔膜付二次電池用正極の製造)
実施例1で得た正極の正極合剤層側の面に、実施例1で得た多孔膜用スラリーを、正極合剤層が完全に覆われ、乾燥後の多孔膜厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得た。スラリー層を50℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成し、多孔膜付正極を得た。得られた多孔膜付正極は、(多孔膜)/(正極合剤層)/(アルミ箔)の層構成を有していた。そして、製造した多孔膜付二次電池用正極について、粉落ち性および信頼性を評価した。
(二次電池等の製造)
下記の点を変更した他は、実施例1と同様にして二次電池を製造した。そして、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
実施例1で使用した多孔膜付有機セパレータに代えて、多孔膜を有さない有機セパレータ層(単層のポリプロピレン製セパレータ、気孔率55%、厚さ25μm、実施例1で有機セパレータ層として用いられているものと同じ)をそのままセパレータとして用いた。
電池の製造において、正極に替えて、上記で得た多孔膜付二次電池用正極を用いた。なお、正極は、多孔膜側の面がセパレータ側を向くよう載置した。
<比較例1>
末端にチオール基を有するポリビニルアルコールに替えて、チオール基を有しないポリビニルアルコール(クラレ社製PVA-224E)を使用すること以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子よりなる非導電性粒子を得た。得られた非導電性粒子の個数平均粒子径は、0.4μmであった。
そして、かかる非導電性粒子を用いて、実施例1と同様にして、多孔膜付二次電池用有機セパレータ及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用有機セパレータについて、粉落ち性および信頼性を評価した。また、製造したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<比較例2>
末端にチオール基を有するポリビニルアルコールに替えて、チオール基を有しないポリビニルアルコール(クラレ社製PVA-224E)を使用すること以外は、実施例11と同様にして、多孔膜付二次電池用負極を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用負極について、粉落ち性および信頼性を評価した。また、かかる多孔膜付二次電池用負極を用いて作製したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
<比較例3>
末端にチオール基を有するポリビニルアルコールに替えて、チオール基を有しないポリビニルアルコール(クラレ社製PVA-224E)を使用すること以外は、実施例12と同様にして、多孔膜付二次電池用正極を製造した。そして、製造した多孔膜付二次電池用正極について、粉落ち性および信頼性を評価した。また、かかる多孔膜付二次電池用正極を用いて作製したリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。
上述した実施例1〜12及び比較例1〜3について、評価結果を表1に示す。
Figure 2014165159
表1より、末端にチオール基を有する水溶性高分子を用いて得た樹脂粒子を非導電性粒子として用いた実施例1〜12では、多孔膜付二次電池用電極及び多孔膜付二次電池用有機セパレータにおいて、粉落ち性及び信頼性が良好であり、さらに、二次電池の高温サイクル特性が良好であることが分かる。
一方、末端にチオール基を有さない水溶性高分子を用いて得た樹脂粒子を非導電性粒子として用いた比較例1〜3では、多孔膜付二次電池用電極及び多孔膜付二次電池用有機セパレータの粉落ち性及び信頼性、並びに二次電池の高温サイクル特性が著しく劣化することが分かる。
特に、実施例1及び2より、非導電性粒子の作製時のチオール基の存在割合が少ないと、多孔膜付二次電池用有機セパレータにおいて粉落ちが発生する結果、高温サイクル特性が劣化することが分かる。また、実施例1及び3より、非導電性粒子の作製時のチオール基の存在割合が多い場合には、二次電池用多孔膜の結着性が向上するため、かかる二次電池用多孔膜を用いて作製した多孔膜付二次電池用有機セパレータの粉落ち及び高温サイクル特性は良好になる一方で、信頼性は劣化することが分かる。これは、チオール基の含有量が多すぎる場合には、非導電性粒子の製造時に分子鎖の切断等の副反応が起こりやすく、非導電性粒子の強度が低下しやすくなることに起因すると考えられる。非導電性粒子の強度が低下すると、多孔膜付二次電池用有機セパレータは、柔らかくなると考えられる。更に、実施例1及び6より、多孔膜用バインダーの含有割合が低いと、信頼性および高温サイクル特性が劣化することが分かる。これは、多孔膜用バインダーの減量により二次電池用多孔膜の強度が若干損なわれたためと考えられる。また、実施例1及び7より、多孔膜用バインダーの含有割合が高いと、高温サイクル特性が劣化する。これは、多孔膜用バインダーの増量により二次電池用多孔膜の多孔度が若干損なわれたことにより、膜孔を通じたイオンの移動が阻害されたためと考えられる。
本発明によれば、二次電池用多孔膜において、高温短絡防止性能を十分に向上すると共に、二次電池用多孔膜の粉落ちを更に抑制して二次電池用多孔膜を用いて構成した二次電池のサイクル特性などの電池性能を更に向上することが可能な、二次電池用多孔膜を提供することができる。また、本発明によれば、高温短絡防止性能が高く、かつ、粉落ちの低減された二次電池用多孔膜を提供する二次電池多孔膜用スラリー及び二次電池用多孔膜の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、かかる二次電池用多孔膜を有する、高温短絡防止性能およびサイクル特性が改善された二次電池用電極、二次電池用セパレータ、及び二次電池を提供することができる。

Claims (10)

  1. 非導電性粒子および多孔膜用バインダーを含む二次電池用多孔膜であって、
    前記非導電性粒子が、
    重合性単量体と水性媒体とを含むエマルジョンにシード粒子を添加して、前記シード粒子に前記重合性単量体を吸収させる工程、
    末端にチオール基を有する水溶性高分子を前記エマルジョンに添加する工程、及び
    前記吸収させた重合性単量体を重合させる工程
    を経て得られる樹脂粒子であることを特徴とする二次電池用多孔膜。
  2. 前記末端にチオール基を有する水溶性高分子が、
    ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類及びポリビニルピロリドンのチオール誘導体からなる群から選ばれるものである、
    請求項1に記載の二次電池用多孔膜。
  3. 前記多孔膜用バインダーが(メタ)アクリル重合体であり、
    前記二次電池用多孔膜中の前記多孔膜用バインダーの含有割合が、1〜20質量%である、
    請求項1又は2に記載の二次電池用多孔膜。
  4. 非導電性粒子、多孔膜用バインダー及び水分散媒を含み、
    前記非導電性粒子が、
    重合性単量体と水性媒体とを含むエマルジョンにシード粒子を添加して、前記シード粒子に前記重合性単量体を吸収させる工程、
    末端にチオール基を有する水溶性高分子を前記エマルジョンに添加する工程、及び
    前記吸収させた重合性単量体を重合させる工程
    を経て得られる樹脂粒子であることを特徴とする二次電池多孔膜用スラリー。
  5. 前記末端にチオール基を有する水溶性高分子が、
    ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類及びポリビニルピロリドンのチオール誘導体からなる群から選ばれるものである、
    請求項4に記載の二次電池多孔膜用スラリー。
  6. 前記多孔膜用バインダーが(メタ)アクリル重合体であり、
    固形分換算で、前記多孔膜用バインダーの含有割合が、1〜20質量%である、請求項4又は5に記載の二次電池多孔膜用スラリー。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載の二次電池多孔膜用スラリーを基材上に塗布してスラリー層を形成する工程と、
    前記スラリー層を乾燥する工程と、
    を含む、二次電池用多孔膜の製造方法。
  8. 集電体、
    電極活物質及び電極合剤層用結着剤を含み、前記集電体上に付着する電極合剤層、並びに
    前記電極合剤層の表面上に積層された、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用多孔膜を有することを特徴とする二次電池用電極。
  9. 有機セパレータ層、及び前記有機セパレータ層上に積層された請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用多孔膜を有することを特徴とする二次電池用セパレータ。
  10. 正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかが、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用多孔膜を有することを特徴とする、二次電池。
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