JP6716486B2 - 耐火木製構造材及び耐火木製部材 - Google Patents
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Description
本発明の他の目的は、熱の流入抑制効果に優れた密な炭化層を形成でき、耐火又は準耐火建築物の建築等に好ましく用いられる耐火部材を提供することにある。
前記燃えしろ層は、複数本のラミナが積層接着されたラミナ積層体から構成されており、前記耐火木製構造材の横断面の一方向において前記荷重支持部を挟んでその両側に位置する一対の側部燃えしろ層が、それぞれ、前記一方向と直交する方向をラミナの積層方向とする側部ラミナ積層体から形成されており、該側部ラミナ積層体は、少なくとも、ラミナの積層方向における前記荷重支持部と同位置に存在する部分が、木表どうしの積層面を有しないように複数本のラミナが積層接着されたラミナの積層構造を有している、耐火木製構造材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
前記燃えしろ層は、複数本のラミナが積層接着されたラミナ積層体から構成されており、前記耐火木製構造材の横断面の一方向において前記荷重支持部を挟んでその両側に位置する一対の側部燃えしろ層が、それぞれ、前記一方向と直交する方向をラミナの積層方向とする側部ラミナ積層体から形成されており、該側部ラミナ積層体は、ラミナの積層方向における全体が、木表どうしの積層面を有しないように複数本のラミナが積層接着されたラミナの積層構造を有している、耐火木製構造材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
本発明の他耐火部材は、熱の流入抑制効果に優れた密な炭化層を形成でき、耐火又は準耐火建築物の建築等に好ましく用いられる。
本発明の第1実施形態の耐火木製構造材1は、木造建築物の柱として使用される構造用の角材であり、図1(a)に示すように、軸方向(長手方向)に沿って延びる4側面a〜dを備えている。より具体的には、軸方向に直交する横断面形状が四角形状(より詳細には正方形状)を有し、使用時には、軸方向を鉛直方向として使用される。
本発明の第2実施形態の耐火木製構造材1Aは、木造建築物の梁として使用される構造用の角材であり、図2(a)に示すように、軸方向(長手方向)に沿って延びる4側面a1〜d1を備えている。より具体的には、軸方向に直交する横断面形状が四角形状(より詳細には長方形状)を有し、前記4側面a1〜d1として、使用時に、鉛直方向の上側に
配される上面a1、下側に配される下面c1、上下面間に配される2側面b1,d1を備えている。
第1及び第2実施形態における荷重支持部11は、単独で、固定荷重、積載荷重等の長期に生ずる荷重(長期荷重)に対して構造耐力上安全であるようにその断面設計がなされており、斯かる断面設計は公知である。荷重支持部11の横断面形状は四角形状であり、該横断面形状における一方向Yの長さ及び該一方向Yに直交する方向Xの長さは、柱や梁の形状、或いは大きさ等によって適宜に変更することができる。
しかし、燃えしろ層を集成材で構成した場合、高い耐火性能、例えば、火災終了後、自然に火が消える燃えどまり性能を得るためには、燃えしろ層の厚さを増しただけでは、十分な燃えどまり性能が得られなかったり、燃えしろ層に難燃薬剤を配合したラミナを使用する等の工夫が必要となる。
そのため、耐火木製構造材1の側部ラミナ積層体13からなる一対の側面b,dが、火災時の火炎に晒された場合に、該側面b、dに形成される炭化層に、ラミナ2の木表どうしの積層面に沿って大きな割れが生じることや、そのような割れに起因して炭化層の一部が欠落することも抑制され、耐火木製構造材1の側面b、d付近に、熱伝導の抑制効果又は酸素遮断効果に優れた密な炭化層が形成される。それにより、耐火木製構造材1は、燃えしろ層が、難燃薬剤を配合しなくても燃えどまり機能を有し、優れた耐火性能を有するものとなっている。
荷重支持部11の周囲に設定する燃えしろ層の厚みLa〜Ldは、耐火性能の向上、特に燃えどまり機能が得られるようにする観点から、50mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましく、90mm以上が更に好ましい。
そのため、耐火木製構造材1の側部ラミナ積層体13からなる一対の側面b1,d1が、火災時の火炎に晒された場合に、該側面b1、d1に形成される炭化層に、ラミナ2の木表どうしの積層面に沿って大きな割れが生じることや、そのような割れに起因して炭化層の一部が欠落することも抑制され、耐火木製構造材1Aの側面b1、d1付近に、熱伝導の抑制効果又は酸素遮断効果に優れた密な炭化層が形成される。それにより、耐火木製構造材1Aは、難燃薬剤を配合しなくても燃えどまり機能を有し、優れた耐火性能を有するものとなっている。
荷重支持部11の周囲に設定する燃えしろ層の厚みLb、Lc及びLdは、耐火性能の向上、特に燃えどまり機能が得られるようにする観点から、いずれも、50mm以上が好ましく、70mm以上が更に好ましい。また、下部燃えしろ層12cの厚みLcは、側部燃えしろ層12b、12dの厚みLb、Ldよりも厚いことが、熱の伝わりやすい角の部分を材積を抑えながら被覆できる点から好ましい。
第2実施形態の耐火木製構造材1Aは、梁用の構造材であり、使用時に上面aには、耐火性能を有する床が載ることにより、荷重支持部11が被覆されるため、荷重支持部11の上側を被覆する燃えしろ層は設けていない。
同様の観点から、側部ラミナ積層体13は、延出する部分13eのラミナを含めた全てのラミナが、木表どうしの積層面を有しないように積層されていることが好ましい。すなわち、側部ラミナ積層体13は、ラミナの積層方向Xにおける全体が、木表どうしの積層面を有しないように複数本のラミナが積層接着されたラミナの積層構造を有していることが好ましい。
側部燃えしろ層12b、12dを形成する各側部ラミナ積層体13は、荷重支持部11
と同位置に存在する部分13sに位置するラミナが、好ましくは2〜100本、より好ましくは3〜75本、更に好ましくは4〜50本である。また、側部燃えしろ層12b、12dを形成する各側部ラミナ積層体13は、延出する部分13eのラミナを含めた積層本数が、好ましくは4〜114本、より好ましくは5〜89本、更に好ましくは6〜64本である。
木裏どうしの積層面6を一か所に有する実施形態は、木裏どうしの積層面6を一カ所も設けない実施形態に比べて、耐火木製構造材全体としての反りを抑制する観点から好ましい。
また、同様の観点から、木裏どうしの積層面6は、側部燃えしろ層12b、12dを形成するラミナ積層体13のラミナの積層方向Xにおける、荷重支持部11と同じ位置に位置する部分に存することが好ましい。例えば、木裏どうしの積層面6は、耐火木製構造材1,1Aを、側部燃えしろ層12b、12dを形成するラミナ積層体13のラミナの積層方向Xと同方向に3等分して3領域に区分したときに、中央の領域に存在することが好ましい。
第2実施形態の耐火木製構造材1Aも、その完成状態において、前述した側部燃えしろ層12b、12dを形成する2つのラミナ積層体13,13が、ラミナ積層体15及び16からなる中央ラミナ積層体17を間に挟んだ状態で、ラミナの積層方向Xに直交する方向Yに連結された構成を有しており、それぞれ4本以上のラミナ、好ましくは4本以上の同数のラミナ(図示例は13本)が積層接着された複数のラミナ積層体13,13,17によって、荷重支持部11及び荷重支持部11の周囲に配された燃えしろ層12の全体が形成されている。
たものである。第2実施形態の耐火木製構造材1Aを構成するラミナ2も、同一樹種の木材から構成されたものである。ただし、ラミナ2は、単一樹種に由来のもののみを用いても良いし、複数の樹種から得られたものを併用することもできる。ラミナ2の原料とする木材の樹種としては、任意のものを用いることができ、例えば、針葉樹であれば、カラマツ、ベイマツ、グイマツ、ツガ等、広葉樹であれば、ケヤキ、くり、ミズナラ、タモ等を用いることができる。また、個々のラミナ2は、耐火木製構造材1,1Aの長手方向(軸方向に同じ)と同方向に長い形状を有している。個々のラミナ2は、耐火木製構造材1,1Aの長手方向の全長に亘って連続する一枚の挽き板等であっても良いが、ラミナの全部又は一部は、複数の挽き板等をフィンガージョイント等の接合方法で長手方向に継いだものであっても良い。
ラミナどうし間又はラミナ積層体どうし間を接合する接着剤としては、集成材の製造に従来用いられている各種公知の接着剤を用いることができ、例えば、水性高分子−イソシアネート系接着剤、レゾルシノール樹脂接着剤、レゾルシノール・フェノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、メラミンユリア樹脂接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等が挙げられる。これらのなかでも、レゾルシノール樹脂接着剤又はレゾルシノール・フェノール樹脂接着剤が好ましい。
また、図6(a)に示すように、木表3及び木裏4を有する複数のラミナ2を、ラミナ間に接着剤を配し且つ木表3側を同じ方向に向けて重ね、それらを熱盤プレス等により加圧して集成材ブロック18を形成した後、図6(b)に示すように、同様にして得られた複数の集成材ブロック18を、接着剤により結合して、複数の集成材ブロック18が、ラミナの積層方向Xに直交する方向Yに連結された中間ブロック19を得、次いで、図6(c)に示すように、同様にして得られた2つの中間ブロック19どうしを、木裏4どうしが接合されるように、重ねて接合剤を介して接合することで製造することができる。この製造方法は、ラミナ配列の管理および同寸法の部材で効率良い製造が可能な点で好ましい。
燃えしろ層を構成するラミナの構成木材に、晩材率が20%以上であり且つ晩材寸法が0.6mm以上である樹種の木材を用いることによって、燃えしろ層の燃焼時に形状保持性に優れた炭化層が形成され、優れた燃えどまり性能が得られる。
また、晩材率が20%以上であり且つ晩材寸法が0.6mm以上である樹種の木材は、一定の熱容量を有していることから、断熱を期待できる形状保持性に優れた炭化層下の熱容量を効率的にいかすことで、より高い耐火性能が得られる。
晩材率(%)は、図7(a)に示すように、樹木の半径方向に延びる直線Lに沿って、晩材61の長さL1と早材62の長さL2と年輪の間隔L3とを測定したときに、下記式で表される。
晩材率(%)=(晩材の長さL1/年輪の間隔L3) ×100・・・(1)
晩材寸法とは、上記の晩材部分の長さL1自体である。
晩材率や晩材寸法は、耐火木質構造材の横断面の対象部位(荷重支持部の周囲の燃えしろ部の全体、側部ラミナ積層体における前記部分13s又は該側部ラミナ積層体の全体)における10箇所以上で年輪の間隔L3及び晩材61の長さL1を測定し、その長さL1及び算出した晩材率の平均を、対象部位に存するラミナの晩材寸法及び晩材率とする。
長さL1及び晩材率を算出するラミナは、対象部位における特定の箇所のラミナに集中しないように選択する。図7(b)は、耐火木製構造材の全体又は一部がラミナ積層体からなる場合の個々のラミナの年輪の形成状態の例を示す図である。図7(b)中に示すラミナ2Aのように、樹芯67を含むラミナ2については、その樹芯67と、該樹芯67からの距離が最も遠い面66Aとの間の中央部に位置する年輪64Aの間隔L3及び晩材61の長さL1を、当該ラミナ2についての年輪の間隔L3及び晩材61の長さL1とする。
例えば、荷重支持部11とその両側に位置する側部燃えしろ層12との境界を、ラミナ積層体17とラミナ積層体13との境目に一致させても良い。
また、荷重支持部11を、その両側に位置するラミナ積層体13と同様のラミナ積層体から構成するのに代えて、無垢材や、木表どうしの積層面を有するラミナ積層体、側部燃えしろ層のラミナ積層体のラミナ積層方向と直交する方向をラミナの積層方向としたラミナ積層体等から構成することもできる。
また、本発明の耐火木製構造材は、横断面形状が長方形状の柱材であっても良く、横断面形状が正方形状の梁材であっても良い。
カラマツから得られたラミナ2(密度:0.53g/cm3±10%、含水率8〜10%)を用いて、図10に示す手順により図1に示す断面構成を有する柱材である耐火木製構造材を得た。ラミナ間の接着には、レゾルシノール・フェノール樹脂接着剤を用いた。
製造した耐火木製構造材は、断面寸法が350mm×350mm、荷重支持部の寸法が170mm×170mm、燃えしろ層12の厚みLa〜Ldが90mm、長さが4.3mであり、側部燃えしろ層を構成する2つのラミナ積層体13及びその間に位置するラミナ積層体17は、図1に示すように、ラミナの積層方向Xの中央部に、木裏どうしの積層面6を1か所有し、木表どうしの積層面を有しないものである。
実施例1に用いたラミナと同一のラミナを、木裏の向きが交互に逆向きとなるように積層接着してラミナ積層体を製造し、それらを用いる以外は、実施例1と同様の手順で、比
較例1の耐火木製構造材を製造した。比較例1の耐火木製構造材も、断面寸法が350mm×350mm、荷重支持部の寸法が170mm×170mm、燃えしろ層12の厚みLa〜Ldが90mm、長さが4.3mであるが、側部燃えしろ層を構成する2つのラミナ積層体13及びその間に位置するラミナ積層体17は、いずれも、ラミナが、木裏の向きが交互に逆向きとなるように積層されており、ラミナの積層方向Xの両端に位置するラミナは木表側が外側を向いている。
(燃焼試験)
実施例1及び比較例1で得られた耐火木製構造材を、直立状態として試験炉内に配置し、4側面のそれぞれに対して、通常の火災を想定したISO834標準加熱により1時間加熱を行い、加熱終了後5時間の炉内放冷を行った。
その際、ラミナの積層方向Xの端に位置する側面aを板目面、ラミナの積層方向に直交する方向の端に位置する側面dを柾目面として、板目面及び柾目面から荷重支持部11の中心に向かう深さが、30mm、60mm、90mmとなる各位置における温度変化を計測し、各深さにおける温度の経時的変化を記録した。板目面及び柾目面のいずれについても、90mmの深さは、荷重支持部と燃えしろ層との境界である。
結果を図11に示す。
このことから、比較例1の耐火木製構造材においては、燃焼継続に十分な温度を燃えしろ層内部に生じており、炭化層の割れ方で酸素が供給される状況になると放冷中も燃焼が継続し、そのまま放置すると燃焼が90mm以上の荷重支持層に到達する可能性があることが判る。
これに対して、実施例1の耐火木製構造材においては、燃焼継続に十分な温度を燃えしろ層内部に生じておらず、炭化層の割れ方で酸素の供給がより少ない状況であれば、放冷中に燃焼が継続しないことが判る。
比較例1の試験体は、図12(a)に示すように、柾目面に生じた炭化層に、大きな割れが生じており、その割れの内部で燃焼が継続していることが確認された。また、大きな割れは、ラミナの木表どうしの積層面付近に生じており、その割れの内部で、燃焼が継続していることが確認された。また、炭化層に生じた大きな割れの付近で、炭化層の一部が脱落していることも確認された。
これに対して、実施例1の試験体においては、図12(b)に、柾目面に生じた炭化層に、大きな割れが生じず、密な炭化層が形成されていた。
これらの結果から、本発明の実施例である耐火木製構造材や耐火木製部材によれば、燃えしろ層に、難燃薬剤を使用しなくても、燃えどまり性能を発現し、高い耐火性能が得られることが判る。
11 荷重支持部
12 燃えしろ層
2 ラミナ
21 年輪
3 木表
4 木裏
6 木裏どうしの積層面
13 側部ラミナ積層体(ラミナ積層体)
14〜17 ラミナ積層体
Claims (6)
- 荷重支持部と、該荷重支持部の周囲に配された燃えしろ層とを有する横断面四角形状の耐火木製構造材であって、
前記燃えしろ層は、複数本のラミナが積層接着されたラミナ積層体から構成されており、
前記耐火木製構造材の横断面の一方向において前記荷重支持部を挟んでその両側に位置する一対の側部燃えしろ層が、それぞれ、該一方向と直交する方向をラミナの積層方向とする側部ラミナ積層体から形成されており、該側部ラミナ積層体は、ラミナの積層方向における全体が、木表どうしの積層面を有しないように複数本のラミナが積層接着されたラミナの積層構造を有しており、
前記側部ラミナ積層体は、それぞれを構成する全てのラミナが、木表及び木裏を有する横断面長方形状のラミナであり且つその長方形の長辺を形成する面を積層面として積層されており、
前記側部ラミナ積層体は、前記木裏どうしの積層面を、ラミナの積層方向における一か所のみに有しており、該木裏どうしの積層面が、耐火木製構造材を該側部ラミナ積層体のラミナの積層方向と同方向に3等分して3領域に区分したときの中央の領域に存在する、耐火木製構造材。 - 一対の前記側部ラミナ積層体が、直接又は中央ラミナ積層体を介して、前記一方向に連結されている、請求項1に記載の結合されている、耐火木製構造材。
- 前記荷重支持部が、複数本のラミナが積層接着されたラミナ積層体から構成されている、請求項1又は2に記載の耐火木製構造材。
- 軸方向に沿って延びる4側面を有し、該4側面のうちの3側面又は4側面に沿って燃えしろ層を有しており、
4本以上のラミナが積層接着されたラミナ積層体が、前記一方向と直交する方向に複数連結された構成を有しており、それら複数のラミナ積層体によって、前記荷重支持部、及び前記3側面又は前記4側面に沿う前記燃えしろ層の全体が形成されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の耐火木製構造材。 - 前記耐火木製構造材が、木造建築物の柱材又は梁材である、請求項1〜4の何れか1項に記載の耐火木製構造材。
- 難燃薬剤を含んでおらず、前記側部ラミナ積層体からなる一対の側面を含む耐火木製構造材の3側面又は4側面を形成する燃えしろ層が、ISO834標準加熱曲線で1時間加熱後、5時間放冷したときに、前記側面からの深さ90mmの位置に燃焼が到達しない燃えどまり性能を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の耐火木製構造材。
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