〔第1の実施形態〕
以下、本発明の包装シートを適用した第1の実施形態の包装シートを図1を用いて説明する。なお、以下の説明において、方向および向きについては、図中に記載した方向および向きを用いる。
1.層構成
図1は、本実施形態の包装シートの概略断面図である。図1に示すように、包装シートは、厚み方向において裏面側(以下、単に「裏面側」とする。)から、ヒートシール層10と、加熱により発色する発色材料を含む感熱層40と、強度を担保するとともに感熱層40を保護する基材層70とをこの順に有する。また、感熱層40が発色する前の状態において、包装シートは全体として透明である。
更に、感熱層40の裏面側には、感熱層40を保護するための中間層30が更に積層されている。この中間層30とヒートシール層10との間には、中間層30より表面側に積層されている各層を保護するとともにヒートシール層10との密着性を改善する保護層20を更に備えている。
一方、基材層70の裏面側の一部に印刷層60が更に設けられている。この印刷層は基材層70に接するように形成されている。一方、感熱層40の厚み方向において表面側(以下、単に「表面側」とする。)には、感熱層40と印刷層60または基材層70との密着性を改善するアンダーコート層50が更に備えられている。
なお、図1および以後の図面はいずれも実施形態を説明するための概略図であって、正確なものではない。例えば、各層の厚みの比率は実際の各層の厚みと対応していない。また、印刷層60の形成されていない部分は空層となっている訳ではなく、実際には、基材層70とアンダーコート層50が直接 接している。
以後各層の構成を詳説する。
(基材層)
基材層70は、厚さ40μmの透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)で形成されている。かかる素材は汎用かつ安価に入手でき、透明性が高いため、包装材料として広く用いられている。かかる基材を用いることで、包装シートの透明性が維持される。
従って、基材層70は、透明性を有し、感熱層40を保護するとともに包装強度が得られる部材であれば様々な材料を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロプレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリスチレンなどのスチレン樹脂;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリカーボネートなどのカーボネート系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。また、OPPフィルムと組み合わせて使用しても良い。また、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。また、透明性は要件となるが、無色透明のみでなく、有色透明であってもよい。
透明性、取り扱い性、他の層の形成し易さなどの観点から、基材層70の厚みは、例えば、2〜150μm、好ましくは10〜100μm、更に好ましくは20〜70μmである。
(感熱層)
包装シートは感熱層40を有するため、同層を加熱により発色させることにより任意のタイミングで、包装シートに情報を印字することができる。また、前述のように。基材層70が透明であるため、印字された情報は、表面から視認することが可能となる。
感熱層40は、加熱により発色する発色材料および必要な場合、結着剤、滑剤などを分散媒に分散させ、積層する。ここで、分散媒として有機溶媒を用いても良い。この場合、感熱層40をグラビア印刷・オフセット印刷・凸輪転印刷・シルクスクリーン印刷等の一般的な印刷技術により積層することが可能となる。なお、特に印刷技術による積層の必要が無ければ、水または水溶性の分散媒を用いても良い。
発色材料としては、透明または淡色の染料(ロイコ染料)と、この染料を加熱により発色させることができる顕色剤とを組み合わせて使用する。かかる発色材料は、一般的な感熱記録紙などで広く用いられており、入手が容易で、汎用性が高い。
ロイコ染料としては、公知のものを広く用いることができる。分散媒として有機溶媒を用いる場合には、ロイコ染料が溶媒に溶解しない等の理由で、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン(特開2000−289345、特開2000−289345参照)、2−(o−フルオロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン(特開平10−100543、特開平9−118075参照)、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン又は3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン(特開平9−156233参照)等を用いることが好ましい。
また、水等を分散媒として使用する場合は、上記に加え、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系などの各種のロイコ染料を広く用いることができる。ロイコ染料は、一種を単独で使用してもよいが、二種以上を組み合わせて使用することで、所望の色の印字が可能となる。
上記ロイコ染料のうち、特に、フルオラン系ロイコ染料、フタリド系ロイコ染料が好ましい。フルオラン系ロイコ染料としては、例えば、2−アニリノ−6−ジエチルアミノ−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)−3−メチルフルオラン、2−アニリノ−6−ジ(n−ブチル)アミノ−3−メチルフルオラン、6−(N−イソペンチル−N−エチル)アミノ−3−メチル−2−o−クロロアニリノフルオランなどの3−アルキル−2−アニリノ−6−(N,N−ジアルキルアミノ)フルオラン;2−アニリノ−6−(N−エトキシプロピル−N−エチル)アミノ−3−メチルフルオランなどの3−アルキル−2−アニリノ−6−(N−アルコキシアルキル−N−アルキルアミノ)フルオラン;2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオランなどの3−アルキル−2−アニリノ−6−(N−アルキル−N−シクロアルキルアミノ)フルオラン;2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トルイジノ)フルオランなどの3−アルキル−2−アニリノ−6−(N−アルキル−N−アリールアミノ)フルオラン;2−アニリノ−3−メチル−6−ピロリジノフルオランなどの6位に環状アミノ基を有する2−アニリノ−3−アルキルフルオラン化合物;2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオランなどの2−ハロゲン化アニリノ−6−ジアルキルアミノフルオラン;3−ジメチルアミノ−5−メチル−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−8−メチルフルオランなどのジアルキルアミノ−ジアルキルフルオラン;3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランなどのジアルキルアミノ基を有するハロゲン化フルオランなどが例示できる。
フタリド系ロイコ染料としては、6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[p−(ジメチルアミノ)フェニル]フタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−[1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリドなどが例示できる。
顕色剤としては、酸性物質などの電子受容体を広く用いることができるので、ロイコ染料の種類に応じて、公知のものを適宜選択いれば良い。分散媒として有機溶媒を使用する場合には、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(特開2000−326635、参照)、下記式(1)(特開2000−289343、参照)、下記式(2)(特開平10−100543、参照)などを用いることが好ましい。
また水等を分散媒として使用する場合には、特に制限は無く、酸性無機物(ベントナイト、ゼオライト、シリカゲルなど)、カルボン酸(ステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸;シユウ酸、マレイン酸などのポリカルボン酸;酒石酸、クエン酸、コハク酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;安息香酸などの芳香族カルボン酸など)などの他、フェノール性水酸基を有する化合物を広く用いることが可能である。これらの顕色剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアレーン(例えば、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、β−ナフトールなど);ヒドロキシアレーンカルボン酸(サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−p−トリル酸、4−ヒドロキシフタル酸など);ヒドロキシアレーンカルボン酸エステル(5−ヒドロキシフタル酸ジメチル、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−ヒドロキシ安息香酸エチルなど);サリチルアニリドなどのヒドロキシアレーンカルボン酸アミド;ヒドロキシアレーンカルボン酸の金属塩(サリチル酸亜鉛、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸錫など);ビスフェノール類[2,2'−ジヒドロキシジフェニルなどのヒドロキシビフェニル;4,4'−イソプロピリデンジフェノール、4,4'−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)など];ノボラック型フェノール樹脂;フェノール性ヒドロキシル基を有するジアリールスルホン(ジ(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,2'−ジヒドロキシジフェニルスルホンなど);フェノール性ヒドロキシル基を有するジアリールスルフィド(ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなど)などが例示できる。
ロイコ染料および顕色剤などの発色材料の粒子径が大きいと、粒子が光を乱反射するとともに、感熱層40および包装シートの透明性が低下するため、発色材料の粒子径は小さい方が好ましい。かかる観点から、発色材料(ロイコ染料、顕色剤など)の平均粒径は、例えば、0.1〜3μm、好ましくは0.1〜1μm、更に好ましくは0.1〜0.7μmである。なお、本明細書において、平均粒径とは、マイクロトラックレーザー解析・散乱式粒度分析機で測定した体積基準の粒度分布における50%平均粒径(メディアン径)を意味する。
発色材料の発色温度は、発色材料の種類によって異なり、印字条件に応じて、所望の発熱温度で発熱するように発色材料の種類を適宜選択してもよい。また、上記ロイコ染料と発色剤の組み合わせに替えて、単独で発色可能な染料を使用してもよい。
感熱層40中の発色材料の含有量は、発色材料が発色した状態の可視光域の吸光度などに応じて適宜選択でき、例えば、10〜70質量%、好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは30〜50質量%である。発色材料が、ロイコ染料および顕色剤を含む場合、ロイコ染料に対する顕色剤の質量比(=顕色剤/染料)は、それぞれの種類に応じて適宜選択できるが、例えば、1/1〜5/1、好ましくは1.5/1〜3/1である。
感熱層40は、発色材料を結着するための結着剤を含有しても良い。結着剤としては、樹脂および高分子(合成高分子、天然高分子など)などが使用できる。結着剤としては、親水性または水溶性の結着剤、水分散性の結着剤が好ましい。
このような結着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂またはそのケン化物(ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体などの酢酸ビニルの単独重合体または共重合体;ポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA(酢酸ビニル共重合体のケン化物)など)、オレフィン樹脂(イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニル−無水マレイン酸共重合体などのオレフィンと重合性不飽和カルボン酸またはその無水物との共重合体など)、スチレン樹脂(ポリスチレン;スチレン−無水マレイン酸共重合体などのスチレンと重合性不飽和カルボン酸またはその無水物との共重合体など)、ポリアミド樹脂(ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリアミドイミドなど)、シアン化ビニル樹脂(ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体など)、アクリル樹脂(ポリ(メタ)アクリル酸;ポリアクリル酸エステル;アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体;ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミドなどのアクリルアミド樹脂など)、アルキルビニルエーテル樹脂(ポリメチルビニルエーテルなど)、塩化ビニルまたは塩化ビニリデン樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンをモノマー単位として含む共重合体など)、ウレタン樹脂(ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンなど)、ポリビニルピロリドン、ゴム状重合体(スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴムなど)、ゴム(アラビアゴムなど)、セルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエーテルなど)、多糖類(デンプン、変性デンプンなど)、タンパク質(カゼイン、ゼラチン、にかわなど)などが挙げられる。
上記結着剤において、共重合性モノマーである重合性不飽和カルボン酸またはその無水物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などのエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸またはその無水物などが例示できる。共重合性モノマーとして重合性不飽和カルボン酸またはその無水物を用いることで、樹脂に対して、カルボキシル基または酸無水物基が導入され、これにより、親水性または水溶性を付与できる。なお、アクリル酸およびメタクリル酸を、(メタ)アクリル酸と総称し、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを(メタ)アクリル酸エステルと総称する。また、アクリルアミド樹脂では、アミド基および/またはアミノ基が導入されることで、樹脂に対して親水性および/または水溶性を付与できる。
上記の結着剤は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。上記の結着剤のうち、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂のケン化物(PVA、変性PVAなど)、SBRなどのゴム状重合体を用いることが好ましい。酢酸ビニル樹脂のケン化物は高い親水性または水溶性を有するため、発色材料や基材層70との親和性や成膜性が高く、透明性を高め易い。また、アクリル樹脂やゴム状重合体を用いると、高い透明性を確保しながらも、結着性を高め易い。
結着剤の量は、発色材料100質量部に対して、例えば、10〜70質量部、好ましくは20〜65質量部、更に好ましくは35〜60質量部である。なお、結着剤は感熱層40の必須構成要件ではなく、必要に応じて用いればよい。
感熱層40は、更に、充填剤を含有していてもよい。充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤(ポリスチレン(PS)などのスチレン樹脂、ポリエチレン(PE)などのオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂、尿素樹脂などの各種樹脂粒子など)などが挙げられる。樹脂粒子は、中空樹脂粒子(または樹脂マイクロカプセル)であってもよい。無機充填剤としては、鉱物系充填剤(活性白土、カオリナイトなどのカオリン、焼成カオリン、タルク、クレー、ケイソウ土など)、ケイ素含有化合物(ホワイトカーボン、シリカゲルなどのケイ素酸化物;ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩など)、金属化合物(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属無機酸塩など)などが例示できる。これらの充填剤は一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。充填剤の量は、発色材料100質量部に対して、例えば、5〜40質量部、好ましくは15〜30質量部である。
感熱層40は、更に、滑剤を含有しても良い。滑剤としては、例えば、ワックス(パラフィンワックス;カルナバワックスなどのエステルワックス;ポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックスなど);油脂類[オレイン酸などの高級脂肪酸;高級脂肪酸塩(ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸など);鯨油などの動物性油脂;植物性油脂など];シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの滑剤は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。滑剤の量は、発色材料100質量部に対して、例えば、1〜40質量部、好ましくは5〜35質量部、更に好ましくは10〜30質量部である。
結着剤、充填剤および滑剤が、感熱層40に粒子状で含まれる場合、粒子の粒径は、発色材料の場合と同様に、乱反射を抑制する観点から、小さいことが好ましい。これらの粒子の平均粒径は、例えば、1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.4μm以下である。平均粒径は小さい方が好ましく、平均粒径の下限は、例えば、0.01μm以上である。
感熱層40に含まれる結着剤、充填剤および滑剤などのうち、比較的低温で溶融する材料は、感熱層40を形成する工程、中間層30を形成する工程、発色材料を発色させる工程などにおいて溶融し、感熱層40に含まれる粒子の隙間や基材層70および感熱層40の界面に形成される隙間に入り込むことで、粒子間や界面における凹凸が低減され、これにより、感熱層40、ひいては包装シートにおける乱反射が抑制されて透明性を向上させることができる。このように、感熱層40を形成する成分であって、乱反射を抑制する成分を第1乱反射抑制成分とよぶ。上記のように結着剤、充填剤および滑剤等の他の機能を有する成分を、第1乱反射抑制成分として機能させても良いし、これらと別段の成分を感熱層40に含有させ、第1乱反射抑制成分として機能させても良い。
第1乱反射抑制成分は、感熱層40をはじめとする各層を形成する際の温度や発色材料の発色温度よりも融点が低い成分であることが好ましい。第1乱反射抑制成分として働く有機材料は、結着剤となるポリエチレンなどの樹脂、有機充填剤、ワックスや油脂類が挙げられる。第1乱反射抑制成分は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。
第1乱反射抑制成分としては、特に、ワックスや油脂類が好ましく、中でも、パラフィン(パラフィンワックス)を用いることが一層好ましい。第1乱反射抑制成分の融点は、発色材料の発色温度よりも低いことが好ましい。このような第1乱反射抑制成分を使用すると、少なくとも包装シートに印字する際には、第1乱反射抑制成分が溶融して、包装シートにおける乱反射を効果的に抑制できる。また、第1乱反射抑制成分の融点は、感熱層40等各層を形成する際の温度よりも低いことが更に好ましい。融点がこれらの層の形成温度よりも低い場合、各層を形成する際に第1乱反射抑制成分が溶融して、包装シートにおける乱反射を効果的に抑制でき、発色材料の発色前でも、高い透明性が得られる。
上記効果を得るため、第1乱反射抑制成分の融点は、例えば80℃未満であり、好ましくは65℃以下、更に好ましくは50℃以下である。第1乱反射抑制成分の融点の下限は特に制限されないが、例えば、35℃以上である。第1乱反射抑制成分の融点がこのような範囲である場合、包装シートの作製過程、包装シートから包装容器の製造過程や印字の際に、第1乱反射抑制成分を溶融させ易く、乱反射を抑制する上で有利である。
第1乱反射抑制成分は、感熱層40内で溶融させる前は粒子形状であることが好ましい。第1乱反射抑制成分の平均粒径は、例えば、1μm以下であり、好ましくは0.05〜0.5μm、更に好ましくは0.1〜0.4μmである。平均粒径がこのような範囲である場合、感熱層40中に分散され易く、溶融させる際にも、比較的均一に溶融させることができる。また、溶融せずに粒子の形態で感熱層40内に存在する場合にも、乱反射を抑制し易い。
第1乱反射抑制成分は、発色材料100質量部に対して、例えば1〜40質量部、好ましくは5〜35質量部、更に好ましくは10〜30質量部含有されている。第1乱反射抑制成分の含有量がこのような範囲である場合、印字の明瞭性を損なわずに、感熱記録シート、特に、感熱層40、もしくは感熱層40と基材層70との界面における乱反射をより効果的に抑制できる。
感熱層40を形成する各成分を、分散媒に分散させる際には、公知のミキサーの他、サンドミル、ビーズミルなどの公知の粉砕器などを用いてもよい。分散媒として、アルコール、ケトン、およびニトリルなどの有機溶媒を使用した場合には、上記のように印刷によって積層することが可能となる。水または水溶液を用いたときは、基材層70の表面側の面に塗布した後、塗膜を乾燥して感熱層40を形成する。
塗膜の乾燥は、大気圧下または減圧下で行うことができる。乾燥時における塗膜が形成された積層体の温度を第1乱反射抑制成分の融点よりも高く制御すれば、第1乱反射抑制成分を溶融させることができるため、乱反射を効果的に抑制できる。一方、感熱層40が感熱反応することを防止するため、塗膜が形成された積層体の温度を、過度に高くならないように制御する必要がある。このような観点から、同温度は、例えば、25〜100℃の範囲から適宜選択することができる。より具体的には、50〜100℃とするのが好ましく、80〜100℃とするのが更に好ましい。
単位面積当たりの感熱層40の質量は、乾燥質量で、例えば、1〜10g/m2、好ましくは2〜6g/m2である。感熱層40の質量がこのような範囲である場合、感熱層40の厚みを適度な範囲にすることができるため、印刷性と、透明性とを両立し易い。
(ヒートシール層)
ヒートシール層10は、シーラントとして用いられるLDPE(低密度ポリエチレン)のフィルムを積層して形成されているため、ヒートシール層10同士を互いに密着させた状態で加熱することにより、溶着させることができる。この性質を利用して、袋状に形成した包装シートを同様の状態で加熱することにより封緘、すなわちヒートシールすることができる。従って、かかるヒートシールが可能な性質、すなわちヒートシール性を有する物質であればLDPEに限定されることなく、ヒートシール層10を形成させることができる。例えばHDPE(高密度ポリエチレン)、CPP(無延伸ポリプロピレン)、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)等のフィルムが好適に用いられるが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂(オレフィン−酢酸ビニル共重合体など);エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのアクリル系樹脂[オレフィン−(メタ)アクリル酸共重合体、またはその金属架橋物など]などを用いても良い。また、公知のヒートシール性接着剤を用いて形成してもよい。なお、包装物が見えるため、形成後に透明となる部材を用いることが好ましい。また、透明性やシール強度などの観点から、ヒートシール層10の厚みは、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmとすることができる。
(中間層)
中間層30は、感熱層40等を裏面側からの劣化から保護するとともに、包装シートの透明性を向上させるために設けられている。かかる目的のため、アクリルアミド樹脂などのアクリル系樹脂を含むコアシェル型粒子である三井化学株式会社製「バリアスター(商品名)」を中間層に含んでいる。この粒子はコア部が疎水性樹脂で形成されるとともにシェル部が親水性樹脂または水溶性樹脂で形成されたコアシェル型粒子を主成分として構成されている。
親水性樹脂または水溶性樹脂は、成膜性が高く、感熱層上に中間層30を形成する際に、親水性の感熱層40中にしみ込み易いため、平滑な中間層30を形成し易い。平滑な中間層30が形成されることで、感熱層および中間層30、ならびに両者の界面等における乱反射が抑制され、これにより、包装シートの透明性を更に高めることができる。このような親水性樹脂または水溶性樹脂は、包装シートにおける乱反射を抑制するための第2乱反射抑制成分として機能する。一方、疎水性のコア部は感熱層40中にしみ込むことなく中間層30に残留するため、裏面側からの水溶液の浸入を抑制する。
シェル部に用いられる親水性樹脂または水溶性樹脂としては、上記の他にも、PVAなどの酢酸ビニル樹脂のケン化物の他、アクリル樹脂(特に、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、アミド基などの親水性基が導入されたアクリル樹脂など)を用いることが好ましい。酢酸ビニル樹脂のケン化物、特にPVAなどのケン化度が高いものは、ヒドロキシル基を多く含むため、高い親水性または水溶性を有する。
コア部に用いられる疎水性樹脂材料は特に制限されず上記の他にも、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂のケン化物(PVA、変性PVAなど)、SBRなどのゴム状重合体を用いることが好ましい。アクリル樹脂やゴム状重合体などを用いると、包装シートの耐水性を高め易い。また、裏面側からの水溶液の浸入が特に問題とならないのであれば、シェル部に用いられる親水性樹脂または水溶性樹脂として例示したものから適宜選択してもよい。この場合、特にコアシェル型粒子を用いる必要もなく、シェル部に用いられる親水性樹脂または水溶性樹脂のみを単体で使用してもよい。
中間層30は、樹脂を含む塗工液を、感熱層の表面側の面に塗布し、塗膜を乾燥することにより形成できる。塗工液は、例えば、分散液またはエマルションの形態である。塗工液に使用される分散媒としては、感熱層について例示したものなどが挙げられる。塗工液は、必要に応じて、界面活性剤などを含むことができる。樹脂が水溶性樹脂または親水性樹脂を含む場合、塗膜を乾燥する際に、水溶性樹脂または親水性樹脂を感熱層中にしみ込ませることができる。乾燥条件は、塗工液中の分散媒を除去できる限り特に制限されず、感熱層を形成する際の乾燥条件と同じであってもよい。
中間層30の単位面積当たりの乾燥質量を、例えば0.1〜5g/m2、好ましくは0.5〜3g/m2とすることにより、透明性を確保しつつバリア性を確保することが容易となる。
(保護層)
保護層20は、中間層30や感熱層40等を裏面側からの劣化から保護するとともに、中間層30とヒートシール層10との密着性を高めるために設けられている。
保護層20は、充填剤としてのコロイダルシリカおよび滑剤としてのステアリン酸亜鉛を、結着剤としてのアクリル樹脂を用いて成膜させる事により形成されている。
充填剤として使用されているコロイダルシリカは、酸化ケイ素またはその水和物のコロイドであり、透明性が高い。更にその粒径を小さくすることにより乱反射を抑制することができ、保護層20の透明性を向上させることができる。
コロイダルシリカの平均粒径は、乱反射を抑制する観点から、例えば、500nm以下、好ましくは400nm以下、更に好ましくは300nm以下であって、1nm以上である。また、成膜後の強度維持と乱反射抑制とを両立させるため、粒度分布の異なる複数の粒子群を併せて用いても良い。例えば、平均粒径が1nm以上20nm未満のコロイダルシリカと、平均粒径が20〜500nm、好ましくは20〜100nmのコロイダルシリカとを併用してもよい。このように、小粒子群と大粒子群とを併用することで、保護層20の強度を維持しつつ乱反射を抑制することが容易となる。
保護層20中のコロイダルシリカの含有量は、例えば、10〜65質量%、好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは10〜50質量%、特に25〜50質量%である。コロイダルシリカの含有量を上記範囲に制御することにより、保護層20の強度を維持しつつ乱反射を抑制することが容易となる。
なお、充填剤としては、コロイダルシリカに換えて、無機充填剤、有機充填剤(ポリスチレン(PS)などのスチレン樹脂、ポリエチレン(PE)などのオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂、尿素樹脂などの各種樹脂粒子など)などを用いても良い。樹脂粒子は、中空樹脂粒子(または樹脂マイクロカプセル)であってもよい。無機充填剤としては、鉱物系充填剤(活性白土、カオリナイトなどのカオリン、焼成カオリン、タルク、クレー、ケイソウ土など)、ケイ素含有化合物(ホワイトカーボン、シリカゲルなどのケイ素酸化物;ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩など)、金属化合物(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属無機酸塩など)などが例示できる。これらの充填剤は一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。また、これらをコロイダルシリカと合わせて用いても良い。
滑剤としては、ステアリン酸亜鉛に換えて、ワックス(パラフィンワックス;カルナバワックスなどのエステルワックス;ポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックスなど);油脂類[オレイン酸などの高級脂肪酸;高級脂肪酸塩(ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸など);鯨油などの動物性油脂;植物性油脂など];シリコーンオイルなどを用いても良い。これらの滑剤は一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。また、これらをステアリン酸亜鉛と合わせて用いても良い。
結着剤としてのアクリル樹脂の含有量は、例えば、10〜70質量%、好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは25〜50質量%である。また、コロイダルシリカ100質量部に対して、例えば、50〜500質量部、好ましくは80〜200質量部とすることが好ましい。
また、アクリル樹脂に換えて、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を用いても良い。熱硬化性樹脂としては、自己架橋性の熱硬化性樹脂を使用してもよく、ベース樹脂と架橋剤とを含む組成物を使用してもよい。このような組成物としては、例えば、ポリアクリル酸などのカルボキシル基を有するアクリル樹脂と、カルボキシル基の架橋剤とを含む組成物などが例示できる。架橋剤は、ベース樹脂が有する官能基の種類に応じて、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどの公知のものが使用できる。また、熱硬化性樹脂としては、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤などを含むものを使用してもよい。結着剤は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。また、アクリル樹脂と併せて用いても良い。
保護層20は、上記成分を分散媒に分散させた塗工液を塗布により積層し、乾燥させることにより形成できる。分散媒としては、分散媒としては、アルコール、ケトン、および/またはニトリルなどの有機溶媒を使用してもよいが、水を用いることが好ましい。また、分散に際しては、公知のミキサーの他、サンドミル、ビーズミルなどの公知の粉砕器もしくは手攪拌することができる。乾燥条件は、塗工液中の分散媒を除去できる限り特に制限されず、大気圧下であっても減圧下であっても良い。
また、保護層20の単位面積当たり乾燥質量は、包装シートの透明性と適度な強度とを確保する観点から、0.1〜5g/m2であるのが好ましく、0.5〜2.5g/m2であるのが更に好ましい。
(印刷層)
印刷層60は、グラビア印刷、オフセット印刷、凸輪転印刷、UV印刷、シルクスクリーン印刷などにより形成されている。必須の構成ではないが、印刷層60を設けることにより製品名・製造会社名・成分表示などを製品包装前に記載しておくことが可能であるし、製品に優れた意匠性を付加することができる。また、感熱層40の分散媒が有機溶媒の場合であって、印刷により形成可能な場合は、印刷層60は感熱層40と同時に形成することができる。
また、印刷層60は、基材層70の裏面側の一部に設けられている。そのため、包装シートで内容物を包装した場合に、印刷層60の設けられていない部分から内容物を視認する事が容易である。また、印刷層60の設けられていない部分に印字を行うことにより、印刷内容にかかわらず、印字内容を明確に視認することができる。
(アンダーコート層)
アンダーコート層50は基材層70または印刷層60と感熱層40との密着性を高めるために設けられている。かかるアンダーコート層は、結着剤や充填剤を主成分として形成されている。結着剤および充填剤としては、感熱層40の結着剤および充填剤として例示したものを用いることができる。
2.製造方法
この包装シートは以下のように作成される。
(1)基材層70〜感熱層40の形成
基材層70としての厚さ40μmのOPPフィルムの裏面側の一部にグラビア印刷をすることにより、印刷層60が形成される。続いて、SBR(スチレンブタジエンゴム、Tg−3℃)等の結着剤を同様に印刷することにより、アンダーコート層50が形成される。更に、発色材料・結着剤・充填剤・第1乱反射抑制成分としてのパラフィンを有機溶媒に分散させた感熱液も同様に印刷することにより、感熱層40が形成される。即ち、印刷層60〜感熱層40は、多層印刷により、基材層70の裏面側に、一工程で形成される。
(2)中間層30の形成
第1乱反射抑制成分としてのコアシェル型アクリル樹脂を、適量の水に分散させ、感熱層40の表面側の面全体に塗布し、乾燥させることで、中間層30が形成される。
(3)保護層20の形成
粒径が数nmのコロイダルシリカ15質量部、粒径が数10nmのコロイダルシリカ30質量部、PE粒子(平均粒径0.12μm)10質量部、ステアリン酸亜鉛(平均粒径5.5μm)5質量部、および結着剤(アクリル樹脂(ポリアクリル酸)50質量部および架橋剤としての炭酸ジルコニウムアンモニウム5質量部)を、適量の水に分散させ、中間層30の表面側の面全体に塗布し、乾燥させることで、保護層20が形成される。
(4)ヒートシール層の形成
ヒートシール性を有する未延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)を、保護層20に溶着させることにより、ヒートシール層10が形成される。このようにして、包装シートを作製される。
(5)検査
作成した包装シートの印字性、透明性等について検査する。検査項目や、検査方法、合格基準は、用途に応じて任意に定めることができる。例えば、包装後に内容物が目視できるためには、感熱層40が発色していない状態で、JIS P8138に準拠した不透明度が25%以下であることが好ましい。また、不透明度が、20%以下であることが更に好ましい。不透明度は、例えば、市販の反射率計を用いて測定することができる。なお、JIS P8138は、紙の不透明度の測定規格である。上記の不透明度は、包装シートの感熱層が形成されている領域において測定される。包装シートが印刷層を有する場合には、上記不透明度は、印刷層以外の領域において測定することができる。
以上に説明した本実施形態によれば、上記した以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態における包装シートは、印刷層60を有するため、意匠性に優れた包装シートとすることができる。また、印刷層60が基材層70の裏面側に形成されているため、印刷層60の表面側は基材層70に保護されている。そのため、包装シートの表面側が他の包装シート等とこすれあっても印刷が傷つくことがない。また、包装シートは透明性が高いため、印刷を表面側から明瞭に確認することができる。
(2)また、印刷層60は、基材層70の裏面側の一部に設けられてため、包装シートで内容物を包装した場合に、印刷層60の設けられていない部分から内容物を視認する事が容易である。また、印刷層60の設けられていない部分に印字を行うことにより、印刷内容にかかわらず、印字内容を明確に視認することができる。
(3)本実施形態における包装シートは、シェル部分が第2乱反射抑制成分として機能するコアシェル型粒子を備えているため、シェルに含まれる親水性樹脂または水溶性樹脂を感熱層40にしみ込ませることができるため、包装シートにおける乱反射を抑制する効果をさらに高めることができる。
(4)本実施形態における包装シートは、発色材料が有機溶媒によって分散されているため、例えばグラビア印刷等の通常行われている印刷技術によって感熱層40を形成することができる。また、印刷層60をもうける場合には、印刷層60と感熱層40を一工程で形成することができる。
(5)本実施形態における包装シートは、感熱層40と接するように、中間層30を有し、この中間層30は、乱反射を抑制するための第2乱反射抑制成分として機能する親水性樹脂または水溶性樹脂を含むため、油性の物質の浸入に対して、感熱層を保護することが容易となる。また、中間層30が乱反射を抑制するための第2乱反射抑制成分として機能するので、中間層30においても、乱反射によって包装シートの透明性が損なわれることを抑制し、包装シートの透明性を更に向上することができる。
(6)本実施形態における包装シートは、第1乱反射抑制成分として機能する低融点材料としてパラフィンを含む。このパラフィンは様々な融点のものがあり、融点を有するため、少なくとも感熱層を発色させる際に溶融させ易く、乱反射をより容易に抑制することができる。
(7)本実施形態における包装シートの感熱層40に含まれる第1乱反射抑制成分は、発色材料の発色温度よりも低い融点を有する低融点材料を含むため、少なくとも感熱層40を発色させる際に溶融して、感熱層40内の隙間を埋めることにより感熱層40の乱反射を抑制することができる。
(8)本実施形態における包装シートの感熱層40が第1乱反射抑制成分を有するため、感熱層40における乱反射が抑制され、包装シートの透明性を向上させることができる。
(9)本発明の包装シートは、感熱層40が発色する前の状態で、JIS P8138に準拠した不透明度が25%以下であるため、透明性に優れている。従って、製品または商品などの内容物を包装した場合でも、内容物の隠蔽を低減することができる。
(10)本発明の包装シートは、加熱により発色する発色材料を含む感熱層40を有するため、任意のタイミングでの印字が可能である。そのため、ラベル等の別部材を用いずとも、製品を包装した後に包装容器にこれらの情報を印字により表示することができる。
(11)本発明の包装シートは、基材層70が感熱層40より表側にあるため感熱層40を摩擦等から十分に保護することができる。具体的には、摩擦により発色した印字が消えることもなければ、摩擦により感熱層40が発色することもない。
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上記実施形態において、包装シートは表面側に積層されている各層を保護するとともにヒートシール層10との密着性を改善する保護層20を備えているが、必須ではない。ヒートシール層10と中間層30との間の密着性が問題とならない場合や、裏面側からの気体や液体の浸入が問題とならないのであれば割愛しても良い。
・また、感熱層40と基材層70との間の任意の位置に保護層20を設けても良い。表面側からの気体や液体の浸入を抑制することが可能となる。
・上記実施形態において、包装シートは感熱層40を保護するとともに包装シートの透明性を向上させるための中間層30を備えているが、必須ではない。裏面側からの気体や液体の浸入が問題とならない場合や、中間層30がなくても透明性が十分に確保されている場合は、割愛しても良い。
・また、感熱層40と基材層70との間の任意の位置に中間層30を設けても良い。表面側からの気体や液体の浸入を抑制することが可能となる。
・上記実施形態において、包装シートは、感熱層40を全面に設けているが、部分的に設けても良い。例えば、印刷層60を設けていない部分にのみ設けることにより、印刷部分と、印字可能部分を備える構成としても良い。また、軸方向溶着部およびその近傍や、端部溶着部およびその近傍に設けない構成とすれば、同部分を熱溶着させた場合に、同部分が発色することを防止できる。
・上記実施形態において、包装シートは基材層70または印刷層60と感熱層40との密着性を高めるためにアンダーコート層50を備えているが、必須ではない。基材層70または印刷層60と感熱層40との間の密着性が問題とならないのであれば割愛しても良い。また、上記のように保護層20を感熱層40と基材層70との間の任意の位置に設けた場合であって、この保護層20によりアンダーコート層50の機能が代替できる場合も割愛することができる。
・また、感熱層40と基材層70との間の任意の位置にアンダーコート層50を設けても良い。特に、保護層20をヒートシール層10と感熱層40との間に設けなかった場合に、ヒートシール層10の表面側に接するように設けることにより、更に表面側の層との密着性を高めることが可能となる。
・上記実施形態において、包装シートは、製品名・製造会社名・成分表示などを製品包装前に記載しておくため、または、意匠性を向上させるために印刷層60を設けているが、必須ではない。上記必要が特にないのであれば、割愛しても良い。
・また、印刷層60は、基材層70の裏面側の一部に設けられているが、内容物を視認する必要が無ければ、全面に設けても良い。また、全面に印刷層60を設けた場合であっても、透明性のある印刷を施せば内容物を視認することができる。
・また、感熱層40とヒートシール層10との間の任意の位置に印刷層60を設けても良い。上記実施形態の包装シートは透明性が高いため、いずれの位置に印刷層60を設けても、表面側から印刷内容を視認することができる。例えば感熱層40より裏面側に印刷層60を設けた場合であって、印刷層60に背景等を印刷し、感熱層40に文字情報を印字したときは、背景と文字情報を同時に認識することが可能となる。
・また、包装シートは上記実施形態に含まれていない層を更に有していても良い。例えば、各層間に必要に応じて接着層を設けても良い。
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の包装容器を適用した第2の実施形態の包装容器を図2および図3を用いて説明する。なお、以下の説明において、方向および向きについては、図中に記載した方向および向きを用いる。
また、本実施形態の包装容器は、第1の実施形態の包装シートを用いて構成されているため、同包装シートについての説明は省略する。
図2は、包装容器の概略斜視図であって、図2(a)は正面側から見た図であり、図2(b)は、包装容器の背面側から見た図である。図2(a)および図2(b)に示すように、本実施形態の包装容器は、矩形または帯状の第1の実施形態における包装シートを筒状に屈曲させて形成された筒状部90と、筒状部90の軸に直交する方向において対向する一方の端部91のヒートシール層10と、他方の端部91のヒートシール層10とを熱溶着させることにより軸方向に延びて形成された帯状の軸方向溶着部92を有している。また、筒状部90の軸方向における端部93のヒートシール層10同士を熱溶着させることにより軸に直交する方向に延びて形成された帯状の端部溶着部94を有している。
この包装容器は、本発明の包装シートで形成された包装袋であるため、第1の実施形態の包装シートと同様の機能を有する包装容器である。すなわち、感熱層40を有するため、包装工程の任意のタイミングあるいは容器形成後に印字することにより表示が可能であるとともに、印字が摩擦により破損することがない。また、透明性が高い容器であるため、開封前であっても内容物を確認できる。また、この包装容器は、ヒートシール層10同士を熱溶着することにより、容易に製造することができる。
ここで、本実施形態の包装容器は、巻取られた包装シートから製袋・内容物充填・ヒートシールされ図3に示すような包装容器連続体を経て、更に切断線95を切断・排出の工程を経て内容物を包装するピロー包装により製造されたピロー包装容器である。このピロー包装は食品包装を中心に、規模の大小を問わず広く行われている汎用性の高い包装方法である。
以上に説明した本実施形態の包装容器は第1の実施形態における包装シートを用いたものであるため、第1の実施形態における(1)〜(11)の効果をすべて得ることができる。また、加えて、以下の効果を得ることができる。
(12)本実施形態における包装容器はピロー包装容器であるため、汎用かつ小規模の包装装置で形成することができる。従って、本発明の包装容器は汎用かつ安価に利用することができる。
(13)第1の実施形態における包装シートはヒートシール層10を有しているため、ヒートシール層10同士を熱溶着することにより容易に本実施形態の包装容器は熱溶着により簡易に製造することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上記実施形態における包装容器は一包ずつ個別に形成されているが、図3に示す連続体のままであってもよい。特に、小口包装の場合に、連続体として形成されている方が、陳列が容易な場合もある。また、連続体の場合は、個別に切断するための切断線95をミシン目やハーフカットで形成しておき、顧客が必要に応じて切断できる構成とすると便利である。
・上記実施形態における包装容器は、開封の際に容易に引き裂いて開封できるように端部93が波状線で形成されているが、特に必要がなければ、直線状であっても良い。
・上記実施形態における包装容器はピロー包装容器であるが、他の包装容器であっても良い。例えば、箱形状の容器であっても良い。また、矩形の包装シートを用いて個別に袋形状に作成した包装容器であっても良い。
・上記実施形態における包装容器は透明性が高い容器であるが、内容物を視認させる必要が無ければ、透明でなくても良い。例えば印刷層60を全面に設けることにより必要な印刷を全面に設けても良い。
・上記実施形態における包装容器は、1枚の包装シートで内容物を包み込むように封入しているが、複数の包装シートを用いても良い。例えば、2枚の同型の包装シートで内容物を挟み込むようにし、2枚の包装シートの各々の周縁部を互いに熱溶着させて包装容器としても良いし、3枚以上の包装シートを用いて多面体型の容器にしても良い。目的に応じて適宜選択することができる。
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の包装方法を適用した第3の実施形態の包装方法を図4を用いて説明する。なお、以下の説明において、方向および向きについては、図中に記載した方向および向きを用いる。
本実施形態の包装方法は、第1の実施形態の包装シートで内容物を包装する包装方法である。図4は、横ピロー包装機を用いた正ピロー包装によるこの包装方法を説明する図面である。図4に示すように、本実施形態の包装方法は、帯状の包装シートを筒状に屈曲させる屈曲工程Aと、軸方向溶着部92を形成する軸方向溶着部形成工程Bと、端部溶着部94を形成するとともに袋状の包装容器を形成するための端部溶着部形成工程Cと、包装容器に印字するための印字工程Dとを含む。また各工程は、横ピロー包装機によって連続的かつ一部は重畳的に行われる。以下、図面に従い各工程を詳説する。
帯状の包装シートが巻回されたロール1から、進行方向において前方(以下、単に「前方」という。)に供給された包装シートは、前方に進むに従い屈曲されるとともに、進行方向に直交する両端部91がヒートシール層10同士を接するように重ね合わされる。この工程が屈曲工程Aである。この屈曲工程により、筒状部90が形成される。このとき、筒状部90の内部には、第1のベルトコンベア81の上面側に所定の間隔で積載された内容物82が、順に挿入されてゆく。なお、筒状部90の軸方向は進行方向と一致している。
続く軸方向溶着部形成工程Bにおいて、重ね合わされた両端部91に第1ヒートシーラー83が押し当てられることにより、両端部91は進行方向において後方(以下、単に「後方」という。)から前方に向かって連続的に熱溶着されることにより、軸方向溶着部92が前方から後方に連続的に形成される。形成された軸方向溶着部92は、押さえベルト84によって下面側から上面側に押しつけられることによって、筒状部の背面に沿うように折り曲げられる。
次の端部溶着部形成工程Cでは、進行方向に直交する方向に延設された第2ヒートシーラー85が正面側および背面側から筒状部90を夾み込む様に加熱することにより、筒状部90に進行方向に直交する方向に帯状に延びた端部溶着部94が形成される。この端部溶着部94は進行方向において一定の距離毎に、内容物82が充填されている場所を避けて筒状部90に形成される。なお、内容物82が充填されている場所を避けて端部溶着部94を形成することは、第1のベルトコンベア81と第2ヒートシーラー85とを同期させることにより可能であるが、例えば、図示しないセンサー(例えば光学センサー)を設けることにより内容物82の有無をチェックしつつ第2ヒートシーラー85を動作させることにより、一層正確に行うことができる。
ところで、第2ヒートシーラー85には、筒状部90を切断するカッター86が併設されている。従って、端部溶着部94の形成と同時に前方側の筒状部90は切り離され、内容物82が封入され封口された包装容器が形成される。
形成された包装容器は、第2のベルトコンベア87の正面側に積載され、印字工程Dに送られる。印字工程Dでは、感熱印字装置88が備えるホットスタンプ89によって包装容器の感熱層40が加熱されることにより、印字が行われる。
以上に説明した本実施形態によれば、上記した以下の効果を得ることができる。
(1)印字工程Dは、端部溶着部形成工程Cの終了後に行われる。すなわち、内容物の包装が終わった後に印字工程Dが行われるため、製造年月日などの事前に印刷しにくい情報を別刷りのラベルなどを用いることなく、容易に表記することができる。
(2)上記包装方法は、ピロー包装工程であるため簡便な方法により、本発明の包装シートにより内容物を包装することが可能となる。
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上記実施形態において、印字工程Dは端部溶着部形成工程Cの後に行われるが、任意の順番で良い。例えば、同一の表示を多量に行うなど、特に個別の印字が必要ないのであれば、屈曲工程Aの前に行うことにより、内容物82の形状等に関係なく、安定した印字を行いやすい。
・上記実施形態は連続的な包装工程を用いた包装方法であるが、各工程を非連続的に行っても良い。一般に小規模に行うときには、非連続的に行った方が、製造装置を小規模にすることができる。
・上記実施形態は帯状の包装シートが巻回されたロール1を用いた包装方法であるが、枚葉の包装シート、代表的には矩形の包装シートを用いてもよい。特に小規模かつ非連続的な包装方法を用いる場合は、内容物82の大きさに合わせた矩形の包装シートを用いる方が、切断行程を省略できるため、工程を少なくできる場合がある。
・上記実施形態において、感熱層40が基材層70に保護されている構成を鑑み、印字にホットスタンプを用いているが、他の構成であっても良い。発色のための十分な熱量をかけられるのであれば、サーマルプリンタ等他の加熱方法により印字しても良い。