JP6709729B2 - クリーム類の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はクリーム類の製造方法に関する。
本願は、2014年3月31日に、日本に出願された特願2014−074703号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
一般的にクリーム類とは大別して2種類あり、1つは牛乳等の乳を、脂肪を含む画分であるクリーム(本明細書では分離クリームという。)と脂肪をほとんど含まない画分である脱脂乳とに分離し、分離クリームを殺菌した後、冷却する工程を経て製造され、成分規格上、乳脂肪含量が18質量%以上であり、他の添加物(植物油脂、乳化剤、安定剤など)を一切加えないクリーム(いわゆる乳及び乳製品の成分規格等に関する省令における種類別クリーム)であり、もう1つは、成分規格上の規定はなく、動物性脂肪(分離クリームを含む)、及び植物性脂肪を主体とし前記添加物を加えた合成クリームとがある。
クリーム類は乳化物であるため、脂肪分(クリーム中に脂肪球として存在している。)が冷蔵保存中等に表面に浮上して、白色または黄白色の濃厚な脂肪層(クリーム層)を形成する脂肪浮上(クリーミング)が生じる問題があり、かかる脂肪浮上を抑えることが求められる。また、クリーム類はホイップしたクリーム(ホイップドクリーム)としても用いられるため、良好なホイップ性も求められる。
通常、脂肪浮上(クリーミング)の抑制や、ホイップ性等のクリーム特性の向上などのために、均質化が行われる。均質化とは、均質機を用いて脂肪球等の粗大な粒子を微細化することをいう。一般に、分離クリームの均質化は殺菌工程の後に行われる。
特許文献1〜3には、殺菌工程の前と後に、それぞれ1回ずつ均質化工程を行うことにより、脂肪浮上(クリーミング)をより抑制する方法が記載されている。
一方、クリーム類の製造において加熱殺菌による加熱臭の改善を目的として、分離クリームを加熱殺菌する前に溶存酸素を低減させる方法が知られている。
例えば特許文献4には、クリームの溶存酸素を低下させる方法として、窒素等の不活性ガスを通気して溶存酸素を不活性ガスで置換した後、減圧処理、遠心処理または静置処理のいずれかの方法によって不活性ガスを脱気する方法が記載されている。
特許文献4の比較例1には、窒素ガスの通気を行わず、−76〜−50kPa(−0.076〜−0.050MPa)の減圧処理だけで未殺菌クリーム(40℃)の溶存酸素を低下させて加熱殺菌したところ、加熱臭の発生は防止できたが、クリーム本来の香気が弱くなり、乳化安定性も不良であったことが示されている。
また特許文献5には、牛乳等の乳成分を含む液体の、香気成分を保持しつつ溶存酸素を低下させる方法として、圧力容器内に1〜35℃の液体を薄膜状にして入れ、容器内を減圧して真空脱気処理した後に、窒素等の置換気体を導入して常圧に戻す方法が記載されている。
特開2007−259830号公報 特開2007−259831号公報 特開2011−211925号公報 特開2004−201601号公報 特開2012−110349号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載されているような、均質化工程を2回行って得られるクリームは、乳化安定性は良好であるものの、風味の点で必ずしも十分とはいえない。本発明者等の知見によれば、具体的には油っぽさや獣臭さが感じられる傾向にあり、さらに詳細に調べたところクリームに含まれる遊離脂肪の量が多い傾向にあることが判明した。
また、特許文献4、5に記載されているような、分離クリームを加熱殺菌する前に溶存酸素を低減させたクリームも、油っぽさや獣臭さが感じられ、遊離脂肪の含有量が多いことも知見した。
本発明は、乳化安定性を向上させるとともに、遊離脂肪の含有量を低減でき、かつ風味の優れたクリーム類の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
[1]乳から分離された分離クリームを含む被処理液を、殺菌処理および均質化処理してクリーム類を製造する方法において、被処理液を加熱する殺菌工程と、被処理液を50〜95℃にて均質化する第1均質化工程と、前記第1均質化工程の後に、被処理液を50℃以上で均質化する第2均質化工程と、少なくとも前記殺菌工程および第2均質化工程の前に、被処理液を脱気温度50〜95℃にて、脱気圧−0.025〜−0.003MPaの負圧下で脱気し、溶存ガスを低減させる溶存ガス低減工程を有し、被処理液に対してバブリングを行わず、少なくとも前記溶存ガス低減工程と、その後に行う殺菌工程および第2均質化工程とを、被処理液で満たされた一連の密閉系内で行う、クリーム類の製造方法。
[2]前記溶存ガス低減工程における脱気圧が−0.025〜−0.01MPaである、[1]に記載のクリーム類の製造方法。
[3]前記第1均質化工程および第2均質化工程は、それぞれ、被処理液を加圧した後、少なくとも1回減圧する操作を含み、前記各減圧する操作における減圧前後の差圧の合計を均質化圧力とすると、前記第1均質化工程における均質化圧力が0MPaを超え8.0MPa以下であり、かつ前記第2均質化工程における均質化圧力が0MPaを超え8.0MPa以下であり、得られるクリーム類の脂肪球の平均粒子径が2.3〜3.6μmである、[1]または[2]に記載のクリーム類の製造方法。
[4]前記溶存ガス低減工程における被処理液の脱気温度が60〜80℃である、請求項[1]〜[3]のいずれか一項に記載のクリーム類の製造方法。
[5]更に、前記被処理液に、別途の、乳由来の成分を含む第2の組成物を添加する工程を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のクリーム類の製造方法。
[6]前記第2の組成物の脂肪含量が5質量%以下である、[5]に記載のクリーム類の製造方法。
[7]前記第2の組成物の固形分含量が13〜45質量%である、[5]または[6]に記載のクリーム類の製造方法。
[8]前記第2の組成物は、ナトリウム含量が16mmol/100g固形分以下であり、かつカリウム含量が38mmol/100g固形分以下である、[5]〜[7]のいずれか一項に記載のクリーム類の製造方法。
本発明のクリーム類の製造方法によれば、乳化安定性を向上させるとともに、遊離脂肪の含有量を低減することができる。これによりクリーム類の油っぽさや獣臭さを改善するとともに、良好なホイップ性を有し、粘度の低いクリーム類を製造することができる。
実施例における温度の経時変化を示すグラフである。 実施例における圧力の経時変化を示すグラフである。
<脂肪球の平均粒子径>
本明細書における脂肪球の平均粒子径はメディアン径(50体積%径)である。前記メディアン径(50体積%径)は、例えばレーザー回折式粒度分布計を用いて測定できる。
<脂肪浮上率>
本明細書における「脂肪浮上率」とは、脂肪浮上(クリーミング)の程度、換言すれば、クリーム類中に存在する脂肪分の局在性を示すものであり、下式(I)により求められる値である。
脂肪浮上率(質量%)=脂肪層(クリーム層)の質量/クリーム類の全質量×100 …(I)
式(I)において、「脂肪層(クリーム層)の質量」とは、クリーム類の表面に浮上してできる白色または黄白色の濃厚な脂肪層(クリーム層)の質量を意味する。
<遊離脂肪率>
クリーム類中の遊離脂肪の量は遊離脂肪率で表すことができる。遊離脂肪率は下式(II)により求められる値であり、クリーム類中の脂肪量に対する、脂肪球として存在していない脂肪(遊離脂肪)の割合を意味する。
遊離脂肪率(質量%)=遊離脂肪量/脂肪量×100 …(II)
<エンド幅率>
下式(III)で求められるエンド幅率は、クリーム類のホイップ性を示す重要な指標のひとつである。
ホイップを開始してから、固さの指標となるペネトロ値が280に達するまでの時間T1と、ペネトロ値が195に達するまでの時間T2とから、下式(III)よりエンド幅率を算出する。エンド幅率が大きいほどホイップの作業性が容易なクリームであることを示す。なお、ペネトロ値の詳細については後記する。
エンド幅率[%]=(T2−T1)/T2×100 …(III)
<クリーム類>
本発明の製造対象であるクリーム類は、乳から分離された分離クリームを含む被処理液に、少なくとも殺菌処理および均質化処理をして得られるものである。
「乳から分離された分離クリーム」は、乳から脂肪画分(乳脂肪)を分離して得られるものである。例えば乳から脱脂乳を除いて得られる分離クリームである。
乳としては、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に定められる乳を用いることができる。生乳、牛乳、生やぎ乳、生めん羊乳等の動物乳が例示される。
「乳から分離された分離クリーム」の好ましい成分組成(単位は質量%)は、分離クリームに対して、固形分が30〜55%、脂肪分が25〜50%、タンパク質が1.7〜2.8%、炭水化物が2.3〜3.6%、灰分が0.3〜0.6%である。固形分は35〜53%が好ましく、40〜52%がより好ましい。脂肪分は30〜48%が好ましく、35〜47%がより好ましい。
本発明におけるクリーム類には、乳由来の成分以外の添加成分を一切加えないクリームと、植物油脂、乳化剤、安定剤などの、乳に由来しない添加成分を加えた合成クリームが包含される。前者は、分離クリームのみから得られるクリーム、または分離クリームのほかに乳由来の成分(後述の第2の組成物)が添加され、脂肪分が乳脂肪のみである(植物性脂肪を含まない)クリームが好ましい。
乳から脱脂乳を除いて分離クリームを調製する際に、常法のとおり、一旦、目標とする脂肪含量よりも高い脂肪含量となるように脱脂乳を除き、ついで脱脂乳を添加して脂肪含量を下げて、最終的に目標とする脂肪含量に調節したものも、本発明の分離クリームとして用いることができる。本発明における「乳から分離された分離クリーム」は、このように脱脂乳を加えて脂肪含量を調節したものも包含する。
{実施形態(I)}
<被処理液>
本実施形態において、被処理液は、分離クリームそのものであってもよく、分離クリームに、乳に由来しない添加成分を添加したものであってもよい。乳に由来しない添加成分の例としては、乳化剤、安定剤、糖類等が挙げられる。添加成分は油脂を含まないことが好ましい。
被処理液全体に対する、添加成分の含有量は5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。ゼロでもよい。すなわち、被処理液全体に対する分離クリームの含有量は95質量%以上が好ましく、98%質量以上がより好ましい。100質量%でもよい。
本実施形態における被処理液の望ましい成分組成(単位は質量%)は、被処理液全体にして、固形分が30〜55%、脂肪分が25〜50%、タンパク質が1.7〜2.8%、炭水化物が2.3〜3.6%、灰分が0.3〜0.6%である。固形分は35〜53%が好ましく、40〜52%がより好ましい。脂肪分は30〜48%が好ましく、35〜47%がより好ましい。
<クリーム類の製造方法>
本実施形態のクリーム類の製造方法は、被処理液を50〜95℃にて均質化する第1均質化工程と、第1均質化工程の後に、被処理液を50℃以上で均質化する第2均質化工程と、被処理液を加熱する殺菌工程と、少なくとも殺菌工程および第2均質化工程の前に、被処理液中の溶存ガスを低減させる溶存ガス低減工程を有する。
更に、乳を分離クリームと脱脂乳に分離する工程(分離工程)を有していてもよい。
第2均質化工程は第1均質化工程の後に行えばよく、第1均質化工程と第2均質化工程の間に他の工程があってもよい。
溶存ガス低減工程は、少なくとも殺菌工程および/または第2均質化工程の前に行うことができる。すなわち溶存ガス低減工程は、殺菌工程および第2均質化工程から選択される少なくとも1つの工程の前に行うことができる。しかしながら、溶存ガス低減工程は 、少なくとも殺菌工程および第2均質化工程の前に行うことが好ましい。溶存ガス低減工程は、第1均質化工程の前であってもよく、後であってもよい。
殺菌工程を溶存ガス低減工程よりも後に行うことが好ましい。殺菌工程は第1および第2均質化工程より前でもよく、後でもよく、第1均質化工程と第2均質化工程の間でもよい。
[(I)−1の実施形態]
本実施形態では、分離工程、第1均質化工程、溶存ガス低減工程、殺菌工程、第2均質化工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行う。
<分離工程>
まず、乳を分離クリームと脱脂乳に分離する。
乳の分離は公知の方法で行うことができる。一般的に、ディスク型クリームセパレータ等が用いられる。ディスク型クリームセパレータとは、遠心力と比重差により乳を脂肪画分(分離クリーム)と脱脂乳とに分離する装置である。ディスク型クリームセパレータには開放型と密閉型があり、分離クリームの泡立ちを生じないことから密閉型が好ましく用いられる。
乳を分離する際の分離温度は35〜70℃が好ましい。必要に応じて、分離前に乳を分離温度にまで加熱してもよい。加熱手段はプレート式加熱機、バッチ式加熱機等が用いられる。特にプレート式加熱機を用いて連続的に加熱することが好ましい。
分離温度が上記温度範囲の下限値以上であると分離クリームと脱脂乳との良好な分離効率が得られ易く、上限値以下であると、変性した乳タンパク質(例えば乳清タンパク質)の装置への付着が生じ難い。
分離クリームは脂肪分(脂肪球)を含有する。分離クリームの脂肪含量は25〜50質量%が好ましい。脂肪含量が50質量%以下であると、分離クリームを均質化した際、クリーム粘度が高すぎず、クリーム類の良好な製造安定性が得られやすい。脂肪含量が25質量%以上であると、従来の方法では脂肪浮上(クリーミング)が生じ易いため本実施形態を適用することによる効果が大きい。なお、分離クリームには、必要に応じて乳由来の原料を添加して脂肪含量を調整しても良い。すなわち、分離後に、必要に応じて脱脂乳を添加して脂肪含量を調整したものを分離クリームとしてもよい。
分離クリーム中の脂肪含量は、例えばディスク型クリームセパレータを用いて分離する場合、ディスク型クリームセパレータのクリーム出口において、乳から分離した分離クリームの流量を、クリーム調節バルブによって調節することにより制御できる。
分離クリーム中の脂肪が乳脂肪のみである場合、乳脂肪含量はバブコック法、レーゼ・ゴットリーブ法等、乳製品の分野で一般的に用いられる測定方法により求められる。
本実施形態では分離工程で得られた分離クリーム、または前記分離クリームに、乳に由来しない添加成分を添加したものを被処理液として用いる。
<第1均質化工程>
次に被処理液を均質化する。均質化とは、被処理液に、被処理液中の脂肪球が微細化されるような力を加えることを意味する。
本実施形態において、均質化は、被処理液の加圧および減圧を伴う方法で行われる。被処理液を加圧した後、少なくとも1回減圧する操作を行う。第1均質化工程において加圧は1回だけ行う。減圧する操作は2回以上行うことが好ましい。かかる方法において、各減圧する操作における減圧前後の差圧(絶対値)の合計(全圧)を均質化圧力とする。
例えば、均質化は圧力式ホモジナイザーを用いて行われる。圧力式ホモジナイザーは、流体に圧力を加えて非常に狭いオリフィス(隙間)を高速で通過させて乳化分散を行う均質機である。なお、均質効率の観点から、均質バルブを複数有する多段均質機を用いることが好ましい。
第1均質化工程で均質化される際の被処理液の温度(均質化温度)は50〜95℃である。均質化温度が下限値以上であると良好な均質化効率が得られ易い。また、均質時にリパーゼ反応等が生じにくく、良好な風味が得られ易い。上限値以下であると、加熱臭等の発生が良好に抑えられ、乳本来の風味が生かされる。前記均質化温度は65〜85℃が好ましく、70〜80℃がより好ましい。
第1均質化工程における均質化圧力、および後述する第2均質化工程における均質化圧力は、最終的に製造されるクリーム類における脂肪球の平均粒子径が所望の範囲内となるようにそれぞれ設定することが好ましい。
第1均質化工程における好ましい均質化圧力は、均質機の種類、被処理液の処理流量やホモバルブの形状、均質化温度等の製造条件によっても異なるが、0MPaを超え、8.0MPa以下の範囲で設定することが好ましい。8.0MPa以下(多段均質機の場合は、全圧8.0MPa以下)であると脂肪球に及ぼす物理的ストレスが比較的に少なく済む。脂肪球への物理的ストレスの点で5MPa以下(多段均質機の場合は、全圧5.0MPa以下)がより好ましい。なお、多段均質機を用いる場合は、前記均質化圧力は、均質機全体でかかる圧力(全圧)として定義する。例えば、2段均質機の場合であれば、第1次圧と第2次圧の合計が全圧であり、均質化圧力である。
第1均質化工程で均質化される際の被処理液の温度(均質化温度)が上記の好ましい範囲となるように、必要に応じて、第1均質化工程の前に被処理液の温度調整を行ってもよい。加熱する場合、加熱手段としてはプレート式加熱機、バッチ式加熱機等が用いられる。特にプレート式加熱機を用いて連続的に加熱することが好ましい。冷却する場合、冷却手段としてはプレート式、バッチ式、チューブラー式の各冷却手段等が用いられる。連続的に実施できるという点でプレート式冷却が好ましい。
<溶存ガス低減工程>
次いで、第1均質化工程を終えた被処理液の溶存ガスを低減させる。溶存ガスは、酸素、窒素、二酸化炭素等である。
溶存ガス低減工程においては、50〜95℃にて、例えば、脱気圧−0.025〜−0.01MPaの負圧下で脱気することにより、被処理液中の溶存ガス量を低減する。本明細書において脱気圧の値はゲージ圧である。
なお、溶存酸素を低減するために窒素等の不活性ガスをバブリングする方法があるが、本実施形態では被処理液に対してバブリングを行わない。具体的には分離工程後から、第1均質化工程、溶存ガス低減工程、殺菌工程および第2均質化工程の4工程が終了するまでの間にバブリングは行わない。
バブリングとは気泡を吹き込む操作を意味する。後述の実施例に示されるように、バブリングを行わない方が、クリーム類に含まれる遊離脂肪の量がより低減されやすい。
脱気は、処理の圧力(脱気圧)に調整された脱気槽に、第1均質化工程を終えた被処理液を連続的に供給しながら、脱気された被処理液を連続的に取り出す連続式で行うことが好ましい。
脱気槽は公知のものを適宜用いることができる。脱気槽にはタンク型、又はポンプと脱気槽が一体となったものなどを使用できる。脱気槽内で被処理液を薄膜状にする手段を備えた脱気装置を用いると、良好な脱気効率が得られやすい点で好ましい。
脱気される際の圧力(脱気圧)は−0.025〜−0.003MPa(−25〜−3kPa)とする。脱気圧の絶対値が0.003MPa以上であると獣臭が抑制されやすく、脱気圧の絶対値が0.025MPa以下であると乳本来の風味が維持されやすい。
好ましくは、脱気される際の圧力(脱気圧)を−0.025〜−0.01MPa(−25〜−10kPa)とする。脱気圧の絶対値が0.01MPa以上であると獣臭が良好に抑制され、脱気圧の絶対値が0.025MPa以下であると乳本来の風味が維持されやすい。
前記脱気圧は−0.021〜−0.013MPaがより好ましく、−0.019〜−0.015MPaがさらに好ましい。
脱気される際の被処理液の温度(脱気温度)は50〜95℃とする。脱気温度が上記範囲の下限値以上であると乳化安定性が向上し、上限値以下であると加熱臭等の付与が少なく、乳本来の風味が維持される。前記脱気温度は60〜95℃が好ましく、60〜80℃がより好ましく、60〜75℃が特に好ましい。
溶存ガス低減工程では、溶存ガス低減工程を終えた時点での被処理液の溶存酸素濃度が1〜6ppm(質量基準、以下同様。)の範囲となるように脱気を行うことが好ましい。前記溶存酸素濃度は2〜5ppmがより好ましく、2.5〜4ppmがさらに好ましい。溶存酸素濃度がより低減したときに、溶存ガス濃度もより低減したとみなすことができる。溶存酸素濃度が上記範囲に低減された状態で、少なくとも殺菌工程および第2均質化工程を行うと風味の好ましい乳化安定性が優れたクリーム類が得られる。
脱気される際の被処理液の温度(脱気温度)が上記の好ましい範囲となるように、必要に応じて、溶存ガス低減工程の前に被処理液の温度調整を行ってもよい。加熱する場合、加熱手段としてはプレート式加熱機、バッチ式加熱機等が用いられる。特にプレート式加熱機を用いて連続的に加熱することが好ましい。冷却する場合、冷却手段としてはプレート式、バッチ式、チューブラー式の各冷却手段等が用いられる。連続的に冷却するのに適している点でプレート式、チューブラー式等が好ましい。
なお、溶存ガス低減工程においては、圧力(脱気圧)と被処理液の温度(脱気温度)とは、被処理液が沸騰しない条件に設定することが好ましい。すなわち、溶存ガス低減工程を行う目的は、濃縮工程のように被処理液の水分を積極的に除去して濃縮する目的ではない。また、溶存ガス低減工程を行う目的は、直接加熱式殺菌装置(被処理液に蒸気を混入させて加熱し、フラッシュ冷却工程にて蒸気を抜いて冷却する方式の殺菌装置)におけるフラッシュ冷却工程のように、被処理液の水分を積極的に除去して被処理液を冷却する目的でもない。
従って、溶存ガス低減工程は、被処理液から自然に蒸発する水分は別として、被処理液の水分を積極的に除去せずに行うことが好ましく、換言すれば、被処理液を沸騰させずに行うことが好ましいのである。
<殺菌工程>
次に、溶存ガスが低減された被処理液を加熱して殺菌処理する。殺菌とは、被処理液に熱を加えることによって、被処理液中の生菌数を低減させることを意味する。殺菌工程は被処理液の昇温および降温を伴う。
加熱殺菌処理は公知の手法を用いて行うことができる。例えば高温短時間殺菌法(HTST)、超高温殺菌法(UHT)等が用いられる。工業的には微生物死滅率による賞味期限の観点からUHT殺菌が好ましい。殺菌機は公知のものを使用できる。連続運転や管理のしやすさの点でプレート式殺菌機が好ましい。
殺菌温度と処理時間とは、高温短時間殺菌法(HTST)の場合は85〜90℃で2〜30秒間が好ましく、超高温殺菌法(UHT)の場合は100〜155℃で2〜30秒間が好ましい。
<第2均質化工程>
次に、殺菌処理された被処理液を均質化する。第1均質化工程と同様に、被処理液の加圧および減圧を伴う方法で行われる。被処理液を加圧した後、少なくとも1回減圧する操作を行う。第2均質化工程において加圧は1回だけ行う。減圧する操作は2回以上行うことが好ましい。例えば、圧力式ホモジナイザーを用いて行われる。なお、均質効率の観点から、第1均質化工程と同様に、均質バルブを複数有する多段均質機を用いることが好ましい。
第2均質化工程で均質化される際の被処理液の温度(均質化温度)は50℃以上であればよい。均質化温度が50℃以上であると良好な均質化効率が得られ易く、均質化の際に、脂肪球に与える物理的ストレスを低減できる。前記均質化温度は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。前記均質化温度の上限は特に限定されないが、直前の工程における処理温度以下であると、加熱工程を設ける必要がなく好ましい。本実施形態のように殺菌工程の後に第2均質化工程を行う場合は、殺菌工程で設定した殺菌温度以下の均質化温度で第2均質化工程を行うことが好ましい。
上述したように、第1均質化工程における均質化圧力および第2均質化工程における均質化圧力は、最終的に製造されるクリーム類における脂肪球の平均粒子径が所望の範囲内となるようにそれぞれ設定することが好ましい。
第2均質化工程における好ましい均質化圧力は、均質機の種類、被処理液の処理流量やホモバルブの形状、均質化温度等の製造条件によっても異なるが、0MPaを超え、乳化が可能であるとされる8.0MPa以下(多段均質機の場合は、全圧8.0MPa以下)の範囲で設定することが好ましい。乳化安定性の点で5MPa以下(多段均質機の場合は、全圧5.0MPa以下)がより好ましい。第2質化工程における均質化圧力は、第1均質化工程における均質化圧力以上であることが、粒子径を制御する上で好ましい。
第2均質化工程で均質化される際の被処理液の温度(均質化温度)が上記の好ましい範囲となるように、必要に応じて、第2均質化工程の前に被処理液の温度調整を行ってもよい。加熱する場合、加熱手段としてはプレート式加熱機、バッチ式加熱機等が用いられる。特にプレート式加熱機を用いて連続的に加熱することが好ましい。冷却する場合、冷却手段としてはプレート式、バッチ式、チューブラー式の各冷却手段等が用いられる。工業的には連続運転が可能であって管理がしやすいという理由からプレート式冷却が好ましい。
本実施形態では、殺菌機内で被処理液が加熱された後冷却されるため、殺菌機と均質機の間に別途冷却手段を設ける必要はなく、殺菌機内で所定の均質化温度にまで冷却すればよい。
<冷却工程・エージング工程>
次いで、第2均質化工程を終えた被処理液を冷却する。第2均質化工程で均質化した後、直ちに冷却することが乳化安定性の点で好ましい。
冷却温度は10℃以下、好ましくは7℃以下、より好ましくは5℃以下である。下限値は0℃以上が好ましい。冷却手段は公知のものを使用できる。例えば、プレート式冷却機、チューブラー式冷却機等が用いられる。冷却効率の点から、プレート式冷却機を用いることが好ましい。
続いて、冷却された被処理液をエージングする。エージングとは、被処理液を所定の温度に保持することを意味する。脂肪球被膜への物理的ストレスを極力与えないように、緩やかに撹拌して液温を均一にすることが好ましい。これにより目的のクリーム類が得られる。エージングを行うことにより、クリーム類中の脂肪分等の結晶化が進行し、クリーム類の品質が安定する。
なお、撹拌の回転数は3〜10rpm程度が好ましい。
エージング中は、被処理液の温度を10℃以下に保持する。好ましくは7℃以下、より好ましくは5℃以下に保持する。保持温度の下限値は0℃以上が好ましい。エージングには、冷蔵庫、エージングタンク等が用いられる。エージングに費やす時間は、好ましくは数時間〜十数時間であり、より好ましくは8〜12時間である。
<密閉系>
本実施形態において、溶存ガス低減工程は、殺菌工程および第2均質化工程よりも前に行い、かつ少なくとも溶存ガス低減工程、殺菌工程および第2均質化工程は、被処理液で満たされた一連の密閉系内で行う。被処理液で満たされた一連の密閉系とは、溶存ガス低減工程で溶存ガスが低減された被処理液が、気相に触れない状態に維持されながら、殺菌工程および第2均質化工程が行われる構成を意味する。
本実施形態では、負圧下での脱気手段(例えば脱気槽)、殺菌機、および第2均質化工程の均質機を、必要に応じて配管、送液手段(例えばポンプ)、バルブ等を用いて気密に接続することで密閉系(密閉された閉空間)を形成し、系内が液(被処理液)で満たされ気相が無い状態とする。これにより、溶存ガス低減工程、殺菌工程および第2均質化工程の一連の工程を、被処理液が気相に触れない状態で行うことができる。
本実施形態において、前記密閉系が、第1均質化工程の均質機を含んでもよく、含まなくてもよい。
<効果>
本実施形態によれば、被処理液に対して2回の均質化(第1均質化工程と第2均質化工程)を行うとともに、負圧下での脱気により被処理液中の溶存ガスを低減させた状態で加熱殺菌と第2均質化工程を行ってクリーム類を製造することにより、脂肪浮上(クリーミング)が良好に抑制されるとともに、遊離脂肪の含有量が低く、風味に優れたクリーム類が得られる。具体的には油っぽさや獣臭さが低減され、乳本来の風味が強調された風味が得られる。
加熱殺菌工程の直前における被処理液の溶存酸素濃度、および第2均質化工程の直前における被処理液の溶存酸素濃度が、いずれも1〜6ppmであることが好ましく、1〜5ppmがより好ましく、2.5〜4ppmがさらに好ましい。
本実施形態で得られるクリーム類は低粘度であり、ホイップ性も良好であり、乳本来の風味が強い、風味良好なホイップドクリームが得られる。
<クリーム類>
本実施形態で得られるクリーム類は被処理液を改質したものであり、クリーム類の組成と被処理液の組成は同じである。ただし、製造上不可避の成分変化は除かれる。
すなわち、エージング工程後に得られるクリーム類の脂肪含量は、被処理液の脂肪含量とほぼ等しい。脂肪調整を行った分離クリームを被処理液として用いた場合は、脂肪調整後の脂肪含量とほぼ等しい。
クリーム類における脂肪球の平均粒子径は2.3〜3.6μmが好ましく、2.5〜3.4μmがより好ましい。脂肪球の平均粒子径は、例えば均質化圧力、温度、流量、均質バルブ形状などによって調節できる。
本実施形態の方法により得られたクリーム類は乳化安定性に優れるとともに、遊離脂肪の含有量が少ない。したがって貯蔵中に脂肪浮上(クリーミング)が生じにくく、風味が良好である。また、前記クリーム類は低粘度であり、良好なホイップ性も有する。
本実施形態の方法により得られたクリーム類は乳化安定性に優れ、5℃で30日間静置した後の脂肪浮上率が小さく抑えられる。
具体的に、本実施形態で得られるクリーム類の脂肪浮上率は2.8質量%未満であり、好ましくは2.7質量%以下であり、より好ましくは2.1質量%未満であり、特に好ましくは2.0質量%以下である。脂肪浮上率の下限値は低いほど好ましい。
クリーム類の脂肪浮上率が2.8質量%未満、好ましくは2.7質量%以下であると、製品として充分な保存安定性が得られる。
本実施形態で得られるクリーム類の遊離脂肪率は、エージング終了時点で2.0質量%未満であり、好ましくは1.9質量%以下であり、より好ましくは1.2質量%未満であり、特に好ましくは1.1質量%以下である。遊離脂肪率の下限値は低いほど好ましい。
本実施形態で得られるクリーム類をホイップした際のエンド幅率は11%以上を達成でき、好ましくは14%以上を達成できる。エンド幅率の上限値は特に限定されないが、ホイップの作業性の点からは25%以下であることが、クリーム類としての良好な条件といえる。
本実施形態によれば、脂肪球の平均粒子径が2.3〜3.6μm、好ましくは2.5〜3.4μmであり、脂肪浮上率、遊離脂肪率、およびエンド幅率が上記の範囲を満たすクリーム類を得ることができる。
なお、均質化を行わない分離クリーム中の脂肪球の平均粒子径は一般的に3.9〜4.4μm程度であることが多く、また脂肪浮上率は4.0%以上であることが多い。
<他の実施形態>
(I)−1の実施形態における各工程の順番は、本発明の範囲内で変更可能である。例えば、以下の実施形態の方法によっても(I)−1の実施形態と同様の効果が得られる。特に(I)−1の実施形態は工業的かつ連続的な製造がしやすい点で好ましい。
(I)−2の実施形態:分離工程、溶存ガス低減工程、第1均質化工程、殺菌工程、第2均質化工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行ってもよい。
(I)−3の実施形態:分離工程、第1均質化工程、溶存ガス低減工程、第2均質化工程、殺菌工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行ってもよい。
(I)−4の実施形態:分離工程、溶存ガス低減工程、第1均質化工程、第2均質化工程、殺菌工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行ってもよい。
(I)−5の実施形態:分離工程、溶存ガス低減工程、殺菌工程、第1均質化工程、第2均質化工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行ってもよい。
なお、分離工程は必須ではなく、市販品など入手できる分離クリームを用いてもよい。
{実施形態(II)}
本実施形態が実施形態(I)と大きく異なる点は、実施形態(I)における被処理液に、別途の第2の組成物を添加する工程を含む点である。
「実施形態(I)における被処理液に別途の第2の組成物を添加する」とは、実施形態(I)において被処理液として用いる液(実施形態(II)では第1の組成物という)に、別途の第2の組成物を添加して混合液とすることを意味する。
実施形態(II)では、前記混合液(実施形態(II)では被処理液という)に対して、第1均質化工程、第2均質化工程、溶存ガス低減工程、殺菌工程を行う。
<被処理液(混合液)>
[第1の組成物]
本実施形態において、被処理液は、乳から分離された分離クリームを含む第1の組成物に、別途の第2の組成物が添加された混合液である。
「乳から分離された分離クリーム」は、乳から脱脂乳を除いた分離クリームに脱脂乳を添加して脂肪含量を調節したものも包含する。
第1の組成物は分離クリームそのものであってもよく、分離クリームに、乳に由来しない添加成分を添加したものであってもよい。乳に由来しない添加成分の例としては、乳化剤、安定剤、糖類等が挙げられる。添加成分は油脂原料を含まないことが好ましい。
被処理液全体に対する、添加成分の含有量は5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。ゼロでもよい。
第1の組成物の望ましい成分組成は、{実施形態(I)}における被処理液の望ましい成分組成と同じである。
[第2の組成物]
第2の組成物は乳由来の成分(水分も含む)を含む組成物である。ただし脱脂乳は第2の組成物には含まれないものとする。
第2の組成物は、乳に由来しない添加成分(乳化剤、安定剤、糖類等)を含んでもよいが、添加成分は油脂原料を含まないことが好ましい。第2の組成物は、乳由来の成分(水分も含む)のみからなることが好ましく、第2の組成物中の固形分が乳由来の固形分であることが好ましい。
第2の組成物は、クリーム類のコク味を付与する等、様々な目的で別途加えられるものである。既存の乳製品を第2の組成物として用いることができる。
このような第2の組成物の具体例としては、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、脱塩脱脂濃縮乳、バターミルク、バターミルクパウダー、ホエイソルト、ホエイパウダー、全脂肪濃縮乳、練乳(無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳)、発酵乳、タンパク質濃縮ホエイパウダー(ホエイプロテイン濃縮物)、フレッシュチーズ等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下、上記各具体例について詳述する。
脱脂粉乳:生乳、牛乳などの動物乳からほとんどすべての脂肪分を除去し、さらにほとんどすべての水分を除去して粉末状にした物。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。脱脂粉乳に対して乳固形分95質量%以上、脂肪1.5質量%未満。
脱脂濃縮乳:生乳、牛乳などの動物乳からほとんどすべての脂肪分を除去し、さらに水分の一部を除いて固形分を高めたもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。水分の一部を除く方法には、水分を蒸発させる方法、膜を用いて水分のみを除く方法など公知の方法を用いることができる。脱脂濃縮乳に対して乳固形分18.5質量%以上、好ましくは18.5〜45.0質量%。脂肪1.0質量%未満。
脱塩脱脂濃縮乳:生乳、牛乳などの動物乳を脂肪分と脱脂乳とに分離して得られる脱脂乳から、水分の一部とミネラル成分(主にNa,K,Cl,Ca,Mg)の一部を除き、固形分を高めたもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。脱塩脱脂濃縮乳に対して乳固形分13〜45質量%、好ましくは20〜30質量%。脂肪1.0質量%未満。固形分100gに対して、ミネラル成分であるNa、K、Cl、Ca、およびMgの合計量が500〜1700mg/100g、好ましくは500〜1000mg/100g。
バターミルク:クリームからバターを製造する際に生ずる、脂肪粒以外の部分。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。バターミルクに対して乳固形分8〜11質量%、好ましくは8〜9質量%、脂肪が0.5〜0.8質量%である。
バターミルクパウダー:バターミルクからほとんど全ての水分を除去し粉末状にしたもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。バターミルクパウダーに対して固形分95.0質量%以上。
ホエイソルト:乳清より乳タンパクと乳糖を一部除去し、ミネラル成分を濃縮したもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。ホエイソルトに対して、脂肪分が3.0%質量%以下。固形分100gに対して、カリウム(K)が200〜3000mg/100g、ナトリウム(Na)が50〜1000mg/100g、カルシウム(Ca)が50〜1000mg/100gなどである。
ホエイパウダー:乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えて製造した乳清からほとんど全ての水分を除去し、粉末状にしたもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。ホエイパウダーに対して乳固形分95.0質量%以上。ホエイパウダーに対して、脂肪が1.5%未満、乳タンパク質量が15質量%以下である。
全脂濃縮乳(濃縮乳):生乳、牛乳など動物乳を濃縮したもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。全脂濃縮乳に対して乳固形分25.5質量%以上、好ましくは25.5〜50.0質量%。
無糖練乳:生乳、牛乳など動物乳を濃縮した濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売されるもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。無糖練乳に対して固形分25.0質量%以上、好ましくは25.0〜30質量%、脂肪7.5質量%以上。「直接飲用に供する目的で販売されるもの」とは、標準平板培養法にて1gあたりの細菌数が0であることを意味する。なお、濃縮乳を容器に入れた後には摂氏115℃以上で15分間以上の加熱殺菌を行うことが望ましい。
無糖脱脂練乳:脱脂濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売されるもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。無糖脱脂練乳に対して固形分18.5質量%以上、好ましくは18.5〜30質量%。
加糖練乳:生乳、牛乳等、動物乳にショ糖を加えて濃縮したもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。加糖練乳に対して固形分28.0質量%以上。好ましくは28.0〜70質量%、ショ糖58質量%以下、脂肪8.0質量%以下。
加糖脱脂練乳:生乳、牛乳等、動物乳のほとんどすべての脂肪分を除去したものにショ糖を加えて濃縮したもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。加糖脱脂練乳に対して固形分25.0質量%以上、脂肪1.0質量%未満、ショ糖58質量%以下。
発酵乳:乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。発酵乳に対して無脂乳固形分8.0質量%以上、脂肪10質量%未満である。
タンパク質濃縮ホエイパウダー(ホエイプロテイン濃縮物):乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えて製造した乳清から、ほとんどすべての乳糖を除去し、さらにほとんど全ての水分を除去し、粉末状にしたもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。タンパク質濃縮ホエイパウダーに対して乳固形分95.0質量%以上、タンパク量が〜15.0質量%以上である。
フレッシュチーズ:(1)乳、バターミルク、クリーム又はこれらを混合したものの、ほとんどすべて又は一部のタンパク質を酵素その他の凝固剤により凝固させて、得られた凝乳から乳清の一部を除去したもの又はこれらを熟成したもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。(2)そのほか、乳等を原料として、タンパク質の凝固作用を含む製造技術を用いて製造したものであって、(1)と同等の化学的、物理的及び官能特性を有するもの。またはこれと同等の成分組成を有する組成物。例として、マスカルポーネ、クリームチーズ、リコッタ、カッテージチーズ等のソフトチーズが挙げられる。
第2の組成物の望ましい成分組成(単位は質量%)は、第2の組成物に対して固形分が5〜100%、脂肪が40%以下、タンパク質が3〜100%、炭水化物が80%以下、灰分が0.6〜10.0%である。灰分は、1.0〜3.3%が好ましく、1.0〜2.0%がより好ましい。
第2の組成物の脂肪含量は、加工工程を含む原料から得られる脂肪は遊離脂肪の発生要因となり得る点では10%以下が好ましく、5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。ゼロでもよい。
脂肪含量が10%以下の第2の組成物としては、脱脂乳、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、脱塩脱脂濃縮乳、バターミルク、バターミルクパウダー等の脂肪含量が低い乳製品を例示することができる。
第2の組成物の固形分は、粉原料のような固形分が高い第2組成物に関しては、乾燥工程にて付与される加熱臭が付与され、粉っぽさが出る、また固形分が低い第2組成物においてはコクなどを付与する面で弱いため、13〜45%がより好ましく、20〜30%が特に好ましい。
このような第2の組成物としては、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、脱塩脱脂濃縮乳等の固形分が高い乳製品を例示することができる。
第2の組成物は、ナトリウム含量が16mmol/100g固形分以下であり、かつカリウム含量が38mmol/100g固形分以下であることが好ましい。より好ましくはナトリウム含量13mmol/100g固形分以下、カリウム含量32mmol/100g固形分以下である。
ナトリウム含量およびカリウム含量が上記の上限値以下であると、1価の塩が持つ特有の塩味、雑味などを感じることが少なくなる。
このような第2の組成物としては、脱塩脱脂濃縮乳等のミネラル含有量が低減された乳製品を例示することができる。
ナトリウム含量の下限値は特に限定されない。例えば、5mmol/100g固形分以上が好ましい。カリウム含量の下限値は特に限定されない。例えば、10mmol/100g固形分以上が好ましい。
本実施形態における被処理液の望ましい成分組成(単位は質量%)は、被処理液に対して、固形分が30〜60%、好ましくは30〜55%であり、脂肪分が25〜50%、好ましくは30〜48%であり、タンパク質は1.5〜6.0%、好ましくは1.7〜3.5%であり、炭水化物は2.3〜10%であり、灰分は3%以下、好ましくは1.5%以下である。
<クリーム類の製造方法>
本実施形態のクリーム類の製造方法は、第1の組成物に第2の組成物を添加する工程(以下、被処理液調製工程という。)と、被処理液を50〜95℃にて均質化する第1均質化工程と、第1均質化工程の後に、被処理液を50℃以上で均質化する第2均質化工程と、被処理液を加熱する殺菌工程と、少なくとも殺菌工程および第2均質化工程の前に、被処理液中の溶存ガスを低減させる溶存ガス低減工程を有する。
被処理液調製工程は、乳を分離クリームと脱脂乳に分離する工程(分離工程)を有していてもよい。
第2均質化工程は第1均質化工程の後に行えばよく、第1均質化工程と第2均質化工程の間に他の工程があってもよい。
溶存ガス低減工程は、少なくとも殺菌工程および/または第2均質化工程の前に行うことができる。すなわち溶存ガス低減工程は、殺菌工程および第2均質化工程から選択される少なくとも1つの工程の前に行うことができる。しかしながら、溶存ガス低減工程は 、少なくとも殺菌工程および第2均質化工程の前に行うことが好ましい。溶存ガス低減工程は、第1均質化工程の前であってもよく、後であってもよい。
殺菌工程を溶存ガス低減工程よりも後に行うことが好ましい。殺菌工程は第1および第2均質化工程より前でもよく、後でもよく、第1均質化工程と第2均質化工程の間でもよい。
[(II)−1の実施形態]
本実施形態では、分離工程を含む被処理液調製工程、第1均質化工程、溶存ガス低減工程、殺菌工程、第2均質化工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行う。
<被処理液調製工程>
まず、乳を分離クリームと脱脂乳に分離する(分離工程)。分離工程は[(I)−1の実施形態]の<分離工程>と同様である。本実施形態では、分離工程で得られた分離クリーム、または前記分離クリームに添加成分を加えたものを第1の組成物とし、これに第2の組成物を添加して混合液を調製する。得られた混合液を被処理液として用いる。
被処理液が添加成分と第2の組成物の両方を含む場合、これらの添加順序は任意である。
<第1均質化工程>
次に被処理液を均質化する。本工程は[(I)−1の実施形態]の<第1均質化工程>と同様である。
<溶存ガス低減工程>
次いで、第1均質化工程を終えた被処理液の溶存ガスを低減させる。溶存ガスは、酸素、窒素、二酸化炭素等である。
溶存ガス低減工程においては、50〜95℃にて、脱気圧−0.025〜−0.003MPaの負圧下で脱気することにより、被処理液中の溶存ガス量を低減する。本明細書において脱気圧の値はゲージ圧である。
なお、溶存酸素を低減するために窒素等の不活性ガスをバブリングする方法があるが、本実施形態では被処理液に対してバブリングを行わない。具体的には分離工程後から、第1均質化工程、溶存ガス低減工程、殺菌工程および第2均質化工程の4工程が終了するまでの間にバブリングは行わない。
バブリングとは気泡を吹き込む操作を意味する。後述の実施例に示されるように、バブリングを行わない方が、クリーム類に含まれる遊離脂肪の量がより低減されやすい。
脱気は、処理の圧力(脱気圧)に調整された脱気槽に、第1均質化工程を終えた被処理液を連続的に供給しながら、脱気された被処理液を連続的に取り出す連続式で行うことが好ましい。
脱気槽は公知のものを適宜用いることができる。脱気槽にはタンクに脱気ポンプを併設した大容量のもの、又は送液ポンプと脱気槽が一体化した比較的小容量のものなど、目標とする溶存酸素になし得る脱気槽であれば使用できる。脱気槽内で被処理液を薄膜状にする手段を備えた脱気装置を用いると、良好な脱気効率が得られやすい点で好ましい。
脱気される際の圧力(脱気圧)は−0.025〜−0.003MPa(−25〜−3kPa)とする。脱気圧の絶対値が0.003MPa以上であると獣臭が良好に抑制され、脱気圧の絶対値が0.025MPa以下であると乳本来の風味が維持されやすい。前記脱気圧は−0.025〜−0.005MPaが好ましく、−0.025〜−0.007MPaがより好ましい。
脱気される際の被処理液の温度(脱気温度)は50〜95℃とする。脱気温度が上記範囲の下限値以上であると乳化安定性が向上し、上限値以下であると加熱臭等の付与が少なく、乳本来の風味が維持される。前記脱気温度は60〜95℃が好ましく、60〜80℃がより好ましく、60〜75℃が特に好ましい。
溶存ガス低減工程では、溶存ガス低減工程を終えた時点での被処理液の溶存酸素濃度が1〜6.5ppm(質量基準、以下同様。)の範囲となるように脱気を行うことが好ましい。前記溶存酸素濃度は2〜5.5ppmがより好ましく、2.5〜4.5ppmがさらに好ましい。溶存酸素濃度がより低減したときに、溶存ガス濃度もより低減したとみなすことができる。溶存酸素濃度が上記範囲に低減された状態で、少なくとも殺菌工程および第2均質化工程を行うと風味の好ましい乳化安定性が優れたクリーム類が得られる。
脱気される際の被処理液の温度(脱気温度)が上記の好ましい範囲となるように、必要に応じて、溶存ガス低減工程の前に被処理液の温度調整を行ってもよい。加熱する場合、加熱手段としてはプレート式加熱機、バッチ式加熱機等が用いられる。特にプレート式加熱機を用いて連続的に加熱することが好ましい。冷却する場合、冷却手段としてはプレート式、バッチ式、チューブラー式の各冷却手段等が用いられる。連続的に冷却するのに適している点でプレート式、チューブラー式等が好ましい。
なお、溶存ガス低減工程は、[(I)−1の実施形態]と同様に、被処理液を沸騰させずに行うことが好ましい。
<殺菌工程>
次に、溶存ガスが低減された被処理液を加熱して殺菌処理する。本工程は[(I)−1の実施形態]の<殺菌工程>と同様である。
<第2均質化工程>
次に、殺菌処理された被処理液を均質化する。本工程は[(I)−1の実施形態]の<第2均質化工程>と同様である。
<冷却工程・エージング工程>
次いで、第2均質化工程を終えた被処理液を冷却し、冷却された被処理液をエージングする。本工程は[(I)−1の実施形態]の<冷却工程・エージング工程>と同様である。
<密閉系>
本実施形態において、溶存ガス低減工程は、殺菌工程および第2均質化工程よりも前に行い、かつ少なくとも溶存ガス低減工程、殺菌工程および第2均質化工程は、被処理液で満たされた一連の密閉系内で行う。
密閉系については[(I)−1の実施形態]の<密閉系>と同様である。
<効果>
本実施形態によれば、被処理液に対して2回の均質化(第1均質化工程と第2均質化工程)を行うとともに、負圧下での脱気により被処理液中の溶存ガスを低減させた状態で加熱殺菌と第2均質化工程を行ってクリーム類を製造することにより、脂肪浮上(クリーミング)が良好に抑制されるとともに、遊離脂肪の含有量が低く、風味に優れたクリーム類が得られる。具体的には油っぽさや獣臭さが低減され、乳本来の風味が強調された風味が得られる。
加熱殺菌工程の直前における被処理液の溶存酸素濃度、および第2均質化工程の直前における被処理液の溶存酸素濃度が、いずれも1〜6.5ppmであることが好ましく、1〜5.5ppmがより好ましく、2.5〜4.5ppmがさらに好ましい。
本実施形態で得られるクリーム類は低粘度であり、ホイップ性も良好であり、乳本来の風味が強い、風味良好なホイップドクリームが得られる。
特に、後述の実施例に示されるように、本実施形態では、分離クリームを含む第1の組成物に第2の組成物を加えて被処理液とすることにより、被処理液が第2の組成物を含まない場合に比べて脱気圧が多少高めであっても、上記の効果を享受することができる。
<クリーム類>
本実施形態で得られるクリーム類は被処理液(分離クリームを含む第1の組成物に、第2の組成物が添加された混合液)を改質したものであり、クリーム類の組成と被処理液の組成は同じである。ただし、製造上不可避の成分変化は除かれる。
すなわち、エージング工程後に得られるクリーム類の脂肪含量は、被処理液の脂肪含量とほぼ等しい。
クリーム類における脂肪球の平均粒子径は2.3〜3.6μmが好ましく、2.5〜3.4μmがより好ましい。脂肪球の平均粒子径は、例えば均質化圧力、温度、流量、均質バルブ形状などによって調節できる。
本実施形態の方法により得られたクリーム類は乳化安定性に優れるとともに、遊離脂肪の含有量が少ない。したがって貯蔵中に脂肪浮上(クリーミング)が生じにくく、風味が良好である。また、前記クリーム類は低粘度であり、良好なホイップ性も有する。
本実施形態の方法により得られたクリーム類は乳化安定性に優れ、5℃で30日間静置した後の脂肪浮上率が小さく抑えられる。
具体的に、本実施形態で得られるクリーム類の脂肪浮上率は2.8質量%未満であり、好ましくは2.7質量%以下であり、より好ましくは2.1質量%未満であり、特に好ましくは2.0質量%以下である。脂肪浮上率の下限値は低いほど好ましい。
クリーム類の脂肪浮上率が2.8質量%未満、好ましくは2.7質量%以下であると、製品として充分な保存安定性が得られる。
本実施形態で得られるクリーム類の遊離脂肪率は、エージング終了時点で2.0質量%未満であり、好ましくは1.9質量%以下であり、より好ましくは1.2質量%未満であり、特に好ましくは1.1質量%以下である。遊離脂肪率の下限値は低いほど好ましい。
本実施形態で得られるクリーム類をホイップした際のエンド幅率は11%以上を達成でき、好ましくは14%以上を達成できる。エンド幅率の上限値は特に限定されないが、ホイップの作業性の点からは25%以下であることが、クリーム類としての良好な条件といえる。
本実施形態によれば、脂肪球の平均粒子径が2.3〜3.6μm、好ましくは2.5〜3.4μmであり、脂肪浮上率、遊離脂肪率、およびエンド幅率が上記の範囲を満たすクリーム類を得ることができる。
なお、均質化を行わない分離クリーム中の脂肪球の平均粒子径は一般的に3.9〜4.4μm程度であることが多く、また脂肪浮上率は4.0%以上であることが多い。
<他の実施形態>
(II)−1の実施形態における各工程の順番は、本発明の範囲内で変更可能である。例えば、以下の実施形態の方法によっても(II)−1の実施形態と同様に本発明の課題を解決できる。特に(II)−1の実施形態は工業的かつ連続的な製造がしやすい点で好ましい。
(II)−2の実施形態:分離工程、溶存ガス低減工程、第1均質化工程、殺菌工程、第2均質化工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行ってもよい。
(II)−3の実施形態:分離工程、第1均質化工程、溶存ガス低減工程、第2均質化工程、殺菌工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行ってもよい。
(II)−4の実施形態:分離工程、溶存ガス低減工程、第1均質化工程、第2均質化工程、殺菌工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行ってもよい。
(II)−5の実施形態:分離工程、溶存ガス低減工程、殺菌工程、第1均質化工程、第2均質化工程、および冷却工程・エージング工程をこの順で行ってもよい。
なお、分離工程は必須ではなく、市販品など入手できる分離クリームを用いてもよい。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。測定方法は以下の方法を用いた。
[溶存酸素濃度の測定方法]
被処理液中の溶存酸素濃度(質量基準、単位:ppm)は、光学式溶存酸素計(製品名:VISIFERM DO ARCセンサー(MS−DO−A−01)、ハミルトン社製)を用い、脱気時の温度条件(脱気温度)で溶存酸素濃度を測定した。
[脂肪球の平均粒子径の測定方法]
脂肪球の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計((株)堀場製作所製、商品名:LA−950V2)を用い、下記の条件で測定した。
レーザダイオード:波長655nm、透過率絶対値90〜79%、試料設定値:屈折率1.6%、分散媒設定値:屈折率:1.33%。
LED(波長405nm、透過率絶対値90%〜70%)、試料設定値:屈折率1.6%、分散媒設定値:屈折率:1.33%。
試料温度:5℃、分散媒温度:常温(20℃)。
[脂肪浮上率の測定方法]
クリーム類1kgを、1L容量の紙パックに充填し、5℃に設定した冷蔵庫にて30日間静置して保存した後に、目開き0.355mmのふるいにかけ、前記ふるい上に回収された脂肪層(クリーム層)の質量を測定した。脂肪層(クリーム層)の質量と、クリーム類の全質量(1kg)とから、下式(I)に従って脂肪浮上率を求めた。
脂肪浮上率(質量%)=脂肪層(クリーム層)の質量/クリーム類の全質量×100 …(I)
[遊離脂肪率の測定方法]
クリーム類2.5gを100ml分液ロートに入れ、ここに30mlの石油エーテルを加え、50回振盪した後、エーテル相を回収し、回収したエーテル相から石油エーテルを蒸発させて残渣の質量を遊離脂肪量として測定した。また、予め同じ量のクリーム類中の脂肪量を、バブコック法にて脂肪率を算出し、同量中の脂肪量を得た。下式(II)により遊離脂肪率を求めた。
遊離脂肪率(質量%)=遊離脂肪量/脂肪量×100 …(II)
[エンド幅率の測定方法]
クリーム類800gに、砂糖64g(外割り8質量%)を加え、卓上ミキサーでホイップしてホイップドクリームとした。ホイップスタート時のクリーム類の温度は7.0℃とした。
ホイップ中、ペネトロメーター(中村医科理化器械店社製、コーン12g、先端角度40度)を用いて経時的にホイップドクリームのペネトロ値を測定し、ペネトロ値が195±5(終点)に達したらホイップ終了とした。ペネトロ値が小さいほど固いことを示す。なお、ペネトロ値の測定は、菊地基和、「クリームのホイッピング技術とその応用展開 第4回 バッチ式ホイッピングにおける諸因子の影響(その1 ホイップドクリームの品質測定法等)」、乳業ジャーナル、(日本)、株式会社乳業ジャーナル、2013年7月、第51巻第7号(通巻570号)、p.20−24、の記載の方法で行った。そして、コーンの貫入距離[針入深さ](mm)の測定値を10倍した値(単位なし)をペネトロ値とした。
横軸をホイップスタートからの時間(単位は「秒」)、縦軸をペネトロ値としてグラフを作成し、ペネトロ値が280に達した時間T1と、ペネトロ値が195に達する時間T2を読み取り、下式(III)よりエンド幅率を算出した。エンド幅率が大きいほどホイップの作業性が容易なクリームであることを示す。
エンド幅率が14以上の場合を○、11以上、14未満の場合を△、11未満の場合を×とした。結果を表1に示す。表の「ホイップ時間」はホイップスタートからホイップ終了までの時間、「ペネトロ値(終点)」はホイップ終了時におけるペネトロ値の測定値である。
エンド幅率[%]=(T2−T1)/T2×100 …(III)
<成分組成の測定方法>
本明細書において、固形分(%)、脂肪(%)、タンパク質(%)、炭水化物(%)、灰分(%)、ナトリウム含量(mmol/100g固形分)、カリウム含量(mmol/100g固形分)は、以下の方法により測定した値である。無脂乳固形分は固形分から脂肪分を差し引いて得られる値である。組成を表す単位の%は質量%である。
[水分]
混砂乾燥法を用いて水分を定量した。試料を一定条件で恒量となるまで乾燥し、乾燥物質量を求め算出した乾燥減量を水分量とする。
具体的には、以下の手順である。
(1)アルミニウム製秤量管に精製硅砂25gとガラス棒を入れ、乾燥機で恒量になるまで乾燥し、デシケーターに移し30分間室温で放冷し秤量する。
(2)秤量管を傾け、硅砂を一方に寄せ、試料を精秤し、机上に秤量管を写し、温湯5mlを加えガラス棒で試料を硅砂とよく撹拌均一に分散させる。
(3)沸騰した水浴上で撹拌しながら、ほとんどの水分を蒸発させる、サラサラになった所で99±1℃の乾燥機に3時間入れ、デシケーターで30分間放冷し秤量する。
乾燥、冷却、秤量を恒量になるまで繰り返し行い、以下の計算式により水分を算出した。
(水分量計算式)水分(%)=乾燥減量(g)/試料採取量(g)×100
[脂肪]
クリーム用のバブコックボトルに試料9gを採取し、温湯9mlで頚部をよく洗いながら入れ、混合する。次いで硫酸17.5mlを、同様に頚部を洗いながら徐々に入れ、試料と硫酸をよく混ぜ合わせる。発生したカードが完全に溶解してから60℃に温度調節した遠心分離機にて遠心した。回転数は1000rpmにて5分間行う。
その後、温湯を加え再び遠心した後、脂肪柱の目盛を読み取った。
[固形分]
固形分(%)=100−水分(%)にて求めた。
[タンパク質]
タンパク量は、分析機器SUMIGRAPH NC−220F(住化分析センター社製)を用い、デュマ法(酸素循環燃焼方式)によって測定した。測定条件は下記のとおりである。
電気炉温度:反応炉870℃、還元炉:600℃
酸素パージ:0.2±0.02L/min
カラム温度:70±5℃
検出器:検出器温度:100℃、CURRENT:160mA
キャリアーガス:カラム温度70±5℃の時にヘリウム流量80±5mL/min
構成基準物質:Aspartic acid
測定試料量:500±100mg
基準物質量:500±100mg
[灰分]
試料を恒量となったるつぼに秤取し、電熱器上で蓋を少しずらして炭化、灰白化させる。電気炉は最初100〜150℃、次に150〜200℃、300〜400℃と徐々に温度を上げ、表面に炭素が残留する程度になれば550℃で6時間加熱し、室温まで下げたのちに重量を測定し、以下の計算式で算出した。
灰分(%)=(灰化後の重量−るつぼ重量)/(試料重量−るつぼ重量)×100
[炭水化物]
炭水化物(%)=100−(脂肪分+タンパク量+水分+灰分)にて算出した。
[ナトリウム、カリウム]
ナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度は、ICP発光分析装置(島津製作所社製 製品名:ICPE−9000)を用いてICP発光分析法により定量した。
試料測定方法:
ICP発光分析装置(島津製作所 ICPE−9000)を用いて以下の1)〜7)の手順で行った。
・準備
1)試料1gをDigiTUBEs(SPC SCIENCE社)専用PP容器に採取する。
2)前記容器に硝酸(関東化学社製 EL−UM用)を5mL添加する。
3)試料の蒸発を防止するため、PP容器の上にPP製時計皿を置く。
・試料分解
4)後記するDigiPREP Jr.(SPC SCIENCE社製)の分解プログラムに従って試料を分解する。
5)105℃に保持した試料に対して、30%過酸化水素水(和光純薬社製 原子吸光用)を1ml添加し加熱する。
・定容
6)以上の5)までの処理を行った試料を超純水で50mlに定容する。
・測定
7)後記する測定条件でICP発光分析装置にて測定する。
・分解プログラム
分解プログラムはDigiPREP Jr.(SPC SCIENCE社製)にて65℃まで昇温し、35分間保持する。さらに105℃まで昇温して70分間加熱・分解を行った。
・測定条件
Na,Kについてそれぞれの標準として下記濃度の試料を分析し、検量線を作成した。得られた検量線から、対象試料の濃度を分析した。
標準液濃度:Na:0.5,2.5,5.0,12.5,25.0ppm。
K:1.0,5.0,10.0,25.0,50.0ppm。
それぞれの測定波長は、Na:589.592nm。
K:766.490nm。
[例1]
本例は、実施形態(I)の方法でクリームを製造した例であり、分離クリームを被処理液とした。
生乳(5℃)を、ディスク型クリームセパレータ(エレクレーム製)を用いて、分離温度60℃の条件下で分離処理を行い、必要に応じて脱脂乳を加えて脂肪含量45質量%の分離クリームを得た。得られた分離クリームを被処理液として用いた。被処理液中の脂肪分は乳脂肪のみである。以下、脂肪分含量を乳脂肪含量ともいう。被処理液中の脂肪球の平均粒子径は4.0μmであった。
被処理液を、プレート式加熱機により、第1均質化工程における均質化温度まで加熱し、圧力式ホモジナイザー(2段均質機、三丸機械工業社製)を用いて、均質化処理を行った。均質化温度は70℃、均質化圧力は全圧3MPa(第2次圧1MPa)とした。
均質化後の被処理液を、脱気槽内で被処理液を薄膜状にする手段を備えた脱気装置(トーワテクノ社製)に、バルブを備えた配管を介して導入し、脱気温度60℃、脱気圧−0.017MPaで脱気処理を行った。脱気処理後の被処理液(60℃)の溶存酸素濃度は3.1ppmであった。
続いて、脱気装置から送液ポンプを介して気密に接続されたUHT(超高温殺菌法)殺菌装置(森永エンジニアリング(株)製、連続式プレート殺菌機)へ被処理液を送液し、120℃、15秒間の条件で殺菌処理を行った。殺菌処理された被処理液を、UHT殺菌装置内のプレート式冷却機により、第2均質化工程における均質化温度まで冷却した。殺菌装置の出口は、配管を介してプレート式冷却機と気密に接続されており、前記配管の途中に圧力式ホモジナイザー(2段均質機、三丸機械工業社製)が設けられている。殺菌処理後の被処理液を、前記圧力式ホモジナイザーで均質化処理した後、プレート式冷却機で5℃まで冷却した。均質化温度は85℃、均質化圧力は全圧4MPa(第2次圧1MPa)とした。冷却後、バルブを介して排出し、一晩、冷蔵庫(5℃)でエージングしてクリームを得た。
本例における、分離工程の開始前からエージング工程の終了までの、温度および圧力の経時変化を図1、2にそれぞれ示す。
本例で被処理液として用いた分離クリームの組成は表4の例1に示す通りである。
[平均粒子径、脂肪浮上率、遊離脂肪率]
得られたクリームについて、脂肪球の平均粒子径、脂肪浮上率、遊離脂肪率をそれぞれ上記の方法で測定した。結果を表1に示す。
脂肪浮上率は2.1質量%未満を○、2.1質量%以上2.8質量%未満を△、2.8質量%以上を×とした。
遊離脂肪率は1.2質量%未満を○、1.2質量%以上2.0質量%未満を△、2.0質量%以上を×とした。
[クリームの官能評価]
得られたクリームを液状で(ホイップせずに)専門パネラー15名が試食し、下記の基準で風味を5段階評価した。なお、油っぽさという評価用語は「バターっぽさ、油っぽさ、脂肪酸化臭の匂い」と対応し、獣臭さという評価用語は「グラッシー、動物臭」と対応するものとした。15名の合計点を求め、合計点が45点以上の場合を○、30点以上45点未満の場合を△、30点未満の場合を×とした。結果を表1に示す。
5点:乳本来の風味がかなり強く、油っぽさや獣臭さを全く感じない。
4点:乳本来の風味が強く、油っぽさや獣臭さをほとんど感じない。
3点:どちらかといえば乳本来の風味が強く、油っぽさや獣臭さを感じない。
2点:どちらかといえば乳本来の風味が弱く、油っぽさや獣臭さを感じる。
1点:乳本来の風味が弱く、油っぽさや獣臭さを感じる。
[ホイップ性の評価(エンド幅率)]
上記の方法でエンド幅率を測定した。結果を表1に示す。
[ホイップドクリームの比重]
エンド幅率の測定において、ペネトロ値が195±5(終点)となるまでホイップ終了した直後のホイップドクリームの比重を100ml計量カップ(100mlを充填した際の質量)により測定した。結果を表1に示す。
[ホイップドクリームの官能評価]
得られたクリームを上記ペネトロ値の終点までホイップしたホイップドクリームを、専門パネラー15名が試食し、下記の基準で風味を5段階評価した。15名の合計点を求め、合計点が70点以上の場合を◎+、60点以上70点未満の場合を◎、45点以上60点未満の場合を○、30点以上45点未満の場合を△、30点未満の場合を×とした。結果を表1に示す。
5点:乳本来の風味が強く、風味良好なクリームであると強く感じた。
4点:乳本来の風味が強く、風味良好なクリームであると感じた。
3点:どちらかといえば乳本来の風味が強く、風味良好なクリームであると感じた。
2点:どちらかといえば乳本来の風味が弱く、風味が悪いクリームであると感じた。
1点:乳本来の風味が弱く、風味が悪いクリームであると感じた。
[例2〜6]
例1において、製造条件を表1に示すとおりに変更し、例1と同様の測定または評価を行った。結果を表1に示す。
例2は、例1において、溶存ガス低減工程を行わなかった比較例である。
例3は、例1において、窒素ガスをバブリングする方法で溶存ガスを低減し、脱気を行わなかった比較例である。
例4は、例1において、脱気後に窒素ガスを導入する方法で溶存ガスを低減させた比較例である。
例5は、例1において第1均質化工程を行わず、窒素ガスをバブリングする方法で溶存ガスを低減し、脱気を行わなかった比較例である。
例6は、例1において第1均質化工程を行わず、脱気後に窒素ガスを導入する方法で溶存ガスを低減させた比較例である。
Figure 0006709729
表1の結果より、実施形態(I)の方法でクリームを製造した例1は、脂肪浮上率が低くて乳化安定性が良好であり、遊離脂肪率が低くてクリームの風味に優れる。またホイップ性も良好であり、風味に優れたホイップドクリームが得られた。
これに対して、溶存ガス低減工程を行わなかった例2では、遊離脂肪率が高く、クリームの風味が劣る。
窒素ガスをバブリングする方法で被処理液中の溶存酸素濃度を低下させた例3、5は、遊離脂肪率が高く、クリームの風味が劣る。バブリングによりクリームが物理的な外力を受けて乳化破壊が生じたためと考えられる。
脱気後に常圧に戻す際に窒素を導入した例4、6は、遊離脂肪率が高く、クリームの風味が劣る。これは、窒素導入に伴うバブリングされた状態で第2均質化工程が行われたために、バブリングによる物理的なストレスが加わって乳化破壊が生じ、遊離脂肪量が増えたためと考えられる。
[例11〜17]
例1において、製造条件を表2に示すとおりに変更し、例1と同様の測定または評価を行った。結果を表2に示す。
例11〜13は、例1における脱気温度を変更した例である。例11、12は実施例、例13は比較例である。
例14〜17は、例1における脱気圧を変更した例である。例15、16は実施例、例14、17は比較例である。
Figure 0006709729
表2の結果より、実施形態(I)の方法でクリームを製造した例1、11、12、15、16は、脂肪浮上率が低くて乳化安定性が良好であり、遊離脂肪率が低くてクリームの風味に優れる。またホイップ性も良好であり、風味に優れたホイップドクリームが得られた。
これに対して、脱気温度が低い例13、及び脱気圧の絶対値が小さい例14では、クリームにおける遊離脂肪率が高くなり、かつホイップドクリームにおける脂肪分解臭や獣臭が強くなり、乳本来の風味が低減してしまった。また、脱気圧の絶対値が大きい例17では風味があっさりとした淡泊ものとなり、乳本来の風味が低減してしまった。
[例21〜24]
例1において、製造条件を表3に示すとおりに変更し、例1と同様の測定または評価を行った。結果を表3に示す。
例21は、例1において脂肪球の平均粒子径が3.6となるように均質化条件を変更した実施例である。
例22は、例1において第1均質化工程を行わなかった(均質化圧力がゼロ)の比較例である。
例23、24は、脱脂乳の添加量を変えて分離クリームの脂肪含量(乳脂肪含量)を50質量%に調整したものを被処理液として用いた実施例である。
Figure 0006709729
表3の結果より、実施形態(I)の方法でクリームを製造した例1、21、23、24は、脂肪浮上率が低くて乳化安定性が良好であり、遊離脂肪率が低くてクリームの風味に優れる。またホイップ性も良好であり、風味に優れたホイップドクリームが得られた。
例22は、例1において第1均質化工程を行わなかったため、脂肪球の平均粒子径が3.8と大きくなり、脂肪浮上率が高くなった。
[例31]
本例は、実施形態(II)の方法でクリームを製造した例である。すなわち、例1では分離クリームを被処理液としたが、本例では前記分離クリームを第1の組成物とし、これに第2の組成物として脱塩脱脂濃縮乳を添加した混合液を被処理液とした。脱塩脱脂濃縮乳の添加量は被処理液に対して5質量%とした。その他は例1と同様にしてクリームを製造した。具体的には以下のとおりである。
(1)分離工程
生乳を、ディスク型セパレーター(エレクレーム社製)を用いて、分離温度60℃の条件下で分離処理を行い、分離クリームと脱脂乳に分離した。必要に応じて、脱脂乳を加えて脂肪含量47.5%の分離クリームを得た。
(2)脱塩脱脂濃縮乳製造工程
前記(1)の分離工程で得られた脱脂乳をプレート式熱交換器で10℃以下まで冷却した。冷却した脱脂乳をナノフィルとレーション膜(製品名:7250HG、日東電工社製)に通液しTS(全固形分)が2.5倍になるまで濃縮した。この濃縮液(脱塩脱脂濃縮乳)の固形分、Na、Kの含量はそれぞれ下記のとおりであった。
固形分:22.5%。
固形分あたりのNa量:11mmol/100g of TS
固形分あたりのK量:26mmol/100g of TS
なお、使用する膜は下記の範囲にミネラル含量が含まれるものであれば、膜の種類は特に限定はされない。
固形分あたりのNa量:16mmol/100g of TS
固形分あたりのK量:38mmol/100g of TS
(3)脂肪率調整工程
前記(1)で得た脂肪含量47.5%に分離したクリームに、前記(2)で得られた脱塩脱脂濃縮乳を混ぜ、脂肪率を45%に調整した。100gあたりの配合は以下のとおりである。
・47.5%分離クリーム:94.8g
・脱塩脱脂濃縮乳:5.2g
(4)殺菌工程以降
以後は、例1と同様に、第1均質化工程、溶存ガス低減工程、殺菌工程、第2均質化工程を実施した。
以上のように得られたクリームに対して、例1と同様の測定または評価を行った。結果を表4に示す。
本例において第1の組成物として用いた分離クリームの成分組成は、表4に示す例1の被処理液の成分組成と同じである。
本例において第2の組成物として用いた脱塩脱脂濃縮乳は、脱脂乳をナノ濾過膜(NF膜)で脱塩処理して得られる濃縮液であり、成分組成は以下の通りである。本例における被処理液の成分組成は表4に示す通りである。
[脱塩脱脂濃縮乳の成分組成]
脱塩脱脂濃縮乳に対して、固形分22.9%、脂肪0.2%、タンパク質8.5%、炭水化物12.6%、灰分1.6%。固形分に対して、ナトリウム含量11.2mmol/100g固形分、カリウム含量26.7mmol/100g固形分。
[例32〜34]
例31において、製造条件を表4に示すとおりに変更し、例4と同様の測定または評価を行った。結果を表4に示す。
例32は、例31における脱気圧を変更した例である。
例33は、例31において第1均質化工程を行わず、窒素ガスをバブリングする方法で溶存ガスを低減し、脱気を行わなかった比較例である。
例34は、例31における脱塩脱脂濃縮乳の添加量を被処理液に対して10質量%に変更した例である。具体的には以下のとおりである。
(1)例31と同様の方法により脂肪含量50%の分離クリームを作成した。
(2)例31と同様に脱脂乳をNF膜に通液し、脱塩脱脂濃縮乳を得た。
(3)以降は例31と同様にクリームの脂肪率を45%へ調整した。100gあたりの配合は、以下のとおりである。
・50.0%分離クリーム:90.0g
・脱塩脱脂濃縮乳:10.0g
(4)その後、殺菌工程以降の工程は例31と同様である。
[例35]
本例は、例31における第2の組成物をバターミルクパウダーに変更した例である。バターミルクパウダーの成分組成は下記の通りである。バターミルクパウダーの添加量は被処理液に対して1質量%とした。その他は例31と同様にしてクリームを製造した。具体的には以下のとおりである。
(1)例31と同様の方法により脂肪含量45.5%の分離クリームを作成した。
(2)前記(1)で得た分離クリームとバターミルクパウダーを以下の配合で混合し、脂肪率45%のクリームを得た。すなわち、100gあたりの配合は以下のとおりである。
・45.5%分離クリーム:99.0g
・バターミルクパウダー:1.0g
(3)以降は例31と同様とした。
以上のようにして得られたクリームに対して、例31と同様の測定または評価を行った。結果を表4に示す。本例における被処理液の成分組成は表4に示す通りである。
[バターミルクパウダーの成分組成]
バターミルクパウダーに対して、固形分96.9%、脂肪7.9%、タンパク質29.5%、炭水化物52.8%、灰分6.7量%。固形分に対して、ナトリウム含量17.8mmol/100g固形分、カリウム含量41.0mmol/100g固形分。
Figure 0006709729
表4の結果より、実施形態(II)の方法でクリームを製造した例31、32、34、35は、脂肪浮上率が低くて乳化安定性が良好であり、遊離脂肪率が低くてクリームの風味に優れる。またホイップ性も良好であり、風味に優れたホイップドクリームが得られた。特に第2の組成物として脱塩脱脂濃縮乳を用いた例31、32、34は、ホイップドクリームにおいて優れた風味が得られた。
また脱気圧の絶対値を小さくした例32においても、良好な結果が得られた。
一方、窒素ガスをバブリングする方法で被処理液中の溶存酸素濃度を低下させた例33は、脂肪浮上率が高く、遊離脂肪率が高く、クリームの風味が劣る。バブリングによりクリームが物理的な外力を受けて乳化破壊が生じたためと考えられる。
[例41〜44]
例1における各工程の順番を表5に示すとおりに変更した。表5は工程(1)〜工程(7)をこの順に行ったことを示す。
工程の順番以外は例1と同様にしてクリームを製造し、例1と同様の測定または評価を行った。結果を表6に示す。
Figure 0006709729
Figure 0006709729
表5、6の結果に示されるように、例41〜44のいずれにおいても例1とほぼ同等の良好な結果が得られた。
なお、例31における各工程の順番を表5に示すとおりに変更しても、例31とほぼ同等の良好な結果が得られた。

Claims (7)

  1. 乳(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に定められる乳)から分離された分離クリームを含む被処理液を、殺菌処理および均質化処理してクリーム類を製造する方法において、
    被処理液を加熱する殺菌工程と、
    被処理液を50〜95℃にて均質化する第1均質化工程と、
    前記第1均質化工程の後に、被処理液を50℃以上で均質化する第2均質化工程と、
    少なくとも前記殺菌工程および第2均質化工程の前に、被処理液を脱気温度50〜95℃にて、脱気圧−0.025〜−0.01MPaの負圧下で脱気し、溶存ガスを低減させる溶存ガス低減工程を有し、
    被処理液に対してバブリングを行わず、
    少なくとも前記溶存ガス低減工程と、その後に行う殺菌工程および第2均質化工程とを、被処理液で満たされた一連の密閉系内で行う、クリーム類の製造方法。
  2. 前記第1均質化工程および第2均質化工程は、被処理液を加圧した後、少なくとも1回減圧する操作を含み、前記各減圧する操作における減圧前後の差圧の合計を均質化圧力とすると、
    前記第1均質化工程における均質化圧力が0MPaを超え8.0MPa以下であり、かつ前記第2均質化工程における均質化圧力が0MPaを超え8.0MPa以下であり、得られるクリーム類の脂肪球の平均粒子径が2.3〜3.6μmである、請求項に記載のクリーム類の製造方法。
  3. 前記溶存ガス低減工程における被処理液の脱気温度が60〜80℃である、請求項1または2に記載のクリーム類の製造方法。
  4. 更に、前記被処理液に、別途の、乳由来の成分を含む第2の組成物を添加する工程を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のクリーム類の製造方法。
  5. 前記第2の組成物の脂肪含量が5質量%以下である、請求項に記載のクリーム類の製造方法。
  6. 前記第2の組成物の固形分含量が13〜45質量%である、請求項またはに記載のクリーム類の製造方法。
  7. 前記第2の組成物は、ナトリウム含量が16mmol/100g固形分以下であり、かつカリウム含量が38mmol/100g固形分以下である、請求項〜請求項のいずれか一項に記載のクリーム類の製造方法。
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