JP6703979B2 - ニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法 - Google Patents

ニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、強誘電体薄膜素子に関し、特に、非鉛系のニオブ酸系強誘電体を具備する薄膜素子を製造する方法に関するものである。
強誘電体は、その特異な性質(例えば、極めて高い比誘電率、焦電性、圧電性、強誘電性など)から大変魅力的な物質であり、各性質を活かしてセラミック積層コンデンサ、焦電素子、圧電素子、強誘電体メモリなどとして利用されている。代表的な材料としては、ペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウム(BaTiO3)やチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1-xTix)O3、PZTと略す)が挙げられる。なかでも、優れた分極性・圧電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が広く用いられてきた。
PZTは、鉛を含有する特定有害物質であるが、現在のところ焦電材料・圧電材料として代替できる適当な市販品が存在しないため、RoHS指令(電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令)の適用免除対象となっている。しかしながら、世界的に地球環境保全の要請はますます強まっており、鉛を含有しない強誘電体(非鉛系強誘電体)を使用した焦電素子・圧電素子の開発が強く望まれている。
また、近年における各種電子機器への小型化・軽量化の要求に伴って、薄膜技術を利用した強誘電体薄膜素子の要求が高まっている。
本明細書では、以下、強誘電体薄膜素子として圧電薄膜素子や焦電薄膜素子を念頭に置いて説明する。なお、圧電素子とは、強誘電体の圧電効果を利用する素子であり、強誘電体(圧電体)への電圧印加に対して変位や振動を発生するアクチュエータや、圧電体への応力変形に対して電圧を発生する応力センサなどの機能性電子部品として広く利用されている。また、焦電素子とは、強誘電体の焦電効果によって赤外線を含む光を検出する素子であり、人体検出用赤外線センサなどとして広く利用されている。
非鉛系圧電材料を使用した圧電体薄膜素子として、例えば特許文献1には、基板上に、下部電極、圧電薄膜、及び上部電極を有する圧電薄膜素子において、上記圧電薄膜を、組成式(NaxKyLiz)NbO3(0<x<1、0<y<1、0≦z<1、x+y+z=1)で表記されるアルカリニオブ酸化物系のペロブスカイト化合物で構成される誘電体薄膜とし、その圧電薄膜と上記下部電極の間に、バッファ層として、ペロブスカイト型結晶構造を有し、かつ、(0 0 1)、(1 0 0)、(0 1 0)、及び(1 1 1)のいずれかの面方位に高い配向度で配向され易い材料の薄膜を設けたことを特徴とする圧電薄膜素子が開示されている。特許文献1によると、鉛フリーのニオブ酸リチウムカリウムナトリウム薄膜を用いた圧電薄膜素子で、十分な圧電特性が得られるとされている。
圧電素子は、圧電体が2枚の電極で挟まれた構成を基本構造とし、用途に応じて梁形状や音叉形状に微細加工されて作製される。そのため、非鉛系圧電材料を用いた圧電素子の実用化に際し、微細加工プロセスは非常に重要な技術の一つである。
例えば特許文献2には、基板上に圧電体薄膜(組成式:(K1-xNax)NbO3、0.4≦x≦0.7)を備えた圧電体薄膜ウェハに、Arを含むガスを用いてイオンエッチングを行う第1の加工工程と、前記第1の加工工程に続いて、フッ素系反応性ガスとArとを混合した混合エッチングガスを用いて反応性イオンエッチングを行う第2の加工工程とを実施することを特徴とする圧電体薄膜ウェハの製造方法が開示されている。特許文献2によると、圧電体薄膜を高精度に微細加工することができ、また、信頼性の高い圧電体薄膜素子と、安価な圧電体薄膜デバイスが得られるとされている。
また特許文献3には、基板上に下部電極を形成する工程と、前記下部電極上に組成式(K 1-xNax)NbO3で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の圧電膜を形成する工程と、前記圧電膜にウェットエッチングを行う工程とを備え、前記ウェットエッチング工程において、Cr膜をマスクとして用いることを特徴とする圧電膜素子の製造方法が開示されている。特許文献3によると、Cr膜をマスクとしてフッ酸系エッチング液を用い、圧電膜層をウェットエッチングすることで、下部電極層において選択的に加工を停止することができるとともに、圧電膜層を短時間で精度よく微細加工することができるとされている。
特開2007−19302号公報 特開2012−33693号公報 特開2012−244090号公報
前述したように、非鉛系強誘電体としてニオブ酸系強誘電体(例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム,(K1-xNax)NbO3)は、大変有望な材料の一つである。PZT薄膜素子の代替品となるように、ニオブ酸系強誘電体を用いた薄膜素子を実用化・量産化するためには、寸法精度がよく低コストの微細加工プロセスを確立することは非常に重要である。
しかしながら、ニオブ酸系強誘電体は比較的新しい材料群であるため、微細加工プロセスに関しては、現在も試行錯誤の段階である。例えば、特許文献2に記載のドライエッチング技術は、高い寸法精度を確保できるものの、真空プロセスの一種であるため高価なエッチング装置が必要となる上に、スループットが比較的低いという弱点があった。
一方、特許文献3に記載のウェットエッチング技術は、スループットが比較的高く、ドライエチングプロセスよりも製造コストの低減に有利である。ただし、ニオブ酸系強誘電体は、化学的に安定な材料であり、これまでフッ酸系エッチング液を用いなければ微細加工が難しかった。フッ酸系エッチング液は、その取扱いに厳重な安全対策を必要とする上に、使用できるエッチングマスクにも制約があるなど、量産化を考えると製造コスト低減の利点が大きく相殺されるという弱点があった。
したがって本発明の目的は、上記課題を解決し、鉛を含まないニオブ酸系強誘電体を用いた薄膜素子を寸法精度よくかつ従来よりも低コストで微細加工できる製造方法を提供することにある。
本発明の1つの態様は、ニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法であって、
基板上に下部電極膜を形成する下部電極膜形成工程と、
前記下部電極膜上にニオブ酸系強誘電体薄膜を形成する強誘電体薄膜形成工程と、
前記ニオブ酸系強誘電体薄膜上にエッチングマスクを所望のパターンとなるように形成するエッチングマスクパターン形成工程と、
前記ニオブ酸系強誘電体薄膜に対してキレート剤とアルカリ水溶液と過酸化水素水(H2O2
aq.)とを含むエッチング液を用いたウェットエッチングを行うことによって、前記ニオブ酸系強誘電体薄膜に所望パターンの微細加工を行う強誘電体薄膜エッチング工程とを有し、
前記アルカリ水溶液はアンモニア水溶液(NH3 aq.)を含み、
前記エッチングマスクは貴金属膜を介して積層したアモルファスフッ素樹脂膜であることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法を提供する。
また本発明は、上記の本発明に係るニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記製造方法は、前記ニオブ酸系強誘電体薄膜上に上部電極を形成する上部電極形成工程と、前記上部電極が形成されたニオブ酸系強誘電体薄膜を具備する前記基板からチップ状のニオブ酸系強誘電体薄膜素子を切り出すダイシング工程とを更に有し、前記上部電極が前記貴金属膜である。
(ii)前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)(HEDP)、グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)(GBMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、クエン酸、およびそれらの塩から選ばれる少なくとも一つである。
(iii)前記キレート剤として、EDTA、EDTMP、NTMP、CyDTA、HEDP、GBMP、DTPMP、またはそれらの塩を用いる場合、前記エッチング液中の該キレート剤のモル濃度は0.001 M(mol/L)以上0.5 M(mol/L)以下であり、前記キレート剤として、クエン酸またはクエン酸塩を用いる場合、前記エッチング液中の該キレート剤のモル濃度は0.03 M以上1 M以下である。
(iv)前記キレート剤の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも一つである。
(v)前記貴金属膜は、チタン(Ti)層を介した白金(Pt)膜、または、ニッケル(Ni)層、コバルト(Co)層、タングステン(W)層またはモリブデン(Mo)層のうちの一つを介した金(Au)膜である。
(vi)前記強誘電体薄膜エッチング工程は、前記エッチング液の温度が60℃以上100℃未満である。
(vii)前記ニオブ酸系強誘電体薄膜は、ニオブ酸カリウムナトリウム((K1-xNax)NbO3、KNN)またはニオブ酸リチウム(LiNbO3、LN)からなる。
(viii)前記下部電極膜は、Ti層を介したPt膜である。
(ix)前記ニオブ酸系強誘電体薄膜は、結晶系が擬立方晶または正方晶であり主表面が(0
0 1)面に優先配向するようにスパッタ法により形成される。
(x)前記基板は、その表面に熱酸化膜を有するシリコン(Si)基板である。
本発明によれば、鉛を含まないニオブ酸系強誘電体を寸法精度よくかつ従来よりも低コストのウェットエッチングにより所望のパターンに微細加工することが可能になる。その結果、製造コストを下げながら、所望のパターンに微細加工されたニオブ酸系強誘電体薄膜素子を提供することができる。
本発明に係るニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造工程の概略を示す拡大断面模式図である。 実施例1のKNN薄膜積層基板におけるエッチング速度と溶液温度との関係の例を示すグラフである。 実施例1のKNN薄膜積層基板におけるエッチング速度と溶液温度との関係の他の例を示すグラフである。 実施例1のKNN薄膜積層基板に対する微細加工結果例を示す光学顕微鏡写真である。 実施例2のKNN薄膜積層基板に対する微細加工結果例を示す光学顕微鏡写真である。 本発明で作製したKNN薄膜素子および基準試料における分極値と印加電圧との関係例を示したグラフである。
本発明者等は、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1-xTix)O3、PZT)と同等の焦電特性・圧電特性を期待できる非鉛系強誘電体としてニオブ酸系強誘電体(ニオブ酸カリウムナトリウム((K1-xNax)NbO3、KNN)およびニオブ酸リチウム(LiNbO3、LN))に着目し、該材料のウェットエッチング方法について鋭意検討した。その結果、従来はフッ酸系エッチング液を用いなければ微細加工が困難とされていたニオブ酸系強誘電体が、キレート剤とアルカリ水溶液と過酸化水素水とを含むエッチング液を用いることによって寸法精度よくウェットエッチング可能であることを見出した。さらに、フッ酸系エッチング液でないことから、エッチングマスクとして樹脂膜を利用できることを見出した。
キレート剤は、フッ酸に比して、生体・環境に対する有害性が低いと考えられており、エッチング設備費用を含む製造コストを大きく低減することができる。また、エッチングマスクとして樹脂膜を利用できることから、エッチングプロセス(特に、エッチングマスクの形成プロセス)の簡素化が可能になり、プロセスコストを更に低減することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。また、ニオブ酸系強誘電体としては主にKNNを題材にして説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
図1は、本発明に係るニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造工程の概略を示す拡大断面模式図である。なお、以下の説明では、洗浄工程や乾燥工程を省略するが、それらの工程は必要に応じて適宜行われることが好ましい。
はじめに、基板11を用意する。基板11の材料は、特に限定されず、焦電素子や圧電素子の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、シリコン(Si)、SOI(Silicon on Insulator)、石英ガラス、砒化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、サファイア(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO 3)などを用いることができる。これらの中でも、Si基板を用いることがコストの面では好ましい。また、基板11が導電性材料からなる場合は、その表面に電気絶縁膜(例えば酸化膜)を有していることが好ましい。酸化膜の形成方法に特段の限定はないが、例えば、熱酸化処理や化学気相成長(Chemical Vapor Deposition、CVD)法を好適に用いることができる。
(下部電極膜形成工程)
本工程では、基板11上に下部電極膜12を形成する(図1(a)参照)。下部電極膜12の材料は、特に限定されないが、白金(Pt)又はPtを主成分とする合金を用いることが好ましい。Ptは、後述する強誘電体薄膜エッチング工程で用いるエッチング液に対して不活性であるため、エッチングストッパとして機能することができる。下部電極膜12の厚さおよび形成方法に特段の限定は無く、例えば、100〜300 nm程度の厚さをスパッタ法で成膜することが好ましい。
なお、基板11と下部電極膜12との密着性を高めるため、下部電極膜12は密着層(例えば、厚さ1〜5 nmのチタン(Ti)層)を介して形成することが好ましい。また、下部電極膜12は、ニオブ酸系強誘電体薄膜の焦電特性や圧電特性を十分に発揮させるため、算術平均表面粗さRaが0.86 nm以下であることが好ましい。
(強誘電体薄膜形成工程)
本工程では、下部電極膜12上にニオブ酸系強誘電体薄膜13を形成する(図1(a)参照)。ニオブ酸系強誘電体の材料としては、KNN((K1-xNax)NbO3、0.4≦ x ≦0.7)を用いることが好ましい。また、形成するニオブ酸系強誘電体薄膜13は、KNN結晶の結晶系が擬立方晶または正方晶であり、薄膜の主表面が(0 0 1)面に優先配向されているものが、強誘電体特性上好ましい。
ニオブ酸系強誘電体薄膜13の形成方法としては、所望のKNN薄膜が得られる限り特段の限定はないが、所望の組成を有する焼結体ターゲットを用いたスパッタ法や電子ビーム蒸着法やパルスレーザー堆積法を好適に用いることができる。これらの成膜法は、成膜再現性、成膜速度およびランニングコストの面で優れていることに加えて、KNN結晶の配向性を制御することが可能であるためである。
なお、KNN薄膜は、合計5原子%以下の範囲でリチウム(Li)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、バリウム(Ba)及びTiのうちの一種以上を含んでいてもよい。
また、ニオブ酸系強誘電体の材料としてLN(LiNbO3)を用いることも好ましい。他は上記KNNの場合と同様である。
(上部電極形成工程)
本工程では、ニオブ酸系強誘電体薄膜13の上に上部電極膜14を成膜する(図1(b)参照)。上部電極膜14の材料としては、例えば、Pt、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、金(Au)等の貴金属を好適に用いることができる。上部電極膜14の厚さおよび形成方法に特段の限定は無く、例えば、100〜300 nm程度の厚さをスパッタ法で成膜することが好ましい。
なお、ニオブ酸系強誘電体薄膜13と上部電極膜14との密着性を高めるため、上部電極膜14は密着層(例えば、厚さ2〜5 nmのTi層や、厚さ5〜50 nmのニッケル(Ni)層、コバルト(Co)層、タングステン(W)層またはモリブデン(Mo)層)を介して形成することが好ましい。
(エッチングマスク形成工程)
本工程では、成膜した上部電極膜14上に、後述するウェットエッチングに対するエッチングマスクを形成する。まず、上部電極膜14上にエッチングマスク膜15となるアモルファスフッ素樹脂を成膜する(図1(b)参照)。次に、フォトリソグラフィプロセスにより、エッチングマスク膜15をパターニングするためのフォトレジストパターン16をエッチングマスク膜15上に形成する(図1(c)参照)。次に、フォトレジストパターン16に沿ってエッチングマスク膜15をエッチングし、所望のパターンを有するエッチングマスクパターン15’を形成する(図1(d)参照)。
(上部電極膜エッチング工程)
本工程では、上部電極膜14に対して、エッチングマスクパターン15’およびフォトレジストパターン16によって規定されるパターンにエッチングを行い、上部電極14’を形成する(図1(d)参照)。上部電極膜14のエッチング方法に特段の限定は無く、ドライエッチング法を用いてもよいしウェットエッチング法を用いてもよい。
次に、エッチングマスクパターン15’および上部電極14’を残してフォトレジストパターン16を除去する(図1(e)参照)。これにより、所望のエッチングマスクパターンを具備する強誘電体薄膜積層基板10を得ることができる。
(強誘電体薄膜エッチング工程)
本工程では、ニオブ酸系強誘電体薄膜13に対してウェットエッチングを行い、エッチングマスクパターン15’によって規定されるパターンに微細加工を行う(図1(f)参照)。エッチング液としては、キレート剤とアルカリ水溶液と過酸化水素水とを含みフッ酸(HF aq.)を含まないエッチング液を用いることが好ましい。これにより、従来のフッ酸系エッチング液に対して必要とされてきた安全対策コストを低減することができる。
エッチング液を具体的に説明する。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)(HEDP)、グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)(GBMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、クエン酸、およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、およびアンモニウム塩)から選ばれる少なくとも一つを好ましく用いることができる。
上記キレート剤の塩の例としては、エチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、エチレンジアミン四酢酸・三ナトリウム塩(EDTA・3Na)、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム塩(EDTA・4Na)、エチレンジアミン四酢酸・二カリウム塩(EDTA・2K)、エチレンジアミン四酢酸・三カリウム塩(EDTA・3K)、エチレンジアミン四酢酸・二リチウム塩(EDTA・2Li)、エチレンジアミン四酢酸・二アンモニウム塩(EDTA・2NH4)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・五ナトリウム塩(EDTMP・5Na)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)・五ナトリウム塩(NTMP・5Na)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)・三ナトリウム塩(HEDP・3Na)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)・四ナトリウム塩(HEDP・4Na)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)・七ナトリウム塩(DTPMP・7Na)、クエン酸・二水素ナトリウム塩、クエン酸・水素二ナトリウム塩、クエン酸・三ナトリウム塩、クエン酸・二水素カリウム塩、クエン酸・水素二カリウム塩、クエン酸・三カリウム塩、クエン酸・三リチウム塩、クエン酸・二水素アンモニウム塩、クエン酸・水素二アンモニウム塩、およびクエン酸・三アンモニウム塩などが挙げられる。
キレート剤として、EDTA、EDTMP、CyDTA、NTMP、HEDP、GBMP、DTPMP、またはそれらの塩を用いる場合、エッチング液中の該キレート剤のモル濃度は、0.001 M(mol/L)以上0.5 M(mol/L)以下が好ましく、0.003 M以上0.3 M以下がより好ましく、0.01 M以上0.2 M以下が更に好ましい。キレート剤のモル濃度が0.001 M未満だとエッチング反応活性が不十分になり、0.5 M超になるとエッチング反応活性が低下する。
また、キレート剤としてクエン酸またはクエン酸塩を用いる場合、エッチング液中の該キレート剤のモル濃度は、0.03 M(mol/L)以上1 M(mol/L)以下が好ましく、0.05 M以上0.7 M以下がより好ましく、0.1 M以上0.6 M以下が更に好ましい。キレート剤のモル濃度が0.03 M未満だとエッチング反応活性が不十分になり、1 M超になるとエッチング反応活性が低下する。
これらキレート剤の溶媒としては、アルカリ水溶液と過酸化水素水(H2O2 aq.)とを用いることが好ましい。アルカリ水溶液としては、アンモニア水溶液(NH3 aq.)や水酸化ナトリウム水溶液(NaOH aq.)や水酸化カリウム水溶液(KOH aq.)を用いることができるが、アンモニア水溶液を主として含むことが好ましい。
エッチング液は、その水素イオン指数(pH)が7.5以上12以下となるように調整されることが好ましく、8以上10以下となるように調整されることがより好ましい。pHが7.5未満になると、エッチング反応活性が不十分になり、10超になるとエッチング反応活性が低下しはじめ、12超になるとエッチング反応活性が低下した状態で飽和する。
アルカリ水溶液としてアンモニア水溶液を用いる場合、アンモニア濃度は、例えば、3 M(mol/L)以上10 M(mol/L)以下が好ましい。pHの調整は、強酸(例えば、塩酸)や強塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)の添加によって行うことができる。
過酸化水素の濃度は、4 M(mol/L)以上9 M(mol/L)以下が好ましく、5 M以上8 M以下がより好ましい。過酸化水素濃度が4 M未満だとエッチング反応活性が不十分になり、9 M超になるとエッチング液の調整が困難になる。
なお、上記エッチング液を構成する薬品としては、それぞれ市販の試薬を用いることができる。また、使用するエッチング液は、ウェットエッチング処理の直前に調合することが好ましい。
エッチング液を調合するに際し、特に、調合しようとするエッチング液量が比較的多い場合(例えば、エッチング液量が2 L以上の場合)は、過酸化水素水に対して、別途用意したキレート剤とアンモニア水とからなる濃厚溶液(キレート剤/アンモニア濃厚溶液)を添加して希釈混合する二液混合方式で調合することが好ましい。キレート剤/アンモニア濃厚溶液は、保存性に優れる利点があるので事前に用意しておくことができる。
上記エッチング液を二液混合方式で調合することにより、ウェットエッチング処理の直前に必要量のエッチング液を極めて短時間で用意することができ、本エッチング工程全体としての所要時間を大きく短縮することができる(結果として、プロセスコストを更に低減することができる)。
これらのエッチング液は、前述したアモルファスフッ素樹脂膜からなるエッチングマスクパターン15’およびPt(Pt合金を含む)からなる下部電極膜12に対して不活性であるため、所望のパターンを有するニオブ酸系強誘電体薄膜パターン13’を形成することができる(図1(f)参照)。エッチング温度(エッチング液の温度)は、常温より加熱した方がエッチング反応を活性化できる。具体的には、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。ただし、作業環境の安全性確保の観点から、100℃未満が好ましい。
本発明におけるエッチング反応のメカニズムは完全に解明されていないが、キレート剤と過酸化水素とを共存させることにより、化学的に非常に安定なパーオキシキレート(例えば、Nb-H2O2-EDTAやNb-H2O2-EDTMP)が生成することで、ニオブ酸系強誘電体がエッチングされるものと考えられる。
上記のウェットエチング後、エッチングマスクパターン15’を除去する(図1(g)参照)。エッチングマスクパターン15’の除去方法に特段の限定は無く、例えば、ドライエッチング法を好ましく用いることができる。
(ダイシング工程)
本工程では、所望のパターンを有するニオブ酸系強誘電体薄膜パターン13’および上部電極14’を具備する基板からチップ状のニオブ酸系強誘電体薄膜素子20を切り出す(図1(h)参照)。符号11’はチップ状基板を表し、符号12’は下部電極を表す。これにより、所望のパターンに微細加工されたニオブ酸系強誘電体薄膜を具備する強誘電体薄膜素子20を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
検討1
[ニオブ酸カリウムナトリウム薄膜素子]
(実施例1のKNN薄膜積層基板の作製)
図1に示した製造工程に沿って、KNN薄膜積層基板を作製した。基板11としては、熱酸化膜付きSi基板((1 0 0)面方位の4インチウェハ、ウェハ厚さ0.525 mm、熱酸化膜厚さ200 nm)を用いた。
なお、本発明において、各層(例えば、下部電極密着層、下部電極膜12、ニオブ酸系強誘電体薄膜13、上部電極密着層、上部電極膜14)の厚さの制御は、予め検証した成膜速度を基にして成膜時間を制御することにより行った。また、成膜速度を算出するための厚さの測定は、X線回折装置(スペクトリス株式会社(PANalytical事業部)製、型式:X’Pert PRO MRD)を用いて、X線反射率法により行った。
はじめに、基板11と下部電極膜12との密着性を高めるための下部電極密着層として、厚さ2.2 nmのTi層をSi基板上にRFマグネトロンスパッタ法により成膜した。続いて、下部電極膜12として厚さ205 nmのPt層をTi層上にRFマグネトロンスパッタ法により成膜した(図1(a)参照)。下部電極密着層および下部電極膜のスパッタ成膜条件は、純Tiターゲットおよび純Ptターゲットを用い、基板温度250℃、放電パワー200 W、Ar雰囲気、圧力2.5 Paとした。成膜した下部電極膜12に対して表面粗さを測定し、算術平均粗さRaが0.86 nm以下であることを確認した。なお、スパッタ装置としてはRFスパッタ装置(株式会社アルバック、型式:SH-350-T10)を用いた(以下同様)。
次に、下部電極膜12上に、ニオブ酸系強誘電体薄膜13として厚さ1.9μmのKNN薄膜((K0 .35Na0.65)NbO3)をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した(図1(a)参照)。KNN薄膜のスパッタ成膜条件は、(K0.35Na0.65)NbO3焼結体ターゲットを用い、基板温度400〜600℃、放電パワー700〜800 W、酸素ガスとアルゴンガスの混合雰囲気(混合比:O2/Ar = 0.005)、圧力0.3〜1.3 Paとした。
次に、ニオブ酸系強誘電体薄膜13と上部電極膜14との密着性を高めるための上部電極密着層として、厚さ2 nmのTi層をニオブ酸系強誘電体薄膜13上にRFマグネトロンスパッタ法により成膜した。続いて、上部電極膜14として厚さ100 nmのPt層をTi層上にRFマグネトロンスパッタ法により成膜した(図1(b)参照)。上部電極密着層および上部電極膜のスパッタ成膜条件は、下部電極膜12の場合と同様に、純Tiターゲットおよび純Ptターゲットを用い、基板温度250℃、放電パワー200 W、Ar雰囲気、圧力2.5 Paとした。
次に、上記で成膜した上部電極膜14上に、エッチングマスク膜15として厚さ950 nmのアモルファスフッ素樹脂(旭硝子株式会社製、CTL-809M)を塗布・乾燥・焼付により成膜した。その後、エッチングマスク膜15上に、フォトレジスト(東京応化工業株式会社製、OFPR-800)を塗布・露光・現像して、フォトレジストパターン16を形成した(図1(c)参照)。続いて、ドライエッチング装置(株式会社エリオニクス製、EIS-700)を用いて、フォトレジストパターン16に沿ってエッチングマスク膜15をエッチングし、所望のパターンを有するエッチングマスクパターン15’を形成した(図1(d)参照)。ドライエッチング条件は、アンテナパワー300 W、O2ガスフロー50 sccm、圧力2.7 Paとした。
続いて、同じくドライエッチング装置(株式会社エリオニクス製、EIS-700)を用いエッチング条件を変えて、エッチングマスクパターン15’およびフォトレジストパターン16に沿って上部電極膜14をエッチングし、上部電極14’を形成した。ドライエッチング条件は、アンテナパワー800 W、バイアスパワー100 W、Arガスフロー30 sccm、圧力1.8 Paとした。その後、アセトン洗浄によりフォトレジストパターン16を除去し、上部電極14’上にエッチングマスクパターン15’のみを残して、実施例1のKNN薄膜積層基板を完成させた(図1(d),(e)参照)。
(実施例2のKNN薄膜積層基板の作製)
実施例1のKNN薄膜積層基板に対して上部電極膜14(それをパターニングした上部電極14’)の構成を変更した実施例2のKNN薄膜積層基板を作製した。なお、上部電極14’の形成に関わる工程以外は、実施例1と同様に行った。
ニオブ酸系強誘電体薄膜13と上部電極膜14との密着性を高めるための上部電極密着層として、厚さ5 nmのNi層をニオブ酸系強誘電体薄膜13上にRFマグネトロンスパッタ法により成膜した。続いて、上部電極膜14として厚さ300 nmのAu層をNi層上にRFマグネトロンスパッタ法により成膜した。上部電極密着層および上部電極膜のスパッタ成膜条件は、純Niターゲットおよび純Auターゲットを用い、基板温度250℃、放電パワー200 W、Ar雰囲気、圧力2.5 Paとした。
次に、実施例1と同様にして、成膜した上部電極膜14上に、エッチングマスク膜15として厚さ950 nmのアモルファスフッ素樹脂(旭硝子株式会社製、CTL-809M)を塗布・乾燥・焼付により成膜した。その後、エッチングマスク膜15上に、フォトレジスト(東京応化工業株式会社製、OFPR-800)を塗布・露光・現像して、フォトレジストパターン16を形成した。続いて、ドライエッチング装置(株式会社エリオニクス製、EIS-700)を用いて、フォトレジストパターン16に沿ってエッチングマスク膜15をエッチングし、所望のパターンを有するエッチングマスクパターン15’を形成した。ドライエッチング条件は、アンテナパワー300 W、酸素(O2)ガスフロー50 sccm、圧力2.7 Paとした。
次に、3質量%ヨウ化カリウム溶液を用いて、エッチングマスクパターン15’およびフォトレジストパターン16に沿って上部電極膜14をウェットエッチングし、上部電極14’を形成した。その後、アセトン洗浄によりフォトレジストパターン16を除去し、上部電極14’上にエッチングマスクパターン15’のみを残して、実施例2のKNN薄膜積層基板を完成させた。
(実施例3のKNN薄膜積層基板の作製)
実施例1のKNN薄膜積層基板に対して上部電極膜14(それをパターニングした上部電極14’)の構成を変更した実施例3のKNN薄膜積層基板を作製した。
ニオブ酸系強誘電体薄膜13と上部電極膜14との密着性を高めるための上部電極密着層として、厚さ10 nmのW層をニオブ酸系強誘電体薄膜13上に電子ビーム蒸着法(基板温度100℃)により成膜した。続いて、上部電極膜14として厚さ300 nmのAu層をW層上に電子ビーム蒸着法(基板温度100℃)により成膜した。なお、電子ビーム蒸着装置としては株式会社アルバック製の装置(型式:EX-400-C08)を用いた。
次に、実施例2と同様にして、上部電極14’上にエッチングマスクパターン15’を有する実施例3のKNN薄膜積層基板を完成させた。
(比較例1のKNN薄膜積層基板の作製)
実施例1のKNN薄膜積層基板に対して上部電極膜14を形成しなかった(ニオブ酸系強誘電体薄膜13の直上にエッチングマスク膜15を形成した)比較例1のKNN薄膜積層基板を作製した。上部電極膜14を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。
より具体的には、ニオブ酸系強誘電体薄膜13の直上に、エッチングマスク膜15として厚さ950 nmのアモルファスフッ素樹脂(旭硝子株式会社製、CTL-809M)を塗布・乾燥・焼付により成膜した。その後、エッチングマスク膜15上に、フォトレジスト(東京応化工業株式会社製、OFPR-800)を塗布・露光・現像して、フォトレジストパターン16を形成した。続いて、ドライエッチング装置(株式会社エリオニクス製、EIS-700)を用いて、フォトレジストパターン16に沿ってエッチングマスク膜15をエッチングし、所望のパターンを有するエッチングマスクパターン15’を形成した。ドライエッチング条件は、アンテナパワー300 W、O2ガスフロー50 sccm、圧力2.7 Paとした。
比較例1は、実施例に対して上部電極形成工程とエッチングマスク形成工程との順番を入れ替えて、強誘電体薄膜エッチング工程の後に上部電極形成工程を行うことを意図したものであり、貴金属膜の有無によるエッチングマスクの安定性を比較調査するものである。
(強誘電体薄膜の結晶系の評価)
ペロブスカイト構造を有するKNN結晶は、本来、c軸長がa軸長よりも長い(すなわちc/a
> 1である)正方晶系に属する。言い換えると、「c/a > 1」の場合、正方晶としてより安定な結晶構造が形成されている(すなわち、結晶性が高い)ことを示す。また、ペロブスカイト構造を有する強誘電体は、一般的に、初期歪みが少ない結晶のc軸方向に電界を印加したときに、より大きい分極値(圧電性や強誘電性におけるより高い利得)が得られる。
一方、基板上に成膜された薄膜結晶は、バルク結晶体とは異なり、基板や下地層の影響を受けて結晶構造が歪み易い。具体的には、「c/a > 1」である正方晶(本来の正方晶により近いという意味)からなるKNN薄膜が主に形成される場合と、「c/a ≦ 1」である擬立方晶(本来の正方晶と言うよりも立方晶に近いという意味)からなるKNN薄膜が主に形成さる場合とがある。そこで、X線回折法(XRD)により、上記で成膜したKNN薄膜の結晶系を評価した。その結果、上記の実施例1〜3および比較例1は、「c/a > 1」である正方晶からなるKNN薄膜が主に形成された基板が作製されていることが確認された。
(エッチング実験)
上記のエッチングマスクパターン15’を残した実施例1〜3および比較例1のKNN薄膜積層基板から小片(20 mm×20 mm)を切り出し、KNN薄膜に対して、種々のエッチング条件でウェットエッチングを行い、KNN薄膜パターンを形成した(図1(f)参照)。
エッチング液の構成薬品として、キレート剤と、アンモニア水(NH3 aq.、関東化学株式会社製、試薬グレード、含量29%)と、過酸化水素水(H2O2 aq.、関東化学株式会社製、試薬グレード、含量35%)とを用いて、種々のエッチング液を作製した。
キレート剤としては、
エチレンジアミン四酢酸(EDTA、和光純薬工業株式会社製、純度99.5%)、
エチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム塩二水和物(EDTA・2Na、株式会社同仁化学研究所製、純度99.5%以上)、
エチレンジアミン四酢酸・三ナトリウム塩三水和物(EDTA・3Na、株式会社同仁化学研究所製、純度98.0%以上)、
エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム塩四水和物(EDTA・4Na、株式会社同仁化学研究所製、純度98.0%以上)、
エチレンジアミン四酢酸・二カリウム塩二水和物(EDTA・2K、株式会社同仁化学研究所製、純度99.0%以上)、
エチレンジアミン四酢酸・三カリウム塩二水和物(EDTA・3K、株式会社同仁化学研究所製、純度99.0%以上)、
エチレンジアミン四酢酸・二リチウム塩水和物(EDTA・2Li、和光純薬工業株式会社製、CAS No. 14531-56-7)
エチレンジアミン四酢酸・二アンモニウム塩(EDTA・2NH4、株式会社同仁化学研究所製、純度99.0%以上)、
エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP、キレスト株式会社製、純度90%以上)、
エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸・五ナトリウム塩(EDTMP・5Na、イタルマッチジャパン株式会社製、デイクエスト(登録商標)2046)、
ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP、東京化成工業株式会社製、純度50%以上)、
ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)・五ナトリウム塩(NTMP・5Na、イタルマッチジャパン株式会社製、デイクエスト(登録商標)2006)、
シクロヘキサンジアミン四酢酸・一水和物(CyDTA・H2O、キレスト株式会社製)、
1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)(HEDP、キレスト株式会社製、純度60%以上)、
1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)・三ナトリウム塩(HEDP・3Na、イタルマッチジャパン株式会社製、デイクエスト(登録商標)2015DN)、
1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)・四ナトリウム塩(HEDP・4Na、イタルマッチジャパン株式会社製、デイクエスト(登録商標)2016)、
グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)(GBMP、東京化成工業株式会社製、純度97%以上)、
ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP、イタルマッチジャパン株式会社製、デイクエスト(登録商標)2060S)、
ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)・七ナトリウム塩(DTPMP・7Na、イタルマッチジャパン株式会社製、デイクエスト(登録商標)2066)、
クエン酸(関東化学株式会社製、純度99%以上)、
クエン酸・一水和物(関東化学株式会社製、純度99.5%以上)、
クエン酸・二水素ナトリウム塩(関東化学株式会社製、純度99%以上)、
クエン酸・水素二ナトリウム塩水和物(関東化学株式会社製、純度98%以上)、
クエン酸・三ナトリウム塩二水和物(関東化学株式会社製、純度99%以上)、
クエン酸・二水素カリウム塩(関東化学株式会社製、純度98%以上)、
クエン酸・水素二カリウム塩(関東化学株式会社製、純度98%以上)、
クエン酸・三カリウム塩一水和物(関東化学株式会社製、純度99%以上)、
クエン酸・三リチウム塩四水和物(関東化学株式会社製、純度98%以上)、
クエン酸・二水素アンモニウム塩(関東化学株式会社製、純度95%以上)、
クエン酸・水素二アンモニウム塩(関東化学株式会社製、純度99%以上)、および
クエン酸・三アンモニウム塩(関東化学株式会社製、純度98%以上)を用いた。
(1)エッチング速度の評価
エッチング速度とエッチング温度(エッチング液温度)との関係を調査した。エッチング液としては、0.1 Mのキレート剤と、3.5 Mのアンモニア水と、7.5 Mの過酸化水素水とを混合したエッチング液を用いた。エッチング液の初期pHは、9.6〜9.7であった。エッチング液温度は、60〜95℃とした。
各エッチング実験において、所定時間のエッチングを行った後、ドライエッチング装置(株式会社エリオニクス製、EIS-700)を用いてエッチングマスクパターン15’および上部電極14’を除去した。ドライエッチング条件は、アンテナパワー300 W、O2ガスフロー50 sccm、圧力2.7 Paとした。その後、KNN薄膜の段差を計測することよってエッチング性(ここでは、KNN薄膜の段差をエッチング時間で除した平均エッチング速度)を評価した。結果を図2〜3に示す。
図2は、実施例1のKNN薄膜積層基板におけるエッチング速度とエッチング液温度との関係の例を示すグラフであり、図3は、実施例1のKNN薄膜積層基板におけるエッチング速度とエッチング液温度との関係の他の例を示すグラフである。図2〜3に示したように、キレート剤としてEDTAを用いたエッチング液、EDTA・2Naを用いたエッチング液、EDTMPを用いたエッチング液、およびNTMPを用いたエッチング液において、エッチング液温度(エッチング温度)を高めるほどエッチング速度が増加することが確認された。
表1は、実施例1のKNN薄膜積層基板における代表的なキレート剤(キレート剤濃度0.1
M、エッチング液温度85℃(85±1℃程度))とエッチング速度との関係をまとめた表である。表1の結果から判るように、いずれのキレート剤を用いても、十分に高いエッチング速度が得られることが確認された。
Figure 0006703979
なお、他のキレート剤を用いたエッチング液および実施例2〜3のKNN薄膜積層基板においても、図2〜3および表1と同様の結果が得られることを別途確認した。
一方、比較例1のKNN薄膜積層基板では、いずれのエッチング液を用いても10分間程度でエッチングマスクパターン15’がニオブ酸系強誘電体薄膜13から剥離してしまい、形状制御性を保ったエッチングを行うことができなかった。このことから、本発明における強誘電体薄膜エッチングでは、エッチングマスクとして、貴金属膜(例えば、上部電極膜14)を介して積層したアモルファスフッ素樹脂膜を用いることが重要であることが確認された。
ここで、量産性の観点から許容できるエッチング速度について、簡単に考察する。従来技術のドライエッチングプロセスにおけるエッチング速度は、10〜40 nm/minのレベルである。一方、本発明のプロセスはウェットエッチングプロセスであり、ドライエッチングプロセスよりもはるかに多数枚の試料を同時にエッチングすることができる。例えば、1台のドライエッチング装置の対応枚数の10倍を同時にウェットエッチングすることを想定すると、製造上のスループットは、ドライプロセスの10倍のエッチング速度と同等になる。このことから、本発明のプロセスのエッチング速度がドライエッチングプロセスのそれと同等であったとしても、量産性の観点から十分な効果があると言える。この観点から、10 nm/min程度以上のエッチング速度が得られれば、製造コストの低減に十分寄与することができる。
(2)キレート剤濃度の影響調査
エッチング液中のキレート剤濃度の影響について調査した。各種キレート剤濃度を0.0001〜1.2 Mの範囲で変化させて、KNN薄膜のエッチング性を評価した。アンモニア水濃度と過酸化水素水濃度とは、先のエッチング液と同じ(それぞれ3.5 M、7.5 M)にした。また、エッチング液温度は85〜95℃とし、エッチング時間は30〜60分間とした。なお、85〜95℃のエッチング液温度および30〜60分間のエッチング時間は、先のエッチング速度実験の結果から推定すると、1.9μm厚さのKNN薄膜が十分にエッチング除去されて下部電極膜12(ここではPt膜)が露出する時間長さである。
30〜60分間のエッチング処理後、小片試料を取り出して水洗・乾燥させた。次に、該小片試料を割って、その破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、キレート剤の濃度を0.1 Mとした場合、いずれのキレート剤を用いても30〜60分間のエッチングでKNN薄膜が十分にエッチング除去されている様子が確認された。
キレート剤として、EDTA、EDTMP、NTMP、HEDP、GBMP、DTPMP、またはそれらの塩を用いた場合、該キレート剤の濃度を0.0001 Mとすると、エッチングの温度・時間条件を95℃・60分間としても、1.9μm厚さのKNN薄膜を十分にエッチング除去することができなかった(エッチング速度が不十分であった)。キレート剤濃度0.001〜0.5 Mでは、十分なエッチング速度が得られることが確認された。ただし、キレート剤濃度0.7 Mでは、エッチング速度が明確に低下した。
一方、キレート剤としてクエン酸またはクエン酸塩を用いた場合、該キレート剤の濃度0.01 Mはエッチング速度が不十分であったが、キレート剤濃度0.03〜1 Mは十分なエッチング速度が得られることが確認された。ただし、キレート剤濃度1.2 Mではエッチング速度が明確に低下した。
加えて、複数種のキレート剤を混合して用いた場合を調査した。その結果、本発明で用いたキレート剤の任意の組合せ(例えば、「EDTA 0.1 M+EDTA・2Na 0.01 M」、「EDTMP 0.01 M+クエン酸 0.1 M」、「NTMP 0.01 M+クエン酸 0.1 M」、「HEDP 0.01 M+クエン酸 0.1 M」)において、十分なエッチング速度(30〜60分間のエッチングで1.9μm厚さのKNN薄膜が完全にエッチング除去できる速度)が得られることが確認された。
上記の調査結果から、エッチング液中のキレート剤濃度は、エッチング速度に対する影響が小さいことが確認された。
(3)水素イオン指数の影響調査
エッチング液の水素イオン指数(pH)の影響について調査した。pHの調整は、アンモニア濃度と塩酸濃度と水酸化ナトリウム濃度との制御によって行った。エッチング液のその他の成分は、0.1 MのEDTMPと7.5 Mの過酸化水素水とした。その結果、pH範囲8〜10でエッチング速度に対する影響が小さく、pHが7.5未満および12超になるとエッチング速度が明確に低下することが確認された。
(4)過酸化水素濃度の影響調査
エッチング液中の過酸化水素濃度の影響について調査した。エッチング液のその他の成分は、0.1 Mの EDTMPと3.5 Mのアンモニア水とした。その結果、4〜9 Mの過酸化水素濃度でエッチング速度に対する影響が小さく、過酸化水素濃度が4 M未満になるとエッチング速度が明確に低下することが確認された。
(5)エッチング精度の評価
一部の試料を用いて、KNN薄膜積層基板に対してパッドパターン(200μm角、200μm間隔)の微細加工(下部電極膜12が露出するまでエッチング)を行い、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)による微細組織観察を行った。
図4は、実施例1のKNN薄膜積層基板に対する微細加工結果例を示す光学顕微鏡写真であり、図5は、実施例2のKNN薄膜積層基板に対する微細加工結果例を示す光学顕微鏡写真である。図4〜5に示したように、いずれのKNN薄膜積層基板も、非常にきれいに精度よく加工できていることが確認された。具体的には、下部電極となるPt膜のエッチングや剥離などは起こっておらず、下部電極膜12をエッチングストッパとして活用できることが確認された。また、SEM観察の結果、サイドエッチング量は膜厚の20〜40%程度であることが確認された。
(3)圧電体薄膜素子の作製と強誘電体特性の評価
前述のエッチング速度の評価実験とは別に、KNN薄膜に所望のパターン形成を行った後、ドライエッチング装置(株式会社エリオニクス製、EIS-700)を用いてエッチングマスクパターン15’のみを除去した試料(上部電極14’を残した試料)を用意した。ドライエッチング条件は、アンテナパワー300 W、O2ガスフロー50 sccm、圧力2.7 Paとした。次に、ダイシングを行いチップ状のKNN薄膜素子(実施例1〜3のKNN薄膜素子)を作製した。
また、基準試料として、本発明のウェットエッチングによりパターン形成を行っていないKNN薄膜積層基板にダイシングを行った試料も用意した。本試料は、強誘電体薄膜エッチング工程の影響を全く受けていない試料であり、成膜したKNN薄膜の強誘電体特性の基準となる試料として用意した。
得られたKNN薄膜素子に対して、強誘電体特性評価システムを用いて分極特性と誘電率とリーク電流密度とを測定した。図6は、本発明で作製したKNN薄膜素子および基準試料における分極値と印加電圧との関係例を示したグラフである。図6のKNN薄膜素子は、実施例1のKNN薄膜積層基板に対してEDTMPを用いたエッチング液で微細加工したものである。図6に示したように、本発明で作製したKNN薄膜素子と基準試料とは、分極値のヒステリシスループがほぼ完全に一致し、その分極特性において実質的に変化なしと言えた。
誘電率においては、本発明で作製したKNN薄膜素子と基準試料との差異は1%程度であった。この程度の差異は、試料個体差または測定誤差の範疇であり、実質的に変化なしと言えた。また、リーク電流密度においても、その差異は試料個体差または測定誤差の範疇であり、実質的に変化なしと言えた。
上記の強誘電体特性の測定結果から、本発明の強誘電体薄膜エッチング工程は、KNN薄膜の強誘電体特性を劣化させることなしに微細加工できることが確認された。
検討2
[ニオブ酸リチウム薄膜素子]
(LN基板の用意)
ここでは、実験の簡便化のため、ニオブ酸リチウム(LiNbO3、LN)の単結晶基板(10 mm×10 mm×0.5 mm)を用意した。先のKNN薄膜積層基板の場合と同様に、用意したLN単結晶基板の一方の表面上に上部電極膜14を介してエッチングマスク膜15とフォトレジストパターン16とを形成した。続いて、ドライエッチング装置(株式会社エリオニクス製、EIS-700)を用いて、エッチングマスクパターン15’の形成と上部電極14’の形成と行った。その後、アセトン洗浄によりフォトレジストパターン16を除去し、上部電極14’とエッチングマスクパターン15’とが片面に形成されたLN基板を作製した。
上記LN基板の裏面(上部電極14’とエッチングマスクパターン15’とが形成されていない側の面)をマスキングした後、先のKNN薄膜素子と同様にエッチング実験およびエッチング性評価を行った。その結果、KNN薄膜素子と同様のエッチング性が得られることが確認された。
検討3
[エッチング液準備方法の検討]
強誘電体薄膜エッチング工程における作業効率の向上を目指して、エッチング液準備方法の検討を行った。エッチングする強誘電体薄膜としては、先の検討1と同じ実施例1のKNN薄膜積層基板を用いた。
(エッチング実験)
エッチング液としては、0.4 Mのクエン酸と、3.5 Mのアンモニア水と、7.5 Mの過酸化水素水とからなるエッチング液を二種類の方法で調合した(それぞれ容積2 L)。ひとつは、当該三試薬を一遍に混合する三試薬混合方式によって調合した(エッチング液Aと称す)。もう一つは、過酸化水素水に対して、あらかじめ別途用意したクエン酸/アンモニア濃厚溶液(クエン酸1.43 M/アンモニア12.5 M)を添加混合する二液混合方式によって調合した(エッチング液Bと称す)。
このとき、混合に要する時間を測定した。エッチング液Aにおいては、三試薬の混合攪拌開始からクエン酸の溶解完了(目視判断)までの所要時間を測定したところ、約30分間であった。一方、エッチング液Bにおいては、二液の混合攪拌開始から均質混合(目視判断)までの所要時間を測定したところ、約30秒間であった。
用意したエッチング液A,Bを用いて、先の検討1と同様にしてKNN薄膜のウェットエッチングを行ったところ、エッチング液A,Bによる差異は見られず、両者とも同等のエッチング性能を有していることが確認された。言い換えると、エッチング性能に差異が無いことから、二液混合方式のエッチング液を利用することにより、エッチング工程全体としての所要時間を短縮できる(作業効率が向上する)ことが確認された。
次に、エッチング液およびキレート剤/アンモニア濃厚溶液の保存性についての確認実験を行った。二液混合方式でエッチング液調合後に一週間保管したエッチング液B’と、一週間保管したクエン酸/アンモニア濃厚溶液を用いて調合したばかりのエッチング液B”とでそれぞれエッチング実験を行った。
その結果、エッチング液B’はKNN薄膜をエッチングできなかったが、エッチング液B”はエッチング液A,Bと同等のエッチング性能を示した。この実験から、エッチング液自体はウェットエッチング処理の直前に調合することが好ましいが、キレート剤/アンモニア濃厚溶液は保存性に優れることが確認された。
上述した実施形態や実施例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
10…強誘電体薄膜積層基板、11…基板、11’…チップ状基板、12…下部電極膜、12’…下部電極、13…ニオブ酸系強誘電体薄膜、13’…ニオブ酸系強誘電体薄膜パターン、14…上部電極膜、14’…上部電極、15…エッチングマスク膜、15’…エッチングマスクパターン、16…フォトレジストパターン、20…強誘電体薄膜素子。

Claims (11)

  1. ニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法であって、
    基板上に下部電極膜を形成する下部電極膜形成工程と、
    前記下部電極膜上にニオブ酸系強誘電体薄膜を形成する強誘電体薄膜形成工程と、
    前記ニオブ酸系強誘電体薄膜上に貴金属膜からなる上部電極を形成する上部電極形成工程と、
    前記上部電極上にエッチングマスクを所望のパターンとなるように形成するエッチングマスクパターン形成工程と、
    前記ニオブ酸系強誘電体薄膜に対してキレート剤とアルカリ水溶液と過酸化水素水とを含むエッチング液を用いたウェットエッチングを行うことによって、前記ニオブ酸系強誘電体薄膜に所望パターンの微細加工を行う強誘電体薄膜エッチング工程とを有し、
    前記アルカリ水溶液はアンモニア水溶液を含み、
    前記エッチングマスクはアモルファスフッ素樹脂膜であることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  2. 請求項1に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記エッチングマスクパターン形成工程と前記強誘電体薄膜エッチング工程との間に、前記上部電極を所望のパターンとなるように形成する上部電極膜エッチング工程を更に有し、
    前記上部電極が形成されたニオブ酸系強誘電体薄膜を具備する前記基板からチップ状のニオブ酸系強誘電体薄膜素子を切り出すダイシング工程を更に有することを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、シクロヘキサンジアミン四酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)、グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、クエン酸、およびそれらの塩から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  4. 請求項3に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、シクロヘキサンジアミン四酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(エチドロン酸)、グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、またはそれらの塩を用いる場合、前記エッチング液中の該キレート剤のモル濃度は0.001 M以上0.5 M以下であり、
    前記キレート剤として、クエン酸またはクエン酸塩を用いる場合、前記エッチング液中の該キレート剤のモル濃度は0.03 M以上1 M以下であることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  5. 請求項3又は請求項4に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記キレート剤の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記貴金属膜は、チタン層を介した白金膜、または、ニッケル層およびタングステン層のうちの一つを介した金膜であることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記強誘電体薄膜エッチング工程は、前記エッチング液の温度が60℃以上100℃未満であることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記ニオブ酸系強誘電体薄膜は、ニオブ酸カリウムナトリウムまたはニオブ酸リチウムからなることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記下部電極膜は、チタン層を介した白金膜であることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  10. 請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記ニオブ酸系強誘電体薄膜は、結晶系が擬立方晶または正方晶であり主表面が(0 0 1)面に優先配向するようにスパッタ法により形成されることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法において、
    前記基板は、その表面に熱酸化膜を有するシリコン基板であることを特徴とするニオブ酸系強誘電体薄膜素子の製造方法。
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