以下、本開示の実施形態を図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
<第1実施例>
まず、第1実施形態における第1実施例ついて説明する。
まず、眼内レンズ挿入器具であるインジェクター1の構造について説明する。図1と図2に示すように、本実施形態のインジェクター1は、筒部本体(以下、「本体」という)10と、プランジャー12(押出部材)などから構成されている。本体10は、挿入部20と載置部22などを備えている。このようなインジェクター1は、例えば、樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)等を用いた射出成形などによって形成される。また、インジェクター1は、樹脂の削り出しによって形成されたものであってもよい。なお、インジェクター1は、挿入部20が交換可能なカートリッジタイプのものであってもよい。
挿入部20は、中空の筒形状に形成されている。図3や図4に示すように、挿入部20は、通路20b(前方通路)を備えている。通路20bは、眼内レンズ100を折り畳むために挿入部20の先端20aに向かうに従って、眼内レンズ100が通過する空間が狭くなっている。すなわち、先端20aに向かうにつれて通路面積が徐々に小さくなっている。なお、通路面積とは、眼内レンズ100の押し出し方向(図3や図4の左方向)に直交する断面における通路20bの断面積である。
また、挿入部20の先端20aには、眼内レンズ100を外部に送出するための切欠き(ベベル)が形成されている。そして、通路20b内を通過した眼内レンズ100は、内壁面20c(前方内壁面)に沿って小さく折り畳まれて、先端20aの切欠きから外部に送出され、眼内に挿入される。なお、内壁面20c(第1内壁面24a(第1前方内壁面)と第2内壁面24b(第2前方内壁面))は、通路20bの中心軸Lt方向に直交する方向であって、通路20b内に眼内レンズ100が配置されたときの光学部110の径方向に平行な方向について両側に形成されている(図8参照)。
なお、本実施形態では、第1内壁面24aと第2内壁面24bは、通路20bの中心軸Ltに対して対称な形状(傾き)に形成されている。
図5に示すように、天井面20d(第1軸方向面)と底面20e(第2軸方向面)は、通路20bの中心軸Lt方向に直交する方向であって、通路20b内に眼内レンズ100が配置されたときの光学部110の中心軸(光軸)L方向に平行な方向について、両側に形成されている。そして、底面20eは、通路20bの外側(図5の下側)に凹状に湾曲している。すなわち、底面20eは、後述する第1突起32(せり出し部36)に対向する面であり、第1突起32の突出方向に凹んでいる。
ここで、図3〜図5などに示すように、互いに直交するX軸とY軸とZ軸を想定し、眼内レンズ100の押し出し方向に平行な方向(通路20bと通路22aの中心軸Lt方向、押出軸Lp方向)をX軸方向と定義する。すると、通路20bは、Y軸方向の両側に形成される2つの内壁面20c(第1内壁面24aと第2内壁面24b)と、Z軸方向の両側に形成される天井面20dと底面20e(図5参照)などに囲まれて形成されている。
なお、本実施形態では、通路20bの中心軸Ltは、押出軸Lpと一致している。
載置部22は、挿入部20よりもプランジャー12の押し出し方向の後方(図1〜図4の右方向)の位置に形成されている。そして、載置部22の内部に形成される通路22a(後方通路)内に、プランジャー12により押し出される前の眼内レンズ100が配置されている(図4参照)。
載置部22は、図3や図4に示すように、通路22aと、天井面22bと、底面22cと、案内部30と、第1突起32(第1案内突起)と、第2突起34(第2案内突起)などを備えている。案内部30は、天井面22bに形成され、プランジャー12の押し出し方向を案内する部分である。
第1突起32と第2突起34は、プランジャー12の押し出し方向に沿って形成されている。第1突起32は、案内部30の一方(図3の下側)の壁面を構成しており、天井面20dおよび天井面22bから底面20eおよび底面22c側(図3の紙面手前側)に突出している。第2突起34は、案内部30の他方(図3の上側)の壁面を構成しており、天井面22bから底面22c側(図3の紙面手前側)に突出している。
本実施形態では、第1突起32は、せり出し部36(レンズ制御機構)を備えている。せり出し部36は、第1突起32における挿入部20の先端20a側の位置に形成されている。図3に示すように、せり出し部36は、第1突起32における案内部30に面するガイド面32bよりも案内部30の内側にせり出すようにして形成されている。そして、せり出し部36は、案内部30に面するガイド面36aが挿入部20の先端20a側に向かうにつれて案内部30の内側へ徐々にせり出すように、傾斜形状(テーパ形状)に形成されている。すなわち、せり出し部36の案内部30の内側へのせり出し量は、挿入部20の先端20a側に向かうにつれて徐々に増加している。なお、ガイド面36aは、後述するように、プランジャー12を案内する面となる。また、せり出し部36は、第1突起32とは別に形成されていてもよい。
また、図5に示すように、せり出し部36は、挿入部20の通路20b内において、天井面20d側から底面20e側に向かって突出している。なお、せり出し部36は、載置部22の通路22a内においても、天井面22b側から底面22c側に向かって突出している。
そして、本実施形態では、せり出し部36の一部は、通路20bの中心軸Lt方向に直交する方向であって、通路20b内に眼内レンズ100が配置されたときの光学部110の径方向に平行な方向(Y軸方向)について、通路20bの中央部Ceの位置にも形成されている。詳細には、せり出し部36の前端部36b(挿入部20の先端20a側の端部)は、Y軸方向について、通路20bの中央部Ceよりも第1内壁面24a側の位置から、通路20bの中央部Ceを越えて、通路20bの中央部Ceよりも第2内壁面24b側の位置に亘って形成されている(図3参照)。
なお、せり出し部36は、Y軸方向について、通路20bの中央部Ceよりも第1内壁面24a側の位置のみに形成されていてもよい。
また、本実施形態では、図3に示すように、第2突起34における挿入部20の先端20a側の前端部34aは、第1突起32における挿入部20の先端20a側の前端部32aよりも眼内レンズ100の押し出し方向の後方の位置に形成されている。
なお、「天井面20d」、「底面20e」、「天井面22b」、「底面22c」等の名称は便宜的なものであり、インジェクター1の上下方向を厳密に規定するものではない。例えば、底面20eは眼内レンズ100の下方に常に位置するわけではない。つまり、運搬時、インジェクター1への粘弾性物質の充填時、眼内への眼内レンズ100の挿入時等の各々において、インジェクター1の上下方向は変化し得る。
次に、本実施形態で使用される眼内レンズ100について説明する。図6と図7に示すように、本実施形態で使用される眼内レンズ100は、光学部110と、一対の支持部である前方支持部112A(第1支持部)および後方支持部112B(第2支持部)と、が柔軟な素材で一体成形されたワンピースタイプの眼内レンズである。
光学部110は、円盤形状に形成されている。また、前方支持部112Aと後方支持部112Bは、光学部110の外周部分110aから外側に延び、光学部110の中心を基準として点対称の位置に形成されている。そして、前方支持部112Aは、根元部分116Aが接続部分114Aを介して光学部110の外周部分110aに接続されており、先端部分118Aが開放されている。(つまり、先端部分118Aは自由端となっている)。また、後方支持部112Bは、根元部分116Bが接続部分114Bを介して光学部110の外周部分110aに接続されており、先端部分118Bが開放されている。
次に、インジェクター1の作用として、インジェクター1を使用した眼内レンズ100の眼内への挿入方法について説明する。
まず、インジェクター1を操作する術者は、前記の図4のように、載置部22の通路22a内にて、眼内レンズ100を、前方支持部112Aが光学部110よりも挿入部20の先端20a側に位置するようにして配置する。そして、術者は、プランジャー12により、眼内レンズ100の後方支持部112Bを押す。これにより、後方支持部112Bの根元部分116Bは湾曲して、後方支持部112Bが光学部110の外周部分110aの内側に折り曲げられ、光学部110の上に載せられる。
その後、さらに、術者が、プランジャー12により、眼内レンズ100の光学部110の外周部分110aを押すことにより、眼内レンズ100は挿入部20の先端20a側に向かって押し出される。このとき、プランジャー12の先端12a(眼内レンズ100との接触部)は、押出軸Lp上を進行する。そして、図8に示すように、通路20b内において、眼内レンズ100の光学部110の外周部分110aが内壁面20cに接触し、光学部110は底面20e側(図8の紙面奥側)に向かって谷折りされるようにして折り曲げられる。
このとき、同時に、眼内レンズ100の前方支持部112Aは、内壁面20cに接触し、内壁面20cから加えられる応力によって、徐々に根元部分116Aが湾曲して、光学部110側に向かって折り曲げられる。そして、図8に示すように、前方支持部112Aの先端部分118Aが光学部110の外周部分110aよりも内側に配置されるようにして、前方支持部112Aが光学部110の(外周部分110aよりも)内側に入り込む。すなわち、前方支持部112Aの先端部分118Aが、光学部110と天井面20dとの間の空間内に入り込む。なお、このとき、前方支持部112Aの根元部分116Aは通路20bの中心軸Ltよりも第1内壁面24a側の位置に配置される一方で、後方支持部112Bの根元部分116Bは、通路20bの中心軸Ltよりも第2内壁面24b側の位置に配置されている。
そして、その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図9に示すように、眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lp(通路20bの中心軸Lt)に近づくように(左回りに、図9に示す実線の矢印方向に)、回転する。これにより、前方支持部112Aは、光学部110の内側にさらに入り込む。なお、図8に示す状態から、図9に示すように前方支持部112Aが光学部110の内側にさらに入り込む詳細については、後述する。
そして、その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図11に示すように、前方支持部112Aは、根元部分116Aがさらに湾曲して折り曲げられ、光学部110の天井面20d側の面の上に載せられた状態が維持される。また、光学部110は、さらに、図11の紙面奥側に向かって谷折りされるようにして、小さく折り曲げられる。なお、後方支持部112Bも、光学部110の天井面20d側の面の上に載せられた状態が維持される。
そして、その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、前方支持部112Aと後方支持部112Bが光学部110の天井面20d側の面の上に載せられ、かつ、光学部110が底面20e側に向かって谷折りされて小さく折り曲げられた状態で、挿入部20の先端20aから挿入部20の外部へ押し出されて、眼内に移動する。このようにして、折り畳まれた眼内レンズ100が眼内に挿入される。
ここで、前記の図8に示す状態から、前記の図9に示すように前方支持部112Aが光学部110の内側にさらに入り込む詳細について説明する。
そこで、まず、本実施形態の説明の前に、第1突起32がせり出し部36を備えていない比較例について、説明する。
このような比較例においては、前記の図8に示す状態から眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図13に示すように、プランジャー12の先端12aは、そのまま押出軸Lp上を進む。
すると、光学部110の内側に入り込む前方支持部112Aの入り込み量δ0が小さい状態のまま、眼内レンズ100は挿入部20の先端20a側に向かって押し出される。なお、このとき、前方支持部112Aの根元部分116Aにおける第1内壁面24a側の端部117Aの位置と押出軸Lpの位置との距離を、doとする。すると、前方支持部112Aの入り込み量δ0が小さいので、眼内レンズ100が通路20b内を進行している間に例えば振動すると、光学部110の内側に入り込んでいる前方支持部112Aが、光学部110の外側に出てしまうおそれがある。
これに対し、本実施形態では、前記の図8に示す状態から眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図9に示すように、プランジャー12の先端12aは、第2内壁面24bに向かって進行する。すなわち、図9や図10に示すようにプランジャー12がせり出し部36のガイド面36aに案内されることにより、プランジャー12の先端12aは、押出軸Lp上から外れ、押出軸Lpよりも第2内壁面24b側の位置へ進行する。このようにして、せり出し部36は、プランジャー12の先端12aを第2内壁面24bに向けて進行させる。
そして、このように、プランジャー12の先端12aが第2内壁面24bに向かって進行すると、プランジャー12から眼内レンズ100に作用する押出力Pは、第2内壁面24b側に向かって作用する。ここで、第2内壁面24bの摩擦係数は全体に亘って一定であるが、押出力Pにより光学部110を第2内壁面24bに押し当てる力を増加させることにより、光学部110の外周部分110aと第2内壁面24bとの間で発生する摩擦力(光学部110の外周部分110aが第2内壁面24bから受ける反力)が増加する。したがって、光学部110の外周部分110aにおける第2内壁面24bとの接触部分は、挿入部20の先端20a側へ向かって進み難くなる。その一方、光学部110の外周部分110aと第1内壁面24aとの間で発生する摩擦力(光学部110の外周部分110aが第1内壁面24aから受ける反力)が減少するので、光学部110の外周部分110aにおける第1内壁面24aとの接触部分は、挿入部20の先端20a側へ向かって進み易くなる。ゆえに、眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように、回転する。
このとき、前方支持部112Aの根元部分116Aにおける第1内壁面24a側の端部117Aの位置と押出軸Lpの位置との距離は、dであり、前記の距離doよりも小さくなる。そして、前方支持部112Aが光学部110の内側に入り込んだ前方支持部112Aの入り込み量δ1は、(前記の入り込み量δ0よりも)大きくなる。
このように、前方支持部112Aの入り込み量δ1が大きくなるので、その後、眼内レンズ100が通路20b内を進行している間に例えば振動しても、光学部110の内側に入り込んだ前方支持部112Aが、光学部110の外側に出ることが抑制される。
なお、その後、さらに、眼内レンズ100は挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図11に示すように、プランジャー12は湾曲して、プランジャー12の先端12aは押出軸Lp上に戻る。そして、その後、眼内レンズ100は、好適な形状で挿入部20の外部へ射出される。なお、このとき、眼内レンズ100は挿入部20の外部へ射出されればよく、例えば、プランジャー12の先端12aは挿入部20の先端20aから外部へ飛び出さなくてもよい。また、例えば、プランジャー12の先端12aが先端20aから飛び出した状態では、飛び出したプランジャー12の部位は、押出軸Lpに沿っていなくてもよい。
このように、本実施形態では、せり出し部36は、プランジャー12の先端12aを第2内壁面24bに向けて進行させることにより、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向きを制御する。
なお、前記の説明では、図9に示すように、前方支持部112Aの先端部分118Aが光学部110の外周部分110aよりも内側に配置された時(図8参照)よりも後に、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向きを制御したが、特にこれに限定されず、せり出し部36の位置を調整するなどして、前方支持部112Aの先端部分118Aが光学部110の外周部分110aよりも内側に配置された時と同時に、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向きを制御してもよい。
また、変形例として、図12に示すように、通路20bは、当該通路20bの中心軸Ltが押出軸Lpに交わる偏向通路(レンズ制御機構)で構成されていてもよい。すなわち、通路20bの中心軸Ltは、押出軸Lpに対して、通路20b内に眼内レンズ100が配置されたときの光学部110の径方向(Y軸方向)に傾斜して交わっていてもよい。一例として、押出軸Lpに対する通路20bの中心軸Ltの傾き角度αは5°とする。なお、図12においては、通路20bの中心軸Lt方向をX軸方向と定義する。
これにより、押出軸Lpに対する第1内壁面24aと第2内壁面24bの傾きを異ならせる。詳細には、押出軸Lpに対する第2内壁面24bの傾きが、押出軸Lpに対する第1内壁面24aよりも大きくなっている。そして、第2内壁面24bは、押出軸Lpと交わっている。
そこで、この変形例において、プランジャー12の先端12aを押出軸Lp上に進行させると、プランジャー12の先端12aは第2内壁面24bに向かって進行することになる。そして、このように、プランジャー12の先端12aが第2内壁面24bに向かって進行すると、眼内レンズ100は、前記の図9のときと同様に、回転する(図12参照)。
なお、この変形例においても、第1内壁面24aと第2内壁面24bは、通路20bの中心軸Ltに対して対称な形状(傾き)に形成されている。また、図12に示す例では、通路20bの全体が偏向通路で構成されていたが、その他の変形例として、通路20bの一部のみが偏向通路で構成されていてもよい。例えば、通路20bにおける所定の位置よりも挿入部20の先端20a側の部分が、偏向通路で構成されていてもよい。すなわち、通路20bにおける所定の位置よりも挿入部20の先端20a側の部分の中心軸Ltが押出軸Lpと交わる一方で、通路20bの所定の位置よりも先端20aとは反対側の部分の中心軸Ltが押出軸Lpと平行に形成されていてもよい。
その他の変形例として、第1内壁面24aと眼内レンズ100の光学部110の外周部分110aとの間で発生する第1摩擦力と、第2内壁面24bと眼内レンズ100の光学部110の外周部分110aとの間で発生する第2摩擦力とを変えてもよい。本実施形態では、第2内壁面24bの表面粗さを第1内壁面24aの表面粗さよりも粗くすることにより、第2摩擦力を第1摩擦力よりも大きくする。これにより、眼内レンズ100の光学部110の周方向の向きを制御できる。
すなわち、光学部110の外周部分110aにおける第2内壁面24bとの接触部分は、挿入部20の先端20a側へ向かって進み難くなる。その一方、光学部110の外周部分110aにおける第1内壁面24aとの接触部分は、挿入部20の先端20a側へ向かって進み易くなる。そのため、眼内レンズ100は、前記の図9のときと同様に、回転する。したがって、前方支持部112Aの入り込み量δ1を大きくすることができる。
以上のように、本開示によれば、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に押し出され、前方支持部112Aが折れ曲って、先端部分118Aが光学部110の外周部分110aよりも内側に配置されたとき以降に、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向きを制御する。なお、「先端部分118Aが光学部110の外周部分110aよりも内側に配置されたとき以降」とは、先端部分118Aが光学部110の外周部分110aよりも内側に配置された時と同時、または、先端部分118Aが光学部110の外周部分110aよりも内側に配置された時よりも後、ということである。
これにより、光学部110の内側に入り込む前方支持部112Aの入り込み量δ1を制御することができる。そのため、前方支持部112Aの入り込み量δ1が大きくなるように制御することにより、一旦光学部110の内側に入り込んだ前方支持部112Aが光学部110の外側に出ることを抑制できる。したがって、眼内レンズ100を眼内に挿入するときに、前方支持部112Aを折り曲げて光学部110上に載せた状態を維持できる。ゆえに、眼内レンズ100を好適に変形して射出できる。
また、せり出し部36は、プランジャー12の先端12aを第2内壁面24bに向けて進行させることにより、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向きを制御する。これにより、眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように、回転する。そのため、前方支持部112Aの入り込み量δ1をより効果的に大きくすることができる。
また、せり出し部36は、通路20b内にて天井面20d側から底面20e側に向かって突出している。これにより、プランジャー12の先端12aをせり出し部36に接触させて、プランジャー12の先端12aの進行方向を制御できる。
また、せり出し部36は、X軸方向について第1突起32の挿入部20の先端20a側の位置に形成され、Y軸方向について第1突起32のガイド面32bよりも案内部30側にせり出している。本実施形態では、せり出し部36の前端部36bが、Y軸方向について、通路20bの中央部Ceよりも第1内壁面24a側の位置から、通路20bの中央部Ceを越えて、通路20bの中央部Ceよりも第2内壁面24b側の位置に亘って形成されている。これにより、プランジャー12の先端12aは、さらに、第2内壁面24bに向けて進行し易くなる。
また、通路20bの中心軸Ltは、押出軸Lpに対して、通路20b内に眼内レンズ100が配置されたときの光学部110の径方向(Y軸方向)の第1内壁面24a側に傾斜していてもよい。これにより、プランジャー12の先端12aを、押出軸Lp上に進行させれば、第2内壁面24bに向けて進行させることができる。そのため、眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように、回転する。したがって、前方支持部112Aの入り込み量δ1をより効果的に大きくすることができる。
また、第1内壁面24aと光学部110の外周部分110aとの間で発生する第1摩擦力の大きさと、第2内壁面24bと光学部110の外周部分110aとの間で発生する第2摩擦力の大きさとを変えてもよい。そして、第2摩擦力を第1摩擦力よりも大きくすることにより、眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように、回転する。そのため、前方支持部112Aの入り込み量δ1を大きくすることができる。
<第2実施例>
次に、第1実施形態における第2実施例について説明する。ここでは、第1実施例と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、第1実施例と異なった点を中心に述べる。
眼内レンズ100の形状や硬度、第1内壁面24aの摩擦係数などによっては、プランジャー12の先端12aを第1内壁面24aに向けて進行させることにより、眼内レンズ100を光学部110の周方向について前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように回転させてもよい。
そこで、本実施例では、図14に示すように、第1突起32と第2突起34の位置関係が、前記の第1実施例(図3参照)に対して反転している。すなわち、第2突起34が案内部30の一方(図14の下側、第1内壁面24a側)の壁面を構成しており、第1突起32が案内部30の他方(図14の上側、第2内壁面24b側)の壁面を構成している。
このような構成の本実施例では、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図15に示すように、プランジャー12の先端12aは、第1内壁面24aに向かって進行する。すなわち、図15に示すようにプランジャー12がせり出し部36のガイド面36aに案内されることにより、プランジャー12の先端12aは、押出軸Lp上から外れ、押出軸Lpよりも第1内壁面24a側の位置へ進行する。このようにして、せり出し部36は、プランジャー12の先端12aを第1内壁面24aに向けて進行させる。
そして、このように、プランジャー12の先端12aが第1内壁面24aに向かって進行すると、プランジャー12から眼内レンズ100に作用する押出力Pは、第1内壁面24a側に向かって作用する。ここで、第1内壁面24aの摩擦係数は、全体に亘って一定であり、また、コーティング等により十分に小さい。そのため、押出力Pによって眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように、回転する。
このように、本実施例では、せり出し部36は、プランジャー12の先端12aを第1内壁面24aに向けて進行させることにより、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向きを制御する。
これにより、眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように、回転する。そのため、前方支持部112Aの入り込み量δ1をより効果的に大きくすることができる。
また、第2実施例の変形例として、図16に示すように、通路20bは、当該通路20bの中心軸Ltが押出軸Lpに交わる偏向通路(レンズ制御機構)で構成されていてもよい。詳細には、押出軸Lpに対する第1内壁面24aの傾きが、押出軸Lpに対する第2内壁面24bよりも大きくなっている。そして、第1内壁面24aは、押出軸Lpと交わっている。
そこで、この変形例において、プランジャー12の先端12aを押出軸Lp上に進行させると、プランジャー12の先端12aは第1内壁面24aに向かって進行することになる。そして、このように、プランジャー12の先端12aが第1内壁面24aに向かって進行すると、眼内レンズ100は、前記の図15のときと同様に、回転する(図16参照)。
このように、通路20bの中心軸Ltは、押出軸Lpに対して、通路20b内に眼内レンズ100が配置されたときの光学部110の径方向(Y軸方向)の第2内壁面24b側に傾斜していてもよい。これにより、プランジャー12の先端12aを、押出軸Lp上に進行させれば、第1内壁面24aに向けて進行させることができる。そのため、眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように、回転する。したがって、前方支持部112Aの入り込み量δ1をより効果的に大きくすることができる。
上記実施形態で例示した技術は、眼内レンズ100が予め内部に充填されたプリセット型の眼内レンズ挿入器具にも適用できるし、眼内レンズ100が予め充填されずに出荷される眼内レンズ挿入器具にも適用できる。また、上記実施形態で例示した眼内レンズ100は、光学部110と前方支持部112Aと後方支持部112Bとが一体形成されたワンピース型の眼内レンズである。しかし、上記実施形態で例示した技術は、ワンピース型以外の眼内レンズ(例えば、3ピース眼内レンズ等)を眼内に挿入するための眼内レンズ挿入器具にも適用することができる。また、眼内レンズ100の根元部分116A,116Bは、接続部分114A,114Bを介さずに、光学部110の外周部分に直接接続されていてもよい。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なった点を中心に述べる。
本実施形態では、載置部22は、図17〜図19に示すように、通路22aと、天井面22bと、底面22cと、内壁面22d(後方内壁面)と、案内部30と、第1案内突起33と、第2案内突起35と、第1突起40と、第2突起42などを備えている。
図18に示すように、内壁面22d(第1内壁面26a(第1後方内壁面)と第2内壁面26b(第2後方内壁面))は、通路22aの中心軸Lt方向に直交する方向であって、通路22a内に眼内レンズ100が配置されたときの光学部110の径方向に平行な方向の両側に形成されている。詳細には、第1内壁面26aは、通路22aの中心軸Ltに対して、通路22a内に眼内レンズ100が配置されたときに前方支持部112Aの根元部分116Aが配置される側の位置に形成されている。一方、第2内壁面26bは、通路22aの中心軸Ltに対して、通路22a内に眼内レンズ100が配置されたときに後方支持部112Bの根元部分116Bが配置される側の位置に形成されている。
案内部30は、天井面22bに形成され、プランジャー12の押し出し方向を案内する部分である。第1案内突起33と第2案内突起35は、プランジャー12の押し出し方向に沿って形成されている。第1案内突起33は、案内部30の一方(図17の下側)の壁面を構成しており、天井面22bから底面22c側(図17の紙面手前側)に突出している。第2案内突起35は、案内部30の他方(図17の上側)の壁面を構成しており、天井面22bから底面22c側(図17の紙面手前側)に突出している。
本実施形態では、第1突起40は、図17に示すように、第1内壁面26aから通路22aの中心軸Lt側に向かって突出するように形成されている。また、第1突起40は、図19に示すように、天井面22bから底面22c側に向かって突出するように形成されている。なお、第1突起40は、図17に示す例では、通路22aにおける挿入部20側の端部の位置にて、通路22aの中心軸Ltに平行に細長状に形成されている。
そして、第1突起40は、内側面40a(第1接触部、光学接触部)と傾斜部40bを備えている。内側面40aは、第1内壁面26aから通路22aの中心軸Lt側に向かって突出する第1突起40の先端部分に形成されている。このようにして、第1突起40の内側面40aは、第1内壁面26aよりも通路22aの中心軸Lt側の位置、すなわち、第1内壁面26aと通路22aの中心軸Ltとの間の位置に形成されている。なお、図17に示す例では、第1突起40の内側面40aは、第1内壁面26aと第1案内突起33との間の位置に形成されている。
本実施形態では、第1突起40の内側面40aと通路22aの中心軸Ltとの間の距離Dは、光学部110の半径未満の大きさとなっている。そして、第1突起40の内側面40aは、後述するような眼内レンズ100の押し出し時に、光学部110の外周部分110aと接触する位置に形成されている。
また、傾斜部40bは、第1突起40におけるプランジャー12の押し出し方向の後方の端部の位置に形成され、プランジャー12の押し出し方向の前方に向かうにつれて第1内壁面26aから通路22aの中心軸Lt側への突出量が徐々に増加するように形成されている。すなわち、傾斜部40bは、プランジャー12の押し出し方向に対して傾斜する方向に沿って形成されている。
また、本実施形態では、第2突起42は、図17に示すように、第2内壁面26bや第2内壁面24bよりも通路22aおよび通路20bの中心軸Lt側の位置に形成されている。また、図19に示すように、第2突起42は、天井面22bから底面22c側に向かって突出するように形成されている。なお、第2突起42は、図17に示すように、通路22aと通路20bとの境界部分を跨ぐ位置にて、通路20bと通路22aの中心軸Ltに平行に細長状に形成されている。
そして、第2突起42は、内側面42a(第2接触部、支持接触部)を備えている。内側面42aは、第2突起42における通路22aの中心軸Lt側に形成されている面である。このようにして、第2突起42の内側面42aは、第2内壁面26bよりも通路22aの中心軸Lt側の位置、すなわち、第2内壁面26bと通路22aの中心軸Ltとの間の位置に形成されている。なお、図17に示す例では、第2突起42の内側面42aの一部は、第2内壁面26bと第2案内突起35との間の位置に形成されている。
本実施形態では、第2突起42の内側面42aは、後述するような眼内レンズ100の押し出し時に、光学部110の外周部分110aが第1突起40の内側面40aから離れたとき以降であって、かつ、前方支持部112Aと光学部110が通路20b内に配置されたときに、第2内壁面26b側から後方支持部112Bの根元部分116Bと接触する位置に形成されている。
ここで、図17〜図19などに示すように、互いに直交するX軸とY軸とZ軸を想定し、眼内レンズ100の押し出し方向に平行な方向(通路20bと通路22aの中心軸Lt方向、押出軸Lp方向)をX軸方向と定義する。すると、通路20bは、Y軸方向の両側に形成される2つの内壁面20c(第1内壁面24aと第2内壁面24b)と、Z軸方向の両側に形成される天井面20dと底面20eなどに囲まれて形成されている。また、通路22aは、Y軸方向の両側に形成される2つの内壁面22d(第1内壁面26aと第2内壁面26b)と、Z軸方向の両側に形成される天井面22bと底面22c(図19参照)などに囲まれて形成されている。
次に、インジェクター1の作用として、インジェクター1を使用した眼内レンズ100の眼内への挿入方法について説明する。
まず、インジェクター1を操作する術者は、図18のように、載置部22の通路22a内にて、眼内レンズ100を、前方支持部112Aが光学部110よりも挿入部20の先端20a側に位置するようにして配置する。なお、このとき、図18に示す例においては、前方支持部112Aの根元部分116Aは載置部22の第1内壁面26aと接触しており、前方支持部112Aの根元部分116Aと載置部22の第1内壁面26aとの間に隙間が形成されていない。
そして、術者は、プランジャー12により、後方支持部112Bを押す。これにより、後方支持部112Bの根元部分116Bは湾曲して、後方支持部112Bが光学部110の外周部分110aの内側に折り曲げられ、光学部110の上に載せられる。このようにして、通路22a内にて、眼内レンズ100は、後方支持部112Bが光学部110の内側に折り曲げられた状態で配置される。
その後、さらに、術者が、プランジャー12により、光学部110の外周部分110aを押す。すると、第1突起40の内側面40aに前方支持部112Aの根元部分116Aが接触しながら、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出される。
そして、第1突起40の内側面40aから前方支持部112Aの根元部分116Aが離れた後、光学部110の外周部分110aが第1突起40の傾斜部40bに案内されながら、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出される。
そして、図20と図21に示すように、光学部110の外周部分110aにおける第1内壁面26a側の端部120が、第1突起40の内側面40aに接触する。このとき、光学部110は、第1突起40により押されて、第2内壁面26b側に移動する。そのため、光学部110の光軸Lは、通路22aの中心軸Ltの位置から外れて、当該中心軸Ltよりも第2内壁面26b側に距離δ(図21参照)離れた位置に移動する。これにより、同時に、前方支持部112Aの根元部分116Aが、第1内壁面26aから離れる。そして、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面26aとの間に、隙間C0が形成される。そのため、前方支持部112Aの根元部分116Aは、第1内壁面26aからの干渉を受けなくなる。
このように隙間C0が形成されることにより、詳しくは後述するように、その後、プランジャー12により眼内レンズ100が通路20b内に押し出されたときに、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面24aとの間に隙間C1が形成され易くなる。
その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、眼内レンズ100は通路22a内から通路20b内へ押し出される。詳細には、図22と図23に示すように、光学部110の外周部分110aが第1突起40の内側面40aから離れて、前方支持部112Aと光学部110が挿入部20の通路20b内に移動する。これにより、光学部110は、第1突起40により押されなくなるので、第1内壁面24a(第1内壁面26a)側に移動する。そして、光学部110の光軸Lは、通路20b(通路22a)の中心軸Ltの位置に移動する。
このとき、後方支持部112Bの根元部分116Bにおける第2内壁面26b側の部分122に対し、第2内壁面26b側から第2突起42の内側面42aが接触する。これにより、眼内レンズ100の姿勢が維持される。
すなわち、詳しくは以下のとおりである。まず、光学部110は、第1突起40により押されなくなり、また、挿入部20の内壁面20cに接触して当該内壁面20cから応力を受ける。そのため、光学部110は、(例えば光軸Lを中心にして、)後方支持部112Bの根元部分116Bが第2内壁面26bに近づく方向に(図22における右回りに)回転しようとする。しかし、第2突起42の内側面42aが後方支持部112Bの根元部分116Bに接触しているので、後方支持部112Bの根元部分116Bが第2内壁面26bに近づく方向に光学部110が回転することは抑制される。そのため、前記のように前方支持部112Aの根元部分116Aと載置部22の第1内壁面26aとの間に形成された隙間C0が維持されるため、前方支持部112Aの根元部分116Aと挿入部20の第1内壁面24aとの間にも隙間C1が形成される。したがって、前方支持部112Aの根元部分116Aは第1内壁面24aからの干渉を受けない。
このように、本実施形態では、前記のように、第1突起40により光学部110が押されることにより、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面26aとの間に隙間C0が形成されていた。これにより、その後、挿入部20の通路20b内にて眼内レンズ100が先端20aに押し出されるときに、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面24aとの間に、隙間C1が形成され易くなる。
また、第2突起42により後方支持部112Bの根元部分116Bが第2内壁面26bに近づく方向に光学部110が回転することが抑制されるので、前方支持部112Aの根元部分116Aと挿入部20の第1内壁面24aとの間に隙間C1が形成され易くなる。
そして、本実施形態では、第1突起40により光学部110が押されるとともに、第2突起42により後方支持部112Bの根元部分116Bが第2内壁面26bに近づく方向に光学部110が回転することが抑制される。これにより、光学部110が第1突起40から離れても、眼内レンズ100の姿勢は、光学部110が第1突起40に接触していたときの状態で維持される。そのため、前方支持部112Aの根元部分116Aと挿入部20の第1内壁面24aとの間に、さらに隙間C1が形成され易くなる。
その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図24に示すように、通路20b内において、光学部110の外周部分110aが挿入部20の内壁面20cに接触し、光学部110は底面20e側(図24の紙面奥側)に向かって谷折りされるようにして折り曲げられる。
このとき、同時に、前方支持部112Aは、第2内壁面24bに接触することにより、徐々に根元部分116Aが湾曲して、光学部110側に向かって折り曲げられる。
ここで、本実施形態では、前記の図22に示すように、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面24aとの間に、隙間C1が形成されている。そのため、眼内レンズ100の押し出し時に、前方支持部112Aの根元部分116Aは、第1内壁面24aから干渉を受けない。そして、このように前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから干渉を受けなくなる一方で、前方支持部112Aの先端部分118Aは第2内壁面24bに強く押される。したがって、前方支持部112Aの先端部分118Aは、第2内壁面24bからの反力を受け易くなる。ゆえに、前方支持部112Aの先端部分118Aは、光学部110の内側へ誘導されるので、図24に示すように、前方支持部112Aの光学部110の内側への入り込み量が大きくなる。そして、このように前方支持部112Aの光学部110の内側への入り込み量が大きくなることにより、その後も前方支持部112Aは光学部110の天井面20d側の面の上に載せられた状態が維持される。
このようにして、前方支持部112Aの先端部分118Aが光学部110の外周部分110aよりも内側に配置されるようにして、前方支持部112Aが光学部110の(外周部分110aよりも)内側に入り込む。すなわち、前方支持部112Aの先端部分118Aが、光学部110と天井面20dとの間の空間内に入り込む。
そして、その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図25に示すように、光学部110がさらに谷折りされるようにして折り曲げられる。
このとき、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面24aとの間に隙間C1が形成されていない場合には、前方支持部112Aの根元部分116Aは、第1内壁面24aの形状に倣って通路20bの内側に捻られるようにして折り畳まれるおそれがある。そうすると、その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されるときに、弾性力を有する前方支持部112Aは捻られた状態を解消して伸びようとするため、前方支持部112Aが光学部110の外側に出てしまうおそれがある。
しかしながら、本実施形態では、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面24aとの間に隙間C1が形成されており、前方支持部112Aの根元部分116Aは、第1内壁面24aから離れている。そのため、前方支持部112Aの根元部分116Aは、第1内壁面24aの形状に倣って通路20bの内側に捻られるようにして折り畳まれ難い。そして、前方支持部112Aの根元部分116Aは、光学部110が谷折りされることに倣って、立った状態(根元部分116Aの外周面119Aが図25の紙面手前側に配置される状態)になる。そして、このように前方支持部112Aの根元部分116Aが立った状態になることにより、その後も前方支持部112Aは光学部110の天井面20d側の面の上に載せられた状態が維持され易くなる。
そして、その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、図26に示すように、前方支持部112Aは、根元部分116Aがさらに湾曲して折り曲げられ、光学部110の天井面20d側の面の上に載せられた状態が維持される。また、光学部110は、さらに、図26の紙面奥側に向かって谷折りされるようにして、小さく折り曲げられる。なお、後方支持部112Bも、光学部110の天井面20d側の面の上に載せられた状態が維持される。
本実施形態では、前記の図24に示すように前方支持部112Aが光学部110の内側に入り込む量が大きくなり、また、前記の図25に示すように前方支持部112Aの根元部分116Aは立った状態になっているので、例えば通路20b内を押し出される眼内レンズ100が振動しても、前方支持部112Aが光学部110の天井面20d側の面の上に載せられた状態が維持される。
そして、その後、さらに、眼内レンズ100が挿入部20の先端20a側に向かって押し出されると、眼内レンズ100は、前方支持部112Aと後方支持部112Bが光学部110の天井面20d側の面の上に載せられ、かつ、光学部110が底面20e側に向かって谷折りされて小さく折り曲げられた状態で、挿入部20の先端20aから挿入部20の外部へ押し出されて、眼内に移動する。このようにして、折り畳まれた眼内レンズ100が眼内に挿入される。
なお、前記の実施形態では、光学部110の外周部分110aが第1突起40の内側面40aから離れたときよりも後に、後方支持部112Bの根元部分116Bが第2突起42の内側面42aに接触した例を示したが、光学部110の外周部分110aが第1突起40の内側面40aから離れたときと同時に、後方支持部112Bの根元部分116Bが第2突起42の内側面42aに接触してもよい。
また、第1突起40は、第1内壁面26aとは別に、第1内壁面26aと通路22aの中心軸Ltとの間の位置にて形成されていてもよい。また、第2突起42は、第2内壁面26bから通路22aの中心軸Lt側に向かって突出するように形成されていてもよい。
以上のように、本開示によれば、載置部22において、第1内壁面26aよりも通路22aの中心軸Lt側の位置に、第1突起40の内側面40aが形成されている。そして、第1突起40の内側面40aは、眼内レンズ100の押し出し時にて光学部110の外周部分110aと接触する位置に形成されている。
これにより、光学部110は、第1突起40に押されて第1内壁面26a側から通路22aの中心軸Lt側の位置に移動する。そのため、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面26aとの間に、隙間C0が形成される。したがって、その後、挿入部20の通路20b内にて眼内レンズ100が先端20aに押し出されるときに、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面24aとの間に、隙間C1が形成され易くなる。ゆえに、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから干渉を受け難くなる。
そして、このように前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから干渉を受け難くなる一方で、前方支持部112Aの先端部分118Aは第2内壁面24bに強く押される。したがって、前方支持部112Aの先端部分118Aは、第2内壁面24bからの反力を受け易くなる。ゆえに、前方支持部112Aの先端部分118Aは、光学部110の内側へ誘導されるので、前方支持部112Aの光学部110の内側への入り込み量が大きくなる。そして、このように前方支持部112Aの光学部110の内側への入り込み量が大きくなることにより、その後も前方支持部112Aは光学部110の天井面20d側の面の上に載せられた状態が維持される。したがって、前方支持部112A(および後方支持部112B)を折り曲げて光学部110上に載せた状態で、眼内レンズ100を小さく折り畳むことができる。ゆえに、眼内レンズ100を好適に変形して射出できる。
また、第1突起40の内側面40aと通路22aの中心軸Ltとの間の距離Dは、光学部110の半径未満の大きさである。これにより、第1突起40の内側面40aに光学部110の外周部分110aが接触したときに、光学部110の光軸Lは、通路22aの中心軸Ltの位置から外れて通路22aの中心軸Ltよりも第2内壁面26b側の位置に移動する。そのため、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面26aとの間に、隙間C0が形成される。
また、第1突起40の内側面40aは、第1内壁面26aから通路22aの中心軸Lt側へ突出する第1突起40の先端部分に形成されている。これにより、光学部110は、第1突起40により押されるので、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面26aとの間に、隙間C0が形成される。そのため、その後、前方支持部112Aが通路20b内に配置されたときに、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面24aとの間に隙間C1がさらに形成され易くなる。
また、載置部22において、第2内壁面26bよりも通路22aの中心軸Lt側の位置に、第2突起42の内側面42aが形成されている。そして、第2突起42の内側面42aは、眼内レンズ100の押し出し時にて光学部110の外周部分110aが第1突起40の内側面40aから離れたとき以降に、第2内壁面26b側から後方支持部112Bの根元部分116Bと接触する位置に形成されている。
これにより、光学部110が第1突起40から離れても、眼内レンズ100の姿勢(光学部110の周方向の向き)は、光学部110が第1突起40に接触していたときの状態で維持される。そのため、前方支持部112Aの根元部分116Aと挿入部20の第1内壁面24aとの間に、隙間C1が形成される。したがって、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから干渉を受けないので、前方支持部112Aは光学部110の内側に折り曲げられ易くなる。そのため、前方支持部112Aが光学部110の天井面20d側の面の上に載せられ易くなる。なお、「光学部110が第1突起40の内側面40aから離れたとき以降」とは、光学部110が第1突起40の内側面40aから離れたときと同時、または、光学部110が第1突起40の内側面40aから離れたときよりも後、ということである。
また、第2突起42の内側面42aは、眼内レンズ100の押し出し時にて前方支持部112Aと光学部110が挿入部20の通路20b内に配置されたときに、後方支持部112Bの根元部分116Bと接触する位置に形成されている。これにより、光学部110が挿入部20の内壁面20cに接触して当該内壁面20cから応力を受けても、眼内レンズ100の姿勢は、光学部110が第1突起40に接触していたときの状態で維持される。
なお、変形例として、載置部22は、第1突起40を備えない一方で第2突起42を備えていてもよい。この変形例によれば、第2突起42の内側面42aが後方支持部112Bの根元部分116Bと接触することにより、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向きが制御される。そのため、前記の図22に示すように前方支持部112Aの根元部分116Aと挿入部20の第1内壁面24aとの間に隙間C1が形成されるように、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向き制御することもできる。
そこで、この変形例から把握される技術的思想を以下に付記項として記載する。
[付記項]
円盤形状の光学部と、前記光学部の外周部分から外側に延びる第1支持部と第2支持部と、を備え、前記第1支持部と前記第2支持部が前記光学部の中心を基準として点対称の位置に形成される眼内レンズを眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、
先端側に向かうにつれて通路面積が徐々に小さくなる前方通路と、
前記前方通路よりも前記眼内レンズの押し出し方向の後方に形成される後方通路と、
前記後方通路の軸方向に直交する方向であり、前記後方通路内に前記眼内レンズが配置されたときの前記光学部の径方向に平行な方向の両側に形成される第1内壁面と第2内壁面と、
前記眼内レンズを押し出す押出部材と、を有し、
前記眼内レンズを前記眼内に挿入するときには、前記後方通路内にて前記第1支持部が前記光学部よりも前記先端側に位置した状態で、かつ、前記後方通路内にて前記第2支持部が前記光学部の内側に折り曲げられた状態で前記眼内レンズを前記押出部材により前記前方通路側に押し出した後、前記前方通路内にて前記眼内レンズを前記押出部材により前記先端側に押し出すことにより前記第1支持部が前記光学部の内側に折り曲げられ、
前記第2内壁面は、前記後方通路の中心軸に対して、前記後方通路内に前記眼内レンズが配置されたときに前記第2支持部の根元部分が配置される側の位置に形成されており、
前記第2内壁面よりも前記後方通路の中心軸側の位置に接触部が形成され、
前記接触部は、前記眼内レンズの押し出し時にて前記第2支持部の根元部分と接触する位置に形成されていること、
を特徴とする眼内レンズ挿入器具。
[第3実施形態]
第3実施形態として、前記の第1実施形態と第2実施形態を組み合わせた形態も考えられる。一例として、本実施形態のインジェクター1は、せり出し部36と第1突起40と第2突起42を有する。
本実施形態によれば、プランジャー12による眼内レンズ100の押し出し時において、まず、光学部110が第1突起40に押されることにより、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面26aとの間に隙間C0が形成される。そして、その後、挿入部20の通路20b内において眼内レンズ100が先端20a側に押し出されるときに、第2突起42により眼内レンズ100の姿勢が維持されるので、前方支持部112Aの根元部分116Aと第1内壁面24aとの間に隙間C1が形成される。そのため、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから干渉を受け難くなる。
そして、このように前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから干渉を受け難くなる状態としたうえで、せり出し部36によりプランジャー12の先端12aを第1内壁面24aまたは第2内壁面24bに向けて進行させるので、光学部110の周方向についての眼内レンズ100の向きを制御し易くなる。そのため、眼内レンズ100は、光学部110の周方向について、前方支持部112Aの根元部分116Aが第1内壁面24aから離れて押出軸Lpに近づくように回転し易くなる。したがって、前方支持部112Aの入り込み量δ1が大きくなるように制御できるので、眼内レンズ100を眼内に挿入するときに、前方支持部112Aを折り曲げて光学部110上に載せた状態を維持できる。ゆえに、眼内レンズ100を好適に変形して射出できる。
なお、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせた形態は、上述に限るものではない。第1実施形態のみに含まれる構成と第2実施形態のみに含まれる構成との少なくともいずれかを組み合わせればよい。例えば、インジェクター1は、せり出し部36と第1突起40を有するだけでもよい。つまり、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせたインジェクター1が第2突起42を有さなくてもよい。換言するなら、光学部110を第1突起40で押して、せり出し部36によりプランジャー12の先端12aを第1内壁面24aまたは第2内壁面24bに向けて進行させるインジェクター1の態様であってもよい。