<概要>
本開示で例示する眼内レンズ挿入器具は、内部の通路を通じて前端部の挿入口から眼内レンズを眼内に挿入する。眼内レンズは、円盤形状の光学部と、光学部から外側に延びる1つまたは複数の支持部を備える。眼内レンズ挿入器具は、ノズルと押出部材を備える。ノズルは、前方に向かう程通路面積が狭くなると共に、前端部に挿入口を有する。押出部材は棒状であり、通路の軸に沿って通路内を前方に移動することで、眼内レンズを前方に押し出す。また、押出部材は、ノズルの通路内で眼内レンズを前方に押し進めることで、眼内レンズの光学部をロール状に折り畳む。本開示では、通路の軸から見て、ロール状に折り畳まれた光学部の中心が位置する側と反対側を、眼内レンズ挿入器具の天井側とする。つまり、通路の軸に交差する方向のうち、光学部がロール状に折り畳まれる過程で光学部の縁部同士が近付く側が、天井側となる。押出部材は、軸基部と屈曲部を備える。軸基部は、通路の軸と平行に延びる。屈曲部は、軸基部の前端部からさらに前方へ延びると共に、軸基部の軸に対して天井側に向けて傾く軸を有する。
押出部材によって眼内レンズを移動させながら支持部のタッキングを実行すると、光学部がロール状に折り畳まれて、光学部の縁部同士が天井側で互いに近付いていく。この過程で、光学部の縁部等は、ノズルの内壁に摺動しながら折り畳まれていく。従って、従来の眼内レンズ挿入器具では、眼内レンズのうち、ノズルの内壁に摺動する部位の端部が、ノズルの天井側の内壁と押出部材の間の隙間に入り込みやすかった。
これに対し、本開示で例示する眼内レンズ挿入器具では、押出部材の前端側に設けられた屈曲部が、天井側に向けて傾いている。従って、ノズルの天井側の内壁と押出部材の間に隙間が生じにくい。よって、ノズルの内壁と押出部材の間に眼内レンズが入り込みにくくなる。また、例えば、ノズルの内壁と押出部材の間の隙間を埋めるために、他の構成(例えば、隙間を埋める突起をノズルの内壁に設ける場合等)に比べて、ノズルの内壁と押出部材の間に生じる摩擦力が増大し難い。よって、より適切に眼内レンズが眼内に挿入される。
押出部材は、屈曲部の前端面の下部から前方に突出する下側突起部をさらに備えていてもよい。この場合、押出部材によって眼内レンズが前方に押し進められる際に、下側突起部は、眼内レンズが屈曲部の前端面から下方へずれることを抑制する。その結果、押出部材の底面(天井側と反対側の面)とノズルの内壁の間に眼内レンズの一部が入り込む不具合が抑制される。つまり、屈曲部を天井側に傾けることで、押出部材の底面側に隙間が生じたとしても、生じた隙間には眼内レンズは入り込みにくい。
押出部材の屈曲部のうち、軸基部の前端部に接続される基端部は、ロール状に折り畳まれた眼内レンズの後端部よりも後方に位置していてもよい。この場合、眼内レンズの光学部近傍における天井側の隙間だけでなく、眼内レンズの後端部近傍における天井側の隙間も生じにくくなる。よって、眼内レンズが隙間に入り込む可能性がさらに低下する。
ただし、屈曲部の基端部を、眼内レンズの後端部よりも前方に位置させることも可能である。この場合でも、眼内レンズの光学部近傍における天井側の隙間は小さくなるので、眼内レンズは天井側の隙間に入り込みにくくなる。
押出部材は、光学部接触部と陥没部をさらに備えていてもよい。光学部接触部は、押出部材の前端側に形成され、眼内レンズの光学部に接触して光学部を前方に押し出す。陥没部は、押出部材の左側の側面および右側の側面の少なくとも一方に設けられ、光学部接触部よりも後方において光学部接触部の側面よりも内側に陥没する。また、押出部材の屈曲部のうち、軸基部の前端部に接続される基端部は、陥没部よりも後方に位置していてもよい。この場合、押出部材の側面とノズルの内壁の間に眼内レンズの後部が入り込んでも、眼内レンズの後部近傍における天井側の隙間が小さくなっており、且つ陥没部が設けられているので、眼内レンズの後部は陥没部に逃げることができる。よって、押出部材とノズルの内壁の間に眼内レンズが入り込む可能性は、さらに低下する。
ただし、屈曲部の基端部を、陥没部の後端部よりも前方に位置させることも可能である。この場合でも、眼内レンズの光学部近傍における天井側の隙間は小さくなるので、眼内レンズは天井側の隙間に入り込みにくくなる。
屈曲部の前端部には、光学部接触部と支持部接触部が設けられていてもよい。支持部接触部は、光学部から後方に向けて延びる後方支持部に接触して、後方支持部を光学部に近づく方向に移動させる。この場合、押出部材が前方に押し込まれるだけで、後方支持部の光学部側への移動(つまり、後方支持部のタッキング)と、眼内レンズ全体の前方への移動が共に適切に行われる。
また、屈曲部の前端部に光学部接触部と支持部接触部を設ける場合、支持部接触部は光学部接触部よりも天井側(上側)に形成されていてもよい。この場合、支持部が光学部の天井側に折り曲げられた状態で、光学部がロール状に折り畳まれる。その結果、支持部は、ロール状に折り畳まれた光学部の内側に位置し易くなる。よって、支持部の破損等がさらに抑制される。また、本開示に係る屈曲部は、ノズルの天井側の内壁と押出部材の間に隙間が生じることを抑制する。従って、天井側に折り曲げられる光学部の縁部等も、隙間に入り込みにくい。よって、より適切に眼内レンズが眼内に挿入される。
支持部接触部の前端面は、光学部接触部の前端面よりも前方に位置していてもよい。この場合、後方支持部が光学部接触部によって前方に押し込まれ易くなる。従って、後方支持部のタッキングがより適切に行われ易い。
また、押出部材の屈曲部のうち、軸基部の前端部に接続される基端部は、光学部接触部の前端面よりも後方に位置していてもよい。この場合には、屈曲部の基端部が光学部接触部の前端面よりも前方に位置している場合に比べて、屈曲部の天井側の面とノズルの内壁の間の隙間が、より広い範囲で生じにくくなる。
押出部材のうち、ノズルの通路において天井側の内壁から反対側(底面側)の内壁までの幅が最小幅である位置を通過する部位を、最小幅通過部位とする。最小幅通過部位の、天井側の端部から反対側の端部までの幅(つまり、上下方向の幅)の最大値は、ノズルの通路における上下方向の最小幅よりも小さくてもよい。押出部材の最小幅通過部位の幅と、ノズルの通路の最小幅を同一にすると、押出部材とノズルの内壁の間の隙間は生じにくくなる。しかし、押出部材とノズルの内壁の間に生じる摩擦力が大きくなるので、眼内レンズを眼内に挿入し難くなる。これに対し、本開示で例示する眼内レンズ挿入器具は、押出部材の幅をノズルの通路の幅よりも小さくして、摩擦力が大きくなることを抑制しつつ、屈曲部によって天井側の隙間を小さくする。その結果、より適切に眼内レンズが眼内に挿入される。
屈曲部の天井側の前端部から後方に延びる面は、屈曲部の軸(つまり、軸基部の軸に対して天井側に向けて傾いている傾斜軸)に平行に形成されていてもよい。この場合、屈曲部の天井側端部から反対側の端部までの幅を増加させずに、屈曲部の天井側の面とノズルの内壁の間に隙間が生じることが抑制される。なお、傾斜軸と平行に延びる屈曲部の天井側の面は、屈曲部の前端部から軸基部の前端部まで延びていてもよいし、屈曲部の前端部と軸基部の前端部の間まで延びていてもよい。詳細には、傾斜軸と平行に延びる屈曲部の天井側の面は、少なくとも、折り畳まれた状態の眼内レンズの後端部まで延びていることが望ましい。この場合、屈曲部の天井側の面とノズルの内壁の間に眼内レンズが入り込むことが、より適切に抑制される。
押出部材のうち少なくとも屈曲部は、可撓性を有する材質によって形成されていてもよい。この場合、屈曲部は、天井側の隙間を常に小さくしつつ、ノズルの通路面積が小さくなるに従って、ノズルの内壁から受ける反力で徐々に曲げられる。よって、眼内レンズが適切に眼内に挿入される。
<実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、本体部100のノズル180側の方向(図1の紙面左下側)を眼内レンズ挿入器具10の前方、プランジャー300の押圧部370の方向(図1の紙面右上側)を眼内レンズ挿入器具10の後方とする。また、図1の紙面上側を眼内レンズ挿入器具10の天井側(上方)、図1の紙面下側を眼内レンズ挿入器具10の底面側(下方)、図1の紙面右下側を眼内レンズ挿入器具10の右方、図1の紙面左上側を眼内レンズ挿入器具10の左方とする。なお、前述したように、本開示における方向の規定は、眼内レンズ挿入器具10が実際に使用される際の方向を規定するものではなく、本開示における技術の説明を容易にするために便宜的に行った規定である。従って、例えば、本開示で規定した上下方向が逆になった状態で、眼内レンズ挿入器具10が使用されてもよい。
(全体構成)
図1を参照して、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10の全体構成について説明する。眼内レンズ挿入器具10は、変形可能な眼内レンズ1(図3等参照)を眼内に挿入するために使用される。眼内レンズ挿入器具10は、本体部100とプランジャー300を備える。本体部100は略筒状であり、本体部100の内部の通路を通じて眼内レンズ1が眼内に挿入される。プランジャー300は棒状であり、本体部100の内部の通路を前後方向に移動することができる。プランジャー300は、押出軸(通路の軸)Aに沿って前方に移動することで、本体部100の内部に充填された眼内レンズ1を押し出す。
本実施形態の本体部100およびプランジャー300は、適度な可撓性を有する樹脂材料で形成されている。眼内レンズ挿入器具10は、モールド成形、樹脂の削り出しによる切削加工等によって形成されてもよい。眼内レンズ挿入器具10が樹脂材料で形成されることで、使用者は、使用済みの眼内レンズ挿入器具10を容易に廃棄することができる。
本実施形態では、粘着性を有する軟性の眼内レンズ1を円滑に眼内に挿入するために、本体部100の内壁に潤滑コーティング処理が行われている。また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、無色透明または無色半透明で形成されている。従って、使用者は、眼内レンズ挿入器具10の内部に充填されている眼内レンズ1の変形状態等を、眼内レンズ挿入器具10の外側から容易に視認することができる。
(本体部)
図1を参照して、本体部100について説明する。本体部100は、本体筒部110と、設置部130と、ノズル(挿入部)180を備える。
本体筒部110は、前後方向に延びる筒状に形成されており、本体部100の基端側(後部)に位置する。本体筒部110の後端よりもやや前方の外周には、使用者によって把持される張り出し部111が形成されている。
設置部130は、本体筒部110の先端側に接続されている。設置部130には眼内レンズ1が充填される。詳細には、設置部130は保持部160とセット部170を備える。保持部160には、眼内レンズ挿入器具10が保管状態とされている場合に眼内レンズ1を保持する。セット部170は、先端部の軸を中心として回動可能に設けられている。セット部170が回動されると、保持部160に保持されている眼内レンズ1が、プランジャー300によって押し出されることが可能な待機位置に移動して位置決めされる。
ノズル180は、設置部130の先端側に接続されている。ノズル180内の通路面積は、眼内レンズ1を前方に押し進める過程で眼内レンズ1を小さく変形するために、前方に向かう程狭くなる。つまり、ノズル180には、先細りの内部空間が形成されている。ノズル180の先端には、先端が斜めに切断された円筒状の挿入部182が設けられている。挿入部182は眼内に差し込まれる。挿入部182の先端には、眼内レンズ1を内部の通路から前方に排出するための開口である挿入口183が形成されている。本体部100の内部の通路は、本体筒部110の後端からノズル180の先端の挿入口183まで貫通している。
(プランジャー)
図2を参照して、プランジャー300の概略構成について説明する。本実施形態のプランジャー300は、押出部材301と、プランジャー基部350と、押圧部370を備える。
押圧部370は、プランジャー300の基端に形成されている。押圧部370は、押出軸Aと直交する方向に延びる板状の部材である。押圧部370には、使用者がプランジャー300を前方へ押し出す際に、使用者の指が接触する。
プランジャー基部350は、押圧部370の先端側から前方に延びる棒状の部材である。本実施形態では、プランジャー基部350は、押出軸Aに直交する断面の形状が略H状となるように形成されている。押出軸Aに直交する断面の形状が略矩形である本体筒部110に、プランジャー基部350が挿入されることで、本体部100に対するプランジャー300の押出軸Aの周方向の回転が抑制される。プランジャー300が前方へ移動し、眼内レンズ1の眼内への挿入が完了する位置に到達すると、プランジャー基部350の先端下部に形成された傾斜部353が、本体部100の所定箇所に形成された傾斜面に接触する。その結果、プランジャー300の先端が挿入口183(図1参照)から過度に突き出ることが防止される。
押出部材301は、棒状の部材であり、プランジャー基部350の前端から前方に延びる。押出部材301は、屈曲部310と軸基部330を備える。軸基部330は、プランジャー基部350の前端部から前方に延びる。屈曲部310は、軸基部330の前端部からさらに前方へ延びる。軸基部330は、押出軸Aに直交する断面の形状が略円形となるように形成されている。また、軸基部330の太さは、本体部100の挿入口183を通過できる太さとなっている。押出部材301は、本体部100の通路内を押出軸Aに沿って前方に移動することで、眼内レンズ1のタッキングを行うと共に、眼内レンズ1を挿入口183から眼内に排出する。なお、押出部材301の屈曲部310および軸基部330の詳細な構成については後述する。
(眼内レンズ)
図3を参照して、眼内レンズ挿入器具10によって眼内に挿入される眼内レンズ1の一例について説明する。眼内レンズ1は、光学部2と支持部3を備える。本実施形態の眼内レンズ1は、光学部2と支持部3が一体成型された、所謂ワンピース型の眼内レンズである。眼内レンズ1の材料には、例えば、BA(ブチルアクリレート)、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)等の単体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの複合材料等の種々の軟性の材料を採用できる。
光学部2は、患者眼に所定の屈折力を与える。支持部3は、光学部2を眼内で支持する。一例として、本実施形態の眼内レンズ1には、一対の支持部3が設けられている。ただし、支持部3の数は2つには限定されない。なお、本実施形態では、眼内レンズ1を設置部130に設置した際に、光学部2からノズル180に向けて(つまり前方に)延びる支持部3を前方支持部3Aと称し、光学部2からプランジャー300に向けて(つまり後方に)延びる支持部3を後方支持部3Bと称する。
一対の支持部3は、光学部2の周辺部から外側に延びる。支持部3は、周方向に湾曲したループ形状であり、支持部3の先端は自由端とされている。一対の支持部3は、光学部2の中心に対して対照形状であり、同じ周方向に延びている。従って、一対の支持部3の基端部4同士を結ぶ直線は、光学部2の中心を通る。
(押出部材)
図4から図8を参照して、本実施形態のプランジャー300における押出部材301の構成について、詳細に説明する。図4に示すように、押出部材301は、屈曲部310と軸基部330を備える。軸基部330は、プランジャー基部350(図2参照)の前端から、押出軸A(通路の軸、図1等参照)と平行に前方に延びる。つまり、軸基部330の軸AX1は、眼内レンズ挿入器具10の内部の通路の軸Aと平行である。屈曲部310は、軸基部330の前端部からさらに前方へ延びると共に、軸基部330の軸AX1に対して天井側(上側)に向けて傾く軸AX2を有する。つまり、軸基部330の軸AX1と屈曲部310の軸AX2の交点Iから前方を見た場合に、屈曲部310の軸AX2は、軸基部330の軸AX1に対して、角度θだけ斜め上方に傾いている。さらに換言すると、屈曲部310の軸AX2は、前方へ向かう程、軸基部330の軸AX1から上方に離間する。
従って、図5に示すように、ノズル180の天井側の内壁185Aと、押出部材301の天井側の面との間(図5に示す「S」)に、隙間が生じにくい。なお、角度θの値は、押出部材301の剛性、眼内レンズ1の柔らかさ、押出部材301とノズル180の内壁の間に生じる摩擦力の大きさ等に基づいて適宜設定されればよい。例えば、角度θは、0.5度~2.5度に設定されてもよい。一例として、本実施形態では、角度θは1度に設定されている。
また、押出部材301のうち少なくとも屈曲部310(本実施形態では、屈曲部310および軸基部330を含むプランジャー300の全体)が、適度な可撓性を有する材質(一例として、本実施形態では樹脂材料)によって形成されている。従って、屈曲部310がノズル180の天井側の内壁185Aに接触している場合でも、屈曲部310は、天井側の隙間を常に小さくしつつ、ノズル180の通路面積が小さくなるに従って、ノズル180の天井側の内壁185Aから受ける反力で徐々に曲げられる。
図5に示すように、押出部材301のうち、前端側から所定距離の範囲内の部位は、ノズル180の天井側の内壁185Aから反対側(底面側)の内壁185Bまでの幅が最小幅D2である位置を通過する。押出部材301のうち、上下方向の幅が最小幅D2である位置を通過する部位を、最小幅通過部位とする。本実施形態では、最小幅通過部位の天井型の端部から反対側の端部までの幅の最大値D1は、ノズル180の通路における上下方向の最小幅D2よりも小さい。その結果、押出部材301とノズル180の内壁の間の摩擦力が小さくなる。また、前述したように、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10では、眼内レンズ1の一部が入り込みやすい天井側には、ノズル180の内壁185Aと押出部材301の間の隙間が生じにくい。従って、摩擦力の増加が抑制された状態で、望ましくない隙間への眼内レンズ1の入り込みが抑制される。
ここで、押出部材301の先端上部に、上方へ突出する突起等を設けると、押出部材301の先端では、押出部材301の天井側とノズル180の内壁の隙間は生じにくくなる。しかし、押出部材301の先端上部に突起を設けるだけでは、突起よりも後方において、押出部材301とノズル180の内壁の間に隙間が生じてしまう。また、上方に突出する突起等を押出部材301に形成すると、押出部材301の上下方向の幅(最大値D1)が増加する。つまり、押出部材301の上下方向の幅の最大値D1が、ノズル180内の通路における上下方向の最小幅D2を超え易い。その結果、押出部材301をノズル180内で押し込む際の摩擦力が増加する。
これに対し、本実施形態では、図4に示すように、屈曲部310の天井側の前端部から後方に延びる面311が、屈曲部310の軸AX2に対して平行に形成されている。従って、押出部材301の先端上部に突起等を設ける場合とは異なり、押出部材301の上下方向の幅が増加しないので、摩擦力が増加し難い(つまり、最大値D1が最小幅D2を超え難い)。また、押出部材301の先端上部から後方までの広い範囲で、天井側の隙間が生じにくくなる。さらに、屈曲部310のうち、軸AX2に対して平行な天井側の面311は、屈曲部310の前端部から、折り畳まれる眼内レンズ1の後端部よりも後方(詳細には、屈曲部310のうち、軸基部330の前端部に接続される基端部331)まで延びている。従って、眼内レンズ1が天井側の隙間に入り込む可能性が、さらに低下する。
屈曲部310の構成について、さらに詳細に説明する。図4および図6~図8に示すように、屈曲部310の前端部には、支持部接触部313、光学部接触部314、上側突起部315、および下側突起部316が設けられている。
支持部接触部313は、眼内レンズ1の後方支持部3Bに接触することで、後方支持部3Bを光学部2に近づく方向(つまり前方)に変形移動させる。つまり、支持部接触部313によって後方支持部3Bのタッキングが行われる。支持部接触部313は、屈曲部310の前端部のうち、光学部接触部314よりも上方に設けられている。従って、詳細は後述するが、支持部接触部313によって後方支持部3Bが前方に押されると、後方支持部3Bは、光学部2の上方へ移動する。支持部接触部313は、前方に向けて凸となる湾曲形状に形成されている。従って、後方支持部3Bが傷つきにくい。
光学部接触部314は、眼内レンズ1の光学部2に接触することで、光学部2を前方に押し出す。光学部接触部314は、屈曲部310の前端部のうち、支持部接触部313よりも下方に設けられている。光学部接触部314は、支持部接触部313と同様に、前方に向けて凸となる湾曲形状に形成されている。従って、光学部2が傷つきにくい。
図8に示すように、屈曲部310を軸AX2に沿って正面から見た場合に、支持部接触部313と光学部接触部314が共に前方に面している。従って、プランジャー300が前方に押し出されるだけで、後方支持部3Bのタッキングと光学部2の前方への押し出しが共に行われる。
図4に示すように、本実施形態では、支持部接触部313の前端面は、光学部接触部314の前端面よりもさらに前方に突出している。この場合、光学部接触部314よりも前方に突出した支持部接触部313によって、後方支持部3Bが前方に遠くまで延ばされた状態でタッキングが行われる。よって、タッキングの精度が向上する。また、支持部接触部313の前端面と、光学部接触部314の前端面を接続する接続面318(図4参照)は、斜め前方を向くように傾斜している。従って、接続面318に接触した光学部2は、光学部接触部314へ円滑に誘導される。
図8に示すように、支持部接触部313は、軸AX2を中心とする左右方向のうち、眼内レンズ1の後方支持部3Bの基端部4B(図9(a)参照)が位置する側(本実施形態では右側)に偏って配置されている。この作用については後述する。
図4、図6、および図7に示すように、上側突起部315は、支持部接触部313の前端面の上端から前方に向けて突出する。上側突起部315は、後方支持部3Bが支持部接触部313から上方へずれることを抑制する。その結果、後方支持部3Bが支持部接触部313に接触しない不具合が抑制されるので、タッキングが適切に行われやすい。また、下側突起部316は、屈曲部310の前端面の下部(本実施形態では、光学部接触部314の前端面の下端)から前方に突出する。下側突起部316は、光学部2が光学部接触部314から下方へずれることを抑制する。その結果、屈曲部310の底面とノズル180の底面側の内壁の間に光学部2が挟まる不具合が抑制される。つまり、屈曲部310を天井側に傾けることで、屈曲部310の底面側に隙間が生じたとしても、生じた隙間には眼内レンズ1は入り込みにくい。なお、「支持部接触部313の前端面の上端」の文言は、上側突起部315が厳密に前端面の上端に位置することを限定するものではない。つまり、上側突起部315は、支持部接触部313の上端部の近傍に配置されていればよい。同様に、下側突起部316は、光学部接触部314の下端部の近傍に配置されていればよい。
次に、屈曲部310の右側の構成について説明する。なお、以下の説明では、押出部材301(屈曲部310)の左側の側面および右側の側面のうち、眼内レンズ1の後方支持部3Bの基端4B(図9(A)参照)が位置する側の側面を、第1側面320(図4および図6参照)とする。本実施形態では、第1側面320は、押出部材301の右側の側面となる。押出部材301(屈曲部310)の左側の側面および右側の側面のうち、第1側面320と反対側の側面(本実施形態では左側の側面)を、第2側面325(図7参照)とする。図6に示すように、屈曲部310の右側には、第1陥没部321、上側リブ322、および下側リブ323が設けられている。
第1陥没部321は、屈曲部310の第1側面320のうち、支持部接触部313および光学部接触部314よりも後方に形成されている。第1陥没部321は、支持部接触部313および光学部接触部314における第1側面320Aよりも内側(本実施形態では左方)に陥没する部位である。第1陥没部321は、第1側面320とノズル180の内壁の間に入り込んだ眼内レンズ1の一部(例えば、タッキングが行われた状態の後方支持部3Bの基端部4Bの近傍)が逃げ込む空間となる。つまり、第1側面320とノズル180の内壁の間に眼内レンズ1が入り込んでも、天井側の隙間が小さくなっており、且つ第1陥没部321が設けられているので、眼内レンズ1にかかる負荷がさらに低下する。
なお、図6に示すように、支持部接触部313および光学部接触部314における第1側面320Aと、第1陥没部321において最も内側に入り込んだ部分の側面321Aの間は、斜め後方を向く傾斜面321Bによって滑らかに接続されている。従って、支持部接触部313および光学部接触部314における第1側面320Aと、第1陥没部321において最も内側に入り込んだ部分の側面321Aの間には、急激な段差が存在しない。よって、第1陥没部321へ逃げ込んだ眼内レンズ1の一部が前方へ戻る際に、急激な段差によって眼内レンズ1が傷つくことが抑制される。
上側リブ322は、屈曲部310の第1側面320の上端部から側方(本実施形態では右方)に突出するリブ状の部材である。上側リブ322は、支持部接触部313の前端部から第1陥没部321まで連続して延びている。上側リブ322は、屈曲部310の天井側の面(上面)とノズル180の天井側の内壁の間に隙間が生じた場合でも、眼内レンズ1の一部が第1側面320側から天井側の隙間入り込むことを抑制する。なお、上側リブ322は、厳密に第1側面320の上端に形成されている必要はない。つまり、上側リブ322は、第1側面320の上端部近傍に配置されていればよい。
下側リブ323は、屈曲部310の第1側面320における第1陥没部321の下端部から、側方(本実施形態では右方)に突出する。下側リブ323は、屈曲部310の底面とノズル180の内壁の間の隙間に眼内レンズ1の一部が第1側面320側から入り込むことを抑制する。なお、下側リブ323も上側リブ322と同様に、厳密に第1側面320の下端に形成されている必要はない。
次に、屈曲部310の左側の構成について説明する。図7に示すように、屈曲部310の第2側面(本実施形態では左側面)325のうち、支持部接触部313の左側には、内側に陥没する第2陥没部326が形成されている。第2陥没部326は、変形した眼内レンズ1の一部が逃げ込む空間となる。従って、第2陥没部326が設けられることで、屈曲部310の左側に入り込む眼内レンズ1の一部に対し、負荷がかかり難くなる。
図4を参照して、屈曲部310の基端部331の位置について説明する。前述したように、基端部331は、屈曲部310のうち、軸基部330の前端部に接続される部位(つまり、屈曲部310の後端部)である。屈曲部310は、基端部331を起点として、軸基部330に対して屈曲される。
図4に示すように、屈曲部310の基端部331は、光学部接触部314の前端面よりも後方に位置している。従って、基端部331が光学部接触部314の前端面よりも前方に位置している場合(例えば、屈曲部が小さな突起である場合等)に比べて、屈曲部310の天井側の面とノズル180の内壁の間の隙間が、前後方向の広い範囲で生じにくくなる。
また、前述したように、屈曲部310の第1陥没部321には、第1側面320とノズル180の内壁の間に入り込んだ眼内レンズ1の後部が逃げ込む。従って、ノズル180の内部で小さく折り畳まれる眼内レンズ1の後端部は、第1陥没部321の後端部よりも前方に位置する。本実施形態では、屈曲部310の基端部331は、ノズル180の内部で折り畳まれる眼内レンズ1の後端部よりも後方に位置する。従って、眼内レンズ1の光学部2の近傍における天井側の隙間だけでなく、眼内レンズ1の後端部近傍における天井側の隙間も生じにくくなる。
換言すると、本実施形態における屈曲部310の基端部331は、第1陥没部321よりも後方に位置する。従って、眼内レンズ1の後部が逃げ込む第1陥没部321の天井側においても隙間が生じにくい。つまり、第1側面320とノズル180の内壁の間に眼内レンズ1の後部が入り込んでも、眼内レンズ1の後部近傍における天井側の隙間が小さくなっており、且つ第1陥没部321が設けられているので、眼内レンズ1の後部は第1陥没部321に逃げ込みやすい。
図9および図10を参照して、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10によって眼内レンズ1を眼内に挿入する際の、設置部130からノズル180までの眼内レンズ1の移動および変形の状態について説明する。
まず、作業者は、セット部170(図1参照)を回転させることで、設置部130の保持部160(図1参照)に保持されている眼内レンズ1を、プランジャー300によって押し出されることが可能な待機位置に移動させる。ここで、図9(a)に示すように、保持部160に保持された眼内レンズ1における後方支持部3Bの基端部4Bは、押出軸Aに対して左右のいずれかの方向にずれている。一例として、本実施形態では、後方支持部3Bの基端部4Bは、押出軸Aに対して右側(図9における下側)に位置する。従って、本実施形態では、眼内レンズ挿入器具10の右方向が前述した第1方向となり、左方向が前述した第2方向となる。なお、眼内レンズ1の支持部3が延びる方向は、本実施形態と逆の方向であってもよい。この場合、前述した第1方向は、眼内レンズ挿入器具10の左方向となる。
また、セット部170(図1参照)が回転されて、眼内レンズ1が待機位置に移動されると、セット部170の位置決め部171(図9(a)参照)によって、後方支持部3Bが、光学部2よりも天井側(上方)に移動された状態で位置決めされる。その結果、後述する後方支持部3Bのタッキングの際に、後方支持部3Bが、望ましい位置である光学部2の上方に移動する。なお、後方支持部3Bを光学部2よりも天井側で位置決めするための構成を変更することも可能である。
次いで、作業者は、注入器等を用いて潤滑剤(粘弾性物質)を設置部130内に注入し、プランジャー300の前方への移動を開始させる。その結果、図9(a)に示すように、押出部材301の屈曲部310に設けられている支持部接触部313(図4および図6~図8参照)が、眼内レンズ1の後方支持部3Bに接触する。
プランジャー300がさらに前方に押し進められると、図9(b)に示すように、後方支持部3Bは、押出部材301によって光学部2に近づく方向に移動する(曲げられる)。前述したように、支持部接触部313は光学部接触部314よりも上方に設けられている。また、後方支持部3Bは、待機位置において、光学部2よりも天井側(上方)で位置決めされている。従って、後方支持部3Bは光学部2の上方へ変形移動し、後方支持部3Bの先端が前方を向く。その結果、後方支持部3Bのタッキングが適切に行われる。
また、前述したように、支持部接触部313は、押出軸Aを中心とする左右方向のうち、眼内レンズ1の後方支持部3Bの基端部4B(図9(a)参照)が位置する側(本実施形態では右側)に偏って配置されている。この場合、支持部接触部313は、後方支持部3Bのうち基端部4Bに近い位置を前方に押す。従って、後方支持部3Bの先端側が押される場合に比べて、後方支持部3Bの変形移動が安定し、且つ、移動量も容易に確保される。
プランジャー300がさらに前方に押し進められると、押出部材301の屈曲部310に設けられている光学部接触部314(図4および図6~図8参照)が光学部2に接触し、眼内レンズ1の全体が前方へ移動する。図9(c)に示すように、眼内レンズ1がノズル180に到達すると、先細りとなっているノズル180の内壁に前方支持部3Aが接触する。その結果、前方支持部3Aが光学部2の上方へ変形移動し、前方支持部3Aの先端が後方を向く。つまり、前方支持部3Aのタッキングが行われる。
プランジャー300がさらに前方に押し進められると、眼内レンズ1の光学部2も、先細りとなっているノズル180の内壁に接触する。その結果、図9(d)に示すように、眼内レンズ1は、前方支持部3Aおよび後方支持部3Bがタッキングされた状態で、小さく折り畳まれていく。ここで、前方支持部3Aおよび後方支持部3Bは、光学部2の天井側(上方)へタッキングされている。さらに、光学部2は、先細りとなっているノズル180の底面に接触しながら折り畳まれる。従って、光学部2の左右(図9(d)における上下)の縁部は、タッキングされた前方支持部3Aおよび後方支持部3Bを挟み込むように、光学部2の中心よりも徐々に天井側(上方)に折り曲げられていく。つまり、光学部2は、底面側(図9(d)における紙面奥側)に向かって谷折りされるようにして折り曲げられる。
図9(e)に示すように、眼内レンズ1は、前方に押し進められる程小さく折り畳まれる。つまり、光学部2は、前方に押し進められる程さらに底面側に向かって谷折りされ、タッキングされた前方支持部3Aおよび後方支持部3Bを内側に包み込むように、ロール状に折り畳まれる。
図10に示すように、光学部2がロール状に折り畳まれると、光学部2の左右の縁部同士が天井側で互いに近づいていく。この過程で、光学部2の左右の縁部等は、ノズル180の内壁185に摺動しながら折り畳まれていく。従って、屈曲部310の天井側(上方)の面と、ノズル180の天井側の内壁の間Sに隙間が存在すると、光学部2の左右の縁部等が、天井側の隙間に入り込みやすい。天井側の隙間に眼内レンズ1が入り込んだまま押出部材301が押し進められると、眼内レンズ1に破損等が生じる可能性がある。これに対し、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10では、押出部材301の前端側に設けられた屈曲部310が天井側に向けて傾いている。従って、屈曲部310の天井側の面と、ノズル180の天井側の内壁の間Sに隙間が生じにくい。よって、天井側の隙間に眼内レンズ1が入り込みにくい。
また、本実施形態の屈曲部310には上側リブ322が形成されている。図10に示すように、上側リブ322は、眼内レンズ1の一部が第1側面320側から天井側の隙間に入り込むことをさらに抑制する。
また、図9(e)に示すように、後方支持部3Bの基端部4Bの近傍と、光学部2の後端部近傍は、押出部材301の屈曲部310の第1側面320とノズル180の内壁の間に入り込む。従って、眼内レンズ1は、屈曲部310の先端部における天井側の隙間だけでなく、屈曲部310の先端部よりも後方における天井側の隙間にも入り込む可能性がある。しかし、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10では、屈曲部310の基端部331(図4参照)が、ロール状に折り畳まれる眼内レンズ1の後端部よりも後方に位置する。その結果、屈曲部310の先端部おける天井側の隙間だけでなく、先端部よりも後方における天井側の隙間も生じにくくなる。よって、眼内レンズ1のうち、屈曲部310の第1側面320とノズル180の内壁の間に入り込む部位も、天井側の隙間に挟まり難くなる。
ノズル180の通路面積は前方へ向かう程狭くなるので、第1側面320とノズル180の内壁の間の空間は徐々に狭くなる。その結果、後方支持部3Bにかかる負荷は、眼内レンズ1が前方に押し進められる程徐々に増加し得る。しかし、本実施形態の屈曲部310の第1側面320には、第1陥没部321(図4等参照)が形成されている。第1側面320とノズル180の内壁の間に入り込んだ後方支持部3Bは、第1陥没部321に逃げることができる。また、屈曲部310の基端部331(図4参照)が、第1陥没部321よりも後方に位置するので、第1陥没部321の天井側でも隙間は生じにくい。従って、後方支持部3Bが天井側の隙間に入り込む可能性が、さらに低下する。
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、眼内レンズ1を適切に眼内に挿入するために、複数の構成を備える。しかし、これらの構成の全てを採用せず、一部の構成のみを採用してもよい。例えば、屈曲部310の第1陥没部321が省略された場合でも、屈曲部310を天井側に屈曲させることで、眼内レンズ1が天井側の隙間に入り込む可能性は低下する。また、上側リブ322および下側リブ323等の構成の少なくともいずれかを省略することも可能である。
また、上記実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、押出部材301の少なくとも先端部における天井側の面と、ノズル180の天井側の内壁185Aの間の隙間を減少させる隙間減少部として、押出部材301の屈曲部310を備える。しかし、隙間減少部として、屈曲部310とは異なる構成が採用されてもよい。以下、図11~図14を参照して、眼内レンズ挿入器具における隙間減少部の変容例について説明する。なお、以下の説明では、上記実施形態と同様の構成を採用できる部材については、上記実施形態で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。また、以下の第1変容例~第4変容例で使用される押出部材302と、上記実施形態の押出部材301との相違点は、先端側の角度のみであり、他の構成は全て共通している。つまり、第1変容例~第4変容例の押出部材302は、上方に向けて屈曲する屈曲部310を備えていない。よって、押出部材302の軸は、先端から後端まで押出軸Aに沿って直線状に延びている。
図11に示すように、第1変容例の眼内レンズ挿入器具におけるノズル180Aは、ノズル屈曲部181Aを備える。眼内レンズ挿入器具の後方から見た場合に、ノズル屈曲部181A内の通路の軸AX4は、ノズル屈曲部181Aよりも後方における通路の軸AX3に対して、角度θ´だけ斜め下方に傾いている。つまり、ノズル屈曲部181Aの軸AX4は、前方へ向かう程、ノズル屈曲部181Aよりも後方における通路の軸AX3から下方に離間する。従って、ノズル屈曲部181A内では、ノズル180Aの天井側の内壁と、押出部材302の天井側の面の間(図11に示す「S」)に隙間が生じにくい。つまり、第1変容例では、ノズル屈曲部181Aが、天井側の隙間を減少させる隙間減少部として機能する。
図12に示すように、第2変容例の眼内レンズ挿入器具におけるノズル180Bは、天井側突起181Bを備える。天井側突起181Bは、ノズル180Bの天井側の内壁から、通路の内側(つまり、通路の軸に近づく側であり、図12に示す例では下側)に突出する。天井側突起181Bは、前後方向に延びる通路内の領域のうち、眼内レンズ1が折り畳まれて天井側の隙間に入り込みやすい領域に形成されている。天井側突起181Bが設けられることで、ノズル180Bの天井側の内壁と、押出部材302の天井側の面の間(図12に示す「S」)に隙間が生じにくくなる。つまり、第2変容例では、天井側突起181Bが、天井側の隙間を減少させる隙間減少部として機能する。
図13に示すように、第3変容例の眼内レンズ挿入器具におけるノズル180Cは、第2変容例におけるノズル180Bと同様に、天井側の内壁から内側に突出する天井側突起181Cを備える。その結果、ノズル180Cの天井側の内壁と、押出部材302の天井側の面の間(図13に示す「S」)に隙間が生じにくくなる。つまり、第3変容例では、天井側突起181Cが隙間減少部として機能する。また、第3変容例の天井側突起181Cは、押出部材302の側面の形状(本実施形態では略円筒形状)に沿うように、通路の軸に垂直な断面の形状が円弧状となるように形成されている。その結果、天井側の隙間はさらに生じにくくなり、ノズル180Cの内壁と押出部材302の間に生じる摩擦力の増加も抑制される。
図14に示すように、第4変容例の眼内レンズ挿入器具におけるノズル180Dは、底面側突起181Dを備える。底面側突起181Dは、ノズル180Dの底面側の内壁から、通路の内側(つまり、通路の軸に近づく側であり、図14に示す例では上側)に突出する。底面側突起181Dは、通路の軸に沿って前方に移動してきた押出部材302を、天井側(上方)に持ち上げるその結果、ノズル180Dの天井側の内壁と、押出部材302の天井側の面の間(図14に示す「S」)に隙間が生じにくくなる。つまり、第4変容例では、底面側突起181Dが隙間減少部として機能する。なお、底面側突起181Dを形成する位置、および突起の高さ等は、眼内レンズ1が折り畳まれて天井側の隙間に入り込みやすい領域、および、ノズル180Dの内壁と押出部材302の間に生じる摩擦力の大きさ等に応じて適宜設定されればよい。なお例えば、底面側突起181Dと、押出部材の先端側(例えば、上記実施形態の屈曲部310)の軸を軸基部の軸に対して天井側に向ける技術(図4参照)とを組み合わせて眼内レンズ挿入器具に採用してもよい。この組み合わせにより、眼内レンズ1が天井側の隙間により入り込み難くなると考えられる。つまり、眼内レンズ1が天井側の隙間により入り込み難くなるように、本開示の技術を選択的に組み合わせてもよい。
また、上記実施形態では、図4に示すように、屈曲部310の径と軸基部330の径は略同一である。つまり、屈曲部310における基端部331の前後で、屈曲部310と軸基部330から構成された棒状の部材の径は変化しない。換言すると、上記実施形態では、屈曲部310における基端部331は、屈曲部310と軸基部330からなり径が略一定の棒状部材のうち、先端部と後端部の間に位置する。しかし、屈曲部の基端部の位置、および軸基部の構成等を変更することも可能である。
図15は、第5変容例の眼内レンズ挿入器具におけるプランジャー300Eの斜視図である。図15に示すように、第5変容例のプランジャー300Eでは、屈曲部310Eは、プランジャー基部350の前端部からさらに前方へ延びると共に、プランジャー基部350の軸AX5に対して天井側に向けて傾く軸AX6を有する。この場合でも、屈曲部310Eは、ノズル180(図5等参照)の通路形状に対応して適宜湾曲し、通路内の天井側の面に摺動しながら先端側へ進む。従って、ノズル180内の天井側に隙間が生じにくくなる。以上のように、屈曲部310Eにおける基端部331Eは、屈曲部310Eの径と異なる径を有するプランジャー基部350の先端部に位置していてもよい。なお、第5変容例では、プランジャー基部350が前述した「通路の軸と平行の延びる軸基部」に対応する。つまり、第5変容例のプランジャー基部350は、軸基部330Eと表現することもできる。また、第5変容例では、屈曲部310Eとプランジャー基部350(軸基部330E)が、眼内レンズ1を前方に押し出す略棒状の押出部材301Eに対応する。
また、上記実施形態および第1~第5変容例では、屈曲部の軸は直線状に延びており、直線状に延びる屈曲部の軸が天井側に向けて傾いている。しかし、屈曲部の軸は湾曲していてもよい。例えば、軸AX1(図4参照)に対する屈曲部310の角度が、先端側に向かう程大きくなるように、屈曲部310が湾曲していてもよい。同様に、軸AX5(図15参照)に対する屈曲部310Eの角度が、先端側に向かう程大きくなるように、屈曲部310Eが湾曲していてもよい。