以下、図面を参照して本開示に係る構造体及びその製造方法について説明する。但し、本開示の構造体及びその製造方法は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、上下方向が逆転してもよい。
〈第1実施形態〉
図1乃至図9を用いて、本開示の第1実施形態に係る構造体10の構成、及び構造体10の製造方法について説明する。
[構造体10の構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る構造体の概要を示す平面図である。また、図2は、本開示の一実施形態に係る構造体のA−A’断面図である。図1及び図2に示すように、本開示の第1実施形態に係る構造体10は、導電性を有する第1の基材100と、導電性を有する第2の基材200と、導電体300とを有する。第1の基材100と第2の基材200とに挟まれて中間層150が配置される。第2の基材200は中間層150を介して第1の基材100上に配置されており、第2の基材200及び中間層150には第1の基材100を露出する開口部210が設けられている。第2の基材200は表面に絶縁層250を有する。すくなくとも、開口部210の内側面には絶縁層250が配置される。導電体300は開口部210に配置されており、開口部210の内側面において絶縁層250と接している。導電体300は、開口部210の底部において第1の基材100と接している。
図1に示すように、開口部210及び導電体300の平面形状は、絶縁層250の第1側202から第1側202とは反対側の第2側204に向かって複数のラインがそれぞれ独立に延びるラインアンドスペース形状を例示したが、この形状に限定されない。導電体300の平面形状は例えば、複数のラインがそれぞれ異なる方向に延び、一部のラインが交差する又は一部のラインが連結してもよい。また、導電体300の平面形状はライン状に限らず、円形状又は多角形状であってもよい。また、導電体300の平面形状はライン状及び円形状又は多角形状等の組み合わせであってもよい。
本実施形態において、導電体300の幅、つまり開口部210の開口幅220は20μm以下である。しかしながらこれに限定されず、開口部210の開口幅220は、用途に応じて適宜選択でき、例えば0.5μm以上100μm以下の範囲で選択することができる。
また、図1では、第1の基材100及び第2の基材200が方形である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、第1の基材100及び第2の基材200はシリコンウェハのように円形であってもよい。この場合、導電体300はシリコンウェハの円形の外周付近まで配置されていてもよく、シリコンウェハ内部の所定の領域に配置されていてもよい。
第1の基材100の材料と第2の基材200の材料とは、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。第1の基材100の材料と第2の基材200の材料とは、導電性を有し、且つ後に説明する条件を満たしていればよい。第1の基材100の導電率は、開口部210によって露出された第1の基材100の表面からめっき層310を成長させるために十分な導電率であればよい。第1の基材100の導電率は、10Ω-1・m-1以上1×105Ω-1・m-1以下とすることができる。本実施形態において、第2の基材200の導電率は第1の基材100の導電率よりも高くてもよいが、これに限定されない。第2の基材200の導電率は、第1の基材100の導電率以上でも以下であってもよい。
本実施形態において第1の基材100及び第2の基材200の材料はシリコンであるがこれに限定されない。第1の基材100の材料としては、例えば、シリコンの他に炭化シリコン、ガリウムヒ素、窒化ガリウムなどの単結晶半導体を用いることができる。なお、第1の基材100及び第2の基材200は、単一の基材によって構成された例を図示したが、この構成に限定されず、複数の基材又は層が積層された構造であってもよい。
第1の基材100の材料としては、単結晶半導体以外にも多結晶半導体やアモルファス半導体を用いることができる。多結晶半導体やアモルファス半導体は、第1の基材100上に物理蒸着法(Physical Vapor Deposition:PVD法)又は化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)を用いて形成することができる。PVD法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、めっき法、及び分子線エピタキシー法などを用いることができる。また、CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、触媒CVD法(Cat(Catalytic)−CVD法又はホットワイヤCVD法)などと用いることができる。
また、第1の基材100の材料としては、半導体の他にもステンレスなどの導電性材料や、少なくとも開口部210によって露出される領域に導電性を有する材料が配置された絶縁性材料を用いることができる。絶縁性材料としては、ガラス、石英、サファイア、樹脂などを用いることができる。
中間層150の材料は、第2の基材200に対するエッチング方法において第2の基材200よりもエッチングレートが遅い材料を用いることができる。例えば、本実施形態において中間層150の材料は、第1の基材100及び第2の基材200のうち少なくとも一方の表面にCVD法によって形成された窒化シリコンであるが、これに限定されない。本実施形態において中間層150の膜厚は5nm以上5000nm以下とする。中間層150は第2の基材200をエッチングするときのエッチングストッパであり、中間層150の膜厚が下限よりも薄いと、第2の基材200に対するエッチングストッパとしての機能が得られなくなる。なお、中間層150の膜厚の上限はこれに限定されず、後の中間層150に対するエッチング、及びめっき層310の成長に影響しない範囲で選択することができる。
絶縁層250の材料は、中間層150に対するエッチング方法において、中間層150よりもエッチングレートが遅い材料を用いることができる。例えば、本実施形態において絶縁層250は、第2の基材200の表面に熱酸化法によって形成された酸化シリコンであるが、これに限定されない。本実施形態において絶縁層250の膜厚は5000nm以下とする。しかしながら、絶縁層250の膜厚の上限はこれに限定されず、後のめっき層310の成長に影響しない範囲で選択することができる。絶縁層250の下限は特に設定しない。絶縁層250は中間層150をエッチングするときのエッチングストッパであり、エッチングストッパとしての機能が得られればよい。さらには後のめっき層310の成長時に、絶縁層250によって第2の基材200が絶縁されればよい。
本実施形態において導電体300の材料は、金であるがこれに限定されない。導電体300の材料は、金、白金、銀、銅、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、又はイリジウムなどを用いることができ、用途に応じて適宜選択するとよい。例えば、構造体10を貫通電極基材として用いる場合は導電体300として銅を用いることができる。なお、詳細は後述するが、導電体300は第1の基材100表面からめっき層310を成長させることで形成する。
なお、構造体10をX線画像撮影用グリッドとして用いる場合、導電体300は、第2の基材200に比べてX線に対する透過率が低い材料を用いることができる。例えば、導電体300として金、白金、ロジウム、ルテニウム、又はイリジウムなどを含む材料を用いることができる。図2では、導電体300が開口部210を充填するように配置された構造を例示したが、この構造に限定されない。導電体300は、目的に応じて、少なくとも開口部210の一部に配置されていればよい。
開口部210のアスペクト比は、0.5以上、好ましくは10以上、より好ましくは30以上になるように選択されるとよい。ここで、開口部210のアスペクト比は、開口幅220に対する第2の基材200の厚さとして定義される。開口部210の平面形状が図1に示す形状とは異なる場合、開口部210のアスペクト比は、開口部210のうち最も幅が狭い箇所の幅に対する第2の基材200の厚さとして定義されてもよい。開口部210のアスペクト比が上記下限よりも小さいと、構造体10を貫通電極基材として用いる場合は微細パターンを形成することが困難になり、構造体10をX線画像撮像用グリッドとして用いる場合はX線を導電体300で阻止することができなくなり、X線映像を撮影するための信号にノイズが多く含まれてしまう。
第1の基材100及び第2の基材200の厚さは、特に制限はないが、例えば、100μm以上800μm以下の厚さの基材を使用することができる。第1の基材100の厚さが第2の基材200の厚さよりも薄くなると、基材のたわみが大きくなる。その影響で、製造過程におけるハンドリングが困難になるとともに、第1の基材100と第2の基材200及び導電体300との内部応力の差により基材が反ってしまう。一方、第1の基材100の厚さが第2の基材200の厚さよりも厚くなると、基材の重量が増加し、ハンドリングを行う装置への負担が大きくなる。また、構造体10をX線画像撮影用グリッドとして用いる場合、X線が第1の基材100を透過する距離が長くなると、第1の基材100よるX線の散乱及び吸収が大きくなり、X線映像を撮影するための信号が弱くなってしまう。第2の基材200の厚さがより厚いほど、第2の基材200に対するエッチングがより深くなり、エッチングストッパとしての中間層150の厚さがより必要となる。また中間層150の厚さがより厚いほど、中間層150に対するエッチングがより深くなり、エッチングストッパとしての絶縁層250の厚さがより必要となる。
以上のように、第1実施形態に係る構造体10によると、第2の基材200に設けられた開口部210の内側面が欠損なく絶縁層250で覆われていることで、簡易的な構造で導電体300を配置することができる。例えば電解めっき法によってめっき層310を成長させる際に、めっき層310が第2の基材200の開口部210の内側面から成長することを抑制することができる。したがって、めっき層310の成長方向の制御性をさらに向上させることができ、開口部210においてボイドの発生を抑制した導電体300が配置された構造体を得ることができる。
また、導電体300のX線に対する透過率が第2の基材200のX線に対する透過率に比べて低いことで、構造体10にX線を照射したときに、X線が第2の基材200の領域を透過し、導電体300によって遮蔽される。したがって、構造体10をX線画像撮影用グリッドとして用いることができる。
また、第1の基材100及び第2の基材200として単結晶基材を用いることで、第1の基材100及び第2の基材200において均質なX線の透過率を得ることができる。したがって、第1の基材100及び第2の基材200の厚さ方向及び面内方向に均質なX線の透過率を得ることができる。また、導電体300が金を含むことで、導電体300によるX線の阻止効率を向上させることができる。したがって、X線映像を撮影するための信号に含まれるノイズを小さくすることができる。
[構造体10の製造方法]
図3乃至図9を用いて、本開示の第1実施形態に係る構造体の製造方法を説明する。図3乃至図9において、図1及び図2に示す要素と同じ要素には同一の符号を付した。
図3は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、第1の基材と第2の基材とを貼り合せる工程を示す図である。図3に示すように、第1の基材100と第2の基材200とを個別に準備して貼り合せる。第1の基材100と第2の基材200とを貼り合せる方法は、両基材の材料及び表面状態に応じて適宜選択すればよい。例えば、本実施形態において、第1の基材100及び第2の基材200の材料はシリコンである。第1の基材100及び第2の基材200の貼り合わせ面及び貼り合わせ面とは反対側の面は、あらかじめ低圧成膜加工(LP−CVD)を用いて窒化シリコンを成膜する。第1の基材100と第2の基材200とに成膜した窒化シリコンは、常温接合法によって接合することができる。常温接合法は、表面活性化法を用いることによって基材同士を常温で接合する接合方法である。表面活性化法は、例えば真空中で高速原子ビームなどを用いて、基材の貼り合せる側の表面に形成された酸化物や吸着した分子をスパッタリング効果により除去することで表面を活性化する方法である。
常温接合法の他にもウェハ直接接合法によって接合することもできる。ウェハ直接接合法は、単に貼り合せ法とも呼ばれ、表面が親水化処理された基材同士を貼り合せる接合方法である。親水化処理は、例えば酸などの化学薬品及び純水を用いて基材表面を洗浄、酸化して薄い酸化膜を形成し、基材の表面に水酸基を付着させる処理である。
第2の基材200の厚さは、第2の基材200と第1の基材100との接合前に調整される。しかしながらこれに限定されず、第2の基材200の厚さは、第2の基材200と第1の基材100との接合後に調整されてもよい。具体的には、第2の基材200は、第1の基材100とは反対側に成膜された窒化シリコンごと任意の厚さに切除される。
本実施形態において、第1の基材100と第2の基材200とに挟まれて配置される窒化シリコンを、中間層150とする。ここで、図3では、第1の基材100及び第2の基材200の両方に中間層150を形成して、両基板を貼り合せる製造方法を例示したが、この製造方法に限定されない。例えば、中間層150を第2の基材200の表面だけに形成して両基板を貼り合せてもよい。又は、中間層150を第1の基材100の表面だけに形成して両基板を貼り合せてもよい。
図4は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、第2の基材上にレジストパターンを形成する工程を示す図である。図4に示すように、第2の基材200上(第2の基材200の第1の基材100とは反対側)にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストを露光及び現像することによりレジストパターン400を形成する。レジストパターン400は、図2に示す開口部210が形成される領域を露出するようにパターンが形成される。
図5は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、第2の基材200をエッチングする工程を示す図である。図4に示す状態で、レジストパターン400から露出した第2の基材200に対するエッチングを行い、開口部210を形成する。第2の基材200に対するエッチングの方法は、中間層150に対するエッチングレート(エッチングレートB)よりも第2の基材200に対するエッチングレート(エッチングレートA)が速い方法であればよい。本実施形態において、第2の基材200はシリコンであり、中間層150である窒化シリコンがエッチングストッパとして機能し得る六フッ化硫黄(SF6)を用いてドライエッチングする。しかしながらこれに限定されず、エッチングの方法は、中間層150および第2の基材200の材料によって、エッチングレートの条件を満たす任意の方法を用いることができる。ここでエッチングレートの条件は、エッチングレートAが、エッチングレートBに対して2倍以上であるとよい。好ましくは、エッチングレートの条件は、エッチングレートAは、エッチングレートBに対して10倍以上であるとよい。より好ましくは、エッチングレートの条件は、エッチングレートAは、エッチングレートBに対して100倍以上であるとよい。例えば、第2の基材200に対するエッチング方法としては、4フッ化炭素(CF4)、六フッ化硫黄(SF6)、臭化水素(HBr)を使用したドライエッチングを用いることができる。
図5に示すように、六フッ化硫黄(SF6)を用いたドライエッチングは、シリコンに対するエッチングレートに比べて窒化シリコンに対するエッチングレートが遅い(又は窒化シリコンをエッチングしない)ため、中間層150が露出した状態でエッチングの進行が遅くなる(又はストップする)。ここで、中間層150の膜厚は10nm以上であるので、中間層150は第2の基材200に対するエッチングストッパとして機能する。上記のようにして、中間層150に達する開口部210を第2の基材200に形成する。
次に、レジストパターン400を除去することで、図6に示す断面構造の基材を得ることができる。レジストパターン400の除去は、有機溶媒を用いてもよく、又は酸素プラズマ処理などのアッシングを用いてもよい。レジストの除去の後はIPA乾燥によって基材を乾燥してもよい。
図7は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、第2の基材の表面に絶縁層を形成する工程を示す図である。絶縁層を形成する方法は、第2の基材200の材料及び表面状態に応じて適宜選択すればよい。例えば、本実施形態において、第2の基材200の材料はシリコンであり、第2の基材200の表面には、熱酸化法によって絶縁層250となる酸化シリコンが形成される。このとき、開口部210の底部は中間層150によって覆われているので酸化しない。すなわち、絶縁層250は、第2の基材200の開口部210の内側面、及び第2の基材200の第1の基材100とは反対側の面にだけ形成される。
図8は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、中間層をエッチングする工程を示す図である。図7に示す状態で、開口部210の底部に露出した中間層150に対するエッチングを行う。中間層150に対するエッチングの方法は、絶縁層250に対するエッチングレート(エッチングレートD)よりも中間層150に対するエッチングレート(エッチングレートC)が速い方法であればよい。本実施形態において、中間層150は窒化シリコンであり、絶縁層250である酸化シリコンがエッチングストッパとして機能し得る熱リン酸を用いてウェットエッチングする。しかしながらこれに限定されず、エッチングの方法は、中間層150および絶縁層250の材料によって、エッチングレートの条件を満たす任意の方法を用いることができる。ここでエッチングレートの条件は、エッチングレートCが、エッチングレートDに対して2倍以上であるとよい。好ましくは、エッチングレートの条件は、エッチングレートCが、エッチングレートDに対して10倍以上であるとよい。より好ましくは、エッチングレートの条件は、エッチングレートCが、エッチングレートDに対して100倍以上であるとよい。例えば、中間層150に対するエッチング方法としては、KOH水溶液、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、又は4メチル水酸化アンモニウム(TMAH)を使用したウェットエッチングを行うことができる。
図8に示すように、上記のエッチング条件は、窒化シリコンに対するエッチングレートに比べて酸化シリコンに対するエッチングレートが遅い(又は酸化シリコンをエッチングしない)ため、中間層150がエッチングされて第1の基材100が露出した状態でも、絶縁層250は損なわれない。上記のようにして、第1の基材100に達する開口部210を中間層150に形成する。また同時に、第1の基材100の第2の基材200とは反対側の面(裏面)に形成された窒化シリコンもエッチングされる。
本実施形態の構造体の製造方法においては、中間層150である窒化シリコンをエッチングストッパとして、第2の基材200であるシリコンに対して、六フッ化硫黄(SF6)を用いてエッチングを行った。さらに絶縁層250である酸化シリコンをエッチングストッパとして、中間層150である窒化シリコンに対して、熱リン酸を用いてエッチングを行った。しかしながらこれに限定されず、それぞれのエッチング方法は、第2の基材200と、中間層150と、絶縁層250との材料の組合せに依存する。例えば、第2の基材200がシリコンと、中間層150がアルミニウムと、絶縁層250が酸化シリコンとの組合せの場合、中間層150であるアルミニウムをエッチングストッパとして、第2の基材200であるシリコンに対して六フッ化硫黄(SF6)を用いてエッチングを行い、絶縁層250である酸化シリコンをエッチングストッパとして、中間層150であるアルミニウムに対して混酸アルミ液を用いてエッチングを行うことができる。さらには、第2の基材200がシリコンと、中間層150が酸化アルミニウムと、絶縁層250が酸化シリコンとの組合せの場合、中間層150である酸化アルミニウムをエッチングストッパとして、第2の基材200であるシリコンに対して六フッ化硫黄(SF6)を用いてエッチングを行い、絶縁層250である酸化シリコンをエッチングストッパとして、中間層150である酸化アルミニウムに対して熱リン酸を用いてエッチングを行うこともできる。
ここで、開口部210の底部の中間層150を除去する工程において、従来の構造体の製造方法では、開口部210の内側面を覆う絶縁層250が膜減りしやすく、第2の基材200が露出してしまうことがあった。このため、電解めっき法によって開口部210にめっき層310を成長させる際に、開口部210の内側面が異常析出の起点となってしまい、導電体300の内部にボイドが発生してしまう問題があった。
本実施形態の構造体の製造方法によれば、開口部210の底部の中間層150を除去する際に、開口部210の内側面の絶縁層250の膜減りを抑制することができるため、第2の基材200の内側面が欠損なく絶縁層250で覆われている。これによって、電解めっき法によって開口部210にめっき層310を成長させる際に、めっき層310が第2の基材200の開口部210の内側面から成長することを抑制することができる。したがって、めっき層310の成長方向の制御性をさらに向上させることができ、開口部210においてボイドの発生を抑制した導電体300が配置された構造体を得ることができる。
図9は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、めっき層を形成する工程を示す図である。図9に示すように、開口部210では、第1の基材100に通電する電解めっき法によって、開口部210によって露出された第1の基材100の表面からめっき層310を成長させる。つまり、開口部210は、第1の基材100から開口部210の端部320に向けてめっき層310を形成させることで、図2に示す導電体300を形成させる。
電解めっき法において、第1の基材100への通電は第1の基材100の裏面(第1の基材100の第2の基材200とは反対側の面)から電力が供給されることで行われる。ここで、第2の基材200の表面には絶縁層250が形成されているため、第1の基材100の裏面から供給された電力は開口部210の内側面にはほとんど伝達されない。つまり、めっき層310は開口部210の内側面からはほとんど成長せず、第1の基材100の表面である、開口部210の底部からの成長が支配的となる。これによって、開口部210において、めっき層310の表面は第1の基材100の表面とほぼ平行に成長する。
以上のように、第1実施形態に係る構造体10の製造方法によると、異なる物性値を有する基材同士を簡易な方法で積層させることができる。また、開口部210が設けられた第2の基材200の内側面が欠損なく絶縁層250で覆われていることで、めっき層310の成長方向を制御することができる。したがって、めっき層310の成長方向の制御性をさらに向上させることができ、開口部210においてボイドの発生を抑制した導電体300が配置された構造体を容易に製造することができる。
〈第2実施形態〉
図10を用いて、本開示の第2実施形態に係る構造体10Aの構成について説明する。図10では、第2の基材200Aの第1の基材100Aとは反対側の面に第1の絶縁層250Aと、第2の基材200Aの開口部210Aの内側面に第2の絶縁層250Bとを形成した構造体10Aについて説明する。ここで、第1実施形態と同様である部分は、その詳しい説明を省略する。
[構造体10Aの構成]
図10は、本開示の第2実施形態に係る構造体の断面図である。図10に示すように、構造体10Aは、導電性を有する第1の基材100Aと、導電性を有する第2の基材200Aと、導電体300Aとを有する。第1の基材100Aと第2の基材200Aとに挟まれて中間層150Aが配置される。第2の基材200Aは中間層150Aを介して第1の基材100A上に配置されており、第2の基材200A及び中間層150Aには第1の基材100Aを露出する開口部210Aが設けられている。第2の基材200Aは第1の基材100Aとは反対側の面に第1の絶縁層250Aを有する。第2の基材200Aは、開口部210Aの内側面に第2の絶縁層250Bが配置される。導電体300Aは開口部210Aに配置されており、開口部210Aの内側面において第2の絶縁層250Bと接している。導電体300Aは、開口部210Aの底部において第1の基材100Aと接している。
[構造体10Aの製造方法]
図11乃至図13を用いて、本開示の第2実施形態に係る構造体の製造方法を説明する。ここで、第1実施形態と同様である部分は、その詳しい説明を省略する。
まず図3における本開示の第1実施形態に係る構造体の製造方法と同様に、第1の基材100Aと第2の基材200Aとを貼り合せる。
図11は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、第2の基材上に第1の絶縁層を形成する工程を示す図である。図11に示すように、第2の基材200A上(第2の基材200Aの第1の基材100Aとは反対側)に第1の絶縁層250Aを形成する。絶縁層を形成する方法は、第2の基材200Aの材料及び表面状態に応じて適宜選択すればよい。例えば、本実施形態において、第2の基材200Aの材料はシリコンであり、第2の基材200Aの表面には、熱酸化法によって第1の絶縁層250Aとなる酸化シリコンが形成される。
図12は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、第1の絶縁層上に開口部のパターンを形成する工程を示す図である。図12に示すように、第1の絶縁層250Aには、フォトリソグラフィ工程により、開口部210Aが形成される領域を露出するようにパターンが形成される。
図13は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、第2の基材をエッチングする工程を示す図である。図12に示す状態で、第1の絶縁層250Aから露出した第2の基材200Aに対するエッチングを行い、開口部210Aを形成する。第2の基材200Aに対するエッチングの方法は、中間層150Aに対するエッチングレート(エッチングレートB)よりも第2の基材200Aに対するエッチングレート(エッチングレートA)が速い方法であればよい。本実施形態において、第2の基材200Aはシリコンであり、中間層150Aである窒化シリコンがエッチングストッパとして機能し得る六フッ化硫黄(SF6)を用いてドライエッチングする。しかしながらこれに限定されず、エッチングの方法は、中間層150Aおよび第2の基材200Aの材料によって、エッチングレートの条件を満たす任意の方法を用いることができる。
図14は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、第2の基材の表面に第2の絶縁層を形成する工程を示す図である。絶縁層を形成する方法は、第2の基材200Aの材料及び表面状態に応じて適宜選択すればよい。例えば、本実施形態において、第2の基材200Aの材料はシリコンであり、第2の基材200Aの表面は、熱酸化法によって第2の絶縁層250Bとなる酸化シリコンが形成される。このとき、開口部210Aの底部は中間層150Aによって覆われているので酸化しない。また、第2の基材200Aの第1の基材100Aとは反対側の面はすでに第1の絶縁層250Aによって覆われている。すなわち第2の絶縁層250Bは、第2の基材200Aの開口部210Aの内側面にのみ形成される。
図15は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、中間層をエッチングする工程を示す図である。図15に示す状態で、開口部210Aの底部に露出した中間層150Aに対するエッチングを行う。中間層150Aに対するエッチングの方法は、第2の絶縁層250Bに対するエッチングレート(エッチングレートD)よりも中間層150Aに対するエッチングレート(エッチングレートC)が速い方法であればよい。本実施形態において、中間層150Aは窒化シリコンであり、第2の絶縁層250Bである酸化シリコンがエッチングストッパとして機能し得る熱リン酸を用いてウェットエッチングする。しかしながらこれに限定されず、エッチングの方法は、中間層150Aおよび第2の絶縁層250Bの材料によって、エッチングレートの条件を満たす任意の方法を用いることができる。
図15に示すように、上記のエッチング条件は、窒化シリコンに対するエッチングレートに比べて酸化シリコンに対するエッチングレートが遅い(又は酸化シリコンをエッチングしない)ため、中間層150Aがエッチングされて第1の基材100Aが露出した状態でも、第2の絶縁層250Bは損なわれない。上記のようにして、第1の基材100Aに達する開口部210Aを中間層150Aに形成する。また同時に、第1の基材100Aの第2の基材200Aとは反対側の面(裏面)に形成された窒化シリコンもエッチングされる。
ここで、開口部210Aの底部の中間層150Aを除去する工程において、従来の構造体の製造方法では、開口部210Aの内側面を覆う第2の絶縁層250Bが膜減りしやすく、第2の基材200Aが露出してしまうことがあった。このため、電解めっき法によって開口部210Aにめっき層310Aを成長させる際に、開口部210Aの内側面が異常析出の起点となってしまい、導電体300Aの内部にボイドが発生してしまう問題があった。
本実施形態の構造体の製造方法によれば、開口部210Aの底部の中間層150Aを除去する際に、開口部210Aの内側面の第2の絶縁層250Bの膜減りを抑制することができるため、第2の基材200Aの内側面が欠損なく第2の絶縁層250Bで覆われている。これによって、電解めっき法によって開口部210Aにめっき層310Aを成長させる際に、めっき層310Aが第2の基材200Aの開口部210Aの内側面から成長することを抑制することができる。したがって、めっき層310Aの成長方向の制御性をさらに向上させることができ、開口部210Aにおいてボイドの発生を抑制した導電体300Aが配置された構造体を得ることができる。
図16は、本開示の一実施形態に係る構造体の製造方法において、めっき層を形成する工程を示す図である。図16に示すように、開口部210Aでは、第1の基材100Aに通電する電解めっき法によって、開口部210Aによって露出された第1の基材100Aの表面からめっき層310Aを成長させる。つまり、開口部210Aは、第1の基材100Aから開口部210Aの端部320Aに向けてめっき層310Aを形成させることで、図10に示す導電体300Aを形成させる。
電解めっき法において、第1の基材100Aへの通電は第1の基材100Aの裏面(第1の基材100Aの第2の基材200Aとは反対側の面)から電力が供給されることで行われる。ここで、第2の基材200Aの表面には第1の絶縁層250A及び第2の絶縁層250Bが形成されているため、第1の基材100Aの裏面から供給された電力は開口部210Aの内側面にはほとんど伝達されない。つまり、めっき層310Aは開口部210Aの内側面からはほとんど成長せず、第1の基材100Aの表面である、開口部210Aの底部からの成長が支配的となる。これによって、開口部210Aにおいて、めっき層310Aの表面は第1の基材100Aの表面とほぼ平行に成長する。
以上のように、第2実施形態に係る構造体10Aの製造方法によると、異なる物性値を有する基材同士を簡易な方法で積層させることができる。また、開口部210Aが設けられた第2の基材200Aの内側面が欠損なく第2の絶縁層250Bで覆われていることで、めっき層310Aの成長方向を制御することができる。したがって、めっき層310Aの成長方向の制御性をさらに向上させることができ、開口部210Aにおいてボイドの発生を抑制した導電体300Aが配置された構造体を容易に製造することができる。
なお、本開示は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。