以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る立体造形装置の一例の概要について図1ないし図4を参照して説明する。図1は同立体造形装置の概略平面説明図、図2は同じく概略側面説明図、図3は同じく造形部の断面説明図である。なお、図3は造形時の状態で示している。また、図4は同じく具体的構成の要部斜視説明図である。
この立体造形装置は、粉体造形装置(粉末造形装置ともいう。)であり、粉体(粉末)が結合された層状造形物である造形層30が形成される造形部1と、造形部1の層状に敷き詰められた粉体層31に対して造形液10を吐出して立体造形物を造形する造形ユニット5とを備えている。
造形部1は、粉体槽11と、平坦化手段(リコータ)である回転体としての平坦化ローラ12などを備えている。なお、平坦化手段は、回転体に代えて、例えば板状部材(ブレード)とすることもできる。
粉体槽11は、造形槽22に供給する粉体20を保持する供給槽21と、造形層30が積層されて立体造形物が造形される造形槽22とを有している。
供給槽21の底部は供給ステージ23として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。同様に、造形槽22の底部は造形ステージ24として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。造形ステージ24上に造形層30が積層された立体造形物が造形される。
供給ステージ23は、例えば図4に示すように、モータ27によって矢印Z方向(高さ方向)に昇降され、造形ステージ24は、同じく、モータ28によって矢印Z方向に昇降される。
平坦化ローラ12は、供給槽21の供給ステージ23上に供給された粉体20を造形槽22に移送して供給する。平坦化手段である平坦化ローラ12によって造形槽22に供給した粉体20の表面を均して平坦化して、粉体層31を形成する。
この平坦化ローラ12は、造形ステージ24のステージ面(粉体20が積載される面)に沿って矢印Y方向に、ステージ面に対して相対的に往復移動可能に配置され、往復移動機構25によって移動される。また、平坦化ローラ12は、モータ26によって回転駆動される。
一方、造形ユニット5は、造形ステージ24上の粉体層31に粉体20を結合させる造形液10を吐出して(与えて)、粉体20が結合された層状造形物としての造形層30を形成する液体吐出ユニット50を備えている。
液体吐出ユニット50は、キャリッジ51と、キャリッジ51に搭載された2つ(1又は3つ以上でもよい。)の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)52a、52bを備えている。
キャリッジ51は、ガイド部材54及び55に移動可能に保持されている。ガイド部材54及び55は、両側の側板70、70に昇降可能に保持されている。
このキャリッジ51は、後述するX方向走査機構550を構成するX方向走査モータによってプーリ及びベルトを介して主走査方向である矢印X方向(以下、単に「X方向」という。他のY、Zについても同様とする。)に往復移動される。
2つのヘッド52a、52b(以下、区別しないときは「ヘッド52」という。)は、造形液を吐出する複数のノズルを配列したノズル列がそれぞれ2列配置されている。一方のヘッド52aの2つのノズル列は、シアン造形液及びマゼンタ造形液を吐出する。他方のヘッド52bの2つのノズル列は、イエロー造形液及びブラック造形液をそれぞれ吐出する。なお、ヘッド構成はこれに限るものではない。
これらのシアン造形液、マゼンタ造形液、イエロー造形液、ブラック造形液の各々を収容した複数のタンク60がタンク装着部56に装着され、供給チューブなどを介してヘッド52a、52bに供給される。
また、X方向の一方側には、液体吐出ユニット50のヘッド52の維持回復を行うメンテナンス機構61が配置されている。
メンテナンス機構61は、主にキャップ62とワイパ63で構成される。キャップ62をヘッド52のノズル面(ノズルが形成された面)に密着させ、ノズルから造形液を吸引する。ノズルに詰まった粉体の排出や高粘度化した造形液を排出するためである。その後、ノズルのメニスカス形成(ノズル内は負圧状態である)のため、ノズル面をワイパ63でワイピング(払拭)する。また、メンテナンス機構61は、造形液の吐出が行われない場合に、ヘッドのノズル面をキャップ62で覆い、粉体20がノズルに混入することや造形液10が乾燥することを防止する。
造形ユニット5は、ベース部材7上に配置されたガイド部材71に移動可能に保持されたスライダ部72を有し、造形ユニット5全体がX方向と直交するY方向(副走査方向)に往復移動可能である。この造形ユニット5は、後述するY方向走査機構552によって全体がY方向に往復移動される。
液体吐出ユニット50は、ガイド部材54、55とともに矢印Z方向に昇降可能に配置され、後述するZ方向昇降機構551によってZ方向に昇降される。
ここで、造形部1の詳細について説明する。
粉体槽11は、箱型形状をなし、供給槽21と造形槽22と、余剰粉体受け槽29の3つの上面が開放された槽とを備えている。供給槽21内部には供給ステージ23が、造形槽22内部には造形ステージ24がそれぞれ昇降可能に配置される。
供給ステージ23の側面は供給槽21の内側面に接するように配置されている。造形ステージ24の側面は造形槽22の内側面に接するように配置されている。これらの供給ステージ23及び造形ステージ24の上面は水平に保たれている。
供給槽21上には後述する粉体供給装置554が配置される。造形の初期動作時や供給槽21の粉体量が減少した場合に、粉体供給装置554を構成するタンク内の粉体を供給槽21に供給する。粉体供給のための粉体搬送方法としては、スクリューを利用したスクリューコンベア方式や、エアーを利用した空気輸送方式などが挙げられる。
平坦化ローラ12は、供給槽21から粉体20を造形槽22へと移送供給して、表面を均すことで平坦化して所定の厚みの層状の粉体である粉体層31を形成する。
この平坦化ローラ12は、造形槽22及び供給槽21の内寸(即ち、粉体が供される部分又は仕込まれている部分の幅)よりも長い棒状部材であり、往復移動機構25によってステージ面に沿って、供給槽21及び造形槽22上をY方向(副走査方向)に往復移動される。
この平坦化ローラ12は、モータ26によって回転されながら、供給槽21及び造形槽22の上方を通過するようにして水平方向に往復移動する。これにより、粉体20が造形槽22上へと移送供給され、また、平坦化ローラ12が造形槽22上を通過しながら粉体20を平坦化することで粉体層31が形成される。
次に、上記立体造形装置の制御部の概要について図5を参照して説明する。図5は同制御部のブロック図である。
制御部500は、この立体造形装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明に係わる制御を含む立体造形動作の制御を実行させるためのプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、造形データ等を一時格納するRAM503とを含む主制御部500Aを備えている。
制御部500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)504を備えている。また、制御部500は、画像データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505を備えている。
制御部500は、外部の造形データ作成装置600から造形データを受信するときに使用するデータ及び信号の送受を行うためのI/F506を備えている。なお、造形データ作成装置600は、最終形態の造形物を各造形層にスライスした造形データを作成する装置であり、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成されている。
制御部500は、各種センサの検知信号を取り込むためのI/O507を備えている。
制御部500は、液体吐出ユニット50のヘッド52を駆動制御するヘッド駆動制御部508を備えている。
制御部500は、液体吐出ユニット50のキャリッジ51をX方向(主走査方向)に移動させるX方向走査機構550を構成するモータを駆動するモータ駆動部510と、造形ユニット5をY方向(副走査方向)に移動させるY方向走査機構552を構成するモータを駆動するモータ駆動部512を備えている。
制御部500は、液体吐出ユニット50のキャリッジ51をZ方向に移動(昇降)させるZ方向昇降機構551を構成するモータを駆動するモータ駆動部511を備えている。なお、矢印Z方向への昇降は造形ユニット5全体を昇降させる構成とすることもできる。
制御部500は、供給ステージ23を昇降させるモータ27を駆動するモータ駆動部513と、造形ステージ24を昇降させるモータ28を駆動するモータ駆動部514を備えている。
制御部500は、平坦化ローラ12を移動させる往復移動機構25のモータ553を駆動するモータ駆動部515と、平坦化ローラ12を回転駆動するモータ26を駆動する516を備えている。
制御部500は、供給槽21に粉体20を供給する粉体供給装置554を駆動する供給系駆動部517と、液体吐出ユニット50のメンテナンス機構61を駆動するメンテナンス駆動部518を備えている。
制御部500は、粉体後供給部80から粉体20の供給を行わせる後供給駆動部519を備えている。
制御部500のI/O507には、装置の環境条件としての温度及び湿度を検出する温湿度センサ560などの検知信号やその他のセンサ類の検知信号が入力される。
制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル522が接続されている。
なお、造形データ作成装置600と立体造形装置(粉体積層造形装置)601によって造形装置が構成される。
次に、本発明の第1実施形態における制御部による粉体層の形成動作の制御について図6を参照して説明する。図6は同説明に供する模式的説明図である。
図6(a)に示すように、造形槽22の造形ステージ24上に、1又は複数層の造形層30が形成されているものとする。
そこで、最上層の造形層30上に次の粉体層31を形成するときには、図6(b)に示すように、供給槽21の供給ステージ23をZ1方向に移動量z1分上昇させ、造形槽22の造形ステージ24をZ2方向に移動量z2分下降させる。
このとき、移動量z1、z2は粉体層31の厚みΔtよりも大きな値であり、移動量z2≧z1としている。これにより、供給槽21から粉体20を造形槽22に供給するとき供給される粉体20をすべて造形槽22内に収容することができる。
そこで、図6(c)に示すように、平坦化ローラ12を、供給槽21側から一方の方向であるY2方向(往路方向とする。)に移動させて、粉体20を造形槽22へと移送供給する(粉体供給)。
次いで、図6(d)に示すように、供給槽21の供給ステージ23をZ2方向に移動量z3分下降させ、造形槽22の造形ステージ24をZ1方向に移動量z4分上昇させる。これにより、造形槽22の造形ステージ24上の粉体20が造形槽22の開口部から上方に盛り上がった状態になる。
このときの造形ステージ24の移動量z4は、造形槽22の前回の粉体層31の表面(粉体面)の表面と平坦化ローラ12の下部(下方接線部)との間隔が粉体層31の厚みΔt1となるように設定する。粉体層31の厚みΔt1(積層ピッチ)は、数十〜100μm程度であることが好ましい。
そこで、図6(e)に示すように、平坦化ローラ12をY1方向(復路方向とする。)に移動させることで、造形ステージ24の造形層30上で所定の厚さΔt1になる粉体層31が形成される。このとき、粉体層31の形成に使用されなかった未使用の粉体20は供給槽21に戻される。
粉体層31を形成後、平坦化ローラ12は、図6(f)に示すように、更にY1方向に移動されて初期位置(原点位置)に戻される(復帰される)。その後、ヘッド52から造形液10の液滴を吐出して、次の粉体層31に所要形状の造形層30を積層形成する(造形)動作に移行する。
なお、造形層30は、例えば、ヘッド52から吐出された造形液10が粉体20と混合されることで、粉体20に含まれる接着剤が溶解し、溶解した接着剤同士が結合して粉体20が結合されることで形成される。
次いで、上述した一方向に平坦化ローラ12を移動して造形槽22に粉体を移送供給し、他方向に平坦化ローラ12を移動して粉体の平坦化による粉体層31の形成を行い、ヘッド52による造形液の吐出して造形層30を形成する。このとき、新たな造形層30とその下層の造形層30とは一体化して三次元形状造形物の一部を構成する。
以後、粉体の供給・平坦化よる粉体層31を形成する工程、ヘッド52による造形液吐出工程を必要な回数繰り返すことによって、三次元形状造形物(立体造形物)を完成させる。
このように、平坦化手段の往路移動(一方向への移動)で供給槽から造形槽に粉体を供給し、続いて、平坦化手段の復路移動(他方向への移動)で粉体層の形成と未使用粉体の供給槽への回収を行う。
これにより、粉体層の形成に使用されなった未使用粉体はそのまま造形槽に戻されるので、品質の低下が抑制される。
また、供給槽及び造形槽外に未使用の粉体を排出することがないので、余剰な粉体を収容する余剰粉体受け手段、余剰粉体受け手段から粉体を回収して再度供給槽に戻すための回収機構を設ける必要がなく、装置の大型化を抑制できる。
次に、本発明の第2実施形態について図7を参照して説明する。図7は同実施形態における制御部による粉体層の形成動作の制御の説明に供する模式的説明図である。
まず、図7(a)に示すように、供給槽21の供給ステージ23をZ1方向に移動量z1分上昇させ、造形槽22の造形ステージ24をZ2方向に移動量z2分下降させた後、平坦化ローラ12のY2方向への移動を開始する。
そして、図7(b)に示すように、平坦化ローラ12のY2方向への移動によって供給槽21側から造形槽22側に粉体20を移送供給する(粉体供給)。
次いで、図7(c)に示すように、供給槽21の供給ステージ23をZ2方向に移動量z3分下降させ、造形槽22の造形ステージ24をZ1方向に移動量z4分上昇させる。
そして、平坦化ローラ12の矢印方向への回転駆動を開始し、平坦化ローラ12のY1方向への移動を開始する。
これにより、図7(d)に示すように、平坦化ローラ12は矢印方向に回転しながらY1方向に移動して、造形ステージ24の造形層30上で所定の厚さΔt1になる粉体層31が形成される。このとき、粉体層31の形成に使用されなかった未使用の粉体20は供給槽21に戻される。
そして、図7(e)に示すように、厚さΔtの粉体層31を形成後、平坦化ローラ12が造形槽22を通過したとき、平坦化ローラ12の回転駆動を停止する。その後、更に平坦化ローラ12をY1方向に移動させて、図7(f)に示すように平坦化ローラ12を初期位置(原点位置)まで戻す。
その後、ヘッド52から造形液10を吐出して、次の粉体層31に所要形状の造形層30を積層形成する(造形)動作に移行すること、粉体層31の形成と造形層30の造形を繰り返して立体造形物を形成することは、前記第1実施形態と同様である。
本実施形態では、平坦化ローラ12を復路移動させて平坦化による粉体層31の形成を行うとき、造形槽22上を通過するときには平坦化ローラ12を矢印方向に回転させ、造形槽22を通過したときには平坦化ローラ12の回転駆動を停止している。
このように、平坦化ローラ12を回転させながら移動することで、高平面度な粉体層31を形成できる。そして、粉体層31を形成しているとき以外(造形テーブル24上を通過しているとき以外)は、平坦化ローラ12の回転駆動を停止することで、騒音の発生を少なくし、省電力を図れる。
また、供給槽21から造形槽22に対して1層分の粉体層31を形成するために必要な量に対して多量の粉体20を移送供給している。これにより、平坦化ローラ12のY2方向への移動、Y2方向への移動後の供給槽21及び造形槽22の平面度、平坦化ローラ12のY1方向への移動後の供給槽21の平面度が、粉体層31の平面度に及ぼす影響は小さく、造形物品質には影響がない。
次に、本発明の第3実施形態について図8を参照して説明する。図8は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
本実施形態では、平坦化ローラ12がY2方向に移動するとき、つまり、供給槽21から造形槽22に粉体20を移送供給するときに、平坦化ローラ12の移動方向前方側に、平坦化ローラ12にとともに移動するブレード110を配置している。ブレード31には振動発生手段としての振動子111を備えている。
振動子111は、前記実施形態で説明した制御部500に備えた振動駆動部530を介して主制御部500Aで駆動制御される。なお、制御部500のその他の構成は前記第1実施形態で説明した同様である。
次に、本実施形態における制御部による粉体層の形成動作の制御の説明について図9を参照して説明する。図9は同説明に供する模式的説明図である。
まず、図9(a)に示すように、供給槽21の供給ステージ23をZ1方向に移動量z1分上昇させ、造形槽22の造形ステージ24をZ2方向に移動量z2分下降させる。その後、振動子111を駆動してブレード110を振動させた状態で、ブレード111とともに平坦化ローラ12のY2方向への移動を開始する。
そして、図9(b)に示すように、ブレード110及び平坦化ローラ12のY2方向への移動によって供給槽21側から造形槽22側に粉体20を移送供給する(粉体供給)。このとき、ブレッド110によって粉体20がタッピングされる。ブレード110は、造形槽22を通過したときに振動が停止される。
次いで、図9(c)に示すように、供給槽21の供給ステージ23をZ2方向に移動量z3分下降させ、造形槽22の造形ステージ24をZ1方向に移動量z4分上昇させる。
そして、平坦化ローラ12の矢印方向への回転駆動を開始し、平坦化ローラ12のY1方向への移動を開始する。
これにより、図9(d)に示すように、平坦化ローラ12は矢印方向に回転しながらY1方向に移動して、造形ステージ24の造形層30上で所定の厚さΔt1になる粉体層31が形成される。このとき、粉体層31の形成に使用されなかった未使用の粉体20は供給槽21に戻される。
そして、図9(e)に示すように、厚さΔtの粉体層31を形成後、平坦化ローラ12が造形槽22を通過したとき、平坦化ローラ12の回転駆動を停止する。その後、更に平坦化ローラ12をY1方向に移動させて、図9(f)に示すように平坦化ローラ12を初期位置(原点位置)まで戻す。
その後、ヘッド52から造形液10を吐出して、次の粉体層31に所要形状の造形層30を積層形成する(造形)動作に移行すること、粉体層31の形成と造形層30の造形を繰り返して立体造形物を形成することは、前記第1実施形態と同様である。
このように、振動するブレード110(振動付与手段)で粉体20をタッピングしながら移送供給することで、高密度な状態で造形槽22内に粉体が供給される。これにより、高密度、高平面度な粉体層31を形成することができる。
また、供給槽21から造形槽22に対して1層分の粉体層31を形成するために必要な量に対して多量の粉体20を移送供給しているので、ブレード110と前層の造形層30とが粉体層31の積層ピッチより大きく離間した状態となる。
これにより、ブレード110の振動により粉体20をタッピングしながら造形槽22に供給するとき、振動のエネルギーを大きくしても、既存の造形層30に対する悪影響(ズレや破損)を生じることなく、高密度な粉体層31を形成することができる。
次に、本発明の第4実施形態について図10を参照して説明する。図10は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
本実施形態では、平坦化ローラ12の移動方向において、造形槽22と反対側の供給槽21の端部における粉体20の表面のZ方向位置を検知する第1変位検知手段41を備えている。同様に、平坦化ローラ12の移動方向において、供給槽21と反対側の造形槽供22の端部における粉体20の表面のZ方向位置を検知する第2変位検知手段42を備えている。
第1変位検知手段41、第2変位検知手段42の各検知信号は、制御部500のI/O507に入力される。制御部500は、第1変位検知手段41で検知した粉体20の表面のZ方向位置は不揮発性メモリ505などに格納保持される。
次に、本実施形態における制御部による造形制御について図11及び図12を参照して説明する。図11は同制御の説明に供するフロー図、図12は図10のC部に相当する粉体層の形成状態の説明に供する説明図である。
まず、図11を参照して、前記第3実施形態と同様にして、粉体層31の形成(リコート)を行う。
そして、第1変位検知手段41で供給槽22の粉体層形成後の粉体表面のZ方向位置を検知し、格納保持された前回の粉体供給時の粉体表面のZ方向位置と比較し、前回からの変化量(差)が予め設定した閾値を越えているか否かを判別する。
ここで、前回からの変化量(差)が閾値を越えているときには、次回リコート時の供給ステージ23と造形ステージ24の移動量z1、z2を変更し、格納保持しているZ方向位置と検知したZ方向位置の差がなくなるように補正する。
その後、また、前回からの変化量(差)が閾値を越えていないときはそのまま、第2変位検知手段42によって粉体層31の端部を検知して、粉体層31の形成不良が発生していないか否かを判別する。
すなわち、第2変位検知手段42によって粉体層31の端部を検知した結果、例えば図12(a)に示す状態であるときは正常とし、図12(b)に示すようにだれているときには不良とする。
ここで、粉体層31の形成不良が発生しているときには、再度粉体層31の形成を行う。
そして、正常な粉体層31が形成されたときに、液体を吐出して造形層30を形成する。
これにより、造形動作を繰返し、粉体層形成(リコート)、液体吐出を実施しても確実に薄層形成不良を防止することができる。したがって、造形物形状や雰囲気環境に起因して生じる液体吐出後の造形層30の収縮量変化や、粉体20のかさ密度変化が生じても、継続して安定的に粉体層の形成と造形層の造形を繰り返すことができる。
次に、本発明の第5実施形態に係る立体造形装置の一例の概要について図13ないし図15を参照して説明する。図13は同立体造形装置の概略平面説明図、図14は同じく概略側面説明図、図15は同じく造形部の断面説明図である。
この装置では、粉体槽11として、造形槽22と、平坦化ローラ12の移動方向において造形槽22の両側に配置され、粉体20を収容する2つの供給槽21A、21B(以下、区別しないときは「供給槽21」という。他の部材も同様)を備えている。
そして、平坦化ローラ12は、供給槽21A、造形層22及び供給槽21B上を往復移動可能に配置されている。平坦化ローラ12は、供給槽21A又は21Bから造形槽22に粉体20を移送し、造形槽22に供給された粉体20を平坦化して粉体層31を形成する平坦化手段である。
次に、本実施形態における供給槽内の攪拌手段について図16及び図17を参照して説明する。図16は同実施形態における粉体槽部分の側面説明図、図17は同じく平面説明図である。
本実施形態では、供給槽21Aの供給ステージ23上には、攪拌手段401Aとしての回転盤411が回転可能に配置されている。同様に、供給槽21Bの供給ステージ23上には、攪拌手段401Bとしての回転盤411が回転可能に配置されている。
回転盤411は、正逆両方向に回転可能であり、回転速度も変更可能である。
なお、その他の構成は、前記第1実施形態で説明した装置と同様である。
次に、この装置における制御部の概要について図18を参照して説明する。図18は同制御部のブロック説明図である。
制御部500は、供給槽21A、21Bの各造形ステージ23を昇降させるモータ27A、27Bを個別に駆動するモータ駆動部513と、攪拌手段401A、401Bの回転盤411を回転させるモータ542A、542Bを個別に駆動するモータ駆動部541とを備えている。
なお、その他の構成は、前記第1実施形態で制御部と同様である。
次に、本実施形態における制御部による粉体層の形成動作の制御について図19及び図20を参照して説明する。図19は同制御の説明に供するフロー図、図20は同じく説明図である。
ここでは、供給槽21A、21Bのいずれか一方から造形槽22に粉体20を供給するとき、他方は未使用の粉体20を受けて収容する回収槽として機能させる。そこで、供給側と回収側を区別するときには、平坦化ローラ12で造形槽22に粉体20を供給する側を「供給側の供給槽21」と称し、未使用の粉体20を回収している側を「回収側の供給槽21」と称する。
図19を参照して、供給槽21Aの供給ステージ23と供給槽21Bの供給ステージ23の高さを、供給側の供給槽21に合わせる。
すなわち、供給側の供給槽21から供給される粉体20の供給量と回収側の供給槽21に収容される粉体20の回収量は、粉体層31を1層形成するための粉体量分少なくなる。
そこで、供給槽21Aの供給ステージ23と供給槽21Bの供給ステージ23の高さを、供給側の供給槽21に合わせておくことで、回収側の供給槽21の容積が当該粉体層31を形成するときに生じる未使用の粉体20で満たされることはない。これにより、回収側の供給槽21の上部をヘッド52が通過するときにノズル面が粉体20と接触して吐出不良を生じるおそれがなくなる。
その後、造形槽22の造形ステージ24を上昇させないで、供給側の供給槽21から1層分以上の粉体20を回収側の供給槽21に移送する(これを「捨てリコート」という。)。これは、詳細は後述するが、供給側と回収側を入れ替えるときに、次の供給側の供給槽21から供給される粉体20の量を一定に保つために行っている。
そして、所定厚みの粉体層31を形成する。
ここでは、供給側の供給槽21の供給ステージ23を所要量上昇させ、造形槽22の造形ステージ24を所定量(粉体層31の厚みΔt相当分)下降させる。そして、平坦化ローラ12をY方向に移動して、供給側の供給槽21から造形槽22に粉体20を供給し、所定厚みΔtの粉体層31を形成する。このとき、平坦化ローラ12は回収側の供給槽21の上方まで移動して、未使用の粉体20は回収側の供給槽21に収容されて回収される。
その後、回収側の供給槽21の攪拌手段401としての回転盤411を正逆両方向に往復回転させて収容された粉体20を攪拌して均す。
そして、供給側の供給槽21の供給ステージ23が所定の高さまで到達した(上昇した)か否かを判別する。
ここで、供給側の供給槽21の供給ステージ23が所定の高さまで到達していないときには、供給側の供給槽21の粉体20を使用して粉体層31の形成を行い、回収側の供給槽21に収容した粉体20を攪拌して均す動作を繰り返す。
これに対し、供給側の供給槽21の供給ステージ23が所定の高さまで到達したときには、現在の回収側の供給槽21が供給槽21Bであるか否かを判別する。
ここで、現在の回収側の供給槽21が供給槽21Bであるときには、平坦化ローラ12を供給槽21Bの初期位置に移動する。
そして、供給槽21Bから粉体20がはみ出るまで供給ステージ23Bを上昇させる。
その後、供給槽21Bを供給側の供給槽21とし、供給槽21Aを回収側の供給槽21とする入れ替え設定を行う。
これに対し、現在の回収側の供給槽21が供給槽21Bでないときには、すなわち、回収側の供給槽21が供給槽21Aであるときには、平坦化ローラ12を供給槽21Aの初期位置に移動する。
そして、供給槽21Aから粉体20がはみ出るまで供給ステージ23Bを上昇させる。
その後、供給槽21Aを供給側の供給槽21とし、供給槽21Bを回収側の供給槽21とする入れ替え設定を行う。
このように、攪拌手段を有する2つの供給槽を備えて、粉体層に形成に使用されなかった未使用の粉体を収容して攪拌することで、収容した粉体の均しを行っている。
例えば、図20(a)に示すように、平坦化ローラ12で粉体層31を形成するときに粉体層31の形成に使用されなかった未使用の粉体20は、例えば回収側の供給槽21が供給槽21Bであるとき、供給槽21Bに収容される。
そこで、攪拌手段401Bとしての回転盤411を回転して、図20(b)に示すように、供給槽21Bに収容された粉体20を均している。
すなわち、供給側の供給槽21から供給された粉体20のうちの粉体層31の形成に使用されなかった粉体20は回収側の供給槽21まで移送される。このとき、造形槽22を通過した未使用の粉体20は、回収側の供給槽21の造形槽22側の壁面を伝って落下することになる。
そのため、回収側の供給槽21の造形槽22側の壁面に偏って堆積する。堆積された粉体20は、粉体材料由来の安息角を超えない限り崩れ落ちないため、そのままでは粉体20の偏った領域での堆積が進行することになる。その結果、供給槽21に収容余力があるにもかかわらず、供給槽21の開口から上部に部分的にはみ出してしまう。
また、供給槽21で粉体20の堆積に偏りが生じることで、回収側の供給槽21と供給側の供給槽21とを交代させたときに、交代直後の供給量を一定にするのが難しくなる。
そこで、供給槽21の供給ステージ23に撹拌手段401を設けて、粉体20を回収している間に回収側の供給槽21内を撹拌することで、回収された粉体20が回収側の供給槽21の開口からはみ出てしまうことを防止する。また、回収側の供給槽21内の粉体20を撹拌することで、収容された粉体の密度むらを低減して再供給することになる粉体の品質低下を低減することができる。
ここで、攪拌手段401としての回転盤411は、少なくとも粉体層31を1層積層する間回転させる。
これにより、堆積された粉体20が崩され、ある程度平らに均される。毎回同じ機構で供給ステージ23の回転盤411が回転されるため、回収側となる供給槽21が入れ替わっても、粉体の撹拌度合いは一定である。したがって、供給される粉体20の状態(量、密度)も一定にすることができ、造形物の品質を一定に保つことができる。
また、供給側の供給槽21と回収側の供給槽21を入れ替えるとき、上述したように、造形槽22の造形ステージ24を上昇させないで、入れ替え後に供給側となる供給槽21から1層分以上の粉体20を入れ替え後に回収側となる供給槽21に移送する捨てリコートを行う。
つまり、撹拌手段によって撹拌しても回収側の供給槽21に収容された粉体20の表面の平坦性は十分でない。一方、粉体20の供給量を一定にするためには、供給槽21の上部で粉体20が擦り切り状態になっていることが好ましい。
そこで、造形ステージ24の高さを変えずに、次に供給側となる供給槽21の供給ステージ23を上昇させ、平坦化ローラ12で擦り切るように捨てリコートを行う。これにより、造形再開時に粉体20の供給量が変化することはなく、常に一定量の供給量を搬送することができる。
そして、捨てリコート中、又は、捨てリコート終了後に、次に回収側となる供給槽21の供給ステージ23の高さを次に供給側となる供給槽21の供給ステージ23の高さに合わせ、その後、粉体層31の形成、造形層10の造形を再開する。
これを造形終了まで繰り返すことによって、常に一定の供給量を確保しつつ、使用した粉体を再利用することができる。
次に、本発明の第6実施形態について図21及び図22を参照して説明する。図21は同実施形態における粉体槽の模式的側面説明図、図22は同じく平面説明図である。
攪拌手段401として、供給ステージ23に対して垂直方向に立つ複数本の円柱状部材413を備えている。円柱状部材413の周面はスクリュー形状に形成され、円柱状部材413を回転させることで、供給ステージ23の上昇、下降動作も同時に行うことができる。
次に、本実施形態の作用について図23も参照して説明する。図23は同作用説明に供する要部側面説明図である。
図23(a)に示すように、粉体層31の形成に使用されなかった未使用の粉体20は、回収側の供給槽21(ここでは、供給槽21Bとする。)に排出されて収容される。そこで、攪拌手段401としての円柱状部材413が少なくとも積層回数1回以上の間隔で正逆方向に回転される。
これにより、供給ステージ23が上下に動作する(昇降する)とともに、円柱状部材413の側面に位置する粉体20が回転によって動くことで、円柱状部材413の近傍にある堆積された粉体20が崩され、図23(b)に示すように、粉体20はある程度平らに均される。
このとき、毎回同じ攪拌手段401で動作するため、回収側の供給槽21が入れ替わっても粉体20の撹拌度合いは一定である。
したがって、供給される粉体20の状態(量、密度)も一定にすることができ、造形品質を一定に保つことができる。
次に、本発明の第7実施形態について図24及び図25を参照して説明する。図24は同実施形態における粉体槽の模式的側面説明図、図25は同じく平面説明図である。
攪拌手段401として、供給ステージ23の内部に配置された振動機構部414を備えている。振動機構部414による振動方向は、供給ステージ23の面内方向及び面直方向のいずれでもよい。
次に、本実施形態の作用について図26も参照して説明する。図26は同作用説明に供する要部側面説明図である。
図26(a)に示すように、粉体層31の形成に使用されなかった未使用の粉体20は、回収側の供給槽21(ここでは、供給槽21Bとする。)に排出されて収容される。そこで、攪拌手段401としての振動機構部414によって振動を与える。
これにより、供給ステージ23上に堆積された粉体20が崩され、ある程度平らに均される。
このとき、毎回同じ攪拌手段401で動作するため、回収側の供給槽21が入れ替わっても粉体20の撹拌度合いは一定である。
したがって、供給される粉体20の状態(量、密度)も一定にすることができ、造形品質を一定に保つことができる。
次に、供給側の供給槽と回収側の供給槽の入れ替えについて図27を参照して説明する。図27は同説明に供する模式的説明図である。
図27(a)に示すように、供給側の供給槽21(ここでは、供給槽21Aとする。)の供給ステージ23が所定の高さまで到達すると、平坦化ローラ12は、Y2方向に、回収側の供給槽21(ここでは、供給槽21Bとする。)から供給するときの初期位置に移動する。
この場合、供給槽21Aから造形槽22への粉体供給が終了した段階で、そのまま平坦化ローラ12は供給槽21Bの初期位置まで移動する。
その後、図27(b)に示すように、供給槽21Bの供給ステージ23を供給槽21Bの開口から粉体20が完全にはみ出るまで供給ステージ23を上昇させ、供給槽21Aの供給ステージ23を供給槽21Bの供給ステージ23と同じ高さまで下降させる。
そして、平坦化ローラ12を、Y1方向に、供給槽21B側から供給槽21A側に移動させて、図27(c)に示すように、はみ出している粉体20を供給槽21Aに移送する。
すなわち、前述したように、回収側の供給槽21であった供給槽21Bに収容されている粉体20は、完全には均されていないため、粉体20を完全に均すために捨てリコートを一層分行っている。
このとき、平坦化ローラ12の移動速度は、粉体層31を形成するときの移動速度以下とすることが好ましい。つまり、造形槽22の最表面の粉体層31には造形層30が形成された状態にある。そこで、平坦化ローラ12の移動速度を、粉体層31を形成するときの移動速度以下とすることで、粉体20を移送するときに、造形層30の位置ずれが生じることを防止し、造形物の状態を維持する。
上述した捨てリコートを行うことで、供給槽21B内の粉体20は完全に均されるため、その後の粉体層31の形成を行うときに供給される粉体量のばらつきを低減できる。