JP6696506B2 - クローニングベクター - Google Patents

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Description

本発明は、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属酵母を宿主とする形質転換体を製造するための発現ベクター、該発現ベクターを作製するためのクローニングベクター、該発現ベクターの製造方法、該発現ベクターの発現カセットを有する形質転換体、該形質転換体の製造方法、および該形質転換体を用いた蛋白質の生産方法に関する。詳しくは、特定のターミネーターを使用することで、発現効率を改善することができる発現ベクター等に関する。
シゾサッカロミセス・ポンベ(以下、「S.ポンベ」ということがある。)をはじめとするシゾサッカロミセス属酵母は、その様々な特徴から、より高等動物細胞に近い単細胞真核生物であると位置づけられ、外来構造遺伝子、特に高等動物由来遺伝子の発現用宿主として非常に有用な酵母であると考えられる。特にヒトを含む動物細胞由来の遺伝子の発現に適していることが知られている。
生物の転写・翻訳系を利用して蛋白質を発現させる場合には、一般的に、異種蛋白質をコードする外来構造遺伝子の上流に、該外来構造遺伝子の転写を制御するプロモーターと、転写により得られたmRNAを解離させるターミネーターとを含む発現カセットを、宿主とする細胞に導入する。この際に用いるプロモーターの種類によって発現効率が影響を受けることが知られている。一方で、ターミネーターは存在していなくても蛋白質発現は可能であり、今までさほど重要視されてはいなかった。しかし、最近、出芽酵母サッカロミセス・セレビシエにおいて、使用するターミネーターの種類に依存して発現効率が異なることが報告された(非特許文献1参照。)。
Yamanishi et al.,ACS Synthetic Biology,2013,vol.2,p.337-347.
本発明の目的は、シゾサッカロミセス属酵母を宿主として遺伝子工学的に外来構造遺伝子由来の蛋白質を、より高い発現効率で発現させうる発現ベクター、該発現ベクターを作製するためのクローニングベクター、該発現ベクターの製造方法、該発現ベクターを含む形質転換体、該形質転換体の製造方法、および該形質転換体を用いた蛋白質の生産方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを使用することにより、nmt1ターミネーター等の従来使用されているターミネーターを使用した場合よりも発現効率が顕著に改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下[1]〜[11]を提供するものである。
[1] シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子を導入するためのクローニングサイト、および、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを有し、
前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列、または該塩基配列中の1以上の塩基を置換、欠失、もしくは付加された塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とするクローニングベクター。
シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子を導入するためのクローニングサイト、および、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを有し、
前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列と90%以上のホモロジーを有する塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とするクローニングベクター。
] シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子、および、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを有し、
前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列、該塩基配列中の1以上の塩基を置換、欠失、もしくは付加された塩基配列、または配列番号19で表される塩基配列と90%以上のホモロジーを有する塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とする発現ベクター。
] 前記[1]または[2]のクローニングベクター中のクローニングサイトに、外来構造遺伝子を導入することを特徴とする発現ベクターの製造方法。
] シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子、および下記ターミネーター以外のターミネーターを有する発現ベクターの該ターミネーターを、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターに置換し、
前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列、該塩基配列中の1以上の塩基を置換、欠失、もしくは付加された塩基配列、または配列番号19で表される塩基配列と90%以上のホモロジーを有する塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とする発現ベクターの製造方法。
] シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子、およびシゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを含む発現カセットを有し、
前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列、該塩基配列中の1以上の塩基を置換、欠失、もしくは付加された塩基配列、または配列番号19で表される塩基配列と90%以上のホモロジーを有する塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とするシゾサッカロミセス属酵母の形質転換体。
] 前記発現カセットを含む発現ベクターを染色体外に含む、前記[]の形質転換体。
] 前記発現カセットを染色体に含む、前記[]の形質転換体。
] 前記[]の形質転換体を製造する方法であって、前記発現カセットを含む発現ベクターを、シゾサッカロミセス属酵母の染色体外に保持させることを特徴とする形質転換体を製造する方法。
10] 前記[]の形質転換体を製造する方法であって、前記発現カセットを含む発現ベクターを、シゾサッカロミセス属酵母の染色体に導入することを特徴とする形質転換体を製造する方法。
11] 前記[]〜[]のいずれかの形質転換体を培養し、得られた菌体または培養液上清から、前記外来構造遺伝子がコードする蛋白質を取得することを特徴とする蛋白質の生産方法。
本発明のクローニングベクターにより、外来構造遺伝子由来の蛋白質をより高い発現効率で発現可能な、シゾサッカロミセス属酵母を宿主とするの発現ベクターを容易に作製することができる。
本発明の発現ベクターにより得られた形質転換体は、高い発現効率で該外来蛋白質を生産することができる。
図1は、実施例1において、2〜4日間培養した各形質転換体およびARC032株のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した結果を示した図である。 図2は、実施例1において、EMM培地、YES培地、およびYPD培地中で培養した各形質転換体およびARC032株のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した結果を示した図である。 図3は、pSL12inv1tベクターの構造を示した図である。 図4は、pSL12ihc2tベクターの構造を示した図である。 図5は、pSL14LPItベクターの構造を示した図である。 図6は、pSL14ihc2tベクターの構造を示した図である。 図7は、実施例3において、各形質転換体およびARC032株のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した結果を示した図である。 図8は、実施例4において、各形質転換体およびA8株の培養物のCBB染色像である。 図9は、実施例4において、hPDI(abx)/LPIt株のhPDI(abx)分泌量を1とした場合の各形質転換体のhPDI(abx)相対分泌量の算出結果を示した図である。 図10は、実施例5において、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。
[クローニングベクター]
本発明のクローニングベクターは、外来構造遺伝子由来の蛋白質(以下、外来蛋白質ということがある。)を発現させるためにシゾサッカロミセス属酵母に導入される発現ベクターを作製するためのクローニングベクターであり、外来構造遺伝子の発現を制御するターミネーターとしてシゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーター(以下、ihc2ターミネーター)を用いることを特徴とする。本発明のクローニングベクターは、外来構造遺伝子の発現をihc2ターミネーターで制御することにより、外来蛋白質発現に一般的に用いられているヒトリポコルチンI(hLPI)ターミネーター、SV40ターミネーター、nmt1ターミネーター等を用いた場合よりも高い発現効率でS.ポンベを宿主として外来蛋白質を発現させうる。
本発明のクローニングベクターに用いられるihc2ターミネーターは、シゾサッカロミセス属酵母が有するihc2遺伝子のターミネーターであればよく、いずれのシゾサッカロミセス属酵母由来であってもよい。シゾサッカロミセス属酵母としては、S.ポンベ、シゾサッカロミセス・ジャポニカス、シゾサッカロミセス・オクトスポラス等が挙げられる。また、クローニングベクターに用いられるihc2ターミネーターは、該クローニングベクターから作製された発現ベクターが導入されるシゾサッカロミセス属酵母と同じ生物種由来であってもよく、異なる生物種由来であってもよい。本発明においては、より汎用されているため、S.ポンベのihc2ターミネーターを用いることが好ましい。
S.ポンベのihc2遺伝子は公知であり、European Bioinformatics Instituteが提供するウエブサイトのS.ポンベの遺伝子配列データベース(PomBase;http://www.pombase.org/)に登録されているihc2遺伝子の系統名はSPAC11D3.01cである。
本発明のクローニングベクターに用いるihc2ターミネーターは、野生型のシゾサッカロミセス属酵母が本来有しているターミネーター(野生型のihc2ターミネーター)と同一の塩基配列以外にも、当該塩基配列中の1以上の塩基、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜十数個、さらに好ましくは1〜9個、よりさらに好ましくは1〜数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ野生型のihc2ターミネーターと同様にターミネーター活性を有する領域であってもよい。なお、ターミネーター活性とは、ターミネーターとしての機能を意味する。
また、本発明のクローニングベクターに用いるihc2ターミネーターは、野生型のihc2ターミネーターと同一の塩基配列とのホモロジーが80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつ野生型のihc2ターミネーターと同様にターミネーター活性を有する領域であってもよい。
S.ポンベのihc2ターミネーターは、ihc2遺伝子のORFの3’末端(終止コドンの3番目の塩基)の下流1〜625bpの領域である(配列番号19)。該領域の塩基配列を配列番号19に表す。すなわち、本発明のクローニングベクターとしては、配列番号19で表される塩基配列からなる領域を備えることが好ましい。また、配列番号19で表される塩基配列中の1以上の塩基、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜十数個、さらに好ましくは1〜9個、よりさらに好ましくは1〜数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列、または配列番号19で表される塩基配列とのホモロジーが80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつ野生型のihc2ターミネーターと同様にターミネーター活性を有する領域も、本発明のクローニングベクターに用いるihc2ターミネーターとして好適に用いることができる。
発現効率の観点からは、S.ポンベのihc2ターミネーターは、ihc2遺伝子のORFの3’末端(終止コドンの3番目の塩基)の下流1〜525bpの領域を含むことが好ましく、1〜400bpの領域を含むことがより好ましく、1〜300bpの領域を含むことがさらに好ましく、1〜200bpの領域を含むことが特に好ましく、1〜175bpの領域を含むことが最も好ましい。
本発明のクローニングベクターは、シゾサッカロミセス属酵母のihc2ターミネーターに加えて、シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、および、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子を導入するためのクローニングサイトを有する。
本発明のクローニングベクターが備えるプロモーターとしては、シゾサッカロミセス属酵母が本来有するプロモーターやシゾサッカロミセス属酵母が本来有しないプロモーターを使用できる。なお、プロモーターはベクター内に2種以上存在していてもよい。シゾサッカロミセス属酵母が本来有するプロモーターとしては、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ(adh1)遺伝子プロモーター、チアミンの代謝に関与するnmt1遺伝子プロモーター、グルコースの代謝に関与するフルクトース−1、6−ビスホスファターゼ(fbp1)遺伝子プロモーター、カタボライト抑制に関与するインベルターゼ(inv1)遺伝子のプロモーター(国際公開第99/23223号参照)、熱ショック蛋白質遺伝子プロモーター(国際公開第2007/26617号参照)、ihc1遺伝子(SPAC22G7.11c)のプロモーター(国際公開第2014/030644号参照)、hsp9遺伝子(SPAP8A3.04c)のプロモーター(国際公開第2014/030644号参照)などが挙げられる。
シゾサッカロミセス属酵母が本来有しないプロモーターとしては、例えば、特開平5−15380号公報、特開平7−163373号公報および特開平10−234375号公報に記載されている動物細胞ウイルス由来のプロモーターが挙げられ、hCMVプロモーター、SV40プロモーターが好ましい。
本発明のクローニングベクターが備えるクローニングサイトは、クローニングベクター中、該クローニングサイトにのみ存在する制限酵素部位である。本発明のクローニングベクターが備えるクローニングサイトは制限酵素部位を1のみ有していてもよく、2以上の制限酵素部位を有するマルチクローニングサイトであってもよい。該マルチクローニングサイトとしては、公知のクローニングベクターが備えるマルチクローニングサイトをそのまま使用でき、また、公知のマルチクローニングサイトを適宜改変したものを使用できる。その他、本発明のクローニングベクターは、クローニングサイト内の上流端側領域、若しくは該クローニングサイトの上流に、開始コドン(ATG)を備えていてもよく、クローニングサイト内の下流端側領域、若しくは該クローニングサイトの下流に、終始コドンを備えていてもよい。
本発明のクローニングベクターは、プロモーターの下流であり、かつクローニングサイトの上流には5’−非翻訳領域が含まれていることが好ましく、クローニングサイトの下流には3’−非翻訳領域が含まれていることが好ましい。また、本発明のクローニングベクターは、クローニングサイトに外来構造遺伝子が導入された発現ベクターと識別するためのマーカーを有することが好ましい。該マーカーとしては、たとえば、アンピシリン耐性遺伝子等、大腸菌内で機能し得る薬剤耐性遺伝子等が挙げられる。さらに、本発明のクローニングベクターは、形質転換体を選択するためのマーカーを有することが好ましい。該マーカーとしては、たとえば、オロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(ura4遺伝子)、イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(leu1遺伝子)等の栄養要求性相補マーカーが挙げられる。
本発明のクローニングベクターは、環状DNA構造または線状DNA構造を有するベクターである。後述の発現カセットがシゾサッカロミセス属酵母の細胞内で染色体外遺伝子として保持される形質転換体を作製する場合には、本発明のクローニングベクターは、シゾサッカロミセス属酵母内で複製されるための配列、即ち、自律複製配列(Autonomously Replicating Sequence: ARS)を含む発現ベクターであることが好ましい。一方で、後述の発現カセットがシゾサッカロミセス属酵母の染色体中に組み込まれた形質転換体を作製する場合には、本発明のクローニングベクターは、線状DNA構造であり、かつARSを有していないものであることが好ましい。
例えば、後述の発現カセットがシゾサッカロミセス属酵母の染色体中に組み込まれた形質転換体を作製する場合には、本発明のクローニングベクターは、線状DNAからなるベクターであってもよく、発現カセットを宿主へ導入する際に、線状DNAに切り開くための制限酵素部位を備える環状DNA構造のベクターであってもよい。本発明のクローニングベクターがARSを有する場合、ARS部分を削除して線状DNA構造の発現カセットとした後、またはARS部分を開裂させることによりARSの機能を失活させた線状DNA構造の発現カセットとした後、宿主へ導入できる。
本発明のクローニングベクターは、外来構造遺伝子がコードする蛋白質を宿主に発現させるための発現ベクターを作製するために用いられる公知のクローニングベクターが備えるターミネーター領域を、シゾサッカロミセス属酵母のihc2ターミネーターに置換することによって作製できる。本発明のクローニングベクターを構築するための具体的操作方法としては、公知の方法を使用できる。たとえば、文献[J. Sambrook et al.,"Molecular Cloning 2nded.", Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されている操作方法を使用できる。その他、PCRによる酵素的な増幅法や化学合成法、で構築してもよい。
[発現ベクターおよびその製造方法]
本発明の発現ベクターは、シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子、および、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを有する。本発明の発現ベクターにおけるihc2ターミネーターは、発現ベクター内の外来構造遺伝子の発現を制御しうるターミネーターであり、前記本発明のクローニングベクターの説明で記載したターミネーター活性を有するものである。
また、本発明の発現ベクターは、プロモーター、外来構造遺伝子およびihc2ターミネーター以外に、前記の5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域、栄養要求性相補マーカー等を有していてもよい。
なお、発現ベクター中のプロモーター、外来構造遺伝子およびihc2ターミネーターを含む領域を、以下、発現カセットともいう。発現カセットは、前記の5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域、栄養要求性相補マーカー等を有していてもよい。
本発明の発現ベクターに導入されている外来構造遺伝子は、蛋白質をコードする構造遺伝子であれば特に限定されるものではなく、宿主とするシゾサッカロミセス属酵母が元々有している遺伝子と同種のものであってもよく、異種生物由来の構造遺伝子であってもよい。シゾサッカロミセス属酵母の内在性蛋白質をコードする構造遺伝子を含む発現ベクターにより得られたシゾサッカロミセス属酵母の形質転換体から、より大量に該内在性蛋白質を生産できる。また、異種生物由来の構造遺伝子を含む発現ベクターにより得られたシゾサッカロミセス属酵母の形質転換体から、大量の異種蛋白質(宿主が本来有していない蛋白質)を生産できる。
本発明の発現ベクターに導入されている外来構造遺伝子がコードする蛋白質は、異種蛋白質が好ましく、多細胞生物である動物や植物が産生する蛋白質がより好ましく、哺乳動物(ヒトを含む)の産生する蛋白質がさらに好ましい。このような蛋白質は大腸菌などの原核細胞微生物宿主を用いて製造した場合には、活性の高い蛋白質が得られない場合が多く、またCHO細胞などの動物細胞を宿主として用いた場合には、通常産生効率が低い。本発明の発現ベクターを用い、シゾサッカロミセス属酵母を宿主とした異種蛋白質発現系を用いる場合はこれらの問題が解決される。
本発明の発現ベクターに導入されている外来構造遺伝子は、蛋白質をコードするものである限り、野生型の構造遺伝子であってもよく、野生型の構造遺伝子を改変した遺伝子であってもよく、人工的に合成された遺伝子であってもよい。野生型以外の構造遺伝子としては、たとえば、野生型の複数の蛋白質を融合させたキメラ蛋白質をコードする遺伝子、野生型の蛋白質のN末端またはC末端にその他のペプチド等が結合した蛋白質をコードする遺伝子等が挙げられる。該その他のペプチドとしては、分泌シグナル、特定の細胞内小器官への移行シグナル等のシグナル、Hisタグ、FLAGタグ等のタグ等が挙げられる。各種シグナルは、シゾサッカロミセス属酵母内で機能するシグナルであることが必要である。分泌シグナルは、N末端に存在することにより、発現した蛋白質を宿主細胞外に分泌させる機能を有するペプチドである。シゾサッカロミセス属酵母内で機能する分泌シグナルとしては、国際公開第1996/23890号に記載のP3シグナルが特に好ましい。
本発明の発現ベクターは、本発明の前記クローニングベクター中のクローニングサイトに、外来構造遺伝子を導入することにより製造できる。クローニングサイトへの外来構造遺伝子の導入は、クローニングベクターの作製と同様に公知の方法を使用できる。
また、本発明の発現ベクターは、本発明の前記クローニングベクターを使用することなく製造することもできる。たとえば、ihc2ターミネーターを有しない発現ベクターにihc2ターミネーターを導入して本発明の発現ベクターとすることができる。具体的には、前記プロモーター、前記外来構造遺伝子およびihc2ターミネーター以外のターミネーター(以下、他のターミネーターともいう。)を有する発現ベクターの該他のターミネーターをihc2ターミネーターに置換することによって、本発明の発現ベクターを製造することができる。また、前記プロモーターと前記外来構造遺伝子とを有し、ターミネーターを有しない発現ベクターを用い、該発現ベクターにihc2ターミネーターを導入して、本発明の発現ベクターを製造することができる。
他のターミネーターを有する発現ベクターやターミネーターを有しない発現ベクターは、外来構造遺伝子がコードする蛋白質を宿主に発現させるための発現ベクターを作製するために用いられる公知の方法で製造することができる。また、種々の外来構造遺伝子を有する既存の発現ベクター(他のターミネーターを有するかターミネーターを有しないもの)を用いることもできる。発現ベクターのターミネーター置換やターミネーター導入は、発現ベクターを作製するために用いられる公知の方法で行うことができる。
[形質転換体およびその製造方法]
本発明の形質転換体は、本発明の前記発現ベクターに由来する前記プロモーター、前記外来構造遺伝子および前記ihc2遺伝子が有するターミネーターを含む発現カセットを有することを特徴とする。発現カセットは、前記のように、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域、栄養要求性相補マーカー等を有していてもよい。
発現カセットを染色体外に有する形質転換体は、発現カセットを含む発現ベクターを染色体外に保持させる。該発現ベクターは、通常、前記ARSを有する環状DNA構造を有する。一方、発現カセットを染色体に有する形質転換体は、前記ARSを有しない、線状DNA構造の発現カセットを含む染色体を有する。
染色体に導入するための線状DNA構造の発現カセットは、たとえば、線状DNAに切り開くための制限酵素部位を備える環状DNA構造の本発明の発現ベクターを線状DNAに切り比較ことにより作成できる。また、本発明の発現ベクターがARSを有する場合は、ARS部分を削除または失活させて線状DNAとする。
(宿主)
本発明の形質転換体の宿主は、シゾサッカロミセス属酵母である。本発明に用いるシゾサッカロミセス属酵母は野生型であってもよく、用途に応じて特定の遺伝子を欠失または失活させた変異型であってもよい。特定の遺伝子を欠失または失活させる方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、Latour法(Nucreic Acids Res、2006年、第34巻第e11号、および国際公開第2007/063919号等に記載)を用いることにより遺伝子を欠失させることができる。また、変異剤を用いた突然変異分離法(酵母分子遺伝学実験法、1996年、学会出版センター)や、PCRを利用したランダム変異法(PCR Methods Appl.、1992年、第2巻、p.28−33。)等により遺伝子の一部に変異を導入することにより、該遺伝子を失活させることができる。特定遺伝子を欠失または失活させたシゾサッカロミセス属酵母宿主としては、たとえば、国際公開第2002/101038号、国際公開第2007/015470号等に記載されている。
さらに宿主となるシゾサッカロミセス属酵母には、形質転換体を選択するためのマーカーを有するものを用いることが好ましい。たとえば、ある遺伝子が欠落していることにより特定の栄養成分が生育に必須である宿主を使用することが好ましい。目的遺伝子配列を含むベクターにより形質転換をして形質転換体を作製する場合、ベクターにこの欠落している遺伝子(栄養要求性相補マーカー)を組み込んでおくことにより、形質転換体は宿主の栄養要求性が消失する。この宿主と形質転換体の栄養要求性の相違により、両者を区別して形質転換体を得ることができる。
たとえば、ura4遺伝子が欠失または失活してウラシル要求性となっているシゾサッカロミセス属酵母を宿主とし、ura4遺伝子を有する発現ベクターにより形質転換した後、ウラシル要求性が消失したものを選択することにより、発現ベクターが組み込まれた形質転換体を得ることができる。
宿主として用いるシゾサッカロミセス属酵母としては、前記で挙げられた種のものを利用できる。上記シゾサッカロミセス属酵母のうち、種々の有用な変異株が利用できることから、S.ポンベが好ましい。本発明で用いるS.ポンベの菌株としては、たとえばATCC38399(leu132、h)またはATCC38436(ura4294、h)等が挙げられ、これらは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手できる。
(形質転換方法)
上記発現ベクターを用いて、宿主であるシゾサッカロミセス属酵母を形質転換する。形質転換方法は、公知のシゾサッカロミセス属酵母の形質転換方法をいずれも用いることができる。そのような形質転換方法としては、たとえば、酢酸リチウム法[K. Okazaki et al., Nucleic Acids Res., 18, 6485-6489 (1990)]、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、ガラスビーズ法など従来周知の方法や、特開2005−198612号公報記載の方法などを挙げることができる。また、市販の酵母形質転換用キットを用いてもよい。
形質転換を行った後、通常は得られた形質転換体を選抜する。選抜方法としては、たとえば、以下に示す方法が挙げられる。前記栄養要求性マーカーにより形質転換体を選択できる培地によりスクリーニングし、得られたコロニーから複数を選択する。その他、それら選抜した形質転換体に対してパルスフィールドゲル電気泳動法によるゲノム解析を行うことにより、染色体に組み込まれたベクターの数や発現カセットの数を調べることができる。
(培養方法)
本発明の形質転換体は、天然のシゾサッカロミセス属酵母と同様に培養できる。
本発明の形質転換体の培養のための培養液には、公知の酵母培養培地を用いることができ、シゾサッカロミセス属酵母が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、シゾサッカロミセス属酵母の培養を効率良く行えるものであればよい。培養液としては、天然培地を用いてもよく、合成培地を用いてもよい。
炭素源としては、たとえば、グルコース、フルクトース、スクロース等の糖が挙げられる。
窒素源としては、たとえば、アンモニア、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機酸または無機酸のアンモニウム塩、ペプトン、カザミノ酸が挙げられる。
無機塩類としては、たとえば、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムが挙げられる。
具体的には、YPD培地等の栄養培地(M.D.Rose et al.,"Methods In Yeast Genetics",Cold Spring Harbor LabolatoryPress(1990) )またはMB培地等の最少培地(K.Okazaki et al.,Nucleic AcidsRes.,18,6485-6489(1990))等を使用できる。
培養には公知の酵母培養方法を用いることができ、たとえば振盪培養、攪拌培養等により行うことができる。
また、培養温度は、23〜37℃であることが好ましい。また、培養時間は適宜決定できる。
また、培養は、回分培養であってもよく、連続培養であってもよい。
[蛋白質の生産方法]
本発明の蛋白質の生産方法は、前記のクローニングベクター中のクローニングサイトに、外来構造遺伝子が導入されている発現ベクターを含む形質転換体を培養し、得られた菌体または培養液上清から、前記外来構造遺伝子がコードする蛋白質を取得することを特徴とする。
培養条件は、生産させる目的の外来蛋白質の種類等を考慮して適宜設定できる。たとえば、16〜42℃、好ましくは25〜37℃で、8〜168時間、好ましくは48〜96時間行う。振盪培養と静置培養のいずれも可能だが、必要に応じて撹拌や通気を加えてもよい。
培養終了後、超音波破砕や機械的破砕により、菌体から目的の外来蛋白質を含む細胞抽出液を調製し、該細胞抽出液から外来蛋白質を単離・精製法できる。また、外来蛋白質が細胞外に分泌される場合は、培養液上清から外来蛋白質を単離・精製法できる。これらの生産された蛋白質を取得するための単離・精製法としては、公知の、塩析または溶媒沈澱法等の溶解度の差を利用する方法、透析、限外濾過またはゲル電気泳動法等の分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィ等の荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィ等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィ等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法等の等電点の差を利用する方法等が挙げられる。
単離・精製した蛋白質の確認方法としては、公知のウエスタンブロッティング法または活性測定法等が挙げられる。精製された蛋白質は、アミノ酸分析、アミノ末端分析、一次構造解析などによりその構造を明らかにできる。
以下、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
EGFPをモデル蛋白質として、S.ポンベ由来ターミネーターの違いによるEGFP発現量の差を比較した。
<EGFP発現ベクターの製造>
(pSL6EGFP−LPIt)
公知の単座組込み用ベクターpSL6(Alimjan et al., Appl Microbiol Biotechnol, 2010, vol.85, pp.667−677)のマルチクローニングサイトに、EGFPをコードする構造遺伝子を挿入したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−LPItを製造した。pSL6ベクターは、hCMVプロモーターおよびLPIターミネーターの間にマルチクローニングサイトを備え、S.ポンベのleu1遺伝子座に外来遺伝子を組込む単座組込み用ベクターである。
具体的には、まずEGFPをコードする人工合成遺伝子(配列番号1)を鋳型とし、5’末端にNcoIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号2)および5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号3)とを用いたPCRによって、EGFP遺伝子のORF全長の5’末端にNcoIの制限酵素認識部位を、3’末端にPstIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(EGFPフラグメント)を得た。
該EGFPフラグメントを制限酵素NcoIおよびPstIで二重消化し、またpSL6を制限酵素AarIおよびPstIで二重消化し、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−LPItとした。
(pSL6EGFP−inv1t)
前記で製造したpSL6EGFP−LPItベクター内にあるLPIターミネーターを、公知の単座組込み用ベクターpSL9(国際公開第2014/030644号)に備わるinv1ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−inv1tを製造した。pSL9ベクターは、S.ポンベ由来のinv1プロモーターおよびinv1ターミネーター(inv1遺伝子(SPCC191.11)のORFの下流1bpから548bpの領域、配列番号4)の間にマルチクローニングサイトを備え、S.ポンベのleu1遺伝子座に外来遺伝子を組込む単座組込み用ベクターである。
具体的には、pSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、一方でpSL9を制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してinv1ターミネーター部分を回収し、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−inv1tとした。
(pSL6EGFP−nmt1t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のnmt1ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−nmt1tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株、ATCC38366、972h相当)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号5)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号6)を用いたPCRによって、nmt1遺伝子(SPCC1223.02)のORFの下流1bpから573bpの領域(配列番号7)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(nmt1tフラグメント)を得た。
該nmt1tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−nmt1tとした。
(pSL6EGFP−hsp9t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のhsp9ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−hsp9tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号8)および5’末端にSpeIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号9)を用いたPCRによって、hsp9遺伝子(SPAP8A3.04c)のORFの下流1bpから545bpの領域(配列番号10)の5’末端にPstI、3’末端にSpeIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(hsp9tフラグメント)を得た。
該hsp9tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−hsp9tとした。
(pSL6EGFP−hsp16t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のhsp16ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−hsp16tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号11)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号12)を用いたPCRによって、hsp16遺伝子(SPBC3E7.02c)のORFの下流1bpから527bpの領域(配列番号13)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(hsp16tフラグメント)を得た。
該hsp16tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−hsp16tとした。
(pSL6EGFP−ihc1t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のihc1ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ihc1tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号14)および5’末端にSpeIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号15)を用いたPCRによって、ihc1遺伝子(SPAC22G7.11c)のORFの下流1bpから520bpの領域(配列番号16)の5’末端にPstI、3’末端にSpeIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(ihc1tフラグメント)を得た。
該ihc1tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ihc1tとした。
(pSL6EGFP−ihc2t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のihc2ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ihc2tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号17)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号18)を用いたPCRによって、ihc2遺伝子(SPAC11D3.01c)のORFの下流1bpから625bpの領域(配列番号19)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(ihc2tフラグメント)を得た。
該ihc2tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ihc2tとした。
(pSL6EGFP−adh1t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のadh1ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−adh1tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号20)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号21)を用いたPCRによって、adh1遺伝子(SPCC13B11.01)のORFの下流1bpから528bpの領域(配列番号22)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(adh1tフラグメント)を得た。
該adh1tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−adh1tとした。
(pSL6EGFP−act1t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のact1ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−act1tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号23)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号24)を用いたPCRによって、act1遺伝子(SPBC32H8.12c)のORFの下流1bpから783bpの領域(配列番号25)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(act1tフラグメント)を得た。
該act1tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−act1tとした。
(pSL6EGFP−bip1t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のbip1ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−bip1tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号26)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号27)を用いたPCRによって、bip1遺伝子(SPAC22A12.15c)のORFの下流1bpから719bpの領域(配列番号28)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(bip1tフラグメント)を得た。
該bip1tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−bip1tとした。
(pSL6EGFP−ura4t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のbip1ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ura4tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号29)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号30)を用いたPCRによって、ura4遺伝子(SPCC330.05c)のORFの下流1bpから529bpの領域(配列番号31)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(ura4tフラグメント)を得た。
該ura4tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ura4tとした。
(pSL6EGFP−leu1t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のleu1ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−leu1tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号32)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号33)を用いたPCRによって、leu1遺伝子(SPBC1A4.02c)のORFの下流1bpから516bpの領域(配列番号34)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(leu1tフラグメント)を得た。
該leu1tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−leu1tとした。
(pSL6EGFP−ade6t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のade6ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ade6tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号35)およびEcoRIの制限酵素認識部位を含むリバースプライマー(配列番号36)を用いたPCRによって、ade6遺伝子(SPCC1322.13)のORFの下流1bpから416bpの領域(配列番号37)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(ade6tフラグメント)を得た。
該ade6tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ade6tとした。
(pSL6EGFP−ptr3t)
pSL6EGFP−LPItベクターのLPIターミネーターを、S.ポンベ由来のptr3ターミネーターと置換したEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ptr3tを製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号38)および5’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号39)を用いたPCRによって、ptr3遺伝子(SPBC1604.21c)のORFの下流1bpから538bpの領域(配列番号40)の5’末端にPstI、3’末端にEcoRIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(ptr3tフラグメント)を得た。
該ptr3tフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化し、またpSL6EGFP−LPItを制限酵素PstIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6EGFP−ptr3tとした。
<宿主>
宿主として、S.ポンベのロイシン要求株ARC001(遺伝子型:h、leu1−32)を用いた。
<形質転換体の製造>
ARC001株をYES(0.5%酵母エキス、3%グルコース、0.25mg/mL SPサプリメント)培地で1.0〜2.0×10細胞数/mLになるまで生育させた。生育させた菌体を集菌して洗浄した後、2.0×10細胞数/mLになるように0.1M 酢酸リチウム(pH5.0)に懸濁した。その後、ARC001株の懸濁液100μLにEGFP発現ベクターpSL6EGFP−LPIt、pSL6EGFP−nmt1t、pSL6EGFP−inv1t、pSL6EGFP−hsp9t、pSL6EGFP−hsp16t、pSL6EGFP−ihc1t、pSL6EGFP−ihc2t、pSL6EGFP−adh1t、pSL6EGFP−act1t、pSL6EGFP−bip1t、pSL6EGFP−ura4t、pSL6EGFP−leu1t、pSL6EGFP−ade6tまたはpSL6EGFP−ptr3tを制限酵素NotIで消化したもの約1μgをそれぞれ加え、更に50%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG4000)水溶液をそれぞれに260μL加えてよく撹拌した後、32℃で30分間インキュベートし、43μLのDMSOを添加した後に更に42℃で5分間インキュベートした。遠心分離処理によりPEG4000を除去し、洗浄した後の菌体を150μLの滅菌水に懸濁し、最少寒天培地に塗布した。各菌体を塗布した寒天培地を3〜5日培養した後、形質転換体を得た。
EGFP発現ベクターpSL6EGFP−LPIt、pSL6EGFP−nmt1t、pSL6EGFP−inv1t、pSL6EGFP−hsp9t、pSL6EGFP−hsp16t、pSL6EGFP−ihc1t、pSL6EGFP−ihc2t、pSL6EGFP−adh1t、pSL6EGFP−act1t、pSL6EGFP−bip1t、pSL6EGFP−ura4t、pSL6EGFP−leu1t、pSL6EGFP−ade6tおよびpSL6EGFP−ptr3tを用いて得た形質転換体をそれぞれ、CMVp/LPIt株、CMVp/nmt1t株、CMVp/inv1t株、CMVp/hsp9t株、CMVp/hsp16t株、CMVp/ihc1t株、CMVp/ihc2t株、CMVp/adh1t株、CMVp/act1t株、CMVp/bip1t株、CMVp/ura4t株、CMVp/leu1t株、CMVp/ade6t株およびCMVp/ptr3t株とした。
<培養菌体のGFP蛍光強度測定>
前記で得られた各形質転換体および非EGFP生産株であるS.ポンベの野生株(ARC032株)をそれぞれ試験管内の5mLのEMM培地(MP BIOMEDICALS社製、米国)に植菌し、32℃で4日間培養した。培養2日目から4日目の各培養液の菌体密度(OD660)およびGFP蛍光強度(励起波長490nm、蛍光波長530nm)をMTP−810Lab(コロナ電気社製、日本)により測定して、各形質転換体およびARC032株のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660、細胞当りのEGFP生産量を反映)を算出した。
どの形質転換体も培養2日目以降にGFP蛍光を示しており、各形質転換体がEGFPを生産していることが窺えた。ARC032株、CMVp/LPIt株、CMVp/nmt1t株、CMVp/inv1t株、CMVp/hsp9t株、CMVp/ihc1t株およびCMVp/ihc2t株の各培養時間におけるGFP/OD660の算出結果を図1に示す。
CMVp/nmt1t株、CMVp/inv1t株、CMVp/hsp9t株、CMVp/ihc1t株およびCMVp/ihc2t株はどれも、培養2日目以降はCMVp/LPIt株よりも高いGFP/OD660値を示しており、EGFPの生産量が向上していることが窺える。その中でもCMVp/ihc2t株は特に高いGFP/OD660値を示し、CMVp/LPIt株の4〜5倍程度を示していた。GFP/OD660は菌体内でのEGFP生産量に概ね比例すると考えられるので、EGFP発現カセット中のEGFP遺伝子下流にあるターミネーターを、LPIターミネーターからihc2ターミネーターに変更することにより、EGFPの生産量を4倍以上向上させうることが示された。また、CMVp/ihc2t株は、従来S.ポンベの発現系で使用されているターミネーターを用いたCMVp/nmt1t株やCMVp/inv1t株よりも高いGFP/OD660値も示しているので、従来公知のターミネーターに代えてihc2ターミネーターを使用することで、外来遺伝子の生産量を向上させ得ることが示唆された。データには示していないが、CMVp/hsp16t株、CMVp/adh1t株、CMVp/act1t株、CMVp/bip1t株、CMVp/ura4t株、CMVp/leu1t株、CMVp/ade6t株およびCMVp/ptr3t株は、CMVp/nmt1t株やCMVp/hsp9t株と同等のGFP/OD660値を示していた。つまり、今回作製したEGFP生産株の中でCMVp/LPIt株が最も低いGFP/OD660値を示したことになるが、今回用いたターミネーター中LPIターミネーターのみがヒト由来の配列であり、LPIターミネーター配列が、S.ポンベ細胞内で正常に機能しにくい可能性が考えられる。
[実施例2]
S.ポンベの培養で頻繁に使用するYES培地およびYPD培地を用いて、培地が遺伝子発現に与える影響を観察した。
<各培地で培養した菌体のGFP蛍光強度測定>
実施例1で得られた形質転換体であるCMVp/LPIt株、CMVp/nmt1t株、CMVp/inv1t株、CMVp/ihc2t株、およびS.ポンベの野生株(ARC032株)をそれぞれ試験管内の5mLのEMM培地、YES培地またはYPD培地(1%酵母エキス、1%ペプトン、2%グルコース)に植菌し、32℃で3日間培養した。培養後の各培養液の菌体密度(OD660)およびGFP蛍光強度(励起波長490nm、蛍光波長530nm)をMTP−810Labにより測定して、各形質転換体およびARC032株のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。
ARC032株、CMVp/LPIt株、CMVp/nmt1t株、CMVp/inv1t株およびCMVp/ihc2t株の各培地で培養後のGFP/OD660の算出結果を図2に示す。
EMM培地においては、実施例1と同様にCMVp/ihc2t株が最も高いGFP/OD660値を示し、その値はCMVp/LPIt株の5倍以上であった。YPD培地においては、どの形質転換体も高いGFP/OD660値を示していたものの、CMVp/ihc2t株で比較的高いGFP/OD660値を示す傾向は変わらず、また、YES培地においても、CMVp/ihc2t株はCMVp/LPIt株やCMVp/nmt1t株よりも高いGFP/OD660値を示した。YES培地やYPD培地における、ihc2ターミネーターを使用することによるEGFP生産量の向上効果は、EMM培地で観察された程には顕著に表れなかったものの、充分に高く、ihc2ターミネーターを用いることによる発現効率改善効果は、培地に依らず発揮されることを示唆する結果が得られた。
[実施例3]
S.ポンベ由来のプロモーターであるihc1プロモーターおよびhsp9プロモーターを用いて、プロモーターの強度が遺伝子発現に与える影響について調べた。
<遺伝子座組込み用ベクターpSL12inv1tの製造>
公知の単座組込み用ベクターpSL12(国際公開第2014/030644号)内にあるLPIターミネーターをinv1ターミネーターと置換したleu1遺伝子座組込み用ベクターpSL12inv1tベクター(5998bp、配列番号41)を製造した。pSL12ベクターは、ihc1プロモーターおよびLPIターミネーターの間にマルチクローニングサイトを備え、S.ポンベのleu1遺伝子座に外来遺伝子を組込む単座組込み用ベクターである。
具体的には、pSL12を制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、一方で、実施例1で構築したpSL6EGFP−inv1tを制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化してinv1ターミネーター部分を回収し、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをpSL12inv1tとした。図3に、pSL12inv1tベクターの構造を示す。
<遺伝子座組込み用ベクターpSL12ihc2tの製造>
単座組込み用ベクターpSL12内にあるLPIターミネーターをihc2ターミネーターと置換したleu1遺伝子座組込み用ベクターpSL12ihc2tベクター(6057bp、配列番号42)を製造した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にPstIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号17)および5’末端にSpeIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号43)を用いたPCRによって、ihc2遺伝子のORFの下流1bpから625bpの領域の5’末端にPstI、3’末端にSpeIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(ihc2t−Speフラグメント)を得た。
該ihc2t−Speフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化し、またpSL12を制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをpSL12ihc2tとした。図4に、pSL12ihc2tベクターの構造を示す。
<遺伝子座組込み用ベクターpSL14LPItの製造>
公知の単座組込み用ベクターpSL14lacZ(国際公開第2014/030644号)内にあるinv1ターミネーターをLPIターミネーターと置換し、lacZ’をコードする構造遺伝子を除去したleu1遺伝子座組込み用ベクターpSL14LPItベクター(5778bp、配列番号44)を製造した。pSL14lacZベクターは、hsp9プロモーターおよびinv1ターミネーターの間にlacZ’をコードする構造遺伝子およびマルチクローニングサイトを備え、S.ポンベのleu1遺伝子座に外来遺伝子を組込む単座組込み用ベクターである。
具体的には、pSL14lacZを制限酵素AarIおよびPvuIで二重消化してhsp9プロモーターおよびleu1相同組換え領域を含むDNA断片を回収し、一方でpSL6を制限酵素AarIおよびPvuIで二重消化してLPIターミネーターおよびtop2相同組換え領域を含むDNA断片を回収し、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをpSL14LPItとした。図5に、pSL14LPItベクターの構造を示す。
<遺伝子座組込み用ベクターpSL14ihc2tの製造>
単座組込み用ベクターpSL14LPIt内にあるLPIターミネーターをihc2ターミネーターと置換したleu1遺伝子座組込み用ベクターpSL14ihc2tベクター(5988bp、配列番号45)を製造した。
具体的には、上記で調製したihc2t−Speフラグメントを制限酵素制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化し、また上記で構築したpSL14LPItを制限酵素PstIおよびSpeIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをpSL14ihc2tとした。図6に、pSL14ihc2tベクターの構造を示す。
<EGFP発現ベクターの製造>
(pSL12EGFP−LPIt、pSL12EGFP−inv1t、pSL12EGFP−ihc2t、pSL14EGFP−LPIt、pSL14EGFP−inv1t、pSL14EGFP−ihc2t)
上記で製造した単座組込み用ベクターpSL12inv1t、pSL12ihc2t、pSL14LPI1t、pSL14ihc2t、および公知の単座組込み用ベクターpSL12、pSL14lacZの各マルチクローニングサイトに、EGFPをコードする構造遺伝子を挿入したEGFP発現ベクターpSL12EGFP−inv1t、pSL12EGFP−ihc2t、pSL14EGFP−LPIt、pSL14EGFP−ihc2t、pSL12EGFP−LPItおよびpSL14EGFP−inv1tをそれぞれ製造した。
具体的には、実施例1で調製したEGFPフラグメントを制限酵素NcoIおよびPstIで二重消化し、またpSL12、pSL12inv1t、pSL12ihc2t、pSL14LPI1t、pSL14lacZおよびpSL14ihc2tを制限酵素AarIおよびPstIで二重消化した。二重消化したEGFPフラグメントと二重消化した各単座組込み用ベクターとをそれぞれライゲーションし、続く大腸菌DH5αへの形質転換後、各プラスミドを得た。該プラスミドをそれぞれ、EGFP発現ベクターpSL12EGFP−LPIt、pSL12EGFP−inv1t、pSL12EGFP−ihc2t、pSL14EGFP−LPIt、pSL14EGFP−inv1tおよびpSL14EGFP−ihc2tとした。
<形質転換体の製造>
作製した各発現ベクターを用いて、実施例1と同様にしてARC001株を宿主とした形質転換体を作製した。
EGFP発現ベクターpSL12EGFP−LPIt、pSL12EGFP−inv1t、pSL12EGFP−ihc2t、pSL14EGFP−LPIt、pSL14EGFP−inv1tおよびpSL14EGFP−ihc2tを用いて得た形質転換体をそれぞれ、ihc1p/LPIt株、ihc1p/inv1t株、ihc1p/ihc2t株、hsp9p/LPIt株、hsp9p/inv1t株およびhsp9p/ihc2t株とした。
<培養菌体のGFP蛍光強度測定>
実施例1で得られた形質転換体であるCMVp/LPIt株、CMVp/inv1t株、CMVp/ihc2t株、前記で得られた各形質転換体およびS.ポンベの野生株(ARC032株)をそれぞれ試験管内の5mLのEMM培地に植菌し、32℃で3日間培養した。培養後の各培養液の菌体密度(OD660)およびGFP蛍光強度(励起波長490nm、蛍光波長530nm)をMTP−810Labにより測定して、各形質転換体およびARC032株のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。
どの形質転換体の培養後の培養液もGFP蛍光を示しており、各形質転換体がEGFPを生産していることが窺えた。各形質転換体およびARC032株の培養後のGFP/OD660の算出結果を図7に示す。CMVプロモーターにおいては、実施例1と同様にihc2ターミネーターを使用した株で高いEGFP生産が確認された。その傾向は、ihc1プロモーターやhsp9プロモーターにおいても保たれており、ihc1プロモーターやhsp9プロモーターの使用によりEGFP生産量が向上した場合においても、ihc2ターミネーターを使用した株でより高いEGFP生産量が観察された。これらの結果から、プロモーターの強度に依らず、ihc2ターミネーターを用いることによる発現効率改善効果が発揮されることが強く示唆された。
[実施例4]
EGFPに代わってモデル分泌蛋白質としてhPDI(abx)を用い、蛋白質の違いがihc2ターミネーターを用いることによる発現効率改善効果に及ぼす影響について調べた。hPDI(abx)は、ヒト由来PDIのaドメインとbドメインとxドメインとから構成されるヒト由来PDIの部分蛋白質である。
<hPDI1(abx)分泌発現ベクターの製造>
(pPDI1(SP)−hPDI(abx)−inv1t、pPDI1(SP)−hPDI(abx)−ihc2t、pPDI1(SP)−hPDI(abx)−nmt1t)
公知のhPDI1(abx)分泌発現ベクターpPDI1(SP)−hPDI(abx)(国際公開第2013/111754号)を元に、各hPDI1(abx)分泌発現ベクターを作製した。pPDI1(SP)−hPDI(abx)は、hPDI(abx)の分泌発現カセット内にCMVプロモーター、S.ポンベPDI1シグナルペプチド部分をコードする遺伝子、およびLPIターミネーターを備え、S.ポンベのleu1遺伝子座に該発現カセットを組込む単座組込み用ベクターである。
pPDI1(SP)−hPDI(abx)−inv1tは次のように作製した。pPDI1(SP)−hPDI(abx)を制限酵素XbaIおよびEcoRIで二重消化してLPIターミネーター部分を取り除き、一方で実施例3で構築したpSL12inv1tを制限酵素XbaIおよびEcoRIで二重消化してinv1ターミネーター部分を回収し、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをpPDI1(SP)−hPDI(abx)−inv1tとした。
pPDI1(SP)−hPDI(abx)−ihc2tは次のように作製した。実施例3で構築したpSL12ihc2tを制限酵素XbaIおよびEcoRIで二重消化してihc2ターミネーター部分を回収し、先ほど制限酵素XbaIおよびEcoRIで二重消化したpPDI1(SP)−hPDI(abx)とライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドpPDI1(SP)−hPDI(abx)−ihc2tとした。
pPDI1(SP)−hPDI(abx)−nmt1tは次のように作製した。pPDI1(SP)−hPDI(abx)を制限酵素SbfIおよびPvuIで二重消化してLPIターミネーターおよびtop2相同組換え領域を含むDNA断片を取り除き、一方で実施例1で構築したpSL6EGFP−nmt1tを制限酵素SbfIおよびPvuIで二重消化してnmt1ターミネーターおよびtop2相同組換え領域を含むDNA断片を回収し、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをpPDI1(SP)−hPDI(abx)−nmt1tとした。
<宿主>
宿主として、S.ポンベARC001株の8つのプロテアーゼ遺伝子を欠失させたA8株(遺伝子型:h、leu1−32、ura4−D18、△psp3、△isp6、△oma1、△ppp16、△fma2、△sxa2、△atg4、△ppp20)を用いた。A8株は、遺伝子カセットを用いた標的ORFの遺伝子置換により予め構築された株である(国際公開第2007/015470号参照。)。
<形質転換体の製造>
作製した各発現ベクターを用いて、実施例1と同様にしてA8株を宿主とした形質転換体を作製した。
hPDI1(abx)分泌発現ベクターpPDI1(SP)−hPDI(abx)、pPDI1(SP)−hPDI(abx)−nmt1t、pPDI1(SP)−hPDI(abx)−inv1t、pPDI1(SP)−hPDI(abx)−ihc2tを用いて得た形質転換体をそれぞれ、hPDI(abx)/LPIt株、hPDI(abx)/nmt1t株、hPDI(abx)/inv1t株およびhPDI(abx)/ihc2t株とした。
<hPDI1(abx)の分泌生産量の測定>
前記で得られた各形質転換体および非発現株であるA8株それぞれを試験管内の5mLのYPD+MES(1%酵母エキス、1%ペプトン、2%グルコース、0.3M 2−モルホリノエタンスルホン酸一水和物)培地(pH6.0)に植菌し、32℃で3日間培養した。培養液を遠心分離処理し、回収された培養上清4mLにTCA(トリクロロ酢酸)溶液を終濃度10%(w/w)になるよう添加して冷却し、得られた沈殿物を回収した。該沈殿物に40μLのSDS−PAGE用サンプルバッファーを添加し、95℃で5分間インキュベートし、PAGE用サンプルを調製した。該PAGE用サンプルのうち10μL(培養上清1mL相当)をアクリルアミドゲルにアプライし、SDS−PAGE後にCBB染色して、染色像をGel Doc(登録商標) XR+システム(Bio−Rad Laboratories社製、米国)で検出した。検出されたhPDI1(abx)の分泌バンドを定量化し、hPDI(abx)/LPIt株のhPDI(abx)分泌量を1とした場合の各形質転換体のhPDI(abx)の相対分泌量を算出した。
CBB染色像を図8に、各形質転換体のhPDI(abx)相対分泌量の算出結果を図9に示す。図8に示すように、全ての形質転換体においてhPDI(abx)の分泌が確認された。図9の結果から、hPDI(abx)/invt1株では、hPDI(abx)/LPIt株と比べて、同等か僅かにhPDI(abx)分泌量が向上している程度であった。一方、hPDI(abx)/nmt1株においては、hPDI(abx)/LPIt株の約2.5倍のhPDI(abx)分泌量向上が観察され、hPDI(abx)/ihc2t株においては、それより高い約3倍の分泌量向上が観察された。ihc2ターミネーターはEGFPにおいてもその生産量を向上させたことから、ihc2ターミネーターは蛋白質の種類に依らず、発現効率改善効果を発揮することが示唆された。
[実施例5]
ihc2遺伝子のORFの下流側の領域の範囲を段階的に短くすることにより、ihc2遺伝子のターミネーター領域を検討した。
(ギャップリペアクローニング法による形質転換体の製造)
EGFP遺伝子をコードする構造遺伝子下流に、種々の長さのihc2遺伝子由来のターミネーターを配したEGFP発現カセットをギャップリペアクローニング法を応用してS.ポンベのleu1遺伝子座に組込んだ。ギャップリペアクローニング法とは、酵母が有する組換え修復機構を利用し、末端に20〜30bpの相同領域を有するDNA断片間での相同組換えを酵母細胞内で引き起こして、DNA断片を連結する方法である。
具体的には、pSL6EGFP−LPItを鋳型とし、配列番号46の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号47の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせ、および配列番号48の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号49の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせを用いたPCRによって、それぞれleu1遺伝子の一部とhCMVプロモーターとEGFP遺伝子とを含むPCR産物(leu1+hCMVp+EGFPフラグメント)およびtop2遺伝子の一部を含むPCR産物(top2フラグメント)を得た。
一方、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にleu1+hCMVp+EGFPフラグメントの3’末端との相同領域24bpを備えるフォワードプライマーおよび5’末端にtop2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを備えるリバースプライマーを用いたPCRによって、5’末端にleu1+hCMVp+EGFPフラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にtop2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するihc2遺伝子の下流領域の各PCR産物を、次のようなプライマーの組合せで得た。具体的には、ihc2遺伝子の下流領域長が525bp(ORFの3’末端の下流1〜525bpの領域、すなわち、配列番号19中、1〜525番目の領域)のPCR産物(ihc2t(525)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号51の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、400bp(ORFの3’末端の下流1〜400bpの領域、すなわち、配列番号19中、1〜400番目の領域)のPCR産物(ihc2t(400)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号52の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、300bp(ORFの3’末端の下流1〜300bpの領域、すなわち、配列番号19中、1〜300番目の領域)のPCR産物(ihc2t(300)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号53の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、200bp(ORFの3’末端の下流1〜200bpの領域、すなわち、配列番号19中、1〜200番目の領域)のPCR産物(ihc2t(200)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号54の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、175bp(ORFの3’末端の下流1〜175bpの領域、すなわち、配列番号19中、1〜175番目の領域)のPCR産物(ihc2t(175)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号55の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、150bp(ORFの3’末端の下流1〜150bpの領域、すなわち、配列番号19中、1〜150番目の領域)のPCR産物(ihc2t(150)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号56の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、125bp(ORFの3’末端の下流1〜125bpの領域、すなわち、配列番号19中、1〜125番目の領域)のPCR産物(ihc2t(125)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号57の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、525bp(ORFの3’末端の下流1〜100bpの領域、すなわち、配列番号19中、1〜100番目の領域)のPCR産物(ihc2t(100)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号58の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、それぞれPCRを行い、各PCR産物を得た。
実施例1の(形質転換体の製造)において、各EGFP発現ベクターを制限酵素NotIで消化したものを添加する代わりに、ここで得られた各PCR産物を添加する事により形質転換体を得た。leu1+hCMVp+EGFPフラグメント、top2フラグメントおよびihc2t(525)フラグメントを添加して得られた形質転換体をihc2t(525)株、leu1+hCMVp+EGFPフラグメント、top2フラグメントおよびihc2t(400)フラグメントを添加して得られた形質転換体をihc2t(400)株、leu1+hCMVp+EGFPフラグメント、top2フラグメントおよびihc2t(300)フラグメントを添加して得られた形質転換体をihc2t(300)株、leu1+hCMVp+EGFPフラグメント、top2フラグメントおよびihc2t(200)フラグメントを添加して得られた形質転換体をihc2t(200)株、leu1+hCMVp+EGFPフラグメント、top2フラグメントおよびihc2t(175)フラグメントを添加して得られた形質転換体をihc2t(175)株、leu1+hCMVp+EGFPフラグメント、top2フラグメントおよびihc2t(150)フラグメントを添加して得られた形質転換体をihc2t(150)株、leu1+hCMVp+EGFPフラグメント、top2フラグメントおよびihc2t(125)フラグメントを添加して得られた形質転換体をihc2t(125)株、leu1+hCMVp+EGFPフラグメント、top2フラグメントおよびihc2t(100)フラグメントを添加して得られた形質転換体をihc2t(100)株とした。
<培養菌体のGFP蛍光強度測定>
実施例1で得られた形質転換体であるCMVp/ihc2t株および前記で得られた各形質転換体をそれぞれ試験管内の5mLのEMM培地に植菌し、32℃で4日間培養した。ちなみに、CMVp/ihc2t株の保持するEGFP発現カセット中のihc2遺伝子の下流領域長は625bpである。各形質転換体の培養2日目から4日目の各培養液の菌体密度(OD660)およびGFP蛍光強度(励起波長490nm、蛍光波長530nm)をMTP−810Labにより測定して、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図10に示す。ihc2遺伝子の下流領域長が175〜625bpにおいては、GFPの蛍光強度に大きな差は見られず、各下流領域は同等のターミネーター活性を示していた。一方、ihc2遺伝子の下流領域長が175bpより短くなるにつれてGFPの蛍光強度が低下していった。これらの結果は、ihc2遺伝子の下流領域長が175bpより短くなるにつれて、徐々にターミネーター活性が失われていくことを示している。
なお、2015年7月2日に出願された日本特許出願2015−133781号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (11)

  1. シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子を導入するためのクローニングサイト、および、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを有し、
    前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列、または該塩基配列中の1以上の塩基を置換、欠失、もしくは付加された塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とするクローニングベクター。
  2. シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子を導入するためのクローニングサイト、および、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを有し、
    前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列と90%以上のホモロジーを有する塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とするクローニングベクター。
  3. シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子、および、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを有し、
    前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列、該塩基配列中の1以上の塩基を置換、欠失、もしくは付加された塩基配列、または配列番号19で表される塩基配列と90%以上のホモロジーを有する塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とする発現ベクター。
  4. 請求項1または2に記載のクローニングベクター中のクローニングサイトに、外来構造遺伝子を導入することを特徴とする発現ベクターの製造方法。
  5. シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子、および下記ターミネーター以外のターミネーターを有する発現ベクターの該ターミネーターを、シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターに置換し、
    前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列、該塩基配列中の1以上の塩基を置換、欠失、もしくは付加された塩基配列、または配列番号19で表される塩基配列と90%以上のホモロジーを有する塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とする発現ベクターの製造方法。
  6. シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるプロモーター、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子、およびシゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターを含む発現カセットを有し、
    前記シゾサッカロミセス属酵母のihc2遺伝子が有するターミネーターが、配列番号19で表される塩基配列、該塩基配列中の1以上の塩基を置換、欠失、もしくは付加された塩基配列、または配列番号19で表される塩基配列と90%以上のホモロジーを有する塩基配列からなり、かつターミネーター活性を有することを特徴とするシゾサッカロミセス属酵母の形質転換体。
  7. 前記発現カセットを含む発現ベクターを染色体外に含む、請求項に記載の形質転換体。
  8. 前記発現カセットを染色体に含む、請求項に記載の形質転換体。
  9. 請求項に記載の形質転換体を製造する方法であって、前記発現カセットを含む発現ベクターを、シゾサッカロミセス属酵母の染色体外に保持させることを特徴とする形質転換体を製造する方法。
  10. 請求項に記載の形質転換体を製造する方法であって、前記発現カセットを含む発現ベクターを、シゾサッカロミセス属酵母の染色体に導入することを特徴とする形質転換体を製造する方法。
  11. 請求項のいずれか一項に記載の形質転換体を培養し、得られた菌体または培養液上清から、前記外来構造遺伝子がコードする蛋白質を取得することを特徴とする蛋白質の生産方法。
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