JP2019088191A - 誘導型プロモーター - Google Patents

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Abstract

【課題】シゾサッカロミセス属酵母を宿主とする形質転換体内で機能する、特定の物質を培養培地に添加することによって発現を誘導し得るプロモーター等の提供。【解決手段】シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、およびSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターからなる群より選択されるプロモーターであって、該プロモーターと該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子とを有する形質転換体において、アラントインおよびアラントイン酸からなる群より選択される1種以上により前記外来遺伝子の発現を誘導するプロモーターとして使用されるプロモーターである、誘導型プロモーター。【選択図】なし

Description

本発明は、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属酵母内で機能する、特定の物質を培地に添加することによって発現を誘導し得るプロモーター、該プロモーターを含む発現カセットおよびクローニングベクター、該発現カセットを含む形質転換体、ならびに該形質転換体を培養して蛋白質を生産する方法に関する。
シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe、以下、「S.ポンベ」ということがある。)をはじめとするシゾサッカロミセス属酵母は、その様々な特徴から、より高等動物細胞に近い単細胞真核生物であると位置づけられ、外来構造遺伝子、特に高等動物由来遺伝子の発現用宿主として非常に有用な酵母であると考えられる。特にヒトを含む動物細胞由来の遺伝子の発現に適していることが知られている。
生物の転写・翻訳系を利用して蛋白質を発現させる場合には、一般的に、異種蛋白質をコードする外来構造遺伝子の上流に、該外来構造遺伝子の転写を制御するプロモーターと、転写により得られたmRNAを解離させるターミネーターとを含む発現カセットを、宿主とする細胞に導入する。プロモーターには、常時発現を誘導する構成型プロモーターと、特定の培養条件により発現を誘導できる誘導型プロモーターとがある。誘導型プロモーターでは、培養工程と蛋白質生産工程とを分けられるため、宿主に対して毒性の高い蛋白質の生産も可能となり、また、宿主の代謝コントロールも可能であるため、特に低分子化合物の生産に有用である。
たとえば、植物を宿主とする形質転換体の作製に使用可能なプロモーターとしては、窒素源をアンモニウム塩から硝酸塩に変更して誘導するNiRプロモーター(特許文献1参照。)、および窒素源を硝酸塩からアンモニアや尿素といった非硝酸塩に変更して誘導するRuBisCoプロモーター(特許文献2参照。)が報告されている。これに対して、シゾサッカロミセス属酵母を宿主とした場合に使用されている誘導型プロモーターとしては、エタノールや1−プロパノールで誘導されるgld1プロモーターが報告されているが(非特許文献1参照。)、窒素源の違いにより誘導されるプロモーターは報告されていない。
特表2003−512821号公報 特表2014−518611号公報
Matsuzawa et al.,Applied Microbiology and Biotechnology,2013,vol.97,p.6835−6843.
本発明に係る目的は、シゾサッカロミセス属酵母を宿主とする形質転換体内で機能する、特定の物質を培養培地に添加することによって発現を誘導し得るプロモーター、該プロモーターを含む発現カセットおよびクローニングベクター、該発現カセットを含む形質転換体、ならびに該形質転換体を培養して蛋白質を生産する方法を提供することにある。
本発明者等は、S.ポンベが有する遺伝子の中にアラントインまたはアラントイン酸によってその発現が誘導される遺伝子が存在すること、および該遺伝子中のプロモーターがアラントインまたはアラントイン酸によって該構造遺伝子の発現を誘導する特性を有していること、を見出した。さらに、本発明者等は、この知見に基づき、該プロモーターを形質転換体の外来構造遺伝子の発現を制御する誘導型プロモーターとして使用しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下[1]〜[11]を提供するものである。
[1] シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、およびSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターからなる群より選択されるプロモーターであって、該プロモーターと該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子とを有する形質転換体において、アラントインおよびアラントイン酸からなる群より選択される1種以上により前記外来遺伝子の発現を誘導するプロモーターとして使用されるプロモーターであることを特徴とする、誘導型プロモーター。
[2] 前記SPAC29B12.14c遺伝子のプロモーターの領域が、
(1)配列番号1で表される塩基配列、
(2)配列番号1で表される塩基配列の部分配列であって、2630〜3029番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
(3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
からなる、前記[1]の誘導型プロモーター。
[3] 前記SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーターの領域が、
(1)配列番号2で表される塩基配列、
(2)配列番号2で表される塩基配列の部分配列であって、1001〜1500番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
(3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
からなる、前記[1]の誘導型プロモーター。
[4] 前記SPAC1399.01c遺伝子のプロモーターの領域が、
(1)配列番号3で表される塩基配列、
(2)配列番号3で表される塩基配列の部分配列であって、1534〜3033番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
(3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
からなる、前記[1]の誘導型プロモーター。
[5] SPAC1F7.12遺伝子のプロモーターの領域が、
(1)配列番号4で表される塩基配列、
(2)配列番号4で表される塩基配列の部分配列であって、2757〜3056番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
(3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
からなる、前記[1]の誘導型プロモーター。
[6] SPAC19G12.03遺伝子のプロモーターの領域が、
(1)配列番号5で表される塩基配列、
(2)配列番号5で表される塩基配列の部分配列であって、1101〜1500番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
(3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
からなる、前記[1]の誘導型プロモーター。
[7] プロモーターと、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子とを有し、
前記プロモーターが、シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、またはSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターであることを特徴とする、発現カセット。
[8] プロモーターと、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子を導入するためのクローニングサイトと、シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるターミネーターとを有し、
前記プロモーターが、シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、またはSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターであることを特徴とする、クローニングベクター。
[9] シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、またはSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターと、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子と、ターミネーターを含む発現カセットを有することを特徴とするシゾサッカロミセス属酵母の形質転換体。
[10] 前記シゾサッカロミセス属酵母がシゾサッカロミセス・ポンベである、前記[9]の形質転換体
[11] 前記[9]または[10]の形質転換体を、アラントインおよびアラントイン酸からなる群より選択される1種以上を含有する培養液中で培養し、得られた菌体または培養液上清から、前記外来構造遺伝子がコードする蛋白質を取得することを特徴とする蛋白質の生産方法。
本発明に係る誘導型プロモーターを発現させる目的の蛋白質をコードする外来構造遺伝子のプロモーターとして用いることにより、シゾサッカロミセス属酵母において、アラントインおよびアラントイン酸からなる群より選択される1種以上を誘導剤として目的の蛋白質の発現を誘導させられる。
本発明に係る発現カセットおよびクローニングベクターを用いることにより、外来構造遺伝子由来の蛋白質をアラントインまたはアラントイン酸により発現誘導し得るシゾサッカロミセス属酵母の形質転換体を容易に作製できる。
単座組込み用ベクターpSL6AL9p(1.5)の構造を模式的に示した図である。 単座組込み用ベクターpSL6AL14p(1.5)の構造を模式的に示した図である。 実施例2において、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例3において、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例4において、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例5において、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例6において、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例7において、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例8において、アラントイン濃度の異なる各培養培地における各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例9において、硫安濃度の異なる各培養培地における各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例10において、各培養培地における各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例11において、各培養培地における各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。 実施例12において、各形質転換体におけるEGFPのmRNAの相対量(hCMV株のアラントイン添加前のEGFPのmRNA量を1とする。)を算出した結果を示した図である。 実施例13において、各形質転換体のOD660当りのGFP蛍光強度の結果を示した図である。
[誘導型プロモーター]
本発明に係る誘導型プロモーターは、S.ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子(以下、「AL8遺伝子」と称することがある。)のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子(以下、「AL9遺伝子」と称することがある。)のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子(以下、「AL12遺伝子」と称することがある。)のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子(以下、「AL13遺伝子」と称することがある。)のプロモーター、およびSPAC19G12.03遺伝子(以下、「AL14遺伝子」と称することがある。)のプロモーターからなる群より選択されるプロモーターである。各遺伝子の予測されている機能を表1に示す。なお、S.ポンベの各遺伝子の塩基配列は、European Bioinformatics Instituteが提供するウエブサイトのS.ポンベの遺伝子配列データベース(PomBase;http://www.pombase.org/)に登録されている。
Figure 2019088191
これらの5種の遺伝子のプロモーターは、いずれも、アラントインおよびアラントイン酸からなる群より選択される1種以上により、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子の発現を誘導するプロモーターとして使用される。すなわち、本発明に係る誘導型プロモーターを用いた発現カセットを導入した形質転換体は、アラントインおよびアラントイン酸をいずれも含有しない培養用培地から、アラントインとアラントイン酸の少なくとも一方を含有する生産用培地へ置換する、または培養用培地にアラントインとアラントイン酸の少なくとも一方を添加することによって、該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子の発現が誘導される。
AL8遺伝子のプロモーター領域は、AL8遺伝子のORF(オープンリーディングフレーム)の5’末端の上流1〜3029bpの領域(配列番号1)に存在する。本発明において用いられるAL8遺伝子のプロモーターとしては、AL8遺伝子のORFの5’末端の上流の領域であって、少なくとも該ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域(配列番号1中、2630〜3029番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることが好ましく、AL8遺伝子のORFの5’末端の上流1〜3029bpの領域の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域を含む領域を用いることがより好ましく、AL8遺伝子のORFの5’末端の上流1〜2500bpの領域(配列番号1中、530〜3029番目の塩基からなる領域)の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域を含む領域を用いることがさらに好ましく、AL8遺伝子のORFの5’末端の上流1〜900bpの領域(配列番号1中、2130〜3029番目の塩基からなる領域)の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域を含む領域を用いることがよりさらに好ましく、AL8遺伝子のORFの5’末端の上流1〜700bpの領域(配列番号1中、2330〜3029番目の塩基からなる領域)の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜500bpの領域(配列番号1中、2530〜3029番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることが特に好ましい。
本発明に係る誘導型プロモーターには、AL8遺伝子のORFの5’末端の上流の領域からなる核酸断片に加えて、該核酸断片に、アラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性が失われないような変異を導入したものも含まれる。該変異は、配列番号1で表される塩基配列のうち、2630〜3029番目の塩基からなる領域以外の領域、好ましくは、2530〜3029番目の塩基からなる領域以外の領域に導入されていることが好ましい。たとえば、配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列の部分配列であって2630〜3029番目の塩基からなる領域を含む塩基配列の1以上の塩基、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜十数個、さらに好ましくは1〜9個、よりさらに好ましくは1〜数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加された塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する核酸断片も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列の部分配列とのホモロジー(配列同一性)が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する領域も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。
AL9遺伝子のプロモーター領域は、AL9遺伝子のORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域(配列番号2)に存在する。本発明において用いられるAL9遺伝子のプロモーターとしては、AL9遺伝子のORFの5’末端の上流の領域であって、少なくとも該ORFの5’末端の上流1〜500bpの領域(配列番号2中、1001〜1500番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることが好ましく、AL9遺伝子のORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜500bpの領域を含む領域を用いることがより好ましく、AL9遺伝子のORFの5’末端の上流1〜1200bpの領域(配列番号2中、301〜1500番目の塩基からなる領域)の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜800bpの領域(配列番号2中、701〜1500番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることがさらに好ましい。
本発明に係る誘導型プロモーターには、AL9遺伝子のORFの5’末端の上流の領域からなる核酸断片に加えて、該核酸断片に、アラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性が失われないような変異を導入したものも含まれる。該変異は、配列番号2で表される塩基配列のうち、1001〜1500番目の塩基からなる領域以外の領域に導入されていることが好ましい。たとえば、配列番号2で表される塩基配列、もしくは該塩基配列の部分配列であって1001〜1500番目の塩基からなる領域を含む塩基配列の1以上の塩基、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜十数個、さらに好ましくは1〜9個、よりさらに好ましくは1〜数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加された塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する核酸断片も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。配列番号2で表される塩基配列もしくは該塩基配列の部分配列とのホモロジーが80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する領域も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。
AL12遺伝子のプロモーター領域は、AL12遺伝子のORFの5’末端の上流1〜3033bpの領域(配列番号3)に存在する。本発明において用いられるAL12遺伝子のプロモーターとしては、AL12遺伝子のORFの5’末端の上流の領域であって、少なくとも該ORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域(配列番号3中、1534〜3033番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることが好ましく、AL12遺伝子のORFの5’末端の上流1〜3033bpの領域の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域を含む領域を用いることがより好ましく、AL12遺伝子のORFの5’末端の上流1〜3033bpの領域の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜1600bpの領域(配列番号3中、1434〜3033番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることがさらに好ましく、AL12遺伝子のORFの5’末端の上流1〜2300bpの領域(配列番号3中、734〜3033番目の塩基からなる領域)の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜1900bpの領域(配列番号3中、1134〜3033番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることがよりさらに好ましい。
本発明に係る誘導型プロモーターには、AL12遺伝子のORFの5’末端の上流の領域からなる核酸断片に加えて、該核酸断片に、アラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性が失われないような変異を導入したものも含まれる。該変異は、配列番号3で表される塩基配列のうち、1534〜3033番目の塩基からなる領域以外の領域、好ましくは、1134〜3033番目の塩基からなる領域以外の領域に導入されていることが好ましい。たとえば、配列番号3で表される塩基配列、もしくは該塩基配列の部分配列であって1534〜3033番目の塩基からなる領域を含む塩基配列の1以上の塩基、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜十数個、さらに好ましくは1〜9個、よりさらに好ましくは1〜数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加された塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する核酸断片も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。配列番号3で表される塩基配列もしくは該塩基配列の部分配列とのホモロジーが80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する領域も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。
AL13遺伝子のプロモーター領域は、AL13遺伝子のORFの5’末端の上流1〜3056bpの領域(配列番号4)に存在する。本発明において用いられるAL13遺伝子のプロモーターとしては、AL13遺伝子のORFの5’末端の上流の領域であって、少なくとも該ORFの5’末端の上流1〜300bpの領域(配列番号4中、2757〜3056番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることが好ましく、AL13遺伝子のORFの5’末端の上流1〜3056bpの領域の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜300bpの領域を含む領域を用いることがより好ましく、AL13遺伝子のORFの5’末端の上流1〜3056bpの領域の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜1000bpの領域(配列番号4中、2057〜3056番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることがさらに好ましく、AL13遺伝子のORFの5’末端の上流1〜2500bpの領域(配列番号4中、557〜3056番目の塩基からなる領域)の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域(配列番号4中、1557〜3056番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることがよりさらに好ましい。
本発明に係る誘導型プロモーターには、AL13遺伝子のORFの5’末端の上流の領域からなる核酸断片に加えて、該核酸断片に、アラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性が失われないような変異を導入したものも含まれる。該変異は、配列番号4で表される塩基配列のうち、2757〜3056番目の塩基からなる領域以外の領域、好ましくは、2057〜3056番目の塩基からなる領域以外の領域に導入されていることが好ましい。たとえば、配列番号4で表される塩基配列、もしくは該塩基配列の部分配列であって2757〜3056番目の塩基からなる領域を含む塩基配列の1以上の塩基、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜十数個、さらに好ましくは1〜9個、よりさらに好ましくは1〜数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加された塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する核酸断片も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。配列番号4で表される塩基配列もしくは該塩基配列の部分配列とのホモロジーが80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する領域も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。
AL14遺伝子のプロモーター領域は、AL14遺伝子のORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域(配列番号5)に存在する。本発明において用いられるAL14遺伝子のプロモーターとしては、AL14遺伝子のORFの5’末端の上流の領域であって、少なくとも該ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域(配列番号5中、1101〜1500番目の塩基からなる領域)を含む領域を用いることが好ましく、AL14遺伝子のORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域を含む領域を用いることがより好ましく、AL14遺伝子のORFの5’末端の上流1〜500bpの領域(配列番号5中、1001〜1500番目の塩基からなる領域)の全領域または該領域の部分領域であって該ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域を含む領域を用いることがさらに好ましい。
本発明に係る誘導型プロモーターには、AL14遺伝子のORFの5’末端の上流の領域からなる核酸断片に加えて、該核酸断片に、アラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性が失われないような変異を導入したものも含まれる。該変異は、配列番号5で表される塩基配列のうち、1101〜1500番目の塩基からなる領域以外の領域に導入されていることが好ましい。たとえば、配列番号5で表される塩基配列、もしくは該塩基配列の部分配列であって1101〜1500番目の塩基からなる領域を含む塩基配列の1以上の塩基、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜十数個、さらに好ましくは1〜9個、よりさらに好ましくは1〜数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加された塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する核酸断片も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。配列番号5で表される塩基配列もしくは該塩基配列の部分配列とのホモロジーが80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する領域も、本発明に係る誘導型プロモーターに含まれる。
なお、「ORFの5’末端」とは、開始メチオニンの1塩基目のアデニンであり、「ORFの5’末端の上流1bpの塩基」とは、開始メチオニンの1塩基目のアデニンの上流側隣の塩基である。
[クローニングベクター]
本発明に係るクローニングベクターは、本発明に係る誘導型プロモーターと、該誘導型プロモーターの下流に位置しかつ該誘導型プロモーターによって支配される外来構造遺伝子を導入するためのクローニングサイトと、シゾサッカロミセス属酵母を宿主とする形質転換体内で機能しうるターミネーターとを有する。本発明に係るクローニングベクターは、外来構造遺伝子がコードする蛋白質(以下、外来蛋白質ということがある。)を発現させるためにシゾサッカロミセス属酵母に導入される発現ベクターを作製するためのクローニングベクターとして使用できる。
本発明に係るクローニングベクターが備えるクローニングサイトは、クローニングベクター中、該クローニングサイトにのみ存在する制限酵素部位である。本発明に係るクローニングベクターが備えるクローニングサイトは制限酵素部位を1のみ有していてもよく、2以上の制限酵素部位を有するマルチクローニングサイトであってもよい。該マルチクローニングサイトとしては、公知のクローニングベクターが備えるマルチクローニングサイトをそのまま使用でき、また、公知のマルチクローニングサイトを適宜改変したものを使用できる。その他、本発明に係るクローニングベクターは、クローニングサイト内の下流端側領域、もしくは該クローニングサイトの下流に、終始コドンを備えていてもよい。
形質転換体内で機能するターミネーターとしては、シゾサッカロミセス属酵母が本来有するターミネーターやシゾサッカロミセス属酵母が本来有しないターミネーターを使用できる。なお、ターミネーターはベクター内に2種以上存在していてもよい。シゾサッカロミセス属酵母が本来有するターミネーターとしては、たとえば、シゾサッカロミセス属酵母のinv1遺伝子のターミネーター、nmt1遺伝子のターミネーター、ihc2遺伝子のターミネーター(以下、ihc2ターミネーター)等が挙げられる。また、シゾサッカロミセス属酵母が本来有しないターミネーターとしては、たとえば、ヒトリポコルチンI(hLPI)遺伝子のターミネーター(以下、LPIターミネーター)、SV40ターミネーター等が挙げられる。ターミネーターとしては、形質転換体においてその活性が高いことより、ihc2ターミネーターまたはLPIターミネーターが好ましい。
本発明に係るクローニングベクターは、プロモーターの下流であり、かつクローニングサイトの上流には5’−非翻訳領域が含まれていることが好ましく、クローニングサイトの下流には3’−非翻訳領域が含まれていることが好ましい。また、本発明に係るクローニングベクターは、クローニングサイトに外来構造遺伝子が導入された発現ベクターと識別するためのマーカーを有することが好ましい。該マーカーとしては、たとえば、アンピシリン耐性遺伝子等、大腸菌内で機能し得る薬剤耐性遺伝子等が挙げられる。さらに、本発明に係るクローニングベクターは、形質転換体を選択するためのマーカーを有することが好ましい。該マーカーとしては、たとえば、オロチジン5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(ura4遺伝子)、イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(leu1遺伝子)等の栄養要求性相補マーカーが挙げられる。
本発明に係るクローニングベクターは、環状DNA構造または線状DNA構造を有するベクターである。後述の発現カセットがシゾサッカロミセス属酵母の細胞内で染色体外遺伝子として保持される形質転換体を作製する場合には、本発明に係るクローニングベクターは、シゾサッカロミセス属酵母内で複製されるための配列、即ち、自律複製配列(Autonomously Replicating Sequence: ARS)を含むベクターであることが好ましい。一方で、後述の発現カセットがシゾサッカロミセス属酵母の染色体中に組み込まれた形質転換体を作製する場合には、本発明に係るクローニングベクターは、線状DNA構造であり、かつARSを有していないものであることが好ましい。
たとえば、後述の発現カセットがシゾサッカロミセス属酵母の染色体中に組み込まれた形質転換体を作製する場合には、本発明に係るクローニングベクターは、線状DNAからなるベクターであってもよく、発現カセットを宿主へ導入する際に、線状DNAに切り開くための制限酵素部位を備える環状DNA構造のベクターであってもよい。本発明に係るクローニングベクターがARSを有する場合、ARS部分を削除して線状DNA構造の発現カセットとした後、またはARS部分を開裂させることによりARSの機能を失活させた線状DNA構造の発現カセットとした後、宿主へ導入できる。
本発明に係るクローニングベクターは、外来構造遺伝子がコードする蛋白質を宿主に発現させるための発現ベクターを作製するために用いられる公知のクローニングベクターが備えるプロモーター領域を、本発明に係る誘導型プロモーターに置換することによって作製できる。本発明に係るクローニングベクターを構築するための具体的操作方法としては、公知の方法を使用できる。たとえば、文献[J. Sambrook et al.,"Molecular Cloning 2nded.", Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]に記載されている操作方法を使用できる。その他、PCRによる酵素的な増幅法や化学合成法で構築してもよい。
[発現カセット]
本発明に係る発現カセットは、本発明に係る誘導型プロモーターと、該誘導型プロモーターの下流に位置しかつ該誘導型プロモーターによって支配される外来構造遺伝子とを有する。該発現カセットを宿主細胞に導入することによって、該外来構造遺伝子がコードする蛋白質の発現をアラントインまたはアラントイン酸によって誘導可能な形質転換体を作製できる。
該発現カセットは、外来構造遺伝子の下流にシゾサッカロミセス属酵母内で機能するターミネーターを有することが好ましい。該ターミネーターとしては、クローニングベクターで用いられるものが用いられる。該発現カセットは、さらに、前記の5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域、栄養要求性相補マーカー等を有していてもよい。
該発現カセットが有する外来構造遺伝子は、蛋白質をコードする構造遺伝子であれば特に限定されるものではなく、宿主とするシゾサッカロミセス属酵母が元々有している遺伝子と同種のものであってもよく、異種生物由来の構造遺伝子であってもよい。
該発現カセットが有する外来構造遺伝子は、蛋白質をコードするものである限り、野生型の構造遺伝子であってもよく、野生型の構造遺伝子を改変した遺伝子であってもよく、人工的に合成された遺伝子であってもよい。野生型以外の構造遺伝子としては、たとえば、野生型の複数の蛋白質を融合させたキメラ蛋白質をコードする遺伝子、野生型の蛋白質のN末端またはC末端にその他のペプチド等が結合した蛋白質をコードする遺伝子等が挙げられる。該その他のペプチドとしては、分泌シグナル、特定の細胞内小器官への移行シグナル等のシグナル、Hisタグ、FLAGタグ等のタグ等が挙げられる。
本発明に係るクローニングベクターのクローニングサイトに外来構造遺伝子を挿入することにより、本発明に係る発現カセットを有する、外来構造遺伝子を発現するための発現ベクターを作製できる。クローニングサイトへの外来構造遺伝子の導入は、クローニングベクターの作製と同様に公知の方法を使用できる。
[形質転換体]
本発明に係る形質転換体は、本発明に係る発現カセットを有することを特徴とする。発現カセットを染色体外に有する形質転換体は、発現カセットを含むベクター(発現ベクター)を染色体外に保持させる。該発現ベクターは、通常、前記ARSを有する環状DNA構造を有する。一方、発現カセットを染色体に有する形質転換体は、前記ARSを有しない、線状DNA構造の発現カセットを含む染色体を有する。
(宿主)
本発明に係る形質転換体の宿主は、シゾサッカロミセス属酵母である。本発明に用いるシゾサッカロミセス属酵母は野生型であってもよく、用途に応じて特定の遺伝子を欠失または失活させた変異型であってもよい。特定の遺伝子を欠失または失活させる方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、Latour法(Nucreic Acids Res、2006年、第34巻第e11号、および国際公開第2007/063919号等に記載)を用いることにより遺伝子を欠失させられる。また、変異剤を用いた突然変異分離法(酵母分子遺伝学実験法、1996年、学会出版センター)や、PCRを利用したランダム変異法(PCR Methods Appl.、1992年、第2巻、p.28−33。)等により遺伝子の一部に変異を導入することにより、該遺伝子を失活させられる。特定遺伝子を欠失または失活させたシゾサッカロミセス属酵母宿主としては、たとえば、国際公開第2002/101038号、国際公開第2007/015470号等に記載されている。
さらに宿主となるシゾサッカロミセス属酵母には、形質転換体を選択するためのマーカーを有するものを用いることが好ましい。たとえば、ある遺伝子が欠落していることにより特定の栄養成分が生育に必須である宿主を使用することが好ましい。目的遺伝子配列を含むベクターにより形質転換をして形質転換体を作製する場合、ベクターにこの欠落している遺伝子(栄養要求性相補マーカー)を組み込んでおくことにより、形質転換体は宿主の栄養要求性が消失する。この宿主と形質転換体の栄養要求性の相違により、両者を区別して形質転換体を得られる。
たとえば、ura4遺伝子が欠失または失活してウラシル要求性となっているシゾサッカロミセス属酵母を宿主とし、ura4遺伝子を有する発現ベクターにより形質転換した後、ウラシル要求性が消失したものを選択することにより、発現ベクターが組み込まれた形質転換体を得られる。
宿主として用いるシゾサッカロミセス属酵母としては、前記で挙げられた種のものを利用できる。前記シゾサッカロミセス属酵母のうち、種々の有用な変異株が利用できることから、S.ポンベが好ましい。本発明で用いるS.ポンベの菌株としては、たとえばATCC38399(leu132、h)またはATCC38436(ura4294、h)等が挙げられ、これらは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手できる。
(形質転換方法)
本発明に係る発現カセットを含む発現ベクターを用いて、宿主であるシゾサッカロミセス属酵母を形質転換する。形質転換方法は、公知のシゾサッカロミセス属酵母の形質転換方法をいずれも用いることができる。そのような形質転換方法としては、たとえば、酢酸リチウム法[K. Okazaki et al., Nucleic Acids Res., 18, 6485-6489 (1990)]、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、ガラスビーズ法など従来周知の方法や、特開2005−198612号公報記載の方法などを挙げられる。また、市販の酵母形質転換用キットを用いてもよい。
形質転換を行った後、通常は得られた形質転換体を選抜する。選抜方法としては、たとえば、以下に示す方法が挙げられる。前記栄養要求性マーカーにより形質転換体を選択できる培地によりスクリーニングし、得られたコロニーから複数を選択する。その他、それら選抜した形質転換体に対してパルスフィールドゲル電気泳動法によるゲノム解析を行うことにより、染色体に組み込まれたベクターの数や発現カセットの数を調べられる。
(培養方法)
本発明に係る形質転換体を、アラントインおよびアラントイン酸を含有しない培養培地中で培養することにより、本発明に係る発現カセット中の外来構造遺伝子を発現させることなく、該形質転換体を培養できる。
本発明に係る形質転換体は、天然のシゾサッカロミセス属酵母と同様に培養できる。
本発明に係る形質転換体の培養のための培養液には、公知の酵母培養培地を用いることができ、シゾサッカロミセス属酵母が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、シゾサッカロミセス属酵母の培養を効率良く行えるものであればよい。培養液としては、天然培地を用いてもよく、合成培地を用いてもよい。
炭素源としては、たとえば、グルコース、フルクトース、スクロース等の糖が挙げられる。
窒素源としては、たとえば、アンモニア、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機酸または無機酸のアンモニウム塩、ペプトン、カザミノ酸が挙げられる。
無機塩類としては、たとえば、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムが挙げられる。
具体的には、YPD培地等の栄養培地(M.D.Rose et al.,"Methods In Yeast Genetics",Cold Spring Harbor LabolatoryPress(1990) )またはMB培地等の最少培地(K.Okazaki et al.,Nucleic AcidsRes.,18,6485-6489(1990))等を使用できる。
培養には公知の酵母培養方法を用いることができ、たとえば振盪培養、攪拌培養等により行える。
また、培養温度は、23〜37℃であることが好ましい。また、培養時間は適宜決定できる。
また、培養は、回分培養であってもよく、連続培養であってもよい。
[蛋白質の生産方法]
本発明に係る蛋白質の生産方法は、本発明に係る発現カセットを含む形質転換体を、アラントインおよびアラントイン酸からなる群より選択される1種以上を含有する培養液中で培養し、得られた菌体または培養液上清から、該発現カセット中の外来構造遺伝子がコードする蛋白質を取得することを特徴とする。アラントインまたはアラントイン酸により、本発明に係る誘導型プロモーターに転写因子が結合し、該誘導型プロモーターの下流にある外来構造遺伝子の転写が開始し、該外来構造遺伝子がコードする蛋白質が発現する。
培養工程から蛋白質の生産工程への移行は、たとえば、該形質転換体の培養培地を、アラントインとアラントイン酸の少なくとも一方を含有する培養培地に置換することによって行える。また、形質転換体の培養培地に、アラントインまたはアラントイン酸を添加することによっても行える。培養培地中のアラントインまたはアラントイン酸の濃度は、本発明に係る誘導型プロモーターによる発現誘導が可能な濃度であれば特に限定されるものではない。たとえば、培養培地中のアラントインまたはアラントイン酸の濃度を0.1〜50mMにすることによって、蛋白質を発現させられる。
蛋白質を生産させる際の培養培地は、アラントインまたはアラントイン酸を含有し、かつ酵母の培養に適した培養培地であれば特に限定されるものではなく、栄養培地と合成最小培地のいずれであってもよい。本発明に係る蛋白質の生産方法においては、アラントイン等による発現誘導がより効率よく行えることから、アライントインおよびアラントイン酸以外の窒素源を含まない培養培地を用いることが好ましい。
培養条件は、生産させる目的の外来蛋白質の種類等を考慮して適宜設定できる。たとえば、16〜42℃、好ましくは25〜37℃で、8〜168時間、好ましくは48〜96時間行う。振盪培養と静置培養のいずれも可能だが、必要に応じて撹拌や通気を加えてもよい。
培養終了後、超音波破砕や機械的破砕により、菌体から目的の外来蛋白質を含む細胞抽出液を調製し、該細胞抽出液から外来蛋白質を単離・精製法できる。また、外来蛋白質が細胞外に分泌される場合は、培養液上清から外来蛋白質を単離・精製法できる。これらの生産された蛋白質を取得するための単離・精製法としては、公知の、塩析または溶媒沈澱法等の溶解度の差を利用する方法、透析、限外濾過またはゲル電気泳動法等の分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィ等の荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィ等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィ等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法等の等電点の差を利用する方法等が挙げられる。
単離・精製した蛋白質の確認方法としては、公知のウエスタンブロッティング法または活性測定法等が挙げられる。精製された蛋白質は、アミノ酸分析、アミノ末端分析、一次構造解析などによりその構造を明らかにできる。
以下、実施例等を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
S.ポンベを、硫安を窒素源とする培養培地とアラントインを窒素源とする培養培地でそれぞれ培養し、各遺伝子の発現量を比較して、アラントインによって発現が誘導される遺伝子をスクリーニングした。
S.ポンベの野生株ARC032(遺伝子型:h)を、試験管内の5mLの硫安含有EMM培地[EMM w/o Nitorgen培地(MP BIOMEDICALS社製、米国)に硫安40mMを添加した培地]に植菌し、32℃で一晩前培養を行った。次いで、前培養液を、硫安含有EMM培地、またはEMM w/o Nitorgen培地にアラントイン20mMを添加したアラントイン含有EMM培地に植菌し、32℃で1〜3日間培養した。培養開始から1日経過後、2日経過後、および3日経過後の菌体のRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ法により各遺伝子のmRNA量を測定した。硫安含有EMM培地で培養した場合に対するアラントイン含有EMM培地で培養した場合のmRNAの相対量(相対発現量)を算出したところ、培養1日目、2日目、および3日目の少なくともいずれかにおいて、AL8遺伝子、AL9遺伝子、AL12遺伝子、AL13遺伝子、およびAL14遺伝子の相対発現量が5以上であった。該結果から、これらの5つの遺伝子のプロモーターが、アラントインによって発現を誘導する誘導型プロモーターであることがわかった。
[実施例2]
実施例1でスクリーニングした5つの遺伝子のプロモーターに制御されたEGFP遺伝子を導入したS.ポンベの形質転換体を、硫安を窒素源とする培養培地とアラントインを窒素源とする培養培地でそれぞれ培養し、EGFP蛋白質の発現量を比較した。
<EGFP発現ベクターの製造>
(pSL6hCMVpEGFP)
公知の単座組込み用ベクターpSL6(Alimjan et al., Appl Microbiol Biotechnol, 2010, vol.85, pp.667−677)のマルチクローニングサイトに、EGFPをコードする構造遺伝子を挿入したGFP発現ベクターpSL6hCMVpEGFPを製造した。pSL6ベクターは、hCMVプロモーターおよびLPIターミネーターの間にマルチクローニングサイトを備え、S.ポンベのleu1遺伝子座に外来遺伝子を組込む単座組込み用ベクターである。
具体的には、まずEGFPをコードする人工合成遺伝子(配列番号6)を鋳型とし、5’末端にNcoIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号7)および5’末端にXbaIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号8)とを用いたPCRによって、EGFP遺伝子のORF全長の5’末端にNcoIの制限酵素認識部位を、3’末端にXbaIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(EGFPフラグメント)を得た。
該EGFPフラグメントを制限酵素NcoIおよびXbaIで二重消化し、またpSL6を制限酵素AarIおよびXbaIで二重消化し、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6hCMVpEGFPとした。
(pSL6AL9p(1.5)EGFP)
pSL6ベクターのhCMVプロモーターを、S.ポンベのAL9遺伝子のORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域と置換したpSL6AL9p(1.5)ベクターを作製し、pSL6AL9p(1.5)のマルチクローニングサイトに、EGFPをコードする構造遺伝子を挿入して、EGFPの発現がAL9遺伝子由来のプロモーターにより制御されたEGFP発現ベクターpSL6AL9p(1.5)EGFPを作製した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にSpeIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号9)および5’末端にPciIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号10)を用いたPCRによって、AL9遺伝子のORFの5’末端の上流1bpから1500bpの領域(配列番号2)の5’末端にSpeI、3’末端にPciIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(AL9p(1.5)フラグメント)を得た。
該AL9p(1.5)フラグメントを制限酵素制限酵素SpeIおよびPciIで二重消化し、またpSL6を制限酵素BlnIおよびAarIで二重消化してhCMVプロモーター部分を取り除き、両者をライゲーションして続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドを単座組込み用ベクターpSL6AL9p(1.5)とした。pSL6AL9p(1.5)は、AL9遺伝子のORFの5’末端の上流1bpから1500bpの領域とLPIターミネーターとの間にマルチクローニングサイトを備え、S.ポンベのleu1遺伝子座に外来遺伝子を組込む単座組込み用ベクターである。図1に、単座組込み用ベクターpSL6AL9p(1.5)の構造の模式図を示す。
続いて、pSL6AL9p(1.5)を制限酵素AarIおよびXbaIで二重消化し、前記で得られた制限酵素NcoIおよびXbaIで二重消化したEGFPフラグメントを混合して両者をライゲーションし、続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6AL9p(1.5)EGFPとした。
(pSL6AL14p(1.5)EGFP)
pSL6ベクターのhCMVプロモーターを、S.ポンベのAL14遺伝子のORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域と置換したpSL6AL14p(1.5)ベクターを作製し、pSL6AL14p(1.5)のマルチクローニングサイトにEGFPをコードする構造遺伝子を挿入して、EGFPの発現がAL14遺伝子由来のプロモーターにより制御されたEGFP発現ベクターpSL6AL14p(1.5)EGFPを作製した。
具体的には、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にBlnIの制限酵素認識部位を備えるフォワードプライマー(配列番号11)および5’末端にNcoIの制限酵素認識部位を備えるリバースプライマー(配列番号12)を用いたPCRによって、AL14遺伝子のORFの上流1bpから1500bpの領域(配列番号5)の5’末端にBlnI、3’末端にNcoIの制限酵素認識部位を有するPCR産物(AL14p(1.5)フラグメント)を得た。
該AL14p(1.5)フラグメントを制限酵素制限酵素BlnIおよびNcoIで二重消化し、またpSL6を制限酵素BlnIおよびAarIで二重消化してhCMVプロモーター部分を取り除き、両者をライゲーションし、続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドを単座組込み用ベクターpSL6AL14p(1.5)とした。pSL6AL14p(1.5)は、AL14遺伝子のORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域とLPIターミネーターとの間にマルチクローニングサイトを備え、S.ポンベのleu1遺伝子座に外来遺伝子を組込む単座組込み用ベクターである。図2に、単座組込み用ベクターpSL6AL14p(1.5)の構造の模式図を示す。
続いて、pSL6AL14p(1.5)を制限酵素AarIおよびXbaIで二重消化し、前記で得られた制限酵素NcoIおよびXbaIで二重消化したEGFPフラグメントを混合して両者をライゲーションし、続く大腸菌DH5αへの形質転換後、プラスミドを得た。該プラスミドをEGFP発現ベクターpSL6AL14p(1.5)EGFPとした。
(宿主)
宿主として、S.ポンベのロイシン要求株ARC001(遺伝子型:h、leu1−32)を用いた。
(形質転換体の製造)
ARC001株をYES(0.5%酵母エキス、3%グルコース、0.25mg/mL SPサプリメント)培地で1.0〜2.0×10細胞数/mLになるまで生育させた。生育させた菌体を集菌して洗浄した後、2.0×10細胞数/mLになるように0.1M 酢酸リチウム(pH5.0)に懸濁した。その後、ARC001株の懸濁液100μLに各EGFP発現ベクターを制限酵素NotIで消化したもの約1μgをそれぞれ加え、更に50%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG4000)水溶液をそれぞれに260μL加えてよく撹拌した後、32℃で30分間インキュベートし、43μLのDMSOを添加した後に更に42℃で5分間インキュベートした。遠心分離処理によりPEG4000を除去し、洗浄した後の菌体を150μLの滅菌水に懸濁し、最少寒天培地に塗布した。各菌体を塗布した寒天培地を3〜5日培養した後、形質転換体を得た。pSL6AL9p(1.5)EGFP、pSL6AL14p(1.5)EGFP、およびpSL6hCMVpEGFPを導入した形質転換体を、それぞれAL9株、AL14株、およびhCMV株とした。
(ギャップリペアクローニング法による形質転換体の製造)
EGFPの発現がAL8遺伝子由来のプロモーターにより制御されたEGFP発現カセット、EGFPの発現がAL12遺伝子由来のプロモーターにより制御されたEGFP発現カセット、およびEGFPの発現がAL13遺伝子由来のプロモーターにより制御されたEGFP発現カセットは、ギャップリペアクローニング法を応用してS.ポンベのleu1遺伝子座に組込んだ。ギャップリペアクローニング法とは、酵母が有する組換え修復機構を利用し、末端に20〜30bpの相同領域を有するDNA断片間での相同組換えを酵母細胞内で引き起こして、DNA断片を連結する方法である。
具体的には、pSL6hCMVpEGFPを鋳型とし、配列番号13の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号14の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせ、および配列番号15の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号16の塩基配列からなるリバースプライマーの組み合わせを用いたPCRによって、それぞれleu1遺伝子の一部を含むPCR産物(leu1フラグメント)およびEGFP遺伝子とLPIターミネーターとtop2遺伝子の一部とを含むPCR産物(EGFP+LPIt+top2フラグメント)を得た。
一方、S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bpを備えるフォワードプライマー(配列番号17)および5’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを備えるリバースプライマー(配列番号18)を用いたPCRによって、AL8遺伝子のORFの上流1bpから3029bpの領域(配列番号1)の5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するPCR産物(AL8p(3.0)フラグメント)を得た。同様に、配列番号19の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマー、および配列番号21の塩基配列からなるフォワードプライマーと配列番号22の塩基配列からなるリバースプライマーを用いたPCRによって、AL12遺伝子のORFの上流1bpから3033bpの領域(配列番号3)の5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するPCR産物(AL12p(3.0)フラグメント)およびAL13遺伝子のORFの上流1bpから3056bpの領域(配列番号4)の5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するPCR産物(AL13p(3.0)フラグメント)を得た。
前述の(形質転換体の製造)において、各EGFP発現ベクターを制限酵素NotIで消化したものを添加する代わりに、ここで得られた各PCR産物を添加する事により形質転換体を得た。leu1フラグメント、EGFP+LPIt+top2フラグメントおよびAL8p(3.0)フラグメントを添加して得られた形質転換体をAL8株、leu1フラグメント、EGFP+LPIt+top2フラグメントおよびAL12p(3.0)フラグメントを添加して得られた形質転換体をAL12株、およびleu1フラグメント、EGFP+LPIt+top2フラグメントおよびAL13p(3.0)フラグメントを添加して得られた形質転換体をAL13株とした。
(EGFP発現量の比較)
前記で得られた各形質転換体および非EGFP生産株であるS.ポンベの野生株(ARC032株)をそれぞれ試験管内の5mLのYES培地に植菌し、32℃で一晩前培養を行った。次いで、前培養液を、EMM w/o Nitorgen培地に硫安40mMを添加した硫安含有培地、EMM w/o Nitorgen培地に硫安2mMを添加した窒素源飢餓培地、またはEMM w/o Nitorgen培地に硫安10mMとアラントイン20mMを添加したアラントイン含有培地に植菌し、32℃で3日間培養した。ただし、野生株とhCMV株は、硫安含有培地でのみ培養した。培養終了時点における各培養液の菌体密度(OD660)およびGFP蛍光強度(励起波長490nm、蛍光波長530nm)をMTP−810Lab(コロナ電気社製、日本)により測定して、各形質転換体および宿主株のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660、細胞当りのEGFP生産量を反映)を算出した。結果を図3に示す。
図中、「40mM (NHSO」は硫安含有培地の結果を、「2mM (NHSO」は窒素飢餓培地の結果を、「10mM (NHSO+20mM Allantoin」はアラントイン含有培地の結果をそれぞれ示す。AL8株、AL9株、AL12株、AL13株、およびAL14株は、窒素源飢餓培地ではEGFPの発現誘導がみられなかったが、アラントイン含有培地ではEGFPの発現誘導が観察された。一方、いずれの株においても、硫安含有培地におけるEGFPの発現誘導レベルは、各々のアラントイン含有培地におけるEGFPの発現誘導レベルより低かった。該結果から、この5つの遺伝子のプロモーターが、アラントインにより発現を誘導する誘導型プロモーターであることが確認された。また、AL8株、AL9株、AL12株、およびAL14株は、硫安含有培地におけるEGFPの発現量が宿主株と同程度であったが、AL13株は、硫安含有培地でもEGFPの発現が観察され、非誘導条件における発現抑制が他の4つのプロモーターよりも弱かった。
[実施例3]
hCMVプロモーターと置換するAL8遺伝子のORFの上流側の領域の範囲を段階的に短くすることにより、AL8遺伝子のプロモーター領域を検討した。
S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bpを備えるフォワードプライマーおよび5’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを備えるリバースプライマーを用いたPCRによって、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するAL8遺伝子のプロモーター領域の各PCR産物を得た。具体的には、AL8遺伝子のプロモーター長が0.3kbp(ORFの5’末端の上流1〜302bpの領域、すなわち、配列番号1中、2728〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(0.3)フラグメント)を配列番号23の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.4kbp(ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域、すなわち、配列番号1中、2630〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(0.4)フラグメント)を配列番号24の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.5kbp(ORFの5’末端の上流1〜500bpの領域、すなわち、配列番号1中、2530〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(0.5)フラグメント)を配列番号25の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.6kbp(ORFの5’末端の上流1〜600bpの領域、すなわち、配列番号1中、2430〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(0.6)フラグメント)を配列番号26の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.7kbp(ORFの5’末端の上流1〜700bpの領域、すなわち、配列番号1中、2330〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(0.7)フラグメント)を配列番号27の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.8kbp(ORFの5’末端の上流1〜800bpの領域、すなわち、配列番号1中、2230〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(0.8)フラグメント)を配列番号28の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.9kbp(ORFの5’末端の上流1〜900bpの領域、すなわち、配列番号1中、2130〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(0.9)フラグメント)を配列番号29の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.0kbp(ORFの5’末端の上流1〜1000bpの領域、すなわち、配列番号1中、2030〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(1.0)フラグメント)を配列番号30の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.5kbp(ORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域、すなわち、配列番号1中、1530〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(1.5)フラグメント)を配列番号31の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.0kbp(ORFの5’末端の上流1〜2000bpの領域、すなわち、配列番号1中、1030〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(2.0)フラグメント)を配列番号32の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、および2.5kbp(ORFの5’末端の上流1〜2500bpの領域、すなわち、配列番号1中、530〜3029番目の領域)のPCR産物(AL8p(2.5)フラグメント)を配列番号33の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号18の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、それぞれPCRを行い、各PCR産物を得た。
前記で得られたPCR産物それぞれをleu1フラグメントおよびEGFP+LPIt+top2フラグメントと混合し、実施例2と同様にギャップリペアクローニング法にてARC001株に導入して形質転換体を作製した。作製した各形質転換体と実施例2で作製したAL8株(プロモーター長:3.0kbp)を、試験管内の5mLのYES培地に植菌し、32℃で一晩前培養を行った。次いで、該前培養液を、EMM w/o Nitorgen培地に硫安40mMを添加した硫安含有EMM培地、またはEMM w/o Nitorgen培地にアラントイン20mMを添加したアラントイン含有EMM培地に植菌し、32℃で3日間培養し、培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図4に示す。図中、「(NHSO」は硫安含有EMM培地の結果を、「Allantoin」はアラントイン含有EMM培地の結果をそれぞれ示す。hCMVプロモーター領域を、AL8遺伝子のORFの5’末端の上流の領域のうちの0.3kbpのみで置換した形質転換体では、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でEGFPの発現量に差がなく、アラントインによる誘導型プロモーター活性は失われていたが、その他の形質転換体では、アラントイン含有EMM培地のほうがEGFPの発現量が多く、アラントインによる発現誘導が観察された。また、誘導型プロモーター活性は、プロモーター長が0.5kbp(ORFの5’末端の上流1〜500bpの領域)で最大となり、それ以上プロモーター長を長くしても、活性は低下する傾向にあった。
[実施例4]
hCMVプロモーターと置換するAL9遺伝子のORFの上流側の領域の範囲を段階的に短くすることにより、AL9遺伝子のプロモーター領域を検討した。
S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bpを備えるフォワードプライマーおよび5’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを備えるリバースプライマーを用いたPCRによって、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するAL9遺伝子のプロモーター領域の各PCR産物を得た。具体的には、AL9遺伝子のプロモーター長が0.4kbp(ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域、すなわち、配列番号2中、1101〜1500番目の領域)のPCR産物(AL9p(0.4)フラグメント)を配列番号34の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号35の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.5kbp(ORFの5’末端の上流1〜503bpの領域、すなわち、配列番号2中、998〜1500番目の領域)のPCR産物(AL9p(0.5)フラグメント)を配列番号36の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号35の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.0kbp(ORFの5’末端の上流1〜1005bpの領域、すなわち、配列番号2中、496〜1500番目の領域)のPCR産物(AL9p(1.0)フラグメント)を配列番号37の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号35の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、それぞれPCRを行い、各PCR産物を得た。
前記で得られたPCR産物それぞれをleu1フラグメントおよびEGFP+LPIt+top2フラグメントと混合し、実施例2と同様にギャップリペアクローニング法にて、ARC001株に導入して形質転換体を作製した。作製した各形質転換体と実施例2で作製したAL9株(プロモーター長:1.5kbp)について、実施例3と同様にして、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でそれぞれ培養し、培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図5に示す。hCMVプロモーター領域を、AL9遺伝子のORFの5’末端の上流の領域のうちの0.4kbpのみで置換した形質転換体では、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でEGFPの発現量に差がなく、アラントインによる誘導型プロモーター活性は失われていたが、その他の形質転換体では、アラントイン含有EMM培地のほうがEGFPの発現量が多く、アラントインによる発現誘導が観察された。また、誘導型プロモーター活性は、プロモーター長が0.5〜1.5kbpで概ね変わらなかったが、1.0kbp(ORFの5’末端の上流1〜1000bpの領域)で最大となった。
[実施例5]
hCMVプロモーターと置換するAL12遺伝子のORFの上流側の領域の範囲を段階的に短くすることにより、AL12遺伝子のプロモーター領域を検討した。
S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bpを備えるフォワードプライマーおよび5’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを備えるリバースプライマーを用いたPCRによって、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するAL12遺伝子のプロモーター領域の各PCR産物を得た。具体的には、AL12遺伝子のプロモーター長が1.4kbp(ORFの5’末端の上流1〜1400bpの領域、すなわち、配列番号3中、1634〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(1.4)フラグメント)を配列番号38の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.5kbp(ORFの5’末端の上流1〜1500bpの領域、すなわち、配列番号3中、1534〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(1.5)フラグメント)を配列番号39の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.6kbp(ORFの5’末端の上流1〜1600bpの領域、すなわち、配列番号3中、1434〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(1.6)フラグメント)を配列番号40の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.7kbp(ORFの5’末端の上流1〜1700bpの領域、すなわち、配列番号3中、1334〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(1.7)フラグメント)を配列番号41の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.8kbp(ORFの5’末端の上流1〜1800bpの領域、すなわち、配列番号3中、1234〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(1.8)フラグメント)を配列番号42の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.9kbp(ORFの5’末端の上流1〜1900bpの領域、すなわち、配列番号3中、1134〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(1.9)フラグメント)を配列番号43の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.0kbp(ORFの5’末端の上流1〜2004bpの領域、すなわち、配列番号3中、1030〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.0)フラグメント)を配列番号44の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.1kbp(ORFの5’末端の上流1〜2100bpの領域、すなわち、配列番号3中、934〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.1)フラグメント)を配列番号45の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.2kbp(ORFの5’末端の上流1〜2200bpの領域、すなわち、配列番号3中、834〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.2)フラグメント)を配列番号46の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.3kbp(ORFの5’末端の上流1〜2300bpの領域、すなわち、配列番号3中、734〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.3)フラグメント)を配列番号47の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.4kbp(ORFの5’末端の上流1〜2400bpの領域、すなわち、配列番号3中、634〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.4)フラグメント)を配列番号48の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.5kbp(ORFの5’末端の上流1〜2500bpの領域、すなわち、配列番号3中、534〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.5)フラグメント)を配列番号49の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.7kbp(ORFの5’末端の上流1〜2700bpの領域、すなわち、配列番号3中、334〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.7)フラグメント)を配列番号50の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.8kbp(ORFの5’末端の上流1〜2800bpの領域、すなわち、配列番号3中、234〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.8)フラグメント)を配列番号51の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.9kbp(ORFの5’末端の上流1〜2900bpの領域、すなわち、配列番号3中、134〜3033番目の領域)のPCR産物(AL12p(2.9)フラグメント)を配列番号52の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号20の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、それぞれPCRを行い、各PCR産物を得た。
前記で得られたPCR産物それぞれをleu1フラグメントおよびEGFP+LPIt+top2フラグメントと混合し、実施例2と同様にギャップリペアクローニング法にて、ARC001株に導入して形質転換体を作製した。作製した各形質転換体と実施例2で作製したAL12株(プロモーター長:3.0kbp)について、実施例3と同様にして、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でそれぞれ培養し、培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図6に示す。hCMVプロモーター領域を、AL12遺伝子のORFの5’末端の上流の領域のうちの1.4kbpのみで置換した形質転換体では、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でEGFPの発現量に差がなく、アラントインによる誘導型プロモーター活性は失われていたが、その他の形質転換体では、アラントイン含有EMM培地のほうがEGFPの発現量が多く、アラントインによる発現誘導が観察された。また、誘導型プロモーター活性は、プロモーター長が1.9kbp(ORFの5’末端の上流1〜1900bpの領域)で最大となったが、ばらつきが大きかった。また、プロモーター長が2.1〜3.0kbpでは、誘導型プロモーター活性は概ね変わらなかった。
[実施例6]
hCMVプロモーターと置換するAL13遺伝子のORFの上流側の領域の範囲を段階的に短くすることにより、AL13遺伝子のプロモーター領域を検討した。
S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bpを備えるフォワードプライマーおよび5’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを備えるリバースプライマーを用いたPCRによって、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するAL13遺伝子のプロモーター領域の各PCR産物を得た。具体的には、AL13遺伝子のプロモーター長が0.2kbp(ORFの5’末端の上流1〜206bpの領域、すなわち、配列番号4中、2851〜3056番目の領域)のPCR産物(AL13p(0.2)フラグメント)を配列番号53の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号22の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.3kbp(ORFの5’末端の上流1〜300bpの領域、すなわち、配列番号4中、2757〜3056番目の領域)のPCR産物(AL13p(0.3)フラグメント)を配列番号54の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号22の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.4kbp(ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域、すなわち、配列番号4中、2657〜3056番目の領域)のPCR産物(AL13p(0.4)フラグメント)を配列番号55の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号22の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.5kbp(ORFの5’末端の上流1〜503bpの領域、すなわち、配列番号4中、2554〜3056番目の領域)のPCR産物(AL13p(0.5)フラグメント)を配列番号56の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号22の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.0kbp(ORFの5’末端の上流1〜1033bpの領域、すなわち、配列番号4中、2024〜3056番目の領域)のPCR産物(AL13p(1.0)フラグメント)を配列番号57の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号22の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、2.0kbp(ORFの5’末端の上流1〜2001bpの領域、すなわち、配列番号4中、1056〜3056番目の領域)のPCR産物(AL13p(2.0)フラグメント)を配列番号58の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号22の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、それぞれPCRを行い、各PCR産物を得た。
前記で得られたPCR産物それぞれをleu1フラグメントおよびEGFP+LPIt+top2フラグメントと混合し、実施例2と同様にギャップリペアクローニング法にて、ARC001株に導入して形質転換体を作製した。作製した各形質転換体と実施例2で作製したAL13株(プロモーター長:3.0kbp)について、実施例3と同様にして、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でそれぞれ培養し、培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図7に示す。hCMVプロモーター領域を、AL13遺伝子のORFの5’末端の上流の領域のうちの0.2kbpのみで置換した形質転換体では、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でEGFPの発現量に差がなく、アラントインによる誘導型プロモーター活性は失われていたが、その他の形質転換体では、アラントイン含有EMM有培地のほうがEGFPの発現量が多く、アラントインによる発現誘導が観察された。また、誘導型プロモーター活性は、プロモーター長により変動し、プロモーター長2.0kbp(ORFの5’末端の上流1〜2000bpの領域)で活性が強く、かつ安定していた。
[実施例7]
hCMVプロモーターと置換するAL14遺伝子のORFの上流側の領域の範囲を段階的に短くすることにより、AL14遺伝子のプロモーター領域を検討した。
S.ポンベの野生株(ARC032株)由来のゲノムDNAを鋳型とし、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bpを備えるフォワードプライマーおよび5’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを備えるリバースプライマーを用いたPCRによって、5’末端にleu1フラグメントの3’末端との相同領域24bp、3’末端にEGFP+LPIt+top2フラグメントの5’末端との相同領域24bpを有するAL14遺伝子のプロモーター領域の各PCR産物を、次のようなプライマーの組合せで得た。具体的には、AL14遺伝子のプロモーター長が0.3kbp(ORFの5’末端の上流1〜300bpの領域、すなわち、配列番号5中、1201〜1500番目の領域)のPCR産物(AL14p(0.3)フラグメント)を配列番号59の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号60の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.4kb(ORFの5’末端の上流1〜400bpの領域、すなわち、配列番号5中、1101〜1500番目の領域)のPCR産物(AL14p(0.4)フラグメント)を配列番号61の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号60の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、0.5kb(ORFの5’末端の上流1〜505bpの領域、すなわち、配列番号5中、996〜1500番目の領域)のPCR産物(AL14p(0.5)フラグメント)を配列番号62の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号60の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、1.0kb(ORFの5’末端の上流1〜1000bpの領域、すなわち、配列番号5中、501〜1500番目の領域)のPCR産物(AL14p(1.0)フラグメント)を配列番号63の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号60の塩基配列からなるリバースプライマーの組合せで、それぞれPCRを行い、各PCR産物を得た。
前記で得られたPCR産物それぞれをleu1フラグメントおよびEGFP+LPIt+top2フラグメントと混合し、実施例2と同様にギャップリペアクローニング法にて、ARC001株に導入して形質転換体を作製した。作製した各形質転換体と実施例2で作製したAL14株(プロモーター長:1.5kbp)について、実施例3と同様にして、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でそれぞれ培養し、培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図8に示す。hCMVプロモーター領域を、AL14遺伝子のORFの5’末端の上流の領域のうちの0.3kbpのみで置換した形質転換体では、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地でEGFPの発現量に差がなく、アラントインによる誘導型プロモーター活性は失われていたが、その他の形質転換体では、アラントイン含有EMM培地のほうがEGFPの発現量が多く、アラントインによる発現誘導が観察された。また、AL14遺伝子のORFの5’末端の上流の領域のうちの0.4kbpで置換した発現ベクターでは、硫安含有EMM培地とアラントイン含有EMM培地の両方でプロモーター活性が向上しており、非誘導条件における発現抑制が弱まった。さらに、プロモーター長0.5〜1.5kbpでは、誘導型プロモーター活性は概ね変わらなかった。
[実施例8]
実施例3においてAL8p(0.5)フラグメントを用いて作製した形質転換体(AL8(0.5)株)、実施例4においてAL9p(1.0)フラグメントを用いて作製した形質転換体(AL9(1.0)株)、実施例5においてAL12p(2.5)フラグメントを用いて作製した形質転換体(AL12(2.5)株)、実施例6においてAL13p(2.0)フラグメントを用いて作製した形質転換体(AL13(2.0)株)、および実施例2で作製したAL14株における、アラントイン濃度と発現誘導活性の関係を調べた。
具体的には、各形質転換体を、それぞれ、EMM w/o Nitorgen培地に硫安40mMを添加した硫安含有培地、またはEMM w/o Nitorgen培地に硫安10mMとアラントインを0.8mM、4mM、もしくは20mMを添加したアラントイン含有培地で32℃、2日間培養し、実施例2と同様にして、培養終了時点における培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図9に示す。図中、「0mM」は硫安含有培地の結果を、「0.8mM」は硫安10mMとアラントイン0.8mMを添加したアラントイン含有培地の結果を、「4mM」は硫安10mMとアラントイン4mMを添加したアラントイン含有培地の結果を、「20mM」は硫安10mMとアラントイン20mMを添加したアラントイン含有培地の結果を、それぞれ示す。図9に示すように、各誘導型プロモーターのプロモーター活性は、アラントイン濃度が高いほど高くなる傾向が観察されたが、プロモーター活性の増大の程度は、アラントイン濃度増加量ほどの差はなかった。
[実施例9]
AL8(0.5)株、AL9(1.0)株、AL12(2.5)株、AL13(2.0)株、およびAL14株における、硫安濃度とアラントインによる発現誘導活性の関係を調べた。
具体的には、各形質転換体を、それぞれ、EMM w/o Nitorgen培地に硫安40mMを添加した硫安含有培地、EMM w/o Nitorgen培地にアラントイン20mMを添加したアラントイン含有培地、またはEMM w/o Nitorgen培地にアラントイン20mMと硫安を2mM、10mM、もしくは40mMを添加したアラントイン含有培地で32℃、2日間培養し、実施例2と同様にして、培養終了時点における培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図10に示す。図中、「w/o Alla」は硫安含有培地の結果を、「0mM」はEMM培地にアラントイン20mMのみを添加したアラントイン含有培地の結果を、「2mM」は硫安2mMとアラントイン20mMを添加したアラントイン含有培地の結果を、「10mM」は硫安10mMとアラントイン20mMを添加したアラントイン含有培地の結果を、「50mM」は硫安50mMとアラントイン20mMを添加したアラントイン含有培地の結果を、それぞれ示す。図10に示すように、硫安濃度が高いほどアラントインによる発現誘導活性は低下する傾向にあったが、該発現誘導活性は高濃度の硫安(50mM)の存在下であっても完全に抑制されることはなかった。
[実施例10]
AL8(0.5)株、AL9(1.0)株、AL12(2.5)株、AL13(2.0)株、およびAL14株における、アラントイン以外の窒素源の存在下におけるアラントインによる発現誘導活性を調べた。
具体的には、各形質転換体を、それぞれ、YPD培地、YPD培地にアラントイン20mMを添加したアラントイン含有YPD培地、EMM w/o Nitorgen培地に硫安40mMを添加した硫安含有EMM培地、またはEMM w/o Nitorgen培地にアラントイン20mMを添加したアラントイン含有EMM培地で32℃、2日間培養し、実施例2と同様にして、培養終了時点における培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図11に示す。図11(A)および(B)は、それぞれ、培養後1日目および2日目の結果を示す。また、図中、「YPD」はYPD培地の結果を、「YPD+Alla」はアラントイン含有YPD培地の結果を、「EMM+NH」は硫安含有EMM培地の結果を、「EMM+Alla」はアラントイン含有EMM培地の結果を、それぞれ示す。図11に示すように、YPD培地のように多様な窒素源を含む培地であっても、アラントインを添加することによる発現誘導が確認できた。AL9(1.0)株およびAL14(1.0)株においては、培養2日目時点で、アラントイン含有YPD培地のほうがアラントイン含有EMM培地よりも高いEGFP発現量を示した。一方、AL8(0.5)株、AL12(2.5)株、およびAL13(2.0)株においては、YPD培地にアラントインを添加した場合には、EMM培地にアラントインを添加した場合よりも、誘導時のプロモーター活性が弱かった。
[実施例11]
AL8(0.5)株、AL9(1.0)株、AL12(2.5)株、AL13(2.0)株、およびAL14株において、YPD培地で培養後にアラントイン含有培地を添加する事により、発現誘導が起きるかを調べた。
具体的には、各形質転換体を、YPD培地で32℃、1日間培養した後、YPD培地の3倍量のアラントイン含有EMM培地を添加して、さらに32℃、1日間の計2日間培養し、実施例2と同様にして、各培養終了時点における培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図12に示す。図中、「YPD(1d)」はYPD培地で1日間培養した結果を、「YPD+3×(EMM+Alla)(2d)」はYPD培地で1日間培養後にYPD培地の3倍量のアラントイン含有EMM培地を添加し、さらに1日間培養した培養2日目の結果を、それぞれ示す。図12に示すように、YPD培地中での培養により、培養1日目はEGFPの発現量が抑制されているが、アラントイン含有EMM培地で希釈した後の培養2日目では、EGFPの発現誘導が観察された。以上のように、AL8プロモーター等のアラントインによる発現誘導は、アラントイン以外の窒素源存在下でも起こるため、YPD培地等の増殖用培地に培養後にアラントインを添加することによって、培地交換をせずとも発現誘導が可能であることが確認できた。
[実施例12]
AL8(0.5)株、AL9(1.0)株、AL12(2.5)株、AL13(2.0)株、およびAL14株における、アラントイン添加による発現誘導に要する時間を調べた。対照として、実施例2で作製したhCMV株を用いた。
具体的には、各形質転換体をそれぞれ試験管内の5mLの硫安含有EMM培地に植菌し、32℃で一晩前培養を行った。次いで、前培養液を、坂口フラスコ内の100mLのアラントイン含有EMM培地に植菌し、32℃で1日間培養した。アラントイン含有EMM培地に植菌前(アラントイン含有EMM培地に植菌後0分)、アラントイン含有EMM培地に植菌してから15分後、30分後、60分後、120分後、240分後、および1日後の各時点において、培養液の一部を採取し、定量的RT−PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)法によりEGFPのmRNA量を測定した。act1遺伝子のmRNAを同様にして測定し、内部標準として用いた。
定量的RT−PCRは、具体的には、まず、High−Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Life technologies社製、米国)を用いて、各形質転換体の培養菌体から抽出した各RNAサンプルよりcDNAを調製した。act1遺伝子の検出には、配列番号64の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号65の塩基配列からなるリバースプライマーを、EGFP遺伝子の検出には配列番号66の塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号67の塩基配列からなるリバースプライマーを用い、THUNDERBIRD qPCR Mix(東洋紡社製、日本)とMx3000P QPCR System(Agilent Technologies社製、米国)を用いて、各cDNAサンプルを鋳型とした定量PCRを実施した。Mx3000P QPCR Systemに付属のソフトウェアに従ってact1遺伝子のmRNA転写量を内部標準としたEGFP遺伝子のmRNA相対転写量を算出し、hCMV株のアラントイン含有EMM培地に植菌前のEGFPのmRNA量を1として各培養菌体のEGFP遺伝子のmRNA転写量を相対比較した。
図13に、各形質転換体におけるEGFPのmRNAの相対量を算出した結果を示す。AL8(0.5)株、AL9(1.0)株、AL12(2.5)株、AL13(2.0)株、およびAL14株の全てにおいて、アラントイン添加後15分でEGFPの転写が開始されており、gld1プロモーター等のS.ポンベ由来の従来の誘導型プロモーターと比べて非常に迅速な応答を示した。また、今回の条件では、アラントイン添加後数十分から数時間でmRNA転写量はピークを示し、その後低下した。特にAL12株では、アラントイン添加後1日経過後のmRNAの減少量が顕著だった。
[実施例13]
AL8(0.5)株、AL9(1.0)株、AL12(2.5)株、AL13(2.0)株、およびAL14株において、アラントイン酸によって発現誘導が起こるかを調べた。
具体的には、各形質転換体を、それぞれ、EMM w/o Nitorgen培地に硫安40mMを添加した硫安含有EMM培地、EMM w/o Nitorgen培地にアラントイン20mMを添加したアラントイン含有EMM培地、またはEMM w/o Nitorgen培地にアラントイン酸20mMを添加したアラントイン酸含有EMM培地で32℃、1日間培養し、実施例2と同様にして、培養終了時点における培養液のOD660当りのGFP蛍光強度(GFP/OD660)を算出した。結果を図14に示す。図14に示すように、全ての形質転換体において、アラントイン酸の添加によるEGFPの発現誘導が確認された。つまり、アラントイン酸は、アラントインと同様に、AL8遺伝子のプロモーター、AL9遺伝子のプロモーター、AL12遺伝子のプロモーター、AL13遺伝子のプロモーター、およびAL14遺伝子のプロモーターに対して、発現を誘導する誘導物質となり得ることがわかった。

Claims (11)

  1. シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、およびSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターからなる群より選択されるプロモーターであって、該プロモーターと該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子とを有する形質転換体において、アラントインおよびアラントイン酸からなる群より選択される1種以上により前記外来遺伝子の発現を誘導するプロモーターとして使用されるプロモーターであることを特徴とする、誘導型プロモーター。
  2. 前記SPAC29B12.14c遺伝子のプロモーターの領域が、
    (1)配列番号1で表される塩基配列、
    (2)配列番号1で表される塩基配列の部分配列であって、2630〜3029番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
    (3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
    からなる、請求項1に記載の誘導型プロモーター。
  3. 前記SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーターの領域が、
    (1)配列番号2で表される塩基配列、
    (2)配列番号2で表される塩基配列の部分配列であって、1001〜1500番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
    (3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
    からなる、請求項1に記載の誘導型プロモーター。
  4. 前記SPAC1399.01c遺伝子のプロモーターの領域が、
    (1)配列番号3で表される塩基配列、
    (2)配列番号3で表される塩基配列の部分配列であって、1534〜3033番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
    (3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
    からなる、請求項1に記載の誘導型プロモーター。
  5. SPAC1F7.12遺伝子のプロモーターの領域が、
    (1)配列番号4で表される塩基配列、
    (2)配列番号4で表される塩基配列の部分配列であって、2757〜3056番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
    (3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
    からなる、請求項1に記載の誘導型プロモーター。
  6. SPAC19G12.03遺伝子のプロモーターの領域が、
    (1)配列番号5で表される塩基配列、
    (2)配列番号5で表される塩基配列の部分配列であって、1101〜1500番目の塩基からなる領域を含む塩基配列、または
    (3)前記(1)または(2)の塩基配列とホモロジーが80%以上である塩基配列からなり、かつアラントインまたはアラントイン酸により発現を誘導するプロモーター活性を有する塩基配列
    からなる、請求項1に記載の誘導型プロモーター。
  7. プロモーターと、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子とを有し、
    前記プロモーターが、シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、またはSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターであることを特徴とする、発現カセット。
  8. プロモーターと、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子を導入するためのクローニングサイトと、シゾサッカロミセス属酵母内で機能しうるターミネーターとを有し、
    前記プロモーターが、シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、またはSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターであることを特徴とする、クローニングベクター。
  9. シゾサッカロミセス・ポンベのSPAC29B12.14c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.09c遺伝子のプロモーター、SPAC1399.01c遺伝子のプロモーター、SPAC1F7.12遺伝子のプロモーター、またはSPAC19G12.03遺伝子のプロモーターと、該プロモーターの下流に位置しかつ該プロモーターによって支配される外来構造遺伝子と、ターミネーターを含む発現カセットを有することを特徴とするシゾサッカロミセス属酵母の形質転換体。
  10. 前記シゾサッカロミセス属酵母がシゾサッカロミセス・ポンベである、請求項9に記載の形質転換体。
  11. 請求項9または10に記載の形質転換体を、アラントインおよびアラントイン酸からなる群より選択される1種以上を含有する培養液中で培養し、得られた菌体または培養液上清から、前記外来構造遺伝子がコードする蛋白質を取得することを特徴とする蛋白質の生産方法。
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