JP2006075123A - キャンディダ・ユティリス由来のプロモーターdna - Google Patents
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Abstract
キャンディダ・ユティリスに導入した異種または同種遺伝子の発現を高める、キャンディダ・ユティリス由来の、高活性のプロモーターDNAを提供する。
【解決手段】
キャンディダ・ユティリス染色体遺伝子由来の、1405bpおよび1415bpのリボソームタンパク質遺伝子プロモーター配列。
【選択図】
なし。
Description
用いるプロモーターの強度に依存して形質転換効率が向上するという報告もあり(Yeast 1997 13 551 )、前記の耐性遺伝子を含めてマーカー遺伝子の発現には、GAP(グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ)、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)、CYC1(チトクロームC)、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)などの強力なプロモーターがよく用いられている。
アルコールで誘導されるADH以外は構成的な転写活性を有するプロモーターであるが、薬剤存在下では生育の遅延が起こることから明らかなように、細胞にはかなりの負荷がかかっており、必ずしもそれらのプロモーターが薬剤の選択圧下で十分な転写活性を発揮しているとは限らない。
よって、キャンディダ・ユティリスにおいて効率的形質転換系を構築するために、選択圧下で良好に機能する、薬剤耐性マーカーの発現に適したキャンディダ・ユティリス由来のプロモーターが望まれていた。
また、本発明は、それらのDNA配列の下流に同種または異種遺伝子を含むプラスミドに係るものである。
さらに、本発明は、シクロヘキシミドにより誘導されるリボソームタンパク質遺伝子のプロモーター、特にキャンディダ・ユティリス由来のプロモーターを、薬剤耐性遺伝子、たとえばシクロヘキシミド耐性遺伝子の発現に用いるキャンディダ・ユティリスの形質転換系に係るものである。
本発明のプロモーター活性を有するDNAは、キャンディダ・ユティリスIAM4264株の染色体遺伝子よりスクリーニングされたもので、リボソームタンパク質遺伝子の上流に位置し、プロモーター領域を含む。プロモーター配列の具体例としては、配列番号1並びに2、およびプロモーター活性を有するそれらの部分配列が挙げられる。
1.ゲノムライブラリーの構築
キャンディダ・ユティリスのゲノムDNAを予め選択してある制限酵素で処理し、適当なサイズのDNAを分取して、後述するプロモータースクリーニング用プラスミドYRpΔP−YAPに連結した(図1)。このライゲーション液を用いて大腸菌を形質転換し、薬剤耐性マーカーを利用して得られたコロニーからDNAを回収してゲノムDNAライブラリーとした。
ここで用いたプロモータースクリーニング用のプラスミド(YRpΔP−YAP)は、キャンディダ・ユティリスで機能する自律複製起点と、プロモーター領域を欠いた薬剤耐性遺伝子を含んでなる。このプラスミドは、自律複製起点を持ちキャンディダ・ユティリス細胞内で染色体とは独立して複製可能であるが、プロモーター配列を欠き薬剤耐性遺伝子の転写が行われず、よってこのプラスミドを保有する酵母細胞は該薬剤を含む培地上には生育できない。このプラスミドの薬剤耐性遺伝子の上流にある制限酵素サイトを用いて作成したキャンディダ・ユティリスのゲノムDNAライブラリーを、キャンディダ・ユティリス細胞へ導入し、該薬剤耐性コロニーを選択することで、プロモーター活性を持ったDNA断片を取得することが可能である。
薬剤耐性マーカー遺伝子としてはキャンディダ・ユティリス由来の酵母AP−1様転写因子をコードするYAP1遺伝子を用いた(特許出願中)。シクロヘキシミド耐性の成立には、YAP1遺伝子の高発現が必要であり、この遺伝子をレポーターとして用いることで、マーカー遺伝子の発現に適した高活性のプロモーターが取得できるものと期待される。
DNAライブラリーをキャンディダ・ユティリスに酢酸リチウム法で導入し、シクロヘキシミド耐性コロニーを取得した。その中で高いシクロヘキシミド耐性を示したものについてプラスミドを回収し、インサートサイズやキャンディダ・ユティリスへの形質転換能の有無を調べた。
インサートサイズが小さく良好なシクロヘキシミド耐性を示したP2−1とP2−33についてさらに詳細な解析を行った。
適当な制限酵素を用いて、プロモーター活性を有するDNA断片内の上流部位を欠失させた数種の変異体を作成し、それらの形質転換体のシクロヘキシミド耐性能を調べることでプロモーター機能領域の特定を行った。
短縮化したP2−1−2(約500bp)やP2−33−2(約1.4kbp)由来のクローンはいずれも欠失前と同じ75μg/mlの高いシクロヘキシミド耐性を示し、このDNA断片にプロモーターの機能領域が存在することが明らかとなった。またこれらは、比較対照として用いたGAPプロモーター由来のクローンと同等以上の耐性を示した。
次に得られたプロモーター活性を示すDNA断片の塩基配列を決定した。塩基配列の解読にはキャピラリーDNAシーケンサー(ABI)を用いた。P2−1は配列番号1に示される1405bp、P2−33−2は配列番号2で示される1415bpの配列から構成されていた。
inverse−PCRによりプロモーター下流遺伝子の特定を行った。この方法は既に塩基配列が分かっているDNA断片の両端の配列を基に、それぞれ逆向きになるようにプライマーを作成し、これらのプライマーを用いてPCRを行い、既知のDNA断片に隣接する遺伝子断片を取得する方法である。
キャンディダ・ユティリスのゲノムDNAを、P2−1、P2−33の両プロモータ配列内の下流領域を切断しないような制限酵素で消化し、セルフライゲーションにより自己環状化させた。このDNAを鋳型として上記の様なプライマーを用いてPCRを行い、各プロモーター遺伝子を含む遺伝子断片を増幅した。
増幅したDNA断片の部分塩基配列を解読することで、プロモーター遺伝子を含むDNA断片であることを確認するとともに、その遺伝子から推定されるアミノ酸配列を基にデーターベースによるホモロジー検索を行い、遺伝子を同定した。
ともに下流遺伝子はリボソーム大サブユニットを構成するタンパク質の遺伝子であり、P2−1はリボソームタンパク質L31遺伝子、P2−33はリボソームタンパク質L29遺伝子であった。
まず、プロモーターの活性測定を行った。対象とするプロモーターの下流にレポーター遺伝子を連結して、その酵素活性を測定することで、プロモーターの転写活性を定量化した。レポーターとしてはβーガラクトシダーゼ遺伝子を用いた。
βーガラクトシダーゼ活性測定用ベクターにはYIplacZを用いた(図5)。このベクターは、主に以下の三つの部分、すなわち(i)開始コドンを含むlacZ遺伝子とGAPターミネーターからなるレポーターセットと、(ii)GAPプロモーターとバクテリア由来のKANMXおよびホスホグリセリン酸キナーゼのターミネーターからなるキメラG418耐性マーカー遺伝子(出願中の特許参照)、および(iii)3−イソプロピルマレートデヒドロゲナーゼ遺伝子(3−IMDH)(J.General Microbiology 1987 133 1089)の部分配列からなる染色体組み込み用のDNAで構成されている。
PCRで取得した各種プロモーターDNA断片を、βーガラクトシダーゼ活性測定用ベクターのlacZ遺伝子直前に挿入した。これらのベクターをキャンディダ・ユティリスへ導入して得たG418耐性を示す形質転換体の中からサザン解析によりβーガラクトシダーゼ発現ベクターが染色体へ1コピー組み込まれたクローンを選択した。
これらのクローンについて通常の条件下と最少阻止濃度以下のシクロヘキシミド存在下でのβーガラクトシダーゼ活性を定量した結果、スクリーニングしたプロモーターでは、シクロヘキシミド存在下において選択圧のない条件に比べ約4〜5倍転写活性が増加することを明らかとした。
実施例1
1−1.ゲノムライブラリーの構築
プロモーターのスクリーニングに用いるキャンディダ・ユティリスのゲノムDNAライブラリーを作成した。
自律複製型の高発現プラスミドYRpGAP(特許出願中)のGAPプロモーター配列をPstIとEcoRIで消化した後、末端を平滑化して自己会合させることで除去し、次いでGAPターミネーター上流のSmaIとXbaIサイトにYAP1構造遺伝子(特許出願中)を連結して、プロモーターレスのプラスミド(YRpΔP−YAP)を作成した。
キャンディダ・ユティリスIAM4264株のゲノムDNAを、段階的に希釈したSau3AIで部分消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。1kbp前後のDNA断片をGENECLEANキット(QIAGENE製)を用いて回収して、YRpΔP−YAPのYAP1構造遺伝子の直前に存在するBglIIサイトに挿入した(図1)。
この反応液をエレクトロポレーションにて大腸菌TOP10F'に形質転換して、アンピシリン耐性コロニーを取得した。これらのコロニーを掻き集めて得た培養液を基に再度プレート上で菌体を増幅させDNAを回収して、ゲノムDNAライブラリーとした。得られたライブラリーの平均インサートサイズは1.0kbp、組み込み率は87.5%であった。
ゲノムライブリーDNA43.4μgを酢酸リチウム法でキャンディダ・ユティリスAHU3053株へ形質転換した。30℃、3日間の培養により、シクロヘキシミドを終濃度が4μg/mlとなるように添加したYPD寒天培地上に57個のコロニーが生育した。DNA無添加のコントロールでもコロニーの生育が認められたので自然耐性株が混入していると予想された。
そこで、得られた耐性株についてシクロヘキシミド添加培地でシングルコロニー化した後、各株のシクロヘキシミド耐性濃度を測定した。コントロールで得られた自然耐性株(10μg/mlまで生育)と比較して明らかに高い耐性(50μg/mlまで生育)を示した14株からプラスミドDNAを回収した。このうち酵母へ再度形質転換し耐性を付与できたものが12株であった。これらについて制限酵素消化によるフラグメント解析や、部分塩基配列の解析の結果、8種類に分類できることが明らかとなった。
このうちサイズが小さく、良好なシクロヘキシミド耐性を示した約1.4kbpのP2−1と約3.6kbpのP2−33についてさらに解析を進めた。
プロモーター活性を有するP2−1とP2−33のDNA断片について短縮化を行った。
数種のプロモーターの欠失変異体は、YAP1発現ベクターの各プロモーター内部の上流配列を、制限酵素を用いて欠失させ作成した。
P2−1については、プロモーター内部で切断するSmaI、EcoRI、XbaIサイトを利用し、SmaIからEcoRI部分を欠失させた約0.9kbpのDNA断片からなるP2−1−1を、SmaIからXbaI断片を欠失させた約0.5kbpのDNA断片からなるP2−1−2をそれぞれ有するYAP1発現ベクターを作成した。
同様にP2−33については、約1.3kbpのSmaIからEcoRI断片を削った約1.3kbpのDNA断片からなるP2−33−2を持つYAP1発現ベクターを作製した。
これらをAHU3053株に導入してシクロヘキシミド耐性株を取得した。比較としてGAPプロモーターによるYAP1発現ベクターを用いた。得られた形質転換体はシングルコロニー化した後、各種3〜6コロニーについてシクロヘキシミドに対する耐性能 (50,75,100μg/ml)を比較した。培養8日目における結果を図2に示した。
スクリーニングしたプロモーターおよびその上流領域を欠失させたプロモーターを持つ株では全て75μg/mlまで生育し、機能領域がP2−1ではP2−1−2に、P2−33ではP2−33−2に含まれると推定された。また、スクリーニングしたプロモーターはGAPプロモーター由来のクローンより生育速度が速くかつ高濃度のシクロヘキシミド耐性を示したことから、シクロヘキシミド存在下ではGAPプロモーターと同等以上の活性を持つことが示唆された。
次に得られたプロモーター活性を示すDNA断片の塩基配列を決定した。
プロモーター領域を含むP2−1フラグメントは、配列番号1で示される1405bpの塩基配列で構成されていた。一方、P2−33−2フラグメントは配列番号2で示される1415bpの塩基配列で構成されていた。
inverse−PCRによってプロモーター下流DNA断片を取得し、その塩基配列を解読することでプロモーター遺伝子の同定を行った。
さまざまな制限酵素でキャンディダ・ユティリスIAM4264のゲノムDNAを消化し、セルフライゲーションにより自己会合させた。この自己環状化させたゲノムDNA30ngを鋳型として、LA Taq polymerase(TAKARA製)を用いてPCRを行った。P2−1の下流DNA断片の取得には以下に示す、(1)と(2)を、同様にP2−33には(3)と(4)を用いた。
(1)P2−1up
5'-TTGCGGCCGCGCCGTTCACATCCTAATGCA-3'
(2)P2−1down
5'-TTGCGGCCGCCCCCATATACTCATCAAAGA-3'
(3)P2−33up
5'-TTGCGGCCGCGCTCCAATTGGCCCAGAAAA-3'
(4)P2−33down
5'-TTGCGGCCGCTAACGAACGCTTCCACACTG-3'
それぞれの末端にNotIサイトを付加してある。
これらの塩基配列の一部を解析し、推定されるアミノ酸配列を基にコンピューターを使ったホモロジー検索を行った結果、ともにリボソームの大サブユニットを構成するリボソームタンパク質と高い相同性を示した。P2−1とP2−33の下流遺伝子がコードするタンパク質はリボソームタンパク質L31、L29とそれぞれ極めて高い相同性を確認した(図3,4)。
以下、スクリーニングした各種プロモーターの機能を解析した。
2−1.プロモーター転写活性測定
プロモーター活性測定用ベクターを構築した。まずレポーター遺伝子をPCRにより取得した。鋳型には大腸菌のβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(LacZ)を保有するpMC1871を用いた。このLacZには開始コドンが存在しないので、BamHIサイトの直前に開始コドン(ATG)を付加した。
5'-AACTGCAGATGGATCCCGTCGTTTTACAACGTCGTG-3'
(6)lacZ−R
5'-GGTCTAGACGGTTATTATTATTTTTGACACCAGA-3'
上流にはPstIサイトを、下流にはXbaIサイトを付加するようにプライマーを設計した。
このLacZ遺伝子をpBluescriptIIに挿入し、その下流にGAPターミネーターと、相同組み換えのターゲットを有するキメラG418耐性選択マーカー(3−IMDH::Pgap−KANMX−Tpgk)とを順に連結して、LacZ活性測定用ベクターYIplacZを構築した(図5)。各種プロモーターDNAは以下のプライマーを用いたPCRにより増幅した。
5'-AGGGTCGACCCCGGGAGATCTTGCAATGCTCAG-3'
(8)P2−1−R
5'-AACTGCAGAGATCTGTTAGAAGACATCTTTGA-3'
(9)P2−33−2−F
5'-GAATTCGCGAAACGCTGCTCTGTG-3'
(10)P2−33−2−R
5'-AACTGCAGAGATCCTTTCAATTCAACATTTAA-3'
P2−1の上流にはSalIサイトを、P2−33−2の上流にはEcoRIサイトを、また、両断片の下流にはともにPstIサイトをそれぞれ付加するようにプライマーを設計した。
P2−1−2DNA断片は、クローニングしたP2−1をXbaIとEcoRVで消化し平滑化した後、セルフライゲーションを行うことで作成した。GAPプロモーターに関してはPCRで増幅したEcoRI−PstI断片を使用した(出願中の特許参照)。
以上の様に取得した各種プロモーター断片をYIplacZのLacZ遺伝子直前に挿入することで、各々のLacZ発現プラスミドを作成した。
P2−1−2,P2−33−2,Pgapの3種類のプロモーターを持った各YAP1発現プラスミドのキャンディダ・ユティリスAHU3053株に対する酢酸リチウム法による形質転換効率を調べた。結果を下表3に示した。
スクリーニングしたプロモーターが他の遺伝子に対しても転写活性を有するか確認した。P2−1−1の下流にG418耐性遺伝子(KANMX)を挿入した自律複製型のプラスミド(図6)を構築し、キャンディダ・ユティリスAHU3053株へ導入した。約0.2μg−DNAあたり650〜800個のG418耐性(40μg/ml)耐性株が出現した。P2−1−2が異種遺伝子に対しても転写活性を持つことが確認できた。
Claims (6)
- 以下の(a)または(b)のDNAからなる遺伝子。
(a)配列表の配列番号1に記載されるリボソームタンパク質L31遺伝子のプロモーター配列を有するDNA。
(b)(a)の塩基配列、またはその部分配列を含んでなるプロモーター活性を有するキャンディダ・ユティリス由来のDNA。 - 以下の(c)または(d)のDNAからなる遺伝子。
(c)配列表の配列番号2に記載されるリボソームタンパク質L29遺伝子のプロモーター配列を有するDNA。
(d)(c)の塩基配列、またはその部分配列を含んでなるプロモーター活性を有するキャンディダ・ユティリス由来のDNA。 - 請求項1または2記載のDNA断片と、その下流に同種または異種遺伝子を含むことを特徴とするプラスミド。
- シクロヘキシミドにより誘導されるリボソームタンパク質遺伝子のプロモーターを、薬剤耐性遺伝子の発現に用いるキャンディダ・ユティリスの形質転換系。
- 薬剤耐性遺伝子がシクロヘキシミド耐性遺伝子である請求項4の形質転換系。
- プロモーターがキャンディダ・ユティリスのリボソームタンパク質遺伝子のプロモーターである請求項4の形質転換系。
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