JP2007075013A - rDNAコピー数の増加した酵母及びその酵母の利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】 酵母細胞内のrDNAコピー数が安定に増加した酵母、およびその育種方法を提供すること、さらに該酵母を用いて酵素、食品を製造する方法を提供すること。
【解決手段】 FOB1遺伝子のコードするFob1タンパクが機能しなくなった酵母に、rDNAからなる分断染色体を保持させることにより、酵母細胞内のrDNAコピー数が増加した酵母を取得する。
【選択図】 図1
【解決手段】 FOB1遺伝子のコードするFob1タンパクが機能しなくなった酵母に、rDNAからなる分断染色体を保持させることにより、酵母細胞内のrDNAコピー数が増加した酵母を取得する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、rDNAコピー数の増加した酵母及びその酵母の利用に関するものである。具体的には、ゲノム上にコードされているrDNAのコピー数が増加した酵母、その育種方法、同酵母を利用してゲノム上の任意の塩基配列のコピー数を高める方法、同方法を利用した酵素発現系、およびそれらを用いた酵素や食品特に調味料の製造方法に関するものである。本発明で得られる酵母は、酵素発現系や食品特に調味料の分野で有用である。
生体内の蛋白質合成に不可欠なリボソームは、リボソーマルRNA(以下、rRNAと略することがある。) とリボソーマル蛋白から構成されており、通常、rRNAは、リボソーマルDNA(以下、rDNAと略することがある。)として染色体上にコードされている。サッカロミセス・セレビシエのrDNAクラスター(以下RDN1と略することがある。)は、第12番染色体上にコードされており、かつ、9.1kbpを一単位とするrDNA遺伝子が連続的に繰り返された形で構成されている(非特許文献1)。このrDNA遺伝子は、35S前駆rRNAと5SrRNAを転写する2つの転写領域とReplication fork barrier(以下RFBと略することがある)という領域を含むNTS1とARSを含むNTS2という2つの非転写領域で構成されている(図1)。なお、35S前駆rRNAと5SrRNAは、RNA polymerase I(以下、Pol Iと略することがある。)とRNA polymerase II(以下、Pol IIと略することがある。)の働きにより転写される(非特許文献2〜4)。
サッカロミセス・セレビシエのRDN1は、rDNA遺伝子約150コピーで構成されており、全染色体DNAの1割にあたる約1.5Mbpもの長い領域からなっている(非特許文献1)。その為、RDN1が長くなりすぎないように、rDNA遺伝子のコピー数は約150程度に厳格に制御されている。この制御には、シス配列としてRFBがかかわっている(非特許文献2〜4)。この領域は、rDNAにおける組み換えのhot spotであり、この領域における相同組み換えによりrDNAのコピー数が増減する。この相同組み換えには、トランスに作用する因子としてFOB1遺伝子がコードするFob1タンパクが必要であり、Fob1タンパクは、rDNA遺伝子の相同組み換え現象を促進する機能を有すると報告されている。RDN1中で増加しすぎたrDNA遺伝子は、Fob1タンパクにより染色体外環状rDNA(以下、ERCsと略することがある。)形成が促進され(非特許文献5)、その結果RDN1中のrDNA遺伝子コピー数が安定に保たれる。また、RDN1中のrDNA遺伝子の約50%が実際にrRNAへと転写されており、残りは転写されていないと報告されている(非特許文献6)。この事実からも、酵母細胞にとって、細胞内のrDNA遺伝子コピー数を増加させる積極的なメリットもないと考えられる。
上述のような技術的な背景から、安定にrDNAのコピー数が増加した酵母を取得することは極めて困難であると考えられてきた。
Sucgang, R. et al, Nucleic Acids Res., 31,2361-2368 Brewer,B.J. and Fangman,W.L. , Cell, 55, 637-643 Campbell,J.L. and Newlon,C.S. , The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring. Harbor Laboratory Press, pp.41-146 Linskens,M.H. and Huberman,J.A. , Mol.Cell.Biol., 11, 4927-4935 Defossez,P.A. et al, Molecular Cell, 3, 447-455 Warner, J.R. , Trends Biochem. Sci., 24, 437-440
Sucgang, R. et al, Nucleic Acids Res., 31,2361-2368 Brewer,B.J. and Fangman,W.L. , Cell, 55, 637-643 Campbell,J.L. and Newlon,C.S. , The Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring. Harbor Laboratory Press, pp.41-146 Linskens,M.H. and Huberman,J.A. , Mol.Cell.Biol., 11, 4927-4935 Defossez,P.A. et al, Molecular Cell, 3, 447-455 Warner, J.R. , Trends Biochem. Sci., 24, 437-440
本発明は、酵母細胞内のrDNAコピー数が安定に増加した酵母、およびその育種方法を提供すること、さらに該酵母を用いて酵素、食品を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、FOB1遺伝子のコードするFob1タンパクが機能しなくなった酵母に、rDNAからなる分断染色体を保持させることによって、酵母細胞内のrDNAコピー数が増加した酵母を取得することが可能なことを見出し、本発明を完成するにいたった。本発明は、詳細には以下のとおりである。
(1)rDNAコピー数が増加した酵母。
(2)FOB1遺伝子を欠失し、かつ、rDNAクラスターを有する染色体に由来する分断染色体を保持することによりrDNAコピー数が増加した(1)の酵母。
(3)前記分断染色体とともに、前記rDNAクラスターを有する染色体を保持する(2)の酵母。
(4)酵母のFOB1遺伝子を欠失させ、かつ、該酵母にrDNAクラスターを有する染色体に由来する分断染色体を保持させることを特徴とするrDNAコピー数が増加した酵母の育種製造方法。
(5)前記分断染色体に薬剤耐性遺伝子を保持させ、該分断染色体を保持する酵母を前記薬剤を含有する培地で培養することを特徴とする、(4)の方法。
(6)(1)の酵母に、rDNAと相同組換えを起し得るDNA断片を導入することを特徴とする、酵母組換え体の製造方法。
(7)(1)の酵母に、タンパク質をコードし、かつ、rDNAと相同組換えを起し得るDNA断片を導入し、得られた酵母組換え体を培養することを特徴とする、酵素の製造方法。
(8)酵母を含む食品の製造方法であって、前記酵母として(1)の酵母を用いることを特徴とする食品の製造方法。
(9)食品が酵母エキスである(8)の方法。
(2)FOB1遺伝子を欠失し、かつ、rDNAクラスターを有する染色体に由来する分断染色体を保持することによりrDNAコピー数が増加した(1)の酵母。
(3)前記分断染色体とともに、前記rDNAクラスターを有する染色体を保持する(2)の酵母。
(4)酵母のFOB1遺伝子を欠失させ、かつ、該酵母にrDNAクラスターを有する染色体に由来する分断染色体を保持させることを特徴とするrDNAコピー数が増加した酵母の育種製造方法。
(5)前記分断染色体に薬剤耐性遺伝子を保持させ、該分断染色体を保持する酵母を前記薬剤を含有する培地で培養することを特徴とする、(4)の方法。
(6)(1)の酵母に、rDNAと相同組換えを起し得るDNA断片を導入することを特徴とする、酵母組換え体の製造方法。
(7)(1)の酵母に、タンパク質をコードし、かつ、rDNAと相同組換えを起し得るDNA断片を導入し、得られた酵母組換え体を培養することを特徴とする、酵素の製造方法。
(8)酵母を含む食品の製造方法であって、前記酵母として(1)の酵母を用いることを特徴とする食品の製造方法。
(9)食品が酵母エキスである(8)の方法。
本発明によると、安定にrDNAコピー数が増加した酵母が得られる。同酵母は、rDNAをタッーゲットとして相同組換えにより任意のDNA断片を染色体に導入する宿主として利用することができる。ターゲットとなるrDNAのコピー数が増加しているため、染色体上に導入されたDNA断片のコピー数を高めることができる。
本発明は、酵素等の有用物質発現の為の宿主として利用可能であるほか、同酵母自体を処理することにより、食品特に調味料の製造に利用可能である。
本発明は、酵素等の有用物質発現の為の宿主として利用可能であるほか、同酵母自体を処理することにより、食品特に調味料の製造に利用可能である。
本発明において用いる酵母は、サッカロミセス・セレビシエ等のサッカロミセス属、キャンディダ・ユティリス等のキャンディダ属、ピピア・パストリス等のピピア属、シゾサッカロミセス・ポンベ等のシゾサッカロミセス属等を例示することができる。染色体分断技術などの遺伝子操作系が幅広く確立されているキャンディダ属やサッカロミセス属を使用することが望ましく、染色体DNAに関する研究が進んでいるサッカロミセス・セレビシエを用いることがなお望ましい。
本発明において、酵母の倍数性は特に制限されない。1倍体でも、2倍体でもよいし、それ以上の高次倍数体でもよい。通常、工業的に培養されている倍数性のものを用いることがなお望ましい。サッカロミセス・セレビシエの場合は、生育の観点から2倍体が用いられているが、特に制限されるものでもない。
本発明において、rDNAのコピー数が増加したとは、酵母の非改変株、例えば野生株よりも核内に含まれるrDNAの総コピー数が増加していることを意味する。例えば、サッカロミセス・セレビシエの1倍体野生株は、第12番染色体上に約150コピーのrDNAを有しており、2倍体野生株は、核内に2本の第12番染色体を有し、約300コピーのrDNAを有しているが、それらのコピー数よりも高いコピー数のrDNAを有していれば、rDNAのコピー数は増加しているといえる。rDNAのコピー数の増加割合は、野生株よりも多くなっていれば特に制限されない。得られる酵母の産業上での有用性の観点から、野生株よりも50コピー以上増加していることが好ましく、70コピー以上増加しているとより好ましく、100コピー以上増加していると更により好ましい。
本発明の酵母は、例えば、以下のようにして育種することができる。
酵母のFOB1遺伝子を欠失させる。ここで、「欠失」とは、FOB1遺伝子がコードするFob1タンパク質が機能しないか、又は同機能が低下するように酵母を改変することを意味する。例えば、Fob1遺伝子全体を染色体から除去すること、同遺伝子の転写又は転写産物の翻訳が起らないように、プロモーターやターミネーター等の発現調節配列、又はrDNA結合領域等を改変すること、あるいは、発現したFob1タンパク質が機能しないようにコード領域に変異又は欠失を起こさせることが挙げられる。これらの操作は、通常の突然変異処理や、「遺伝子破壊」として知られる相同組換えを利用した方法等によって行うことができる。より具体的には、Fob1遺伝子のコード領域の内部に、他のDNA断片を挿入することによって、FOB1遺伝子を破壊することができる。
酵母のFOB1遺伝子を欠失させる。ここで、「欠失」とは、FOB1遺伝子がコードするFob1タンパク質が機能しないか、又は同機能が低下するように酵母を改変することを意味する。例えば、Fob1遺伝子全体を染色体から除去すること、同遺伝子の転写又は転写産物の翻訳が起らないように、プロモーターやターミネーター等の発現調節配列、又はrDNA結合領域等を改変すること、あるいは、発現したFob1タンパク質が機能しないようにコード領域に変異又は欠失を起こさせることが挙げられる。これらの操作は、通常の突然変異処理や、「遺伝子破壊」として知られる相同組換えを利用した方法等によって行うことができる。より具体的には、Fob1遺伝子のコード領域の内部に、他のDNA断片を挿入することによって、FOB1遺伝子を破壊することができる。
次に、上記のようにしてFOB1遺伝子を欠失させた酵母に、rDNAクラスターを有する染色体に由来する分断染色体を保持させる。rDNAクラスターを有する染色体は、例えばサッカロマイセス・セレビシエでは、12番染色体である。rDNAクラスターを有する染色体に由来する分断染色体とは、rDNAクラスターを有する染色体が分断することによって生じる染色体であって、少なくともrDNAクラスターを有するものである。酵母に分断染色体を保持させるには、当業者によく知られた染色体分断技術を用いることができる。同技術を用いれば、任意の位置で分断された染色体を保持させることができる。本発明においては、rDNAクラスターを有する染色体の、rDNAクラスターの前もしくは後、又は前後の両方で、分断させればよい。
分断染色体は、染色体を保持させるためにCEN4等の自律複製のための配列を挿入される。また、分断染色体に特定の薬剤耐性を与える遺伝子等のマーカー遺伝子を挿入してもよい。特定の薬剤含有培地で培養することにより、分断染色体のコピー数が増加する結果、任意の塩基配列のコピー数を増加させることができる。用いる薬剤耐性を与える遺伝子は、酵母で使用可能なものであればよい。セルレニン耐性を与えるYAP1遺伝子、オーレオバシジンA耐性を与えるAUR1-C遺伝子、或いはスルファミルアミド及びメトトレキセートに耐性を与えるチミジンキナーゼをコードするTK遺伝子などを例示することができる。なお、TK遺伝子は、チミジンからdTMを合成する働きを有し、同遺伝子を導入された酵母は、スルファミルアミド及びメトトレキセートの添加によって欠乏するdTMPを相補することができ、その結果両薬剤耐性となる。薬剤耐性遺伝子としては、その効果からTK遺伝子の使用が望ましいが、特に制限されるものでもない。
本発明の酵母は、分断染色体に加えて、rDNAクラスターを有する分断されていない通常の染色体(以下、「通常の染色体」ともいう)を保持していてもよいし、保持していなくてもよいが、保持していることが好ましい。分断染色体とともに通常の染色体を保持する酵母は、例えば、分断染色体を保持する1倍体酵母と、通常の染色体を保持する1倍体酵母を接合させることにより得ることができる。また、得られた2倍体酵母を胞子形成させ、4分子解析を行うことにより、分断染色体とともに通常の染色体を保持する1倍体酵母を得ることができる。
本発明のrDNAコピー数が増加した酵母に、rDNAと相同組換えを起し得るDNA断片を導入することにより、任意のDNA配列を高コピー数で酵母に保持させることができる。したがって、本発明の酵母を利用して、効率の良い発現系を構築することができる。例えば、前記DNA断片がタンパク質をコードする遺伝子である場合は、得られた酵母組換え体を培養することにより、該タンパク質を効率よく生産させることができる。本発明において、発現系の構築は、rDNAをターゲットとする限りにおいて特に制限されない。目的とする発現系を、エレクトロポレーションで酵母に導入してもよいし、自然形質転換現象を利用して導入してもよい。
また、本発明の酵母では、rDNAのコピー数が増加した結果、rDNAが発現することにより生成するrRNAの量が増大することが予想される。このような本発明の酵母は、食品の製造に利用することができる。本発明においては、食品は特に制限されず、本発明の酵母を用いる以外は、酵母を原料として用いる食品と同様にして製造することができる。本発明においては、通常の食品の製造工程に、酵母をそのまま加えてもよいし、特定の処理を行ってから加えてもよい。その方法は特に制限されない。
本発明において、酵母を用いた食品の代表例として調味料、より具体的には酵母エキスを挙げることができる。酵母エキスの製造方法として、培養した酵母菌体から自己消化あるいは酵素消化によって、内容物を抽出する方法、酵母を熱水抽出することによって内容物を抽出する方法などがある。また、内容物と残渣を分離してから使用してもよいし、分離せずにそのまま使用してもよい。更に、内容物あるいは残渣をプロテアーゼ、ヌクレアーゼ、デアミナーゼなどの酵素類で処理して酵母エキスを調製してもよい。前述のように通常の酵母エキスの製造に用いている方法を使用することができる。また、調製した酵母エキスを適当な条件、例えば糖を添加して一定時間・一定温度帯で保持することによって調味料を製造してもよいし。酵母エキスにあるいは酵母エキスを処理した調味料に、チキンエキス、ビーフエキス、などその他の素材を添加することによって調味料を製造してもよい。本発明の酵母を利用する限りにおいて、調味料の製造方法は特に制限されない。
以下、本発明を実施例に基づき、より具体的に説明する。なお、本発明は以下実施例になんら限定されるものではない。
〔実施例1〕(分断した第12番染色体を有する酵母ID-12株の取得)
プラスミドp2453(pTAK024とも呼称される。文献(Kobayashi,T.et al, GenesDev.,12, 3821-3830)に記載。)を制限酵素EcoRIで切断することにより、直鎖状のカッセト1を得た。エレクトロポレーションにより、カセット1をサッカロミセス・セレビシエFY833株(MATa型1倍体 ura3-52 hsi3△200 leu2△1 lys2△202 trp1△63、文献:Fred, W. et al
Yeast, 11, 53-55に記載、また、Yeast Genetic Resource Center (http://bio3.tokyo.jst.go.jp/jst/)よりも入手可能)に形質転換した。得られた形質転換体からヒスチジン非要求性の菌株を選抜し、カセット1が目的の部位に組み込まれていることを確認した。このようにして、FOB1遺伝子の機能が喪失した1倍体ID-10株(MATa型1倍体 ura3-52 hsi3△200 fob1::HIS3 leu2△1 lys2△202 trp1△63)を取得した。
プラスミドp2453(pTAK024とも呼称される。文献(Kobayashi,T.et al, GenesDev.,12, 3821-3830)に記載。)を制限酵素EcoRIで切断することにより、直鎖状のカッセト1を得た。エレクトロポレーションにより、カセット1をサッカロミセス・セレビシエFY833株(MATa型1倍体 ura3-52 hsi3△200 leu2△1 lys2△202 trp1△63、文献:Fred, W. et al
Yeast, 11, 53-55に記載、また、Yeast Genetic Resource Center (http://bio3.tokyo.jst.go.jp/jst/)よりも入手可能)に形質転換した。得られた形質転換体からヒスチジン非要求性の菌株を選抜し、カセット1が目的の部位に組み込まれていることを確認した。このようにして、FOB1遺伝子の機能が喪失した1倍体ID-10株(MATa型1倍体 ura3-52 hsi3△200 fob1::HIS3 leu2△1 lys2△202 trp1△63)を取得した。
次に、PCS法(次の文献記載の方法にのっとって実施した。文献:Sugiyama,M. et al, BioTechniques, 38, 909-914)を用いてID-10株の第12番染色体を右端から610kbpの部位で切断したID-11株を取得した。具体的には、以下の手順で実施した。
まず、染色体分断フラグメント用カセットR-I及びR-IIを以下のようにして調製した。R-Iフラグメントは、CgTRP1、(5’-C4A2-3’)6からなる反復配列、及び標的配列からな
る。
プラスミドp3010(文献(Sugiyama,M. et al, BioTechniques, 38, 909-914)に記載。)を鋳型とし、loxP-F1プライマー(配列番号1)及びTr6-4プライマー(配列番号2)を用いてPCR法により1.2kbpからなるCgTRP1遺伝子を増幅した。このようにして1.2kbpのPCR断片を取得した。また、第12番染色体の468,931から469,225に相当する領域を、FY833株の染色体DNAを鋳型とし、rDNAr-1プライマー(配列番号3)及びrDNAr-2プライマー(配列番号4)を用いてPCR法により増幅した。このようにして300bpのPCR断片を取得した。次に、1.2kbpのPCR断片と300bpのPCR断片を鋳型として、Tr6-4プライマー及びrDNAr-1プライマーを用いてPCR法により増幅した。1.2kbpのPCR断片と300bpのPCR断片は重複配列を有する為、本PCRにより1.2kbpのPCR断片と300bpのPCR断片が連結された1.5kbpのPCR断片が得られる。このようにして、1.5kbpのR-Iフラグメントを調製した。
る。
プラスミドp3010(文献(Sugiyama,M. et al, BioTechniques, 38, 909-914)に記載。)を鋳型とし、loxP-F1プライマー(配列番号1)及びTr6-4プライマー(配列番号2)を用いてPCR法により1.2kbpからなるCgTRP1遺伝子を増幅した。このようにして1.2kbpのPCR断片を取得した。また、第12番染色体の468,931から469,225に相当する領域を、FY833株の染色体DNAを鋳型とし、rDNAr-1プライマー(配列番号3)及びrDNAr-2プライマー(配列番号4)を用いてPCR法により増幅した。このようにして300bpのPCR断片を取得した。次に、1.2kbpのPCR断片と300bpのPCR断片を鋳型として、Tr6-4プライマー及びrDNAr-1プライマーを用いてPCR法により増幅した。1.2kbpのPCR断片と300bpのPCR断片は重複配列を有する為、本PCRにより1.2kbpのPCR断片と300bpのPCR断片が連結された1.5kbpのPCR断片が得られる。このようにして、1.5kbpのR-Iフラグメントを調製した。
R-IIフラグメントは、CEN4、(5’-C4A2-3’)6からなる反復配列、及び標的配列からなる。プラスミドp3121(文献(Sugiyama,M. et al, BioTechniques, 38, 909-914)に記載。)を鋳型とし、loxP-F1プライマー及びTr6-4プライマーを用いてPCR法により増幅し、0.8kbpからなるPCR断片を取得した。また、第12番染色体の469,226から469,530に相当する領域を、FY833株の染色体DNAを鋳型とし、rDNAr-3プライマー(配列番号5)及びrDNAr-4プライマー(配列番号6)を用いてPCR法により増幅した。このようにして別の300bpのPCR断片を取得した。次に、0.8kbpのPCR断片と別の300bpのPCR断片を鋳型として、Tr6-4プライマー及びrDNAr-4プライマーを用いてPCR法により増幅した。0.8kbpのPCR断片と別の300bpのPCR断片は重複配列を有する為、本PCRにより0.8kbpのPCR断片と別の300bpのPCR断片が連結された1.1kbpのPCR断片が得られる。このようにして、1.1kbpのR-IIフラグメントを調製した。
前述のようにして調製したR-Iフラグメント及びR-IIフラグメントをエレクトロポレーションによりID-10株に形質転換した。得られた形質転換体からトリプトファン非要求性の菌株を選抜した。この菌株の12番染色体が実際に2つに分断されていることを確認するために、この菌株の染色体DNAをCHEFパルスフィールド電気泳動により分離し、Lプローブ、5Sプローブ、及びRプローブを用いてサザンブロティング解析を行った(次の文献記載の方法にのっとって実施した。文献:Kin,Y.H. et al J.Biosc.Bioeng., 99, 55-60.)。
その結果、Lプローブ及び5Sプローブが1900kbpからなるバンドにハイブリダイズし、Rプローブが610kbpからなるバンドにハイブリダイズした。このようにして、第12番染色体が目的の部位で分断されていることを確認した(図2A)。この菌株をID-11株(MATa型1倍体 ura3-52 hsi3△200 fob1::HIS3 leu2△1 lys2△202 trp1△63 [CFXII/TRP1 + rDNA-R proximal:1900kbp][CFXII/rDNA-R distal:610kbp])と命名した。
その結果、Lプローブ及び5Sプローブが1900kbpからなるバンドにハイブリダイズし、Rプローブが610kbpからなるバンドにハイブリダイズした。このようにして、第12番染色体が目的の部位で分断されていることを確認した(図2A)。この菌株をID-11株(MATa型1倍体 ura3-52 hsi3△200 fob1::HIS3 leu2△1 lys2△202 trp1△63 [CFXII/TRP1 + rDNA-R proximal:1900kbp][CFXII/rDNA-R distal:610kbp])と命名した。
ところで、前述のサザンブロッティング解析に用いたLプローブ、Rプローブ、及び5Sプローブは以下のようにして調製した。LプローブはFY833株の染色体DNAを鋳型として、HaY12P5Fプライマー(配列番号7)及びHaY12P5Rプライマー(配列番号8)を用いてPCR法により増幅して調製した。RプローブはFY833株の染色体DNAを鋳型として、HaY12P3Fプライマー(配列番号9)及びHaY12P3Rプライマー(配列番号10)を用いてPCR法により増幅して調製した。5SプローブはFY833株の染色体DNAを鋳型として、rDNA5S-1プライマー(配列番号11)及びrDNA5S-2プライマー(配列番号12)を用いてPCR法により増幅して調製した。
次に、PCS法を用いてID-11株の第12番染色体由来の1900kbpの染色体を左端から450kbpの部位で切断したID-12株を取得した。具体的には、以下の手順で実施した。
まず、染色体分断フラグメント用カセットL-I及びL-IIを以下のようにして調製した。
L-Iフラグメントは、CgLEU2、5’-(C4A2)6-3’ からなる反復配列、及び標的配列からな
る。
プラスミドp3008(文献(Sugiyama,M. et al, BioTechniques, 38, 909-914)に記載。)を鋳型とし、loxP-F1プライマー及びTr6-4プライマーを用いてPCR法により1.8kbpからなるCgLEU2遺伝子を増幅した。このようにして1.8kbpのPCR断片を取得した。また、第12番染色体の451,070から451,429に相当する領域を、FY833株の染色体DNAを鋳型とし、rDNAl-1プライマー(配列番号13)及びrDNAl-2プライマー(配列番号14)を用いてPCR法により増幅した。このようにして360bpのPCR断片を取得した。次に、1.8kbpのPCR断片と360bpのPCR断片を鋳型として、Tr6-4プライマー及びrDNAl-1プライマーを用いてPCR法により増幅した。1.8kbpのPCR断片と360bpのPCR断片は重複配列を有する為、本PCRにより1.8kbpのPCR断片と360bpのPCR断片が連結された2.2kbpのPCR断片が得られる。このようにして、2.2kbpのL-Iフラグメントを調製した。
L-Iフラグメントは、CgLEU2、5’-(C4A2)6-3’ からなる反復配列、及び標的配列からな
る。
プラスミドp3008(文献(Sugiyama,M. et al, BioTechniques, 38, 909-914)に記載。)を鋳型とし、loxP-F1プライマー及びTr6-4プライマーを用いてPCR法により1.8kbpからなるCgLEU2遺伝子を増幅した。このようにして1.8kbpのPCR断片を取得した。また、第12番染色体の451,070から451,429に相当する領域を、FY833株の染色体DNAを鋳型とし、rDNAl-1プライマー(配列番号13)及びrDNAl-2プライマー(配列番号14)を用いてPCR法により増幅した。このようにして360bpのPCR断片を取得した。次に、1.8kbpのPCR断片と360bpのPCR断片を鋳型として、Tr6-4プライマー及びrDNAl-1プライマーを用いてPCR法により増幅した。1.8kbpのPCR断片と360bpのPCR断片は重複配列を有する為、本PCRにより1.8kbpのPCR断片と360bpのPCR断片が連結された2.2kbpのPCR断片が得られる。このようにして、2.2kbpのL-Iフラグメントを調製した。
L-IIフラグメントは、CEN4、5’-(C4A2)6-3’ からなる反復配列、及び標的配列からなる。プラスミドp3121(文献(Sugiyama,M. et al, BioTechniques, 38, 909-914)に記載。)を鋳型とし、loxP-F1プライマー及びTr6-4プライマーを用いてPCR法により増幅し、0.8kbpからなるPCR断片を取得した。また、第12番染色体の451,430から451,786に相当する領域を、FY833株の染色体DNAを鋳型とし、rDNAl-3プライマー(配列番号15)及びrDNAl-4プライマー(配列番号16)を用いてPCR法により増幅した。このようにして別の356bpのPCR断片を取得した。次に、0.8kbpのPCR断片と別の356bpのPCR断片を鋳型として、Tr6-4プライマー及びrDNAl-4プライマーを用いてPCR法により増幅した。0.8kbpのPCR断片と別の356bpのPCR断片は重複配列を有する為、本PCRにより0.8kbpのPCR断片と別の356bpのPCR断片が連結された1.2kbpのPCR断片が得られる。このようにして、1.2kbpのL-IIフラグメントを調製した。
前述のようにして調製したL-Iフラグメント及びL-IIフラグメントをエレクトロポレーションによりID-11株に形質転換した。得られた形質転換体からロイシン非要求性の菌株を選抜した。この菌株の12番染色体が実際に3つに分断されていることを確認するために、この菌株の染色体DNAをCHEFパルスフィールド電気泳動により分離し、Lプローブ、5Sプローブ、及びRプローブを用いてサザンブロティング解析を行った。
その結果、Lプローブが450kbpからなるバンドにハイブリダイズし、5Sプローブが1900kbpからなるバンドにハイブリダイズし、Rプローブが610kbpからなるバンドにハイブリダイズした(図2B)。このようにして、第12番染色体が目的の部位で3つに分断されていることを確認した。この菌株をID-12株(MATa型1倍体 ura3-52 hsi3△200 fob1::HIS3 leu2△1 lys2△202 trp1△63 [CFXII/LEU2 + rDNA-L proximal:450kbp][rDNA cluster + TRP1][CFXII/rDNA-R distal:610kbp])と命名した(図3)。
その結果、Lプローブが450kbpからなるバンドにハイブリダイズし、5Sプローブが1900kbpからなるバンドにハイブリダイズし、Rプローブが610kbpからなるバンドにハイブリダイズした(図2B)。このようにして、第12番染色体が目的の部位で3つに分断されていることを確認した。この菌株をID-12株(MATa型1倍体 ura3-52 hsi3△200 fob1::HIS3 leu2△1 lys2△202 trp1△63 [CFXII/LEU2 + rDNA-L proximal:450kbp][rDNA cluster + TRP1][CFXII/rDNA-R distal:610kbp])と命名した(図3)。
〔実施例2〕(rDNAコピー数の増加した酵母2A株の取得)
常法に従い、MATα型1倍体FY73株(ura3-52 his3△200、文献:Fred, W. et al Yeast,
11, 53-55に記載、また、Yeast Genetic Resource Center (http://bio3.tokyo.jst.go.jp/jst/)よりも入手可能)とMATa型1倍体ID-10株(his3△200 fob1::HIS3 ura3-52 leu2△1 lys2△202 trp1△63)を接合させることにより、2倍体を取得した。常法に従い、この2倍体を胞子形成させ、マイクロマニュピュレーターを用いて4分子解析を行った。SD培地および各種栄養要求性を添加したSD培地を用いた要求性確認を行い、ヒスチジン非要求性かつトリプトファン要求性のMATα型1倍体を2株取得した。そのうちの1株をSH6602株(MATα型 his3△200 fob1::HIS3 ura3-52 trp1△63 lys2△202)と命名した。(酵母に関する実験操作は、「化学と生物 実験ライン31 酵母の実験技術」初版 廣川書店;「バイオマニュアルシリーズ10 酵母による遺伝子実験法」初版、羊土社などに詳細に記載されている。)
常法に従い、MATα型1倍体FY73株(ura3-52 his3△200、文献:Fred, W. et al Yeast,
11, 53-55に記載、また、Yeast Genetic Resource Center (http://bio3.tokyo.jst.go.jp/jst/)よりも入手可能)とMATa型1倍体ID-10株(his3△200 fob1::HIS3 ura3-52 leu2△1 lys2△202 trp1△63)を接合させることにより、2倍体を取得した。常法に従い、この2倍体を胞子形成させ、マイクロマニュピュレーターを用いて4分子解析を行った。SD培地および各種栄養要求性を添加したSD培地を用いた要求性確認を行い、ヒスチジン非要求性かつトリプトファン要求性のMATα型1倍体を2株取得した。そのうちの1株をSH6602株(MATα型 his3△200 fob1::HIS3 ura3-52 trp1△63 lys2△202)と命名した。(酵母に関する実験操作は、「化学と生物 実験ライン31 酵母の実験技術」初版 廣川書店;「バイオマニュアルシリーズ10 酵母による遺伝子実験法」初版、羊土社などに詳細に記載されている。)
常法に従い、SH6602株(MATα型 his3△200 fob1::HIS3 ura3-52 trp1△63 lys2△202
)とID-12株(MATa型 his3△200 fob1::HIS3 ura3-52 leu2△1 lys2△202 trp1△63 [CFXII/LEU2 + rDNA-L proximal:450kb][rDNA cluster + TRP1][CFXII/rDNA-R distal:610kb])を接合させることにより、2倍体を取得した。常法に従い、この2倍体を胞子形成させ、マイクロマニュピュレーターを用いて4分子解析を行った。SD培地および各種栄養要求性を添加したSD培地を用いた要求性確認を行い、ヒスチジン非要求性かつトリプトファン非要求性の1倍体を選抜した。このようにして1倍体酵母2A株を取得した。なお、2A株は、trp1△63変異を有しているため、この菌株がヒスチジン要求性かつトリプトファン非要求性になるためには、fob1::HIS3及び[rDNA cluster +TRP1]を有している必要がある(図4)。そこで、常法に従い2A株の染色体DNAをCHEFパルスフィールド電気泳動により分離し、5S プローブを用いてサザンブロティング解析を行った。
その結果、2500kbpと1500kbpのDNAに5S プローブが反応した。2500kbpのDNAは第12番染色体に相当し、1500kbpのDNAは[rDNA cluster + TRP1]に相当するため、2A株は第12番染色体に加えて、rDNAクラスターを有していることが確認された。
)とID-12株(MATa型 his3△200 fob1::HIS3 ura3-52 leu2△1 lys2△202 trp1△63 [CFXII/LEU2 + rDNA-L proximal:450kb][rDNA cluster + TRP1][CFXII/rDNA-R distal:610kb])を接合させることにより、2倍体を取得した。常法に従い、この2倍体を胞子形成させ、マイクロマニュピュレーターを用いて4分子解析を行った。SD培地および各種栄養要求性を添加したSD培地を用いた要求性確認を行い、ヒスチジン非要求性かつトリプトファン非要求性の1倍体を選抜した。このようにして1倍体酵母2A株を取得した。なお、2A株は、trp1△63変異を有しているため、この菌株がヒスチジン要求性かつトリプトファン非要求性になるためには、fob1::HIS3及び[rDNA cluster +TRP1]を有している必要がある(図4)。そこで、常法に従い2A株の染色体DNAをCHEFパルスフィールド電気泳動により分離し、5S プローブを用いてサザンブロティング解析を行った。
その結果、2500kbpと1500kbpのDNAに5S プローブが反応した。2500kbpのDNAは第12番染色体に相当し、1500kbpのDNAは[rDNA cluster + TRP1]に相当するため、2A株は第12番染色体に加えて、rDNAクラスターを有していることが確認された。
〔実施例3〕(ID-12株と2A株のrDNAコピー数の比較)
次に、2A株とID-12株のrDNAコピー数を競合PCRにより調べた。定量RCRとしてGeneAmp PCR system 9700 thermal cycler (Applied Biosystems社)を用い、Lamda DNAの部分領域(40,981〜41,980bp)の両端に5SrDNAの配列を付加したDNAをコンペティターDNAとして使用した。具体的には、コンペティターDNAを以下のようにして調製した。Lamda DNAを鋳型として、プライマーLamda-1(配列番号17、プライマーrDNA5S-1の配列を含む)及びプライマーLamda-2(配列番号18、プライマーrDNA5S-2の配列を含む)を用いてPCRにより増幅した。競合PCRのためのプライマーとして、rDNA5S-1(配列番号11)及びrDNA5S-2(配列番号12)を用い、94℃5分間反応後、94℃30秒→55℃30秒→72℃1分のサイクルを30回繰り返した後、72℃5分間反応させ、4℃で保存した。PCR反応は、50μlの量で行い、ターゲットDNA量は10ng/μlの量で行った。その他の条件は常法(PCR Tips, Chapter1-12, p87-92(2000)秀潤社や、http://bio.takara.co.jp/BIO_EN/catalog_d.asp?C_ID=C0193等に記載)にのっとり実施した。その結果、ID-12株のrDNAコピー数は112個で、2A株のrDNAコピー数が227個であることがわかった。
次に、2A株とID-12株のrDNAコピー数を競合PCRにより調べた。定量RCRとしてGeneAmp PCR system 9700 thermal cycler (Applied Biosystems社)を用い、Lamda DNAの部分領域(40,981〜41,980bp)の両端に5SrDNAの配列を付加したDNAをコンペティターDNAとして使用した。具体的には、コンペティターDNAを以下のようにして調製した。Lamda DNAを鋳型として、プライマーLamda-1(配列番号17、プライマーrDNA5S-1の配列を含む)及びプライマーLamda-2(配列番号18、プライマーrDNA5S-2の配列を含む)を用いてPCRにより増幅した。競合PCRのためのプライマーとして、rDNA5S-1(配列番号11)及びrDNA5S-2(配列番号12)を用い、94℃5分間反応後、94℃30秒→55℃30秒→72℃1分のサイクルを30回繰り返した後、72℃5分間反応させ、4℃で保存した。PCR反応は、50μlの量で行い、ターゲットDNA量は10ng/μlの量で行った。その他の条件は常法(PCR Tips, Chapter1-12, p87-92(2000)秀潤社や、http://bio.takara.co.jp/BIO_EN/catalog_d.asp?C_ID=C0193等に記載)にのっとり実施した。その結果、ID-12株のrDNAコピー数は112個で、2A株のrDNAコピー数が227個であることがわかった。
〔実施例4〕(分断染色体上にTK遺伝子を有するSH6607株の取得)
TK遺伝子(Herpes Simplex Virus type 1 thymidine kinase gene)の両端に制限酵素SacIIサイトを有するフラグメントをPCR法により調製した。具体的には、TK遺伝子がコードされているプラスミドpCGS966(文献:Smith, D.R. et al , Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 87, 8242-8246)を鋳型として、プライマーTK-F(配列番号19)及びプライマーTK-R(配列番号20)を用いてPCR法により増幅した。得られた約2.1kbpのPCR産物を常法に従い、プラスミドpGEM-T Easy vector(promega社)に連結した。このようにして、プラスミドpGEM-TKを調製した。次に、このプラスミドpGME-TKを鋳型として、プライマーTK-F及びプライマーTK-Rを用いてPCR法により増幅した。得られた約2.1kbpのPCR産物を常法に従い、プラスミドpT7(pT7 Blue T-vector(Novagen社))に連結し、制限酵素SacII切断部位を有するプラスミドpT7+TKを取得した(図5)。
TK遺伝子(Herpes Simplex Virus type 1 thymidine kinase gene)の両端に制限酵素SacIIサイトを有するフラグメントをPCR法により調製した。具体的には、TK遺伝子がコードされているプラスミドpCGS966(文献:Smith, D.R. et al , Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 87, 8242-8246)を鋳型として、プライマーTK-F(配列番号19)及びプライマーTK-R(配列番号20)を用いてPCR法により増幅した。得られた約2.1kbpのPCR産物を常法に従い、プラスミドpGEM-T Easy vector(promega社)に連結した。このようにして、プラスミドpGEM-TKを調製した。次に、このプラスミドpGME-TKを鋳型として、プライマーTK-F及びプライマーTK-Rを用いてPCR法により増幅した。得られた約2.1kbpのPCR産物を常法に従い、プラスミドpT7(pT7 Blue T-vector(Novagen社))に連結し、制限酵素SacII切断部位を有するプラスミドpT7+TKを取得した(図5)。
また、URA3遺伝子とGAL1プロモーターが連結されたプラスミドp3136を調製した。具体的には、サッカロミセス・セレビシエS288C株染色体DNAを鋳型として、両端にNotI制限酵素サイトを付加したプライマー(配列番号21、配列番号22)を用いてURA3遺伝子をPCR法にて増幅し、プラスミドpBluescript II SK+のNotIサイトに導入した。次に、FY833株染色体DNAを鋳型として、BamHI制限酵素サイト或いはXbaI制限酵素サイトを付加したプライマー(配列番号23、配列番号24)を用いてGAL1プロモーター部位をPCR法にて増幅し、前述のプラスミドのBamHI及びXbaI制限酵素サイトに連結した。このようにして、プラスミドpBluescript II SK+のNotI制限酵素サイトにURA3遺伝子、BamHI/XbaI制限酵素サイトにGAL1プロモーターを連結したプラスミドp3136を調製した。
次に常法に従いプラスミドp3136及びプラスミドpT7+TKを各々制限酵素SacIIで切断し、プラスミドp3136のSacII切断部位にTK遺伝子を挿入したプラスミドp3136+TKを取得した(図6)。このプラスミドを鋳型として、Gal1p-F1プライマー(配列番号25)及びGal1p-R3プライマー(配列番号26)を用いてPCR法により増幅した。このようにしてTK遺伝子導入カセットを取得した(図7)。
前述のようにして調製したTK遺伝子導入カセットを常法に従い、エレクトロポレーションによりID-12株に形質転換した。なお、形質転換効率を高めるためにFrozen-EZ Yeast Transformation IITM Kit(カタログNo. T2001, Zymo Research, USA)を用いた。得られた形質転換体からウラシル非要求性の菌株を選抜した(図8)。この菌株の目的の部位にTK遺伝子導入カセットが導入されていることを確認するために、同菌株の染色体DNAを回収し、プライマーI1(配列番号27)、プライマーI2(配列番号28)、プライマーI4(配列番号29)、及びプライマーI5(配列番号30)でPCRを行った。目的の位置にTK遺伝子導入カセットが挿入されている場合は、プライマーI1及びプライマーI2で増幅した場合1.7kbpのPCR産物が得られ、プライマーI4及びプライマーI5で増幅した場合1.3kbpのPCR産物が得られる。一方、宿主のID-12株の場合は、いずれの場合も増幅は得られない。また、コントロールとしてプライマーI1及びプライマーI4で増幅した場合はID-12株では1.1kbpのPCR産物が得られる。このようにして、目的の部位にTK遺伝子導入カセットが導入されていることを確認した。このようにして分断染色体上にTK遺伝子を有するSH6607株(MATa型1倍体 ura3-52 [pBluescript SK + GAL1p::URA3::TK] his3△200 fob1::HIS3 lys2△202 leu2△1 [CFXII/LEU2 + rDNA-L proximal:450kbp] trp1△63 [rDNA cluster + TRP1][CFXII/rDNA-R distral:610kbp])を取得した。
〔実施例5〕(ID-12株及びSH6607株のrDNAコピー数比較)
ID-12株及びSH6607株を増幅培地(参照文献:METHODS IN ENZYMOLOGY, vol.216 pp609)に植菌し、30℃で振とう培養した。培養は7世代分増殖するまで行った(通常、5〜7日間培養する。)。増幅培地中のsulfanilamideとmethotrexateは標準の濃度のものを用いた。このようにしてSH6607株の分断染色体数を増幅させた。
次に、培養産物をYPD培地に植え継ぎし、30℃で24時間培養した。その後、常法に従い、ID-12株及びSH6607株の染色体DNAを回収した。
ID-12株及びSH6607株を増幅培地(参照文献:METHODS IN ENZYMOLOGY, vol.216 pp609)に植菌し、30℃で振とう培養した。培養は7世代分増殖するまで行った(通常、5〜7日間培養する。)。増幅培地中のsulfanilamideとmethotrexateは標準の濃度のものを用いた。このようにしてSH6607株の分断染色体数を増幅させた。
次に、培養産物をYPD培地に植え継ぎし、30℃で24時間培養した。その後、常法に従い、ID-12株及びSH6607株の染色体DNAを回収した。
次に染色体DNAを制限酵素KpnIで処理し、に含まれるrDNAクラスターをrDNA遺伝子の単位に切断した。同制限酵素で処理した染色体DNAを0.8%の濃度のアガロースゲルで電気泳動により分離し、サザンブロッティング解析を行った。rDNAコピー数を測定するために、20ngの5Sプローブと内部標準として600ngのACT1プローブを用いて行った。なお、ACT1プローブは、常法にもとづきACT1遺伝子の73bpから1,083bpまでの領域の増幅を目的に、FY833株より回収した染色体DNAを鋳型として、プライマーACT1-F(配列番号31)及びプライマーACT1-R(配列番号32)を用いてPCRにより増幅した。
サザンブロッティング解析の結果rDNAとACT1の量比を示す指標であるrDNA/ACT1は、ID-12株で5.8、SH6607株で11.6であった。この結果より、SH6607株はID-12株よりもrDNAのコピー数が2倍に増加したことがわかった。
サザンブロッティング解析の結果rDNAとACT1の量比を示す指標であるrDNA/ACT1は、ID-12株で5.8、SH6607株で11.6であった。この結果より、SH6607株はID-12株よりもrDNAのコピー数が2倍に増加したことがわかった。
〔実施例6〕(rDNAをターゲットとしたURA3遺伝子の導入例)
FY833株の染色体DNAを鋳型として、ura3-fプライマー及びura3-rプライマーを用いてURA3遺伝子を増幅した。このようにして増幅したPCR産物を常法に従い、エレクトロポレーションによりID-12株に形質転換した。なおura3-fプライマー(配列番号33)及びura3-rプライマー(配列番号34)には各々第12番染色体の456,940〜456,980又は456,981〜457,030に相当する領域が両端に付加されている。その為、相同組替時には、rDNA遺伝子中の18SrDNAにURA3遺伝子が挿入される。常法に従い、得られた形質転換体を解析したとこ
ろ、URA3遺伝子が目的の部位に挿入されていることが確認された。
この例でも、rDNAをターゲットとして目的の遺伝子を導入することは極めて容易に実施することが示されている。
FY833株の染色体DNAを鋳型として、ura3-fプライマー及びura3-rプライマーを用いてURA3遺伝子を増幅した。このようにして増幅したPCR産物を常法に従い、エレクトロポレーションによりID-12株に形質転換した。なおura3-fプライマー(配列番号33)及びura3-rプライマー(配列番号34)には各々第12番染色体の456,940〜456,980又は456,981〜457,030に相当する領域が両端に付加されている。その為、相同組替時には、rDNA遺伝子中の18SrDNAにURA3遺伝子が挿入される。常法に従い、得られた形質転換体を解析したとこ
ろ、URA3遺伝子が目的の部位に挿入されていることが確認された。
この例でも、rDNAをターゲットとして目的の遺伝子を導入することは極めて容易に実施することが示されている。
本発明によれば、安定にrDNAコピー数が増加した酵母が提供される。同酵母は、酵素等の有用物質発現の為の宿主として利用可能であるほか、その結果得られる有用物質や同酵母自体を処理することにより、食品特に酵母エキスの製造に利用可能である。従って、当該発明は、食品、医薬品、化成品などの幅広い産業で使用することが可能である。
Claims (9)
- rDNAコピー数が増加した酵母。
- FOB1遺伝子を欠失し、かつ、rDNAクラスターを有する染色体に由来する分断染色体を保持することによりrDNAコピー数が増加した請求項1に記載の酵母。
- 前記分断染色体とともに、前記rDNAクラスターを有する染色体を保持する請求項2記載の酵母。
- 酵母のFOB1遺伝子を欠失させ、かつ、該酵母にrDNAクラスターを有する染色体に由来する分断染色体を保持させることを特徴とするrDNAコピー数が増加した酵母の製造方法。
- 前記分断染色体に薬剤耐性遺伝子を保持させ、該分断染色体を保持する酵母を前記薬剤を含有する培地で培養することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
- 請求項1に記載の酵母に、rDNAと相同組換えを起し得るDNA断片を導入することを特徴とする、酵母組換え体の製造方法。
- 請求項1に記載の酵母に、タンパク質をコードし、かつ、rDNAと相同組換えを起し得るDNA断片を導入し、得られた酵母組換え体を培養することを特徴とする、酵素の製造方法。
- 酵母を含む食品の製造方法であって、前記酵母として請求項1記載の酵母を用いることを特徴とする方法。
- 食品が酵母エキスである請求項8に記載の方法。
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- 2005-09-14 JP JP2005267538A patent/JP2007075013A/ja active Pending
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