JP2013535185A - 生産細胞株 - Google Patents

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Abstract

本発明は、細胞培養物において組み換え型の対象ポリペプチド(POI)を産生させる方法であって、真核細胞株を遺伝的に改変して、−前培養期において細胞周期のG2+M期を特異的に延長させ、そして、−前培養期の後の生産期において前記POIを産生させることを含む方法、高プロデューサー細胞株、及び細胞培養物、並びに細胞培養物における組み換え型のPOIの収量を増加させる方法に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞培養物において対象ポリペプチド(POI)を生産するための高プロデューサー細胞株を調製する方法に関する。
組換DNA技術の開発により、薬学的及び工業的に利用される異種タンパク質を発現させるためのホストとして幾つかの微生物を使用することが可能になった。
今日、このような異種タンパク質を産生させるために多くの様々なホスト細胞が使用されている。真核生物のホストによる組換え型タンパク質の産生は既に成功している。最も有名な例は、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、若しくはハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)等の出芽酵母、アスペスギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)若しくはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)等の糸状菌、又は例えばCHO細胞等の哺乳類細胞である。
酵母は、組換え型タンパク質及び小さな代謝産物を産生させるための魅力的なホストである。メチロトローフ酵母であるピキア・パストリスは、組換え型タンパク質を産生させるため、またより最近では、小さな代謝産物を産生させるための発現系として頻繁に使用されている(非特許文献1)。ピキア属は、増殖速度が速く且つ単純で安価な培地でも増殖することができる。ピキア属は、振盪フラスコ又は発酵槽のいずれでも増殖することができるので、小規模及び大規模な産生の両方に適している。ピキア・パストリスは、最近、新しい属であるコマガタエラ属(Komagataella)に再分類され、以下の3つの新しい種に分けられた:コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、K.ファフィ(K.phaffii)及びK.シュードパストリス(K.pseudopastoris)(非特許文献2)。したがって、ピキア・パストリスは、3つの種、K.パストリス、K.ファフィ及びK.シュードパストリス全てに対する同義語である。前述の文献に従って、本明細書全体にわたってピキア・パストリスを使用するが、これは、任意のコマガタエラ属の種を暗黙的に意味する。同様に、ハンセヌラ・ポリモルファとピキア・アングスタも同義語である。
ほとんどの場合、ホスト細胞は、工業的に生産するために流加プロセスで培養される。このようなプロセスの全体的な生産性は、経時的なバイオマスの積分及びバイオマスの比生産性(q)の関数である。qは比増殖速度(μ)と相関し、通常、μの増加と共に連続的に増加する。したがって、高μにおいて高qが得られるが、最適バイオマス−時間積分(A)は、最初高く、次いで非常に低くなるμによって得られる。これは、一定のqにおける生産収量(P)を計算するための以下の式に反映される:
P=A.q
図1は、P.パストリスにおけるqとμとの関係を示す(非特許文献3)。
したがって、μについては妥協することにより最適生産性が得られ、通常、基質供給の制限によりフェッドバッチにおいて制御される。
流加プロセスの典型的な例は、微生物又は哺乳類細胞を用いる組換え型タンパク質の産生である。細胞集団における産生物の濃度は、細胞内産生物の場合には容易に説明することができるが、分泌された産生物の動態を予測するのはより複雑である。分泌系の典型的な例は、組み換え酵母である。酵母における多くのタンパク質の産生では費用がかなり重視されるので、生産性、プロセス時間及び産生物の力価を予測及び制御するための努力が行われている。メチロトローフ酵母であるピキア・パストリス用に流加プロセスを最適化するためのアプローチが報告されている(非特許文献3及び4)。
バイオプロセスの変動費は、必要な発酵ユニットの容積、及びこのユニットが所定の量の産生物を生産するのに必要なプロセス時間と相関する。したがって、容積生産性Qは、最適化のための最も妥当な標的である。所与のプロセス時点tにおいて、Qは以下の通り定義される:
=P/(V.t)
細胞周期、すなわち細胞分裂周期は、細胞において生じる一連の事象であり、細胞の分裂及び重複(複製)を導く。
真核細胞の分裂は、G1(ギャップ1)、S(合成)、G2(ギャップ2)及びM(有糸分裂)と呼ばれる連続する期を含む高度に制御された細胞周期を通して進行する。
G0期は静止期と呼ばれ、静止細胞が特定の状況の下で又は特定の刺激を受け取った後に、DNAの倍加及び細胞の2つの娘細胞への分裂を有効に実施するために必要なRNA及びタンパク質の合成(G1期)が開始される。続いて、DNA合成が始まり(S期);細胞がそのDNAを複製したら、別の後期タンパク質合成期間(G2期)が始まり、これは分裂のために細胞を調製する短い相である(M期)。G2期及びM期は、両方とも2組の染色体を特徴とし、一緒にG2+M期とみなされることが多い。
短い有糸分裂期の間、真核細胞は、その細胞核中の染色体を2つの娘核における2つの同一のセットに分ける。一般に、有糸分裂後直ちに細胞質分裂が行われ、細胞質を2つの娘細胞に分離させて、細胞成分を等しく分ける。
細胞分裂の後、各娘細胞は、新しい周期の間期を始める。一時的に又は永続的に分割を停止した細胞は、休止又は老化の状態(G0)に入ったといわれる。
細胞周期の進行は、細胞周期の間高度な動的挙動を示す多くの細胞周期制御因子の所定の時間的及び空間的な発現、局在並びに破壊によって厳密に制御される。例えば、特定の細胞周期段階において、幾つかのタンパク質は核から細胞質に、又は細胞質から核に移動し、一部は急速に分解される。公知の細胞周期管理成分及び相互作用の詳細については、非特許文献5を参照されたい。細胞周期プロセスは、複雑且つ高度に制御されている。細胞周期における誤りは、アポトーシスを通じて細胞を死に至らしめる場合もあり、管理不可能な細胞分裂を導く場合もあり、場合によっては癌に至る。
細胞周期分析は、主に細胞周期のG0/G1、S及びG2/M期全体にわたる細胞の分布に関する研究を通じて、腫瘍サンプルの分析及び様々な刺激に対する増殖反応の研究に加えて、他の領域においても役立つことが証明されている。
DNA複製(S期)及び有糸分裂(M期)のタイミング及び相互依存は、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)の活性の周期的変動によって管理される。高等真核生物は、複数のCdkを有するが、酵母では、分裂酵母においてはCdc2及び出芽酵母においてはCdc28として知られている単一のCdkが細胞周期の進行に必要とされる。キナーゼ活性の波は、Cdkの制御性サイクリンサブユニットの細胞周期依存性の合成及び分解によってかなりの程度決定される。M期への移行は、関連キナーゼ活性が有糸分裂紡錘体の生成を促進するB型サイクリンの外観に依存する。出芽酵母では、S期(Clb3、4)及びG2期(Clb1、2)の間に生じる2対の関連するB型サイクリンが、紡錘体の形成及び伸長に関与している。
非特許文献6は、Clb2発現レベルに依存する真核細胞周期管理系の定量的挙動について記載している。Clb2過剰発現系の頑健性が喪失すると予測された。
細胞周期制御因子を含む一連の真菌制御因子は、真菌の代謝産物産生の収量を改善すると記載されている(特許文献1)。
プロデューサー細胞株からのタンパク質発現を改善する試みにおいて、組換え体p21又は別の細胞周期阻害剤タンパク質を共発現して単一細胞の生産性を高めることが行われている(特許文献2)。p21は、安定的且つ定量的に細胞周期を停止させるサイクリンキナーゼの汎用阻害剤である。したがって、その細胞増殖抑制効果に加えて細胞死又はアポトーシスの誘発を避けるように注意しなければならない。
特許文献3は、複製状態から生産状態(これは、偽老化状態である)に細胞を切り替える(RPスイッチ)ことによる細胞培養のタンパク質合成の延長について開示している。これは、細胞分裂を停止させる細胞周期ブロッカーを条件付で発現する形質転換細胞によって達成することができる。老化様状態への分化を誘導する細胞増殖を防ぐことによって、バイオプロダクトの収量を増加させることができる。
幾つかの方法を用いて、特定の期で細胞周期を停止させるか又は異なる期の細胞を分離することにより、細胞培養を同期させることができる。例えば、血清飢餓又はアルファ因子の添加は、G1期の細胞を停止させ、有系分裂のシェイクオフ(shake−off)、コルヒチン処理、及びノコダゾール処理は、M期の細胞を停止させ、また、5−フルオロデオキシウリジン処理は、S期の細胞を停止させる。
細胞培養物の生産期を延長する一般的な手段は、バイオマスがある程度成長したら基質を制限することである。同様に培養培地への添加剤は、細胞周期に影響を及ぼすと記載されている。特許文献4は、組換え型エリトロポイエチンの産生を増加させるためのCHO細胞培養物への抗生物質ノボビオシンの添加について開示している。ノボビオシンは、細胞周期の初期(M期前)の阻害剤として機能する。
非特許文献7は、同期され且つ停止したサッカロミセス・セレヴィシエの培養物について記載している。細胞周期依存性を研究するために、温度感受性cdc突然変異体及び阻害剤の両方を使用して同期性を誘導し、細胞周期の進行を停止させた。細胞周期は、許容的温度から抑制的温度に温度を切り替えることによるか又は細胞周期阻害剤を添加することにより停止した。
細胞の成長及び増殖を普遍的にブロッキングすることにより細胞停止及び初期のアポトーシスを有効に導くことができ、細胞培養の生産期間が短縮された。一般的に、細胞を増殖させずに生産期を延長することは、現在の技術状況では維持が非常に困難である。
国際公開第01/29073号パンフレット 国際公開第02/099100A2号パンフレット 国際公開第0216590A2号パンフレット 韓国特許第100254810B1号明細書
Marxら.Microb Cell Fact 7:23(2008年) Kurtzman CP.Int J Syst Evol Microbiol 55,973−976.(2005年) Maurerら.2006年,Micr.Cell Fact.5:37 doi:10.1 186/1475−2859−5−37 Zhangら.Biotechnol.Prog.2005年,21 :386−393 Alberghina L,Coccetti P,Orlandi I.Systems biology of the cell cycle of Saccharomyces cerevisiae:From network mining to system−level properties.Biotechnol Adv.2009年11−12月; 27(6):960−78 Cross et I.(Molecular Biology of the Cell(2005年)16:2129−2138) Uchiyamaら.(Biotechnol Bioeng 54:262−271(1997年))
本発明は、バイオプロダクトの収量を増加させるために細胞培養物の高生産期を延長することを目的とする。
この目的は、本願の実施形態の提供によって達成される。
本発明によれば、細胞培養物において対象ポリペプチド(POI)を産生させるための高プロデューサー細胞株を調製する方法であって、細胞周期のG2+M期が特異的に延長されるように真核細胞株を遺伝的に改変することを含む方法が提供される。
具体的には、前記方法は、細胞培養物において組み換え型の対象ポリペプチド(POI)を産生させる方法であって、真核細胞株を遺伝的に改変して、
− 前培養期において細胞周期のG2+M期を特異的に延長させ、そして、
− 前培養期の後の生産期において前記POIを産生させることを含む方法である。
前培養期における細胞培養(すなわち、培養中の細胞株)は、特に、細胞を成長させて、定常状態として細胞周期のG2+M期を確立する機能を有する。細胞培養条件を、本明細書において「産生期」とも呼ばれる生産期に切り替えることによって、有利なGS+M細胞周期状態を維持しながら、組み換え型POI及び最終的にはこのようなPOIによって媒介されるそれぞれの代謝産物が効率的に産生される。したがって、段階的培養方法は、第1の段階における高収量でPOIを産生することができる細胞の細胞培養物の濃縮、第2の段階におけるPOIの産生の両方を効率的に提供する。
具体的に、前記細胞株は、細胞周期の調節因子を発現させるために発現カセットがそのゲノム中に安定的に組み込まれている細胞株である。
前記細胞株は、好ましくは、具体的には細胞周期制御因子を過剰発現させるか、活性化するか、突然変異させるか、下方調節するか、欠損させるか、分解するか、阻害することによって、細胞周期制御因子を調節するように改変されることが好ましい。
本発明に従って使用される好ましい細胞周期制御因子は、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)、G1特異的サイクリン、G2/有系分裂特異的サイクリン等のCdk/サイクリン複合体、及び例えばClb2、Clb1、Clb3−6、Cln1−3、Cdc6、Cdc14、Cdc20、Cdc28、Cdc48、Cdh1、Kar1、Mad2、MBF、Mcm1、Pds1、Rrp42、SBF、Sic1、Swe1、Swi5、Whi2等のこれらの転写因子又は分解因子からなる群より選択される。
特定の実施形態によれば、前記細胞株は、細胞周期の調節因子及び前記POIを産生するように改変されているワイルドカードホスト細胞株又はプロデューサー細胞株である。
具体的には、好ましいPOIは、免疫グロブリン又は血清アルブミン等の血清タンパク質、酵素、ホルモン、シグナリング分子、マトリクスタンパク質、これらの断片若しくは誘導体、又はホスト細胞の代謝産物の産生を媒介するポリペプチドからなる群より選択される。
本発明に従って使用される真核細胞株は、好ましくは、真菌細胞、好ましくはピキア属の細胞等の酵母細胞、特にP.パストリスの株であるか、又は高等真核細胞、好ましくは、哺乳類若しくは植物の細胞である。
本発明は、更に、本発明に係る方法によって得ることができる高プロデューサー細胞株であって、例えば、工業的規模の生産条件下における細胞培養において、工業的又は技術的な酵素の場合、前記POIを産生するための少なくとも0.1μg/(g・h)、好ましくは、少なくとも0.1mg/(g・h)、より好ましくは少なくとも1mg/(g・h)の比生産性qを有する細胞株を提供する。
本発明は、更に、本発明に係る方法によって得ることができる高プロデューサー細胞培養物であって、細胞のうちの少なくとも50%が、フィード時間のうちの少なくとも50%であるプロセス時間にわたってG2+M期にある細胞培養物を提供する。
具体的には、前記細胞培養物は、少なくとも10時間にわたって、定常状態でこのようなG2+M分布を安定的に維持することができる。
具体的な態様によれば、前記細胞培養物は、流加細胞培養物又は連続細胞培養物である。
特に好ましい実施形態では、本発明の細胞培養物は、例えば、工業的又は技術的な酵素の場合、典型的には工業的規模の生産条件下において、例えば、100L〜10m以上の反応器溶液における流加培養を使用するか、数日間典型的なプロセス時間を使用するか、又は約50〜1000L以上の発酵槽容積における連続プロセスを使用して、約0.05〜0.15h−1の希釈速度で、少なくとも0.1μg/(L・h)、好ましくは少なくとも10μg/(L・h)、より好ましくは少なくとも0.1mg/(L・h)、更により好ましくは少なくとも1mg/(L・h)の容積生産性Qを有する。本発明によれば、更に、
a)細胞周期のG2+M期が特異的に延長されるように真核生産細胞株を遺伝的に改変することと、
b)前記生産細胞株を培養することと、
c)POIを含有する細胞培養物の画分を回収することとを含む、細胞培養物における組み換え型POIの産生の収量を増加させる方法が提供される。
具体的には、前記方法は、細胞培養物における組み換え型POIの産生の収量を増加させる方法であって、
a)細胞周期のG2+M期が特異的に延長されるように真核生産細胞株を遺伝的に改変することと、
b)前培養期において前記生産細胞株を培養して、細胞周期のG2+M期が延長されている定常状態の細胞培養物を得ることと、
c)前記前培養期の後の生産期において、前記定常状態の細胞培養物を培養してPOIを産生させることと、
c)前記POIを含有する前記細胞培養物の画分を回収することとを含む。
生産期における生産細胞株は、時に主培養物と呼ばれ、以下の実施例の章に例を提供する。
本発明の更なる態様によれば、組み換え型POIを産生する生産期、すなわち、細胞培養物における真核生産細胞株の組み換え型POI生産期を延長する方法であって、細胞周期のG2+M期が特異的に延長されるように前記細胞株を遺伝的に改変することを含む方法が提供される。
P.パストリスにおけるqとμとの関係。下側の線:野性型細胞における実際の関係。上側の線:生産性を最大化するための最適な関係。この図は、P.パストリス細胞培養物におけるFab発現の比生産性と細胞成長との関数関係を示す。曲線の勾配は、所与のμにおけるqのμに対する比を示し、これは、この所与のμで得ることができる産生物の力価の尺度である。したがって、最適収量は、高い初期成長速度に続く長期間にわたる生産期の定常状態によって得ることができる。 P.パストリスにおけるq、μ、及び細胞周期分布の関係。q(黒線)は、Monod関数に従ってμに依存する。G1期(単一の染色体セット、左側のバー)及びG2+M期(少なくとも二組の染色体セット、右側のバー)の細胞の比率は、qとG2+M期との正の相関を示す。 改変型P.パストリスにおけるqとμとの関係。正方形:対照(野性型株)。三角形:Clb2過剰発現株における改善された関係。 改変型P.パストリスにおけるμと細胞周期分布との関係。左側のバー:G1期の細胞の比率、右側のバー:G2+M期の細胞の比率。
したがって、本発明は、G2+M期の特異的な延長又は細胞培養物におけるG2+M期の真核細胞の数の相対的な増加が、POIを産生するための生産性の高いバイオファクトリー装置をもたらすという有利な効果に基づく。これは、細胞周期のG2+M期を延長させるエフェクター分子を安定的に発現するゲノム修飾を有する組み換え型細胞株を得るために細胞株を遺伝的に改変することにより行われる。驚くべきことに、それぞれの細胞培養物が低い比増殖速度において高収量でPOIを安定的に産生することができ、それによって容積収量が増加することが判明した。したがって、本発明のプロデューサー細胞株は、流加プロセスだけではなく、連続生産プロセスにおいても有用であり、そこでは、G2+M細胞の比率が長い生産時間にわたって高レベルで維持されるように細胞培養物が維持される。
本発明で使用する用語「細胞周期調節因子」は、細胞周期管理系の細胞周期阻害剤、キナーゼ若しくは他の酵素、又は補因子をアップレギュレート又はダウンレギュレートするエフェクター分子を指す。この用語は、細胞周期制御因子を含むものとし、また、細胞周期プロセスに能動的に関与するこのようなエフェクター分子、細胞周期阻害剤、又はそれぞれの酵素のアゴニスト又はアンタゴニスト、活性化剤又は阻害剤も指すものとする。細胞周期調節因子は、調節活性の証明されている細胞周期管理機序の生理学的エフェクター、合成剤若しくは化学物質、又は生物学的物質であってよい。したがって、細胞周期調節因子は、細胞周期の制御に対して直接的又は間接的な効果を有する。このような化合物は、当業者が先行技術から作製することができ、ひいては、標準的な手段により真核細胞の細胞周期に対する効果について試験することができる。
用語「細胞周期制御因子」は、真核細胞の細胞周期の制御に能動的に関与する生理学的な、場合によっては内因性の物質を指すものとする。
用語「細胞株」は、長期間にわたって増殖する能力を獲得した特定の細胞種の確立されたクローンを指すものとする。用語「ホスト細胞株」は、組み換え型遺伝子を発現させてポリペプチド又はこのようなポリペプチドにより媒介される細胞代謝産物を産生させるために用いられる細胞株を指す。生産ホスト細胞株は、一般的に、生産プロセスにおいて遺伝子産物を得るためにバイオリアクターにおいて培養する準備が整っている細胞株であると理解される。
用語「発現」又は「発現系」又は「発現カセット」は、機能的に連結された所望のコーディング配列及び管理配列を含み、その結果、これら配列で形質転換又はトランスフェクトされたホストが、コードされているタンパク質を産生することができるようになる核酸分子を指す。形質転換を行うために、発現系がベクターに含まれていてよいが、関連するDNAもホストの染色体に組み込まれていてよい。
本発明で使用する「発現ベクター」又は「ベクター」は、クローニングされた組み換え型ヌクレオチド配列、すなわち、組み換え型遺伝子の転写、及び好適なホスト生物におけるそのmRNAの翻訳に必要なDNA配列として定義される。このような発現ベクターは、通常、ホスト細胞における自律複製開始点、選択マーカー(例えば、アミノ酸合成遺伝子又はゼオシン、カナマイシン、G418、若しくはハイグロマイシン等の抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子)、多数の制限酵素切断部位、好適なプロモータ配列、及び転写ターミネータを含み、これら構成要素同士は、機能的に連結されている。本発明で使用する用語プラスミド及びベクターは、自律複製ヌクレオチド配列に加えて、ゲノムに組み込まれるヌクレオチド配列を含む。
用語「真核生物ホスト」は、培養してPOI又はホスト細胞の代謝産物を発現させることができる任意の真核細胞又は真核生物を意味するものとする。この用語がヒトを含まないことは十分に理解されている。
G2/M期又はG2/Mスイッチとも呼ばれる用語「細胞周期のG2+M期」は、合成期(S)後の短い細胞周期の期であって、細胞が少なくとも2組の染色体を有し、分裂のための準備及び有糸分裂(M)のための処理が行われる期を意味するものとする。G2+M期の後は、1組の染色体を特徴とする期に入る。
用語「ポリペプチド」は、2以上のアミノ酸、典型的には少なくとも3アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸、より好ましくは少なくとも30アミノ酸、より好ましくは少なくとも50アミノ酸を含むタンパク質又はペプチドを指す。この用語は、タンパク質等の高分子量ポリペプチドも指す。以後、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」を互換的に使用する。
本発明で使用する用語「対象ポリペプチド」又はPOIは、ホスト細胞で産生されるバイオプロダクトを指す。より具体的には、ホスト細胞中では天然に存在しないポリペプチド、例えば異種タンパク質が産生される。他のポリペプチドは、ホスト細胞に対してネイティブな、例えば同種タンパク質であってもよいが、例えば、POIをコードする核酸配列を含む自己複製ベクターで形質転換することにより、又はホスト細胞のゲノムにPOIをコードする核酸配列が1コピー以上組み換え技術により組み込まれたとき、又はPOIをコードする遺伝子、例えばプロモータ配列の発現を管理する1以上の制御配列の組み換え修飾により産生される。場合によっては、本発明で使用する用語POIは、組み換えにより発現したタンパク質によって媒介されたとき、ホスト細胞によって産生される任意の代謝産物を指す。
用語「ワイルドカードホスト細胞」とは、細胞周期調節因子をコードする遺伝子等の制御遺伝子を含むように遺伝的に改変することにより調製されるか、又は対象遺伝子(GOI)を組み込む準備が整っているホスト細胞を意味するものとする。したがって、ワイルドカード細胞株は、任意の所望のPOIを発現する能力を特徴とする、予め形成されているホスト細胞株である。これは、例えば、部位特異的リコンビナーゼにより媒介されるカセット交換又は相同組み換えを用いて生物医薬を産生するための、発現ホスト細胞株とも呼ばれるプロデューサー細胞株を作製するための革新的な「ワイルドカード」ストラテジに従う。このような新規ホスト細胞は、再生可能で非常に効率的な生産細胞株を得るために、例えば、数日間以内に所定のゲノム発現ホットスポットへのGOIのクローニングを促進する。
酵母ピキア・パストリスのq、μ、及び他の細胞特性の関係を求めているとき、驚くべきことに、qがホスト細胞の細胞周期分布にも関連していることが見出された(図2)。細胞周期のG2+M期にある細胞がより多い場合、培養物の生産性がより高いことが見出された。これら予想外のデータから、細胞周期の期の分布が低μで変化するように細胞を改変した場合、野性型と比べてより多くの細胞が細胞周期のG2+M期であるようになり、より優れた細胞特性が得られると結論付けられた。
したがって、本発明によれば、低μで高qを示し、それによってPOIを産生する細胞培養物の生産期が延長されたホスト細胞が得られた。
本発明の方法により、q及び産生物濃度の両パラメータは、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%増加する。
本発明に従って得られる高い生産性は、具体的には、少なくとも3μg産生物/g乾燥バイオマスであるq/μ比を特徴とする。
好ましくは、得られる容積収量は、0.01〜10mg/(L・h)、好ましくは1mg/(L・h)の範囲である。
本発明によれば、長期間にわたって定常状態におけるG2+M細胞周期段階で細胞を維持するように細胞周期管理機序が調節されている細胞変異体が調製され、これは、野性型と比べて全体的な生産性が高く且つ産生物の濃度も高いことが証明された。
比較的短い細胞周期のG2+M期を効率的に延長させることにより、好ましくは、ホスト細胞培養物におけるG2+M細胞の割合を高くすることができる。本発明に係る工業的プロセスで使用される生産細胞株において達成されるG2+M段階の細胞の好ましい含有率は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%から90%以下である。
生産期の定常状態は、細胞培養物におけるG2+M細胞の所望の占有率が長期間にわたって維持される場合に達成される。好ましくは、定常状態は、フィーディング時間の大部分、好ましくはフィーディング時間の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%にわたって維持される。典型的に、定常状態は、流加プロセスにおいて少なくとも10時間、好ましくは少なくとも15時間、より好ましくは少なくとも20時間のプロセス時間にわたって維持され、これは、細胞培養物の生産期を反映している。連続プロセスでは、プロセス時間を更により延長することができた。
典型的に、細胞集団の細胞周期状態は、細胞核のDNA内容物を染色する蛍光色素を用いてフローサイトメトリーにより求めることができる。フローサイトメトリーは、集団内の細胞の全体的な細胞周期分布を調べるのにも適している。細胞のDNA含有量に関する定量的情報により、細胞周期のG1、S、及びG2+M期の細胞の相対数を求めることができる。細胞核のDNA含有量は、細胞周期中合理的に予測可能な方式で変動するので、細胞周期の異なる期の間で細胞の相対的分布をモニタすることができる。この技術では、通常、G2期又はM期への細胞の割当てが曖昧であること起因して、任意の個々の細胞の細胞周期の位置を正確には決定できない。したがって、G2+M段階の細胞分布の合計を求める。
遺伝的改変の標的は、好ましくは、特異的に過剰発現、活性化、突然変異、下方調節、分解、又は阻害することができる細胞周期制御因子である。過剰発現は、例えば、高生産発現カセットの使用を通して又は細胞周期制御因子をコードする更なる遺伝子を導入することを通して、細胞周期制御因子の更なるコピーを発現させることにより達成される。リン酸化を通じたキナーゼの活性化は、例えば、それぞれのリン酸化因子及び補因子により補助される。細胞周期制御因子は、分解耐性突然変異体を提供するように修飾してもよい。細胞周期制御因子を下方調節するための例示的な手段は、siRNA、アンチセンスRNA、又はマイクロRNAを用いてそれぞれの遺伝子をサイレンシングすることである。また、細胞周期制御因子は、それぞれの酵素又は阻害剤の濃度又は活性を増加させることにより、例えば、特定のプロテアーゼ又はキナーゼの活性を調節することにより、分解又は阻害することもできる。
具体的な実施形態によれば、ノックアウトホスト細胞を使用してもよく、これは、細胞周期制御因子をコードする遺伝子を破壊して、その発現を下方調節するか又は発現しないようにするものである。ノックアウトホスト細胞は、それぞれの遺伝子を部分的に又は完全にノックダウンする方法により作製することができる。遺伝子の機能又は発現を下方調節するか又はなくす場合、得られる細胞又は生物もノックアウトと呼ぶ場合がある。ノックダウン細胞及び生物を作製する方法の1つの実施形態は、遺伝子をノックダウンする細胞又は生物に前記遺伝子又はその制御配列を標的とするRNAを導入し、得られる細胞又は生物をアンチセンスRNAが生じる条件下で維持し、それぞれのmRNA又はその制御配列を分解又は不活化して、ノックダウン細胞又は生物を作製することを含む。
別の実施形態では、ノックダウン細胞又は生物は、遺伝子の欠損、又はプロモータの交換、又は温度感受性突然変異体の作製によって作製される。
細胞周期調節因子を発現させるためのホスト細胞を改変するために、発現カセットをホスト細胞のゲノムに安定的に組み込んでもよい。1以上の細胞周期調節因子を含む適切な発現ベクターを構築してよく、適切な手段によってG2+M期の分布に対するその効果を求めることができる。
得られた共発現POIの収量を野性型と比較して、POIの発現に対する調節因子の効果を求めることができる。実験手順の詳細な記載は、以下の実施例の章に見出すことができる。
好ましくは、細胞周期調節因子を発現する発現カセットをホスト細胞のゲノムに安定的に組み込んで、本発明に係るホスト細胞株を調製することができた。好ましい実施形態によれば、細胞周期制御因子Clb2又は他の細胞周期制御因子、例えば更なるG2/有糸分裂特異的サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)、及びこれらの制御因子、例えば、Clb2、Clb1、Clb3−6、Cdc14、Cdc20、Cdc28、Mad2、Pds1、Rrp42、Whi2は、このような細胞周期制御因子をコードする遺伝子を導入して、コピー数及びそれぞれの活性を増加させることにより過剰発現させことができる。それによって、細胞は、実際に、野性型に比べて低μでqPがより高いことが証明された。
適切な細胞周期調節因子とPOIとを共発現させることにより、同等の条件下で、野性型と少なくとも同じ、又は少なくとも約1.3倍、又は少なくとも約2倍、又は少なくとも約3倍、4倍、5倍から最高10倍収量を増加させることが可能である。
ワイルドカード細胞株は、第1段階としてそれぞれの細胞周期調節因子を産生するようにホスト細胞を改変することにより調製することができる。次いで、ワイルドカード細胞株を、POIを発現するように改変された産生細胞株に変化させてもよい。
あるいは、細胞周期調節因子をコードする遺伝子と更なる対象遺伝子とで同時にホスト細胞の組み換えを行ってもよい。
更に、ホスト細胞を、先ずPOIを発現するように改変し、次いで、細胞周期調節因子をコードする遺伝子を用いて組み換えを行ってもよい。
POIは、任意の真核生物、原核生物、又は合成のポリペプチドであってよい。それは、天然に分泌されるタンパク質、又は細胞内タンパク質、すなわち、天然では分泌されないタンパク質であってよい。本発明は、また、天然のタンパク質の機能的相同体、機能的に等価な変異体、誘導体、及び生物活性断片の組み換えによる産生を提供する。機能的相同体は、好ましくは、配列が同一であるか又は対応し、そして、配列の機能的特徴を有する。
本発明で言及するPOIは、抗体又は抗体断片、成長因子、ホルモン、酵素、ワクチン等の生物医薬物質として適切なタンパク質、又は例えば酵素等の工業的用途に使用することができるタンパク質であってよいが、これに限定されない。好ましいPOIは、免疫グロブリン又は血清アルブミン等のヒト血清タンパク質、酵素、ホルモン、シグナリング分子、マトリクスタンパク質、これらの断片若しくは誘導体、又はホスト細胞代謝産物の産生を媒介するポリペプチドからなる群より選択される。POIは、好ましくは、異種組み換えポリペプチド又はタンパク質であり、これは、有利なことに、好ましくは分泌タンパク質として、真核細胞、好ましくは酵母細胞において産生させことができる。産生されるタンパク質の好ましい例は、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、アプロチニン、組織因子経路阻害剤、又は他のプロテアーゼ阻害剤、及びインスリン又はインスリン前駆体、インスリン類似体、成長ホルモン、インターロイキン、組織プラスミノーゲン活性化因子、形質転換増殖因子a又はb、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン様ペプチド2(GLP−2)、GRPP、第VII因子、第VIII因子、第XIII因子、血小板由来の成長因子l、血清アルブミン、リパーゼ又はプロテアーゼ等の酵素、あるいはこれらのタンパク質のうちの任意の1つの機能的類似体である。本発明では、用語「機能的類似体」は、ネイティブなタンパク質と同様の機能を有するポリペプチドを指すことを意味する。ポリペプチドは、ネイティブなタンパク質と構造的に類似していてよく、また、C末端及びN末端のいずれか若しくは両方又はネイティブなタンパク質の側鎖に対する1以上のアミノ酸の付加、ネイティブなアミノ酸配列の1つの部位又は多数の異なる部位における1以上のアミノ酸の置換、ネイティブなタンパク質の一方若しくは両方の末端又はアミノ酸配列の1つ若しくは幾つかの部位における1以上のアミノ酸の欠失、あるいはネイティブなアミノ酸配列の1以上の部位における1以上のアミノ酸の挿入によって、ネイティブなタンパク質から誘導され得る。このような修飾は、上述のタンパク質の一部についてよく知られている。
組み換え型POIは、典型的に、このようなPOIをコードする組み換え型対象遺伝子を含む組み換え型生産細胞株を通して組み換え技術によって産生される。本発明に従って産生されるこのようなPOIは、細胞周期調節因子又は細胞周期制御因子ではないが、場合によっては、同じ細胞培養物により産生される任意の組み換え型細胞周期調節因子に加えて組み換え型産生物として産生され得る。
また、POIは、生化学反応又は幾つかの反応のカスケードの産生物を得るために、例えば、ホスト細胞の代謝産物を得るために、ホスト細胞において生化学反応をもたらす基質、酵素、阻害剤、又は補因子から選択してもよい。例示的な産生物は、リボフラビン等のビタミン、有機酸、及びアルコール又は抗生物質であってよく、これらは、本発明に係る組み換え型のタンパク質又はPOIの発現後に高い収量で得ることができる。
一般的に、組み換え型産生物を発現するホスト細胞は、POIの組み換え発現に適した任意の真核細胞であってよい。
本発明に係るホスト細胞として用いられる好ましい酵母細胞の例としては、サッカロミセス属(例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ)、ピキア属(例えば、P.パストリス又はP.メタノリカ(P.methanolica))、コマガタエラ属(K.パストリス、K.シュードパストリス、又はK.ファフィ)、ハンセヌラ・ポリモルファ又はクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)が挙げられるが、これらに限定されない。より新しい文献では、ピキア・パストリスがコマガタエラ・パストリス、コマガタエラ・ファフィ、及びコマガタエラ・シュードパストリスに分類され、再命名されている。本明細書では、ピキア・パストリスを、コマガタエラ・パストリス、コマガタエラ・ファフィ、及びコマガタエラ・シュードパストリスの全ての同義語として用いる。
本発明に従って好ましく用いられる酵母プロデューサー生物は、培養時に多量の対象異種タンパク質又はポリペプチドを産生する任意の好適な酵母生物であってよい。適切な酵母生物の好ましい例は、酵母の種サッカロミセス・セレヴィシエ、サッカロミセス・クライベリ(Saccharomyces kluyveri)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)、クルイベロミセス・ラクチス、ハンセヌラ・ポリモルファ、ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、ピキア・クライベリ、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、カンジダ属の種、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、ゲオトリクム属(Geotrichum)の種、及びゲオトリクム・ファーメンタンス(Geotrichum fermentans)から選択される株である。
最も好ましい酵母ホスト細胞は、ピキア属又はコマガタエラ属等のメチロトローフ酵母、例えば、ピキア・パストリス又はコマガタエラ・パストリス又はコマガタエラ・ファフィ又はコマガタエラ・シュードパストリスに由来する。ホストの例としては、P.パストリス等の酵母が挙げられる。P.パストリス株の例としては、CBS704(=NRRL Y−1603=DSMZ70382)、CBS2612(=NRRL Y−7556)、CBS7435(=NRRL Y−11430)、CBS9173−9189及びDSMZ70877(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)だけではなく、Invitrogen製の株、例えば、X−33、GS115、KM71及びSMD1168も挙げられる。S.セレヴィシエ株の例としては、W303、CEN.PK及びBY−シリーズ(EUROSCARF collection)が挙げられる。上記株は全て、形質転換体を作製し、異種遺伝子を発現することに成功している。
哺乳類、昆虫、又は植物の細胞等の適切な高等真核細胞の例は、CHO、Per.C6、HEK293、Sf−9、タバコ(Nicotiana tabacum)NT−1又はBY−2である。
一般的に、本発明で言及する対象タンパク質は、当業者に周知の組み換え発現法によって産生させることができる。本発明によれば、当技術分野の範囲内の従来の分子生物学、微生物学、及び組み換えDNA技術を使用することができる。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Maniatis,Fritsch&Sambrook,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(1982)を参照されたい。
組み換えタンパク質の産生を改善するために提供される、本発明に従って使用されるホスト細胞を改変するために用いることができるヌクレオチド配列は、種々の起源から得ることができる。プロモータの起源は、好ましくは、酵母細胞、最も好ましくはピキア属等のメチロトローフ酵母である。好ましい同種起源のヌクレオチド配列は、同じ属のホスト細胞への組み込みを促進して、POIの安定的な産生を可能にし、工業的製造プロセスにおける収量を増加させることができる。他の適切なホストに由来する異種の機能的に等価なヌクレオチド配列を使用してもよい。
適切な発現ベクターは、真核ホスト細胞における異種ポリペプチド又はタンパク質をコードするタンパク質の発現に適した制御配列を含む。制御配列の例としては、プロモータ、オペレータ、及びエンハンサ、リボソーム結合部位、並びに転写及び翻訳の開始及び終結を制御する配列が挙げられる。制御配列は、DNA配列が発現するように機能的に連結させることができる。例えば、プロモータ配列は、プロモータがコーディング配列の転写を管理する場合、コーディング配列に機能的に連結しているといわれる。
本発明によれば、細胞周期調節因子をコードするヌクレオチド配列と、POIをコードするヌクレオチド配列とに機能的に連結されている制御配列を含み、場合によりそれに機能的に連結されている制御配列を更に使用するP.パストリスホストを提供することが好ましい。
好ましい実施形態によれば、本発明に係る方法は、POIをコードする組み換え型ヌクレオチド配列を使用し、これは、1細胞当たり1コピー又は複数コピー、ホスト細胞のゲノムに組み込むのに適したプラスミドで提供される。また、POIをコードする組み換え型ヌクレオチド配列は、1細胞当たり1コピー又は複数コピー、自律複製プラスミドで提供してもよい。
本発明に係る好ましい方法は、真核発現ベクター、好ましくは酵母発現ベクターであるプラスミドを使用する。発現ベクターとしては、クローニングベクター、修飾クローニングベクター、及び特別に設計されたプラスミドを挙げることができるが、これらに限定されない。本発明で使用する好ましい発現ベクターは、ホスト細胞における組み換え型遺伝子の発現に適した任意の発現ベクターであってよく、ホスト生物に依存して選択される。組み換え型発現ベクターは、ホスト生物のゲノム中で複製することができるか又は前記ゲノムに組み込むことができる任意のベクターであってよく、ホストベクターとも呼ばれ、例えば、酵母ベクター等である。好ましい酵母発現ベクターは、ハンセヌラ属、ピキア属、カンジダ属、及びトルロプシス属によって表されるメチロトローフ酵母からなる群より選択される酵母において発現させるためのベクターである。
本発明では、ベクターとしてpPICZ、pGAPZ、pPIC9、pPICZalfa、pGAPZalfa、pPIC9K、pGAPHis又はpPUZZLEに由来するプラスミドを使用することが好ましい。
ホスト細胞において組み換え型ヌクレオチド配列を発現させるために、発現ベクターは、例えば、シグナルペプチド遺伝子の上流等、コーディング配列の5’末端に隣接する機能的プロモータを有する組み換え型ヌクレオチド配列を提供することができる。それによって、このプロモータ配列により転写が制御され、開始される。
プロモータは、ホスト細胞において転写活性を示す任意の適切なDNA配列であってよく、ホストと同種又は異種のタンパク質をコードする遺伝子に由来してよい。プロモータは、好ましくは、ホスト細胞と同種のタンパク質をコードする遺伝子に由来する。プロモータは、内因性のプロモータであってもよく、ホスト細胞とは異種であってもよい。
哺乳類ホスト細胞で使用することができる適切なプロモータ配列としては、ウイルスのゲノムから得られるプロモータ、異種の哺乳類のプロモータ、例えば、アクチンプロモータ又は免疫グロブリンプロモータ、及び熱ショックタンパク質プロモータを挙げることができるが、これらに限定されない。プロモータは、真核ホスト細胞、特に酵母で機能し得る限り、任意の特定の種に限定されない。
酵母ホスト細胞で使用するのに更に適したプロモータ配列としては、細胞内において高濃度で存在することが知られている代謝酵素、例えば、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、アルコールオキシダーゼ(AOX)、ラクターゼ(LAC)及びガラクトシダーゼ(GAL)等の解糖系の酵素をコードする遺伝子から得られるプロモータを挙げることができるが、これらに限定されない。
適切なプロモータの好ましい例は、酵母のプロモータであり、これは、酵母細胞において遺伝子を転写させるためのプロモータとして機能するDNA配列を含む。好ましい例は、S.セレヴィシエのMaI、TPI、CUP、ADH、若しくはPGKプロモーター、又はP.パストリスのグルコース−6−リン酸イソメラーゼプロモーター(PPGI)、3−ホスホグリセレートキナーゼプロモーター(PPGK)若しくはグリセルアルデヒド−3−リン酸、デヒドロゲナーゼプロモーターPGAP、アルコールオキシダーゼプロモーター(PAOX)、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモーター(PFLD)、イソシトレートリアーゼプロモーター(PICL)、翻訳延長因子プロモーター(PTEF)、及びP.パストリスのエノラーゼ1(PENO1)、トリオースリン酸イソメラーゼ(PTPI)、アルファケトイソカプロン酸デカルボキシラーゼ(PTHI)、リボソームサブユニットタンパク質(PRPS2、PRPS7、PRPS31、PRPL1)、熱ショックタンパク質ファミリーのメンバー(PSSA1、PHSP90、PKAR2)、6−ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(PGND1)、ホスホグリセリン酸ムターゼ(PGPM1)、トランスケトラーゼ(PTKL1)、ホスファチジルイノシトールシンターゼ(PPIS1)、フェロ−O2−オキシドレダクターゼ(PFET3)、高親和性鉄パーミアーゼ(PFTR1)、抑制可能アルカリホスファターゼ(PPHO8)、N−ミリストイルトランスフェラーゼ(PNMT1)、フェロモン応答転写因子(PMCM1)、ユビキチン(PUBI4)、一本鎖DNAエンドヌクレアーゼ(PRAD2)のプロモータ、及びミトコンドリア内膜の主なADP/ATPキャリアのプロモーター(PPET9)である。
好ましい発現系では、プロモータは、誘導可能な又は構成的なプロモータである。
本発明の好ましい実施形態によれば、組み換え型コンストラクトは、関連する遺伝子をベクターにライゲーションすることにより得られる。これら遺伝子は、このようなベクターを用いてホスト細胞を形質転換することによりホスト細胞のゲノムに安定的に組み込むことができる。遺伝子によってコードされるポリペプチドは、このようにして得られた形質転換体を適切な培地中で培養し、発現したPOIを培養物から単離し、特に夾雑タンパク質からPOIを分離するための、発現した産生物に適した方法によって精製することにより、組み換え型ホスト細胞株を用いて産生させることができる。
DNA配列、例えば、それぞれ細胞周期調節因子及び/又はPOI、プロモータ、並びにターミネータをコードするDNA配列をライゲーションし、組み込み又はホストの複製に必要な情報を含む適切なベクターに挿入するために用いる手順は、当業者に周知であり、例えば、J.Sambrookら.,「Molecular Cloning 2nd ed.」,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)に記載されている。
組み込みの標的として細胞周期調節因子及び/又はPOIをコードする遺伝子を用いる1以上のベクターは、前記調節因子及び/又はPOIをコードするDNA配列全体を含むDNAコンストラクトを先ず調製し、次いで、前記コンストラクトを1以上の適切な発現ベクターに挿入するか、又は個々の遺伝子に関する遺伝情報を含むDNA断片を順次挿入し、次いでライゲーションすることにより構築できることが理解されるであろう。
マルチクローニングサイトを有するベクターであるマルチクローニングベクターも、本発明に従って用いることができ、ここでは、所望の遺伝子をマルチクローニングサイトに組み込んで発現ベクターを提供することができる。発現ベクターでは、プロモータは、POIの遺伝子の上流に配置され、遺伝子の発現を制御する。マルチクローニングベクターの場合、POIの遺伝子がマルチクローニングサイトに導入されるので、プロモータは、マルチクローニングサイトの上流に配置される。
真核ホスト細胞においてPOIを発現及び分泌させるための幾つかの異なるアプローチが好ましい。所望のタンパク質と本発明に係る制御エレメントのうちの少なくとも1つとをコードするDNAを有する発現ベクターで真核生物を形質転換し、形質転換された生物の培養物を調製し、培養物を増殖させ、培養培地からタンパク質を回収することにより、タンパク質は発現、処理、及び分泌される。使用されるシグナルペプチドは、本発明に係るシグナルペプチドであってもよく、あるいは、例えば、異種シグナルペプチド、又はネイティブなシグナルペプチドと異種シグナルペプチドとのハイブリッドであってもよい。シグナルペプチドの機能は、異種タンパク質を分泌させて、小胞体に入れることである。シグナルペプチドは、通常、このプロセスの過程で切断される。シグナルペプチドは、タンパク質を産生するホスト生物と異種又は同種であってよい。
本発明に係る組み換え型ホスト細胞を得るために提供されるDNAコンストラクトは、例えば、ホスホラミダイト法等の確立されている標準的な方法によって合成的に調製することができる。また、DNAコンストラクトは、ゲノミックDNA又はcDNA由来であってよく、例えば、ゲノミックDNA又はcDNAのライブラリーを調製し、標準的な技術に従って合成オリゴヌクレオチドプローブを用いてハイブリダイゼーションすることによりPOIの全て又は一部をコードするDNA配列をスクリーニングすることによって得ることができる。最後に、DNAコンストラクトは、合成DNA、ゲノミックDNA、又はcDNA由来の断片、適切な場合、DNAコンストラクト全体の様々な部分に対応する断片を標準的な技術に従ってアニーリングすることにより調製される、合成DNAとゲノミックDNAとの混合、合成DNAとcDNAとの混合、又はゲノミックDNAとcDNAとの混合であってよい。
本発明に係る形質転換体は、ベクターDNA、例えばプラスミドDNA等をホストに導入し、高収量でPOI又はホスト細胞代謝産物を発現する形質転換体を選択することにより得ることができる。ホスト細胞を処理して、電気パルス法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、及びこれらの変法等の真核細胞の形質転換に従来用いられる方法により外来DNAを組み込むことができるようにする。P.パストリスは、好ましくは、エレクトロポレーションによって形質転換される。
別の実施形態では、酵母発現ベクターは、例えば、相同組み換えにより酵母ゲノムに安定的に組み込むことができる。
本明細書に開示する方法は、更に、好ましくは分泌型でPOIを発現させることができる条件下において前記組み換え型ホスト細胞を培養することを含んでよい。次いで、分泌された、組み換えによって産生されたPOI又はホスト細胞代謝産物を、細胞培養培地又は他の細胞培養画分から単離し、当業者に周知の技術によって更に精製してよい。
本発明に係る好ましい方法は、
a)細胞周期のG2+M期が特異的に延長されるように真核生産細胞株を遺伝的に改変することと、
b)前記生産細胞株を培養することと、
c)POIを含有する細胞培養物の画分を回収することとを含む、細胞培養物における組み換え型POIの産生の収量を増加させる方法を提供する。
適切な培養技術は、バッチ期で始まり、次いで、高比増殖速度における短い対数流加期、更に、低比増殖速度における流加期に続くバイオリアクターにおける培養を含んでよい。別の適切な培養技術は、バッチ期に続いて低希釈速度における連続培養期を含んでよい。好ましい発酵技術は、回分培養、流加培養、又は連続培養である。
工業的規模の生産条件は、例えば、約0.05〜0.15h−1の希釈速度で、典型的な数日間のプロセス時間を使用する100L〜10m以上の反応器容積における流加培養、又は約50〜1000L以上の発酵槽容積における連続プロセスを指す。
本発明の高プロデューサー細胞培養物は、例えば、G2+M期を延長する特定の培養技術により、組み換え型細胞周期調節因子の影響を受けることなく得ることもできる。特に、最適成長温度を下回る温度等の温度、断続的フィード管理等の基質供給、又は基質若しくは化学物質のパルシング等が制御されている条件である。それによって、細胞培養物の高い生産性を補助するのに適切であるので、細胞培養物は、定常状態で所望のG2+M分布を維持することができる。
本発明に係る形質転換ホスト細胞は、細胞周期調節因子をコードする遺伝子で細胞を形質転換することにより得られる、及び/又はPOI遺伝子は、好ましくは、先ず異種タンパク質の発現の負担なく効率的に多数の細胞に増殖する条件で培養してよい。細胞株をPOI発現のために調製し、細胞培養物が典型的に10g/L細胞乾燥重量の細胞密度に達した場合、培養技術は、発現産物を産生するように選択される。
増殖条件下でバイオリアクター内にて本発明に係るホスト細胞株を培養して、少なくとも1g/L細胞乾燥重量、より好ましくは少なくとも10g/L細胞乾燥重量、好ましくは少なくとも50g/L細胞乾燥重量、150未満、又は200未満、好ましくは100未満の細胞密度を得ることが好ましい。
誘導刺激を用いて形質転換体を増殖させる場合、細胞周期調節因子を活性化させてG2+M定常状態を達成することができ、POIが発現する。誘導刺激は、好ましくは、熱、又はカドミウム、銅、浸透圧上昇剤、過酸化水素、エタノール、メタノール、メチルアミン等の添加である。あるいは、遺伝子発現は、例えば、グルコース又はチアミンの除去又は希釈等により、抑制解除により刺激することもできる。
好ましくは、酵母は、適切な炭素源を含む無機培地中で培養され、それによって、単離プロセスを更に著しく簡略化される。好ましい無機培地の例は、例えば、栄養要求性を補完するために、利用可能な炭素源(例えば、グルコース、グリセロール又はメタノール)、マクロ要素(カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、塩化物、硫酸塩、リン酸塩)及び微量元素(銅、ヨウ化物、マンガン、モリブデン酸塩、コバルト、亜鉛、及び鉄塩、及びホウ酸)を含有する塩類、及び場合によりビタミン又はアミノ酸を含有する培地である。
パイロット規模又は工業的規模のPOI生産を提供することが有利である。工業的プロセス規模は、好ましくは、少なくとも50L、好ましくは少なくとも1m、好ましくは少なくとも10m、最も好ましくは少なくとも100mの容積を使用する。
POIは、好ましくは、少なくとも1mg/L、好ましくは少なくとも10mg/L、好ましくは少なくとも100mg/L、最も好ましくは少なくとも1g/Lの収量を生産する条件を使用して発現する。
本発明に係るホスト細胞は、好ましくは、以下の試験のうちの少なくとも1つによって発現能又は収量について試験される:ELISA、活性アッセイ、HPLC、又は他の適切な試験。
形質転換された細胞は、所望のPOIを発現させるのに適切な条件下で培養され、前記POIは、発現系及び発現したタンパク質の性質、例えば、タンパク質がシグナルペプチドに融合しているかどうか及びタンパク質が可溶性であるか膜結合型であるかに依存して細胞又は培養培地から精製することができる。当業者であれば理解できる通り、培養条件は、使用されるホスト細胞の種類及び具体的な発現ベクターを含む要因に従って変動する。
細胞培養物の特定の画分を回収して、バイオプロダクトとしてPOIを得ることが好ましい。典型的に、細胞培養物の上清は、例えば、分泌されたPOIを得るために回収される。POIの特徴に依存して、細胞内画分又は細胞残渣から回収することができる。例えば、培養された形質転換細胞を超音波により、又は機械的に、酵素的に、若しくは化学的に破壊して、所望のPOIを含有する細胞抽出物を得、それからPOIを単離及び精製してよい。酵母細胞からの組み換え型発現産物の分泌は、一般的に、精製プロセスを容易にすることを含む理由のために有利であるが、それは、酵母細胞が破壊されて細胞内タンパク質を放出したときに得られるタンパク質の複雑な混合物からではなく、培養物の上清から産生物を回収することができるためである。
所望の化合物は、典型的に、当技術分野の技術状況を用いて単離及び精製することができる。
組み換え型ポリペプチド又はタンパク質産生物を得るための単離及び精製法として、塩析及び溶媒沈澱等の溶解度の差を利用する方法、限外濾過及びゲル電気泳動等の分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー等の電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動等の等電点の差を利用する方法を使用することができる。特定の精製工程は、好ましくは、共発現し且つPOI調製物に混入する任意の細胞周期調節因子を分離するために使用される。
高度に精製された産生物は、本質的に夾雑タンパク質を含まず、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は更には少なくとも98%から100%以下の純度を有する。精製された産生物は、細胞培養物の上清の精製によって又は細胞残渣から得ることができる。
単離及び精製されたPOIは、ウエスタンブロッティング又はその活性アッセイ等の従来の方法により同定することができる。精製された化合物の構造は、アミノ酸分析、アミノ末端分析、一次構造分析等により規定することができる。化合物を大量に且つ高純度で得、それによって、医薬組成物における活性成分として用いるのに必要な要件を満たすことが好ましい。
本発明に係る好ましいホスト細胞株は、本発明に従って使用される遺伝的特性を維持し、発現レベルは、約20培養世代、好ましくは少なくとも30世代、より好ましくは少なくとも40世代、最も好ましくは少なくとも50世代後でさえも、例えば、少なくともμgレベルと高いままである。組み換え型ホスト細胞は、驚くべきことに安定であり、これは、工業的規模のタンパク質生産に用いる場合非常に有利である。
本発明は、以下の実施例に更に詳細に記載されるが、これは、いかなる方法であっても本発明の請求の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1. 比増殖速度における細胞周期分布
様々な比増殖速度でP.パストリス細胞を分析するために、前記細胞を、0.01h−1〜0.21h−1の希釈速度範囲でケモスタット培養にて増殖させた。ケモスタット培養は、回分培養で始め、回分培養で終えた。各希釈速度を少なくとも5滞留時間維持した後、サンプルを採取してバイオマス乾燥重量、Fab断片濃度、及び細胞周期分布を決定した。
ケモスタット培地GLU01:ddHO1000mL当たり、1.0gのクエン酸一水和物、55gのグルコース一水和物、4.4gの(NHHPO、0.7gのMgSO・7HO、1.7gのKCl、0.01gのCaCl・2HO、1.6mLの微量金属溶液(PTM1)及び1.0mLのビオチン溶液(0.2gL−1)を溶解させ、次いで、滅菌濾過した。
培養物の10mLのアリコートのバイオマスを洗浄し、乾燥させることにより、乾燥バイオマス濃度を求めた。Fab断片濃度は、Dragositsら.2009年(J.Proteome Res.2009年3月;8(3):1380−92)に記載の通りELISAによって求めた。比生産性は、Fab濃度を乾燥バイオマス濃度で除し、希釈速度を乗じることにより計算した。
細胞周期分布分析については、各サンプル点のエタノール固定細胞のサンプルを洗浄し、RNaseAで処理した。次いで、細胞を超音波処理し、ヨウ化プロピジウム溶液中でインキュベートして、試薬を細胞中に入れ、ゲノミックDNAを染色した。フローサイトメトリーにより、数千個の細胞を測定することができる。50.000の事象数を標準量として用いた。残りのサンプル中の細胞濃度が非常に低い場合、この閾値を下げなければならなかった。データは、FCS Expressソフトウェアを用いて評価した。細胞周期のG2+M期にある細胞の割合を以下の通り計算した:(%G2+M細胞)/[(%G1細胞)+(%G2+M細胞)]。結果として、G1期にある細胞の割合は、100−(%G2+M細胞)である。この計算では、G1又はG2+M期に割り当てられなかった全ての細胞を除外する。
様々な比増殖速度における比生産性q及び細胞周期の期の分布を図3に示す。
実施例2. P.パストリスにおけるCLB2の過剰発現及び比増殖速度における細胞周期分布の決定
a)共過剰発現プラスミドの構築
既に異種タンパク質を発現している株においてP.パストリスのCLB2遺伝子の共過剰発現に適したプラスミドを作製するために、P.パストリスのcDNAライブラリからPCRによってCLB2遺伝子を増幅した。テンプレートにコードされていないP.パストリスのKozak配列、並びにSbfI及びSfiIの制限酵素部位を、それぞれフォワード(5’−GATCCACCTGCAGGCCATGTCTAATGTTCAGCCTAACGA−3’、配列番号1)及びバックワード(5’−TCGGCCGAGGCGGCCCTACAAAATTGGATCCATGATGC−3’配列番号2)オリゴヌクレオチドプライマーを用いて付加した。SbfI及びSfiIで処理されたPCR産物をpPuzzleKanRにクローニングした(SbfI及びSfiIで切断し、アルカリホスファターゼで処理した)。
新規共過剰発現プラスミドpPuzzleKanR−CLB2をE.coli Top10(Invitrogen)に形質転換した。制限エンドヌクレアーゼによる切断及びシークエンシングを実施して、構築したプラスミドの正確なアイデンティティを検証した。
b)組み換え型ヒト抗体Fab断片3H6及び新規ヘルパー因子遺伝子を共過剰発現するP.パストリス株の構築
実施例2の工程a)に記載したクローニング手順により得られたプラスミドpPuzzleKanR−CLB2を用いて、GAPプロモータの管理下における組み換え型ヒト抗体Fab断片3H6の高レベル発現について予め選択されているP.パストリスの株を形質転換した(Dragositsら.2009年,J Proteome Res.2009 Mar;8(3):1380−92)。Fab断片遺伝子はゼオシン耐性に基づいて、ヘルパー因子遺伝子はジェネテシン耐性に基づいて選択した。
共過剰発現した細胞周期制御因子遺伝子の効果を評価するために、細胞周期制御因子を含まないpPuzzleKanRプラスミドでもFab断片発現株を形質転換した。
実施例3. 細胞周期をシフトさせる他の細胞周期制御因子の過剰発現/欠損
a)他の細胞周期制御因子を過剰発現させるために、CLB2の代わりに所望の細胞周期制御因子遺伝子を増幅し、クローニングしたことを除いて、実施例2.aに記載の通り発現ベクターを構築した。このようにして、S.セレヴィシエのMAD2及びPDS1、並びにP.パストリスのRRP42をpPuzzleKanRにクローニングして、pPuzzleKanR−MAD2、pPuzzleKanR−PDS1、及びpPuzzleKanR−RRP42を構築した。
これらプラスミドを、実施例2.b)に記載の通り、3H6Fabを産生するP.パストリスに形質転換した。
b)P.パストリスゲノムに由来する細胞周期制御因子遺伝子のノックアウト
約350bp長の細胞周期制御因子遺伝子の2つの断片をPCRによって増幅し、kanMX4マーカーカセットの両端にクローニングして、G418に対する耐性を付与した。P.パストリスを形質転換し、G418耐性について選択した後、細胞周期制御因子遺伝子の一部の欠失をPCRによって確認する。
実施例4. 細胞培養物の培養及び細胞周期制御因子の過剰発現の影響の分析
50mLのチューブ内にて、2.5mLのYPD(20g/Lの大豆ペプトン(HY QUEST)、10g/Lの酵母抽出物、20g/Lのグルコース、pH7.4)中のCLB2過剰発現株の前培養物に、プレートから細胞を接種した。次の日、本培養物(50mLのチューブ内の10mLの合成振盪フラスコ培地)を全て、0.1のOD600で接種した。ddHO1000mL当たり、本培養培地:(22gのクエン酸一水和物、22gのグルコース一水和物、3.15gの(NHHPO、0.492gのMgSO・7HO、0.8040gのKCl、0.0268gのCaCl・2HO、1.47mLの微量金属溶液(PTM1)及び2.0mLのビオチン溶液(0.2gL−1)を溶解させた。KOH25%を用いてpHを5に調整し、次いで、滅菌濾過した。
本培養は、0.1のOD600で開始し、室温で170rpmにて振盪した。約24時間後及び48時間後に光学密度を測定した。タンパク質分析のための上清サンプルを両時点で採取した。ELISAによって分析した細胞外Fab濃度は、培養の24時間及び48時間後の培養物の光学密度に関連していた。1株当たり4つの形質転換体を培養し、それぞれの対照株と比較した。
バイオマス当たりの平均産生物:ベクター対照に対するCLB2クローンの倍数変化:
Figure 2013535185
実施例5: DNA含有量分析
振盪フラスコ培養において24時間後の対数増殖期中に、エタノール固定細胞のサンプルを採取し、実施例1に記載の通りDNA染色及びフローサイトメトリー分析のために処理した。細胞周期の期の分布を以下の表に示す。
Figure 2013535185
実施例6. ケモスタット培養
回分培養が終わった後、PpCLB2及び対照株についてケモスタット培養を開始した。少なくとも3滞留時間の間各希釈速度を維持した。酵母の乾燥質量、Fab3H6の力価、及び比生産性を表1に要約し、比生産性対比増殖速度を図3に示す。
ケモスタット培地GLU01:ddHO1000mL当たり、1.0gのクエン酸一水和物、55gのグルコース一水和物、4.4gの(NHHPO、0.7gのMgSO・7HO、1.7gのKCl、0.01gのCaCl・2HO、1.6mLの微量金属溶液(PTM1)及び1.0mLのビオチン溶液(0.2gL−1)を溶解させ、次いで、滅菌濾過した。
Figure 2013535185
実施例7. 野性型及びCLB2過剰発現クローンの流加発酵
容積生産性の理論的最大値Qを用いて流加生産プロセスをシミュレートするために、ケモスタットサンプルから得られたデータを用いてμの関数としてqPを計算した(Maurerら.2006年 Microb.Cell Fact.)。最適化された発酵ストラテジは、計算された増殖動態を実施するための異なる期からなっていた。回分期の後、急速にバイオマスを生産のための0.15h−1の増殖速度の対数フィード期(それぞれ8時間又は5時間)を経て、プロセスの最後までμを減速させる(それぞれ、更に8時間又は22時間)。プロセスは、バイオマスが100gL−1に達し、Qが最適化されているように設計された。
ケモスタット培養に関しては、バッチにおいて全ての基質(グリセロール)が消費された後1時間以内にフィードを開始した。産生物を最適に形成するためのモデル化された増殖曲線を近似するための基質要求を表す計算されたフィード関数に従って、流加培地(グルコース)を反応器に注入した。
時間間隔に関する同時性及びパージを含むサンプリング1回当たり15〜20mLを超えない等しいサンプル容積に重点を置いて、2〜3時間ごとに2つの並行バイオプロセスのそれぞれからサンプルを採取した。
2つのモデル化された流加プロトコールをPpCLB2株及び対照株について2回実施して、4つの並行発酵物、合計8つの発酵物を得た。pO2ピークとフィード開始との間の経過時間に関する並行流加の等しい処理、並びに等間隔のサンプリング及びサンプル量に注意した。対照株の最適化されたプロトコールの間に、1250rpmの撹拌機の上限に達した後、給気が不十分であることが判明した。設定点が20%であり、撹拌機の動作によって管理されていたpO2値の低下を避けるために、必要に応じて25%以下の純酸素を空気流に添加した。再度、給気に関して並行培養物を等しく処理した。
実施例8: 流加発酵サンプルにおける細胞周期の期の分布:
細胞のサイズ又は生存を測定するために、サンプルをPBSで希釈し、BD FACS Calibur(商標)フローサイトメーターで直接獲得し、BD CellQuest(商標)ソフトウェアで分析した。
DNA含有量分析用のサンプルは、70%エタノールで固定しなければならなかった。
500μLのエタノール中における数μLの高密度流加培養物は、更なるサンプル処理に十分であったが、1mL以下の低密度振盪フラスコ培養物を遠心分離によりペレット化し、等容積の氷冷エタノールを滴下することにより再懸濁させた。全ての場合において、細胞をPBSで2回洗浄してエタノールを除去し、1時間RNaseA(35U mL−1)と共にインキュベートしてdsRNAを分解し、再度PBSで2回洗浄しなければならなかった。次いで、細胞を含む溶液をFACSチューブに移し、3秒間1バーストで超音波処理して細胞の塊を破壊した後、等容積のPI溶液(PBS中1:100)と混合した。短時間ボルテックスした後、細胞を測定する準備が整った。サンプルは、理想的には、1mL当たり1×10細胞又は粒子を含有していなければならない。
CLB2を過剰発現する株及び野性型株の細胞周期の期の分布を図4に示す。

Claims (14)

  1. 細胞培養物において組み換え型の対象ポリペプチド(POI)を産生させる方法であって、真核細胞株を遺伝的に改変して、
    − 前培養期において細胞周期のG2+M期を特異的に延長させ、そして、
    − 前培養期の後の生産期において前記POIを産生させることを含む方法。
  2. 細胞株が、細胞周期の調節因子を発現させるために発現カセットがそのゲノム中に安定的に組み込まれている細胞株である請求項1に記載の方法。
  3. 細胞株が、好ましくは、細胞周期制御因子を特異的に過剰発現させるか、活性化するか、突然変異させるか、下方調節するか、欠損させるか、分解するか、阻害することによって、細胞周期制御因子を調節するように改変されている請求項1又は2に記載の方法。
  4. 細胞周期制御因子が、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)、G1特異的サイクリン、G2/有系分裂特異的サイクリン等のCdk/サイクリン複合体、及び例えばClb2、Clb1、Clb3−6、Cln1−3、Cdc6、Cdc14、Cdc20、Cdc28、Cdc48、Cdh1、Kar1、Mad2、MBF、Mcm1、Pds1、Rrp42、SBF、Sic1、Swe1、Swi5、Whi2等のこれらの転写因子又は分解因子からなる群より選択される請求項3に記載の方法。
  5. 細胞株が、細胞周期の調節因子及びPOIを産生するように改変されているワイルドカードホスト細胞株又はプロデューサー細胞株である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. POIが、免疫グロブリン又は血清アルブミン等の血清タンパク質、酵素、ホルモン、シグナリング分子、マトリクスタンパク質、これらの断片若しくは誘導体、又はホスト細胞の代謝産物の産生を媒介するポリペプチドからなる群より選択される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 細胞が、真菌細胞、好ましくはピキア属の細胞等の酵母細胞、特にP.パストリスの株であるか、又は高等真核細胞、好ましくは哺乳類若しくは植物の細胞である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. POIを産生するための少なくとも0.1μg/(g・h)の比生産性qを有する請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得ることができる高プロデューサー細胞株。
  9. 細胞のうちの少なくとも50%が、フィード時間のうちの少なくとも50%であるプロセス時間にわたってG2+M期にある請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得ることができる細胞株の高プロデューサー細胞培養物。
  10. 少なくとも10時間にわたって定常状態である請求項9に記載の細胞培養物。
  11. 流加細胞培養物又は連続細胞培養物である請求項9又は10に記載の細胞培養物。
  12. 工業的規模で少なくとも0.1μg/(L・h)の容積生産性Qを有する請求項9〜11のいずれかに記載の細胞培養物。
  13. a)細胞周期のG2+M期が特異的に延長されるように真核生産細胞株を遺伝的に改変することと、
    b)前培養期において前記生産細胞株を培養して、細胞周期のG2+M期が延長されている定常状態の細胞培養物を得ることと、
    c)前記前培養期の後の生産期において、前記定常状態の細胞培養物を培養してPOIを産生させることと、
    c)前記POIを含有する前記細胞培養物の画分を回収することとを含む細胞培養物における組み換え型POIの産生の収量を増加させる方法。
  14. 細胞周期のG2+M期が特異的に延長されるように細胞株を遺伝的に改変することを含む細胞培養物における真核生産細胞株の組み換え型POI生産期を延長する方法。
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