本発明の遊技機用封印部材の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、説明の便宜上、本発明の遊技機用封印部材で回胴式遊技機の封印対象箇所を封印する場合を例に挙げて、本発明の遊技機用封印部材を説明する。しかし、本発明の遊技機用封印部材は、パチンコ遊技機等、他の遊技機における遊技機用封印部材を封印する場合においても好適に採用することができる。
また、図面の各図においては、説明の便宜を考慮し、x軸、y軸及びz軸を示している。x軸、y軸及びz軸の向きは、異なる図であっても、互いに一致している。以下においては、x軸方向正側を「右」側、x軸方向負側を「左」側、y軸方向正側を「奥」側、y軸方向負側を「手前」側、z軸方向正側を「上」側、z軸方向負側を「下」側と呼ぶことがあるが、これは、各部の相対的な位置関係を表すためのものに過ぎず、各部の絶対的な位置関係を限定するものではない。
1. 回胴式遊技機の概要
図1は、回胴式遊技機10を前方から見た図である。回胴式遊技機10は、図1に示すように、その前面側に、メダルを投入するためのメダル投入口11と、メダルを払い出すためのメダル払出口12と、その外周面に図柄が描かれた3本のリール13,14,15と、映像演出を行うための液晶ディスプレイ16と、照明演出を行うための発光ランプ(図示省略)と、音声演出を行うためのスピ−カー17等を備えたものとなっており、操作部として、1遊技当たりの最大枚数(通常3枚)のメダルをベットするためのマックスベットボタン18と、ベットするメダルを1枚ずつ増加するためのシングルベットボタン19と、リール13,14,15の回転を開始するためのスタートレバー20と、リール13,14,15の回転をそれぞれ停止するための3個のストップボタン21,22,23と、演出を切り替えるためのチャンスボタン24と、クレジットされたメダルを払い戻すための払戻しボタン25等を有するものとなっている。
この回胴式遊技機10は、メダルのクレジット枚数が所定枚数以上となった状態でスタートレバー20が操作されると、役抽選が実行されるとともにリール13,14,15が回転を開始し、ストップボタン21,22,23がそれぞれ操作されると、操作されたストップボタン21,22,23に対応するリール13,14,15の回転が停止していき、全てのリール13,14,15が停止したときにリール窓10b1の有効ライン上に表示される図柄の組み合わせが役抽選で当選した役に対応したものとなっていた場合(入賞した場合)に、その役に応じた枚数のメダルが払い出され、メダルのクレジット枚数が上限値に達しているときには、ホッパーユニット36(図2を参照)から送出されたメダルがメダル払出口12を通じて払い出されるようになっている。メダルのクレジット枚数は、メダルのクレジット枚数が上限値に達していないときに、メダル投入口11にメダルが投入される、又は、入賞によってメダルが払い出されると増加するようになっている。
図2は、前扉10bが開かれた回胴式遊技機10を前方斜め右上から見た図である。回胴式遊技機10は、図2に示すように、前方が開放された箱状を為す筺体本体10aと、筺体本体10aの前面側に開閉可能な状態で取り付けられた前扉10bとで構成された遊技機筺体の内部に各種の機器が収容されたものとなっている。以下においては、筺体本体10aと前扉10bとを合わせて「筺体10a,10b」と表記することがある。
本実施態様において、筺体10a,10bの内部には、メイン制御基板ユニット30、サブ制御基板ユニット31、液晶ユニット32、電源ユニット33、コネクタユニット34、リールユニット35及びホッパーユニット36等が納められている。これらのユニット30〜36のうち、液晶ユニット32とコネクタユニット34は、前扉10bの内面側(ウラ面側)に取り付けられている。一方、メイン制御基板ユニット30とサブ制御基板ユニット31と電源ユニット33とリールユニット35とホッパーユニット36は、筺体本体10aの内面側に取り付けられている。上記のリール窓10b1は、前扉10bの中段部やや上寄りの部分に略矩形状に設けられている。
メイン制御基板ユニット30は、役抽選や入賞判定等、遊技における基本的な制御を行う制御基板(メイン制御基板)を備えている。サブ制御基板ユニット31は、発光ランプや音声による演出等、遊技における演出に関する制御を行う制御基板(サブ制御基板)を備えている。液晶ユニット32は、液晶ディスプレイ16(図1を参照)に表示される映像による演出に関する制御を行う制御基板(映像基板)を備えている。電源ユニット33は、回胴式遊技機10における各機器に電力を供給する制御基板(電源基板)を備えている。コネクタユニット34は、特定の機器に接続されたケーブルを仲介する制御基板(仲介基板)を備えている。リールユニット35は、リール13,14,15の回転をそれぞれ独立して制御する制御基板(リール制御基板)を備えている。ホッパーユニット36は、メダル投入口11(図1を参照)に投入されたメダルを回収するとともに、メイン制御基板ユニット30からの信号に基づいてメダル払出口12(図1を参照)へメダルを送出する制御を行う制御基板(ホッパー制御基板)を備えている。
これらのユニット30〜36に備えられた各種制御基板は、いずれも、不正アクセスの対象となり得る。特に、メイン制御基板ユニット30の制御基板(メイン制御基板)には、回胴式遊技機10における基本的な制御を行うためのプログラムが記録された記憶装置(ROM)が搭載されているところ、この記憶装置を偽造したものに交換することによって、遊技中に特定の操作を行うと必ず大当たりになるようにする等、回胴式遊技機10に不正な改造を試みる者がいる。このため、回胴式遊技機10等の遊技機においては、図3に示すように、メイン制御基板30aを、カバー部材51とベース部材52とで構成される基板ケース50内に収容して封印することが行われている。図3は、メイン制御基板30a(制御基板)を基板ケース50に収容して封印する様子を前方斜め右上から見た図である。メイン制御基板30aを収容した基板ケース50は、通常、その後側に配されたホルダ部材60を介して筺体本体10a(図2)に取り付けられる。
具体的には、図3に示すように、基板ケース50(本実施態様においてはカバー部材51)に設けられた封印穴αに、ネジ等の固定具70を挿通して螺合することでカバー部材51とベース部材52とを閉じた状態で固定した後、この封印穴αに遊技機用封印部材100を嵌め込む。封印穴αに嵌め込まれた遊技機用封印部材100は、その外周部を封印穴αの奥部にある被係合部α3(図4)に係合された状態となる。このため、遊技機用封印部材100を破壊するか無理に変形等しなければ、封印穴αの奥部(封印対象箇所α1)にある固定具70にアクセスできない状態が発現する。換言すると、遊技機用封印部材100に、破断や白化等の痕跡があるか否かを確認することによって、封印対象箇所α1に不正アクセスが為されたか否か(基板ケース50が不正に開放されたか否か)を判断することが可能になる。すなわち、遊技機用封印部材100は、封印としての機能を果たすことになる。メイン制御基板ユニット30以外の他のユニット31〜36における制御基板も、上記の基板ケース50と同様の基板ケースに収容して封印することが可能である。
基板ケース50(カバー部材51及びベース部材52)は、基板ケース50内に異常が生じていないか否かを基板ケース50の外部から確認することができるように、通常、透明性を有する材料(通常、合成樹脂系材料)によって形成される。基板ケース50を形成する材料としては、メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリスチレン(PS)や、アクリロニトリルーブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)や、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、遊技機用封印部材100を形成する熱可塑性樹脂と同様であるが、基板ケース50は、遊技機用封印部材100(特に高強度の合成樹脂系材料で形成される封印穴挿入部110)よりも高強度の合成系樹脂材料で形成すると好ましい。基板ケース50を形成する合成樹脂系材料としては、ABSやPCが好適であり、特に、PCは強度に優れているため好ましい。
本発明は、上記の遊技機用封印部材100に係るものである。ここまでは、基板ケース50におけるカバー部材51とベース部材52とを閉じた状態で固定するための固定具70を挿通する部分(封印穴α)に遊技機用封印部材100を嵌め込む場合について説明したが、本発明の遊技機用封印部材100を嵌め込む箇所は、これに限定されない。例えば、図3におけるホルダ部材60に対して基板ケース50(カバー部材51又はベース部材52)を固定する固定具を挿通する穴状の部分に、本発明の遊技機用封印部材100を嵌め込むようにしてもよい。また、封印穴αを設ける場所は、不正アクセスを防止するために封印する必要がある部分であれば、固定具を挿通する部分である必要もなく、基板ケース50である必要もない。
2. 本発明の遊技機用封印部材
本発明の遊技機用封印部材100についてより詳しく説明する。以下においては、第一実施態様から第四実施態様までの4つの実施態様を例に挙げて本発明の遊技機用封印部材100について説明する。しかし、本発明の遊技機用封印部材100の技術的範囲は、これらの実施態様に限定されることなく、発明の趣旨を損なわない範囲でその実施態様を適宜変更することができる。
2.1 第一実施態様の遊技機用封印部材
まず、第一実施態様の遊技機用封印部材100について説明する。図4は、第一実施態様の遊技機用封印部材100を封印穴αに嵌め込んでいる様子を示した斜視図である。図5は、第一実施態様の遊技機用封印部材100を、(a)前方斜め右上から見た状態と、(b)後方斜め右上から見た状態とをそれぞれ示した斜視図である。図6は、第一実施態様の遊技機用封印部材100を、遊技機用封印部材100の中心線(y軸方向に平行な中心線)を含みy−z平面に平行な平面で切断した状態を示した断面図である。図7は、第一実施態様の遊技機用封印部材100を手前側(y軸方向負側)から見た図であって、(a)頭部120に裂け目βが生じていない状態と、(b)頭部120に裂け目βが生じている状態とをそれぞれ示した図である。図4、図5及び図7においては、遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを図面上において区別しやすくするため、封印穴挿入部110のみを網掛けハッチングで示している。
2.1.1 基本構成
遊技機用封印部材100は、図4に示すように、封印穴αに嵌め込むことにより、封印穴αの奥部に位置する封止対象箇所α1を封印するためのものとなっている。
第一実施態様の遊技機用封印部材100は、封印穴挿入部110と頭部120とで構成されている。封印穴挿入部110及び頭部120は、いずれも合成樹脂系材料で形成される。封印穴挿入部110は、封印穴αに対して先端(図4におけるy軸方向正側の端部)側から挿入される部分となっている。封印穴挿入部110の外周部には、係合部111cが設けられている。遊技機用封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ際には、その係合部111cが封印穴αの奥部にある被係合部α3に係合し、遊技機用封印部材100を手前側に引き抜くことができない状態となる。一方、頭部120は、封印穴挿入部110の基端(図4におけるy軸方向負側の端部)側に設けられた部分となっている。第一実施態様の封印穴挿入部110において、頭部120は、封印穴挿入部110の基端面(後述する閉塞部112)に重なる中央部121と、封印穴挿入部110の基端外周部から外方に突出して設けられたフランジ部122とで構成している。
この遊技機用封印部材100が封印穴αに嵌め込まれた状態において、封印対象箇所α1に不正アクセスしようとすると、フランジ部122の外周部から封印穴挿入部110の外周面と封印穴αの内周面との隙間にマイナスドライバ等の不正器具を挿入して係合部111cの係合を不正に解除するか、頭部120の中央部121から遊技機用封印部材100に穴を開ける必要がある。この点、頭部120におけるフランジ部122は、封印穴挿入部110の外周面と封印穴αの内周面との隙間に不正器具が挿入されないように、当該隙間を封印穴αの手前側から覆うとともに、仮に当該隙間に不正器具が挿入された場合には、図7(b)に示すように、裂け目βのほか、欠けや、破断痕や白化等の痕跡を残させるための部分となっている。また、中央部121は、遊技機用封印部材100におけるフランジ部122以外の部分(遊技機用封印部材100の中央部分)に穴等が開けられたときにその痕跡(破断痕や白化等)を残させるための部分となっている。
すなわち、封印穴挿入部110は、主として、封印穴αから遊技機用封印部材100が引き抜かれないように、遊技機用封印部材100を封印穴αの奥部にある被係合部α3に対して係合させる機能を有しているのに対して、頭部120は、主として、封印対象箇所α1への不正アクセスの痕跡を発現させる機能を有している。このため、頭部120は、封印穴挿入部110よりも強度(アイゾット衝撃強度)が低い材料(合成樹脂系材料)で形成している。加えて、封印穴挿入部110と頭部120は、色違いとされる。頭部120や封印穴挿入部110を形成する合成樹脂系材料は、その強度や色において上記の関係を有するのであれば、特に限定されない。
封印穴挿入部110や頭部120を形成する合成樹脂系材料としては、メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリスチレン(PS)や、アクリロニトリルーブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)や、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性樹脂が例示される。一般的に、これらの熱可塑性樹脂はいずれも、透明性を有している。これらの熱可塑性樹脂に顔料を添加等すれば、封印穴挿入部110や頭部120を有色透明とすることができる。顔料の配合量を増やす等すれば、封印穴挿入部110や頭部120を有色不透明とすることも可能である。また、封印穴挿入部110を形成する熱可塑性樹脂に添加する顔料の種類や配合量等を、頭部110を形成する熱可塑性樹脂に添加する顔料の種類や配合量等と異なるようにすれば、封印穴挿入部110と頭部120とを異なる色にすることができる。
ところで、頭部120を、封印穴挿入部110よりも強度(アイゾット衝撃強度)が低い合成樹脂系材料で形成することについては既に述べた。この点、上で例に挙げた熱可塑性樹脂の強度(アイゾット衝撃強度)は、一般的に、前掲の表1に示すようになる。このため、PMMA、PP、PS、ABS及びPCの強度が表1に示す通りの順番であり、封印穴挿入部110及び頭部120を形成する合成樹脂系材料を表1の中から選ぶのであれば、以下に示すようになる。すなわち、封印穴挿入部110をPCで形成した場合には、頭部120は、PMMA、PP、PS又はABSで形成する。また、封印穴挿入部110をABSで形成した場合には、頭部120は、PMMA、PP又はPSで形成する。さらに、封印穴挿入部110をPSで形成した場合には、頭部120は、PMMA又はPPで形成する。さらにまた、封印穴挿入部110をPPで形成した場合には、頭部120は、PMMAで形成する。
ただし、後述するように、遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを二色成形する場合には、封印穴挿入部110や頭部120を形成する合成樹脂系材料の融点も考慮する。すなわち、共通の金型を用いて異種材料を二段階で成形する二色成形においては、融点の高い合成樹脂系材料で形成される側の部材を先に成形してから、融点の低い合成樹脂系材料で形成される側の部材を後に成形する必要があるからである。この点、熱可塑性樹脂は、一般的に、融点が高ければ高いほど、強度(アイゾット衝撃強度)が高くなり、各熱可塑性樹脂の融点の大小関係と、各熱可塑性樹脂の強度の大小関係とは、概ね一致する。
このように、フランジ部122を含む頭部120を、封印穴挿入部110よりも低強度の合成樹脂系材料で形成することによって、封印穴αの内周面と遊技機用封印部材100の外周面との隙間に不正器具が差し込まれる等して、封印対象箇所α1への不正アクセスが試みられた場合には、頭部120(特にフランジ部122)における広い範囲に破断や白化等の痕跡が形成されるようになる。したがって、接着剤等では消去することが困難な痕跡が遊技機用封印部材100に残るようにすることが可能になる。加えて、遊技機用封印部材100が封印穴αに嵌め込まれた状態であっても、封印穴αの手前側から視認しやすい頭部120に不正アクセスの痕跡が残るため、不正アクセスの痕跡を発見しやすくすることも可能になる。
また、封印穴挿入部110と頭部120とを色違いにすることについても既に述べた。このように、封印穴挿入部110と頭部120とを色違いとすることによって、不正アクセスの際に、図7(b)に示すように、裂け目βや欠け等がフランジ部122等の頭部120に生じたときには、その裂け目β等が生じた部分を通じて、頭部120の奥側に位置する封印穴挿入部110が、頭部120とは異なる色で見え、裂け目β等が目立つ状態となるため、頭部120に生じた裂け目β等の存在が見落とされにくくなる。したがって、不正アクセスの痕跡(頭部120に生じた裂け目βや欠け等)を発見しやすくし、遊技機に対する不正行為を防止することが可能になる。封印穴挿入部110は、頭部120よりも強度の高い合成樹脂系材料で形成されているため、不正アクセスの際に頭部120に裂け目βや欠け等が生じたとしても、封印穴挿入部110にはそのような裂け目や欠け等は生じていない可能性が高いと考えられる。
ただし、封印穴挿入部110と頭部120とを色違いにしたとしても、それらが互いに似た色である場合には、不正アクセスの際に頭部120に生じた裂け目βや欠け等から、その奥側に位置する封印穴挿入部110が見えたとしても、その色の違いに点検者が気づかず、裂け目βや欠け等の存在が見落とされる虞がある。このため、頭部120の色は、封印穴挿入部110の色とできるだけ異なるようにすることが好ましい。第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、頭部120の色と封印穴挿入部110の色とが補色関係にあるようにしている。換言すると、封印穴挿入部110の色の正補色から頭部120の色までのズレ角度(マンセルシステムの色相環における、封印穴挿入部110の色の正補色が位置する箇所から頭部120の色が位置する箇所までの角度(同色相環の中心から見た角度の絶対値)が90°以下になるようにしている。これにより、不正アクセスの際に頭部120に生じた裂け目βや欠け等の存在に点検者が気づきやすくなっている。
上記の封印穴挿入部110の色の正補色から頭部120の色までのズレ角度は、できるだけ小さくした(頭部120の色を封印穴挿入部110の色の正補色に近づけた)方が好ましい。これにより、頭部120の色と封印穴挿入部110の色とをさらに大きく異ならせることが可能になる。封印穴挿入部110の色の正補色から頭部120の色までのズレ角度は、54°以下にする(例えば、封印穴挿入部110の色がマンセルシステムの色相環における「5R」である場合には、頭部120の色を同色相環の「10GY」〜「5BG」(正補色)〜「10B」の範囲の色にする)と好ましい。封印穴挿入部110の色の正補色から頭部120の色までのズレ角度は、36°以下にする(例えば、封印穴挿入部110の色がマンセルシステムの色相環における「5R」である場合には、頭部120の色を同色相環の「5G」〜「5BG」(正補色)〜「5B」の範囲の色にする)とより好ましく、18°以下にする(例えば、封印穴挿入部110の色がマンセルシステムの色相環における「5R」である場合には、頭部120の色を同色相環の「10G」〜「5BG」(正補色)〜「10BG」の範囲の色にする)とさらに好ましい。
ところで、封印穴挿入部110と頭部120とを色違いとする態様には、既に述べたように、[1]封印穴挿入部110と頭部120とをいずれも不透明として色違いとする態様と、[2]封印穴挿入部110と頭部120のうち一方を不透明とし他方を透明(無色透明だけでなく有色透明を含む。以下同じ。)として色違いとする態様(ただし、頭部120を無色透明とする態様を除く。)と、[3]封印穴挿入部110と頭部120とをいずれも透明として色違いとする態様(ただし、頭部120を無色透明とする態様を除く。)とがある。このなかでも、上記[3]の態様(封印穴挿入部110と頭部120とをいずれも透明として色違いとする態様)を採用すると好ましい。特に、封印穴挿入部110と頭部120とをいずれも有色透明として色違いとする態様を採用すると好ましい。
というのも、封印穴挿入部110と頭部120とをいずれも透明とすると、封印穴αに遊技機用封印部材100を嵌め込んだ状態であっても、封印穴αの手前側から封印穴αの奥部の封印対象箇所α1に異常がないかを目視により確認することが可能になるからである。また、封印穴挿入部110を無色透明として頭部120を有色透明として互いに色違いとした場合には、不正アクセスの際に頭部120に生じた裂け目β(図7)から露出する封印穴挿入部110が透明で目立ちにくいところ、封印穴挿入部110と頭部120とをいずれも有色透明として色違いとすると、裂け目β(図7)から露出する封印穴挿入部110にも色が付いて見えるため、裂け目βの存在により気づきやすくなるからである。
このように、第一実施態様の遊技機用封印部材100は、フランジ部122を有する頭部120を、封印穴挿入部110よりも低強度の合成樹脂系材料で形成するとともに、封印穴挿入部110と頭部120とを色違いとしたことによって、不正アクセスの痕跡を消去されにくい状態で頭部120における広い範囲に形成させるだけでなく、その痕跡が視認しやすい箇所に目立つ状態で形成されるようになっている。このため、第一実施態様の遊技機用封印部材100は、不正アクセスの痕跡を発見しやすく、遊技機に対する不正行為を防止しやすいものとなっている。
2.1.2 特記事項
以下、第一実施態様の遊技機用封印部材100について、特記すべき事項をいくつか列記する。
(1) 封印穴挿入部の形態について
封印穴挿入部110は、封印穴αに挿入して封印穴αの奥部にある被係合部α3に係合できるのであれば、その形態を特に限定されない。第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、図5に示すように、封印穴挿入部110を、略筒状の本体部111と、本体部111の基端側(同図におけるy軸方向負側の端部側)を閉塞する閉塞部112とで構成している。
封印穴挿入部110の本体部111を、中実な構造とはせず、空洞部を有する略筒状に形成したことにより、遊技機用封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ際に、上述したネジ(図4の固定具70)の頭部が収まる空間を本体部111の内側に確保することができるようになっており、本体部111を中実な構造とした場合と比べて、封印穴挿入部110を長く確保することが可能となっている。また、遊技機用封印部材100を成形する材料の使用量を削減し、遊技機用封印部材100の製造コストを抑えることも可能となっている。さらに、第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、後述するように、封印穴挿入部110の本体部111には、封印穴αに設けられた被係合部α3に係合するための係合部111cが設けられるところ、遊技機用封印部材100を封印穴に嵌め込む際に、係合部111cが弾性的に変位しやすくすることが可能となっている。
これに対し、封印穴挿入部110の閉塞部112は、開口部等を有さない連続面状に形成されている。これは、封印穴αの外部から封印対象箇所α1に、本体部111の空洞部を通じた不正アクセスが為されないようにするためである。第一実施態様の遊技機用封印部材100では、遊技機用封印部材100の頭部120を、中央部121を有する形態としており、本体部111の空洞部を通じた不正アクセスは、中央部121で防止することができるため、閉塞部112は、必須の部分ではない。しかし、第一実施態様の遊技機用封印部材100では、既に述べたように、閉塞部112を含む封印穴挿入部110と、中央部121を含む頭部120とをいずれも有色透明としながらも、封印穴挿入部110と頭部120とを異なる色としたところ、中央部121のウラ面側(y軸方向正側)に閉塞部112を位置させることによって、中央部121に生じた破断や白化等の痕跡を目立ちやすくしている。
封印穴挿入部110の本体部111の外面形状は、封印穴αの内面形状等に応じて適宜決定される。本体部111の外面形状としては、円筒や楕円筒のように、曲面のみからなる形状や、多角筒のように、平面のみからなる形状のほか、曲面と平面とが混在する形状等が例示される。第一実施態様の遊技機用封印部材100において、本体部111の外面形状は、図5に示すように、一対の平面部111aと一対の曲面部111bとを有する形状となっており、封印穴αの内面形状に対応したものとなっている。本体部111の先端近傍の外周面は、先細りのテーパー状に形成しており、封印穴挿入部110を封印穴αに挿入しやすくしている。
封印穴挿入部110の本体部111には、図5に示すように、係合部111cと、ストッパー用突起部111dと、邪魔用突起部111eとを設けている。
係合部111cは、封印穴挿入部110の外周部に設けられている。この係合部111cは、封印穴αに挿入された封印穴挿入部110を封印穴αから引き抜くことができないように、封印穴挿入部110を、封印穴αに設けられた被係合部α3に係合させるための部分となっている。係合部111cは、本体部111の先端部以外に設けてもよいが、第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、本体部111の先端部に設けている。これにより、遊技機用封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ後の係合部111cを封印穴αの奥側に位置させることができる。したがって、マイナスドライバやワイヤー等の不正器具を封印穴αの内周面と遊技機用封印部材100の外周面との隙間に差し込んだとしても、その不正器具が係合部111cに届きにくくし、係合部111cの係合を不正に解除しにくくすることが可能となっている。
係合部111cは、本体部111における1箇所のみに設けてもよいが、通常、本体部111における複数箇所に設けられる。このように、係合部111cを複数箇所に設けることにより、マイナスドライバやワイヤー等の不正器具を封印穴αの内周面と遊技機用封印部材100の外周面との隙間に差し込んで、係合部111cの係合を不正に解除しようとした場合に、複数の係合部111cを解除しなければならなくなり、係合部111cの係合の解除に手間が掛かるようにすることができるからである。
上記のように、本体部111における複数箇所に係合部111cを設ける場合には、複数の係合部111cは、本体部111の中心線(y軸方向に平行な中心線)から見て対称な位置に設けると好ましい。これにより、封印穴αに嵌め込んだ遊技機用封印部材100を、封印穴αに安定して係合させるだけでなく、遊技機用封印部材100を封印穴αに嵌め込む際に、遊技機用封印部材100を傾きにくくすることが可能になる。第一実施態様の遊技機用封印部材100においても、図5(b)に示すように、2個の係合部111cを本体部111の中心線から見て対称となる位置に逆向きに設けている。
このとき、係合部111cは、本体部111の周壁における平面部111aに設けてもよいが、第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、本体部111の周壁における曲面部111bに設けている。これにより、マイナスドライバのようにその先端部が板状に形成された不正器具を用いた不正行為を行いにくくすることが可能になる。というのも、その先端部が板状に形成された不正挿入具は、湾曲した隙間には差し込みにくいからである。
係合部111cの形態は、特に限定されず、封印穴αの内周部に形成された凸部(被係合部)に係合可能な凹部としてもよいが、第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、封印穴挿入部110の外周面から外方に突出する凸部を係合部111cとしている。この凸部(係合部111c)は、遊技機用封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ際に、当該凸部(係合部111c)における嵌込方向手前側(y軸方向負側)を向く面が封印穴αに設けられた被係合部α3(図4の例では、封印穴αを囲繞する周壁部の奥側(y軸方向正側)の開口端面)に係合するものとなっている。
凸部(係合部111c)の外面(本体部111の中心線から見て外側を向く面)は、図6に示すように、その先端側(y軸方向正側)から基端側(y軸方向負側)にかけて外方に大きく突出するように傾斜した状態に形成されている。加えて、図5に示すように、凸部(係合部111c)の両脇にはスリットを設けており、当該凸部(係合部111c)は、帯板状の部分のみで本体部111と接続された状態となっている。このため、封印穴αに遊技機用封印部材100を嵌め込む際には、封印穴αの内周面に凸部(係合部111c)の外面が滑らかに接触して、凸部(係合部111c)が本体部111の内側に無理なく変位し、凸部(係合部111c)が封印穴αの内周部に引っ掛かることなく、遊技機用封印部材100を所定の深さ(凸部(係合部111c)が被係合部α3を乗り越える深さ)までスムーズに挿入することができるようになっている。遊技機用封印部材100が所定の深さまで押し込まれると、凸部(係合部111c)が初期位置まで弾性復帰することで、凸部(係合部111c)が被係合部α3に係合される。
ところで、第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、既に述べたように、封印穴挿入部110に閉塞部112を設けたところ、この閉塞部112の手前側(y軸方向負側)を向く面には、図5に示すように、「YAMASA」の文字列を刻設している。これにより、遊技機用封印部材100の偽造を困難にすることが可能になる。また、不正アクセスの際に遊技機用封印部材100における頭部120の中央部121に、破断や白化等が生じた場合には、閉塞部112に表わされた文字を視認しにくくなるため、閉塞部112に文字が表わされていない場合と比較して、中央部121に破断や白化が生じていることに気付きやすくなる。閉塞部112には、文字の代わりに図形や記号等を表わしてもよい。
閉塞部112に文字、図形又は記号等(以下において「文字等」と表記することがある。)を刻設する態様としては、文字等の部分をその周囲の部分から突出した状態に設ける態様(文字等を凸部として設ける態様)と、文字等の部分をその周囲から窪んだ状態に設ける態様(文字等を凹部として設ける態様)とが挙げられる。このいずれを採用してもよいが、上記のように、遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを二色成形する場合には、頭部120を成形する合成樹脂系材料を射出する際の合成樹脂系材料の流れを考慮すると、文字等は凹部として設けることが好ましい場合がある。
ストッパー用突起部111dは、図5に示すように、封印穴挿入部110の外周部におけるフランジ部122が設けられた箇所よりも先端側(y軸方向正側)に所定間隔を隔てた箇所から外方に突出して設けられている。このストッパー用突起部111dは、遊技機用封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ際に、封印穴αの座ぐり面α2(図4)に当接し、遊技機用封印部材100が封印穴αの奥部にそれ以上移動しないようにするためのストッパーとして機能する部分となっている。このため、ストッパー用突起部111dは、座ぐり面α2から受ける押圧力に耐え得るように強靭に形成される。
ストッパー用突起部111dは、封印穴挿入部110の外周部における全周部に連続して形成してもよいが、この場合には、ストッパー用突起部111dを射出成形する部分が広範囲に環状に形成されるようになるため、遊技機用封印部材100を射出成形する際にトラブルが生じやすくなる虞がある。このため、第一実施態様の遊技機用封印部材100において、ストッパー用突起部111dは、封印穴挿入部110における一対の平面部111aに1箇所ずつ、一対の曲面部111bに2箇所ずつの合計6箇所に分断して設けている。
邪魔用突起部111eは、図5に示すように、封印穴挿入部110の外周部におけるストッパー用突起部111dよりも先端側(y軸方向正側)であって係合部111cよりも基端側(y軸方向負側)となる位置から外方に突出して設けられている。第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、上述したように、ストッパー用突起部111dが複数箇所に分断して設けられており、封印穴挿入部110の外周部には、ストッパー用突起部111dが存在しない区間が存在しているが、邪魔用突起部111eは、ストッパー用突起部111dが存在しない区間であって、遊技機用封印部材100をその中心線方向(y軸方向)から見た際に係合部111cに重なる位置に設けられる。第一実施態様の遊技機用封印部材100では、2個の係合部111cを本体部111の中心線から見て対称となる位置に逆向きに設けたため、2個の邪魔用突起部111eを、本体部111の中心線から見て対称となる位置に逆向きに設けている。
これにより、係合部111cの不正な解除を試みる者が、封印穴αの内周面と封印穴挿入部110の外周面との隙間における、係合部111cに重なる区間(ストッパー用突起部111dが設けられていない空間)から、マイナスドライバ等の不正器具を上手く挿し込んだとしても、この邪魔用突起部111eによって不正器具が邪魔され、係合部111cが設けられた箇所まで不正器具が到達しないようにすることが可能になる。第一実施態様の遊技機用封印部材100において、それぞれの邪魔用突起部111eは、封印穴αの内周部に設けられた一対の凸条α4(図4)の間に挿入されるようになっており、凸条α4や邪魔用突起部111eを破壊しないと、封印穴αの手前側からは係合部111cを解除することが困難となっている。
(2) 頭部の形態について
既に述べたように、頭部120は、フランジ部122と中央部121とで構成される。フランジ部122は、封印穴αにおける座ぐり面α2の手前側を塞ぐことができる形状に形成される。このため、フランジ部122は、通常、封印穴挿入部110の基端外周部における全周部に連続して形成される。一方、中央部121は、フランジ部122の内側領域を塞ぐ形態に形成される。フランジ部122の突出長さL1(図6)は、特に限定されないが、短くしすぎると、封印穴αの内周面と封印穴挿入部110の外周面との隙間をフランジ部122で覆うことができなくなる虞がある。また、その隙間にマイナスドライバ等の不正器具が挿入された際にフランジ部122が破断や白化等しにくくなる虞もある。このため、フランジ部122の突出長さL1は、通常、1mm以上とされる。フランジ部122の突出長さL1は、1.5mm以上とすると好ましく、2mm以上とするとより好ましい。フランジ部122の突出長さL1に特に上限はないが、通常、10mm程度までである。このフランジ部122は、通常、上記のストッパー用突起部111dよりも脆弱に形成される。
(3) 封印穴挿入部と頭部とを一体化させる方法(遊技機用封印部材の成形方法)について
遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とは、互いに一体化した状態に設けられる。封印穴挿入部110と頭部120とを一体化させる方法は、特に限定されず、例えば、別個に形成された封印穴挿入部110と頭部120とを後から接着剤等で接着して一体化させてもよい。しかし、封印穴挿入部110と頭部120とを接着する作業は、通常、部品(封印穴挿入部110及び頭部120)を1つずつ取り出して手で行うようになるため、別個に形成された封印穴挿入部110と頭部120とを接着する方法では、封印穴挿入部110と頭部120との接着部分に不純物等が入る虞や、接着剤等に塗りムラが生じる虞等がある。このため、遊技機用封印部材100の外観が悪くなるだけでなく、その不純物や塗りムラ等が不正アクセスの痕跡と誤認される虞もある。特に、本発明の遊技機用封印部材100では、封印穴挿入部110及び頭部120の色が重要となるところ、上記のように、封印穴挿入部110と頭部120との接着部分に不純物が混入等すると、封印穴挿入部110や頭部120の色に悪影響を及ぼす虞がある。加えて、封印穴挿入部110と頭部120とを接着する際に頭部120(特にフランジ部122)が破損する虞もある。
このため、封印穴挿入部110と頭部120は、二色成形により互いに一体化させると好ましい。これにより、接着剤を使用することなく、そして手作業を介することなく、封印穴挿入部110と頭部120とを一体化することが可能になる。したがって、封印穴挿入部110と頭部120との境界部分における不純物の混入や、当該境界部分における接着剤の塗りムラが生じないようにすることが可能になる。よって、封印穴挿入部110や頭部120の本来の色が見えるようにするだけでなく、頭部120(フランジ部122)を破損等させることなく、封印穴挿入部110と頭部120とを綺麗に一体化することも可能になる。第一実施態様の遊技機用封印部材100においても、封印穴挿入部110と頭部120は、二色成形により互いに一体化させている。具体的には、第一の金型にPC又はABSを射出して封印穴挿入部110を成形した後、第一の金型における一部(封印穴挿入部110の基端部に接続する部分)のみを第二の金型に切り替え、この第二の金型にPMMAを射出して頭部120を成形することにより、封印穴挿入部110と頭部120とが一体化された遊技機用封印部材100を得るようにしている。
2.2 第二実施態様の遊技機用封印部材
続いて、第二実施態様の遊技機用封印部材100について説明する。第二実施態様の遊技機用封印部材100については、主に、上記の第一実施態様の遊技機用封印部材100と異なる部分について説明する。第二実施態様の遊技機用封印部材100について特に言及しない部分の構成については、第一実施態様の遊技機用封印部材100で述べたものと略同様であるため、説明を割愛する。
図8は、第二実施態様の遊技機用封印部材100を、(a)前方斜め右上から見た状態と、(b)後方斜め右上から見た状態とをそれぞれ示した斜視図である。図9は、第二実施態様の遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110を前方斜め右上から見た状態を示した斜視図である。図8及び図9においては、遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを図面上において区別しやすくするため、封印穴挿入部110のみを網掛けハッチングで示している。図10は、第二実施態様の遊技機用封印部材100を、遊技機用封印部材100の中心線を含みy−z平面に平行な平面で切断した状態を示した断面図である。
上述した第一実施態様の遊技機用封印部材100では、図5に示すように、封印穴挿入部110における、頭部120に接触する基端外周部(封印穴挿入部110の基端外周部)の形状は、封印穴挿入部110における基端以外の区間の外周形状と略同一となっていた。これに対し、第二実施態様の遊技機用封印部材100では、図8及び図9に示すように、封印穴挿入部110の基端外周部に、外向きのエッジ110a1を有する複数の凸部110aを繰り返し設けている。第二実施態様の遊技機用封印部材100においては、図10に示すように、複数の凸部が、頭部120に埋め込まれた状態とされ、複数の凸部110aにおける奥側を向く面(y軸方向正側を向く面)が、フランジ部122における奥側を向く面(y軸方向正側を向く面)と略面一になるようにしている。
これにより、封印穴αの内周面と遊技機用封印部材100の外周面との隙間に不正器具が差し込まれる等して、封印対象箇所α1への不正アクセスが試みられた場合には、フランジ部122における、凸部110aのエッジ110a1に当接する部分に応力が集中しやすくして、フランジ部122に、凸部110aのエッジ110a1に当接する部分を起点とするクラック等(図7における裂け目β等)が発生しやすくすることができる。この場合には、フランジ部122におけるクラック等が生じた部分(裂け目β等)から、奥側に位置する封印穴挿入部110が頭部120とは異なる色で見えやすい状態となる。したがって、不正アクセスが試みられた際に、より消去しにくく、より目立ちやすい態様の痕跡が、フランジ部122を含む頭部120に形成されやすくすることが可能になる。
複数の凸部110aは、封印穴挿入部110の基端外周部の周方向における一部の区間(特に、係合部111cの手前側に重なる区間)にのみ設けてもよいが、封印穴挿入部110の基端外周部の周方向における全周部に設けると好ましい。これにより、封印穴αの内周面と封印穴挿入部110の外周面との隙間に、いずれの場所から不正器具が挿入された場合であっても、凸部110aのエッジ110a1に当接する部分を起点とするクラック等がフランジ部122に形成されやすくすることが可能になる。凸部110aの個数は、封印穴挿入部110の寸法等によっても異なり、特に限定されないが、通常、3〜50個程度とされ、好ましくは、5〜40個程度とされる。
それぞれの凸部110aを遊技機用封印部材100の嵌め込み方向(y軸方向)から見たときの形状(凸部110aの平面視形状)は、外向きのエッジ110a1を有するのであれば特に限定されないが、通常、三角形状とされる。エッジ110a1の角度(凸部110aをy軸方向負側から見たときの角度)は特に限定されない。凸部110aのエッジ110a1に当接する部分を起点とするクラック等がフランジ部122により形成されやすくするためには、凸部110aのエッジ110a1の角度を小さくして凸部110aを先鋭にすると好ましい。具体的には、凸部110aのエッジ110a1の角度は、150°以下とすると好ましく、120°以下とするとより好ましく、90°以下(鋭角)とするとさらに好ましい。ただし、凸部110aのエッジ110a1の角度を小さくしすぎると、凸部110aの強度が低下して凸部110aが破損等しやすくなる虞がある。このため、凸部110aのエッジ110a1の角度は、30°以上とすると好ましい。
それぞれの凸部110aの突出長さL2(図10)は、フランジ部122の突出長さL1(図10)よりも短ければ特に限定されない。しかし、凸部110aの突出長さL2を短くしすぎると、必然的に凸部110aの寸法が小さくなり、封印穴挿入部110の基端外周部の全周部に亘って凸部110aを設けるためには、多数の微細な凸部110aを形成する必要が生じる。このため、封印穴挿入部110の成形が難しくなり、凸部110aのエッジ110a1を先鋭に形成しにくくなる虞がある。このため、凸部110aの突出長さL2は、通常、0.3mm以上とされる。凸部110aの突出長さL2は、0.5mm以上とすることが好ましく、0.7mm以上とすることがより好ましい。一方、凸部110aの突出長さL2をフランジ部122の突出長さL1に近づけすぎると、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との間の隙間に不正器具が挿入された際に、フランジ部122に破断や白化等の痕跡が生じにくくなる虞がある。このため、フランジ部122の突出長さL1に対する凸部110aの突出長さL2の比L2/L1は、0.7以下とすることが好ましい。比L2/L1は、0.6以下とするとより好ましく、0.5以下とするとさらに好ましい。
2.3 第三実施態様の遊技機用封印部材
続いて、第三実施態様の遊技機用封印部材100について説明する。第三実施態様の遊技機用封印部材100については、主に、上記の第二実施態様の遊技機用封印部材100と異なる部分について説明する。第三実施態様の遊技機用封印部材100について特に言及しない部分の構成については、第二実施態様の遊技機用封印部材100で述べたものと略同様であるため、説明を割愛する。
図11は、第三実施態様の遊技機用封印部材100を、(a)前方斜め右上から見た状態と、(b)後方斜め右上から見た状態とをそれぞれ示した斜視図である。図12は、第三実施態様の遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110を前方斜め右上から見た状態を示した斜視図である。図11及び図12においては、遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを図面上において区別しやすくするため、封印穴挿入部110のみを網掛けハッチングで示している。図13は、第三実施態様の遊技機用封印部材100を、遊技機用封印部材100の中心線を含みy−z平面に平行な平面で切断した状態を示した断面図である。
上述した第二実施態様の遊技機用封印部材100では、図9及び図10に示すように、封印穴挿入部110の基端外周部の凸部110aにおけるエッジ110a1は、凸部110aにおけるオモテ面(y軸方向負側を向く面)側とウラ面(y軸方向正側を向く面)との2箇所に設けられていた。このため、第二実施態様の遊技機用封印部材100では、封印穴αの内周面と遊技機用封印部材100の外周面との隙間に不正器具が差し込まれた場合だけでなく、封印穴αに対して遊技機用封印部材100を正規に嵌め込む際にフランジ部122等の頭部120に加えられる押圧力によって、凸部110aにおけるオモテ面側のエッジ110a1を起点とするクラック等がフランジ部122等の頭部に生じる虞があった。すなわち、封印穴αに対して遊技機用封印部材100を正規に嵌め込む際にフランジ部122に生じたクラック等の隙間(裂け目β等)から、奥側に位置する封印穴挿入部110が頭部120とは異なる色で見えてしまい、不正アクセスが為されていないにもかかわらず、不正アクセスが為されたと誤認する虞があった。
これに対し、第三実施態様の遊技機用封印部材100では、図12及び図13に示すように、凸部110aのオモテ面を滑らかに形成しており、凸部110aのウラ面側のみにエッジ110a1が形成されるようにしている。このため、封印穴αに対して遊技機用封印部材100を正規に嵌め込む際には、フランジ部122にクラック等が生じないようにして、不正アクセスが為されていないにもかかわらず、不正アクセスが為されたと誤認されないようにしながらも、封印穴αの内周面と遊技機用封印部材100の外周面との隙間に不正器具が差し込まれる等して、封印対象箇所α1への不正アクセスが試みられた際には、フランジ部122にクラック等(裂け目β等)の痕跡が生じやすくすることが可能となっている。
2.4 第四実施態様の遊技機用封印部材
続いて、第四実施態様の遊技機用封印部材100について説明する。第四実施態様の遊技機用封印部材100については、主に、上記の第三実施態様の遊技機用封印部材100と異なる部分について説明する。第四実施態様の遊技機用封印部材100について特に言及しない部分の構成については、第三実施態様の遊技機用封印部材100で述べたものと略同様であるため、説明を割愛する。
図14は、第四実施態様の遊技機用封印部材100を、(a)前方斜め右上から見た状態と、(b)後方斜め右上から見た状態とをそれぞれ示した斜視図である。図15は、第四実施態様の遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110を前方斜め右上から見た状態を示した斜視図である。図16は、第四実施態様の遊技機用封印部材100を、遊技機用封印部材100の中心線を含みy−z平面に平行な平面で切断した状態を示した断面図である。図17は、第四実施態様の遊技機用封印部材100を手前側(y軸方向負側)から見た図であって、(a)頭部120に裂け目βが生じていない状態と、(b)頭部120に裂け目βが生じている状態とをそれぞれ示した図である。図14、図15及び図17においては、遊技機用封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを図面上において区別しやすくするため、封印穴挿入部110のみを網掛けハッチングで示している。
上述した第三実施態様の遊技機用封印部材100では、図11(a)に示すように、封印穴挿入部110における基端(y軸方向負側の端部)側の全体が頭部120で覆われ、頭部120のオモテ面(y軸方向負側の面)側には、封印穴挿入部110が露出しないようになっていた。これに対し、第四実施態様の遊技機用封印部材100では、図14(a)、図16及び図17に示すように、頭部120における中央部121に露出用開口部121aを設けており、頭部120の裏側に位置する封印穴挿入部110が露出用開口部121aを通じて頭部120のオモテ面(y軸方向負側を向く面)側に露出するようにしている。このため、不正アクセスに起因する裂け目βや欠け等がフランジ部122等の頭部120に生じているか否かを容易に把握することが可能となっている。
すなわち、封印穴挿入部110の基端側(y軸方向負側)の面の全体が頭部120で覆われた第一実施態様の遊技機用封印部材100においては、図7(b)に示すように、不正アクセスの際に頭部120に生じた裂け目βや欠け等から、その奥側の封印穴挿入部110(通常、封印穴挿入部110の閉塞部112)が頭部120とは異なる色で見えたとしても、その色が封印穴挿入部110の色なのか、封印穴挿入部110の周辺に配された他の部材の色なのかを判断することができず、点検者が不正アクセスの有無に係る判断を誤る虞がある。これに対し、第四実施態様の遊技機用封印部材100のように、頭部120に、封印穴挿入部110を露出させる露出用開口部121aを設けることで、点検者は、図17(b)に示すように、気になる部分(不正アクセスに起因する裂け目βや欠け等が生じていると疑っている部分)の色を、露出用開口部121aを通じて見える封印穴挿入部110の色と対比することで、その気になる部分に見える色が、封印穴挿入部110の色であるのか否かを容易に判断することが可能になり、不正アクセスの有無を正確に判断することが可能になる。
封印穴挿入部110における、露出用開口部121aから露出する部分(通常、封印穴挿入部110の閉塞部112における一部。以下、この部分を「参照部分」と呼ぶことが有る。)は、平坦に形成してもよいが、第四実施態様の遊技機用封印部材100においては、図15及び図16に示すように、閉塞部112(封印穴挿入部110)における参照部分を、手前側(y軸方向負側)に凸となる露出凸部112aとしており、露出凸部112aの手前側(y軸方向負側)の面が、頭部120のオモテ面と略面一で繋がるようにしている。このため、参照部分を手前側に位置させるとともに、露出用開口部121aの開口縁の影が参照部分に形成されないようにすることが可能となっている。したがって、点検者が参照部分を視認しやすくなるとともに、参照部分(封印穴挿入部110)の本来の色を把握し、不正アクセスの有無の判断をより正確且つ容易に判断することが可能となっている。
また、閉塞部112(封印穴挿入部110)における、露出用開口部121aから露出する部分を手前側に凸な露出凸部112aとしたことによって、遊技機用封印部材100を正規に嵌め込む際に頭部120に白化や破断等の塑性変形が生じないようにすることも可能となっている。というのも、頭部120は、強度が低く脆い合成樹脂系材料で形成された部分であることに加えて、遊技機用封印部材を封印穴に嵌め込む際には指等で押圧される部分としても利用されるため、封印穴αに対して遊技機用封印部材100を正規に嵌め込む際に、頭部120に白化や破断等が生じてしまう虞があるところ、閉塞部112(封印穴挿入部110)における、露出用開口部121aから露出する部分を手前側に凸な露出凸部112aとすることによって、封印穴αに対して遊技機用封印部材100を嵌め込む際に指等で加えられる荷重を、強度の高い封印穴挿入部110で直接受けることが可能になるからである。
ところで、第四実施態様の遊技機用封印部材100では、図14(a)に示すように、フランジ部122のオモテ面外縁部にオモテ面側に突出するリブ122aを設けている。これにより、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との隙間に不正器具が差し込まれた際に、その不正器具が、フランジ部122における、フランジ部122の付根部からより遠く離れたリブに当接するようになる。このため、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との隙間に不正器具が差し込まれた際に、フランジ部122の付根部により大きな力が加わりやすくなって、フランジ部122の付根部に破断や白化等の痕跡がより残りやすくすることが可能になる。
リブ122aは、フランジ部122のオモテ面側外縁部の全周部に沿って設けてもよいが、フランジ部122の突出長さL1(図16)が短めで、フランジ部122の付根部から外端部までの距離を確保できない箇所にのみ設けてもよい。第四実施態様の遊技機用封印部材100では、図14(a)に示すように、フランジ部122の左側の外縁部に沿った箇所にのみリブ122aを設けている。フランジ部122における左側部分は、フランジ部122における他の部分(上側部分、下側部分及び右側部分)よりもフランジ部122の突出長さL1が短めとなっている。
このように、第四実施態様の遊技機用封印部材100は、上記の第一実施態様から第三実施態様までの遊技機用封印部材100と比較して、不正アクセスの痕跡をより発見しやすく、遊技機に対する不正行為をさらに防止しやすいものとなっている。
2.5 その他
ところで、上述した各実施態様の遊技機用封印部材100のうち、第二実施態様から第四実施態様までの3つの実施態様の遊技機用封印部材100においては、封印穴挿入部110の基端外周部に凸部110aを設けていた。このように、封印穴挿入部110の基端外周部に凸部110aを設ける場合には、図18に示すように、封印穴αの座ぐり面α2に、封印穴αの手前側に突出する支持凸部α5を設け、遊技機用封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ際に、この座ぐり面α2における支持凸部α5が、封印穴挿入部110の基端外周部における凸部110aのウラ面に当接するようにすると好ましい。図18は、封印穴挿入部110の基端外周部に凸部110aを有する遊技機用封印部材を封印穴に嵌め込んだ状態を、遊技機用封印部材の中心線を含みy−z平面に平行な平面で切断した状態を示した断面図である。
既に述べたように、封印穴挿入部110は、頭部120よりも強度のある合成樹脂系材料によって形成され、封印穴挿入部110の基端外周部における凸部110aも強度を有する部分となっているところ、この凸部110aの裏面側に座ぐり面α2の支持凸部α5を当接させることにより、上述した第一実施態様から第四実施態様までの遊技機用封印部材100では設けていたストッパー用突起部111dを設ける必要がなくなる。座ぐり面α2の支持凸部α5は、断続的に設けてもよいが、封印穴αの開口部の全周部に亘って連続的に設けると好ましい。これにより、封印穴挿入部110の基端外周部の凸部110aのウラ面側に座ぐり面α2の支持凸部α5を確実に当接させることが可能になる。