本発明の遊技機用係合部材の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、説明の便宜上、本発明の遊技機用係合部材に係る構成を回胴式遊技機において採用する場合を例に挙げて説明するが、本発明の遊技機用係合部材に係る構成は、パチンコ遊技機等の他の遊技機においても採用することができる。本発明の遊技機用係合部材に係る構成については、下記の「8.3 改良型係合部(本発明に係る遊技機用係合部材)」の欄において詳しく説明している。
また、説明の便宜を考慮し、図面の各図には、一部の図を除いて、x軸、y軸及びz軸を示している。x軸、y軸及びz軸の向きは、異なる図であっても、互いに一致している。以下においては、x軸方向正側を「右」側、x軸方向負側を「左」側、y軸方向正側を「後」側、y軸方向負側を「前」側、z軸方向正側を「上」側、x軸方向負側を「下」側と呼ぶことがあるが、これは、各部の相対的な位置関係を表すためのものに過ぎず、各部の絶対的な位置関係を限定するものではない。
1. 回胴式遊技機の概要
図1は、回胴式遊技機10を前方から見た図である。回胴式遊技機10は、図1に示すように、その前面側に、メダルを投入するためのメダル投入口11と、メダルを払い出すためのメダル払出口12と、その外周面に図柄が描かれた3本のリール13,14,15と、映像演出を行うための液晶ディスプレイ16と、照明演出を行うための発光ランプ(図示省略)と、音声演出を行うためのスピ−カー17等を備えたものとなっており、操作部として、1遊技当たりの最大枚数(通常3枚)のメダルをベットするためのマックスベットボタン18と、ベットするメダルを1枚ずつ増加するためのシングルベットボタン19と、リール13,14,15の回転を開始するためのスタートレバー20と、リール13,14,15の回転をそれぞれ停止するための3個のストップボタン21,22,23と、演出を切り替えるためのチャンスボタン24と、クレジットされたメダルを払い戻すための払戻しボタン25等を有するものとなっている。
この回胴式遊技機10は、メダルのクレジット枚数が所定枚数以上となった状態でスタートレバー20が操作されると、役抽選が実行されるとともにリール13,14,15が一斉に回転を開始し、ストップボタン21,22,23がそれぞれ操作されると、操作されたストップボタン21,22,23に対応するリール13,14,15の回転が停止していき、全てのリール13,14,15が停止したときにリール窓10b1の有効ライン上に表示される図柄の組み合わせが役抽選で当選した役に対応したものとなっていた場合(入賞した場合)に、その役に応じた枚数のメダルが払い出され、メダルのクレジット枚数が上限値に達しているときには、ホッパーユニット36(図2を参照)から送出されたメダルがメダル払出口12を通じて払い出されるようになっている。メダルのクレジット枚数は、メダルのクレジット枚数が上限値に達していないときに、メダル投入口11にメダルが投入される、又は、入賞によってメダルが払い出されると増加するようになっている。
図2は、前扉10bが開かれた回胴式遊技機10を前方斜め右上から見た図である。回胴式遊技機10は、図2に示すように、前方が開放された箱状を為す筺体本体10aと、筺体本体10aの前面側に開閉可能な状態で取り付けられた前扉10bとで構成された遊技機筺体の内部に各種の機器が収容されたものとなっている。本実施態様において、遊技機筺体の内部には、メイン制御基板ユニット30、サブ制御基板ユニット31、液晶ユニット32、電源ユニット33、コネクタユニット34、リールユニット35及びホッパーユニット36等が納められている。
メイン制御基板ユニット30は、役抽選や入賞判定等、遊技における基本的な制御を行う電子基板(メイン制御基板)を備えている。サブ制御基板ユニット31は、発光ランプや音声による演出等、遊技における演出に関する制御を行う電子基板(サブ制御基板)を備えている。液晶ユニット32は、液晶ディスプレイ16(図1を参照)に表示される映像による演出に関する制御を行う電子基板(映像基板)を備えている。電源ユニット33は、回胴式遊技機10における各機器に電力を供給する電子基板(電源基板)を備えている。コネクタユニット34は、特定の機器に接続されたケーブルを仲介する電子基板(仲介基板)を備えている。リールユニット35は、リール13,14,15の回転をそれぞれ独立して制御する電子基板(リール制御基板)を備えている。ホッパーユニット36は、メダル投入口11(図1を参照)に投入されたメダルを回収するとともに、メイン制御基板ユニット30からの信号に基づいてメダル払出口12(図1を参照)へメダルを送出する制御を行う電子基板(ホッパー制御基板)を備えている。
これらのユニットに備えられた各種電子基板は、いずれも、不正アクセスの対象となり得る。例えば、メイン制御基板ユニット30に備えられた電子基板(メイン制御基板)には、回胴式遊技機10における基本的な制御を行うためのプログラムが記録された記憶装置(ROM)が搭載されているところ、この記憶装置を偽造したものに交換することによって、遊技中に特定の操作を行うと必ず大当たりになるようにする等、回胴式遊技機10に不正な改造を試みる者がいる。このため、回胴式遊技機10等の遊技機においては、この種の電子基板を、ケースの内部に収容して封止することが行われている。本実施態様においても、図3に示すような遊技機用基板ケース100の内部に、電子基板を収容することによって、当該電子基板を封止する構造を採用している。
2.遊技機用基板ケース及びその周辺部材の概要
遊技機用基板ケース100及びその周辺部材について説明する。以下においては、メイン制御基板ユニット30(図2)用の遊技機用基板ケース(メイン制御基板を封止する遊技機用基板ケース)を例に挙げて説明する。しかし、以下で述べる構成は、メイン制御基板ユニット30以外のユニット(例えば、サブ制御基板ユニット31や液晶ユニット32等)の遊技機用基板ケースにおいても、好適に採用することができる。
図3は、遊技機用基板ケース100を前方斜め右上から見た図である。図4は、遊技機用基板ケース100を分解した状態を前方斜め右上から見た図である。本実施態様において、遊技機用基板ケース100は、図3に示すように、カバー部材110とベース部材120とを互いに組み付けることによって構成されている。図4に示すように、カバー部材110は、封止対象である電子基板500の前側(y軸方向負側)を覆うための部材となっており、ベース部材120は、電子基板500の後側(y軸方向正側)を覆うための部材となっている。
本実施態様において、遊技機用基板ケース100は、その後側に配されるケースホルダ200(筺体側部材)を介して、筺体本体10aの背板10a1(図2)の前面側に取り付けられる。遊技機用基板ケース100の前面側には、保護カバー300が装着されるようになっている。図5は、ケースホルダ200に取り付けた遊技機用基板ケース100に保護カバー300を装着した状態を前方斜め右上から見た図である。
図4に示した各部材のうち、電子基板500を除く部材(特に、遊技機用基板ケース100を構成するカバー部材110及びベース部材120)は、通常、ポリエチレンやポリウレタン等の透明な熱可塑性樹脂によって形成される。これは、遊技機用基板ケース100の内部に収容された電子基板500に対する不正な改造等を、遊技機用基板ケース100の外部からでも発見できるようにすること、或いは、不正アクセスの際に加えられた外力に起因する白化等の痕跡が、各部材に目立つ状態で残りやすくすることを考慮してのものである。本実施態様においては、カバー部材110、ベース部材120、ケースホルダ200及び保護カバー300の全てを、透明な熱可塑性樹脂からなる射出成形品としている。
3.遊技機用基板ケース等の組付手順
図4に示した、カバー部材110、ベース部材120、ケースホルダ200、保護カバー300及び電子基板500は、本実施態様において、以下の組付手順1〜4で組み付けるようになっている。以下の組付手順1〜4は、通常、遊技機の製造工場で行われる。
[組付手順1]
カバー部材110の後面側に、電子基板500を組み付ける。
[組付手順2]
ベース部材120の前面側に、カバー部材110を組み付け、電子基板500を、遊技機用基板ケース100の内部に収容した状態とする。
[組付手順3]
筺体本体10aの背板10a1(図2)の前面側に固定されたケースホルダ200(筺体側部材)の前面側に、遊技機用基板ケース100を組み付ける。
[組付手順4]
遊技機用基板ケース100の前面側に、保護カバー300を組み付ける。
以下、上記の組付手順1〜4について説明する。
3.1 組付手順1
図6は、電子基板500を、(a)前方斜め右上から見た状態、及び、(b)後方斜め左上から見た状態をそれぞれ示した図である。通常、電子基板500には、図6に示すように、その片面側(本実施態様においては前面側)に各種電子部品が集中的に配置されるが、上記の組付手順1においては、電子基板500における各種電子部品が配置された側が前側を向く状態で、電子基板500をカバー部材110に組み付ける。
これにより、図2に示すように、回胴式遊技機10の前扉10bを開けたときに、電子基板500に実装された各種電子部品に異常がないか(ROMが偽造されたものに不正に交換されていないか等)を目視により確認することが容易になる。また、電子基板500における各種電子部品が実装された側をカバー部材110で覆った状態とすることができるため、引き続き行われる手順2〜4等で、電子基板500の電子部品が他の部材等に衝突して破損する等の不具合を防止することも可能となる。
カバー部材110に対する電子基板500の固定方法は、特に限定されない。本実施態様においては、電子基板500の四隅部に設けられたビス孔500a(図6(b))に対して、電子基板500の後側から図示省略のビスを挿入し、当該ビスの先端部(前端部)をカバー部材110の後面側に螺合することにより、電子基板500をカバー部材110に固定するようにしている。電子基板500の固定を終えると、上記の組付手順1が完了する。
3.2 組付手順2
組付手順1が完了すると、ベース部材120に対するカバー部材110の組付(組付手順2)が行われる。図7は、上記の組付手順2を行っているときの遊技機用基板ケース100を、前方斜め右上から見た図である。組付手順2は、図7に示す順番で、ベース部材120に対してカバー部材110を移動させることにより行われる。具体的には、図7(a)に示すように、ベース部材120の前面側にカバー部材110を配して、図7(b)に示すように、ベース部材120に対してカバー部材110を後方に移動させてベース部材120にカバー部材110を嵌め込んだ後、図7(c)に示すように、ベース部材120に対してカバー部材110を下方にスライドさせることによって、組付手順2が行われる。
すなわち、組付手順2では、カバー部材110を後方に移動させる後方移動操作(図7(a)の矢印V1を参照)と、カバー部材110を下方にスライドさせる下方スライド操作(図7(b)の矢印V2を参照)との2段階の操作が行われる。以下においては、上記の下方スライド操作の開始位置(遊技機用基板ケース100が図7(b)に示す状態にあるときのベース部材120におけるカバー部材110が位置する箇所)を「ベース部材120における組付スライド開始位置」と呼び、上記の下方スライド操作の終了位置(遊技機用基板ケース100が図7(c)に示す状態にあるときのベース部材120におけるカバー部材110が位置する箇所)を「ベース部材120における組付けスライド終了位置」と呼ぶことがある。
図8は、ベース部材120における組付スライド開始位置にカバー部材110を嵌め込んだときの遊技機用基板ケース100を、前方から見た図である。図9は、ベース部材120における組付スライド終了位置までカバー部材110をスライドさせたときの遊技機用基板ケース100を、前方から見た図である。図8及び図9では、遊技機用基板ケース100における一部を破断した状態で示している。
上記の組付手順2で上記の下方スライド操作を行う際には、図8及び図9に示すように、係合部170と被係合部130とが互いに係合し、係合部170と被係合部130とが一旦係合した後は、係合部170や被係合部130を破壊等しない限りは、ベース部材120からカバー部材110を取り外すことができない状態となる。本実施態様においては、後述するように、カバー部材110側に被係合部130を設けて、ベース部材120側に係合部170を設けているが、これとは逆にしても(カバー部材110側に係合部170を設けて、ベース部材120側に被係合部130を設けても)よい。
ところで、遊技機の業界では、遊技機の製造工場等においてカバー部材とベース部材とを係合させることを「Aカシメ」と呼び、遊技機用基板ケースにおける「Aカシメ」が施される部分を「Aカシメ部」と呼んでいる。「Aカシメ部」は、遊技機が製造工場から出荷されてから、遊技機の検査機関が遊技機用基板ケースを開封して電子基板を検査するまでの間、遊技機用基板ケースの内部の電子基板に不正改造等が施されないように、遊技機用基板ケースを封止する(遊技機用基板ケースが不正に開封された際にはその痕跡が残るようにする)ための部分となっている。
本実施態様において、この組付手順2で係合される係合部170及び被係合部130も、この「Aカシメ部」として設けたものである。したがって、本明細書においては、この組付手順2で係合される係合部170と被係合部130との係合を「Aカシメ」と呼び、遊技機用基板ケース100における、これらの係合部170と被係合部130とにより係合される部分を「Aカシメ部」と呼ぶことがある。本願の図面においては、「Aカシメ部」に相当する部分を符号「A」を用いて示している。
「Aカシメ部」は、遊技機用基板ケース100における不正アクセスしにくい箇所であれば、それを設ける場所を特に限定されない。また、「Aカシメ部」の設置数も特に限定されない。本実施態様においては、図8及び図9に示すように、遊技機用基板ケース100における左上隅角部と右上隅角部との2箇所に、「Aカシメ部」を1つずつ設けている。
図10〜13に、本実施態様の遊技機用基板ケース100における「Aカシメ部」の係合の態様を示す。図10〜13は、図9の遊技機用基板ケース100における右上隅角部の「Aカシメ部」の係合の態様を示したものであるが、左上隅角部の「Aカシメ部」の係合の態様もこれと同様である。
図10は、(a)ベース部材120における組付スライド開始位置にカバー部材110を嵌め込んだとき、及び、(b)ベース部材120における組付スライド終了位置までカバー部材110をスライドさせたときの遊技機用基板ケース100における「Aカシメ部」周辺を、後方斜め右下から見た図である。図10では、図示の便宜上、カバー部材110における一部を破断した状態で示すとともに、ベース部材120側の部材は、係合部170のみを図示し、他の部分の図示を省略している。
図11は、ベース部材120における組付スライド開始位置にカバー部材110を嵌め込んだときの遊技機用基板ケース100における「Aカシメ部」周辺を、左右方向に垂直な平面で切断して示した図である。図12は、カバー部材110がベース部材120における組付スライド開始位置と組付けスライド終了位置との間にあるとき(ベース部材120の係合部170が後述する押込変位規制部140に当接したとき)の遊技機用基板ケース100における「Aカシメ部」周辺を、左右方向に垂直な平面で切断して示した図である。図13は、ベース部材120における組付スライド終了位置までカバー部材110をスライドさせた状態の遊技機用基板ケース100における「Aカシメ部」周辺を、左右方向に垂直な平面で切断して示した図である。図11〜13では、図示の便宜上、図10等では描かれている被係合部用保護部材160の図示を省略している。
カバー部材110をベース部材120におけるスライド終了位置までスライドさせると、図13に示すように、係合部170の係合面170aが、被係合部130の被係合面130aに係合した状態となり、係合部170を被係合部130から引き抜くことができない状態となる。本実施態様においては、組付手順2で係合部170を被係合部130に係合した後、カバー部材110の左下隅角部及び右下隅角部に設けられたビス孔110a(図8)に、カバー部材110の前側からビス600(図9)を挿入し、ビス600の先端部(後端部)をベース部材120の前面側に螺合することにより、カバー部材110をベース部材120に固定するようにしている。カバー部材110の固定を終えると、上記の組付手順2が完了する。
3.3 組付手順3
組付手順2が完了すると、ケースホルダ200に対する遊技機用基板ケース100の組付(組付手順3)が行われる。通常、この組付手順3が開始されるよりも前の段階において、ケースホルダ200は、筺体本体10a(図2)の背板10a1に対して、固定された状態となっている。筺体本体10aに対するケースホルダ200の固定方法は、特に限定されない。本実施態様においては、ケースホルダ200の四隅部に設けられたビス孔200a(図40)に、ケースホルダ200の前側から図示省略のビスを挿入し、当該ビスの先端部(後端部)を、筺体本体10aの背板10a1の前面側に螺合することにより、ケースホルダ200を筺体本体10aに固定するようにしている。
図14は、上記の組付手順3を行っているときの遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200を、前方斜め右上から見た図である。組付手順3は、図14に示す順番で、ケースホルダ200に対して遊技機用基板ケース100を移動させることにより行われる。具体的には、図14(a)に示すように、ケースホルダ200の前面側に遊技機用基板ケース100を配して、図14(b)に示すように、ケースホルダ200に対して遊技機用基板ケース100を後方に移動させてケースホルダ200に遊技機用基板ケース100を嵌め込んだ後、図14(c)に示すように、ケースホルダ200に対して遊技機用基板ケース100を右方にスライドさせることによって、組付手順3が行われる。
すなわち、組付手順3では、遊技機用基板ケース100を後方に移動させる後方移動操作(図14(a)の矢印V3を参照)と、遊技機用基板ケース100を右方にスライドさせる右方スライド操作(図14(b)の矢印V4を参照)との2段階の操作が行われる。以下においては、上記の右方スライド操作の開始位置(遊技機用基板ケース100が図14(b)に示す状態にあるときのケースホルダ200における遊技機用基板ケース100が位置する箇所)を「ケースホルダ200における組付スライド開始位置」と呼び、上記の右方スライド操作の終了位置(遊技機用基板ケース100が図14(c)に示す状態にあるときのケースホルダ200における遊技機用基板ケース100が位置する箇所)を「ケースホルダ200における組付けスライド終了位置」と呼ぶことがある。
図15は、ケースホルダ200における組付スライド開始位置に遊技機用基板ケース100を嵌め込んだ状態を、前方から見た図である。図16は、ケースホルダ200における組付スライド終了位置まで遊技機用基板ケース100をスライドさせた状態を、前方から見た図である。図15及び図16では、遊技機用基板ケース100における一部を破断した状態で示している。
上記の組付手順3で上記の右方スライド操作を行う際には、図15及び図16に示すように、係合部170と被係合部220とが互いに係合し、係合部170と被係合部220とが一旦係合した後は、係合部170や被係合部220を破壊等しない限りは、ケースホルダ200から遊技機用基板ケース100を取り外すことができない状態となる。本実施態様においては、後述するように、遊技機用基板ケース100側(より具体的にはベース部材120側)に係合部170を設けて、ケースホルダ200側に被係合部220を設けているが、これとは逆にしても(遊技機用基板ケース100側に被係合部130を設けて、ケースホルダ200側に係合部220を設けても)よい。
ところで、遊技機の業界では、遊技機の製造工場等においてケースホルダ等の筺体側部材に対して遊技機用基板ケースを係合させることを「Bカシメ」と呼び、遊技機用基板ケース及び筺体側部材における「Bカシメ」が施される部分を「Bカシメ部」と呼んでいる。「Bカシメ部」は、遊技機が製造工場から出荷されてから、遊技機の検査機関が電子基板を検査するために遊技機用基板ケースを筺体側部材から取り外すまでの間、遊技機用基板ケースが筺体側部材から不正に取り外されないようにする(遊技機用基板ケースが筺体側部材から不正に取り外されたときにはその痕跡が残るようにする)ための部分となっている。
本実施態様において、この組付手順3で係合される係合部170及び被係合部220も、この「Bカシメ部」として設けたものである(ただし、被係合部220は、後述する「Cカシメ部」も兼用するようになっている。)。したがって、本明細書においては、この組付手順3で係合される係合部170と被係合部220との係合を「Bカシメ」と呼び、遊技機用基板ケース100等における、これらの係合部170と被係合部220とにより係合される部分を「Bカシメ部」と呼ぶことがある。本願の図面においては、「Bカシメ部」に相当する部分を符号「B」を用いて示している。
「Bカシメ部」は、遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200における不正アクセスしにくい箇所であれば、それを設ける場所を特に限定されない。また、「Bカシメ部」の設置数も特に限定されない。本実施態様においては、図15及び図16に示すように、遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200における右縁部中央付近に、「Bカシメ部」を1つ設けている。
また、本実施態様のケースホルダ200では、被係合部220が、後掲の図42に示すように、第一位置(同図(a)の位置)と第二位置(同図(b)の位置)との間を移動可能な状態となっており、被係合部220(被係合用可動体)を「Bカシメ部」として利用する場合には、被係合部220を、図42(a)の第一位置へ移動させ、被係合部220(被係合用可動体)を後述する「Cカシメ部」として利用する場合には、被係合部220を、図42(b)の第二位置へ移動させるようになっている。このため、組付手順3における「Bカシメ」は、被係合部220が第一位置にあることを確認してから行うようにする。
このように、ケースホルダ200の被係合部220は、移動可能なものであるため、本明細書においては、「被係合用可動体」と呼ぶことがある。また、第一位置にある被係合部220に対して係合する係合部170を「第一位置用係合部」と呼び、第二位置にある被係合部220に対して係合する係合部170を「第二位置用係合部」と呼ぶことがある。本実施態様においては、後述するように、第一位置用係合部170及び第二位置用係合部170として同一の部品を用いているため、第一位置用係合部170(「Bカシメ部」の係合部170)と第二位置用係合部170(「Cカシメ部」の係合部170)の形態は、同一となっている。
図17及び図18に、本実施態様における「Bカシメ部」の係合の態様を示す。図17は、(a)ケースホルダ200における組付スライド開始位置に遊技機用基板ケース100を嵌め込んだとき、及び、(b)ケースホルダ200における組付スライド終了位置まで遊技機用基板ケース100をスライドさせたときの遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200における「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」周辺を、前方斜め左上から見た図である。図17では、図示の便宜上、遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200における一部を破断した状態で示している。図18は、ケースホルダ200における組付スライド終了位置まで遊技機用基板ケース100をスライドさせたときの遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200における「Bカシメ部」周辺を、下方から見た図である。
遊技機用基板ケース100をケースホルダ200におけるスライド終了位置までスライドさせると、図18に示すように、係合部170の係合面170aが、被係合用可動体220の被係合面220aに係合した状態となり、係合部170を被係合用可動体220から引き抜くことができない状態となる。ケースホルダ200に対する遊技機用基板ケース100の組付を終えると、上記の組付手順3が完了する。
3.4 組付手順4
組付手順3が完了すると、遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200に対する保護カバー300の組付(組付手順4)が行われる。図19は、組付手順4で組み付ける保護カバー300を、(a)前方斜め右上から見た状態、及び、(b)後方斜め左上から見た状態をそれぞれ示した図である。図20は、組付手順4を行っているときの遊技機用基板ケース100、ケースホルダ200及び保護カバー300を、前方斜め右上から見た図であり、同図(a)は、ケースホルダ200に組み付けられた遊技機用基板ケース100の前面側に保護カバー300を配した状態を、同図(b)は、遊技機用基板ケース100の前面側に配した保護カバー300を遊技機用基板ケース100に対して後方に移動させて遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200における所定位置に嵌め込んだ状態を示している。
この保護カバー300は、以下の機能を有するものとなっている。すなわち、図4に示すように、本実施態様の電子基板500の前面下部には、各種のケーブル端子500bが設けられており、本実施態様のカバー部材110の前面下部には、これらのケーブル端子500bを露出させるための開口部120bが設けられているところ、保護カバー300は、これらのケーブル端子500bや開口部120bに不正アクセスされないように、ケーブル端子500bや開口部120bを保護する機能を有している。また、保護カバー300は、ケースホルダ200に組み付けられた後の遊技機用基板ケース100が、ケースホルダ200に対して左右方向にスライドしないように、遊技機用基板ケース100の移動を規制する機能をも有している。
ところで、本実施態様においては、組付手順4が開始されるよりも前の段階で、図20(a)に示すように、遊技機用基板ケース100の前面における右下隅角部に、封印シール601を貼り付けるようにしている。この封印シール601は、遊技機用基板ケース100におけるカバー部材110とベース部材120との境界に跨る状態で貼り付けられる。このため、遊技機用基板ケース100が不正に開封された場合には、その痕跡が封印シール601にも残るようになり、不正開封の事実をより発見しやすくすることが可能となっている。
また、本実施態様においては、この組付手順4で、図20(b)に示すように、遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200に対して保護カバー300を嵌め込んだ後、保護カバー300の左下隅角部及び右縁部中央付近に設けられたビス孔300a,300b(図19(a))に、保護カバー300の前側から図示省略のビスを挿入し、当該ビスの先端部(後端部)をケースホルダ200の前面側に螺合することにより、保護カバー300をケースホルダ200に固定するようにしている。保護カバー300の右縁部中央のビス孔300bに挿入されるビスは、遊技機用基板ケース100のベース部材120の右下隅角部に設けられたビス孔120a(図20(a))にも挿通され、ベース部材120を貫通した状態に設けられる。
さらに、本実施態様においては、この組付手順4で、保護カバー300を遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200に対して上記のビスで固定した後に、保護カバー300における上記のビスにより固定した箇所に、封印キャップ602(図20(b))を嵌め込んで蓋をし、さらに封印シール603(図20(b))を貼り付けるようにしている。この封印シール603は、封印キャップ602と保護カバー300とに跨る状態で貼り付けられる。このため、保護カバー300が不正に取り外された場合等には、その痕跡が、封印キャップ602や封印シール603にも残るようになり、その事実をより発見しやすくすることが可能となっている。封印シール603の貼付を終えると、上記の組付手順4が完了する。
3.5 組付手順1〜4の完了後
上記の組付手順1〜4の全てが完了すると、遊技機用基板ケース100は、遊技機筺体に取り付けられた状態となっている。遊技機筺体に対するその他の部材の取り付けも全て完了すると、遊技機の組み立てが完了する。
4.遊技機用基板ケース等の正規開封手順
本実施態様の遊技機用基板ケース100、ケースホルダ200及び保護カバー300は、検査機関により電子基板500等の検査が行われる場合には、以下の正規開封手順1〜4で正規開封されることを想定したものとなっている。
[正規開封手順1]
保護カバー300を、遊技機用基板ケース100の前面側から取り外す。
[正規開封手順2]
上記の「Bカシメ部」を解除し、遊技機用基板ケース100をケースホルダ200から取り外す。
[正規開封手順3]
上記の「Aカシメ部」を解除し、遊技機用基板ケース100のベース部材120からカバー部材110を取り外す。
[正規開封手順4]
カバー部材110から電子基板500を取り外す。
以下、上記の正規開封手順1〜4について説明する。
4.1 正規開封手順1
正規開封手順1は、上記の組付手順4で保護カバー300に貼り付けた封印シール603(図20(b))を破り、上記の組付手順4で保護カバー300に嵌め込まれた封印キャップ602(図20(b))を破壊して保護カバー300から取り外し、封印キャップ602で覆われていた箇所のビスを取り外すことによって行う。
4.2 正規開封手順2
正規開封手順2における「Bカシメ部」の解除は、遊技機用基板ケース100における「Bカシメ部」を覆う部分に設けられた正規開封時破壊部100a1(図9)を破壊し、その破壊した部分からニッパー等の工具を挿入して「Bカシメ部」を構成する係合部170の基端部(図15において破線部170bで示した部分)を切断することによって行う。「Bカシメ部」を解除した後は、上記の組付手順3とは逆に、ケースホルダ200に対して遊技機用基板ケース100を左方にスライドさせ、遊技機用基板ケース100を、図14(c)に示す組付スライド終了位置から図14(b)に示す組付スライド開始位置へと移動させた後、遊技機用基板ケース100を前方に引き抜くことにより、遊技機用基板ケース100をケースホルダ200から取り外す。
4.3 正規開封手順3
正規開封手順3における「Aカシメ部」の解除は、遊技機用基板ケース100における「Aカシメ部」を覆う部分に設けられた脆弱部100b1(図7(a)及び図13)を破壊して、被係合部130(図13)をカバー部材110の本体部から分離した状態とすることによって行う。「Aカシメ部」を解除した後は、上記の組付手順2とは逆に、ベース部材120に対してカバー部材110を上方にスライドさせ、カバー部材110を、図7(c)に示す組付スライド終了位置から図7(b)に示す組付スライド開始位置へと移動させた後、カバー部材110を前方に引き抜くことにより、カバー部材110をベース部材120から取り外す。
4.4 正規開封手順4
正規開封手順4は、上記の組付手順1で取り付けたビス(カバー部材110に対して電子基板500を固定しているビス)を取り外すことにより行う。
4.5 正規開封手順1〜4の完了後
上記の正規開封手順1〜4の全てが完了すると、検査機関により、電子基板500等の検査が行われる。目的の検査を終えると、遊技機用基板ケース100、ケースホルダ200及び保護カバー300は、検査機関等により、再封止される。
5.遊技機用基板ケース等の再封止手順
本実施態様において、遊技機用基板ケース100、ケースホルダ200及び保護カバー300は、検査機関等による正規開封が行われた後には、検査機関等により、以下の再封止手順1〜4で再封止されることを想定したものとなっている。
[再封止手順1]
カバー部材110の後面側に、検査後の電子基板500を組み付ける。
[再封止手順2]
ベース部材120の前面側に、カバー部材110を組み付け、電子基板500を、遊技機用基板ケース100の内部に収容した状態とする。
[再封止手順3]
筺体本体10aの背板10a1(図2)の前面側に固定されたケースホルダ200(筺体側部材)の前面側に、遊技機用基板ケース100を組み付ける。
[再封止手順4]
遊技機用基板ケース100の前面側に、保護カバー300を組み付ける。
以下、上記の再封止手順1〜4について説明する。
5.1 再封止手順1
再封止手順1では、上記の組付手順1と同様の手順で、カバー部材110の後面側に、検査後の電子基板500を組み付ける。
5.2 再封止手順2
再封止手順2では、上記の組付手順2と同様の手順で、ベース部材120の前面側に、カバー部材110を組み付ける。ただし、上記の組付手順2を行う際には、「Aカシメ部」を構成する係合部170を、被係合部130に係合させたが、再封止手順2を行う際には、上記の正規開封手順3で「Aカシメ部」が破壊されて、「Aカシメ部」がその機能を果たせない状態となっている。このため、再封止手順2では、「Aカシメ部」の係合は行わない。上記の正規開封手順3が行われて以降は、「Aカシメ部」は破壊されたままの状態となっている。
5.3 再封止手順3
再封止手順3では、上記の組付手順3と同様の手順で、筺体本体10aの背板10a1(図2)の前面側に固定されたケースホルダ200(筺体側部材)の前面側に、遊技機用基板ケース100を組み付ける。この再封止手順3において、遊技機用基板ケース100は、遊技機用基板ケース100やケースホルダ200を破壊等しない限りは、ケースホルダ200から取り外すことができない状態で、ケースホルダ200に組み付けられる。
この点、上記の組付手順3を行う際には、図17に示すように、「Bカシメ部」を構成する係合部170(第一位置用係合部)を、第一位置(図42(a))にある被係合用可動体220に対して係合させた。しかし、再封止手順3を行う際には、上記の正規開封手順2で、「Bカシメ部」の係合部170が破壊されて、その機能(Bカシメ)を果たせない状態となっている。このため、再封止手順3では、「Bカシメ部」の係合部170と被係合用可動体220との係合は行わず、「Bカシメ部」の係合部170に併設された係合部170(図17において符号「C」で示される部分の係合部170)(第二位置用係合部)を、第二位置(図42(b))にある被係合用可動体220に対して係合させる。したがって、再封止手順3を行う際には、被係合用可動体220を、予め第二位置へと移動させておく。第二位置用係合部170と被係合用可動体220との係合状態は、第一位置用係合部170と被係合用可動体170との係合状態(図15〜17)と同様であるため、説明を省略する。
ところで、遊技機の業界では、検査機関等による正規開封の際に筺体側部材(ケースホルダ200等)から取り外された遊技機用基板ケースを、元の筺体側部材に対して再度組み付けるときに、筺体側部材に対して遊技機用基板ケースを係合させることを「Cカシメ」と呼び、遊技機用基板ケース及び筺体側部材における「Cカシメ」が施される部分を「Cカシメ部」と呼んでいる。「Cカシメ部」は、検査機関等による正規開封の後に、遊技機用基板ケースが筺体側部材から不正に取り外されないようにする(遊技機用基板ケースが筺体側部材から不正に取り外されたときにはその痕跡が残るようにする)ための部分となっている。
本実施態様において、この再封止手順3で係合される係合部170(第二位置用係合部)及び被係合用可動体220も、この「Cカシメ部」として設けたものである(ただし、被係合用可動体220は、上述したように、「Bカシメ部」も兼用するようになっている。)。したがって、本明細書においては、この再封止手順3で係合される係合部170と被係合用可動体220との係合を「Cカシメ」と呼び、遊技機用基板ケース100等における、この係合部170と被係合用可動体220とにより係合される部分を「Cカシメ部」と呼ぶことがある。本願の図面においては、「Cカシメ部」に相当する部分を符号「C」を用いて示している。
「Cカシメ部」を構成する係合部170(第二位置用係合部)は、遊技機用基板ケース100等における不正アクセスしにくい箇所であれば、それを設ける場所を特に限定されない。しかし、「Cカシメ部」を構成する係合部170は、「Bカシメ部」を構成する係合部170(第一位置用係合部)の近傍に、第一位置用係合部170に並列(互いの係合方向が平行となるよう)に設けると好ましい。これにより、使用する「カシメ部」を「Bカシメ部」から「Cカシメ部」に切り替える際に、被係合用可動体220を単純な軌跡(直線状の軌跡)で短距離移動させれば済むようになり、ケースホルダ200の設計が容易となる。また、「Cカシメ部」の設置数も特に限定されない。本実施態様においては、図15及び図16に示すように、遊技機用基板ケース100等における右縁部中央付近における、「Bカシメ部」の下隣りとなる箇所に、「Cカシメ部」(第二位置用係合部)を1つ設けている。
ところでまた、検査機関等による正規開封は、1度とは限らないため、従来の遊技機用基板ケース等においては、「Cカシメ部」に加えて、「Dカシメ部」や「Eカシメ部」が設けられることもある。この場合、2度目の正規開封の際には「Cカシメ部」が破壊され、2度目の再封止の際には「Dカシメ部」が利用され、3度目の正規開封の際には「Dカシメ部」が破壊され、3度目の再封止の際には「Eカシメ部」が利用される。本実施態様の遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200では、「Dカシメ部」や「Eカシメ部」に相当する部分を設けていないが、遊技機用基板ケース100及びケースホルダ200には、「Dカシメ部」や「Eカシメ部」に相当する部分を設けることもできる。
「Dカシメ部」や「Eカシメ部」を設ける場合には、被係合用可動体220が、「Bカシメ部」として利用される第一位置と、「Cカシメ部」として利用される第二位置との間だけでなく、「Dカシメ部」として利用される第三位置や、「Eカシメ部」として利用される第四位置にも移動できるようにするとともに、第三位置にある被係合用可動体220に係合する第三位置用係合部や、第四位置にある被係合用可動体220に係合する第四位置用係合部を設けることによって実現することができる。この場合、第一位置用係合部、第二位置用係合部、第三位置用係合部及び第四位置用係合部は、近くで並列に配置すると好ましい。
以上の手順で、「Cカシメ部」の係合部170(第二位置用係合部)と被係合用可動体220とを係合させると、再封止手順3が終了する。この状態においては、遊技機用基板ケース100とケースホルダ200とを係合する「Cカシメ部」は機能しているものの、遊技機用基板ケース100におけるカバー部材110とベース部材120とを係合する「Aカシメ部」は、上述したように、既に破壊されているため、「Aカシメ部」として機能していない。
しかし、本実施態様の遊技機用基板ケース100は、ベース部材120に対してカバー部材110を上方にスライドさせなければ、カバー部材110をベース部材120から取り外せない構造となっている(上記の正規開封手順3を参照。)ところ、ケースホルダ200は、図14に示すように、上壁部204を有しており、再封止手順3を終えたときには、この上壁部204がカバー部材110を上側から押さえて、カバー部材110の上方へのスライドを規制するようになっている。このため、遊技機用基板ケース100は、ケースホルダ200に組み付けられた状態では、「Aカシメ部」が機能していなくても、ベース部材120からカバー部材110を取り外すことができない状態となっている。
5.4 再封止手順
再封止手順4では、上記の組付手順4と同様の手順で、遊技機用基板ケース100の前面側に、保護カバー300を組み付ける。
5.5 再封止手順1〜4の完了後
上記の再封止手順1〜4の全てが完了すると、遊技機は、ホールに設置することが可能な状態となる。ホールに設置された遊技機に不審な挙動が見られたり、電子基板500に故障や不審な点が認められたりした場合には、電子基板500等が、メーカーに返却される。
6.電子基板等のメーカー返却手順
本実施態様の電子基板500等をメーカーに返却する場合には、以下の返却手順1〜4を経ることを想定している。
[返却手順1]
保護カバー300を、遊技機用基板ケース100の前面側から取り外す。
[返却手順2]
上記の「Cカシメ部」を解除し、遊技機用基板ケース100をケースホルダ200から取り外す。
[返却手順3]
後述する「Fカシメ部」を利用し、遊技機用基板ケース100におけるカバー部材110とベース部材120とを係合し、電子基板500を遊技機用基板ケース100に封止した状態とする。
[返却手順4]
電子基板500を遊技機用基板ケース100で封止された状態のままメーカーに返却する。
以下、上記の返却手順1〜4について説明する。
6.1 返却手順1
返却手順1では、上記の正規開封手順1と同様の手順で、保護カバー300を、遊技機用基板ケース100の前面側から取り外す。
6.2 返却手順2
返却手順2では、上記の正規開封手順2で「Bカシメ部」を解除したものと同様の手順で、「Cカシメ部」を解除し、遊技機用基板ケース100をケースホルダ200から取り外す。ただし、上記の正規開封手順2で「Bカシメ部」を解除する際には、遊技機用基板ケース100における「Bカシメ部」を覆う部分に設けられた正規開封時破壊部100a1(図9)を破壊し、その破壊した部分からニッパー等の工具を挿入して「Bカシメ部」の係合部170を切断したが、返却手順2で「Cカシメ部」を解除する際には、遊技機用基板ケース100における「Cカシメ部」を覆う部分に設けられた正規開封時破壊部100a2(図9)を破壊し、その破壊した部分からニッパー等の工具を挿入して「Cカシメ部」の係合部170を切断する。
返却手順2を終えた状態にあっては、遊技機用基板ケース100がケースホルダ200から取り外されて、ケースホルダ200の上壁部204(図14)によるカバー部材110の上方へのスライド規制が効かなくなっていることに加えて、上述したように「Aカシメ部」は既に破壊されていて機能しなくなっているため、カバー部材110は、ベース部材120から取り外すことが可能な状態となっている。
6.3 返却手順3
上述したように、返却手順2を終えた状態にあっては、カバー部材110は、ベース部材120から取り外すことが可能な状態となっている。このため、この状態の遊技機用基板ケース100では、電子基板500の封止機能を果たすことができない。したがって、この状態で遊技機用基板ケース100をメーカーに返送すると、その返送経路の途中で電子基板500のROMが偽造ROMに交換される等の不正行為が為された場合に、その不正行為に気づきにくくなる。また、返却された電子基板500をメーカーが検査して、偽造ROM交換等の不正行為を発見できたとしても、その不正行為がホールで為されたものなのか、返送経路の途中で為されたものなのか等を判断することが難しくなる。よって、この返却手順3では、カバー部材110とベース部材120とを再度係合した状態とし、電子基板500を遊技機用基板ケース100によって再度封止した状態とする。
本実施態様においては、ベース部材120の右下隅角部付近に設けられた被係合部180(後掲の図31を参照。)を、ニッパー等を用いてベース部材120から切り離し、その切り離した被係合部180を、図7(a)に示されるカバー部材の上壁部114の右端部に設けられた被係合部嵌込口110bに対して上側から嵌め込んだ状態とし、上記の組付手順2でベース部材120に対してカバー部材110を組み付けたのと同様の操作(後方移動操作及び下方スライド操作)を行って、ベース部材120に対してカバー部材110を組み付けることで、カバー部材110とベース部材120とを再度係合した状態とするようにしている。カバー部材110を下方スライド操作する際には、ベース部材120の右上隅角部に設けられた係合部170(図7(a)において符号「F」で示される部分の係合部170)が、上記の被係合部180に押し込まれて係合する。被係合部180は、その周囲にフランジが設けられていて、被係合部嵌込口110bを通り抜けることができない形態を有しているため、被係合部180に係合部170が係合した後は、被係合部180や、それに係合する係合部170を破壊等しない限りは、ベース部材120からカバー部材110を取り外すことができない状態となる。
このとき、ベース部材120における被係合部180(図31)が切り離された区画は、穴(切取穴)が開いた状態となっている。しかし、本実施態様の遊技機用基板ケース100では、ベース部材120の仕切壁部126(後掲の図30(a)を参照)やカバー部材110の仕切壁部116(後掲の図21(b)を参照)によって、遊技機用基板ケース100の内部における、上記の切取穴で外部と連通する空間と、電子基板500が収容される空間とが仕切られる構造となっている。このため、仕切壁部116や仕切壁部126を破壊等しない限りは、上記の切取穴を通じて、電子基板500へはアクセスできない状態となっている。
ところで、遊技機の業界では、電子基板等をメーカーに返却する際に、その電子基板等を収容する遊技機用基板ケースにおけるカバー部材とベース部材とを係合させることを「Fカシメ」と呼び、遊技機用基板ケースにおける「Fカシメ」が施される部分を「Fカシメ部」と呼んでいる。「Fカシメ部」は、電子基板等をメーカーに返却する際に、遊技機用基板ケースが不正に開けられないようにする(遊技機用基板ケースが不正に開けられたときにはその痕跡が残るようにする)ための部分となっている。
本実施態様において、この返却手順3で係合される係合部170及び被係合部180も、この「Fカシメ部」として設けたものである。したがって、本明細書においては、この返却手順3で係合される係合部170と被係合部180との係合を「Fカシメ」と呼び、遊技機用基板ケース100における、この係合部170と被係合部180とにより係合される部分を「Fカシメ部」と呼ぶことがある。本願の図面においては、「Fカシメ部」に相当する部分を符号「F」を用いて示している。
「Fカシメ部」は、遊技機用基板ケース100における不正アクセスしにくい箇所であれば、それを設ける場所を特に限定されない。また、「Fカシメ部」の設置数も特に限定されない。本実施態様においては、図8及び図9に示すように、遊技機用基板ケース100における右上隅角部の1箇所に、「Fカシメ部」を設けている。「Fカシメ部」は、「Aカシメ部」等には存在する一部の構造(例えば、後掲の図24に示される押込変位規制部140や近接変位規制部150等)が設けられていないことを除いては、「Aカシメ部」等と同様である。このため、「Fカシメ部」の係合の態様については、詳しい説明を省略する。「Fカシメ部」の係合が完了すると、返却手順3は終了する。
6.4 返却手順4
返却手順4では、電子基板500等を、所定の返送経路で、遊技機用基板ケース100ごとメーカーに返送する。
6.5 返却手順1〜4の完了後
メーカーは、ホール等から返却された遊技機用基板ケース100における「Fカシメ部」を解除し、上記の正規開封手順3と同様、ベース部材120に対してカバー部材110を上方にスライドさせた後、カバー部材110を前方に引き抜くことにより、カバー部材110をベース部材120から取り外した後、上記の正規開封手順4と同様の手順で、電子基板500をカバー部材110から取り外し、電子基板500の点検や修理等を行う。「Fカシメ部」の解除は、遊技機用基板ケース100における「Fカシメ部」を覆う部分に設けられた正規開封時破壊部100a3(図7(a))を破壊し、その破壊した部分からニッパー等の工具を挿入して「Fカシメ部」の係合部170を切断することによって行う。
7.遊技機用基板ケース及びその周辺部材の具体的構造
本実施態様の遊技機用基板ケースは、上記の「3.遊技機用基板ケース等の組付手順」、「4.遊技機用基板ケース等の正規開封手順」、「5.遊技機用基板ケース等の再封止手順」及び「6.電子基板等のメーカー返却手順」で述べたような使用態様を想定したものであるため、遊技機用基板ケース100やケースホルダ200等には、このような使用態様に適した様々な工夫を施している。以下、これらの工夫について詳しく説明する。
ただし、以下の説明においては、説明の便宜上、「α方向」、「α+側」及び「α−側」、並びに、「β方向」、「β+側」及び「β−側」という語句を用いることがある。これらの語句が意味するところは、図35に示した通りである。図35は、カバー部材110に「Aカシメ部」として設けられた被係合部130に対して、ベース部材120に「Aカシメ部」として設けられた係合部170の係合部分を、押込方向奥側に押し込んで係合させているときの係合部170の変位の様子を、押込方向奥側(z軸方向正側)から見た図である。
すなわち、被係合部130に対する係合部170の押込方向(z軸方向)に垂直で、且つ、脆弱部100b1の面(被係合部130が設けられる側の面。以下同じ。)に平行な方向を「α方向」と呼んでおり、α方向の一側を「α+側」と呼び、α方向の他側を「α−側」と呼んでいる。図35(Aカシメ)の例では、x軸方向正側が「α+側」となっており、x軸方向負側が「α−側」となっている。また、脆弱部100b1の面に垂直な方向を「β方向」と呼んでおり、β方向における脆弱部100b1の面から遠い側を「β+側」と呼び、β方向における脆弱部100b1の面に近い側を「β−側」と呼んでいる。図35(Aカシメ)の例では、y軸方向正側が「β+側」となっており、y軸方向負側が「β−側」となっている。
「α方向」、「α+側」及び「α−側」、並びに、「β方向」、「β+側」及び「β−側」という語句が意味するところは、「Aカシメ部」以外の、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」等においても同様である。ただし、本実施態様においては、「Aカシメ部」と、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」とでは、係合部170の押込方向が異なっているため、「α方向」等と、x軸、y軸及びz軸との関係も異なっている。具体的には、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」においては、図16に示すz軸方向が「α方向」となり、z軸方向正側が「α−側」で、z軸方向負側が「α+側」となっている。
加えて、「Aカシメ部」においては、図13に示すように、脆弱部100b1が被係合部130側に設けられており、y軸方向正側が「β+側」(脆弱部100b1から遠い側)で、y軸方向負側が「β−側」(脆弱部100b1に近い側)となっているのに対して、「Bカシメ部」や「Cカシメ部」においては、図18に示すように、脆弱部100b1が係合部170側に設けられており、y軸方向正側が「β−側」(脆弱部100b1に近い側)で、y軸方向負側が「β+側」となっている。このように、「Aカシメ部」における「β+側」及び「β−側」と、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」における「β+側」及び「β−側」とは逆転するため、注意を要する。この点については、後で詳しく説明する。
8.遊技機用基板ケース(カバー部材及びベース部材)
まず、遊技機用基板ケース100について説明する。上述したように、遊技機用基板ケース100は、ベース部材120の前面側にカバー部材110を組み付けることにより構成される。
8.1 カバー部材(遊技機用基板ケース)
図21は、カバー部材110を、(a)前方斜め右上から見た状態、及び、(b)後方斜め左上から見た状態をそれぞれ示した図である。図22は、カバー部材110を前方から見た状態を示した図である。図23は、カバー部材110を後方から見た状態を示した図である。図24は、カバー部材110に「Aカシメ部」として設けられた被係合部130を、(a)前方斜め右上から見た状態、及び、(b)後方斜め左上から見た状態をそれぞれ示した図である。図25は、図24の被係合部130を、同図におけるz軸方向負側の面を正面として描いた六面図である。
本実施態様のカバー部材110は、図21に示すように、前面視矩形状を為す前壁部111と、前壁部111の両側の左縁部及び右縁部からそれぞれ後側に突出して設けられた左壁部112及び右壁部113と、前壁部111の上縁部及び下縁部からそれぞれ後側に突出して設けられた上壁部114及び下壁部115と、前壁部111の後方空間を仕切る仕切壁部116,117等とを備えたものとなっている。上壁部114は、カバー部材110の上面を覆うだけでなく、後述する押込変位規制部140(図12)を当接させる「耐力壁部」としても機能する部分となっている。このため、以下においては、上壁部114のことを「耐力壁部114」と呼ぶことがある。また、仕切壁部116,117は、単なる仕切としてだけでなく、上記の組付手順2や再封止手順2等において、ベース部材120に対してカバー部材110を上下方向にスライドさせる際のガイドとしても機能する部分となっている。
前壁部111における、上記の「Aカシメ部」を覆う箇所の裏側(後面側)には、図23に示すように、被係合部130が設けられている。この被係合部130は、カバー部材110をベース部材120に対して組み付ける「Aカシメ」の際に、ベース部材120側に設けられた係合部170(後掲の図31において符号「A」で示される部分の係合部170)を押し込んで係合するための部分となっている。
本実施態様の被係合部130は、後述するように、α+側(x軸方向正側)に位置するα+側被係合壁部131(図24)と、α−側(x軸方向負側)に位置するα−側被係合壁部132(図24)とを有するところ、α+側被係合壁部131の基端部とα−側被係合壁部132の基端部(前端部)とを、図22に示す脆弱部100b1の裏側(後面側)に対して一体的に形成している。本実施態様のカバー部材110においては、α+側被係合壁部131が設けられる脆弱部100b1と、α−側被係合壁部132が設けられる脆弱部100b1とを分断させている。脆弱部100b1に対して被係合部130を一体化させる方法は、特に限定されないが、本実施態様のカバー部材110においては、脆弱部100b1(カバー部材110)とは別個に形成された被係合部130をカバー部材110に対して振動溶着することによって、被係合部130を脆弱部100b1に一体化させている。
上記の脆弱部100b1は、熱可塑性樹脂によって周辺部位よりも脆弱に形成された部分となっており、被係合部130に対する係合部170の係合を不正に解除しようとした際に被係合部130に加えられた外力に起因する痕跡(白化等の塑性変形)を残すための部分(後述する「不正解除時白化部」に相当する部分)となっている。すなわち、脆弱部100b1は、係合部170と被係合部130との係合を不正解除する際に、白化等の塑性変形を意図的に生じさせるための部分となっている。このため、本実施態様においては、遊技機用基板ケース100を遊技機筺体における所定箇所に取り付けたままの状態であっても、遊技機用基板ケース100の外部から脆弱部100b1を視認しやすいように、脆弱部100b1を設ける場所及び向きを設定している。具体的には、図22に示すように、カバー部材110の前壁部111(前壁部111は、遊技機用基板ケース100を遊技機筺体に取り付けた際には前方に配される。)において、脆弱部100b1の法線方向が、前後方向(y軸方向)に対して略平行となるように、「Aカシメ部」の脆弱部100b1を設けている。また、本実施態様においては、後述するように、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」にも脆弱部100b1(図17)が設けられるが、この「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」の脆弱部100b1も、その法線方向が前後方向(y軸方向)に対して略平行となっていることについては同様である。
既に述べたように、本実施態様の遊技機用基板ケース100は、ケースホルダ200を介して、筺体本体10a(図2)の背板10a1に取り付けられる。このため、図2に示すように、遊技機用基板ケース100は、筺体本体10a(遊技機筺体)の所定箇所に取り付けた状態にあっては、そのカバー部材110の前壁部111が、前方(図2におけるy軸方向負側)を向いた状態に配されるようになっている。加えて、図2に示すように、遊技機筺体における前扉10bを開けた状態にあっては、カバー部材110の前壁部111が、筺体本体10aの開放面10a2(前扉10bを開くことによって開かれる面。図2における一点鎖線で示される面を参照。)側から視認できるようになっている。換言すると、前壁部111(遊技機用基板ケース100)と筺体本体10aの開放面10a2との間には、視線を遮るような障害物が存在しない状態となっている。したがって、上記のように、カバー部材110の前壁部111に設けた脆弱部100b1は、点検者が容易に視認することができる。
このように、脆弱部100b1(不正解除時白化部)を設ける部材と、筺体本体10aの開放面10a2との間に、視線を遮る障害物を介在させないことにより、その脆弱部100b1(不正解除時白化部)を点検者が容易に確認することが可能になる。これは、本発明に係る構成を、筺体本体10aに取り付けられる他の部材(メイン制御基板ユニット30以外の部材。例えば、図2のサブ制御基板ユニット31等。)で採用する場合においても同様である。また、本発明に係る構成を、筺体本体10aではなく、前扉10bに取り付けられる部材(例えば、図2の液晶ユニット32やコネクタユニット34等。)で採用する場合には、脆弱部100b1(不正解除時白化部)を設ける部材と、前扉10bの開放面10b2(前扉10bを閉じたときに、筺体本体10aの開放面10a2に重なる面。図2における二点鎖線で示される面を参照。)との間に、視線を遮る障害物を介在させないことにより、その脆弱部100b1(不正解除時白化部)を点検者が容易に確認することが可能になる。脆弱部100b1(不正解除時白化部)の法線方向は、筺体本体10aの開放面10a2の法線方向と略平行になるようにする(筺体本体10a側の部材に脆弱部100b1(不正解除時白化部)を設ける場合。)、又は、前扉10bの開放面10b2の法線方向と略平行になるようにする(前扉10b側の部材に脆弱部100b1(不正解除時白化部)を設ける場合。)と好ましい。
以下においては、遊技機用基板ケース100の最外面を形成する部分(カバー部材110の前壁部111や右壁部113や上壁部114等や、ベース部材120の後壁部121や左壁部122や下壁部125等)のうち、カバー部材110の前壁部111が、筺体本体10aの開放面10a2から最も視認しやすい部分(点検者が視認しやすい部分)であるという意味で、カバー部材110の前壁部111を「視認外面部」と呼ぶことがある。視認外面部111は、カバー部材110とベース部材120とを組み付けたままの状態であっても遊技機用ケース部材100の内部状態を外部から視認できるように透明材料で形成される。本実施態様の遊技機用基板ケース100では、既に述べたように、視認外面部111だけでなく、カバー部材110及びベース部材120の略全体を透明な熱可塑性樹脂により形成している。
脆弱部100b1を周辺部位よりも脆弱に形成する方法は、特に限定されない。本実施態様において、脆弱部100b1は、その周囲の部分よりも薄肉に形成したことによって、周辺部位よりも脆弱に形成しており、その部分に白化等の塑性変形が生じやすくしている。本明細書においては、上記の脆弱部100b1のように、遊技機用部材(カバー部材110やベース部材120だけでなく、ケースホルダ200等の他の部材も含む。)に設けられた係合部や被係合部、又は、当該遊技機用部材における当該係合部や当該被係合部が設けられた部分の周辺における、当該係合部と当該被係合部との係合の不正解除の際に、白化等の塑性変形を生じる部分を、「不正解除時白化部」と呼ぶことがある。
脆弱部100b1の厚さは、カバー部材110の成形材料等によっても異なり、特に限定されない。しかし、脆弱部100b1を厚くしすぎると、不正アクセスの際に脆弱部100b1に痕跡が残りにくくなる虞がある。このため、脆弱部100b1の厚さは、1mm以下とすると好ましく、0.7mm以下とするとより好ましく、0.5mm以下とするとさらに好ましい。一方、脆弱部100b1を薄くしすぎると、不正アクセスの際だけでなく、遊技機の製造工場等で係合部170を被係合部130に対して正規に係合させる際(上記の組付手順2を行う際)にも、脆弱部100b1に塑性変形が生じやすくなる。このため、脆弱部100b1の厚さは、通常、0.05mm以上とされる。脆弱部100b1の厚さは、0.1mm以上とするとより好ましい。
また、それぞれの脆弱部100b1の面積(1つの脆弱部100b1の面積)も特に限定されない。しかし、それぞれの脆弱部100b1の面積を狭くしすぎると、必然的に、被係合部130も小さくする必要が生じ、被係合部130等の成形が困難になる虞がある。このため、それぞれの脆弱部100b1の面積は、5mm2以上とすると好ましく、10mm2以上とするとより好ましい。一方、それぞれの脆弱部100b1の面積を広くしすぎると、脆弱部100b1が破損しやすくなりすぎてしまい、不正アクセス以外の場合にも、脆弱部100b1に塑性変形が生じやすくなってしまう。このため、脆弱部100b1は、狭い範囲に限定的に設けると好ましい。具体的には、それぞれの脆弱部100b1の面積を、300mm2以下とすると好ましく、200mm2以下とするとより好ましく、100mm2以下とするとさらに好ましい。被係合部130の寸法をあまり小さくできない場合には、本実施態様のカバー部材110のように、1つの被係合部130につき、脆弱部100b1を複数箇所に分断して設けるとよい。
被係合部130は、ベース部材120側に設けられた係合部170(後掲の図31において符号「A」で示される部分の係合部170)を係合可能なものであれば、その形態を特に限定されない。本実施態様のカバー部材110においては、後掲の図33に示すように、係合部170を、α+側(x軸方向正側)に位置するα+β+側係合ピン172及びα+β−側係合ピン173と、α−側(x軸方向負側)に位置するα−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175とで構成しているため、図24及び図25に示すように、カバー部材110側の被係合部130も、α+側(x軸方向正側)に配されたα+側被係合壁部131と、α−側(x軸方向負側)に配されたα−側被係合壁部132とで構成している。すなわち、α+側被係合壁部131に、α+β+側係合ピン172及びα+β−側係合ピン173が係合し、α−側被係合壁部132に、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175が係合するようにしている。
係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合する際には、α+側(x軸方向正側)のα+β+側係合ピン172及びα+β−側係合ピン173が、α+側被係合壁部131から押圧力を受け、α−側(x軸方向負側)のα−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175が、α−側被係合壁部132から押圧力を受けるようになる。このため、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合する際には、図35に示すように、α+側(x軸方向正側)のα+β+側係合ピン172及びα+β−側係合ピン173と、α−側(x軸方向負側)のα−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175とが、同図の実線部で示す初期位置から、同図の網掛けハッチングで示す第一変位位置まで、α方向(x軸方向)に互いに近づく向きに弾性変位した後、再び、初期位置へと弾性復帰することで、α+側被係合壁部131及びα−側被係合壁部132に係合するようになっている。
また、本実施態様の被係合部130には、図24(b)に示すように、α+側被係合壁部131の先端部(後端部)と、α−側被係合壁部132の先端部(後端部)とを連結する連結壁部133も設けている。さらに、被係合部130には、α+側被係合壁部131の基端部(前端部)と、α−側被係合壁部132の基端部(前端部)とを連結する底壁部134も設けている。このため、被係合部130は、図25の正面図に示すように、正面視枠型を為しており、剛性が高められた状態となっている。したがって、係合部170を係合している被係合部130が意図しない変形をすることにより、係合部170が被係合部130から外れることを防止することが可能となっている。
また、本実施態様のカバー部材110においては、図11に示すように、耐力壁部114から見て、係合部170の押込方向手前側(z軸方向負側)となる箇所に、耐力壁部114から所定間隔を隔てた状態で、押込変位規制部140が設けられている。この押込変位規制部140は、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合する際に、押込方向奥側(z軸方向正側)に変位して耐力壁部114に当接することによって、それ以降の被係合部130の押込方向奥側(z軸方向正側)への変位を規制するための部分となっている。より具体的には、押込変位規制部140は、以下のような機能を発揮するための部分となっている。
すなわち、既に述べたように、被係合部130は、それに係合された係合部170が不正に引き抜かれた際に痕跡が残りやすくするために、脆弱部100b1に対して一体的に設けられているところ、この脆弱部100b1には、不正開封時だけでなく、遊技機の製造工場等で係合部170を被係合部130に対して正規に係合させる際(上記の組付手順2を行う際)にも、白化等の痕跡が残る可能性がある。というのも、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合させる際には、係合部170による押込の力が、被係合部130にも加わり、被係合部130が脆弱部100b1に対して押込方向奥側(z軸方向正側)に変位しようとするからである。このため、上記のような問題に対して、何ら対策を施していないと、不正開封が為されていない遊技機用基板ケース100を不正開封が為されたものと誤認する虞がある。
この点、本実施態様の遊技機用基板ケース100では、上記の押込変位規制部140を設けたことによって、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合させる際における、被係合部130の押込方向奥側(z軸方向正側)への変位を規制して、脆弱部100b1に対する被係合部130の押込方向奥側(z軸方向正側)への変位を小さくすることができるようになっている。したがって、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合させる際には、脆弱部100b1に無理な力が加わりにくくなるため、脆弱部100b1に白化等の塑性変形を生じにくくすることが可能となっている。
一方、係合部170を被係合部130から引き抜いて係合部170と被係合部130との係合を解除しようとした際には、上記の押込変位規制部140は、被係合部130とともに押込方向手前側(z軸方向負側)に変位し、耐力壁部114等の他の部位に当接することもないため、係合部170を被係合部130から引き抜く際における、被係合部130の押込方向手前側への変位を規制する機能を発揮しない。このため、係合部170を被係合部130から不正に引き抜こうとした際には、脆弱部100b1の白化等(不正解除の痕跡の発生)が、押込変位規制部140で阻害されない。
本実施態様の遊技機用基板ケース100は、上記の押込変位規制部140を上記の態様で設けたことによって、係合部170を被係合部130に対して押し込む際には、脆弱部100b1に白化等の塑性変形が生じにくくしながらも、係合部170を被係合部130から引き抜く際には、脆弱部100b1に白化等の塑性変形が生じやすくするという、一見矛盾する目的を同時に達成することに成功している。
押込変位規制部140は、カバー部材110における、耐力壁部114から見て、係合部170の押込方向手前側(図11におけるz軸方向負側)となる箇所に、被係合部130と一体的に設ける(被係合部130とともに変位する状態で設ける)のであれば、その具体的な設置箇所を限定されない。押込変位規制部140は、係合部170に直接的に押圧される(係合部170の押込力が、係合部170から押込変位規制部140に直接的に加えられる)ことにより、押込方向奥側に変位するようにしてもよいし、係合部170に直接的に押圧されない(係合部170の押込力が、被係合部130におけるα+側被係合壁部131やα−側被係合壁部132等を介して間接的に押込変位規制部140に加えられる)ようにしてもよい。
本実施態様の押込変位規制部140は、図24(a)に示すように、被係合部130の連結壁部133における押込方向奥側(z軸方向正側)に延在する部分に設けた凸状の部分となっている。この押込変位規制部140は、係合部170が挿入される側(y軸方向負側)に突出した状態となっている。このため、図12に示すように、係合部170を被係合部130に対して押し込む際には、押込変位規制部140における押込方向手前側(z軸方向負側)の端部の面140a(以下において、「押込変位規制部の係合部被当接面」と呼ぶことがある。)に、係合部170におけるβ+側(y軸方向正側)の部分(図33のα+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174)が当接するようになっている。したがって、被係合部130に対して係合部170を押し込む際における、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174や押込変位規制部140の挙動を安定させることが可能となっている。
また、本実施態様においては、図24(a)及び図25の左側面図に示すように、押込変位規制部140の係合部被当接面140aを、押込方向手前側(図24のz軸方向負側)から押込方向奥側(同図のz軸方向正側)となるにつれてβ−側(図24のy軸方向負側)に滑らかに(徐々に)突き出るように傾斜させている。このため、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合する際には、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174が、図35の実線部で示す初期位置から、同図の網掛けハッチングで示す第一変位位置に変位した後、さらに、押込変位規制部140の係合部被当接面140aに当接して案内されることで、図35の破線部で示す第二変位位置まで、β−側(y軸方向負側)に弾性変位した後に、初期位置へと弾性復帰するようになっている。
すなわち、本実施態様の遊技機用基板ケース100では、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合する際に、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174が、α方向(x軸方向)とβ方向(y軸方向)との双方に弾性変位するようになっている。このように、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174と被係合部130との係合構造を複雑化することによって、被係合部130に係合した係合部170を、被係合部130から不正に取り外すことがより困難なものとすることが可能となっている。なお、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174が係合部被当接面140aに当接して案内される構造としては、上記のように、係合部被当接面140aを、押込方向手前側(図24のz軸方向負側)から押込方向奥側(同図のz軸方向正側)となるにつれてβ−側(図24のy軸方向負側)に滑らかに突き出るように傾斜させる他に、係合部被当接面140aを、押込方向手前側(図24のz軸方向負側)から押込方向奥側(同図のz軸方向正側)となるにつれてβ−側(図24のy軸方向負側)に階段状に突き出るように形成し、この階段状となった部位のエッジ部分で、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174が案内されるようにしてもよい。
また、図13に示すように、係合部170を被係合部130に係合した後には、係合部170におけるβ+側(y軸方向正側)の部分(図33のα+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174)の隙間に、押込変位規制部140が位置するようになっている。このため、係合の不正解除を目的として、α+β+側係合ピン172とα−β+側係合ピン174とをα方向(x軸方向)に互いに近づく向きに変位させようとしても、押込変位規制部140が邪魔になるようになっている。すなわち、押込変位規制部140に、後述する近接変位規制部150と同様の機能を発揮させることも可能となっている。
押込変位規制部140と耐力壁部114との隙間G1(図11)の大きさは、特に限定されない。しかし、この隙間G1を広くしすぎると、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合させる際に、押込変位規制部140が耐力壁部114に当接しなくなり、押込変位規制部140が被係合部130の押込方向奥側への変位を規制できなくなる虞がある。このため、隙間G1(隙間G1に、後述する被係合部用保護部材160が存在する場合等、隙間G1に別部材が存在する場合には、当該別部材の厚さを除いた値。以下同じ。)は、通常、3mm以下とされる。隙間G1は、2mm以下であると好ましく、1mm以下であるとより好ましい。
さらに、本実施態様においては、図24(b)に示すように、被係合部130の底壁部134における押込方向奥側(z軸方向正側)に延在する部分に、近接変位規制部150を凸状に設けている。この近接変位規制部150は、係合部170が挿入される側(y軸方向正側)に突出した状態となっている。このため、図13に示すように、係合部170と被係合部130とを係合した後には、係合部170におけるβ−側(y軸方向負側)の部分(図33のα+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175)の隙間に、近接変位規制部150が位置するようになる。すなわち、係合の不正解除を目的として、α+β−側係合ピン173とα−β−側係合ピン175とをα方向(x軸方向)に互いに近づく向きに変位させようとしても、近接変位規制部150が邪魔になるようになっている。
図12に示すように、係合部170を被係合部130に押し込む際には、近接変位規制部150における、押込方向手前側(z軸方向負側)の端部の面150a(以下において、「近接変位規制部の係合部被当接面」と呼ぶことがある。)に、係合部170が当接するようになっている。この点、本実施態様においては、図24(b)及び図25の左側面図に示すように、近接変位規制部150の係合部被当接面150aを、押込方向手前側(図24のz軸方向負側)から押込方向奥側(同図のz軸方向正側)となるにつれてβ+側(図24のy軸方向正側)に滑らかに(徐々に)突き出るように傾斜させている。このため、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合する際には、α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175が、図35の実線部で示す初期位置から、同図の網掛けハッチングで示す第一変位位置に変位した後、さらに、近接変位規制部150の係合部被当接面150aに当接して案内されることで、図35の破線部で示す第二変位位置まで、β+側(y軸方向正側)に弾性変位した後に、初期位置へと弾性復帰するようになっている。
すなわち、本実施態様の遊技機用基板ケース100では、係合部170を被係合部130に対して押し込んで係合する際には、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174だけでなく、α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175も、α方向(x軸方向)とβ方向(y軸方向)との双方に弾性変位するようになっている。このように、係合部170と被係合部130との係合構造を複雑化することによって、被係合部130に係合した係合部170を、被係合部130から不正に取り外すことがさらに困難なものとすることが可能となっている。なお、α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175が係合部被当接面150aに当接して案内される構造としては、上記のように、係合部被当接面150aを、押込方向手前側(図24のz軸方向負側)から押込方向奥側(同図のz軸方向正側)となるにつれてβ+側(図24のy軸方向正側)に滑らかに突き出るように傾斜させる他に、係合部被当接面150aを、押込方向手前側(図24のz軸方向負側)から押込方向奥側(同図のz軸方向正側)となるにつれてβ+側(図24のy軸方向正側)に階段状に突き出るように形成し、この階段状となった部位のエッジ部分で、α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175が案内されるようにしてもよい。
ところで、本実施態様の遊技機用基板ケース100においては、不正アクセスの有無の点検者が脆弱部100b1を目視しやすいように、遊技機用基板ケース100を遊技機の筺体内に配置した際に、脆弱部100b1の法線方向が点検者の視線方向と略平行となるように配している。このため、遊技機用基板ケース100等における、脆弱部100b1に垂直な板状の部分(例えば、上記の耐力壁部114や、被係合部130のα+側被係合壁部131やα−側被係合壁部132等)は、脆弱部100b1と比べて目視しにくく、当該板状の部分に白化等の塑性変形が生じていても、気づきにくいため、当該板状の部分を手掛かりに、被係合部130への不正アクセスが試みられる虞がある。
この点、本実施態様においては、図26及び図27に示す被係合部用保護部材160を、図28に示すように、被係合部130に対して装着し、被係合部130を保護することで、上記のような不正アクセスを防止している。図26は、被係合部用保護部材160を、(a)前方斜め右上から見た状態、及び、(b)後方斜め左上から見た状態をそれぞれ示した図である。図27は、図26の被係合部用保護部材160を、同図におけるz軸方向負側の面を正面として描いた六面図である。図28は、図24の被係合部130に対して図26の被係合部用保護部材160を取り付けている様子を、後方斜め左上から見た状態を示した図である。
本実施態様の被係合部用保護部材160は、図26に示すように、背面保護部161と、側面保護部(左側面保護部162及び右側面保護部163)と、平面保護部164とを備えた金属製の部材となっている。図28に示すように、背面保護部161は、被係合部130の各外面のうち、押込方向奥側の面(z軸方向正側を向く面。以下「被係合部の背面」という。)を覆う板状の部分となっている。側面保護部162,163は、被係合部130の各外面のうち、脆弱部100b1に略垂直で、且つ、係合部130の押込方向に略平行な面(x軸方向正側又はx軸方向負側を向く面。以下「被係合部の側面」という。)を覆う板状の部分となっている。平面保護部164は、被係合部130の各外面のうち、脆弱部100b1に一体的に設けられる面とは逆側の面(y軸方向正側を向く面。以下「被係合部の平面」という。)を覆う板状の部分となっている。
この被係合部用保護部材160で被係合部130を保護することによって、被係合部130に対する、脆弱部100b1の法線方向(点検者の視線方向)に垂直な方向からの不正アクセスを防止することが可能になる。また、この被係合部用保護部材160は、後述するように、被係合部130又は脆弱部100b1等に対して固定されるところ、ドライバーやドリル等の工具を用いて被係合部用保護部材160に孔をあけようとした場合には、工具から被係合部用保護部材160に加えられた外力が、被係合部用保護部材160から被係合部130を介して脆弱部100b1へと間接的に、又は、被係合部用保護部材160から脆弱部100b1へ直接的に加えられるようになり、脆弱部100b1に白化等の塑性変形を生じさせることが可能になる。すなわち、脆弱部100b1の法線方向に垂直な方向から不正アクセスが為された場合であっても、その痕跡を脆弱部100b1に残し、不正アクセスの有無を発見しやすくすることができる。換言すると、点検者が目視しにくい部分に対する不正アクセスの痕跡を、点検者が目視しやすい部分に残るようにすることで、点検者が目視しにくい部分に対する不正アクセスの痕跡を発見しやすくすることができる。
背面保護部161、左側面保護部162、右側面保護部163及び平面保護部164は、それぞれ、被係合部130の背面、左側面、右側面及び平面の一部のみを覆うものであってもよい。しかし、本実施態様の被係合部用保護部材160においては、背面保護部161、左側面保護部162、右側面保護部163及び平面保護部164によって、それぞれ、被係合部140の背面、左側面、右側面及び平面の略全体が覆われるようにしている。また、背面保護部161と左側面保護部162と右側面保護部163と平面保護部164は、別個の部材を繋ぎ合せたものであってもよい。しかし、本実施態様の被係合部用保護部材160は、単一の金属板(所定形状に裁断した1枚の平面状の金属板)に、折曲加工を施すことにより、形成したものとなっている。これにより、被係合部用保護部材160を、破損等のしにくい強度に優れたものとするだけでなく、被係合部用保護部材160を構成する保護部161,162,163,164のうちいずれの保護部に外力が加えられた場合であっても、その外力が脆弱部100b1まで伝わるようにすることもできる。
また、本実施態様の被係合部用保護部材160においては、図26に示すように、左側面保護部162及び右側面保護部163に、嵌込片160aを設けている。この嵌込片160aは、図28に示すように、被係合部130に対して被係合部用保護部材160を装着する際に、被係合部130に設けられた嵌込片受部130bに嵌め込まれるようになっている。これにより、被係合部用保護部材160を被係合部130に対して位置決めすることができるようになっている。嵌込片160aの設けた方は、特に限定されないが、本実施態様においては、左側保護部162及び右側面保護部163を形成する金属板を、被係合部用保護部材160の内面側に切り起こすことによって、嵌込片160aを形成している。このため、嵌込片160aは、左側保護部162及び右側面保護部163に対して弾性的に変位可能となっている。したがって、嵌込片160aを嵌込片受部130bに嵌め込んだ状態にあっては、被係合部130に対して嵌込片150aを密着させた状態を保つことができる。よって、被係合部用保護部材160のガタツキを防止するだけでなく、被係合部用保護部材160に加えられた外力を被係合部130に対して確実に伝達させることも可能となっている。
さらに、本実施態様の被係合部用保護部材160において、嵌込片160aは、図28に示すように、被係合部130に対する被係合部用保護部材160の装着方向手前側(y軸方向正側)が側面保護部162,163の内面側に大きく突出する向きに傾斜して設けられている。このため、図28(a)に示すように、被係合部130に対して被係合部用保護部材160を装着する際には、大きな抵抗を生じさせることなく、被係合部用保護部材160を目的の位置まで押し込むことができるようになっている。したがって、被係合部用保護部材160の装着時においては、被係合部用保護部材160を押し込む力が脆弱部100b1に伝わりにくく、被係合部用保護部材160の装着時における脆弱部100b1の白化等を防止することが可能となっている。
これに対し、図28(b)に示すように、被係合部130に装着された被係合部用保護部材160を装着方向手前側(y軸方向正側)に引き抜こうとした際には、嵌込片160aにおける装着方向手前側(y軸方向正側)の端部が、嵌込片受部130bに係止された状態となる。すなわち、被係合部用保護部材160は、被係合部130から取り外しにくい状態となっている。また、被係合部用保護部材160を被係合部130から無理に引き抜こうとした際には、その引抜力が、被係合部130を介して脆弱部100b1に伝わりやすく、脆弱部100b1に白化等の塑性変形が生じやすくなっている。
さらにまた、本実施態様の被係合部用保護部材160においては、図27に示すように、平面保護部164における正面側の縁部に、起立部160bを設けている。この起立部160bは、図28(b)に示すように、被係合部130に被係合部用保護部材160を装着した状態において、被係合部130の連結壁部133における押込方向手前側(z軸方向負側)の面に当接する部分となっている。これにより、被係合部130に装着された被係合部用保護部材160を、被係合部用保護部材160の装着方向(y軸方向)に対してだけでなく、係合部170の押込方向(z軸方向)にもガタつかないようにすることが可能となっている。
ところで、本実施態様の遊技機用基板ケース100では、カバー部材110の脆弱部100b1が、「不正解除時白化部」となっていることについては、既に述べた。また、後述するように、係合部170(図33)における棒状の係合ピン(α+β+側係合ピン172、α+β−側係合ピン173、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175)の基端部100b2も、応力が集中しやすく、白化等の塑性変形が生じやすいため、「不正解除時白化部」として利用している。これらの不正解除時白化部は、白化等の塑性変形を目立ちやすくするため、通常、カバー部材110やベース部材120等と同様、透明な熱可塑性樹脂によって形成される。しかし、これらの不正解除時白化部に白化が生じた場合であっても、その白化した箇所をドライヤー等で加熱して透明化することにより、不正開封の痕跡が消去される可能性がある。この点、本実施態様の遊技機用基板ケース100等においては、加熱によって見た目が変質する熱反応部を不正解除時白化部に設けることによって、上記のような不正開封の痕跡の消去行為の有無を、熱反応部の見た目から判断することができるようにしている。具体的には、図22に示すように、脆弱部100b1(不正解除時白化部100b)に熱反応部100cを設けるとともに、図33に示すように、係合部170のα+β−係合ピン173の基端部100b2(不正解除時白化部100b)にも、熱反応部100cを設けている。
熱反応部100cは、加熱によって見た目が変質するものであれば、特に限定されない。
熱反応部100cの見た目の変質の態様としては、
(1)加熱前には見えていた又は見えやすかった熱反応部100cが、加熱後には見えなく又は見えにくくなる。
(2)加熱前にはある態様で見えていた熱反応部100cが、加熱後には別の態様で見えるようになる(例えば、加熱前後で熱反応部100cの色が変わる等)。
等が例示される。
以下においては、上記(1)の態様で見た目が変質する熱反応部を「加熱消去型の熱反応部」と呼ぶことがあり、上記(2)の態様で見た目が変質する熱反応部を「加熱変異型の熱反応部」と呼ぶことがある。本実施態様の熱反応部100cは、加熱消去型のものとなっている。
熱反応部100cは、単純な点状、単純な線状、又は、単純な面状に設けてもよいが、文字、図形若しくは記号又はこれらの結合からなるパターン状に設けると、熱反応部100cを容易に識別することが可能になる。本実施態様の熱反応部100cは、図22及び図33に示すように、アルファベットからなる文字列(「ABC」の文字列)を図形化したものとなっている。
また、熱反応部100cは、不正解除時白化部100b(脆弱部100b1又は係合部170の係合ピンの基端部100b2)の表面から分離可能な別部材(例えばシール等)に設けたものであってもよい。
しかし、この場合には、不正解除を行った後、
(1)熱反応部100cが設けられた別部材を不正解除時白化部100bから綺麗に分離する。
(2)不正解除時白化部100bにおける、不正解除の際に白化した箇所を加熱し(このとき、熱反応部100cが設けられた別部材は加熱しない)、当該箇所の白化痕を消去する。
(3)熱反応部100cが設けられた別部材を不正解除時白化部100bにおけるもとあった箇所に固定する。
という手順で白化痕の消去が行われた場合に、加熱の履歴が熱反応部100cに残らなくなる。
このため、熱反応部100cは、不正解除時白化部100bの表面から分離できない状態で設ける(不正解除時白化部100bの表面に対して一体的に形成する)と好ましい。これにより、上記(1)〜(3)の手順による白化痕の消去行為を行うことができないようにすることが可能になる。本実施態様の熱反応部100cも、不正解除時白化部100bの表面に対して一体的に形成されたものとなっている。
不正解除時白化部100bに対して熱反応部100cを一体的に形成する方法も、特に限定されない。
不正解除時白化部100bに対する熱反応部100cの一体的な形成方法としては、
(1)不正解除時白化部100bの表面に凹部又は凸部を形成(凹部又は凸部は、例えば、彫刻、曇り加工又はシボ加工等によって形成することができる。)する方法
(2)加熱によって見た目が変化する塗料等を不正解除時白化部100bの表面に塗布する方法
(3)加熱によって変質する顔料等を不正解除時白化部100bの成形材料に混ぜ込む方法
等が例示される。
図29は、不正解除時白化部100bにおける熱反応部100cが設けられた部分を、不正解除時白化部100bの表面(前面)に垂直な平面で切断して、斜めから見た図である。本実施態様の熱反応部100cは、図29に示すように、不正解除時白化部100bの表面に多数の微細凸部100c1及び微細凹部100c2を微細彫刻することによって形成されたものとなっている。
微細凸部100c1及び微細凹部100c2からなる熱反応部100cを加熱すると、熱反応部100cが見えなく又は見えにくくなる理由は、以下のようなものであると推測される。すなわち、微細凸部100c1等からなる熱反応部100cは、加熱前には、微細凸部100c1等のエッジが尖って立った状態にあり、目視しやすい(微細凸部100c1等の影が見えたり、微細凸部100c1等がプリズムとなって各微細凸部100c1からの出射光が分光し、虹色に見える部分が出現したりする)ところ、加熱すると、微細凸部100c1等が溶融して微細凸部100c1等のエッジが丸くなり、熱反応部100cの表面が加熱前よりも滑らかな状態となる(平滑化する)ため、目視しにくくなる(微細凸部100c1等の影が見えにくくなったり、各微細凸部100c1からの出射光が分光しなくなり、虹色に見える部分が出現しにくくなったりする)ためと推測される。
本実施態様の熱反応部100cにおいて、微細凸部100c1及び微細凹部100c2は、線状に形成されており、隣り合う微細凸部100c1と微細凸部100c2、及び、隣り合う微細凹部100c2と微細凹部100c2は、所定間隔を隔てて平行に配された状態となっている。このように規則正しく配列された線状の微細凸部100c1や微細凹部100c2は、上記の微細彫刻等で容易に形成することができる。また、このように規則正しく配列された線状の微細凸部100c1や微細凹部100c2からなる熱反応部100cは、加熱前後における見た目の変化も大きい。その理由は、加熱前の熱反応部100cにおいて、微細凸部100c1等の影が見えやすくなることや、微細凸部100c1等における上記のプリズム作用がより顕著に現れやすくなること等が影響しているものと推測される。
微細凸部100c1の高さH1(図29)(本実施態様の熱反応部100cにおいては、微細凹部100c2の深さに一致する。)は、特に限定されない。しかし、微細凸部100c1を高くしすぎる(微細凹部100c2を深くしすぎる)と、熱反応部100cを加熱しても、熱反応部100cが上記のように平滑化しにくくなり、加熱前後における熱反応部100cの見た目の変化が小さくなる虞がある。このため、微細凸部100c1の高さH1は、通常、300μm以下とされる。微細凸部100c1の高さH1は、100μm以下であると好ましく、50μm以下であるとより好ましく、10μm以下であるとさらに好ましく、5μm以下であると最適である。微細凸部100c1の高さH1の下限は、特に限定されないが、微細凸部100c1の成形容易性や加工容易性等を考慮すると、0.1μm以上に設定とすると好ましい。本実施態様の熱反応部100cにおいて、微細凸部100c1の高さH1は1μmとなっている。
微細凸部100c1の配置ピッチP1(図29)(本実施態様の熱反応部100cにおいては、微細凹部100c2の配置ピッチに一致する。)も、特に限定されない。しかし、微細凸部100c1の配置ピッチP1を広くしすぎると、微細凸部100c1の配置密度が粗になりすぎて、加熱前の熱反応部100cを目視しにくくなる虞がある。このため、微細凸部100c1の配置ピッチP1は、通常、300μm以下とされる。微細凸部100c1の配置ピッチP1は、100μm以下であると好ましく、50μm以下であるとより好ましく、10μm以下であるとさらに好ましく、5μm以下であると最適である。微細凸部100c1の配置ピッチP1の下限は、特に限定されないが、微細凸部100c1の成形容易性や加工容易性等を考慮すると、0.1μm以上に設定とすると好ましい。本実施態様の熱反応部100cにおいて、微細凸部100c1の高さP1は2μmとなっている。
また、本実施態様の遊技機用基板ケース100においては、図22に示すように、カバー部材110における熱反応部100cが設けられた箇所とは別の箇所に比較部100dを設けている。この比較部100dは、カバー部材110における熱反応部100cを形成する部分と同じ材料(同じ熱可塑性樹脂)で形成された部分に対して、熱反応部100cと同じ加工を施すことによって形成されている。すなわち、熱反応部100cを微細彫刻で形成したのであれば、比較部100dも同じ微細彫刻で形成される。微細凸部100c1の高さH1(図29)や微細凸部100c1の配置ピッチP1(図29)等も、熱反応部100cと比較部100dとで同じに設定される。比較部100dを設けるパターンは、必ずしも、熱反応部100cを設けるパターンと一致させる必要はないが、本実施態様の比較部100dは、熱反応部100cと同じように、「ABC」の文字列を図形化したパターンで表している。このため、加熱前の比較部100dは、加熱前の熱反応部100cと殆ど同じ見た目になるようになっている。
このように、熱反応部100cが設けられた箇所とは別の箇所に比較部100dを設けることにより、熱反応部100cを比較部100dと比較することで、熱反応部100cに生じた変化に気づきやすくなる。つまり、熱反応部100cが加熱されたか否かを容易に判別できるようになる。したがって、不正解除の際に不正解除時白化部100bに生じた白化痕が加熱されて消去された場合であっても、そのことを発見することが可能となっている。
比較部100dを設ける場所は、カバー部材110やベース部材120等の遊技機用部材における、熱反応部100cと同じ材料で形成された部分であれば、特に限定されない。図22の例では、脆弱部100b1に設けた熱反応部100cと、この熱反応部100cと比較するための比較部100dとを、いずれも同じ部材(カバー部材110)に設けているが、比較部100dは、それと比較される熱反応部100cが設けられた部材とは別の部材(例えば、ベース部材120や保護カバー300等)に設けてもよい。
しかし、比較部100dが熱反応部100cに近すぎると、不正解除時白化部100bに生じた白化の痕跡を消去することを目的として不正解除時白化部100bが加熱された場合に、熱反応部100cに加えられる熱が、比較部100dにも同じように加わりやすくなり、比較部100dが、熱反応部100cと同じ態様で変質しやすくなる。このため、熱反応部100cと比較部100dとを比較することによっては、熱反応部100cに生じた変質に気づきにくくなる。したがって、比較部100dは、熱反応部100cからある程度離れた箇所に配すると好ましい。具体的には、比較部100dは、熱反応部100cから5mm以上離れた位置に設けると好ましく、10mm以上離れた位置に設けるとより好ましい。
一方、比較部100dが熱反応部100cから遠すぎると、比較部100dを熱反応部100cと比較しにくくなる。このため、比較部100dは、熱反応部100cからある程度近い箇所に配すると好ましい。具体的には、比較部100dは、熱反応部100dから半径200mmの範囲内に設けると好ましく、熱反応部100dから半径100mmの範囲内に設けるとより好ましい。
なお、本実施態様の遊技機用基板ケース100では採用していないが、文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合等からなる表示が施された識別表示部を、熱反応部100cに重ねて設けることもできる。すなわち、熱反応部100cの加熱履歴の確認を行う人から見て、熱反応部100cの裏側(奥側)となる箇所に、識別表示部を重ねて配置すると好ましい。これにより、熱反応部100cの加熱前後における見た目の変質をさらに識別しやすくすることができる。例えば、熱反応部100cを上記の加熱消去型とした場合において、上記の識別表示部を設けた場合には、加熱前には、熱反応部100cで覆われて見えなかった又は見えにくかった識別表示部が、加熱後には、熱反応部100cが目立たなく(透明等に)なって見える又は見えやすくなるようにすることができる。
8.2 ベース部材(遊技機用基板ケース)
図30は、ベース部材120を、(a)前方斜め右上から見た状態、及び、(b)後方斜め左上から見た状態をそれぞれ示した図である。図31は、ベース部材120を前方から見た状態を示した図である。図32は、ベース部材120を後方から見た状態を示した図である。図33は、ベース部材120に「Aカシメ部」等、として設けられた係合部170を、斜めから見た図である。図34は、図33の係合部170を、同図におけるβ−側の面を正面として描いた六面図である。図35は、カバー部材110に「Aカシメ部」として設けられた被係合部130に対して、ベース部材120に「Aカシメ部」として設けられた係合部170を押し込んで係合させているときの係合部170の変位の様子を、押込方向奥側から見た図である。
本実施態様のベース部材120は、図30に示すように、前面視矩形状を為す後壁部121と、後壁部121の左縁部から前側に突出して設けられた左壁部122と、後壁部121の下縁部から前側に突出して設けられた下壁部125と、後壁部121の前方空間を仕切る仕切壁部126,127等とを備えたものとなっている。仕切壁部126,127は、単なる仕切としてだけでなく、上記の組付手順2や再封止手順2等において、ベース部材120に対してカバー部材110を上下方向にスライドさせる際のガイドとしても機能する部分となっている。
図31に示すように、ベース部材120の後壁部121の前面側における、上記の「Aカシメ部」、「Bカシメ部」、「Cカシメ部」及び「Fカシメ部」を構成する箇所には、それぞれ係合部170が設けられている。ベース部材120の「Aカシメ部」に設けられた2つの係合部170は、カバー部材110をベース部材120に対して組み付ける「Aカシメ」の際に、カバー部材120の「Aカシメ部」に設けられた被係合部130(図23)に対して押し込んで係合するための部分となっている。また、ベース部材120の「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」に設けられた係合部170は、ベース部材120(遊技機用基板ケース100)をケースホルダ200に対して組み付ける「Bカシメ」及び「Cカシメ」の際に、ケースホルダ200に設けられた被係合用可動体220(図15)に対して押し込んで係合するための部分となっている。
さらに、ベース部材120の「Fカシメ部」に設けられた係合部170は、上記の返却手順3において、カバー部材110とベース部材120とを「Fカシメ」する際に、被係合部180(図31)に対して押し込んで係合するための部分となっている。本実施態様の遊技機用基板ケース100においては、図31に示すように、当初(工場出荷時)は、被係合部180がベース部材120の右下隅角部に一体的に形成された状態となっている。この被係合部180は、上記の返却手順3で述べたように、「Fカシメ」をする際に、ベース部材120から切り離され、その切り離された被係合部180を、カバー部材110の上壁部114の右端部に設けられた被係合部嵌込口110b(図7(a))に対して上側から嵌め込んだ状態とすることにより、ベース部材120の「Fカシメ部」の係合部170を係合可能な状態とされる。被係合部180は、工場出荷時においては、ベース部材120における被係合部180の周囲の部分に対して、微細リブ等の破断容易部を介してのみ接続された状態となっており、容易に切り離すことができるようになっている。
ベース部材120における、「Aカシメ部」を構成する係合部170と、「Bカシメ部」を構成する係合部170と、「Cカシメ部」を構成する係合部170と、「Fカシメ部」を構成する係合部170は、寸法や形状等の仕様を異ならせてもよい。しかし、この場合には、仕様の異なる部品の点数が増大してしまうし、ベース部材120に対する係合部170の固定作業が煩雑になる虞もある。
このため、本実施態様のベース部材120においては、いずれの係合部170も、図33及び図34に示されるものを用いており、これら係合部170の仕様を同一としている。加えて、図31に示すように、「Aカシメ部」及び「Fカシメ部」における押込方向(z軸方向)と、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」における押込方向(x軸方向)とは、異なっているものの、いずれの「カシメ部」においても、係合部170の固定面171a(図33)をベース部材120に対して前方から固定するようにしている。したがって、製造コスト等を抑えることが可能となっている。
以下においては、説明の便宜上、係合部170の具体的な構成について、係合部170を「Aカシメ部」として用いる場合を例に挙げて説明し、係合部170を「Bカシメ部」や「Cカシメ部」等として用いる場合の説明を割愛する。本実施態様のベース部材120において、「Bカシメ部」や「Cカシメ部」等の係合部170は、「Aカシメ部」の係合部170と同じ形態を有しているため、「Aカシメ部」の係合部170について述べた内容は、他の係合部170にも当て嵌まる。ただし、既に述べたように、「Aカシメ部」と、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」とでは、脆弱部100b1を設ける場所が異なっているため、以下で述べる内容を「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」に当てはめる際には、「β+側」と「β−側」とを逆転させる必要がある。
係合部170は、被係合部130に対して係合可能なものであれば、その形態を特に限定されない。本実施態様の係合部170は、図33に示すように、ベース部材120に固定するための固定基部171と、固定基部171から押込方向奥側に突出して設けられたα+β+側係合ピン172、α+β−側係合ピン173、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175とで構成されている。α+β+側係合ピン171は、α+側且つβ+側に位置しており、α+β−側係合ピン172は、α+側且つβ−側に位置しており、α−β+側係合ピン173は、α−側且つβ+側に位置しており、α−β−側係合ピン174は、α−側且つβ−側に位置している。
α+β+側係合ピン172、α+β−側係合ピン173、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175は、いずれも、係合部170の押込方向(z軸方向)に対して略平行に配された棒状突起からなっており、その先端側には、被係合部130に係合するための係合部分(フック部)が形成されている。α+側のα+β+側係合ピン172及びα+β−側係合ピン173(以下においては、「α+側係合ピン172,173」と表記することがある。)のフック部は、被係合部130(図24)のα+側被係合壁部131に係合可能なように、α+側に突出した状態に設けられ、α−側のα−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175(以下においては、「α−側係合ピン174,175」と表記することがある。)のフック部は、被係合部130(図24)のα−側被係合壁部132に係合可能なように、α−側に突出した状態に設けられている。
α+側係合ピン172,173のフック部の押込方向奥側の面と、α−側係合ピン174,175のフック部の押込方向奥側の面とは、押込方向奥側になるにつれて互いに近づくように傾斜した状態に形成されている。このため、係合部170を被係合部130に押し込む際には、α+側係合ピン172,173のフック部の押込方向奥側の面が、被係合部130(図24)のα+側被係合壁部131の押込方向手前側の面に当接することによって、α+側係合ピン172,173のフック部がα−側へと弾性変位し、α−側係合ピン174,175のフック部の押込方向奥側の面が、被係合部130(図24)のα−側被係合壁部132の押込方向手前側の面に当接することによって、α−側係合ピン174,175のフック部がα+側へと弾性変位するようになっている。すなわち、係合部170を被係合部170に押し込んで係合させる際には、図35において網掛けハッチングで示すように、α+側係合ピン172,173と、α−側係合ピン174,175とは、α方向における互いに近づく向きに弾性変位するようになっている。
また、既に述べたように、押込変位規制部140の係合部被当接面140aと、近接変位規制部150の係合部被当接面150aは、押込方向奥側になるにつれて互いに近づくように傾斜されている。このため、係合部170を被係合部130に押し込む際には、β+側のα+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174(以下においては、「β+側係合ピン172,174」と表記することがある。)と、β−側のα+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175(以下においては、「β−側係合ピン173,175」と表記することがある。)は、図35において破線で示すように、β方向においても互いに近づく向きに弾性変位するようになっている。
このように、本実施態様の係合部170は、その係合を行う際に、α方向とβ方向との双方に弾性変位するようになっている。このため、係合部170による係合を不正に解除しようとした際には、α+側係合ピン172,173とα−側係合ピン172,173とを、α方向における互いに近づく向きに変位させるとともに、β+側係合ピン172,174とβ−側係合ピン173,175とを、β方向における互いに近づく向きに変位させながら、係合部170を引き抜くという、非常に困難な作業が要求される。加えて、本実施態様においては、係合部170が被係合部130に係合した状態にあっては、β+側係合ピン172,174の隙間に押込変位規制部140(図24)が位置し、β−側係合ピン173,175の隙間に近接変位規制部150(図24)が位置するようになっているため、その作業はさらに困難なものとなっている。
したがって、係合部170は、それに白化等の痕跡を残すことなく、係合を不正に解除することが困難なものとなっている。特に、α+β+側係合ピン172、α+β−側係合ピン173、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175の基端部100b2(図33)は、弾性変形が生じやすい部分(応力が集中しやすい部分)となっており、不正解除時白化部100bとして利用しやすい箇所となっている。このため、α+β+側係合ピン172、α+β−側係合ピン173、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175の基端部(不正解除時白化部)には、上記の脆弱部100b1(図22)に熱反応部100cを設けたのと同様の理由で、加熱すると見た目が変質する熱反応部100cを設けることもできる。
この場合、α+β+側係合ピン172、α+β−側係合ピン173、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175の全ての基端部100b2に熱反応部を設けてもよいが、遊技機用基板ケース100の前面側から視認しやすい部分に設けると効果的である。本実施態様の係合部170(「Aカシメ部」の係合部170)では、遊技機用基板ケース100の内部において、α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175が、α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175よりも前方に位置するようになり、遊技機用基板ケース100の前面側から視認しやすい部分となっている。このため、本実施態様の係合部170では、図33に示すように、α+β−側係合ピン173の基端部における前方を向く面に、熱反応部100cを設けている。係合部170における熱反応部100cの具体的な構成は、脆弱部100b1における熱反応部100cについて述べた構成と同様であるため、詳しい説明を割愛する。
ベース部材120に対する係合部170の設け方は、特に限定されない。本実施態様のベース部材120においては、ベース部材120とは別部材からなる係合部170を、ベース部材120における所定箇所に事後的に固定している。係合部170をベース部材120に対して固定する方法も、特に限定されないが、本実施態様のベース部材120においては、係合部170の固定基部171における固定面171aを対象箇所に振動溶着することにより、係合部170をベース部材120に固定している。
ところで、本実施態様の係合部170には、以下のような工夫も施している。すなわち、既に述べたように、本実施態様のカバー部材110においては、図13に示すように、被係合部130が脆弱部100b1を介してカバー部材110の本体部に接続された状態となっており、係合部170を被係合部130から不正に引き抜こうとした際(不正解除の際)には、脆弱部100b1(不正解除時白化部100c)に白化等の塑性変形が生じやすくしているところ、係合部170側にも、その脆弱部100b1に白化等の塑性変形が生じやすくするための工夫を施している。
具体的には、図13に示すように、β+側係合ピン172,174(同図ではα+β+側係合ピン172のみが描かれている。)の係合面170aが、β−側係合ピン173,175(同図ではα+β−側係合ピン173のみが描かれている。)の係合面170aよりも押込方向手前側(z軸方向負側)に位置するように、β+側係合ピン172,174の係合面170aと、β−側係合ピン173,175の係合面170aとの間に段差S1を設けている。このため、被係合部130に係合された係合部170を不正に引き抜こうとした際には、脆弱部100b1(不正解除時白化部100b)に近いβ−側係合ピン173,175の係合面170aが被係合部130の被係合面130aに当接するよりも前に、脆弱部100b1から遠いβ+側係合ピン172,174の係合面170aが被係合部130の被係合面130aに当接するようになっている。
上記の構成を採用することによって、係合部170を被係合部130から不正に引き抜こうとした際(不正解除の際)に、係合部170から被係合部130に加えられる押圧力に由来して被係合部130と脆弱部100b1(不正解除時白化部100b)との境界部付近に生ずるモーメントを大きくし、脆弱部100b1に白化等の塑性変形をさらに生じさせやすくすることが可能になる。また、係合部170と被係合部130との係合強度を高めることも可能となっている。したがって、不正解除の際に、脆弱部100b1やその周辺部にその痕跡がより残りやすくすることが可能となっている。
β+側係合ピン172,174の係合面と、β−側係合ピン173,175の係合面との段差S1(図13)をどの程度に設定するかは、特に限定されない。しかし、段差S1が小さすぎると、上記の効果が奏されにくくなる虞がある。このため、段差S1は、通常、0.1mm以上とされる。段差S1は、0.3mm以上であると好ましく、0.5mm以上であるとより好ましい。段差S1に、特に上限はないが、係合部170の設計上の理由等から、段差S1は、5mm以下とすると好ましく、3mm以下とするとより好ましい。
また、本実施態様のベース部材120においては、以下の工夫も施している。すなわち、図17に示すように、ベース部材120における「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」の周辺にも、脆弱部100b1を設けるとともに、「Bカシメ部」を構成する係合部170の固定面171aと、「Cカシメ部」を構成する係合部170の固定面171aとを、これらの脆弱部100b1に対して固定している。換言すると、「Bカシメ部」の係合部170と「Cカシメ部」の係合部170は、脆弱部100b1を介してベース部材120の本体部に接続された状態となっている。この脆弱部100b1は、「Aカシメ部」の脆弱部100b1と同様、不正解除時白化部100bとして設けたものとなっている。
「Bカシメ部」や「Cカシメ部」における脆弱部100b1の厚さや面積等については、「Aカシメ部」の脆弱部100b1について述べたものと同様であるため、説明を割愛する。また、本実施態様のベース部材120では採用していないが、「Aカシメ部」の脆弱部100b1(不正解除時白化部100b)に熱反応部100c(図22)を設けたのと同様の理由で、「Bカシメ部」や「Cカシメ部」における脆弱部100b1(不正解除時白化部100b)にも、加熱すると見た目が変質する熱反応部を設けることもできる。
以上で述べたように、本実施態様の遊技機用基板ケース100においては、ベース部材120における複数箇所に、係合部170を設けており、これらの係合部170は、それぞれが複数本の係合ピン172〜175を有する複雑な形態となっている。このように、係合部170の形態を複雑化することにより、係合部170と被係合部130との係合を解除するために必要な操作(解除操作)を複雑化して、係合部170における不正解除時白化部100b(係合ピン172〜174の基端部)に、白化等の痕跡を残さずにその係合を解除することを、より困難にすることが可能となっている。
すなわち、図33に示す係合部170と図24に示す被係合部130との係合を、係合部170や被係合部130に白化等の塑性変形が生じない状態で解消しようとすると、少なくとも、
[解除操作1]
係合ピン172〜175の先端部が、図35において実線部で示す初期位置から同図において網掛けハッチングで示す第一変位位置まで移動して、各係合ピン172〜175の係合部分が被係合部130における被係合部分から外れるように、α+β+側係合ピン172の先端部とα−β+側係合ピン174の先端部、及び、α+β−側係合ピン173の先端部とα−β−側係合ピン175の先端部とを、α方向(x軸方向)に互いに近づく向きに変位させる。
[解除操作2]
係合ピン172〜175を、被係合部130から、係合部170の押込方向手前側に引き抜く。
という操作が必要になるところ、
上記の解除操作1を、係合ピン172〜175のそれぞれについて同時に行わなければならず、非常に複雑な操作が要求されるからである。
上記の「8.1 カバー部材(遊技機用基板ケース)」の欄で述べたように、押込変位規制部140(図24)の係合部被当接面140aや、近接変位規制部150(図24)の係合部被当接面150aを、図25の左側面図に示すように傾斜させている場合には、係合ピン172〜175の先端部を、図35の初期位置から第一変位位置へ移動させるよりも前に、同図において破線で示す第二変位位置まで移動させなければならなくなり、係合部170と被係合部130との係合の解除は、さらに困難になる。
加えて、本実施態様の係合部170では、図33に示すように、係合ピン172〜175における、応力の集中しやすい基端部100b2を、不正解除時白化部100bとして利用するようにしていた。
ところが、本実施態様の係合部170のように、それぞれの係合ピン172〜175を、太さが略等しい棒状部により形成すると、係合部170を視認する方向によっては、全ての係合ピン172〜175の基端部(不正解除時白化部100b)を同時に目視することが困難になる場合がある。例えば、本実施態様においては、図2と図7と図33とを見比べれば分かるように、筺体本体10aに遊技機用基板ケース100を取り付けた後の状態にあっては、係合部170は、そのα+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175が、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174よりも、筺体本体10aの開放面10a2に近い側(y軸方向負側。図33においてはβ−側。)となる向きで配されるところ、後側に位置するα+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174は、その略全体が、前側に位置するα+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175の後方に隠れた状態となるため、後側のα+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174における不正解除時白化部100bは、前側からは見えにくくなる。
このため、係合部170と被係合部130との不正解除が為され、その際に、後側に位置するα+β+側係合ピン172又はα−β+側係合ピン174の不正解除時白化部100bにのみ白化等が生じて、前側に位置するα+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175の不正解除時白化部100bには白化等が生じなかった場合には、不正解除時白化部100bを前側(筺体本体10aの開放面10a2側)から確認する点検者は、その異変に気付きにくくなり、不正解除の事実が見過ごされる虞がある。このため、係合部170としては、図33に示すものよりも、以下の改良型係合部を使用すると好ましい。この改良型係合部が、本発明の遊技機用係合部材に係るものである。
8.3 改良型係合部(本発明に係る遊技機用係合部材)
本発明に係る遊技機用係合部材に相当する改良型係合部について説明する。図36は、上記の係合部170(図33の係合部170)の代わりに設けることのできる改良型係合部170’を、前方斜め右上から見た図である。図37は、図36の改良型係合部170’を、同図におけるy軸方向負側の面を正面として描いた六面図である。図38は、図36の改良型係合部を、前方(y軸方向負側)から見た図である。
改良型係合部170’は、図36に示すように、固定基部171と、固定基部171から押込方向奥側に向かって突設された複数本の係合ピン(α+β+側係合ピン172、α+β−側係合ピン173、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175)とで構成されたものとなっており、この点においては、図33の係合部170と同様となっている。また、改良型係合部170’は、筺体本体10aに遊技機用基板ケース100を取り付けた後の状態において、そのα+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175が、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174よりも、筺体本体10aの開放面10a2に近い側(y軸方向負側。図33においてはβ−側。)となる向きで配される点においても、図33の係合部130と同様となっている。さらに、改良型係合部170’は、各係合ピン172〜175の基端部100b2が不正解除時白化部100bとなっている点においても、図33の係合部170と同様である。
ところで、本発明の遊技機用係合部材は、「課題を解決するための手段」の欄で述べたように、「係合ピンの並び方向」の「一側」に位置する「一側係合ピン」と、「係合ピンの並び方向」の「他側」に位置する「他側係合ピン」とを有するものである。この点、図36の改良型係合部170’では、β方向が「係合ピンの並び方向」に対応し、β−側が「一側」に対応し、β+側が「他側」に対応し、α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175が「一側係合ピン」に対応し、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174が「他側係合ピン」に対応するようになっている。このため、改良型係合部170’について説明する際には、α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175を「一側係合ピン」と呼び、α+β+側係合ピン172及びα−β+側係合ピン174を「他側係合ピン」と呼ぶことがある。
以下、改良型係合部170’については、図33の係合部170と異なる部分を中心に説明する。改良型係合部170’について特に述べない構成は、図33の係合部170で述べたものと同様の構成を採用することができる。改良型係合部170’と図33の係合部170とで共通する部分は、図面において同じ符号を用いて表している。
図33に示す係合部170では、α+β+側係合ピン172、α+β−側係合ピン173、α−β+側係合ピン174及びα−β−側係合ピン175の全てが、その基端部から先端部に亘って略直線状に延びていたが、改良型係合部170’では、図36に示すように、一側係合ピン173,175における一部の区間に、曲げ部170cが設けられている。この曲げ部170cでは、一側係合ピン173,175が、一側係合ピン173,175と他側係合ピン172,174との並び方向(β方向)に略垂直な方向に突出するように曲げられている。
このように、一側係合ピン173,175に曲げ部170cを設けたことによって、他側係合ピン172,174の基端部100b2(不正解除時白化部100b)が、一側係合ピン173,175に対して、一側係合ピン173,175と他側係合ピン172,174との並び方向(β方向)に重ならないようになっている。換言すると、図38に示すように、改良型係合部170’をβ方向に平行な方向から見た場合に、一側係合ピン173,175の基端部100b2(不正解除時白化部100b)と、他側係合ピン172,174の基端部100b2(不正解除時白化部100b)との双方を視認することが可能となっている。したがって、改良型係合部170’の点検を行う点検者は、β方向から視認する場合であっても、一側係合ピン173,175及び他側係合ピン172,174における全ての基端部100b2(不正解除時白化部100b)を容易に視認できるため、一部の係合ピンの基端部100b2(不正解除時白化部100b)に生じた白化等(不正解除の痕跡)をより確実に発見し、不正行為の防止効果をさらに高めることが可能となっている。
α+側に位置する一側係合ピン173の曲げ部170cと、α−側に位置する他側係合ピン175の曲げ部170cは、互いに接近する向きに突出させたり、同じ向きに突出させたりしてもよい。しかし、前者の場合には、α+側の係合ピン172,173とα−側の係合ピン174,175との間隔を広く確保する必要が生じる。また、後者の場合には、α+側の一側係合ピン173の曲げ部170cが、α−側の他側係合ピン174の基端部(不正解除時白化部100b)に重なったり、α−側の一側係合ピン175の曲げ部170cが、α+側の他側係合ピン172の基端部(不正解除時白化部100b)に重なったりする虞がある。このため、本実施態様の改良型係合部170においては、α+側に位置する一側係合ピン173の曲げ部170cと、α−側に位置する他側係合ピン175の曲げ部170cとを、互いに離反する向きに突出させている。
一側係合ピン173,175の長手方向におけるどの区間に曲げ部170cを設けるかは、他側係合ピン172,174における不正解除時白化部100bが設けられた箇所に応じて適宜決定される。本実施態様の改良型係合部170’においては、上述したように、他側係合ピン172,174の不正解除時白化部100bを、他側係合ピン172,174の基端部100b2としたため、一側係合ピン173,175の曲げ部170cを、一側係合ピン173,175の基端部100b2としたが、他側係合ピン172,174の不正解除時白化部100bを、他側係合ピン172,174の基端部100b2以外の場所に設けるのであれば、一側係合ピン173,175の曲げ部170cを設ける場所も、それに応じて変更することができる。
ただし、既に述べたように、各係合ピン172〜175の不正解除時白化部100bは、各係合ピン172〜175の基端部100b2とした方が好ましいことに加えて、曲げ部170cを一側係合ピン173,175における基端部100b2でない箇所(例えば先端側)に設けると、改良型係合部170’を被係合部130に係合させる際に、曲げ部170cが被係合部130に干渉するようになる虞がある。このため、本実施態様の改良型係合部170’においては、各係合ピン172〜175の不正解除時白化部100bを、各係合ピン172〜175の基端部100b2とするとともに、曲げ部170cを、一側係合ピン173,175の基端部100b2としている。
一側係合ピン173,175に設ける曲げ部170cの形状(曲げ形状)は、特に限定されない。曲げ部170cは、「U」字状に湾曲させてもよいし、「V」字状に屈曲させてもよい。しかし、改良型係合部170’と被係合部130との係合を不正に解除しようとした際の応力が、曲げ部170cにより集中しやすくし、その不正な解除の痕跡が不正解除時白化部にさらに残りやすくするためには、曲げ部170cは、「V」字状に屈曲させると好ましい。本実施態様の改良型係合部170’においても、曲げ部170は、図36に示すように、「V」字状に屈曲した状態に設けている。具体的には、曲げ部170cを、改良型係合部170’の押込方向に対して略垂直な垂直曲げ部170c1と、改良型係合部170’の押込方向と垂直曲げ部170c1との双方に対して傾斜した傾斜曲げ部170c2とで形成している。
垂直曲げ部170c1と傾斜曲げ部170c2との配置は、特に限定されず、垂直曲げ部170c1が傾斜曲げ部170c2よりも第一係合ピン173,175の先端側に位置するようにしてもよい。しかし、本実施態様の改良型係合部170’のように、不正解除時白化部100bを第一係合ピン173,175の基端部100b2に設ける場合(曲げ部170cを第一係合ピン173,175の基端部100b2に設ける場合)には、垂直曲げ部170c1が傾斜曲げ部170c2よりも第一係合ピン173,175の基端側に位置するようにすると好ましい。これにより、図36に示すように、改良型係合部170’における取付基部171の側面に第一係合ピン173,175を設けて、改良型係合ピン170’をコンパクトにするだけでなく、改良型係合部170’と被係合部130との係合の不正な解除の痕跡が一側係合ピン173,175の不正解除時白化部100b(一側係合ピン173,175の基端部100b2)にさらに残りやすくすることが可能になる。また、後述する曲がり幅W2(図38)が、曲げ部170cの基端側で最大となるようにして、他側係合ピン172,174の基端部100b2(不正解除時白化部100b)に生じた不正解除の痕跡を、より視認しやすくすることも可能になる。
曲げ部170cを設ける区間の長さL0(図38)は、一側係合ピン173,175の幅W1(図38)や全長L1(図38)等によっても異なり、特に限定されない。しかし、曲げ部170cの長さL0を短くしすぎると、曲げ部170cを急角度に形成する必要が生じ、他側係合ピン172,174の不正解除時白化部100bを、一側係合ピン173,175の曲げ部170cが設けられた箇所を通じて視認しにくくなる虞がある。このため、曲げ部170cを設ける区間の長さL0は、通常、比L0/W1を2以上確保できる範囲で設定される。比L0/W1は、2.5以上であると好ましく、3以上であるとより好ましい。一方、曲げ部170cの長さL0を長くしすぎると、一側係合ピン173,175の全長L1を長く確保する必要が生じ、改良型係合部170’が大型化して、遊技機用基板ケース100の内部に改良型係合部170’をコンパクトに配置することができなくなる虞がある。このため、曲げ部170cの長さL0は、通常、30mm以下とされる。曲げ部170cの長さL0は、20mm以下であると好ましく、15mm以下であるとより好ましい。
曲げ部170cの曲がり幅(一側係合ピン173,175と他側係合ピン172,174との並び方向(β方向)及び改良型係合部170’の押込方向の双方に対して垂直な方向での曲がり幅。図38における符号「W2」を参照。)も、特に限定されない。しかし、一側係合ピン173,175の幅(一側係合ピン173,175と他側係合ピン172,174との並び方向(β方向)及び改良型係合部170’の押込方向の双方に対して垂直な方向での幅。図38における符号「W1」を参照。)に対する、曲げ部170cの曲がり幅W2の比W2/W1が小さすぎる(曲げ部170cの曲がり幅W2を狭くしすぎる)と、点検者の視線方向奥側に位置することになる他側係合ピン172,174の不正解除時白化部100bにおける点検者から目視できる範囲が狭くなり、他側係合ピン172,174の不正解除時白化部100bを点検者が確認しにくくなる虞がある。このため、比W2/W1は、0.5以上とすると好ましい。比W2/W1は、0.7以上とするとより好ましく、0.9以上とするとさらに好ましい。
一方、曲げ部170cの曲がり幅W2を大きくしすぎる(比W2/W1を大きくしすぎる)と、他側係合ピン172,174の不正解除時白化部100bにおける、点検者から見える範囲がそれほど広くならないにもかかわらず、遊技機用係合部材170’の寸法を大きくする必要が生じる。このため、例えば、図15に示した「Bカシメ部」や「Cカシメ部」の係合部170として、遊技機用係合部材170’を用いる場合に、「Bカシメ部」と「Cカシメ部」とをコンパクトに配置できなくなる虞もある。したがって、比W2/W1は、2以下とすると好ましい。比W2/W1は、1.5以下とするとより好ましく、1.3以下とするとさらに好ましい。一側係合ピン173,175の幅W1の具体的な値は、特に限定されないが、通常、0.5〜5mmとされ、好ましくは、1〜3mmとされる。他側係合ピン172,174の幅(幅W1と同じ方向の幅)も、幅W1と同様である。
垂直曲げ部170c1に対する傾斜曲げ部170c2の傾斜角度θ(図38)も、特に限定されない。しかし、傾斜角度θが小さすぎると、他側係合ピン172,174の不正解除時白化部100bを、一側係合ピン173,175の曲げ部170cが設けられた箇所を通じて視認しにくくなる虞がある。このため、傾斜角度θは、30°以上とすると好ましい。傾斜角度θは40°以上とするとより好ましく、50°以上とするとさらに好ましい。一方、傾斜角度θを大きくしすぎると、上記の曲がり幅W2を確保しようとした場合に、曲げ部170cの長さL0を長くする必要が生じ、一側係合ピン173,175の全長L1も長くする必要が生じる。このため、改良型係合部170’が大型化してしまう。したがって、傾斜角度θは、通常、80°以下とすると好ましく、70°以下とするとより好ましい。
また、図33の係合部170では、α+β−側係合ピン173基端部のみに熱反応部100cを設けていた。加えて、図33の係合部170では、文字を図形化したパターンで熱反応部100cを設けていた。これに対し、本実施態様の改良型係合部170’では、図36に示すように、一側係合ピン173,175(α+β−側係合ピン173及びα−β−側係合ピン175)の基端部100b2から先端部付近に亘って、熱反応部100cを帯状に連続して設けている。このため、本実施態様の改良型係合部170’では、一側係合ピン173,175の基端部100b2(不正解除時白化部100b)に生じた白化等の痕跡を、熱反応部100cを変質させることなく消去することがさらに困難となっている。
ところで、本実施態様の遊技機用基板ケース100は、図2に示すように、筺体本体10aの背板10a1に取り付けられるものであり、この遊技機用基板ケース100では、カバー部材110の前壁部111が、筺体本体10aの開放面10a2側から視認しやすい部分(視認外面部)となっていることや、カバー部材110及びベース部材120の略全体が透明となっており、視認外面部111(カバー部材110の前壁部111)も透明となっていることについては、既に述べた通りである。前扉10bを開けた点検者は、筺体本体10aの開放面10b2側から、視認外面部111等を通じて、遊技機用基板ケース100の内部状態を確認することができるようになっている。
このため、本発明に係る改良型係合部170’は、各係合ピン172〜175における全ての不正解除時白化部100bを視認外面部111側から視認しやすい向きで配すると好ましい。具体的には、一側係合ピン173,175と他側係合ピン172,174との並び方向(β方向)が、点検者の視線方向(視認外面部111に垂直な方向)に対して略平行となる向きで、改良型係合部170’を遊技機用基板ケース100内に設けると好ましい。本実施態様の改良型係合部170’においても、一側係合ピン173,175と他側係合ピン172,174との並び方向(β方向)が、点検者の視線方向(視認外面部111に垂直な方向)に対して平行となるようにしている。
この場合、一側係合ピン173,175と他側係合ピン172,174とのうち、いずれを視認外面部111に近い側に配するかは、特に限定されないが、曲げ部170cを有する一側係合ピン173,175を、曲げ部170cを有さない他側係合ピン172,174よりも、視認外面部111に近い側に位置させると好ましい。これにより、逆の場合(他側係合ピン172,174を、一側係合ピン173,175よりも視認外面部111に近い側に位置させた場合)と比較して、上記の曲がり幅W2を小さく抑えたとしても、一側係合ピン173,175の不正解除時白化部分100bにおける白化しやすい部分と、他側係合ピン172,174の不正解除時白化部分100bにおける白化しやすい部分との双方が、視認外面部111を通じて視認しやすくなる。
以上では、「一側係合ピン」を2本の係合ピン173,175で構成し、「他側係合ピン」を2本の係合ピン172,174で構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、「一側係合ピン」を構成する係合ピンの本数や、「他側係合ピン」を構成する係合ピンの本数は、これに限定されない。例えば、「一側係合ピン」と「他側係合ピン」とをそれぞれ1本の係合ピンで構成することも可能である。また、「一側係合ピン」を構成する係合ピンの本数と、「他側係合ピン」を構成する係合ピンの本数は、必ずしも一致させる必要もない。例えば、「一側係合ピン」を2本の係合ピンで構成し、「他側係合ピン」を1本の係合ピンで構成することも可能である。
また、以上では、改良型係合部170’を、点検者の視線方向(β方向に一致)に対して、一側係合ピン173,175と他側係合ピン172,174との2段の係合ピンで構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、点検者の視線方向に対して設ける係合ピンの段数は、2段に限定されず、3段以上とすることも可能である。例えば、点検者の視線方向(β方向)に対して、一側係合ピン173,175と、他側係合ピン172,174との間となる箇所に、中間係合ピン(図示省略)を設け、点検者の視線方向に対して係合ピンを3段に設けることも可能である。これにより、改良型係合部170’の形態をより複雑化し、改良型係合部170’を不正解除がより困難なものとすることが可能になる。係合ピンを3段以上に設ける場合には、一側係合ピン173,175だけでなく、上記の中間係合ピン等にも曲げ部を設ける。このときには、異なる段を構成する係合ピンの曲げ部(例えば、一側係合ピン173,175の曲げ部170cと中間係合ピンの曲げ部)は、その曲がり幅W2を変える等して、全ての段の係合ピンにおける不正解除時白化部100bが、係合ピンの並び方向(一側係合ピンと中間係合ピンと他側係合ピンとの並び方向。β方向に一致。)に重ならないようにすると好ましい。
9.ケースホルダ(筺体側部材)
図39は、ケースホルダ200を、(a)前方斜め右上から見た状態、及び、(b)後方斜め左上から見た状態をそれぞれ示した図である。図40は、ケースホルダ200を前方から見た状態を示した図である。図41は、ケースホルダ200を後方から見た状態を示した図である。図42は、ケースホルダ200における可動体保持部210の周辺を、(a)被係合用可動体220が「Bカシメ部」として利用可能な第一位置にある状態と、(b)被係合用可動体220が「Cカシメ部」として利用可能な第二位置にある状態とを、前方斜め左上から見た図である。図43は、ケースホルダ200における可動体保持部210の周辺を、図40のX1−X1平面で切断してx軸方向正側から見た図である。
本実施態様のケースホルダ200は、図39に示すように、前面視矩形状を為す後壁部201と、後壁部201の右縁部から前側に突出して設けられた右壁部203と、後壁部201の上縁部及び下縁部からそれぞれ前側に突出して設けられた上壁部204及び下壁部205等とを備えたものとなっている。上壁部204及び下壁部205は、遊技機用基板ケース100の上面及び下面を覆うだけでなく、上記の組付手順3や再封止手順3等において、ケースホルダ200に対して遊技機用基板ケース100を左右方向にスライドさせる際のガイドとしても機能する部分となっている。
ケースホルダ200における「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」を構成する箇所には、図40に示すように、可動体保持部210が設けられている。本実施態様においては、後壁部201の前面における右縁部中央付近から、前側に突出した状態で可動体保持部210を設けている。この可動体保持部210は、図42に示すように、被係合用可動体220を、同図(a)に示す第一位置と、同図(b)に示す第二位置との間で移動可能な状態で保持するための部分となっている。
被係合用可動体220は、「Bカシメ部」の被係合部と「Cカシメ部」の被係合部とを兼用するものとなっている。すなわち、被係合用可動体220は、第一位置(図42(a))にあるときには「Bカシメ部」の被係合部として機能し(図17を参照)、第二位置(図42(b))にあるときには「Cカシメ部」の被係合部として機能するようになっている。このため、「Bカシメ部」の被係合部と「Cカシメ部」の被係合部とを、1つの被係合用可動体220で使い回し、ケースホルダ200の部品点数を削減して製造コストを抑えることが可能となっている。
被係合用可動体220は、ベース部材120に「Bカシメ部」として設けられた係合部170及び「Cカシメ部」として設けられた係合部170に係合可能なものであれば、その形態を限定されない。本実施態様においては、上述したように、「Aカシメ部」の係合部170と、「Bカシメ部」の係合部170と、「Cカシメ部」の係合部170とに、同じ形態の部品を用いたため、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」の被係合部として用いられる被係合用可動体220は、「Aカシメ部」として用いられる被係合部130と同じような構造としている。
図44は、被係合用可動体220を、前方斜め右上から見た図である。図45は、図44の被係合用可動体220を、同図におけるx軸方向負側の面を正面として描いた六面図である。本実施態様の被係合用可動体220は、図44に示すように、α+側(z軸方向負側)に位置するα+側被係合壁部221と、α−側(z軸方向正側)に位置するα−側被係合壁部222とを備えたものとなっている。α+側被係合壁部221は、被係合部130(図24)のα+側被係合壁部131に相当し、α−側被係合壁部222は、被係合部130(図24)のα−側被係合壁部132に相当する。また、被係合用可動体220は、被係合部130(図24)の連結壁部133に相当する連結壁部223と、被係合部130(図24)の底壁部134に相当する連結壁部224も備えている。このため、被係合用可動体220は、被係合部130と同様、正面視枠型(図44の正面図を参照)を為しており、剛性が高められた状態となっている。
また、「Aカシメ部」の被係合部130では、図24に示すように、連結壁部133に押込変位規制部140が設けられ、底壁部134に近接変位規制部150が設けられていたところ、被係合用可動体220では、図45に示すように、連結壁部223と連結壁部224の双方に、近接変位規制部150と同様の機能を有する近接変位規制部230を設けている(押込変位規制部140と同様の機能を奏する部分は、被係合用可動体220には設けていない。)。近接変位規制部150で述べた構成は、押込変位規制部230においても採用することができる。このため、近接変位規制部230についての詳しい説明は、割愛する。
さらに、「Aカシメ部」では、図13に示すように、β+側係合ピン172,174(同図ではα+β+側係合ピン172のみが描かれている。)の係合面170aが、β−側係合ピン173,175(同図ではα+β−側係合ピン173のみが描かれている。)の係合面170aよりも押込方向手前側(z軸方向負側)に位置するようにし、被係合部130に係合された係合部170を被係合部130から引き抜こうとした際には、脆弱部100b1に近いβ−側係合ピン173,175の係合面170aが被係合部130の被係合面130aに当接するよりも前に、脆弱部100b1から遠いβ+側係合ピン172,174の係合面170aが被係合部130の被係合面130aに当接する工夫を施していたが、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」でも、これと同様の工夫を施している。しかし、本実施態様においては、「Aカシメ部」と、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」とでは、脆弱部100b1の場所が逆になり、「β+側」と「β−側」とが逆転するため、「Aカシメ部」とは違う態様で上記の効果が得られるようにしている。
すなわち、「Aカシメ部」では、図13に示すように、係合部170において、固定基部171の固定面171aに近い側(y軸方向正側)が、β+側(脆弱部から遠い側)となり、固定基部171の固定面171aから遠い側(y軸方向負側)が、β−側(脆弱部100b1に近い側)となっていた。これに対し、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」では、図18に示すように、係合部170において、固定基部171の固定面171aに近い側(y軸方向正側)が、β−側(脆弱部に近い側)となり、固定基部171の固定面171aから遠い側(y軸方向負側)が、β+側(脆弱部100b1から遠い側)となる。
このため、図13に示す係合部170と全く同じ形態の係合部170(図13に示す係合部170と全く同じ態様で係合面170aに段差S1が設けられた係合部170)を、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」においてそのまま用いると、図46に示す状態となる。図46は、ケースホルダ200に「Bカシメ部」又は「Cカシメ部」として設けられた被係合部(被係合面220aが平坦な被係合用可動体220)に対して、係合部170を係合させた状態を、下方から見た図である。図46の係合部170におけるβ+側係合ピン172,174(同図ではα+β+側係合ピン172のみが描かれている。)及びβ−側係合ピン173,175(同図ではα+β−側係合ピン173のみが描かれている。)は、既に述べた理由により、図13の係合部170におけるβ+側係合ピン172,174及びβ−側係合ピン173,175とは、逆になっている。
したがって、図46に示す状態から、係合部170を被係合用可動体220から引き抜こうとした際には、脆弱部100b1(不正解除時白化部100b)に近いβ−側係合ピン173,175の係合面170aが、被係合用可動体220の被係合面220aに当接した後に、脆弱部100b1から遠いβ+側係合ピン172,174の係合面170aが、被係合用可動体220の被係合面220aに当接するようになる。よって、「Aカシメ部」で得られた上記の効果が、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」では得られなくなってしまう。
このため、本実施態様においては、図18に示すように、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」を構成する被係合用可動体220の被係合面220aに、係合部170の係合面における段差S1を上回る段差S2を設けている。これにより、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」の係合部170として、「Aカシメ部」の係合部170と全く同じ形態の部品を用いても、脆弱部100b1(不正解除時白化部100b)に近いβ−側係合ピン173,175の係合面170aが被係合用可動体220の被係合面220aに当接するよりも前に、脆弱部100b1から遠いβ+側係合ピン172,174の係合面170aが被係合用可動体220の被係合面220aに当接するようになる。したがって、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」においても、「Aカシメ部」と同様に、係合部170を被係合用可動体220から不正に引き抜こうとした際(不正解除の際)に、係合部170と脆弱部100b1との境界部付近に生ずるモーメントを大きくし、脆弱部100b1に白化等の塑性変形がさらに生じやすくすることが可能となっている。
被係合用可動体220の被係合面220aにおける段差S2(図18)は、係合部170の係合面170aにおける段差S1(図13)よりも大きければ、特に限定されない。しかし、段差S2と段差S1との差S2−S1が小さすぎると、上記の効果が奏されにくくなる虞がある。このため、差S2−S1は、通常、0.1mm以上とされる。差S2−S1は、0.3mm以上であると好ましく、0.5mm以上であるとより好ましい。差S2−S1に、特に上限はないが、被係合用可動体220の設計上の理由等から、差S2−S1は、5mm以下とすると好ましく、3mm以下とするとより好ましい。
また、本実施態様においては、図44に示すように、被係合用可動体220における押込方向奥側に、フランジ状の被保持部225を設けている。この被保持部225は、図43に示すように、可動体保持部210の内部空間に嵌め込んだ状態で保持させるための部分となっている。被保持部225における、スライド方向(z軸方向)に垂直な方向の幅W3は、可動体保持部210の被係合部露出用開口部211aにおける、スライド方向(z軸方向)に垂直な方向の幅W4よりも広くなっている。
このため、可動体保持部210に保持された被係合用可動体220は、可動体保持部210を破壊等しない限りは、可動体保持部210から取り外すことができない状態となっている。換言すると、被係合用可動体220が、ケースホルダ200における他の部分(ケースホルダ200の本体部)から取り外されて、当該本体部から独立して持ち運びされない構造となっている。したがって、被係合用可動体220を、係合解除の容易な偽造品に交換する等といった不正行為を防ぐことも可能となっている。
さらに、被係合用可動体220には、図44に示すように、位置決め用嵌合部220bを設けている。この位置決め用嵌合部220bは、可動体保持部210に対して被係合用可動体220を位置決めするための部分となっている。すなわち、位置決め用嵌合部220bは、図43に示すように、被係合用可動体220が第一位置にあるときには、可動体保持部210の第一位置用被嵌合部210bに嵌合し、被係合用可動体220が第二位置にあるときには、動体保持部210の第二位置用被嵌合部210cに嵌合するようになっている。
これにより、上記の組付手順3や再封止手順3において、ケースホルダ200に対して遊技機用基板ケース100を組み付ける際(「Bカシメ」又は「Cカシメ」を行う際)に、被係合用可動体220を、「Bカシメ部」の係合部170(第一位置用係合部)又は「Cカシメ部」の係合部170(第二位置用係合部)に係合可能な適切な位置へ移動させ、その位置で保持させることが可能となっている。また、遊技機用基板ケース100がまだ組み付けられていないケースホルダ200を持ち運ぶ際等に、被係合用可動体220が可動体保持部210に対してガタついて破損することを防止することも可能となっている。位置決め用嵌合部220bを設ける場所は、特に限定されないが、本実施態様においては、被保持部225の外周部に設けている。
可動体保持部210は、被係合用可動体220をスライド可能とし、且つ、可動体保持部210を破壊等しない限りは被係合用可動体220を取り外すことができない状態で、被係合用可動体220を保持できるのであれば、その具体的な構造を特に限定されない。このような構造としては、例えば、可動体保持部210を、互いに別部材からなる保持部本体と保持部閉塞体とで構成し、保持部本体に対して被係合用可動体220を保持させた後、保持部本体に対して保持部閉塞体を組み付けて接着等により固定することで、被係合用可動体を保持部閉塞体で押さえ付けて保持部本体から引き抜けないようにする構造を挙げることができる。
しかし、この種の構造において、保持部本体と保持部閉塞体との境界線の全体が、ケースホルダ200の前面側(「Bカシメ部」や「Cカシメ部」の係合部170が配される側)に現れる構造となっていると、カッター等の切断具を、可動体保持部210の前側から前記境界線に挿入して、可動体保持部210を前記境界線に沿って綺麗に切断して保持部本体と保持部閉塞体とに分解し、被係合用可動体220を取り外して偽造品に交換した後、保持部本体と保持部閉塞体とを前記境界線に沿って接着等する不正行為が行われた場合には、目立つ痕跡が残らず、その不正行為に気づきにくくなる虞がある。このため、本実施態様においては、可動体保持部210を、以下のように構成することによって、保持部本体と保持部閉塞体との境界線の全体が、ケースホルダ200の前面側に現れないようにしている。
図47は、(a)保持部本体211の左側に被係合用可動体220を配したとき、及び、(b)保持部本体211に被係合用可動体220を収容したときの、可動体保持部210周辺を前方斜め左上から見た図である。図48は、保持部閉塞体212を、(a)ケースホルダ200の所定箇所に対して後側から嵌め込む前、及び、(b)当該所定箇所に対して嵌め込んだ後の、可動体保持部210周辺を前方斜め左上から見た図である。図49は、保持部閉塞体212を、(a)ケースホルダ200の所定箇所に対して後側から嵌め込む前、及び、(b)当該所定箇所に対して嵌め込んだ後の、ケースホルダ200を後方斜め左上から見た図である。
本実施態様においては、図47に示すように、可動体保持部210を、ケースホルダ200の本体部に対して一体的に設けられた保持部本体211と、ケースホルダ200の本体部とは別部材からなる保持部閉塞体212とで構成している。保持部本体211には、被係合部露出用開口部211aが設けられており、図47(b)に示すように、保持部本体211の内部空間に収容された被係合用可動体220における被係合部分が、被係合部露出用開口部211aから保持部本体211の外部に露出するようになっている。また、保持部本体211には、保持部本体211の外部から保持部本体211の内部空間に被係合用可動体220を収容するための可動体収容用開口部211bも設けられている。さらに、保持部本体211には、図49に示すように、ケースホルダ200の後面側に連通する閉塞体嵌込穴211dも設けられている。
この可動体保持部210は、図47(a)に示すように、保持部本体211の左側に配した被係合用可動体220を、図47(b)に示すように、保持部本体211の左側から、可動体収容用開口部211を通じて保持部本体211の内部空間に収容した後、図48(a)に示すように、ケースホルダ200の後側に配した保持部閉塞体212を、図48(b)に示すように、ケースホルダ200の後側から、閉塞体嵌込穴211d(図49)に嵌め込んで、閉塞体嵌込穴211dを塞ぐことによって構成される。
閉塞体嵌込穴211dに保持部閉塞体212を嵌め込んだ図48(b)の状態にあっては、保持部閉塞体212によって可動体収容用開口部211bも塞がれ、被係合用可動体220を可動体収容用開口部211bまで移動させることができない状態となる。保持部閉塞体212は、保持部本体211に対して、振動溶着や接着剤等を用いて接合され、保持部本体211から引き抜くことができない状態とされる。また、図48(b)の状態にあっては、ケースホルダ200の前面側には、保持部本体211と保持部閉塞体212との境界線は、可動体収容用開口部211bの3辺に沿った部分でしか現れていない。加えて、保持部本体211と保持部閉塞体212との接合面(溶着面又は接着面等)は、三次元的に複雑に入り組んだ状態となっている。このため、可動体保持部210は、ケースホルダ200の前面側からの作業では、カッター等の工具を用いて綺麗に分解することが非常に困難なものとなっている。
また、上記の組付手順4を終えた状態にあっては、「Bカシメ部」及び「Cカシメ部」(第一位置用係合部170、第二位置用係合部170、被係合用可動体220及び可動体保持部210からなる係合部位)は、遊技機用基板ケース100(カバー部材110及びベース部材120)並びにケースホルダ200等の複数の部材によって、その周囲を覆われた状態となる。このため、これらの部材に白化等の痕跡を残すことなく、「Bカシメ部」や「Cカシメ部」に不正にアクセスすることは、非常に困難となっている。