本発明に係る遊技機部材の封印構造(以下「本発明に係る封印構造」と表記することがある。)の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、説明の便宜上、回胴式遊技機で採用する場合を例に挙げて、本発明に係る封印構造を説明する。しかし、本発明に係る封印構造は、パチンコ遊技機等、他の遊技機においても好適に採用することができる。
また、後掲する各図においては、説明の便宜を考慮し、x軸、y軸及びz軸を示している。x軸、y軸及びz軸の向きは、異なる図であっても、互いに一致している。以下においては、x軸方向正側を「右」側、x軸方向負側を「左」側、y軸方向正側を「後」側又は「奥」側、y軸方向負側を「前」側又は「手前」側、z軸方向正側を「上」側、z軸方向負側を「下」側と呼ぶことがあるが、これは、各部の相対的な位置関係を表すためのものに過ぎず、各部の絶対的な位置関係を限定するものではない。
1. 回胴式遊技機の概要
図1は、回胴式遊技機10を前方から見た図である。回胴式遊技機10は、図1に示すように、その前面側に、メダルを投入するためのメダル投入口11と、メダルを払い出すためのメダル払出口12と、その外周面に図柄が描かれた3本のリール13,14,15と、映像演出を行うための液晶ディスプレイ16と、照明演出を行うための発光ランプ(図示省略)と、音声演出を行うためのスピ−カー17等を備えたものとなっており、操作部として、1遊技当たりの最大枚数(通常3枚)のメダルをベットするためのマックスベットボタン18と、ベットするメダルを1枚ずつ増加するためのシングルベットボタン19と、リール13,14,15の回転を開始するためのスタートレバー20と、リール13,14,15の回転をそれぞれ停止するための3個のストップボタン21,22,23と、演出を切り替えるためのチャンスボタン24と、クレジットされたメダルを払い戻すための払戻しボタン25等を有するものとなっている。
この回胴式遊技機10は、メダルのクレジット枚数が所定枚数以上となった状態でスタートレバー20が操作されると、役抽選が実行されるとともにリール13,14,15が回転を開始し、ストップボタン21,22,23がそれぞれ操作されると、操作されたストップボタン21,22,23に対応するリール13,14,15の回転が停止していき、全てのリール13,14,15が停止したときにリール窓10b1の有効ライン上に表示される図柄の組み合わせが役抽選で当選した役に対応したものとなっていた場合(入賞した場合)に、その役に応じた枚数のメダルが払い出され、メダルのクレジット枚数が上限値に達しているときには、ホッパーユニット36(図2を参照)から送出されたメダルがメダル払出口12を通じて払い出されるようになっている。メダルのクレジット枚数は、メダルのクレジット枚数が上限値に達していないときに、メダル投入口11にメダルが投入される、又は、入賞によってメダルが払い出されると増加するようになっている。
図2は、前扉10bが開かれた回胴式遊技機10を前方斜め右上から見た図である。回胴式遊技機10は、図2に示すように、前方が開放された箱状を為す筺体本体10aと、筺体本体10aの前面側に開閉可能な状態で取り付けられた前扉10bとで構成された遊技機筺体の内部に各種の機器が収容されたものとなっている。以下においては、筺体本体10aと前扉10bとを合わせて「筺体10a,10b」と表記することがある。
本実施態様において、筺体10a,10bの内部には、メイン制御基板ユニット30、サブ制御基板ユニット31、液晶ユニット32、電源ユニット33、コネクタユニット34、リールユニット35及びホッパーユニット36等が納められている。これらのユニット30〜36のうち、液晶ユニット32とコネクタユニット34は、前扉10bの内面側(ウラ面側)に取り付けられている。一方、メイン制御基板ユニット30とサブ制御基板ユニット31と電源ユニット33とリールユニット35とホッパーユニット36は、筺体本体10aの内面側に取り付けられている。上記のリール窓10b1は、前扉10bの中段部やや上寄りの部分に略矩形状に設けられている。
メイン制御基板ユニット30は、役抽選や入賞判定等、遊技における基本的な制御を行う制御基板(メイン制御基板)を備えている。サブ制御基板ユニット31は、発光ランプや音声による演出等、遊技における演出に関する制御を行う制御基板(サブ制御基板)を備えている。液晶ユニット32は、液晶ディスプレイ16(図1を参照)に表示される映像による演出に関する制御を行う制御基板(映像基板)を備えている。電源ユニット33は、回胴式遊技機10における各機器に電力を供給する制御基板(電源基板)を備えている。コネクタユニット34は、特定の機器に接続されたケーブルを仲介する制御基板(仲介基板)を備えている。リールユニット35は、リール13,14,15の回転をそれぞれ独立して制御する制御基板(リール制御基板)を備えている。ホッパーユニット36は、メダル投入口11(図1を参照)に投入されたメダルを回収するとともに、メイン制御基板ユニット30からの信号に基づいてメダル払出口12(図1を参照)へメダルを送出する制御を行う制御基板(ホッパー制御基板)を備えている。
2.本発明に係る封印構造
上記のユニット30〜36に備えられた各種制御基板は、いずれも、不正アクセスの対象となり得る。特に、メイン制御基板ユニット30の制御基板(メイン制御基板)には、回胴式遊技機10における基本的な制御を行うためのプログラムが記録された記憶装置(ROM)が搭載されているところ、この記憶装置を偽造したものに交換することによって、遊技中に特定の操作を行うと必ず大当たりになるようにする等、回胴式遊技機10に不正な改造を試みる者がいる。このため、回胴式遊技機10等の遊技機においては、図3に示すように、メイン制御基板30aを、カバー部材51とベース部材52とで構成される基板ケース50内に収容して封印することが行われている。図3は、メイン制御基板30a(制御基板)を基板ケース50に収容して封印する様子を前方斜め右上から見た図である。メイン制御基板30aを収容した基板ケース50は、通常、その後側に配されたホルダ部材60を介して筺体本体10a(図2)に取り付けられる。
具体的には、図3に示すように、カバー部材51とベース部材52とで構成される基板ケース50(本実施態様においてはカバー部材51)に設けられた封印穴αに、ネジ等の固定具70を挿通して螺合することで、カバー部材51とベース部材52とを閉じた状態で固定した後、この封印穴αに封印部材100を嵌め込む。封印穴αに嵌め込まれた封印部材100は、その外周部を封印穴αの奥部にある被係合部α3(図4)に係合された状態となる。このため、封印部材100を破壊するか無理に変形等しなければ、封印穴αの奥部(封印対象箇所α1)にある固定具70にアクセスできない状態が発現する。換言すると、封印部材100に、破断や白化等の痕跡があるか否かを確認することによって、封印対象箇所α1に不正アクセスが為されたか否か(基板ケース50が不正に開放されたか否か)を判断することが可能になる。すなわち、封印部材100は、封印としての機能を果たすことになる。メイン制御基板ユニット30以外の他のユニット31〜36における制御基板も、上記の基板ケース50と同様の基板ケースに収容して封印することが可能である。
基板ケース50(カバー部材51及びベース部材52)は、基板ケース50内に異常が生じていないか否かを基板ケース50の外部から確認することができるように、通常、透明性を有する材料(通常、合成樹脂系材料)によって形成される。基板ケース50を形成する材料としては、メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリスチレン(PS)や、アクリロニトリルーブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)や、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、封印部材100を形成する熱可塑性樹脂と同様であるが、基板ケース50は、封印部材100(特に高強度の合成樹脂系材料で形成される封印穴挿入部110)よりも高強度の合成系樹脂材料で形成すると好ましい。基板ケース50を形成する合成樹脂系材料としては、ABSやPCが好適であり、特に、PCは強度に優れているため好ましい。
本発明に係る封印構造は、上記の封印部材100と、それを嵌め込む封印穴αが設けられた遊技機部材(上記の例では基板ケース50)とに関するものである。図4は、本発明に係る封印構造において、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込む前の状態を示した破断斜視図である。図5は、本発明に係る封印構造において、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込んだ後の状態を示した破断斜視図である。図4及び図5は、封印部材100等の部材を、封印部材100の中心線を含む左右方向に垂直な平面(y−z面に平行な平面)で破断して描いている。図6は、本発明に係る封印構造において、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込む前の状態を、封印穴αの中心線を含む左右方向に垂直な断面で切断した断面図である。図7は、本発明に係る封印構造において、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込んだ後の状態を、封印穴αの中心線を含む左右方向に垂直な断面で切断した断面図である。
既に述べたように、封印部材100の全体を、同一種類の成形材料で一体的に形成すると、封印穴αの奥側の封印対象箇所α1に不正アクセスが為された場合だけでなく、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む場合にも、封印部材100に塑性変形が生じる虞がある。また逆に、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む場合だけでなく、封印穴αの奥側の封印対象箇所α1に不正アクセスが為された場合であっても、封印部材100に塑性変形が生じなくなる虞がある。
この点、本発明に係る封印構造では、図4〜7に示すように、封印部材100として、封印穴αに挿入される封印穴挿入部110と、封印穴挿入部110の基端(y軸方向負側の端部。以下同じ。)側に設けられた頭部120とで構成されるものを用いるところ、後述するように、封印穴挿入部110を、頭部120を形成する合成系樹脂材料よりも高強度の合成系樹脂材料で形成している。加えて、本発明に係る封印構造では、図5及び図7に示すように、封印穴αに対して封印部材110を嵌め込んだ状態においては、頭部120よりも高強度の合成樹脂系材料で形成された封印穴挿入部110における封印部材側当接部110aが、カバー部材51(遊技機部材80)における遊技機部材側当接部α5に当接するようにしている。このため、本発明に係る封印構造では、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む際には、封印部材100における、カバー部材51(遊技機部材80)に当接する部分に、ヒビ割れや白化等の塑性変形が生じにくくしながらも、封印対象箇所α1に不正アクセスが為された際には、頭部120(特にフランジ部122)にヒビ割れや白化等の塑性変形が生じやすくすることが可能となっている。
ここまでは、基板ケース50におけるカバー部材51とベース部材52とを閉じた状態で固定するための固定具70を挿通する部分(封印穴α)に封印部材100を嵌め込む場合について説明したが、封印部材100を嵌め込む箇所は、これに限定されない。例えば、図3におけるホルダ部材60に対して基板ケース50(カバー部材51又はベース部材52)を固定する固定具を挿通する穴状の部分に、封印部材100を嵌め込むようにしてもよい。また、封印穴αを設ける場所は、不正アクセスを防止するために封印する必要がある部分であれば、固定具を挿通する部分である必要はない。さらに、封印穴αを設ける部材(遊技機部材80)が上記の基板ケース50の構成部材(カバー部材51等)である必要もない。
3. 封印部材
本発明に係る封印構造で用いる封印部材100についてより詳しく説明する。
図8は、封印部材100を、(a)手前側から見た状態と、(b)奥側から見た状態とを、それぞれ示した斜視図である。図9は、封印部材100を構成する封印穴挿入部110を示した斜視図である。図10は、封印部材100を手前側から見た状態を示した正面図である。図11は、封印部材100を奥側から見た状態を示した背面図である。図12は、封印部材100を右側から見た状態を示した右側面図である。図13は、封印部材100を上側から見た状態を示した平面図である。図14は、封印部材100を、封印部材100の中心線(y軸方向に平行な中心線)を含む左右方向に垂直な平面(y−z平面に平行な平面)で切断した状態を示した断面図である。
封印部材100を左側(x軸方向負側)から見た左側面図と、封印部材100を下側(z軸方向負側)から見た底面図は、それぞれ、図12の右側面図及び図13の平面図と対称に表れるため、掲載を省略している。また、図8〜13においては、封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを図面上において区別しやすくするため、封印穴挿入部110のみを網掛けハッチングで示している。
3.1 基本構成
封印部材100は、図8〜14に示すように、封印穴挿入部110と頭部120とで構成されている。封印穴挿入部110と頭部120は、互いに強度の異なる別の種類の合成樹脂系材料で形成される。封印穴挿入部110は、封印穴αに対して先端(各図におけるy軸方向正側の端部。以下同じ。)側から挿入される部分となっている。封印穴挿入部110の外周部には、係合部111cが設けられている。図5及び図7に示すように、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込んだ際には、封印部材100における係合部111cが、封印穴αにおける被係合部α3に係合し、封印部材100を手前側に引き抜くことができない状態となる。一方、頭部120は、封印穴挿入部110の基端(各図におけるy軸方向負側の端部。以下同じ。)側に設けられた部分となっている。本実施態様の封印部材100において、頭部120は、図14に示すように、封印穴挿入部110の基端面(後述する閉塞部112)に重なる中央部121と、封印穴挿入部110の基端外周部から外方に突出して設けられたフランジ部122とで構成されている。
図5及び図7に示すように、この封印部材100が封印穴αに嵌め込まれた状態において、封印対象箇所α1に不正アクセスしようとすると、封印穴挿入部110の外周面と封印穴αの内周面との隙間にマイナスドライバ等の不正器具を挿入して係合部111cの係合を不正に解除するか、頭部120の中央部121から封印部材100に穴を開ける必要がある。この点、頭部120におけるフランジ部122は、封印穴挿入部110の外周面と封印穴αの内周面との隙間に不正器具が挿入されないように、当該隙間を封印穴αの手前側から覆うとともに、仮に当該隙間に不正器具が挿入された場合において、ヒビ割れや白化等の痕跡を残させるための部分となっている。また、中央部121は、遊技機用封印部材100におけるフランジ部122以外の部分(遊技機用封印部材100の中央部分)に穴等が開けられたときにその痕跡(破断痕や白化等)を残させるための部分となっている。
すなわち、封印穴挿入部110は、主として、封印穴αから封印部材100が引き抜かれないように、封印部材100を封印穴αの奥部にある被係合部α3に対して係合させる機能を有しているのに対して、頭部120は、主として、封印対象箇所α1への不正アクセスの痕跡を発現させる機能を有している。封印穴αの奥部にある被係合部α3に係合する機能を有する封印穴挿入部110は、比較的高強度の合成樹脂系材料(頭部120を形成する合成樹脂系材料よりも高強度の合成樹脂系材料)で形成され、不正アクセスの痕跡を発現させる機能を有する頭部120は、比較的低強度の合成樹脂系材料(封印穴挿入部110を形成する合成樹脂系材料よりも低強度の合成樹脂系材料)で形成される。封印穴挿入部110や頭部120を形成する合成樹脂系材料は、その強度(アイゾット衝撃強度)において上記の関係を有するのであれば、特に限定されないが、透明(有色透明を含む。)な合成樹脂系材料であると好ましい。これにより、封印穴αに封印部材100を嵌め込んだ状態であっても、封印穴αの手前側から封印穴αの奥部の封印対象箇所α1に異常がないかを目視により確認することが可能になる。
この点、透明性を有する合成樹脂系材料としては、一般的に、メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリスチレン(PS)や、アクリロニトリルーブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)や、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性樹脂が例示される。これらの熱可塑性樹脂の強度(アイゾット衝撃強度)は、一般的に、前掲の表1に示すようになる。このため、PMMA、PP、PS、ABS及びPCの強度が表1に示す通りの順番であり、封印穴挿入部110及び頭部120を形成する合成樹脂系材料を表1の中から選ぶのであれば、以下に示すようになる。すなわち、封印穴挿入部110をPCで形成した場合には、頭部120は、PMMA、PP、PS又はABSで形成する。また、封印穴挿入部110をABSで形成した場合には、頭部120は、PMMA、PP又はPSで形成する。さらに、封印穴挿入部110をPSで形成した場合には、頭部120は、PMMA又はPPで形成する。さらにまた、封印穴挿入部110をPPで形成した場合には、頭部120は、PMMAで形成する。
ただし、後述するように、封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを二色成形する場合には、封印穴挿入部110や頭部120を形成する合成樹脂系材料の融点も考慮する。すなわち、共通の金型を用いて異種材料を二段階で成形する二色成形においては、融点の高い合成樹脂系材料で形成される側の部材を先に成形してから、融点の低い合成樹脂系材料で形成される側の部材を後に成形する必要があるからである。この点、熱可塑性樹脂は、一般的に、融点が高ければ高いほど、強度(アイゾット衝撃強度)が高くなり、各熱可塑性樹脂の融点の大小関係と、各熱可塑性樹脂の強度の大小関係とは、概ね一致する。
封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とは、互いに一体化した状態に設けられる。封印穴挿入部110と頭部120とを一体化させる方法は、特に限定されず、例えば、別個に形成された封印穴挿入部110と頭部120とを後から接着剤等で接着して一体化させてもよい。しかし、封印穴挿入部110と頭部120とを接着する作業は、通常、部品(封印穴挿入部110及び頭部120)を1つずつ取り出して手で行うようになるため、別個に形成された封印穴挿入部110と頭部120とを接着する方法では、封印穴挿入部110と頭部120との接着部分に不純物等が入る虞や、接着剤等に塗りムラが生じる虞等がある。このため、封印部材100の外観が悪くなるだけでなく、その不純物や塗りムラ等が不正アクセスの痕跡と誤認される虞もある。特に、本実施態様の封印部材100では、後述するように、封印穴挿入部110と頭部120とを色違いとする構成も採用するため、封印穴挿入部110及び頭部120の色も重要となるところ、上記のように、封印穴挿入部110と頭部120との接着部分に不純物が混入等すると、封印穴挿入部110や頭部120の色に悪影響を及ぼす虞がある。加えて、封印穴挿入部110と頭部120とを接着する際に頭部120(特にフランジ部122)が破損する虞もある。
このため、封印穴挿入部110と頭部120は、二色成形により互いに一体化させると好ましい。これにより、接着剤を使用することなく、そして手作業を介することなく、封印穴挿入部110と頭部120とを一体化することが可能になる。したがって、封印穴挿入部110と頭部120との境界部分における不純物の混入や、当該境界部分における接着剤の塗りムラが生じないようにすることが可能になる。よって、封印穴挿入部110や頭部120の本来の色が見えるようにするだけでなく、頭部120(フランジ部122)を破損等させることなく、封印穴挿入部110と頭部120とを綺麗に一体化することが可能になる。本実施態様の封印部材100においても、封印穴挿入部110と頭部120は、二色成形により互いに一体化させている。具体的には、第一の金型にPC又はABSを射出して封印穴挿入部110を成形した後、第一の金型における一部(封印穴挿入部110の基端部に接続する部分)のみを第二の金型に切り替え、この第二の金型にPMMAを射出して頭部120を成形することにより、封印穴挿入部110と頭部120とが一体化された封印部材100を得るようにしている。
以上のように、フランジ部122を含む頭部120を、封印穴挿入部110よりも低強度の合成樹脂系材料で形成したことによって、封印穴αの内周面と封印部材100の外周面との隙間に不正器具が差し込まれる等して、封印対象箇所α1への不正アクセスが試みられた場合には、頭部120(特にフランジ部122)における広い範囲に破断や白化等の痕跡が形成されるようになる。したがって、接着剤等では消去することが困難な痕跡が封印部材100に残るようにすることが可能になる。加えて、封印部材100が封印穴αに嵌め込まれた状態であっても、封印穴αの手前側から視認しやすい頭部120に不正アクセスの痕跡が残るため、不正アクセスの痕跡を発見しやすくすることも可能になる。
また、封印部材100において、封印穴挿入部110は、頭部120よりも高強度の合成樹脂系材料で形成されるところ、この封印穴挿入部110には、図8(b)及び図11に示すように、封印部材側当接部110aが設けられる。この封印部材側当接部110aは、図5及び図7に示すように、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込んだ際に、遊技機部材80(封印穴αが設けられた部材)側の遊技機部材側当接部α5に当接し、封印部材100がそれ以上奥側に移動しないようにするための部分となっている。このように、高強度の合成樹脂系材料で形成された封印穴挿入部110に、封印部材側当接部110aを設けることによって、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む際に、不正アクセスの痕跡と誤認し得るヒビ割れや白化等の塑性変形が封印部材100(特にフランジ部122を含む頭部120)に生じにくくすることが可能となっている。
3.2 特記事項
その他、封印部材100について、特記すべき事項をいくつか列記する。
3.2.1 封印穴挿入部及び頭部の色について
封印穴挿入部110と頭部120とを強度の異なる別の種類の合成樹脂系材料で形成することは既に述べた通りであるが、本実施態様の封印部材100では、封印穴挿入部110と頭部120の色も異ならせている。これにより、不正アクセスに起因してフランジ部122にヒビ割れや欠け等が生じた場合において、フランジ部122におけるヒビ割れや欠け等が生じた部分から、その奥側の封印穴挿入部110が異なる色で見えるようになり、フランジ部122におけるヒビ割れや欠け等を目立ちやすくすることが可能になる。すなわち、フランジ部122に生じた不正アクセスの痕跡を発見しやすくすることができる。頭部120や封印穴挿入部110の着色方法としては、頭部120や封印穴挿入部110の成形材料(合成樹脂系材料)に顔料等の色材を添加する方法等が例示される。
これに対し、封印穴挿入部110と頭部120とを同一の色(いずれも完全透明とする場合を含む。)とした場合には、不正アクセスに起因してフランジ部122にヒビ割れや欠け等が生じた場合において、フランジ部122におけるヒビ割れや欠け等が生じた部分から、その奥側の封印穴挿入部110が同じ色で見えるようになるため、フランジ部122に生じたヒビ割れや欠け等の存在に気づきにくくなる虞がある。
ところで、封印穴αに封印部材100を嵌め込んだ状態であっても、封印穴αの手前側から封印穴αの奥部の封印対象箇所α1に異常がないかを目視により確認することができるようにするため、封印穴挿入部110及び頭部120を形成する合成樹脂系材料としては、透明(無色透明又は有色透明)なものを選択することが好ましいことについては既に述べた。この点、封印穴挿入部110と頭部120とを異なる色とした場合であっても、いずれか一方を無色透明とした場合には、以下のような問題が生じ得る。
すなわち、封印穴挿入部110を有色透明とし、頭部120を無色透明とした場合においては、不正アクセスに起因してフランジ部122にヒビ割れや欠け等が生じた場合において、フランジ部122におけるヒビ割れや欠け等が生じた部分から見える封印穴挿入部110と、フランジ部122におけるヒビ割れや欠け等が生じていない部分からフランジ部122を介して見える封印穴挿入部110との色の差が小さくなるため、フランジ部122に生じたヒビ割れや欠け等の存在に気づきにくくなる虞がある。一方、封印穴挿入部110を無色透明とし、頭部120を有色透明とした場合においては、不正アクセスに起因してフランジ部122にヒビ割れや欠け等が生じた場合において、フランジ部122におけるヒビ割れや欠け等が生じた部分から、その奥側の封印穴挿入部110が無色透明で見えるようになり、封印穴挿入部110付近にある部材の色等によっては、フランジ部122に生じたヒビ割れや欠け等の存在に気づきにくくなる虞がある。
したがって、封印穴挿入部110及び頭部120をいずれも透明としながらも、色を異ならせる場合には、封印穴挿入部110及び頭部120をいずれも有色透明とした上で、封印穴挿入部110と頭部120とを異なる色とすることが好ましい。
このとき、封印穴挿入部110と頭部120とをどの程度異なる色とするかは、特に限定されないが、近い色であると、上記の効果が奏されにくくなる虞がある。このため、封印穴挿入部110の色と頭部120の色とは、できるだけ大きく異なる色とすることが好ましい。具体的には、封印穴挿入部110の色と頭部120の色とが補色関係にあるように設定することが好ましい。これにより、不正アクセスに起因してフランジ部122に生じたヒビ割れや欠け等の存在により気づきやすくすることが可能になる。
ここで、「封印穴挿入部110の色と頭部120の色とが補色関係にある」とは、頭部120の色が、封印穴挿入部110の色の補色(マンセルシステムの色相環において、封印穴挿入部110の色が位置する箇所の正反対に位置する色。以下、「封印穴挿入部110の色の正補色」と呼ぶことがある。)になっている場合に限定されない。本明細書における「補色関係」には、頭部120の色が、マンセルシステムの色相環において、封印穴挿入部110の色の正補色が位置する箇所から両側に90°以内の範囲(同色相環の中心から見て、封印穴挿入部110の色の正補色が位置する箇所から反時計方向に90°戻った箇所から時計方向に90°進んだ箇所までの範囲)に位置する色となっている場合も含まれるものとする。例えば、封印穴挿入部110の色がマンセルシステムの色相環における「5R」である場合には、頭部120の色が同色相環の「10Y」〜「5BG」(正補色)〜「10PB」の180°の範囲にあれば、「頭部120の色と封印穴挿入部110の色とが補色関係にある」ものとする。本明細書では、マンセルシステムの色相環における、封印穴挿入部110の色の正補色が位置する箇所から頭部120の色が位置する箇所までの角度(同色相環の中心から見た角度の絶対値)を「封印穴挿入部110の色の正補色から頭部120の色までのズレ角度」と呼ぶことがある。
封印穴挿入部110の色の正補色から頭部120の色までのズレ角度は、54°以下にする(例えば、封印穴挿入部110の色がマンセルシステムの色相環における「5R」である場合には、頭部120の色を同色相環の「10GY」〜「5BG」(正補色)〜「10B」の範囲の色にする)と好ましい。封印穴挿入部110の色の正補色から頭部120の色までのズレ角度は、36°以下にする(例えば、封印穴挿入部110の色がマンセルシステムの色相環における「5R」である場合には、頭部120の色を同色相環の「5G」〜「5BG」(正補色)〜「5B」の範囲の色にする)とより好ましく、18°以下にする(例えば、封印穴挿入部110の色がマンセルシステムの色相環における「5R」である場合には、頭部120の色を同色相環の「10G」〜「5BG」(正補色)〜「10BG」の範囲の色にする)とさらに好ましい。
3.2.2 封印部材の形態について
封印部材100は、既に述べたように、封印穴挿入部110と頭部120とで構成される。
(1)頭部
本実施態様の封印部材100において、頭部120は、中央部121と、中央部121の外周部に設けられたフランジ部122とで構成されている。
フランジ部122は、封印穴αにおける座ぐり面α2(図4)の手前側を塞ぐことができる形状に形成される。このため、フランジ部122は、通常、封印穴挿入部110の基端外周部における全周部に連続して形成される。フランジ部122の突出長さL1(図14)は、特に限定されないが、短くしすぎると、封印穴αの内周面と封印穴挿入部110の外周面との隙間をフランジ部122で覆うことができなくなる虞がある。また、その隙間にマイナスドライバ等の不正器具が挿入された際にフランジ部122にヒビ割れや白化等の塑性変形が生じにくくなる虞もある。このため、フランジ部122の突出長さL1は、通常、1mm以上とされる。フランジ部122の突出長さL1は、1.5mm以上とすると好ましく、2mm以上とするとより好ましい。フランジ部122の突出長さL1に特に上限はないが、通常、10mm程度までである。
中央部121は、フランジ部122の内側領域の略全体を塞ぐ形態に形成される。中央部121は、この中央部121を手掛かりとして封印対象箇所α1(図5及び図7)に不正アクセスが為された際に、その痕跡を残すための部分となっている。本実施態様の封印部材100においては、中央部121に露出用開口部121aを設けており、この露出用開口部121aを通じて、その奥側に位置する封印穴挿入部110が頭部120のオモテ面(y軸方向負側を向く面)側に露出するようにしている。このため、封印穴αに対して嵌め込まれた封印部材100を正規に開封する作業を容易に行うことが可能となっている。
すなわち、閉塞部112のオモテ面の全体が頭部120で覆われた状態となっていると、固定具70(図5及び図7)を正規に取り外すために、封印穴αに嵌め込まれた封印部材100を正規に開封しようとした際に、頭部120の中央部121と封印穴挿入部110の閉塞部112との双方を破壊する必要があるところ、頭部120に上記の露出用開口部121aを設けることによって、封印部材100を正規に開封する際に、閉塞部112のみを破壊すれば済むようになる。
また、頭部120の奥側にある閉塞部112(封印穴挿入部110)が、頭部120に設けた露出用開口部121aを通じて頭部120のオモテ面側に露出するようにしたことによって、不正アクセスに起因するヒビ割れや欠け等がフランジ部122に生じているか否かを容易に把握することも可能になる。
すなわち、本実施態様の封印部材100は、既に述べたように、封印穴挿入部110が頭部120とは異なる色とされるとともに、封印穴挿入部110が頭部120よりも強度の高い合成樹脂系材料で形成されているところ、このように強度のある封印穴挿入部110の一部を、露出用開口部121aを通じて頭部120のオモテ面側に露出させることによって、不正アクセスの際にフランジ部122にヒビ割れや欠け等が生じ、そのヒビ割れや欠け等が生じた部分を通じてその奥側の封印穴挿入部110が頭部120とは異なる色で見えた場合において、フランジ部122におけるヒビ割れや欠け等が生じた部分を通じて見える封印穴挿入部110を、露出用開口部121aを通じて見える閉塞部112(封印穴挿入部110)と対比することで、不正アクセスに起因するヒビ割れや欠け等がフランジ部122に生じているか否かを把握しやすくすることができる。具体的には、フランジ部122における気になる部分(ヒビ割れや欠け等が生じていると疑われる部分)が、露出用開口部121aを通じて見える閉塞部112(封印穴挿入部110)と同様の見え方をしたときに、フランジ部122における当該部分にヒビ割れや欠け等が生じていると判断することが可能となっている。
(2)封印穴挿入部
封印穴挿入部110は、封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ際に遊技機部材80側の被係合部α3(図5及び図7)に係合する係合部111cと、封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ際に遊技機部材80側の遊技機部材側当接部α5(図5及び図7)に当接する封印部材側当接部110aとを有するのであれば、その具体的な形態を限定されない。本実施態様の封印部材100においては、図9に示すように、封印穴挿入部110を、略筒状の本体部111と、本体部111の基端側を閉塞する閉塞部112とで構成している。係合部111cは、本体部111の外周部に設け、封印部材側当接部110aは、本体部111の基端部から外側に向かって凸状に突き出た外向き凸部の形態(閉塞部112を外方に延長させた形態)で設けている。
・封印穴挿入部の本体部
封印穴挿入部110の本体部111を、中実な構造とはせず、空洞部を有する略筒状に形成したことにより、封印部材100を成形する材料(合成樹脂系材料)の使用量を削減し、封印部材100の製造コストを抑えることができるようになっている。また、上述したように、封印穴挿入部110の本体部111には、係合部111cが設けられるところ、封印部材100を封印穴に嵌め込む際に、係合部111cが弾性的に変位しやすくすることも可能となっている。
本体部111の外面形状は、封印穴αの内面形状等に応じて適宜決定される。本体部111の外面形状としては、円筒や楕円筒のように、曲面のみからなる形状や、多角筒のように、平面のみからなる形状のほか、曲面と平面とが混在する形状等が例示される。本実施態様の封印部材100において、本体部111の外面形状は、図11に示すように、一対の平面部111aと、円弧状の一対の曲面部111bとを有する形状となっており、封印穴α(図4)の内面形状に対応したものとなっている。本体部111の先端近傍の外周面は、先細り(y軸方向正側になるにつれて細くなる状態)のテーパー状に形成しており、封印穴挿入部110を封印穴αに挿入しやすくしている。
また、既に述べたように、封印穴挿入部110の外周部には、封印穴αに挿入された封印穴挿入部110が封印穴αから引き抜かれないように、封印穴挿入部110を封印穴αに設けられた被係合部α3に係合させるための係合部111cが設けられている。この係合部111cは、本体部111の先端部(y軸方向正側の端部。以下同じ。)以外の箇所に設けてもよいが、本実施態様の封印部材100においては、本体部111の先端部に設けている。これにより、図5及び図7に示すように、封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ後の係合部111cを封印穴αの奥側に位置させることができる。したがって、マイナスドライバやワイヤー等の不正器具を封印穴αの内周面と封印部材100の外周面との隙間に差し込んだとしても、その不正器具が係合部111cに届きにくくし、係合部111cの係合を不正に解除しにくくすることが可能となっている。
係合部111cは、本体部111における1箇所のみに設けてもよいが、通常、本体部111における複数箇所に設けられる。このように、係合部111cを複数箇所に設けることにより、マイナスドライバやワイヤー等の不正器具を封印穴αの内周面と封印部材100の外周面との隙間に差し込んで、係合部111cの係合を不正に解除しようとした場合に、複数の係合部111cを解除しなければならなくなり、係合部111cの係合の解除に手間が掛かるようにすることができるからである。
上記のように、本体部111における複数箇所に係合部111cを設ける場合には、複数の係合部111cは、本体部111の中心線(y軸方向に平行な中心線)から見て対称な位置に設けると好ましい。これにより、封印穴αに嵌め込んだ封印部材100を、封印穴αに安定して係合させるだけでなく、封印部材100を封印穴αに嵌め込む際に、封印部材100を傾きにくくすることが可能になる。本実施態様の封印部材100においても、図11に示すように、2個の係合部111cを本体部111の中心線から見て対称となる位置に逆向きに設けている。
このとき、係合部111cは、本体部111の周壁における平面部111aに設けてもよいが、本実施態様の封印部材100においては、図11に示すように、本体部111の周壁における曲面部111bに設けている。これにより、マイナスドライバのようにその先端部が板状に形成された不正器具を用いた不正行為を行いにくくすることが可能になる。というのも、その先端部が板状に形成された不正挿入具は、湾曲した隙間には差し込みにくいからである。
係合部111cの形態は、封印穴αに形成された被係合部α3に係合可能であれば、特に限定されない。本実施態様の封印部材100においては、図12に示すように、封印穴挿入部110の外周面から外方に突出する凸部を係合部111cとしている。この凸部(係合部111c)は、図5及び図7に示すように、封印部材100を封印穴αに嵌め込んだ際に、当該凸部(係合部111c)における嵌込方向手前側(y軸方向負側)を向く面が封印穴αに設けられた被係合部α3における嵌込方向奥側(y軸方向正側)を向く面に係合するものとなっている。
凸部(係合部111c)の外面(本体部111の中心線から見て外側を向く面)は、図12に示すように、その先端側(y軸方向正側)から基端側(y軸方向負側)にかけて外方に大きく突出するように傾斜した状態に形成されている。加えて、図13に示すように、凸部(係合部111c)の両脇にはスリットを設けており、当該凸部(係合部111c)は、帯板状の部分のみで本体部111と接続された状態となっている。このため、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込む際には、封印穴αの内周面に凸部(係合部111c)の外面が滑らかに接触して、凸部(係合部111c)が本体部111の内側に無理なく弾性的に変位し、凸部(係合部111c)が封印穴αの内周部に引っ掛かることなく、封印部材100を所定の深さ(凸部(係合部111c)が被係合部α3を乗り越える深さ)までスムーズに挿入することができるようになっている。封印部材100が所定の深さまで押し込まれると、凸部(係合部111c)が初期位置まで弾性復帰することで、凸部(係合部111c)が被係合部α3に係合される。
・封印穴挿入部の閉塞部
封印穴挿入部110の閉塞部112は、開口部等を有さない連続面状に形成されている。これは、封印穴αの外部から封印対象箇所α1に、本体部111の空洞部を通じた不正アクセスが為されないようにするためである。この点、封印部材100の頭部120を、中央部121を有する形態とした場合には、本体部111の空洞部を通じた不正アクセスは、中央部121で防止することができるため、閉塞部112は、必須の部分ではない。
しかし、既に述べたように、中央部121を含む頭部120は、低強度の合成樹脂系材料で形成されるため、頭部120の奥側に何も存在しないと、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む際に頭部120が破損する虞がある。このため、封印部材100の頭部120を、中央部121を有する形態とする場合であっても、閉塞部112を設けることが好ましい。これにより、頭部120の中央部121のウラ面(y軸方向正側を向く面)側を閉塞部112で支持し、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む際に頭部120が破損しにくくすることが可能になる。
また、本実施態様の封印部材100では、既に述べたように、閉塞部112を含む封印穴挿入部110と、中央部121を含む頭部120とをいずれも有色透明としながらも、封印穴挿入部110と頭部120とを異なる色としたところ、中央部121のウラ面側に閉塞部112を位置させることによって、中央部121に生じたヒビ割れや白化等の痕跡を目立ちやすくすることも可能になる。
さらに、本実施態様の封印部材100では、既に述べたように、頭部120の中央部121に露出用開口部121aを設けたところ、この露出用開口部121が、マイナスドライバ等の不正器具を挿入できる大きさである場合には、閉塞部121が存在しないと、露出用開口部121から不正器具を差し込んで封印対象箇所α1(図5及び図7)に不正アクセスすることが可能になってしまう。したがって、不正器具を挿入可能な大きさの露出用開口部121を頭部120の中央部121に設ける場合には、閉塞部121は必須となる。
ところで、既に述べたように、本実施態様の封印部材100では、頭部120の中央部121に設けた露出用開口部121aを通じて閉塞部112(封印穴挿入部110)が頭部120のオモテ面側に露出するようにした。閉塞部112(封印穴挿入部110)における、露出用開口部121aを通じて頭部120のオモテ面側に露出する部分(露出部分)は、平坦に形成してもよいが、本実施態様の封印部材100においては、図14に示すように、閉塞部112のオモテ面から手前側に突出する露出凸部112aとして設けており、露出凸部112aの先端面(y軸方向負側を向く面)が、頭部120のオモテ面と略面一で繋がるようにしている。このため、閉塞部112の露出部分を手前側に位置させるとともに、露出用開口部121aの開口縁の影が当該露出部分に形成されないようにすることが可能となっている。したがって、封印部材100に不正アクセスの痕跡がないかを確認する点検者が当該露出部分を視認しやすくし、不正アクセスの有無の判断をより正確且つ容易に判断することが可能となっている。
また、閉塞部112の露出部分を露出凸部112aとしたことによって、封印部材100を正規に嵌め込む際に頭部120にヒビ割れや白化等の塑性変形が生じないようにすることも可能となっている。というのも、頭部120は、強度が低く脆い合成樹脂系材料で形成された部分であることに加えて、封印部材100を封印穴αに嵌め込む際には指等で押圧される部分としても利用されるため、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む際に、頭部120にヒビ割れや白化等が生じてしまう虞があるところ、閉塞部112の露出部分を露出凸部112aとすることによって、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込む際に指等で加えられる荷重を、強度の高い閉塞部112(封印穴挿入部110)で直接受けることが可能になるからである。
ただし、本実施態様の封印部材100では、既に述べたように、閉塞部112の露出部分は、封印穴αに嵌め込まれた封印部材100を正規に開封しようとした際に破壊(通常、ドリル等で破壊)する部分としても利用されるところ、この露出部分(露出凸部112a)を厚く形成してしまうと、封印部材100の正規開封に手間を要するようになる虞がある。このため、本実施態様の封印部材100においては、図14に示すように、閉塞部112の露出部分(露出凸部)のオモテ面側を窪ませることによって、当該露出部分(露出凸部112a)を薄肉に形成しており、正規開封する際に当該露出部分(露出凸部112a)を破壊しやすくしている。
このほか、本実施態様の封印部材100では採用していないが、封印穴挿入部110の閉塞部112のオモテ面(y軸方向負側を向く面。以下同じ。)には、文字や図形等を表わすことも可能である。これにより、封印部材100の偽造を困難にすることが可能になる。また、不正アクセスの際に封印部材100における頭部120の中央部121に、破断や白化等が生じた場合には、閉塞部112に表わされた文字を視認しにくくなるため、閉塞部112に文字が表わされていない場合と比較して、中央部121に破断や白化が生じていることに気付きやすくなる。閉塞部112には、文字の代わりに図形や記号等を表わしてもよい。
閉塞部112に文字や図形等を表わす方法としては、刻設が好適である。閉塞部112に文字や図形等を刻設する態様としては、文字や図形等が表わされる部分をその周囲の部分から突出した状態に設ける態様(文字や図形等を凸部として設ける態様)と、文字や図形等が表わされる部分をその周囲から窪んだ状態に設ける態様(文字や図形等を凹部として設ける態様)とが挙げられる。このいずれを採用してもよいが、上記のように、封印部材100における封印穴挿入部110と頭部120とを二色成形する場合には、頭部120を成形する合成樹脂系材料を射出する際の合成樹脂系材料の流れを考慮すると、文字や図形等は凹部として設けることが好ましい場合がある。
・封印穴挿入部の封印部材側当接部
既に述べたように、本実施態様の封印部材100では、封印部材側当接部110aを、本体部111の基端部に設けた外向き凸部として設けている。この外向き凸部110aは、図14に示すように、フランジ部122のウラ面に接触する状態でフランジ部122の付根部から外側に向かって凸状に設けられている。この外向き凸部110aのウラ面(y軸方向正側を向く面)が、遊技機部材側当接部α5に当接する部分となっている。
外向き凸部110aは、封印穴挿入部110の外周部における一部の区間にのみ設けてもよいが、本実施態様の封印部材100においては、図11に破線で示すように、封印穴挿入部110の外周全周部に亘って連続的に環状に設けている。このため、図5及び図7に示すように、封印穴αに対して封印部材100を嵌め込んだときに、封印部材100における外向き凸部110a以外の部分(特にフランジ部122)が、遊技機部材側当接部α5に当接しないようにし、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む際に、低強度の合成樹脂系材料で形成された頭部120にヒビ割れ等の塑性変形が生じにくくすることが可能となっている。
また、本実施態様の封印部材100においては、図8(b)に示すように、外向き凸部110aの外周部におけるフランジ部122に接触する部分に、複数の外向きのエッジ110a1を形成している。このため、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との隙間にマイナスドライバ等の不正器具が差し込まれた際には、フランジ部122における広い範囲に、消去することが困難なヒビ割れや白化等の痕跡を生じさせることが可能となっている。すなわち、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との隙間にマイナスドライバ等の不正器具が差し込まれた際に、フランジ部122における、外向きのエッジ110a1に当接する部分に応力がより集中しやすくして、フランジ部122に、外向きのエッジ110a1に当接する部分を起点とするクラック等が発生しやすくすることが可能となっている。
外向きのエッジ110a1は、封印穴挿入部110の基端外周部の周方向における一部の区間(特に、係合部111cの手前側に重なる区間)にのみ設けてもよいが、封印穴挿入部110の基端外周部の周方向における全周部に設けると好ましい。これにより、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との隙間における、いずれの場所から不正器具が挿入された場合であっても、フランジ部122における、外向きのエッジ110a1に当接する部分を起点とするクラック等が形成されるようにすることが可能になる。外向きのエッジ110a1の個数は、封印穴挿入部110の寸法等によっても異なり、特に限定されないが、通常、3〜50個程度とされ、好ましくは、5〜40個程度とされる。
外向きのエッジ110a1の角度(y軸方向負側から見たときの内角の大きさ。以下同じ。)は特に限定されない。外向きのエッジ110a1に当接する部分を起点とするクラック等がフランジ部122により形成されやすくするためには、外向きのエッジ110a1の角度を小さくすると好ましい。具体的には、外向きのエッジ110a1の角度は、150°以下とすると好ましく、120°以下とするとより好ましく、90°以下(鋭角)とするとさらに好ましい。ただし、外向きのエッジ110a1の角度を小さくしすぎると、外向き凸部110aの強度が低下して外向き凸部110aが破損等しやすくなる虞がある。このため、外向きのエッジ110a1の角度は、30°以上とすると好ましい。
外向き凸部110aの突出長さL2(図14)は、通常、フランジ部122の突出長さL1(図14)よりも短くされる。しかし、外向き凸部110aの突出長さL2を短くしすぎると、遊技機部材側当接部α5(図5及び図7)が外向き凸部110aのウラ面に当接させることが難しくなる虞がある。このため、外向き凸部110aの突出長さL2は、通常、0.3mm以上とされる。外向き凸部110aの突出長さL2は、0.5mm以上とすることが好ましく、0.7mm以上とすることがより好ましい。一方、外向き凸部110aの突出長さL2をフランジ部122の突出長さL1に近づけすぎると、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との間の隙間に不正器具が挿入された際に、フランジ部122にヒビ割れ等の塑性変形が生じにくくなる虞がある。このため、フランジ部122の突出長さL1に対する凸部110aの突出長さL2の比L2/L1は、0.95以下とすることが好ましい。
また、本実施態様の封印部材100においては、図14に示すように、外向き凸部110aを、フランジ部122のウラ面側に埋め込まれた状態とし、外向き凸部110aのウラ面が、フランジ部122のウラ面と略面一になるようにするとともに、外向き凸部110aのオモテ面側を滑らかに形成し、外向きのエッジ110a1が、外向き凸部110aのウラ面側のみ(フランジ部122のウラ面に接続する部分のみ)に形成されるようにしている。これにより、封印穴αに対して封印部材100を正規に嵌め込む際には、外向きのエッジ110a1に当接する箇所を起点とするクラック等がフランジ部122に形成されないようにしながらも、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との隙間にマイナスドライバ等の不正器具が差し込まれた際には、外向きのエッジ110a1に当接する箇所を起点とするクラック等がフランジ部122に形成されやすくすることが可能となっている。
4. 遊技機部材側当接部の形態について
既に述べたように、遊技機部材80には、それに設けられた封印穴αに封印部材100を嵌め込んだ際に封印部材100の外向き凸部110a(封印部材側当接部)に当接して、封印部材100がそれ以上奥側に移動しないようにするための遊技機部材側当接部α5が設けられる。
この遊技機部材側当接部α5は、通常、封印穴αの開口部付近の内周部に設けられる。本実施態様の遊技機部材80においては、図4及び図6に示すように、封印穴αの開口部付近の内周部に座ぐり面α2を設けており、この座ぐり面α2から封印穴αの手前側に向かって凸状に設けられた前向き凸部が遊技機部材側当接部α5となるようにしている。このため、遊技機部材側当接部α5(前向き凸部)は、外向き凸部110a(封印部材側当接部)に当接する部分として機能するだけでなく、マイナスドライバ等の不正器具が封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との隙間に差し込まれた際には、その不正器具の先端が封印穴αの奥側の部分に到達しないように邪魔する部分としても機能するようになっている。
遊技機部材側当接部α5(前向き凸部)は、封印穴αの内周部の周方向における一部の区間にのみ設けてもよいが、本実施態様の遊技機部材80においては、図4に示すように、封印穴αの内周全周部に亘って連続的に環状に設けている。このため、遊技機部材側当接部α5(前向き凸部)を、封印部材側当接部110a(外向き凸部)に沿って環状に当接させることが可能になり、図5及び図7に示すように、封印穴αに嵌め込まれた後の封印部材100を、遊技機部材側当接部α5(前向き凸部)で安定して支持することが可能となっている。また、既に述べたように、前向き凸部α5は不正器具の侵入を邪魔する機能も発揮し得るところ、この前向き凸部α5を環状に連続的に設けることによって、封印穴αの内周面とフランジ部122の外周面との隙間におけるいずれの箇所から不正器具が差し込まれた場合であっても、前向き凸部α5で不正器具の侵入を防止することもできるようになっている。