JP6691534B2 - 接合菌の測定方法及び接合菌測定用の試薬キット - Google Patents

接合菌の測定方法及び接合菌測定用の試薬キット Download PDF

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Description

本発明は、特定の真菌の測定手段に関し、具体的には接合菌の測定方法、接合菌測定用試料の調製剤、接合菌測定用試料の調製方法、及び、接合菌の測定を行うための試薬キット等に関する。
真菌症(mycosis)は、真菌(fungus)が動物の皮膚や臓器等に定着することに起因する感染症である。真菌は、菌界(Fungi)に属する生物の総称として定義されている。真菌症としては、皮膚真菌症(表在性真菌症)、深部皮膚真菌症(深部表在性真菌症)、深在性真菌症(全身性真菌症、内臓真菌症)が知られている。皮膚真菌症は、表皮に限局した真菌症であり、白癬、癜風、皮膚カンジダ症等が知られている。深部皮膚真菌症は、真皮や皮下組織に限局した真菌症であり、スポロトリックス症、エントモフトラ症等が知られている。深在性真菌症は、臓器に限局した真菌症であり、アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコッカス症、ムーコル症等が知られている。
真菌症において、接合菌(Zygomycota)に起因する感染症は接合菌症(zygomycosis)と呼ばれている。接合菌症としては、ケカビ亜門(Mucoromycotina)に属する接合菌に起因する真菌症であるムーコル症(mucormycosis)や、ハエカビ亜門(Entomophthoromycotina)に属する接合菌に起因する真菌症であるエントモフトラ症(entomophthoramycosis)が知られている。
真菌の細胞壁にはキトサンやキチンが存在することが知られている。より詳しくは、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)に属する真菌の細胞壁にはキチンや(1→3)−β−D−グルカン(以下「β−グルカン」という。)が存在するのに対し、接合菌門(Zygomycota)に属する真菌の細胞壁にはキチンの代わりにキトサンが多く存在し、β−グルカンがほとんど存在しないことが知られている。
非特許文献1では、がんや血液疾患等に対する免疫抑制的な治療が広く行われるようになったことを背景に、ムーコル症等の内臓真菌症(深在性真菌症)が増加していることが指摘されている。また、当該文献では、ムーコル症は感染者の死亡率が約60%に達する劇症型の真菌症であること、及び真菌症感染者の中でムーコル症感染者の占める割合が増加傾向にあることが指摘されている。さらに、当該文献では、ムーコル症が抱える問題として早期診断に有用な血清学的補助診断法が存在しないことが指摘されている。
前記のように本発明は接合菌の測定手段に関するものであるところ、特許文献1には、抗糖質抗体を用いたキトサンを含む糖質の微量定量法が記載され、抗糖質抗体は糖質の高感度検出に用いることができることが記載されている。しかし、生物学的試料を測定対象としたキトサンの測定に関しては、具体的な手段を伴った実質的な記載は全く認められない。
特許文献2には、接合菌症起因菌の検出及び同定法として、検体中のDNAを鋳型とし、目的の接合菌症起因菌のDNAに特異的なセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットを用いたPCRにより接合菌症起因菌を検出する方法が記載されている。当該文献の実施例では、検体の前処理としてプロテアーゼK処理が用いられている。
特開平8−193100号公報 特開2014−200201号公報
串間尚子、時松一成、門田淳一、「稀な菌種による深在性真菌症」、感染症学雑誌、第88巻、第4号、p.531-532
本発明者らは、真菌症の治療薬として接合菌症に対しても有効な抗真菌剤が提供されつつあることを鑑みて、このような抗真菌剤の投与の可否や投与効果の確認を行うことを可能にする、接合菌の測定手段についての検討を行った。その結果、血清等の血液由来試料に対してそのまま免疫測定法を行っても、接合菌を特許文献1の非実質的な期待通りに測定することはできないことが確認された。この点に関しては後述の実施例において明らかになっている。
本発明の課題は、真に接合菌の測定を行うことが可能な手段を提供することである。また、本発明の課題は、一態様において、ムーコル症やエントモフトラ症等の接合菌症の早期診断に有用な血清学的診断を実現する手段を提供することである。
上記課題の解決のために、本発明者らは接合菌の測定手段に関する検討、具体的には、接合菌の測定を可能にする試料の前処理方法に関する検討、を鋭意行った。試料の前処理方法としては、界面活性剤を添加する処理、有機溶媒を添加する処理、金属塩を添加する処理、酵素(ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ等)を添加する処理、超音波やビーズ等を用いて破砕する処理、ホモジェナイザー等を用いて均質化する処理、カラムに供する処理、ろ過フィルターを用いる処理等の種々の処理方法が考えられるところ、本発明者らは、驚くべきことに、試料を酸性にする処理(酸処理)という極めて簡便かつ安価な手法により接合菌の測定が可能になることを見出し、本発明を完成した。
前記課題は、以下の態様を包含する本発明によって解決することができる。
[1]
酸処理した試料を測定対象として接合菌を測定する、接合菌の測定方法。
[2]
酸処理が、酸性成分と試料を共存させる処理である、前記[1]に記載の接合菌の測定方法。
[3]
酸性成分が、オキソ酸、有機酸、無機酸からなる群より選択される1又は2以上の酸である、前記[2]に記載の接合菌の測定方法。
[4]
オキソ酸が、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、リン酸、硝酸、ハロゲンオキソ酸からなる群より選択される1又は2以上の酸である、前記[3]に記載の接合菌の測定方法。
[5]
有機酸が、カルボン酸及び/又はスルホン酸である、前記[3]に記載の接合菌の測定方法。
[6]
カルボン酸が、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸からなる群より選択される1又は2以上の酸である、前記[4]又は[5]に記載の接合菌の測定方法。
[7]
無機酸が、ハロゲン化水素、硫酸、リン酸、硝酸、ハロゲンオキソ酸からなる群より選択される1又は2以上の酸である、前記[3]に記載の接合菌の測定方法。
[8]
ハロゲン化水素が、塩酸である、前記[7]に記載の接合菌の測定方法。
[9]
ハロゲンオキソ酸が、次亜ハロゲン酸及び/又は過ハロゲン酸である、前記[4]又は[7]に記載の接合菌の測定方法。
[10]
次亜ハロゲン酸が、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸からなる群より選択される1又は2以上の酸である、前記[9]に記載の接合菌の測定方法。
[11]
過ハロゲン酸が、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸からなる群より選択される1又は2以上の酸である、前記[9]に記載の接合菌の測定方法。
[12]
接合菌の測定が、接合菌成分の検出試薬を用いた接合菌の測定である、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の接合菌の測定方法。
[13]
接合菌成分の検出試薬が、キトサンに結合する抗体である、前記[12]に記載の接合菌の測定方法。
[14]
接合菌の測定が、免疫測定法による接合菌の測定である、前記[1]〜[13]のいずれかに記載の接合菌の測定方法。
[15]
免疫測定法が、キトサンに結合する抗体を用いた免疫測定法である、前記[14]に記載の接合菌の測定方法。
[16]
免疫測定法が、酵素免疫測定法、イムノクロマト法、イムノブロット法、凝集法、比濁法、又は比ろう法である、前記[14]又は[15]に記載の接合菌の測定方法。
[17]
凝集法が、ラテックス凝集法である、前記[16]に記載の接合菌の測定方法。
[18]
試料が、動物に由来する試料である、前記[1]〜[17]のいずれかに記載の接合菌の測定方法。
[19]
動物に由来する試料が、血液由来試料、気管支肺胞洗浄液(BALF)、生検検体、喀痰、脳脊髄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、又は腹水である、前記[18]に記載の接合菌の測定方法。
[20]
血液由来試料が、血清又は血漿である、前記[19]に記載の接合菌の測定方法。
[21]
接合菌の測定方法が、接合菌症の検知方法である、前記[1]〜[20]のいずれかに記載の接合菌の測定方法。
[22]
接合菌症が、ムーコル症又はエントモフトラ症である、前記[21]に記載の接合菌の測定方法。
[23]
酸性成分を含有する、接合菌測定用試料の調製剤。
[24]
調製剤が、前記[1]〜[22]のいずれかに記載の接合菌の測定方法を行う試料の酸処理に用いられる調製剤である、前記[23]に記載の調製剤。
[25]
接合菌の測定を行う試料の酸処理に使用するための酸性成分。
[26]
酸性成分が、前記[1]〜[22]のいずれかに記載の接合菌の測定方法を行う試料の酸処理に用いられる酸性成分である、前記[25]に記載の酸性成分。
[27]
酸処理することにより、試料を接合菌測定用試料にする、接合菌測定用試料の調製方法。
[28]
酸処理が、試料を前記[1]〜[22]のいずれかに記載の接合菌の測定方法を行うための試料とするための処理である、前記[27]に記載の調製方法。
[29]
酸処理が、酸性成分と試料を共存させる処理である、前記[27]又は[28]に記載の調製方法。
[30]
酸性成分と試料を共存させる処理が、前記[23]又は[24]に記載の調製剤と試料を共存させる処理である、前記[29]に記載の調製方法。
[31]
酸性成分を含有する試薬及び/又は接合菌成分の検出試薬を構成品として含む、接合菌の測定を行うための試薬キット。
[32]
酸性成分を含有する試薬及び/又は接合菌成分の検出試薬を構成品として含む、前記[1]〜[22]のいずれかに記載の接合菌の測定方法を行うための試薬キット。
[33]
酸性成分を含有する試薬が、前記[23]又は[24]に記載の調製剤である、前記[31]又は[32]に記載の試薬キット。
[34]
接合菌成分の検出試薬が、キトサンに結合する抗体である、前記[31]〜[33]のいずれかに記載の試薬キット。
[35]
試薬キットが、接合菌症の診断キットである、前記[31]〜[34]のいずれかに記載の試薬キット。
[36]
試薬キットが、ムーコル症又はエントモフトラ症の診断キットである、前記[31]〜[34]のいずれかに記載の試薬キット。
<1>本発明の測定方法
本発明により、酸処理した試料を測定対象として接合菌を測定することを特徴とする、接合菌の測定方法(以下「本発明の測定方法」という。)が提供される。本発明の測定方法は、例えば、接合菌の検知方法、接合菌の検出方法、接合菌の定量方法、接合菌症の検知方法、接合菌症の検出方法、又は接合菌症の定量化方法として用いることができる。また、本発明の測定方法は、例えば、酸処理した試料(検体)を測定対象として接合菌の測定(検体検査)を行い、動物が接合菌症に罹患しているか否かを診断するためのデータを取得することを特徴とする、接合菌症を診断するためのデータ取得方法として用いることもできる。
<2>本発明の試料調製剤
上記の通り、本発明において接合菌の測定が行われる試料は酸処理が施されている。当該酸処理は、試料に酸性成分を共存させて行うことが実用上簡便である。ここに酸性成分を含有することを特徴とする、接合菌測定用試料の調製剤(以下「本発明の試料調製剤」という。)が提供される。当該酸性成分を含む剤は、接合菌の測定を行う試料の酸処理剤として使用することができる。本発明の試料調製剤と当該酸処理剤は、どちらも酸性成分を剤に含有させる工程を含む任意の方法により製造することができる。また、本発明の試料調製剤と当該酸性成分は、どちらも本発明の測定方法を行う試料の酸処理に好適に用いることができる。
<3>本発明の試料調製方法
上記の通り、酸処理を行うことにより試料を接合菌測定用試料とすることができる。ここに酸処理することにより試料を接合菌測定用試料にすることを特徴とする、接合菌測定用試料の調製方法(以下「本発明の試料調製方法」という。)が提供される。本発明の試料調製方法は、本発明の測定方法を行う試料の酸処理に好適に用いることができる。本発明の試料調製方法において、酸処理は酸性成分と試料を共存させる処理であることが好適である。酸性成分と試料を共存させる処理は、本発明の試料調製剤と試料を共存させる処理であることが好適である。
<4>本発明の試薬キット
本発明において接合菌の測定は、酸性成分を含有する試薬と接合菌成分の検出試薬のうち少なくとも一方を構成品として含む試薬キット(以下「本発明の試薬キット」という。)を用いて行うことが実用上簡便である。本発明の試薬キットは、本発明の測定方法を行うために好適に用いることができる。酸性成分を含有する試薬は、本発明の試料調製剤であることが好適である。接合菌成分の検出試薬は、キトサンに結合する抗体であることが好適である。本発明の試薬キットは、前記構成品以外に、さらに他の構成品を含んでいてもよい。当該他の構成品は、接合菌の測定の態様に応じて適宜選択できる。本発明の試薬キットは、例えば、ムーコル症やエントモフトラ症等の接合菌症の診断キットとしても用いることができる。
<5>酸処理
本発明において酸処理は、接合菌の測定を行う試料の前処理として行われる。当該酸処理は、試料を酸性にする処理であり、試料を酸性下に供することで行うことができる。当該酸処理は、試料に酸性成分を共存させて行われることが実用上簡便である。酸処理した試料は、酸性成分と共存させる処理が行われた試料であってよい。
<6>酸性成分
本発明において酸性成分は、有機酸であってもよく、無機酸であってもよい。有機酸はカルボン酸であることが好適である。カルボン酸は酢酸、ギ酸、又はクエン酸であることが好適である。また、無機酸はハロゲン化水素、硫酸、又はリン酸であることが好適である。ハロゲン化水素は塩化水素(塩酸)であることが好適である。このような酸性成分は、1種のみを用いてもよく、2種又はそれ以上を組み合わせて用いてもよい。
<7>接合菌の測定
本発明において接合菌の測定は、例えば、接合菌成分の検出試薬を用いて行うことができる。接合菌成分の検出試薬は、キトサンに結合する抗体であることが好適である。また、本発明において接合菌の測定は、例えば、免疫測定法により行うことができる。免疫測定法は、キトサンに結合する抗体を用いた免疫測定法であることが好適である。免疫測定法としては、酵素免疫測定(Enzyme ImmunoAssay、EIA)法、イムノクロマト法、イムノブロット法、凝集法、比濁法、又は比ろう法が例示される。凝集法としては、ラテックス凝集法が例示される。酵素免疫測定法は、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法であってよい。
<8>試料
本発明において接合菌の測定を行う試料は、接合菌を含有し得る物質である限り特に制限されないが、ヒトを含む動物に由来する試料(検体)であることが好適であり、本発明は検体検査において好適に用いられる。動物に由来する試料としては、動物の体から得られる試料や動物の体と接触させた液体を回収して得られる試料が例示される。動物の体と接触させる液体は、生体に適合可能な液体である限り特に制限されない。そのような液体としては、生理食塩水が挙げられる。動物の体と接触し、回収された液体は、そのまま接合菌の測定を行う試料として酸処理に供することができる。動物の体から得られる試料は、血液由来試料であることが好適である。血液由来試料は、血清又は血漿であることが特に好適である。動物の体と接触させた液体を回収して得られる試料は、気管支肺胞洗浄液(BALF)であることが好適である。また、ここにいう動物は、接合菌症に罹患した動物又は接合菌症に罹患した可能性のある動物であることが好適である。接合菌症としては、ムーコル症やエントモフトラ症が例示される。
本発明において接合菌の測定が行われる試料は、酸処理が施されて調製される。本発明において接合菌の測定が行われる試料は、酸処理を施した後に中和がされた試料であってよい。
以降の説明において、以下の略号を使用する場合がある。
GlcN:グルコサミン
GlcNAc:N−アセチル−D−グルコサミン
CTS:キトサン
CTS6:キトサンヘキサマー
GCTS:グリコールキトサン
CTN:キチン
EGCTN:エチレングリコールキチン
CTSpAb:抗キトサンポリクローナル抗体
CTSmAb:抗キトサンモノクローナル抗体
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
本発明によれば、試料が含有する接合菌の測定を高感度に行うことができる。本発明は、例えば、ムーコル症やエントモフトラ症等の接合菌症の早期診断に有用な血清学的診断を実現する手段として活用することができる。
真菌症等の各種感染症に罹患したヒトの血清を試料とし、抗キトサン抗体を用いた競合ELISA法によって接合菌の測定を行った場合において、酸処理を行った場合と行わなかった場合で吸光度の減少率(阻害率)を比較した図である。
1.酸処理された試料の調製
本発明において接合菌の測定が行われる試料は、上述した通りに酸処理が施されて調製される。本発明において酸処理は、試料を酸性下に供する処理(酸性の状態にする処理)である限り、その手段は特に制限されない。そのような手段としては、陽イオン交換体、活性炭(酸性炭)、又は酸性成分と試料を共存させる方法が例示される。酸処理は、酸性成分と試料を共存させる処理であることが簡便かつ安価であり好適である。共存とは、対象物同士が接触し得る状態にあることを意味する。例えば、酸性成分と試料の共存は、試料に対して酸性成分を添加することにより行うことも可能であり、酸性成分に対して試料を添加することにより行うことも可能である。酸処理は液体中において行われることが好適である。また、酸処理が行われる液体は、水又は水溶液であることが好適である。
1−1: 酸性成分
酸性成分は、水と共存した時に酸性を示す物質である限り特に制限されない。酸性成分は、水と共存した時に水素イオンを遊離する化合物であってよく、イオン化した時に水素イオンを遊離する化合物であってよい。すなわち、酸性成分はアレニウス酸であってよい。酸性成分としては、オキソ酸、有機酸、無機酸等が例示される。オキソ酸としては、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、リン酸、硝酸、ハロゲンオキソ酸等が例示される。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸等が例示される。カルボン酸としては、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸等が例示される。無機酸としては、ハロゲン化水素、硫酸、リン酸、硝酸、ハロゲンオキソ酸等が例示される。ハロゲン化水素としては、塩化水素(塩酸)等が例示される。ハロゲンオキソ酸としては、次亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸等が例示される。次亜ハロゲン酸としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等が例示される。過ハロゲン酸としては、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸等が例示される。酸性成分が有機酸である場合は、酸性成分はカルボン酸であることが好ましく、酢酸、ギ酸、又はクエン酸であることが特に好ましい。また、酸性成分が無機酸である場合は、酸性成分はハロゲン化水素、硫酸、又はリン酸であることが好ましく、ハロゲン化水素であることがより好ましい。ハロゲン化水素は塩化水素(塩酸)であることが特に好ましい。
また、酸性成分は、例えば、酸無水物であってもよく、ポリオキソ酸であってもよい。酸無水物としては、カルボン酸無水物やリン酸無水物等が例示され、具体的には無水酢酸やピロリン酸等が例示される。ポリオキソ酸としては、ポリリン酸等が例示される。
さらに、酸性成分は水と共存した時に酸性を示す物質である限り塩であってもよい。当該塩としては、アンモニウム塩やナトリウム塩等が例示され、具体的には、リン酸二水素アンモニウム、クエン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム等が例示される。
酸性成分の形状は特に制限されず、固体であってもよいし、液体であってもよいし、気体であってもよい。液体の酸性成分は、固体や気体の酸性成分を水等の溶媒に溶解して調製したものであってもよい。
酸性成分は、1種のみを酸処理に用いてもよく、2種又はそれ以上を組み合わせて酸処理に用いてもよい。
1−2: 試料
試料は、接合菌を含有し得る物質である限り特に制限されない。試料としては、動物に由来する試料が挙げられる。動物としては、具体的には、ヒトをはじめ、ムーコル症やエントモフトラ症等の接合菌症の罹患の対象となり得るその他の動物、例えば、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシ等の哺乳動物、トリ等が挙げられる。接合菌症は、ペット由来の感染や、ペット自体の接合菌症の罹患も問題になっており、ヒト以外の動物も試料の由来として重要である。動物に由来する試料は、動物の体から得られる試料であってもよいし、動物の体と接触させた液体を回収して得られる試料であってもよい。
動物に由来する試料としては、例えば、喀痰、脳脊髄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、腹水、気管支肺胞洗浄液(BALF)、生検検体、血液由来試料が挙げられる。動物の体から得られる試料としては、例えば、喀痰、脳脊髄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、腹水、生検検体、血液由来試料が挙げられる。動物の体と接触させた液体を回収して得られる試料としては、例えば、気管支肺胞洗浄液(BALF)が挙げられる。気管支肺胞洗浄液(BALF)は、典型的には気管支内に生理食塩水等を注入して肺胞等を洗浄した後、これを回収して得られる溶液として知られている。
血液由来試料は、血液そのものであってもよく、抗凝固剤等の添加剤等の他の成分を含む血液であってもよく、さらに、これらの分画や精製によって得られる画分(血漿や血清等)であってもよい。これらの中で血液由来試料は、血清又は血漿であることが特に好ましい。血清は、例えば、動物から採取した血液を静置又は遠心分離し、上清を回収して得ることができる。血漿は、例えば、動物から採取した血液を抗凝固剤と混合した後に静置又は遠心分離し、上清を回収して得ることができる。
試料の形態は特に制限されず、液状であってもよいし、固形状であってもよい。液状の試料としては、例えば、上記した喀痰、脳脊髄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、腹水、気管支肺胞洗浄液(BALF)、血液由来試料等の液性成分の他、生検検体の懸濁液が挙げられる。固形状の試料としては、例えば、上記した生検検体の他、液性成分(喀痰、脳脊髄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、腹水、気管支肺胞洗浄液(BALF)、血液由来試料等)の凍結乾燥等による乾燥粉末が挙げられる。試料は、液状の試料そのものであっても、適宜、濃縮又は希釈したものであってもよく、固形状の試料を適宜溶解したものであってもよい。
1−3: 酸処理
本発明において酸処理は、試料を酸性にする処理であり、試料を酸性下に供することで行うことができる。試料の酸処理が行われる時(以下「酸処理時」という。)のpHは6以下の酸性である限り特に制限されず、任意のpHを選択することができる。酸処理時のpHは、例えば、試料の種類や接合菌の測定の態様に応じて適宜設定することができる。下限を含んだ当該pHは、例えば、pH0以上、pH0.5以上、pH1以上、pH2以上、pH3以上、pH3.5以上等であってよい。また上限を含んだ当該pHは、例えば、pH6以下、pH5.5以下、pH5以下、pH4.5以下等であってよい。さらに具体的には、pH0〜6、pH0.5〜5.5、pH0〜5、pH0.5〜5、pH1〜5、pH2〜5、pH3〜5、pH3.5〜4.5等が例示される。
酸処理を酸性成分と試料を共存させて行う場合において、酸処理時における酸性成分の濃度は特に制限されず、酸性成分の種類や所望するpH等の諸条件に応じて適宜設定することができる。下限を含んだ当該濃度は、例えば、0.001mM以上、0.01mM以上、0.1mM以上、1mM以上、10mM以上、50mM以上、100mM以上等であってよい。また上限を含んだ当該濃度は、例えば、1M以下、500mM以下、250mM以下等であってよい。さらに具体的には、0.001mM〜1M、0.01mM〜1M、0.1mM〜1M、1mM〜1M、10mM〜1M、50mM〜500mM、100mM〜500mM、100mM〜250mM等が例示される。なお、酸性成分を2種以上用いる場合の当該濃度は、それら酸性成分の濃度の総和の値である。当該濃度は、試料に添加された酸性成分の終濃度を意味してよい。
酸処理時の温度は特に制限されず、任意の温度を選択することができる。当該酸処理は、例えば、15〜25℃の常温で行ってもよいし、それよりも低い温度、又は、高い温度で行うことも可能である。下限を含んだ当該温度は、例えば、0℃以上、4℃以上、10℃以上、20℃以上等であってよい。また上限を含んだ当該温度は、例えば、125℃以下、100℃以下、75℃以下、50℃以下、37℃以下等であってよい。さらに具体的な当該温度としては、上記の常温の他に、0℃〜125℃、4℃〜100℃、10℃〜75℃、20℃〜75℃等が例示される。
当該酸処理は、室温(24〜26℃)で行うこともできるし、試料を冷却または加温して行うこともできる。試料の冷却や加温は、例えば、ヒートブロック、ウォーターバス、オイルバス、エアーバス等の機器を使用して行うことができる。
当該酸処理を行う時間、すなわち、酸処理を開始してから酸処理を終了するまでの時間(以下「処理時間」という。)は特に制限されない。下限を含んだ当該処理時間は、例えば、5秒間以上、30秒間以上、1分間以上、5分間以上等であってよい。また上限を含んだ当該処理時間は、例えば、24時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下であってよい。さらに具体的な当該処理時間としては、5秒間〜24時間、30秒間〜2時間、1分間〜1時間、5分間〜30分間等が例示される。
当該酸処理を行った試料は、そのまま接合菌の測定に用いることができるが、当該測定が酸性での使用に適さない成分(例えば、抗体などのタンパク質)を用いて行われる場合には、当該酸処理を終了させた試料を接合菌の測定に用いることが好適である。
当該酸処理の終了は、例えば、試料を酸処理に好適なpHよりも高いpHにすることにより、好ましくは試料を中性又は塩基性にすることにより、行うことができる。当該酸処理の終了は、例えば、試料に中和成分や塩基性成分を添加することや、試料から酸性成分等の試料を酸性にするために添加した成分を除去すること等によって行うことができる。具体的に当該酸処理の終了は、例えば、試料をpH6.5以上、好ましくはpH7以上にすることにより、行うことができる。
ただし、当該酸処理の終了操作においては、アルカリ加水分解反応による成分の変性が接合菌の測定の結果に影響する可能性があるため、試料を強塩基性下に供しないこと(強塩基性の状態にしないこと)が好ましい。ここにいう強塩基性は、例えば、pH12以上、pH12.5以上、pH13以上、pH13.5以上、pH14以上等である。
上記酸処理の終了操作は、試料をpH6.5〜pH12、より好ましくはpH7〜pH12、さらに好ましくはpH7〜10、よりさらに好ましくはpH7〜pH8、にする操作であってよい。酸処理が行われ、中和がされた試料は、そのまま(更なる処理を必要とせずに)接合菌の測定を行う測定対象の試料として用いることができる。本発明において接合菌の測定が行われる試料は、酸処理後に上記に例示したpHに調整された試料であることが好ましい。
当該酸処理に際しては、試料の希釈や溶解が行われてもよい。試料が希釈される場合の希釈倍率は特に制限されず、下限を含んだ希釈倍率は、例えば、1倍超、1.1倍以上、2倍以上、5倍以上、10倍以上等であってよい。また上限を含んだ希釈倍率は、例えば、500倍以下、200倍以下、100倍以下等であってよい。さらに具体的には、1倍超〜500倍、1.1倍〜500倍、2倍〜200倍、5倍〜200倍、10倍〜100倍等が例示される。
当該酸処理は、1回のみ行ってもよいし、2回又はそれ以上の複数回行ってもよい。当該酸処理は、例えば、試料を酸性下に供した後、中和し、さらに再度酸性下に供して行ってもよい。当該酸処理を複数回行う場合において、酸処理の諸条件(pH、酸性成分の種類、酸性成分の濃度、温度、時間等)は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
1−4: 本発明の試料調製剤
本発明の試料調製剤は、上記に例示される酸性成分を含有する剤であり、試料を酸処理するために用いられる剤である。本発明の試料調製剤は、液剤であってもよいし、粉末剤、顆粒剤、錠剤等の用時溶解用の固形剤であってもよい。本発明の試料調製剤は、酸性成分そのものであってもよく、酸性成分を水等の溶媒に希釈又は溶解したものであってもよい。また、本発明の試料調製剤は、製剤上の理由等により、酸性成分や溶媒以外の他の成分を含有するものであってもよい。当該他の成分は、試薬・診断薬学的に許容される成分である限り特に制限されず、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、各種添加剤等が例示される。各種添加剤としては、安定化剤、保存剤、防腐剤、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、懸濁化剤、分散剤、浸透圧調整剤、等張化剤、緩衝剤、pH調整剤、抗酸化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤等が例示される。
本発明の試料調製剤において、酸性成分は、イオン化していない状態で存在していてもよく、イオン化した状態で存在していてもよく、これらが共存する状態で存在していてもよい。
本発明の試料調製剤において酸性成分が占める重量パーセント濃度(w/w)は特に制限されず、任意の濃度を選択することができる。下限を含んだ当該濃度(w/w)は、例えば、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上、50%以上等であってよい。また上限を含んだ当該濃度(w/w)は、例えば、100%以下、75%以下、50%以下、25%以下、10%以下、5%以下、1%以下等であってよい。
本発明の試料調製剤の使用量は特に制限されず、本発明の試料調製剤が含む酸性成分の種類や濃度等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の試料調製剤は、例えば、試料と共存させた時の酸性成分の量が上述した酸処理に適した量となるように用いることができる。
本発明の試料調製剤は、試薬や診断薬の調製において通常用いられる手法によって製造することができる。
本発明の試料調製剤を用いて接合菌の測定を行う試料に酸処理を施すことにより、試料を接合菌の測定に適した状態にすることができ、所望する接合菌の測定を高感度に行うことができる。
1−5: 本発明の試料調製方法
本発明の試料調製方法は、酸処理することにより試料(接合菌の測定を行う試料)を接合菌測定用試料(接合菌の測定が行われる試料)にするための方法である。本発明の試料調製方法は、酸処理する工程以外に、当該工程の前後、又は、同時において、さらに他の工程を含んでいてもよい。本発明の試料調製方法は、例えば、酸処理を終了する工程、固形状の試料を溶解する工程、液状の試料を希釈又は濃縮する工程等を含んでいてもよい。また、本発明の試料調製方法は、例えば、調製された試料が接合菌の測定に適した温度となるように、当該試料を加温又は冷却する工程を含んでいてもよい。さらに、本発明の試料調製方法は、例えば、調製された試料が接合菌の測定に適したpHとなるように、当該試料のpHを調整する工程を含んでいてもよい。
本発明の試料調製方法を用いることにより、試料を接合菌の測定に適した状態にすることができ、所望する接合菌の測定を高感度に行うことができる。
2.接合菌の測定
2−1: 測定手法
本発明の測定方法は、上述の通りに接合菌を測定する方法である。本発明において測定の対象となる接合菌は、具体的には、酸処理された接合菌であり、一態様においては、接合菌に由来する成分である。本発明において測定の対象となる接合菌は、菌体そのものであってもよく、断片化された菌体であってもよく、菌体の一部又は一成分であってもよい。また、本発明において測定の対象となる接合菌は、生菌体であってもよく、不活化された菌体等の死菌体であってもよい。接合菌の測定は、例えば、接合菌成分の検出試薬(接合菌が有する成分を検出するための試薬)を用いて行うことができる。
測定の対象となる接合菌の成分は特に制限されない。当該成分としては、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物等が例示される。当該成分は、様々な接合菌の種において共通して存在する同一の構造からなる成分であることが、接合菌の有無を包括的に測定する目的において好ましい。測定の対象となる接合菌の成分は、脂質又は炭水化物であることが好適であり、炭水化物であることがより好適である。炭水化物は糖質であることが好適であり、キトサンであることがより好適である。接合菌の測定は、キトサンを測定対象の成分として行うことが特に好適である。また、本発明において測定は、検出、検知、及び、定量を含む概念である。すなわち接合菌の測定は、接合菌の検出、接合菌の検知、及び、接合菌の定量を概念として包含する。
上記検出試薬は、接合菌の成分と接触して当該接合菌の成分や試薬自体に物理的又は化学的な変化が生じる試薬であること意味する。当該変化には、結合、転移、転位、付加、脱離、分解、酸化、還元、標識、発色、発光等が含まれる。当該変化は、例えば、クロマトグラムのピーク、コントラスト、若しくは分析機器の測定値の変化、又は当該変化に伴い検出されるシグナル等として測定することができる。また、当該変化は、例えば、上記検出試薬や上記検出試薬と接触して生じる反応物を標識又は測定するための試薬をさらに用いて測定することもできる。そのような試薬は、上記検出試薬、上記検出試薬と接触して生じる反応物、当該試薬自体のいずれかに物理的または化学的な変化が生じる試薬であってよい。上記検出試薬や上記検出試薬と接触して生じる反応物を標識又は測定するための試薬としては、それらに結合する抗体が挙げられる。
上記検出試薬は、測定対象の特異的検出を可能とする試薬であることが好適である。そのような試薬としては、例えば、抗体が挙げられる。接合菌の測定は免疫測定法により行われることが好適である。上述したように、接合菌の測定はキトサンを測定対象の成分として行われることが特に好適であるから、上記検出試薬はキトサンに結合する抗体(抗キトサン抗体)であることが特に好適である。
免疫測定法に用いる抗体はポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよく、両者が混合されてなる抗体であってもよい。
上記抗体は、抗体そのものであってもよく、他の物質で標識された抗体(標識抗体)であってもよい。標識抗体としては、酵素標識抗体、蛍光標識抗体、ビオチン標識抗体等が例示される。
上記抗体の免疫グロブリンの種類は特に制限されないが、抗体が抗キトサン抗体である場合は、後述する理由により鳥類を免疫して作製することが好ましく、IgY抗体であることが好ましい。IgYが哺乳動物に存在しない免疫グロブリンであることから、IgY抗体は試料が哺乳動物に由来する試料である場合において特に好適に用いることができる。
上記抗体は、測定対象の成分におけるエピトープが同一である抗体が2種以上混合されてなる抗体であってもよいし、当該エピトープが異なる抗体が2種以上混合されてなる抗体であってもよい。
本発明における抗体の使用態様は、抗体のみの使用であってもよく、抗体以外の他の成分を含む抗体製剤としての使用であってもよい。ここにいう他の成分としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、界面活性剤、緩衝剤等の他、抗原によって免疫された動物に由来する抗体以外の成分等が例示される。
上記の抗体製剤において、抗体そのものが占める重量体積パーセント濃度(w/v)は特に制限されず、任意の濃度であってよい。下限を含んだ当該濃度(w/v)は、例えば、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上、50%以上等であってよい。上限を含んだ当該濃度(w/v)は、例えば、100%以下、75%以下、50%以下、25%以下、10%以下、5%以下、1%以下等であってよい。
免疫測定法は、抗原抗体反応を利用して抗原を測定するために用いられる公知の方法により行うことができ、その態様は特に制限されない。免疫測定法としては、酵素免疫測定法(EIA法又はELISA法)、イムノクロマト法、イムノブロット法(ドットブロット法、スロットブロット法、スポットブロット法等)、凝集法、比濁法、比ろう法が好ましく例示される。凝集法としては、ラテックス凝集法が好ましく例示される。
ELISA法としては、(a)プレートに固相化した試料に対して抗体(検出抗体)を添加して試料が含有する抗原を測定する方法(結合法)、(b)プレートに固相化した抗体(固相化抗体)に対して試料と抗体(検出抗体)を添加して試料が含有する抗原を測定する方法(サンドイッチ法)、(c)プレートに固相化した抗原に対して試料(競合物質)と抗体(検出抗体)を添加して試料が含有する抗原を測定する方法(競合法、阻害法)、等が例示される。これらの中で、ELISA法は、プレートを予め大量調製してストックしておくことが可能であることから、競合法(以下「競合ELISA法」という。)又はサンドイッチ法(以下「サンドイッチELISA法」という。)であることが好ましく、サンドイッチELISA法であることがより好ましい。
競合ELISA法又はサンドイッチELISA法を行う場合、酸処理を行った試料と検出抗体は任意の順序で別々にプレートに添加されてもよいし、これらを予め共存させた後にプレートに添加されてもよい。これらのELISA法において予め試料と検出抗体を共存させる時間としては、数時間から一日程度が好ましく、具体的には、1〜24時間、12〜24時間、18〜24時間等が例示される。
サンドイッチELISA法において用いる2種類の抗体(固相化抗体と検出抗体)は、接合菌の成分に結合する抗体である限り制限されず、認識するエピトープが異なる抗体であってもよく、認識するエピトープが同一の抗体であってもよい。当該2種類の抗体は、同一の抗体であってもよく、異なる抗体であってもよい。
2−2: 抗体
本発明において用いられる抗体は、抗体を作製するために用いられる公知の方法により作製することができ、その方法は特に制限されない。当該抗体を作製する方法としては、動物を抗原で免疫する方法が典型例として挙げられる。抗原は、接合菌そのものであってもよく、断片化された接合菌であってもよく、接合菌の一成分であってもよく、免疫原性を高めるためにこれらを他の物質と融合させた複合体であってもよい。当該複合体の形成に用いられる他の物質としては、タンパク質が挙げられ、具体的には、ウシ血清アルブミン(BSA)が挙げられる。また、抗原は、抗原性補強剤(アジュバント)と共存させた状態で動物の免疫に用いられてもよい。
抗原として用いられる接合菌成分は、上述の通り、キトサンであることが好ましい。抗原として用いられるキトサンの由来は特に制限されず、接合菌から抽出して得られるキトサン以外のキトサンであってもよく、例えば、市販のキトサンであってもよい。抗原として用いられるキトサンとしては、キチンのN−脱アセチル化によって得られるキトサンが例示される。キチンは、例えば、カニやエビ等の甲殻類に由来するものが提供されている。また当該キトサンの重合度、すなわちキトサンの分子量、は特に制限されず、ポリマーであってもよく、オリゴマー(オリゴ糖)であってもよいが、他の物質と融合させた複合体を調製する際の反応収率の観点からはオリゴマーであることが好ましい。そのようなオリゴマーとしては、ヘキサマーが例示される。当該キトサンは、分子内に抗キトサン抗体が結合するエピトープ配列(GlcN残基が繰り返し重合してなる配列)を有するキトサンであることが必要であり、その限りにおいてはGlcN残基のみを含むキトサンであってもよく、GlcN残基とGlcNAc残基を含むキトサンであってもよい。エピトープ配列において重合しているGlcN残基の数は、好ましくは3個又はそれ以上である。当該キトサンの脱アセチル化の程度(以下「脱アセチル化度」という。)は特に制限されないが、具体的には60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、100%等が例示される。脱アセチル化度は、高いことが好ましい。
キトサンの脱アセチル化度は、キトサンの骨格を構成するGlcN残基とGlcNAc残基の総数に対するGlcN残基の総数の割合を意味するものであり、言い換えると、GlcN残基の総数をGlcN残基とGlcNAc残基の総数で除して百分率換算した値を意味するものである。脱アセチル化度は、公知の方法、具体的には、例えば、核磁気共鳴(NMR)法、赤外線吸収スペクトル(IR)法、コロイド滴定法によって測定することができる。
抗キトサン抗体の作製に際して免疫される動物は、上記のキトサンによって免疫される。当該動物は、抗キトサン抗体の産生が可能な動物である限り特に制限されないが、本来的にキトサンを有さない動物であることが好ましい。そのような動物としては、哺乳類や鳥類が挙げられるが、鳥類であることが好ましく、ニワトリ(ガッルス・ガッルス・ドメスティクス(Gallus gallus domesticus))であることが特に好ましい。
抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよく、両者が混合されてなる抗体であってもよい。ポリクローナル抗体として得られる抗キトサン抗体は、例えば、動物に由来する成分や動物の細胞から得ることができ、具体的には、キトサンで免疫された動物の体液や卵等から得ることができる。ここにいう動物の体液としては、血液、血清、血漿、腹水等が例示される。また、モノクローナル抗体として得られる抗キトサン抗体は、例えば、キトサンで免疫された動物の抗体産生細胞と骨髄腫細胞のハイブリドーマや当該ハイブリドーマの培養液から得ることができる。
さらに、モノクローナル抗体として得られる抗キトサン抗体は、例えば、抗キトサン抗体の発現ベクターを用いて形質転換された細胞や当該細胞の培養液から得ることができる。当該細胞は、例えば、文献(WO2011/049082)に記載された方法やMammalian PowerExpress System(東洋紡社製)等の市販のキットを用いた方法により作製することができる。当該細胞は、一過性発現細胞であってもよく、安定発現細胞であってもよい。
抗体は、動物に由来する成分、動物の細胞、ハイブリドーマ細胞、ハイブリドーマ細胞の培養液をそのまま抗体として用いてもよいし、動物の細胞やハイブリドーマ細胞を破砕して得られる抽出液や細胞残渣を抗体として用いてもよいし、これらを精製して得られる画分を抗体として用いてもよい。細胞の破砕は、細胞の種類に応じて適宜選択した方法により行うことができる。細胞を破砕する方法としては、例えば、ホモジェナイズする方法、超音波処理する方法、凍結融解する方法、界面活性剤を添加する方法が挙げられる。
抗体の精製は、タンパク質の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。抗体の精製は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿や各種クロマトグラフィーにより行うことができる。また、抗体の精製は、例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインL等の抗体に結合する成分を用いて行うこともできる。抗体の精製は所望の程度に行われてよい。
2−3: 接合菌の種類
本発明において測定の対象となり得る接合菌の種類は特に限定されない。接合菌は、接合菌門(Zygomycota)に属する真菌として定義される。当該真菌としては、接合菌綱(Zygomycetes)、トリコミケス綱(Trichomycetes)に属する真菌が挙げられる。接合菌綱に属する真菌としては、ディマルガリス目(Dimargaritales)、アツギケカビ目(Endogonales)、ハエカビ目(Entomophthorales)、グロムス目(Glomales)、キックセラ目(Kickxellales)、ケカビ目(Mucorales)、トリモチカビ目(Zoopagales)に属する真菌が挙げられる。トリコミケス綱に属する真菌としては、アメビディウム目(Amoebidiales)、アセラリア目(Asellariales)、エクリナ目(Eccrinales)、ハルペラ目(Harpellales)に属する真菌が挙げられる。
上記の他、接合菌は、グロムス門(Glomeromycota)、ハエカビ亜門(Entomophthoromycotina)、キックセラ亜門(Kickxellomycotina)、ケカビ亜門(Mucoromycotina)、トリモチカビ亜門(Zoopagomycotina)に属する真菌としても定義される。グロムス門に属する真菌としては、グロムス綱(Glomeromycetes)に属する真菌が挙げられる。さらにグロムス綱に属する真菌としては、アーケオスポラ目(Archaeosporales)、ディバーシスポラ目(Diversisporales)、グロムス目(Glomerales)、パラグロムス目(Paraglomerales)に属する真菌が挙げられる。ハエカビ亜門に属する真菌としては、ハエカビ目(Entomophthorales)に属する真菌が挙げられる。キックセラ亜門に属する真菌としては、アセラリア目(Asellariales)、ディマルガリス目(Dimargaritales)、ハルペラ目(Harpellales)、キックセラ目(Kickxellales)に属する真菌が挙げられる。ケカビ亜門に属する真菌としては、アツギケカビ目(Endogonales)、クサレケカビ目(Mortierellales)、ケカビ目(Mucorales)に属する真菌が挙げられる。トリモチカビ亜門に属する真菌としては、トリモチカビ目(Zoopagales)に属する真菌が挙げられる。
前記ケカビ目に属する真菌としては、ケカビ科(Mucoraceae)、クスダマカビ科(Cunninghamellaceae)、サクセネア科(Saksenaeaceae)、エダケカビ科(Thamnidiaceae)に属する真菌が挙げられる。ケカビ科に属する真菌としては、アブシディア属(Absidia)、アポフィソマイセス属(Apophysomyces)、リヒテミア属(Lichtheimia)、ムーコル属(Mucor)、リゾムーコル属(Rhizomucor)、リゾプス属(Rhizopus)に属する真菌が挙げられる。クスダマカビ科に属する真菌としては、カニングハメラ属(Cunninghamella)に属する真菌が挙げられる。サクセネア科に属する真菌としては、サクセネア属(Saksenaea)に属する真菌が挙げられる。エダケカビ科に属する真菌としては、コケロマイセス属(Cokeromyces)に属する真菌が挙げられる。
さらに具体的にケカビ目に属する真菌としては、アブシディア・ブトレリ(Absidia butleri)、アブシディア・コリンビフェラ(Absidia corymbifera)、アポフィソマイセス・エレガンス(Apophysomyces elegans)、アポフィソマイセス・トラペジフォルミス(Apophysomyces trapeziformis)、リヒテミア・コリンビフェラ(Lichtheimia corymbifera)、ムーコル・サーシネロイデス(Mucor circinelloides)、ムーコル・プランベウス(Mucor plumbeus)、ムーコル・ラセモサス(Mucor racemosus)、ムーコル・ラモシシムス(Mucor ramosissimus)、ムーコル・ルーキシィ(Mucor rouxii)、リゾムーコル・プシラス(Rhizomucor pusillus)、リゾプス・アルヒズス(Rhizopus arrhizus)、リゾプス・ミクロスポラス(Rhizopus microspores)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・ストロニファー(Rhizopus stolonifer)、カニングハメラ・ベルトレティエ(Cunninghamella bertholletiae)、カニングハメラ・エキヌラタ(Cunninghamella echinulata)、サクセネア・バシフォルミス(Saksenaea vasiformis)、コケロマイセス・リカルバツス(Cokeromyces recurvatus)等が例示される。
前記ハエカビ目に属する真菌としては、ハエカビ科(Entomophthoraceae)、バシジオボルス科(Basidiobolaceae)に属する真菌が挙げられる。ハエカビ科に属する真菌としては、コニディオボルス(Conidiobolus)属に属する真菌が挙げられる。バシジオボルス科に属する真菌としては、バシジオボルス(Basidiobolus)属に属する真菌が挙げられる。
さらに具体的にハエカビ目に属する真菌としては、コニディオボルス・ブレフェルディアヌス(Conidiobolus brefeldianus)、コニディオボルス・コロナタス(Conidiobolus coronatus)、コニディオボルス・インコングルス(Conidiobolus incongruus)、コニディオボルス・ランプラゲス(Conidiobolus lamprauges)、バシジオボルス・メリストスポラス(Basidiobolus meristosporus)、バシジオボルス・ラナラム(Basidiobolus ranarum)等が例示される。
2−4: 他の工程と測定結果の導出
本発明の測定方法は、上述した試料の酸処理をする工程や接合菌成分の検出試薬と接合菌を接触させて接合菌を検知する工程(以下「接合菌の検知工程」という。)以外に、必要に応じて他の工程を含んでいてもよい。当該他の工程としては、酸処理を終了させるために酸処理をした試料を中性又は塩基性にする工程(中和工程)が挙げられる。酸処理を終了させる工程は、例えば、接合菌成分の検出試薬が酸性条件下での使用に適さない試薬である場合に好適に行われる。例えば、接合菌成分の検出試薬が抗体等のタンパク質である場合は、酸性条件下での使用がタンパク質の変性や接合菌成分との結合阻害等を引き起こす可能性があるため、接合菌の検知工程の前に中和工程が好適に行われてよい。
また、当該他の工程としては、接合菌の検知工程において得られる測定値を他の数値に変換する工程が挙げられる。当該他の工程は、例えば、濃度既知の標準物質と接合菌成分の検出試薬を接触させて測定した時に得られる測定値と標準物質の濃度との関係(標準曲線)に基づき、接合菌の検知工程において得られる測定値を試料が含有する接合菌の量又は数に変換する工程である。当該工程は、例えば、特に試料が動物に由来する試料である場合には、接合菌の検知工程において得られる測定値を接合菌症の進行度に変換する工程でもあってもよい。ここにいう「標準曲線」は、例えば、接合菌の測定が行われる試料を標準物質に置き換え、接合菌の検知工程を行うことにより得ることができる。当該標準物質としては、接合菌そのものを用いることも可能であるが、測定対象とする接合菌成分を用いることが実用上簡便である。測定対象とする接合菌成分としては、上述の通り、キトサンが挙げられる。接合菌そのものを標準物質として用いる場合には、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)等によって不活化された接合菌を用いることが安全上の理由から好適である。接合菌の検知工程において得られる測定値としては、蛍光光度計の測定値(蛍光強度)や分光光度計の測定値(吸光度)が挙げられる。
本発明の測定方法によれば、試料が含有する接合菌の測定を高感度に行うことができる。
本発明の測定方法によれば、例えば、試料が接合菌を含有するか否かを判定することや、試料が含有する真菌が接合菌であることを同定することができ、さらには接合菌の数の定量や接合菌症の進行度の定量化を行うことができる。すなわち、本発明の測定方法は、一態様において、試料が接合菌を含有するか否かを判定する方法、真菌が接合菌であるか否かを判定する方法、真菌症の起因菌が接合菌であるか否かを判定する方法、真菌症が接合菌症であるか否かを判定する方法、真菌症がムーコル症であるか否かを判定する方法、真菌症がエントモフトラ症であるか否かを判定する方法、接合菌の数を定量する方法、接合菌症の進行度を定量化する方法であってもよい。
3.本発明の試薬キット
本発明の試薬キットは、酸性成分を含有する試薬と接合菌成分の検出試薬のうち少なくとも一方を構成品として含む、接合菌測定用の試薬キットである。本発明の試薬キットは、一態様として、接合菌症の診断キット、ムーコル症の診断キット、又はエントモフトラ症の診断キットであってもよい。
本発明の試薬キットは、上記構成品以外に、さらに他の構成品を含んでいてもよい。上述のように、接合菌の測定態様に応じて他の構成品は適宜選択可能であり、例えば、接合菌成分の検出試薬を標識又は測定するための試薬、緩衝剤、中和剤、標準物質、マイクロプレート、プレートに固相化する抗原、ブロッキング剤、採血管、製品情報を記載した添付文書等が例示される。接合菌成分の検出試薬としては抗キトサン抗体、プレートに固相化する抗原や標準物質としてはキトサンが例示される。
本発明の試薬キットにおいて、各構成品は、それぞれ別個に含まれていてもよく、任意の組合せで共存させた状態で含まれていてもよい。例えば、酸性成分やこれを含有する試薬は、採血管に封入された形態で本発明の試薬キットに含まれていてもよい。また、例えば、接合菌成分の検出試薬やプレートに固相化する抗原は、緩衝剤との混合物として本発明の試薬キットに含まれていてもよく、マイクロプレートに固相化された状態の固相化プレートとして含まれていてもよい。
本発明の試薬キットを用いることにより、試料が含有する接合菌の測定を高感度かつ簡便に行うことができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本願の実施例において、ELISA法による測定は96ウェルマイクロプレート(以下単に「プレート」と略記する。)を用いて行った。プレートには、F96 MaxiSorp Nunc−Immuno Plate(ヌンク社製)を用いた。
<参考例1>抗キトサンポリクローナル抗体の作製
(1)免疫抗原の調製(キトサン−ウシ血清アルブミン複合体の調製)
動物を免疫する抗原には、キトサンヘキサマー(CTS6)にウシ血清アルブミン(BSA)を共有結合した複合体(以下「CTS6−BSA」という。)を用いた。CTS6−BSAの調製手順を以下に示す。
CTS6(生化学工業社製)を20mg/mLとなるように0.1M PBS(pH7.2)に溶解した溶液4mLを30分間撹拌した後、EMCS溶液(N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル(EMCS、ピアス社製)10.4mgをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)0.1mLに添加して調製)を添加して1時間撹拌し、マレイミド基を有するCTS6(以下「CTS6−MAL」という。)を調製した。この溶液をゲル濾過カラム(PD−10 Desalting Column、GEヘルスケア社製)にアプライし、溶出液を0.5mLに分画して回収した。移動相には0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。CTS6−MALの溶出画分は280nmの吸光度を指標として確認した。このようにしてCTS6−MAL(全量:3mL)を得た。
BSA(Armour Pharmaceuticals社製)を10mg/mLとなるように0.1M PBS(pH6.0)に溶解した溶液5mLにSPDP溶液(N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP、ピアス社製)10mgをDMF0.18mLに添加して調製)を添加して1時間撹拌した後、0.1M Tris−HCl(pH7.0)2mL、0.1Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(pH7.0)0.4mL、1M塩酸ヒドロキシルアミン(pH7.0)4mLを順に添加して4分間撹拌し、チオール基を有するBSA(以下「BSA−SH」という。)を調製した。この溶液をゲル濾過カラム(PD−10 Desalting Column)にアプライし、溶出液を0.5mLに分画して回収した。移動相には5mM EDTA/0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。BSA−SHの溶出画分は280nmの吸光度を指標として確認した。このようにしてBSA−SH(全量:6mL)を得た。
上記BSA−SHの溶液6mLを限外ろ過(セントリコン30、ミリポア社製)により3mLに濃縮した後、上記CTS6−MALの溶液3mLを添加して4℃で一晩撹拌し、CTS6−BSAを調製した。この溶液をゲル濾過カラム(PD−10 Desalting Column)にアプライし、溶出液を0.5mLに分画して回収した。移動相には0.1M PBS(pH7.2)を用いた。CTS6−BSAの溶出画分は280nmの吸光度を指標として確認した。このようにして得たCTS6−BSAの溶液を限外ろ過(セントリコン30)により20mg/mL(全量:1.3mL)に濃縮し、以後の試験に用いた。
(2)抗キトサンポリクローナル抗体の調製
抗キトサンポリクローナル抗体(CTSpAb)は、CTS6−BSAを用いてニワトリを免疫して調製した。CTSpAbの調製手順を以下に示す。
前記CTS6−BSAの溶液(20mg/mL)0.015mLに0.1M PBS(pH7.2)を0.485mL添加して懸濁した後、フロイント完全アジュバント(シグマ・アルドリッチ社製)を0.5mL添加してエマルジョンを形成させた。このエマルジョン全量をニワトリ(シェーバー種、2.5ヶ月齢)の腹腔へ投与して1次免疫した。初回免疫から4週間後、同様に調製したエマルジョンを再度腹腔へ投与して2次免疫した。抗体価の上昇を確認するため、初回免疫から1週間ごとに採血をし、キトサンに対する血清抗体価を後述する<参考例2>のELISA法で評価した。血清抗体価の上昇が観察されたニワトリに対し、前記CTS6−BSAの溶液(20mg/mL)0.015mLに0.1M PBS(pH7.2)を0.485mL添加して懸濁した溶液を静脈へ投与して3次免疫した。
初回免疫から12週間後(3次免疫から3週間後)のニワトリから全採血し、遠心後の上清を回収して血清を得た。このようにして得た血清を「抗キトサンポリクローナル抗体(CTSpAb)」として以後の実験に用いた。
<参考例2>抗キトサンポリクローナル抗体を用いたELISA法によるキトサンの測定
(1)結合法による測定
結合法により、CTSpAbのCTSに対する結合特異性を確認した。プレートに固相化する抗原には、キトサン(CTS、生化学工業社製、脱アセチル化度:80%以上)、グリコールキトサン(GCTS、MP Biomedicals社製、脱アセチル化度:76.2%)、又はエチレングリコールキチン(EGCTN、生化学工業社製)を用いた。
上記各種抗原に1%(v/v)酢酸を添加して2μg/mLとなるように調製した溶液をプレートに50μL/wellで添加し、4℃で一晩静置した。9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して洗浄する操作を2回繰り返した後、25%ブロックエース(BA、DSファーマバイオメディカル社製)/9.57mM PBS(pH7.5)を200μL/wellで添加して1時間静置し、上記各種抗原の固相化プレートを作成した。この固相化プレートに0.05% Tween−20/9.57mM PBS(pH7.5)(以下「PBS−T」という。)を300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、10%BA/PBS−Tで16000倍希釈したCTSpAbを100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、10%BA/PBS−Tで5000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗ニワトリIgY(IgG)(H+L)抗体(KPL社製)を100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、SureBlue Reserve TMB Microwell Peroxidase Substrate(以下「TMB試薬」という。KPL社製)を100μL/wellで添加して30分間静置し、続いて1N HClを100μL/wellで添加した。吸光度の測定はウェルリーダーMP−96(生化学工業社製)で行い、測定波長を450nm、対照波長を630nmに設定した。結果を表1に示す。
Figure 0006691534
表1に示した通り、キトサンで免疫したニワトリの血清(CTSpAb)はCTSに最も強い反応を示した。また、CTSpAbはGCTSには反応を示したが、EGCTNには反応を示さなかった。以上より、抗キトサンポリクローナル抗体(CTSpAb)は、キチンには反応を示さず、キトサンに特異性が高い抗体であることを確認した。
(2)競合法による測定
競合法により、CTSpAbのCTSに対する結合特異性を確認した。競合物質としてはCTS、GCTS、又はEGCTNを用いた。
CTSに1%(v/v)酢酸を添加して2μg/mLとなるように調製した溶液をプレートに50μL/wellで添加し、4℃で一晩静置した。9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して洗浄する操作を2回繰り返した後、25%BA/9.57mM PBS(pH7.5)を200μL/wellで添加して1時間静置し、CTSの固相化プレートを作成した。この固相化プレートにPBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、上記競合物質に10%BA/PBS−Tを添加して0.01〜10μg/mLとなるように調製した溶液又は10%BA/PBS−Tそのもの(競合物質を含まない)を100μL/wellで添加し、続いて10%BA/PBS−Tで16000倍希釈したCTSpAbを100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、10%BA/PBS−Tで5000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗ニワトリIgY(IgG)(H+L)抗体を100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、TMB試薬を100μL/wellで添加して30分間静置し、続いて1N HClを100μL/wellで添加した。吸光度の測定はウェルリーダーMP−96で行い、測定波長を450nm、対照波長を630nmに設定した。結果を表2に示す。
Figure 0006691534
表2は競合物質を添加しなかった場合の吸光度に対する吸光度の減少率を阻害率として百分率換算した結果である。表2に示した通り、CTSpAbはCTSやGCTSによってプレート上のCTSとの結合が阻害されたが、EGCTNによっては阻害されなかった。以上より、抗キトサンポリクローナル抗体(CTSpAb)は、キチンには反応を示さず、キトサンに特異性が高い抗体であることを競合法によっても確認した。
<参考例3>抗キトサンポリクローナル抗体が結合するキトサンオリゴ糖の分子サイズ
3〜6量体のCTSオリゴ糖(生化学工業社製)を競合物質とした競合ELISA法により、CTSpAbによる測定が可能なCTSの分子サイズを確認した。
CTSに1%(v/v)酢酸を添加して2μg/mLとなるように調製した溶液をプレートに50μL/wellで添加し、4℃で一晩静置した。9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して洗浄する操作を2回繰り返した後、25%BA/9.57mM PBS(pH7.5)を200μL/wellで添加して1時間静置し、CTSの固相化プレートを作成した。この固相化プレートにPBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、CTSオリゴ糖に10%BA/PBS−Tを添加して0.00064〜10μg/mLとなるように調製した溶液又は10%BA/PBS−Tそのもの(CTSオリゴ糖を含まない)を100μL/wellで添加し、続いて10%BA/PBS−Tで8000倍希釈したCTSpAbを100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、10%BA/PBS−Tで5000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗ニワトリIgY(IgG)(H+L)抗体を100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、TMB試薬を100μL/wellで添加して30分間静置し、続いて1N HClを100μL/wellで添加した。吸光度の測定はウェルリーダーMP−96で行い、測定波長を450nm、対照波長を630nmに設定した。結果を表3に示す。
Figure 0006691534
表3はCTSオリゴ糖を添加しなかった場合の吸光度に対する吸光度の減少率を阻害率として百分率換算した結果である。表3に示した通り、CTSpAbは3〜6量体のCTSオリゴ糖によってプレートに固相化したCTSとの結合が阻害された。以上より、抗キトサンポリクローナル抗体(CTSpAb)を用いたELISA法では、3量体以上の分子サイズを有するキトサンの測定が可能であることを確認した。
<参考例4>抗キトサンモノクローナル抗体の作製
抗キトサンモノクローナル抗体(CTSmAb)の作製は、文献(WO2011/049082)に記載された方法を参照して行った。CTSmAbの調製手順を以下に示す。
(1)ファージ抗体ライブラリーの作製
ファージ抗体ライブラリーの作製は、文献(nakamura et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul; 66(7): 807-14.)に記載された方法を参照して行った。
前記<参考例1>で全採血を行ったニワトリの脾臓から単離したリンパ球からRNAを抽出してcDNAを合成した後、PCRによって抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする遺伝子配列それぞれの増幅を行った。次に、重鎖の可変領域をコードする遺伝子配列と軽鎖の同配列を連結した遺伝子配列を一本鎖抗体(single chain variable fragment、scFv)の発現ベクター(ファージミドベクター)にクローニングした後、このベクターをファージ粒子にパッケージングした。そして、このファージ粒子を大腸菌に感染させてファージを増幅させた。このようにしてファージ抗体ライブラリーを作製した。
(2)ファージ抗体のスクリーニング
CTSに結合するファージ抗体のスクリーニングは、CTSを固相化したプレートを用いたパニングにより行った。
上記(1)で得たファージ抗体ライブラリーをCTSを固相化したプレートに添加した。プレートを洗浄した後、CTSに結合した大腸菌からファージを回収した。その後、このファージを大腸菌に再度感染させてファージを増幅させた。このようにして得たパニング後のファージ抗体ライブラリーをCTSを固相化試料として用いた結合ELISA法に供し、2次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG(H+L)抗体(KPL社製)を用いた時の吸光度を測定した。
上記の操作は、吸光度の上昇が認められるようになるまで繰り返し行った。
上記により得たファージをクローン化した後にGCTS又はEGCTNを固相化試料として用いた結合ELISA法に供し、CTSに特異的に結合する(CTS及びGCTSに結合し、EGCTNに結合しない)ファージのクローンを得た。
(3)抗キトサンモノクローナルIgY抗体の調製
抗キトサンモノクローナルIgY抗体の調製は、文献(Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep; 33(3): 169-74.)に記載された手法を参照して行った。
上記(2)で得たCTSに特異的に結合する抗体をコードするファージのクローンを鋳型としたPCRにより、重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする遺伝子配列それぞれの増幅を行った。その後、これらの遺伝子をIgY発現ベクターへクローニングした。そして、この発現ベクターを用いて形質転換したHEK293細胞を培養し、培養液を精製して、<参考例1>で得たポリクローナル抗体(CTSpAb)と同じエピトープを認識するモノクローナル抗体(CTSmAb)を得た。
<参考例5>HRP標識抗キトサンモノクローナル抗体の作製
ELISA法に用いる検出抗体には西洋わさびペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase、HRP)で標識したCTSmAb(HRP標識CTSmAb)を用いた。HRP標識CTSmAbはPeroxidase Labeling Kit−NH(同仁化学社製)を用いて調製した。HRP標識CTSmAbの調製手順を以下に示す。
Filtration Tubeに100μLのWashing BufferとCTSmAb(3.7mg/mL)54μLを順に添加して混合した後、8000×gで10分間遠心した。その後、Filtration Tubeに100μLのWashing Bufferを添加し、再度8000×gで10分間遠心した。
次に、HRP標識溶液(NH−Reactive Peroxidaseを10μLのReaction Bufferに溶解して調製)をFiltration Tubeに添加して混合した後、37℃に2時間静置した。その後、Filtration Tubeに100μLのWashing Bufferを添加し、8000×gで15分間遠心した。続いて、Filtration Tubeに200μLの保存溶液(5%BA/9.57mM PBS(pH7.5)/0.1% ProClin 950)を添加して混合し、全量を回収した。このようにしてHRP標識CTSmAbを得た。
<参考例6>菌体の調製
本願実施例の一部においては、培養により調製した菌体(以下「培養菌体」という。)を含有する試料を測定対象として接合菌の測定を行った。本願の実施例において、「菌体」の語は、真菌(Fungi)と真正細菌(Bacteria)を含む微生物の総称として使用される。培養菌体の調製に使用した菌体を表4に示す。
Figure 0006691534
表4に示した菌体のうち、Escherichia coli DH5αはタカラバイオ社から、その他菌体はアメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection, ATCC)、理化学研究所微生物材料開発室(Japan Collection of Microorganisms, JCM)、帝京大学医真菌研究センター(Teikyo University Institute of Medical Mycology, TIMM)、又は製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター(National Institute of Technology and Evaluation (NITE) Biological Resource Center, NBRC)から入手した。
表4に示した各種菌体を10mLのRPMI1640培地(Gibco社製)にそれぞれ植菌し、20〜44時間振盪培養した。培養する時の温度は、真正細菌は37℃、真菌は室温とした。培養は増殖曲線が静止期(定常期)に達したことを確認した後に終了した。このようにして得られた培養液から培地を除去し、菌体を回収した。
菌体を洗浄するため、上記で回収した菌体を洗浄液(生理食塩水(大塚製薬社製))に懸濁した後、洗浄液を除去し、菌体を再度回収した。当該洗浄の操作は2回繰り返して行った。
上記洗浄後の菌体のうち、真正細菌(グラム陰性菌、グラム陽性菌)を1mLの蒸留水(大塚製薬社製)に懸濁し、培養菌体の懸濁液を調製した。このようにして得た菌体の懸濁液を「培養菌体懸濁液」として以後の試験に用いた。
次に、培養菌体懸濁液と蒸留水を混合して10倍希釈する操作を吸光度の測定値がブランク値(蒸留水に対する吸光度)と同じになるまで繰り返し、培養菌体懸濁液の希釈液を調製した。このようにして得た希釈液を「培養菌体試料」として以後の試験に用いた。
また、上記洗浄後の菌体のうち、真菌(接合菌を含む)は培養により得られる菌体の凝集塊そのものを「培養菌体試料」として以後の試験に用いた。
<参考例7>不活化菌体の調製
本願の実施例の一部においては、作業上の安全確保の理由により、高圧蒸気滅菌により不活化した培養菌体(以下「不活化菌体」という。)を使用した。不活化菌体の調製手順を以下に示す。
上記<参考例6>で得た試料のうち、真正細菌は培養菌体懸濁液を、真菌は培養菌体試料を、それぞれ高圧蒸気滅菌(121℃、15分間)に供し、菌体を不活化した。次に、高圧蒸気滅菌により菌体の一部が形成する凝集塊を除去するため、低速度の遠心分離により凝集塊を沈殿させた後、上清から菌体の懸濁液を回収した。凝集塊はELISAにおいて抗原抗体反応を物理的に阻害する可能性があるため、これを除去した溶液(上清の菌体懸濁液)を以後の試験に用いた。このようにして得た不活化後の菌体懸濁液を「不活化菌体懸濁液」として以後の試験に用いた。
次に、不活化菌体懸濁液と蒸留水を混合して10倍希釈する操作を吸光度の測定値がブランク値(蒸留水に対する吸光度)と同じになるまで繰り返し、不活化菌体懸濁液の希釈液を調製した。このようにして得た希釈液を「不活化菌体試料」として以後の試験に用いた。
<参考例8>標準曲線
以下の手順に従い、CTS含有ヒト血清、及びCTS含有ウサギ血清を調製した。
CTSに1%(v/v)酢酸を添加して62.5ng/mLとなるように調製した溶液に対して等量の1%(v/v)酢酸を混合する操作を繰り返し、62.5〜3.9ng/mLのCTS希釈液を調製した。これらのCTS希釈液5μLにヒト血清又はウサギ血清を45μL混合して6.25〜0.39ng/mLのCTSを含有する標準試料を調製した。この試料を0.2M Tris−HCl(pH8.0)450μLと混合し、以後の試験に用いた。
CTSの測定はサンドイッチELISA法により行った。測定の手順を以下に示す。
CTSmAbを9.57mM PBS(pH7.5)で希釈して200ng/mLとなるように調製した溶液をプレートに100μL/wellで添加し、4℃で一晩静置した。9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して洗浄する操作を2回繰り返した後、25%BA/9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して2時間静置し、CTSmAbの固相化プレートを作成した。この固相化プレートにPBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、試料(CTS含有ヒト血清又はCTS含有ウサギ血清)を100μL/wellで添加して1時間静置した。続いて、プレートにPBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、10%BA/PBS−Tで80000倍希釈したHRP標識CTSmAbを100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、TMB試薬を100μL/wellで添加して30分間静置し、続いて1N HClを100μL/wellで添加した。吸光度の測定はウェルリーダーMP−96で行い、測定波長を450nm、対照波長を630nmに設定した。測定はプレートを37℃に加温した状態で行った。
上記測定の結果を表5に示す。
Figure 0006691534
表5に示した通り、同じキトサン濃度の試料を測定した場合の測定値は、ウサギ血清を用いた場合とヒト血清を用いた場合とで同等であった。ウサギ血清はヒト血清と比べて入手が容易であり、かつウイルス等への感染リスクが低減されることから、標準曲線の作成において好適に使用することができる。そこで以後の試験で使用する標準曲線は、ウサギ血清を用いて作成する場合がある。
<実施例1>真菌症等の感染症に罹患したヒトの血清を試料とした接合菌の測定
本願実施例の一部においては、真菌症等の感染症に罹患したヒトの血清を試料として接合菌の測定を行った。当該試料は帝京大学医真菌研究センター(Teikyo University Institute of Medical Mycology, TIMM)から入手した。
真菌症等の感染症に罹患したヒトの血清を試料とし、接合菌の測定を行った。接合菌の測定はCTSpAbを用いた競合ELISA法により行い、酸処理の有無による測定の結果の違いを比較した。
競合物質(測定対象試料)は以下の通りに調製した。
(a)ヒト血清(酸処理なし):
ヒト血清0.025mLに10%BA/PBS−Tを0.225mL添加して調製した。
(b)ヒト血清(酸処理あり):
ヒト血清0.022mLに終濃度で1%(175mM)となるように2%(v/v)酢酸を0.022mL添加して30秒間撹拌した後、10%BA/PBS−Tを0.176mL添加して調製した。この時、ヒト血清に酢酸を添加した時のpHは4.1であり、10%BA/PBS−Tを添加した後のpHは4.9であった。
CTSに1%(v/v)酢酸を添加して2μg/mLとなるように調製した溶液をプレートに50μL/wellで添加し、4℃で一晩静置した。9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して洗浄する操作を2回繰り返した後、25%BA/9.57mM PBS(pH7.5)を200μL/wellで添加して1時間静置し、CTSの固相化プレートを作成した。この固相化プレートにPBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、CTSpAbと競合物質(a)又は(b)の混合液(10%BA/PBS−Tで16000倍希釈したCTSpAbと競合物質を等量ずつ混合し、4℃で21時間静置して調製)を100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、10%BA/PBS−Tで5000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗ニワトリIgY(IgG)(H+L)抗体を100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、TMB試薬を100μL/wellで添加して30分間静置し、続いて1N HClを100μL/wellで添加した。吸光度の測定はウェルリーダーMP−96で行い、測定波長を450nm、対照波長を630nmに設定した。測定はプレートを37℃に加温した状態で行った。
上記測定の結果を図1と表6に示す。
Figure 0006691534
表6は酸処理なしのヒト血清(コージンバイオ社製)を競合物質として添加した場合の吸光度に対する吸光度の減少率を阻害率として百分率換算した結果である。図1と表6に示した通り、酸処理をしなかった場合はいずれのヒト血清もCTSpAbとプレートに固相化したCTSとの結合を阻害しなかったが、酸処理をした場合は接合菌症ではないヒトに由来する血清(検体番号:5〜9、健常人由来ヒト血清を含む)が10%以下の阻害率であったのに対し、接合菌症のヒトに由来する血清(検体番号:1〜4、検体はそれぞれ異なるヒトに由来する)は30%以上の阻害率を示し、顕著にCTSpAbとCTSとの結合を阻害した。以上より、血清に対して酸処理を行うことにより、試料が含有する接合菌の測定が可能になること、及び菌体として接合菌のみを特異的に検出できることを臨床検体において確認した。
<実施例2>ヒト血清を試料とした接合菌の測定(1)
以下の手順に従い、菌体を含有する試料(酸処理なし、酸処理あり)、菌体を含有しない試料(ブランク試料)、及び標準曲線の作成に用いるCTS標準液を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理なし):
不活化菌体試料25μLとヒト血清225μLを混合して調製した試料に対して2M Tris−HCl(pH8.0)を250μL混合した。
(b)菌体含有試料(酸処理あり):
不活化菌体試料25μLとヒト血清225μLを混合して調製した試料に対して5%(v/v)酢酸を62.5μL混合し、室温に1分間静置して酸処理を行った。その後、2M Tris−HCl(pH8.0)を187.5μL混合して中和し、酸処理を終了した。
(c)菌体不含試料(ブランク試料):
不活化菌体試料に代えて蒸留水を用い、上記(b)と同じ操作を行った。
(d)CTS標準液:
CTSに1%(v/v)酢酸を添加して200ng/mLとなるように調製した溶液に対して等量の1%(v/v)酢酸を混合する操作を繰り返し、200〜25ng/mLのCTS希釈液を調製した。これらのCTS希釈液25μLにウサギ血清225μLを混合して20〜2.5ng/mLのCTSを含有する標準試料を調製した。この試料を2M Tris−HCl(pH8.0)250μLと混合し、以後の試験に用いた。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。測定の手順を以下に示す。
CTSmAbに9.57mM PBS(pH7.5)を混合して0.2μg/mLとなるように調製した溶液をプレートに100μL/wellで添加し、4℃で一晩静置した。9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して洗浄する操作を2回繰り返した後、25%BA/9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して2時間静置し、CTSmAbの固相化プレートを作成した。この固相化プレートにPBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、試料を100μL/wellで添加して1時間静置した。その後、10%BA/PBS−Tで40000倍希釈したHRP標識CTSmAbを100μL/wellで添加して1時間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、TMB試薬を100μL/wellで添加して30分間静置し、続いて1N HClを100μL/wellで添加した。吸光度の測定はウェルリーダーMP−96で行い、測定波長を450nm、対照波長を630nmに設定した。測定はプレートを37℃に加温した状態で行った。
上記測定の結果を表7に示す。
Figure 0006691534
表7において、「+」は酸処理を行ったことを、「−」は酸処理を行わなかったことを意味する。またCTS濃度は、吸光度の測定値(平均値)から標準曲線を用いて算出されるCTS濃度への換算値である。
表7に示したとおり、真正細菌(グラム陰性菌)であるEscherichia coliを含有する試料の測定値は、酸処理の有無によらずブランク値以下であった。その一方、接合菌を含有する試料の測定値は、酸処理を行わない場合にはブランク値以下であったが、酸処理を行った場合にはブランク値以上の有意な値を示し、試料中にキトサンが存在すること、すなわち接合菌が存在することを確認できた。以上より、血清に対して酸処理を行うことにより、試料が含有する接合菌の測定が可能になること、及び菌体として接合菌のみを特異的に検出できることを臨床検体以外の試料においても確認した。
<実施例3>ヒト血清を試料とした接合菌の測定(2)
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、菌体を含有しない試料、及び標準曲線の作成に用いるCTS標準液を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
不活化菌体試料12.5μLとヒト血清112.5μLを混合して調製した試料に対して5%(v/v)酢酸を31.3μL混合し、室温に1分間静置して酸処理を行った。その後、0.8M Tris−HCl(pH8.0)を93.7μL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)菌体不含試料(ブランク試料):
不活化菌体試料に代えて蒸留水を用い、上記(a)と同じ操作を行った。
(c)CTS標準液:
CTSに1%(v/v)酢酸を添加して100ng/mLとなるように調製した溶液に対して等量の1%(v/v)酢酸を混合する操作を繰り返し、25〜1.56ng/mLのCTS希釈液を調製した。これらのCTS希釈液12.5μLにウサギ血清112.5μLを混合して2.5〜0.156ng/mLのCTSを含有する標準試料を調製した。この試料を0.8M Tris−HCl(pH8.0)250μLと混合し、以後の試験に用いた。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。サンドイッチELISA法はHRP標識CTSmAbの希釈倍率を80000倍に変更したことを除き、実施例2に記載した方法と同一の条件で行った。結果を表8に示す。
Figure 0006691534
表8に示したとおり、真正細菌(グラム陽性菌)であるStaphylococcus aureus、又は接合菌以外の真菌であるCandida albicansもしくはAspergillus fumigatusを含有する試料の測定値は、いずれもブランク値以下であった。その一方、接合菌を含有する試料の測定値は、ブランク値以上の有意な値を示し、試料中にキトサンが存在すること、すなわち接合菌が存在することを確認できた。以上より、血清に対して酸処理を行うことにより、試料が含有する接合菌の測定が可能になること、及び菌体として接合菌のみを特異的に検出できることを実施例2とは異なる接合菌(ムーコル属以外の接合菌)を含有する試料においても確認した。
以上、実施例2及び実施例3に示した通り、酸処理を行うことにより種々の菌体の中から接合菌のみを特異的に検出できることが分かった。また、ムーコル属の接合菌を含有する試料の測定値は、いずれも他の接合菌を含有する試料の測定値に比して高い値(CTS濃度への換算値において1ng/mL以上の値)を示した。よって、本発明において測定対象とする接合菌としては、ムーコル属の真菌が特に好適であることが示された。
また、実施例2及び実施例3に示した通り、測定法としてサンドイッチELISA法を用いた場合は、接合菌以外の菌体を含有する試料の測定値はいずれもブランク(菌体を含有しない試料)の測定値に対して有意差がない値を示し、キトサン濃度に換算した時にその値がゼロになることが分かった。一方、実施例1に示した通り、測定法として競合ELISA法を用いた場合は、接合菌以外の菌体を含有する試料の測定値もブランク(菌体を含有しない試料)の測定値よりも低い値を示したため、キトサン濃度に換算した時にその値がゼロとはならないことが分かり、健常人由来試料を陰性コントロールとして同時に測定することが必須であることが分かった。すなわち、本発明においてELISA法を用いる場合は、サンドイッチELISA法を用いることが測定の利便性の観点から好適であることが分かった。
<実施例4>酸の種類の検討
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び菌体を含有しない試料を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
不活化菌体試料2.5μLとヒト血清22.5μLを混合して調製した試料に対して2%(v/v)の酸(硫酸、塩酸、ギ酸、又はリン酸)又は2%(w/v)の酸(クエン酸)を25μL混合し、室温に1分間静置して酸処理を行った。その後、0.4M Tris−HCl(pH8.0)を200μL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)菌体不含試料(ブランク試料):
不活化菌体試料に代えて蒸留水を用い、上記(a)と同じ操作を行った。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。サンドイッチELISA法は実施例3に記載した方法と同一の条件で行った。結果を表9に示す。
Figure 0006691534
表9において、酸処理を行っている時(酸処理時)の酸の濃度、すなわち、試料に対して酸を混合した時(中和処理を行う前)における当該酸のモル濃度は、硫酸においては180mM、塩酸においては120mM、ギ酸においては260mM、クエン酸においては52mM、リン酸においては146mMである。
表9に示したとおり、酢酸以外を用いて酸処理を行った場合においても、接合菌以外の菌体を含有する試料の測定値はいずれもブランク値以下であった。その一方、接合菌を含有する試料の測定値は、酢酸を用いて酸処理を行った場合と同様に、ブランク値以上の有意な値を示し、試料中にキトサンが存在すること、すなわち接合菌が存在することを確認できた。以上より、血清に対して酸処理を行うことにより、試料が含有する接合菌の測定が可能になること、及び菌体として接合菌のみを特異的に検出できることを、酢酸以外の酸を用いた酸処理を行った場合においても確認した。
<実施例5>酸処理する時間の検討
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び菌体を含有しない試料を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
不活化菌体試料5μLとヒト血清45μLを混合して調製した試料に対して2%(v/v)酢酸を50μL混合し、室温に所定時間(10分間、1時間、又は2時間)静置して酸処理を行った。その後、0.4M Tris−HCl(pH8.0)を200μL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)菌体不含試料(ブランク試料):
不活化菌体試料に代えて蒸留水を用い、上記(a)と同じ操作を行った。
(c)CTS標準液:
実施例3に記載した手順に従い調製した。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。サンドイッチELISA法は実施例3に記載した方法と同一の条件で行った。結果を表10に示す。
Figure 0006691534
表10に示したとおり、酸処理する時間には依存せず、試料が含有する接合菌の測定が可能であった。
<実施例6>酸処理する温度の検討
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び菌体を含有しない試料を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
不活化菌体試料5μLとヒト血清45μLを混合して調製した試料に対して2%(v/v)酢酸を50μL混合し、所定の温度(室温(25℃)、37℃、50℃、又は70℃)に10分間静置して、試料自体を各設定温度にして酸処理を行った。その後、0.4M Tris−HCl(pH8.0)を400μL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)菌体不含試料(ブランク試料):
不活化菌体試料に代えて蒸留水を用い、上記(a)と同じ操作を行った。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。サンドイッチELISA法は実施例3に記載した方法と同一の条件で行った。結果を表11に示す。
Figure 0006691534
表11に示したとおり、酸処理する時の温度には依存せず、試料が含有する接合菌の測定が可能であった。
<実施例7>酸処理時のpHの検討(1)
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び標準曲線の作成に用いるCTS標準液を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
1mm四方の培養菌体試料(Cunninghamella bertholletiae)にヒト血清0.5mLと蒸留水0.5mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去した。次に、ヒト血清0.45mLと蒸留水0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去する操作を2回繰り返した。続いて、ヒト血清0.45mLと酢酸(2%、1%、0.4%、又は0.1%)0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、室温に5分間静置して酸処理を行った。その後、遠心後の上清0.1mLに0.4M Tris−HCl(pH8.0)を0.4mL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)菌体含有試料(酸処理なし):
酢酸に代えて蒸留水を用い、上記(a)と同じ操作を行った。
(c)CTS標準液:
CTSに1%(v/v)酢酸を添加して1000ng/mLとなるように調製した溶液に対して等量の1%(v/v)酢酸を混合する操作を繰り返し、1000〜15.625ng/mLのCTS希釈液を調製した。これらのCTS希釈液0.1mLにヒト血清0.9mLを混合して100〜1.5625ng/mLのCTSを含有する標準試料を調製した。この試料を0.4M Tris−HCl(pH8.0)0.4mLと混合し、以後の試験に用いた。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。測定の手順を以下に示す。
CTSmAbに9.57mM PBS(pH7.5)を混合して1μg/mLとなるように調製した溶液をプレートに100μL/wellで添加し、4℃で一晩静置した。9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して洗浄する操作を2回繰り返した後、25%BA/9.57mM PBS(pH7.5)を300μL/wellで添加して2時間静置し、CTSmAbの固相化プレートを作成した。この固相化プレートにPBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、試料を100μL/wellで添加して30分間静置した。その後、10%BA/PBS−Tで80000倍希釈したHRP標識CTSmAbを100μL/wellで添加して30分間静置した。PBS−Tを300μL/wellで添加して洗浄する操作を4回繰り返した後、TMB試薬を100μL/wellで添加して15分間静置し、続いて1N HClを100μL/wellで添加した。吸光度の測定はウェルリーダーMP−96で行い、測定波長を450nm、対照波長を630nmに設定した。測定はプレートを37℃に加温した状態で行った。
上記測定の結果を表12に示す。
Figure 0006691534
表12において、「酢酸濃度」は試料と酢酸を混合した時(酸処理時)における酢酸の終濃度を、「酸処理時pH」は酸処理時における試料溶液のpHを、それぞれ示している。
表12に示したとおり、pHが6.5又はそれ以上の場合には酸処理による接合菌の測定の高感度化は認められなかったが、pHが6.5未満の場合には酸処理による接合菌の測定の高感度化が可能であることが示唆された。具体的には、5以下のpHにおいて酸処理による接合菌の測定の高感度化が可能であることが確認された。
<実施例8>酸処理時のpHの検討(2)
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び標準曲線の作成に用いるCTS標準液を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
1mm四方の培養菌体試料(Rhizopus oryzae)にヒト血清0.5mLと蒸留水0.5mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去した。次に、ヒト血清0.45mLと蒸留水0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去する操作を2回繰り返した。続いて、ヒト血清0.45mLと塩酸(0.5N、0.1N、又は0.05N)0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、室温に5分間静置して酸処理を行った。その後、遠心後の上清0.1mLに0.4M Tris−HCl(pH8.0)を0.4mL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)菌体含有試料(酸処理なし):
塩酸に代えて蒸留水を用い、上記(a)と同じ操作を行った。
(c)CTS標準液:
実施例7に記載した手順に従い調製した。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。サンドイッチELISA法は実施例7に記載した方法と同一の条件で行った。結果を表13に示す。
Figure 0006691534
表13において、「塩酸濃度」は試料と塩酸を混合した時(酸処理時)における塩酸の終濃度を、「酸処理時pH」は酸処理時における試料溶液のpHを、それぞれ示している。
表13に示したとおり、酸処理時pHの下限は特に制限されず、0以上の任意のpHにおいて酸処理による接合菌の測定の高感度化が可能であることが示唆された。具体的には、0.7以上のpHにおいて酸処理による接合菌の測定の高感度化が可能であることが確認された。また、5.2以下のpHにおいて酸処理による接合菌の測定の高感度化が可能であることが確認された。
以上の実施例7及び実施例8の結果より、接合菌の測定が高感度化される酸処理時pHの範囲は、0〜6、より好ましくは0.5〜6又は0〜5.5、さらに好ましくは0.5〜5.5であることが示された。
<実施例9>ヒト血清を試料とした接合菌の測定(3)
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び標準曲線の作成に用いるCTS標準液を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
1mm四方の培養菌体試料(Cunninghamella bertholletiae、及びBasidiobolus ranarum)にヒト血清0.5mLと蒸留水0.5mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去した。次に、ヒト血清0.45mLと蒸留水0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去する操作を2回繰り返した。続いて、ヒト血清0.45mLと2%(v/v)酢酸0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、室温に5分間静置して酸処理を行った。その後、遠心後の上清0.1mLに0.4M Tris−HCl(pH8.0)を0.4mL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)CTS標準液:
実施例7に記載した手順に従い調製した。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。サンドイッチELISA法は実施例7に記載した方法と同一の条件で行った。結果を表14に示す。
Figure 0006691534
表14に示したとおり、酸処理はムーコル目の接合菌(Cunninghamella bertholletiae)のみならず、エントモフトラ目の接合菌(Basidiobolus ranarum)に対しても有効であった。
<実施例10>ヒト血清を試料とした接合菌の測定(4)
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び標準曲線の作成に用いるCTS標準液を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
1mm四方の培養菌体試料(Cunninghamella bertholletiae)にヒト血清0.5mLと蒸留水0.5mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去した。次に、ヒト血清0.45mLと蒸留水0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去する操作を2回繰り返した。続いて、ヒト血清0.45mLと酢酸(100%(v/v)酢酸0.01mL、25%(v/v)酢酸0.04mL、10%(v/v)酢酸0.1mL、又は2%(v/v)酢酸0.45mL)を添加して30秒間撹拌した後、室温に5分間静置して酸処理を行った。全量1mLとなるように蒸留水を混合した後、遠心後の上清0.1mLに0.4M Tris−HCl(pH8.0)を0.4mL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)CTS標準液:
実施例7に記載した手順に従い調製した。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。サンドイッチELISA法は実施例7に記載した方法と同一の条件で行った。結果を表15に示す。
Figure 0006691534
表15において、「酢酸濃度」は酸処理のために試料に添加した酢酸の濃度を、「添加量」は酸処理のために試料に添加した酢酸の量を、「血清濃度」は酸処理時におけるヒト血清の濃度を、「酸処理時pH」は酸処理時における溶液のpHを、それぞれ示している。
表15に示したとおり、酸処理時におけるヒト血清の濃度に依らず、試料中にキトサンが存在すること、すなわち接合菌が存在することを確認できた。よって、本発明においては、試料を水等の溶媒によって希釈する前処理は必要とせず、試料(例えば、ヒト血清)をそのまま酸処理に供することが可能であることを確認できた。
<実施例11>ヒト血清を試料とした接合菌の測定(5)
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び菌体を含有しない試料を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
不活化菌体試料(Mucor racemosus)8μLとヒト血清72μLを混合して調製した試料に対して5%(v/v)酢酸を20μL混合し、室温に5分間静置して酸処理を行った。その後、0.8M Tris−HCl(pH8.0)を60μL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)菌体含有試料(酸処理なし):
酢酸に代えて蒸留水を用い、上記(a)と同じ操作を行った。
CTSmAbが結合したラテックス粒子の溶液(CTSmAb感作ラテックス液)は、市販のキット(IMMUTEX P0307(JSR社製))を用い、添付文書に記載された方法に従って調製した。調製の手順を以下に示す。
免疫診断用ポリマー粒子溶液125μL、20mM MES−NaOH(pH6.0、420μL)、CTSmAb(3.7mg/mL、25μL)を混合した溶液を室温に1時間静置した。この混合液に1%EDC・HCl(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)溶液12.5μL混合し、室温に1時間静置した。この混合液を15,000×gで30分間遠心し、上清を除去してポリマー粒子を回収した。この粒子と0.5mLの25%Block Aceを混合した後、超音波処理をした。この混合液を15,000×gで30分間遠心し、上清を除去してポリマー粒子を再度回収した。この粒子と0.5mLのR2 Bufferを混合した後、超音波処理をした。この混合液を室温に1時間静置した後、再度超音波処理をして粒子を分散させた。その後、この混合液を37℃に20時間静置した。このようにして得た混合液を「CTSmAb感作ラテックス液」として以後の試験に用いた。
接合菌の測定はラテックス凝集法により行った。測定の手順を以下に示す。
試料75μLを反応板(セロダイレクト‘栄研’クリプトコックス、栄研化学社製)の1区画に滴下して区画内に広げた後、CTSmAb感作ラテックス液25μLを滴下した。この反応板を水平回転振盪器で10分間振盪して試料とラテックス液を混合した後、凝集塊の有無を目視で確認した。
上記試験の結果、酸処理した試料は凝集塊を生成するが、酸処理をしていない試料は凝集塊を生成しないことを確認した。すなわち、接合菌の測定は凝集法によっても可能であることが確認された。よって、抗体が結合したラテックス等の粒子を使用する他の測定法(比濁法、比ろう法等)によっても接合菌の測定が可能であることは、当業者に容易に理解される。さらに、抗体を使用する測定法であって、酵素免疫測定法や凝集法以外の測定法(イムノクロマト法、イムノブロット法等)によっても接合菌の測定が可能であることも、当業者に容易に理解される。
<実施例12>ヒト血清以外を試料とした接合菌の測定
以下の手順に従い、菌体を含有する試料、及び標準曲線の作成に用いるCTS標準液を調製した。
(a)菌体含有試料(酸処理あり):
1mm四方の培養菌体試料(Rhizopus oryzae、又はCunninghamella bertholletiae)に血漿等(ヒト血漿(コスモバイオ社製)、ウマ血清(コスモバイオ社製)、ウシ血清(日本バイオテスト研究所社製)、ウサギ血清(コージンバイオ社製)、又は生理食塩水(大塚製薬社製))0.5mLと蒸留水0.5mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去した。次に、血漿等0.45mLと蒸留水0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、遠心後の上清から0.9mLを除去する操作を2回繰り返した。続いて、血漿等0.45mLと2%(v/v)酢酸0.45mLを添加して30秒間撹拌した後、室温に5分間静置して酸処理を行った。その後、遠心後の上清0.1mLに0.4M Tris−HCl(pH8.0)を0.4mL混合して中和し、酸処理を終了した。
(b)CTS標準液:
実施例7に記載した手順に従い調製した。
接合菌の測定はサンドイッチELISA法により行った。サンドイッチELISA法は実施例7に記載した方法と同一の条件で行った。結果を表16に示す。
Figure 0006691534
表16に示したとおり、ヒト血清以外の試料を対象とした場合においても接合菌の測定が可能であることを確認した。特に、生理食塩水を試料とした場合において接合菌の測定が可能であったことから、本発明において接合菌の測定を行う試料は気管支肺胞洗浄液(BALF)であってもよいことが示された。よって、本発明において測定の対象となる試料は、接合菌を含有し得る物質である限り特に制限されないことが示された。
本発明によれば、試料が含有する接合菌の測定を高感度に行うことができる。よって、本発明は、ムーコル症やエントモフトラ症等の接合菌症の早期診断に有用な血清学的診断を実現する手段として活用することができる。
日本国特許出願第2015−063887号(出願日:2015年3月26日)の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが、具体的かつ個々に記された場合と同程度に参照により本明細書に取り込まれる。

Claims (12)

  1. 下記の工程(1)及び(2)を含む、接合菌の測定方法:
    (1)動物に由来する試料を含む液状の試料を、酸処理によりpH6以下とする工程、
    (2)免疫測定法により、上記(1)の試料中のキトサンを測定する工程。
  2. 酸処理が、酸性成分と試料を共存させる処理である、請求項1に記載の接合菌の測定方法。
  3. 免疫測定法が、キトサンに結合する抗体を用いた免疫測定法である、請求項1又は2に記載の接合菌の測定方法。
  4. 前記試料が、喀痰、脳脊髄液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔吸引液、腹水、生検検体、血液由来試料、及び気管支肺胞洗浄液(BALF)からなる群から選ばれる試料を含む試料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合菌の測定方法。
  5. 血液由来試料が、血清又は血漿である、請求項に記載の接合菌の測定方法。
  6. キトサンの測定が、免疫測定法を行うためのキトサンの検出試薬を用いたキトサンの測定である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接合菌の測定方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の接合菌の測定方法を行い、被験動物が接合菌症に罹患しているか否かを診断するためのデータを取得する、接合菌症を診断するためのデータ取得方法。
  8. 接合菌症が、ムーコル症又はエントモフトラ症である、請求項7に記載のデータ取得方法
  9. 酸性成分を含有する試薬及び免疫測定法を行うためのキトサンの検出試薬を構成品として含む、請求項6に記載の接合菌の測定方法を行うための試薬キット。
  10. 酸性成分を含有する試薬及び免疫測定法を行うためのキトサンの検出試薬を構成品として含む、請求項7又は8の接合菌症を診断するためのデータ取得方法を行うための試薬キット
  11. 試薬キットが、接合菌症の診断キットである、請求項9又は10に記載の試薬キット。
  12. 接合菌症が、ムーコル症又はエントモフトラ症である、請求項11に記載の試薬キット。
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