JP2012149896A - ブドウ球菌の抗原抽出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルカリ水溶液抽出よりも層効率よく、かつ各毒素も検出可能な多剤耐性ブドウ球菌の抗原を抽出する方法を提供すること。また、抽出して得られたタンパクを抗原として免疫反応で検出する方法を提供すること。
【解決手段】ブドウ球菌の抗原を酸性条件下で抽出する。抽出は界面活性剤の存在下に行うことが好ましい。抽出条件はpH3以下、温度が室温から沸点条件下で、15秒から60分行うことが好ましい。
本発明により、ブドウ球菌の毒素、もしくはβ−ラクタム薬耐性を司るタンパク(PBP2’)を迅速簡便に効率よく抽出することができる。また、毒素を検出することができる。本発明により、抽出された毒素やPBP2’を含むタンパクは抗原として抗原抗体反応を利用した免疫測定に利用できる。
【選択図】なし
【解決手段】ブドウ球菌の抗原を酸性条件下で抽出する。抽出は界面活性剤の存在下に行うことが好ましい。抽出条件はpH3以下、温度が室温から沸点条件下で、15秒から60分行うことが好ましい。
本発明により、ブドウ球菌の毒素、もしくはβ−ラクタム薬耐性を司るタンパク(PBP2’)を迅速簡便に効率よく抽出することができる。また、毒素を検出することができる。本発明により、抽出された毒素やPBP2’を含むタンパクは抗原として抗原抗体反応を利用した免疫測定に利用できる。
【選択図】なし
Description
本発明は、ブドウ球菌の抗原抽出法に関する。
ブドウ球菌は基本的に化膿をおこす化膿菌であるが、同時に多くの毒素を産生する強毒菌でもある。これらの毒素であるenterotoxinはSET−RPLA「生研」(デンカ生研株式会社)で、toxic shock syndrome toxin−1(TSST−1)はTST−RPLA「生研」(同)で、exofoliative toxin はEXT−RPLA「生研」(同)で、液体培養での培養液上清が用いられて測定されているが、寒天培地に生育したコロニーからの検出はおこなわれていない。液体培養は寒天培地を使った菌株の単離培養後に実施されるため、液体培養法では20時間程度の遅れが生じる。
近年、抗菌薬に対して抵抗性を有するブドウ球菌が問題となってきている。抗菌薬耐性ブドウ球菌のうち、β−ラクタム薬耐性に関与する遺伝子はmec遺伝子であり、そのタンパクはpenicillin−binding protein(PBP)2’である。このmec遺伝子、もしくはPBP2’が検出されればmethicillin耐性株(MR株)として扱われ、検出されない株はmethicillin感性株(MS株)として扱われる。このPBP2’を保有するブドウ球菌はβ−ラクタム薬に耐性を有する。
現状の臨床現場で、この耐性を確認する方法は、従来法の抗菌薬感受性試験か、遺伝子そのものを核酸増幅法で検出する方法、さらにPBP2’自体を抗原抗体反応で検出するスライドラテックス凝集反応のPBP2’検出用キットMRSA−LA「生研」(デンカ生研株式会社)による方法がある。これらの検出は寒天培地を使った菌株の単離培養時のコロニーを用いて行うことができる。特に、このPBP2’の検出法に関する重要性は特許文献1に詳細に述べられていると同時に、PBP2’をアルカリ条件下で安定に感度良く抽出(アルカリ抽出法)でき、それを抗原としてスライドラテックス凝集法で検出できる事が記載されている。
ブドウ球菌が抗菌薬耐性か否かを判定することは、医療現場において極めて重要である。前記特許文献1においては、多剤耐性ブドウ球菌の抗原をアルカリ水溶液で抽出し、免疫測定法により検出又は定量している。この方法は優れた方法ではあるものの、さらに一層効率よく抽出する方法が望まれている。また、この方法では、各毒素を検出することはできない。
従って、本発明の目的は、アルカリ水溶液抽出よりも効率よく、かつ各毒素も検出可能な多剤耐性ブドウ球菌の抗原を抽出する方法を提供することである。また、抽出して得られたタンパクを抗原として免疫反応で検出する方法を提供することである。
従って、本発明の目的は、アルカリ水溶液抽出よりも効率よく、かつ各毒素も検出可能な多剤耐性ブドウ球菌の抗原を抽出する方法を提供することである。また、抽出して得られたタンパクを抗原として免疫反応で検出する方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、酸性水溶液を抽出液として使用すること、さらに特定の界面活性剤を含有する酸性水溶液を抽出液として使用することで一層効率よく上記本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
1.ブドウ球菌の抗原を酸性条件下で抽出することから成る、ブドウ球菌抗原の抽出方法。
2.ブドウ球菌の抗原を界面活性剤含有の酸性条件下で抽出することから成る、ブドウ球菌抗原の抽出方法。
3.酸性条件がpH3以下である前記1又は2記載の抽出方法。
4.抽出液を室温から沸点条件下で15秒から60分で抽出する前記1、2又は3の抽出方法。
5.前記1から4のいずれか1項で得られたタンパクを抗原として免疫反応で検出する方法。
即ち、本発明は以下のとおりである。
1.ブドウ球菌の抗原を酸性条件下で抽出することから成る、ブドウ球菌抗原の抽出方法。
2.ブドウ球菌の抗原を界面活性剤含有の酸性条件下で抽出することから成る、ブドウ球菌抗原の抽出方法。
3.酸性条件がpH3以下である前記1又は2記載の抽出方法。
4.抽出液を室温から沸点条件下で15秒から60分で抽出する前記1、2又は3の抽出方法。
5.前記1から4のいずれか1項で得られたタンパクを抗原として免疫反応で検出する方法。
本発明により、ブドウ球菌の毒素、もしくはβ−ラクタム薬耐性を司るタンパク(PBP2’)を迅速簡便にアルカリ抽出法よりも効率よく抽出する方法を提供することができる。また、毒素を検出することができる。
本発明の方法においては、具体的には、ブドウ球菌の抗原をアレニウス酸、ブレンステッド酸、ルイス酸、無機酸等の化学的特徴を有する酸性の水溶液で抽出する。これらの酸を例示すれば、無機酸である塩酸、硝酸、過塩素酸、硫酸、ホウ酸、リン酸、フッ化水素酸等、さらに有機酸としてカルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、チオール基、エノール基を有す有機化合物等である。好ましくは塩酸、リン酸、硫酸、硝酸である。
抗原の抽出に使用する水溶液はpH5.0以下で実施可能であるが、好ましくはpH3.0以下が望ましい。さらにこの水溶液と菌液の混合物のpHが3.0以下であることが望ましい。また用いる酸の濃度は0.01Mから1.0Mが好ましい。
抗原の抽出に使用する水溶液はpH5.0以下で実施可能であるが、好ましくはpH3.0以下が望ましい。さらにこの水溶液と菌液の混合物のpHが3.0以下であることが望ましい。また用いる酸の濃度は0.01Mから1.0Mが好ましい。
抽出液は界面活性剤を含有していることが好ましい。界面活性剤としては、Brij58,Brij35,Tween20,Tween40,Tween60,TritonX100,TritonX114,NP−40,n−オクチル−β−D−グルコピラノシドなどの非イオン系界面活性剤、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム,デオキシコール酸ナトリウム,コール酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、CHAPS,CHAPSOなどの両イオン性界面活性剤が例示できるが、界面活性作用を有す化合物であればいずれでも構わない。好ましい界面活性剤は、Brij58,TritonX100,Tween20である。界面活性剤の濃度は、例えば0.001〜5%、好ましくは0.01〜0.5%である。
抗原の抽出温度は室温から100℃が好ましく、抽出時間は1分から60分が好ましい。
抗原の抽出温度は室温から100℃が好ましく、抽出時間は1分から60分が好ましい。
本発明による抽出の対象となる試料は、抗菌薬耐性ブドウ球菌抗原の存在の有無を判定する必要がある試料であれば特に制限はないが、本発明の目的に鑑みると、好ましくは寒天培地等の個体培地に生育したコロニーである。
本発明を実施するには、例えば、検体中に含まれる菌を寒天培地で培養し、得られた菌体を酸性条件下好ましくは界面活性剤含有の酸性条件下に懸濁して抗原を抽出する。
上記の方法で抽出された抗原、細胞壁合成酵素のPBP2’や毒素であるTSST−1やエンテロトキシンをそれぞれの抗体を用いて、既存の免疫測定方法であるラテックス凝集法、酵素免疫測定方法、フローサイトメトリー法、ウェスタンブロット法、Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)法、イムノクロマト法等で検出や測定することが出来る。
免疫測定時には測定に適したpHに調整するために、適切なpH緩衝液やアルカリ溶液を用いて中性近辺にpHを調整することが好ましい。
上記の方法で抽出された抗原、細胞壁合成酵素のPBP2’や毒素であるTSST−1やエンテロトキシンをそれぞれの抗体を用いて、既存の免疫測定方法であるラテックス凝集法、酵素免疫測定方法、フローサイトメトリー法、ウェスタンブロット法、Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)法、イムノクロマト法等で検出や測定することが出来る。
免疫測定時には測定に適したpHに調整するために、適切なpH緩衝液やアルカリ溶液を用いて中性近辺にpHを調整することが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1.ELISA法によるPBP2’の検出
(1)試験菌液の調整方法
血液寒天培地を用いて、MRSA70,MRSA92−1191、MSSAFDA209P,MSSA臨床分離株No.6を35℃で一晩培養した。得られた菌体を滅菌精製水に懸濁し、578nmにおける濁度を2.0に調整した。MSSAとMRSAの確認はPCR法によるmec遺伝子の検出で行った。
(2)既存方法であるアルカリ加熱処理による抗原抽出
調製した菌懸濁液100μLと0.2MNaOH100μLを混合し、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、2.5%BSAを含む0.5MKH2PO450μLを加えて中和した。
(1)試験菌液の調整方法
血液寒天培地を用いて、MRSA70,MRSA92−1191、MSSAFDA209P,MSSA臨床分離株No.6を35℃で一晩培養した。得られた菌体を滅菌精製水に懸濁し、578nmにおける濁度を2.0に調整した。MSSAとMRSAの確認はPCR法によるmec遺伝子の検出で行った。
(2)既存方法であるアルカリ加熱処理による抗原抽出
調製した菌懸濁液100μLと0.2MNaOH100μLを混合し、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、2.5%BSAを含む0.5MKH2PO450μLを加えて中和した。
(3)既存方法であるアルカリ室温処理による抗原抽出
(1)で調製した菌懸濁液100μLと0.4MNaOH100μLを混合し、室温で3分間放置した。その後、2.5%BSAを含む1MKH2PO450μLを加えて中和した。
(4) 本発明である酸加熱処理による抗原抽出
(1)で調製した菌懸濁液100μLと0.02%Brij58を含む0.2MHCl100μLを混合し(pH1.1)、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、2.5%BSAを含む1MK2HPO450μLを加えて中和した。
(5)本発明である酸室温処理による抗原抽出
(1)で調製した菌懸濁液100μLと0.2%TritonX100を含む0.2MHCl100μLを混合し(pH1.1)、室温で3分間放置した。その後、2.5%BSAを含む1MK2HPO450μLを加えて中和した。
(1)で調製した菌懸濁液100μLと0.4MNaOH100μLを混合し、室温で3分間放置した。その後、2.5%BSAを含む1MKH2PO450μLを加えて中和した。
(4) 本発明である酸加熱処理による抗原抽出
(1)で調製した菌懸濁液100μLと0.02%Brij58を含む0.2MHCl100μLを混合し(pH1.1)、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、2.5%BSAを含む1MK2HPO450μLを加えて中和した。
(5)本発明である酸室温処理による抗原抽出
(1)で調製した菌懸濁液100μLと0.2%TritonX100を含む0.2MHCl100μLを混合し(pH1.1)、室温で3分間放置した。その後、2.5%BSAを含む1MK2HPO450μLを加えて中和した。
(6)上記抽出法で得られたPBP2’抗原を用いたELISA法による測定
10mM 炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)で0.5μg/mLに調製した、抗PBP2’モノクローナル抗体1G12を50μLずつ96穴プレートに添加し、室温にて2時間穏やかに振盪(600r/min)した。10mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)で洗浄後、0.5%ブロックエース含有10mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)を100μLずつ添加し、室温にて2時間穏やかに振盪することでブロッキングを行った。
続いて、0.2MNaCl,0.1%TritonX100を含む50mMTris−HCl(pH7.0)で洗浄後、(2)〜(5)で調製した抗原抽出液を0.2MNaCl,0.1%TritonX100,1%BSAを含む50mMTris−HCl(pH7.0)で8倍希釈した溶液を50μLずつ添加し、4℃で一晩反応させた。
翌日、同様に洗浄後、25ng/mLに調製したビオチン化抗PBP2’モノクローナル抗体10G2を50μLずつ添加し、室温にて1.5時間穏やかに振盪した。洗浄後、1万倍希釈したHRP標識ストレプトアビジンを50μLずつ添加し、室温にて1時間穏やかに振盪した。
洗浄後、テトラメチルベンジジン発色液を50μLずつ添加し、室温にて10分間発色させたのち、1Mリン酸を50μLずつ添加することで発色を停止させ、450nmにおける吸光度を測定した。結果を表1に示す。
10mM 炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)で0.5μg/mLに調製した、抗PBP2’モノクローナル抗体1G12を50μLずつ96穴プレートに添加し、室温にて2時間穏やかに振盪(600r/min)した。10mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)で洗浄後、0.5%ブロックエース含有10mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.3)を100μLずつ添加し、室温にて2時間穏やかに振盪することでブロッキングを行った。
続いて、0.2MNaCl,0.1%TritonX100を含む50mMTris−HCl(pH7.0)で洗浄後、(2)〜(5)で調製した抗原抽出液を0.2MNaCl,0.1%TritonX100,1%BSAを含む50mMTris−HCl(pH7.0)で8倍希釈した溶液を50μLずつ添加し、4℃で一晩反応させた。
翌日、同様に洗浄後、25ng/mLに調製したビオチン化抗PBP2’モノクローナル抗体10G2を50μLずつ添加し、室温にて1.5時間穏やかに振盪した。洗浄後、1万倍希釈したHRP標識ストレプトアビジンを50μLずつ添加し、室温にて1時間穏やかに振盪した。
洗浄後、テトラメチルベンジジン発色液を50μLずつ添加し、室温にて10分間発色させたのち、1Mリン酸を50μLずつ添加することで発色を停止させ、450nmにおける吸光度を測定した。結果を表1に示す。
表1の結果より、従来法(特許文献1)のアルカリ処理よりも、本発明の酸性処理において、より高濃度にPBP2’が抽出されていることが確認された。まず、MSSAの2株の吸光度を平均した値を用いてアルカリ加熱処理条件でのMRSA70の吸光度を割った場合は5.92倍になり、MRSA92−1191では6.05倍になる。同様にアルカリ室温処理では8.89倍と15.46倍になる。酸加熱処理では18.15倍と19.97倍に、さらに酸室温処理では7.82倍と16.52倍にある。
つまり、室温処理では従来法であるアルカリ法でも本発明の酸法でも同等の抽出量であったが、酸加熱処理ではアルカリ加熱処理に比べて3倍以上の抽出量が確認された。これらの結果からMRSAのPBP2’抽出量は、アルカリ法と酸法が室温処理では同等であったが、加熱処理ではアルカリ処理法よりも酸加熱処理の方が3倍程度優れている結果であり、本法の酸処理法の優位性が証明されていた。
つまり、室温処理では従来法であるアルカリ法でも本発明の酸法でも同等の抽出量であったが、酸加熱処理ではアルカリ加熱処理に比べて3倍以上の抽出量が確認された。これらの結果からMRSAのPBP2’抽出量は、アルカリ法と酸法が室温処理では同等であったが、加熱処理ではアルカリ処理法よりも酸加熱処理の方が3倍程度優れている結果であり、本法の酸処理法の優位性が証明されていた。
実施例2.イムノクロマトによるPBP2’の検出
(1)イムノクロマト測定検体の調製
血液寒天培地を用いて、MRSA70,MRSA臨床分離株No.594、MSSAFDA209P,MSSA臨床分離株No.8を35℃で一晩培養した。得られた菌体を実施例1と同様の方法で処理し、得られた抗原抽出液及びその希釈液を測定検体とした。
(2)イムノクロマトによる測定
公知の方法(Clinical and Vaccine Immunology,2010,Dec.Accept,Matsui etal.)にて作製されたPBP2’検出イムノクロマトを用いて、(1)で調製した測定検体150μLを試験した。結果の判定は、室温で10分放置後に目視にて行った。テストライン上に赤いラインが確認された場合を陽性(+)、赤いラインが確認されなかった場合を陰性(−)とした。結果を表2に示す。
(1)イムノクロマト測定検体の調製
血液寒天培地を用いて、MRSA70,MRSA臨床分離株No.594、MSSAFDA209P,MSSA臨床分離株No.8を35℃で一晩培養した。得られた菌体を実施例1と同様の方法で処理し、得られた抗原抽出液及びその希釈液を測定検体とした。
(2)イムノクロマトによる測定
公知の方法(Clinical and Vaccine Immunology,2010,Dec.Accept,Matsui etal.)にて作製されたPBP2’検出イムノクロマトを用いて、(1)で調製した測定検体150μLを試験した。結果の判定は、室温で10分放置後に目視にて行った。テストライン上に赤いラインが確認された場合を陽性(+)、赤いラインが確認されなかった場合を陰性(−)とした。結果を表2に示す。
従来法であるアルカリ処理の加熱と室温処理の結果は同じだったので加熱処理の結果のみを記す。表2の結果より、アルカリ処理に比べて本発明の酸加熱処理は、PBP2’産生量が多いMRSA70において10倍の検出感度を示し、かつPBP2’産生量の少ないMRSA臨床分離No.594は30倍の検出感度を示した。結果として、何れの株に於いても酸加熱処理はアルカリ処理よりも優れていた。また、2株のMSSAに対しては両方法において陰性であり、高い特異性を示した。
実施例3.ラテックス凝集キットによる各種毒素の検出
(1)ラテックス凝集キット測定検体の調製
血液寒天培地を用いて、MRSA50(TSST−1産生株),MRSA 臨床分離株No.670(エンテロトキシンA産生株)を35℃で一晩培養した。得られた菌体を1μLの定量白金耳で2白金耳採取し、200μLの滅菌精製水に懸濁した。
(2)中性条件下でのラテックス凝集キット測定検体の抽出調製
50mMPBS(pH7.2)50μLと菌懸濁液50μLを混合し、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、50μLの50mMPBS(pH7.2)を加え、遠心分離(3000xg,5分)を行い、得られた上清を測定検体とした。
(1)ラテックス凝集キット測定検体の調製
血液寒天培地を用いて、MRSA50(TSST−1産生株),MRSA 臨床分離株No.670(エンテロトキシンA産生株)を35℃で一晩培養した。得られた菌体を1μLの定量白金耳で2白金耳採取し、200μLの滅菌精製水に懸濁した。
(2)中性条件下でのラテックス凝集キット測定検体の抽出調製
50mMPBS(pH7.2)50μLと菌懸濁液50μLを混合し、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、50μLの50mMPBS(pH7.2)を加え、遠心分離(3000xg,5分)を行い、得られた上清を測定検体とした。
(3)アルカリ条件下でのラテックス凝集キット測定検体の調製
(1)で調製した菌懸濁液50μLと0.2MNaOH50μLを混合し、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、0.5MKH2PO450μLを加えて中和し、遠心分離(3000xg,5分)で得られた上清を測定検体とした。
(4)酸性条件下でのラテックス凝集キット測定検体の調製
(1)で調製した菌懸濁液50μLと0.02%Brij58を含む0.2MHCl50μLを混合し、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、1MK2HPO450μLを加えて中和し、遠心分離(3000xg,5分)で得られた上清を測定検体とした。
(4)ラテックス凝集キットによる毒素の検出
MRSA50(TSST−1産生株)を用いて(2)〜(4)で調製した測定検体からのTSST−1検出をTST−RPLA「生研」(デンカ生研)を用いて行った。また、MRSA臨床分離株No.670(エンテロトキシンA産生株)を用いて(2)〜(4)で調製した測定検体からのエンテロトキシンA検出をSET−RPLA「生研」(デンカ生研)を用いて行った。操作方法は、各添付文書に従って行った。結果を表3に示す。
(1)で調製した菌懸濁液50μLと0.2MNaOH50μLを混合し、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、0.5MKH2PO450μLを加えて中和し、遠心分離(3000xg,5分)で得られた上清を測定検体とした。
(4)酸性条件下でのラテックス凝集キット測定検体の調製
(1)で調製した菌懸濁液50μLと0.02%Brij58を含む0.2MHCl50μLを混合し、100℃で3分間加熱処理を行った。室温にて1〜2分間放冷後、1MK2HPO450μLを加えて中和し、遠心分離(3000xg,5分)で得られた上清を測定検体とした。
(4)ラテックス凝集キットによる毒素の検出
MRSA50(TSST−1産生株)を用いて(2)〜(4)で調製した測定検体からのTSST−1検出をTST−RPLA「生研」(デンカ生研)を用いて行った。また、MRSA臨床分離株No.670(エンテロトキシンA産生株)を用いて(2)〜(4)で調製した測定検体からのエンテロトキシンA検出をSET−RPLA「生研」(デンカ生研)を用いて行った。操作方法は、各添付文書に従って行った。結果を表3に示す。
表3より、TSST−1は、中性条件下は2倍希釈まで、アルカリ条件下では検出されず、酸性条件下では8倍希釈まで検出された。エンテロトキシンAでは、中性条件下は4倍希釈、アルカリ条件下では検出されず、酸性条件下は16倍希釈まで検出された。従来法であるアルカリ条件(特許文献1)では各毒素を検出することはできないが、本発明の酸性条件下では中性条件下よりもさらに4倍高い検出感度であった。
本発明により、抽出された毒素やPBP2’を含むタンパクは抗原として抗原抗体反応を利用した免疫測定に利用できる。
Claims (5)
- ブドウ球菌の抗原を酸性条件下で抽出することから成る、ブドウ球菌抗原の抽出方法。
- ブドウ球菌の抗原を界面活性剤含有の酸性条件下で抽出することから成る、ブドウ球菌抗原の抽出方法。
- 酸性条件がpH3以下である請求項1又は2記載の抽出方法。
- 抽出液を室温から沸点条件下で15秒から60分で抽出する請求項1、2又は3の抽出方法。
- 請求項1から4のいずれか1項で得られたタンパクを抗原として免疫反応で検出する方法。
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