JP2016200475A - 細菌由来成分の免疫学的検出方法 - Google Patents

細菌由来成分の免疫学的検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】血中で内在性抗体と免疫複合体を形成する細菌由来成分を免疫学的に検出する系を確立する。
【解決手段】サンプルを低pH条件で処理するステップと、低pH条件で処理したサンプルを50℃〜100℃の温度範囲に加熱するステップと、加熱後のサンプルを細菌由来成分に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートするステップと、モノクローナル抗体と結合した細菌由来成分を検出するステップとを含む、サンプル中に存在する細菌由来成分の免疫学的検出方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、細菌由来成分の免疫学的検出方法に関し、より具体的には、生物学的サンプル中の内在性抗体との競合を排除してサンプル中の細菌由来成分の検出を可能とする新規方法に関する。
サルコイドーシスは全身性に非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を形成する難治性の疾患である。サルコイドーシス患者病変部組織からアクネ菌(Propionibacterium acnes)が唯一分離培養されており、PCR法やin situ ハイブリダイゼーション法にてアクネ菌DNAが検出されている。また、抗アクネ菌抗体を用いたサルコイドーシス患者組織の免疫染色では、その陽性の多くは肉芽腫内に認められる。これらのことから、サルコイドーシスの原因菌としてアクネ菌が想定されている(例えば非特許文献1及び2)。
サルコイドーシスの発症機序としては、まず、アクネ菌が外部環境から経気道的に侵入して肺やリンパ節に不顕性感染し、潜伏感染したアクネ菌が、何らかの環境要因を契機に内因性活性化して細胞内増殖を引き起こし、その後、アクネ菌に対する過敏なアレルギー反応を起こした場合に肉芽腫が形成されると考えられる。アクネ菌に対する陽性反応は血管やリンパ管の内皮細胞、管腔内マクロファージ内にも認められることから、細胞内増殖後、アクネ菌がリンパ行性、血行性に拡散し、心臓や皮膚など全身の臓器にも感染を引き起こした後、一部のアクネ菌は再び潜伏感染すると考えられ、従って、サルコイドーシス患者の血液中にはアクネ菌やその菌体成分が存在していると予想される。
ウイルス抗原等では、抗原に特異的な抗体を用いたサンドイッチ ELISAにより血中抗原を検出する方法が報告されている。しかしながら、常在性細菌であるアクネ菌に関しては、思春期以降のすべての成人が高い抗体価を有するために、検出に用いる抗体と内在性抗体のエピトープの競合が起こり、通常のサンドイッチ ELISAでの検出は困難と考えられる。これまでに、サルコイドーシス患者血液中から抗体を用いてアクネ菌やその菌体成分を検出した例は報告されていない。
Negi M. et al., Modern Pathology, 25: 1284-1297 (2012) Eishi Y., Respiratory Investigation, 51: 56-68 (2013)
上記の通り、サルコイドーシス患者だけでなく、多くの人がアクネ菌に対する感染抗体価を有することから、血中では菌体成分は内在性抗体との免疫複合体として存在していると考えられる。
本発明者等のグループは以前より、アクネ菌菌体成分に対する複数のモノクローナル抗体を作製している(例えば Negi M. et al., Modern Pathology, 25: 1284-1297 (2012)、Yuan Bae et al., PLOS ONE, 9(2), e90324, February (2014))。これらのモノクローナル抗体を用いれば、アクネ菌菌体を特異的に検出することができる。実際に、抗アクネ菌抗体を用いたサルコイドーシス患者組織の免疫染色では、肉芽腫内に陽性反応が認められる。
本発明者等は、これらのモノクローナル抗体を用いて、当分野で用いられるサンドイッチ ELISAによる、サルコイドーシス患者血漿中のアクネ菌菌体成分の検出を試みてきたが、予想されるような結果を得ることが困難であった。これは、従来のサンドイッチ ELISAを用いた場合、検出に用いる抗体が、免疫複合体を形成する内在性抗体とエピトープ競合するためであると考えられた。従って、血中の菌体成分を検出・定量するためには、この免疫複合体を解離させることが必要と考えられる。
上記課題に鑑み、本発明者等は、サンドイッチ ELISAを用いた血中菌体成分の検出のために、検出に先立ってサンプルを前処理する方法を種々検討した。より具体的には、上記の免疫複合体を形成している菌体成分と内在性抗体との結合を解離させることで、モノクローナル抗体との結合を可能とすることを意図し、菌体成分の検出及び定量のための最適な条件を検討した。
その結果、サンプルを低pH、例えば約pH2.3で処理すれば免疫複合体を解離させることが可能であり、かつ解離した免疫複合体が再結合しないように加熱処理を行うことで、免疫複合体中の抗体のみを失活させ、抗体と解離した菌体成分をELISA法により検出できることを見出し、検出・定量系を確立することができた。本発明の方法は、アクネ菌菌体成分に限定されず、血中免疫複合体として存在する菌体成分の検出および定量に広く適用可能なものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]生物学的サンプル中に存在する細菌由来成分の免疫学的検出方法であって、
上記サンプルを低pH条件で処理するステップと、
低pH条件で処理したサンプルを50℃〜100℃の温度範囲に加熱するステップと、
加熱後のサンプルを細菌由来成分に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートするステップと、
上記モノクローナル抗体と結合した細菌由来成分を検出するステップと、
を含む、上記方法。
[2]既知量の細菌由来成分を含む標準サンプルを上記生物学的サンプルと同様に処理し、上記生物学的サンプルの検出結果を該標準サンプルの検出結果と比較するステップを更に含む、上記[1]に記載の方法。
[3]加熱時間が10秒間〜10分間の範囲である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]免疫学的検出が、酵素結合免疫吸着法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay, ELISA)を用いた検出である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]上記細菌由来成分が細菌細胞壁由来のものである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]上記細菌がグラム陽性菌である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]上記細菌由来成分がリポテイコ酸である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]上記細菌がアクネ菌(Propionibacterium acnes)である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]被験者におけるサルコイドーシスの発症または発症の危険性を診断するためのデータを取得する方法であって、
被験者から採取した血漿サンプルを低pH条件で処理するステップと、
低pH条件で処理したサンプルを50℃〜100℃の温度範囲に加熱するステップと、
加熱後のサンプルをアクネ菌リポテイコ酸に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートするステップと、
上記モノクローナル抗体と結合したリポテイコ酸を検出するステップと
を含む、上記方法。
[10]上記[9]に記載の方法に使用するためのキットであって、
アクネ菌リポテイコ酸に対するモノクローナル抗体と、
上記モノクローナル抗体とアクネ菌リポテイコ酸とからなる免疫複合体に結合する二次抗体と、
上記結合を検出するための試薬と、
を含む、上記キット。
本発明により、ヒト血漿等のサンプル中に存在する細菌由来成分の検出系が確立された。本発明者等の検出系は低pH及び高熱条件下でサンプルを処理しているが、アクネ菌の糖脂質抗原であるリポテイコ酸等の細菌由来成分がこれらの処理による変性を受けづらいことも検出が可能となった要因の一つであると考えられる。
本発明の方法を使用して、サルコイドーシス患者の血漿サンプルにおいてアクネ菌リポテイコ酸を検出することができた。このことは、細胞内増殖したアクネ菌の血行性による拡散現象を裏付けるものとなる。また、本発明の方法により、健常人と比較してサルコイドーシス患者で血清型I型リポテイコ酸が有意に高く検出された一方、血清型II型リポテイコ酸は、サルコイドーシス患者、健常人の双方で殆ど検出されなかった。これまでの研究において、血清型I型に分類されるアクネ菌はその多くが細胞侵入能を有し、マクロファージだけでなく上皮細胞等においても細胞内への感染を引き起こすことが判明している。潜伏感染が成立していたアクネ菌が血清型I型であり、これがその細胞内増殖を反映しているのだとすれば、本発明の方法で血清型I型リポテイコ酸が血中から検出されたことは、想定される発症機序と矛盾しない。
本発明の方法により、血中のアクネ菌由来のリポテイコ酸を直接検出することが可能となり、その検出結果が他の臨床マーカーと関連していないことから、サルコイドーシスを判定する新たな血清診断マーカーとして血中リポテイコ酸量を利用できる可能性がある。サルコイドーシスの診断は、現在、最終的には病巣から採取した組織を顕微鏡で観察することで行われているのに対し、本発明の方法は血液検査として行うことができ、サルコイドーシスの非侵襲的な診断を可能とし得るものである。
更に、本発明の方法は、アクネ菌菌体成分に限定されず、血中で免疫複合体として存在する種々の細菌の菌体成分の検出および定量に広く適用可能なものであり、細菌に起因して発症し得る他の疾患の診断にも広く応用することができる。
従来のサンドイッチ ELISA法によるヒト血漿中アクネ菌菌体成分の検出結果を示す。 本発明の方法を用いたアクネ菌リポテイコ酸の検出結果を示す。(a)前処理を行わない場合、(b)低pH処理のみを行った場合、(c)低pH処理の後に10分間の煮沸処理を行った場合。 本発明の方法によるリポテイコ酸への影響を示す。(a)煮沸処理を行わない場合、(b)煮沸処理を行った場合。 サンプル中の内在性抗体価の相違による検出結果への影響を示す。(a)本発明の前処理を行わない場合、(b)本発明の前処理を行った場合。 本発明の方法のために作成した標準曲線を示す。(a)血清型I型リポテイコ酸の検出のための標準曲線、(b)血清型II型リポテイコ酸の検出のための標準曲線。 本発明の方法を用いた血漿中のリポテイコ酸の検出結果を示す。 本発明の方法の有効性を実証するROC曲線を示す。 煮沸処理を行う場合の処理時間の検討の結果を示す。 加熱温度の検討の結果を示す。処理時間は30秒間である。 本発明の方法の有効性を実証するROC曲線を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
上記の通り、本発明は、生物学的サンプル中に存在する細菌由来成分の免疫学的検出方法であって、
上記サンプルを低pH条件で処理するステップと、
低pH条件で処理したサンプルを50℃〜100℃の温度範囲に加熱するステップと、
加熱後のサンプルを細菌由来成分に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートするステップと、
上記モノクローナル抗体と結合した細菌由来成分を検出するステップと、
を含む、上記方法を提供する。
本発明において、生物学的サンプルは、限定するものではないが、例えば対象の個体から採取した血液(全血、血漿又は血清)、唾液、胸水、尿、腹水等の体液、疾患部位由来の組織等であり得る。より好適には、本発明の方法の対象となる生物学的サンプルは、内在性抗体が存在し得るサンプルであり、従って、血液サンプル及び体液サンプルである。尚、本発明の方法の対象となる生物は、限定するものではないが、ヒトを含む哺乳動物である。
本発明の方法によって検出する対象となる細菌は、限定するものではないが、例えばアクネ菌等のグラム陽性細菌、グラム陰性細菌、真正細菌等が挙げられる。本発明の一実施形態では、細菌はグラム陽性細菌であり、特定の実施形態では、細菌はアクネ菌である。
また、本明細書において、細菌由来成分とは、細菌に含まれる成分であって、無処理の細菌または溶菌処理を行った細菌に含まれ、抗原性を有する任意の成分を意図するものであるが、本発明の方法による検出を可能とするために、特にタンパク質及びタンパク分解物(ペプチド)を含まないものとする。より具体的には、細菌由来の脂質、糖質(多糖類を含む)、糖脂質等が挙げられる。
本発明の一実施形態では、細菌由来成分は細菌の外表面に露出している成分であり、例えば細菌細胞壁由来のものである。本発明の一実施形態では、細菌由来成分は、リポテイコ酸である。
従って、本発明の好適な実施形態では、本発明は、以下に詳細に記述するステップを含む、生物学的サンプル中に存在するアクネ菌リポテイコ酸の免疫学的検出方法に関するものである。アクネ菌は、その表面抗原の種類により血清型I型及びII型に分類されており、I型アクネ菌は細胞内に侵入する能力が高いことが確認されている(Microb Pathog. 2009 Feb;46(2):80-7)。
本明細書における「免疫学的検出方法」とは、標的となる細菌由来成分に対するモノクローナル抗体を使用して、これらの抗原-抗体反応による複合体の形成を検出する方法であることを意図するものである。より具体的には、「免疫学的検出方法」としては、限定するものではないが、例えばELISA、イムノクロマト法等が挙げられる。ELISAは、直接吸着法、サンドイッチ法、競合法のいずれも利用することができるが、血液等の液体サンプル中の微量な抗原の検出には、サンドイッチ法を使用することが好適である。
本発明の方法は、まず、第1ステップとして、サンプルを低pH条件で処理するステップを含む。「低pH」とは、pH 1〜5、好適にはpH 2〜3、特に約pH 2.5をいう。この条件において、サンプル中で形成された内在性抗体と細菌由来成分との免疫複合体が解離する。具体的には、サンプルにpH1.0程度の酸溶液、例えばグリシン塩酸塩を適量添加することによりサンプルを低pH条件にすることができる。
本発明の方法は、第2ステップとして、上記の低pH条件にしたサンプルをそのまま50℃〜100℃の温度範囲に加熱するステップを含む。加熱温度は、上記の範囲内で適宜選択することができるが、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは約100℃である。本発明者等は、種々の条件を検討する中で、サンプルを短時間煮沸処理することで、最も高い検出結果を得ることができている。従って、加熱時間は、加熱温度にも依存するが、約10秒間〜約10分間の範囲とすることができる。例えば約100℃に加熱する場合(煮沸処理とする場合)、加熱時間は約10秒〜約1分間とすることが特に好適である。
本発明の方法は、第3ステップとして、上記加熱後のサンプルを細菌由来成分に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートするステップを含む。
モノクローナル抗体の作製は、当分野において周知であり、当業者であれば、検出目的とする細菌由来成分を抗原とするモノクローナル抗体を、当分野において通常行われている方法によって作製することができる(例えば Harlow E. and Lane D., "Monoclonal antibodies. Antibodies: A Laboratory Manual.", New York: Cold Spring Harbor Laboratory, pp.139-281, 1988を参照されたい)。
例えばアクネ菌菌体成分の検出のためには、アクネ菌細胞外壁に存在するリポテイコ酸を標的とするモノクローナル抗体を使用することが好ましい。アクネ菌の検出に使用するための抗体としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明者等のグループでは血清型I型及び血清型II型のそれぞれのリポテイコ酸に対するモノクローナル抗体を取得しており、これらを使用することで、それぞれの血清型のアクネ菌のリポテイコ酸の検出が可能となる。本発明の方法において好適に使用可能なモノクローナル抗体として、より具体的には、例えばYuan Bae et al., PLOS ONE, 9(2), e90324, February 2014に記載されているようなPAL抗体等を使用することができる。
モノクローナル抗体と共にサンプルをインキュベートする条件についても、当分野で通常用いられるものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば37℃で約1時間のインキュベーションで、目的の複合体を形成させることができる。
本発明の方法は、第4ステップとして、モノクローナル抗体と結合した細菌由来成分を検出するステップを含む。検出は、上記した通り、ELISA等の免疫学的検出方法を用いて行う。
本発明は更に、任意により、既知量の細菌由来成分を含む標準サンプルを上記生物学的サンプルと同様に処理し、上記生物学的サンプルの検出結果を該標準サンプルの検出結果と比較するステップを更に含む。
検出対象の細菌由来成分の種類にも依存するが、本発明の処理によって、細菌由来成分自体がある程度の変性・分解等を生じて上記のモノクローナル抗体との結合性が低下する可能性がある。従って、同様の処理を行った標準サンプルを用いることで、生物学的サンプル中の細菌由来成分の検出をより正確に行うことができる。標準サンプルは、いくつかの濃度のリポテイコ酸を含む複数のサンプルとし、これらの検出結果に基づく標準曲線を予め作成しておくこともできる。尚、本発明における標準サンプルは、特に低pH及び加熱処理の影響を補正するためのものであるため、細菌由来成分及び内在性抗体を含まないことが判明している血漿サンプル等に規定量の細菌由来成分を添加したものとしても良く、または緩衝液等の水溶液に規定量の細菌由来成分を添加したものとしても良い。
血漿中に存在するアクネ菌菌体を検出するために通常のサンドイッチ ELISA法を用いた場合、血中にアクネ菌菌体が多量に存在すると想定されるサルコイドーシス患者及び健常者のいずれにおいても、ほとんど検出は不可能である(図1)。これは、血漿中に菌体に対する抗体が内在的に存在するため、血漿中で抗原-抗体複合体が形成されており、モノクローナル抗体の標的とするエピトープが既に他の抗体と結合しているためと考えられた。
本発明の方法により、生物学的サンプル中のアクネ菌リポテイコ酸の検出が可能となり、従来は不可能であったサルコイドーシスの非侵襲的診断を可能とすることができる。
従って、本発明はまた、上記の本発明の方法を利用した一実施形態として、被験者におけるサルコイドーシスの発症または発症の危険性を診断するためのデータを取得する方法であって、
被験者から採取した血漿サンプルを低pH条件で処理するステップと、
低pH条件で処理したサンプルを50℃〜100℃の温度範囲に加熱するステップと、
加熱後のサンプルをアクネ菌リポテイコ酸に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートするステップと、
上記モノクローナル抗体と結合したリポテイコ酸を検出するステップと、
を含む、上記方法を提供する。
上記した通り、サルコイドーシスの発症機序として、アクネ菌が何らかの環境要因で活性化して細胞内増殖を引き起こし、その後、アクネ菌に対する過敏なアレルギー反応を起こした場合に肉芽腫が形成すると考えられ、それと共に、増殖したアクネ菌が血中に移行すると考えられている。本発明者等は、驚くべきことに、本発明の方法を用いて調べた場合に、アクネ菌に対する抗体を同様に有する健常者で血中にアクネ菌が検出されないことを見出し、血中アクネ菌リポテイコ酸量をサルコイドーシスの発症の指標として使用できることを見出した。従来のサルコイドーシスの臨床マーカーとされるものは、肉芽腫を形成した時点での異常、例えばリゾチーム値の変動等を指標とするものであるが、本発明の方法は、血中のアクネ菌を直接検出するものであり、サルコイドーシスの発症の診断に利用できると共に、サルコイドーシスが発症する危険性を診断することもできる。あるいはまた、血中のアクネ菌の検出は、サルコイドーシスの診断のみでなく、被験者におけるストレス、ストレスに起因して発症し得る他の疾患の診断にも利用できる可能性がある。
本発明は更に、上記の本発明の方法に使用するためのキットであって、
アクネ菌リポテイコ酸に対するモノクローナル抗体と、
上記モノクローナル抗体とアクネ菌リポテイコ酸とからなる免疫複合体に結合する二次抗体と、
上記結合を検出するための試薬と、
を含む、被験者におけるサルコイドーシスの発症または発症の危険性を検出するためのキットを提供する。
上記のキットに含めるためのモノクローナル抗体は、血清型I型及びII型のアクネ菌リポテイコ酸に対するモノクローナル抗体のいずれか又は双方を含めることができる。双方の血清型に対するモノクローナル抗体を含める場合には、いずれの血清型のものであるかがわかるように別個の検出結果が得られるようにしても良く、また、簡便のために、いずれの血清型によるものであるかによらず、アクネ菌のリポテイコ酸の存在の検出のために、双方のモノクローナル抗体を混合して用いる構成としても良い。モノクローナル抗体は、場合によって、検出反応のための容器、例えばELISAプレート表面上に固相化しても良い。
当業者であれば、抗原の免疫学的検出のために使用する二次抗体は、用いる検出方法に応じて適宜選択することができる。二次抗体は、モノクローナル抗体とリポテイコ酸との免疫複合体に結合することを意図して使用するが、その結合形態は、リポテイコ酸に結合するものであっても、モノクローナル抗体に結合するものであっても良く、特に限定されない。二次抗体は、必要に応じて、蛍光標識又は酵素標識等の標識を付すことができる。あるいはまた、二次抗体に対する更なる抗体を使用して、これに同様の標識を付すことができる。あるいはまた、標識は、上記モノクローナル抗体に付すこともできる。
結合を検出するための試薬としては、上記の標識の種類によって異なるが、例えば酵素の基質、反応のための緩衝液、反応停止剤等が挙げられる。
また、上記キットは、容易に理解されるように、反応用のウェル、スタンダード等を必要に応じて含めることができ、また、本発明の方法における使用のために、低pH条件とするための酸溶液を含めることもできる。
本発明のキットにより、被験者由来のサンプル、例えば血液サンプルに対して本発明の方法を簡便に行うことができ、サルコイドーシスの診断のための血液検査の実施を容易にすることができる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
血漿中のアクネ菌菌体成分の検出
アクネ菌菌体成分(リポテイコ酸)に対する特異的なマウスモノクローナル抗体を捕獲抗体とし、アクネ菌破砕液を免疫抗原として作成したウサギポリクローナル抗体を検出抗体とするサンドイッチ ELISAによりリポテイコ酸の検出を行った。
モノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体の作製は、当技術分野における技術常識に基づき、Negi M. et al., Modern Pathology, 25: 1284-1297 (2012)、Yuan Bae et al., PLOS ONE, 9(2), e90324, February (2014)等に記載した手順で行った。
簡単に記載すると、血清型I型アクネ菌溶解物でBALB/cマウス(CLEA Japan)を免疫し、アクネ菌に対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を、アクネ菌感染ラット肝組織切片を用いた免疫染色によってスクリーニングした。ヒト組織及び他の細菌との交差反応性を示さず、最も強い特異性を示した抗体を産生するハイブリドーマを選択してクローニングした。得られたクローンを重症複合型免疫不全症のマウス(CLEA Japan)の腹腔内に注入し、1〜2週間後に腹水を回収し、抗体を取得した。
得られた抗体の特異性を、血清型I型のアクネ菌株(ATCC6919及びATCC11827)、血清型II型のアクネ菌株(ATCC11828)、19種のアクネ菌臨床単離株(血清型I型10株及びII型9株)、及び他の対照細菌株を用い、ウエスタンブロッティングにより確認した。
その結果、得られた抗体(PAL抗体)は、血清型I型アクネ菌が有するリポテイコ酸のエピトープを特異的に認識するものであった。
同様にして、血清型II型アクネ菌が有するリポテイコ酸のエピトープを特異的に認識する抗体(PAC2抗体)を作製した。
アクネ菌リポテイコ酸の抽出及び精製
アクネ菌リポテイコ酸の抽出には、血清型I型であるATCC6919株、及びII型であるATCC 11828株を用いた。菌をGAM培地で6日間嫌気培養し、1gを滅菌PBS 15m1に懸濁し、ロイペプチンを最終濃度1μg/mlになるよう添加した後、超音波破砕を1時間行った。菌破砕液を3000回転20分遠心し、上清を回収後、等容のフェノールを加え、4℃で1時間振盪した。5000回転10分遠心し、分離した2層のうち上清を回収し、透析膜を用いてMQ透析を一晩行った。翌日、透析膜からサンプルを回収して凍結乾燥を行い、クロロホルムとメタノールを2:1の割合で混合し、凍結乾燥前のサンプルと等量加え、4℃で1時間振盪させた。5000回転10分で遠心後、沈殿成分を10mlの0.05M Tris-HC1(pH 8.0)に10 mM MgCl2を加えた溶液に再浮遊させた。次いで、DNase、RNaseをそれぞれ最終濃度が0.02 mg/mlになるよう加え、37℃で16時間インキュベートした。等容のフェノールを加え、4℃で1時間振盪させた後に5000回転10分遠心し、上清に対しMQ透析、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、クロロホルム、メタノール混合液を等量加え、4℃、1時間で振盪し、5000回転で10分遠心した。上清を捨て1mlの滅菌MQ水に溶解して凍結乾燥し、抽出したリポテイコ酸の乾燥重量を計測し、解析に利用した。
血漿サンプルの処理
血中リポテイコ酸の検出系の開発にあたり、健常人血漿に、精製した血清型I型及びII型アクネ菌リポテイコ酸を最終濃度0、0.1、1、10μg/mlになるように加えたものをサンプルとし、サンプル処理条件の検討を行った。
本発明の方法の処理を行う場合、滅菌PBSで4倍希釈したヒト血漿25μlに、0.1Mグリシン塩酸塩(pH1.0)を等量加えてpH2.5に調整し、十分混和させた後、4℃で一晩インキュベートした。翌日煮沸を10分間行い、1M Tris-HC1(pH 13)を4.5μl加えて測定時のサンプルのpHを中性(pH7.0)に戻した。
サンドイッチ ELISA
平底の96穴プレートをELISA用プレートとして用いた。まず、捕獲抗体として血清型I型アクネ菌リポテイコ酸に特異的なマウスモノクローナル抗体(PAL抗体)、及び血清型II型アクネ菌リポテイコ酸に特異的なマウスモノクローナル抗体(PAC2抗体)をクエン酸緩衝液(pH 9.6)で1000倍希釈し、1ウェル当たり50μl分注して、37℃で1時間静置して固相化した。
プレートをTween-PBSで洗浄後、調整した各血漿サンプル及びスタンダードサンプルを1ウェル当たり50μlずつ分注し、37℃で1時間反応させた。
Tween-PBSで洗浄後、検出抗体として、アクネ菌破砕液を免疫して作製した抗アクネ菌ウサギポリクローナル抗体をTween-PBSで500倍希釈したものを、1ウェル当たり50μl分注し、37℃で1時間反応させた。
Tween-PBSで再度洗浄後、2次抗体としてEnvision(HRP標識抗ウサギポリマー抗体:Dako社製)をTween-PBSで10倍希釈し1ウェル当たり50μ1分注し、室温で30分反応させた。
Tween-PBSで洗浄し、0.3%o-フェニレンジアミン二塩酸塩、0.04% H2O2を加えたクエン酸リン酸緩衝液(pH5.4)を1ウェル当たり50μl加えて遮光し、室温で15分発色させ、2N HClを1ウェル当たり25μl加え発色反応を停止させた。その後、プレートリーダーにて490 nmの吸光度を測定した。
結果
血漿中に存在するアクネ菌菌体を検出するために通常のサンドイッチ ELISA法を用いた場合、血中にアクネ菌菌体が多量に存在すると想定されるサルコイドーシス患者及び健常者のいずれにおいても、ほとんど検出は不可能であった(図1)。
健常人血漿にアクネ菌より抽出精製したリポテイコ酸を添加したものをサンプルとして用いて検討した結果、サンプルの前処理を行わず、従来のサンドイッチELISA法により検出したところ、高濃度のリポテイコ酸を含有するサンプルでも濃度に対応したリポテイコ酸の検出ができなかった(図2(a))。この原因としては、検出に用いる抗体と血漿中に存在するリポテイコ酸に結合可能な内在性の抗体とがリポテイコ酸との結合において競合していることが考えられた。従って、この条件では免疫複合体を形成した状態のリポテイコ酸を検出することができず、遊離した状態のリポテイコ酸のみを検出していると考えられた。
次いで、サンプルを低pH条件(pH2.5)で処理し、4℃で一晩インキュベートすることでヒトイムノグロブリンをリポテイコ酸から解離させ、測定時にpHを中性に戻したサンプルを用いて検出を試みたが、これも検出は不可能であった(図2(b))。これは、低pH処理によってリポテイコ酸と解離した内在性抗体が、pHを中性にした際に、リポテイコ酸に再結合したことが原因と考えられた。そのため、処理しなかった場合と検出効率は大きく変化しなかった。
そこで、サンプルに一晩低pH処理をした後、煮沸を10分間行うことで、内在性抗体を失活させることとした。煮沸処理後、pHを中性に戻して測定した結果、リポテイコ酸を検出することができた(図2(c))。煮沸処理によって、サンプル中の内在性抗体が変性し、再結合を回避することができ、リポテイコ酸を濃度依存的に検出することができたと考えられる。
[実施例2]
煮沸処理によるリポテイコ酸への影響
本発明の方法、特に煮沸処理が、検出対象のリポテイコ酸に与える影響の有無を確認した。アクネ菌ATCC6919株破砕液の320μg/m1からの希釈系列を作成して滅菌PBS中に添加したサンプルを用い、実施例1と同様の処理を行ってリポテイコ酸の検出を行った。
その結果、図3に示すように、煮沸処理を行った場合(図3(b))、煮沸処理を行わなかった場合(図3(a))と比較して、リポテイコ酸の検出値は若干低くなる傾向が認められたが、本方法の有効性が損なわれるものではなかった。
リポテイコ酸自体への処理の影響を考慮するためには、例えば規定量のリポテイコ酸を含む標準サンプルを同様に処理することによって、検出結果を補正することができる。
[実施例3]
サンプル中の内在性抗体量による検出結果への影響
リポテイコ酸に対する抗体価が低い健常人血漿、及び高い健常人血漿に対し、アクネ菌ATCC6919株の破砕液を過剰量添加したものをサンプルとして用い、本発明の方法によって測定を行い、サンプル処理の有無による比較を行った。
その結果、サンプル処理を行わなかった場合(図4(a))、菌体成分の最終濃度が40μg/mlの場合、抗体価が低い血漿においてはリポテイコ酸の検出が可能であったが、抗体価の高い血漿においては検出不能であった。一方、サンプル処理を行った場合(図4(b))、血漿中の抗体価に影響されることなく、低濃度の菌体成分でも同程度に検出された。
[実施例4]
標準曲線の作成
実施例2の結果より、本発明の方法でサンプル処理を行った場合、リポテイコ酸の検出値が予測値よりも若干低くなるため、異なる濃度の規定量のリポテイコ酸を含む標準サンプルを準備し、同様のサンプル処理を行うことで標準曲線を作成した。
定量系を作製するために、リポテイコ酸を含まない健常者血漿を用いた標準サンプルを作製した。標準サンプルを用いることで、サンプル中のリポテイコ酸の上記処理によるダメージによる検出結果への影響を補正することができる。
定量における標準サンプルは、健常人血漿数名分を用いた予備検討においてアクネ菌に対する抗体価が高く、通常のサンドイッチ ELISAでは検出ができない健常人血漿を滅菌PBSで4倍希釈し、アクネ菌ATCC6919株、及びATCC11828株のリポテイコ酸を加えて希釈系列を作成し、低pH処理及び煮沸処理を行った。
標準サンプルは、血清型I型アクネ菌リポテイコ酸の検出では10000 ng/ml、血清型II型アクネ菌リポテイコ酸の検出では1000 ng/mlから希釈して調製した。各標準サンプルを実施例1と同様に処理し、490nmで測定した吸光度より標準曲線を作成した。標準曲線の一例を図5に示す。
次に、本発明の方法による測定の精度を確認するために、別日に施行したアッセイ5回分の標準サンプルによる検出結果を用い、アッセイ内、及びアッセイ間の変動係数を算出した。表1に血清型I型リポテイコ酸での結果を示す。
Figure 2016200475
表1に示すように、アッセイ内の変動係数は、血中リポテイコ酸測定濃度領域において、いずれのアッセイおよびリポテイコ酸濃度においても概ね10%未満であり、同一プレートにおけるウェル間のばらつきは低いものであった。一方、アッセイ間の変動係数においては、約30%以下となっており、十分な測定精度であった。同様の結果が、血清型II型のリポテイコ酸の検出系でも得られた。
[実施例5]
サルコイドーシス患者血漿及び健常人血漿の比較
本発明の方法を用いて、サルコイドーシス患者58名の血漿、及び対照サンプルとして健常人35名の血漿を用い、リポテイコ酸の検出を実施した。血清型I型、及びII型アクネ菌のリポテイコ酸を定量したところ、血清型II型リポテイコ酸は患者、健常人ともに低値であった。一方、血清型I型リポテイコ酸においては、サルコイドーシス患者で有意に高く(p<0.0001)検出された(図6)。
上記の血清型I型リポテイコ酸の定量結果から、ROC曲線による解析を行った。ROC曲線による解析にはGraphPAD PRISM ver.6(GraphPad Software,Inc,USA)を用いた。有意差の検定にはMann Whitney testを使用し、P値0.05未満を統計学的に有意であると判断した。
その結果、ROC曲線下面積は0.85と高いものであり有用な検査法であることが示された。またカットオフ値は6.72 ng/ml、この値を用いて算出された感度は74%、特異度は94%、オッズ比は47倍と高いものであった(図7)。
さらに、本発明の方法により得られたサルコイドーシス患者43名の血漿における血清型I型リポテイコ酸の定量値について、性別、年齢、stage、サルコイドーシス臨床マーカーであるACE(アンジオテンシン変換酵素)値、リゾチーム(1ysozyme)値、気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage、BAL)中リンパ球数、BAL細胞CD4/8比との関連性を検討した。他の臨床マーカーとの比較では、StatView software(version5.0;SAS Institute,Cary,NC)により重回帰分析を行った。その結果、どのマーカーとも有意な関連は見出だせなかった(表2)。従って、血中アクネ菌のリポテイコ酸の検出は、サルコイドーシスの診断において独立した新たなマーカーになる可能性があると考えられた。
Figure 2016200475
[実施例6]
煮沸時間の検討
本発明の方法におけるサンプルの加熱時間を、煮沸条件下で検討した。
血清型I型アクネ菌ATCC6919株を100mg/mlになるよう滅菌PBSに溶き、ロイペプチンを最終濃度1μg/mlになるよう添加し、1時間破砕した。精製したリポテイコ酸は不溶性になりやすく、不安定である等の理由から、本実施例では菌体破砕液をそのまま用いて検討することとし、この破砕液を15000rpm、4℃で30分間遠心した。
血清型I型アクネ菌リポテイコ酸に対する抗体価の高い健常人血漿を滅菌PBSで4倍希釈したもの67.5μlに対し、3.13mg/mlに調整したアクネ菌破砕液遠心上清を7.5μl添加し、免疫複合体擬似サンプルを作成した。
煮沸処理なしのサンプルには滅菌PBSを、煮沸処理を行うサンプルにはグリシン塩酸塩(pH 1.0)を免疫複合体擬似サンプルと等量加え、4℃で一晩インキュベートし、2000×gで5秒間遠心した。その後、煮沸時間を10秒、30秒、1分、5分、10分と5ポイントふり、煮沸処理を行った。
サンプルが冷却した後に2000×gで5秒間遠心後、Tris-HCl(pH 13)を13.5μl加えた。煮沸処理を行わなかったサンプルには、滅菌PBSを13.5μl加えた。
血清型I型アクネ菌リポテイコ酸に対するマウスモノクローナル抗体を固相化抗体をとし、実施例1と同様にしてサンドイッチ ELISAを行った。
その結果、図8に示すように、煮沸処理をしない場合と比較して、煮沸処理を行った場合に高い値が検出された。特に10秒間〜1分間の煮沸時間での検出結果が高く、30秒間の煮沸で最もばらつきのない良好な結果が得られた。
[実施例7]
加熱温度の検討
本発明の方法におけるサンプルの加熱温度を、加熱時間30秒間で検討した。
血清型I型アクネ菌ATCC6919株を100mg/mlになるよう滅菌PBSに溶き、ロイペプチンを最終濃度1μg/mlになるよう添加し、1時間破砕した。この破砕液を15000rpm、4℃で30分間遠心した。
血清型I型アクネ菌リポテイコ酸に対する抗体価の高い健常人血漿を滅菌PBSで4倍希釈したもの22.5μlに対し、3.13mg/mlに調整したアクネ菌破砕液遠心上清を2.5μl添加し、免疫複合体擬似サンプルを作成した。
加熱処理なしのサンプルには滅菌PBSを、加熱処理を行うサンプルにはグリシン塩酸塩(pH 1.0)を免疫複合体擬似サンプルと等量加え、4℃で一晩インキュベートし、2000×gで5秒間遠心した。その後、加熱温度を50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃(煮沸)と6ポイントふり、水浴による加熱または煮沸処理を行った。
サンプルが冷却した後に2000×gで5秒間遠心後、Tris-HCl(pH 13)を4.5μl加えた。加熱処理を行わなかったサンプルには、滅菌PBSを4.5μl加えた。
血清型I型アクネ菌リポテイコ酸に対するマウスモノクローナル抗体を固相化抗体をとし、実施例1と同様にしてサンドイッチ ELISAを行った。
その結果、図9に示すように、50℃以上の加熱によっていずれも加熱処理しない場合よりも高い値が検出された。70℃以上の加熱でより検出結果が高く、100℃(煮沸)で最も高い検出結果が得られた。
[実施例8]
サルコイドーシス患者血漿及び健常人血漿のアッセイ
実施例6及び7の結果から最も良いと考えられた処理条件を用い、血清型I型アクネ菌リポテイコ酸について実施例5と同様のアッセイを再度行った。サルコイドーシス患者58名の血漿と健常人35名の血漿を使用した。
実験は、実施例6及び7に準じ、30秒間の煮沸処理を行った。
また、実施例4と同様にして標準サンプルも同様に処理した。
その結果、サルコイドーシス患者で血清型I型リポテイコ酸が有意に高く(p<0.0001)検出された。この結果から、ROC曲線による解析を行った結果、ROC曲線下面積は0.81であった。またカットオフ値105.05 ng/mlとして算出された感度は65%、特異度は86%、オッズ比は11倍であった(図10)。
本発明の方法は、内在性抗体の存在によって適切に検出することができなかった細菌由来成分を、内在性抗体との複合体形成を解離させ、再結合を阻害することで、検出することを可能とする。
本発明の方法により、サルコイドーシスにおけるアクネ菌の関与がより明確に示されただけでなく、その感度、特異度から、サルコイドーシスにおける新たな血清診断の提供が可能となる。更に、サルコイドーシスに対する薬物治療の適応性、効果の判定等にも応用できると考えられる。
本発明の方法は、サルコイドーシスの診断用途に好適に使用することができるが、更に、アクネ菌に限らず他の細菌由来成分の検出にも使用することができる。

Claims (10)

  1. 生物学的サンプル中に存在する細菌由来成分の免疫学的検出方法であって、
    上記サンプルを低pH条件で処理するステップと、
    低pH条件で処理したサンプルを50℃〜100℃の温度範囲に加熱するステップと、
    加熱後のサンプルを細菌由来成分に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートするステップと、
    上記モノクローナル抗体と結合した細菌由来成分を検出するステップと、
    を含む、上記方法。
  2. 既知量の細菌由来成分を含む標準サンプルを上記生物学的サンプルと同様に処理し、上記生物学的サンプルの検出結果を該標準サンプルの検出結果と比較するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 加熱時間が10秒間〜10分間の範囲である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 免疫学的検出が、酵素結合免疫吸着法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay, ELISA)を用いた検出である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 上記細菌由来成分が細菌細胞壁由来のものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 上記細菌がグラム陽性菌である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 上記細菌由来成分がリポテイコ酸である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 上記細菌がアクネ菌(Propionibacterium acnes)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 被験者におけるサルコイドーシスの発症または発症の危険性を診断するためのデータを取得する方法であって、
    被験者から採取した血漿サンプルを低pH条件で処理するステップと、
    低pH条件で処理したサンプルを50℃〜100℃の温度範囲に加熱するステップと、
    加熱後のサンプルをアクネ菌リポテイコ酸に対するモノクローナル抗体と共にインキュベートするステップと、
    上記モノクローナル抗体と結合したリポテイコ酸を検出するステップと、
    を含む、上記方法。
  10. 請求項9に記載の方法に使用するためのキットであって、
    アクネ菌リポテイコ酸に対するモノクローナル抗体と、
    上記モノクローナル抗体とアクネ菌リポテイコ酸とからなる免疫複合体に結合する二次抗体と、
    上記結合を検出するための試薬と、
    を含む、上記キット。
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