JP7385296B2 - 生体試料中のβ-D-グルカンの免疫学的分析方法、及びβ-D-グルカン分析用キット - Google Patents
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Description
前述のように、深在性真菌症の原因菌種によって、生体試料中のBGの構造は異なると考えられ、特に、(1→3)BG及び(1→3)(1→6)BGが多く存在する。(1→3)(1→6)BGの構造では、β(1→3)結合中にβ(1→6)結合が一定数存在していると考えられる。発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、長いβ(1→3)重合をエピトープとして認識する抗体では、β(1→6)結合が障害となり、(1→3)(1→6)BGは認識できないのではないかという可能性に気付いた。そして、リムルス試薬と同様の反応性を有し且つ深在性真菌症の原因菌を高感度で検出するためには、(1→3)BGと、(1→3)(1→6)BGの両方を認識することができる可能性を有する、短いβ(1→3)重合をエピトープとして認識する抗体を作出することが効果的であると考えた。また、短いβ(1→3)重合をエピトープとして認識することで、高感度なサンドイッチアッセイを構築することも可能であると考えた。
そこで、短いβ(1→3)重合をエピトープとして認識する抗体を複数作出した。そして、これらの抗体を用いてサンドイッチアッセイを構築することで、リムルス試薬と同等の感度及び同様の反応性を有するBGの測定系を構築することに成功し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は以下のとおりである。
<1>重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合するモノクローナル抗体を用いて、生体試料中のβ-D-グルカンを分析すること
を含む、生体試料中のβ-D-グルカンの免疫学的分析方法。
<2>前記生体試料が、血液、血漿、又は血清である、<1>に記載の免疫学的分析方法。
<3>前記β-D-グルカンが、(1→3)-β-D-グルカン及び(1→3)(1→6)-β-D-グルカンである、<1>又は<2>に記載の免疫学的分析方法。
<4>前記β-D-グルカンの濃度が1μg/mL以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
<5>ELISAを用いる、<1>~<4>のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
<6>重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合するモノクローナル抗体を二種類使用する、<1>~<5>のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
<7>対象が深在性真菌症に罹患しているかどうかを判定することをさらに含み、前記判定のカットオフ値が、20pg/mLである<1>~<6>のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
<8>前記モノクローナル抗体が、リムルス試薬におけるβ-D-グルカンの分析において競合阻害作用を有する、<1>~<7>のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
<9>(a)重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合する第1のモノクローナル抗体を固定化した固相
を含む、生体試料中のβ-D-グルカン分析用キット。
<10>(b)標識物質で標識された、重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合する第2のモノクローナル抗体
をさらに含む、<9>に記載のキット。
<11>前記生体試料が、血液、血漿、又は血清である、<9>又は<10>に記載のキット。
<12>前記β-D-グルカンが、(1→3)-β-D-グルカン及び(1→3)(1→6)-β-D-グルカンである、<10>~<12>のいずれかに記載のキット。
<13>前記β-D-グルカンの濃度が1μg/mL以下である、<9>~<12>のいずれかに記載のキット。
<14>対象が深在性真菌症に罹患しているかどうかの判定に用いられ、前記判定のカットオフ値が、20pg/mLである、<9>~<13>のいずれかに記載のキット。
<15>重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合するモノクローナル抗体。
(生体試料)
本発明における「生体試料」としては、主に生体(生物)由来の固形組織及び体液を挙げることができ、体液を用いることが好ましい。本発明における生体試料は、より好ましくは、血液、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、涙液、耳漏、又は前立腺液であり、さらに好ましくは血液、血清又は血漿であり、さらに好ましくは深在性真菌症に罹患している疑いのある対象の血液、血清又は血漿であり、最も好ましくはCandida属及び/又はAspergillus属を原因菌とする深在性真菌症に罹患している疑いのある対象の血液、血清又は血漿である。生体又は対象は、ヒト又は動物(例えば、サル、イヌ、ネコ、マウス、モルモット、ラット、ハムスター、ウマ、ウシ、ブタ、鳥類、及び魚類)を含み、好ましくはヒトである。
本明細書において、「β-D-グルカン」及び「BG」は、複数のグルコース分子がβ型結合により結合した、グルコースのポリマーを意味する。BGは真菌の細胞壁構成成分であり、体液中のBGの測定が、深在性真菌症感染の補助診断のために使用されている。BGとしては、(1→3)-β-D-グルカン、(1→3)(1→6)-β-D-グルカン、(1→3)(1→4)-β-D-グルカン(オオムギ由来βグルカン、リケナン等)等が例示できる。本発明の免疫学的分析方法において、検出対象の生体試料中のβ-D-グルカンは、好ましくは(1→3)-β-D-グルカン及び/又は(1→3)(1→6)-β-D-グルカンである。
本明細書において、「(1→3)-β-D-グルカン」及び「(1→3)BG」は、グルコースの1位の炭素と他のグルコースの3位の炭素とがβ型の結合様式により結合したグルカンを意味する。(1→3)BGは、3重らせん構造という独特の構造を有する。
(1→3)BGとしては、パキマン、カードラン、ラミナリテトラオース、パラミロン、カルボキシメチルパキマン、カルボキシメチルカードラン、Aspergillus属真菌の細胞壁に存在する(1→3)BG、及びCandida属真菌の細胞壁に存在する(1→3)BGが例示できる。
具体的には、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、好ましくは、(1→4)-β-D-グルカンであるマンナン及びカルボキシメチルセルロース;(1→6)-β-D-グルカンであるパルスタン;(1→6)-α-D-グルカンであるデキストラン;(1→4)(1→6)-α-D-グルカンであるグリコーゲン及びアミロペクチン;(1→6)(1→6)-α-D-グルカンであるプルラン;並びに(1→4)-α-D-グルカンであるアミロースのいずれとも反応しない。
本発明において使用されるモノクローナル抗体は、重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合するモノクローナル抗体である。「重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合する」とは、重合度が4のβ(1→3)結合をエピトープとして認識することを意味する。なお、本明細書において「重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合するモノクローナル抗体を用いて、生体試料中のβ-D-グルカンを分析すること」は、生体試料と当該モノクローナル抗体とを接触させること、及び、得られた測定値をカットオフ値と比較することを意味する。
重合度が「4」とは、グルコースが4個重合していることを意味する。
本発明において使用される抗(1→3)BG抗体は、好ましくは遊離抗原濃度が1μg/mL以下において、より好ましくは遊離抗原濃度が100ng/mL以下において、BGと、好ましくは(1→3)BG及び/又は(1→3)(1→6)BGと反応する。
本発明において使用されるモノクローナル抗体の具体例としては、NITE BP-02723であるハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体の86202R抗体、NITE BP-02724であるハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体の86207抗体が挙げられる。
前記のようにして選別されたハイブリドーマを大量培養することにより、所望の特性を有するモノクローナル抗体を製造することができる。大量培養の方法は特に限定されないが、例えば、ハイブリドーマを適宜の培地中で培養してモノクローナル抗体を培地中に産生させる方法や、哺乳動物の腹腔内にハイブリドーマを注射して増殖させ、腹水中に抗体を産生させる方法などを挙げることができる。モノクローナル抗体の精製は、先述した抗血清からの抗体の精製法、例えばDEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組み合わせて行うことができる。
本発明の免疫学的分析方法としては、ELISA、酵素免疫測定法、免疫組織染色法、表面プラズモン共鳴法、ラテックス凝集免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法、免疫沈降法、ウエスタンブロット法、イムノクロマトグラフ法、及び高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の免疫学的分析方法としては、ELISAを用いることが好ましい。ELISAの中でも、固相に固定した第1のモノクローナル抗体と標識した第2のモノクローナル抗体とを使用するサンドイッチELISAが好ましい。
この場合、第1のモノクローナル抗体として、86207抗体を用い、第2のモノクローナル抗体として、86202R抗体を用いることができる。なお、第1のモノクローナル抗体と第2のモノクローナル抗体は同一の抗体を用いてもよい。さらに固相に固相化する抗体、あるいは標識抗体は、それぞれ複数の抗体を混合してもよい。標識抗体に対する標識物質としては、ビオチン又はHRPを使用することが好ましい。
本発明の免疫学的分析方法の分析結果に基づき、対象が深在性真菌症に罹患しているか否かを診断することができ、又は診断の補助とすることができる。従来の抗体を利用した免疫学的分析方法では感度が不足しており、罹患早期の深在性真菌症患者では、陰性と判断されてしまう恐れがあった。深在性真菌症は早期発見及び早期治療が重要となる。本発明の高感度な免疫学的分析方法を使用すれば、深在性真菌症の早期発見及び早期治療を実現できるものである。
また、本発明の免疫学的分析方法を行った後、必要に応じて、生体試料中のBGを分析する工程の結果に基づき、他の深在性真菌症分析方法の患者への実施、及び/又は深在性真菌症治療薬の患者への投与を実施してもよい。
市販のリムルス試薬では、試料中の(1→3)BG及び/又は(1→3)(1→6)BGがG因子と結合する。この結合により、カスケードが開始され、(1→3)BG及び/又は(1→3)(1→6)BGの分析が行われる。本発明の免疫学的分析方法において使用されるモノクローナル抗体は、(1→3)BG及び/又は(1→3)(1→6)BGにおけるG因子結合部位を認識することが好ましい。
本発明の免疫学的分析方法において使用されるモノクローナル抗体は、リムルス試薬におけるβ-D-グルカン、好ましくは(1→3)BG及び/又は(1→3)(1→6)BGの分析において、競合阻害作用を有することが好ましい。この場合、競合阻害作用とは、具体的には、モノクローナル抗体がβ-D-グルカンに結合することにより、β-D-グルカンとG因子との結合が阻害され、結果的にリムルス試薬の反応カスケードの進行を阻害されることを意味する。
発明の免疫学的分析方法において使用されるモノクローナル抗体が、リムルス試薬におけるβ-D-グルカンの分析において、競合阻害作用を有する場合、モノクローナル抗体の反応系における濃度は、0.1μg/mL~1000μg/mLであり、好ましくは、1μg/mL~100μg/mLである。
本発明により提供されるキットは、(a)重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合する第1のモノクローナル抗体を固定化した固相を含み、好ましくは(b)標識物質で標識された、重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合する第2のモノクローナル抗体を含む。第1のモノクローナル抗体を固定化した固相は、生体試料中のBGを捕捉して、BG-抗体複合体を形成する。標識物質で標識された第2の抗BGモノクローナル抗体は、このBG-抗体複合体に反応してサンドイッチを形成する。標識物質に応じた方法により標識物質の量を測定することにより、試料中のBGを測定することができる。第1のモノクローナル抗体の固相への固定化の方法、第2のモノクローナル抗体の標識物質での標識の方法など、キットを構成する上での具体的な方法は本明細書中に記載された方法のほか、当業者に周知の方法を制限なく使用することができる。
1.免疫用抗原の調製
グルコース7個が直鎖状に重合した構造を有する(1→3)BGであるラミナリヘプタオース(生化学バイオビジネス社製)を免疫用抗原として使用した。ラミナリヘプタオース-トランスフェリンコンジュゲートを非特許文献1に記載の調製方法と同様の方法で調製し、免疫用抗原として使用した。
調製したラミナリヘプタオース-トランスフェリンコンジュゲートの溶液(1mg/mL)100μL、0.1MPBS(pH7.2)0.25mL及びフロイントのアジュバント(完全アジュバントまたは不完全アジュバント)0.25mLからなる懸濁液の全量をBALB/cマウス(雌)及びF344/Jc1ラット(雌)の背部皮下又は腹腔にそれぞれ計3-6回投与した。投与間隔は2週間で、最初の投与はフロイントの完全アジュバントを、後の4回はフロイントの不完全アジュバントを用いた。5回目の投与の1週間後にマウス及びラットを開腹してそれらの脾臓をとり、ピペッティングにより単細胞を得た。
以下に示す方法でハイブリドーマの1次スクリーニングを行った。抗原としてはラミナリンを用いた。ラミナリンは(1→3)(1→6)BGであり、3重らせん構造の外側の側鎖に(1→6)様式でグルコースが結合した構造を有している。ラミナリンを認識する抗体は、(1→6)様式で結合したグルコースの間の短いβ(1→3)結合を認識している可能性があると考えた。
1)ラミナリン溶液をplateに分注し(50μL/well)、室温で2時間または4℃で一夜静置した。
2)3回洗浄後(400μL/well)、ブロッキング液を分注し(100μL/well)、室温で1時間静置した。
3)3回洗浄後(400μL/well)、培養上清の希釈系列を分注し(50μL/well)、室温で1時間静置した。
4)3回洗浄後(400μL/well)、HRP標識ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体を分注し(50μL/well)、室温で1時間静置した。
5)3回洗浄後(400μL/well)、OPD発色液を分注(50μL/well)し、室温で10分間反応させた。
6)停止液を分注し(50μL/well)、反応を停止し、プレートリーダーで測定した。
7)ラミナリンとの反応性が高かった抗体を産生するハイブリドーマ50種を選別し、以下の競合ELISAに用いた。
以下に示す方法でハイブリドーマの2次スクリーニング(樹立候補株の反応性確認)を行った。
1)ラミナリン溶液をELISA用プレートに分注し(50μL/well)、室温で2時間または4℃で一夜静置した。
2)3回洗浄後(400μL/well)、ブロッキング液を分注し(100μL/well)、室温で1時間静置した。
3)3回洗浄後(400μL/well)、糖鎖(デキストラン、ラミナリン、又はラミナリヘプタオース)を分注した(25μL/well)。続いて培養上清を分注して(25μL/well)室温で1時間静置した。
4)3回洗浄後(400μL/well)、HRP標識ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体を分注し(50μl/well)、室温で1時間静置した。
5)3回洗浄後(400μL/well)、OPD発色液を分注(50μL/well)し、室温で10分間反応させた。
6)停止液を分注し(50μL/well)、反応を停止し、プレートリーダーで測定した。
7)結果を図2に示す。ラミナリン及びラミナリヘプタオースを遊離抗原として用いた場合にいずれも競合が生じた、86207(マウス由来)及び86202R(ラット由来)を選抜した。
得られたハイブリドーマ2種を用いてモノクローナル抗体の精製を行った。各ハイブリドーマ細胞を腹腔注射したマウスから腹水を抽出し、-80℃で凍結保存した。腹水に腹水溶解液を添加し、ウォーターバスで融解後に遠心し、上清を回収した。
回収した上清に50%硫酸アンモニウムを添加した。再度遠心を行い、沈殿画分に再溶解液を添加し、沈殿を溶解させた。溶解させた液を遠心し、上清を回収した。上清を100倍量の透析液(20mM NaPi pH7.5, 100mM NaCl, 1mM EDTA 2Na)を用いて4℃で一晩透析した。透析には、Slide-A-Lyzer Dialysis cassette 10k(Thermo Fisher Scientific社製)を使用した。
重合度が1~7の(1→3)BGを用いて競合ELISAを行い、各重合度の(1→3)BGに対する86202R抗体及び86207抗体の反応性を検証した。重合度が1~7の(1→3)BGとしては、グルコース(重合度1)、ラミナリジオース(重合度2)、ラミナリトリオース(重合度3)、ラミナリテトラオース(重合度4)、ラミナリペンタオース(重合度5)、及びラミナリヘプタオース(重合度7)を用いた。ラミナリヘキサオース(重合度6)については原料確保が困難であったため、検証に用いなかった。グルコースは富士フィルム和光純薬社より購入し、その他の(1→3)BGは、Santa Cruz Biotechnology社から購入したものを用いた。
1)ラミナリンをELISA用プレートに分注し(PBS中1μg/ml, 50μL/well)、4℃で一夜静置した。
2)3回洗浄後(400μL/well)、ブロッキング液を分注し(100μL/well)、室温で1時間静置した。
3)3回洗浄後(400μL/well)、各々の(1→3)BGを分注した(25μL/well、各々の(1→3)BGの濃度は100μg/ml)。続いて86202R抗体液あるいは86207抗体液を分注して(25μL/well)室温で1時間静置した。
4)3回洗浄後(400μL/well)、HRP標識ヤギ抗ラットIgGポリクローナル抗体あるいはHRP標識ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体を分注し(50μl/well)、室温で1時間静置した。
5)3回洗浄後(400μL/well)、OPD発色液を分注(50μL/well)し、室温で10分間反応させた。
6)停止液を分注し(50μL/well)、反応を停止し、プレートリーダーで測定した。
7)86202R抗体の結果を図3に示し、86207抗体の結果を図4に示す。
86202R抗体は、重合度4~7の(1→3)BGを認識した。したがって、重合度4のβ(1→3)結合を認識する抗体であると考えられた。
86207抗体については、重合度4~7の(1→3)BGを認識した。したがって、重合度4のβ(1→3)結合を認識する抗体であると考えられた。また、両抗体の反応性の違いを考慮すると、両抗体は認識部位が若干異なると考えられる。
固相抗体として86207抗体を用い、そしてHRP標識抗体(液相抗体)として86202R抗体を用いてサンドイッチELISAを行い、様々なBGに対する反応性をリムルス試薬と比較した。リムルス試薬に関しては、β-グルカンテストワコー(富士フィルム和光純薬株式会社)(以下「市販試薬1」)及びファンギテック(登録商標)Gテスト ES「ニッスイ」(日水製薬株式会社)(以下「市販試薬2」)を使用し、添付のプロトコルにしたがって実験を行った。なお、使用した抗原は以下の通りである。
1)96穴プレート(nuncイムノプレート,品番442404,Thermo Fisher Scientific)の各ウェルに固相用抗体(5μg/mL,100μL,PBSで希釈)を分注し、室温で2時間、あるいは4℃で一晩静置した。
2)各ウェルの液を除いた後、8連ピペットマンを用いて、各プレートウェルにPBST 200μLを2回分注した(合計400μL)。添加したPBSTを除き、洗浄操作1回分とした。上記操作を3回行った(=PBST 400μLで3回洗浄,以下の操作においても洗浄は同様の手順で行った)。
3)洗浄後、各ウェルにブロッキング液200μLを分注し、室温で1時間以上静置した。
4)ブロッキング液を捨てた後、段階希釈した各々のBGを添加し、60分反応させた。
5)反応後、各ウェルの液を除き、PBST 400μLで3回洗浄した。
6)HRP標識抗体(0.5μg/mL,100μL,ブロッキング液で希釈)を分注し、60分反応させた。
7)反応後、各ウェルの液を除き、PBST 400μLで3回洗浄した。
8)発色液100μLを各ウェルに分注し、室温で10分間反応させた。
9)反応停止液100μLを各ウェルに添加した。
10)マイクロプレートリーダー(Multiskan FC, thermo scientific)で492nmの吸光度を測定した。
市販試薬1では、(1→3)BGを抗原として用いた場合、抗原濃度が0.1ng/mL程度から反応が見られた。また、(1→3)(1→6)BGを抗原として用いた場合にも、抗原濃度が10ng/mL程度から反応が見られた(図6)。それ以外のBGとは反応しなかった。
市販試薬2では、(1→3)BGを抗原として用いた場合、抗原濃度が0.01ng/mL程度から反応が見られた。また、(1→3)(1→6)BGを抗原として用いた場合にも、抗原濃度が1ng/mL程度から反応が見られた(図7)。それ以外のBGとは反応しなかった。
したがって、BGを認識する抗体を用いたサンドイッチELISAは、(1→3)BG及び(1→3)(1→6)BGに対して、和光純薬工業社製のリムルス試薬(市販試薬1)及び日水製薬社製のリムルス試薬(市販試薬2)と同様の反応性を有することが示された。
実施例4では、生体試料を用いて、サンドイッチELISAの検出下限を検討した。固相用抗体として86207抗体を使用し、液相抗体として、HRP標識86202R抗体を使用した。
生体試料(真菌由来のBGを24pg/mL含むヒト血漿、BGは市販試薬2により測定)を、PBSTを用いて段階的に希釈し、希釈系列を調製した。当該検体176μLにアルカリ処理液309.6μL(150mM KOH:水酸化カリウム)を添加し、37℃で15分間インキュベートした。その後、1M Tris/HCl(pH7.5)を394.4μLずつ添加し、アルカリ処理液を中和した(合計880μL, 検体5倍希釈,8測定分)。これらをアルカリ前処理検体とした。
HRP標識キット(同人化学社製, Peroxidase Labeling Kit-SH, LK09)を使用して86202R抗体のHRP標識を行った。標識後のタンパク質定量は、BCA法により行った(キット名:Micro BCA protein assay kit, Thermo Scientific社製, 品番:23235)。
96穴プレート(nuncイムノプレート, 品番442404, Thermo Fisher Scientific社製)の各ウェルに固相用の86207抗体(5μg/mL, 100μL, PBSで希釈)を分注し、4℃で一晩静置した。
各ウェルの液を除いた後、8連ピペットマンを用いて、各プレートウェルにPBST 200μLを2回分注した(合計400μL)。添加したPBSTを除き、これらの操作を洗浄操作1回分とした。上記操作を3回行った(PBST400μLで3回洗浄, 以下の操作においても洗浄は同様の手順で行った)。
洗浄後、各ウェルにブロッキング液200μLを分注し、室温で1時間以上静置した。
ブロッキング液を捨てた後、各前処理を行った検体100μLを各ウェルに添加し、90分反応させた。
反応後、各ウェルの液を除き、PBST400μLで3回洗浄した。
3-2で作製したHRP標識86202R抗体(0.5μg/mL, 100μL, ブロッキング液で希釈)を各ウェルに分注し、30分間反応させた。
反応後、各ウェルの液を除き、PBST400μLで3回洗浄した。
発色液100μLを各ウェルに分注し、室温で10分間反応させた。
反応停止液100μLを各ウェルに添加した。
マイクロプレートリーダー(Multiskan FC, thermo scientific社製を使用)で492nmの吸光度を測定した。各試料はn=8測定を行った。
結果を下記の表2及び図8に示す。表2の吸光度はn=8測定の平均値を表し、SDは標準偏差を示す。
実施例5では、サンドイッチELISAによる測定値と市販試薬1及び2による測定値との相関を、ヒト血漿試料(n=39)を用いて検討した。固相用抗体として86207抗体を使用し、液相抗体として、HRP標識86202R抗体を使用した。
市販試薬1との相関比較では、検体に以下の前処理を行った。ヒト血漿検体14.7μLとPBST29.3μLを添加した後、アルカリ前処理液77.4μL(150mM KOH:水酸化カリウム)を添加し、37℃で15分間インキュベートした。その後、アルカリ前処理液に1M Tris/HCl(pH7.5)を98.6μL添加し、アルカリ前処理液を中和した(合計220μL, 検体15倍希釈, 中和後のpHは7.9未満)。
市販試薬2との相関比較では、検体に以下の前処理を行った。ヒト血漿検体44μLにアルカリ前処理液77.4μL(150mM KOH:水酸化カリウム)を添加し、37℃で15分間インキュベートした。その後、アルカリ前処理液に1M Tris/HCl(pH7.5)を98.6μL添加し、アルカリ前処理液を中和した(合計220μL, 検体5倍希釈, 中和後のpHは7.9未満)。これをアルカリ前処理検体とした。
実施例3と同様の手順で抗体のHRP標識を行った。
実施例3と同様の手順でサンドイッチELISAを行った。各試料はn=2測定を行い、平均値を測定値とした。
市販試薬1及び2の各々の添付文書に記載のプロトコルに従ってBGの測定を行った。
市販試薬1の測定値とELISAによる吸光度との相関を図9に示す。市販試薬2の測定値とELISAによる吸光度との相関を図10に示す。
本発明の免疫学的分析方法の一実施形態のサンドイッチELISAによる吸光度測定値は、市販試薬1及び2のリムルス試薬による測定値のいずれとも相関を示した。
実施例5において使用した86207抗体及び86202R抗体が、市販試薬2のリムルス試薬のカスケード反応を阻害するかどうかを調べるために、これら2種類のモノクローナル抗体と市販試薬2との競合アッセイを実施した。
市販試薬2の添付プロトコルに若干の変更を加えて実験を行った。測定試料は、CM-パキマンを溶解した、1%BSAを含むPBS-Tweenを使用した。10μg/mLの抗体の存在下あるいは非存在下で、測定試料を25℃で60分間インキュベートした。その後、50μLの測定試料に200μLの蒸留水を加えた(抗体の変性を防ぐため、市販試薬2の前処理液は使用しなかった)。37℃で10分間インキュベートした後、測定試料50μLを市販試薬2 300μLに加えた。ESアナライザー(日水製薬社製)を用いて、市販試薬2のカスケード反応を37℃で30分間測定した。
マウスIgG抗体の対照実験として、抗サーファクタントプロテインD抗体(Abcam社製)を使用した。実験は各3回行い、平均値を計算した。
結果を図11に示す。86207抗体及び86202R抗体はいずれも、市販試薬2の活性をそれぞれ80.0%と95.5%抑制した。対照IgG抗体は、抗体の非存在下と比較して、市販試薬2の活性を阻害しなかった。この結果は、86207抗体及び86202R抗体はいずれも、市販試薬2における反応カスケードにおいて、G因子を活性化するBG中の構造を認識することを示している。
86207抗体及び86202R抗体を用いたELISAを用いて、リムルス試薬と同様に真菌感染の診断が行えるかどうかを確認するために、健常人の血漿試料32検体を用いて実験を行った。実験の手順は実施例5(市販試薬2との相関比較)と同じである。結果を図12に示す。
検体の測定値は、いずれもリムルス試薬のカットオフ値20pg/mL未満、中心値は3.6pg/mLであった。したがって、86207抗体及び86202R抗体を用いたELISAを用いて、リムルス試薬と同様に真菌感染の診断を行うことができることが示された。
(1)抗体番号86202Rを産生するハイブリドーマ86202R
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成30年5月17日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE BP-02723
(2)抗体番号86207を産生するハイブリドーマ86207
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成30年5月17日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE BP-02724
Claims (12)
- 重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合するモノクローナル抗体を二種類使用して、生体試料中のβ-D-グルカンを分析することを含む、生体試料中のβ-D-グルカンの免疫学的分析方法。
- 前記生体試料が、血液、血漿、又は血清である、請求項1に記載の免疫学的分析方法。
- 前記β-D-グルカンが、(1→3)-β-D-グルカン及び(1→3)(1→6)-β-D-グルカンである、請求項1又は2に記載の免疫学的分析方法。
- 前記β-D-グルカンの濃度が1μg/mL以下である、請求項1~3のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
- ELISAを用いる、請求項1~4のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
- 対象が深在性真菌症に罹患しているかどうかを判定することをさらに含み、前記判定のカットオフ値が、20pg/mLである、請求項1~5のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
- 前記モノクローナル抗体が、リムルス試薬におけるβ-D-グルカンの分析において競合阻害作用を有する、請求項1~6のいずれかに記載の免疫学的分析方法。
- (a)重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合する第1のモノクローナル抗体を固定化した固相を含み、(b)標識物質で標識された、重合度が4の(1→3)-β-D-グルカンに結合する第2のモノクローナル抗体をさらに含む、生体試料中のβ-D-グルカン分析用キット。
- 前記生体試料が、血液、血漿、又は血清である、請求項8に記載のキット。
- 前記β-D-グルカンが、(1→3)-β-D-グルカン及び(1→3)(1→6)-β-D-グルカンである、請求項8又は9に記載のキット。
- 前記β-D-グルカンの濃度が1μg/mL以下である、請求項8~10のいずれかに記載のキット。
- 深在性真菌症に罹患しているかどうかの判定に用いられ、前記判定のカットオフ値が、20pg/mLである、請求項8~11のいずれかに記載のキット。
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