JP6267436B2 - 接合菌症起因菌の検出及び同定法 - Google Patents

接合菌症起因菌の検出及び同定法 Download PDF

Info

Publication number
JP6267436B2
JP6267436B2 JP2013079280A JP2013079280A JP6267436B2 JP 6267436 B2 JP6267436 B2 JP 6267436B2 JP 2013079280 A JP2013079280 A JP 2013079280A JP 2013079280 A JP2013079280 A JP 2013079280A JP 6267436 B2 JP6267436 B2 JP 6267436B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zygomycosis
region
probe
primer
bacterium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013079280A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014200201A (ja
Inventor
隆 三川
隆 三川
恵利子 藤原
恵利子 藤原
成朗 遠藤
成朗 遠藤
博義 二瓶
博義 二瓶
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
LSI Medience Corp
Original Assignee
LSI Medience Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by LSI Medience Corp filed Critical LSI Medience Corp
Priority to JP2013079280A priority Critical patent/JP6267436B2/ja
Publication of JP2014200201A publication Critical patent/JP2014200201A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6267436B2 publication Critical patent/JP6267436B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、接合菌症の起因菌を簡便かつ正確に検出および同定する方法に関する。
接合菌症(Zygomycosis)は、ケカビ亜門(Mucoromycotina)およびハエカビ亜門(Entomophthoromycotina)に属する真菌によって起因する疾患であり、主要な起因菌として11属18種が報告されている。接合菌症は、深在性真菌症とハエカビ症の2つに大別される。深在性真菌症は、白血病や糖尿病などにより免疫機能の低下した患者へのケカビ亜門に属する真菌の感染により引き起こされる。深在性真菌症の起因菌としては、モルティエレラ・ウォルフィ(Mortierella wolfii)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)、リゾプス・ミクロスポルス(Rhizopus microsporus)、リゾプス・ストロニフェラア(Rhizopus stolonifer)、ムコール・ラモシシムス(Mucor ramosissimus)、ムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、サクセニア・バシフォルミス(Saksenaea vasiformis)、アポフィソマイセス・エレガンス(Apophysomyces elegans)、カニングハメラ・ベルソレティアエ(Cunninghamella bertholletiae)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リケテミア・コリムビフェラ(Lichtheimia corymbifera)、シンセファラストルム・ラセモサム(Syncephalastrum racemosum)が知られている。ハエカビ症は、アフリカ、東南アジア、中南米の熱帯圏に発生する、皮下組織、鼻腔、副鼻腔の限局性肉芽腫性病巣を生じる感染症である。ハエカビ症の起因菌としては、ハエカビ亜門に属するコニディオボルス・ブレフェルディアヌス(Conidiobolus brefeldianus)、コニディオボルス・コロナタス(Conidiobolus coronatus)、コニディオボルス・インコングルス(Conidiobolus incongruus)、およびコニディオボルス・ランプラゲス(Conidiobolus lamprauges)、ならびに亜門所属未定のバシディオボルス・メリストスポラス(Basidiobolus meristosporus)が知られている。なお、コニディオボルス属真菌による接合菌症を、コニディオボルス症という場合がある。
近年、ハエカビ亜門のコニディオボルス・ランプラゲス(Conidiobolus lamprauges)
やコニディオボルス・インコングルス(Conidiobolus incongruus)による肺やその他の
臓器への侵襲性感染例が、北米、南米、アフリカ、インド、および日本において報告されている。例えば、日本においては、播種性コニディオボルス症の致死的な症例が報告されている(非特許文献1)。同症例は、悪性リンパ腫に対する骨髄移植が実施された患者が、膵炎、肺炎、および血球貧食症候群を合併し、最終的に呼吸不全で死亡したものである。同症例においては、剖検により、肺、心臓、腎臓、膀胱、脾臓、甲状腺において菌糸が確認され、分離された起因菌はコニディオボルス・ランプラゲス(Conidiobolus lamprauges)と同定された。
接合菌症は免疫機能の低下した患者の増加に伴い世界的に発症率が増加する傾向にある。 米国のKontoyiannisらが発表した症例対象研究(27例)によれば、2000年〜2003年の4年間にアスペルギルス属の真菌によるアスペルギルス症の発生頻度が減り、接合菌症が増加傾向にあることが示されている(非特許文献2)。亀井らによるアンケート配布調査の結果では、我が国における接合菌症の発症例数は1995年〜2000年にかけては横這い状態であるが、2001年〜2010年の間に10倍近く増加していることが示されている(非特許文献3)。
接合菌症のほとんどは、吸入された胞子が気道粘膜からの侵入することによって発症するといわれている。ケカビ亜門およびハエカビ亜門の菌は、血管壁やリンパ管壁内で増殖および穿孔し、血中やリンパ液中で好んで増殖するため、血管炎、血栓形成による梗塞が
起こり、末梢組織は壊死するとされている。さらに血管壁侵襲の結果、血流に沿って全身に転移するといわれている。
接合菌症にはamphotericin B あるいはliposomal amphotericin Bが有効な抗真菌剤で
あることが知られている。接合菌症起因菌を迅速、確実に検出、同定することは接合菌症に対する治療戦略を組み立てるうえで必要不可欠である。
接合菌症の病理診断は、病変部を生検あるいは切除して組織学的手法を用いて菌糸を証明することにより行うが、接合菌症はアスペルギルス症と同様に血管侵襲性が強いため、菌体の形態から両者を鑑別することは難しいとされている。真菌学的診断は、喀痰、肺胞洗浄液、および胸水等の臨床材料や、生検検体および切除検体等の検体の培養や塗抹によって行なわれるが、病理組織学的に接合菌の感染が明らかな症例であっても検体から接合菌が培養される割合は極めて低いとされている。アスペルギルスなどの子嚢菌類と異なり、接合菌症起因菌の菌糸体は通常多核管状の菌糸からなり、若い菌糸体では細胞内容物の移動遮断を目的とした隔壁がないため、例えば、細胞の一か所が損傷を受けると、周辺の菌糸体に影響がおよび菌糸体の活性が低下してしまう。採取部位や採取法にもよるが、病変部では菌のviabilityが低くなっていると推定され、培養陰性となることが多いと考えられる。また、培養できたとしても、属や種の同定の指標となっている無性生殖器官(胞子嚢や分生子)や有性生殖器官(接合胞子)が培地上で形成されなかったり、形成までに時間がかかったりするため、診断が一層困難となっている。
また、ケカビ亜門やハエカビ亜門の真菌は、細胞壁にβ-D-glucanを保有しないか、保
有していても極微量のため、β-D-glucan値は無効とされている。他の血清学的診断法の
有効な手段は現在のところなく、生前診断は困難なことが多い。
このように、接合菌症であると迅速かつ確実に診断するため方法は未だ開発されていない。従って、直接的で迅速かつ確実な接合菌症起因菌の検出および同定法の開発が望まれている。特に、播種性の接合菌症は限局性の接合菌症に比べて難治性で予後不良であることから、早期診断法の開発が急がれている。
これらの事情に鑑み、古くからパラフィン切片を用いた病理組織学的観察法が接合菌症やアスペルギルス症の診断に使われてきた。組織内に観察される菌量が多い場合には、接合菌症起因菌(直角方向の分岐)か、あるいはアスペルギルス症起因菌(45度の分岐角を持ったY字状分岐)かの判別は可能であるが、組織内に観察される菌量が少ない場合や宿主の防衛反応や抗真菌剤投与によって菌が複雑に変形している場合には、病理標本のみの観察では診断に限界がある。
ところで、2000年代に入って、in situ hybridization(ISH)、Fluorescense in situ
hybridization(FISH)、およびPCR法等の核酸診断法の技術進歩により、自然界に生存
する微生物の核酸をバイオマーカーとして、培養することなく簡単に環境中の微生物相を解析したり、動態変化を解析したりすることが可能となった。
分子生物学的な診断における手法は、相同と考えられる遺伝子の塩基配列を比較することが一般的である。例えば、真菌において、18S リボソームDNA(以下18S rDNA)には高
度に保存された領域とV3、V4、V5、およびV7領域等の可変領域に富んだ遺伝子が混在しており、科(family)、目(order)、綱(class)、またはそれ以上の高次分類群の系統関係の解明、および属や種の検出や同定に使われている(特許文献1)。特にV4領域は著しく変異に富んだ領域を含んでおり、属や種を識別する指標として用いられている(非特許文献4)。
しかしながら、分子生物学的手法を用いた直接的で迅速かつ確実な接合菌症起因菌の検出法および同定法は確立されていない。
特開2007-174902号公報
Kimuraら, Jounal of Clinical Microbiology, 2011年, 49, P.752-756 Kontoyiannisら, The Journal of Infectious Diseases, 2005年, 191: P.1350-P.1360)) 亀井ら, 感染症学雑誌, 2011年, 第85巻 第4号 P.448 R Bialekら, J Clin Pathol, 2005年, 58: P.1180-1184
本発明の目的は、分子生物学的手法を用いた直接的で迅速かつ確実な接合菌症起因菌の検出法および同定法を確立し提供することにある。特には、播種性コニディオボルス症起因菌の検出法および同定法を確立し提供することにある。
本発明者らは、非特許文献1(Kimuraら, Jounal of Clinical Microbiology, 2011年,
49, P.752-756)に記載の、播種性コニディオボルス症の致死的な症例における剖検例を対象に、接合菌症起因菌の分子生物学的検出法の検討を行った。なお、非特許文献1に記載の播種性コニディオボルス症起因菌(IFM58391)の18S rDNAおよび28S rDNAの塩基配列を決定し、系統解析を行ったところ、当該起因菌は、コニディオボルス・ランプラゲス(Conidiobolus lamprauges)ではなく、新規なコニディオボルス属の1菌種(Conidiobolus sp.)であることが明らかとなった。
検討の結果、18S rDNAのV4領域を対象として、接合菌症起因菌であるハエカビ亜門に属する播種性コニディオボルス属真菌に特異的なプローブを用いることによって、コニディオボルス属真菌による感染が確認された剖検症例のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から、類似の真菌を検出することなく、正確かつ簡便にコニディオボルス属真菌を検出および同定できることを見出し、本発明を完成させた。
また、18S rDNAのV4領域を対象として、前記コニディオボルス属真菌に特異的なプライマーセットで遺伝子断片が増幅できるか否かを判定することにより、正確かつ簡便にコニディオボルス属真菌を検出および同定できることを見出し、更に、前記の増幅された遺伝子断片の塩基配列解析により、正確かつ簡便にコニディオボルス属真菌を検出および同定できることも見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおり例示できる。
[1]
接合菌症起因菌を検出する方法であって、
検体中の核酸と、目的の接合菌症起因菌に特異的なプローブとを、ハイブリダイズさせる工程を含み、
前記プローブが、18S rDNAのV4領域から選択される30塩基以上の長さの領域において、前記接合菌症起因菌と70%以上の相同性を有し、且つ、前記接合菌症起因菌以外の真菌と69%以下の相同性を有するプローブである、方法。
[2]
前記18S rDNAのV4領域から選択される領域が、配列番号13に示す塩基配列の614〜740番目に相当する領域から選択される30塩基以上の長さの領域を含む、前記方法。[3]
前記プローブが、以下の(A)および(B)からなる群より選択されるプローブである、前記方法:
(A)18S rDNAのV4領域から選択される、配列番号13に示す塩基配列の614〜740番目に相当する領域を含む領域において、前記接合菌症起因菌と70%以上の相同性を有し、且つ、前記接合菌症起因菌以外の真菌と69%以下の相同性を有するプローブ;
(B)前記プローブAにおいて、1または数個の塩基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むプローブ。
[4]
前記プローブが、前記18S rDNAのV4領域から選択される領域において、前記接合菌症起因菌と90%以上の相同性を有する、前記方法。
[5]
前記プローブが、前記18S rDNAのV4領域から選択される領域において、前記接合菌症起因菌以外の真菌と60%以下の相同性を有する、前記方法。
[6]
接合菌症起因菌を検出する方法であって、
検体中のDNAを鋳型として、目的の接合菌症起因菌に特異的なセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットを用いたPCRにより、前記接合菌症起因菌の遺伝子を増幅する工程を含み、
前記センスプライマーおよび前記アンチセンスプライマーが、それぞれ、18S rDNAのV4領域から選択される10塩基以上の長さの領域において、前記接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプライマーである、方法。
[7]
接合菌症起因菌を検出する方法であって、
検体中のDNAを鋳型として、真菌共通プライマーセットを用いた第1のPCRにより、真菌の遺伝子を増幅する工程、および
増幅された真菌の遺伝子を鋳型として、目的の接合菌症起因菌に特異的なセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットを用いた第2のPCRにより、前記接合菌症起因菌の遺伝子を増幅する工程を含み、
前記真菌共通プライマーセットは、少なくとも、前記接合菌症起因菌の遺伝子中の、前記第2のPCRにより増幅される遺伝子を含む領域を増幅可能であり、
前記センスプライマーおよび前記アンチセンスプライマーが、それぞれ、18S rDNAのV4領域から選択される10塩基以上の長さの領域において、前記接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプライマーである、方法。
[8]
前記18S rDNAのV4領域から選択される領域が、配列番号13に示す塩基配列の614〜634番目に相当する領域を含む領域、配列番号13に示す塩基配列の721〜740番目に相当する領域を含む領域、または配列番号13に示す塩基配列の854〜873番目に相当する領域、から選択される10塩基以上の長さの領域を含む、前記方法。
[9]
前記センスプライマーおよび前記アンチセンスプライマーが、それぞれ、以下の(a)および(b)からなる群より選択されるプライマーである、前記方法:
(a)18S rDNAのV4領域から選択される、配列番号13に示す塩基配列の614〜634番目に相当する領域を含む領域、配列番号13に示す塩基配列の721〜740番目に相当する領域を含む領域、または配列番号13に示す塩基配列の854〜873番目に相当する領域において、前記接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプライマー;
(b)前記プライマーaにおいて、1または数個の塩基の置換、欠失、挿入、および/ま
たは付加を含むプライマー。
[10]
前記センスプライマーおよび前記アンチセンスプライマーが、それぞれ、前記18S rDNAのV4領域から選択される領域において、前記接合菌症起因菌と90%以上の相同性を有し、且つ、前記接合菌症起因菌以外の真菌と50%以下の相同性を有する、前記方法。
[11]
検体からDNAを調製する工程を含み、調製されたDNAを鋳型としてPCRが実施される、前記方法。
[12]
増幅された前記接合菌症起因菌の遺伝子をシークエンス解析する工程を含む、前記方法。
[13]
前記接合菌症起因菌が、ハエカビ亜門に属する真菌である、前記方法。
[14]
前記ハエカビ亜門に属する真菌が、コニディオボルス(Conidiobolus)属真菌である、前記方法。
[15]
前記コニディオボルス属真菌が、播種性のコニディオボルス属真菌である、前記方法。
本発明により、従来は達成し得なかった接合菌症起因菌(ケカビ亜門あるいはハエカビ亜門に属する真菌)を特異的かつ簡便に検出あるいは同定することが可能となり、接合菌症の遺伝子検査を容易に行うことが可能となる。また、本発明の一実施形態においては、従来遺伝子検査法が知られていなかったハエカビ亜門に属する真菌(特に、播種性コニディオボルス属真菌)を特異的かつ簡便に検出あるいは同定することが可能となる。よって、本発明は、接合菌症の早期の治療が可能となるのみならず、接合菌症の感染源や感染機構の解明等に有用である点でも、臨床的意義が高い。
接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域のアラインメントを示す図。図中、各真菌の塩基配列の塩基番号は、当該真菌の18S rDNAの塩基配列における塩基番号を示す(以下の図で、同じ)。また、図中、プライマーに併記された塩基番号は、Conidiobolus sp. IFM58391の18S rDNAの塩基配列(配列番号13)における塩基番号を示す(以下の図で、同じ)。 接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域のアラインメントを示す図(続き)。 接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域のアラインメントを示す図(続き)。 接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域のアラインメントを示す図(続き)。 接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域のアラインメントを示す図(続き)。 接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域のアラインメントを示す図(続き)。 接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域のアラインメントを示す図(続き)。
本発明の方法は、接合菌症起因菌を検出する方法である。「接合菌症起因菌を検出する」ことには、検体中の接合菌症起因菌の有無を判定することや検体中の接合菌症起因菌の種類を同定することが含まれる。すなわち、本発明において、「検出」には、特記しない限り、「同定」が含まれていてよい。「接合菌症起因菌の種類を同定する」とは、例えば、接合菌症起因菌の属、種、または株を同定することを意味してよい。
検体としては、例えば、接合菌症患者または該患者の疑いのあるヒトに由来する臨床材料を使用することができる。臨床材料としては、例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋
(FFPE)組織、凍結組織、血液、喀痰、肺胞洗浄液、胸水、尿、糞便等が挙げられる。また、検体としては、培養された菌体を使用することもできる。検体は、例えば、接合菌症の種類等に応じて適宜選択された組織から分離して使用することができる。
検体は、そのまま接合菌症起因菌の検出に使用されてもよく、適宜前処理をしてから接合菌症起因菌の検出に使用されてもよい。例えば、検体は、本発明の方法で用いられる接合菌症起因菌の検出手段等に応じて、適宜、遺伝子検査用の試料として調製することができる。検体を遺伝子検査用の試料として調製する方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。前処理として、具体的には、例えば、検体切片の作製や検体からの核酸の抽出が挙げられる。
接合菌症としては、深在性真菌症やハエカビ症等が挙げられる。
接合菌症の内、深在性真菌症の起因菌としては、ケカビ亜門に属する真菌が現在9属12種知られている。具体的には、モルティエレラ・ウォルフィ(Mortierella wolfii)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)、リゾプス・ミクロスポルス(Rhizopus microsporus)、リゾプス・ストロニフェラア(Rhizopus stolonifer)、ムコール・ラモシシムス(Mucor ramosissimus)、ムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、サクセニア・バシフォルミス(Saksenaea vasiformis)、アポフィソマイセス・エレガンス(Apophysomyces elegans)、カニングハメラ・ベルソレティアエ(Cunninghamella bertholletiae)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リケテミア・コリムビフェラ(Lichtheimia corymbifera)、シンセファラストルム・ラセモサム(Syncephalastrum racemosum)が挙げられる。
接合菌症の内、ハエカビ症の起因菌としては、ハエカビ亜門に属する真菌が現在1属5種、および亜門所属未定の真菌が現在1属1種、知られている。具体的には、ハエカビ亜門に属するコニディオボルス・ブレフェルディアヌス(Conidiobolus brefeldianus)、
コニディオボルス・コロナタス(Conidiobolus coronatus)、コニディオボルス・インコングルス(Conidiobolus incongruus)、コニディオボルス・ランプラゲス(Conidiobolus lamprauges)、および播種性のコニディオボルス属の1菌種(Conidiobolus sp.)、ならびに亜門所属未定のバシディオボルス・メリストスポルス(Basidiobolus meristosporus)が挙げられる。
本発明の方法においては、ハエカビ亜門に属する真菌を検出できるのが好ましく、コニディオボルス属真菌を検出できるのがより好ましく、播種性のコニディオボルス属真菌を検出できるのがさらに好ましく、播種性のコニディオボルス属の1菌種であるConidiobolus sp.を検出できるのがさらに好ましく、播種性のコニディオボルス属の1菌株であるConidiobolus sp. IFM58391を検出できるのが特に好ましい。ここでいう「Conidiobolus sp.」とは、分類学上、Conidiobolus sp. IFM58391と同種に分類される真菌をいう。
本発明の方法において検出対象となる接合菌症起因菌を、「目的の接合菌症起因菌」ともいう。
本発明の方法においては、18S rDNAのV4領域の一部または全体を利用して、接合菌症起因菌を検出する。Conidiobolus sp. IFM58391の18S rDNAの塩基配列を、配列番号13に
示す。本発明において、「18S rDNAのV4領域」とは、18S rDNA中の、配列番号13に示す塩基配列の578〜929番目に相当する領域をいう。Conidiobolus sp. IFM58391の18S
rDNAのV4領域の塩基配列を、配列番号1に示す。
本発明の方法の第一の実施形態では、目的の接合菌症起因菌に特異的なプローブを検体
中の核酸とハイブリダイズさせることにより、該接合菌症起因菌を精度良く検出することができる。すなわち、本発明の方法の第一の実施形態は、検体中の核酸と、目的の接合菌症起因菌に特異的なプローブとを、ハイブリダイズさせる工程を含む、接合菌症起因菌を検出する方法である。
本発明の方法の第一の実施形態において用いられる目的の接合菌症起因菌に特異的なプローブは、18S rDNAのV4領域の一部または全体の塩基配列を対象とする、目的の接合菌症起因菌を特異的に検出可能なプローブである。
目的の接合菌症起因菌に特異的なプローブとしては、18S rDNAのV4領域から選択される領域において、目的の接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプローブが挙げられる。「18S rDNAのV4領域から選択される領域において、目的の接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプローブ」とは、18S rDNAのV4領域から選択される領域において、目的の接合菌症起因菌と高い相同性を有し、且つ、目的の接合菌症起因菌以外の真菌と低い相同性を有するプローブをいう。
目的の接合菌症起因菌との高い相同性とは、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上の相同性であってよく、100%以下の相同性であってよい。目的の接合菌症起因菌以外の真菌との低い相同性とは、例えば、69%以下、65%以下、または60%以下の相同性であってよく、0%以上、30%以上、40%以上、または50%以上の相同性であってよい。目的の接合菌症起因菌以外の真菌との低い相同性とは、具体的には、例えば、30%以上69%以下、好ましくは40%以上65%以下、より好ましくは50%以上60%以下の相同性であってよい。
18S rDNAのV4領域から選択される領域は、例えば、30塩基以上、50塩基以上、100塩基以上、または150塩基以上の長さの領域であってよい。また、18S rDNAのV4領域から選択される領域は、例えば、400塩基以下、300塩基以下、または250塩基以下の長さの領域であってよい。
18S rDNAのV4領域から選択される領域は、18S rDNAのV4領域中の特定の領域を含んでいてよい。
当該特定の領域は、例えば、30塩基以上、50塩基以上、100塩基以上、または150塩基以上の長さの領域であってよい。また、当該特定の領域は、例えば、400塩基以下、300塩基以下、または250塩基以下の長さの領域であってよい。
当該特定の領域としては、例えば、18S rDNAのV4領域中の、配列番号13に示す塩基配列の614〜740番目に相当する領域から選択される領域、配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目に相当する領域から選択される領域、および配列番号13に示す塩基配列の592〜821番目に相当する領域から選択される領域、が挙げられる。
当該特定の領域としては、例えば、18S rDNAのV4領域中の、配列番号13に示す塩基配列の614〜740番目に相当する領域、配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目に相当する領域、および配列番号13に示す塩基配列の592〜821番目に相当する領域、も挙げられる。
プローブは、DNAプローブであってもよく、RNAプローブであってもよく、DNAとRNAのキメラプローブであってもよい。プローブは、RNAプローブであるのが好ましい。プローブは、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。プローブが二本鎖である場合、それぞれの鎖は、独立に、DNA、RNA、またはDNAとRNAのキメラで
あってよい。プローブは、一本鎖であるのが好ましい。プローブは、具体的には、一本鎖RNAプローブであるのが好ましい。
プローブは、18S rDNAのV4領域のセンス鎖の塩基配列を対象としてもよく、18S rDNAのV4領域のアンチセンス鎖の塩基配列を対象としてもよい。プローブは、18S rDNAを対象としてもよく、18S rRNAを対象としてもよい。すなわち、プローブは、センスプローブであってもよく、アンチセンスプローブであってもよい。プローブは、検体の種類やハイブリダイゼーションの条件等の諸条件に応じて、所望の検出感度を達成できるものを選択して用いればよい。通常は、アンチセンスプローブを用い、18S rRNAを対象として目的の接合菌症起因菌を検出するのが好ましい。アンチセンスプローブを用いて目的の接合菌症起因菌を検出する場合、センスプローブを陰性対照として用いてもよい。
プローブは、例えば、10塩基以上、30塩基以上、50塩基以上、100塩基以上、または150塩基以上の長さであってよい。また、プローブは、例えば、400塩基以下、300塩基以下、または250塩基以下の長さであってよい。
接合菌症起因菌に特異的なプローブとして、具体的には、例えば、配列番号13に示す塩基配列の614〜740番目の塩基配列の相補配列を含むプローブ、配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目の塩基配列の相補配列を含むプローブ、および配列番号13に示す塩基配列の592〜821番目の塩基配列の相補配列を含むプローブが挙げられる。これらのプローブは、例えば、コニディオボルス属真菌、特に、Conidiobolus sp.
IFM58391に特異的である。配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目の塩基配
列を、配列番号2に示す。すなわち、コニディオボルス属真菌、特に、Conidiobolus sp.
IFM58391に特異的なプローブとして、具体的には、例えば、配列番号2に示す塩基配列
を含むプローブおよび配列番号2に示す塩基配列の相補配列を含むプローブが挙げられる。
なお、プローブを構成する核酸がRNAである場合、塩基配列の「T」を「U」に読み替えてよい。すなわち、例えば、「配列番号2に示す塩基配列の相補配列を含むプローブ」とは、プローブがRNAプローブである場合には、配列番号2に示す塩基配列の相補配列中の全ての「T」を「U」に読み替えた塩基配列を含むプローブを意味する。
「目的の接合菌症起因菌を特異的に検出可能」とは、目的の接合菌症起因菌は検出するが、目的の接合菌症起因菌以外の真菌は検出しないことを意味する。「検出する」および「検出しない」の基準は、シグナルの検出手段、ハイブリダイズの条件、検体の態様等の諸条件に応じて適宜設定することができる。なお、「検出しない」とは、必ずしも、検体中の核酸にハイブリダイズしたプローブに基づくシグナルが一切存在しないことを意味しなくてもよい。すなわち、「検出しない」ことには、シグナルが一切存在しない場合に加えて、シグナルが存在するが検出していないと判断できる場合も含まれる。「シグナルが存在するが検出していないと判断できる場合」とは、例えば、シグナルが存在するが、シグナルの量が、検出限界以下である場合や、目的の接合菌症起因菌が検体中に存在していたとすれば検出されるべきシグナルの量と比較して有意に少ない場合、が挙げられる。なお、「目的の接合菌症起因菌以外の真菌」とは、本発明の方法において目的の接合菌症起因菌と判別されるべき真菌を意味する。すなわち、「目的の接合菌症起因菌以外の真菌は検出しない」とは、本発明の方法において目的の接合菌症起因菌と判別されるべき真菌が検出されなければよい。よって、例えば、コニディオボルス属真菌とリゾプス属真菌およびアスペルギルス属真菌とを判別する場合、コニディオボルス属真菌は検出するが、少なくともリゾプス属真菌およびアスペルギルス属真菌は検出しないプローブを用いればよい。具体的には、例えば、配列番号2に示す塩基配列の相補配列を有するプローブは、特に、Conidiobolus sp. IFM58391を、リゾプス属真菌やアスペルギルス属真菌から精度良く判別することができる。また、配列番号2に示す塩基配列は、他の4種のコニディオボルス属真菌と54〜75%の相同性(Conidiobolus brefeldianus;54%、Conidiobolus coronatus;65%、Conidiobolus incongruus;57%、Conidiobolus lamprauges;75%)を有し、リゾプス属真菌やアスペルギルス属真菌とは約60%の相同性を有する。よって、配列番号2に示す塩基配列の相補配列を有するプローブは、Conidiobolus sp. IFM58391に加えて、他の4種のコニディオボルス属真菌から選択される1またはそれ以上の種、例えばConidiobolus lampraugesを、リゾプス属真菌やアスペルギルス属真菌から判別し得る。
プローブは、目的の接合菌症起因菌を特異的に検出することができる限り、上述したようなプローブにおいて、1または数個の塩基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むプローブであってもよい。例えば、プローブの5’末端には、ハイブリダイズの対象となる塩基配列にマッチした数塩基の付加があってもよい。「1または数個」とは、プローブの長さにもよるが、例えば、1個、1〜2個、1〜3個、1〜4個、1〜5個、1〜7個、1〜10個、1〜20個、1〜30個、または1〜50個であってよい。また、「1または数個」とは、例えば、プローブ全長の、20%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の個数であってよい。このような1または数個の塩基の置換等を含むプローブを、「バリアント」ともいう。なお、このようなプローブのバリアント自体が、目的の接合菌症起因菌と高い相同性を有し、且つ、目的の接合菌症起因菌以外の真菌と低い相同性を有していてよい。
プローブは、公知の手法により製造することができる。例えば、in vitro transcription法により、RNAプローブを製造することができる。
検体に対して上記のようなプローブを用いてハイブリダイゼーションを行い、検体中の核酸にハイブリダイズしたプローブに基づくシグナルを検出することで、目的の接合症起因菌を検出することができる。具体的には、例えば、検体中の核酸にハイブリダイズしたプローブに基づくシグナルが検出された場合、検体中に目的の接合菌症起因菌が存在すると判定することができる。ハイブリダイゼーションやシグナルの検出等の各種操作は、公知の手法により実施することができる。すなわち、例えば、検体に、プローブおよび反応バッファーを加え、適宜設定した温度条件でハイブリダイゼーションを行い、洗浄し、シグナルを検出すればよい。ハイブリダイゼーション条件や洗浄条件等の反応条件は、検体の態様、プローブの長さ、プローブと目的の接合菌症起因菌の相同性等の諸条件に応じて適宜設定できる。シグナルの検出は、プローブの標識の種類に応じた手法により行うことができる。例えば、標識したプローブの発色を検出することにより、目的の接合菌症起因菌の有無を確認できる。
本発明の方法の第二の実施形態では、目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーセットを用いてPCRを行い、検体中のDNAを増幅することにより、接合菌症起因菌を精度良く検出することができる。すなわち、本発明の方法の第二の実施形態は、検体中のDNAを鋳型として、目的の接合菌症起因菌に特異的なセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットを用いたPCRにより、前記接合菌症起因菌の遺伝子を増幅する工程を含む、接合菌症起因菌を検出する方法である。
本発明の方法の第二の実施形態において、PCRの対象となる「検体中のDNA」とは、検体に含有されたままのDNAであっても良いし、検体から調製されたDNAであっても良い。すなわち、本発明の方法の第二の実施形態は、検体からDNAを調製する工程を含んでいてもよい。検体からDNAを調製した場合、調製されたDNAを鋳型としてPCRを実施することができる。
本発明の方法において用いられる目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーセットは、目的の接合菌症起因菌の遺伝子、具体的には18S rDNAのV4領域の一部または全体の塩基配列、を特異的に増幅可能なセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットである。
センスプライマーとアンチセンスプライマーは、対になって、目的の接合菌症起因菌の遺伝子を増幅可能に設計される。
目的の接合菌症起因菌に特異的な各プライマー(センスプライマーおよびアンチセンスプライマーのそれぞれ)としては、18S rDNAのV4領域から選択される領域において、目的の接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプライマーが挙げられる。「18S rDNAのV4領域から選択される領域において、目的の接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプライマー」とは、18S rDNAのV4領域から選択される領域において、目的の接合菌症起因菌と高い相同性を有し、且つ、目的の接合菌症起因菌以外の真菌と低い相同性を有するプライマーをいう。
目的の接合菌症起因菌との高い相同性とは、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上の相同性であってよく、100%以下の相同性であってよい。目的の接合菌症起因菌以外の真菌との低い相同性とは、例えば、50%以下、30%以下、または10%以下の相同性であってよく、0%以上の相同性であってよい。
18S rDNAのV4領域から選択される領域は、例えば、10塩基以上、15塩基以上、または20塩基以上の長さの領域であってよい。また、18S rDNAのV4領域から選択される領域は、例えば、50塩基以下、または30塩基以下の長さの領域であってよい。
18S rDNAのV4領域から選択される領域は、18S rDNAのV4領域中の特定の領域を含んでいてよい。
当該特定の領域は、例えば、10塩基以上、15塩基以上、または20塩基以上の長さの領域であってよい。また、当該特定の領域は、例えば、50塩基以下、または30塩基以下の長さの領域であってよい。
当該特定の領域としては、例えば、18S rDNAのV4領域中の、配列番号13に示す塩基配列の614〜634番目に相当する領域から選択される領域、配列番号13に示す塩基配列の721〜740番目に相当する領域から選択される領域、および配列番号13に示す塩基配列の854〜873番目に相当する領域から選択される領域、が挙げられる。
当該特定の領域としては、例えば、18S rDNAのV4領域中の、配列番号13に示す塩基配列の614〜634番目に相当する領域、配列番号13に示す塩基配列の721〜740番目に相当する領域、および配列番号13に示す塩基配列の854〜873番目に相当する領域、も挙げられる。
目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーセットとしては、例えば、目的の接合菌症起因菌特異的に、18S rRNAのV4領域中の、配列番号13に示す塩基配列の614〜740番目に相当する領域を含む領域を増幅可能なプライマーセット、および配列番号13に示す塩基配列の614〜873番目に相当する領域を含む領域を増幅可能なプライマーセットが挙げられる。
プライマーは、DNAプライマーであってもよく、RNAプライマーであってもよく、DNAとRNAのキメラプライマーであってもよい。
プライマーは、例えば、10塩基以上、15塩基以上、または20塩基以上の長さであってよい。また、プライマーは、例えば、50塩基以下、または30塩基以下の長さであってよい。
プライマーは、少なくとも、その3’末端が、目的の接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域にハイブリダイズするように設計されるのが好ましい。また、プライマーは、少なくとも、その3’末端が、目的の接合菌症起因菌以外の真菌の18S rDNAのV4領域にハイブリダイズしないように設計されるのが好ましい。
接合菌症起因菌に特異的なプライマーとして、具体的には、例えば、配列番号10に示す塩基配列を含むプライマー、配列番号11に示す塩基配列を含むプライマー、および配列番号12に示す塩基配列を含むプライマーが挙げられる。これらのプライマーは、例えば、コニディオボルス属真菌、特に、Conidiobolus sp. IFM58391に特異的である。これ
らのプライマーから、対になって機能するものを選択することができる。例えば、センスプライマーとして、配列番号10に示す塩基配列を含むプライマーを選択し、アンチセンスプライマーとして、配列番号11に示す塩基配列を含むプライマーまたは配列番号12に示す塩基配列を含むプライマーを選択することができる。
なお、プライマーを構成する核酸がRNAである場合、塩基配列の「T」を「U」に読み替えてよい。すなわち、例えば、「配列番号10に示す塩基配列を含むプライマー」とは、プライマーがRNAプライマーである場合には、配列番号10に示す塩基配列中の全ての「T」を「U」に読み替えた塩基配列を含むプライマーを意味する。
プライマーは、目的の接合菌症起因菌の遺伝子を特異的に増幅することができる限り、上述したようなプライマーにおいて、1または数個の塩基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むプライマーであってもよい。例えば、プライマーの5’末端には、鋳型の塩基配列にマッチした数塩基の付加があってもよい。「1または数個」とは、プライマーの長さにもよるが、例えば、1個、1〜2個、1〜3個、1〜4個、または1〜5個であってよい。また、「1または数個」とは、例えば、プライマー全長の、20%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の個数であってよい。このような1または数個の塩基の置換等を含むプライマーを、「バリアント」ともいう。なお、このようなプライマーのバリアント自体が、目的の接合菌症起因菌と高い相同性を有し、且つ、目的の接合菌症起因菌以外の真菌と低い相同性を有していてよい。
「目的の接合菌症起因菌の遺伝子を特異的に増幅可能」とは、目的の接合菌症起因菌の遺伝子は増幅するが、目的の接合菌症起因菌以外の真菌の遺伝子は増幅しないことを意味する。「増幅する」および「増幅しない」の基準は、増幅断片の検出手段、PCRの条件、検体の態様等の諸条件に応じて適宜設定することができる。なお、「増幅しない」とは、必ずしも、増幅断片が一切生じないことを意味しなくてもよい。すなわち、「増幅しない」ことには、増幅断片が一切生じない場合に加えて、増幅断片が生じるが増幅していないと判断できる場合も含まれる。「増幅断片が生じるが増幅していないと判断できる場合」とは、例えば、増幅断片が生じるが、増幅断片の量が、検出限界以下である場合や、目的の接合菌症起因菌が検体中に存在していたとすれば検出されるべき増幅断片の量と比較して有意に少ない場合、が挙げられる。なお、「目的の接合菌症起因菌以外の真菌」とは、本発明の方法において目的の接合菌症起因菌と判別されるべき真菌を意味する。すなわち、「目的の接合菌症起因菌以外の真菌の遺伝子は増幅しない」とは、本発明の方法において目的の接合菌症起因菌と判別されるべき真菌の遺伝子が増幅されなければよい。よって、例えば、コニディオボルス属真菌とリゾプス属真菌およびアスペルギルス属真菌とを判別する場合、コニディオボルス属真菌の遺伝子は増幅するが、少なくともリゾプス属真菌およびアスペルギルス属真菌の遺伝子は増幅しないプライマーセットを用いればよい。配列番号10、11、および12は、Conidiobolus sp. IFM58391と100%の相同性を有することから、これらの塩基配列を有するプライマーから選択されるプライマーのセットを用いることにより、特に、Conidiobolus sp. IFM58391を精度良く検出することができる。
本発明の方法の第二の実施形態は、上述した目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーセットにより目的の接合菌症起因菌の遺伝子を増幅する工程の前に、さらに、当該特異的プライマーセットにより増幅される遺伝子を含む領域を増幅可能なプライマーセットにより、目的の接合菌症起因菌の遺伝子を増幅する工程を含んでいてもよい。
すなわち、第1回目のPCRによって、検体中のDNAを鋳型として、少なくとも目的の接合菌症起因菌の遺伝子を増幅可能なプライマーセットを用いて目的の接合菌症起因菌の遺伝子を増幅し、次いで、第2回目のPCRによって、第1回目のPCRの増幅産物を鋳型として、目的の接合菌症起因菌に特異的なセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットを用いて、当該第1回目のPCRの増幅産物に含まれる目的の接合菌症起因菌の遺伝子、具体的には18S rDNAのV4領域の一部または全体の塩基配列、を増幅し、目的の接合菌症起因菌を特異的に検出する。このような方法は、一般的にネステッドPCR(nested PCR)法と呼ばれる。
第1回目のPCRに用いられるプライマーセットは、少なくとも、目的の接合菌症起因菌の遺伝子中の、第2回目のPCRにより増幅される遺伝子を含む領域を増幅可能なものであれば、特に制限されない。第1回目のPCRに用いられるプライマーセットとしては、例えば、真菌に共通なプライマー同士のセット(真菌共通プライマーセット)、真菌に共通なプライマーと目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーのセット、および目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマー同士のセットが挙げられる。第1回目のPCRに用いられるプライマーセットと第2回目のPCRに用いられるプライマーセットは、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーの両方が同一であってもよく、片方のみが同一であってもよく、両方が異なっていてもよい。また、第1回目のPCRで目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーが用いられる場合、第1回目のPCRで用いられる目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーと第2回目のPCRで用いられる目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、第1回目のPCRで目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーが用いられる場合、第1回目のPCRで用いられる目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーは、18S rDNAのV4領域から選択される領域に設定されていてもよく、そうでなくてもよい。
第1回目のPCRに用いられるプライマーセットとしては、真菌共通プライマーセットが好ましい。第1回目のPCRで使用可能な真菌共通プライマーセットとしては、公知の真菌の18S rDNAを対象とした真菌共通プライマーセットが挙げられる。「真菌の18S rDNAを対象とした真菌共通プライマーセット」とは、真菌の18S rDNA中の保存領域に基づいて設計されたセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットである。第1回目のPCRで使用可能な真菌共通プライマーセットとして、具体的には、例えば、後述する実施例に記載の配列番号3のプライマー及び配列番号6のプライマーのセットが挙げられる。第1回目のPCRで真菌共通プライマーセットを用いれば、検体中に存在するほぼ全ての真菌の遺伝子が増幅されると考えられる。次いで、目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーセットを用いて、第2回目のPCRを行えば、増幅された真菌の遺伝子中の検出対象の接合菌症起因菌の遺伝子のみが増幅される。
検体中のDNAを鋳型として、上記のようなプライマーを用いてPCRを行い、遺伝子の増幅を確認することで、目的の接合症起因菌を検出することができる。具体的には、例
えば、遺伝子の増幅が確認された場合、検体中に目的の接合菌症起因菌が存在すると判定することができる。PCRや遺伝子の増幅の確認等の各種操作は、公知の手法により実施することができる。すなわち、例えば、鋳型DNAを含む検体に、プライマー、耐熱性DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、および反応バッファーを加え、適宜設定した温度条件で変性、アニール、およびDNA伸長を繰り返し、増幅DNA断片の有無を確認すればよい。増幅DNA断片の有無は、PCR後の反応液をアガロースゲル等を用いて電気泳動し、染色することにより確認できる。PCR条件や電気泳動条件は、増幅される遺伝子のサイズ等の諸条件に応じて適宜設定できる。第1回目のPCRと第2回目のPCRも、それぞれ、適宜設定した条件で、同様に行うことができる。
例えば、第1回目のPCRは、鋳型DNAを含む検体に、プライマー、耐熱性DNAポリメラーゼ、及びヌクレオチド及び反応バッファーを加え、適宜設定した温度条件で変性、アニール、DNA伸長を繰り返せばよい。第1回PCRにより遺伝子が増幅されたことは、例えば、電気泳動後、染色することにより確認できる。
例えば、第2回目のPCRは、第1回目のPCRで増幅されたDNA断片を鋳型として、第1回目のPCRと同様に、変性、アニール、DNA伸長反応を繰り返せばよい。第2回目のPCRによる遺伝子の増幅を確認することで、目的の接合症起因菌を検出することができる。具体的には、例えば、第2回目のPCRによる遺伝子の増幅が確認された場合、検体中に目的の接合菌症起因菌が存在すると判定することができる。第2回目のPCRにより遺伝子が増幅されたことは、例えば電気泳動後、染色することにより確認できる。
本発明の方法の第二の実施形態は、上述した目的の接合菌症起因菌に特異的なプライマーセットにより目的の接合菌症起因菌の遺伝子を増幅する工程の後に、さらに、増幅産物(増幅された目的の接合菌症起因菌の遺伝子)をシークエンス解析する工程を含んでいてもよい。シークエンス解析により、検体中に存在する接合菌症起因菌を正確に同定することができる。特に、特異的プライマーセットにより複数の属、種、または株の接合菌症起因菌の遺伝子が増幅され得る場合、シークエンス解析により、検体中に存在する接合菌症起因菌をより正確に同定することができる。この場合、シークエンス解析により、増幅産物の塩基配列を決定し、配列データベース等により公知の接合菌の塩基配列と、上記決定した塩基配列とを比較することにより、接合菌症起因菌を同定することが可能である。
本発明において、核酸、DNA、RNA、塩基、遺伝子、鋳型、プライマー、PCR、プローブ、ハイブリダイゼーション、塩基配列、相補配列、相同(性)、シークエンス解析等の用語の意味は、特記しない限り、分子生物学、遺伝学、遺伝子工学等で広く一般的に使用されている各用語の意味と同じである。また、ある塩基配列に相当する領域とは、相同性解析(アライメント解析)した場合、前記ある塩基配列と同じ位置に存在する領域である。
本発明は、以下の実施例によって更に具体的に説明されるが、これらはいかなる意味でも本発明を限定する意図と解してはならない。
本発明者らは、本研究において決定されたハエカビ亜門の真菌の18S rDNAの塩基配列および遺伝子配列データーバンク(NCBI)に登録されている病原性ケカビ亜門の真菌の18S rDNAの塩基配列をアラインメント解析(相同解析)し、18S rDNAのV4領域(約350bp)が接合菌症起因菌の検出および同定に適切な塩基配列であることを見出した。アラインメント解析の結果を図1〜7に示す。また、アラインメント解析に用いた真菌と塩基配列の配列番号を表1に示す。18S rDNAのV4領域は、接合菌の種間で保存されている相同性の高い部分(以下保存領域という)と属または種によって配列が大きく異なる部分(以下可変領域という)からなる。本発明者らは、18S rDNAのV4領域中の接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を見出し、それらの配列を特異的に検出できるプローブおよびプライマーを設計し、それらのプローブおよびプライマーを用いて接合菌症起因菌の検出を行った。
実施例1:In situ hybridization法によるConidiobolus属真菌の検出
本実施例では、In situ hybridization(ISH)法による、接合菌症の病理組織におけるConidiobolus属真菌の検出を検討した。
ISH法は組織内に感染した真菌を原位置で視覚的に捉える方法であり、通常、ホルマリ
ン固定パラフィン包埋(FFPE)組織をサンプルとして用いる。ISH法は、大きく3つのス
テップに分けることができる。すなわち、1)プロテアーゼK処理により標的核酸の周辺にあるタンパク質を除去し、プローブの浸透性を高めるための前処理、2)ハイブリダイゼーション、3)抗DIG抗体による陽性シグナルの検出、である。重要なのが2)で用い
られるプローブの選択である。一本鎖プローブを用いると、二本鎖プローブを用いるよりも高いシグナルが得られる。また、RNA-RNAハイブリッドはDNA-RNAハイブリッドよりも熱安定性が高いため、RNAプローブを用いた場合は、より高いストリンジェンシー(例えば
、より高い温度、より低いSSC濃度)での洗浄が可能であり、非特異的なハイブリダイゼ
ーションによるバックグラウンドを下げることができる。よって、本実施例においては、一本鎖RNAプローブを採用した。また、短いプローブを用いるとより特異性の高いシグナ
ルが得られること、およびハイブリダイゼーションに要する時間はプローブの長さに比例することを考慮し、本実施例においては、100〜400塩基からなるプローブを設計した。
まず、接合菌症起因菌および他の真菌のゲノムDNAを鋳型として、18S rDNAの保存領域に基づいて設計したプライマーを用いたPCRにより、プローブ作製用鋳型DNA断片を増幅した。次いで、増幅断片を鋳型として用いて、in vitro transcription法によりそれぞれの菌種に特異的な一本鎖のcomplementary RNA(cRNA)プローブを作製した。さら
に、接合菌症の病理組織に対して各プローブを用いてin situ hybridization(ISH)を行い、シグナルの強弱から接合菌症起因菌の存在の有無を判定した。発明者らは、病変部の真菌のグロコット染色に一致したISHの陽性像が得られれば接合菌症起因菌の推定や属の
絞り込みが可能であると考えた。具体的な手順は以下の通りである。
(1)サンプル
非特許文献1(Kimuraら, Jounal of Clinical Microbiology, 2011年, 49, P.752-756)に記載の播種性コニディオボルス症の剖検症例の肺、脾臓、および膀胱のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織の切片をサンプルとして使用した。当該剖検症例においては、剖検時にConidiobolus sp. IFM58391が起因菌として分離されている。
(2)プローブ
本実施例では、センスプローブA、およびアンチセンスプローブA〜Cを設計した。各プローブが検出対象とする領域は以下の通りである。
センスプローブA:塩基番号578〜929
アンチセンスプローブA:塩基番号578〜929
アンチセンスプローブB:塩基番号578〜821
アンチセンスプローブC:塩基番号592〜780
上記塩基番号は、配列番号13(Conidiobolus sp. IFM58391の18S rDNAの塩基配列)
における塩基番号を示す。
センスプローブAは、Conidiobolus sp. IFM58391用の1種のみを設計した。本実施例
において、センスプローブAは、陰性コントロールとして用いた。
アンチセンスプローブA〜Cは、それぞれ、Conidiobolus sp. IFM58391用、Rhizopus microspores F222(臨床分離株)用、およびAspergillus fumigatus ATCC13073用の3種
を設計した。以下、Conidiobolus sp. IFM58391用、Rhizopus microsporus F222(臨床分離株)用、およびAspergillus fumigatus ATCC13073用のプローブを、それぞれ、「Conidiobolus用のプローブ」、「Rhizopus用のプローブ」、および「Aspergillus用のプローブ」という場合がある。Conidiobolus用のアンチセンスプローブA〜Cは、いずれも、Conidiobolus sp. IFM58391の上記対象領域に対し100%の相同性を示す。Rhizopus用およ
びAspergillus用のアンチセンスプローブAは、いずれも、Conidiobolus sp. IFM58391の上記対象領域に対し75%の相同性を示す。Rhizopus用およびAspergillus用のアンチセ
ンスプローブBは、いずれも、Conidiobolus sp. IFM58391の上記対象領域に対し69%
の相同性を示す。Rhizopus用およびAspergillus用のアンチセンスプローブCは、いずれ
も、Conidiobolus sp. IFM58391の上記対象領域に対し60%の相同性を示す。
(3)プローブ作製用鋳型DNAの増幅
Conidiobolus sp.IFM58391、Rhizopus microsporus F222(臨床分離株)、およびAspergillus fumigatus ATCC 13073の各菌株より全DNAを抽出した。これらのDNAを鋳型として、表2(A)に示すPCR反応液および表2(B)に示すプライマーを用いてPCRを行い、上記各プローブ作製用の鋳型として用いるDNA断片を増幅した。なお、これらのプライマーは18S rDNAの保存領域に設計されており、各菌株に共通である。各プライマーの18S rDNA上の位置を図1〜7に示す。ISHに用いるアンチセンスcRNAプローブを作製する場合には、アンチセンス側プライマーの5'末端にT7 RNA polymeraseのプロモーター領域の配列を付加し(表中、下線で示す)、さらにその5'末端にCTの2塩基を付加して用いた。陰性コントロールに用いるセンスcRNAプローブを作製する場合には、センス側プライマーの5’末端に同様の配列を付加して用いた。増幅断片は精製キット(High Pure PCR Product Purificationキット、Roche)を用いて精製した。
(4)In vitro transcriptionによるDIG標識RNAプローブの作製
プローブは、佐藤らの方法(組織細胞化学,2012、P.73−84(2012))に従って作製した。具体的には、上記で得られた各精製DNA断片を鋳型として、DIG RNA Labeling Kit(Roche)を用いたin vitro transcriptionにより、DIG標識cRNAプローブを作製した。in vitro transcription反応は、反応液を37℃、2時間インキュベートすることにより行った。反応後、アガロースゲル電気泳動でcRNAの転写を確認した。
(5)DIG標識RNAプローブの精製
in vitro transcription反応後の各反応液に、RNase inhibitor 1μL、transfer RNA 2μL、およびRNase free DNase I 1μLを加え、鋳型DNAを除去し、エタノール沈殿を行い
、各DIG標識RNAプローブを精製した。
(6)MicroProbe Systemを用いたハイブリダイゼーション
上記で得られた各精製DIG標識RNAプローブ(Conidiobolus用のセンスプローブA、ならびにConidiobolus用、Rhizopus用、およびAspergillus用のアンチセンスプローブA〜C
)を用いて、各サンプル(肺、脾臓、および膀胱のFFPE切片)に対してin situ hybridizationを実施した。ハイブリダイゼーションは、佐藤ら(土屋紅緒ら、rapid in situ ハイブリダイゼーション、脱アイソトープ実戦プロトコール<2> キット簡単編 P.250−257(1998))の方法に従って行った。
脱パラフィン後のハイブリダイゼーション工程、非特異反応物の洗浄、および発色反応は、すべて、キャピラリーギャップ方式MicroProbe染色装置(Fisher Scientific社製)
およびin situ hybridization /免疫染色用試薬(ファルマ社製)を用いて行った。
(7)結果
まず、肺および脾臓のFFPE切片について、アンチセンスプローブおよびセンスプローブを用いた場合のConidiobolus sp. IFM58391検出性の比較を行った。Conidiobolus用のア
ンチセンスプローブAを用いた交雑実験では肺および脾臓の両サンプルに対して強い発色が認められたが、Conidiobolus用のセンスプローブAを用いた交雑実験では肺および脾臓のいずれのサンプルに対しても発色が認められなかった。このことから、核内に存在する18S rDNAではなく、リボソーム中に存在する18S r RNAが特異的に検出されたものと考え
られる。
次に、塩基数および相同性の異なる種々のアンチセンスプローブを用いた場合の交差反応性を検証した。結果を表3に示す。
アンチセンスプローブAを用いた場合、肺、脾臓、および膀胱のFFPE切片に対して、Conidiobolusのプローブで強い発色が認められたが、Conidiobolus sp.IFM58391に対して75%の相同性を有するRhizopus用およびAspergillus用の各プローブでも弱い発色が認められた。アンチセンスプローブBを用いた場合、肺および膀胱のFFPE切片に対しては、Conidiobolus用のプローブのみ発色が認められ、Conidiobolus sp.IFM58391に対して69%の相同性を有するRhizopus用およびAspergillus用の各プローブでは発色が認められなかった。しかし、脾臓のFFPE切片に対しては、Conidiobolus用のプローブのみならずRhizopus用およびAspergillus用の各プローブでも発色が認められた。アンチセンスプローブCを用いた場合、肺、脾臓、および膀胱のFFPE切片に対して、Conidiobolus用のプローブのみ発色が認められ、Conidiobolus sp.IFM58391に対して60%の相同性を有するRhizopus用およびAspergillus用の各プローブでは発色が認められなかった。
以上のように、塩基数および相同性の異なる計9種類のアンチセンスプローブを用いたISHの結果、相互の相同性が75%を示すアンチセンスプローブA(約350bp)については、Rhizopus用およびAspergillus用の各プローブを用いた場合でも発色が認められたことから、75%という相同性は、ConidiobolusをRhizopusおよびAspergillusから判別するには高すぎると考えられた。
相互の相同性が69%を示すアンチセンスプローブB(約230bp)によれば、肺および膀胱のFFPE切片ではConidiobolusをRhizopusおよびAspergillusから判別可能であったが、脾
臓のFFPE切片では判別不可能であった。各FFPE切片をグロコット染色に供したところ、肺と膀胱では菌糸体が観察され、脾臓では菌糸体に混在して多数の分生子が観察された。ISHの結果とグロコット染色像から、これら分生子がRhizopus用およびAspergillus用の各プローブと非特異的に反応していることが分かった。すなわち、感染している菌体の状態によってプローブとの反応性が異なることが示唆された。このことから、69%という相同性は、ConidiobolusをRhizopusおよびAspergillusから判別するための境界値となり得ると考えられた。
相互の相同性が60%を示すアンチセンスプローブC(約190bp)によれば、いずれのFFPE
切片でもConidiobolusをRhizopusおよびAspergillusから判別可能であった。このことか
ら、Conidiobolusに特異的なプローブを設計するには、Conidiobolusと判別されるべき近縁属の真菌に対して60%以下の相同性を示す配列を見つけ出して利用するのが好ましいと考えられた。
また、Aspergillus、Basidiobolus、Conidiobolus、Cunninghamella、Lichtheimia、Mucor、Rhizopus等の属に属する主要な感染症起因菌用のプローブを用いて、同一条件で同時にハイブリダイゼーションを行い、各プローブのシグナル強度から接合菌の存在の有無を総合的に判断することで、より正確に病理組織における接合菌症起因菌の検出および/または同定を行うことが可能になると考えられる。
実施例2:nested PCR法とシークエンス解析によるConidiobolus sp. IFM58391の検出と同定
本実施例では、nested PCR法とシークエンス解析による、接合菌症の病理組織にお
けるConidiobolus属真菌の検出を検討した。
本発明者らは、Conidiobolus sp. IFM58391の塩基配列から特異的プライマーを設計し
、2段階のPCRで18S rDNAのV4領域を増幅しシークエンス解析を行うことによって、接合菌症起因菌の同定が可能になり、病理組織における接合菌症起因菌の遺伝子検査が可能になると考えた。具体的には、病理組織のパラフィン切片から抽出したDNAを鋳型として
、第1段階目のPCRは保存領域の真菌共通のプライマーセットを用いて行い、第2段階目のPCRは上記真菌共通のプライマー及び/又は上記接合菌症起因菌の特異的プライマーを用いて行うことにより、18S rDNAのV4領域の一部が増幅され、さらに増幅産物をシークエンス解析することによって、Conidiobolus属真菌を検出し得ると考えた。
(1)サンプル
非特許文献1(Kimuraら, Jounal of Clinical Microbiology, 2011年, 49, P.752-756)に記載の播種性コニディオボルス症の剖検症例の肺、脾臓、および膀胱のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織の切片をサンプルとして使用した。当該剖検症例においては、剖検時にConidiobolus sp. IFM58391が起因菌として分離されている。
(2)DNA抽出
スライドガラスに貼付した各ホルマリン固定パラフィン包埋組織の切片(厚さ4〜10μm)から、MasterPure Yeast DNA Purification kit(Epicentre Biotechnologies社)を使用して直接DNAを抽出した。
(3)PCR
本実施例で使用したプライマーは以下の通りである。
Muc1F: 5'-ATTAAAGTTGTTGCAGTTAAAA-3' (配列番号5)
Muc11F: 5'-AGTTAAAAAGCTCGTAGTTGAA-3' (配列番号8)
Muc6R: 5'-AATCCAAGAATTTCACCTCT-3' (配列番号4)
Fj40f: 5'-TTTTTTAGGATACTGGATTAT-3' (配列番号10)
Fj41r: 5'-CATCATTACTTTGGTTCTAT-3' (配列番号11)
Fj34r: 5'-TTCCGAAAAAGAAAATGATT-3' (配列番号12)
Muc1F、Muc11F、およびMuc6Rは、真菌共通プライマーである。Fj40f、Fj41r、Fj34rは
、Conidiobolus sp. IFM58391特異的プライマーである。各プライマーの18S rDNA上の位
置を図1〜7に示す。
(3−1)第1段階目のPCR
第1段階目のPCRは、真菌共通プライマーMuc1FおよびMuc6Rを用いて行った。DNA増幅キット(puRe Taq Ready-To-Go PCR beads, GE Healthcare社)を用いて、センスプライマーMuc1Fを10 pmol、アンチセンスプライマーMuc6Rを10 pmol、および2μLのパラフィン抽出DNAを含む総量25μLの反応液を調製し、DNAサーマルサイクラー(Applied Biosystems 2720:Applied Biosystems社)により、95℃1分予備加熱後、95℃40秒、52℃40秒、72℃2分の25回のPCR反応を行い、次いで、95℃40秒、52℃40秒、72℃2分の15回のPCR反応を行ったが、伸長反応の時間を1サイクルごとに5秒ずつ加算して行き、最後に72℃10分の伸長反応を行った。
(3−2)第2段階目のPCR(nested-PCR)
第1段階目のPCR産物1μLを鋳型として、表2(A)に示すPCR反応液を用いて第2段階目のPCR(nested-PCR)を行った。DNAサーマルサイクラー(Gene Amp 9600-R:Applied Biosystems社製)により、95℃3分予備加熱後、95℃40秒、56℃40秒、72℃1.5分を4回のPCR反応を行い、次いで95℃30秒、50℃30秒、72℃1.5分を32回のPCR反応を行い、最後に72℃6分の伸張反応を行った。
nested-PCRに使用したプライマーセットと増幅される領域は以下の通りである。
(a)Muc11FとMuc6Rの組み合わせ:塩基番号592〜929
(b)Muc11FとFj41rの組み合わせ:塩基番号592〜873
(c)Muc11FとFj34rの組み合わせ:塩基番号592〜740
(d)Fj40fとMuc6Rの組み合わせ: 塩基番号614〜929
(e)Fj40fとFj41rの組み合わせ: 塩基番号614〜873
(f)Fj40fとFj34rの組み合わせ: 塩基番号614〜740
上記塩基番号は、配列番号13(Conidiobolus sp. IFM58391の18S rDNAの塩基配列)
における塩基番号を示す。
(4)シークエンス解析
nested PCRにより増幅した各DNA断片を、Alkaline PhosphataseおよびShrimp ExonucleaseIで処理し、残存プライマーおよび非特異的反応物を除去した。処理したDNA断片を鋳型として、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)を用いてシークエンス反応を行った。反応物をBig Dye X-Terminator Purification Kit(Applied Biosystems社)を用いて精製後、シークエンサー(3130xl Genetic Analyzer:Applied Biosystems社)を用いてシークエンス解析を実施した。得られたシークエンスデータはGENETYX Ver.10を用いて編集し、CLUSTAL Wによりアラインメント(相同解析)を行った。
(5)結果
肺、脾臓、および膀胱のFFPE切片から抽出したPCRの増幅結果とシークエンス解析結果
を表4に示した。
1)真菌共通プライマーセット((a)Muc11FとMuc6R)では、PCRによる増幅は問題なく
起こったように見えるが、塩基配列の解読はできず、Conidiobolus sp. IFM58391の検出
はできなかった。
2)真菌共通プライマーとConidiobolus sp. IFM58391特異的プライマーの組み合わせ(
(b)Muc11FとFj11、(c)Muc11FとFj34r、および(d)Fj40fとMuc6R)では、PCRによる
増幅は確認されたが、共通プライマー側から読んだ塩基配列は解読できず、Conidiobolus
sp. IFM58391の検出はできなかった。一方、特異的プライマー側から読んだ塩基配列はConidiobolus sp. IFM58391の塩基配列に一致した。1)、2)の結果から、第2段階目のPCR(nested PCR)において共通プライマーセットあるいはセンス側かアンチセンス側のどちらか一方に共通プライマーを使った場合、目的の遺伝子のみでなく構造のよく似た偽遺伝子も増幅してしまうため、塩基配列の解読が出来なかったものと推定される。
3)Conidiobolus sp. IFM58391特異的プライマーセット((e)Fj40fとFj41rおよび(f
)Fj40fとFj34r)では、肺、脾臓、および膀胱の各FFPE切片から検出した18S rDNAの塩基配列と剖検時に分離された播種性Conidiobolus sp. IFM58391の18S rDNAの塩基配列は完
全に一致した。よって、Conidiobolus sp. IFM58391特異的プライマー同士の組み合わせ
により、接合菌症の病理組織においてConidiobolus sp. IFM58391を検出および同定でき
ることが検証された。また、別の播種性のコニディオボルスの感染が疑われた臨床検体より分離した株(IFM58391以外の株)についても、これらConidiobolus sp. IFM58391特異
的プライマーセットを用いて同様に検出及び同定できることが判明し、当該配列を対象とした接合菌症起因菌の検出方法の有用性が高いことがわかった。
以上より、検出対象の接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域の塩基配列に基づいて特異的プライマーを設計し、nested PCRで18S rDNAのV4領域の一部を増幅し、必要により更にシークエンス解析を行うことによって、接合菌症起因菌の種の同定が可能であることが判明した。本発明は病理組織における接合菌症起因菌の早期検出および/または同定にきわめて有効な方法であることが示された。
これまで、臨床検体中の接合菌等をセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを使用して、PCRにより増幅して検出、同定する場合には、共通プライマーを使用することが多く、少なくとも、どちらか一方に共通プライマーを使用していた。真菌は、非常に多
くの菌種が存在し、しかし、一般的には、各疾患の起因菌は限られている。そのため、種が異なっても確実に増幅可能な、真菌に共通する領域にプライマーを設計し、PCRにより増幅して検出する方法が行われていた。
しかし、本実施例で示されたように、真菌に共通する領域に設計したプライマーでは、コニディオボルス属真菌を検出することができなかった。当然、該コニディオボルス属真菌も、使用した真菌に共通する領域を有するため、真菌に共通する領域に設計したプライマーにより検出できないことは予想外であった。従って、センスプライマーとアンチセンスプライマーをコニディオボルス属真菌に特異的に設計してPCRに用いたところ、目的のコニディオボルス属を検出および同定することができたことも予想外であった。
実施例3:プライマーの特異性の検討
本実施例では、実施例2で設計した特異的プライマーセット((e)Fj40fとFj41rの組
み合わせ、および(f)Fj40fとFj34rの組み合わせ)の特異性を検討した。ケカビ亜門お
よびハエカビ亜門に属する培養菌株およびAspergillus fumigatusからそれぞれ全DNA
を抽出した。各全DNAを鋳型として、実施例2の第2段目のPCRと同様の条件でPCRを行った後、PCR増幅産物を電気泳動し、PCR増幅産物の有無により各プライマーセットが各菌株のDNAを増幅可能か否かを確認した。結果を表5に示す。実施例2で設計した特異的プライマーセット((e)Fj40fとFj41の組み合わせ、および(f)Fj40fとFj34rの組み合わせ)は、対象とするConidiobolus sp. IFM58391のみを特異的に検出できることが検証された。
本発明により、従来は達成し得なかった接合菌症起因菌(ケカビ亜門あるいはハエカビ亜門に属する真菌)を特異的かつ簡便に検出あるいは同定することが可能となり、接合菌症の遺伝子検査を容易に行うことが可能となる。また、本発明の一実施形態においては、従来遺伝子検査法が知られていなかったハエカビ亜門に属する真菌(特に、播種性コニディオボルス属真菌)を特異的かつ簡便に検出あるいは同定することが可能となる。よって、本発明は、接合菌症の早期の治療が可能となるのみならず、接合菌症の感染源や感染機構の解明等に有用である点でも、臨床的意義が高い。
<配列表の説明>
配列番号1:Conidiobolus sp. IFM58391の18S rDNAのV4領域の塩基配列
配列番号2:Conidiobolus sp. IFM58391の18S rDNAのV4領域中のアンチセンスプローブ
Cに相当する領域の塩基配列
配列番号3:プライマーMuc1FT7の塩基配列
配列番号4:プライマーMuc6Rの塩基配列
配列番号5:プライマーMuc1Fの塩基配列
配列番号6:プライマーMuc6RT7の塩基配列
配列番号7:プライマーMuc9RT7の塩基配列
配列番号8:プライマーMuc11Fの塩基配列
配列番号9:プライマーMuc7RT7の塩基配列
配列番号10:プライマーFj40fの塩基配列
配列番号11:プライマーFj41rの塩基配列
配列番号12:プライマーFj34rの塩基配列
配列番号13:Conidiobolus sp. IFM58391の18S rDNAの塩基配列
配列番号14〜39:各接合菌症起因菌の18S rDNAのV4領域(周辺領域を含む)の塩基配列

Claims (15)

  1. 接合菌症起因菌を検出する方法であって、
    検体中の核酸と、目的の接合菌症起因菌に特異的なプローブとを、ハイブリダイズさせる工程を含み、
    前記プローブが、18S rDNAのV4領域から選択される領域において、前記接合菌症起因菌と90%以上の相同性を有し、且つ、前記接合菌症起因菌以外の真菌と69%以下の相同性を有するプローブであり、
    前記18S rDNAのV4領域から選択される領域が、配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目に相当する領域から選択される30塩基以上の長さの領域を含み、
    前記接合菌症起因菌が、分類学上、Conidiobolus sp. IFM58391と同種に分類される真菌である、方法。
  2. 前記18S rDNAのV4領域から選択される領域が、配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目に相当する領域を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記プローブが、以下の(A)〜(C)からなる群より選択されるプローブである、請求項1または2に記載の方法:
    (A)配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目の塩基配列の相補配列からなるプローブ;
    (B)配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目の塩基配列の相補配列を含むプローブ;
    )前記プローブAまたはBにおいて、1または数個の塩基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むプローブ。
  4. 前記プローブが、前記18S rDNAのV4領域から選択される領域において、前記接合菌症起因菌と95%以上の相同性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記プローブが、前記18S rDNAのV4領域から選択される領域において、前記接合菌症起因菌以外の真菌と60%以下の相同性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 接合菌症起因菌を検出する方法であって、
    検体中の核酸と、目的の接合菌症起因菌に特異的なプローブとを、ハイブリダイズさせる工程を含み、
    前記プローブが、以下の(A)〜(C)からなる群より選択されるプローブであり:
    (A)配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目の塩基配列の相補配列からなるプローブ;
    (B)配列番号13に示す塩基配列の592〜780番目の塩基配列の相補配列を含むプローブ;
    (C)前記プローブAまたはBにおいて、1または数個の塩基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むプローブ;
    前記接合菌症起因菌が、分類学上、Conidiobolus sp. IFM58391と同種に分類される真菌である、方法。
  7. 前記1または数個が、1〜10個である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 接合菌症起因菌を検出する方法であって、検体中のDNAを鋳型として、目的の接合菌症起因菌に特異的なセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットを用いたPCRにより、前記接合菌症起因菌の遺伝子を増幅する工程を含み、
    前記センスプライマーおよび前記アンチセンスプライマーが、それぞれ、18S rDNAのV4領域から選択される15塩基以上の長さの領域において、前記接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプライマーであり、
    前記接合菌症起因菌が、分類学上、Conidiobolus sp. IFM58391と同種に分類される真菌である、方法。
  9. 接合菌症起因菌を検出する方法であって、
    検体中のDNAを鋳型として、真菌共通プライマーセットを用いた第1のPCRにより、真菌の遺伝子を増幅する工程、および
    増幅された真菌の遺伝子を鋳型として、目的の接合菌症起因菌に特異的なセンスプライマーとアンチセンスプライマーのセットを用いた第2のPCRにより、前記接合菌症起因菌の遺伝子を増幅する工程を含み、
    前記真菌共通プライマーセットは、少なくとも、前記接合菌症起因菌の遺伝子中の、前記第2のPCRにより増幅される遺伝子を含む領域を増幅可能であり、
    前記センスプライマーおよび前記アンチセンスプライマーが、それぞれ、18S rDNAのV4領域から選択される15塩基以上の長さの領域において、前記接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプライマーであり、
    前記接合菌症起因菌が、分類学上、Conidiobolus sp. IFM58391と同種に分類される真菌である、方法。
  10. 前記18S rDNAのV4領域から選択される領域が、配列番号13に示す塩基配列の614〜634番目に相当する領域を含む領域、配列番号13に示す塩基配列の721〜740番目に相当する領域を含む領域、または配列番号13に示す塩基配列の854〜873番目に相当する領域、から選択される15塩基以上の長さの領域を含む、請求項8または9に記載の方法。
  11. 前記センスプライマーおよび前記アンチセンスプライマーが、それぞれ、以下の(a)および(b)からなる群より選択されるプライマーである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法:
    (a)18S rDNAのV4領域から選択される、配列番号13に示す塩基配列の614〜634番目に相当する領域を含む領域、配列番号13に示す塩基配列の721〜740番目に相当する領域を含む領域、または配列番号13に示す塩基配列の854〜873番目に相当
    する領域において、前記接合菌症起因菌に特異的な塩基配列を有するプライマー;
    (b)前記プライマーaにおいて、1または数個の塩基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むプライマー。
  12. 前記センスプライマーおよび前記アンチセンスプライマーが、それぞれ、前記18S rDNAのV4領域から選択される領域において、前記接合菌症起因菌と90%以上の相同性を有し、且つ、前記接合菌症起因菌以外の真菌と50%以下の相同性を有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 検体からDNAを調製する工程を含み、調製されたDNAを鋳型としてPCRが実施される、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 増幅された前記接合菌症起因菌の遺伝子をシークエンス解析する工程を含む、請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記接合菌症起因菌以外の真菌が、リゾプス属真菌およびアスペルギルス属真菌である、請求項1〜5および12〜14のいずれか1項に記載の方法。
JP2013079280A 2013-04-05 2013-04-05 接合菌症起因菌の検出及び同定法 Active JP6267436B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013079280A JP6267436B2 (ja) 2013-04-05 2013-04-05 接合菌症起因菌の検出及び同定法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013079280A JP6267436B2 (ja) 2013-04-05 2013-04-05 接合菌症起因菌の検出及び同定法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014200201A JP2014200201A (ja) 2014-10-27
JP6267436B2 true JP6267436B2 (ja) 2018-01-24

Family

ID=52351235

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013079280A Active JP6267436B2 (ja) 2013-04-05 2013-04-05 接合菌症起因菌の検出及び同定法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6267436B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6691534B2 (ja) * 2015-03-26 2020-04-28 生化学工業株式会社 接合菌の測定方法及び接合菌測定用の試薬キット
JP6988045B2 (ja) * 2015-04-28 2022-01-05 株式会社Lsiメディエンス 小房子嚢菌の同定法
US10641689B2 (en) 2016-07-25 2020-05-05 Optnics Precision Co., Ltd. Method of preparing glass slide specimen of cells
CN113005208B (zh) * 2021-04-30 2024-03-19 南京大学 一种软体动物通用宏条形码扩增引物及其应用方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6387652B1 (en) * 1998-04-15 2002-05-14 U.S. Environmental Protection Agency Method of identifying and quantifying specific fungi and bacteria

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014200201A (ja) 2014-10-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ahmed et al. Mycetoma laboratory diagnosis
Voigt et al. Phylogeny and PCR identification of clinically important Zygomycetes based on nuclear ribosomal-DNA sequence data
Rodrigues et al. Molecular diagnosis of pathogenic Sporothrix species
Roberts et al. Comparison of microscopy, culture, and conventional polymerase chain reaction for detection of Blastocystis sp. in clinical stool samples
Rickerts et al. Diagnosis of invasive aspergillosis and mucormycosis in immunocompromised patients by seminested PCR assay of tissue samples
Machouart et al. Genetic identification of the main opportunistic Mucorales by PCR-restriction fragment length polymorphism
Bialek et al. PCR assays for identification of Coccidioides posadasii based on the nucleotide sequence of the antigen 2/proline-rich antigen
Schneider et al. Development of a new PCR protocol for the detection of species and genotypes (strains) of Echinococcus in formalin-fixed, paraffin-embedded tissues
Kuo et al. Comparison of molecular diagnosis with serum markers and synovial fluid analysis in patients with prosthetic joint infection
CN106893782B (zh) 一种检测并鉴定隐球菌的靶基因、引物和探针及试剂盒
CN106987626B (zh) 用于快速检测多种真菌并鉴定菌种的引物和探针及其应用
Vuran et al. Identification of Malassezia species from pityriasis versicolor lesions with a new multiplex PCR method
JP6267436B2 (ja) 接合菌症起因菌の検出及び同定法
CN106868166A (zh) 用于现场快速检测副结核分支杆菌的引物、探针及试剂盒
CN112359125A (zh) 一种快速检测格特隐球菌的方法
CN106916903A (zh) 结核分枝杆菌85B mRNA的实时荧光RT‑PCR检测方法及试剂盒
IE20060925A1 (en) Nucleic acids probes for detection of yeast and fungal species
CN116121439A (zh) 一种多重定量pcr检测真菌的方法以及试剂盒
Salati et al. A sensitive FRET probe assay for the selective detection of Mycobacterium marinum in fish
CN114807416A (zh) 热带念珠菌的rpa-lfs检测引物探针组合及其应用
CN115181803A (zh) 检测多子小瓜虫的Taqman探针qPCR检测引物组和应用
Zhao et al. Recombinant polymerase amplification combined with lateral flow strips for the detection of deep-seated Candida krusei infections
Bauman et al. Identification of Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis strains isolated from dairy goats and dairy sheep in Ontario, Canada
RU2639498C1 (ru) Набор олигонуклеотидных праймеров и флуоресцентно-меченого зонда для идентификации возбудителя бластомикоза blastomyces dermatitidis
Vesty et al. Evaluation of ssrA-targeted real time PCR for the detection of Bartonella species in human clinical samples and reflex sequencing for species-level identification

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151005

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160830

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20161031

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161220

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170509

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170707

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171205

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6267436

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250