以下、添付図面を参照して、本実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[第一実施形態]
図1及び図2を参照して、第一実施形態に係る圧電アクチュエータの構成を説明する。第一実施形態は、HDD用のサスペンション10が圧電アクチュエータを含んでいる例である。図1は、第一実施形態に係るサスペンションを示す概略平面図である。図2は、図1に示されたII−II線に沿った断面構成を説明するための図である。
図1に示されたデュアル・アクチュエータ方式のサスペンション10は、ロードビーム11と、マイクロアクチュエータ部12と、ベースプレート13と、ヒンジ部材14と、を備えている。
ロードビーム11は、ばね性を有する金属板からなる。ロードビーム11の厚さは、例えば100μm程度である。ロードビーム11の先端部には、フレキシャ15が取付けられている。フレキシャ15は、ロードビーム11よりもさらに薄い金属製の薄板ばねからなる。フレキシャ15の前端部に、磁気ヘッドを構成するスライダ16が配置されている。
ベースプレート13の基部20に、円形のボス孔21が形成されている。ベースプレート13の基部20と前端部22との間には、後述する圧電素子40を収容可能な大きさの一対の開口部23が形成されている。一対の開口部23の間に、ベースプレート13の前後方向(サスペンション10の長手方向)に延びる帯状の連結部24が設けられている。連結部24は、ベースプレート13の幅方向(サスペンション10の長手方向と交差する方向)への所定範囲の撓みが許容されるように構成されている。
ベースプレート13の基部20は、図示しないボイスコイルモータによって駆動されるアクチュエータアームの先端部に固定されている。これにより、ベースプレート13は、ボイスコイルモータによって旋回駆動される。ベースプレート13は、ステンレス鋼などの金属板からなる。ベースプレート13の厚さは、例えば200μm程度である。本実施形態の場合、ベースプレート13とヒンジ部材14とによって、アクチュエータベース25が構成されている。
ヒンジ部材14は、基部30と、ブリッジ部31と、中間部32と、一対のヒンジ部33と、先端部34と、を有している。基部30は、ベースプレート13の基部20に重ねて固定されている。ブリッジ部31は、帯状を呈し、ベースプレート13の連結部24と対応した位置に形成されている。中間部32は、ベースプレート13の前端部22と対応した位置に形成されている。各ヒンジ部33は、板厚方向に弾性変形可能な可撓性を有している。先端部34は、ロードビーム11に固定されている。ヒンジ部材14は、ばね性を有する金属板からなる。ヒンジ部材14の厚さは、例えば50μm程度である。
マイクロアクチュエータ部12には、一対の圧電素子40が配置されている。各圧電素子40は、いわゆる積層型圧電素子である。各圧電素子40は、図2にも示されるように、圧電体41と、第一外部電極42と、第二外部電極43と、内部電極44とを備えている。
圧電体41は、長方形平板状を呈している。圧電体41は、第一及び第二主面41a,41bと、第一及び第二端面41c,41dと、を含んでいる。第一及び第二主面41a,41bは、第一方向D1(圧電体41の厚さ方向)で互いに対向している。第一及び第二端面41c,41dは、第二方向D2(圧電体41の長手方向)で互いに対向している。第一及び第二端面41c,41dは、第一及び第二主面41a,41bを接続するように、第一方向D1に延びている。
圧電体41の厚さは、例えば、100μm以下であり、圧電体41の長手方向長さの、例えば1/10以下である。ここでは、圧電体41の外形寸法は、例えば、長手方向長さ1.5mm、短手方向長さ0.45mm、厚さ0.05mmである。圧電体41は、圧電セラミックからなる。圧電セラミックとしては、PZT[Pb(Zr,Ti)O3]、PT[PbTiO3]、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O3]、又はチタン酸バリウム[BaTiO3]などが挙げられる。圧電体41は、例えば、PZTなどの圧電セラミック材料で構成されている。
圧電体41における、電極部分42aから内部電極44までの領域である第一領域411、及び内部電極44から第二主面41bまでの領域である第二領域412は、それぞれ分極されている。ここで、分極されている状態とは、自発分極の向きがランダムな状態ではなく、自発分極の向きが一方向に揃った状態である。
第一外部電極42は、圧電体41の第一主面41a上に設けられている電極部分42aと、第一端面41c上に設けられている電極部分42bと、を有している。
電極部分42aは、第一主面41aに配置されている。電極部分42aの第二方向D2の一端は、電極部分42bの第一方向D1における一端と電気的に接続されている。電極部分42aの第二方向D2の他端は、第二端面41dから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、第一主面41aにおいて第一外部電極42から露出した露出部分41eの第二方向D2の長さに等しく、例えば、0.1mmである。電極部分42bは、第一端面41cの全部を覆うように配置されている。電極部分42a,42bの厚さは、200〜500nm程度に設定される。
第二外部電極43は、第二端面41d上に設けられている。第二外部電極43は、第二端面41dの全部を覆うように配置されている。第二外部電極43の厚さは、第一外部電極42の厚さと同程度に設定される。即ち、第二外部電極43の厚さは、例えば200〜500nm程度に設定される。
第一及び第二外部電極42,43は、互いに異なる極性とされる。例えば、第一外部電極が正極とされる場合、第二外部電極は負極とされ、第一外部電極が負極とされる場合、第二外部電極は正極とされる。本実施形態では、第一及び第二外部電極42,43は、Cr/Ni−Cu/Au積層構造(圧電体41側から順にCr層、Ni−Cu合金層、Au層が積層された構造)からなる。即ち、第一及び第二外部電極42,43は、同じ積層構造を有している。
第一及び第二外部電極42,43は、例えば、スパッタリング法により形成されている。なお、第一及び第二外部電極42,43は、スパッタリング法以外の方法(例えば、焼き付け法、電解めっき法、又は蒸着法など)により形成されていてもよい。第一及び第二外部電極42,43は、単層の同じ金属層(Cr層、Ni−Cu合金層、Au層、又はNi層など)として形成されていてもよい。
内部電極44は、圧電体41の内部に配置されている。内部電極44は、圧電体41の第一方向D1の中央に配置されている。内部電極44は、第一及び第二主面41a,41bと対向すると共に略平行に配置されている。即ち、内部電極44は、電極部分42aと対向すると共に略平行に配置されている。
内部電極44の第二方向D2の一端は、第一端面41cから離間している。第二方向D2のその離間距離は、例えば、0.1mmである。内部電極44の第二方向D2の他端は、第二外部電極43に接続されている。したがって、内部電極44と第二外部電極43とは同じ極性とされる。ここでは、電極部分42aと内部電極44とは、第一方向D1に互いに対向するように配置されている複数の電極として機能している。また、複数の電極のうち第二主面41bに最も近い電極は、内部電極44である。
本実施形態では、内部電極44は、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料(例えば、Ag,Pd,Au,Ptやそれらの合金など)からなる。内部電極44は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
各圧電素子40は、圧電素子40の長手方向が、ベースプレート13の前後方向(サスペンション10の軸線方向)に沿うようにして、対応する開口部23に収容されている。即ち、各圧電素子40は、対応する開口部23に配置されている。
各圧電素子40は、第二方向D2の一端側において、ヒンジ部材14の中間部32及びベースプレート13の前端部22に支持されるように、中間部32及び前端部22に導電性樹脂51を介して固定されている。詳細には、電極部分42bは、導電性樹脂51を介して前端部22に固定され、電極部分42aは、導電性樹脂51を介して中間部32に固定されている。導電性樹脂51は、導電性材料(例えば金属粒子など)を含有する樹脂である。導電性樹脂51は、図示しない電気配線に電気的に接続されている。
各圧電素子40は、第二方向D2の他端側において、ヒンジ部材14の基部30及びベースプレート13の基部20に支持されるように、基部30及び基部20に樹脂50及び導電性樹脂51を介して固定されている。詳細には、第二外部電極43は、導電性樹脂51を介して基部30及び基部20に固定されている。電極部分42aの第二端面41d側の端部は、樹脂50を介して基部30に固定されている。露出部分41eの第二端面41d側は、導電性樹脂51を介して基部30に固定されている。露出部分41eの第一端面41c側は、樹脂50を介して基部30に固定されている。導電性樹脂51は、図示しない電気配線に電気的に接続されている。
圧電素子40は、上述したように、中間部32、前端部22、基部30、及び基部20により拘束されて支持されている。中間部32、前端部22、基部30、及び基部20は、圧電素子40を拘束して支持する支持部材として機能する。即ち、圧電素子40は、第一主面41a側から圧電体41に作用する拘束力が、第二主面41b側から圧電体41に作用する拘束力より大きい状態で、第二方向D2の両端部で支持部材に拘束されて支持されている。本実施形態においては、サスペンション10が、圧電素子40と、支持部材と、を備える圧電アクチュエータを含むこととなる。
次に、図3を参照して、圧電素子40の製造方法について説明する。図3は、図1に示された圧電素子の製造方法について説明するための図である。まず、図3(a)に示されるような分極処理前の圧電素子40Zを準備する。圧電素子40Zの第一外部電極は、電極部分42a、及び電極部分42bに加えて、電極部分42cを有している。
電極部分42cは、第二主面41bに配置されている。電極部分42cの第二方向D2の一端は、電極部分42bの第一方向D1における他端と電気的に接続されている。電極部分42cの第二方向D2の他端は、第二端面41dから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、第二主面41aにおいて第一外部電極42から露出した露出部分41fの第二方向D2の長さに等しく、例えば、0.1mmである。電極部分42cは、内部電極44と対向すると共に、内部電極44と略平行に配置されている。
分極処理は、例えば、100℃の温度下で、電界強度2kV/mmの電圧を第一及び第二外部電極42,43に5分間程度印加することにより行われる。これにより、第一及び第二領域411,412がそれぞれ分極され、第一及び第二領域411,412では、自発分極の向きがランダムな状態から、自発分極の向きが一方向に揃った状態となる。詳細には、第二領域412については、少なくとも、内部電極44と電極部分42cとにより第一方向D1で挟まれた領域が分極される。続いて、電極部分42cが除去される。電極部分42cは、例えばエッチング、研磨などにより除去される。これにより、圧電素子40が得られる。
このように圧電素子40では、第一及び第二領域411,412がいずれも分極されていることから、分極による歪が第一及び第二領域411,412に均等に生じる。したがって、分極による歪が第一及び第二領域411,412で異なる場合と比べて、マイクロクラックの発生等による圧電体41の劣化が抑制される。なお、製品形状に個片化される前の圧電素子基板に対して分極処理が行われた後、切断処理及び電極部分42cの除去処理により圧電素子40が得られてもよい。
次に、図4及び図5を参照して、比較例に係る圧電素子100と比較しながら、本実施形態に係る圧電素子40の効果について説明する。図4は、図1に示された圧電素子の伸びる方向の動作を説明するための図である。図5は、図1に示された圧電素子の縮む方向の動作を説明するための図である。
図4(a)に示されるように、比較例に係る圧電素子100は、圧電体101と、圧電体101の第一主面101a上に設けられている第一外部電極102と、圧電体101の第二主面101b上に設けられている第二外部電極103とを備えている。圧電素子100は、第一及び第二外部電極102,103に電圧が印加されることにより駆動されて、実線で示される非駆動状態から、点線で示される駆動状態へと変化する。
このとき、圧電体101の全体が第一外部電極102と第二外部電極103との間に位置していることから、圧電体101の全体に電圧が印加される。このため、駆動状態では、圧電素子100の全体が第二方向D2に伸びる。圧電素子100の体積は一定であるため、圧電素子100は、第二方向D2に交差する方向に縮む。
図4(b)に示されるように、圧電素子40は、圧電素子100と同様に、第一及び第二外部電極42,43に電圧が印加されることにより駆動されて、実線で示される非駆動状態から、点線で示される駆動状態へと変化する。このとき、第一領域411は、電極部分42aと内部電極44との間に位置することから、電圧が印加されて第二方向D2に伸びる。即ち、第一領域411は、圧電的に活性な活性部として機能する。
電極部分42aと内部電極44とがなす距離は、第一外部電極102と第二外部電極103とがなす距離よりも短いので、第一領域411に印加される電圧は、圧電体101に印加される電圧よりも大きい。したがって、第一領域411の伸び量は、圧電体101の伸び量よりも大きい。
このように変位量が大きい第一領域411に対して、第二領域412には電圧が印加されないので、変位しない。即ち、第二領域412は、圧電的に不活性な不活性部として機能する。このため、圧電素子40は、第一主面41a側が湾曲外側となるように撓んだ状態で変位する。圧電素子40の第二方向D2の変位量は、圧電素子100の第二方向D2の変位量よりもΔ1(駆動差)だけ大きくなる。
図5(a)に示されるように、圧電素子100は、第一及び第二外部電極102,103に電圧が印加されることにより駆動されて、実線で示される非駆動状態から、点線で示される駆動状態へと変化する。ここで、印加される電圧の向きは、上述の図4(a)の場合で印加される電圧の向きと反対である。このような電圧が印加されることにより、駆動状態では、圧電素子100の全体が第二方向D2に縮む。圧電素子100の体積は一定であるため、圧電素子100は、圧電素子100の第二方向D2に交差する方向に伸びる。
図5(b)に示されるように、圧電素子40では、圧電素子100と同様に、第一及び第二外部電極42,43に電圧が印加されることにより駆動されて、実線で示される非駆動状態から、点線で示される駆動状態へと変化する。ここで、印加される電圧の向きは、上述の図4(b)の場合で印加される電圧の向きと反対である。このような電圧が印加されることにより、駆動状態では、第一領域411は、第二方向D2に縮む。上述のように、第一領域411に印加される電圧は、圧電体101に印加される電圧よりも大きいので、第一領域411の縮む量は、圧電体101の縮む量よりも大きい。
このように変位量が大きい第一領域411に対して、第二領域412には電圧が印加されないので、変位しない。このため、圧電素子40は、第一主面41a側が湾曲内側となるように撓んだ状態で変位する。圧電素子40の第二方向D2の変位量は、圧電素子100の第二方向D2の変位量よりもΔ2(駆動差)だけ大きくなる。
次に、図6を参照して、比較例に係るサスペンションと比較しながら、本実施形態に係る圧電アクチュエータの効果について説明する。図6は、図1のサスペンションの動作を説明するための図である。なお、図6では、支持部材、樹脂等が簡略化又は省略されて示されている。
図6(a)に示されるように、比較例に係るサスペンション110は、圧電素子100と、圧電素子100を支持する一対の支持部材104と、を備えている。圧電素子100は、導電性樹脂105により支持部材104に固定されて支持されている。支持部材104は、圧電素子100の第二方向D2の両端部の第一主面101a側を支持している。即ち、圧電素子100は、第一主面101a側から圧電体101に作用する拘束力が、第二主面101b側から圧電体101に作用する拘束力より大きい状態で、第二方向D2の両端部で支持部材104に拘束されて支持されている。導電性樹脂105は、第一及び第二外部電極102,103と図示しない電気配線とに電気的に接続されている。
圧電素子100は、第一及び第二外部電極102,103に電圧が印加されることにより駆動される。圧電素子100は、上述した状態で支持部材104に拘束されているため、拘束力が小さい第二主面101b側が湾曲外側になるように撓む。このように、圧電素子100が変形すると、圧電素子100の変位は、支持部材111に適切に伝達され難くなる。圧電素子100の剛性は、圧電体101の厚さが薄くなるほど低下し、又、圧電体101の幅(第一及び第二方向D1,D2に直交する方向での長さ)が狭くなるほど低下する。
図6(b)に示されるように、本実施形態に係る圧電アクチュエータにおいても、圧電素子40は、第一主面41a側から圧電体41に作用する拘束力が、第二主面41b側から圧電体41に作用する拘束力より大きい状態で、第二方向D2の両端部で支持部材(基部20、前端部22、基部30及び中間部32)に拘束されて支持されている。上述のように、圧電素子40自体は、第一領域411が活性部として機能するとともに、第二領域412が不活性部として機能することにより、第一主面41a側が湾曲外側となるように撓もうとする。したがって、圧電アクチュエータでは、圧電素子40の湾曲が抑制される。圧電素子40の第二方向D2の変位量は、圧電素子100の第二方向D2の変位量よりもΔ3(駆動差)だけ大きくなる。これにより、圧電素子40の変位を適切に支持部材に伝達させることができる。
[第二実施形態]
図7は、第二実施形態に係る圧電アクチュエータの断面構成を説明するための図である。
図7に示されるように、第二実施形態に係る圧電アクチュエータの圧電素子40Aは、主に、第二主面41b上に導電膜45(ダミー電極)が配置されている点で、第一実施形態に係る圧電素子40と相違している。以下、相違点を中心に説明する。
導電膜45は、例えば、第一及び第二外部電極42,43と同様の材料で形成されている。導電膜45は、例えば、第一及び第二外部電極42,43と同様にスパッタリング法により形成されている。導電膜45の厚さは、例えば、第一及び第二外部電極42,43の厚さと同等である。
導電膜45の第二方向D2の一端は、第一端面41cから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、第二主面41bの第一端面41c側において導電膜45から露出した露出部分41gの第二方向D2の長さに等しく、例えば、0.1mmである。導電膜45の第二方向D2の他端は、第二端面41dから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、第二主面41bの第二端面41d側において第一外部電極42から露出した露出部分41hの第二方向D2の長さに等しく、例えば、0.1mmである。導電膜45は、第一及び第二外部電極42,43と電気的に接続されていない。即ち、導電膜45は、第一及び第二外部電極42,43から電気的に絶縁されている。
圧電素子40Aは、例えば、圧電素子40Z(図3(a)参照)に分極処理を施した後、電極部分42cの第一端面41c側の一部を除去し、露出部分41gを形成することにより得られる。
圧電素子40Aでは、圧電素子40と同様に、第二領域412が不活性部として機能し、第一領域411が活性部として機能していることから、圧電素子40と同様の効果が得られる。また、圧電素子40Aでは、第二領域412の分極処理に用いられた第二主面41b上の電極が全て除去されず、導電膜45として残される。このため、電極の除去屑の発生を抑制することができる。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
図8(a)は、第一実施形態の第一変形例に係る圧電素子の断面構成を説明するための図であり、図8(b)は、第一実施形態の第二変形例に係る圧電素子の断面構成を説明するための図である。図8に示されるように、第一実施形態の第一及び第二変形例に係る圧電素子40B,40Cのそれぞれは、主に、内部電極44の数の点で、第一実施形態に係る圧電素子40と相違している。以下、相違点を中心に説明する。
図8(a)に示されるように、圧電素子40Bでは、第一外部電極42の電極部分42aは、第一主面41aに配置されている。電極部分42bは、第二端面41dの全部を覆うように配置されている。電極部分42aの第二方向D2の一端は、第一端面41cから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、第一主面41aにおいて第一外部電極42から露出した露出部分41iの第二方向D2の長さに等しく、例えば、0.1mmである。電極部分42aの第二方向D2の他端は、電極部分42bの第一方向D1における一端と電気的に接続されている。
第二外部電極43は、第一端面41c上に設けられている。第二外部電極43は、第一端面41cの全部を覆うように配置されている。
内部電極44は、第一及び第二内部電極441,442を有している。電極部分42a、第一内部電極441、及び第二内部電極442は、第一方向D1に沿ってこの順に配置されている。即ち、電極部分42aと第一内部電極441とは、第一方向D1で互いに対向している。第一内部電極441と第二内部電極442とは、第一方向D1で互いに対向している。
電極部分42a、第一内部電極441、及び第二内部電極442は、互いに略平行に配置されている。第一及び第二内部電極441,442は、圧電体41を第一方向D1に三等分する位置に配置されている。即ち、電極部分42aと第一内部電極441とのなす距離と、第一内部電極441と第二内部電極442とのなす距離と、第二内部電極442と第二主面41bとのなす距離とは、互いに等しい。
第一内部電極441の第二方向D2の一端は、第二外部電極43と電気的に接続されている。したがって、第一内部電極441と第二外部電極43とは同じ極性とされる。第一内部電極441の第二方向D2の他端は、第二端面41dから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、例えば、0.1mmである。
第二内部電極442の第二方向D2の一端は、第一端面41cから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、例えば、0.1mmである。第二内部電極442の第二方向D2の他端は、電極部分42bと電気的に接続されている。したがって、第二内部電極442と第一外部電極42とは同じ極性とされる。ここでは、第一及び第二内部電極441,442と電極部分42aとは、第一方向D1に互いに対向するように配置されている複数の電極として機能している。また、複数の電極のうち第二主面41bに最も近い電極は、第二内部電極442である。
圧電体41における、電極部分42aから第一内部電極441までの領域である第一領域411、第一内部電極441から第二内部電極442までの領域である第二領域412、及び第二内部電極442から第二主面41bまでの領域である第三領域413は、それぞれ分極されている。第一〜第三領域411〜413の厚さは互いに等しい。圧電素子40Bを製造する際、第二外部電極43に電気的に接続された電極(不図示)が、第一方向D1で第二内部電極442と対向するように、第二主面41bに配置される。したがって、詳細には、第三領域413については、少なくとも、第二内部電極442と上記不図示の電極とにより第一方向D1で挟まれた領域が分極されている。
圧電素子40Bは、第一及び第二外部電極42,43に電圧が印加されることにより駆動される。このとき、第一及び第二領域411,412は、互いに異なる極性とされた電極間に位置することから、電圧が印加されて第二方向D2に伸びる。即ち、第一及び第二領域411,412は、活性部として機能する。電極間距離が短いので、第一及び第二領域411,412に印加される電圧は、比較例に係る圧電体101(図4(a)参照)に印加される電圧よりも大きい。したがって、第一及び第二領域411,412の伸び量は、圧電体101の伸び量よりも大きい。
これに対して、第三領域413には電圧が印加されないので、変位しない。即ち、第三領域413は、不活性部として機能する。このため、圧電素子40Bは、第一主面41a側が湾曲外側となるように撓んだ状態で変位する。圧電素子40Bの第二方向D2の変位量は、圧電素子100(図4参照)の第二方向D2の変位量よりも大きくなる。
このように圧電素子40Bでは、第三領域413が不活性部として機能し、第一及び第二領域411,412が活性部として機能していることから、圧電素子40と同様の効果が得られる。また、圧電素子40Bを圧電アクチュエータに適用した場合も、第一実施形態と同様の効果が得られる。即ち、圧電素子40Bが、第一主面41a側が湾曲外側となるように撓もうとするのが抑制される。これにより、圧電素子40Bの変形が抑制され、圧電素子40Bの変位を適切に支持部材に伝達させることができる。
図8(b)に示されるように、圧電素子40Cでは、内部電極44は、第一〜第三内部電極441〜443を有している。電極部分42a、第一内部電極441、第二内部電極442、及び第三内部電極443は、第一方向D1に沿ってこの順に配置されている。電極部分42aと第一内部電極441とは、第一方向D1で互いに対向している。第一内部電極441と第二内部電極442とは、第一方向D1で互いに対向している。第二内部電極442と第三内部電極443とは、第一方向D1で互いに対向している。
電極部分42a、及び第一〜第三内部電極441〜443は、互いに略平行に配置されている。第一〜第三内部電極441〜443は、圧電体41を第一方向D1に四等分する位置に配置されている。即ち、電極部分42aと第一内部電極441とのなす距離と、第一内部電極441と第二内部電極442とのなす距離と、第二内部電極442と第三内部電極443とのなす距離と、第三内部電極443と第二主面41bとのなす距離とは、互いに等しい。
第一及び第三内部電極441,443の第二方向D2の一端は、第一端面41cから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、例えば、0.1mmである。第一及び第三内部電極441,443の第二方向D2の他端は、第二外部電極43に接続されている。したがって、第一及び第三内部電極441,443と第二外部電極43とは同じ極性とされる。
第二内部電極442の第二方向D2の一端は、電極部分42aに電気的に接続されている。したがって、第二内部電極442と第一外部電極42とは同じ極性とされる。第二内部電極442の第二方向D2の他端は、第二端面41dから離間している。第二方向D2におけるその離間距離は、例えば、0.1mmである。ここでは、第一〜第三内部電極441〜443と電極部分42aとは、第一方向D1に互いに対向するように配置されている複数の電極として機能している。また、複数の電極のうち第二主面41bに最も近い電極は、第三内部電極443である。
圧電体41における、電極部分42aから第一内部電極441までの領域である第一領域411、第一内部電極441から第二内部電極442までの領域である第二領域412、第二内部電極442から第三内部電極443までの領域である第三領域413、及び第三内部電極443から第二主面41bまでの領域である第四領域414は、それぞれ分極されている。第一〜第四領域411〜414の厚さは互いに等しい。圧電素子40Cを製造する際、第二外部電極43に電気的に接続された電極(不図示)が、第一方向D1で第三内部電極443と対向するように、第二主面41bに配置される。したがって、詳細には、第四領域414については、少なくとも、第三内部電極443と上記不図示の電極とにより第一方向D1で挟まれた領域が分極されている。
圧電素子40Cは、第一及び第二外部電極42,43に電圧が印加されることにより駆動される。このとき、第一〜第三領域411〜413は、互いに異なる極性とされた電極間に位置することから、電圧が印加されて第二方向D2に伸びる。即ち、第一〜第三領域411〜413は、活性部として機能する。電極間距離が短いので、第一〜第三領域411〜413に印加される電圧は、比較例に係る圧電体101(図4参照)に印加される電圧よりも大きい。したがって、第一〜第三領域411〜413の伸び量は、圧電体101の伸び量よりも大きい。
これに対して、第四領域414には電圧が印加されないので、変位しない。即ち、第四領域414は、不活性部として機能する。このため、圧電素子40Cは、第一主面41a側が湾曲外側となるように撓んだ状態で変位する。圧電素子40Cの第二方向D2の変位量は、圧電素子100(図4参照)の第二方向D2の変位量よりも大きくなる。
このように圧電素子40Cでは、第四領域414が不活性部として機能し、第一〜第三領域411〜413が活性部として機能していることから、圧電素子40と同様の効果が得られる。また、圧電素子40Cを圧電アクチュエータに適用した場合も、第一実施形態と同様の効果が得られる。即ち、圧電素子40Cが、第一主面41a側が湾曲外側となるように撓もうとするのが抑制される。これにより、圧電素子40Cの変形が抑制され、圧電素子40Cの変位を適切に支持部材に伝達させることができる。
図9(a)は、第二実施形態の第一変形例に係る圧電素子の断面構成を説明するための図であり、図9(b)は、第二実施形態の第二変形例に係る圧電素子の断面構成を説明するための図である。図9に示されるように、第二実施形態の第一及び第二変形例に係る圧電素子40D,40Eのそれぞれは、主に、内部電極44の数が第二実施形態に係る圧電素子40Aと相違している。
図9(a)に示されるように圧電素子40Dは、第二主面41b上に導電膜45が設けられている点で、第一実施形態の第一変形例に係る圧電素子40B(図8(a)参照)と相違し、その他の点で一致している。このため、圧電素子40Dにおいても、圧電素子40Bと同様の効果が得られる。また、圧電素子40Dでは、圧電素子40Aと同様に、圧電体41の分極処理に用いられた第二主面41b上の電極が全て除去されず、導電膜45として残される。このため、電極の除去屑の発生を抑制することができる。
図9(b)に示されるように圧電素子40Eは、第二主面41b上に導電膜45が設けられている点で、第一実施形態の第二変形例に係る圧電素子40C(図8(b)参照)と相違し、その他の点で一致している。このため、圧電素子40Eにおいても、圧電素子40Cと同様の効果が得られる。また、圧電素子40Eでは、圧電素子40Aと同様に、圧電体41の分極処理に用いられた第二主面41b上の電極が全て除去されず、導電膜45として残される。このため、電極の除去屑の発生を抑制することができる。
上記変形例に限らず、例えば、内部電極44が4つ以上からなっていてもよい。
各領域の厚さがそれぞれ異なっていてもよい。即ち、圧電素子40,40Aにおいて、第一及び第二領域411,412の厚さがそれぞれ異なっていてもよい。また、圧電素子40B,40Dにおいて、第一〜第三領域411〜413の厚さがそれぞれ異なっていてもよい。また、圧電素子40C,40Eにおいて、第一〜第四領域411〜414の厚さがそれぞれ異なっていてもよい。
ヒンジ部材14の基部30及び中間部32と、ベースプレート13の基部20及び前端部22が支持部材として機能しているが、これに加えて、例えばベースプレート13の連結部24等が支持部材として機能してもよい。また、ヒンジ部材14の基部30及び中間部32のみが支持部材として機能していてもよい。
不活性部として機能する領域のそれぞれは、必ずしも分極されていなくてもよい。即ち、圧電素子40,40Aの第二領域412、圧電素子40B,40Dの第三領域413、及び圧電素子40C,40Eの第四領域414は、未分極であってもよい。圧電素子40,40A〜40Eが駆動される際、仮にこれらの領域に電圧が印加されたとしても、これらの領域は未分極であるため、不活性部として機能する。
圧電素子40,40Aでは、第一外部電極42は、少なくとも電極部分42aを有していればよく、電極部分42bを有していなくてもよい。
本発明は、HDD用のサスペンション10のマイクロアクチュエータ部12以外の圧電アクチュエータに用いることができる。