JP6686706B2 - 光ファイバの線引方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバの線引方法に関する。
光ファイバを線引きする線引炉内の圧力を圧力計で測定し、この測定値に基づいて炉内が一定の圧力になるように、導入する不活性ガスの流量を制御する方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。
特開昭62−226834号公報 特開2000−063142号公報 特開2011−046563号公報
特許文献1、2のように、線引炉内の圧力を測定し、その圧力測定値に基づいて炉内圧力が一定になるようにガス流量を制御する方法では、圧力測定値は変動が激しく、平均化処理や不要な周波数成分の除去などの処理を必要とする。そのため、安定した圧力制御は容易ではない。
また、線引炉には、線引炉の上部に外筒管を備えるものがある。特許文献3では、線引きが進行して光ファイバ母材が短くなって下降するのに伴い、複数の仕切り板によって外筒管内を段階的に仕切ることにより、外筒管内の対流の発生を抑止して、光ファイバの外径変動を抑制している。そして、炉内測定器の測定値に応じて線引炉内の圧力を一定に保つように、仕切り板によって仕切られることによる線引炉内の容積の減少に従い、不活性ガスの供給量を減少させるように制御している。すなわち、特許文献3では、光ファイバ母材の送り長(下降した距離)に応じて不活性ガスの供給量を減少させている。しかしながら、光ファイバ母材の送り長に応じて不活性ガスの供給量を減少させても、仕切り板の気密が不十分な場合、不活性ガスが漏れるなどの理由により、線引炉内の圧力を一定にできない場合がある。よって、線引炉内に大気が混入しないようにするため、不活性ガスを過剰に供給することになる。
そこで、本発明の目的は、光ファイバを線引きする線引炉内の圧力を、安定して一定になるように制御することができる光ファイバの線引方法を提供することにある。
本発明の一態様に係る光ファイバの線引方法は、ダミー棒で支持した光ファイバ母材を上下に昇降自在に線引炉内に収容して前記光ファイバ母材を加熱して溶融させ、前記線引炉内に不活性ガスを供給して前記光ファイバ母材の下端から光ファイバを線引きする光ファイバの線引方法であって、
前記線引炉内の圧力を一定に保つように、前記線引炉内のヒータより上の領域で測定した炉内温度の測定結果に基づいて、前記不活性ガスの供給流量を決める。
本発明によれば、光ファイバを線引きする線引炉内の圧力を、安定して一定になるように制御することができる。
外筒管内の温度と線引炉内の圧力との相関関係を示すグラフである。 本実施形態に係る光ファイバの線引方法を適用する線引装置の一例を示す縦断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の実施形態に係る光ファイバの線引方法は、
(1) ダミー棒で支持した光ファイバ母材を上下に昇降自在に線引炉内に収容して前記光ファイバ母材を加熱して溶融させ、前記線引炉内に不活性ガスを供給して前記光ファイバ母材の下端から光ファイバを線引きする光ファイバの線引方法であって、
前記線引炉内の圧力を一定に保つように、前記線引炉内のヒータより上の領域で測定した炉内温度の測定結果に基づいて、前記不活性ガスの供給流量を決める。
本発明者は、線引炉内のヒータより上の領域で測定した炉内温度と線引炉内の圧力の相関が良いことを見出した。この知見に基づく、上記(1)の光ファイバの線引方法によれば、線引炉内の温度の測定結果に基づいて、不活性ガスの供給流量を決めることにより、線引炉内の圧力を従来よりも精度よく一定に維持することができる。これにより、線引き時の不活性ガスの供給流量を低減することが可能となり、特に、不活性ガスがヘリウムガスであれば、製造コストの削減効果が大きい。
(2) 上記(1)の光ファイバの線引方法において、前記線引炉の上部に前記ダミー棒に沿って移動可能な複数の仕切板を有する外筒管が設けられており、前記光ファイバの線引きが進行して前記光ファイバ母材が下降するのに伴い、前記複数の仕切り板によって前記外筒管内を段階的に仕切りながら、前記外筒管の領域で測定した炉内温度の測定結果に基づいて、前記不活性ガスの供給流量を決める。
上記(2)の光ファイバの線引方法によれば、上部に外筒管が設けられた線引炉において、外筒管の領域で測定した炉内温度の測定結果に基づいて、前記不活性ガスの供給流量を決めることにより、線引炉内の圧力を従来よりも精度よく一定に維持することができる。
(3) 上記(1)または(2)の光ファイバの線引方法において、前記炉内温度と前記不活性ガスの供給流量との相関関係のテーブルに基づいて、前記不活性ガスの供給流量を決める。
(3)の光ファイバの線引方法によれば、予め、炉内温度と不活性ガスの供給流量との相関関係のテーブルを用意することで、線引炉内の圧力を一定に保つための不活性ガスの供給流量をより確実に決めることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光ファイバの線引方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
従来の光ファイバの線引方法では、線引炉内の圧力を測定し、その圧力測定値に基づいて炉内圧力が一定になるようにガス供給流量を制御していたが、圧力測定値の変動が激しく、安定した圧力制御は容易ではないという問題があった。
本発明者は、この問題解決のために考察した結果、線引炉内のヒータより上の領域で測定した炉内温度と線引炉内の圧力の相関が良いことを見出した。この知見を利用して、測定した炉内温度に応じて不活性ガスの供給流量を決めれば、炉内温度の測定値は、圧力測定値と比較して変動が小さく、安定していることから従来よりも圧力制御が容易で、炉内圧力を精度よく一定に維持することができることができると考えた。
特に、上部に外筒管が設けられた線引炉においては、線引炉内の圧力を一定にすることがさらに困難である。この点に関して、本発明者は、外筒管内の温度が影響していることを突き止めた。すなわち、光ファイバ母材の肩の部分から輻射熱が発生し、線引開始から後半にかけて外筒管内の温度が上昇することで、線引炉内の圧力が増加することが分かった。外筒管内の温度と線引炉内の圧力との関係を調べる実験を後述の実施例のように行ったところ、図1に示すように、両者は良い相関を示した。
以上の知見および考察に基づいた、本実施形態に係る光ファイバの線引方法を以下説明する。図2は、本実施形態に係る光ファイバの線引方法を適用する一例である光ファイバ線引装置10を示す縦断面図である。
図2に示すように、光ファイバ線引装置10は、光ファイバ母材1から光ファイバ2を線引きする装置である。光ファイバ線引装置10は、光ファイバ母材1を上下に昇降自在に収容した線引炉11と、線引炉11内を後述するダミー棒26に沿って移動可能な複数の仕切板12,13,14,15,16を備えている。
また、光ファイバ線引装置10は、光ファイバ母材1を加熱するヒータ17と、線引炉11内に不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)を供給するガス供給部18と、不活性ガスの供給流量を制御する制御部21を備えている。
線引炉11は、その上部を蓋部材22により閉塞された外筒管23と、外筒管23の下側に配設された炉心管24と、炉心管24の下側に配設された炉心管下方延長部25を備えている。炉心管下方延長部25には、線引炉11の内圧を測定する炉内圧測定器20が設けられている。外筒管23は、蓋部材22の中央部にダミー棒26を挿通している。ダミー棒26は、連結部材27を介して光ファイバ母材1を組み付けている。仕切板12,13,14,15,16は、ダミー棒26に挿通されて連結部材27の上部に配置されている。
光ファイバ2の線引きが進行して光ファイバ母材1が短くなった際に、光ファイバ母材1がダミー棒26とともに下降する。これに伴って、仕切板12,13,14,15,16は、外筒管23の内周部の上下に所定間隔を保って形成された段部28,29,30,31,32に段階的に係合される。
複数の仕切板12,13,14,15,16を配置することで、外筒管23内の炉内空間容積を略一定にしている。これにより、外筒管23内の上下方向での温度差による対流の発生を抑止して、光ファイバ2の外径変動を抑制している。
ヒータ17は、炉心管24の外側に組み付けられている。ガス供給部18は、外筒管23に連通接続されている。ガス供給部18は、線引中のヒータ17による加熱に伴う炉心管24の酸化劣化を抑制するための不活性ガスを線引炉11内に供給する。
外筒管23の内周部には、炉内温度を測定する温度測定部として熱電対19a,19b,19cがヒータ17より上の領域を測定できるように取り付けられている。熱電対19a,19b,19cによって測定された炉内温度の測定値は、制御部21に送られる。なお、ヒータ17より上の領域の温度を測定できるのであれば、熱電対の位置および数は図2に示すもの以外でもよく、温度測定部は、熱電対に替えて他の温度センサ等の測定手段を用いてもよい。
制御部21は、記憶装置21a等を有している。記憶装置21aには、炉内温度と不活性ガスの供給流量との相関関係に基づくテーブルが格納されている。そして、制御部21は、炉内温度の測定値によって、上記テーブルに基づいて不活性ガスの供給流量を決定する。ガス供給部18は、制御部21によって決定された供給流量の不活性ガスを炉内に供給する。
次に、本実施形態に係る光ファイバの線引方法を図2の光ファイバ線引装置10に適用した例で説明する。
まず、ダミー棒26の下端に連結部材27を介して光ファイバ母材1を取り付け、光ファイバ母材1の下端をヒータ17で加熱溶融させる。そして、加熱溶融されている光ファイバ母材1の下端から光ファイバ2を線引きする。光ファイバ母材1は、光ファイバ2の線引きが進むと短くなるのでダミー棒26を下降させて光ファイバ母材1の下端がヒータ17によって常に加熱されるようにする。このとき、外筒管23内の炉内空間容積を略一定にするように、仕切板12,13,14,15,16によって、炉内空間は段階的に仕切られる。
ヒータ17による加熱溶融が始まると、制御部21は、熱電対19a,19b,19cによって測定された炉内温度に対応する不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)の供給流量を、記憶装置に格納されているテーブル(炉内温度と不活性ガスの供給流量との相関関係のテーブル)に基づいて決定する。そして、制御部21は、決定された供給流量で炉内に不活性ガスを供給するようにガス供給部18を制御する。
さらに、熱電対19a,19b,19cによって測定された炉内温度が所定値以上(例えば、10℃以上など)変化した時点で、制御部21は、不活性ガスの供給流量を上記テーブルに基づいて変更する。
不活性ガスの供給流量の変化量が大きすぎる場合、或いは、変更の時間間隔が短すぎる場合は、光ファイバ2に不具合が生じるおそれがある。例えば、供給流量の変化量が0.2SLMより大きい場合、或いは、5秒より短い時間間隔で変化させた場合は、線引きされる光ファイバ2の線径変動が増加して不良となるおそれがある。このため、制御部21は、1回当たりの供給流量の変化量を0.2SLM以内で、5秒以上の間隔を空けて変化させるようにガス供給部18を制御することが好ましい。
以上、詳述した本実施形態の光ファイバ母材の線引方法によれば、線引炉11内の温度の測定結果に基づいて、不活性ガスの供給流量を決めることにより、線引炉11内の圧力を従来よりも精度よく一定に維持することができる。これにより、線引き時の不活性ガスの供給流量を低減することが可能となり、特に、不活性ガスがヘリウムガスであれば、製造コストの削減効果が大きい。
また、図2に示すような上部に外筒管23が設けられた線引炉11において、外筒管23の領域で測定した炉内温度の測定結果に基づいて、不活性ガスの供給流量を決めることにより、線引炉11内の圧力を従来よりも精度よく一定に維持することができる。
また、制御部21は、その記憶装置21aに、炉内温度と不活性ガスの供給流量との相関関係のテーブルを用意しているので、線引炉11内の圧力を一定に保つための不活性ガスの供給流量をより確実に決めることができる。
(実施例)
図2の光ファイバ線引装置10を使用し、光ファイバ母材1を加熱溶融して光ファイバ2の線引きを行った。線引きの実行中に、外筒管23内の温度と線引炉11内の圧力を測定した。線引の進行に伴って外筒管23内の温度が上昇し、線引炉11内の圧力が増加する結果が得られた。外筒管23内の温度と線引炉11内の温度の相関は図1のようになった。なお、外筒管23内の温度は熱電対19a、19b、19cによって測定された温度を平均した値である。
この結果から、外筒管23内の温度が高いほど不活性ガスの供給流量を減らせることがわかり、実際に不活性ガスの供給流量を変化させて、線引炉11内の圧力を一定にする不活性ガスの供給流量を求めた。外筒管23内の温度と線引炉11内の圧力を一定にするための不活性ガスの供給流量の一例を表1に示す。表1における不活性ガスの供給流量は線引初期値に対する割合を示す。
Figure 0006686706
本実施例では、上記表1の値を外筒管23内の温度と不活性ガスの供給流量との相関関係のテーブルとして、制御部21に記憶させておいた。そして、制御部21は、不活性ガスの供給流量を上記表1によるテーブルに基づいて、線引き中、自動的に不活性ガスの供給流量を減少させた。なお、表1の外筒管23内の各温度の間の不活性ガスの供給流量は、上下の値から内挿して計算した。
以上の方法で光ファイバ2の線引を行った結果、線引炉11内の圧力を一定に維持することができ、また不活性ガスの使用量を低減することができた。
1 光ファイバ母材
2 光ファイバ
10 光ファイバ線引装置
11 線引炉
12〜16 仕切板
17 ヒータ
18 ガス供給部
19a、19b、19c 熱電対(温度測定部)
20 炉内圧測定器
21 制御部
21a 記憶装置
22 蓋部材
23 外筒管
24 炉心管
25 炉心管下方延長部
26 ダミー棒
27 連結部材
28〜32 段部

Claims (3)

  1. ダミー棒で支持した光ファイバ母材を上下に昇降自在に線引炉内に収容して前記光ファイバ母材を加熱して溶融させ、前記線引炉内に不活性ガスを供給して前記光ファイバ母材の下端から光ファイバを線引きする光ファイバの線引方法であって、
    前記線引炉内の圧力を一定に保つように、前記線引炉内のヒータより上の領域で測定した炉内温度の測定結果に基づいて、前記不活性ガスの供給流量を決める、光ファイバの線引方法。
  2. 前記線引炉の上部に前記ダミー棒に沿って移動可能な複数の仕切板を有する外筒管が設けられており、前記光ファイバの線引きが進行して前記光ファイバ母材が下降するのに伴い、前記複数の仕切り板によって前記外筒管内を段階的に仕切りながら、前記外筒管の領域で測定した炉内温度の測定結果に基づいて、前記不活性ガスの供給流量を決める、請求項1に記載の光ファイバの線引方法。
  3. 前記炉内温度と前記不活性ガスの供給流量との相関関係のテーブルに基づいて、前記不活性ガスの供給流量を決める、請求項1または請求項2に記載の光ファイバの線引方法。
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