JP7155631B2 - 光ファイバの線引き方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバの線引き方法に関する。
特許文献1には、炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の筐体を有する線引装置において、光ファイバ母材の上部空間を上下方向に画成する仕切り板が一枚設けられた光ファイバ線引装置が記載されている。
特許文献2~4には、上記仕切り板が複数設けられた光ファイバ線引装置が記載されている。
特開平5-147969号公報 特開平11-343137号公報 特開2002-068773号公報 特開2005-225733号公報
上煙突型の筐体を有する線引装置を用いて光ファイバの線引きを行う際に、線引き終了が近づいてきたところで、線引きされた光ファイバのガラス径の変動が大きくなる場合がある。このように、ガラス径の変動が大きくなると品質が悪化するおそれがあり、線引き終了間際に線引きされた光ファイバは、不良品として廃却しなければならなくなる。
本発明は、炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の筐体を有する線引装置を用いて光ファイバの線引きを行う場合、線引き終了間際に線引きされた光ファイバのガラス径の変動が大きくなることを抑制することができる、光ファイバの線引き方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る光ファイバの線引き方法は、
炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の筐体を有する線引装置を用いて、ダミー棒で支持した光ファイバ母材を上下に昇降自在に前記筐体内に収容して前記光ファイバ母材を加熱して溶融させ、前記光ファイバ母材の下端から光ファイバを線引きする光ファイバの線引方法であって、
少なくとも外側部材と内側部材とを有して前記内側部材が前記外側部材の上に載るように構成された一つ以上の遮蔽板を、前記ダミー棒に挿通して移動可能に取り付けると共に、一番下の前記遮蔽板と前記光ファイバ母材の上端との間に風防板を取付けて、
光ファイバの線引きが進行して前記光ファイバ母材が下降するのに伴い、前記外側部材が前記煙突部内の内径縮径部に係止されることにより前記遮蔽板が係止されて、係止された前記遮蔽板により前記煙突部の空間が上下に遮蔽され、前記風防板が前記光ファイバ母材の上端との距離を一定に保って下降するように、光ファイバを線引きする。
上記発明の光ファイバの線引き方法によれば、炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の筐体を有する線引装置を用いて光ファイバの線引きを行う場合、線引き終了間際に線引きされた光ファイバのガラス径の変動が大きくなることを抑制することができる。
本発明の実施形態に係る光ファイバの線引き方法を用いた線引装置の概略図である。 従来の線引装置の一例および線引き終了間際の線引炉内の温度分布を示す図である。 従来の線引装置を用いて光ファイバの線引きを行った場合の線引き時間の経過に対する光ファイバのガラス径の測定データを示す図である。
(本発明の実施形態の説明)
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係る光ファイバの線引き方法は、
(1)炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の筐体を有する線引装置を用いて、ダミー棒で支持した光ファイバ母材を上下に昇降自在に前記筐体内に収容して前記光ファイバ母材を加熱して溶融させ、前記光ファイバ母材の下端から光ファイバを線引きする光ファイバの線引方法であって、
少なくとも外側部材と内側部材とを有して前記内側部材が前記外側部材の上に載るように構成された一つ以上の遮蔽板を、前記ダミー棒に挿通して移動可能に取り付けると共に、一番下の前記遮蔽板と前記光ファイバ母材の上端との間に風防板を取付けて、
光ファイバの線引きが進行して前記光ファイバ母材が下降するのに伴い、前記外側部材が前記煙突部内の内径縮径部に係止されることにより前記遮蔽板が係止されて、係止された前記遮蔽板により前記煙突部の空間が上下に遮蔽され、前記風防板が前記光ファイバ母材の上端との距離を一定に保って下降するように、光ファイバを線引きする。
上記方法によれば、光ファイバ母材の上端と一番下の遮蔽板との間に生じる強い上昇気流を風防板によって抑制することができる。これにより、炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の筐体を有する線引装置を用いて光ファイバの線引きを行う場合に、線引き終了間際に線引きされた光ファイバのガラス径の変動が大きくなることを抑制することができる。
(2)前記風防板は、石英ガラスによって形成されていてもよい。
上記方法によれば、石英ガラスによって形成された風防板は、例えばカーボンのように高温化した光ファイバ母材から発生するSiOの蒸気や酸素により酸化され発塵することは無い。
また、石英ガラスによって形成された風防板は、光ファイバ母材の上端からの輻射光をある程度透過させることができる。これにより、煙突部における風防板の上下の空間の温度差が大きくなることを抑制することができる。風防板の上下の空間の温度差が抑制されることで気流の乱れが抑制され、線引きされた光ファイバのガラス径の変動が大きくなることを、さらに抑制することができる。
(3)前記風防板の直径は、前記煙突部の最小内径の0.98倍以下であってもよい。
上記方法によれば、風防板の直径が、煙突部の最小内径の0.98倍以下であるので、風防板と煙突部内面とがほぼ接触することなく線引きすることができる。
(4)前記風防板の直径は、前記光ファイバ母材の直径の0.80倍以上であってもよい。
上記方法によれば、風防板の直径が、光ファイバ母材の直径の0.80倍以上であるので、光ファイバのガラス径の変動を、さらに確実に抑制することができる。
(本発明の実施形態の詳細)
本発明の実施形態に係る光ファイバの線引き方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバの線引き方法を適用した線引装置の一例を示す縦断面図である。
図1に示すように、線引装置1は、光ファイバ母材Gから光ファイバG1を線引きする装置である。線引装置1は、光ファイバ母材Gを上下に昇降自在に収容する線引炉2と、線引炉2内をダミー棒3に沿って移動可能な一つ以上(本例では4枚)の遮蔽板4,5,6,7と、を備えている。また、線引装置1は、光ファイバ母材Gを加熱するヒータ8と、線引炉2内に不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)を供給するガス供給部9と、を備えている。
線引炉2は、その上部が蓋部材21によって閉塞される筒状の煙突部22と、煙突部22の下側に配置される炉心部23と、を備える上煙突型の炉(筐体)である。
また、線引炉2は、炉心部23の下側に下方延長部25を備える。下方延長部25は、炉心部23よりも径が小さい円筒形状であり、炉心部23に連続して設けられている。
ヒータ8は、炉心部23の外側に組み付けられている。ガス供給部9は、煙突部22に連通して接続されている。ガス供給部9は、線引中のヒータ8による加熱に伴う炉心部23の酸化および劣化を抑制するための不活性ガスを線引炉2内に供給する。例えば、ガス供給部9から供給された不活性ガスは、ガス通路9aを経て、ガス吹込み口9bから煙突部22と炉心部23との間に吹き込まれる。
煙突部22は、その内周部22aが、ダミー棒3の中心軸に対して垂直な断面において、例えば円環形状に形成されている。内周部22aの円形断面の内径は、上下方向の位置によって相違した大きさである。なお、図1の例では、内周部22aが煙突部22の外周部22bと別体となっているが、一体となっていてもよい。煙突部22の内周部22aには、内径縮径部(本例では下方が縮径した段部になっている)24a~24dが上下方向へ所定間隔に形成されている。これにより、煙突部22は、円形断面の内径が上方から下方に行くにつれて各内径縮径部毎に小さくなるように構成されている。本例では、煙突部22は、内周部22aが下方に向けて四段階に縮径されている。
煙突部22は、蓋部材21の中央部にダミー棒3が挿通されている。ダミー棒3には、連結部材10を介して光ファイバ母材Gが組み付けられている。遮蔽板4,5,6,7は、ダミー棒3に挿通されて移動可能に連結部材10の上部に配置されている。そして、一番下の遮蔽板7と光ファイバ母材Gの上端との間に風防板11が配置されている。風防板11は、例えば、連結部材10の上面に取り付けられている。このため、例えば、線引される光ファイバ母材Gが線引炉2内の最も上方に位置されているとき、遮蔽板4,5,6,7は、積層状態で風防板11の上面に載置される形になる。
遮蔽板4,5,6,7は、外側部材4a,5a,6a,7aと内側部材4b,5b,6b,7bとでそれぞれ構成されている。外側部材4a,5a,6a,7aおよび内側部材4b,5b,6b,7bは、共に中心部に孔が開けられた、例えば、円盤状の板である。内側部材4b,5b,6b,7bは、外側部材4a,5a,6a,7aの上側にそれぞれ配置される。外側部材4a,5a,6a,7aおよび内側部材4b,5b,6b,7bは、石英、カーボン、炭化珪素等の耐熱材料で形成されており、その厚さは数mm~十数mm程度である。
遮蔽板4,5,6,7の外側部材4a,5a,6a,7aの各外径は、煙突部22の段階的に縮径される各内径に対応した径とされている。すなわち、一番上側の外側部材4aは、煙突部22の縮径されていない部分の内径Dc1に対応した径とされ、上から一段目の内径縮径部24aの段上に載置され得る外径を有している。そして、上から二番目の外側部材5aは、一段階に縮径された部分の内径Dc2に対応した径とされ、上から一段目の内径縮径部24aの段上に載置され得ない外径(小径である)で、かつ、上から二段目の内径縮径部24bの段上に載置され得る外径を有している。以下、外側部材6a,7aの外径は、煙突部22の内径Dc3,Dc4に対応した径とされ、順次下側の内径縮径部24c、24dの段上に載置され得る大きさとされている。また、一番下側の外側部材7aの外径は、煙突部22の最も縮径された部分の最小内径Dcよりも大きく形成されている。外側部材4a,5a,6a,7aの中心部に形成された孔の内径は、ダミー棒3の直径よりも若干大きく形成されている。
遮蔽板4,5,6,7の内側部材4b,5b,6b,7bの各外径は、対になっている外側部材4a,5a,6a,7aの中心部に形成された孔の内径よりも十分大きく、かつ、対になっている外側部材4a,5a,6a,7aの外径よりも小さくされている。
内側部材4b,5b,6b,7bの中心部に形成された孔の内径は、外側部材4a,5a,6a,7aの中心部に形成された孔の内径よりも小さく、かつ、ダミー棒3の外径よりも僅かに大きく、ダミー棒3に対して摺動可能に形成されている。このため、中心部の孔にダミー棒3が挿通されたとき、内側部材4b,5b,6b,7bは、外側部材4a,5a,6a,7aの上に載るように構成されている。
風防板11は、中央に孔が開けられた、例えば、円盤状の板である。風防板11は、例えば、石英ガラスで形成されており、その厚さは数mm~十数mm程度である。風防板11の直径Dは、煙突部22の最も縮径された部分の最小内径Dcよりも小さくなるように形成されている。例えば、風防板11の直径Dは、最小内径Dcの0.98倍以下である。また、風防板11の直径Dは、光ファイバ母材Gの直径Dpに対して、例えば、0.80倍以上である。
次に、本実施形態に係る光ファイバの線引き方法を線引装置1に適用した例で説明する。
まず、ダミー棒3の下端に連結部材10を介して光ファイバ母材Gを取り付け、光ファイバ母材Gの下端をヒータ8で加熱し溶融させる。そして、溶融されている光ファイバ母材Gの下端から光ファイバG1を線引きする。線引きされる光ファイバG1は、下方延長部25から引き出される。光ファイバ母材Gは、光ファイバG1の線引きが進むと短くなるのでダミー棒3を下降させて光ファイバ母材Gの下端がヒータ8によって常に加熱されるようにする。線引き中は、ガス供給部9から不活性ガスを線引炉2の内部に供給する。また、煙突部22の上部は、内部の不活性ガスが流出しないように蓋部材21で蓋をする。
最初は、4枚の遮蔽板4,5,6,7は、積み重ねられた状態となっており、光ファイバG1の線引きが進行して光ファイバ母材Gが短くなるに伴い、風防板11が取り付けられた連結部材10がダミー棒3と共に降下する。4枚の遮蔽板4,5,6,7は、煙突部22の内径が各外側部材4a,5a,6a,7aの外径よりも小さくなる内径縮径部24a~24dで下方への移動がそれぞれ阻止される。この結果、遮蔽板4,5,6,7は、上部の遮蔽板4から下部の遮蔽板7へと各内径縮径部24a~24dに順次係止される。光ファイバ母材Gが短くなるに伴い、各遮蔽板4,5,6,7によって煙突部22内の空間が順次上下に仕切られることにより、光ファイバ母材Gの上部の空間容積がほぼ一定に保たれたまま線引きされる。
一方、風防板11は、内径縮径部24a~24dに係止されることなく、光ファイバ母材Gの上端との距離を一定に保った状態で光ファイバ母材Gおよび連結部材10と共に線引炉2内を下降する。
ところで、炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の線引炉を有する線引装置を用いて光ファイバの線引きを行う場合、線引き終了間際において、線引された光ファイバのガラス径が大きく変動してしまうことがある。
図2は、線引き終了間際にガラス径の変動を発生する場合がある、従来の線引装置の一例、および線引き終了間際の線引炉内の温度分布を示す図である。また、図3は、従来の線引装置を用いて光ファイバの線引きを行った場合の線引き時間の経過に対する光ファイバのガラス径の測定データを示す図である。
図2に示す線引装置100は、風防板を備えていない。図2に示すように、線引装置100における線引きが進行すると、3枚設置された遮蔽板104,105,106が順次係止されていき、一番下側の遮蔽板106が係止された後も、光ファイバ母材Gは更に下方部へと下降していく。
光ファイバ母材Gが炉心部123のヒータ108によって直接加熱されるのは光ファイバ母材Gの下端側であるが、ヒータ108の輻射光は光ファイバ母材G内を下から上へと伝搬する。このため、光ファイバ母材Gの上端側は、光ファイバ母材Gの上端部(外径が小さくなる肩部)からヒータ108の輻射光が放出されて、輻射光の熱を放出するヒータのように作用する。
光ファイバの線引きが進行して線引き終了間際になると、短くなった光ファイバ母材Gの上端の位置が炉心部123のヒータ108の位置に近くなる。これにより、炉心部123内の温度分布H0は、図2に示されるように、ヒータ108によって形成されるヒートゾーンの温度分布H1と、光ファイバ母材G上端からの輻射熱で形成されるヒートゾーンの温度分布H2とが重複した分布となる。このため、光ファイバ母材Gの下部や中部を線引きしているときとは異なった温度分布が線引炉102内に形成されて、光ファイバ母材Gの上端部から一番下側の遮蔽板106の間の領域Sに急峻な温度勾配が発生する。
この急峻な温度勾配の発生により、領域Sにおいて炉心部123から煙突部122に向かい、例えば、図2の矢印Pで示すような、強い上昇気流が発生する。そして、この上昇気流の発生により、すでに閉じている一番下側の遮蔽板106の内側部材106bが押されて動き、線引炉102内の遮蔽状態が崩れる。このため、線引炉102内の圧力に変動が生じ、この内圧の変動に応じて光ファイバのガラス径に変動が生じる。その結果、例えば、図3に示されるように、線引き終了間際における一定の期間Tにおいて光ファイバのガラス径が大きく変動することになる。
これに対して、本実施形態に係る光ファイバの線引き方法は、図1に示すように、一番下の遮蔽板7と光ファイバ母材Gの上端との間に風防板11を取り付けた状態で線引きを行う。このため、この領域Sに生じる強い上昇気流を風防板11によって抑制することができるとともに、一番下の遮蔽板7の内側部材7bに向かって上昇気流が直撃することを防ぐことができる。したがって、炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の筐体を有する線引装置を用いて光ファイバの線引きを行う場合に、線引き終了間際に線引きされた光ファイバのガラス径の変動が大きくなることを抑制することができる。
また、線引炉2内では石英ガラス製の光ファイバ母材Gを溶かしながら線引きを行っており、風防板11は、このような線引炉2内の1000℃を超える高温部で使用される。このため、例えば、風防板11の材質としてカーボンを用いた場合、高温化した光ファイバ母材Gから発生するSiOの蒸気や酸素により、風防板11が酸化され発塵する可能性がある。これに対して、風防板11の材質として石英ガラスを用いた場合は、酸化による発塵の虞がなく、光ファイバ母材Gや光ファイバG1に対する塵の付着によるガラス径変動の発生を抑制することができる。
また、風防板11で光ファイバ母材Gの上端からの輻射光が遮られると、風防板11の上下の温度差が大きくなりすぎて、気流の大きな乱れが発生するおそれがある。このため、風防板11を石英ガラスで形成することにより、上記輻射光をある程度透過させることができ、風防板11の上下の温度差が大きくなることを抑制することができる。これにより、気流の乱れの発生を抑制することができ、線引きされた光ファイバG1のガラス径の変動が大きくなることを、さらに抑制することができる。
(風防板実験例)
次に、線引装置1における風防板11の直径Dを変えて、本実施形態に係る光ファイバの線引き方法によって線引きを行った風防板実験例について述べる。
風防板実験例では、同一の線引装置1に対して同一径の光ファイバ母材を用いて、直径Dが異なる風防板11を用いた例1~例9の場合において、それぞれ線引きを行った。例1~例9の風防板11の直径Dは、煙突部22の最小内径Dcとの比率(D/Dc)、および、光ファイバ母材Gの直径Dpとの比率(D/Dp)で示した。各例ともそれぞれ100本の光ファイバ母材Gに対して線引きができるか否かを検査した。そして、線引きされた光ファイバG1に対して、線引き時間の経過に対する光ファイバG1のガラス径の測定を行い、測定結果(例えば図3のようなグラフ)から所定の大きさ以上のガラス径の変動が発生するか否かを検査した。
表1は、例1~例9におけるそれぞれの線引きの結果を示す。
Figure 0007155631000001
D/Dcが、1.00の例1では、線引きパスライン位置の自動調整(ダミー棒3の水平移動)の作用により、風防板11と煙突部22の内面が接触し、全く線引きができなかった。
D/Dcが0.98の例2では、98%の光ファイバ母材Gにおいて、風防板11が煙突部22の内面に接触することなく線引きができた。
D/Dcが0.95以下かつ0.38以上の場合(例3~9)は、全ての光ファイバ母材Gにおいて、風防板11が煙突部22の内面に接触することなく線引きができた。ところが、D/Dcが0.70以下の場合(例7~9)は、D/Dpが0.74以下となり、線引きで得られた一部の光ファイバG1で所定の大きさ以上のガラス径の変動が発生した。
一方、D/Dpが0.80以上かつ1.03以下の場合(例2~6)は、線引きで得られた全ての光ファイバG1で所定の大きさ以上のガラス径の変動が発生しなかった。なお、D/Dpが1.05の場合(例1)は、D/Dcが1.00であり、前述のように、風防板11と煙突部22の内面が接触して全く線引きができなかったので、光ファイバG1のガラス径の変動の検査は行っていない。
本実施形態に係る光ファイバの線引き方法によれば、上記風防板実験例に示すように、例えば、風防板11の直径Dを煙突部22の最小内径Dcの0.98倍以下(D/Dcが0.98以下)とすることにより、風防板11と煙突部22内面とがほぼ接触することなく光ファイバG1の線引きを行うことができる。また、例えば、風防板11の直径Dを光ファイバ母材Gの直径Dpの0.80倍以上(D/Dpが0.80以上)とすることにより、強い上昇気流を十分に抑えることができ、光ファイバG1のガラス径の変動を、さらに確実に抑制することができる。
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
1:線引装置
2:線引炉
3:ダミー棒
4,5,6,7:遮蔽板
4a,5a,6a,7a:外側部材
4b,5b,6b,7b:内側部材
10:連結部材
11:風防板
22:煙突部
22a:内周部
22b:外周部
23:炉心部
24a~24d:内径縮径部
25:下方延長部
D:風防板の直径
Dc:最小内径
Dp:光ファイバ母材の直径
G:光ファイバ母材
G1:光ファイバ

Claims (3)

  1. 炉心部の上部に煙突部が設けられた上煙突型の筐体を有する線引装置を用いて、ダミー棒で支持した光ファイバ母材を上下に昇降自在に前記筐体内に収容して前記光ファイバ母材を加熱して溶融させ、前記光ファイバ母材の下端から光ファイバを線引きする光ファイバの線引方法であって、
    少なくとも外側部材と内側部材とを有して前記内側部材が前記外側部材の上に載るように構成された一つ以上の遮蔽板を、前記ダミー棒に挿通して移動可能に取り付けると共に、一番下の前記遮蔽板と前記光ファイバ母材の上端との間に風防板を取付けて、
    光ファイバの線引きが進行して前記光ファイバ母材が下降するのに伴い、前記外側部材が前記煙突部内の内径縮径部に係止されることにより前記遮蔽板が係止されて、係止された前記遮蔽板により前記煙突部の空間が上下に遮蔽され、前記風防板が前記光ファイバ母材の上端との距離を一定に保って下降するように、光ファイバを線引きし、
    前記風防板の直径は、前記煙突部の最小内径の0.95倍以下である光ファイバの線引き方法。
  2. 前記風防板は、石英ガラスによって形成されている、請求項1に記載の光ファイバの線引き方法。
  3. 前記風防板の直径は、前記光ファイバ母材の直径の0.80倍以上である、請求項1または請求項2に記載の光ファイバの線引き方法。
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