以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
[第1の実施の形態例]
図1は、本発明を適用した印刷装置の第1の実施の形態例に係る構成図である。図1に示すプリンター2が本発明を適用した印刷装置であり、本プリンター2では、初回起動時等に、そのサーマルヘッド26に備えられるヘッド素子(RH−1〜RH−n)の各抵抗値(各分圧電圧)を測定して記憶しておく。その後、印刷処理の際に、オートカッター27による印刷媒体(ロール状の用紙等)の切断のタイミングで、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の各抵抗値(各分圧電圧)を測定する。その測定値と上記記憶しておいた初期の各抵抗値(各分圧電圧)から換算して求められる抵抗値変化率から、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化状態を判定する。また、測定値及び/又は、判定結果に関する情報を、外部装置(POS端末装置1、劣化管理サーバー3等)に送信する構成とすることができる。
これにより、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化状態を段階的に把握することができる。また、印刷媒体の切断時に劣化検出処理を行うので、印刷処理に支障をきたすことなく劣化の検出が可能となる。更に、プリンター2の劣化管理をホスト装置等において容易に行えるようになる。
図1に示すように、本実施の形態例では、プリンター2はPOS(Point Of Sales)端末装置1からの印刷命令によりレシート等を印刷する印刷装置である。POS端末装置1及びプリンター2は、それぞれ、インターネットなどの通信網4を介して劣化管理サーバー3と通信可能に構成される。POS端末装置1とプリンター2でプリンターシステム100を構成することができ、また、POS端末装置1とプリンター2と劣化管理サーバー3で、あるいは、プリンター2と劣化管理サーバー3で、劣化管理システム200を構成することができる。
なお、図示していないが、通信網4には、複数のプリンターシステム100、POSサーバー等が接続され得る。
POS端末装置1は、販売店などに設置されるいわゆるレジであり、プリンター2にレシート等の印刷命令を行うプリンター2のホスト装置である。POS端末装置1は、図示していないが、CPU、RAM、ROM、表示装置、入力装置(バーコードリーダーなど)、通信装置等を備え、商品販売時における精算処理等を実行する。また、後述の通り、POS端末装置1が、プリンター2のヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化管理を行ってもよい。
図1に示す通り、POS端末装置1は、機能構成としてPOSアプリケーション部11、プリンタードライバー部12、及び、劣化管理部13を備える。
POSアプリケーション部11は、商品販売時の精算処理、レシート・クーポンの印刷要求、図示していないPOSサーバーへのデータ送信等を担う部分である。印刷要求時には、印刷要求データをプリンタードライバー部12に出力する。
プリンタードライバー部12は、レシートプリンター2用のドライバー機能を担う部分である。プリンタードライバー部12は、POSアプリケーション部11から出力された印刷要求データを受信し、その印刷要求データに従ってプリンター2用のコマンドで表現された印刷データを生成し、プリンター2へ送信する。
劣化管理部13は、プリンター2のヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化管理を行う部分である。具体的な機能については後述する。
なお、POSアプリケーション部11、プリンタードライバー部12、及び、劣化管理部13は、それぞれ、各処理内容を指示するプログラム、当該プログラムによって動作するCPU、RAM等によって構成される。
次に、劣化管理サーバー3は、プリンター2など管理対象のプリンターの劣化に関する情報を管理するサーバーである。図示していないが、劣化管理サーバー3は、サーバーコンピューターで構成され、CPU、RAM、ROM、HDD、表示装置、入力装置、通信装置等を備える。劣化管理サーバー3の具体的な機能については後述する。
次に、プリンター2は、POS端末装置1の命令に従って(印刷データに従って)レシート・クーポン等を印刷する、ラインヘッドを備えたサーマルプリンターである。プリンター2は、印刷媒体に印刷対象を印刷し、印刷が完了するとオートカッター27により用紙を切断し、排出する。
また、プリンター2は、いわゆるインテリジェントプリンターと呼ばれるものであり、一般的なプリンターにおける印刷制御を行う制御装置のほかに、パーソナルコンピューターと同様のデータ処理装置(演算装置)を備える。
プリンター2は、図1に示すような機能構成を備える。通信部21は、外部装置と通信を行う通信装置であり、POS端末装置1、劣化管理サーバー3などとの通信機能を担う。
メイン制御部22は、後述するヘッド制御部23が担う制御機能以外の制御機能を担う、プリンター2のメインコントローラーである。上述したパーソナルコンピューターと同様のデータ処理装置(演算装置)で構成される。なお、メイン制御部22とヘッド制御部23は別体でも一体でもよい。
ヘッド制御部23は、サーマルヘッド26及び電圧印加回路25を制御し、印刷媒体に印刷を実行させると共に、サーマルヘッド26が備えるヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化状態を判定する処理を行う。ヘッド制御部23は、CPU、RAM、ROM、ASIC等で構成され、主にROMに記憶されたプログラムに従ってCPUが動作することにより、処理を実行する。ヘッド制御部23による具体的な処理内容は後述する。
不揮発性メモリー24(データ記憶部)は、ヘッド制御部23による、上述したヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化状態を判定する処理に関するデータを記憶する部分である。不揮発性メモリー24は、後述する仮の変換テーブル、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の変換テーブル、及び、劣化情報(ヘッド素子の識別番号とそのヘッド素子の劣化度合、等)等のデータを記憶する。なお、不揮発性メモリー24は、NVRAMなどで構成することができる。
電圧印加回路25は、サーマルヘッド26に電圧を印加する回路である。電圧印加回路25は、電圧値の異なる2つの電源(24V、3.3V)を備え、印刷実行時には印刷用電圧(24V、(第1電圧))をサーマルヘッド26に印加し、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の検査実行時には検査用電圧(3.3V、(第2電圧))に切り替えて、サーマルヘッド26に電圧を印加する。
サーマルヘッド26は、複数のヘッド素子(RH−1〜RH−n)とそれらの選択部を備える。印刷実行時には、選択部によって選択されたヘッド素子(RH−1〜RH−n)に印刷用電圧が印加され、そのヘッド素子の発熱体(抵抗要素)が発熱し、印刷媒体に印刷がなされる。また、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の検査実行時には、選択部によって選択されたヘッド素子(RH−1〜RH−n)に検査用電圧が印加される。
オートカッター27は、刃とその駆動部から構成され、レシートの印刷が完了すると、メイン制御部22の制御により、印刷媒体の切断を行う。
用紙搬送部28は、搬送ローラー、その駆動部等から構成される。メイン制御部22の制御により、印刷媒体の格納部から当該印刷媒体をヘッド素子の位置まで搬送し、印刷が終了すると、印刷媒体をオートカッター27の位置まで搬送する。
カバー29は、印刷装置の筐体に設けられる、印刷媒体の収納部を開放可能な蓋である。印刷媒体の交換の際などに、操作者にカバー29が開放されると、メイン制御部22によって、その開放が検知される。
図2は、電圧印加回路25とサーマルヘッド26の一例を示した回路図である。図2に示す通り、サーマルヘッド26は、ラインヘッドを構成する複数のヘッド素子(RH−1〜RH−n)とラッチドライバー262とn段のFF(フリップフロップ)からなるシフトレジスター263を備えている。上述した選択部は、ラッチドライバー262とシフトレジスター263で構成される。また、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)は、図2に示されるように、発熱体である抵抗要素を備える。
シフトレジスター263は第1段のシフトレジスターのDO(Data Out)は第2段シフトレジスターのDI(Data In)に接続されるように順次連結されている。
ラッチドライバー262は、ストローブ信号の入力端子STBと、ラッチ信号の入力端子LATを備えている。また、n段の各シフトレジスターは、印刷データであるシリアルデータが入力される入力端子DI、クロック信号の入力端子CLK、シフトレジスター263からあふれたシリアルデータが出力される出力端子DOを備えている。
図2の左側でこれらの回路に接続されるヘッド制御部23からの制御信号によって第1段のシフトレジスターの入力端子DIから、クロック信号に対応して1ビットずつ1ライン分のシリアルデータが入力される。次に、1ライン分のシリアルデータがシフトレジスターに格納された時点で、ラッチ信号によって1ライン分のシリアルデータをパラレルデータとしてラッチドライバー5に格納する。
次に、ストローブ信号を受信したラッチドライバー262は、ストローブ信号を受けている間、ラッチしたデータの“1”に相当するヘッド素子に通電する。この通電によって印刷媒体に1ライン分(1ドット)の画像が形成され、図示しない紙送り機構によって1ドット分の紙送りが実行される。この手順を繰り返すことで印刷が実行される。
また、電圧印加回路25は、スイッチ信号(SW24VAあるいはDOT_DETECT)によって、ヘッド素子の印刷用電源24[V]及び検査用電源3.3[V]のON/OFFを制御する。なお、検査用電源は、ヘッド制御部23の電源と同じ電圧が望ましく、一例として、ここでは3.3Vとしている。これにより、後述するA/D変換時の誤差が少なくなる。
上述した印刷の実行時には、ヘッド制御部23からのSW24VA信号により、FETで構成されるスイッチング素子QF5をONとして、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)へ印刷用電圧24Vを印加する。
一方、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の検査時には、スイッチング素子QF5をOFFにして、ヘッド制御部23からのDOT_DETECT信号により、それぞれFETで構成されるスイッチング素子QF1及びQF2をONとして、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)へ検査用電圧3.3Vを印加する。
次に、ヘッド制御部23はDI信号で検査対象のヘッド素子(RH−1〜RH−n)を指定(選択)し、ラッチドライバー262によってそのヘッド素子(RH−1〜RH−n)が通電される。
これにより、検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)をつなぐ直列回路が形成され、ヘッド制御部23は、READ_HEAD信号で上記直列回路の検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)間の分圧電圧を取得(測定)する。具体的には、A/DコンバーターADCを介して、A/D変換された値(AD値)を取得する。なお、1ヘッド素子あたりの検査時間内において、当該ヘッド素子に印加されるジュール熱により、通電時間が長くなると印字(発色)に至る虞がある。従って、発色する温度まで上昇することがないように、検査時間は一定時間以内に抑えるのが好ましい。
以上のような構成を備えるプリンター2では、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化判断に係る処理に特徴があり、以下、その具体的な内容について説明する。
ヘッド素子(RH−1〜RH−n)においては、劣化が進むことによりその発熱体(抵抗素子)の抵抗値が変化することが知られている。変化の仕方にはいくつかの現象が見られるが、1つの現象においては、抵抗値が徐々に増加していく。また、他の現象においては、抵抗値が徐々に減少していき、その後急激に増加する。いずれの場合においても、ある程度以上に抵抗値が増加すると印刷時に十分に発熱せず印刷不良を起こす虞がある。
従って、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化判断では、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の(発熱体の)抵抗値の変化を段階的に把握することが重要である。
そのため、本プリンター2では、まず、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の初期状態(初期抵抗値)を把握する処理(初期設定処理)を行った後、初期状態に基づいて適切な頻度で抵抗値を測定し、劣化判断処理を実行する。
また、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の抵抗値は、上述した、検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)をつなぐ直列回路の上記分圧電圧を測定することによって求められるので、上記初期状態の把握及び劣化状態の把握は、分圧電圧を測定することによって行う。
図3は、初期設定処理の手順を例示したフローチャートである。なお、この初期設定処理においては、その後に行われる劣化判断処理の際に処理を速く行えるように、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)毎に変換テーブルを作成しておく。この変換テーブルは、測定される上記分圧電圧の各値(より具体的にはAD値)に、上記初期抵抗値からの抵抗値変化率を対応付けたものである。
図4は、分圧電圧と抵抗値変化率の関係を示すグラフである。図4に示す例は、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の発熱体の抵抗値を564Ωとし、検査用抵抗R1の抵抗値を255Ωとした場合の、分圧電圧(AD値)と抵抗値変化率の関係を示している。なお、抵抗値変化率は初期抵抗値(ここでは564Ω)からの変化分(増加分)を百分率で表している。なお、この関係は、数式に基づく計算で求めることができる。
図5は、仮の変換テーブルを例示した図である。図5に示す仮の変換テーブルは、図4に示したグラフを表形式で表現したものである。仮の変換テーブルにおける「分圧電圧」において、Xは、仮の変換テーブルでは、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の発熱体の初期抵抗値564Ωに対応する分圧電圧を意味している。具体的には、X=176である。すなわち、初期状態で発熱体の抵抗値が564Ωである場合に、上述した手順で分圧電圧を測定すると「176」という値が取得されるということである。この値が、初期分圧電圧値である。
プリンター2をある程度使用した後に、分圧電圧を測定して、例えば「181」という値を得たときは、仮の変換テーブルにおいて「分圧電圧」が「X+5」であるので、それに対応付けられた「抵抗値変化率」の「10_11%」発熱体の抵抗値が増加した、ということがわかる。
なお、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の発熱体の初期抵抗値564Ωは、装置の仕様通りの値(仕様値)であり、実際の抵抗値は、この仕様値から10%程度の誤差を含む可能性がある。従って、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)毎により正確に劣化度合を判断するためには、その初期抵抗値を正確に把握し、それに基づいた変換テーブル(分圧電圧と抵抗値変化率の関係を示すテーブル)を用意する必要がある。なお初期抵抗値564Ωはサーマルヘッドにより異なり、上記は一例である。
以上説明した仮の変換テーブルは、予め作成され、不揮発性メモリー24に記憶されている。
以降、図3に基づいて、初期設定処理の具体的な処理内容について説明する。本プリンター2の初回起動時において、初期設定処理は実行される。ヘッド制御部23は、まず、上述したように、電圧印加回路25に信号を出し、検査用電圧(3.3V)をサーマルヘッド26に印加する(図3のステップS1)。
次に、ヘッド制御部23は、初期設定を行う1つのヘッド素子(RH−1〜RH−n)を選択する(図3のステップS2)。具体的には、上述の通り、DI信号をサーマルヘッド26に出して、そのヘッド素子に通電させる。
これにより、検査用抵抗R1と当該ヘッド素子の抵抗要素(発熱体)をつなぐ直列回路が形成されるので、ヘッド制御部23は、READ_HEAD信号で上記直列回路の検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)間の分圧電圧を測定し、その値を取得する(図3のステップS3)。すなわち、当該ヘッド素子の(抵抗要素(発熱体)の)初期抵抗値に対応する情報(初期分圧電圧値)が取得される。
次に、ヘッド制御部23は、不揮発性メモリー24に記憶される、上述した仮の変換テーブルを読み出し、そのテーブルの「X」に、取得した当該ヘッド素子の分圧電圧を代入して、当該ヘッド素子の変換テーブルを生成する(図3のステップS4)。すなわち、そのヘッド素子の実際の初期抵抗値に基づいた、分圧電圧と抵抗値変化率の関係を示す変換テーブルが生成される。
ヘッド制御部23は、生成した変換テーブルを不揮発性メモリー24に読み出し可能に記憶(保存)し(図3のステップS5)、当該ヘッド素子についての初期設定処理を終了する。
ヘッド制御部23は、以上説明した初期設定処理(S2−S5)を、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について実行する(図3のステップS6のYes)。
その後、ヘッド制御部23は、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について生成され不揮発性メモリー24に記憶される変換テーブルに、それぞれ、閾値を設定する(図3のステップS7)。ここでは、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化状態をきめ細かく把握できるように、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)毎に複数の閾値を設定する。
閾値は、変換テーブルにおいて、AD値として取得される分圧電圧に対応付けられる抵抗値変化率に設定され、例えば、51%、15%、−15%と−30%の抵抗値変化率が4つの閾値として、予め設定される。例えば、図5に示した仮の変換テーブルが、そのXに測定された初期抵抗値が代入されたあるヘッド素子の変換テーブルであるとすると、図5に示す4つの閾値N1、N2、N3及びN4が設定される。
以上のようにして、初期設定処理が終了する。
次に、初期設定処理が行われた後、プリンター2が使用されて、所定のタイミングになると、ヘッド制御部23は、劣化判断処理を実行する。この劣化判断処理が実行される所定のタイミングが、本プリンター2の1つの大きな特徴であり、具体的には印刷処理終了後の印刷媒体を切断するタイミングである。印刷媒体の切断処理中は、印刷処理が停止する、印刷処理が実行され得ない状態である。本プリンター2では、この印刷が実行され得ない切断処理の状態を検知すると、ヘッド素子の劣化判断処理を実行する。
図6は、プリンター2において実行される、劣化判断処理のタイミングを表したタイムチャートである。図6において、横軸は経過時間tを示す。また、縦軸は、処理の実行(上位値)/不実行(下位置)、又は、電圧のON(上位値)/OFF(下位置)を示す。
(A)は、レシートの発行処理を表した図である。タイムチャートの各山(ΔT1及び、ΔT2、ΔT3及びΔT4、ΔT5及びΔT6、…ΔTn及びΔTn+1)は、それぞれ1レシートの発行処理に相当する。各山において、前者(ΔT1、ΔT3、ΔT5、…ΔTn)は、印刷処理に相当し、後者(ΔT2、ΔT4、ΔT6、…ΔTn+1)は切断処理に相当する。例えば、ΔT1(t1からt2)は、ヘッド制御部23により、電圧印加回路25へ信号が発せられ、サーマルヘッド26に電圧が印加されて、レシートに印字をする時間である。また、ΔT2(t2からt3)は、メイン制御部22により、オートカッター27が制御され、レシートを切断している時間である。
(B)は、上記レシートに印字をするためにサーマルヘッド26へ印刷用電圧(24V)を印加するタイミングを示した図である。(B)における各山は、(A)における印刷処理(ΔT1、ΔT3、ΔT5、…ΔTn)に一致している。(A)の各印刷処理時間(ΔT1、ΔT3、ΔT5、…ΔTn)にレシートへの印字が終了すると、ヘッド制御部23の制御により、電圧印加回路25は、サーマルヘッド26へ印加されていた印刷用の電圧(24V)を遮断する。
(C)は、検査用電圧(3.3V)をサーマルヘッド26へ印加するタイミングを示した図である。(C)における各山は(A)における切断処理(ΔT2、ΔT4、ΔT6、…ΔTn+1)に一致している。そして、(A)における各切断処理(ΔT2、ΔT4、ΔT6、…ΔTn+1)の開始時に、ヘッド制御部23の制御により、電圧印加回路25は、サーマルヘッド26へ検査用電圧(3.3V)を印加する。
(D)から(G)は、劣化判断処理の実行タイミングを示す。劣化判断処理の実行タイミングは、(A)における切断処理(ΔT2、ΔT4、ΔT6、…ΔTn+1)、(C)における検査用電圧(3.3V)の印加時間と一致している。(D)から(G)の各劣化判断処理時間では、本実施の形態例では、一例として、50個のヘッド素子について処理を実行する。このヘッド素子の数は、50個に限定されるものではないが、(A)における切断処理(ΔT2、ΔT4、ΔT6、…ΔTn+1)の時間内に処理が完了できる数が選択される。
このように、本プリンター2では、オートカッター27によりレシートを切断している間に、ヘッド素子の全数を分割した所定数のヘッド素子について劣化判断処理を実行する。すなわち、全ヘッド素子について連続して劣化判断処理を実行するのではなく、印刷処理が実行され得ない状態の間に完了できる数のヘッド素子について実行する。
次に、劣化判断処理の処理内容について説明する。上述したように、劣化判断処理は、レシートが出力されるまでの1サイクルの間に行われるので、まず、レシートが出力されるまでの1サイクルの処理について説明する。
図7は、レシート印刷の1サイクルの処理手順を例示したフローチャートである。まず、ヘッド制御部23は、メイン制御部22からレシート印刷の指示を受け、電圧印加回路25に信号を出し、印刷用電圧(24V)をサーマルヘッド26に印加する(図7のステップS11)。
次に、メイン制御部22は、POSアプリケーション部11から受信した印刷データに基づいて、レシートを印刷する処理を開始する(図7のステップS12)。具体的には、用紙搬送部28を制御して、印刷媒体を、順次、サーマルヘッド26の位置へ搬送する(図7のステップS12)。
また、ヘッド制御部23へ指示して、搬送した印刷媒体への印刷を実行させる。レシートの印刷が終了すると(図7のステップS13)、ヘッド制御部23は、電圧印加回路25に信号を出し、印刷用電圧(24V)のサーマルヘッド26への印加を遮断する(図7のステップS14)。
次に、メイン制御部22は、オートカッター27を駆動して、印刷媒体の切断を開始する(図7のステップS15)。ここで、ヘッド制御部23は、メイン制御部22から、オートカッター27の駆動開始の信号を受けてサーマルヘッド26の劣化判断処理を実行する(図7のステップS16)。すなわち、ヘッド制御部23は、印刷が実行され得ない切断処理の状態を検知して、劣化判断処理を開始する。劣化判断処理の具体的な処理内容については後述する。
オートカッター27による印刷媒体の切断が終了すると、メイン制御部22は、オートカッター27の駆動を停止し、印刷媒体の切断を終了する(図7のステップS17)。
このようにして、1レシートについての処理が実行される。かかる処理が、POS端末装置1からレシート印刷の要求を受ける度に、プリンター2によって実行される。
次に、劣化判断処理について説明する。図8は、図7のステップS16の具体的な処理の手順を例示したフローチャートである。まず、ヘッド制御部23は、上述したように、電圧印加回路25に信号を出し、検査用電圧(3.3V)をサーマルヘッド26に印加する(図8のステップS161)。
次に、ヘッド制御部23は、劣化判断を行う1つのヘッド素子(RH−1〜RH−n)を選択する(図8のステップS162)。具体的には、上述の通り、DI信号をサーマルヘッド26に出して、そのヘッド素子に通電させる。
これにより、検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)の間の分圧電圧を測定し、その値を取得する(図8のステップS163)。すなわち、当該ヘッド素子の(抵抗要素(発熱体)の)この時点における抵抗値に対応する情報が取得される。
次に、ヘッド制御部23は、不揮発性メモリー24に記憶されている当該ヘッド素子の変換テーブルを読み出し、その変換テーブルにおいて、上記取得したこの時点での分圧電圧に対応付けられている抵抗値変化率を読み出す(取得する)(図8のステップS164)。すなわち、分圧電圧が抵抗値の情報に変換される。
ヘッド制御部23は、取得した抵抗値変化率が、当該変換テーブルに設定されている閾値を超えているか否かをチェックし(図8のステップS165)、取得した抵抗値変化率などの情報(劣化情報)を不揮発性メモリー24へ保存(記憶)する(図8のステップS166)。
図9は、不揮発性メモリー24に保存する具体的なデータ(劣化情報)の一例である。
本実施の形態例では、劣化情報として全512個のヘッド素子の各ヘッド素子(ヘッド素子の識別番号)について、「抵抗値変化率」及び「アラームフラグ」の情報を保存(記憶)する。抵抗値変化率(%)は、ステップS164で取得された抵抗値変化率であり、「アラームフラグ」は、ステップS165の判断により、閾値を超えていると判断された場合に立つ(ONとされる)フラグである。本実施の形態例では、4つの閾値(N1、N2、N3、N4)を変換テーブルに設定しているので、「アラームフラグ」のデータは、どの閾値を超えているか判断可能なデータとしている。ON(N2)は閾値N2を超えているが、閾値N1を超えていないことを示し、ON(N1)は閾値N1を超えていることを示している。また、ON(N3)はマイナス方向に閾値N3を超えているが、閾値N4を超えていないことを示し、ON(N4)はマイナス方向に閾値N4を超えていることを示している。
図9に示す例では、例えばヘッド素子「1」は、現在の(直近の検出結果における抵抗値変化率)抵抗値変化率が「2−3%」であり、閾値を超えていないことを示している。
ヘッド素子「30」は、抵抗値変化率が「−16%」であり、閾値N3を超えていることを示している。
また、ヘッド素子「50」は、抵抗値変化率が「16_17_18%」であり、閾値N2を超えていることを示している。
ステップS166の処理では、選択されているヘッド素子について、「抵抗値変化率(%)」と「アラームフラグ」の値が保存(更新)される。
なお、抵抗値変化率が、−15%から+15%の間である場合には、そのヘッド素子については劣化があまり進んでおらず(直ぐに対応すべき劣化状態になく)、15%を超えている場合、あるいは、−15%を下回る場合には、そのヘッド素子については劣化が進んでいる(注視すべき劣化状態である)と判断できる。
なお、劣化情報として、抵抗値変化率が閾値を超えたヘッド素子についてのみ、劣化情報を記憶する様にしても良い。また、各ヘッド素子について合わせて、測定された分圧電圧値、分圧電圧値から換算可能な抵抗値を記録するようにしても良い。
このようにして、当該ヘッド素子についての劣化判断処理を終了する。そして、処理がステップS167に移行する。
ステップS167では、ヘッド制御部23は、今回検査用電圧(3.3V)を印加した後(ステップS161の後)、所定数(例えば、50)のヘッド素子について処理(S162−S166)を終了したか否かを判断し(図8のステップS167)、未だ終了していない場合には(ステップS167のNo)、次のヘッド素子についてステップS162からの処理を行う。
一方、所定数のヘッド素子について処理を終了した場合には(ステップS167のYes)、ヘッド制御部23は、電圧印加回路25に信号を出し、検査用電圧(3.3V)の印加を終了する(遮断する)(図8のステップS168)。
このようにして、オートカッター27による切断処理中に実行される劣化判断処理が終了する。
このような劣化判断処理によって、注視すべき劣化状態にあるヘッド素子の情報、そのヘッド素子の劣化度合(抵抗値変化率)の情報が記憶され、ヘッド素子の交換等のメンテナンス処理に用いられ得る。
なお、オートカッター27による切断処理の間に、劣化判断処理を行うヘッド素子の数(図8のステップS167の「所定数」)は、切断処理の間に劣化判断処理が完了する数を予め定めておく。所定数が50個で、全ヘッド数が512個の場合、概ね10レシートの印刷出力が行われる間に全てのヘッド素子の劣化判断処理が完了する。
また、劣化判断処理の実行タイミングは、オートカッター27による印刷媒体の切断動作の時に限らず、レシートの印刷動作が実行され得ない状態であれば、他のタイミングで実行しても良い。例えば、印刷媒体が無くなって、操作者によって、印刷媒体の収納部を開放できるカバー29が開けられたタイミングや、プリンター2に何らかのエラーが発生したタイミング等、プリンター2の印刷動作が停止している際に行っても良い。前者の場合、ヘッド制御部23は、メイン制御部22から発せられる収納部の開放がされた信号を検知して、すなわち、印刷が実行され得ない状態を検知して、劣化判断処理を開始し、後者の場合には、ヘッド制御部23は、メイン制御部22から発せられるエラー発生信号を検知して、すなわち、印刷が実行され得ない状態を検知して、劣化判断処理を開始する。
また、上記の実施例において、ホスト装置(POS端末装置1、劣化管理サーバー3等)側へ劣化情報を提供する構成(態様)としてもよい。具体的には、ホスト装置は、プリンター2へコマンドを送信し、当該コマンドを受信したプリンター2は、測定した分圧電圧、及び/又は、予め設定した閾値による判断結果(上記閾値を用いた劣化判断処理の結果)をホスト装置へ送信する。
なお、ホスト装置(POS端末装置1、劣化管理サーバー3等)からのコマンドにより、ホスト装置側が主導でヘッド素子の劣化を管理する場合には、初期設定処理を指示(命令)するコマンドを用意し、そのコマンドをホスト装置から送信することで、プリンター2における上述した初期設定処理がなされてもよい。更に、この場合には、仮の変換テーブルをホスト装置に記憶し、プリンター2は測定した各ヘッド素子の分圧電圧をホスト装置に返信し、ホスト装置が返信された分圧電圧によって各ヘッド素子の変換テーブルを作成し、記憶してもよい。この場合には、劣化判断処理においても、プリンター2(ヘッド制御部23)はホスト装置から送信されるコマンドに応答して、測定した各ヘッド素子の分圧電圧をホスト装置に返信し、ホスト装置が取得した分圧電圧と記憶している変換テーブルを用いて上述した劣化判断(閾値との比較、劣化情報の記憶等)を行う。なお、ホスト装置がPOS端末装置1である場合には、これらの処理は劣化管理部13が行う。
また、ホスト装置からのコマンドにより、プリンター2における劣化判断処理の有効/無効(実施/不実施)や実行タイミングを設定できるようにしても良い。
また、上述した実施の形態例の変形例として、ホスト装置(POS端末装置1、劣化管理サーバー3等)がヘッド素子の劣化情報を取得する方法に、ASB(オートステータスバック)という機能を適用してもよい。通常、ホスト装置とプリンターはマスター/スレーブの関係にあり、原則的にはプリンター側から自発的にホスト装置に情報送信を行うことはないが、プリンター2で所定のステータス情報について設定を行うことにより、そのステータス情報に変化があった際にプリンター側からそのステータス情報を自発的にホスト装置に送信することができ、その機能がASBである。この機能を適用することにより、不揮発性メモリー24に記憶される上記劣化情報に変化があった際には、自発的にその劣化情報がホスト装置に送信されるようになる。すなわち、ヘッド制御部23が劣化情報を不揮発性メモリー24から読み出し、読み出された劣化情報がメイン制御部22から通信部21を介してホスト装置(例えば、POS端末装置1の劣化管理部13)に送信される。
また、上述した実施の形態例の変形例として、1つのヘッド素子毎に行っていた劣化判断処理を2以上のヘッド素子(複数のヘッド素子を含むグループ)毎に行ってもよい。すなわち、そのグループに含まれるヘッド素子に通電し、分圧電圧を測定して、そのグループ全体として劣化度合を判断する。この場合には、初期設定処理において、そのグループ毎に変換テーブルを作成して記憶しておくことが望ましい。この方法では、劣化度合(抵抗値変化率)が大きいグループについて、再度、ヘッド素子毎の劣化判断処理を実行する。当該変形例では、劣化判断処理(分圧電圧測定)の回数を減らし処理時間を短縮することができる。なお、この場合には、測定精度を上げるため、マルチプレクサ等を設けて検査用抵抗R1の抵抗値を変更してもよい。
また、全てのヘッド素子の初期抵抗値が仕様値(製品仕様で定められた抵抗値)であると仮定して、仮の変換テーブルにおいて「X」(図5参照)に仕様値に対応する値を代入したテーブルを、全てのヘッド素子についての変換テーブルとすることもできる。この場合、劣化判断精度は落ちるものの、初期設定処理の時間を短縮することができる。
以上説明したように、本実施の形態例及び変形例に係るプリンター2では、印刷処理と並行してヘッド素子の検査を実行可能な回路としなくても、印刷媒体の切断処理中など、印刷が実行され得ない時間を利用してヘッド素子の検査がなされるので、印刷処理に支障をきたすことなくヘッド素子の劣化診断を行うことができるようになる。当然の如く、回路規模を大きくする必要はない。
また、初期設定処理において取得された初期分圧電圧値に基づいてヘッド素子の劣化状態を判断するため、各ヘッド素子の劣化状況を適確に判断することができる。
更に、全ヘッド素子について連続して劣化判断処理を行うのではなく、切断処理中など印刷が実行され得ない状態の期間中に完了できる数のヘッド素子について劣化判断処理を行うので、確実に印刷処理に支障をきたすことはない。
また、劣化判断処理は、分圧電圧に対して予め設定された複数の閾値を用いて、行うことから、各ヘッド素子の劣化状態の判断を、きめ細かく管理することができる。
また、印刷媒体の切断処理中に劣化判断処理を実行するので、印刷処理に支障きたさない処理が保障される。更に、プリンター2が使用される限り印刷媒体の印刷及び切断が実行されるので、確実にヘッド素子の検査を実行することができる。
また、ヘッド素子の劣化判断を、カバー29の開放時やエラーの発生時に行うことによっても、印刷処理に支障をきたさない処理が保障される。
以上のように、レシートの印刷動作が実行され得ない状態の時に、ヘッド素子の劣化判断処理を実行することから、例えば、24時間営業している飲食店やコンビニエンスストア等で用いられるレシートプリンターなどにおいては、営業に支障をきたす事無くヘッド素子の劣化検査を行うことが出来るようになる。
更にまた、ホスト装置に劣化判断に係る情報を送信することにより、ホスト装置などの外部装置でプリンターの劣化情報を容易に取得することができるようになり、プリンターの劣化管理、特に、遠隔装置における集約的な管理が容易に行えるようになる。
更に、当該ホスト装置は、コマンドにより、遠隔装置からヘッド素子の劣化情報を操作することができ、劣化情報の管理が多様になる。
このように、本プリンター2では、各ヘッド素子の劣化状態を段階的に把握できるようになるので、適切な時期にヘッド素子の交換等を行え、ヘッド素子の不良による印刷の不具合を未然に防止することができる。
また、プリンター2の劣化に関する情報がASBの機能等によって、POS端末装置1、劣化管理サーバー3に送信されるので、ホスト装置側でプリンターの劣化情報を容易に取得することができるようになる。従って、プリンターの劣化管理、特に、遠隔装置における集約的な管理が容易に行えるようになる。
[第2の実施の形態例]
第1の実施の形態例では、初期設定処理において変換テーブルという形で分圧電圧と抵抗値変化率を記憶しておき、劣化判断時において測定した分圧電圧から直ぐに抵抗値変化率を取得する方法であったが、その方法であると、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)について変換テーブルを保持する必要があるため、第2の実施の形態例では、一つの変換テーブルCTを保持し、その変換テーブルCTを用いて、劣化判断時に抵抗値変化率を算出する方法を取る。
以下、その具体的な内容について、第1の実施の形態例との相違点を中心に説明する。
まず、装置構成(機能構成)と電圧印加回路25及びサーマルヘッド26の回路構成は、図1及び図2に基づいて説明した第1の実施の形態例と同様である。
但し、不揮発性メモリー24には、仮の変換テーブル及び各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の変換テーブルの代わりに、共通の一つの変換テーブルCTを記憶する。
この変換テーブルCTは、分圧電圧値(AD値)を抵抗値(Ω)に変換するためのテーブルであり、当該変換テーブルCTは、プリンター2の出荷前に生成されて、プリンター2の不揮発性メモリー24に記憶される。以下、変換テーブルCTの内容について説明する。
ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の検査時(劣化判断時)に形成される、検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)をつなぐ直列回路では、検査用抵抗R1の抵抗値(Ω)をRで表現し、ヘッド素子の抵抗要素の抵抗値(Ω)をRheadで表現すると、以下の関係式(1)が成り立つ。
Rhead=(R×AD)/(255−AD) (1)
なお、ADは、図2の「READ_HEAD」でA/DコンバーターADCを介して読み取られる分圧電圧値(AD値)であり、例えば、0−255(0−3.3Vに相当)の1バイトのデータで表現される。なお、分圧電圧値(AD値)は、4バイト以下のデータで表現されることが好ましい。
図10は、分圧電圧値(AD値)と抵抗値(Rhead)の関係を示すグラフである。図10に例示されるグラフは、検査用抵抗R1の抵抗値Rを255Ωとした場合に、上記関係式(1)に基づいて求められるものである。当該グラフは、測定(取得)された分圧電圧値(AD値)を抵抗値(Rhead)に変換するために用いることができ、その対応関係を表形式で表現したものが変換テーブルCTである。
図11は、変換テーブルCTの一例を示した図である。図11に示すように、変換テーブルCTには、分圧電圧値である「AD値」に、上記関係式(1)で対応付けられる「抵抗値(Ω)」が対応付けて収められている。従って、変換テーブルCTを用いれば、検査時(劣化判断時)に、測定(取得)されるAD値から、測定対象のヘッド素子の抵抗値(Rhead)をすぐに取得することができる。
このような変換テーブルCTが、出荷前の各プリンターに記憶される。なお、プリンター2の各個体には、基板上のパターンや素子の抵抗値に起因する誤差があるので、実際の測定を行って、その測定結果に合うように上記変換テーブルCTの値(抵抗値又はAD値)に補正を加えるようにしてもよい。この場合には、プリンター2の各個体に応じた変換テーブルCTが生成されて、プリンター2に記憶される。
以上説明した変換テーブルCTを用いて第2の実施の形態例では、以下のような処理を実行する。
まず、第1の実施の形態例で行われる、図3に基づいて説明した各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の変換テーブル作成処理に代わって、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の初期値の取得処理を行う。
ヘッド素子(RH−1〜RH−n)においては、劣化が進むことによりその発熱体(抵抗素子)の抵抗値が変化することが知られている。変化の仕方にはいくつかの現象が見られるが、1つの現象においては、抵抗値が徐々に増加していく。また、他の現象においては、抵抗値が徐々に減少していき、その後急激に増加する。いずれの場合においても、ある程度以上に抵抗値が増加すると印刷時に十分に発熱せず印刷不良を起こす虞がある。
従って、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化判断では、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の(発熱体の)抵抗値の変化を段階的に把握することが重要である。
そのため、第2の実施の形態例では、まず、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の初期状態の値(初期値)を把握する処理(初期値取得処理)を行った後、適切な頻度でその時の状態を示す値(状態値)を測定し、初期値と状態値によって劣化判断を行う。
図12は、初期値取得処理の手順を例示したフローチャートである。初期値取得処理は、プリンター2の初回起動時等に実行される。
ヘッド制御部23は、まず、電圧印加回路25に信号を出し、検査用電圧(3.3V)をサーマルヘッド26に印加する(図12のステップS21)。
次に、ヘッド制御部23は、初期値を取得する1つのヘッド素子(RH−1〜RH−n)を選択し、そのヘッド素子(RH−1〜RH−n)に通電する(図12のステップS22及びS23)。具体的には、上述の通り、DI信号をサーマルヘッド26に出して、そのヘッド素子に通電させる。
これにより、検査用抵抗R1と当該ヘッド素子の抵抗要素(発熱体)をつなぐ直列回路が形成されるので、電圧が安定するのを待った後(図12のステップS24)、ヘッド制御部23は、READ_HEAD信号で上記直列回路の検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)間の分圧電圧の測定値(AD値)を取得する(図12のステップS25)。すなわち、当該ヘッド素子の(抵抗要素(発熱体)の)初期抵抗値に対応する情報が取得される。
次に、ヘッド制御部23は、取得したAD値を当該ヘッド素子の初期値として、不揮発性メモリー24に記憶(保存)する(図12のステップS26)。
なお、取得したAD値を、不揮発性メモリー24に記憶される上記変換テーブルCTを用いて抵抗値に変換し、変換後の抵抗値を初期値として不揮発性メモリー24に記憶するようにしてもよい。なお、AD値を初期値とすることにより、記憶するデータ量を1バイトに抑えることができる。
ヘッド制御部23は、以上説明した初期値取得処理(S22−S26)を、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について実行する(図12のステップS27のNo)。
全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について初期値取得処理が実行されると(図12のステップS27のYes)、処理が終了し、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について初期値が不揮発性メモリー24に記憶される。
次に、第2の実施の形態例における劣化判断処理について説明する。劣化判断処理は、第1の実施の形態例の場合と同タイミングで行われ、すなわち、図7に基づいて説明した印刷処理は同様に行われて、図8に基づいて説明した劣化判断処理に代わって以下の処理が実行される。
ヘッド制御部23は、このタイミングで状態値取得処理を実行する。
図13は、状態値取得処理の手順を例示したフローチャートである。まず、ヘッド制御部23は、電圧印加回路25に信号を出し、検査用電圧(3.3V)をサーマルヘッド26に印加する(図13のステップS31)。
次に、ヘッド制御部23は、状態値を取得する1つのヘッド素子(RH−1〜RH−n)を選択し、そのヘッド素子(RH−1〜RH−n)に通電する(図13のステップS32及びS33)。具体的には、上述の通り、DI信号をサーマルヘッド26に出して、そのヘッド素子に通電させる。
これにより、検査用抵抗R1と当該ヘッド素子の抵抗要素(発熱体)をつなぐ直列回路が形成されるので、電圧が安定するのを待った後(図13のステップS34)、ヘッド制御部23は、READ_HEAD信号で上記直列回路の検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)間の分圧電圧の測定値(AD値)を取得する(図13のステップS35)。すなわち、当該ヘッド素子の(抵抗要素(発熱体)の)その時点の抵抗値に対応する情報が取得される。
次に、ヘッド制御部23は、取得したAD値を当該ヘッド素子の状態値として、不揮発性メモリー24に記憶(保存)する(図13のステップS36)。なお、状態値は、ヘッド制御部23内のRAMに記憶してもよい。
なお、取得したAD値を、不揮発性メモリー24に記憶される上記変換テーブルCTを用いて抵抗値に変換し、変換後の抵抗値を状態値として不揮発性メモリー24に記憶するようにしてもよい。なお、AD値を状態値とすることにより、記憶するデータ量を1バイトに抑えることができる。
ヘッド制御部23は、以上説明した状態値取得処理(S32−S36)を、第1の実施の形態例と同様の所定数のヘッド素子(RH−1〜RH−n)について実行する(図13のステップS37のNo)。
上記所定数のヘッド素子(RH−1〜RH−n)について状態値取得処理が実行されると(図13のステップS18のYes)、ヘッド制御部23は、検査用電圧(3.3V)の印加を遮断し(図13のステップS38)、処理が終了する。その結果、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について状態値が不揮発性メモリー24に記憶される。
以上説明した状態値取得処理が、第1の実施の形態例で説明した印刷が実行され得ないタイミングで繰り返し実行され、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について状態値が取得されると、ヘッド制御部23は、劣化情報取得処理(抵抗値変化率取得処理)を実行する。
図14は、劣化情報取得処理の手順を例示したフローチャートである。まず、ヘッド制御部23は、1つのヘッド素子(RH−1〜RH−n)を選択する(図14のステップS41)。その後、ヘッド制御部23は、不揮発性メモリー24にアクセスし、選択したヘッド素子(RH−1〜RH−n)の初期値を読み出す(図14のステップS42)。当該初期値は、上述した初期値取得処理で取得されて記憶されたものである。
ヘッド制御部23は、読み出した初期値を、不揮発性メモリー24に記憶された変換テーブルCTを用いて、抵抗値に変換する(図14のステップS43)。読み出された初期値はAD値であるので、変換テーブルCTにおいて、そのAD値に対応付けて記憶されている抵抗値(Ω)を読み出すことによって、抵抗値への変換を行う。
次に、ヘッド制御部23は、不揮発性メモリー24にアクセスし、選択したヘッド素子(RH−1〜RH−n)の状態値を読み出す(図14のステップS44)。当該状態値は、上述した状態値取得処理で取得されて記憶されたものである。
ヘッド制御部23は、読み出した状態値を、不揮発性メモリー24に記憶された変換テーブルCTを用いて、抵抗値に変換する(図14のステップS45)。読み出された状態値はAD値であるので、変換テーブルCTにおいて、そのAD値に対応付けて記憶されている抵抗値(Ω)を読み出すことによって、抵抗値への変換を行う。
次に、ヘッド制御部23は、抵抗値変化率の計算を行う(図14のステップS46)。具体的には、下記(2)式を用いて行う。
抵抗値変化率(%)=(状態値(Ω)−初期値(Ω))/初期値(Ω)×100 (2)
なお、初期値(Ω)は、ステップS43で抵抗値に変換された初期値であり、状態値(Ω)は、ステップS45で抵抗値に変換された状態値である。
計算された抵抗値変化率が、マイナスである場合には、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の抵抗値が減少していることを意味し、計算された抵抗値変化率が、プラスである場合には、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の抵抗値が増加していることを意味する。
上述の通り、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の劣化が進んでいる場合、その抵抗値が減少している場合及び増加している場合があり、いずれの場合にもその絶対値が所定値以上になった場合には、ドット抜けの虞があるとしてユーザーに報知すべきである。
従って、その所定値を閾値として設定し、上記計算された抵抗値変化率がその閾値を超えたか否かを、ヘッド制御部23は判断する。具体的には、閾値は、例えば、絶対値で「15%」と「30%」に設定される。
その後、ヘッド制御部23は、上記算出した抵抗値変化率と上記閾値を用いた判断結果を、劣化情報として不揮発性メモリー24に記憶(保存)する(図14のステップS47)。
図15は、劣化情報の一例を示した図である。図15に例示される劣化情報は、各ヘッド素子(RH−1〜RH−n)の識別情報(ヘッド素子No.)に、そのヘッド素子(RH−1〜RH−n)の上記算出した抵抗値変化率と、上記閾値を用いた判断結果としてのアラームフラグが対応付けられた情報である。これらの情報が不揮発性メモリー24に記憶(保存)される。
図15に示される例では、上述した閾値として、例えば、「15%」、「30%」、「−15%」、「−30%」の4つの閾値が設定されている場合である。「15%」と「−15%」の閾値は軽度の劣化進行の基準であり、これらを超えた(「−15%」については、これよりも下回る)ヘッド素子(RH−1〜RH−n)のアラームフラグには、ON(A)が立つ(記憶される)。また、「30%」と「−30%」の閾値は強度の劣化進行の基準であり、これらを超えた(「−30%」については、これよりも下回る)ヘッド素子(RH−1〜RH−n)のアラームフラグには、ON(B)が立つ(記憶される)。なお、閾値を超えていないヘッド素子(RH−1〜RH−n)のアラームフラグには、OFFが記憶される。
例えば、図15において、ヘッド素子No.「2」のヘッド素子(RH−1〜RH−n)は、抵抗値変化率が「5%」であり、従って、アラームフラグは「OFF」となる。また、ヘッド素子No.「61」のヘッド素子(RH−1〜RH−n)は、抵抗値変化率が「−18%」であり、従って、アラームフラグは「ON(A)」となる。また、ヘッド素子No.「150」のヘッド素子(RH−1〜RH−n)は、抵抗値変化率が「33%」であり、従って、アラームフラグは「ON(B)」となる。これらの劣化情報から、ヘッド素子No.「2」のヘッド素子(RH−1〜RH−n)は劣化があまり進んでいないと判断でき、ヘッド素子No.「61」のヘッド素子(RH−1〜RH−n)は劣化がある程度進んでいると判断でき、ヘッド素子No.「150」のヘッド素子(RH−1〜RH−n)は劣化がかなり進んでいると判断できる。
ヘッド制御部23は、以上説明した劣化情報取得処理(S41−S47)を、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について実行する(図14のステップS48のNo)。
全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について劣化情報取得処理が実行されると(図14のステップS48のYes)、処理が終了し、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について劣化情報が不揮発性メモリー24に記憶される。
なお、上述の実施の形態例では、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について状態値を取得した後に、劣化情報取得処理を行ったが、ヘッド素子(RH−1〜RH−n)毎に、状態値の取得と劣化情報の取得を連続して行う処理手順としてもよい。
図16は、状態値の取得と劣化情報の取得を連続して行う場合の手順を示したフローチャートである。なお、この処理は、図13に基づいて説明した処理と同様に、印刷がなされえないタイミングで実行される。
まず、ヘッド制御部23は、電圧印加回路25に信号を出し、検査用電圧(3.3V)をサーマルヘッド26に印加する(図16のステップS51)。
次に、ヘッド制御部23は、1つのヘッド素子(RH−1〜RH−n)を選択し、そのヘッド素子(RH−1〜RH−n)に通電する(図16のステップS52及びS53)。具体的には、上述の通り、DI信号をサーマルヘッド26に出して、そのヘッド素子に通電させる。
これにより、検査用抵抗R1と当該ヘッド素子の抵抗要素(発熱体)をつなぐ直列回路が形成されるので、電圧が安定するのを待った後(図16のステップS54)、ヘッド制御部23は、READ_HEAD信号で上記直列回路の検査用抵抗R1とヘッド素子の抵抗要素(発熱体)間の分圧電圧の測定値(AD値)を取得する(図16のステップS55)。すなわち、当該ヘッド素子の(抵抗要素(発熱体)の)その時点の抵抗値に対応する情報が取得される。
次に、ヘッド制御部23は、取得した状態値を、不揮発性メモリー24に記憶された変換テーブルCTを用いて、抵抗値に変換する(図16のステップS56)。読み出された状態値はAD値であるので、変換テーブルCTにおいて、そのAD値に対応付けて記憶されている抵抗値(Ω)を読み出すことによって、抵抗値への変換を行う。
次に、ヘッド制御部23は、不揮発性メモリー24にアクセスし、選択したヘッド素子(RH−1〜RH−n)の初期値を読み出す(図16のステップS57)。当該初期値は、上述した初期値取得処理で取得されて記憶されたものである。
ヘッド制御部23は、読み出した初期値を、不揮発性メモリー24に記憶された変換テーブルCTを用いて、抵抗値に変換する(図16のステップS58)。読み出された初期値はAD値であるので、変換テーブルCTにおいて、そのAD値に対応付けて記憶されている抵抗値(Ω)を読み出すことによって、抵抗値への変換を行う。
次に、ヘッド制御部23は、抵抗値変化率の計算を行う(図16のステップS59)。具体的には、上述した図14のステップS46と同様に行う。
その後、ヘッド制御部23は、劣化情報の保存処理を実行する(図16のステップS60)。具体的には、図14のステップS47と同様に行う。
ヘッド制御部23は、以上説明した劣化判断処理(S52−S60)を、図13の場合と同様に所定数のヘッド素子(RH−1〜RH−n)について実行する(図16のステップS61のNo)。
上記所定数のヘッド素子(RH−1〜RH−n)について劣化判断処理が実行されると(図16のステップS61のYes)、ヘッド制御部23は、検査用電圧(3.3V)の印加を遮断し(図16のステップS62)、処理が終了する。その結果、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について劣化情報が不揮発性メモリー24に記憶される。
以上説明した処理が、第1の実施の形態例で説明した印刷が実行され得ないタイミングで繰り返し実行され、全てのヘッド素子(RH−1〜RH−n)について劣化情報が取得され、記憶される。
第2の実施の形態例では、このようにして処理が実行される。その他の点については、第1の実施の形態例の場合と同様である。
以上説明したように、第2の実施の形態例に係るプリンター2では、ヘッド素子毎に、適切なタイミングで、抵抗値から劣化判断を行うことができ、プリンター2は変換テーブルCTを予め記憶しておけばよいので、プリンター2に記憶するデータ量を少なく抑えることができる。
また、劣化判断には、各ヘッド素子の初期値(分圧電圧値(AD値)、抵抗値(Ω))が用いられるので、適確な劣化判断を行うことができる。
劣化情報は、ヘッド素子の抵抗値変化率を含むので、適確な劣化判断を行うことができる。
また、抵抗値変化率を算出するまでに記憶しておくAD値は、4バイト以下のデータであり、記憶しておくデータ量を少なく抑えることができる。
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。