JP6678012B2 - 電極材料、電極材料の製造方法、電極、および蓄電デバイス - Google Patents

電極材料、電極材料の製造方法、電極、および蓄電デバイス Download PDF

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Description

本発明は、例えばリチウムイオン電池に用いられる電極材料、電極材料の製造方法、電極、および蓄電デバイスに関する。
従来より、電気化学素子負極用のリチウム吸蔵、放出活物質として、グラファイトやハードカーボン等の炭素材料が負極に使用されている。しかし、これらの炭素材料を用いた負極の電位は、金属リチウムの電位に近い電位でリチウムを吸蔵する。そのため、低温環境下において負極上に金属リチウムが析出し、デンドライト結晶が成長するおそれがある。デンドライト結晶が成長すると、電極間における内部短絡や、電解液の還元等を引き起こすことが懸念されている。
そこで、近年では、金属リチウムの電位に対して1.5Vでリチウムを吸蔵・放出するチタン酸リチウムが注目されている。このようなチタン酸リチウムは、リチウムの析出や電解液の分解などの副反応が生じにくい。また、チタン酸リチウムは、リチウムイオンの挿入・離脱に伴う体積変化が少なく、容量劣化が起きにくいという特徴がある。ただし、チタン酸リチウムを負極として用いる場合には、電位が高いことからキャパシタを高電圧化するには限界がある。また、チタン酸リチウムの容量は、200mAh/g以下であり、高容量化にも限界がある。
特開2010−20912号公報
従って、黒鉛等の炭素材料やチタン酸リチウムより容量が大きな材料であることが好ましい。このような特性を持つ材料が、電極材料として、特に負極に応用されることが望まれていた。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、高い充放電容量を有する電極材料、電極材料の製造方法、電極、および蓄電デバイスを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を重ねた結果、LiVOをはじめとする金属源と、炭素材料とを混合し、金属源にポリマー鎖を形成した後に焼成処理を施すことで、炭素材料上に微細な金属粒子が均一に担持されることを見出した。この金属粒子が担持された炭素材料を用いることにより、比較的高い充放電電位および充放電容量を有する電極材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る電極材料の製造方法は、バナジウム源とリチウム源を含む金属粒子源と、導電性炭素材料と、錯体配位子と、重合剤とが混合された混合溶液を作製する混合工程と、前記炭素材料の表面に前記金属粒子源を付着させ、バナジン酸リチウムの前駆体を生成する分散工程と、前記炭素材料上に付着したバナジン酸リチウムの前駆体にポリマー鎖を形成するポリマー鎖形成工程と、ポリマー鎖を形成したバナジン酸リチウムの前駆体が付着した前記炭素材料を加熱し、ポリマー鎖を除去する除去工程と、バナジン酸リチウムの前駆体が付着した前記炭素材料を焼成し、バナジン酸リチウムと前記炭素材料の複合材料を得る結晶化工程と、を有する。
また、本発明に係る電極材料は導電性炭素材料の表面にバナジン酸リチウムが担持され、バナジン酸リチウムの金属粒子の大きさが100nm以下であり、バナジン酸リチウムは、前記炭素材料の表面に分散して均一に担持されており、バナジン酸リチウムの面積あたりの粒子数は、50〜200個/900nm であることを特徴とする。
以上のような電極材料を用いて形成された電極、およびその電極を備えた蓄電デバイスも、本発明の一態様である。
本発明によれば、高い充放電容量を有する電極材料、電極材料の製造方法、電極、および蓄電デバイスを提供することができる。
本発明の電極材料を製造するための電気化学素子反応に用いる反応器の1例である。 製造工程における炭素材料および金属粒子の状態を説明する模式図であり、(a)は混合工程、(b)はポリマー鎖形成工程、(c)は結晶化工程を示す。 実施例の電極材料の製造工程を示すフローチャートである。 実施例の電極材料のHRTEM像(×30k)である。 実施例の電極材料のHRTEM像(×500k)である。 領域1において、粒子の大きさと粒子数を計測した結果を示すHRTEM像である。 領域2において、粒子の大きさと粒子数を計測した結果を示すHRTEM像である。 領域3において、粒子の大きさと粒子数を計測した結果を示すHRTEM像である。 領域1〜3において粒子数を計測した結果を示すグラフである。 実施例および比較例の電極材料を用いて作製したセルの、活物質あたりの充放電容量を示すグラフである。
[1.構成]
以下、本発明に係る電極材料および電極材料を用いた電極の実施形態について詳細に説明する。
(1)電極材料
電極材料は、金属粒子と導電性炭素材料を含む。電極材料は、炭素材料の表面に微細な金属粒子が均一に担持されている材料である。金属粒子は炭素材料と複合化されており、炭素材料の表面に金属粒子が結合している。結合とは、単に炭素材料と金属粒子が接触している状態ではなく、金属粒子が炭素材料上において結晶化することにより構造を共有化している状態を意味する。
金属粒子は、バナジン酸リチウム(LiVO)である。バナジン酸リチウムは、金属リチウムの電位に対する電位が、例えば黒鉛より高く、チタン酸リチウムより低い材料である。具体的には、電位がLi/Liに対し、約1Vである。また、バナジン酸リチウムは、容量が黒鉛やチタン酸リチウムより大きい材料である。バナジン酸リチウムの理論容量は、約600mAh/gである。
バナジン酸リチウムは微細なナノ粒子であり、炭素材料の表面に分散して、均一に担持されている。バナジン酸リチウムの金属粒子は、凝集体を形成することもあるが、凝集体であっても微細な粒子として存在している。具体的には、金属粒子の凝集体の大きさは100nm以下であり、特に好ましくは50nm以下である。また、金属粒子の約80%以上が、30nm以下の微細なナノ粒子である。このようにナノ粒子化された微細な金属粒子は、粒子内部においても反応が生じやすく、リチウムイオンの拡散経路が短縮される。したがって、活物質の利用率が向上し、発現容量が拡大する。また、バナジン酸リチウムの面積あたりの粒子数は、50〜200個/900nmであることが好ましい。すなわち、バナジン酸リチウムは、炭素材料の表面に高い分散度で分散している。
以上のような電極材料では、炭素材料と金属粒子が複合化され、炭素材料により電子パスが構築されるとともに、金属粒子の粒子成長が抑制される。したがって、電気伝導性が向上し、電極に用いた場合に出入力特性が向上される。金属粒子は、金属粒子源と炭素材料を混合し、金属粒子源にポリマー鎖を形成した後に焼成処理を施すことで炭素材料上に担持される。
(金属粒子源)
焼成処理によりバナジン酸リチウムとなる金属粒子源は、バナジウム源とリチウム源を含む。バナジウム源とリチウム源は、モル比でLi:V=3:1となるように混合する。バナジウム源は、金属バナジウムとバナジウム含有化合物を含む。バナジウム含有化合物としては、メタバナジン酸塩(NHVO、NaVO3、KVO等)、酸化バナジウム(V、V、V、V)、バナジウム(III)アセチルアセトナート、バナジウム(IV)オキシアセチルアセトナート、オキシ三塩化バナジウム、四塩化バナジウム、三塩化バナジウム、ポリバナジン酸塩等を用いることができる。リチウム源としては、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、酢酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム、塩化リチウム、乳酸リチウム等のリチウム含有化合物を用いることができる。
(炭素材料)
炭素材料は導電性を有し、特にカーボンナノチューブなどの繊維構造を有する繊維状炭素を好適に用いることができる。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)及び多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の何れでもよい。他にも、中空シェル構造のカーボンブラックであるケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、無定形炭素、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、活性炭、メソポーラス炭素のうちの一種又は複数種類を混合して使用することができる。炭素材料が繊維構造を有する場合(例えば、CNT、カーボンナノファイバ(CNF)や気相成長カーボンファイバ(VGCF))、繊維構造の分散及び均質化を目的として超高圧分散処理を施したものを使用しても良い。なかでも粒子径がナノサイズの炭素材料が好ましい。
上記の金属粒子源は、錯体重合によりポリマー鎖が形成される。金属粒子源と炭素材料には、錯体重合のための錯体配位子と重合剤が混合される。
(錯体配位子)
錯体配位子としては、複数のカルボキシル基を有する有機化合物を用いる。例えば、トリカルボン酸のクエン酸を用いることが好ましい。他には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などのジカルボン酸を用いても良い。
(重合剤)
重合剤としては、複数のヒドロキシル基を有するアルコールを用いる。例えば、エチレングリコールを用いることが好ましい。他には、プロピレングリコールなどの他の2価のアルコール、またはグリセリンなどの3価のアルコールを用いても良い。
(2)電極
上記の本実施形態の電極材料は、正極及び負極にそれぞれ金属化合物を用いたリチウムイオン二次電池や、正極に活性炭、負極にリチウムイオンを可逆的に吸着/脱着可能な材料を用いたリチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスに用いることができる。特に、リチウムイオン二次電池の負極のために好適に用いることができる。例えば、蓄電デバイスとして、正極と、上記電極材料を含む活物質層を有する負極と、負極と正極との間に配置された非水系電解液を保持したセパレータとを備えたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
電極材料を、バインダーと混合および混練した後シート状に成形し、これを集電体に接合することで電極が形成される。電極材料とバインダーの混合液をドクターブレード法等によって集電体上に塗工し、乾燥することで電極を形成しても良い。また、電極材料を所定形状に成形し、集電体上に圧着することで電極を形成することもできる。
集電体としては、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、鋼、カーボン等の導電材料を使用することができる。特に、アルミニウムおよび銅を用いることが好ましい。高い熱伝導性と電子伝導性とを有しているからである。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状、円筒状等の任意の形状を採用することができる。
バインダーとしては、例えばフッ素系ゴム,ジエン系ゴム,スチレン系ゴム等のゴム類、ポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー、カルボキシメチルセルロース,ニトロセルロース等のセルロース、その他、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂,アクリル樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらのバインダーは、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
[2.電極材料の製造方法]
上記のような本実施形態の電極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)バナジウム源とリチウム源を含む金属粒子源、導電性炭素材料、錯体配位子、および重合剤とが混合された混合溶媒を作製する混合工程
(2)炭素材料の表面に金属粒子源を付着させ、バナジン酸リチウムの前駆体を生成する分散工程
(3)炭素材料上に付着したバナジン酸リチウムの前駆体にポリマー鎖を形成するポリマー鎖形成工程
(4)ポリマー鎖を形成したバナジン酸リチウムの前駆体が付着した炭素材料を加熱し、ポリマー鎖を除去する除去工程
(5)バナジン酸リチウムの前駆体が付着した炭素材料を焼成し、バナジン酸リチウムと炭素材料の複合材料を得る結晶化工程
(1)混合工程
混合工程では、バナジウム源とリチウム源を含む金属粒子源、炭素材料、錯体配位子、および重合剤を溶媒に添加し、混合溶液を作製する。溶媒に添加する材料の組成比は、例えば金属粒子源10〜20mol%、錯体配位子10〜20mol%、重合剤40〜80mol%とすることができる。また、金属粒子源と炭素材料の重量比は、80:20〜60:40とすると良い。溶媒は水を用いるが、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いても良い。他にも、例えば重合剤であるエチレングリコール溶液中に他の材料を添加しても良い。
各材料が添加された水溶液を撹拌手段により混合することで、金属粒子源と錯体配位子により金属錯体が形成される。また、混合時において、一部の金属配位子のカルボキシル基と、一部の重合剤のヒドロキシル基との間でエステル化反応が起こり、ポリマー鎖が形成される。混合工程では、複数の水溶液を作製後、それらの溶液を混合することで上記の材料が添加された水溶液を得ても良い。例えば、金属粒子源と錯体配位子のみを水に添加して混合することで、金属錯体の形成を促すことができる。この水溶液を、例えばエチレングリコール水溶液と混合した後に、炭素材料を添加することもできる。撹拌手段は、マグネチックスターラー、電気モータ式撹拌機、エアモータ式撹拌機等を用いる。
(2)分散工程
分散工程では、炭素材料の表面に金属粒子源を付着させる。炭素材料の表面に金属粒子源を付着させる手法としては、メカノケミカル処理が挙げられる。メカノケミカル処理は、旋回する反応容器等を用いてずり応力や遠心力等の機械的エネルギーを与える処理である。メカノケミカル処理は、超遠心力処理(Ultra-Centrifugal force processing method:以下、UC処理という)等、ずり応力、遠心力、その他の機械的エネルギーを加えることができればよい。要するに、機械的エネルギーによって、炭素材料に金属粒子源を付着させ、炭素材料の表面上にバナジン酸リチウムの前駆体を生成できればよい。メカノケミカル処理は、金属粒子源及び炭素材料の微細化と高分散化処理を兼ねることもできる。
UC処理について図1を参照して説明する。図1に示す反応器は、開口部にせき板1−2を有する外筒1と、貫通孔2−1を有し旋回する内筒2からなる。この反応器の内筒2内部に反応物を投入し、内筒2を旋回することによってその遠心力で内筒2内部の反応物が内筒2の貫通孔2−1を通って外筒1の内壁1−3に移動する。この時反応物は内筒2の遠心力によって外筒1の内壁1−3に衝突し、薄膜状となって内壁1−3の上部へずり上がる。この状態では反応物には内壁1−3との間のずり応力と内筒2からの遠心力の双方が同時に加わり、薄膜状の反応物に大きな機械的エネルギーが加わることになる。この機械的なエネルギーが反応に必要な化学エネルギー、いわゆる活性化エネルギーに転化するものと思われる。これにより、短時間で反応が進行する。機械的エネルギーの満足する付与のためには、1500N(kgms−2)以上の遠心力を発生させることが望ましい。好ましくは60000N(kgms−2)以上である。
メカノケミカル処理は、少なくとも2回の処理に分けて行うことができる。例えば、第1回目の処理では、バナジウム源と炭素材料とにずり応力と遠心力を加えて、炭素材料にバナジウム源を付着させる。そして、第2回目の処理では、リチウム源と、炭素材料の表面に付着されたバナジウム源とにずり応力と遠心力を加えて、炭素材料の表面上に形成されたバナジウムの基礎を基点にバナジン酸リチウムの前駆体を生成することができる。
以上のようなUC処理では、繊維状の炭素材料のバンドルが解れ、炭素材料が溶液中に分散する。また、図2の(a)に示すように混合溶液中の金属錯体が微粒子化され、炭素材料の表面に均一に分散して吸着される。
なお、分散方法としては、UC処理以外にも、ミキサー、ジェットミキシング(噴流衝合)、および超音波処理などを用いることができる。ミキサーによる分散方法では、混合溶液に対して、ビーズミル、ロッドミル、ローラミル、攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ボールミル、ホモジナイザー、ホモミキサーなどにより、物理的な力を加え、混合溶液を撹拌する。炭素材料に対して外力を加えることで、凝集した炭素材料を細分化及び均一化し、バンドルを解すことができる。中でも粉砕力が得られる遊星ミル、振動ミル、ボールミルが好ましい。
ジェットミキシングによる分散方法では、筒状のチャンバの内壁の互いに対向する位置に一対のノズルを設ける混合溶液を、高圧ポンプにより加圧し、一対のノズルより噴射してチャンバ内で正面衝突させる。これにより、炭素材料のバンドルが粉砕され、分散及び均質化することができる。ジェットミキシングの条件としては、圧力は100MPa以上、濃度は5g/l未満が好ましい。
(3)ポリマー鎖形成工程
ポリマー鎖形成工程では、UC処理を施した混合溶液を加熱し、炭素材料上に付着したバナジン酸リチウムの前駆体にポリマー鎖を形成する。例えば、ろ過により不純物を除去した混合溶液に対し、真空中において80〜150℃で乾燥を行う。乾燥時間は12〜24時間とする。このポリマー鎖形成処理により、バナジン酸リチウムの前駆体に配位した錯体配位子のカルボン酸と、重合剤のヒドロキシル基のエステル化反応が進行する。また、重合剤のヒドロキシル基間において、重合(脱水縮合)が進行する。これらの反応により、図2(b)に示すように多くのポリマー鎖が形成される。ポリマー鎖は、バナジン酸リチウムの前駆体単体に形成される態様と、バナジン酸リチウムの前駆体間に形成される態様を含む。以上のようなポリマー鎖形成工程により、バナジン酸リチウムの前駆体間にポリマー鎖が形成され、バナジン酸リチウムの前駆体同士が結合し凝集体が形成されることが防止される。すなわち、微細なバナジン酸リチウムの前駆体が、炭素材料の表面に均一に分散される。
(4)除去工程
除去工程では、ポリマー鎖を形成したバナジン酸リチウムの前駆体が付着した炭素材料を加熱し、ポリマー鎖を除去する。例えば、炭素材料に対し、大気雰囲気下において、300〜320℃で加熱を行う。加熱時間は3~5時間とする。この加熱工程により、金属配位子と重合剤により形成されたポリマー鎖が熱分解し、除去される。したがって、炭素材料上には、微細な粒子であるバナジン酸リチウムの前駆体のみが残される。
(5)結晶化工程
結晶化工程では、バナジン酸リチウムの前駆体の前駆体が付着した炭素材料を焼成し、バナジン酸リチウムと炭素材料の複合材料を得る。焼成過程において、図2(c)に示すように、バナジン酸リチウムの前駆体が結晶化し、バナジン酸リチウムの金属粒子が炭素材料に担持される。加熱条件は、例えば、窒素雰囲気下において、500〜900℃で焼成を行う。焼成時間は0~5分とする。焼成過程では、室温から焼成温度まで急加熱することが好ましい。焼成時間0分とは、例えば3分かけて800℃まで昇温し、800℃に到達した時点で加熱を終了し自然冷却することを意味する。このような急加熱により、バナジン酸リチウムの結晶化が促進され粒子成長することが防止される。すなわち、粒径の小さなナノ金属粒子が維持される。
また、急加熱は、酸素濃度が1000ppm程度の低酸素濃度の雰囲気下で行われることが好ましい。この条件で急加熱を行うと、炭素材料の酸化が阻止される。以上のような焼成工程により、バナジン酸リチウムが結晶化され、ナノ粒子であるバナジン酸リチウムが炭素材料に担持された複合材料が得られる。
[3.作用効果]
本実施形態の電極材料の製造方法が奏する作用効果は以下の通りである。
(1)バナジウム源とリチウム源を含む金属粒子源と、導電性炭素材料と、錯体配位子と、重合剤とが混合された混合溶液を作製する混合工程と、炭素材料の表面に金属粒子源を付着させ、バナジン酸リチウムの前駆体を生成する分散工程と、炭素材料上に付着したバナジン酸リチウムの前駆体にポリマー鎖を形成するポリマー鎖形成工程と、ポリマー鎖を形成したバナジン酸リチウムの前駆体が付着した炭素材料を加熱し、ポリマー鎖を除去する除去工程と、バナジン酸リチウムの前駆体が付着した炭素材料を焼成し、バナジン酸リチウムと炭素材料の複合材料を得る結晶化工程と、を有する。
バナジン酸リチウムの前駆体にポリマー鎖を形成することで、金属粒子の前駆体同士が結合し凝集体が形成されることが防止される。そのため、ポリマー鎖を除去すると、微細なバナジン酸リチウムの前駆体が炭素材料上に残存する。このバナジン酸リチウムの前駆体が付着した炭素材料を焼成して複合材料を形成することにより、導電性炭素材料の表面にバナジン酸リチウムが担持させることができる。また、バナジン酸リチウムの金属粒子の大きさが100nm以下である電極材料を得ることができる。
(2)分散工程は、混合溶液を、旋回する反応容器内でずり応力と遠心力を加え、炭素材料の表面に金属粒子源を付着させる工程を含む。
分散工程にUC処理を用いることにより、炭素材料のバンドルが解れ、炭素材料が溶液中に分散する。また、混合溶液中の金属錯体が微粒子化され、炭素材料の表面に均一に分散して吸着される。よって、バナジン酸リチウムを、炭素材料の表面に分散して均一に担持させることができる。
また、本実施形態の電極材料が奏する作用効果は以下の通りである。
(3)本実施形態の電極材料は、導電性炭素材料の表面にバナジン酸リチウムが担持され、バナジン酸リチウムの金属粒子の大きさが100nm以下である。
炭素材料に、100nm以下のナノ粒子であるバナジン酸リチウムが担持されている。この微細なバナジン酸リチウムは、粒子内部まで反応しやすい状態であり、リチウムイオンの拡散経路が短縮される。したがって、活物質の利用率が向上し、発現容量が拡大する。すなわち、高い充放電容量を有する電極材料を提供することが可能となる。
バナジン酸リチウムの電位は、Li/Liに対し、約1.0Vである。よって、リチウムの析出や電解液の分解などの副反応が生じにくい。また、バナジン酸リチウムの理論容量は、約600mAh/gである。バナジン酸リチウムは電気伝導性10−10S cm−1以下と低いが、バナジン酸リチウムのナノ粒子を炭素材料に担持させることで、電気伝導性が向上する。したがって、高い充放電容量と出入力特性を達成することができる。
(4)バナジン酸リチウムは、前記炭素材料の表面に分散して均一に担持されており、バナジン酸リチウムの面積あたりの粒子数は、50〜200個/900nmである。
バナジン酸リチウムが炭素材料の表面に分散して均一に担持されることにより、電気伝導性が向上する。そのため、電極材料を電極に用いた場合に、幅広い電流密度において充放電容量が向上し、高出入力特性が得られる。
(5)炭素材料は、繊維状炭素である。
繊維状炭素は導電性に優れている。そのため、炭素材料として繊維状炭素を用いることで、電気伝導性を向上させることが可能となる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、以下の製造方法により、バナジン酸リチウムとカーボンナノチューブ(CNT)の複合材料(LiVO/CNT)を生成した。
バナジン酸リチウムの金属粒子源は、バナジウム源としてメタバナジン酸アンモニウム(NHVO)、リチウム源として水酸化リチウム(LiOH)溶液を用い、モル比でLi:V=3:1となるように混合した。CNTは、多層カーボンナノチューブを用いた。CNTの平均繊維径は、11nmであった。使用したバナジン酸リチウムの金属粒子源とCNTの重量比率は、60:40であった。また、金属配位子としてクエン酸、重合剤としてエチレングリコールを用いた。バナジウム源に対し、クエン酸は1当量、エチレングリコールは4当量添加した。
具体的には、図3に示すように、第1の溶液として、メタバナジン酸アンモニウムとクエン酸を蒸留水(HO)に添加し、マグネチックスターラーを用いて撹拌した。第1の溶液では、メタバナジン酸アンモニウムの金属錯体が形成される。また、第2の溶液として、エチレングリコールを蒸留水に添加し、マグネチックスターラーを用いて撹拌した。この第1の溶液と第2の溶液を混合し、さらにマグネチックスターラーを用いて撹拌した。第1の溶液と第2の溶液の混合溶液に、水酸化リチウム溶液、カーボンナノチューブ、および蒸留水を添加し、第3の溶液とした。
この第3の溶液について、80℃の環境下においてUC処理を行った。UC処理では、図1に示すような反応器を用い、回転速度を50m/sとし、第3の溶液に5分間にわたって66000N(kgms−2)の遠心力を与えた。このUC処理では、CNTのバンドルが解れるとともに、金属錯体を有するバナジン酸リチウムの前駆体が微粒子化し、均一に分散した状態でCNTの表面に付着することが促進されていると考えられる。
次に、第3の溶液から不純物をろ過し、130℃において、終夜、真空乾燥を行った。この真空乾燥では、CNTの表面に付着したバナジン酸リチウムの前駆体を核に、クエン酸のカルボキシル基とエチレングリコールのヒドロキシル基との間でエステル化反応が進行し、ポリマー鎖が形成される。ポリマー鎖の形成により、バナジン酸リチウムの前駆体間にポリマー鎖が形成され、バナジン酸リチウムの前駆体同士が結合し凝集体が形成されることが防止されると考えられる。そのため、微細なバナジン酸リチウムの前駆体が、CNTの表面に均一に分散される。
真空乾燥後のCNTについて、300℃で3時間、大気雰囲気下で加熱を行った。この300℃での熱処理により、クエン酸およびエチレングリコールのエステル化により形成されたポリマー鎖が熱分解する。したがって、CNTの表面には、微細なバナジン酸リチウムの前駆体のみが残存する。
その後、窒素雰囲気下において、800℃で0分間焼成を行った。この焼成は、3分かけて800℃まで昇温し、800℃に到達した時点で加熱を終了し自然冷却した。この焼成により、バナジン酸リチウムの前駆体が結晶化し、CNTの表面にナノ粒子化したバナジン酸リチウムが結合している状態となる。以上のようにして、ナノ粒子化したバナジン酸リチウムがCNTに担持された複合材料(LiVO/CNT)が得られた。
(実施例2)
上記第3の溶液についてUC処理を行う代わりに、ホモジナイザーで撹拌した。それ以外は、実施例1と同様に作製した。
(比較例1)
第1の溶液として、メタバナジン酸アンモニウムを蒸留水(HO)に添加し、マグネチックスターラーを用いて撹拌した。第1の溶液に、水酸化リチウム溶液、カーボンナノチューブ、および蒸留水を添加し、第2の溶液とした。この第2の溶液について、上記のUC処理以降の処理を行った。それ以外は、実施例1と同様に作製した。
(1)電極材料の結晶構造解析
上記実施例1について、HRTEM像を撮影し結晶構造を解析した。図4および5は、実施例1において得られたCNTの表面にバナジン酸リチウムが結合した複合体を示すHRTEM像である。図4は全体像を、図5は部分拡大像を示す。図4から明らかな通り、CNTのバンドルが解れ、紐状のCNTの一本一本にバナジン酸リチウムのナノ粒子が複数結合している。また、図5に示すように、バナジン酸リチウムのナノ粒子は結晶化している。
図4に示す領域1〜3について、それぞれバナジン酸リチウムについて、凝集体を含む粒子の大きさと面積あたりの粒子数を目視にて計測した結果を図6〜8に示す。図6〜8から明らかな通り、各領域において確認されたバナジン酸リチウムの粒子の大きさは、最も大きなものでも50nm程度であった。また、図9に示すように、各領域における粒子数を計測したところ、領域1では計99個、領域2では計93個、領域3では計182個の粒子が確認された。すなわち、バナジン酸リチウムの面積あたりの粒子数は、50〜200個/900nmであった。領域1〜3における粒子の個数を合計したところ374個/2700nmであった。
さらに、各領域において30nm以下の微細なナノ粒子が存在する割合を算出した。その結果、領域1は約90%、領域2は約79%、領域3は約89%が、30nm以下の金属粒子を含んでいた。領域全体では、約87%が30nm以下の金属粒子であった。すなわち、実施例1の複合体は、金属粒子の約80%以上が30nm以下の微細なナノ粒子であることが確認された。以上より、実施例1のLiVO/CNTでは、CNTの表面に微細なナノ粒子のバナジン酸リチウムが均一かつ高い分散度で担持された状態であることが分かった。
(2)電極材料の放電容量特性
実施例1、実施例2、および比較例1の電極材料を、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンPVDFとNMP共に攪拌してスラリー状にし、銅箔上に塗布し、作用電極W.E.とした。投入比率は、重量比にしてLiVO/CNT:PVDF=94:6であった。充放電特性は2032型コインセルにて評価した。リチウム金属を対極C.Eとして下蓋に貼り付けた。対極C.Eの上にセパレータ、ガスケット、W.E、スペーサー、スプリング、上蓋の順に載せ、かしめてセルを作製した。電解液は、1.0M六フッ化リン酸リチウム(LiPF)/炭酸エチレン(EC)と炭酸ジメチル(DEC)とし、これらを浸透させてセルとした。なお、体積比率でEC:DEC=1:1であった。
実施例1、実施例2、および比較例1の電極材料を用いて作製したセルを用いて、任意の電流密度において充放電を行った。図10は、様々な電流密度における、各セルの活物質あたりの充電容量を示す。充放電容量の測定は、放電側(Lithiation)の電流値は0.1Ag-1で固定し、充電側(De-lithitation)の電流値は 0.01〜20Ag-1で3サイクルずつ変化させて行った。電位範囲は、0.5〜2.5V vs.Li/Liであった。
図10からも明らかな通り、実施例1はいずれの電流密度においても、比較例1と比較して活物質あたりの充電容量が大きい。すなわち、実施例1では、充電容量が安定的に発現していることが分かる。また、実施例2は、特に15Ag−1以下の低レート側において、比較例1と比較して活物質あたりの充電容量が大きい。実施例1および2の電極材料では、電気伝導性の向上が、出入力特性の向上に寄与していると考えられる。また、バナジン酸リチウムがナノ粒子化されていることにより、リチウムイオンの拡散経路が短縮され、粒子内部まで反応が起こりやすい状態となっている。したがって、活物質利用率が向上し、発現容量が拡大していると考えられる。
1…外筒
1−2…せき板
1−3…内壁
2…内筒
2−1…貫通孔

Claims (7)

  1. バナジウム源とリチウム源を含む金属粒子源と、導電性炭素材料と、錯体配位子と、重合剤とが混合された混合溶液を作製する混合工程と、
    前記炭素材料の表面に前記金属粒子源を付着させ、バナジン酸リチウムの前駆体を生成する分散工程と、
    前記炭素材料上に付着したバナジン酸リチウムの前駆体にポリマー鎖を形成するポリマー鎖形成工程と、
    ポリマー鎖を形成したバナジン酸リチウムの前駆体が付着した前記炭素材料を加熱し、ポリマー鎖を除去する除去工程と、
    バナジン酸リチウムの前駆体が付着した前記炭素材料を焼成し、バナジン酸リチウムと前記炭素材料の複合材料を得る結晶化工程と、
    を有することを特徴とする電極材料の製造方法。
  2. 前記分散工程は、前記混合溶液を、旋回する反応容器内でずり応力と遠心力を加え、前記炭素材料の表面に前記金属粒子源を付着させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の電極材料の製造方法。
  3. 前記炭素材料が、繊維状炭素であることを特徴とする請求項1又は2記載の電極材料の製造方法。
  4. 導電性炭素材料の表面にバナジン酸リチウムが担持され、
    バナジン酸リチウムの金属粒子の大きさが100nm以下であり、
    バナジン酸リチウムは、前記炭素材料の表面に分散して均一に担持されており、
    バナジン酸リチウムの面積あたりの粒子数は、50〜200個/900nm であることを特徴とする電極材料。
  5. 前記炭素材料は、繊維状炭素であることを特徴とする請求項4記載の電極材料。
  6. 請求項4又は5記載の電極材料を用いて形成されたことを特徴とする電極。
  7. 請求項に記載の電極を備えた蓄電デバイス。
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