以下、図面を参照しながら、実施形態にかかる制御装置及び制御方法、露光装置及び露光方法、デバイス製造方法、データ生成方法、並びに、プログラムについて説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、露光装置を構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。
(1)露光装置1
図1から図3を参照しながら、本実施形態の露光装置1について説明する。
(1−1)露光装置1の構造
初めに、図1を参照しながら、本実施形態の露光装置1の構造について説明する。図1は、本実施形態の露光装置1の構造の一例を示す側面図である。
図1に示すように、露光装置1は、光源11と、照明光学系12と、ミラー13と、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)14と、投影光学系15と、ウェハステージ16と、コントローラ17とを備えている。
光源11は、コントローラ17によって制御され、露光光EL1を射出する。光源11は、露光光EL1として、所定の周波数で明滅を繰り返すパルス光を射出する。つまり、光源11は、所定の発光時間(以下、当該発光時間を“パルス幅”と称する)で発光するパルス光を所定の周波数で射出する。例えば、光源11は、パルス幅が50nsとなるパルス光を4kHzから6kHzの周波数で射出してもよい。光源11からパルス発光される露光光EL1は、波長が193nmとなるArFエキシマレーザ光であってもよい。
照明光学系12は、例えば米国特許第8,792,081号公報などに開示されるように、フライアイレンズやロッド型インテグレータ等のオプティカルインテグレータを有する照度均一化光学系、及び照野絞り(いずれも不図示)を有していてもよい。照明光学系12は、光源11からの露光光の光量を均一化して露光光EL2として射出する。この露光光EL2によって空間光変調器14の光変調面14aが照明される。なお、空間光変調器の光変調面14a上には、照明光学系12の照野絞り(マスキングシステム)で規定された矩形状の照明領域が形成される。
尚、照明光学系12は、光変調面14a上での露光光EL2の強度分布を変更するビーム強度分布変更部等を含んでいてもよい。
ミラー13は、照明光学系12から出力される露光光EL2を偏向して、空間光変調器14の光変調面14aに導く。
空間光変調器14は、後述するように、2次元的に配列された複数のミラー要素141を備える。ここで、複数のミラー要素141が配列されている面を光変調面14aと称する。この光変調面14aには、照明光学系12からミラー13を介して伝搬してくる露光光EL2が照射される。光変調面14aは、XY平面に平行な平面であって、露光光EL2の進行方向に交わる面である。光変調面14aは、矩形の形状を有している。露光光EL2は、光変調面14aをほぼ均一な照度分布で照明する。
空間光変調器14は、当該空間光変調器14の光変調面14aに照射された露光光EL2を、投影光学系15に向けて反射する。空間光変調器14は、露光光EL2を反射する際に、当該露光光EL2を、ウェハ161に転写するべきデバイスパターンに応じて空間変調する。ここで、「光を空間変調する」とは、当該光の進行方向を横切る断面における当該光の振幅(強度)、光の位相、光の偏光状態、光の波長及び光の進行方向(言い換えれば、偏向状態)のうちの少なくとも1つである光特性の分布を変化させることを意味していてもよい。本実施形態では、空間光変調器14は、反射型の空間光変調器である。
次に、図2(a)から図2(c)を参照しながら、空間光変調器14について更に説明を加える。図2(a)は、空間光変調器14の光変調面14aの構造を示す平面図である。図2(b)は、空間光変調器14の光変調面14aの一部の構造を示す斜視図である。図2(c)は、空間光変調器14が備えるミラー要素141がとり得る2つの状態を示す側面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、空間光変調器14は、複数のミラー要素141を備えている。尚、図2(b)は、図面の見易さを考慮して、図2(a)に示す複数のミラー要素141の一部を抜粋した図面である。複数のミラー要素141は、光変調面14aに平行な面であるXY平面上において、二次元のアレイ状に(言い換えれば、マトリクス状に)配列されている。例えば、複数のミラー要素141のY軸方向に沿った配列数は、数百から数千である。例えば、複数のミラー要素141のX軸方向に沿った配列数は、複数のミラー要素141のY軸方向に沿った配列数の数倍から数十倍である。複数のミラー要素141のY軸方向に沿った配列数の一例は、数百から数千である。複数のミラー要素141は、X軸方向に沿って所定の配置間隔pxの間隔を隔て且つY軸方向に沿って所定の配置間隔pyの間隔を隔てるように、配列されている。配置間隔pxの一例は、例えば、10マイクロメートルから1マイクロメートルである。配置間隔pyの一例は、例えば、10マイクロメートルから1マイクロメートルである。
各ミラー要素141は、正方形の形状を有している。各ミラー要素141のX軸方向及びY軸方向のサイズは、各ミラー要素141の位置及び/又は姿勢が変更されるため、それぞれ、上述した配置間隔px及びpyよりも小さくなる。つまり、X軸方向に沿って隣接する2つのミラー要素141の間及びY軸方向に沿って隣接する2つのミラー要素141の間には、ミラー要素141を構成しない隙間142が存在する。逆に言えば、各ミラー要素141の位置及び/又は姿勢の変更を考慮すると、各ミラー要素141のX軸方向及びY軸方向のサイズがそれぞれ上述した配置間隔px及びpyと同一となる(つまり、隙間142が存在しない)ように各ミラー要素141を製造することは、技術的に困難であると推定される。このため、以下では、各ミラー要素141のX軸方向及びY軸方向のサイズがそれぞれ上述した配置間隔px及びpyよりも小さくなる空間光変調器14を用いて説明を進める。但し、各ミラー要素141の形状及びサイズは任意であってもよい(例えば各ミラー要素141のX軸方向及びY軸方向のサイズが上述した配置間隔px及びpyと実質的に同一であってもよい)。
各ミラー要素141のうち露光光EL2が照射される面は、露光光EL2を反射する反射面141aとなっている。各ミラー要素141のXY平面に平行な2つの表面のうち−Z方向側に位置する表面は、反射面141aとなっている。反射面141aには、例えば反射膜が形成されている。反射面141aの反射膜としては、例えば金属膜や誘電体多層膜を用いてもよい。複数のミラー要素の141の反射面141aの集合が、実質的には、露光光EL2が照射される光変調面14aとなる。
図2(c)に示すように、空間光変調器14の各ミラー要素141は、第1接続部材143によってヒンジ部144と接続されている。ヒンジ部144は、弾性変形を利用してZ軸方向に撓むことが可能な可撓性を有している。このヒンジ部144は、支持基板142上に設けられた一対のポスト部145によって支持されている。また、ヒンジ部144には、後述する電極148によって静電力(引力又は斥力)の作用を受けるアンカー部146とヒンジ部144とを接続する第2接続部147が設けられている。このように、アンカー部146とミラー要素141とは、第1接続部材143及び第2接続部材17並びにヒンジ部144を介して機械的に接続されている。そして、支持基板149の表面には電極148が形成されている。なお、ポスト部145は一対には限定されず、2以上の数であってもよい。
電極148に所定の電圧が印加されると、アンカー部146の裏面と電極148との間に静電力が作用する。上述の通り、アンカー部146の裏面と電極148との間に静電力を作用させると、アンカー部146が支持基板149側に移動し、この移動に伴ってミラー要素141も支持基板149側に移動する。
各ミラー要素141の状態は、アンカー部146と電極148との間に作用する静電力及びヒンジ部144の弾性力に起因して、反射面141aに直交する方向(つまり、Z軸方向)に沿った位置が異なる2つの状態の間で切り替わる。例えば、図2(d)の左側に示すように、アンカー部146と電極148との間に静電力が作用していない場合(つまり、ヒンジ部144が撓んでいない場合)には、各ミラー要素141は、各ミラー要素141の反射面141aが基準平面A1に一致する第1状態となる。例えば、図2(d)の右側に示すように、アンカー部146と電極148との間に静電力が作用している場合(つまり、ヒンジ部144が撓んでいる場合)には、各ミラー要素141は、各ミラー要素141の反射面141aが基準平面A1から+Z方向側に向かって距離d1だけシフトした変位平面A2に一致する第2状態となる。
第2状態にあるミラー要素141の反射面141aは、第1状態にあるミラー要素141の反射面141aから+Z方向側に向かって距離d1だけシフトした位置にある。このため、第2状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相と、第1状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相とは異なる。この位相差は、距離d1の倍の長さに相当する。本実施形態では、距離d1は、露光光EL1の波長λの1/4と一致する。つまり、d1は、d1=λ/4という数式にて表現される。この場合、第2状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相は、第1状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相と比較して、180度(πラジアン)だけ異なる。尚、以下では、説明の便宜上、第1状態を「0状態」と称し、第2状態を「π状態」と称する。
空間光変調器14は、コントローラ17の制御下で、ウェハ161に転写するべきデバイスパターンに応じて、複数のミラー要素141の状態を制御する。具体的には、後に詳述するパターン設計装置2(図4(a)等参照)は、ウェハ161に転写するべきデバイスパターンに応じて、複数のミラー要素141の状態の分布(言い換えれば、配列)を決定する。例えば、パターン設計装置2は、複数のミラー要素141のそれぞれが0状態となるべきか又はπ状態となるべきかを決定することで、複数のミラー要素141の状態の分布を決定する。これにより、複数のミラー要素141で反射される露光光EL3の、当該露光光EL3の進行方向に直交する(或いは、交わる)面における位相分布が決定される。コントローラ17は、パターン設計装置2から、複数のミラー要素141の状態の分布を規定する変調パターン情報を取得する。コントローラ17は、変調パターン情報に基づいて、複数のミラー要素141の状態を制御する。
尚、このような空間光変調器14の一例は、例えば、援用によって本願明細書に取り込まれる米国特許出願公開第2013/0222781号明細書に記載されている。
再び図1において、投影光学系15は、空間光変調器14によって空間変調された露光光EL3でウェハ161に明暗パターンを投影する。投影光学系15は、露光光EL3でウェハ161の表面(具体的には、ウェハ161に塗布されているレジスト膜の表面)に、空間光変調器による空間変調に応じた明暗パターンを投影する。
投影光学系15は、露光光EL3を、ウェハ161の表面に設定される面状の露光領域ELAに投影する。つまり、投影光学系15は、ウェハ161の表面に設定される面状の露光領域ELAが露光光EL3によって露光されるように、露光領域ELAに露光光EL3を投影する。投影光学系15の光軸AXは、面状の露光領域ELAに直交する。面状の露光領域ELAは投影光学系15の光軸AXから外れた位置に形成される。ウェハ161の表面と投影光学系15の光軸AXとが一致する部分から外れた所定領域が、面状の露光領域ELAとなる。
投影光学系15は、デバイスパターンに基づく位相分布を有する露光光EL3を、位相分布に応じた強度分布を持つ空間像としてウェハ161の表面に投影する。
投影光学系15は、縮小系である。本実施形態では、投影光学系15の投影倍率は、一例として1/200である。本実施形態における投影光学系15の解像度は、空間光変調器14の各ミラー要素141の大きさ(各ミラー要素の一辺の寸法)に投影倍率を乗じた値よりも大きくなるように設定されている。従って、単一のミラー要素141によって反射された露光光EL3は、露光領域ELA上では解像されることはない。なお、投影光学系の投影倍率は、1/200の縮小倍率には限定されず、例えば1/400の縮小倍率であってもよく、等倍や拡大倍率であってもよい。
ウェハステージ16は、ウェハ161を保持可能であり、保持したウェハ161をリリース可能である。ウェハステージ16は、コントローラ17の制御下で、ウェハ161を保持した状態で、露光領域ELAを含む平面(例えば、XY平面)に沿って移動可能である。ウェハステージ16は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向のうちの少なくとも一つに沿って移動可能である。例えば、ウェハステージ16は、平面モータを含むステージ駆動系162の動作により移動してもよい。尚、平面モータを含むステージ駆動系162の一例は、例えば、援用によって本願明細書に取り込まれる米国特許第6,452,292号に開示されている。但し、ステージ駆動系162は、平面モータに加えて又は代えて、他のモータ(例えば、リニアモータ)を含んでいてもよい。
ウェハステージ16のXY平面内での位置(但し、θX方向、θY方向及びθZ方向のうちの少なくとも一つに沿った回転角度を含んでいてもよい)は、レーザ干渉計163によって、例えば0.25nm程度の分解能で常時計測されている。レーザ干渉計163の計測結果は、コントローラ17に出力される。但し、露光装置1は、レーザ干渉計163に加えて又は代えて、ウェハステージ16のXY平面内での位置を計測可能なその他の計測装置(例えば、エンコーダ)を備えていてもよい。
コントローラ17は、記録システム1の動作を制御する。コントローラ17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、メモリを含んでいてもよい。例えば、コントローラ17は、光源11による露光光EL1の射出動作を制御する。具体的には、コントローラ17は、所定のパルス幅を有すると共に所定の周波数でパルス発光するパルス光を露光光EL1として適切なタイミングで射出するように光源11を制御する。更に、コントローラ17は、空間光変調器14による露光光EL2の空間変調動作を制御する。具体的には、コントローラ17は、パターン設計装置2から取得した変調パターン情報に基づいて、複数のミラー要素141の状態を制御する。更に、コントローラ17は、ウェハステージ16の移動を制御する。具体的には、コントローラ17は、露光領域ELAがウェハ161の表面上を所望の移動経路を通って相対的に移動していくように、ステージ駆動系161を制御する。
尚、照明光学系12は、露光光EL2が光変調面14aの一部に照射されるように露光光EL1を調整してもよい。照明光学系12は、光変調面14a上での露光光EL2が照射される照射領域が光変調面14aよりも小さくなるように、露光光EL1を調整してもよい。照明光学系12は、光変調面14a上での露光光EL1が照射される照射領域の形状が光変調面14aの形状と一致しないように、露光光EL1を調整してもよい。また、照明光学系12は、露光光EL2のビーム断面内での強度分布を変更して、光変調面14aに達する露光光EL2の照度分布をほぼ均一にしてもよい。この場合、照明光学系12は、照明光学系12が備えるオプティカルインテグレータの射出側の光路に配置されるビーム強度分布変更部を備えていてもよい。
空間光変調器14は、露光光EL3の位相分布を制御することに加えて又は代えて、露光光EL3の強度分布(つまり、露光光EL3の進行方向に直交する(或いは、交わる)方向に沿った面上における強度分布)を制御してもよい。空間光変調器14は、複数のミラー要素141に代えて、露光光EL2を空間変調することが可能な任意の装置(例えば、液晶パネル等)を備えていてもよい。
上述の例における空間光変調器14は、それぞれの上下方向(つまり、露光光EL2の進行方向)に沿った位置が可変である複数のミラー要素141を備える位相型(ピストン型)の空間光変調器である。しかしながら、空間光変調器14は、それぞれが傾斜可能な(例えば、X軸又はY軸に対して傾斜可能な)複数のミラー要素を備える傾斜型の空間光変調器であってもよい。また、空間光変調器14は、傾斜型の空間光変調器が備える複数のミラー要素の反射面に段差を設けた位相段差傾斜ミラー型の空間光変調器であってもよい。位相段差傾斜ミラー型の空間光変調器は、光変調面14aに平行な反射面141aが反射する光と光変調面14aに対して傾斜している反射面141aが反射する光との間の位相差をλ/2(180度(πラジアン))に設定する空間光変調器である。また、援用によって本願明細書に取り込まれる国際公開第2014/104001号パンプレットに開示されている、それぞれの上下方向の位置が可変である複数のミラー要素と、当該複数のミラー要素の間に位置する固定反射面とを備え、ミラーの上下方向の移動によって光強度を空間変調する空間光変調器が用いられてもよい。
(1−2)露光装置1の動作
続いて、図3(a)から図3(c)を参照しながら、本実施形態の露光装置1の動作(特に、露光動作)について説明する。図3(a)は、ウェハ161の表面上における露光領域ELAの移動経路の一例を示す平面図である。図3(b)及び図3(c)は、それぞれ、複数のミラー要素141の状態分布の一例を示す平面図である。
まず、露光装置1は、ウェハ161をローディングする。言い換えれば、ウェハステージ16上にウェハ161(つまり、レジストが塗布されたウェハ161)が搭載される。その後、露光装置1は、ウェハ161を露光する。
図3(a)に示すように、露光光EL3は、ウェハ161の表面に設定される面状の露光領域ELAに照射される。露光光EL3は、露光領域ELAを露光する。露光領域ELAは、露光光EL3であるパルス光のうちの1回又は複数回のパルス発光によって露光される。その結果、露光光EL3は、ウェハ161の表面のうち露光領域ELAと重なる少なくとも一部の面部分である露光対象面110に照射される。
露光領域ELAがウェハ161の表面上を所望の移動経路を通って相対的に移動していくようにウェハステージ16が移動する。図3(a)中に示す矢印は、露光領域ELAの移動経路の一例を示している。図3(a)に示す例では、ウェハステージ16は、あるタイミングで露光領域ELAが+Y方向に向かって移動するように、−Y方向に向かって移動する。その後、ウェハステージ16は、露光領域ELAが−X方向に向かって移動するように、+X方向に向かって移動する。その後、ウェハステージ16は、露光領域ELAが−Y方向に向かって移動するように、+Y方向に向かって移動する。その後、ウェハステージ16は、露光領域ELAが−X方向に向かって移動するように、+X方向に向かって移動する。以降、ウェハステージ16は、−Y方向に向かう移動、+X方向に向かう移動、+Y方向に向かう移動及び+X方向に向かう移動を繰り返す。その結果、露光領域ELAは、ウェハ161の表面を図3(a)中の矢印が示す経路を通って相対的に移動する。
ウェハ161の表面は、複数の露光対象面110に区分可能である。この場合、ウェハステージ16は、露光領域ELAが複数の露光対象面110に順次重なるように移動する。ウェハステージ16は、露光領域ELAが複数の露光対象面110を順次トレースするように移動する。図3(a)に示す例では、ウェハステージ16は、露光領域ELAが露光対象面110−1に重なるように−Y方向に向かって移動する。露光領域ELAが露光対象面110−1に重なるタイミングで露光光EL3が露光領域ELA(つまり、露光対象面110−1)を露光するように、光源11は、露光光EL1を射出する。つまり、光源11は、露光領域ELAが露光対象面110−1に重なるタイミングと光源11が射出するパルス光のうちの1回のパルス発光のタイミングとが一致するように、露光光EL3を射出する。その後、ウェハステージ16は、Y軸方向に沿って露光対象面110−1に隣接する露光対象面110−2aに露光領域ELAが重なるように−Y方向に向かって移動する。露光領域ELAが露光対象面110−1から露光対象面110−2に向かって移動している間は、光源11は、露光光EL1を射出しない。つまり、露光領域ELAが露光対象面110−1から露光対象面110−2に向かって移動している間は、パルス発光が行われることはない。露光領域ELAが露光対象面110−2に重なるタイミングで露光光EL3が露光領域ELA(つまり、露光対象面110−2)を露光するように、光源11は、露光光EL1を射出する。以降、Y軸に沿って並ぶ一連の露光対象面110に対しても同様の動作が繰り返される。その後、Y軸に沿って並ぶ一連の露光対象面110に対する露光が終了する(つまり、露光対象面110−3に対する露光が終了する)と、ウェハステージ16は、露光対象面110−3にX軸方向に沿って隣接する露光対象面110−4に露光領域ELAが重なるように−X方向に向かって移動する。以降、露光対象面110−4を起点として、Y軸に沿って並ぶ一連の露光対象面110に対しても同様の動作が繰り返される。以降は、図3(a)に示す移動経路を通って露光対象面ELAが移動するように、上述した動作が繰り返される。
尚、図3(a)に示す例では、説明の簡略化のために、一の露光対象面110は、隣接する他の露光対象面110と重なることはないものとする。つまり、一の露光対象面110の一部が、隣接する他の露光対象面110の一部と重複することはないものとする。但し、一の露光対象面110の少なくとも一部は、隣接する他の露光対象面110の少なくとも一部と重なってもよい。例えば、一の露光対象面110の一部を1回のパルス発光で露光し、この一の露光対象面110の一部と重畳する他の露光対象面110の一部を1回のパルス発光で露光してもよい。
また、図3(a)に示す例では、露光領域ELAがウェハ161の表面を所望の移動経路を通って相対的に移動している間に、1回又は複数回のパルス発光でウェハ161が露光されている。しかしながら、ウェハ161が露光されるタイミングで、露光領域ELAがウェハ161上で静止していてもよい。この場合、露光装置1は、露光対象面110を露光した後に、露光領域ELAをウェハ161の表面上で移動させる動作を行う。また、このようにウェハ161に対して露光領域ELAが静止した状態でウェハ161が露光される場合には、露光装置1は、1回のパルス発光による露光に代えて、複数回のパルス発光による露光を行ってもよい。
空間光変調器14が備える複数のミラー要素141は、1回の露光(つまり、1回のパルス発光)毎に、1回のパルス発光による露光によってウェハ161に転写されるべきデバイスパターンに基づく状態に遷移する。つまり、複数のミラー要素141は、変調パターン情報が規定する、1回のパルス発光による露光を行う際の複数のミラー要素141の状態に遷移する。
図3(a)に示す例では、露光対象面110−1が露光される場合には、複数のミラー要素141は、露光対象面110−1に対する1回の露光によってウェハ161に転写されるべきデバイスパターン(つまり、露光対象面110−1の下部に位置するウェハ161に転写されるべきデバイスパターン)に基づく状態に遷移する。その後、露光対象面110−1に続いて露光対象面110−2が露光される場合には、複数のミラー要素141は、露光対象面110−2に対する1回の露光によってウェハ161に転写されるべきデバイスパターン(つまり、露光対象面110−2の下部に位置するウェハ161に転写されるべきデバイスパターン)に基づく状態に遷移する。例えば、図3(b)は、露光対象面110−1を露光するための複数のミラー要素141の状態の一例を示す。例えば、図3(c)は、露光対象面110−2を露光するための複数のミラー要素141の状態の一例を示す。
尚、図3(b)及び図3(c)中の白色で示すミラー要素141は、0状態にあるミラー要素141を示している。一方で、図3(b)及び図3(c)中の黒色で示すミラー要素141は、π状態にあるミラー要素141を示している。
以上説明したようにウェハ161が露光された後には、ウェハ161は、不図示のデベロッパーによって現像される。その後、ウェハ161は、不図示のエッチング装置によってエッチングされる。その結果、ウェハ161上に、デバイスパターンが転写(言い換えれば、形成)される。
(2)パターン設計装置2
続いて、図4から図14を参照しながら、複数のミラー要素141の状態の分布を規定する変調パターン情報を生成するパターン設計装置2について説明する。
(2−1)パターン設計装置2の構造
はじめに、図4(a)から図4(c)を参照しながら、パターン設計装置2の構造について説明する。図4は、パターン設計装置2の構造を示すブロック図である。
図4(a)に示すように、パターン設計装置2は、CPU(Central Processing Unit)21と、メモリ22と、入力部23と、操作機器24と、表示機器25とを備える。
ここで、図4(b)に示すように、パターン設計装置2は、複数の露光装置1と有線又は無線の通信インターフェース4を介して接続されて、複数の露光装置1を制御するホストコンピュータ3に設けられていてもよい。このホストコンピュータ3は、露光装置1が設置されるデバイス製造工場内に設けられていてもよいし、デバイス製造工場外に設けられていてもよい。
また、図4(c)に示すように、パターン設計装置2は、複数の露光装置1と有線又は無線の通信インターフェース5を介して接続されたサーバに設けられていてもよい。そして、このパターン設計装置2は、ホストコンピュータ3と、有線又は無線の通信インターフェース6を介して接続されていてもよい。図4(c)の場合において、パターン設計装置2は、露光装置1が設置されるデバイス製造工場内に設けられていてもよいし、デバイス製造工場外に設けられていてもよい。
CPU21は、パターン設計装置2の動作を制御する。CPU21は、後に詳述するように、変調パターン情報を生成する。具体的には、CPU21は、所定の費用関数(言い換えれば、目的関数)の終了条件が満たされるように、当該費用関数を定義する設計変数を調整する。つまり、CPU21は、設計変数を最適化するための最適化問題又は数理計画問題を解く。その結果、CPU21は、最適化された設計変数に基づいて変調パターン情報を生成することができる。尚、ここで言う「設計変数の最適化」とは、デバイスパターンをより良好な特性でウェハ161に転写することが可能な露光動作を規定する設計変数を算出する動作を意味する。
設計変数の少なくとも一部は、後に詳述するように、複数のミラー要素141の状態を直接的に又は間接的に規定する。このため、CPU21は、費用関数を定義する設計変数を調整することで、複数のミラー要素141の状態の分布を規定する変調パターン情報を生成するパターン設計動作を行う。つまり、CPU21は、設計変数を最適化することで、変調パターン情報を生成することができる。
CPU21は、実質的には、EDA(Electronic Design Automation)ツールとして機能する。例えば、CPU21は、上述した設計変数の調整動作(特に、パターン設計動作)をCPU21に行わせるためのコンピュータプログラムを実行することで、EDAツールとして機能してもよい。
メモリ22は、上述した設計変数の調整動作をCPU21に行わせるためのコンピュータプログラムを格納する。メモリ22は、更に、CPU21が上述した設計変数の調整動作を行っている間に生成される中間データを一時的に格納する。
入力部23は、CPU21が設計変数の調整動作を行うために用いられる各種データの入力を受け付ける。このようなデータの一例として、ウェハ161に対して転写するべきデバイスパターンを示すデータや、設計変数の初期値を示すデータや、設計変数の制約条件を示すデータ等があげられる。但し、パターン設計装置2は、入力部23を備えていなくてもよい。
操作機器24は、パターン設計装置2に対するユーザの操作を受け付ける。操作機器24は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルの少なくとも一つを含んでいてもよい。CPU21は、操作機器24が受け付けたユーザの操作に基づいて、上述した設計変数の調整動作を行ってもよい。但し、パターン設計装置2は、操作機器24を備えていなくてもよい。
表示機器25は、所望の情報を表示可能である。例えば、表示機器25は、パターン設計装置2の状態を示す情報を直接的に又は間接的に表示してもよい。例えば、表示機器25は、パターン設計装置2が生成している変調パターン情報を直接的に又は間接的に表示してもよい。例えば、表示機器25は、上述した設計変数の調整動作(特に、パターン設計動作)に関連する任意の情報を直接的に又は間接的に表示してもよい。但し、パターン設計装置2は、表示機器25を備えていなくてもよい。
尚、パターン設計装置2は、露光装置1が備えるコントローラ17の一部を構成する装置であってもよい。つまり、パターン設計装置2は、露光装置1の一部を構成する装置であってもよい。この場合、コントローラ17は、変調パターン情報を生成すると共に、生成した変調パターン情報に基づいて空間光変調器14を制御する。或いは、パターン設計装置2は、露光装置1が備えるコントローラ17(或いは、露光装置1そのもの)とは物理的に又は機能的に分離した装置であってもよい。この場合、パターン設計装置2は、変調パターン情報を生成すると共に、生成した変調パターン情報をコントローラ17に出力する。コントローラ17は、パターン設計装置2から出力される変調パターン情報に基づいて空間光変調器14を制御する。
また、パターン設計装置2は、複数の露光装置1を統括的に制御するサーバであってもよい。このサーバは、デバイス製造メーカが有するホストコンピュータ(例えば、図4(b)又は図4(c)のホストコンピュータ)であってもよく、このホストコンピュータとは別に設けられたサーバ(例えば、図4(c)のサーバ)であってもよい。
(2−2)パターン設計装置によるパターン設計動作
続いて、図5を参照しながら、パターン設計装置2が行うパターン設計動作(つまり、変調パターン情報を生成する動作)について説明する。図5は、パターン設計装置2が行うパターン設計動作の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、パターン設計装置2が備えるCPU21は、光源11に関連する設計変数を設定する(ステップS21)。光源11に関連する設計変数は、光源11の特性(例えば、光学特性)を規定する、調整可能な又は固定されたパラメータである。このような光源11に関連する設計変数として、光源11による照明パターンの形状(つまり、露光光EL1の射出パターンの形状)及び露光光EL1の光強度等のうちの少なくとも一つが一例としてあげられる。
CPU21は、更に、投影光学系15に関連する設計変数を設定する(ステップS22)。投影光学系15に関連する設計変数は、投影光学系15の特性(例えば、光学特性)を規定する、調整可能な又は固定されたパラメータである。このような投影光学系15に関連する設計変数として、投影光学系15が投影する露光光EL3の波面形状、投影光学系15が投影する露光光EL3の強度分布及び投影光学系15が投影する露光光EL3の位相シフト量等のうちの少なくとも一つが一例としてあげられる。或いは、投影光学系15が露光光EL3の波面形状、露光光EL3の強度分布及び露光光EL3の位相シフト量等のうちの少なくとも一つを調整可能な波面マニピュレータを備えている場合には、このような投影光学系15に関連する設計変数として、波面マニピュレータの制御量(或いは、状態)が一例としてあげられる。
CPU21は、更に、設計レイアウトに関連する設計変数を設定する(ステップS23)。設計レイアウトに関連する設計変数は、設計レイアウト(つまり、ウェハ161に所望のデバイスパターンを転写するために用いられる物理的な又は仮想的なマスクパターン又は所望のデバイスパターンそのもの)の特性(例えば、光学特性)を規定する、調整可能な又は固定されたパラメータである。設計レイアウトは、基板に転写するべきデバイスパターン及び所定の設計ルールに基づいて、いわゆるEDAによって生成される。所定の設計ルールとして、例えば、ライン又はホールの最小幅や、2本のライン又は2つのホールの間の最小空間が一例としてあげられる。
尚、光源11に関連する設計変数、投影光学系15に関連する設計変数及び設計レイアウトに関連する設計変数の一例は、援用によって本願明細書に取り込まれる上述した特許文献1(国際公開第2006/083685号パンフレット)等に記載されている。このため、説明の簡略化のために、これらの設計変数に関する詳細な記載は省略する。
CPU21は、更に、空間光変調器14に関連する設計変数を設定する(ステップS24)。空間光変調器14に関連する設計変数は、空間光変調器14の特性(例えば、光学特性)を規定する、調整可能な又は固定されたパラメータである。このような空間光変調器14に関連する設計変数として、空間光変調器14が備える複数のミラー要素141を少なくとも一つのミラー要素141を含むミラー群140の単位で区分した場合における各ミラー群140の光学特性が一例としてあげられる。
本実施形態では、上述したように、空間光変調器14が反射型の空間光変調器である。本実施形態では、ミラー群140の光学特性として、ミラー群140の反射振幅(つまり、ミラー群140によって反射された光の振幅を直接的に又は間接的に示すパラメータ)が用いられる。本実施形態では、ミラー群140の反射振幅は、例えば、露光光EL2に対するミラー群140の反射率の平方根によってその絶対値が規定されるパラメータである。更に、本実施形態では、ミラー群140の反射振幅は、ミラー群140が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の位相に応じて正負のいずれかの値となるパラメータである。例えば、ミラー群140の反射振幅は、露光光EL3の位相がδである場合に正の値となる一方で、露光光EL3の位相がδ+α(例えば、α=180度)である場合に負の値となるパラメータであってもよい。ここで、ミラー群140の反射振幅に加えて又は代えて、ミラー群140によって反射された光の振幅、ミラー群140の反射率及びミラー群140によって反射された光の強度(言い換えれば、ミラー群140によって反射された光の振幅から算出可能な強度)のうちの少なくとも一つを、ミラー群140の光学特性(つまり、ミラー群140中のミラー要素141を介した光の振幅を示す振幅特性値)として用いてもよい。
尚、空間光変調器14が複数の光学要素(言い換えれば、光学面)を備えた透過型の空間光変調器である場合には、空間光変調器14に関連する設計変数として、複数の光学要素を少なくとも一つの光学要素を含む光学要素群の単位で区分した場合における各高額要素群の光学特性が用いられてもよい。この場合、光学要素群の光学特性として、光学要素群の透過振幅(つまり、光学要素群を透過した光の振幅を直接的に又は間接的に示すパラメータであり、光学要素群の透過率の平方根によってその絶対値が規定されるパラメータ)が用いられてもよい。このとき、光学要素群を透過した光の振幅、光学要素群の透過率及び光学要素群を透過した光の強度(言い換えれば、光学要素群を透過した光の振幅から算出可能な強度)のうちの少なくとも一つを、光学要素群の光学特性(つまり、光学要素群中の光学要素を介した光の振幅を示す振幅特性値)として用いられてもよい。
尚、ミラー群140の光学特性は、ミラー群140を構成する各ミラー要素141の状態に依存する。このため、空間光変調器14に関連する設計変数は、実質的には、各ミラー要素141の状態(或いは、0状態にあるミラー要素141の分布や、π状態にあるミラー要素141の分布)を示す設計変数であるとも言える。
ステップS21からステップS24の動作に加えて、CPU21は、各設計変数の制約条件を設定してもよい。更に、CPU21は、入力部23を介して、CPU21が設計変数の調整動作(特に、パターン設計動作)を行うために用いられる各種データを取得してもよい。設定された制約条件及び入力部23を介して取得された各種データは、後述する設計変数の調整の際に考慮されてもよい。
その後、CPU21は、ステップS21からステップS24において設定された設計変数によって規定される費用関数CFを定義する(ステップS25)。費用関数CFの一例は、例えば数式1によって示される。
ここで、「(z11、・・・、z1N1)」は、ステップS21において設定された光源11に関連する設計変数を示す。「N1」は、光源11に関連する設計変数の総数を示す。「(z21、・・・、z2N2)」は、ステップS22において設定された投影光学系15に関連する設計変数を示す。「N2」は、投影光学系15に関連する設計変数の総数を示す。「(z31、・・・、z3N3)」は、ステップS23において設定された設計レイアウトに関連する設計変数を示す。「N3」は、設計レイアウトに関連する設計変数の総数を示す。「(z41、・・・、z4N4)」は、ステップS24において設定された空間光変調器14に関連する設計変数を示す。「N4」は、空間光変調器14に関連する設計変数の総数を示す。「fp(z11、・・・、z1N1、z21、・・・、z2N2、z31、・・・、z3N3、z41、・・・、z4N4)」は、p番目の評価ポイント(例えば、ウェハ161上における空間像(つまり、露光光EL3の強度分布)ないしは当該空間像によって規定されるレジスト像のうちの所望の像部分に相当する評価ポイント)において設計変数「z11、・・・、z1N1、z21、・・・、z2N1、z31、・・・、z3N3、z41、・・・、z4N4」によって実現される特性の推定値と、当該p番目の評価ポイントにおいて実現されるべき特性の目標値との差分を導出する関数である。「wp」は、p番目の評価ポイントに割り当てられた重み付け係数である。「P」は、評価ポイントの総数である。
ここで、上述した光源11に関連する設計変数、投影光学系15に関連する設計変数、設計レイアウトに関連する設計変数及び空間光変調器14に関連する設計変数は、実質的に、ウェハ161上における空間像(つまり、露光光EL3の強度分布)を規定する。このため、費用関数CFは、ウェハ161上における露光光EL3の空間像の特性に関連する関数であってもよい。例えば、「fp(z11、・・・、z1N1、z21、・・・、z2N1、z31、・・・、z3N3、z41、・・・、z4N4)」は、p番目の評価ポイントにおいて実現される空間像の特性の推定値と、当該p番目の評価ポイントにおいて実現されるべき空間像の特性の目標値との差分を導出する関数であってもよい。
或いは、空間像は、ウェハ161に塗布されたレジストの露光パターンに相当するレジスト像を規定する。レジスト像は、ウェハ161に転写されるデバイスパターンを規定する。このため、費用関数CFは、ウェハ161上でのレジスト像の特性に関連する関数であってもよい。例えば、「fp(z11、・・・、z1N1、z21、・・・、z2N1、z31、・・・、z3N3、z41、・・・、z4N4)」は、p番目の評価ポイントにおいて実現されるレジスト像の特性の推定値と、当該p番目の評価ポイントにおいて実現されるべきレジスト像の特性の目標値との差分を導出する関数であってもよい。
尚、数式1に示す費用関数CFはあくまで一例である。従って、数式1とは異なる費用関数CFが定義されてもよい。費用関数CFの他の一例は、例えば、援用によって本願明細書に取り込まれる上述した特許文献1(国際公開第2006/083685号パンフレット)等に記載されているため、その詳細な説明は省略する。
その後、CPU21は、費用関数CFの終了条件が満たされるように、ステップS21からステップS24において設定した設計変数のうちの少なくとも一つを調整(言い換えれば、変更)する(ステップS26)。例えば、CPU21は、「費用関数CFが最小となる」という終了条件が満たされるように、少なくとも一つの設計変数を調整する。このとき、CPU21は、複数の設計変数を同時に調整してもよい。具体的には、例えば、CPU21は、光源11に関連する設計変数、投影光学系15に関連する設計変数、設計レイアウトに関連する設計変数及び空間光変調器14に関連する設計変数のうちの少なくとも2つを同時に調整してもよい。或いは、CPU21は、複数の設計変数を1つずつ順番に調整してもよい。例えば、CPU21は、投影光学系15、設計レイアウト及び空間光変調器14に関連する設計変数を固定した状態で、光源11に関連する設計変数を調整してもよい。その後、例えば、CPU21は、光源11、投影光学系15及び設計レイアウトに関連する設計変数を固定した状態で、空間光変調器14に関連する設計変数を調整してもよい。
尚、上述したように、「費用関数CFが最小となる」という終了条件が満たされる場合には、ウェハ161に転写されるデバイスパターンを規定するレジスト像の特性が目標値に最も近づいているというレジスト像の理想条件が満たされることになる。レジスト像の理想条件が満たされると、ウェハ161に転写されるデバイスパターンのパターン誤差(つまり、実際に転写されたデバイスパターンと理想的なデバイスパターンとのずれ量)が最も小さくなる。このため、図5に示すパターン設計動作は、デバイスパターンのパターン誤差が小さくなる(典型的には、最小になる)ように、複数の設計変数(つまり、設計変数の配列)を調整する動作であると言える。言い換えれば、図5に示すパターン設計動作は、設計変数を調整する前と比較して、デバイスパターンのパターン誤差が小さくなるように、複数の設計変数を調整する動作であると言える。
(2−3)空間光変調器に関連する設計変数の具体例
続いて、図6から図14を参照しながら、空間光変調器14に関連する設計変数の具体例について説明する。尚、以下では、設計変数の第1具体例から設計変数の第8具体例について順に説明する。但し、設計変数の第A(但し、Aは1以上且つ8以下の整数)具体例において説明した構成要件の少なくとも一部は、設計変数の第B(但し、Bは1以上且つ8以下であって、Aとは異なる整数)具体例に対して組み合わせることが可能である。
(2−3−1)空間光変調器に関連する設計変数の第1具体例
はじめに、図6(a)及び図6(b)を参照しながら、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例について説明する。図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例を規定するミラー群140−1を示す平面図である。
図6(a)及び図6(b)に示すように、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例は、空間光変調器14が備える複数のミラー要素141を単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の単位で区分した場合における各ミラー群140−1の反射振幅を示す。
ミラー群140−1は、単一のミラー要素141を含む。具体的には、ミラー群140−1は、単一のミラー要素141の反射面141aを含む。言い換えれば、ミラー群140−1は、単一のミラー要素141の反射面141aが位置する部分を含む。
ミラー群140−1は、単一のミラー要素141に加えて、単一のミラー要素141と当該単一のミラー要素141に隣接する他のミラー要素141との間に位置し且つ単一のミラー要素141を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。言い換えれば、ミラー群140−1は、単一のミラー要素141に隣接すると共に単一のミラー要素141の反射面141aを構成しない部分を含む。本実施形態では、単一のミラー要素141と他のミラー要素141との間に位置し且つ単一のミラー要素141を構成しない部分の一例として、単一のミラー要素141の外縁に沿って分布する隙間142(或いは、このような隙間142の一部)が例示されている。従って、本実施形態では、ミラー群140−1は、単一のミラー要素141に加えて、単一のミラー要素141の外縁に沿って分布する隙間142を含む。より具体的には、ミラー群140−1は、単一のミラー要素141の+X方向側の外縁に隣接する隙間142(+X)と、単一のミラー要素141の+Y方向側の外縁に隣接する隙間142(+Y)と、単一のミラー要素141の−X方向側の外縁に隣接する隙間142(−X)と、単一のミラー要素141の−Y方向側の外縁に隣接する隙間142(−Y)とを含む。但し、ミラー群140−1は、隙間142(+X)、隙間142(+Y)、隙間142(−X)及び隙間142(−Y)のうちの少なくとも一つを含んでいなくてもよい。
ミラー群140−1の反射振幅は、露光光EL2に対するミラー群140−1の反射率の平方根によってその絶対値が規定されるパラメータである。従って、ミラー群140−1の反射振幅は、ミラー群140−1を構成する単一のミラー要素141の反射面141aを介した露光光EL2の反射率のみならず、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分(つまり、反射面141aを構成しないミラー群140−1の部分)を介した露光光EL2の反射率をも考慮したパラメータである。ミラー群140−1の反射振幅は、ミラー群140−1を構成する単一のミラー要素141の反射面141aを介した露光光EL2の反射のみならず、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分(つまり、反射面141aを構成しないミラー群140−1の部分)を介した露光光EL2の反射をも考慮したパラメータである。
上述したように、本実施形態では、反射面141aを構成しない部分の一例として、隙間142が例示されている。このため、本実施形態では、ミラー群140−1の反射振幅は、ミラー群140−1の中の隙間142を介した露光光EL2の反射率をも考慮したパラメータである。ミラー群140−1の反射振幅は、ミラー群140−1の中の隙間142を介して伝搬する露光光EL2が到達可能な構造体を介した露光光EL2の反射をも考慮したパラメータである。隙間142を介して伝搬する露光光EL2が到達可能な構造体の一例として、例えば、第1接続部材143、ヒンジ部144、ポスト部145、アンカー部146、電極148及び支持基板149のうちの少なくとも一つがあげられる。隙間142を介して伝搬する露光光EL2が到達可能な構造体の他の一例として、例えば、ミラー要素141のうち反射面141a以外の面(例えば、反射面141aがミラー要素141の上面であるとすると、ミラー要素141の側面及び底面のうちの少なくとも一方)があげられる。
このように、本実施形態では、ミラー群140−1の反射振幅は、反射面141aとは異なる部分(つまり、反射面141aを構成しない部分)を介した露光光EL2の反射率をも考慮したパラメータである。このため、ミラー群140−1の反射振幅は、反射面141aを介した露光光EL2の反射率のみを考慮したミラー要素141の反射振幅とは異なる値になる場合がある。しかしながら、ミラー群140−1の反射振幅は、反射面141aを介した露光光EL2の反射率のみを考慮したミラー要素141の反射振幅と比較して、空間光変調器14の光学特性(特に、露光光EL2の反射に関連する光学特性)をより高精度に表すことができるという点で有益である。
ミラー群140−1が単一のミラー要素141を含んでいるがゆえに、ミラー群140−1の数は、空間光変調器が備えるミラー要素141の数と同一となる。従って、空間光変調器14に関連する設計変数の総数N4(つまり、ミラー群140−1の数)は、ミラー要素141の数と同一となる。このため、空間光変調器14に関連する各設計変数は、対応する単一のミラー要素141に対応するパラメータとなる。その結果、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数は、それぞれ、対応する単一のミラー要素141を含むN4個のミラー群140−1の反射振幅を示す。つまり、空間光変調器14に関連する設計変数は、それぞれが単一のミラー要素141を含むN4個のミラー群140−1の反射振幅を示す。
図6(a)に示すように、ミラー群140−1を構成する単一のミラー要素141は、0状態となることができる。更に、図6(b)に示すように、ミラー群140−1を構成する単一のミラー要素141は、π状態となることができる。従って、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数のそれぞれが取り得る値は、0状態となる単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅r(0)及びπ状態となる単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅r(π)のいずれかとなる。このため、CPU21は、空間光変調器14に関連する設計変数を設定又は調整する場合には、ウェハ161に転写するべきデバイスパターン等に応じて、N4個の設計変数のそれぞれを、反射振幅r(0)及びr(π)のいずれかに設定する。
CPU21は、費用関数CFが終了条件を満たすように空間光変調器14に関連する設計変数を調整することで、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数を決定する。空間光変調器14に関連するN4個の設計変数が決定されると、N4個のミラー群140−1を構成するN4個のミラー要素141の状態が決定される。具体的には、あるミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数が反射振幅r(0)であると決定されると、当該あるミラー群140−1を構成する単一のミラー要素141の状態は0状態となるべきであると決定される。同様に、あるミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数が反射振幅r(π)であると決定されると、当該あるミラー群140−1を構成する単一のミラー要素141の状態はπ状態となるべきであると決定される。その結果、CPU21は、複数のミラー要素141の状態の分布を規定する変調パターン情報を生成することができる。
CPU21は、シミュレーションを用いて反射振幅r(0)及びr(π)を特定(言い換えれば、推定又は算出)してもよい。この場合、CPU21は、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数のそれぞれを、シミュレーションによって特定した反射振幅r(0)及びr(π)のいずれかに設定する。
或いは、シミュレーションを用いて特定された反射振幅r(0)及びr(π)をメモリ22が予め格納している場合には、CPU21は、シミュレーションを用いて反射振幅r(0)及びr(π)を特定しなくてもよい。この場合、CPU21は、メモリ22に格納されている反射振幅r(0)及びr(π)を取得することで、反射振幅r(0)及びr(π)を特定してもよい。CPU21は、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数のそれぞれを、メモリ22から取得した反射振幅r(0)及びr(π)のいずれかに設定すればよい。
ここで、図7(a)から図7(c)を参照しながら、シミュレーションを用いて反射振幅r(0)及びr(π)を特定する動作の一例について説明する。図7(a)は、空間光変調器14のシミュレーションモデルの基本構造を示す側面図である。図7(b)及び図7(c)は、それぞれ、反射振幅r(0)及びr(π)を特定するために用いられるシミュレーションモデルの一例を示す側面図である。
図7(a)に示すように、反射振幅r(0)及びr(π)は、電磁場計算用のシミュレーションモデルを用いて特定される。図7(a)に示す例では、シミュレーションに要する負荷の低減のために、複数のミラー要素141の分布が1次元分布であるシミュレーションモデルが用いられる。但し、複数のミラー要素141の分布が2次元分布又は3次元分布であるシミュレーションモデルが用いられてもよい。シミュレーションモデルは、所定方向(例えば、Y軸方向)に沿って周期的な構造を有する。具体的には、シミュレーションモデルは、周期境界によって区分される単位モデルが所定方向(例えば、Y軸方向)に沿って繰り返し現れる構造を有する。更に、図7(a)に示すシミュレーションモデルでは、支持基板149は、第1基板部分149aと第2基板部分149bとを含むものとする。第1基板部分149aの上面(図7(a)では、−Z方向側の面)は、第2基板部分149bの上面よりも、複数のミラー要素141に近い。互いに隣接する2つのミラー要素141の間に位置する隙間142は、第1基板部分149a又は第2基板部分149bの中心部若しくは当該中心部の近傍の上方(図7(a)では、−Z方向側)に位置する。
CPU21は、このようなシミュレーションモデルを用いて、入射光をミラー群140−1に入射させた場合における当該ミラー群140−1からの0次反射光の光強度を特定する。0次反射光の光強度の入射光の光強度に対する割合が、反射率となる。
CPU21は、例えば、図7(b)に示すように、0状態にあるミラー要素141とπ状態にあるミラー要素とがY軸方向に沿って交互に繰り返し配置される第1のシミュレーションモデルを用いて、当該第1のシミュレーションモデルにおける反射率R1を特定する。更に、CPU21は、例えば、図7(c)に示すように、0状態にあるミラー要素141がY軸方向に沿って連続的に複数個(図7(c)に示す例では、4つ)並ぶと共にπ状態にあるミラー要素141がY軸方向に沿って連続的に複数個(図7(c)に示す例では、4つ)並ぶ第2のシミュレーションモデルを用いて、当該第2のシミュレーションモデルにおける反射率R2を特定する。第1のシミュレーションモデルにおける反射率R1及び第2のシミュレーションモデルにおける反射率R2と、反射振幅r(0)及びr(π)とは、数式2及び数式3に示す関係を有する。このため、CPU21は、第1のシミュレーションモデルにおける反射率R1及び第2のシミュレーションモデルにおける反射率R2を特定することで、反射振幅r(0)及びr(π)を特定することができる。
他の一例として、CPU21は、0状態にあるミラー要素141がY軸方向に沿って連続的に複数個並ぶ第3のシミュレーションモデルから反射振幅r(0)を算出し、π状態にあるミラー要素141がY軸方向に沿って連続的に複数個並ぶ第4のシミュレーションモデルから反射振幅r(π)を算出してもよい。そして、CPU21は、算出された反射振幅r(0)及びr(π)を用いて数式2及び数式3から反射率R1及びR2を算出してもよい。尚、CPU21は、シミュレーションモデルを用いることに加えて又は代えて、例えば図7(c)に示す配置態様で実際に配置されているミラー要素141からの光の計測結果に基づいて、反射率R1及びR2を求めてもよい。
具体的な数値を上述したシミュレーションモデルに適用した例について更に説明する。例えば、各ミラー要素141の厚み(つまり、Z軸方向のサイズ)d1は、200ナノメートルであるものとする。第1支持基板部分143aの厚み(つまり、Z軸方向のサイズ)d2は、200ナノメートルであるものとする。第1支持基板部分143aの上面と第2支持基板部分143bの上面との間のZ軸方向に沿った距離d3は、48.25ナノメートルであるとする。各ミラー要素141と第1支持基板部分143aの上面との間の距離d4は、200ナノメートルであるものとする。周期境界と隙間142の中心部との間のY軸方向に沿った距離d5は、5マイクロメートルであるものとする。隙間142のY軸方向に沿ったサイズd6は、0.5マイクロメートルであるものとする。入射光の波長は、193ナノメートルであるものとする。入射光の入射角度は6度であるものとする。この場合、第1のシミュレーションモデルにおける反射率R1は、0.0055(=0.55%)となり、第2のシミュレーションモデルにおける反射率R2は、0.100(=10%)となる。その結果、反射振幅r(0)は、0.71となり、反射振幅r(π)は、0.63となる。
但し、0状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相は、π状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相と比較して、180度(πラジアン)だけ異なる。このため、反射振幅r(0)及びr(π)のいずれか一方が正の値となる一方で、反射振幅r(0)及びr(π)のいずれか他方が負の値となる。例えば、上述した具体的な数値をシミュレーションモデルに適用した場合では、反射振幅r(0)が+0.71となり且つ反射振幅r(π)が−0.63となるか又は反射振幅r(0)が−0.71となり且つ反射振幅r(π)が+0.63となる。
上述した具体的な数値をシミュレーションモデルに適用した場合の反射振幅r(0)及びr(π)から分かるように、本実施形態では、反射振幅r(0)の絶対値と反射振幅r(π)の絶対値とは一致していなくてもよい。このように反射振幅r(0)と反射振幅r(π)との不一致が許可されているがゆえに、本実施形態では、所望のデバイスパターンをウェハ161により一層好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。尚、その理由については後に詳述する。
図7(a)から図7(c)に示すシミュレーションモデルを用いて反射振幅r(0)及びr(π)を特定する動作はあくまで一例である。従って、図7(a)から図7(c)に示すシミュレーションモデルとは異なるシミュレーションモデル又はその他任意の方法を用いて、反射振幅r(0)及びr(π)が特定されてもよい。例えば、CPU21は、任意のシミュレーションモデルを用いて、反射振幅r(0)及びr(π)を直接的に又は間接的に特定してもよい。例えば、CPU21は、任意のシミュレーションモデルを用いて、0状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の反射率R(0)を特定すると共に、当該特定した反射率(R(0)の平方根を算出することで反射振幅r(0)を特定してもよい。例えば、CPU21は、任意のシミュレーションモデルを用いて、π状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の反射率R(π)を特定すると共に、当該特定した反射率R(π)の平方根を算出することで反射振幅r(π)を特定してもよい。或いは、CPU21は、シミュレーションモデルを用いることなく、反射振幅r(0)及びr(π)を特定してもよい。例えば、CPU21は、ミラー要素141に対して入射光(例えば、露光光EL2)を実際に照射することで得られる反射光(例えば、露光光EL3)の光強度の計測結果を用いて、反射振幅r(0)及びr(π)を特定してもよい。或いは、CPU21は、所定のテストパターンが描画されたテストマスク若しくは空間光変調器14を通過した露光光EL3によって実際に露光されたウェハ161を現像することで得られるレジストパターン(或いは、デバイスパターン)の特性の計測結果を用いて、反射振幅r(0)及びr(π)を特定してもよい。この場合、CPU21は、ある反射振幅r(0)及びr(π)の組み合わせによって実現されるレジスト像をシミュレーションによって推定すると共に、推定したレジスト像が実際に計測したレジストパターンの特性と合致するように反射振幅r(0)及びr(π)を調整することで、反射振幅r(0)及びr(π)を特定してもよい。
以上説明したように、第1具体例では、空間光変調器14に関連する設計変数は、ミラー群140−1を構成する単一のミラー要素141の反射面141aを介した露光光EL2の反射のみならず、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分を介した露光光EL2の反射をも考慮した反射振幅を示す。このため、CPU21は、所望のデバイスパターンをウェハ161により一層好適に転写することが可能な変調パターン情報を生成することができる。
また、第1具体例では、ミラー群140−1の隙間142に入射して、この隙間142から射出される光と、ミラー群140−1の反射面141aを介した光とを合成した光の振幅を用いて、各ミラー群140−1中のミラー要素141の状態を0状態及びπ状態のいずれかに設定している。このため、CPU21は、所望のデバイスパターンをウェハ161により一層好適に転写することが可能な変調パターン情報を生成することができる。
以下、その技術的理由について、図8(a)及び図8(b)を参照しながら説明する。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ、Y軸方向に沿って隣接する2つのミラー要素141及び当該2つのミラー要素141の間に位置する隙間142(或いは、当該2つのミラー要素141の外縁に沿って分布する隙間142)を含むミラー群140−2の反射率を示すグラフである。
まず、空間光変調器14に関連する設計変数が、ミラー群140−1を構成する単一のミラー要素141の反射面141aを介した露光光EL2の反射のみを考慮した反射振幅を示す比較例について説明する。比較例では、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分を介した露光光EL2の反射が考慮されないがゆえに、反射振幅r(0)及びr(π)は、理想的には又は理論的には、反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という関係を有するはずである。例えば、理想的には又は理論的には、反射振幅r(0)が+1となり且つ反射振幅r(π)が−1となるか、又は、反射振幅r(0)が−1となり且つ反射振幅r(π)が+1となるはずである。従って、比較例では、CPU21は、ウェハ161に転写するべきデバイスパターン等に応じて、N4個の設計変数のそれぞれを、+1及び−1のいずれかに設定する。
しかしながら、上述したように、実際の空間光変調器14では、ミラー群140−1中の反射面141aとは異なる部分を介した露光光EL2の反射が発生し得る。例えば、実際の空間光変調器14では、ミラー群140−1の中の隙間142を介して伝搬する露光光EL2が到達可能な構造体を介した露光光EL2の反射が発生し得る。このため、実際の又は現実的な反射振幅r(0)及びr(π)は、反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という理想的な又は理論的な関係を有するとは限らない。
例えば、図7(a)に示すシミュレーションモデルに対して上述した具体的な数値を適用した場合に特定されるミラー群140の反射率を用いて、実際の又は現実的な反射振幅r(0)及びr(π)が反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という理想的な又は理論的な関係を有しない例について説明する。
図8(a)は、Y軸方向に沿って隣接する2つのミラー要素141及び当該2つのミラー要素141の間に位置する隙間142(或いは、当該2つのミラー要素142の外縁に沿って分布する隙間142)を含むミラー群140−2の反射率を示す。尚、図8(a)に示すグラフの横軸は、各ミラー要素141と第1支持基板部分149aの上面との間の距離d4を示す。特に、図8(a)は、0状態にある2つのミラー要素141を含むミラー群140−2の反射率R(0、0)及びπ状態にある2つのミラー要素141を含むミラー群140−2の反射率R(π、π)を示す。仮に反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という関係が成立するとすれば、反射率R(0、0)と反射率R(π、π)は一致するはずである。しかしながら、図8(a)に示すように、各ミラー要素141と第1支持基板部分149aの上面との間の距離d4によっては、反射率R(0、0)と反射率R(π、π)は一致しない。更には、図8(a)に示すように、各ミラー要素141と第1支持基板部分149aの上面との間の距離d4に依存して、反射率R(0、0)及び反射率R(π、π)のそれぞれは変動する。従って、シミュレーションモデルを用いて特定されるミラー群140−2の反射率R(0、0)及びR(π、π)から見ても、実際の又は現実的な反射振幅r(0)及びr(π)は、反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という理想的な又は理論的な関係を有するとは限らないことが分かる。
一方で、図8(b)は、0状態にある単一のミラー要素141及びπ状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−2の反射率R(0、π)を示す。上述したように、0状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相は、π状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相と比較して、180度(πラジアン)だけ異なる。このため、仮に反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という関係が成立するとすれば、0状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3と、π状態にあるミラー要素141が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3とは、互いに打ち消し合う。このため、仮に反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という関係が成立するとすれば、反射率R(0、π)はゼロになるはずである。しかしながら、図8(b)に示すように、反射率R(0、π)はゼロにならない。更には、図8(b)に示すように、各ミラー要素141と第1支持基板部分149aの上面との間の距離d4に依存して、反射率R(0、π)は変動する。従って、シミュレーションモデルを用いて特定されるミラー群140−2の反射率R(0、π)から見ても、実際の又は現実的な反射振幅r(0)及びr(π)は、反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という理想的な又は理論的な関係を有するとは限らないことが分かる。
このため、反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という理想的な又は理論的な関係を有する理想的な又は理論的な反射振幅r(0)及びr(π)から、ウェハ161上における露光光EL3の実際の又は現実的な強度分布(つまり、空間像)が好適に推定できるとは限らない。このため、空間光変調器14に関連する設計変数が理想的な又は理論的な反射振幅r(0)又はr(π)に設定される場合には、所望のデバイスパターンをウェハ161に好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成されるとは限らないという技術的問題点が生ずる。
一方で、実際の又は現実的な反射振幅r(0)及びr(π)が反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という理想的な又は理論的な関係を有するとは限らない理由の一つは、上述したように、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分を介した露光光EL2の反射(例えば、隙間142を介して伝搬する露光光EL2が到達可能な構造体を介した露光光EL2の反射)である。他方で、このような隙間142は、空間光変調器14の製造精度の向上によってなくすことが理論的には可能である。隙間142がなくなると、実際の又は現実的な反射振幅r(0)及びr(π)は、反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という理想的な又は理論的な関係を有することが可能であるとも想定される。しかしながら、隙間142をなくすレベルに至るまでの製造精度の向上は、技術的に困難であるか又は空間光変調器14の歩留まりの過度な悪化を招く。従って、空間光変調器14の製造精度の向上を利用した上述した技術的問題点の解決手法には制限がある。
また、支持基板149の上面に段差を形成することで、隙間142を介して伝搬する露光光EL2が到達可能な構造体を介した露光光EL2の反射(特に、投影光学系15に向かうような露光光EL2の反射)を防止することができるとも想定される。しかしながら、支持基板149の上面にナノメートルの精度で段差を形成することは、技術的に困難であるか又は空間光変調器14の歩留まりの過度な悪化を招く。従って、支持基板149の上面に形成した段差を利用した上述した技術的問題点の解決手法にもまた制限がある。
そこで、本実施形態では、上述したように、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分を介した露光光EL2の反射による影響を排除又は相殺するべく、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分を介した露光光EL2の反射が考慮された反射振幅r(0)及びr(π)が用いられる。このため、所望のデバイスパターンをウェハ161に好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。その結果、露光装置1は、変調パターン情報に基づいて制御される空間光変調器14を用いて、所望のデバイスパターンを好適に転写するようにウェハ161を露光することができる。
尚、上述した説明では、空間光変調器14は、反射型の空間光変調器である。しかしながら、空間光変調器14は、それぞれが露光光EL2を透過可能な複数の光学要素(例えば、液晶素子等によって構成される複数の透過画素)を備える透過型の空間光変調器であってもよい。この場合、空間光変調器14に関連する設計変数として、上述した「ミラー群140−1の反射振幅」に代えて、「単一の光学要素の透過面が位置する部分及び当該単一の光学要素と当該単一の光学要素に隣接する他の光学要素との間に位置すると共に単一の光学要素を構成しない(特に、露光光EL2を透過する透過領域を構成しない)部分を含む所定部分の透過振幅(つまり、透過型の空間光変調器14が備える光学要素を透過した光の振幅を直接的に又は間接的に示すパラメータ)」が用いられる。その結果、透過型の空間光変調器においても、上述した各種効果が享受可能である。
また、上述した説明では、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分を介した露光光EL2の反射が考慮された反射振幅r(0)及びr(π)が用いられる。しかしながら、所望のデバイスパターンをウェハ161に好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成することができない可能性が生ずる理由の一つは、実際の又は現実的な反射振幅r(0)及びr(π)が反射振幅r(0)=−反射振幅r(π)という理想的な又は理論的な関係を有するとは限らないことである。そうすると、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分を介した露光光EL2の反射が考慮されているか否かに関わらず、互いに異なる値となる(例えば、絶対値が異なる値となる)反射振幅r(0)及びr(π)が用いられてもよい。例えば、CPU21は、シミュレーションモデル等を用いることなく(言い換えれば、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分を介した露光光EL2の反射を考慮することなく)、何らかの基準に基づいて、互いに異なる値となる反射振幅r(0)及びr(π)を特定してもよい。
また、反射振幅r(0)は、ミラー群140−1の位置に依存して変化してもよい。例えば、光変調面14a上の第1領域に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅r(0)は、光変調面14a上の第1領域とは異なる第2領域に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅r(0)と異なっていてもよい。同様に、上述した反射振幅r(π)は、ミラー群140−1の位置に依存して変化してもよい。例えば、光変調面14a上の第1領域に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅r(π)は、光変調面14a上の第2領域に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅r(π)と異なっていてもよい。つまり、反射振幅r(0)及びr(π)のうちの少なくとも一方は、位置依存性を有していてもよい。
(2−3−2)空間光変調器に関連する設計変数の第2具体例
続いて、空間光変調器14に関連する設計変数の第2具体例について説明する。空間光変調器14に関連する設計変数の第2具体例は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例と比較して、ミラー群140−1の反射振幅を、ミラー群140−1に入射する入射光(例えば、露光光EL2)の偏光成分毎に区分するという点で異なっている。空間光変調器14に関連する設計変数の第2具体例のその他の構成要件は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例のその他の構成要件と同一であってもよい。このため、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例の構成要件と同一の構成要件については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
具体的には、例えばミラー群140−1に入射する光がK(但し、Kは2以上の整数)個の偏光成分を含んでいる場合には、ミラー群140−1の反射振幅は、ミラー群140−1によって反射された光のうちの第1の偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅と、ミラー群140−1によって反射された光のうちの第2の偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅と、・・・、ミラー群140−1によって反射された光のうちの第Kの偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅とに区分される。このため、空間光変調器14に関連する各設計変数は、(1−1)0状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちの第1の偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅、(1−2)0状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちの第2の偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅、・・・、及び、(1−K)0状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちの第Kの偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅、並びに、(2−1)π状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちの第1の偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅、(2−2)π状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちの第2の偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅、・・・、及び、(2−K)π状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちの第Kの偏光成分の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅のうちのいずれかに設定される。
典型的には、ミラー群140−1に入射する光は、s偏光及びp偏光の少なくとも一方を含む。この場合には、ミラー群140−1の反射振幅は、ミラー群140−1によって反射された光のうちのs偏光の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅と、ミラー群140−1によって反射された光のうちのp偏光の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅とに区分される。このため、空間光変調器14に関連する各設計変数は、(1−1)0状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちのs偏光の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅及び(1−2)0状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちのp偏光の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅、並びに、(2−1)π状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちのs偏光の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅及び(2−2)π状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1によって反射された光のうちのp偏光の振幅を直接的に又は間接的に示す反射振幅のうちのいずれかに設定される。
空間光変調器14に関連する設計変数の第2具体例が用いられる場合においても、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例が用いられる場合に享受可能な効果が好適に享受可能である。加えて、第2具体例では、反射面141aとは異なるミラー群140−1の部分による反射特性が偏光成分毎に異なる場合であっても、上述した効果が好適に享受可能である。
(2−3−3)空間光変調器に関連する設計変数の第3具体例
続いて、図9(a)から図9(d)を参照しながら、空間光変調器14に関連する設計変数の第3具体例について説明する。図9(a)は、複素平面上で表現される反射振幅r(0)及びr(π)を示すグラフである。図9(b)から図9(d)は、それぞれ、複素数で表現される反射振幅r(0)及びr(π)を特定するために用いられるミラー群140−2の一例を示す平面図である。
空間光変調器14に関連する設計変数の第3具体例は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例と比較して、ミラー群140−1の反射振幅が複素数で表現されるという点で異なっている。空間光変調器14に関連する設計変数の第3具体例は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例と比較して、ミラー群140−1の反射振幅が複素数成分を含み得るという点で異なっている。空間光変調器14に関連する設計変数の第3具体例のその他の構成要件は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例のその他の構成要件と同一であってもよい。このため、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例の構成要件と同一の構成要件については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
具体的には、例えば、反射振幅r(0)及びr(π)は、それぞれ、数式4及び数式5によって特定されるパラメータである。尚、R(0)は、0状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の反射率である。R(π)は、π状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の反射率である。φは、0状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相と、π状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−1が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3の波面の位相との間の差分である。
数式4によって特定される反射振幅r(0)及び数式5によって特定される反射振幅r(π)は、図9(a)に示す複素平面上で、位相差φに相当する角度をなす2つのベクトルとして特定可能である。尚、数式4及び数式5並びに図9(a)に示す例では、反射振幅r(0)が実数で表現される一方で、反射振幅r(π)が複素数で表現されている。しかしながら、図9(a)に示すグラフから分かるように、反射振幅r(0)を特定するベクトル及び反射振幅r(π)を特定するベクトルが位相差φに相当する角度をなす限りは、反射振幅r(0)が複素数で表現される一方で、反射振幅r(π)が実数で表現されていてもよい。或いは、反射振幅r(0)及びr(π)の双方が複素数で表現されてもよい。但し、反射振幅r(0)及びr(π)を特定するために必要な変数の数を減らすという観点から見れば、反射振幅r(0)及びr(π)のうちの一方が実数で表現される一方で、反射振幅r(0)及びr(π)のうちの他方が複素数で表現される。
第3具体例では、反射振幅r(0)及びr(π)は、数式4及び数式5に示すように、反射率R(0)、反射率R(π)及び位相差φから特定可能である。反射率R(0)及び反射率R(π)は、上述したように、シミュレーションモデル等を用いて特定可能である。但し、反射率R(0)は、図9(b)に示すように、0状態にある2つのミラー要素141を含むミラー群140−2の反射率R(0、0)と等価である。反射率R(π)は、図9(c)に示すように、π状態にある2つのミラー要素141を含むミラー群140−2の反射率R(π、π)と等価である。従って、反射振幅r(0)及びr(π)を特定するために、反射率R(0)及び反射率R(0、0)の少なくとも一方、並びに、反射率R(π)及び反射率R(π、π)の少なくとも一方が特定されればよい。位相差φは、数式6に基づいて特定可能である。尚、R(0、π)は、0状態にある単一のミラー要素141及びπ状態にある単一のミラー要素141を含むミラー群140−2の反射率であり、上述したように、シミュレーションモデル等を用いて特定可能である。
従って、反射振幅r(0)及びr(π)の少なくとも一方が複素数で表現される場合であっても、CPU21は、シミュレーションモデル等を用いて、反射率R(0)若しくは反射率R(0、0)、反射率R(π)若しくは反射率R(π、π)及び反射率R(0、π)を特定することで、反射振幅r(0)及びr(π)を好適に特定可能である。
ここで、図10(a)及び図10(b)を参照しながら、図7(a)に示すシミュレーションモデルに対して上述した具体的な数値を適用した場合に特定される反射振幅r(0)及びr(π)について説明する。図10(a)及び図10(b)は、それぞれ、Y軸方向に沿って隣接する2つのミラー要素141及び当該2つのミラー要素141の間に位置する隙間142(或いは、2つのミラー要素141の少なくとも一方の外縁に沿って分布する隙間142)を含むミラー群140−2の反射率を示すグラフである。
図10(a)は、各ミラー要素141と第1支持基板部分143aの上面との間の距離d4が210ナノメートルである場合にシミュレーションモデルを用いて特定される反射率R(0、0)、反射率R(π、π)及び反射率R(0、π)を示す。図10(a)に示すように、シミュレーションモデルによると、反射率R(0、0)が0.798044092075(=79.8044092075%)であり、反射率R(π、π)が0.728422390625(=72.8422390625%)であり、反射率R(0、π)が0.00551267243875(=0.551267243875%)である。その結果、上述した数式6によると、位相差φは、−0.947795245πである。このため、CPU21は、複素数で表現される反射振幅r(0)及びr(π)を好適に特定可能である。
図10(b)は、各ミラー要素141と第1支持基板部分143aの上面との間の距離d4が230ナノメートルである場合にシミュレーションモデルを用いて特定される反射率R(0、0)、反射率R(π、π)及び反射率R(0、π)を示す。図10(b)に示すように、シミュレーションモデルによると、反射率R(0、0)が0.6653456432(=66.53456432%)であり、反射率R(π、π)が0.8423836758(=84.23836758%)であり、反射率R(0、π)が0.0048019197165(=0.48019197165%)である。その結果、上述した数式6によると、位相差φは、−0.965516375πである。このため、CPU21は、複素数で表現される反射振幅r(0)及びr(π)を好適に特定可能である。
空間光変調器14に関連する設計変数の第3具体例が用いられる場合においても、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例が用いられる場合に享受可能な効果が好適に享受可能である。
加えて、第3具体例では、以下に示す技術的効果が更に享受可能である。具体的には、上述したように、空間光変調器14は、各ミラー要素141の反射面141aを基準平面A1及び変位平面A2のいずれかに一致させることで、各ミラー要素141を0状態又はπ状態に遷移させている。しかしながら、空間光変調器14の製造誤差等の影響で、反射面141aを基準平面A1及び変位平面A2のどちらにも一致させることができないミラー要素141が存在する可能性がある。例えば、反射面141aを、基準平面A1より上方に位置する、基準平面A1と変位平面A2との間に位置する又は変位平面A2よりも下方に位置する任意の平面に一致させることしかできないミラー要素141が存在する可能性がある。このような基準平面A1及び変位平面A2のどちらにも一致させることができない反射面141aを有するミラー群140−1の反射振幅には、本来意図していない又は好ましいとは言い難い複素数成分の誤差が付与される可能性がある。そこで、第3具体例で説明したように空間光変調器14に関連する設計変数が複素数で表現されると、基準平面A1及び変位平面A2のどちらにも一致させることができない反射面141aを含むミラー群140−1の反射振幅に付与される複素数成分の誤差の影響が緩和ないしは排除される。つまり、第3具体例では、基準平面A1及び変位平面A2のどちらにも一致させることができない反射面141aを含むミラー群140−1の反射振幅に付与される複素数成分の誤差の影響が緩和又は排除されるように、所望のデバイスパターンをウェハ161に好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。その結果、露光装置1は、変調パターン情報に基づいて制御される空間光変調器14を用いて、所望のデバイスパターンをより一層好適に転写するようにウェハ161を露光することができる。
(2−3−4)空間光変調器に関連する設計変数の第4具体例
続いて、図11(a)から図11(d)を参照しながら、空間光変調器14に関連する設計変数の第4具体例について説明する。図11(a)から図11(d)は、それぞれ、空間光変調器14に関連する設計変数の第4具体例を規定するミラー群140−2を示す平面図である。
空間光変調器14に関連する設計変数の第4具体例は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例と比較して、2つのミラー要素141を含むミラー群140−2の反射振幅が用いられるという点で異なっている。空間光変調器14に関連する設計変数の第4具体例のその他の構成要件は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例のその他の構成要件と同一であってもよい。このため、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例の構成要件と同一の構成要件については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
具体的には、図11(a)から図11(d)に示すように、空間光変調器14に関連する設計変数の第4具体例は、空間光変調器14が備える複数のミラー要素141を互いに隣接する2つのミラー要素141を含むミラー群140−2の単位で区分した場合における各ミラー群140−2の反射振幅を示す。以下では、説明の便宜上、各ミラー群140−2を構成する2つのミラー要素141は、第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22であるものとする。
ミラー群140−2は、所定方向に沿って互いに隣接する第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22を含む。具体的には、ミラー群140−2は、第1ミラー要素141−21の反射面141a及び第2ミラー要素141−22の反射面141aを含む。言い換えれば、ミラー群140−2は、第1ミラー要素141−21の反射面141aが位置する部分及び第2ミラー要素141−22の反射面141aが位置する部分を含む。図11(a)から図11(d)に示す例では、第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22は、X軸方向に沿って互いに隣接している。但し、第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22は、Y軸方向に沿って互いに隣接していてもよい。
ミラー群140−2は、第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22に加えて、第1ミラー要素141−21と当該第1ミラー要素141−21に隣接する他のミラー要素141との間に位置し且つ第1ミラー要素141−21を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。第1ミラー要素141−21に隣接する他のミラー要素141の一例として、第2ミラー要素141−22や、第2ミラー要素141−22とは異なる他のミラー要素141があげられる。更に、ミラー群140−2は、第2ミラー要素141−22と当該第2ミラー要素141−22に隣接する他のミラー要素141との間に位置し且つ第2ミラー要素141−22を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。第2ミラー要素141−22に隣接する他のミラー要素141の一例として、第1ミラー要素141−21や、第1ミラー要素141−21とは異なる他のミラー要素141があげられる。言い換えれば、ミラー群140−2は、第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22の少なくとも一方に隣接すると共に第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。例えば、ミラー群140−2は、第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22の少なくとも一方の外縁に沿って分布する隙間142(或いは、このような隙間142の一部)を含む。
第4具体例においても、第1具体例と同様に、ミラー群140−2の反射振幅は、ミラー群140−2を構成する第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22を介した露光光EL2の反射率のみならず、ミラー群140−2の中の隙間142を介した露光光EL2の反射率をも考慮したパラメータである。つまり、ミラー群140−2の反射振幅は、ミラー群140−2を構成する第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22の反射面141aを介した露光光EL2の反射のみならず、ミラー群140−2の中の隙間142を介して伝搬する露光光EL2が到達可能な構造体を介した露光光EL2の反射をも考慮したパラメータである。
ミラー群140−2が2つのミラー要素141を含んでいるがゆえに、ミラー群140−2の数は、空間光変調器14が備えるミラー要素141の数の半分となる。従って、空間光変調器14に関連する設計変数の総数N4(つまり、ミラー群140−2の数)は、ミラー要素141の数の半分となる。このため、空間光変調器14に関連する各設計変数は、対応する2つのミラー要素141に対応するパラメータとなる。その結果、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数は、それぞれ、対応する2つのミラー要素141を含むN4個のミラー群140−2の反射振幅を示す。つまり、空間光変調器14に関連する設計変数は、それぞれが2つのミラー要素141を含むN4個のミラー群140−2の反射振幅を示す。
図11(a)に示すように、第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22の双方は、0状態となることができる。更に、図11(b)に示すように、第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22の双方は、π状態となることができる。更に、図11(c)に示すように、第1ミラー要素141−21が0状態となる一方で、第2ミラー要素141−22がπ状態となることができる。更に、図11(d)に示すように、第1ミラー要素141−21がπ状態となる一方で、第2ミラー要素141−22が0状態となることができる。従って、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数のそれぞれが取り得る値は、共に0状態となる第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22を含むミラー群140−2の反射振幅r(0、0)、共にπ状態となる第1ミラー要素141−21及び第2ミラー要素141−22を含むミラー群140−2の反射振幅r(π、π)、0状態となる第1ミラー要素141−21及びπ状態となる第2ミラー要素141−22を含むミラー群140−2の反射振幅r(0、π)、並びに、π状態となる第1ミラー要素141−21及び0状態となる第2ミラー要素141−22を含むミラー群140−2の反射振幅r(π、0)のいずれかとなる。このため、CPU21は、空間光変調器14に関連する設計変数を設定又は調整する場合には、ウェハ161に転写するべきデバイスパターン等に応じて、N4個の設計変数のそれぞれを、反射振幅r(0、0)、反射振幅(π、π)、反射振幅(0、π)及び反射振幅r(π、0)のいずれかに設定する。
但し、条件によっては、反射振幅(0、π)と反射振幅(π、0)とが同一になる場合がある。この場合には、CPU21は、N4個の設計変数のそれぞれを、反射振幅r(0、0)、反射振幅(π、π)及び反射振幅(0、π)のいずれかに設定してもよい。
CPU21は、費用関数CFが終了条件を満たすように空間光変調器14に関連する設計変数を調整することで、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数を決定する。空間光変調器14に関連するN4個の設計変数が決定されると、N4個のミラー群140−2を構成するN4×2個のミラー要素141の状態が決定される。具体的には、あるミラー群140−2の反射振幅を示す設計変数が反射振幅r(0、0)であると決定されると、当該あるミラー群140−2を構成する2つのミラー要素141の状態は共に0状態となるべきであると決定される。同様に、あるミラー群140−2の反射振幅を示す設計変数が反射振幅r(π、π)であると決定されると、当該あるミラー群140−2を構成する2つのミラー要素141の状態は共にπ状態となるべきであると決定される。同様に、あるミラー群140−2の反射振幅を示す設計変数が反射振幅r(0、π)又は反射振幅(π、0)であると決定されると、当該あるミラー群140−2を構成する2つのミラー要素141のうちの一方の状態が0状態となり且つ当該あるミラー群140−2を構成する2つのミラー要素141のうちの他方の状態がπ状態となるべきであると決定される。その結果、CPU21は、複数のミラー要素141の状態の分布を規定する変調パターン情報を生成することができる。
空間光変調器14に関連する設計変数の第4具体例が用いられる場合においても、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例が用いられる場合に享受可能な効果が好適に享受可能である。加えて、第4具体例では、単一のミラー要素141の外縁に沿って分布する隙間142のみならず、互いに隣接する2つのミラー要素141の間の隙間142をも考慮した反射振幅が設計変数として用いられる。このため、所望のデバイスパターンをウェハ161により一層好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。
(2−3−5)空間光変調器に関連する設計変数の第5具体例
続いて、図12(a)及び図12(b)を参照しながら、空間光変調器14に関連する設計変数の第5具体例について説明する。図12(a)は、空間光変調器14に関連する設計変数の第5具体例を規定するミラー群140−4を示す平面図である。図12(b)は、ミラー群140−4を構成する4つのミラー素子141が取り得る状態の組み合わせを示す表である。
空間光変調器14に関連する設計変数の第5具体例は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例と比較して、N(但し、Nは3以上の整数)個のミラー要素141を含むミラー群140−Nの反射振幅が用いられるという点で異なっている。空間光変調器14に関連する設計変数の第5具体例のその他の構成要件は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例のその他の構成要件と同一であってもよい。このため、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例の構成要件と同一の構成要件については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
以下、説明の簡略化のために、4個のミラー要素141を含むミラー群140−4の反射振幅を設計変数として用いる例について説明する。但し、以下の説明は、3個のミラー要素141又は5個以上のミラー要素141を含むミラー群140−Nの反射振幅を設計変数として用いる例にも適用可能である。
具体的には、図12(a)に示すように、空間光変調器14に関連する設計変数の第5具体例は、空間光変調器14が備える複数のミラー要素141を2行×2列のマトリクス状に隣接する4つのミラー要素141を含むミラー群140−4の単位で区分した場合における各ミラー群140−4の反射振幅を示す。但し、第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44は、任意の態様で互いに隣接していてもよい。以下では、説明の便宜上、各ミラー群140−4を構成する4つのミラー要素141は、第1ミラー要素141−41、第1ミラー要素141−41とX軸方向に沿って隣接する第2ミラー要素141−42、第1ミラー要素141−41とY軸方向に沿って隣接する第3ミラー要素141−43及び第2ミラー要素141−42とY軸方向に沿って隣接すると共に第3ミラー要素141−43とX軸方向に沿って隣接する第4ミラー要素141−44であるものとする。
ミラー群140−4は、2行×2列のマトリクス状に隣接する第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44を含む。具体的には、ミラー群140−4は、第1ミラー要素141−41の反射面141a、第2ミラー要素141−42の反射面141a、第3ミラー要素141−43の反射面141a及び第4ミラー要素141−44の反射面141aを含む。言い換えれば、ミラー群140−4は、第1ミラー要素141−41の反射面141aが位置する部分、第2ミラー要素141−42の反射面141aが位置する部分、第3ミラー要素141−43の反射面141aが位置する部分及び第4ミラー要素141−44の反射面141aが位置する部分を含む。
ミラー群140−4は、第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44に加えて、第1ミラー要素141−41と当該第1ミラー要素141−41に隣接する他のミラー要素141との間に位置し且つ第1ミラー要素141−41を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。第1ミラー要素141−41に隣接する他のミラー要素141の一例として、第2ミラー要素141−42や、第4ミラー要素141−44や、第2ミラー要素141−42及び第4ミラー要素141−44とは異なる他のミラー要素141があげられる。更に、ミラー群140−4は、第2ミラー要素141−42と当該第2ミラー要素141−42に隣接する他のミラー要素141との間に位置し且つ第2ミラー要素141−42を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。第2ミラー要素141−42に隣接する他のミラー要素141の一例として、第1ミラー要素141−41や、第3ミラー要素141−43や、第1ミラー要素141−41及び第3ミラー要素141−43とは異なる他のミラー要素141があげられる。更に、ミラー群140−4は、第3ミラー要素141−43と当該第3ミラー要素141−43に隣接する他のミラー要素141との間に位置し且つ第3ミラー要素141−43を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。第3ミラー要素141−43に隣接する他のミラー要素141の一例として、第2ミラー要素141−42や、第4ミラー要素141−44や、第2ミラー要素141−42及び第4ミラー要素141−44とは異なる他のミラー要素141があげられる。更に、ミラー群140−4は、第4ミラー要素141−44と当該第4ミラー要素141−44に隣接する他のミラー要素141との間に位置し且つ第4ミラー要素141−44を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。第4ミラー要素141−44に隣接する他のミラー要素141の一例として、第1ミラー要素141−41や、第3ミラー要素141−43や、第1ミラー要素141−41及び第3ミラー要素141−43とは異なる他のミラー要素141があげられる。言い換えれば、ミラー群140−4は、第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44の少なくとも一つに隣接すると共に第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44を構成しない(特に、反射面141aを構成しない)部分を含む。例えば、ミラー群140−4は、第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44の少なくとも一つの外縁に沿って分布する隙間142(或いは、このような隙間の一部)を含む。
第5具体例においても、第1具体例と同様に、ミラー群140−4の反射振幅は、ミラー群140−4を構成する第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44を介した露光光EL2の反射率のみならず、ミラー群140−4の中の隙間142を介した露光光EL2の反射率をも考慮したパラメータである。つまり、ミラー群140−4の反射振幅は、ミラー群140−4を構成する第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44の反射面141aを介した露光光EL2の反射のみならず、ミラー群140−4の中の隙間142を介して伝搬する露光光EL2が到達可能な構造体を介した露光光EL2の反射をも考慮したパラメータである。
ミラー群140−4が4つのミラー要素141を含んでいるがゆえに、ミラー群140−4の数は、ミラー要素141の数の1/4となる。従って、空間光変調器14に関連する設計変数の総数N4(つまり、ミラー群140−4の数)は、ミラー要素141の数の1/4となる。このため、空間光変調器14に関連する各設計変数は、対応する4つのミラー要素141に対応するパラメータとなる。その結果、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数は、それぞれ、対応する4つのミラー要素141を含むN4個のミラー群140−4の反射振幅を示す。つまり、空間光変調器14に関連する設計変数は、それぞれが4つのミラー要素141を含むN4個のミラー群140−4の反射振幅を示す。
図12(b)に示すように、ミラー群140−4を構成する第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44が取り得る状態の組み合わせ(配列)は、16種類ある。具体的には、16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44の全てが0状態となる組み合わせ#1である。16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41がπ状態となり且つ第2ミラー要素141−42から第4ミラー要素141−44が0状態となる組み合わせ#2である。16種類の組み合わせの一つは、第2ミラー要素141−42がπ状態となり且つ第1ミラー要素141−41、第3ミラー要素141−43及び第4ミラー要素141−44が0状態となる組み合わせ#3である。16種類の組み合わせの一つは、第3ミラー要素141−43がπ状態となり且つ第1ミラー要素141−41、第2ミラー要素141−42及び第4ミラー要素141−44が0状態となる組み合わせ#4である。16種類の組み合わせの一つは、第4ミラー要素141−44がπ状態となり且つ第1ミラー要素141−41から第3ミラー要素141−43が0状態となる組み合わせ#5である。16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41及び第2ミラー要素141−42がπ状態となり且つ第3ミラー要素141−43及び第4ミラー要素141−44が0状態となる組み合わせ#6である。16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41及び第3ミラー要素141−43がπ状態となり且つ第2ミラー要素141−42及び第4ミラー要素141−44が0状態となる組み合わせ#7である。16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41及び第4ミラー要素141−44がπ状態となり且つ第2ミラー要素141−42及び第3ミラー要素141−43が0状態となる組み合わせ#8である。16種類の組み合わせの一つは、第2ミラー要素141−42及び第3ミラー要素141−43がπ状態となり且つ第1ミラー要素141−41及び第4ミラー要素141−44が0状態となる組み合わせ#9である。16種類の組み合わせの一つは、第2ミラー要素141−42及び第4ミラー要素141−44がπ状態となり且つ第1ミラー要素141−41及び第3ミラー要素141−43が0状態となる組み合わせ#10である。16種類の組み合わせの一つは、第3ミラー要素141−43及び第4ミラー要素141−44がπ状態となり且つ第1ミラー要素141−41及び第2ミラー要素141−42が0状態となる組み合わせ#11である。16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41から第3ミラー要素141−43がπ状態となり且つ第4ミラー要素141−44が0状態となる組み合わせ#12である。16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41、第2ミラー要素141−42及び第4ミラー要素141−44がπ状態となり且つ第3ミラー要素141−43が0状態となる組み合わせ#13である。16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41、第3ミラー要素141−43及び第4ミラー要素141−44がπ状態となり且つ第2ミラー要素141−42が0状態となる組み合わせ#14である。16種類の組み合わせの一つは、第2ミラー要素141−42から第4ミラー要素141−44がπ状態となり且つ第1ミラー要素141−41が0状態となる組み合わせ#15である。16種類の組み合わせの一つは、第1ミラー要素141−41から第4ミラー要素141−44の全てがπ状態となる組み合わせ#16である。
従って、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数のそれぞれが取り得る値は、組み合わせ#1に対応する反射振幅r(0、0、0、0)、組み合わせ#2に対応する反射振幅r(π、0、0、0)、組み合わせ#3に対応する反射振幅r(0、π、0、0)、組み合わせ#4に対応する反射振幅r(0、0、π、0)、組み合わせ#5に対応する反射振幅r(0、0、0、π)、組み合わせ#6に対応する反射振幅r(π、π、0、0)、組み合わせ#7に対応する反射振幅r(π、0、π、0)、組み合わせ#8に対応する反射振幅r(π、0、0、π)、組み合わせ#9に対応する反射振幅r(0、π、π、0)、組み合わせ#10に対応する反射振幅r(0、π、0、π)、組み合わせ#11に対応する反射振幅r(0、0、π、π)、組み合わせ#12に対応する反射振幅r(π、π、π、0)、組み合わせ#13に対応する反射振幅r(π、π、0、π)、組み合わせ#14に対応する反射振幅r(π、0、π、π)、組み合わせ#15に対応する反射振幅r(0、π、π、π)、組み合わせ#16に対応する反射振幅r(π、π、π、π)のいずれかとなる。このため、CPU21は、空間光変調器14に関連する設計変数を設定又は調整する場合には、ウェハ161に転写するべきデバイスパターン等に応じて、N4個の設計変数のそれぞれを、これら16種類の反射振幅のいずれかに設定する。
但し、条件によっては、上述した16種類の反射振幅のうちの少なくとも2つが同一になる場合がある。この場合、CPU21は、同一になる2種類以上の反射振幅のいずれか一つを用いてもよい。
CPU21は、費用関数CFが終了条件を満たすように空間光変調器14に関連する設計変数を調整することで、空間光変調器14に関連するN4個の設計変数を決定する。空間光変調器14に関連するN4個の設計変数が決定されると、N4個のミラー群140−4を構成するN4×4個のミラー要素141の状態が決定される。その結果、CPU21は、複数のミラー要素141の状態の分布を規定する変調パターン情報を生成することができる。
空間光変調器14に関連する設計変数の第5具体例が用いられる場合においても、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例が用いられる場合に享受可能な効果が好適に享受可能である。加えて、第5具体例では、単一のミラー要素141の外縁に沿って分布する隙間142のみならず、所定方向に沿って互いに隣接する2つのミラー要素141の間の隙間142をも考慮した反射振幅が設計変数として用いられる。特に、第5具体例では、ただ一つの方向に沿って互いに隣接する2つのミラー要素141の間の隙間142のみならず、相異なる複数の方向に沿ってそれぞれ互いに隣接する2つのミラー要素141の間の隙間142をも考慮した反射振幅が設計変数として用いられる。例えば、第5具体例では、X軸方向に沿って互いに隣接する2つのミラー要素141の間の隙間142、Y軸方向に沿って互いに隣接する2つのミラー要素141の間の隙間142並びにX軸方向若しくはY軸方向に交わる斜め方向(例えば、ミラー要素141の対角方向)に沿って互いに隣接する2つのミラー要素141の間の隙間142をも考慮した反射振幅が設計変数として用いられる。このため、所望のデバイスパターンをウェハ161により一層好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。
(2−3−6)空間光変調器に関連する設計変数の第6具体例
続いて、図13を参照しながら、空間光変調器14に関連する設計変数の第6具体例について説明する。図13は、空間光変調器14に関連する設計変数の第6具体例を規定するミラー群140−1を示す平面図である。
空間光変調器14に関連する設計変数の第6具体例は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例と比較して、CPU21が、単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を、2つのミラー要素141を含むミラー群140−2の反射振幅を用いて特定するという点で異なっている。空間光変調器14に関連する設計変数の第6具体例のその他の構成要件は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例のその他の構成要件と同一であってもよい。このため、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例の構成要件と同一の構成要件については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
具体的には、図13に示すように、第1ミラー要素141−1を含むミラー群140−1は、第1ミラー要素141−1及び第1ミラー要素141−1に隣接し且つ第1ミラー要素141−1の−Y方向側に位置する第2ミラー要素141−2を含むミラー群140−2#1に包含される。同様に、第1ミラー要素141−1を含むミラー群140−1は、第1ミラー要素141−1及び第1ミラー要素141−1に隣接し且つ第1ミラー要素141−1の−X方向側に位置する第3ミラー要素141−3を含むミラー群140−2#2に包含される。同様に、第1ミラー要素141−1を含むミラー群140−1は、第1ミラー要素141−1及び第1ミラー要素141−1に隣接し且つ第1ミラー要素141−1の+Y方向側に位置する第4ミラー要素141−4を含むミラー群140−2#3に包含される。同様に、第1ミラー要素141−1を含むミラー群140−1は、第1ミラー要素141−1及び第1ミラー要素141−1に隣接し且つ第1ミラー要素141−1の+X方向側に位置する第5ミラー要素141−5を含むミラー群140−2#4に包含される。
第6具体例では、CPU21は、ミラー群140−1の反射振幅を特定するために、ミラー群140−2#1の反射振幅r#1、ミラー群140−2#2の反射振幅r#2、ミラー群140−2#3の反射振幅r#3及びミラー群140−2#4の反射振幅r#4の平均値を算出する。CPU21は、算出した平均値を、ミラー群140−1の反射振幅として取り扱う。つまり、CPU21は、ミラー群140−1の反射振幅=(r#1+r#2+r#3+r#4)/4という数式を用いて、ミラー群140−1の反射振幅を特定する。
例えば、図13に示す例では、第1ミラー要素141−1が0状態にあり、第2ミラー要素141−2がπ状態にあり、第3ミラー要素141−3が0状態にあり、第4ミラー要素141−4がπ状態にあり、第5ミラー要素141−5が0状態にある。このため、ミラー群140−2#1の反射振幅は、反射振幅r(0、π)となり、ミラー群140−2#2の反射振幅は、反射振幅r(0、0)となり、ミラー群140−2#3の反射振幅は、反射振幅r(0、π)となり、ミラー群140−2#4の反射振幅は、反射振幅r(0、0)となる。このため、図13に示す例では、ミラー群140−1の反射振幅は、(r(0、π)+r(0、0)+r(0、π)+r(0、0))/4となる。
空間光変調器14に関連する設計変数の第6具体例が用いられる場合においても、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例が用いられる場合に享受可能な効果が好適に享受可能である。
尚、CPU21は、ミラー群140−2#1からミラー群140−2#4のうちの少なくとも一つの反射振幅に対して重み付け係数を掛け合わせた上で、ミラー群140−2#1からミラー群140−2#4の反射振幅の平均値を算出してもよい。例えば、ミラー群140#1の反射振幅r#1に対応する重み付け係数をw#1とし、ミラー群140#2の反射振幅r#2に対応する重み付け係数をw#2とし、ミラー群140#3の反射振幅r#3に対応する重み付け係数をw#3とし、ミラー群140#4の反射振幅r#4に対応する重み付け係数をw#4とすると、CPU21は、ミラー群140−1の反射振幅=(r#1×w#1+r#2×w#2+r#3×w#3+r#4×w#4)/4という数式を用いて、ミラー群140−1の反射振幅を特定してもよい。
CPU21は、ミラー群140−2#1からミラー群140−2#4の反射振幅を変数とする任意の関数Fを用いて、ミラー群140−1の反射振幅を特定してもよい。つまり、CPU21は、ミラー群140−1の反射振幅=F(r#1、r#2、r#3、r#4)という数式を用いて、ミラー群140−1の反射振幅を特定してもよい。
CPU21は、単一のミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を、M1(但し、M1は2以上の整数)個のミラー要素141を含むミラー群140の反射振幅を用いて特定してもよい。CPU21は、2つのミラー要素141を含むミラー群140−2の反射振幅を、M2(但し、M2は3以上の整数)個のミラー要素141を含むミラー群140の反射振幅を用いて特定してもよい。CPU21は、L(但し、Lは1以上の整数)個のミラー要素141を含むミラー群140の反射振幅を、M3(但し、M3はL<Mを満たす整数)個のミラー要素141を含むミラー群140−M3の反射振幅を用いて特定してもよい。
(2−3−7)空間光変調器に関連する設計変数の第7具体例
続いて、空間光変調器14に関連する設計変数の第7具体例について説明する。空間光変調器14に関連する設計変数の第7具体例は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例と比較して、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅として、欠陥を考慮した反射振幅を用いるという点で異なっている。空間光変調器14に関連する設計変数の第7具体例のその他の構成要件は、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例のその他の構成要件と同一であってもよい。このため、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例の構成要件と同一の構成要件については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
上述したように、通常、ミラー群140の反射振幅を示す設計変数は、反射振幅r(0)及びr(π)のいずれかに設定される。しかしながら、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1(以降、適宜“欠陥ミラー群140−1”と称する)の反射振幅は、反射振幅r(0)及びr(π)とは異なる値となる可能性がある。このため、仮に欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数が反射振幅r(0)及びr(π)のいずれかに一律に設定されてしまうと、所望のデバイスパターンをウェハ161に好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成されない可能性がある。
そこで、第7具体例では、CPU21は、欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数を、欠陥を考慮した反射振幅r(defect)に設定する。もちろん、欠陥ミラー群140−1の反射振幅が反射振幅r(0)及びr(π)のいずれかと一致する場合には、CPU21は、欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数を、反射振幅r(0)及びr(π)のいずれかに設定してもよい。尚、CPU21は、反射振幅r(0)及びr(π)と同様に、シミュレーションモデル等を用いて反射振幅r(defect)を特定可能である。
第7具体例では、欠陥が生じているミラー要素141及び欠陥が生じていないミラー要素141を介した光の振幅(言い換えれば、光の状態又は特性)を例えば設計値である所望の振幅に調整するために、CPU21は、欠陥が生じているミラー要素141の状態に関する情報を用いて、各ミラー要素141の状態を所定状態にするための駆動量を求めているとも言える。すなわち、第7具体例では、CPU21は、欠陥が生じているミラー要素141の欠陥の状態に関する欠陥情報を得て、欠陥情報を用いて、欠陥が生じているミラー要素141及び欠陥が生じていないミラー要素141からの光の振幅を所望の振幅に調整するために、欠陥が生じているミラー要素141の状態を第1の状態(0状態又はπ状態)にするための駆動信号を求めると共に、欠陥が生じていないミラー要素141の状態を第2の状態(0状態又はπ状態)にするための駆動信号を求めているとも言える。
空間光変調器14に関連する設計変数の第7具体例が用いられる場合においても、空間光変調器14に関連する設計変数の第1具体例が用いられる場合に享受可能な効果が好適に享受可能である。加えて、第7具体例では、ミラー要素141に欠陥が生じている場合には、当該欠陥を考慮した反射振幅が設計変数として用いられる。このため、ミラー要素141に欠陥が生じている場合であっても、所望のデバイスパターンをウェハ161により一層好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。
尚、ミラー要素141に生ずる欠陥の一例として、反射面141aの少なくとも一部が欠ける欠陥が挙げられる。ミラー要素141に生ずる欠陥の一例として、ミラー要素141が固着する(つまり、動かなくなる)欠陥があげられる。このとき、ミラー要素141は、反射面141aが基準平面A1又は変位平面A2に一致した状態で固着する可能性がある。或いは、ミラー要素141は、反射面141aが基準平面A1及び変位平面A2とは異なる任意の平面に一致した状態で固着する可能性がある。任意の平面は、基準平面A1より上方に位置していてもよいし、基準平面A1と変位平面A2との間に位置していてもよいし、変位平面A2よりも下方に位置していてもよい。ミラー要素141に生ずる欠陥の一例として、反射面141aを基準平面A1又は変位平面A2に一致させるようにヒンジ部144が撓むことができない欠陥があげられる。
また、ミラー要素141に生じる欠陥の一例として、ミラー要素141の動作ストロークが設計値d1からずれる欠陥(ストローク誤差の発生)があげられる。ミラー要素141に生じる欠陥の一例として、0状態又はπ状態にあるミラー要素141が基準平面A1又は変位平面A2に対して傾斜した状態となる欠陥(姿勢誤差の発生)があげられる。ミラー要素141に生じる欠陥の一例として、ミラー要素141の反射面141aの変形や欠如、表面荒れ等に起因して反射率が設計値や初期値から外れる欠陥(反射率誤差の発生)があげられる。ミラー要素141に生じる欠陥の一例として、ミラー要素141の反射面141aの反射率が空間光変調器14上での位置に依存して変化する欠陥があげられる。ミラー要素141に生じる欠陥の一例として、ミラー要素141で反射される光の位相が設計値や初期値から変化してしまう欠陥があげられる。
欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数は、反射振幅r(defect)に固定されてもよい。つまり、費用関数CFが終了条件を満たすように設計変数が調整されるときに、欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数が調整されなくてもよい。この場合、調整するべき設計変数の数が減少するがゆえに、設計変数の調整に要する処理負荷が低減する。特に、ミラー要素141が固着する(つまり、動かなくなる)欠陥が生じている場合には、欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数を反射振幅r(defect)に固定することが有効である。尚、ミラー要素141の反射面141aが基準平面A1に一致している状態でミラー要素141が固着している場合には、反射振幅r(defect)は、r(0)に一致する。ミラー要素141の反射面141aが変位平面A2に一致している状態でミラー要素141が固着している場合には、反射振幅r(defect)は、r(π)に一致する。
CPU21は、欠陥ミラー群140−1に関する欠陥情報(或いは、欠陥が生じているミラー要素141に関する欠陥情報)を取得すると共に、当該取得した情報に基づいて、欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数を設定又は調整してもよい。例えば、欠陥ミラー群140−1に関する欠陥情報の一例として、欠陥が生じているミラー要素141を識別する第1欠陥情報があげられる。この場合、CPU21は、第1欠陥情報に基づいて、欠陥が生じているミラー要素141を含む欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数を、反射振幅r(defect)に設定してもよい。例えば、欠陥ミラー群140−1に関する欠陥情報の一例として、生じている欠陥の種類を示す第2欠陥情報があげられる。この場合、CPU21は、第2欠陥情報に基づいて、欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数を、ミラー要素141に生じている欠陥の種類に応じて適切に設定されたシミュレーションモデル等を用いて特定された適切な反射振幅r(defect)に設定してもよい。例えば、欠陥ミラー群140−1に関する欠陥情報の一例として、欠陥が生じているミラー要素141を介してウェハ161に転写されたデバイスパターンの状態を示す第3欠陥情報があげられる。特に、第3欠陥情報は、欠陥が生じているミラー要素141の状態を変更するように空間光変調器14が制御された場合にウェハ161に転写されたデバイスパターンの状態(つまり、ミラー要素141の状態の変更に起因したデバイスパターンの状態の変化)を示していてもよい。この場合、CPU21は、第3欠陥情報に基づいて、転写されたデバイスパターンの状態が理想的な又は設計上許容される状態にあるか否かを判定してもよい。更に、CPU21は、転写されたデバイスパターンの状態が理想的な又は設計上許容される状態にない場合には、当該デバイスパターンの転写に寄与したミラー要素141に欠陥が生じていると判定してもよい。更に、デバイスパターンの転写に寄与したミラー要素141に欠陥が生じていると判定された場合には、CPU21は、第3欠陥情報に基づいて、生じている欠陥の種類又は程度(例えば、ミラー要素141が固着しているか否か、反射面141aがどの平面に一致するように固着しているか等)を特定してもよい。更に、デバイスパターンの転写に寄与したミラー要素141に欠陥が生じていると判定された場合には、CPU21は、当該ミラー要素141を含む欠陥ミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数を、反射振幅r(defect)に設定してもよい。
(2−3−8)空間光変調器に関連する設計変数の第8具体例
続いて、図14を参照しながら、空間光変調器14に関連する設計変数の第8具体例について説明する。図14は、空間光変調器14が備える複数のミラー要素141の状態を示す平面図である。
上述の図3(a)から図3(c)を用いて説明したように、本実施形態では、一の露光対象面110の少なくとも一部は、隣接する他の露光対象面110の少なくとも一部と重なっていてもよい。例えば、一の露光対象面110の少なくとも一部は、Y軸方向に沿って隣接する他の露光対象面110の少なくとも一部と重なってもよい。この場合には、ウェハ161に転写するべきデバイスパターンは、複数回の露光によってウェハ161に転写される。従って、空間光変調器14を構成する複数のミラー要素141の状態分布は、ウェハ161に転写するべきデバイスパターンに応じて、パルス発光毎にY軸方向に沿って所定ステップ量ずつ移動する。例えば、図14に示すように、ラインアンドスペースパターンに対応する複数のミラー要素141の状態分布が、Y軸方向に沿って所定ステップ量ずつ移動する。尚、所定ステップ量は、露光対象面110の移動量(言い換えれば、ウェハステージ16の移動量)に対応する。具体的には、所定ステップ量は、露光対象面110の移動量(言い換えれば、ウェハステージ16の移動量)を投影光学系15の投影倍率で除算することで得られる値に相当する。
このため、欠陥が生じているミラー要素141が存在する場合には、デバイスパターンの少なくとも一部が転写されるウェハ161上のある領域部分における空間像(つまり、ウェハ161上での露光光EL3の強度分布)は、欠陥が生じているミラー要素141が反射した光に起因する空間像及び欠陥が生じていないミラー要素141が反射した光に起因する空間像の和となる。
具体的には、図14に示すように、空間光変調器14が備えるあるミラー要素141−81に欠陥が生じているものとする。この場合、図14の左側の図に示すように、k−1(但し、kは2以上の整数)回目のパルス発光による露光が行われるタイミングで、デバイスパターンのうちの第1パターン部分が転写されるウェハ161上の第1領域部分が、ミラー要素141−81を介して露光されるものとする。一方で、ミラー要素141−81からスキャン方向(つまり、ウェハステージ16の移動方向であり、複数のミラー要素141の状態分布の移動方向であり、図14では−Y軸方向)とは逆方向側に向かって所定ステップ量だけ離れた位置に位置するミラー要素141−82に着目する。すると、k−1回目のパルス発光による露光が行われるタイミングで、デバイスパターンのうちの第2パターン部分が転写されるウェハ161上の第2領域部分は、ミラー要素141−82を介して露光される。
続いて、図14の右側の図に示すように、k回目のパルス発光による露光が行われるタイミングで、デバイスパターンのうちの第2パターン部分が転写されるウェハ161上の第2領域部分は、ミラー要素141−81を介して露光される。つまり、デバイスパターンのうちの第2パターン部分が転写されるウェハ161上の第2領域部分における空間像は、欠陥が生じているミラー要素141−81が反射した光に起因した空間像及びミラー要素141−81からスキャン方向とは逆方向側に向かって所定ステップ量だけ離れた位置に位置する欠陥が生じていないミラー要素141−82が反射した光に起因した空間像の和となる。
更には、k回目のパルス発光による露光が行われるタイミングで、デバイスパターンのうちの第1パターン部分が転写されるウェハ161上の第1領域部分が、ミラー要素141−81からスキャン方向側に向かって所定ステップ量だけ離れた位置に位置するミラー要素141−83を介して露光される。つまり、デバイスパターンのうちの第1パターン部分が転写されるウェハ161上の第1領域部分における空間像は、欠陥が生じているミラー要素141−81が反射した光に起因した空間像及びミラー要素141−81からスキャン方向側に向かって所定ステップ量だけ離れた位置に位置する欠陥が生じていないミラー要素141−83が反射した光に起因した空間像の和となる。
このような場合、上述した第7具体例では、欠陥が生じているミラー要素141(例えば、図14中のミラー要素141−81)を含むミラー群140−1の反射振幅として、欠陥を考慮した反射振幅が用いられる。その結果、上述したように、欠陥が生じているミラー要素141が反射した光に起因した空間像及び欠陥が生じているミラー要素141からスキャン方向側又はスキャン方向とは逆方向側に向かって所定ステップ量だけ離れた位置に位置する欠陥が生じていないミラー要素141が反射した光に起因した空間像の和が、所望のデバイスパターンをウェハ161に転写するために用いられる理想的な空間像と一致するように、空間光変調器14に関連する設計変数が好適に調整される。その結果、所望のデバイスパターンをウェハ161に好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。
一方で、第8具体例では、欠陥が生じているミラー要素141から所定ステップ量だけ離れた位置に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅が、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅と同じ値に一律に固定される。つまり、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅のみならず、欠陥が生じているミラー要素141から所定ステップ量だけ離れた位置に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅としても、欠陥を考慮した反射振幅r(defect)が用いられる。
つまり、実質的には、欠陥が生じているミラー要素141から所定ステップ量だけ離れた位置に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数は、ウェハ161に転写するべきデバイスパターンとは無関係に、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数に基づいて設定される。欠陥が生じているミラー要素141から所定ステップ量だけ離れた位置に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数は、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数と同じ値に一律に固定される。
具体的には、図14に示す例で言えば、ミラー要素141−82を含むミラー群140−1の反射振幅及びミラー要素141−83を含むミラー群140−1の反射振幅のそれぞれは、ミラー要素141−81を含むミラー群140−1の反射振幅r(defect)に固定される。
空間光変調器14に関連する設計変数の第8具体例のその他の構成要件は、空間光変調器14に関連する設計変数の第7具体例のその他の構成要件と同一であってもよい。このため、空間光変調器14に関連する設計変数の第7具体例の構成要件と同一の構成要件については、同一の参照符号を付することでその詳細な説明を省略する。
空間光変調器14に関連する設計変数の第8具体例が用いられる場合においても、空間光変調器14に関連する設計変数の第7具体例が用いられる場合に享受可能な効果が好適に享受可能である。
加えて、第8具体例では、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数及び欠陥が生じているミラー要素141から所定ステップ量だけ離れた位置に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数が、r(defect)に固定される。このため、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を示す及び欠陥が生じているミラー要素141から所定ステップ量だけ離れた位置に位置するミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅を示す設計変数は、調整されなくてもよくなる。この場合、調整するべき設計変数の数が減少するがゆえに、設計変数の調整に要する処理負荷が低減する。
尚、第7具体例及び第8具体例では、ミラー群140−1の反射振幅は、ミラー群140−1の中の隙間142を介した露光光EL2の反射を考慮しない反射振幅であってもよい。ミラー群140−1の反射振幅は、ミラー群140−1が含むミラー要素141の反射面141aを介した露光光EL2の反射のみを考慮した反射振幅であってもよい。例えば、欠陥が生じていないミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅は、上述した理想的な又は理論的な反射振幅(例えば、+1又は−1)に設定されてもよい。用いられてもよい。例えば、欠陥が生じているミラー要素141を含むミラー群140−1の反射振幅は、上述した理想的な若しくは理論的な反射振幅又は欠陥を考慮するものの隙間142を介した露光光EL2の反射を考慮しない反射振幅r(defect)に設定されてもよい。
(2−4)費用関数の変形例
続いて、費用関数CFの変形例について説明する。変形例に係る費用関数CF’は、いわゆるMEEF(Mask Error Enhancement Factor)項を含んでいる。MEEF項の一例は、数式7及び数式8に示される。従って、変形例に係る費用関数CF’は、例えば数式9によって示される。
変形例に係る費用関数CF’が用いられる場合においても、上述した費用関数CFが用いられる場合に享受可能な効果が好適に享受可能である。加えて、費用関数がMEEF項を含んでいるため、ミラー要素141に欠陥が生じている場合であっても、所望のデバイスパターンをウェハ161に好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。
尚、変形例に係る費用関数CF’が用いられる場合には、ミラー要素141に欠陥が生じている場合であっても、上述した設計変数の第7具体例又は第8具体例が用いられなくてもよい。言い換えれば、変形例に係る費用関数CF’が用いられる場合には、上述した設計変数の第7具体例又は第8具体例が用いられなくても、所望のデバイスパターンをウェハ161に好適に転写することが可能な変調パターン情報が生成される。
尚、図1から図14を用いて説明した露光装置1及びパターン設計装置2の構成及び動作は一例である。従って、露光装置1及びパターン設計装置2の構成及び動作の少なくとも一部が適宜改変されてもよい。以下、露光装置1及びパターン設計装置2の構成及び動作の少なくとも一部の改変の例について説明する。
上述の説明では、露光装置1は、液体を介することなくウェハ161を露光するドライタイプの露光装置である。しかしながら、露光装置1は、露光光EL3の光路を含む液浸空間を投影光学系15とウェハ161との間に形成すると共に、投影光学系15及び液浸空間を介してウェハ161を露光する液浸露光装置であってもよい。尚、液浸露光装置の一例は、例えば、援用によって本願明細書に取り込まれる欧州特許出願公開第1,420,298号明細書、国際公開第2004/055803号及び米国特許第6,952,253号明細書等に開示されている。
露光装置1は、複数のウェハステージ16を備えるツインステージ型又はマルチステージ型の露光装置であってもよい。露光装置1は、複数のウェハステージ16及び計測ステージを備えるツインステージ型又はマルチステージ型の露光装置であってもよい。ツインステージ型の露光装置の一例は、例えば、援用によって本願明細書に取り込まれる米国特許第6,341,007号、米国特許第6,208,407号及び米国特許第6,262,796号に開示されている。
投影光学系15は、等倍系又は拡大系であってもよい。投影光学系15は、屈折光学素子を含む一方で反射光学素子を含まない屈折系であってもよい。投影光学系15は、屈折光学素子を含まない一方で反射光学素子を含む反射系であってもよい。投影光学系15は、屈折光学素子及び反射光学素子の双方を含む屈折反射系であってもよい。投影光学系15が投影する像は、倒立像であってもよいし、正立像であってもよい。
光源11は、露光光EL1として、波長が193nmであるArFエキシマレーザ光とは異なる任意の光を射出してもよい。例えば、光源11は、波長が248nmであるKrFエキシマレーザ光等の遠紫外光(DUV光:Deep Ultra Violet光)を射出してもよい。光源11は、F2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光:Vacuum Ultra Violet光)を射出してもよい。光源11は、所望の波長を有する任意のレーザ光又はその他任意の光(例えば、水銀ランプから射出される輝線であり、例えば、g線、h線若しくはi線等)を射出してもよい。光源11は、米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(或いは、エルビウムとイットリウムの双方)がドープされたファイバアンプで増幅すると共に非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換することで得られる高調波を射出してもよい。光源11は、波長が100nm以上の光に限らず、波長が100nm未満の光を射出してもよい。例えば、光源11は、軟X線領域(例えば、5から15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultra Violet)光を射出してもよい。露光装置1は、光源11に加えて又は代えて、露光光EL1として用いることが可能な電子線ビームを射出する電子線ビーム源を備えていてもよい。露光装置1は、光源11に加えて又は代えて、YAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を生成する固体パルスレーザ光源を備えていてもよい。固体パルスレーザ光源は、露光光EL1として用いることが可能な波長が193nm(これ以外の種々の波長、例えば213nm、266nm、355nm等の波長が可能)でパルス幅1ns程度のパルスレーザ光を1〜2MHz程度の周波数で射出可能である。露光装置1は、光源11に加えて又は代えて、露光光EL1として用いることが可能な任意のエネルギビームを射出するビーム源を備えていてもよい。
デバイスパターンが転写される物体は、ウェハ161に限らず、ガラス板や、セラミック基板や、フィルム部材や、マスクブランクス等の任意の物体であってもよい。露光装置1は、ウェハ161に半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置であってもよい。露光装置1は、液晶表示素子製造用の又はディスプレイ製造用の露光装置であってもよい。露光装置1は、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(例えば、CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ及びフォトリソグラフィーに用いられるマスク若しくはレチクルのうちの少なくとも一つを製造するための露光装置であってもよい。
上述の露光装置1は、上述の各種構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度及び光学的精度を保つように組み合わせることで製造されてもよい。機械的精度を保つために、組み合わせの前後において、機械的精度を達成するための調整処理が各種機械系に行われてもよい。電気的精度を保つために、組み合わせの前後において、電気的精度を達成するための調整処理が各種電気系に行われてもよい。光学的精度を保つために、組み立ての前後において、光学的精度を達成するための調整処理が各種光学系に行われてもよい。各種サブシステムを組み合わせる工程は、各種サブシステムの間の機械的接続を行う工程を含んでいてもよい。各種サブシステムを組み合わせる工程は、各種サブシステムの間の電気回路の配線接続を行う工程を含んでいてもよい。各種サブシステムを組み合わせる工程は、各種サブシステムの間の気圧回路の配管接続を行う工程を含んでいてもよい。尚、各種サブシステムを組み合わせる工程の前に、各種サブシステムのそれぞれを組み立てる工程が行われる。各種サブシステムを組み合わせる工程が終了した後には、総合調整が行われることで露光装置1の全体としての各種精度が確保される。尚、露光装置1の製造は、温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行われてもよい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図15に示す各ステップを経て製造されてもよい。マイクロデバイスを製造するためのステップは、マイクロデバイスの機能及び性能設計を行うステップS201、機能及び性能設計に基づく設計変数の調整を行うステップS202(上述の図5参照)、デバイスの基材であるウェハ161を製造するステップS203、空間光変調器14が露光光EL2を反射することで得られる露光光EL3を用いてウェハ161を露光し且つ露光されたウェハ161を現像するステップS204、デバイス組み立て処理(ダイシング処理、ボンディング処理、パッケージ処理等の加工処理)を含むステップS205及びデバイスの検査を行うステップS206を含んでいてもよい。
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した露光装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う制御装置及び方法、露光装置及び露光方法、デバイス製造方法、データ生成方法、並びに、プログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。