JP6671553B1 - 回転電機 - Google Patents

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Abstract

ステータコアを有するステータと、上記ステータコアとの間に空隙を介して上記ステータコアと同軸に配置されるロータコア、および上記ロータコアに埋め込まれて周方向に等角ピッチで配置された、複数の、1磁極を構成する永久磁石群を有するロータと、を備え、フラックスバリアが、上記1磁極を構成する永久磁石群のなかの、周方向に隣り合う1組の永久磁石間に形成され、一対のリブが、上記隣り合う1組の永久磁石と上記フラックスバリアとの間の上記ロータコアの領域により構成され、上記1磁極を構成する永久磁石群から発生する磁束を上記ロータの回転方向に偏らせるための第1スリットが、上記1磁極を構成する永久磁石群の径方向の上記空隙側の上記ロータコアの領域に形成され、上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部が、上記一対のリブの延長線間に位置している。

Description

この発明は、回転電機に関し、特に永久磁石を有するロータを備える回転電機に関するものである。
産業用回転電機および電気自動車、ハイブリッド自動車用回転電機には、小型化・高出力化に有利な永久磁石式回転電機が多く採用されている。この永久磁石式回転電機のうち、永久磁石がロータコアの中に埋め込まれる構造である場合には、永久磁石からの磁石磁束によって発生する磁石トルクと、ロータコアの磁気抵抗に起因するリラクタンス磁束によって発生するリラクタンストルクとの2種類のトルクを得ることができる。そして、最終的な回転電機のトルクは、その2種類のトルクの合成トルクとなる。
しかし、このように構成された永久磁石式回転電機においては、上記2種類のトルクがピーク値をとる電流位相角がそれぞれ異なるという特徴がある。そのため、2種類のトルクの合成トルクのピーク値をとる電流位相角が、2種類のトルクのそれぞれのピーク値をとる電流位相角から外れる。その結果、2種類のトルクの合成トルクのピーク値が、2種類のトルクのピーク値の合計より小さくなる。
このような状況を鑑み、永久磁石からステータに向かう磁束をロータの回転方向に偏らせるためのスリットをロータコアに設けた構造が提案されていた(例えば、特許文献1)。
この特許文献1では、永久磁石からステータに向かう磁束が、スリットにより、ロータの回転方向に偏らされ、磁石トルクがピーク値をとる電流位相角が変化する。これにより、磁石トルクがピーク値をとる電流位相角とリラクタンストルクがピーク値をとる電流位相角との差が小さくなり、両者の合成トルクのピーク値が大きくなる。
特開平11−206046号公報
特許文献1では、永久磁石からステータに向かう磁束をロータの回転方向に偏らせるためのスリットが、ロータコアの永久磁石の外径側のコア領域に形成されていた。そのため、動作時に、遠心力が永久磁石に作用することにより、永久磁石とスリットとの間のロータコアの領域に発生する応力が高くなるという課題があった。
そこで、永久磁石とスリットとの間のコア領域に発生する応力を緩和するには、スリットの形状を大きくする、または永久磁石とスリットとの間の間隔を広くする必要があった。しかしながら、スリットの形状を大きくした場合には、リラクタンストルクが発生するコア領域が狭くなり、リラクタンストルクが小さくなる。また、永久磁石とスリットとの間の間隔を広くした場合には、磁石トルクがピーク値をとる電流位相角をリラクタンストルクがピーク値をとる電流位相角に近づくように変化させることができなくなる。その結果、いずれの場合においても、合成トルクのピーク値が小さくなってしまう。
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ロータコアの領域に発生する応力を低減しつつ、磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルクのピーク値を大きくできる回転電機を得ることを目的とする。
この発明による回転電機は、ステータコア、およびステータコイルを有するステータと、上記ステータコアとの間に空隙を介して上記ステータコアと同軸に配置されるロータコア、および上記ロータコアに埋め込まれて周方向に等角ピッチで配置された、複数の、1磁極を構成する永久磁石群を有するロータと、を備え、フラックスバリアが、上記1磁極を構成する永久磁石群のなかの、周方向に隣り合う1組の永久磁石間に形成され、一対のリブが、上記隣り合う1組の永久磁石と上記フラックスバリアとの間の上記ロータコアの領域により構成され、上記1磁極を構成する永久磁石群から発生する磁束を上記ロータの回転方向に偏らせるための第1スリットが、上記1磁極を構成する永久磁石群の径方向の上記空隙側の上記ロータコアの領域に形成され、上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部が、上記一対のリブの延長線間に位置している。
この発明によれば、上記の構成をとるので、ロータコアの領域に発生する応力を低減しつつ、合成トルクのピーク値を大きくできる回転電機を得ることができる。
この発明の実施の形態1に係る回転電機を示す縦断面図である。 図1のII−II矢視断面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機におけるロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機の無通電状態における電気角1周期分の磁石磁束によるギャップ磁束密度分布を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機における、電流値一定の条件下での電流位相角に対するトルクの変化を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機におけるロータにおける応力解析結果のミーゼス応力分布図である。 比較例のロータにおける応力解析結果のミーゼス応力分布図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機における電流値一定の条件下での電流位相角に対するトルクの変化を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機における第1変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機における第2変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機における第3変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機における第4変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態1に係る回転電機における第5変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態2に係る回転電機を示す横断面図である。 この発明の実施の形態2に係る回転電機におけるロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態3に係る回転電機を示す縦断面図である。 この発明の実施の形態3に係る回転電機における第1ロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態3に係る回転電機における第2ロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態4に係る回転電機を示す横断面図である。 この発明の実施の形態5に係る回転電機におけるロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。 この発明の実施の形態6に係る回転電機を示す横断面図である。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る回転電機を示す縦断面図、図2は、図1のII−II矢視断面図である。なお、縦断面図とは、回転軸の軸心を含む断面を示す断面図である。図2では、フレームおよびコイルエンドが省略されている。また、本明細書においては、便宜上、回転軸の軸心と平行な方向を軸方向、回転軸の軸心を中心として、回転軸の軸心と直交する方向を径方向、回転軸を中心として回転する方向を周方向とする。図中、Rは回転軸の回転方向である。
図1および図2において、回転電機1は、円筒状のフレーム2と、フレーム2の軸方向の両端に装着されて、フレーム2の軸方向両側の開口を塞ぐ一対の端板3と、一対の端板3に装着された軸受4に支持されて、フレーム2内に回転可能に設けられた回転軸5と、を備える。回転電機1は、回転軸5に固着されてフレーム2内に回転可能に設けられたロータ20と、フレーム2内に挿入、保持されて、ロータ20の外径側に同軸に設けられたステータ10と、をさらに備える。ロータ20とステータ10との間には、空隙Gが形成されている。
ステータ10は、円環状のステータコア11と、ステータコア11に装着されたステータコイル12と、を備える。ステータコア11は、円環状のコアバック110と、コアバック110の内周面から径方向内方に突出する複数のティース111と、を備え、例えば、電磁鋼板の薄板を軸方向に積層、一体化して構成される。ティース111は、周方向に等角ピッチで18本配列されており、隣り合うティース111間の領域がスロット112となる。ステータコイル12は、ティース111のそれぞれに導体線を巻き回して形成された集中巻コイル120により構成される。スロット112のそれぞれには、隣り合う集中巻コイル120が収納される。
ロータ20は、回転軸5と、軸心位置にシャフト挿入孔が形成された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外径側に埋め込まれた24個の永久磁石22と、を備える。ロータコア21は、シャフト挿入孔に挿入された回転軸5に固着される。ロータ20は、回転軸5の軸方向両端を軸受4に支持されて、フレーム2内に回転可能に設けられる。ロータコア21は、例えば、電磁鋼板の薄板を軸方向に積層、一体化して構成される。
ここで、ロータ20の磁極周りの構造について図3を参照しつつ説明する。図3は、この発明の実施の形態1に係る回転電機におけるロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。なお、横断面図とは、回転軸の軸心と直交する断面を示す断面図である。
ロータコア21の外径側には、ロータコア21を軸方向に貫通する磁石挿入穴23の対が、等角ピッチで周方向に12対形成されている。磁石挿入穴23の対は、周方向の間隔が外径側に向かって漸次広くなるV字状に配置されている。磁石挿入穴23は、断面長方形の穴形状に形成されている。なお、対をなす磁石挿入穴23の内径側の端部同士は、周方向に離れている。
永久磁石22は、磁石挿入穴23と同等の断面長方形の角柱体に構成されている。永久磁石22は、断面長方形の長辺で構成される面に直交するように着磁されている。これにより、永久磁石22の断面長方形の長辺で構成される第1の面がN極となり、第1の面と反対側の第2の面がS極となる。永久磁石22は、磁石挿入穴23の各対に同じ極性が外径側を向くように、かつ隣り合う磁石挿入穴23の対に異なる極性が外径側を向くように挿入、保持される。すなわち、周方向間隔が空隙G側に漸次広がるV字状に配置された永久磁石22の対が、1磁極を構成する。そして、1磁極を構成する永久磁石22の対が、ロータコア21の外径側に埋め込まれて、周方向に等角ピッチで12対配列されている。これにより、ロータ20には、12極の磁極が形成される。
第1フラックスバリア24が、磁石挿入穴23の断面長方形の短辺で構成される外径側の面を磁石挿入穴23の断面長方形の長辺の長さ方向に張り出させて形成されている。磁石端フラックスバリアとしての第2フラックスバリア25が、磁石挿入穴23の断面長方形の短辺で構成される内径側の面を磁石挿入穴23の断面長方形の長辺の長さ方向に張り出させて形成されている。第3フラックスバリア26が、磁石挿入穴23の対の第2フラックスバリア25間の位置に形成されている。第1、第2および第3フラックスバリア24,25,26は、それぞれ、ロータコア21を軸方向に貫通するように形成されている。
ここで、周方向に隣り合う第2フラックスバリア25および第3フラックスバリア26の一部が、回転軸5の軸心から同一径方向距離に位置している。当該位置において、第2フラックスバリア25と第3フラックスバリア26との間のコア領域が、リブ27となる。また、第1フラックスバリア24とロータコア21の外周面との間のコア領域が、ブリッジ28となる。
第1スリット29が、V字状に配置された永久磁石22の対の外径側に位置するロータコア21のコア領域に形成されている。第1スリット29は、第3フラックスバリア26の近傍からロータコア21の外周面の近傍に至るように、直線帯状に延びている。第1スリット29は、回転方向Rに対して前方に傾斜し直線状に延びている。第1スリット29の内径側端部、すなわち第3フラックスバリア26側の端部は、一対のリブ27の延長線間に位置している。第1スリット29の外径側端部、すなわち空隙G側の端部は、ロータコア21の外周面の近傍に位置している。なお、第1スリット29は、ロータコア21を軸方向に貫通するように形成されてもよく、軸方向に貫通しないように軸方向の途中までの深さに形成されてもよい。また、第1スリット29の最小幅部は、リブ27の周方向の幅より狭くなっている。これにより、リブ27の周辺の応力を低減できる。
第1スリット29は、中空である。空気は、ロータコア21より透磁率が低い。そこで、第1スリット29は、V字状に配置された永久磁石22の対の外径側のコア領域のなかで、低透磁率領域となる。なお、第1スリット29内に、ロータコア21より透磁率の低い樹脂、放熱材などを充填してもよい。これにより、ロータコア21の強度が高められる。また、ロータコア21および永久磁石22の冷却効果が高められる。
このように構成された回転電機1では、ステータ10のスロット112の数が18、ロータ20の極数が12である。すなわち、回転電機1は、極−スロット数が2対3系のインナーロータ型の回転電機である。回転電機1は、力行運転に用いられることを想定している。力行運転とは、ステータコイル12に通電した電気エレルギーをロータ20が回転する運動エレルギーに変換する運転を指す。このとき、回転電機1は、電動機として動作する。ステータコイル12に通電することによってロータ20に作用する周方向の力は、ロータ20の回転方向Rと同じである。なお、力行運転は、本発明の本旨ではないので、その詳細な説明は省略する。
第1フラックスバリア24は、磁石挿入穴23から断面長方形の長辺の長さ方向の外径側に張り出して形成されている。第2フラックスバリア25は、磁石挿入穴23から断面長方形の長辺の長さ方向の内径側に張り出して形成されている。第3フラックスバリア26が、第2フラックスバリア25間に形成されている。そこで、第1フラックスバリア24とロータコア21の外周面との間のブリッジ28の径方向幅が狭められる。また、第2フラックスバリア25と第3フラックスバリア26との間のリブ27の周方向幅が狭められる。これにより、永久磁石22からリブ27およびブリッジ28を介して永久磁石22に戻る、ロータコア21内で閉じた磁路を流れる磁石磁束31の流れが抑制される。その結果、空隙Gを介してステータ10に鎖交する磁石磁束31の量が多くなる。
第1スリット29は、第3フラックスバリア26の近傍からロータコア21の外周面の近傍に至るように、直線状に延びている。第1スリット29は、回転方向Rの前方、すなわち進み側に傾斜している。第1スリット29の内径側端部は、第3フラックスバリア26の近傍に位置している。第1スリット29の外径側端部は、ロータコア21の外周面の近傍に位置している。これにより、1磁極を構成するV字状に配置された永久磁石22の対の外径側のコア領域が、第1スリット29により、力行運転時における回転方向進み側コア領域30Aと回転方向遅れ側コア領域30Bとに分離される。
つぎに、トルクの発生源となる磁束の状態について説明する。
回転方向Rの進み側に位置する永久磁石22の磁束発生面から発生する磁石磁束31は、ロータコア21から空隙Gに流れる。このとき、低透磁率領域である第1スリット29によって磁石磁束31の流れる方向が制限され、磁石磁束31が回転方向進み側に偏らされる。これにより、磁石磁束31は、図3中矢印で示されるように、回転方向進み側コア領域30Aに偏在化する。その結果、磁石トルクが正のピーク値となる電流位相角を、第1スリット29がない場合の電流位相角よりも大きくすることができる。
ステータコア11から空隙Gを介してロータコア21に流れるリラクタンス磁束32の経路は、低透磁率領域である第1スリット29によって制限される。これにより、リラクタンス磁束32は、図3中に矢印で示されるように、回転方向進み側コア領域30Aには流れず、回転方向遅れ側コア領域30Bのみに流れる。その結果、リラクタンストルクが正のピーク値となる電流位相角を、第1スリット29が設けられていない場合の電流位相角よりも小さくすることができる。
これにより、磁石トルクとリラクタンストルクのそれぞれが正のピーク値となる電流位相角の間隔が狭まる。そこで、力行運転時における磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルク、すなわち総合的なトルクを向上させることができる。
つぎに、無通電状態における電気角1周期分の磁石磁束31によるギャップ磁束密度分布を有限要素法により解析した結果を図4に示す。なお、電気角1周期分とは、磁極2極分である。図4は、この発明の実施の形態1に係る回転電機の無通電状態における電気角1周期分の磁石磁束によるギャップ磁束密度分布を示す図である。図4中、横軸は周方向位置を示し、縦軸はギャップ磁束密度を示す。また、点線は第1スリット29を設けない場合のギャップ磁束密度を示し、実線は第1スリット29を設けた場合のギャップ磁束密度を示す。
図4から、第1スリット29がある場合、第1スリット29がない場合と比較して、力行運転時における1磁極内のギャップ磁束密度が、ロータ20の回転方向の進み側に偏ることが分かった。
つぎに、電流値一定の条件下での電流位相角βに対するトルクの変化を有限要素法により解析した結果を図5に示す。図5は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における、電流値一定の条件下での電流位相角に対するトルクの変化を示す図である。なお、図5中、横軸は電流位相角βを示し、縦軸はトルクを示す。また、点線は第1スリット29がない場合のトルクを示し、実線は第1スリット29がある場合のトルクを示す。トルクは、磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルクである。
図5から、第1スリット29がある場合の合成トルクの正のピーク値をとる電流位相角βが、第1スリット29がない場合の合成トルクの正のピーク値をとる電流位相角βより小さくなることが分かった。また、図5から、第1スリット29がある場合の合成トルクの正のピーク値が、第1スリット29がない場合の合成トルクの正のピーク値より大きくなることがわかった。
第1スリット29がない場合は、磁石トルクは、電流位相角βが0°のときに正のピーク値をとり、リラクタンストルクは、電流位相角βが45°のときに正のピーク値をとる。図5の結果から、第1スリット29を設けることにより、磁石トルクとリラクタンストルクのそれぞれが正のピーク値をとる電流位相角βが接近して、合成トルクが向上したと推考される。
このように、実施の形態1では、低透磁率領域である第1スリット29を、1磁極を構成するV字状に配置された永久磁石22の外径側のコア領域に、回転方向Rの進み側に傾くように設けている。これにより、磁石トルクとリラクタンストルクのそれぞれが正のピーク値をとる電流位相角βが互いに接近する。その結果、力行運転時、磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルクが向上される。
ここで、力行運転時のロータコアに発生する応力について説明する。
図6は、この発明の実施の形態1に係る回転電機におけるロータにおける応力解析結果のミーゼス応力分布図、図7は、比較例のロータにおける応力解析結果のミーゼス応力分布図である。
ロータ20のロータコア21では、図3に示されるように、第3フラックスバリア26が、1磁極を構成する永久磁石22の群のなかの周方向に隣り合う1組の永久磁石22間に形成されている。一対のリブ27が、隣り合う1組の永久磁石22と第3スラックスバリア26との間のロータコア21の領域により構成されている。第1スリット29の内径側端部が、第3フラックスバリア26から離れ、一対のリブ27の延長線間の周方向領域内に位置している。
比較例のロータ200のロータコア201では、図7に示されるように第1スリット29の内径側端部が、第3フラックスバリア26から離れ、一対のリブ27の延長線の回転方向遅れ側に位置している。なお、ロータコア201の他の構成は、ロータコア21と同様に構成されている。
力行運転時、比較例のロータコア201に発生する応力は、図7に示されるように、156MPaであった。力行運転時、ロータコア21に発生する応力は、図6に示されるように、78MPaであった。このように、第1スリット29の内径側端部を一対のリブ27の延長線間の周方向領域内に位置させることで、ロータコア21に発生する応力を低減できることが確認された。
これは、比較例のロータ200では、遠心力が永久磁石22に作用したときに、ロータコア201が変位する方向に第1スリット29の内径側端部が位置している。さらに、第1スリット29の最小幅部がリブ27の周方向の幅より狭い。そのため、第1スリット29の内径側端部に発生する応力が大きくなる。ロータ20では、第1スリット29の内径側端部が、一対のリブ27の延長線に挟まれた領域に位置している。そのため、遠心力が永久磁石22に作用したときに、第1スリット29の内径側端部は、ロータコア21が変位する方向から遠ざかる。これにより、第1スリット29の内径側端部に発生する応力が低減されたものと推考される。
このように、実施の形態1によるロータ20では、第1スリット29の内径側端部が、一対のリブ27の延長線に挟まれた領域に位置している。これにより、ロータコア21に発生する応力が低減される。さらに、ロータ20では、第1スリット29が1磁極を構成するV字状に配置された永久磁石22の外径側のコア領域に、回転方向Rの進み側に傾くように設けている。これにより、力行運転時、磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルクが向上される。
つぎに、ロータ20から永久磁石22を取り外し、ステータコイル12を集中巻コイル又は分布巻コイルにより構成して、電流値一定の条件下での電流位相角βに対するトルクの変化を有限要素法により解析した結果を図8に示す。図8は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における電流値一定の条件下での電流位相角に対するトルクの変化を示す図である。なお、図8中、横軸は電流位相角βを示し、縦軸はトルクを示す。また、点線は第1スリット29がない場合のトルクを示し、実線は第1スリット29がある場合のトルクを示す。トルクは、リラクタンストルクである。
図8に示されるように、集中巻構造のステータコイルを用いた場合では、第1スリット29がある場合は、第1スリット29がない場合に比較して、リラクタンストルクの正のピーク値が大きくなった。一方、分布巻構造のステータコイルを用いた場合では、第1スリット29がある場合は、第1スリット29がない場合に比較して、リラクタンストルクの正のピーク値が小さくなった。このように、従来、リラクタンストルクが十分に発揮できなかった集中巻構造でも、第1スリット29があることにより、リラクタンス磁束の経路が変化し、リラクタンストルクが向上できることが確認された。
また、図8に示されるように、ステータコイルの巻線構造に拘わらず、第1スリット29があることにより、リラクタンストルクの正のピーク値をとる電流位相角βが小さくなった。したがって、ステータコイルの巻線構造に拘わらず、第1スリット29を設けることにより、磁石トルクとリラクタンストルクのそれぞれが正のピーク値をとる電流位相角βが互いに接近する。その結果、力行運転時、磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルクが向上される。
つぎに、ロータの変更例について説明する。図9は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における第1変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図、図10は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における第2変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図、図11は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における第3変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図、図12は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における第4変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図、図13は、この発明の実施の形態1に係る回転電機における第5変更例のロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。
第1変更例のロータ20Aでは、図9に示されるように、第1スリット29が第3フラックスバリア26と空隙Gとに開口するようにロータコア21Aに形成されている。第1スリット29の内径側端部は、一対のリブ27の延長線間の周方向領域内に位置している。ロータ20Aの他の構成は、ロータ20と同様に構成されている。そこで、ロータ20Aを用いても、実施の形態1と同様の効果が得られる。また、ロータ20Aを用いた場合には、第1スリット29の空隙G側での漏れ磁束が低減されるので、トルクをより向上させることができる。
第2変更例のロータ20Bでは、図10に示されるように、1磁極を構成する永久磁石22を保持する3つの磁石挿入穴23が、それらの周方向の間隔が外径側に向かって漸次広くなるV字状に配置されている。すなわち、2つの磁石挿入穴23が、回転方向の進み側に傾斜して1列に配列されている。残る1つの磁石挿入穴23が、回転方向の遅れ側に傾斜している。第1フラックスバリア24と第2フラックスバリア25とが、各磁石挿入穴23の断面長方形の長辺の長さ方向の両端に形成されている。回転方向の進み側に傾斜する磁石挿入穴23間には、リブ27が形成されている。傾斜方向が異なる磁石挿入穴23間には、第3フラックスバリア26が形成されている。一対のリブ27が第3フラックスバリア26を挟んで形成されている。第1スリット29が、第3フラックスバリア26と空隙Gとに開口するようにロータコア21Bに形成されている。
したがって、ロータ20Bを用いても、上記ロータ20Aを用いた場合と同様の効果が得られる。なお、1磁極を構成する永久磁石22の個数は4個以上でもよい。この場合においても、永久磁石22は、V字状に配置される。第3フラックスバリア26は、V字状の谷部を構成する永久磁石22間に形成される。
第3変更例のロータ20Cでは、図11に示されるように、第1スリット29が第3フラックスバリア26の近傍からロータコア21Dの外周面の近傍に至るようにロータコア21Cに形成されている。第1スリット29は、回転方向Rの進み側に凸の弧状帯状に形成されている。ロータ20Cの他の構成は、ロータ20と同様に構成されている。そこで、ロータ20Cを用いても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
第4変更例のロータ20Dでは、図12に示されるように、直線帯状の第2スリット33が第1スリット29の回転方向の進み側に磁石挿入穴23の近傍からロータコア21Dの外周面の近傍に至るようにロータコア21Dに形成されている。ロータ20Dの他の構成は、ロータ20と同様に構成されている。そこで、ロータ20Dを用いても、実施の形態1と同様の効果が得られる。また、第2スリット33は、1磁極を構成する2つの永久磁石22のなかの回転方向Rの進み側に位置する永久磁石22の外径側に配置されている。したがって、第2スリット33の内径側端部は、遠心力が回転方向Rの進み側に位置する永久磁石22に作用したときに、ロータコア21Dが変位する方向から遠ざかる。そこで、第2スリット33の内径側端部に発生する応力は、大きくならない。さらに、低透磁率領域である第2スリット33が、回転方向進み側コア領域30Aに、回転方向の進み側に傾斜して設けられている。そこで、低透磁率領域である第2スリット33によって磁石磁束31の流れる方向が制限され、磁石磁束31が回転方向進み側により偏らされる。
第5変更例のロータ20Eでは、図13に示されるように、直線帯状の2つの第1スリット29a,29bが、第3フラックスバリア26の近傍からロータコア21Fの外周面の近傍に至るように1列に並んでロータコア21Eに形成されている。ロータ20Eの他の構成は、ロータ20と同様に構成されている。そこで、ロータ20Eを用いても、実施の形態1と同様の効果が得られる。なお、第5変更例では、第1スリットが2つに分割されているが、3つ以上に分割されてもよい。また、第3変更例のロータ20Cにおいて、弧状帯状の第1スリット29を複数の第1スリットに分割してもよい。
このように、実施の形態1および第1から第5変更例で説明したように、第1スリット29の内径側端部が1対のリブ27の延長線間に位置していれば、第1スリット29の形状および配置、および永久磁石22の個数は適宜変更できる。これにより、磁石磁束31による磁気飽和を発生させることなく、効果的に高いトルクを得ることができる。また、第1スリット29の内径側端部が1対のリブ27の延長線間に位置していれば、第1スリット29の回転方向の進み側のコア領域に1本以上の第2スリット33を設けてもよい。
実施の形態2.
図14は、この発明の実施の形態2に係る回転電機を示す横断面図、図15は、この発明の実施の形態2に係る回転電機におけるロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。
上記実施の形態1における回転電機1は、力行運転に用いられることを想定しているが、実施の形態2における回転電機1Aは、回生運転に用いられることを想定している。回生運転とは、ロータ40に与えられた運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、ステータコイル12の端子から電気エネルギーを取り出す運転を指す。このとき、回転電機1Aは、発電機として動作する。なお、回生運転は、本発明の本旨ではないので、その詳細な説明は省略する。
図14および図15において、回転電機1Aは、ステータ10と、ステータ10の内径側に、ステータ10との間に隙間Gを設けて、同軸に配置されたロータ40と、を備える。ロータ40は、ロータコア41を備える。なお、図示されていないが、ステータ10およびロータ40は、フレーム2および一対の端板3からなるハウジング内に収納されている。
ロータコア41は、第1スリット29の配置が異なる点を除いて、ロータコア21と同様に構成されている。具体的には、第1スリット29は、V字状に配置された永久磁石22の対の外径側のコア領域に、第3フラックスバリア26からロータコア41の外周面近傍に至るように、直線帯状に延びている。第1スリット29は、回転方向Rに対して後方、すなわち遅れ側に傾斜している。第1スリット29の内径側端部は、第3フラックスバリア26に連結され、一対のリブ27の延長線間に位置している。第1スリット29の外径側端部は、ロータコア41の外周面の近傍に位置している。
1磁極を構成するV字状に配置された永久磁石22の対の外径側のコア領域が、第1スリット29により、回生運転時における回転方向進み側コア領域30Aと回転方向遅れ側コア領域30Bとに分離される。
ロータ40は、外部から運動エネルギーを受け取って回転する。回生運転時に、ステータコイル12に通電することによってロータ40に作用する周方向の力の向きは、ロータ40の回転方向Rと逆となる。すなわち、回生運転時に、回転電機1A自体が発揮するトルクは、外部からのトルクを相殺するように作用する。
つぎに、トルクの発生源となる磁束の状態について説明する。回生運転時に、回転方向遅れ側に位置する永久磁石22から発生する磁石磁束31は、ロータコア41から隙間Gに流れようとする。このとき、低透磁率領域である第1スリット29によって磁石磁束31の流れる方向が制限され、磁石磁束31が回転方向遅れ側に偏らされる。これにより、磁石磁束31は、図15中矢印で示されるように、磁石磁束31は、回転方向遅れ側コア領域30Bに偏在化する。その結果、磁石トルクが負のピーク値となる電流位相角βを、第1スリット29がない場合の電流位相角βよりも小さくすることができる。そこで、リラクタンストルクが負のピーク値となる電流位相角βを、第1スリット29がない場合の電流位相角βよりも大きくすることができる。
さらに、ステータコア11から隙間Gを介してロータコア41に流れようとするリラクタンス磁束32は、低透磁率領域である第1スリット29により経路が制限される。これにより、リラクタンス磁束32は、図15中矢印で示されるように、回転方向遅れ側コア領域30Bを避けて、回転方向進み側コア領域30Aを通る。これにより、リラクタンストルクが負のピーク値となる電流位相角βを、第1スリット29がない場合の電流位相角βよりも大きくすることができる。
実施の形態2では、第1スリット29を設けることにより、磁石トルクの負のピーク値となる電流位相角とリラクタンストルクの負のピーク値となる電流位相角とを近づけることができる。したがって、回生運転時における回転電機1Aの磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルクを向上させることができる。
また、第1スリット29の内径側端部が、一対のリブ27の延長線間の周方向領域に位置しているので、第1スリット29の内径側端部に発生する応力を小さくできる。
なお、実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、第1スリット29の内径側端部が1対のリブ27の延長線間に位置していれば、第1スリット29の形状および配置、および永久磁石22の個数は適宜変更できる。
実施の形態3.
図16は、この発明の実施の形態3に係る回転電機を示す縦断面図、図17は、この発明の実施の形態3に係る回転電機における第1ロータの1磁極周りを示す要部横断面図、図18は、この発明の実施の形態3に係る回転電機における第2ロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。
図16において、回転電機1Bは、フレーム2と、フレーム2の軸方向両側の開口を塞ぐ一対の端板3と、一対の端板3に装着された軸受4に支持されて、フレーム2内に回転可能に設けられた回転軸5と、フレーム2内に収納保持されたステータ10と、ステータ10の内径側に、ステータ10との間に隙間Gを設けて、同軸に配置されたロータ50と、を備える。ロータ50は、軸方向に2等分割された第1ロータ50Aと第2ロータ50Bとを備える。第1ロータ50Aおよび第2ロータ50Bは、第1分割ロータコア51Aおよび第2分割ロータコア51Bを備える。
第1分割ロータコア51Aおよび第2分割ロータコア51Bは、第1スリット29Aおよび第1スリット29Bの形状および配置が異なる点を除いて、同様に構成されている。第1分割ロータコア51Aおよび第2分割ロータコア51Bは、第1スリットの形状、配置および軸方向長さが異なる点を除いて、実施の形態1におけるロータコア21と同様に構成されている。
第1スリット29Aは、図17に示されたように、V字状に配置された永久磁石22の対の外径側のコア領域に、第3フラックスバリア26から第1分割ロータコア51Aの外周面の近傍に至るように、直線状に延びている。第1スリット29Aは、回転方向Rに対して前方、すなわち進み側に傾斜している。第1スリット29Aの内径側端部は、第3フラックスバリア26に連結され、一対のリブ27の延長線間に位置している。第1スリット29Aの外径側端部は、第1分割ロータコア51Aの外周面の近傍に位置している。
第1スリット29Bは、図18に示されたように、V字状に配置された永久磁石22の対の外径側のコア領域に、第3フラックスバリア26から第2分割ロータコア51Bの外周面の近傍に至るように、直線状に延びている。第1スリット29Bは、第1スリット29Aの回転方向の後方、すなわち遅れ側に配置されている。第1スリット29Bは、回転方向Rの進み側に傾斜している。第1スリット29Bの内径側端部は、第3フラックスバリア26に連結され、一対のリブ27の延長線間に位置している。第2スリット29Bの外径側端部は、第2分割ロータコア51Bの外周面の近傍に位置している。
実施の形態3では、第1スリット29Aおよび第1スリット29Bが、1磁極を構成するV字状に配置された永久磁石22の外径側のコア領域に、回転方向Rの進み側に傾くように設けている。そこで、実施の形態3においても、力行運転時、磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルクが向上される。また、第1スリット29Aおよび第1スリット29Bの内径側端部が、一対のリブ27の延長線に挟まれた領域に位置している。そこで、実施の形態3においても、第1分割ロータコア51Aおよび第2分割ロータコア51Bに発生する応力が低減される。
第1スリットの形状、配置を変えることにより、コギングトルク、トルクリプルおよび電磁加振力の高調波成分の位相、振幅が変化する。実施の形態3では、第1スリット29Aと第1スリット29Bとの形状および配置が異なる。そこで、形状、配置の異なる第1スリット29Aと第1スリット29Bとを適宜組み合わせることにより、コギングトルク、トルクリプルおよび電磁加振力の高調波成分を打ち消すことができる。これにより、コギングトルク、トルクリプルおよび電磁加振力の高調波成分を低減することができる。
なお、上記実施の形態3では、ロータコアが軸方向に2つに等分割されているが、2つに不等分割されてもよい。
また、上記実施の形態3では、ロータコアが軸方向に2つに分割されているが、ロータコアは、3つ以上に分割されてもよい。この場合、分割された各ロータコアにおいて、上記実施の形態1と同様に、第1スリットの内径側端部が一対のリブの延長線間に位置していれば、第1スリットの形状および配置、永久磁石の個数は適宜変更できる。これにより、組み合わせる第1スリットの種類が多くなり、コギングトルク、トルクリプルおよび電磁加振力の高調波成分をより低減することができる。
また、上記実施の形態3では、第1スリットが回転方向の進み側に傾斜する、力行運転に用いられる回転電機に適用したが、第1スリットが回転方向の遅れ側に傾斜する、回生運転に用いられる回転電機に適用してもよい。
実施の形態4.
図19は、この発明の実施の形態4に係る回転電機を示す横断面図である。
図19において、回転電機1Cは、ステータ10と、ステータ10の内径側に、ステータ10との間に隙間Gを設けて、同軸に配置されたロータ60と、を備える。ロータ60は、ロータコア61を備える。なお、図示されていないが、ステータ10およびロータ60は、フレーム2および一対の端板3からなるハウジング内に収納されている。
ロータコア61には、第1スリット29Aおよび第1スリット29Bが、1磁極毎に、交互に、1磁極を構成するV字状に配置された永久磁石22の対の外径側のコア領域に形成されている。なお、他の構成は、実施の形態3におけるロータ50と同様に構成されている。
実施の形態4では、第1スリット29Aおよび第1スリット29Bが、1磁極毎に、交互に、回転方向Rの進み側に傾くように設けている。そこで、実施の形態4においても、力行運転時、磁石トルクとリラクタンストルクとの合成トルクが向上される。また、第1スリット29Aおよび第1スリット29Bの内径側端部が、一対のリブ27の延長線に挟まれた領域に位置している。そこで、実施の形態4においても、ロータコア61に発生する応力が低減される。
実施の形態4では、1磁極毎に交互に形成された第1スリット29Aと第1スリット29Bとの形状および配置が異なっている。つまり、形状および配置が異なる第1スリット29Aおよび第1スリット29Bが、周方向に分散して配置されている。そこで、実施の形態4においても、形状、配置の異なる第1スリット29Aと第1スリット29Bとを適宜組み合わせることにより、コギングトルク、トルクリプルおよび電磁加振力の高調波成分を打ち消すことができる。これにより、コギングトルク、トルクリプルおよび電磁加振力の高調波成分を低減することができる。
なお、上記実施の形態4では、2種類の第1スリットは、形状および配置が異なっているが、2種類の第1スリットは、形状および配置の少なくとも一方が異なっていればよい。
また、上記実施の形態4では、2種類の第1スリットが1磁極毎に交互にロータコアに形成されているが、2種類の第1スリットは、複数磁極ずつ交互にロータコアに形成されてもよいし、異なる磁極数で交互にロータコアに形成されてもよい。
また、上記実施の形態4では、2種類の第1スリットがロータコアに形成されているが、3種類以上の第1スリットをロータコアに形成してもよい。
また、実施の形態4においても、上記実施の形態1と同様に、第1スリットの内径側端部が1対のリブの延長線間に位置していれば、第1スリットの形状および配置、および永久磁石の個数は適宜変更できる。
また、上記実施の形態4では、単一のロータコアを用いているが、上記実施の形態3と同様に、軸方向に分割されたロータコアを用いてもよい。
ここで、上記実施の形態4では、第1スリットが回転方向の進み側に傾斜する、力行運転に用いられる回転電機に適用したが、第1スリットが回転方向の遅れ側に傾斜する、回生運転に用いられる回転電機に適用してもよい。
実施の形態5.
図20は、この発明の実施の形態5に係る回転電機におけるロータの1磁極周りを示す要部横断面図である。
図20において、ロータ70のロータコア71には、1磁極を構成する永久磁石22を保持する3つの磁石挿入穴23が、それらの周方向の間隔が外径側に向かって漸次広くなるV字状に配置されている。すなわち、2つの磁石挿入穴23が、回転方向の進み側に傾斜して1列に配列されている。残る1つの磁石挿入穴23が、回転方向の遅れ側に傾斜している。第1フラックスバリア24と第2フラックスバリア25とが、各磁石挿入穴23の断面長方形の長辺の長さ方向の両端に形成されている。隣り合う磁石挿入穴23間のそれぞれには、第3フラックスバリア26が形成されている。リブ27が、第3フラックスバリア26のそれぞれを挟んで一対ずつ形成されている。第1スリット29が、第3フラックスバリア26のそれぞれと空隙Gとに開口するようにロータコア71に形成されている。
なお、他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
実施の形態5では、第3フラックスバリア26が、1磁極を構成するV字状に配置された3つの永久磁石22のなかの周方向に隣り合う?組の永久磁石22間のそれぞれに形成されている。2つのスリット29が、1磁極を構成するV字状に配置された3つの永久磁石22の外径側のロータコア71の領域に形成されている。2つのスリット29は、回転方向Rの進み側に傾くように直線状に延びている。1つのスリット29の内径側端部は、周方向に隣り合う1組の永久磁石22間に形成されている第3フラックスバリア26を周方向に挟んで形成されている一対のリブ27の延長線間に位置している。もう一つスリット29の内径側端部は、周方向に隣り合うもう1組の永久磁石22間に形成されている第3フラックスバリア26を周方向に挟んで形成されている一対のリブ27の延長線間に位置している。
したがって、実施の形態5においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
実施の形態5では、3つの永久磁石22により1磁極を構成している。そこで、遠心力が永久磁石22に作用したときに、ロータコア71に作用する応力が分散される。これにより、ロータコア71に発生する応力は、第3スラックスバリア26が1つの場合よりも低減される。また、第1スリット29が2つであるので、第1スリット29が1つの場合に比べて、比較的に高いトルクを得ることができる。
なお、実施の形態5においても、上記実施の形態1,4と同様に、第1スリットの内径側端部が1対のリブの延長線間に位置していれば、第1スリットの形状および配置、および永久磁石の個数は適宜変更できる。
また、実施の形態5では、単一のロータコアを用いているが、上記実施の形態3と同様に、軸方向に分割されたロータコアを用いてもよい。
また、実施の形態5では、第1スリットが回転方向の進み側に傾斜する、力行運転に用いられる回転電機に適用したが、第1スリットが回転方向の遅れ側に傾斜する、回生運転に用いられる回転電機に適用してもよい。
実施の形態6.
図21は、この発明の実施の形態6に係る回転電機を示す横断面図である。
図21において、回転電機1Dは、ステータ10Aと、ステータ10Aの外径側に、ステータ10Aとの間に隙間Gを設けて、同軸に配置されたロータ80と、を備える。
ステータ10Aは、円環状のステータコア11Aと、ステータコア11Aに装着されたステータコイル12Aと、を備える。ステータコア11Aは、円環状のコアバック110Aと、コアバック110Aの外周面から径方向外方に突出する複数のティース111Aと、を備える。ティース111Aは、周方向に等角ピッチで18本配列されており、隣り合うティース111A間の領域がスロット112Aとなる。ステータコイル12Aは、ティース111Aのそれぞれに導体線を巻き回して形成された集中巻コイル120Aにより構成される。
ロータ80は、ロータコア81と、ロータコア81の内径側に埋め込まれた24個の永久磁石22と、を備える。ロータコア81の内径側には、ロータコア81を軸方向に貫通する磁石挿入穴23が、等角ピッチで12対形成されている。磁石挿入穴23は、断面長方形の穴形状である。磁石挿入穴23の対は、周方向の間隔が内径側に向かって漸次広くなるV字状に配置されている。磁石挿入穴23は、断面長方形の穴形状に形成されている。なお、対をなす磁石挿入穴23の外径側の端部同士は、周方向に離れている。
永久磁石22は、磁石挿入穴23と同等の断面長方形の角柱体に構成されている。永久磁石22は、断面長方形の長辺で構成される面に直交するように着磁されている。これにより、永久磁石22の断面長方形の長辺で構成される第1の面がN極となり、第1の面と反対側の第2の面がS極となる。永久磁石22は、磁石挿入穴23の各対に同じ極性が内径側を向くように、かつ隣り合う磁石挿入穴23の対に異なる極性が内径側を向くように挿入、保持される。すなわち、周方向間隔が空隙G側に漸次広くなるV字状に配置された永久磁石22の対が、1磁極を構成する。そして、1磁極を構成する永久磁石22の対が、ロータコア21の外径側に埋め込まれて、周方向に等角ピッチで12対配列されている。これにより、ロータ20には、12極の磁極が形成される。
第1フラックスバリア24が、磁石挿入穴23の断面長方形の短辺で構成される内径側の面を磁石挿入穴23の断面長方形の長辺の長さ方向に張り出させて形成されている。第2フラックスバリア25が、磁石挿入穴23の断面長方形の短辺で構成される外径側の面を磁石挿入穴23の断面長方形の長辺の長さ方向に張り出させて形成されている。第3フラックスバリア26が、磁石挿入穴23の対の第2フラックスバリア25間の位置に形成されている。第1、第2および第3フラックスバリア24,25,26は、それぞれ、ロータコア21を軸方向に貫通するように形成されている。
ここで、周方向に隣り合う第2フラックスバリア25および第3フラックスバリア26の一部が、ロータの回転軸の軸心から同一径方向距離に位置している。当該位置において、第2フラックスバリア25と第3フラックスバリア26との間のコア領域が、リブ27となる。また、第1フラックスバリア24とロータコア21の内周面との間のコア領域が、ブリッジ28となる。
第1スリット29が、V字状に配置された永久磁石22の対の内径側、すなわち空隙G側に位置するロータコア81のコア領域に形成されている。第1スリット29は、第3フラックスバリア26からロータコア81の内周面の近傍に至るように、直線帯状に延びている。第1スリット29は、回転方向Rに対して前方に傾斜し直線状に延びている。第1スリット29の外径側端部、すなわち第3スラックスバリア26側の端部は、一対のリブ27の延長線間に位置している。第1スリット29の内径側端部、すなわち空隙G側の端部は、ロータコア81の内周面の近傍に位置している。
このように構成された回転電機1Dでは、ステータ10Aのスロット112Aの数が18、ロータ80の極数が12である。すなわち、回転電機1Dは、極−スロット数が2対3系のアウターロータ型の回転電機である。回転電機1Dは、力行運転に用いられることを想定している。
実施の形態6では、第1スリット29が、V字状に配置された永久磁石22の対の内径側のコア領域に、回転方向Rの進み側に傾くように設けられている。第1スリット29の内径側端部が、第3フラックスバリア26を挟むように形成されている一対のリブ27の延長線間に位置している。したがって、実施の形態6においても、上記実施の形態1と同様に効果が得られる。
なお、実施の形態6においても、上記実施の形態1、4,5と同様に、第1スリットの外径側端部が1対のリブの延長線間に位置していれば、第1スリットの形状および配置、および永久磁石の個数は適宜変更できる。
また、上記実施の形態6では、単一のロータコアを用いているが、上記実施の形態3と同様に、軸方向に分割されたロータコアを用いてもよい。
また、実施の形態6では、第1スリットが回転方向の進み側に傾斜する、力行運転に用いられる回転電機に適用したが、第1スリットが回転方向の遅れ側に傾斜する、回生運転に用いられる回転電機に適用してもよい。
なお、上記各実施の形態では、ステータコアおよびロータコアが電磁鋼板を積層した積層鉄心で構成されているが、ステータコアおよびロータコアは、磁性体の塊状体で作製された塊状鉄心で構成されてもよい。
また、上記各実施の形態では、ステータコイルが集中巻コイルで構成されているが、ステータコイルは、分布巻コイルで構成されてもよい。
また、上記各実施の形態では、12極18スロット、すなわち2対3系列の回転電機について説明しているが、回転電機の極・スロット数は、2対3系列に限定されず、8対9系列、10対12系列などでもよい。8対9系列および10対12系列は、2対3系列に比べ、巻線係数を増加させる効果があり、トルクの向上およびトルク脈動の抑制が可能となる。
また、上記各実施の形態では、第3フラックスバリアの周方向の両方向に位置する磁石挿入穴のそれぞれの第3フラックスバリア側に第2フラックスバリアが設けられているが、第3フラックスバリアの周方向の第1方向に位置する磁石挿入穴の第3フラックスバリア側に第2フラックスバリアが設けられていればよい。
本発明は、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想および教示に基づいて当業者であれば、種々の改変態様をとるえることは自明である。
10、10A ステータ、11、11A ステータコア、12、12A ステータコイル、20,20A,20B,20C,20D,20E,50,60,70,80 ロータ、21,21A,21B,21C,21D,21E,61、71,81 ロータコア、22 永久磁石、29,29a,29b 第1スリット、29A 第1スリット、29B 第1スリット、33 第2スリット、51A 第1分割ロータコア、51B 第2分割ロータコア、112、112A スロット、G 空隙。

Claims (16)

  1. ステータコア、およびステータコイルを有するステータと、
    上記ステータコアとの間に空隙を介して上記ステータコアと同軸に配置されるロータコア、および上記ロータコアに埋め込まれて周方向に等角ピッチで配置された、複数の、1磁極を構成する永久磁石群を有するロータと、を備え、
    フラックスバリアが、上記1磁極を構成する永久磁石群のなかの、周方向に隣り合う1組の永久磁石間に形成され、
    一対のリブが、上記隣り合う1組の永久磁石と上記フラックスバリアとの間の上記ロータコアの領域により構成され、
    上記1磁極を構成する永久磁石群から発生する磁束を上記ロータの回転方向に偏らせるための第1スリットが、上記1磁極を構成する永久磁石群の径方向の上記空隙側の上記ロータコアの領域に形成され、
    上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部が、上記一対のリブの延長線間に位置しており、
    上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部と上記フラックスバリアとの間の距離は、上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部と上記隣り合う1組の永久磁石のそれぞれとの間の距離よりも近い回転電機。
  2. 上記第1スリットは、その形状および配置の少なくとも一方が異なる複数種類の第1スリットからなり、
    上記複数種類の第1スリットは、周方向に分散して配置されている請求項に記載の回転電機。
  3. ステータコア、およびステータコイルを有するステータと、
    上記ステータコアとの間に空隙を介して上記ステータコアと同軸に配置されるロータコア、および上記ロータコアに埋め込まれて周方向に等角ピッチで配置された、複数の、1磁極を構成する永久磁石群を有するロータと、を備え、
    フラックスバリアが、上記1磁極を構成する永久磁石群のなかの、周方向に隣り合う1組の永久磁石間に形成され、
    一対のリブが、上記隣り合う1組の永久磁石と上記フラックスバリアとの間の上記ロータコアの領域により構成され、
    上記1磁極を構成する永久磁石群から発生する磁束を上記ロータの回転方向に偏らせるための第1スリットが、上記1磁極を構成する永久磁石群の径方向の上記空隙側の上記ロータコアの領域に形成され、
    上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部が、上記一対のリブの延長線間に位置しており、
    上記ロータコアは、軸方向に複数に分割された分割ロータコアを備え、
    上記分割ロータコア内では、上記第1スリットの形状および配置が同じであり、上記分割ロータコア毎では、上記第1スリットの形状および配置の少なくとも一方が異なっている回転電機。
  4. 上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部が、上記一対のリブの延長線間の周方向領域内に位置している請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機。
  5. 上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部が、上記一対のリブを上記空隙側へ延長した延長線間の前記ロータコアの周方向領域内に位置している請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機。
  6. 上記第1スリットの上記フラックスバリア側の端部が、上記フラックスバリアに向かって延びている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機。
  7. 上記第1スリットの上記空隙側の端部が、上記一対のリブの延長線間の周方向領域外に位置している請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転電機。
  8. 上記第1スリットと上記フラックスバリアとがつながっている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の回転電機。
  9. 磁石端フラックスバリアが、上記隣り合う1組の永久磁石と上記一対のリブとの間に形成されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の回転電機。
  10. 上記1磁極を構成する永久磁石群は、周方向間隔が上記空隙側に漸次広がるV字状に配置され、
    上記フラックスバリアは、V字状に配置された上記1磁極を構成する永久磁石群の谷部に形成されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の回転電機。
  11. 上記ステータコイルは、集中巻コイルである請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の回転電機。
  12. 上記第1スリットは、上記ステータコイルに通電したときに、上記ロータに作用する周方向の力の方向に傾斜している請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の回転電機。
  13. 上記1磁極を構成する永久磁石群は、2つの永久磁石からなる請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の回転電機。
  14. 第2スリットが、上記1磁極を構成する永久磁石群の径方向の上記空隙側の上記ロータコアの領域であり、上記第1スリットに対して上記ロータの回転方向の進み側の領域に形成されている請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の回転電機。
  15. 上記第1スリットの最小幅部が上記一対のリブのそれぞれの周方向の幅より狭い請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の回転電機。
  16. 上記ロータの極数と上記ステータのスロット数との比が2:3である請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の回転電機。
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