JP3790915B2

JP3790915B2 - 永久磁石型モータ

Info

Publication number: JP3790915B2
Application number: JP34607797A
Authority: JP
Inventors: 智明及川; 修風間; 庸賀田島
Original assignee: Mitsubishi Electric Corp
Current assignee: Mitsubishi Electric Corp
Priority date: 1997-12-16
Filing date: 1997-12-16
Publication date: 2006-06-28
Anticipated expiration: 2017-12-16
Also published as: JPH11178255A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エアコンや冷蔵庫等の圧縮機駆動用モータに使用される永久磁石型モータに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来例１．
図５は、出願人が特願平０９−０８８４０９号において提案した永久磁石型モータの横断図面である。図において、１は回転子、２は固定子、３は回転子鉄心に設けられた磁石挿入孔で、この磁石挿入孔３に永久磁石４が挿入される。隣接する永久磁石４の間には、磁束の漏洩を防止するために、磁気抵抗大となる貫通孔５を設けている。６ａ、６ｂ，６ｃ，６ｄ，６ｅは固定子歯部である。
また、磁石挿入孔外周側鉄心の回転子磁極中心線１１よりも回転子回転方向側の回転子回転方向側鉄心１３にはスリット７が配置されている。
そして、磁石挿入孔外周側鉄心の回転子磁極中心線１１よりも回転子反回転方向側の回転子反回転方向側鉄心１２にはスリット７が配置されていない。
【０００３】
上述の構成では、回転子回転方向側鉄心１３にスリット７を設けているため、固定子電流による電機子反作用が発生しにくくなり、電機子反作用による固定子歯の一部（特に固定子歯６ｄ、６ｅ）が異常に磁束密度が高くなる飽和現象が発生せず、それにともなう損失がなく効率の良いモータとなる。
【０００４】
またスリット７をｄ軸磁束の妨げにならないようｄ軸に沿って細長く配置したので、ｄ軸磁束密度Ｂｄの低下がなくマグネットトルクは減少しない。
【０００５】
またスリット７を回転子磁極中心線１１よりも回転子回転方向側鉄心１３のみに設けたので、スリットが入っていない回転子反回転方向側鉄心１２はｑ軸磁束が流れ易くｑ軸インダクタンスとｄ軸インダクタンスの差が大きくとれリラクタンストルクが利用できる。
【０００６】
従来例２．
図６は、例えば特開平６−１８９４８１号公報に示された永久磁石型モータの横断図面である。この例では、図５の構造に加え、回転子鉄心の磁石挿入孔の外周側にスリット７が回転方向後方のものを、回転方向前方のものより太くし配置されている。
【０００７】
図６の構成では、図５の構成のもののようにｄ軸，ｑ軸のインダクタンス差を大きくとれないので、リラクタンストルクは利用できないが、スリットを設ける事によって、固定子電流による電気子反作用が発生しにくくなっており、永久磁石磁束が回転子表面から均一に固定子に供給される。
【０００８】
すなわち、固定子歯部６ａ〜６ｅの磁束密度はすべてほぼ同じであり、固定子歯の一部分（例えば６ｄ，６ｅ）が磁気飽和をおこし、モータ特性を悪化させることがない。また、スリット７を回転方向後方のものを、回転方向前方のものより太くしたことにより、誘起電圧によって回転位置を検出して制御を行うモータにあっては誘起電圧中に含まれる転流スパイクの時間が長くなり、該位置検出が困難となる現象を改善していた。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
上述の永久磁石型モータでは、以下のような問題点を有していた。
（１）従来例１（図５）の永久磁石型モータは、回転子反回転方向側鉄心１３に発生する電気子反作用が固定子巻線に発生する誘起電圧波形を乱し、この誘起電圧を検出して制御を行う永久磁石型モータにあっては、回転子の位置検出が困難になる現象が発生していた。
（２）従来例２（図６）の永久磁石型モータは、回転子の位置検出は改善されるものの磁石挿入孔外周側全体にわたってスリット７が入っていたため、ｄ軸・ｑ軸のインダクタンス差が大きくとれず、リラクタンストルクが利用できなく、その分モータ効率が悪いものとなっていた。
【００１０】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、電機子反作用によって回転子の位置検出が困難になる現象が発生しない、またリラクタンストルクを利用してモータ効率の向上が図れる永久磁石型モータを提供することを目的とする。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る永久磁石型モータは、円筒状の固定子鉄心にコイルが巻回された固定子と、この固定子の内側に設けられ、回転子鉄心と、この回転子鉄心に穿設された複数の磁石挿入孔と、この磁石挿入孔に挿入された永久磁石とを有する回転子と、この回転子に設けられ、各磁石挿入孔の外周側鉄心部の回転子磁極中心線より回転子反回転方向側のみに回転子磁極中心線方向に穿設され、周方向に複数個配列されたスリットとを備えたものである。
【００１２】
また、スリットは、固定子と回転子との間に存在する空隙側に開口する空隙側開口部を備えたものである。
【００１３】
また、スリットは、永久磁石側に開口する永久磁石側開口部を備えたものである。
【００１４】
また、スリットに充填された非磁性体充填材を備えたものである。
【００１５】
【発明の実施の形態】
実施の形態１．
以下、この発明の実施の形態の一例を図面を参照して説明する。
図１は、この発明の実施の形態の一例を示す図で、永久磁石型モータの横断面図である。従来装置と同様の部分は同一符号で示す（以下の実施の形態も同じ）。
図において、１は回転子であり、回転子鉄心８、磁石挿入孔３、永久磁石４、スリット７で構成されている。前記回転子鉄心８はプレス抜きされた薄板鋼板で積層されており、前記永久磁石４はＮ極とＳ極が交互になるように配置されている。
２は固定子であり、固定子鉄心９、固定子巻線１０で構成され、前記固定子鉄心９は回転子鉄心８と同様、プレス抜きされた薄板鋼板で積層されている。また、前記固定子鉄心９の６ａ〜６ｅを固定子歯と称す。
【００１６】
永久磁石型モータの発生トルクは、概略次式で表される。
Ｔ＝Ｔmagnet＋Ｔreluctance
＝ｋ・（Ｂｄ・Ｉ・ｎ・Ｌ）＋Ｔreluctance
ただし、Ｔはモータ発生トルク、Ｔmagnetはマグネットトルク、Ｔreluctanceはリラクタンストルク、Ｋは定数、Ｂｄはｄ軸磁束密度（永久磁石磁束密度）、Ｉは巻線電流、ｎは巻線巻数、Ｌは鉄心積厚である。
【００１７】
本実施の形態では、またスリット７を回転子磁極中心線１１よりも回転子反回転方向側鉄心１２のみに設けたので、従来例１、２の構成のものより、電機子反作用による固定子歯の一部（特に固定子歯６ｄ、６ｅ）が異常に磁束密度が高くなる飽和現象は改善しにくくなるが、誘起電圧によって回転位置を検出して制御を行うモータにあっては、従来例１の構造のものより誘起電圧波形が改善され位置検出精度が向上する。この位置検出性は実験によっても確かめられている。
【００１８】
また、スリット７が入っていない回転子回転方向側鉄心１３はｑ軸磁束が流れ易くｑ軸インダクタンスとｄ軸インダクタンスの差が大きくとれリラクタンストルクが利用できるので、図６のものより高トルク化でき、その分運転電流を減少させ高効率なモータとすることができる。
【００１９】
実施の形態２．
以下、この発明の実施の形態の他の例を図面を参照して説明する。
図２は、この発明の実施の形態の他の例を示す図で、永久磁石型モータの横断面図である。
本実施の形態は、スリット７を固定子２と回転子１との間に存在する空隙側に開口させた空隙側開口部を設けたものである。この構成によれば、固定子２に近い側にスリットを寄せたので、固定子電流による電気子反作用を、空隙側にスリット７を寄せていないものより小さくすることができ、固定子歯磁束の飽和に対してはより有効なものとなる。
【００２０】
実施の形態３．
以下、この発明の実施の形態の他の例を図面を参照して説明する。
図３は、この発明の実施の形態の他の例を示す図で、永久磁石型モータの横断面図である。
本実施の形態は、スリット７を永久磁石側に開口させた永久磁石側開口部を設けたもので、回転子外周部における媒質との間の摩擦抵抗が少なく媒質との摩擦抵抗に起因する効率低下を防ぐことができる。また、モータ組立時に固定子２と回転子１の間に存在する空隙を均一に出すためにギャップゲージ等の治具を用いるが、この治具が回転子１のスリット７に引っかかり、生産性を悪くするという問題が無くなる。
また、スリット７を永久磁石側に開口させることにより、固定子磁束を遮蔽する効果を高めることができる。
【００２１】
実施の形態４．
以下、この発明の実施の形態の他の例を図面を参照して説明する。
図４は、この発明の実施の形態の他の例を示す図で、永久磁石型モータの横断面図である。
本実施の形態は、スリット７に非磁性体充填材１４を充填した事を特徴とするもので、回転子鉄心８の機械的強度を向上させることができる。一方、非磁性体充填材１４は空気とほぼ同じ透磁率を持つので、スリット７に何も入れないものに対し電気的に全く同等の効果を得ることができる。
【００２２】
なお、本実施の形態の非磁性体充填材１４を充填することは、実施の形態１から実施の形態３の全てに適用することができ、機械的強度の向上と同時に実施の形態１から実施の形態３の効果はそのまま得ることができる。
【００２３】
【発明の効果】
この発明に係る永久磁石型モータは、円筒状の固定子鉄心にコイルが巻回された固定子と、この固定子の内側に設けられ、回転子鉄心と、この回転子鉄心に穿設された複数の磁石挿入孔と、この磁石挿入孔に挿入された永久磁石とを有する回転子と、この回転子に設けられ、各磁石挿入孔の外周側鉄心部の回転子磁極中心線より回転子反回転方向側のみに回転子磁極中心線方向に穿設され、周方向に複数個配列されたスリットとを備えた構成にしたので、電機子反作用によって回転子位置検出が困難になる現象が発生しない。またリラクタンストルクは利用できるため、少ない電流で必要トルクを発生することができ、必要電流が減少した分モータ効率の向上がはかられる。
【００２４】
また、スリットは、固定子と回転子との間に存在する空隙側に開口する空隙側開口部を設けたことにより、固定子電流による電気子反作用を、空隙側にスリットを寄せていないものより小さくすることができ、固定子歯磁束の飽和に対してはより有効なものとなる。
【００２５】
また、スリットに永久磁石側に開口する永久磁石側開口部を設けたことにより、固定子磁束を遮蔽する効果を高めることができる。
【００２６】
また、スリットに充填された非磁性体充填材を備えたことにより、回転子鉄心の機械的強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態１を示す永久磁石型モータの横断面図である。
【図２】本発明の実施の形態２を示す永久磁石型モータの横断面図である。
【図３】本発明の実施の形態３を示す永久磁石型モータの横断面図である。
【図４】本発明の実施の形態４を示す永久磁石型モータの横断面図である。
【図５】従来の永久磁石型モータの横断面図である。
【図６】他の従来の永久磁石型モータの横断面図である。
【符号の説明】
１回転子、２固定子、３磁石挿入孔、４永久磁石、５貫通孔、６ａ，６ｂ，６ｃ，６ｄ，６ｅ固定子歯部、７スリット、８回転子鉄心、９固定子鉄心、１０固定子巻線、１１回転子磁極中心線、１２回転子反回転方向側鉄心、１３回転子回転方向側鉄心。

Claims

円筒状の固定子鉄心にコイルが巻回された固定子と、
この固定子の内側に設けられ、回転子鉄心と、この回転子鉄心に穿設された複数の磁石挿入孔と、この磁石挿入孔に挿入された永久磁石とを有する回転子と、この回転子に設けられ、各磁石挿入孔の外周側鉄心部の回転子磁極中心線より回転子反回転方向側のみに前記回転子磁極中心線方向に穿設され、周方向に複数個配列されたスリットと、
を備えたことを特徴とする永久磁石型モータ。
前記スリットは、前記固定子と前記回転子との間に存在する空隙側に開口する空隙側開口部を備えたことを特徴とする請求項１記載の永久磁石型モータ。
前記スリットは、前記永久磁石側に開口する永久磁石側開口部を備えたことを特徴とする請求項１記載の永久磁石型モータ。
前記スリットに充填された非磁性体充填材を備えたことを特徴とする請求項１又は請求項２又は請求項３記載の永久磁石型モータ。