JP6668558B2 - セルロースザンテート微細繊維含有樹脂組成物 - Google Patents

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Description

この発明は、セルロースザンテート微細繊維を含有する樹脂組成物に関する。
セルロースは樹脂やゴムに対する補強効果が知られている(下記特許文献1)。しかしながら、このようなセルロース粉末は繊維が絡み合った粒子状であり、セルロースの微細繊維形状を活かした高い補強効果は得られていない。
また、下記特許文献2には、ゴム組成物の補強性を高めるためにセルロースなどの短繊維をフィブリル化してゴムラテックスと撹拌混合し、その混合液から水を除去することでゴム/短繊維マスターバッチを得ることが開示されている。しかしながら、フィブリル化されたセルロース繊維は凝集しやすく、ゴム成分中に均一に分散させるのは困難である。
さらに、ゴム組成物への添加剤としてフィブリル化セルロースよりもさらに繊維径が細い、ナノサイズとなるセルロース微細繊維を添加した例が知られている(例えば下記特許文献3〜5)。これらは粒子状セルロースやフィブリル化セルロースよりもさらに高い補強効果を有すると考えられている。
一方、下記特許文献6には天然ゴムラテックスとセルロースザンテート溶液を混合し、硫酸/硫酸亜鉛溶液中にて共凝固し、ゴム−再生セルロースのナノコンポジットを作製する方法が記載されている。
特開2005−75856号公報 特開2006−206864号公報 特開2015−98756号公報 特許第5865063号公報 特許第5691463号公報 DE102006016979公報
しかしながら、特許文献3〜5に記載のセルロース微細繊維は、フィブリル化セルロースと同じか、場合によってはそれ以上に凝集しやすく、分散性が確保しにくく、偏りによって補強効果が十分に得られないおそれもあった。
また、特許文献6に記載の方法では、セルロースII型であり、酸溶液にて共凝固させる際に微細繊維とならないため、セルロースザンテート溶液の添加量を多くしないと十分な補強効果がみられなかった。
そこでこの発明は、微細繊維が樹脂やゴムに対する好適な作用を高い均一性で発揮でき、添加した樹脂組成物への作用がより優れた材料を提供することを目的とする。
この発明は、樹脂組成物や樹脂分散液にセルロースザンテート微細繊維を含有させることで、上記の課題を解決したのである。セルロースザンテートとは、セルロースの2、3、6位の水酸基のいずれかにザンテート基(−OCSSn+)が導入された化合物である。なお、Mn+はNaをはじめとする陽イオンである(nは1以上の整数)。ザンテート基はイオン解離しており、静電的反発により、解繊させやすく、かつ、凝集しにくくなるように作用する。このため、セルロース微細繊維よりも均一性が高く、かつアスペクト比が十分に高いため樹脂の強度向上効果に優れている。また、導入されているザンテート基由来の成分を含有しているため、そのままゴムに導入すると加硫促進効果を発揮する。
セルロースザンテート微細繊維を含有する樹脂分散液を加熱乾燥させて得られるマスターバッチは、セルロースザンテート微細繊維が樹脂中に適度に分散した均一性の高い構造となる。ただし、加熱条件によりセルロースザンテート微細繊維の一部もしくはほとんどのザンテート基が脱離してセルロースに戻り、セルロース微細繊維となることがある。その場合でもマスターバッチ中の微細繊維は元々の分散性、均一性を維持できる。このマスターバッチを用いて他の薬剤と混合して加硫を行うと、セルロースザンテート微細繊維のザンテート基由来の成分により加硫促進効果が発揮されたゴム組成物が得られる。
一方、セルロースザンテート微細繊維を含有する樹脂分散液を酸で処理すると、セルロースザンテート微細繊維のザンテート基が脱離しセルロース微細繊維となる。これを固めたマスターバッチも、元々のセルロースザンテート微細繊維が分散性よく組成物中に広がっているため、単純なセルロース微細繊維含有樹脂組成物よりも高い均一性を実現できる。このザンテート基を脱離させたセルロース微細繊維は、セルロースザンテート溶液(ビスコース)を再生させたものと違って、セルロースI型の結晶性を有し、また繊維としての構造を維持したものとなる。
また、セルロースザンテート微細繊維に加えてカーボンブラックを含有させたゴム組成物は、相乗的な補強効果が得られる。なお、ひずみが100%以下の低伸長時において、十分に解繊させたセルロースザンテート微細繊維はカーボンブラックの四分の一程度の添加量でほぼ同様の補強効果が得られる。
さらに、上記の構成において、酸化剤を添加することによりセルロースザンテート微細繊維が有するザンテート基を酸化変性させて、硫黄やジスルフィド等の結合を有する構成としてもよい。ザンテート基の一部が酸化剤の添加により酸化変性することで、ザンテート基より安定な硫黄や反応生成物となる。この硫黄や反応生成物はセルロースザンテート微細繊維中に残留し、酸再生処理や加熱再生処理によってもザンテート基の様に脱離することがないため、マスターバッチに含有させた際にゴムの応力等の性質向上が見込まれる。この硫黄および反応生成物はセルロースザンテート微細繊維内や分子内、又は分子間に残留しうる。上記の酸化変性させる手法としては、過酸化水素などの酸化剤を添加することが挙げられる。上記の酸化変性はマスターバッチを得る乾燥工程の前に、スラリーの段階で行うのが望ましい。
この発明により、樹脂やラテックス中に分散されたセルロースザンテート微細繊維、又はそれからザンテート基を脱離させたセルロース微細繊維は、凝集しにくく、樹脂組成物やそれをマスターバッチとして用いた樹脂成型体においても、優れた補強効果を発揮する。
(a)セルロースザンテートナノファイバーの10万倍TEM写真、(b)(a)の40万倍TEM写真 実施例における天然ゴムに対するXCNF添加量による応力ひずみの違いを示すグラフ 実施例における水素化ニトリルゴムに対するXCNF添加量による応力ひずみの違いを示すグラフ 実施例におけるXCNFの解繊度の違いによる応力ひずみの違いを示すグラフ 実施例におけるゴムラテックス中で解繊したXCNFの解繊時間の違いによる応力ひずみの違いを示すグラフ (a)ラテックス中で解繊したスラリー中のラテックスとセルロースザンテートナノファイバーの40万倍TEM写真、(b)マスターバッチ中セルロースザンテート微細繊維の2万倍TEM写真 実施例における天然ゴムに対してXCNFとTOCNと無添加との場合による応力ひずみの違いを示すグラフ 実施例における水素化ニトリルゴムに対してXCNFとTOCNと無添加との場合による応力ひずみの違いを示すグラフ 実施例における天然ゴムに対してXCNFとCBと無添加との場合による応力ひずみの違いを示すグラフ 実施例16におけるマスターバッチ中でセルロースに戻った微細繊維の状態を示すX線CT写真 実施例におけるマスターバッチ作製方法の違いによる応力ひずみの違いを示すグラフ 実施例におけるXCNFとCBとの相乗効果を示すグラフ 実施例における酸化変性反応による効果を示すグラフ 実施例におけるXCNF酸化処理物表面の光学顕微鏡写真 実施例におけるXCNF酸化処理物粒子状部のラマンスペクトル 実施例におけるXCNF酸化剤処理物のラマンスペクトル 実施例における過酸化水素の処理方法の違いによる効果を示すグラフ
以下、この発明について詳細に説明する。この発明はセルロースザンテート微細繊維を含有する樹脂組成物、又は樹脂分散液と、それらを利用したマスターバッチなどの樹脂製品群、及び成形体の製造方法である。
まず、セルロースザンテート微細繊維の製造方法について説明する。特に製法を限定するものではないが、基本的にはセルロースザンテート微細繊維はセルロース材料を加工して製造する。この材料として用いるセルロース材料とは、結晶状態であるセルロースI型のα−セルロースを含む材料をいう。α−セルロースであっても完全にセルロースII型になった材料は好適には使用できない。具体的な材料としては、例えば、木材を加工したクラフトパルプやサルファイトパルプ、木粉、稲わらなどのバイオマス由来の材料、古紙、ろ紙、紙粉などの紙由来の材料、粉末セルロースや、マイクロメートルサイズの微結晶セルロースなどの結晶性を保持したセルロース加工物などが挙げられる。ただし、これらの例に限定されるものではない。また、これらのセルロース材料は、純粋なα−セルロースである必要はなく、β−セルロースやヘミセルロース、リグニンなどのその他の有機物や無機物などを、除去可能な範囲で含んでいても良い。なお、以下の説明において単に「セルロース」と呼ぶ場合には「α−セルロース」を指す。これらのセルロース材料の中でも、元のセルロース繊維の長さが維持されやすいため木材パルプを用いるのが好ましい。
この発明にかかる製造方法では、上記セルロース材料を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属水溶液で処理するアルカリ処理を行ってアルカリセルロースを得ることができる。中でも、水酸化ナトリウムが好適に用いられる。この水酸化アルカリ金属水溶液の濃度は4質量%以上であることが必要であり、5質量%以上であると好ましい。4質量%未満であると、セルロースのマーセル化が十分に進行せず、その後のザンテート化の際に生じる副生成物の量が無視できなくなり、収率も下がってしまう。また、後述する解繊処理を容易にする効果が不十分なものとなってしまう。一方で、上記の水酸化アルカリ金属水溶液の濃度は、9質量%以下であると好ましい。9質量%を超えると、マーセル化の進行に留まらず、セルロースの結晶領域にまで水酸化アルカリ金属溶液が浸透してしまってセルロースI型の結晶構造が維持できなくなり、最終的にナノレベルの微細繊維が得られにくくなってしまう。
上記アルカリ処理の時間は、30分間以上であると好ましく、1時間以上であるとより好ましい。30分間未満ではマーセル化が十分に進行せずに、最終的な収率が低下しすぎるおそれがある。一方で6時間以下であると好ましく、5時間以下であるとより好ましい。6時間を超えてマーセル化を行った場合においては、時間の延長によるアルカリセルロースの生成量が増加することはなく、生産性が低下する、及びセルロースの重合度が低下するおそれがある。
上記アルカリ処理の温度は、常温前後か、常温からの発熱により加熱される程度の温度であるとよい。ただし、処理温度が冷蔵条件下のような極端な低温であると、アルカリ溶液のセルロースへの浸透性が増加しやすくなり、上記範囲のアルカリ濃度であってもセルロースの結晶領域にまで水酸化アルカリ金属溶液が浸透してしまってセルロースI型の結晶構造が維持しにくくなるおそれがある。このため、上記アルカリ処理を行う温度が凍結温度以上10℃未満の場合は、水酸化アルカリ金属溶液濃度が4質量%以上7質量%以下の範囲であると特に好ましくなる。10℃以上では特にこのような傾向は見られず、上記の通り4質量%以上9質量%以下の水酸化アルカリ金属水溶液が好ましい濃度となる。一方、加熱しすぎるとセルロースの重合度が低下するおそれがある。
上記アルカリ処理で得られたアルカリセルロースは、その後に固液分離して水溶液分をできるだけ除去しておくと好ましい。次のザンテート化処理にあたって、水分が少ない方が反応を進行させ易くなるからである。固液分離の方法としては、例えば遠心分離や濾別などの一般的な脱水方法を用いることができる。固液分離後のアルカリセルロースに含まれる水酸化アルカリ金属の濃度が3質量%以上8質量%程度となるとよい。薄すぎても濃すぎても作業効率が悪くなる。
上記アルカリ処理の次に、上記のアルカリセルロースに二硫化炭素(CS)を反応させて、(−ONa)基を(−OCSSNa)基にしてセルロースザンテートを得るザンテート化処理を行う。なお、アルカリ金属を代表してNaで記述するが、Na以外のアルカリ金属を用いる場合も同様の処理を行う。
このザンテート化処理におけるグルコース単位当たりの平均ザンテート置換度は、0.1以上であると好ましい。すなわち、元のセルロースのグルコース単位100個のうち、平均すると少なくとも10個以上が、(−OCSSNa)基を有するように置換されていることが好ましい。ザンテート化が十分でなく含有する(−OCSSNa)基が少なすぎると、この後に行う解繊処理における促進効果が十分に得られないからである。一方、ザンテート置換度が0.4を超えると、ザンテート基により個々のセルロースザンテート高分子の親水性が大きくなりすぎて解繊処理の際にセルロースザンテート高分子が溶解する方向へ進むと考えられるので、ザンテート置換度は0.4以下であるとよい。また、平均ザンテート置換度が0.33以下、すなわち元のセルロースのグルコース単位100個のうち、平均すると多くとも33個以下に(−OCSSNa)が導入されていると、収率及び効率の点からより好ましい。すなわち、ザンテート置換度が0.1以上であると好ましく、0.4以下であると好ましく、0.33以下であるとより好ましいということになる。
上記の平均ザンテート置換度を上げるには、十分な量の二硫化炭素を供給することが望ましい。具体的には、アルカリセルロース中に含有するセルロースの質量に対して、10質量%以上に対応する二硫化炭素を供給しておくことが望ましい。少なすぎるとザンテート置換度が下がりすぎて、後述するような負荷が軽微な処理でセルロースザンテート微細繊維が得られない。また、解繊処理後のセルロースザンテート微細繊維の分散性が十分に得られなくなってしまう。一方、平均ザンテート置換度が0.4以下となる量の二硫化炭素を添加するのが好ましいが、過剰量の二硫化炭素を供給しても、アルカリセルロースと反応できずに無駄となってしまい、二硫化炭素の供給に余分なコストがかかりすぎてしまう。
また、上記の平均ザンテート置換度を上げるには、二硫化炭素とアルカリセルロースとが接触する時間を30分間以上とすると好ましく、1時間以上だとより好ましい。二硫化炭素の接触によるザンテート化は速やかに進行するが、アルカリセルロースの内部にまで二硫化炭素が浸透するには時間がかかるためである。一方で、6時間もあれば脱水後のアルカリセルロースの塊に対しても十分に浸透が進んで、反応可能なザンテート化がほぼ完了するため、6時間以下であるとよい。
このザンテート化処理にあたっては、脱水したアルカリセルロースに二硫化炭素を供給し、温度46℃以下にて気体の二硫化炭素とアルカリセルロースとを反応させるのが好ましい。46℃を超えるとアルカリセルロースの分解による重合度の低下が起きるおそれがあり、また、均一に反応しにくくなることで、副生成物の量が増加したり、生成したザンテート基の脱離が起きるなどの問題が生じるおそれがある。
このザンテート化処理によって、結晶性を残したセルロース繊維(セルロースザンテート分子)の極性が大きくなり、親水性が増大するとともに、ザンテート基の静電的な反発によって分散性が向上すると考えられる。このため、上記のセルロースザンテートは、セルロースをそのまま解繊処理する方法よりも軽微な負荷での機械的な解繊処理で、元のセルロース材料が含んでいた結晶性であるセルロースI型の結晶構造を保持しながら、セルロースザンテート微細繊維とすることができる。
上記のザンテート化処理したセルロースザンテートは、そのままでもザンテート基による静電的な反発作用によって解繊処理がしやすくなっている。ここで、ザンテート化処理を行った後で、一旦洗浄して不純物、アルカリ、二硫化炭素等を除去しておくと、解繊処理に必要な負荷や回数を軽減させることができる。洗浄にあたっては水を用いると、アルカリによるpHを低減させつつ、セルロースザンテートの繊維そのものを傷めるおそれがほとんどないので好ましい。洗浄にあたっては、流水による洗浄でも、加水と脱水の繰り返しによる洗浄でもよいが、繊維長への影響が少ないものである必要がある。洗浄の程度としては、水酸化アルカリ金属として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどを用いる場合、洗浄後に解繊に用いるスラリーのpHが10.5以下であると好ましく、9.5以下であるとより好ましい。また、水酸化ナトリウムを用いる場合、前記スラリーにおける水酸化ナトリウムの濃度が40ppm以下であると好ましく、8ppm以下であるとより好ましい。
ただし、後述するように、アンモニアや、脂肪族または芳香族アミン等の水溶液を使用して洗浄し、溶液置換したものについては、pHが10.5を超えた場合でも、解繊することができる。アンモニアやアミンにより洗浄すると、ザンテート基に対応するカチオンであるNaやKなどのアルカリ金属イオンをアンモニウムイオンに置換することができる。アルカリ金属イオンを十分に除去すると、ある程度pHが高くても解繊が容易に進行する。
この発明にかかるセルロースザンテート微細繊維を含有する樹脂組成物及び樹脂分散液を得るには、予めセルロースザンテートを解繊して微細繊維としたものを樹脂や分散媒に導入する手法と、一旦樹脂や分散媒中に解繊前のセルロースザンテートを導入した後に樹脂や分散媒中で解繊してセルロースザンテート微細繊維とする手法とのどちらも利用可能である。解繊度を高めるのであれば樹脂や分散媒よりも水中で予め解繊させることが望ましい。また、セルロースザンテート微細繊維スラリーに水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を添加して、セルロースザンテート微細繊維スラリーの粘度を下げた後で樹脂や分散媒に導入しても良い。一方で、樹脂分散液(ゴムラテックスを含む)中で解繊させる場合、解繊は軽度となり、繊維径の分布が広い微細繊維となる。また、分散液中での解繊により生成したセルロースザンテート微細繊維とラテックス粒子の分散性がよくなり接触界面が増えると考えられ、接触界面の増加によってマスターバッチ作製時にザンテート基とラテックスとの間での化学結合又は高い親和性を得やすくなるメリットがある。
まず、セルロースザンテートを解繊処理するにあたっては、導入前に予め水中へ分散させた上で行うことが好ましい。なお、水中には他の成分、例えば無機物、界面活性剤、水溶性高分子等を共存させても良い。解繊処理の手法としては、繊維長の著しい低下を起こすものでないかぎり、一般的な手法を用いることができる。例えば、水中に分散させて回転式ホモジナイザーやビーズミル、超音波分散機や高圧ホモジナイザー、ディスクリファイナーなどにより解繊させる方法が挙げられる。ただし、いずれの方法でも必要とするエネルギーは、セルロースをそのまま解繊処理する方法で必要とするエネルギーに比べて著しく小さくなる。このため、圧力や回転数などの負荷を低減したり、処理に掛ける時間を短縮したりすることができる。また、繊維長をできるだけ維持するためにも、低負荷で行うことが望ましい。
また解繊処理前のセルロースザンテート、もしくはセルロースザンテート微細繊維のザンテート基が有するNaなどのアルカリ金属イオンを、他の陽イオンに一部または全てイオン交換してもよい。陽イオンとしては、水素イオン、K、Liなどの他のアルカリ金属イオン、Ag等の1価金属イオン、アンモニウムイオン、脂肪族または芳香族アンモニウムなどが挙げられ、1種または2種以上組み合わせても良い。また、必要に応じて亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の多価イオンを含んでいても良い。例えば、4級アンモニウムカチオンに置換する塩交換を行うことでセルロースザンテート微細繊維の疎水性を増大させることができ、樹脂分散液との混合、マスターバッチ作製の際に、樹脂とセルロースザンテート微細繊維の親和性を向上させることが期待できる。また、4級アンモニウムカチオンによってイオン解離がしやすくなっており、セルロースザンテートについては解繊が進行しやすくなり、またセルロースザンテート微細繊維については分散性が向上する効果を発揮させるとともに、水系での解繊処理を行いたい場合に有効となる。
上記の4級アンモニウムカチオンとしては、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、デシルトリメチルアンモニウムカチオン、ドデシルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、トリエチルフェニルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
なお、解繊したセルロースザンテート微細繊維に含まれるアルカリ金属イオン又はそれを一旦置換した陽イオンを、イオン交換した上で、このイオン交換済みのセルロースザンテート微細繊維に対して後述の脱離処理をしてもよい。ここでイオン交換するカチオンMn+としては(nは1以上の整数。3以下が望ましい)、水素イオン、Li、Na、Kなどの元のアルカリ金属イオンとは別のアルカリ金属イオン、Agなどのその他の一価金属イオン、アンモニウムイオン、脂肪族又は芳香族アンモニウムイオンなどが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせても良い。また、必要に応じて亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の多価イオンを含んでいても良い。さらに、ザンテート化されたセルロースには、水酸基以外の他の官能基を含んでいても良い。
一方、熱溶融させた熱可塑性樹脂や、硬化反応を起こす前の液状の樹脂混合体や、樹脂の分散液の液中に解繊前のセルロースザンテートを導入して、同様に解繊処理を行うことで、セルロースザンテート微細繊維を含有する樹脂や、樹脂分散液を得ることができる。上記の樹脂の分散液としては、例えばゴムラテックスが挙げられる。
ここで、上記セルロースザンテート微細繊維は、遠心分離処理した際に遠心上清に含まれる程度に十分に解繊されたセルロースザンテートナノファイバーと、解繊されきっていない未解繊物との混合物である。具体的には、セルロースザンテートナノファイバーとは繊維径が3nm以上200nm以下と定義する。上記セルロースザンテート微細繊維は、上記セルロースザンテートナノファイバーを50%以上含有していることが好ましく、多くの場合、この含有率が高いほどより好ましい。このセルロースザンテートナノファイバーは遠心上清として得ることが適当であるため、下記の説明では「遠心上清」と記載する場合、遠心上清が含有するセルロースザンテートナノファイバーを指す場合がある。
いずれの手順でも、解繊したセルロースザンテート微細繊維の大きさは、適宜選定できるが、平均繊維長が25nm以上であると好ましく、100nm以上であるとより好ましく、150nm以上であるとさらに好ましい。短すぎると繊維としての性質が発揮できず、粒子状セルロースに近づき、強度向上などの効果が薄れてしまう。一方で、平均繊維長が100μm以下であると好ましく、70μm以下であるとより好ましく、20μm以下であるとさらに好ましい。平均繊維長が長すぎる場合、解繊が不十分なものが残存している可能性があり、表面積が小さくなりネットワーク構造を形成しにくくなるおそれがある。なお、特に予め水系中で解繊させる場合に従来の方法と比べて低エネルギーにて解繊可能であるためこの範囲に調製しやすい。
さらに、解繊したセルロースザンテート微細繊維の平均繊維径は3nm以上であると好ましく、5nm以上であるとより好ましい。3nm未満となると細すぎて結晶性を維持した繊維としての限界が近くなり、微細繊維自体の強度が弱くなる可能性がある。一方で、500nm以下が好ましく、250nm以下であるとより好ましい。太すぎると解繊不十分な繊維の混入が避けられなくなり、樹脂組成物中でのネットワーク構造が崩れるからである。
なお、上記セルロースザンテート微細繊維の平均繊維長及び平均繊維径は、次式(1)(2)から算出した。
セルロースザンテート微細繊維スラリー全体の平均繊維長(μm)=(遠心上清数平均繊維長×ナノファイバー生成率)+{未解繊物数平均繊維長×(100%−ナノファイバー生成率)}・・・(1)
セルロースザンテート微細繊維スラリー全体の平均繊維径(nm)=(遠心上清数平均繊維径×ナノファイバー生成率)+{未解繊物数平均繊維径×(100%−ナノファイバー生成率)}・・・(2)
解繊したセルロースザンテート微細繊維の平均ザンテート置換度は、目的に応じて0.001以上0.4以下で調整可能である。
上記の樹脂組成物や樹脂分散液に上記の範囲となる解繊したセルロースザンテート微細繊維が含まれていると、これらを用いて製造したマスターバッチや、そのマスターバッチをさらに用いて製造した成形体において、セルロースザンテート微細繊維(又はそのザンテート基が脱離したセルロース微細繊維)が均一性高く分散されつつ強度向上などの性質改善効果を好適に発揮できるものとなる。
上記の樹脂分散液に含まれるセルロースザンテート微細繊維は、ザンテート基(−OCSS)の一部又は全部を(−OH)基へ変化させ、セルロースザンテートをセルロース微細繊維に戻す脱離処理ができる。この脱離処理としては、酸を用いて処理する手法が挙げられる。酸によって、繊維長の低下を起こすことなくザンテート基を水酸基に変化させる反応を進行させることができる。ここで用いる酸としては、鉱酸もしくは有機酸が挙げられ、鉱酸が好ましく、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。処理する酸のpHは6以下であると好ましく、5以下であるとより好ましい。このように酸で脱離処理されてセルロース微細繊維に戻っても、当初セルロースザンテート微細繊維として均一に分散されていると、容易に凝集する状態にはならず、長期間にわたって分散状態を維持することができる。これは、セルロースザンテート微細繊維が分散されて存在していることと、セルロースザンテート微細繊維の酸凝固速度より樹脂の酸凝固速度の方が速いため、セルロース微細繊維に戻った後も樹脂分散液中の樹脂の周囲に適度に広がって分布されるためと考えられる。
なお、酸により脱離処理をした場合は基本的には一旦洗浄するため、ザンテート基から脱離した成分は洗浄とともに大半が系外に除去されることになる。その後、乾燥させることでマスターバッチが得られる。
一方、セルロースザンテート微細繊維は加熱することでも、ザンテート基(−OCSS)の一部又は全部を(−OH)基へ変化させ、セルロースザンテートをセルロース微細繊維に戻す脱離処理ができる。加熱により脱離させようとする場合、脱離の程度は加熱時間と温度により調整可能であるが、加熱温度は40℃以上であると好ましい。高温ほど処理時間は短くなるが、セルロース繊維の切断や重合度の低下を防ぐため、過度の加熱とならないよう適宜条件設定する必要がある。なお、加熱されるセルロースザンテート微細繊維は乾燥物であっても、スラリー状であっても構わない。また、上記酸、加熱処理によりザンテート基が脱離したセルロース微細繊維は、上記セルロースザンテート微細繊維とほぼ同じ平均繊維径、平均繊維長を有する。
セルロースザンテート微細繊維を利用するにあたり、後述するマスターバッチを得るよりも前のいずれかの段階で、酸化剤を添加してもよい。酸化剤を添加するタイミングとしては、解繊処理をしたセルロースザンテート微細繊維を樹脂分散液に導入する前、若しくは導入する際に、または樹脂分散液中で解繊処理した後に、酸化剤を添加する処理を行うことが挙げられる。なお、マスターバッチを得るために、樹脂分散液を乾燥させたり、酸を添加して凝固させたりした後だと、酸化剤により生じる反応の進行が困難になるため、乾燥前に液中で反応させることが望ましい。
特に、酸化剤を大量に添加する場合、セルロールザンテート微細繊維を樹脂分散液に導入する前に酸化剤を添加する方法より、樹脂分散液に導入する際に合わせて、又は十分に樹脂分散液中にセルロースザンテート微細繊維を分散させた状態で添加・反応を起こさせる方法が好ましい。樹脂分散液と混合する前のセルロースザンテート微細繊維の状態で反応を多数進行させると、隣接している繊維同士が塊となる凝集が起こり、樹脂中で緻密なネットワーク構造を取りにくく、酸化剤処理したセルロースザンテート微細繊維による補強効果が十分に得られないおそれがあるためである。
添加する酸化剤としては、セルロースザンテート微細繊維の主鎖を切断する反応が起きず、重合度の低下が無視できる程度のものが望ましい。具体的には、過酸化水素、ヨウ素、亜ハロゲン酸またはその塩などが挙げられるが、残留成分の面から過酸化水素が好ましい。
酸化剤として過酸化水素を添加する場合、その添加量は、セルロースザンテート微細繊維が有するザンテート基のモル量に対して、5mol%以上添加するとよい。5mol%未満では反応が十分に進行せず、効果が不十分となる。一方、2000mol%以下の範囲で過酸化水素を添加するとよい。2000mol%を超えて添加してもそれ以上の反応はほとんど見込めず、無駄となる、もしくは凝集により繊維同士が塊状となり補強効果が十分に得られない可能性が高いためである。
酸化剤の添加による変性反応により、ザンテート基が脱離して、硫黄、硫黄化合物、またはその両方を生成したり、2つのザンテート基が反応して、セルロースザンテート微細繊維の分子内、又は分子間に−S−S−結合等を有するものとなる。この中でも特に、硫黄の粒子が生成しやすい傾向にある。
このようにセルロースザンテート微細繊維の酸化剤処理により、硫黄やジスルフィド等の結合を生じる。本処理により生じた硫黄およびジスルフィドは酸では分解しないことから、酸を添加後に硫黄含有量を測定すればザンテート基由来の硫黄分と区別できる。また、一般に硫黄は二硫化炭素に易溶であるが、上記の酸化剤処理により生成する硫黄および/またはジスルフィドは二硫化炭素に溶解しない。ここで、この硫黄分は繊維内およびマトリックス中に保持されるため、ザンテート基の一部ではないが二硫化炭素に溶解せずに残存すると考えられる。また、このジスルフィドはセルロース分子鎖と結合しているため溶解しないと考えられる。二硫化炭素に可溶性の硫黄分も、マスターバッチに含まれると加硫において強度向上に寄与するが、ザンテート基の一部ではなく二硫化炭素に溶解しない硫黄分は、ザンテート基よりも安定に且つセルロースザンテート微細繊維と強固な相互作用で残留していると考えられ、樹脂がゴムである場合、含有させた際の相互作用が増加し、より補強効果を高めることができる。
セルロースザンテート微細繊維を酸化剤処理したものを利用する場合において、ザンテート基の変性率とは、元々のセルロースザンテート微細繊維に含まれるザンテート基由来の硫黄分のうち、変性反応を起こし、ザンテート基に由来しない硫黄分の割合を示す。その変性率を以下の変数と式のように定義する。
・A(1):酸化剤処理に続いて、酸によりザンテート基を脱離させた繊維中の硫黄含有率
・A(2):A(1)において二硫化炭素に不溶の繊維中の硫黄含有率
・B :酸化剤処理前のセルロースザンテート微細繊維の全硫黄含有率
・変性率(1):ザンテート基を除く強度向上に寄与する硫黄分
・変性率(1)(%)=A(1)÷B×100
・変性率(2):ザンテート基を除く特に強度向上に寄与する二硫化炭素不溶硫黄分
・変性率(2)(%)=A(2)÷B×100
A(1)は0.1%以上が望ましい。0.1%未満では変性による効果が十分に現れない。一方、酸化剤処理後にラテックスと混合する場合には、8%を超えると分散性が低下する傾向にあるため、8%以下が望ましい。また、ラテックス中で分散させながら酸化剤処理を行う場合には、凝集がある程度抑制されるため、8%を超えても分散性を維持しやすい傾向にあるが、酸化剤添加量に対する強度向上効果は限定的であり8%以下が現実的である。一方、酸化剤処理により、ザンテート基の一部またはほとんどが安定な硫黄分に転換されるため、加工工程等におけるザンテート基の分解に起因する臭気の発生は抑制される。臭気抑制等を優先する場合には、酸化処理による硫黄含有率の上限はその限りではない。
なお、A(2)もA(1)と同様に、0.1%以上が望ましい。0.1%未満では変性による効果が十分に現れない。一方、酸化剤処理後にラテックスと混合する場合には、8%を超えると分散性が低下する傾向にあるため、8%以下が望ましい。また、ラテックス中で分散させながら酸化剤処理を行う場合には、凝集がある程度抑制されるため、8%を超えても分散性を維持しやすい傾向にある。
セルロースザンテート微細繊維を混合した樹脂分散液は加熱により乾燥させることで、水分を除去して凝固させたマスターバッチを得ることができる。このとき、40℃以上に加熱して乾燥させると、ザンテート基の一部又は全部が脱離してセルロースに戻った状態で凝固される。凝固された状態ではセルロース微細繊維は凝集しないため、このマスターバッチの状態で適度な分散状態を維持したまま保管することができる。また、この状態では酸を使用した場合と比較してザンテート基が脱離しにくいため、マスターバッチの中にはザンテート基由来の成分が残存しやすい。このザンテート基由来の成分は特に樹脂がゴムである場合、最終的なゴム製品を得る前の加硫工程において加硫促進効果を発揮させることができる。また、マスターバッチの状態で保管した場合においても、同様に加硫促進効果を発揮できる。
上記樹脂分散液として用いることができる樹脂としては、合成ゴムではイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブタジエン系ゴム、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを重合により製造したものを用いることができる、また天然ゴムのラテックスも用いられる。これらを分散液とするため、界面活性剤を含有していてよい。合成ゴムの場合、エマルジョン合成に用いた界面活性剤をそのまま含有させていてもよい。またゴム以外では、水性ウレタンやアクリル樹脂、アクリロニトリルなどが用いられる。
さらに、上記の樹脂としてゴムを用いる場合、用途に応じて、セルロースザンテート微細繊維以外の加硫促進剤、加硫剤、老化防止剤、フィラー、ワックス、補強剤、軟化剤、充填剤、着色剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、その他の添加剤を含んでいてもよい。フィラーとしては例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。加硫剤としては、別途添加する硫黄分などが挙げられる。
上記樹脂分散液の好ましい樹脂含有率は樹脂による。ただし、樹脂分散液中で解繊する場合には、粘度が高すぎないことが望ましい。
上記樹脂分散液又は上記樹脂組成物に含まれる、樹脂に対するセルロースザンテート微細繊維(又はザンテート基が一部若しくはすべて脱離したセルロース微細繊維)の割合は、特に制限されないが補強効果の面から、1質量%以上50質量%以下で運用するとよい。少なすぎると添加する効果がほとんど発揮されず、多すぎると樹脂分散液中で解繊する場合は粘度が上がりすぎ、マスターバッチの場合は硬くなりすぎて取り扱いにくくなるおそれがあり、20質量%以下が好ましい。なお、ここで上記の質量範囲の条件となるセルロースザンテート微細繊維は、繊維径が3nm以上200nm以下のセルロースザンテートナノファイバーが50%以上含まれており、セルロースザンテートナノファイバーと未解繊物を含めたセルロースザンテート微細繊維全体の平均繊維径が3nm以上500nm以下のものをいう。
上記のいずれの手順でも、マスターバッチとした後は、通常の樹脂組成物として樹脂成型体の製造に用いることができる。最終的に得られる樹脂成型体においても、特に強度が求められる材料において、セルロースザンテート微細繊維の添加による効果が発揮されやすい。
また、酸凝固を行わないマスターバッチか、又は酸凝固を行っても内部にザンテート基由来の成分を残したマスターバッチの場合、特に樹脂がゴムであるゴム組成物においてセルロースザンテート微細繊維は有用な効果を発揮する。まず、ゴムを加硫する際に、セルロースザンテート微細繊維はそのザンテート基由来の成分により加硫促進効果を発揮させることができる。
また、ゴム組成物にセルロースザンテート微細繊維と他のフィラーが併用されることで、相乗効果を発揮する場合がある。特に上記のフィラーの中でもカーボンブラックはセルロースザンテート微細繊維と相乗効果を発揮し、ゴム組成物に対する高い補強効果を実現できる。これは、カーボンブラックが20〜100nm程度の微粒子でありながら、全体としては微粒子同士が融着して連鎖状又は不規則な鎖状に枝分かれした複雑な凝集形態をとることに由来すると考えられる。この凝集形態は一次凝集体(アグリゲート)と呼ばれ、サイズは100〜300nm程度である。カーボンブラックをゴム組成物に添加することで発揮されるゴムの補強効果は、カーボンブラック表面の官能基による化学的相互作用とアグリゲート構造による効果との二つが考えられている。ゴム組成物の中に含有されたカーボンブラックは、そのアグリゲートが凝集した二次凝集体(アグロメレート)、又はそれがさらに凝集した構造をとっていると考えられる。これらの凝集構造によってゴム組成物の補強効果が得られる。
このカーボンブラックとセルロースザンテート微細繊維との両方がゴム組成物に含まれると、次のような作用が働くと考えられる。セルロースザンテート微細繊維は繊維径3〜200nm程度のセルロースザンテートナノファイバーが多く含まれ、カーボンブラックのアグリゲートよりも小さいため二次凝集体が形成する邪魔にはならない。このため、カーボンブラックの二次凝集体とセルロースザンテート微細繊維とが絡み合った構造を形成すると考えられ、カーボンブラックとセルロースザンテート微細繊維との両方による相乗的な補強効果が働くと考えられる。
ただし、この相乗的な補強効果が好適に働くためには、ゴム組成物に含まれるセルロースザンテート微細繊維の解繊が十分に進んでいることが必要、つまり少なくとも繊維径が3nm以上200nm以下のセルロースザンテートナノファイバーが含まれていることが必要である。ゴム組成物に含まれるセルロースザンテート微細繊維の全体としては、平均繊維径が3nm以上であると好ましい。一方で、平均繊維径が500nm以下であると好ましく、250nm以下であるとより好ましい。アグリゲートに比べて十分に繊維径が小さいと、相乗効果が発揮しやすくなるからである。逆に、平均繊維径の値を上げてしまう解繊不十分な繊維が残っていると、次のような問題が起こると考えられる。
例えばNRラテックス中でセルロースザンテートを解繊するとセルロースザンテートナノファイバーの生成率は約60%程度と想定され、ナノファイバーと未解繊物とが混在した状態になる。このような解繊が不十分なセルロースザンテート微細繊維が含有していると、サイズの大きなセルロースザンテートの未解繊物が、サイズの近いカーボンブラックの二次凝集体が生じることを部分的に阻害してしまうおそれがある。このため、相乗的な補強効果を発揮させるには、十分に解繊したセルロースザンテート微細繊維を添加、もしくはラテックス中でも十分に解繊させることが望ましい。
このような効果を発揮するカーボンブラックは、樹脂組成物中に対樹脂質量で10質量%以上含まれていると好ましく、15質量%以上含まれているとより好ましい。10質量%未満では添加による効果がほとんど見込めなくなってしまう。15質量%以上となることで、特に相乗効果が好適に発揮される。一方で、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましい。60質量%を超えるとカーボンブラックの成分が増えすぎて、樹脂組成物本来の性質を阻害してしまうおそれがあるからである。
カーボンブラックと上記セルロースザンテート微細繊維とを併用する場合、セルロースザンテート微細繊維中に含まれる繊維径が3nm以上200nm以下のセルロースザンテートナノファイバーの質量混合比は10:1〜1:1であると好ましい。一方が多すぎても相乗効果としては不十分になるためである。特に、ひずみ100%以下の低伸長時においてセルロースザンテート微細繊維単独による補強効果はカーボンブラック単独の場合の四倍ほどあるため、カーボンブラックの量がセルロースザンテートナノファイバーの量より少なくなると、セルロースザンテートナノファイバーの補強効果が強くなりすぎて、カーボンブラックとの併用による相乗効果が得られにくくなるためである。
上記セルロースザンテート微細繊維を添加した樹脂分散液はマスターバッチに加工する他に、紙や不織布、織布などに塗工して、表面改質効果を与えたり、耐熱性向上効果を与えたりすることもできる。例えば塗工後の表面を加熱したときに、分散されたセルロースザンテート微細繊維が含有されていることで、ブロッキングの発生を防止する効果が発揮される。また、添加剤を含むにも拘わらず、セルロースザンテート微細繊維(又はザンテート基が脱離したセルロース微細繊維)が均一性高く分散されているため、表面の凹凸をさらに粗くさせるおそれが少ない。
なお、マスターバッチにする以外に塗工する場合や、セルロースザンテート微細繊維を単独で用いる場合、その他の利用の場合でも、最終的には乾燥を行うが、乾燥前の樹脂分散液に酸化剤を添加して変性反応を行い、ザンテート基を安定な硫黄および/またはジスルフィド等の結合を有するものとしておくことで、いずれの場合も強度への向上効果を高めることができる。いずれの場合でも、A(1)及びA(2)は0.1%以上が好ましい。また、酸化物処理後にラテックスと混合する場合には、分散性を維持するために、A(1)及びA(2)は8%以下が好ましい。ラテックス中で分散させながら酸化剤処理を行う場合には、8%を超えても凝集がある程度抑制されるが、酸化剤の添加効率の面から8%以下であるとよい。
以下、この発明を具体的に実施した実施例を示す。まず、セルロースザンテート微細繊維を得るためのセルロース材料として、クラフトパルプ(日本製紙(株)製:NBKP、α−セルロース含有率:90質量%、α−セルロースの平均重合度1000、以下、「NBKP」と表記する。)を用いた。以下、セルロースザンテート微細繊維を得るための手順から説明する。
(実施例1a)
<アルカリ処理>
NBKPをパルプ固形分(α−セルロースに加えて不純物であるリグニンなどを含む固形分、及びそれらの変性物を指す。以下同じ。)100gとなるように秤量した。これを3Lのビーカーに導入し、8.5質量%水酸化ナトリウム水溶液 2500gを入れ、室温にて3時間撹拌してアルカリ処理を行った。このアルカリ処理後のパルプを遠心分離(ろ布400メッシュ、3000rpmで5分間)により固液分離してアルカリセルロースの脱水物を得た。このアルカリセルロースの脱水物における水酸化ナトリウム含有率は7.5質量%、パルプ固形分は27.4質量%であった。
<ザンテート化処理>
上記で作製したアルカリセルロースの脱水物をパルプ固形分10gとなるように秤量し、ナス型フラスコに導入した。このナス型フラスコ内へ二硫化炭素を3.5g(対パルプ固形分35質量%分)導入し、室温で4.5時間硫化反応を進行させてザンテート化処理を行った。
<ザンテート置換度測定>
また、セルロースザンテートについて、平均ザンテート置換度をBredee法により測定したところ、0.295であった。なお、このザンテート置換度はセルロースのグルコース単位当たりにザンテート基が導入されている度合に対する値である。Bredee法の手順は次のように行った。100mLビーカーにセルロースザンテートを1.5g精秤し、飽和塩化アンモニウム溶液(5℃)を40mL添加した。ガラス棒でサンプルを潰しながらよく混合し、15分間放置後、GFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)でろ過して、飽和塩化アンモニウム溶液で十分に洗浄した。サンプルをGFPろ紙ごと500mLのトールビーカーに入れ、0.5M水酸化ナトリウム溶液(5℃)を50mL添加して撹拌した。15分間放置後、1.5M酢酸で中和した(フェノールフタレイン指示薬)。中和後蒸留水を250mL添加してよく撹拌し、1.5M酢酸 10mL、0.05mol/Lヨウ素溶液10mLをホールピペットを使用して添加した。この溶液を0.05mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した(1%澱粉溶液指示薬)。チオ硫酸ナトリウムの滴定量、サンプルのセルロース含有量より次式(3)からザンテート置換度を算出した。このザンテート置換度は、セルロース繊維におけるグルコース単位当たりに、導入されているザンテート基の比率である。
ザンテート置換度=(0.05×10×2−0.05×チオ硫酸ナトリウム滴定量(mL))÷1000÷(サンプル中セルロース量(g)/162.1)……(3)
<セルロースザンテートの結晶性保持の確認>
上記のセルロースザンテート中のセルロース含有率測定時に得られたセルロースについてIR測定を行った結果、セルロースI型に対応するピーク形状が観測された。
<解繊処理>
上記のザンテート化処理で作製したセルロースザンテートをセルロース固形分で0.25g秤量し、蒸留水50mLを添加して攪拌し、セルロース固形分0.5質量%のスラリーとした。このスラリーを、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製:AM−7)を用いて17000rpmにて30分間かけて解繊処理してセルロースザンテート微細繊維を得た。
<微細繊維の解繊の度合い>
上記で解繊処理を行ったセルロースザンテート微細繊維のスラリー(セルロース固形分0.5質量%)に蒸留水を添加してスラリー濃度を0.1質量%に調整した。このスラリーを遠心分離(9000rpm、10分間)して未解繊物を沈降させた。上清はナノファイバースラリーとして分離して三角フラスコに移し、沈降した未解繊物に蒸留水を添加して再度遠心分離を行い、未解繊物を洗浄した。未解繊物をるつぼに移して絶乾し、未解繊物の質量を測定した。未解繊物の質量と解繊処理したセルロースザンテート中のセルロース含有量より次式(4)から生成したセルロースザンテートナノファイバーの生成率(解繊度)を求めた。以下、上記遠心分離操作にて沈降しなかったセルロースザンテート微細繊維をセルロースザンテートナノファイバーと定義する。
セルロースザンテートナノファイバーの生成率(質量%)=(セルロースザンテート中のセルロース含有量−未解繊物の質量)÷(セルロースザンテート中のセルロース含有量)×100……(4)
上記で三角フラスコに移したセルロースザンテートナノファイバースラリーを一部サンプリングして500mLのトールビーカーに入れた。そこに0.5M水酸化ナトリウム溶液(5℃)を50mL添加して撹拌し、Bredee法により平均ザンテート置換度を測定したところ、0.285であった。Bredee法ではヨウ素はザンテート基としか反応しないことから、解繊処理後もザンテート基がほとんど脱離していないことが確認された。
<遠心上清の繊維長、繊維径測定方法>
水で0.1質量%に希釈した微細繊維スラリーを、遠沈管に入れ、9000rpmにて10分間かけて遠心分離を行った。遠心上清を回収し、濃度調整後染色を施し、支持膜上で乾燥し乾燥検体とした。透過型電子顕微鏡(TEM (株)日立ハイテクノロジーズ製)を使用し、加速電圧100kVで観察を行った。観察を行った100,000倍の画像よりナノファイバー100本を選択し、繊維長を測定した。同様に、400,000倍の画像よりナノファイバー100本を選択し、繊維径を測定した。遠心上清に含まれるナノファイバーの平均繊維長、平均繊維径はそれぞれ測定した100点の平均とした。それぞれの写真を図1(a)、(b)に示す。
上記方法により算出されたセルロースザンテートナノファイバーは繊維径が3nmから200nmであり、数平均繊維径は7nm、繊維長は25nmから1μmであり、数平均繊維長は170nmとなった。以下、この遠心上清に含まれるセルロースザンテートナノファイバーを「XCNF1」と略記する。
(実施例1b)
実施例1aと同様の操作を行い、セルロースザンテート微細繊維を得た。ただし、遠心分離は行わず、実施例1aでは分離された遠心上清と未解繊物とが混合された状態とした。その結果を表1に示す。ナノファイバー生成率は92.4%となった。以下、このセルロースザンテート微細繊維を「XCNF2」と略記する。XCNF2にはセルロースザンテートナノファイバー(XCNF1)が含まれているが、未解繊物であるより大きな繊維も含んでいる。
<未解繊物の繊維長測定方法>
水で0.1質量%に希釈した微細繊維スラリーを、遠沈管に入れ、9000rpmにて10分間かけて遠心分離を行った。遠心上清を除去後、遠沈管底部に残留した未解繊物を回収し、スラリー濃度0.05質量%になるように調整、ホモジナイザーで再分散させた上で、エタノールと体積比1:1で混合した。混合液をスライドガラス上に20μL滴下して自然乾燥させた。乾燥後、染色液であるサフラニンを滴下して一分間静置し、流水で洗浄後に再度自然乾燥させ、顕微鏡観察を行った。顕微鏡観察を行った1000倍の画像を100分割し、1分割分(35μm×26μm)の中に含まれる繊維を一本選択して合計100本分の繊維長を測定した。繊維長の値は測定した100点の平均とした。上記方法により算出されたセルロースザンテート微細繊維に含まれる未解繊物の繊維長は40μmから860μmであり、数平均繊維長は195μmとなった。
<未解繊物の繊維径測定方法>
水で0.1質量%に希釈した微細繊維スラリーを、遠沈管に入れ、9000rpmにて10分間かけて遠心分離を行った。遠心上清を除去後、遠沈管底部に残留した未解繊物を回収し、スラリー濃度0.03質量%になるように調整し、ホモジナイザーで再分散させた上で、tert−ブチルアルコールと体積比8:2(tert−ブチルアルコール20%含有)で混合した。混合液を凍結乾燥させ、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真を撮影した。FE−SEM観察を行った1000倍、10,000倍の画像から繊維100本を選択し、繊維径を測定した。繊維径の値は測定した100点の平均とした。上記方法により算出されたセルロースザンテート微細繊維に含まれる未解繊物の繊維径は38nmから7μmであり、数平均繊維径は460nmとなった。
上記、遠心上清の数平均繊維長、数平均繊維径と、未解繊物の数平均繊維長、数平均繊維径、および、ナノファイバーの生成率より、上記(1)式、(2)式から算出される数値をセルロースザンテート微細繊維スラリー全体の平均繊維長、平均繊維径とした。上記(1)式、(2)式により算出されたXCNF2全体の平均繊維径は41nm、平均繊維長は15μmと算出された。
Figure 0006668558
(実施例2)
実施例1aにおいて、解繊処理の速度を17000rpmから10000rpmに低下させ、解繊処理の時間を30分間から5分間に短縮させた。その結果を表1に示す。ナノファイバーの生成率は52.4%に低下したが、セルロースザンテート微細繊維が生成していることが確認された。以下、この実施例2で得られたセルロースザンテート微細繊維を「XCNF3」と略記する。上記(1)式、(2)式により算出されたXCNF3全体の平均繊維径は222nm、平均繊維長は93μmと算出された。
(参考例)
NBKPを用い、室温下でパルプ濃度2質量%にて標準離解工程を行ってセルロースを得た(脱水後のセルロース量38.1%)。このセルロースに対して、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル(以下、「TEMPO」と略す)を触媒として、対パルプ質量で5.5mmol/gのNaClOを添加し、室温下にて2時間掛けてTEMPO酸化を行った。これにより対質量の平均酸化度が2mmol/gのTEMPO酸化セルロースが得られた。このTEMPO酸化セルロースを、実施例1と同様に解繊処理して、ナノファイバー生成率92.4%、平均重合度280でセルロースI型を維持したTEMPO酸化セルロース微細繊維を得た。以下、「TOCN」と略記する。
<天然ゴムラテックスへの混合による天然ゴムシート強度増強効果確認>
(実施例3)
・マスターバッチの作製
実施例1にて作製したXCNF1と天然ゴム(以下、「NR」と略す)ラテックス((株)レヂテックス社製 HA NR LATEX 固形分60%、アンモニア0.7%)、14%アンモニア水を混合し(セルロースザンテートナノファイバー添加量はNR固形分100質量部に対して4質量部)、ホモジナイザーにて撹拌した(8000rpm、5分)。撹拌混合後スラリーを70℃にて2日間乾燥し、次いで減圧乾燥を行い、NRマスターバッチを作製した。
・コンパウンドの作製
得られたマスターバッチを50℃に加温した二本ロール(日本ロール製造(株) φ200mm×L500mmミキシングロール機)を使用して素練りし、次いで下記表2及び表3の配合通りにステアリン酸(ナカライテスク(株)製)、酸化亜鉛(ナカライテスク(株)製)、硫黄(ナカライテスク(株)製)、加硫促進剤(三新化学工業(株)製サンセラーNS−G)を添加混合し、厚さ2mm以上のコンパウンドシートを作製した。
Figure 0006668558
・加硫工程
得られたコンパウンドシートを用いて加硫判定機(株式会社オリンテック製:キュラストメーターV型 測定温度150℃、測定時間20分)により90%加硫時間(Tc90)を測定した。この時、Tc90は5.5分であり、後述する比較例1に比べて加硫促進効果が発揮されていることが確認された。このコンパウンドシートを金型に入れ、測定したTc90の値に基づき150℃、5.5分間圧縮成形して厚さ2mmの加硫ゴムシートを作製した。
Figure 0006668558
・強度物性測定
得られた加硫ゴムシートからJIS3号形のダンベル形状に試験片を打ち抜き(n=5)、各試験片について厚みを測定した(n=3)。試験片は引張試験機((株)島津製作所 精密万能試験機 AG−1000D)にて引張試験(つかみ幅:50mm、速度:500mm/分JIS K6251準拠:ISO37に対応する)を行い、破断点応力、及びひずみを求めた。この結果を表4に示す。
Figure 0006668558
(実施例4)
実施例3において、XCNF1の代わりにXCNF2を用い、対ゴム添加量を5質量部に変更した以外は実施例3と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表4に示す。また、Tc90は5.6分となり、XCNF1を用いた実施例3と同様に、後述する比較例1に比べて加硫促進効果が発揮されていることが確認された。
(実施例5)
実施例4において、XCNF2の対ゴム添加量を10質量部に変更した以外は実施例4と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表4に示す。実施例4に比べて、破断点までの応力が添加量に応じて増加した。
(比較例1)
実施例3において、XCNF1を添加しない以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。Tc90は8分であった。
比較例1と実施例3〜5について、ひずみを横軸に、応力を縦軸に取ったグラフを図2に示す。添加量が多いほど同じひずみにおける応力が大きいことが確認された。
<微細繊維の状態による評価>
(実施例6)
実施例4において、XCNF1をナノファイバー生成率が低いXCNF3に変更した以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表4に示す。Tc90は6.1分であり、セルロースザンテートナノファイバーであるXCNF1の方がXCNF3に比べて加硫促進効果が僅かに高いことが確認された。同じひずみにおける応力は、XCNF3の方が高い結果となった。
(実施例7)
実施例4において、添加するXCNF2を、一旦加熱処理して平均ザンテート置換度が0.001未満のザンテート基を脱離したセルロース微細繊維に加工したものに変更した以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表4に示す。Tc90は7.8分となり、僅かながら加硫促進効果が見られた。これはザンテート基が脱離してセルロース微細繊維となったことで、マスターバッチ中にザンテート基由来の成分が減少したためと考えられる。
<樹脂分散液の違い、添加量の違いによる評価>
(実施例8〜10、比較例2)
実施例4において、用いるゴムを天然ゴムから水素化ニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製:ゼットポール2230LX 固形分40%、「HNBR」と略記する。)に変更し、XCNF2の添加量を対ゴム1質量部、3質量部、5質量部に変更し、混練条件を表3の如く変更し、加硫を160℃にて行った以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った(実施例8〜10)。また、比較例2として、XCNF2を導入せずに同様にHNBRを用いた以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表4に示す。これらについてひずみを横軸、応力を縦軸にとったグラフを図3に示す。
(実施例11、比較例3)
実施例4において、用いるゴムを天然ゴムからスチレンブタジエンゴム(JSR株式会社製:JSR2108 固形分40%、「SBR」と略記する。)に変更し、混練条件を表3の如く変更した以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った(実施例11)。また、比較例3として、XCNF2を導入せずに同様にSBRを用いた以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。それらの結果を表4に示す。また、XCNF2を添加した実施例11はTc90は9.6分となり、XCNF2を添加しない比較例3のTc90の値12.3分と比べて、加硫促進効果が確認された。
<解繊度の違いによる評価>
(比較例4)
実施例4において、XCNF2の代わりに、解繊処理を行っていないセルロースザンテートを添加した以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表3,4に示す。比較例1に比べて破断点応力がほとんど変わらず、強度向上効果が発揮されないことが確認された。また、XCNF1を添加しない比較例1,解繊していない比較例4,解繊度52.4%の実施例6,解繊度92.4%の実施例4について、ひずみを横軸、応力を縦軸にとったグラフを図4に示す。
(比較例5)
実施例4において、XCNF2の代わりにTOCNを用いた以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表4に示す。強度向上効果は得られたが、加硫促進効果はXCNF2に比べると低かった。
(比較例6)
実施例4において、XCNF2の代わりにセルロースナノファイバー((株)スギノマシン製:BiNFi−sWMa―10002)を用いた以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表4に示す。Tc90は8分となり、強度向上効果は十分に得られたが、加硫促進効果が全く見られなかった。
(比較例7)
実施例10において、XCNF2の代わりにTOCNを用いた以外は同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表4に示す。
<ゴムラテックス中での解繊処理>
(実施例12〜14)
実施例4において、XCNF2の代わりに、解繊前のセルロースザンテートをラテックスへ混合した後、ホモジナイザーにて15000rpmで5分間(実施例12)、15分間(実施例13)、30分間(実施例14)解繊して、解繊されたセルロースザンテート微細繊維を含有するゴムラテックスを得た。その上で、実施例4と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。これらの構成を表5に、その結果を表6に示す。解繊が進むと、ある程度の範囲で強度向上効果が高まることが示された。解繊時間の異なるこれらの例と、添加しない比較例1とについて横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図5に示す。
なお、NRラテックス中で解繊したセルロースザンテート微細繊維の繊維長、繊維径の測定方法は次のように行った。
<樹脂分散液中セルロースザンテート微細繊維の繊維長、繊維径測定方法>
セルロースザンテート微細繊維を含有するゴムラテックスに濃度調整後染色を施し、支持膜上で乾燥し乾燥検体とした。透過型電子顕微鏡(TEM (株)日立ハイテクノロジーズ製)を使用し、加速電圧100kVで観察を行った。観察を行った100,000倍の画像より微細繊維100本を選択し、繊維長を測定した。同様に、400,000倍の画像より微細繊維100本を選択し、繊維径を測定した。NRラテックス中セルロースザンテート微細繊維の繊維長、繊維径はそれぞれ測定した100点の平均とした。このうち、実施例13における400,000倍の写真を図6(a)に示す。
<マスターバッチ中のセルロースザンテート微細繊維 繊維長、繊維径測定方法>
実施例13において作製したマスターバッチを一部採取し、高分子凍結して超薄切片を作製し、観察検体とした。透過型電子顕微鏡(TEM 同上)を使用し、加速電圧100kVで観察を行った。観察を行った20,000倍の画像より微細繊維100本を選択し、繊維長を測定した。同様に、200,000倍の画像より微細繊維100本を選択し、繊維径を測定した。マスターバッチ中のセルロースザンテート微細繊維の繊維長、繊維径はそれぞれ測定した100点の平均とした。このマスターバッチの20,000倍の写真を図6(b)に示す。
実施例13において、ラテックス中で解繊したセルロースザンテート微細繊維のサイズは図6(a)に示す様に80%以上が繊維径3nm〜200nm、繊維長25nm〜1μmのセルロースザンテートナノファイバーであり、セルロースザンテート微細繊維全体の平均繊維径は3nm〜500nmであったが、一部図6(b)に示す様に繊維径500nm〜4μm、繊維長10μm〜700μmのものも確認された。以上より、ラテックス中で解繊したセルロースザンテート微細繊維のサイズは繊維径3nm〜4μm、繊維長25nm〜700μmまで分布が幅広い結果となった。
Figure 0006668558
Figure 0006668558
(比較例8)
実施例13においてセルロースザンテートの代わりに解繊処理前のTEMPO酸化セルロースを用いた以外は実施例13と同様にゴムラテックス中で解繊して、解繊されたTEMPO酸化セルロース微細繊維を含有するゴムラテックスを得た。その上で、実施例12と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その構成を表5に、その結果を表6に示す。また、無添加の比較例1と、セルロースザンテートをゴムラテックス中で解繊した実施例13と、TEMPO酸化セルロースをゴムラテックス中で解繊した比較例8とについて、横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図7に示す。
また、HNBRを用いた場合の比較として、無添加の比較例2と、XCNF2を添加した実施例10と、TOCNを添加した比較例7とについて、横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図8に示す。
(実施例15)
実施例10において、解繊前のセルロースザンテートをラテックスへ混合した後、ホモジナイザーにて15000rpmで15分間解繊して、解繊されたセルロースザンテート微細繊維を含有するゴムラテックスを得た。その上で、実施例10と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その構成を表5に、その結果を表6に示す。HNBRラテックス中で解繊した場合においても強度向上効果が確認された。
<カーボンブラックを用いた比較試験>
(比較例9〜11)
実施例3において、XCNF1を添加しないNRのみのマターバッチを作製し、コンパウンド作製時にカーボンブラック(東海カーボン株式会社製:シースト3)を対ゴム質量でそれぞれ20、30、40質量部添加したものについて、同様にゴムコンパウンドを得た(比較例9〜11)。その上で実施例3と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その構成を表7に、その結果を表8に示す。
Figure 0006668558
Figure 0006668558
これらのカーボンブラックのみを用いたゴム補強の例のうち比較例9及び11と、セルロース微細繊維によるゴム補強の例のうち、実施例4及び5の効果を比較した。その応力ひずみのグラフを図9に、数値を表9に示す。特に表9において、M10及びM30では、実施例4と比較例9、実施例5と比較例11とが近い補強効果を示すことがわかる。比べると、実施例4のXCNF添加量が5phrであり、比較例9のCB添加量が20phrである。また、実施例5のXCNF添加量が10phrであり、比較例11のCB添加量が40phrである。これらのことから、100%以下の低伸長時には、セルロースザンテート微細繊維はカーボンブラックに対して約四分の一の添加量でほぼ同等の補強効果を発揮することが示された。
Figure 0006668558
<マスターバッチ作製方法の違いについて評価>
(比較例12:XCNF無し・酸凝固からの乾燥)
比較例1において、ホモジナイザーで撹拌した後、70℃で2日間乾燥する前に、1mol/l硫酸溶液を撹拌しながらpHが5となるまで滴下した。さらに、析出したゴム粒子を回収し、pHが中性となるまで洗浄した。その上で、比較例1と同様に70℃にて2日間乾燥し、減圧乾燥してマスターバッチを作製した。Tc90は11.9分となった。
Figure 0006668558
(実施例16:XCNFあり・酸凝固からの乾燥)
実施例4において、ホモジナイザーで撹拌した後、70℃で2日間乾燥する前に、1mol/l硫酸溶液を撹拌しながらpHが5となるまで滴下した。さらに、析出したゴム粒子を回収し、pHが中性となるまで洗浄した。その上で、実施例3と同様に70℃にて2日間乾燥し、減圧乾燥してマスターバッチを作製した。Tc90は10.9分となり、酸凝固の際にザンテート基が脱離してセルロース微細繊維に戻ったものの、比較例12と比べてわずかながら加硫促進効果がみられた。また、得られたマスターバッチについてX線CTを測定したところ、明確な繊維像や凝集塊はほとんど観察されなかった。この写真を図10に示す。これにより、X線CTの分解能の大きさにまでは凝集していないことが確かめられた。
なお、X線CTの測定条件は次の通りである。
・装置:島津社製 SMX−160CT−SV3S
・空間分解能:1.4μm
・管電圧:90kV、管電流:70μm
・SID: 400mm、SOD:5mm
・ビュー数 1200(ハーフスキャン)
(比較例13:ビスコース:酸凝固からの乾燥)
実施例4において、XCNF2の代わりにビスコース(レンゴー(株)製:セルロース濃度9.5質量%)を用い、天然ゴムラテックス、アンモニア水とともにホモジナイザーにて同様に撹拌した後、70℃にて2日間乾燥させる前に、1mol/l硫酸溶液を撹拌しながらpHが5となるまで滴下した。さらに、析出したゴム粒子を回収し、pHが中性となるまで洗浄した。その上で、実施例4と同様に70℃にて2日間乾燥し、減圧乾燥してマスターバッチを作製した。Tc90は13.5分となり、加硫促進効果はみられなかった。
比較例12、実施例16、比較例13について、ひずみと応力について測定した結果を表10に、横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図11に示す。すなわち、比較例12(酸凝固後に加熱乾燥)と、実施例4(XCNFあり・加熱乾燥のみ)と実施例16(XCNFあり・酸凝固後に加熱乾燥)と、比較例13(ビスコース・酸凝固後に加熱乾燥)とを比較した。酸凝固したものは、特に低伸長時の応力が、加熱乾燥のみの例とくらべると若干小さく、破断点の応力、ひずみも小さいものとなった。ザンテート基の脱離により、NRとの相互作用が減少したためと考えられる。また、比較例13のセルロースI型ではなくセルロースII型となっているビスコースを用いた例では、XCNFと比べると強度が低く、加硫促進効果も無い結果となった。
<熱安定性の評価>
微細繊維の添加が無い比較例1,XCNF2を添加した実施例4,TOCNを添加した比較例5,ラテックス中でセルロースザンテートを解繊した実施例13,ラテックス中でTEMPO酸化セルロースを解繊した比較例8について、加硫ゴムシートの測定を行った。色差計(technidyne社製:Color Touch PC)にて明度(L値)を測定した値を表11に示す。XCNFを添加したゴムシートは、TOCNを添加したゴムシートに比べて、いずれもL値が大きくなった。TOCNに比べてXCNFの方が熱安定性が高いため、加硫時の加熱により変色しにくいと考えられる。
Figure 0006668558
<ゴムとXCNFの相互作用について>
XCNFはザンテート基を持つため、NRラテックスと混合、マスターバッチ作製時にNRの二重結合部位と反応し、化学結合するか又は高い親和性でNRと相互作用していると考えられる。マスターバッチのNRを溶解し、残存成分量(バウンドラバー量)を測定することにより、ゴムとXCNFの相互作用の有無を確認した。対象としては、加熱乾燥でマスターバッチを得る実施例4,XCNFをTOCNに変えた比較例5,CNFに変えた比較例6,ラテックス中の解繊に変えた実施例13、酸凝固工程を加えた実施例16、ビスコースを用いた比較例13、NRのみの比較例1である。
バウンドラバー量の測定方法は次のように行った。100mLのネジ口三角フラスコにゴムマスターバッチを0.8g秤量し、トルエン80mLを添加した。添加後密閉し、室温にて時々振り混ぜながら一週間かけてゴムをトルエンに溶解させた。その後、残存したバウンドラバーをあらかじめ重量を測定したGFPろ紙(ADVANTEC社製GS−25)を使用して減圧ろ過を行い、トルエンで十分にバウンドラバーを洗浄した。洗浄後、バウンドラバーとろ紙をそのまま105℃の乾燥機で8時間乾燥し、重量を測定した。測定した重量と下記式(5)よりバウンドラバー比率を算出した。その結果を表12に示す。
・バウンドラバー比率(質量%)=(絶乾後重量−ろ紙重量)÷マスターバッチサンプリング量×100・・・(5)
Figure 0006668558
<ラテックス中解繊からの酸凝固>
(実施例17)
実施例13において、ラテックス中での解繊処理を行った後、70℃で2日間乾燥する前に、1mol/l硫酸溶液を撹拌しながらpHが5となるまで滴下した。さらに、析出したゴム粒子を回収し、pHが中性となるまで洗浄し、70℃にて2日間乾燥し、次いで減圧乾燥を行い、マスターバッチを作製した。その上で、実施例3と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表13、14に示す。また、Tc90は11.1分となり、実施例16と同様に酸凝固の際にザンテート基が脱離してセルロース微細繊維に戻ったものの、比較例12と比べてわずかながら加硫促進効果がみられた。
Figure 0006668558
Figure 0006668558
<マスターバッチに含まれる硫黄含有量確認>
XCNFを混合したマスターバッチは加硫時に加硫促進効果があることが上記で確かめられている。これはセルロースザンテート微細繊維のザンテート基によるものと考えられるため、それぞれのサンプルでのマスターバッチ中の硫黄含有量の測定を行った。具体的には、硫黄分析装置(Tox−100)を使用し、三回測定した平均を求めた。対象としては、添加の無い比較例1,XCNFを添加する実施例4、TOCNを添加する比較例5、CNFを添加する比較例6、ラテックス中でXCNFの解繊を行う実施例13、酸凝固を行う実施例16、ビスコースを用いた比較例13、及び下記のラテックス中でXCNFの解繊をしかつ酸凝固を行う実施例17について行った。その結果を表15に示す。
(実施例18:ラテックス中解繊・酸凝固)
ゴムラテックス中での解繊を行う実施例13において、ホモジナイザーで撹拌した後、70℃で2日間乾燥する前に、1mol/l硫酸溶液を撹拌しながらpHが5となるまで滴下した。さらに、析出したゴム粒子を回収し、pHが中性となるまで洗浄した。その上で、実施例13と同様に70℃にて2日間乾燥し、減圧乾燥してマスターバッチを作製した。
Figure 0006668558
TOCN、CNFを混合したマスターバッチと比較して、XCNFを添加、NRラテックス中でセルロースザンテートを解繊し加熱乾燥したマスターバッチについては、硫黄含有率が多い結果となった。しかし、XCNFと混合した場合でも、酸凝固した場合は硫黄含有率がNRとほぼ同等となった。これは、酸によりXCNFがセルロース微細繊維に戻ったためと考えられる。NRラテックスとビスコースを混合、酸凝固した比較例13は硫黄含有率が高い結果となったが、これはビスコース中に副生成物が混在しているためその影響によるものと考えられる。ビスコースと比べると、XCNFについては洗浄して副生成物を除去後に解繊を行っているため、副生成物は少ない。上記のバウンドラバー量との関係では、硫黄含有率の高いサンプルがバウンドラバー量が多い結果となっており、マスターバッチ中に残留した硫黄がNRと相互作用していると考えられる。
<XCNF樹脂分散液の効果>
(実施例19)
セルロースザンテート微細繊維を含有する樹脂分散液の挙動について検証を行った。まず、スラリーを調製した。平均ザンテート置換度0.28のセルロースザンテート微細繊維を水中に分散させ、全固形分濃度0.57質量%(セルロース固形分濃度は0.506質量%)となるスラリーを得た。このスラリーの粘度は1.87Pa・s(10rpm)であった。
次に、含有させる樹脂エマルジョンとしては次のものを用いた。
・タケラックSW−5100……三井化学(株)製、水性ウレタンエマルジョン、固形分比率30%、Tg120℃
・PDX−7341……BASF社製、アクリル樹脂エマルジョン、固形分49%、Tg15℃
セルロースザンテート微細繊維を樹脂エマルジョンに混合する手順は次の通り行った。まず、それぞれの樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対してセルロースザンテート微細繊維の固形分質量部が1.5質量部となる割合で撹拌容器にいれた。ホモジナイザーにて、8000rpmにて5分間撹拌した。この段階で液が泡立つため、遠心分離機で3000rpm、1分間かけて脱泡した。この脱泡した後の液を塗工用樹脂分散液として用いた。
ライナ用紙(レンゴー(株)製、RKA210)に、上記の塗工用樹脂分散液を、バーコータを用いてウェット状態で40g/mとなるように塗工した。これを105℃の箱型乾燥器に導入し、1分間掛けて乾燥した後、ドラムドライヤーで2分間乾燥させた。
(比較例14)
セルロースザンテート微細繊維を導入しないこと以外は実施例19と同様の手順によりそれぞれの樹脂エマルジョンについて塗工した。塗工はバーコータを用い、セルロースザンテート微細繊維を含有しない分、樹脂の固形分が同等になるように、ウェット状態で20g/mとなるように塗工した。その後の乾燥は同様に行った。
(比較例15)
解繊処理をしていないセルロースザンテートを導入したこと以外は実施例19と同様の手順によりそれぞれの樹脂エマルジョンについて塗工した。塗工はバーコータを用い、ウェット状態で20g/mとなるように塗工した。その後の乾燥は同様に行った。
実施例19と比較例14、比較例15の塗工液を用いたそれぞれの塗工紙を10cm角に裁断し、2枚の原紙の塗工面を向かい合わせ、卓上シーラー(PC−200:富士インパルス社製、加熱温度100℃、シール巾2mm)で1.6秒間加熱圧着した。加熱後、塗工面同士がブロッキングして原紙を引き離す際に紙表面が剥がれれば評価×、ブロッキングせずに塗工面同士がきれいに剥がれれば○と評価した。その結果を表16に示す。
Figure 0006668558
<XCNF樹脂分散液の効果 タック性確認>
(実施例20)
実施例19のセルロースザンテート微細繊維を使用し、樹脂エマルジョンにSBRラテックス(日本ゼオン製:LX407S)を使用する以外は同様の操作を行った。
(比較例16)
セルロースザンテート微細繊維を導入しないこと以外は実施例20と同様の手順によりSBRラテックスについて塗工した。塗工はバーコータを用い、セルロースザンテート微細繊維を含有しない分、樹脂の固形分が同等になるように、ウェット状態で20g/mとなるように塗工した。その後の乾燥は同様に行った。
(比較例17)
解繊処理をしていないセルロースザンテートを導入したこと以外は実施例20と同様の手順によりSBRラテックスについて塗工した。塗工はバーコータを用い、ウェット状態で20g/mとなるように塗工した。その後の乾燥は同様に行った。
実施例20と比較例16、比較例17の塗工液を用いたそれぞれの塗工紙について、塗工原紙の塗工面を触った際の、タック感(べたつき)を官能評価した(評価:大、中、小)。その結果を表17に示す。
Figure 0006668558
<カーボンブラックとセルロースザンテート微細繊維との相乗効果>
(実施例21)
実施例3において、XCNF1(スラリーを解繊処理した後に遠心分離した遠心上清、数平均繊維径:7nm、ナノファイバー生成率:100%)の添加量を対ゴム質量で5phrに変更し、コンパウンド作製時にカーボンブラック(東海カーボン株式会社製:シースト3)を対ゴム質量で20質量部添加したものについて、上記以外の点は実施例3と同様の手順によりコンパウンドを得た。その上で、実施例3と同様の手順によりゴムシートを作製して同様に測定を行った。その構成を表18に、その結果を表19に示す。
Figure 0006668558
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(実施例22)
実施例13における、ラテックス中での解繊処理により解繊されたセルロースザンテート微細繊維(80%以上が繊維径3nm〜200nm、繊維長25nm〜1μmのセルロースザンテートナノファイバーであり、セルロースザンテート微細繊維全体の平均繊維径は3nm〜500nmである。ただし、繊維径500nm〜4μm、繊維長10μm〜700μmのナノファイバーでないものも含み、セルロースザンテート微細繊維全体のサイズは繊維径3nm〜4μm、繊維長25nm〜700μmまで分布が幅広い結果となったもの。)を含有するゴムラテックスからのマスターバッチを用いて、実施例13のゴムコンパウンドを作製する際に、カーボンブラック(東海カーボン(株)製:シースト3)を対ゴム質量で20質量部を追加的に添加し、それ以外は表2と同様の構成となるコンパウンドシートを作製した。その上で、実施例3と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その構成を表20に、その結果を表21に示す。
Figure 0006668558
Figure 0006668558
平均繊維径5nmのXCNFとカーボンブラックとを有する実施例21と、未解繊の繊維を含むXCNFとカーボンブラックとを有する実施例22と、XCNFを有さずカーボンブラックのみを添加した比較例9、11と、添加の無いNRである比較例1とについて、ひずみと応力について測定した結果を横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図12に示す。また、応力ひずみ曲線から求めたM10、M30、M100、M300、破断点応力、ひずみを表22に示す。
Figure 0006668558
表9に示す実施例4、5及び比較例9、11の比較では、XCNFはカーボンブラックの四分の一の添加量でほぼ同等の補強効果が発揮されていた。しかし、比較例11に比べて、カーボンブラックの半分を四分の一の量のXCNF1で置き換えたものに相当する実施例21は、ひずみ100%以下の範疇で比較例11よりも優れた値を示した。従って、カーボンブラックとXCNF1はそれぞれ単独では1:4の補強効果比を示すが、これらを併用した場合には、それぞれを単独で用いた場合に比べて、より高い補強効果を示すことが確認できた。ただし、ラテックス中で解繊して未解繊物を含む実施例22では、比較例11に比べれば高いものの、実施例21に比べると低い値となり、未解繊物を含むと相乗効果が低減されてしまうことが示された。
<マスターバッチ保管による影響>
(実施例23)
実施例3と同様の方法において作製したマスターバッチを室温にて2ヶ月間保管を行った。保管したマスターバッチを実施例3と同様の手順によりゴムシートを作製して測定を行った。その結果を表23に示す。室温保管での時間経過による補強効果の低下は確認されなかった。また、Tc90は5.7分となり、保管を行っていない実施例3と同様に、加硫促進効果が発揮されていることが確認された。
Figure 0006668558
<酸化変性反応の変性率について>
なお、変性率の測定は、ザンテート基は酸などにより分解してOH基になるが、酸化変性により生成した硫黄やジスルフィド結合は酸では分解せず残存し、またその硫黄分の殆どが二硫化炭素に溶解しないことを利用して行った。検証用のXCNFスラリーとして、セルロース固形分0.5質量%、ザンテート置換度0.29、ナノファイバー生成率92.4%であるスラリーを用いた。このXCNFスラリーを300g用いて、XCNFのザンテート基モル量に対してHが50〜2000mol%となるように過酸化水素水を添加して、回転式ホモジナイザーにて撹拌混合(8000rpm、5分間)した。その後、室温にて3時間静置し、静置後のXCNFスラリーを50g秤量し、0.1%に希釈した後、1M硫酸2mLを添加して再生処理を行った。遠心分離により再生CNFを回収、中性になるまで洗浄した後に、凍結乾燥し、凍結乾燥サンプルの硫黄含有率を測定した。その後、凍結乾燥サンプルを0.5g秤量し、二硫化炭素10gを添加して、室温で24時間浸漬した。その後、二硫化炭素を除去し、アセトンを添加して凍結乾燥サンプルを十分に洗浄して減圧乾燥し、減圧乾燥サンプルの硫黄含有率を測定した。ここまでの手順の中で酸化剤処理後、および二硫化炭素に浸漬した後、それぞれのタイミングでセルロースナノファイバーの硫黄含有率を測定することで、二硫化炭素可溶性硫黄分を含む変性率(1)と、二硫化炭素不溶性硫黄分のみの変性率(2)とを定義した。以上のことから、過酸化水素水で処理する前のセルロースザンテート微細繊維の硫黄含有率(処理前硫黄含有率)と、過酸化水素水での処理と再生処理後、および続く二硫化炭素による浸漬処理後のセルロースナノファイバーのそれぞれの硫黄含有率(再生後硫黄含有率)とから、次式により変性率を定めた。
・A(1):酸化剤処理に続いて、酸によりザンテート基を脱離させた繊維中の硫黄含有率
・A(2):A(1)において二硫化炭素に不溶の繊維中の硫黄含有率
・B :酸化剤処理前のセルロースザンテート微細繊維の全硫黄含有率
・変性率(1)(ザンテート基を除く強度向上に寄与する硫黄分)
・変性率(1)(%)=A(1)÷B×100
・変性率(2)(ザンテート基を除く強度向上に寄与する二硫化炭素不溶硫黄分)
・変性率(2)(%)=A(2)÷B×100
この検証において、過酸化水素水の添加量に対する、ザンテート置換度、硫黄含有率、変性率の値を表24に示す。以下の実施例及び比較例における酸化変性率は硫黄含有率から上記式により求められる値である。過酸化水素によってザンテート基が酸化変性され、生じた硫黄分は酸により分解せず、また二硫化炭素に溶解せず、ほとんどがセルロースナノファイバーに残留する。
Figure 0006668558
<酸化変性反応による効果>
(実施例24)
実施例4において、XCNF2とNRラテックスを混合する前に、XCNF2に30%過酸化水素水(三徳化学工業(株)製)を、XCNF中のザンテート基のモル量に対してHが10mol%となるように添加した。添加後、回転式ホモジナイザーにて8000rpmで5分間撹拌混合した。その後室温にて3時間静置した。酸再生後の硫黄含有率は0.133%、二硫化炭素浸漬後の硫黄含有率は0.13%、変性率(1)および変性率(2)共に1.5%であった。セルロースザンテート微細繊維の代わりに、この酸化剤処理したセルロースザンテート微細繊維を用い、対ゴム質量を5質量部に変更した以外は、同様の手順によりゴムシートを作成して測定を行った。その構成を表25に、その結果を表26に示す。ひずみと応力について測定した結果を横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図13に示す。
Figure 0006668558
Figure 0006668558
(実施例25)
実施例24において、30%過酸化水素水(三徳化学工業(株)製)を、XCNF中のザンテート基のモル量に対してHが50mol%となるように添加し、同様に処理を行った。酸再生後の硫黄含有率は1.2%、二硫化炭素浸漬後の硫黄含有率は1.2%、変性率(1)は14.0%、変性率(2)は13.8%であった。また同様の手順によりゴムシートを作成して測定を行った。その構成を表25に、その結果を表26に示す。ひずみと応力について測定した結果を横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図13に示す。
(実施例26)
実施例24において、30%過酸化水素水(三徳化学工業(株)製)を、XCNF中のザンテート基のモル量に対してHが100mol%となるように添加し、同様に処理を行った。酸再生後の硫黄含有率は4.3%、二硫化炭素浸漬後の硫黄含有率は4.2%、変性率(1)は48.8%、変性率(2)は47.7%であった。また同様の手順によりゴムシートを作成して測定を行った。その構成を表25に、その結果を表26に示す。ひずみと応力について測定した結果を横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図13に示す。
(実施例27)
実施例24において、30%過酸化水素水(三徳化学工業(株)製)を、XCNF中のザンテート基のモル量に対してHが2000mol%となるように添加し、同様に処理を行った。酸再生後の硫黄含有率は8.6%、二硫化炭素浸漬後の硫黄含有率は8.4%、変性率(1)98.9%、変化率(2)は96.6%であった。また同様の手順によりゴムシートを作成して測定を行った。その構成を表25に、その結果を表26に示す。ひずみと応力について測定した結果を横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図13に示す。
(比較例18)
実施例4において、XCNF2の代わりに解繊処理を行っていないセルロースザンテート(XC)を使用し、XCとNRラテックスを混合する前に、1質量%XCスラリーに30%過酸化水素水(三徳化学工業(株)製)を、XC中のザンテート基のモル量に対してHが2000mol%となるように添加した。添加後、スターラーにて撹拌混合した。その後室温にて3時間静置し、ろ過洗浄した後に、1質量%のスラリーとなるように調整した。セルロースザンテート微細繊維の代わりに、この1質量%スラリーを用い、対ゴム質量を5質量部に変更した以外は、同様の手順によりゴムシートを作成して測定を行った。その構成を表25に、その結果を表26に示す。ひずみと応力について測定した結果を横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図13に示す。
<レーザーラマン分光法>
実施例26で得られる酸化剤処理XCNFスラリーを凍結乾燥し検体とした。図14はフィルム表面の光学顕微鏡写真で、図15は図13で観察される粒子状部(図中矢印によって指示する円形の強調箇所)のラマンスペクトルを、図16は粒子状以外の部分で−S−S−結合に関係する範囲のラマンスペクトルである。ラマン測定の条件は次の通りである。
<ラマン測定条件>
・装置:T−64000((株)堀場製作所)
・条件:測定モード;顕微ラマン、対物レンズ;×100、ビーム径;1μm、光源;Ar+レーザー/514.5nm、レーザーパワー;20mW、回折格子;Single 600gr/mm、スリット;100μm、検出器;CCD/Jobin Yvon 1024×256
測定結果をによると、図15の粒子状物のスペクトルは硫黄(S8)と一致し、また図16では470cm−1付近に−S−S−結合由来と思われるピークが観察される。
<過酸化水素処理方法の違い>
(実施例28)
実施例4において、XCNF2とNRラテックスとを撹拌混合する前に、30%過酸化水素水(三徳化学工業(株)製)を、XCNF中のザンテート基のモル量に対してHが2000mol%となるように添加した。すなわち、ラテックスにXCNF2が分散する前に過酸化水素水を添加した。添加後、XCNF2とNRラテックスと過酸化水素水が存在した状態で、回転式ホモジナイザーにて8000rpmで5分間撹拌混合した。その撹拌混合の後、スラリーを70℃にて2日間乾燥し、次いで減圧乾燥を行い、NRマスターバッチを作製した。セルロースザンテート微細繊維の代わりに、この酸化変性させたセルロースザンテート微細繊維を用い、対ゴム質量を5質量部に変更した以外は、同様の手順によりゴムシートを作成して測定を行った。その構成を表27に、その結果を表28に示す。ひずみと応力について測定した結果を横軸にひずみ、縦軸に応力をとったグラフを図17に示す。
Figure 0006668558
Figure 0006668558
実施例24〜28、比較例18から次のことが確かめられた。まず、セルロースザンテート微細繊維(XCNF)に過酸化水素を添加して、一部もしくは全部のザンテート基を酸化変性した場合、未添加NR(比較例1)と比較すると補強材として有用に働く結果となった。また、反応可能なすべてのザンテート基が酸化剤によって酸化変性されたと考えられる実施例27においても補強効果はみられたが、一部が酸化変性された実施例25、26の方が、補強効果がより高い結果となった。一部のザンテート基が酸化変性された場合は、XCNFは液中で分散状態にあり、乾燥後もゴム中でネットワーク構造を形成する、また酸化反応により生じた硫黄分より相互作用が増加したと考えられる。一方、過度にザンテート基が酸化変性されると、ザンテート基による静電反発が低下しXCNFが凝集しやすくなり、硫黄分は多くなるもののナノファイバーによるネットワーク構造を取りにくいと考えられる。
また、解繊処理を行っていないXC(比較例18)と比較した場合、セルロースザンテート微細繊維に過酸化水素を添加した実施例の方が、補強効果が大きい結果となった。これは、添加する繊維のサイズが小さいことによりゴム中でより緻密なネットワーク構造を取ること、および酸化変性により生じた硫黄分とゴムとの相互作用によるものと考えられる。また、添加方法を変更した場合でも同様の補強効果がみられた。
分散させる前にセルロースザンテート微細繊維を酸化変性した実施例27と、樹脂分散液へ分散させながらセルロースザンテート微細繊維を酸化変性した実施例28とを比較すると、分散させながら酸化変性した実施例28の方が凝集を起こしにくく、得られた酸化変性セルロースザンテート微細繊維による補強効果も高いことが確かめられた。

Claims (10)

  1. セルロースI型の結晶構造を有する繊維径が3nm以上200nm以下のセルロースザンテートナノファイバーを含有する樹脂組成物。
  2. ザンテート基の一部ではなく二硫化炭素に溶解しない硫黄分を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. セルロースI型の結晶構造を有する繊維径が3nm以上200nm以下のセルロースザンテートナノファイバーを含有する樹脂分散液。
  4. 前記セルロースザンテートナノファイバーが、ザンテート基と酸化剤の反応により生じた硫黄分を有する、請求項に記載の樹脂分散液。
  5. 請求項又はに記載の樹脂分散液から、乾燥又は酸凝固により得られるマスターバッチ。
  6. 上記樹脂分散液がゴム組成物の分散液であり、請求項に記載のマスターバッチを含むゴム混合物を加硫したゴム組成物。
  7. 上記ゴム混合物がカーボンブラックを含む、請求項に記載のゴム組成物。
  8. セルロースI型の結晶構造を有する繊維径が3nm以上200nm以下のセルロースザンテートナノファイバーを含有するゴムラテックスからマスターバッチを得て、
    前記マスターバッチを含むゴム混合物を加熱して加硫するゴム成形体の製造方法。
  9. 酸化剤を加えて前記セルロースザンテートナノファイバーの一部を酸化変性する手順を含む、請求項に記載のゴム成形体の製造方法。
  10. ザンテート基の一部ではなく、二硫化炭素に溶解しない硫黄分を有する、セルロースI型の結晶構造を有する繊維径が3nm以上200nm以下のセルロースザンテートナノファイバー
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