JP6663598B2 - ポリアミン高含有酵母及びそれを含む飲食品組成物 - Google Patents

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Description

本発明はポリアミン高含有酵母、特にスペルミジン高含有酵母及びそれを含む飲食品組成物に関する。
機能性食品分野では細胞を活性化できるものが求められている。その中でポリアミンと呼ばれる第一級アミノ基を2つ以上もつ直鎖状の生体内脂肪族炭化水素が高い効果を有し、含有物が食品として提供されている。代表的なポリアミンとして、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンを挙げることができる。ポリアミンの生理作用としては、(1)細胞増殖作用、(2)細胞分化促進作用、(3)免疫必須因子、(4)抗アレルギー作用、(5)蛋白質合成促進作用、(6)核酸との相互作用による構造の安定化、(7)酵素活性調節作用等が知られている。最近では、経口摂取したポリアミンによって寿命が延長すると報告も行われた。
工業的に利用できるポリアミン又はポリアミン組成物の製造方法としては、酵母菌体又は酵母培養液を酸性条件下で処理して調製する方法(特許文献1)が開示されている。また、植物素材からのポリアミン組成物の調製方法としては、植物素材を酸性条件下に処して抽出する方法(特許文献2)、植物素材に食塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の塩溶液を加えてポリアミン抽出物を製造する方法(特許文献3)が検討されてきた。実際にポリアミンを高含有する食品としてコメ抽出物、大豆抽出物、酵母抽出物が存在する。これらのポリアミン高含有食品は細胞を活性化させることが分かっているが、さらに細胞を活性化させる食品が求められている。また、酵母の培養液に試薬のポリアミンを混合することで、ポリアミン高含有酵母を得る方法(特許文献4)も知られているが、酵母自身にポリアミンを生産させるのではなく、食品として認められていないポリアミンの純品を外部から導入するという手法を取っていることから、このような酵母を食品として提供することは認められないという問題があった。また、酵母を培養する際にストレス(エタノール添加、食塩添加などによる浸透圧)をかけることで菌体内に含まれるポリアミンを高濃度にすることも可能ではあるが(非特許文献1)、ストレスによって酵母の増殖が阻害されるため、生産性が極端に低いという問題がある。
ポリアミンの中でもスペルミジンとスペルミンは体内利用率が高く、機能性の点で優れている。特に、スペルミジンはその許容一日摂取量がスペルミンよりも高く、より大量に摂取するのに好ましい(非特許文献2)。
特開平10−52291号公報 特開平10−101624号公報 特開2010−263816号公報 特開2016−187336号公報
日本農芸化学会1995年度大会講演要旨集p.129 Food Chem Toxcol,35(3)337−348 (1997)
本発明は、より細胞を活性化するポリアミン高含有酵母、特にスペルミジン高含有酵母及びそれを含む飲食品組成物の提供を課題とする。
従来は、ポリアミン高含有の植物素材から酸などでポリアミンを抽出し、濃縮することで、エキスとしてポリアミン高含有食品を得るという手法が用いられてきた。本発明者は鋭意その問題解決を検討してきた結果、予想外にも、外部から試薬のポリアミンを酵母内に導入せずに、しかも高濃度食塩などのストレスを与えることなくポリアミンを高含有する変異酵母を作り出すことに成功し、本発明を完成させるに至った。本発明に係る酵母は菌体内にポリアミンを高含有しているため、ポリアミンの抽出・濃縮を経由せずともポリアミンは酵母細胞内に高濃度で留まることとなる。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]
協会7号酵母との比較で、
ロイシン合成酵素、アコニット酸合成酵素、S−アデノシル−L−メチオニン合成酵素、アスパラギン酸/グルタミン酸輸送タンパクのいずれか1つまたはそれ以上のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加、またはそれらの2つ以上の組み合わせで変異されているか、あるいは
第3染色体にコードされているLEU遺伝子、第10染色体にコードされているACO2遺伝子、第12染色体にコードされているSAM1遺伝子、第16染色体にコードされているAGC1遺伝子のいずれか1つまたはそれ以上の塩基酸配列において、1個または数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加、またはそれらの2つ以上の組み合わせで変異されており、
且つポリアミンを高含有している、酵母変異体。
[2]
協会7号酵母における、LEU遺伝子の266番目のC、ACO2遺伝子の194番目のT、SAM1遺伝子の1130番目のC、AGC1遺伝子の744番目のAに対応する位置にある塩基のいずれか1つ又はそれ以上が一塩基置換されている、[1]に記載の酵母変異体。
[3]
LEU遺伝子の266番目のCに対応する塩基がA、第10染色体にコードされているACO2遺伝子の194番目のTに対応する塩基がC、第12染色体にコードされているSAM1遺伝子の1130番目のCに対応する塩基がG、第16染色体にコードされているAGC1遺伝子の744番目のAに対応する塩基がTである、[2]に記載の酵母変異体。
[4]
サッカロマイセス(Saccharomyces)に属する酵母である、[1]〜[3]のいずれかに記載の酵母変異体。
[5]
ポリアミンの含有量がプトレシン、スペルミジン及びスペルミンの総量である、[1]〜[4]のいずれかに記載の酵母変異体。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の酵母変異体と結晶性多糖類とを含有する飲食品組成物。
[7]
酵母変異体と結晶性多糖類の重量比が1:0.1〜1である、[6]に記載の組成物。
[8]
結晶性多糖類がシクロデキストリン及び/又は難消化性デキストリンである、[6]または[7]に記載の組成物。
[9]
協会7号酵母との比較で、
ロイシン合成酵素、アコニット酸合成酵素、S−アデノシル−L−メチオニン合成酵素、アスパラギン酸/グルタミン酸輸送タンパクのいずれか1つまたはそれ以上のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加、またはそれらの2つ以上の組み合わせについて変異させるか、あるいは
第3染色体にコードされているLEU遺伝子、第10染色体にコードされているACO2遺伝子、第12染色体にコードされているSAM1遺伝子、第16染色体にコードされているAGC1遺伝子のいずれか1つまたはそれ以上の塩基酸配列において、1個または数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加、またはそれらの2つ以上の組み合わせで変異させる工程、を含む、
ポリアミンを高含有している酵母変異体の製造方法。
得られた変異株のゲノムをIllumina HiSeqを用いて解析し、野生株の配列と比較した結果、ポリアミンの合成に関わる4つの遺伝子のホモ変異が確認された。第3染色体にコードされているロイシン合成遺伝子LEUの266番目のCがAに、第10染色体にコードされているアコニット酸合成遺伝子ACO2の194番目のTがCに、第12染色体にコードされているS−アデノシル−L−メチオニン合成遺伝子SAM1の1130番目のCがGに、第16染色体にコードされているアスパラギン酸/グルタミン酸輸送遺伝子AGC1の744番目のAがTに変異していた。ポリアミン合成遺伝子として、第16番染色体にコードされているアルギナーゼ遺伝子CAR1、第11番染色体にコードされているオルニチン脱炭酸遺伝子SPE1、第16番染色体にコードされているスペルミジン合成遺伝子SPE3、第12番染色体にコードされているスペルミン合成遺伝子SPE4が知られているが、意外にも、それら以外の遺伝子の変異によってポリアミン高生産株が得られることが分かった。しかも、本発明に係るポリアミン高生産株は遺伝子組み換えによって生み出されたものではないため、食品として好適なものであると考えられる。
したがって、本発明によれば、細胞活性化に効果的なポリアミン高含有酵母、特にスペルミジン高含有酵母及びそれを含む飲食品を提供することができる。本発明に係る酵母は、酵母内にポリアミンを含有することで、同じポリアミン含量の従来のコメ抽出物、大豆抽出物、酵母抽出物より細胞の活性化の効果を発揮させることができる。さらに副次的な効果として、本発明で得られるポリアミン高含有酵母は結晶性多糖類と組み合わせた場合、スペルミジンを含めたポリアミンの熱安定に優れていることが明らかとなった。そのため、本発明の酵母を結晶性多糖類と組み合わせることで、加熱調理しやすいポリアミン高含有飲食品を提供することが可能となる。
図1は、野生型(協会7号酵母)との比較で本願発明に係る酵母のLEU遺伝子の塩基配列を示す。 図2−1は、野生型(協会7号酵母)との比較で本願発明に係る酵母のACO2遺伝子の塩基配列を示す。 図2−2は、野生型(協会7号酵母)との比較で本願発明に係る酵母のACO2遺伝子の塩基配列を示す。 図3は、野生型(協会7号酵母)との比較で本願発明に係る酵母のSAM1遺伝子の塩基配列を示す。 図4−1は、野生型(協会7号酵母)との比較で本願発明に係る酵母のAGC1遺伝子の塩基配列を示す。 図4−2は、野生型(協会7号酵母)との比較で本願発明に係る酵母のAGC1遺伝子の塩基配列を示す。
(ポリアミン高含有酵母)
一態様において、本発明は、協会7号酵母との比較で、ロイシン合成酵素、アコニット酸合成酵素、S−アデノシル−L−メチオニン合成酵素、アスパラギン酸/グルタミン酸輸送タンパクの中の1つまたはそれ以上のアミノ酸配列において、100個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは1個または数個、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加、またはそれらの2つ以上の組み合わせで変異されているか、あるいは
第3染色体にコードされているLEU遺伝子、第10染色体にコードされているACO2遺伝子、第12染色体にコードされているSAM1遺伝子、第16染色体にコードされているAGC1遺伝子のいずれか1つまたはそれ以上の塩基酸配列において、1個または数個、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加、またはそれらの2つ以上の組み合わせで変異されており、
且つポリアミンを高含有している酵母変異体(以下、「変異酵母」、「変異体」、「ポリアミン高含有酵母」とも言う)を提供する。
より具体的には、本発明に係る酵母変異体はポリアミンを酵母1g(乾燥重量)当たり1.5mg以上、好ましくは2.0mg以上、より好ましくは3.0mg、より更に好ましくは10mg以上含有し得る。
変異酵母はサッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する酵母、好ましくはサッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)を当業者に公知の方法で変異させることで得ることができる。より具体的には、日本醸造協会の7号株(以下、単に「協会7号株」とも言う)に対して紫外線照射することで本発明の変異体が得られる。別の酵母から出発してもよく、特許第5974891号公報に記載されているサッカロマイセス・セレビジエIFO2346に対して紫外線照射することで本発明の変異体が得られる。
あるいは、ポリアミンを高含有する酵母を作製するために、ポリアミンを合成蓄積する能力の高い別の株から出発してもよい。ポリアミンを大量に含む培地で酵母を培養したり、又はストレス(エタノール添加、食塩添加などによる浸透圧)をかけることで菌体内に含まれるポリアミンを高濃度にすることも可能ではあるが、かかる変異体は、このような操作を経ずともポリアミンを大量に産生し、菌体内に蓄積できる機能を有する点で通常の酵母とは異なる。エタノールや食塩等による浸透圧ストレスを与えながら培養した場合は、ストレスの影響により、酵母の増殖が阻害されるため、生産性が極端に低い。しかしながら、かかる変異体の場合、非ストレス下での培養においてもスペルミジン高含有酵母等のポリアミン高含有酵母が得られるため、生産性が優れる。
ポリアミン高含有酵母を得るために実施例で使用した協会7号株は清酒酵母の一種(サッカロマイセス・セレビジエ)であり、NBRC(NITE Biological Resource Center)において101557のもと登録されている。
本発明のポリアミン高含有酵母は、協会7号株のような出発材料としての酵母菌を、酵母エキスを含む培地で培養し、培養後に集菌し、加熱殺菌したうえで噴霧乾燥にかけることで得られる。あるいは、本発明のポリアミン高含有酵母は、紫外線照射等の当業者に公知の手法で変異処理した酵母菌を、酵母エキスを含む培地で培養し、培養後に集菌し、加熱殺菌したうえで噴霧乾燥にかけることで得られる。培地中の酵母エキスの濃度は0.1%以上10%以下であることが好ましい。
変異処理方法は、特に限定されず、公知の方法を使用できる。例えば、エチルメタンスルホン酸、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸、アクリジン系色素などでの化学処理;紫外線照射;放射線照射などの方法が挙げられる。
変異箇所は、ロイシン合成酵素、アコニット酸合成酵素、S−アデノシル−L−メチオニン合成酵素、アスパラギン酸/グルタミン酸輸送タンパクのいずれか1つ以上のアミノ酸配列又は塩基配列がポリアミンを高含有するように変異している限り特に限定されない。より具体的には、協会7号酵母の遺伝子配列との比較で、第3染色体にコードされているLEU遺伝子の266番目のCがAに、第10染色体にコードされているACO2遺伝子の194番目のTがCに、第12染色体にコードされているSAM1遺伝子の1130番目のCがGに、第16染色体にコードされているAGC1遺伝子の744番目のAがTに置換されていることが好ましい。このような点変異の導入は公知の遺伝子工学的手法等により行うこともできる。
本明細書における「点変異」とは、本発明においては協会7号株の塩基配列との比較で、対応する塩基配列上に見られる一塩基置換をいう。点変異には、通常、プリン間又はピリミジン間の置換であるトランジション変異、又はプリンとピリミジン間の置換であるトランスバージョン変異があるが、本発明においては、変異酵母にポリアミンを高含有させるものであればどのような変異であってもよい。点変異は、公知の生物学的手法、例えば、所望の変異を導入できるように設計されたプライマーを用いたPCRや、変異を導入したいいずれか側の座位に相同するドナー(例えば一本鎖オリゴヌクレオチドやプラスミド)を用いたゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)等に従い導入することができる。
ポリアミンとはアミノ基が複数結合した直鎖脂肪族炭化水素の総称であり、その例として、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、1,3−ジアミノプロパン、カダベリン、カルジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N−ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミンスペルミジン等が挙げられる。特に断らない限り、本明細書で使用する場合の「ポリアミン」とは、細胞活性化能力が高いプトレシン、スペルミジン及びスペルミンから成る群から選択される1又は複数の化合物を意味する。
ポリアミン量は、噴霧乾燥した酵母から抽出したプトレシン、スペルミジン及びスペルミンの量を合計することで測定することができる。乾燥酵母は、酵母を含む培地からろ過や遠心分離機により菌体を取り出し、乾燥することで得られる。培地成分を除去するために洗浄を行ってもよい。なお、酵母の乾燥にはスプレードライ、減圧乾燥、凍結乾燥等が使用でき、当業者は目的にあわせて適宜乾燥方法を選択することができる。
(ポリアミン高含有酵母を含む組成物)
別の態様において、本発明はポリアミン高含有酵母、特にスペルミジン高含有酵母を含む組成物であって、特に細胞を活性化する組成物を提供する。ポリアミンに熱安定性等の機能を付与する観点から、組成物中には酵母以外に結晶性多糖類が含まれていてもよい。結晶性多糖とは天然で結晶性の固体として存在する多糖を意味し、その例として、デンプン、デキストリン、グリコーゲン及びセルロースがある。結晶性多糖類以外の通常の糖類を組成物と併用した場合、糖類があめ状に変化して固まってしまい、組成物の取り扱いが困難になってしまう。
環状構造を有するデキストリンであるシクロデキストリンは、結晶性多糖類として好適に使用されうる。シクロデキストリンにはアルファー、ベータ、ガンマ型があり、いずれも結晶性多糖類として使用可能である。これらの中でも、アルファーシクロデキストリン、ガンマーシクロデキストリンが好ましい。他のデキストリン、例えば難消化性デキストリンも本発明の組成物に使用できる。
ポリアミン高含有乾燥酵母と結晶性多糖類の重量比は1:0.1〜3であることが好ましい。より好ましくは、ポリアミン高含有酵母と結晶性多糖類の重量比1:0.1〜1である。結晶性多糖類がこれより少ないと酵母の安定性が下がってしまう。また、この範囲より高い場合、組成物当たりのポリアミン、特にスペルミジンの含有量が低くなりすぎてしまい、人体内等でスペルミジン等の所望の機能を発揮するためには大量に組成物を摂取する必要がある。
ポリアミン高含有酵母と結晶性多糖類とを組み合わせることにより、酵母を安定にして取り扱いやすくすることが出来る。酵母と結晶性多糖類の混合は乾式、湿式どちらをとってもかまわない。湿式で行う場合、糖類を滅菌処理して酵母と混合した後に乾燥して作ることが可能になる。また、乾燥酵母として混合せずに、未乾燥の酵母として混合した後に乾燥して組成物を作ることが可能である。
限定することを意図するものではないが、結晶性多糖類を含む組成物は、例えば、酵母を4日間培養後、遠心分離で集菌・濃縮し、そこにγ―シクロデキストリンを加えたのちに、60℃で1時間加熱し、それを噴霧乾燥することによって得られる。
本発明の組成物は種々の用途に使用することが想定される。例えば、本発明の組成物は、種々の一般飲食品のみならず、栄養強化が必要な個体、特に細胞の活性を必要とする個体が摂取可能なように、機能性が表示されている飲食品、例えば特定保健用飲食品、栄養機能飲食品、機能性表皮飲食品、保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント、美容用飲食品、その他の健康用飲食品、あるいは医薬品、医薬用部外品、化粧品に含めることができる。
有効成分としての変異酵母は、そのままの状態で組成物に含まれることもあれば、破砕して粉末状としたものを組成物に添加してもよい。組成物には他の生理活性成分や賦形剤等の添加剤を加えることもできる。
組成物の形態も特に限定されず、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、ゼリー状等にすることができる。特定の形態について更に加工してもよく、例えば、圧縮打錠することで得られた錠剤状の組成物の表面を被覆したりすることもできる。また、粉体を顆粒状に造粒することや、粉体や造粒した顆粒を詰めてカプセル化することもできる。
本発明の組成物は錠剤又は粉末の形態の食品として使用できる。また、ジュースや乳製品等の飲食品やサプリメントのような栄養補助食品に栄養強化の目的で添加できる。その形態は液体、錠剤、粉末、カプセル等の常用の形態でよい。別の態様として、本発明の組成物は飲食品そのものでなくても、飲食品に添加される調味料として使用することもできる。組成物中には酵母が50〜100%含まれていることが望ましい。
(ポリアミン高含有酵母の製造方法)
別の態様において、本発明はポリアミン高含有酵母を製造する方法を提供する。ポリアミン高含有酵母の製造方法は、協会7号酵母との比較で、
ロイシン合成酵素、アコニット酸合成酵素、S−アデノシル−L−メチオニン合成酵素、アスパラギン酸/グルタミン酸輸送タンパクのいずれか1つまたはそれ以上のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加、またはそれらの2つ以上の組み合わせについて変異させるか、あるいは
第3染色体にコードされているLEU遺伝子、第10染色体にコードされているACO2遺伝子、第12染色体にコードされているSAM1遺伝子、第16染色体にコードされているAGC1遺伝子のいずれか1つまたはそれ以上の塩基酸配列において、1個または数個の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加、またはそれらの2つ以上の組み合わせで変異させる工程、を含む。当該方法は更に、酵母にポリアミンを高含有させる任意の工程を含んでもよい。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ポリアミン含有量の求め方:
サンプル10〜100mgに、5%の過塩素酸及び2ppmの1,7−ジアミノヘプタンを溶解した水溶液を4ml加えて懸濁し、50℃で10分〜1時間保持することにより、粉体中のポリアミンを抽出した。その後、抽出物を遠心分離し、得られた上清0.1mlに対して、2%の過塩素酸及び2ppmの1,7−ジアミノヘプタンを溶解した水溶液を0.4ml加えた後、18%炭酸ナトリウム水溶液0.25mlに混合した。混合物をさらに1%ダンシルクロリド0.5mlと混合し、45℃で1時間保持した。これに10%プロリン水溶液を0.25ml加え、さらに45℃で10分保持した。その後、混合物にトルエンを2ml加え、激しく混合したのち、トルエン層を1ml取得した。更にトルエン層を窒素吹込みによって乾固し、アセトニトリル0.5mlに再溶解したものを液体クロマトグラフィーによって分析した。検量線は、1,7−ジアミノヘプタンの濃度を2ppmに固定したうえで、スペルミジン、スペルミン、プトレシンンの各ポリアミンについて0.125〜8ppmの希釈系列を作成し、その液体クロマトグラフィー分析値(ピーク面積値)から作成した。特に断りのない限り、上記の試薬は和光純薬製のものを使用した。
液体クロマトグラフィー条件:
装置:島津製作所、高速液体クロマトグラフィー、LC−20A
カラム:YMC−Pack ODS−TMS(5μm)、150x4.6mm I.D.
測定温度:40℃
検出:蛍光検出器励起365nmにおける、510nm蛍光
溶離液:アセトニトリル:水=72:28
溶出速度:1.5mL/min
(変異株の取得)
変異前の親株として、酵母はサッカロマイセス(協会7号株)を使用した。親株をBacto製酵母エキス1%、Bacto製ペプトン2%、グルコース2%を含む液体培地で30℃で16時間振とう培養した後、培養液に45Wの紫外線を照射した。その後、培養液を50mMリン酸カリウムバッファ(pH7)で1〜10万倍希釈し、Bacto製酵母エキス1%、Bacto製ペプトン2%、グルコース2%、アガロース2%を含む寒天培地に塗布した。寒天培地を30℃で2日間静置し、出現したコロニーの中からポリアミン高生産株を割り出した。
この高生産株のゲノムをタカラバイオ社製GenTLEくん(登録商標)で抽出した。その後、Illumina HiSeqを用いて高生産株のゲノム解析を行い、野生株の配列と比較した結果、ポリアミンの合成に関わる4つの遺伝子のホモ変異が確認された。すなわち、第3染色体にコードされているロイシン合成遺伝子LEUの266番目のCがAに、第10染色体にコードされているアコニット酸合成遺伝子ACO2の194番目のTがCに、第12染色体にコードされているS−アデノシル−L−メチオニン合成遺伝子SAM1の1130番目のCがGに、第16染色体にコードされているアスパラギン酸/グルタミン酸輸送遺伝子AGC1の744番目のAがTに変異していることが分かった。ロイシン合成遺伝子LEU、アコニット酸合成遺伝子ACO2、S−アデノシル−L−メチオニン合成遺伝子SAM1、アスパラギン酸/グルタミン酸輸送遺伝子AGC1について、本発明に係る塩基配列を配列番号1、3、5、7に、野生型のものを配列番号2、4、6、8に示す。
ポリアミン合成遺伝子として、第16番染色体にコードされているアルギナーゼ遺伝子CAR1、第11番染色体にコードされているオルニチン脱炭酸遺伝子SPE1、第16番染色体にコードされているスペルミジン合成遺伝子SPE3、第12番染色体にコードされているスペルミン合成遺伝子SPE4が知られているが、高生産株においてはいずれのポリアミン合成遺伝子も変異していなかった。
(実施例1)
上記ポリアミン高生産の変異酵母菌株を培養した。培養はスクロース50g/L、硫酸アンモニウム3g/L、リン酸2水素カリウム4g/L、リン酸水素2カリウム2g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.4g/L、バクト酵母エキス10g/L、ビオチン0.002g/L、塩化カルシウム・2水和物0.4g/L、塩化マンガン・4水和物0.01g/L、硫酸亜鉛・7水和物0.02g/L、クエン酸鉄・n水和物0.06g/L、ホウ酸0.002g/L、モリブデン酸アンモニウム・4水和物0.001g/L、ヨウ化カリウム0.001g/L、硫酸銅・5水和物0.001g/L、塩化コバルト・6水和物0.001g/L、食塩0.05g/Lの組成の培地で行った。培養温度30℃で攪拌しながら4日間変異酵母を培養した。培養液を遠心分離して菌体を濃縮し、さらに水洗した。これを60℃で1時間加熱処理し、スプレードライした。スプレードライはビュッヒ製ミニスプレードライヤーb−290を使用した。出口温度85〜90℃で乾燥酵母を得た。乾燥酵母にはプトレシン0.72mg/g、スペルミジン3.62mg/g、スペルミン0.38mg/g(合計4.72mg/g)が含まれていた。
(参考例)
特許第5974891号公報段落0014記載の方法で、S−アデノシルメチオニン(SAMe)含有酵母を得た。プトレシンは検出されず、スペルミジンは0.29mg/g、スペルミンは0.16mg/g(合計0.45mg/g)であった。
(比較例1)
サッカロマイセス(協会7号株)を実施例1と同様の条件で培養等することで比較例1の乾燥酵母を得た。プトレシンは非検出、スペルミジンの含有量は0.51mg/g、スペルミンの含有量は0.45mg/g(合計0.96mg/g)であった。
(実施例2)
結晶性多糖類の効果を確認するために、上記の実施例及び比較例に加え、スプレードライ工程前にγ―シクロデキストリンを添加したサンプルを調製した。
実施例1にて得た変異酵母(プトレシン0.72mg/g、スペルミジン3.62mg/g、スペルミン0.38mg/gで、合計4.72mg/g)の培養液を遠心分離して菌体を濃縮し、さらに水洗した。培養液における菌体量(菌濃度×ブロス液量):シクロデキストリン重量の比率が7:3となるように、この菌体とγ―シクロデキストリンとを培地中で混合した。得られた混合物を60℃で1時間処理した。この時点でのポリアミン含量は、乾燥固形分当たり、プトレシン0.55mg/g、スペルミジン2.63mg/g、スペルミン0.29mg/gで、合計3.47mg/gであった。シクロデキストリンを入れた分、単位重量当たりのポリアミン含量は低くなっているが、酵母菌中のポリアミンは失われていない。その後、ビュッヒ製ミニスプレードライヤーb−290を用いて酵母をスプレードライした。出口温度85〜90℃で乾燥酵母を得た。この乾燥酵母は、乾燥酵母に加え、シクロデキストリンを30重量%含有する粉末状の組成物である(以降、乾燥酵母又はその粉末状の組成物を酵母粉体ともいう)。ポリアミン含有量はプトレシンが0.55mg/g、スペルミジンが2.63mg/g、スペルミン0.29mg/g(合計3.47mg/g)であった。スプレードライ前後でポリアミン含量は減少していなかった。
(実施例3)
実施例1の変異酵母を実施例1と同様の条件で培養した。製造した酵母(プトレシン1.07mg/g、スペルミジン4.24mg/g、スペルミン0.36mg/gで、合計5.66mg/g)を含む培養液を遠心分離して菌体を濃縮し、さらに水洗した。この菌体にαーシクロデキストリンが50重量%になるようにαーシクロデキストリンを含む水溶液を加えた。これを60℃で1時間処理した。この時点でのポリアミン含量は、乾燥固形分当たり、プトレシンが0.58mg/g、スペルミジンが2.18mg/g、スペルミンが0.18mg/gであり、合計で2.93mg/gであった。シクロデキストリンを入れた分、単位重量当たりのポリアミン含量は低くなっているが、酵母菌中のポリアミンは失われていない。続いて酵母をスプレードライした。スプレードライはビュッヒ製ミニスプレードライヤーb−290を使用した。出口温度95〜100℃で乾燥酵母粉体を得た。乾燥粉体中のポリアミン含有量は、プトレシンが0.63mg/g、スペルミジンが2.26mg/g、スペルミンが0.19mg/g(合計3.08mg/g)であった。スプレードライ前後でポリアミン含量は減少していなかった。
(実施例4)
菌体濃縮前の実施例2の酵母培養液と比較例1の酵母培養液を2:3の割合で混合し、これを60℃で1時間処理した。その後、酵母培養液を真空乾燥することで乾燥酵母を得た。その結果、プトレシンの含有量が0.29mg/g、スペルミジンの含有量が1.75mg/g、スペルミンの含有量が0.42mg/g(合計2.46mg/g)の酵母粉体が得られた。
細胞活性化試験
96ウェルプレートのウェルにHela細胞を2000個ずつ、100ulのDMEM・10%ウシ胎児血清混合培地に懸濁した状態で撒いた。次に、実施例1記載の酵母粉体、実施例2記載の酵母粉体、実施例4記載の酵母粉体、参考例記載の酵母粉体、比較例1記載の酵母粉体、大豆抽出物(比較例2)、米胚芽エキス(比較例3)、酵母エキス(比較例4)を、それぞれ水に10000mg/Lの濃度で懸濁し、オートクレーブ滅菌した。各液体をよく懸濁し、ウェルに6.3ul添加した。この操作により、各サンプルの濃度は600mg/Lとなった。また、滅菌水を別のウェルに6.3ul入れたものをコントロールとした。96ウェルプレートを、37℃で5%二酸化炭素条件で20時間静置した。その後、培地を廃棄し、さらに各ウェルをDMEM培地100ulで洗浄した。その後新たに各ウェルにDMEMと、同仁化学研究所製のcell counting kit 8液を10:1の体積比で混合した液を100ul入れ、37℃で40分間静置した。最後にPerkin Elmer ARVO X3を用いて各ウェルの450nm吸光度を測定した。細胞の増殖を、コントロールとの吸光度の比で評価した。
本発明で得られたスペルミジン高含有酵母は細胞増殖活性が比較例2〜4に比べ特に高く、コントロールに比べて1.6〜1.7倍となっていた。ポリアミンが酵母内にあることで、細胞活性能が高まったと考えられる。ポリアミンはどのような形であれ生体内での働きは同じであると考えられてきたが、驚くべきことに、提供される食品の形態によって効果の大きさが異なり、特にポリアミン高含有酵母の形で提供されることが望ましいことが示された。
150℃加熱試験
実施例1、実施例2記載の酵母粉体、大豆抽出物粉体(比較例2)、米胚芽エキス粉体(比較例3)、酵母エキス粉体(比較例4)を20mgずつ蓋付きのガラス試験管に封入し、150℃のアルミブロックヒーター上で0〜60分静置したのち、そのポリアミン含量を測定した。

上段の数字はポリアミン含量[mg/g]、下段の数字は加熱前との比[%]である。
同じ加熱試験を上記酵母粉体に行い、各粉体のスペルミジン含量を測定した。結果を表3に示す。

上段の数字はスペルミジン含量[mg/g]、下段の数字は加熱前との比[%]である。
本発明の組成物(スペルミジン高含有酵母)は従来のポリアミン含有食品に比べ、150℃の加熱後でもポリアミンが減じにくいことが示された。同様に、スペルミジン単体についてもその量が減じにくいことが示された。本発明により、ポリアミンが酵母内に入っていることで安定化できたと考えられる。本発明の組成物(スペルミジン高含有酵母)は150℃付近での加熱でもポリアミンの分解しにくく、加熱調理しやすいポリアミン食品である。また、シクロデキストリンを添加したものは、無添加の場合に比べると熱安定性が優れていた。シクロデキストリンによって酵母中のポリアミンが安定化されたと考えられる。
臭気テスト
実施例1で得た乾燥酵母に対し、αーシクロデキストリンを酵母:αーシクロデキストリンの重量比が1:1になるように添加して粉末のまま混合した(実施例5)。できた食品は50%αーシクロデキストリン含有酵母である。
上記食品1gを250mlの蓋付きのガラス製容器に入れ密封し、1時間室温で置いた後、蓋を開けて容器内の酵母臭をかいだ。その結果を表4に示す。

本発明の変異酵母とシクロデキストリンとを併用することで酵母臭を改善できた。シクロデキストリンはポリアミンの安定性を上げ、熱安定性を増し、加工・調理を容易にする効果と共に酵母臭も改善することができる。
本発明の変異酵母は、従来の酵母との比較で菌体内にポリアミン、特にスペルミジンを大量に含有しているため、スペルミジンによる細胞活性化が意図される飲食品に好適に配合することが意図される。また、本発明の変異酵母は、結晶性多糖類と併用することで熱安定性が増大するだけでなく、その臭気も減少するという効果を奏する。

Claims (5)

  1. LEU2遺伝子の266番目のCに対応する塩基がA、ACO2遺伝子の1954番目のTに対応する塩基がC、SAM1遺伝子の1130番目のCに対応する塩基がG、及び、AGC1遺伝子の744番目のAに対応する塩基がTに置換され、且つ、上記4つの変異を有さない変異前の親株に比べてポリアミンを高含有するサッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の変異体。
  2. 請求項1に記載のサッカロマイセス・セレビジエの変異体と結晶性多糖類とを含有する飲食品組成物。
  3. サッカロマイセス・セレビジエの変異体と結晶性多糖類の重量比が1:0.1〜1である、請求項2に記載の組成物。
  4. 結晶性多糖類がシクロデキストリン及び/又は難消化性デキストリンである、請求項2又は3に記載の組成物。
  5. LEU2遺伝子の266番目のCに対応する塩基をA、ACO2遺伝子の1954番目のTに対応する塩基をC、SAM1遺伝子の1130番目のCに対応する塩基をG、及び、AGC1遺伝子の744番目のAに対応する塩基をTに置換する工程を含む、
    上記4つの変異を有さない変異前の親株に比べてポリアミンを高含有するサッカロマイセス・セレビジエの変異体の製造方法。
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