JP6663757B2 - ポリアミン高含有酵母及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミン高生産性酵母変異株、及びその製造方法に関する。
ポリアミンは第1級アミノ基を複数有する直鎖状脂肪族炭化水素の総称であり、生物の細胞内に普遍的に存在する。現在までに、20種類以上のポリアミンの存在が報告されている。ヒトの体内のポリアミンは、主にプトレスシン、スペルミジン及びスペルミンの3種類であり、20歳台をピークにその量は減少する。ポリアミンは、細胞の分裂に必要な成分であり、細胞内ポリアミン量が減少すると、細胞のターンオーバーが低下し、老化が促進すると考えられている。
したがって、体外からポリアミンを補充することによって、様々な生理効果を享受できると期待される。ポリアミンを多く含む食品としては、大豆、キノコ類、鶏肉、チーズなどが知られている。しかし、通常の食品中に含まれるポリアミンの量はそれほど多くないことから、日常の食事から充分な量のポリアミンを摂取することは容易ではない。
特許文献1には、酵母に高濃度のポリアミンが含まれていること、及び酵母の菌体や培養液を酸溶液で抽出することによりポリアミン含有画分を分離、精製する方法が記載されている。従来報告されている酵母のポリアミン含量は、特許文献1によれば、乾燥菌体100g中、Saccharomyces cerevisiaeで約13mg、Saccharomyces diastaticasで約23mg、Candida ulitisで約103mgである。非特許文献1の報告から算出される菌体100g(湿重量)中のプトレスシン、スペルミジン及びスペルミンの合計含量は、Saccharomyces cerevisiaeで約17mg、Candida glabrateで約30mg、Zygosaccharomyces rouxiiで約21mgである。
特開平10−52291号公報
群馬保健学紀要 25:117−123,2004
本発明は、ポリアミンを高生産することができる酵母変異株、及び当該酵母変異株の製造方法を提供する。
本発明者らは、種々検討した結果、酵母を突然変異処理した後、高濃度のポリアミンを含有する培地で培養してポリアミン耐性の高い酵母変異株を選択することによって、ポリアミン生産性の高い酵母変異株を効率よく取得することができることを見出した。
したがって本発明は、ポリアミン高生産性酵母の製造方法であって、
酵母に突然変異処理を施すこと、及び
突然変異処理された酵母を、スペルミジン及びスペルミンからなる群より選択される1種以上のポリアミンを該突然変異処理前の酵母に対する生育抑制濃度以上の濃度で含有する培地で培養すること、
を含む方法を提供する。
また本発明は、スペルミジン及びスペルミンからなる群より選択される1種以上のポリアミンを高濃度で含有するポリアミン高生産性酵母選択用培地を提供する。
さらに本発明は、ポリアミン生産性及びポリアミン耐性が向上した酵母変異株を提供する。
さらに本発明は、上記酵母変異株を培養することを含む、ポリアミンの製造方法を提供する。
本発明によれば、ポリアミン生産性の高い酵母変異株を提供することができる。本発明により提供される酵母変異株は、ポリアミンの微生物学的生産に有用である。
本明細書において、「ポリアミン」とは、特に説明がない場合、第1級アミノ基を複数有する直鎖状脂肪族炭化水素をいい、その種類は特に限定されない。通常、酵母が主に産生するポリアミンはプトレスシン、スペルミジン及びスペルミンの3種類であるため、本明細書における「ポリアミン」とは、好ましくは、プトレスシン、スペルミジン及びスペルミンからなる群より選択される1種以上をいい、より好ましくは、スペルミジン及びスペルミンからなる群より選択される1種以上をいう。したがって、本明細書における酵母又はその菌体中の「ポリアミン量」とは、好ましくは、酵母菌体中におけるプトレスシン、スペルミジン及びスペルミンの合計量を指し、より好ましくは、酵母菌体中におけるスペルミジン及びスペルミンの合計量を指す。酵母菌体中のポリアミン量は、HPLC法(例えば、後述の参考例1参照)などによって測定することができる。
ポリアミンは、細胞の分裂に必要な成分であるが、細胞外に多量に存在すると細胞の増殖を妨げる。しかしながら、本発明者らは、高濃度のポリアミン存在下でも増殖可能なポリアミン耐性の高い酵母株を取得した。さらに本発明者らは、それらのポリアミン耐性の高い株は、ポリアミン生産性が高い傾向があることを見出した。これらの知見に基づいて、本発明者らは、酵母変異株のポリアミン耐性を基準に、ポリアミン高生産性酵母変異株を効率よく取得することができることを見出した。
したがって、本発明は、ポリアミン高生産性酵母の製造方法を提供する。当該方法は、酵母に突然変異処理を施すこと、及び突然変異処理された酵母を、該突然変異処理前の酵母に対する生育抑制濃度以上の濃度のポリアミンを含有する培地で培養することを含む。培養後に培地上に形成されたコロニーを回収すれば、ポリアミン耐性が高く、かつポリアミン生産性の高い酵母変異株を取得することができる。
本発明のポリアミン高生産性酵母の製造方法において、突然変異処理を施す酵母(親株)には、通常の食用又は発酵に用いられる酵母を使用することができる。当該酵母の例としては、子嚢菌門のサッカロマイセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、トルロプシス属(Torulopsis)、ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ピチア属(Pichia)、ヤロウィア属(Yarrowia)、ハンセヌラ属(Hansenula)、クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ウィッケルハミア属(Wickerhamia)、フェロマイセス属(Fellomyces)に属する酵母、及び担子菌門のスポロボロマイセス属(Sporobolomyces)に属する酵母、などが挙げられる。これらの中でも、サッカロマイセス属、カンジダ属及びジゴサッカロマイセス属に属する酵母が好ましく、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces pastorianus、Candida utilis、及びZygosaccharomyces rouxiiがより好ましい。
突然変異処理は、親株に対して人工的に突然変異を誘発する処理であれば特に限定されないが、好ましくは、親株を変異原に曝す処理である。変異原としては、物理的変異原及び化学的変異原が挙げられる。物理的変異原としては、紫外線(UV)やX線、ガンマ線、重イオンビームなどのエネルギー線が挙げられるが、これらに限定されない。化学的変異原としては、エチルメタンスルホネート(EMS)、N−メチル−N−ニトロソグアニジン(NTG)、亜硝酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
上記突然変異処理を施された酵母は、ポリアミンを高濃度で含有する培地で培養される。培養に使用される培地の種類としては、酵母の培養に一般的に使用される種類の培地であればよく、また合成培地、天然培地及びこれらの組合せのいずれであってもよい。好ましい培地の例としては、YM培地、YPD培地、SD培地(グルコース最小培地)、YMPD培地、糖蜜培地(糖濃度0.3〜10質量/容量%、発酵試験用)などが挙げられる。これらの培地の代表的な組成は、限定ではないが、以下のとおりである:YM培地[3g/Lイーストエキス、3g/Lモルトエキス、3g/Lペプトン、10g/Lグルコース];YPD培地[10g/Lイーストエキス、20g/Lペプトン、10g/Lグルコース];SD培地[6.7g/L Yeast Nitrogen base without Amino acid、20g/Lグルコース];YMPD培地[3g/Lイーストエキス、3g/Lモルトエキス、5g/Lペプトン、30g/Lグルコース];糖蜜培地[糖蜜を還元糖濃度0.3〜10質量/容量%になるように水で希釈したもの]。好ましくは、上記培地は、調製後に121℃、15分間等の条件でオートクレーブして滅菌される。培地上に形成されたコロニーを回収するためには、好ましくは、該突然変異処理を施された酵母は平板培養用培地で培養される。平板培養用培地としては、YMPD寒天培地、YM寒天培地、YPD寒天培地、SD寒天培地などが挙げられる。培地の固形化は、2%の寒天を加えてプレートを作製するなど、常法に従って行えばよい。
上記培地に含まれるポリアミンの例としては、好ましくはスペルミジン及びスペルミンからなる群より選択される1種以上が挙げられる。上記培地におけるポリアミンの濃度は、突然変異処理前の酵母(親株)に対する生育抑制濃度以上に調整される。
突然変異処理前の酵母(親株)に対するポリアミンの生育抑制濃度は、該親株の増殖を阻害するポリアミンの最低濃度として規定される。親株に対するポリアミンの生育抑制濃度は、突然変異処理に供した酵母株と同じ酵母株をポリアミン濃度を段階的に変更した培地で培養し、細胞の増殖が観察されなくなる最低濃度を求めることによって決定することができる。当該培地には、好ましくは平板培養用培地が使用され、より好ましくは突然変異処理を施された酵母を培養する培地と同じ種類の培地が使用される。細胞の増殖の有無は、例えば目視により、液体培地の濁度変化の有無、平板培地上のコロニー形成の有無を評価することによって確認することができる。
好ましい実施形態において、突然変異処理を施された酵母を培養する培地は、YMPD寒天培地、YM寒天培地、YPD寒天培地、SD寒天培地などの平板培養用培地である。該培地におけるポリアミンの濃度は、スペルミジンの場合75mM以上、より好ましくは100〜200mMであり、スペルミンの場合2mM以上、好ましくは3mM以上、より好ましくは3〜50mM、さらに好ましくは3〜20mMである。
上記ポリアミン含有培地に上記突然変異処理した酵母を接種し、培養する。培養の条件は、通常の酵母の培養条件、例えば、29〜32℃で1〜6日間、好ましくは3〜5日間を採用することができる。あるいは、酵母の培養方法やその条件は、例えば、Microbiol Cult Coll,25(2)89−91,2009などを参考に決定することができる。
次いで、本発明のポリアミン高生産性酵母の製造方法においては、上記培養後に培地上に形成されたコロニーを回収する。培地上に複数のコロニーが形成されていた場合、全コロニーを各々回収してもよいが、生育のよいコロニーを選択的に回収してもよい。培地上に形成されたコロニーは、親株が増殖できない高濃度のポリアミン存在下でも増殖可能な株、すなわち親株よりもポリアミン耐性が向上した酵母変異株のコロニーである。続いて、回収したコロニーの酵母株の菌体中ポリアミン量を測定する。親株と比べてポリアミン量の向上している株を、ポリアミン高生産性酵母変異株として取得する。
後述の実施例に示すとおり、親株と比べてポリアミン耐性が向上した酵母変異株は、親株と比べてポリアミン生産性が向上している傾向が高い。したがって、ポリアミン高含有培地で増殖するコロニーを回収することで、多様な酵母変異株の中から、ポリアミン生産性の高い酵母変異株を効率よく取得することが可能になる。
さらに、本発明のポリアミン高生産性酵母の製造方法においては、上記で取得したポリアミン生産性が向上した酵母変異株に、さらなる突然変異処理を施してもよい。さらなる突然変異処理を施された酵母株は、ポリアミンをより高濃度で含有する培地で培養され、培地上に形成したコロニーは回収される。次いで、回収したコロニーの酵母株の菌体中ポリアミン量を測定し、親株と比べてポリアミン量の向上している株を取得する。上記さらなる突然変異処理及び培養の手順は、2回以上繰り返してもよい。該さらなる突然変異処理及び培養は、上述したとおりの手順で行えばよい。好ましくは、該さらなる培養で培地に添加されるポリアミンは、最初の培養で使用したものと同じ種類のものであり、ただし後の培養における培地のポリアミン濃度は、その直前の培養に用いた培地に対して、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.5〜4倍である。突然変異処理と高濃度ポリアミン含有培地での培養を繰り返すことにより、よりポリアミン生産性の高い酵母変異株を効率よく取得することができる。
本発明では、ポリアミンを高濃度で含有する培地を、突然変異処理した酵母からポリアミン高生産性酵母株を選択するために使用している。したがって、本発明において、上記ポリアミン高生産性酵母の製造方法で使用する培地は、ポリアミン高生産性酵母選択用培地として提供される。好ましい実施形態において、該ポリアミン高生産性酵母選択用培地は、スペルミジンを75mM以上、より好ましくは100〜200mM含有する培地であるか、又はスペルミンを2mM以上、好ましくは3mM以上、より好ましくは3〜50mM、さらに好ましくは3〜20mM含有する培地である。該選択用培地の種類としては、上述した酵母の培養に一般的に使用されるものであればよいが、好ましくは平板培養用培地であり、例えばYMPD寒天培地、YM寒天培地、YPD寒天培地、SD寒天培地などが挙げられる。
以上の本発明の方法に従って、ポリアミン高生産性酵母を製造することができる。本発明の方法で得られたポリアミン高生産性酵母は、親株と比べてポリアミン生産性が向上した酵母変異株であり、菌体中にポリアミンを高濃度で含有することができる。また本発明の方法で得られたポリアミン高生産性酵母は、親株と比べて、より高濃度のポリアミンを含有する培地中で増殖することができる酵母変異株である。
したがって、本発明はまた、ポリアミン生産性及びポリアミン耐性が向上した酵母変異株を提供する。本発明の酵母変異株は、親株と比べてポリアミン耐性が向上しており、好ましくは2mM以上のスペルミン存在下(スペルミンを2mM以上含有する培地中)、より好ましくは3mM以上のスペルミン存在下(スペルミンを3mM以上含有する培地中)で増殖能を有する。また本発明の酵母変異株は、親株と比べてポリアミン生産性が向上している。本発明の酵母変異株の菌体中のポリアミン量は、酵母野生株の菌体中のポリアミン量に対して、好ましくは120%以上、より好ましくは200%以上である。さらに好ましくは、当該酵母変異株は、YMPD培地中での30℃で1〜2日間の振とう培養の後、菌体中に、ポリアミン、好ましくはスペルミジンを200mg/100g菌体(乾物換算)以上の量で含有する。本発明の酵母変異株の例としては、サッカロマイセス・セレビシエS631株(受託番号NITE P−02199)、サッカロマイセス・セレビシエS635株(受託番号NITE P−02200)及びサッカロマイセス・セレビシエSS208株(受託番号NITE P−02201)が挙げられる。これらの株は、出願人により、2016年2月2日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託された。
本発明の酵母変異株は、ポリアミン生産性が高く、ポリアミンの微生物学的生産に有用である。したがって本発明はまた、本発明の酵母変異株を用いたポリアミンの製造方法を提供する。当該方法では、本発明の酵母変異株を培養し、ポリアミンを生産させる。
本発明のポリアミンの製造方法において、酵母変異株の培養は、通常の酵母の培養方法に従って行うことができる。酵母の培養方法やその条件は、例えば、Microbiol Cult Coll,25(2)89−91,2009などを参考に決定することができる。
好ましくは、本発明のポリアミンの製造方法における酵母変異株の培養では、まず本発明の酵母変異株を前培養し、次いで、前培養液を用いて本培養を行う。該前培養では、本発明の酵母変異株を液体培地に接種し、29〜32℃で1〜2日間振とう培養する。必要に応じて、前培養した培地を遠心分離等にかけ、酵母画分を分離してもよい。本培養では、培地に前培養液又はその酵母画分を加え、29〜32℃で培養する。好ましくは120〜150rpm程度で振とう培養する。本培養用培地に加える前培養液又は酵母画分の量は、培養スケールや装置、環境等に応じて適宜変更することができる。好ましくは、本培養用培地100容量%に対して、0.1〜50容量%程度の前培養液、又は0.1〜50容量%程度の前培養液から分離した酵母画分が添加される。本培養の培養時間は、培養スケールによっても異なるが、6時間〜2日間程度である。培養液の濁度などを指標とする酵母の増殖量と、サンプリングして得られる酵母菌体中のポリアミン量を指標として、所望される培養スケールで効率よくポリアミンを生産できる培養時間を決定することができる。
上記前培養及び本培養に用いる培地としては、酵母の培養に使用することができる一般的な培地を使用することができる。培地は、合成培地、天然培地及びこれらの組合せのいずれであってもよく、液体培地が好ましい。好ましい例としては、上述したYM培地、YPD培地、SD培地(グルコース最小培地)、YMPD培地、糖蜜培地などを挙げることができる。あるいは、培地としては、グルコース水溶液を使用することもできる。該グルコース水溶液のグルコース濃度は0.5〜10質量/容量%が好ましい。
本発明のポリアミンの製造方法に従って培養された本発明の酵母変異株は、菌体100g(乾物換算)あたり、好ましくは200mg以上のポリアミン、より好ましくは250mg以上のポリアミン、さらに好ましくは200mg以上のスペルミジン、なお好ましくは250mg以上のスペルミジンを含有する。
本発明のポリアミンの製造方法においては、ポリアミンを高濃度で含有する培養後の酵母変異株そのものをポリアミン源として提供することができる。提供された酵母変異株は、そのまま飲食品、栄養組成物などに添加することができる。あるいは、本発明のポリアミンの製造方法においては、培養後の酵母変異株の菌体中から公知の方法(例えば、特許文献1記載の方法)に従ってポリアミンを分離することができる。必要に応じて、分離したポリアミンをさらに精製してもよい。菌体から分離又は精製されたポリアミンは、飲食品、栄養組成物、医薬品などの有効成分として使用することができる。
以下に実施例を示し、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1 酵母変異株の作製)
(1)親酵母株
市販のパン酵母(Saccharomyces cerevisiae、野生株)を、酵母変異株の親株として使用した。
(2)培地
酵母株の液体培養は、YMPD培地(3g/Lイーストエキス、3g/Lモルトエキス、5g/Lペプトン、30g/Lグルコース)を使用し、5mLのYMPD培地に菌体を接種して、30℃、150rpmで振とう培養した。また、平板培養には2%となるように寒天を加えて作製したYMPD寒天培地を用いた。
(3)親酵母株のポリアミン耐性の評価
親株の生育が抑制されるポリアミン濃度を求めた。ポリアミンは、スペルミジン又はスペルミンを用いた。スペルミジン三塩酸塩又はスペルミン四塩酸塩をそれぞれ100mMから2倍希釈系列(100mM〜0.625mM)で添加したYMPD液体培地を96ウェルプレートに200μLずつ分注した。各ウェルに一昼夜培養した酵母培養液を2μLずつ接種し、30℃で24時間静置培養した。各ウェルの酵母の生育の有無を目視による濁度に基づいて評価し、スペルミジン及びスペルミンそれぞれについての親株の生育が抑制される濃度を調べた。各ポリアミンを添加した液体培地中での親株の生育性は以下の通りであった:スペルミジン 12.5mMでやや抑制、25mMで抑制;スペルミン 0.625mMで抑制。
スペルミジンとスペルミンについて、平板培養用培地における親株の生育抑制濃度を決定した。段階的に濃度を変更したスペルミジン三塩酸塩(12.5〜75mM)又はスペルミン四塩酸塩(0.3〜3mM)を添加したYMPD寒天培地に、一昼夜培養した酵母培養液の10倍希釈系列を10μLずつ滴下して、30℃で6日間培養した。平板培地上でのコロニー形成の有無により酵母の生育性を評価することによって、親株の生育が抑制される濃度を調べた。寒天培地上での親株の生育性は以下の通りであった:スペルミジン:75mMで若干抑制;スペルミン:2mMで若干抑制、3mMで抑制。以上の結果から、以降の実施例における酵母変異株選択用培地として、スペルミンを3mM以上添加したYMPD寒天培地を用いた。
(4)突然変異処理及びポリアミン耐性株の選択
一昼夜培養した酵母培養液1.5mLを3,000rpm、5分間遠心分離し、菌体を回収した。得られた菌体を10mL超純水で洗浄した後、15mL超純水に懸濁して、予め70%エタノールに漬けて殺菌したマグネチックスターラーを入れたφ9cmシャーレに流し入れた。紫外線の光源には、殺菌ランプ(GL15、15W、主波長253.7nm、東芝)を用いた。光源直下から30cmの距離に菌懸濁液を入れたシャーレを置き、蓋を開けてスターラーで撹拌しながら45秒間紫外線を照射した。紫外線照射した菌懸濁液を、3、4又は5mMスペルミン添加YMPD寒天培地に1枚あたり500μL塗抹し、30℃で3〜5日間培養した。培養後の培地1枚あたり数個〜数100個程度のコロニーが生育した。生育の良い大きめのコロニーを釣菌し、YMPD寒天培地に塗抹してストックした。3mMスペルミン添加培地から48株、4mMスペルミン添加培地から11株、5mMスペルミン添加培地から2株の合計61株を得た。
得られた61株について、後述する参考例1記載の手順に従ってポリアミン量を測定した。20株(32.8%)が、親株(野生株)と比べて120%以上ポリアミン生産性が向上していた。
(5)さらなる突然変異処理
上記(4)で取得したポリアミン高生産性酵母変異株のうち、3mMスペルミン添加培地で生育した1027−3−18株は、液体培地中での増殖性がよくポリアミン量が親株(野生株)の約2倍であった。この1027−3−18株に対し、上記(4)と同様の手順で2回目の突然変異処理を行い、紫外線照射した菌懸濁液をスペルミン6mM添加YMPD寒天培地に1枚あたり1mL塗抹し、30℃で3〜5日間培養した。培養後の培地1枚あたり数10個程度のコロニーが生育した。生育の良い大きめのコロニーを釣菌して36株(株番号S61〜S636)の変異株を得た。これらの株について、後述する参考例1記載の手順に従ってポリアミン量を測定した。
表1〜表4に示すとおり、ポリアミン量を測定した36株のうち、33株(91.6%)は野生株と比べて200%以上、20株(55.6%)は野生株と比べて300%以上、ポリアミン生産性が向上していた。
Figure 0006663757
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S628株に対し、上記(4)と同様の手順で3回目の突然変異処理を行い、紫外線照射した菌懸濁液をスペルミン10、15又は20mM添加YMPD寒天培地に塗抹し、30℃で3〜5日間培養した。10、15及び20mMスペルミン添加培地から、それぞれ6株(株番号SS101からSS106)、6株(株番号SS151からSS156)及び8株(株番号SS201からSS208)の変異株を取得した。表5〜7に示すとおり、取得した20株のポリアミン高生産性酵母変異株のポリアミン量は、いずれも野生株の約300%又はそれ以上であった。
Figure 0006663757
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Figure 0006663757
(6)ポリアミン高生産性酵母変異株の確立
取得した変異株のうち、スペルミジン及びスペルミン含量の高い株を選択して、シングルコロニーアイソレーションの後、YMPD寒天培地で5回継代してからグリセロールストックを調製して−80℃で冷凍保存した。グリセロールストックは、2mL容凍結用チューブに滅菌した15%グリセロールを入れ、ここに培養した菌苔をディスポーザブル白金耳でかき取って加え懸濁して調製した。各グリセロールストックを平板培養し、生育したコロニーを接種して液体培養した後、菌株のポリアミン量を測定し、ポリアミン高生産性が維持されていたものをポリアミン高生産性酵母変異株として取得した(表8)。
得られた変異株のうちS631株、S635株及びSS208株は、2016年2月2日に独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託され、それぞれ受託番号NITE P−02199、NITE P−02200及びNITE P−02201を付与された。
Figure 0006663757
(参考例1 酵母菌体中ポリアミン量の測定)
酵母培養物を遠心分離して菌体を回収し、超純水で2回洗浄した後、総量が0.5mLとなるように超純水を加えて菌液を調製した。得られた菌液から0.2mLを採取し、含まれる菌体の乾燥重量を測定した。次いで、該菌体を乾物換算で5〜10質量%程度となるように水に懸濁して、ポリアミン量測定用の試験溶液を調製した。
試験溶液0.2mLをスクリューキャップ付き褐色試験管に採り、0.2M HClO4 4.8mLを加えて混和した後、100℃、10分間加熱処理した。流水で冷却後、2,000rpm、3分間遠心分離して得た上清を0.45μmフィルターで濾過した。共栓付褐色試験管に濾液0.2mLと0.2M HClO4 0.8mL(又は標準溶液1mL)を採り、飽和Na2CO3水溶液 0.5mL、1%ダンシルクロライド・アセトン溶液1mLを加えてよく混和した後、遮光して45℃の水浴中に1時間静置した。次いで、10%プロリン水容液0.5mLを加えて十分に撹拌後、暗所で10分間静置した。これにトルエン2mLを加えて250rpm、10分間振とうした後、分離した上層1mLを採り、褐色ナスフラスコを用いて40℃の水浴中で減圧濃縮した。残渣にアセトニトリル1mLを加えて溶解したものをHPLC用試料とした。
得られたHPLC用試料を下記条件にてHPLC分析にかけ、標準試料のピーク面積から検量線を作成してプトレスシン、スペルミジン及びスペルミンをそれぞれ定量した。標準試料には、プトレスシン二塩酸塩、スペルミジン三塩酸塩、スペルミン四塩酸塩(いずれもSIGMA)を0.2M HClO4に各1ppmとなるように溶解したものを用いた。
<HPLC条件>
装置:日立HPLC L−7000シリーズ
カラム:CAPCELL PAK C18 3μm(4.6×100mm)(資生堂)
検出:Ex.365 nm;Em.510nm
カラム温度:35℃
流速:1.0mL/min
試料インジェクション量:10μL
溶離液A:10mM 酢酸アンモニウム
溶離液B:アセトニトリル
グラジエント:A 50%(0min)−10%(15min)−10%(25min)−50%(25.1min)−50%(35min)

Claims (6)

  1. ポリアミン高生産性酵母の製造方法であって、
    サッカロマイセス属酵母に突然変異処理を施すこと
    突然変異処理された酵母を、2mM以上のスペルミン含有する培地で培養すること、及び
    該培地上に形成されたコロニーの菌体中ポリアミン量を測定し、該突然変異処理前と比べてポリアミン量の向上している株を、ポリアミン高生産性酵母変異株として取得すること、
    を含む、方法。
  2. mM以上のスペルミンを含有する、ポリアミン高生産性サッカロマイセス属酵母選択用培地。
  3. mM以上のスペルミン存在下で増殖能を有し、200mg/100g菌体(乾物換算)以上のポリアミンを含有する、サッカロマイセス属酵母変異株。
  4. サッカロマイセス・セレビシエS631株(NITE P−02199)、サッカロマイセス・セレビシエS635株(NITE P−02200)及びサッカロマイセス・セレビシエSS208株(NITE P−02201)からなる群より選択される、請求項記載の酵母変異株。
  5. 請求項3又は4記載の酵母変異株を培養することを含む、ポリアミンの製造方法。
  6. 培養した前記酵母変異株からポリアミンを分離することをさらに含む、請求項記載の方法。
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