JP6658940B1 - シート - Google Patents

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Abstract

【課題】顔料によらずパール調外観を有するシートを提供する。【解決手段】紙基材および微細繊維状セルロース含有層を有し、微細繊維状セルロースは亜リン酸基を有し、該微細繊維状セルロース含有層側表面の、JIS Z 8722:2009に準拠して測定される波長領域380〜780nmにおける絶対反射率のリップル振幅が0.10%以上であるシート。【選択図】なし

Description

本発明は、パール調外観を有するシートに関する。
紙基材にパール調外観を付与したシートに関し、様々な技術が知られている。
たとえば金属光沢を有する基材上に、白色インキとメジウムの混合インキで構成される印刷インキ層が配置されたパール調印刷物が開示されている(特許文献1)。また、木材繊維からなるシート状物の少なくとも片面に白色顔料塗工層を設け、その上にパール顔料を含む塗工層を塗工してなるパール調塗工紙が開示されている(特許文献2)。
特開2017−094500号公報 特許第5348734号公報
しかしながら、特許文献1では、金属光沢を有する基材を得るために紙基材上に金属蒸着層を積層する蒸着工程が必要であり、シートの製造が煩雑である。また、特許文献2では、パール調外観を紙基材に付与するために顔料を含む層を複数設ける必要があり、シート全体の塗工量が多くなる問題がある。
また、特許文献1および2は、酸化チタン被覆マイカ等の顔料や金属を使用することでパール調を呈しており、顔料によらずパール調外観を発現させる技術は開示されていない。
そこで本発明は、顔料によらずパール調外観を有するシートを提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は次のとおりである。
[1]紙基材および微細繊維状セルロース含有層を有し、微細繊維状セルロースは亜リン酸基を有し、該微細繊維状セルロース含有層側表面の、JIS Z 8722:2009に準拠して測定される波長領域380〜780nmにおける絶対反射率のリップル振幅が0.10%以上であるシート。
[2]前記微細繊維状セルロース含有層の付与量が0.1g/m以上1.2g/m以下である、上記[1]に記載のシート。
[3]前記微細繊維状セルロース含有層に含まれる前記微細繊維状セルロースの重合度が400以上800以下である、上記[1]または[2]に記載のシート。
[4]シート全体におけるパール顔料の含有量が10質量%以下である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のシート。
[5]前記微細繊維状セルロース含有層がバインダーをさらに含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のシート。
[6]前記微細繊維状セルロース含有層がインク受容層である、上記[5]に記載のシート。
[7]前記微細繊維状セルロース含有層における前記微細繊維状セルロースの含有割合が60質量%以上である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のシート。
[8]前記微細繊維状セルロース含有層側表面のJIS B 0601:2013に準拠して測定される算術平均粗さRaが100nm以下である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のシート。
[9]前記微細繊維状セルロース含有層側表面のJIS P 8142:2005に準拠して測定される75°鏡面光沢度が30%以上である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のシート。
[10]TAPPI UM−557法に準じて測定されるキット法による耐油度が1級以上である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のシート。
本発明によれば、顔料によらずパール調外観を有するシートを提供することができる。
図1は、リンオキソ酸基を有する微細繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHとの関係を示すグラフである。
本発明のシートは、紙基材および微細繊維状セルロース含有層を有し、微細繊維状セルロースは亜リン酸基を有し、該微細繊維状セルロース含有層側表面の、JIS Z 8722:2009に準拠して測定される波長領域380〜780nmにおける絶対反射率のリップル振幅が0.10%以上であることを特徴とする。
すなわち本発明のシートは、微細繊維状セルロース含有層(以下、「CNF含有層」ということもある)を有し、かつ当該CNF含有層表面における絶対反射率のリップル振幅が0.10%以上であることで、顔料によらずにパール調外観を有するものとなる。
上記リップル振幅を0.10%以上とするためには、CNF含有層の付与量や微細繊維状セルロースの重合度、CNF含有層を形成する塗工液に含まれる亜リン酸基を有する微細繊維状セルロース(以下、「CNF」ということもある)および必要に応じて配合されるバインダー等の含有割合等を適切に制御したり、塗工方法等のその他製造方法上の条件を適切に選択したりすることで達成することができる。
また、本発明のシートは、CNF含有層を形成するために高粘度の塗工液を用いることで、塗工液中の微細繊維状セルロースが紙基材へ浸透しにくくなり、紙基材表面に微細繊維状セルロースが留まってパール調外観が発現される。上記高粘度の塗工液は、塗工液に含まれる微細繊維状セルロースおよび必要に応じて配合されるバインダー等の含有割合を適切に制御することで調整することができる。
ここで、CNF含有層の「付与量」とは、紙基材上に設けられたCNF含有層の単位面積当たりの量(g/m)を意味する。紙基材の両面にCNF含有層が設けられている場合には、CNF含有層の「付与量」とは、紙基材の一方の面に設けられたCNF含有層の単位面積当たりの量をあらわす。
上記のとおり、塗工液中の微細繊維状セルロースは紙基材へ浸透しにくいことから、本発明のシートにおいてCNF含有層は紙基材中に浸透していなくてもよく、またCNF含有層の一部が紙基材中に浸透していてもよい。
本発明のシートにおいてCNF含有層の一部が紙基材中に浸透している場合は、微細繊維状セルロースの紙基材への浸透が少ないことが好ましく、CNF含有層の厚さの50%以上は紙基材の表面より上に位置することがより好ましい。上記の場合、本発明のシートにおいて、CNF含有層の一部と紙基材の一部、すなわちCNF含有層の紙基材中への浸透部分は、互いに重なって存在することになる。
また、本発明のシートはパール調外観以外の効果も期待できる。
上記パール調外観以外の効果として、CNF含有層の表面が高平滑であり、また高平滑であることで鏡面性がある光沢を生じることが挙げられる。CNF含有層がさらにバインダーを含有する場合には、CNF含有層はインク受容層として機能し、シートに印刷適性が発現される。
さらに、微細繊維状セルロースにより紙基材表面の空隙が充填されているため、油滴の浸透を防ぐ効果が生じ、本発明のシートは耐油性をも発現し得る。また、本発明のシートは、酸化チタン被覆マイカ等のパール顔料や金属を使用することでパール調を呈するものではなく、顔料によらず上記CNF含有層によりシートにパール調外観を発現させることができるため、リサイクル性にも優れる。
[紙基材]
本発明のシートを構成する紙基材は、微細繊維状セルロースを含む塗工液をキャストコーティングした際に生じる水蒸気が透過できる程度の透気性を確保できれば特に限定されない。本発明において用いられる紙基材としては、片艶紙、上質紙、中質紙、コピー用紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、板紙、白板紙、新聞用紙、塗工原紙、ライナー紙、中芯紙、グラシン紙および更紙等が挙げられる。
紙基材の坪量は特に限定されないが、15〜300g/m2であることが好ましく、20〜200g/m2であることがより好ましい。紙基材の坪量が15g/m2以上であれば、充分にCNFを捕捉でき、パール調外観をシートに発現させることができる。また、紙基材の坪量が300g/m2以下であれば、本発明のシートの生産性を良好とすることできる。
[微細繊維状セルロース含有層]
本発明のシートを構成するCNF含有層は、紙基材上に直接または間接的に設けることができるが、紙基材上に他の層を介さずに、CNF含有層を直接設けることが好ましい。CNF含有層を紙基材上に直接設けても、上述のとおり紙基材表面にCNFが留まることができるため、本発明のシートはパール調外観を発現する。なお、本発明の効果を損なわない範囲において、紙基材とCNF層との間に下地層やアルミ蒸着層を設けてもよい。下地層やアルミ蒸着層を設けることで、屈折率差の大きい光学界面が形成され、裏面反射による光学干渉を強めることが可能となる。
CNF含有層は紙基材上の一方の面と他方の面のうち、いずれか片方の面のみに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよく、用途に応じて決定することができる。
また、CNF含有層は、所望のリップル振幅を有する限り、紙基材上の少なくとも片面に複数層設けられていてもよい。また、紙基材の片面において複数のCNF含有層により、CNF含有層が構成されていてもよい。
(微細繊維状セルロース)
本発明において用いられる微細繊維状セルロースは、亜リン酸基を有し、セルロースを含む繊維原料(単に「繊維原料」ともいう)から製造することができる。
セルロースを含む繊維原料としては、特に限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。なお、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると粘度が高くなる傾向がある。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。
また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサン等の直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
CNF含有層に含まれるCNFの繊維幅は、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上であり、そして、好ましくは1000nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、よりさらに好ましくは10nm以下、よりさらに好ましくは8nm以下である。CNFの繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、CNFによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすい。なお、CNFは、たとえば単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。ただし、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、微細繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
CNF含有層に含まれる微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1000nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上であり、そして、好ましくは1000nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、よりさらに好ましくは10nm以下、よりさらに好ましくは8nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。
微細繊維状セルロースの繊維長は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また、微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
また、微細繊維状セルロースの結晶化度は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であり、そして、好ましくは100%以下、より好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下である。
微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、特に限定されないが、たとえば好ましくは20以上、より好ましくは50以上であり、そして、好ましくは10000以下、より好ましくは1000以下である。軸比を上記下限値以上とすることにより、微細繊維状セルロースを含有するシートを形成しやすく、また、溶媒分散体を作製した際に十分な増粘性が得られやすい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば微細繊維状セルロースを水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。
本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有している。特に、結晶領域と非結晶領域をともに有し、かつ軸比が高い微細繊維状セルロースは、後述する微細繊維状セルロースの製造方法により実現されるものである。
本実施形態における微細繊維状セルロースは、亜リン酸基または亜リン酸基に由来する置換基(単に亜リン酸基ということもある)を有する。
亜リン酸基または亜リン酸基に由来する置換基は、たとえば下記式(1)で表される置換基である。
式(1)中、bは自然数であり、mは任意の数である(ただし、b×m=1である)。αは、各々独立に、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、およびこれらの誘導基である。中でも、αは水素原子であることが特に好ましい。なお、式(1)におけるαには、セルロース分子鎖に由来する基は含まれない。
式(1)のαで表される飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、またはn−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、またはt−ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、またはアリル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、または3−ブテニル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、特に限定されない。芳香族基としては、フェニル基、またはナフチル基等が挙げられるが、特に限定されない。
また、αにおける誘導体としては、上記各種炭化水素基の主鎖または側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、またはアミノ基等の官能基のうち、少なくとも1種類が付加または置換した状態の官能基が挙げられるが、特に限定されない。また、αの主鎖を構成する炭素原子数は特に限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。αの主鎖を構成する炭素原子数を20以下とすることにより、亜リン酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細繊維状セルロースの収率を高めることもできる。
式(1)におけるβ b+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、または芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、もしくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、もしくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、または水素イオン等が挙げられるが、特に限定されない。これらは1種または2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、またはカリウムのイオンが好ましいが、特に限定されない。
なお、微細繊維状セルロースは、亜リン酸基または亜リン酸基由来の置換基に加えて、さらにリン酸基またはリン酸基に由来する基を有していてもよい。リン酸基またはリン酸基に由来する基は、たとえば、下記式(2)もしくは(3)で表される置換基であってもよい。なお、リン酸基またはリン酸基に由来する基は、下記式(3)で表されるような縮合リンオキソ酸基であってもよい。
式(2)中、aおよびb’は自然数であり、mは任意の数である(ただし、a=b’×mである)。αおよびα’のうちa個がOであり、残りはORである。ここで、Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。なお、式(2)におけるαは、セルロース分子鎖に由来する基であってもよい。
式(3)中、a’およびb’’は自然数であり、mは任意の数であり、nは2以上の自然数である(ただし、a’=b’’×mである)。α ,α ,・・・,α およびα’のうちa’個がOであり、残りはRまたはORのいずれかである。ここで、Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。なお、式(3)におけるαは、セルロース分子鎖に由来する基であってもよい。
式(2)および(3)における各基の具体的例示は、式(1)における各基の具体的例示と同様である。また、式(2)におけるβ b’+および式(3)におけるβ b’’+の具体的例示は、式(1)におけるβ b+の具体的例示と同様である。
微細繊維状セルロースが亜リン酸基を置換基として有することは、微細繊維状セルロースを含有する分散液について赤外線吸収スペクトルの測定を行い、1210cm−1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基のP=Oに基づく吸収を観察することで確認できる。また、微細繊維状セルロースがリン酸基を置換基として有することは、微細繊維状セルロースを含有する分散液について赤外線吸収スペクトルの測定を行い、1230cm−1付近にリン酸基のP=Oに基づく吸収を観察することで確認できる。また、微細繊維状セルロースが亜リン酸基やリン酸基を置換基として有することは、NMRを用いて化学シフトを確認する方法や、元素分析に滴定を組み合わせる方法などでも確認できる。
微細繊維状セルロースに対する亜リン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることが特に好ましい。また、微細繊維状セルロースに対する亜リン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり、5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.50mmol/g以下であることがさらに好ましく、3.00mmol/g以下であることがよりさらに好ましい。亜リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、微細繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。
ここで、単位mmol/gにおける分母は、亜リン酸基の対イオンが水素イオン(H)であるときの微細繊維状セルロースの質量を示す。
微細繊維状セルロースに対する亜リン酸基の導入量は、たとえば中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定では、得られた微細繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリを加えながらpHの変化を求めることにより、亜リン酸基の導入量を測定する。
図1は、リンオキソ酸基を有する微細繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。微細繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、微細繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図1の上側部に示すような滴定曲線を得る。図1の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図1の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる微細繊維状セルロースの総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図1において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。たとえば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
なお、前記リンオキソ酸基導入量(mmol/g)は、分母の“g”が酸型の微細繊維状セルロースの質量であることから、「酸型の微細繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量」(以降、リンオキソ酸基量(酸型)と呼ぶ)を示している。ここで、リンオキソ酸基のプロトンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母の“g”を当該陽イオンCが対イオンであるときの微細繊維状セルロースの質量に変換することで、「陽イオンCが対イオンである微細繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量」(以降、リンオキソ酸基量(C型))を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
リン酸オキソ基量(C型)=リンオキソ酸基量(酸型)/{1+(W−1)×A/1000}
ここで、A[mmol/g]:微細繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基由来の総アニオン量(前記リンオキソ酸基の強酸性基量と弱酸性基量を足した総解離酸量)
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)である。
なお、滴定法によるリンオキソ酸基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液1滴の滴下量が多すぎる場合や、滴定間隔が短すぎる場合、本来より低いリンオキソ酸基量となるなど正確な値が得られないことがある。適切な滴下量、滴定間隔としては、たとえば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒ごとに10〜50μLずつ滴定することなどが望ましい。また、微細繊維状セルロース含有スラリーに溶解した二酸化炭素の影響を排除するため、たとえば、滴定開始の15分前から滴定終了まで、窒素ガスなどの不活性ガスをスラリーに吹き込みながら測定することなどが望ましい。
また、亜リン酸基に加えて、リン酸基、縮合リン酸基のいずれかまたは両方を含む場合において検出されるリンオキソ酸が、亜リン酸、リン酸、縮合リン酸のどれに由来するか区別する方法としては、たとえば、酸加水分解などの縮合構造を切断する処理を行ってから上述した滴定操作を行う方法や、酸化処理などの亜リン酸基をリン酸基へ変換する処理を行ってから上述した滴定操作を行う方法などが挙げられる。
繊維状セルロースに亜リン酸基を導入して微細繊維状セルロースを製造する方法としては、公知の技術を用いることができる。たとえば、繊維原料に亜リン酸基を導入する亜リン酸基導入工程、洗浄工程、アルカリ処理工程(中和工程)、解繊処理工程を経て、亜リン酸基が導入された微細繊維状セルロースを含む水分散液として得ることができる。
亜リン酸基導入工程の前に前処理工程を有していてもよい。また、洗浄工程の代わりに、または洗浄工程に加えて、酸処理工程を有していてもよい。
繊維状セルロースに亜リン酸基を導入して微細化する、より具体的な製造方法は、後述する製造例に記載のとおりである。
また、CNF含有層に含まれる微細繊維状セルロースの重合度は、好ましくは400以上、より好ましくは420以上、さらに好ましくは440以上である。また、CNF含有層に含まれる微細繊維状セルロースの重合度は、好ましくは800以下、より好ましくは700以下、さらに好ましくは600以下、よりさらに好ましくは550以下、よりさらに好ましくは500以下である。同じ微細繊維状セルロースの付与量であれば、微細繊維状セルロースの重合度の数値が小さくなるほど、前述の絶対反射率のリップル振幅が大きくなる傾向がある。しかし、微細繊維状セルロースの重合度が小さくなり過ぎると塗工液を高粘度に調整し難くなり、所望するパール調外観が得られなくなるおそれがある。当該重合度が上記範囲内であれば絶対反射率のリップル振幅を0.10%以上に調整しやすく、かつシートのパール調外観を発現するために好適である。
微細繊維状セルロースの重合度は、微細繊維状セルロースの原料や製造条件をそれぞれ適切に選択することにより、上記好ましい範囲内に制御しやすくなる。このような製造条件としては、特に限定されないが、たとえば亜リン酸基導入工程における条件を調整したり、解繊処理工程における解繊処理条件を調整したり、解繊処理装置の種類を選択したりすることで調整することができる。
また、微細繊維状セルロースの重合度は、Tappi T230に準拠し測定することができるが、具体的には、後述する実施例のとおりである。
CNF含有層における微細繊維状セルロースの含有割合は、後述する微細繊維状セルロースの好ましい付与量を満たすように特定すればよいが、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、100質量%であってもよい。上記微細繊維状セルロース含有量が60質量%以上であれば、たとえCNF含有層の付与量が少なくてもパール調外観を良好に発現させることが可能である。
(バインダー)
CNF含有層はバインダーを含有することにより、パール調外観を有しつつインク受容層としての性質を発現することができる。
バインダーとしては、水溶性高分子および水不溶性高分子が例示される。
水溶性高分子としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体やデキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸等の天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、およびポリビニルアルコール等の合成水溶性樹脂が例示される。
水不溶性高分子としては、天然植物から精製したデンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、リン酸エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン等のデンプンおよび変性デンプン;ゼラチン、カゼイン、大豆レシチン、コラーゲン等の天然タンパク質およびその変性体;スチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル等の各(共)重合体である合成水不溶性樹脂が例示される。
なお、バインダーは、加熱やpH調整によって、水に溶解された状態で使用してもよく、また、界面活性剤等を用いて水に分散させた状態で使用してもよい。
これらのバインダーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記バインダーのなかでも、CNF含有層の表面強度、インク着肉性、およびインク鮮明度等の印刷適性の観点から、好ましくは変性デンプン、セルロース誘導体、天然タンパク質、合成水溶性樹脂、および合成水不溶性樹脂、より好ましくは酸化デンプン、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ポリビニルアルコール、およびスチレン−ブタジエン共重合体、さらに好ましくはスチレン−ブタジエン共重合体である。
CNF含有層がバインダーを含有する場合、CNF含有層におけるバインダーの含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、よりさらに好ましくは30質量%以下である。また、CNF含有層がバインダーを含有する場合のCNF含有層におけるバインダーの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上である。CNF含有層におけるバインダーの含有量が上記範囲内であれば、本発明のシートはパール調外観と印刷適性の両立を実現するために好適である。
(CNF含有層の付与量)
本発明のシートにおいて、CNF含有層の付与量は、好ましくは1.2g/m以下、より好ましくは1.0g/m以下、さらに好ましくは0.8g/m以下、よりさらに好ましくは0.5g/m以下である。また、CNF含有層の付与量は、好ましくは0.1g/m以上、より好ましくは0.2g/m以上、さらに好ましくは0.3g/m以上、よりさらに好ましくは0.4g/m以上である。CNF含有層の付与量が上記範囲内であれば、シートの外観をパール調に調整しやすい。なお、シートを薄膜化する観点からは、CNF含有層の付与量を、たとえば0.28g/m以下とすることも可能である。
(CNF含有層中のCNFの付与量)
また、本発明のシートにおいて、CNF含有層中のCNFの付与量は、好ましくは1.2g/m以下、より好ましくは1.0g/m以下、さらに好ましくは0.8g/m以下である。また、CNF含有層中のCNFの付与量は、好ましくは0.1g/m以上、より好ましくは0.2g/m以上、さらに好ましくは0.3g/m以上である。CNF含有層中のCNFの付与量が上記範囲内であれば、シートの外観をパール調に調整しやすい。
なお、上記CNF含有層中のCNFの付与量は、紙基材上に設けられたCNF含有層に含まれるCNFの乾燥質量であり、また紙基材の片面あたりの付与量である。
(CNFとバインダーの質量比)
CNF含有層がバインダーを含有する場合、CNF含有層におけるCNFの含有量aに対するバインダーの含有量bの質量比b/aは、シートがパール調外観を有しつつ、表面強度、インク着肉性、およびインクの鮮明度等の印刷適性の向上の観点から、好ましくは5/95〜40/60、より好ましくは10/90〜35/65、さらに好ましくは10/90〜30/70である。
また、CNF含有層がバインダーを含有する場合、CNF含有層におけるCNFおよびバインダーの合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記CNFおよびバインダーの合計含有量が50質量%以上であれば、シートがパール調外観を有しつつ、表面強度、インク着肉性、およびインクの鮮明度等の印刷適性を得やすい。
(その他の成分)
CNF含有層には、CNFおよびバインダーに加え、必要に応じてその他の成分を含有させることができる。
その他の成分としては、本発明の効果を損なわなければ特に制限はないが、マイクロクリスタリンワックス等の離型剤、界面活性剤等の濡れ剤、コロイダルシリカ、分散剤、消泡剤、防腐剤、粘性改良剤、着色剤、潤滑剤、耐水化剤等が挙げられる。これらその他の成分は、1種または2種以上を併用することができる。
また、本発明のシートは、本発明の効果を損なわない範囲においてパール顔料を含有することができるが、リサイクル性の観点から、シート全体におけるパール顔料の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満、特に好ましくは実質的に含有しないこと(すなわち0質量%)である。
上記パール顔料としては、たとえば酸化チタン被覆マイカおよび酸化チタン被覆タルク等の無機物の表面を金属酸化物で被覆したもの等、公知のパール顔料が挙げられる。
[その他の層]
本発明のシートは、前述のとおり紙基材の片面または両面にCNF含有層を設けることができるが、パール調外観を有しつつ、さらに高平滑および高光沢、印刷適性や耐油性等の特性を発現し得る観点から、CNF含有層が最表面であることが好ましい。
また、紙基材の片面のみにCNF含有層が設けられている場合、紙基材の他方の面にはシートの用途に応じてその他の層を設けることができる。その他の層としては、粘着剤層や離型剤層等が挙げられ、いわゆるラベルタイプ(ステッカー、シールタイプとも称される)の構造を有するシートとしてもよい。
[リップル振幅]
本発明のシートは、CNF含有層側表面の、JIS Z 8722:2009に準拠して測定される波長領域380〜780nmにおける絶対反射率のリップル振幅が0.10%以上である。上記絶対反射率のリップル振幅が0.10%未満であると、シートに良好なパール調外観が発現されにくい。上記絶対反射率のリップル振幅は、好ましくは0.20%以上、より好ましくは0.30%以上、さらに好ましくは0.50%以上、よりさらに好ましくは1.00%以上である。上記リップル振幅を好ましい範囲とするためには、CNF含有層の付与量や微細繊維状セルロースの重合度、CNF含有層を形成する塗工液に含まれる微細繊維状セルロースおよび必要に応じて配合されるバインダー等の含有割合等を適切に制御したり、塗工方法等のその他製造方法上の条件を適切に選択したりすることで調整することが好ましい。
上記絶対反射率のリップル振幅のより具体的な測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
本発明のシートは、上述のようにリップル振幅を特定の範囲に制御することにより、パール調外観が発現されやすくなる傾向にある。これは、リップル振幅を調整することにより、CNF層と紙基材の界面の屈折率の差に起因する光学干渉が適切な範囲に制御され、パール調の発現に関与することができるためだと推測される。
本発明においては、CNF含有層側表面の、JIS Z 8722:2009に準拠して測定する波長領域380〜780nmにおける絶対反射率スペクトルのリップル(波形)の最大反射率と最小反射率との差(すなわち、リップル振幅)が0.10%以上であると、パール調外観が発現されやすくなると評価することができ、リップル振幅が大きくなるほどパール調が強くなる傾向にある。
なお、上記絶対反射率のリップル振幅は、本発明のシートが顔料等の着色剤により着色されていない場合の値である。しかしながら、仮に本発明のシートが着色剤により着色されている場合であっても、上記絶対反射率のリップル振幅を特定することは可能である。
たとえば、着色紙基材上に着色剤を含有しないCNF含有層を設けた着色シートである場合、着色紙基材自体の上記絶対反射率の測定値をベースとして、着色シートにおけるCNF含有層側表面の上記絶対反射率の測定値から、当該ベースの測定値を差し引いた値により上記リップル振幅を求めることができる。
また、CNF含有層のみに着色剤を含有する着色シートである場合、着色剤を含まない以外は当該着色シートと同様のシートについて上記絶対反射率のリップル振幅を求めればよく、あるいは、当該着色剤の吸収波長を考慮して絶対反射率を補正すればよい。
[算術平均粗さ]
本発明のシートは、CNF含有層側表面のJIS B 0601:2013に準拠して測定される算術平均粗さRaが、好ましくは100nm以下である。本発明のシートは、前述のとおり塗工液中のCNFを紙基材へ浸透しにくくすることができるため、紙基材表面にCNFが留まり、紙基材の表面凹凸を覆うことができる。さらに、本発明のシートの製造方法として後述するリウェットキャスト法を採用することで、上記Raが好ましくは100nm以下という優れた平滑性を達成することができる。
紙基材の種類やその坪量によって達成されるRaの値は異なるが、たとえば、紙基材が片艶紙で艶面側にCNF含有層を設ける場合、上記Raは30nm以下、20nm以下、15nm以下、さらには10nm以下とすることも可能である。また、紙基材が上質紙である場合、上記Raは30nm以下、20nm以下、19nm以下、さらには18nm以下とすることも可能である。なお、上記Raの下限は紙基材の種類やその坪量から一概に特定することはできないが、通常は2nm以上程度である。
[光沢度]
本発明のシートにおいて、CNF含有層側表面のJIS P 8142:2005に準拠して測定される75°鏡面光沢度は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、よりさらに好ましくは70%以上、よりさらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上である。
上記鏡面光沢度は、CNF含有層を形成する塗工液に含まれる各成分の含有量を適切に制御することや、塗工方法等のその他製造方法上の条件を適切に選択する等の方法より調整することができる。このように本発明のシートは、パール調外観を有しつつ、上記特定の鏡面光沢度で表される鏡面性がある光沢を生じることが期待できる。
[印刷適性]
本発明のシートは、前述したようにCNF含有層がバインダーをさらに含むことにより、表面強度、インク着肉性、およびインク鮮明度等の印刷適性をも発現させることが可能となり、インク受容層としての性質を有することが期待できる。
すなわち、本発明のシートにおけるCNF含有層は、インク受容層として好適に用いることが可能であり、CNF含有層がバインダーを含有する場合には、本発明のシートは特にオフセット印刷用として好適である。
なお、上記「インク鮮明度」とは、印刷適性を示す指標の一つであり、印刷部分と未印刷部分との彩度の違いや、印刷後のシートに付着したインクの発色および印刷面の光沢の鮮やかさ等を意味する。
[耐油性]
本発明のシートは、耐油性を発現し得る。本発明のシートの耐油性は、TAPPI UM−557法に準じて測定されるキット法による耐油度により評価できる。上記キット法により測定される本発明のシートの耐油度は、好ましくは耐油性が発現されていることを示す1級以上であり、6級以上であることがより好ましく、7級以上であることがさらに好ましい。本発明のシートの耐油性の発現は、CNF含有層におけるCNFが、紙基材表面の空隙を充填するためであると考えられる。
なお、耐油紙として使用可能な上記キット法による耐油度は、通常5級以上である。
[シートの製造方法]
本発明のシートの製造方法は、公知の製法を採用してもよいが、本発明の効果を得るためには以下の製造方法が好適に採用される。
すなわち、
紙基材の少なくとも一方の面に、微細繊維状セルロースを含有する塗工液を塗工して微細繊維状セルロース含有層を設ける工程(塗工工程)、
該微細繊維状セルロース含有層を乾燥または半乾燥する工程(乾燥または半乾燥工程)、
該微細繊維状セルロース含有層の表面を再湿潤液により再湿潤する工程(再湿潤工程)、および、
キャストドラムにより該微細繊維状セルロース含有層の表面を圧着する工程(圧着工程)、
を順次有し、該微細繊維状セルロースは亜リン酸基を有するシートの製造方法である。
フィルムシートの製膜法の一つであるキャスト法としては、(i)塗工液を塗工し、直ちにキャストドラムに圧着するウェットキャスト法、(ii)塗工液を塗工、乾燥または半乾燥後、再湿潤液を付与した後、キャストドラムに圧着するリウェットキャスト法、(iii)塗工液を塗工後、ゲル化剤を塗工してゲル状にした後に、キャスト仕上げするゲル化キャスト法等が公知である。これらキャスト法のなかでも、本発明のシートを製造する方法は、(ii)リウェットキャスト法を採用することが好ましい。
本発明のシートの製造において(iii)ゲル化キャスト法を採用する場合、微細繊維状セルロースを含有する塗工液を塗工後、その上にゲル化剤を塗工するため、シート最表面が微細繊維状セルロースではなくなり、シートのパール調外観を発現することが困難である。また、ゲル化キャスト法では塗工量も多くなり、たとえば本発明の効果を得つつ、CNF含有層の付与量を少なくしてシートを薄膜化することが困難となる。また、(i)ウェットキャスト法では、シートのパール調外観を発現させるためには湿潤調整や条件の設定が困難であり、作業性にも劣るおそれがある。一方、(ii)リウェットキャスト法であれば、湿潤調整が比較的容易であり生産性にも優れ、パール調外観を有する本発明のシートを製造するために好適である。また、リウェットキャスト法であればCNF含有層の高平滑および高光沢を容易に実現でき、さらに、本発明のシートの薄膜化を実現することも可能である。
(微細繊維状セルロース含有塗工液)
微細繊維状セルロース含有塗工液(以下、単に「塗工液」ということもある)中における微細繊維状セルロースの含有割合は、固形分換算で、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。また、塗工液中における微細繊維状セルロースの含有割合は、固形分換算で、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.5質量%以下である。塗工液中の微細繊維状セルロースの含有割合が上記範囲内であれば、塗工に好適な粘性を有しつつ、微細繊維状セルロースの紙基材への浸透を抑制して表面に留まらせることができ、少ない付与量であってもシートにパール調外観が発現され、さらにはCNF含有層が高平滑および高光沢を実現しやすくなる。
上記塗工液は、CNF含有層に印刷適性を付与する観点から、バインダーをさらに含むことが好ましく、また必要に応じて用いられるその他の成分を含有することができる。
バインダーとしてスチレン−ブタジエン共重合体を用いる場合、塗工液の原料には、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを含有させることができる。塗工液中のバインダーの含有割合は、本発明のシートの説明において前述した、CNF含有層におけるバインダーの好ましい含有量(固形分量)となるように、調整することが好ましい。
(塗工工程)
本工程では、紙基材の少なくとも一方の面に、CNF含有層の付与量が、固形分換算で、好ましくは0.1g/m以上1.2g/m以下となるように塗工液を塗工する。CNF含有層のより好ましい付与量は、本発明のシートの説明において前述したものと同様である。また、本発明のシートの説明において前述したものと同様に、上記付与量は、CNFおよびバインダーの他に、必要に応じて含まれるその他の成分を含む合計の乾燥質量であり、また紙基材の片面あたりのCNF含有層の量である。
塗工液を塗工する塗工機としては、たとえば、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができるが特に限定されない。粘性のある塗工液を均一に塗工できる観点からバーコーターが好ましいが、特にこれに限定されない。
(乾燥または半乾燥工程)
本工程では、紙基材上に塗工した塗工液を乾燥または半乾燥することによって乾燥または半乾燥したCNF含有層を形成する。
乾燥方法としては、特に限定されないが、熱風、赤外線、遠赤外線または近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができ、加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができるが、特に限定されない。加熱乾燥法における加熱温度は特に限定されないが、40〜120℃とすることが好ましく、60〜110℃とすることがより好ましい。加熱温度が40℃以上であれば、塗工液中の分散媒を速やかに揮発させることができ、120℃以下であれば、加熱に要するコストの抑制およびCNFの熱による変色を抑制できる。
(再湿潤工程)
本工程では、上記工程により乾燥または半乾燥したCNF含有層を再湿潤する。再湿潤液としては、特に限定されるものではないが、水を使用することが好ましい。また、水には、一般に離型剤として用いられるポリエチレンエマルジョン、脂肪酸の塩類やその誘導体、マイクロクリスタリンワックス、ロート油等を溶解または分散させてもよい。なお、CNF含有層を再湿潤する前にスーパーカレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を行うこともできる。
(圧着工程)
本工程では、上記再湿潤工程により、再湿潤したCNF含有層の表面をキャストドラムにより圧着する。
キャストドラムとしては、鋼材や鋳物等から成るドラム本体の表面に鏡面状に研磨仕上げされたクロムメッキ層を有する一般的なキャストドラムであればよく、クロムメッキ層の下地にニッケルメッキ層等の特殊層を設けたものであってもよい。また、キャストドラムは加熱して用いてもよい。
[用途]
本発明のシートは、パール調外観を有することから、包装紙等の意匠性が求められる用途に好適である。
さらに本発明のシートは、パール調外観を有しつつ、高光沢および高平滑、表面強度、インク着肉性、およびインク鮮明度等の印刷適性、ならびに、耐油性等の特性も有し得る。
したがって、本発明のシートは上記特性から、包装紙、シール、ラベル、パッケージ分野や物流分野における箱や封筒、油脂成分を含有する食品の包装紙や容器、インクジェットプリンター用用紙等に用いることができる。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例中、特にことわりのない限り、「部」とは「質量部」を意味する。
<紙基材>
各実施例および比較例において、紙基材として片艶紙(坪量30g/m)を用いた。
<微細繊維状セルロース>
各実施例および比較例で使用した微細繊維状セルロースは、次の製造例により製造したものを用いた。
[製造例1]
(亜リン酸基導入繊維状セルロースの作製)
原料パルプとして、王子製紙社製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量245g/mシート状、離解してJIS P 8121−2:2012に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を使用した。この原料パルプに対して亜リン酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、亜リン酸(ホスホン酸)と尿素の混合水溶液を添加して、亜リン酸(ホスホン酸)33質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で250秒加熱し、パルプ中のセルロースに亜リン酸基を導入し、亜リン酸化パルプを得た。次いで、得られた亜リン酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、亜リン酸化パルプ100g(絶乾質量)に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。次いで、洗浄後の亜リン酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後の亜リン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下の亜リン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該亜リン酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施された亜リン酸化パルプを得た。次いで、中和処理後の亜リン酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。これにより得られた亜リン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1210cm−1付近に亜リン酸基に基づく吸収が観察され、パルプに亜リン酸基が付加されていることが確認された。また、得られた亜リン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置にセルロースI型結晶に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。得られた亜リン酸基導入繊維状セルロース(亜リン酸化パルプ)は、後述する測定方法で測定される亜リン酸基量(第1解離酸量)が1.51mmol/gだった。なお、総解離酸量は、1.54mmol/gであった。
(微細繊維状セルロース分散液1の作製)
得られた亜リン酸化パルプにイオン交換水を添加して撹拌し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液1を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、微細繊維状セルロースの繊維幅を透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。また、後述する測定方法で測定される微細繊維状セルロースの重合度は695であった。
〔リンオキソ酸基量の測定〕
微細繊維状セルロースの亜リン酸基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した微細繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記微細繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ社製、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行い、リンオキソ酸基を酸型に変換した。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を、
5秒に10μLずつ加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。なお、滴定開始の15分前から窒素ガスをスラリーに吹き込みながら滴定を行った。
この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点を二つ与えた。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の第1解離酸量と等しくなる。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。なお、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値の第1解離酸量(mmol/g)を亜リン酸基量(mmol/g)とした。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値を総解離酸量(mmol/g)とした。
〔微細繊維状セルロースの重合度の測定〕
微細繊維状セルロースの重合度は、Tappi T230に従い測定した。すなわち、測定対象の微細繊維状セルロースを分散媒に分散させて測定した粘度(η1とする)、および分散媒体のみで測定したブランク粘度(η0とする)を測定したのち、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を下記式に従って測定した。
ηSP=(η1/η0)−1
[η]=ηsp/(c(1+0.28×ηsp))
ここで、式中のcは、粘度測定時の微細繊維状セルロースの濃度を示す。
さらに、下記式から微細繊維状セルロースの重合度(DP)を算出した。
DP=1.75×[η]
この重合度は粘度法によって測定された平均重合度であることから、「粘度平均重合度」と称されることもある。
[製造例2]
製造例1において、微細繊維状セルロースの重合度が605となるように調製した以外は、製造例1と同様に行い微細繊維状セルロース分散液2を得た。
[製造例3]
製造例1において、微細繊維状セルロースの重合度が514となるように調製した以外は、製造例1と同様に行い微細繊維状セルロース分散液3を得た。
[製造例4]
製造例1において、微細繊維状セルロースの重合度が474となるように調製した以外は、製造例1と同様に行い微細繊維状セルロース分散液4を得た。
<塗工シートの作製>
〔実施例1〕
上記製造例1により得られた微細繊維状セルロース分散液1の濃度を調整した分散液を塗工液として用い、紙基材の艶面側にバーコーターによりCNF含有層の付与量(塗工量)が固形分量で0.25g/mとなるように塗工し、105℃で送風乾燥した。乾燥状態のシートに水を塗布し、その後、加熱した鏡面ドラムに圧着し乾燥することで、リウェットキャスト法によりシートを得た。
〔実施例2〕
微細繊維状セルロースの付与量を0.5g/mとした以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
〔実施例3〕
微細繊維状セルロースの付与量を0.8g/mとした以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
〔実施例4〕
微細繊維状セルロース分散液1の代わりに、上記製造例2により得られた微細繊維状セルロース分散液2を用いた以外は、実施例2と同様にしてシートを得た。
〔実施例5〕
微細繊維状セルロース分散液1の代わりに、上記製造例3により得られた微細繊維状セルロース分散液3を用いた以外は、実施例2と同様にしてシートを得た。
〔実施例6〕
微細繊維状セルロース分散液1の代わりに、上記製造例4により得られた微細繊維状セルロース分散液4を用いた以外は、実施例2と同様にしてシートを得た。
〔実施例7〕
微細繊維状セルロースが90部、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)が10部となるように、上記製造例1により得られた微細繊維状セルロース分散液1とSBRラテックス(JSR社製、OJ3000F)を混合して塗工液を調製した。
上記調製した塗工液を用い、紙基材の艶面側にバーコーターによりCNF含有層の付与量(塗工量)が固形分量で0.5g/mとなるように塗工し、105℃で送風乾燥した。乾燥状態のシートに水を塗布し、その後、加熱した鏡面ドラムに圧着し乾燥することで、リウェットキャスト法によりシートを得た。
〔実施例8〕
微細繊維状セルロース80部、SBR20部に変更した以外は、実施例7と同様にしてシートを得た。
〔実施例9〕
微細繊維状セルロース70部、SBR30部に変更した以外は、実施例7と同様にしてシートを得た。
〔実施例10〕
SBR30部をポリビニルアルコール(PVA)(クラレ社製、PVA105)30部に変更した以外は、実施例9と同様にしてシートを得た。
〔実施例11〕
SBR30部を酸化デンプン(王子コーンスターチ社製、エースA)30部に変更した以外は、実施例9と同様にしてシートを得た。
〔実施例12〕
SBR30部をカゼイン(Fonterra社製、ALACID LACTIC CASEIN)30部に変更した以外は、実施例9と同様にしてシートを得た。
〔実施例13〕
SBR30部をカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製、セロゲン4H)30部に変更した以外は、実施例9と同様にしてシートを得た。
〔比較例1〕
紙基材をそのまま用いた。
〔比較例2〕
CNF含有層の付与量を1.5g/mに変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。
〔比較例3〕
CNF50部、SBR50部に変更した以外は、実施例7と同様にしてシートを得た。
〔比較例4〕
CNF50部、PVA50部に変更した以外は、実施例10と同様にしてシートを得た。
〔比較例5〕
CNF50部、酸化デンプン50部に変更した以外は、実施例11と同様にしてシートを得た。
〔比較例6〕
CNF50部、カゼイン50部に変更した以外は、実施例12と同様にしてシートを得た。
〔比較例7〕
CNF50部、CMC50部に変更した以外は、実施例13と同様にしてシートを得た。
<評価方法>
実施例および比較例で作製したシートについて、以下の評価方法に従って評価を実施した。各評価結果を表1に示す。
(1)リップル振幅(%)
JIS Z 8722:2009に準拠して、自動絶対反射率測定システム(日本分光社製、装置名:V−770、付属装置:ARMN−920)を用い、入射角5°、検出角0°、偏光子45°の条件で、波長領域380〜780nmにおける塗工面(CNF含有層側表面)の絶対反射率を測定した。測定した絶対反射率の最大反射率と最小反射率の差をリップル振幅として算出した。
(2)パール調外観(目視)
得られたシートについて、パール調外観の有無を目視評価した。
2:パール調外観を有する
1:パール調外観を有しない
(3)平滑性(Ra)
走査型プローブ顕微鏡(ブルカーエイエックス社製、Multimode8−HR)を用い、カットオフ値0.08mmとし、JIS B 0601:2013に準拠して塗工面(CNF含有層側表面)の算術平均粗さRa(nm)を測定した。
(4)鏡面光沢度(75°光沢度)
JIS P 8142:2005に準拠して、光沢度計(村上色彩技術研究所社製)を用い、光入射角75°における塗工面(CNF含有層側表面)の光沢度を測定した。
(5)オフセット印刷適性
得られたシートの塗工面(CNF含有層側表面)について、RI印刷試験機(明製作所社製、RI−1)で、試験用インキ(T&K TOKA社製、ベストワン紙試験用SD50紅BT−13)により印刷を行い、塗工層強度(表面強度)、インク着肉性、インク鮮明度を目視評価した。評価基準は次のとおりである。
なお、実施例1〜6および比較例2では、CNF含有層の剥がれが発生したため、塗工層強度およびインク鮮明度の評価は実施していない。
(塗工層強度(表面強度))
4:ピッキングが全く発生せず、良好
3:ピッキングがほぼ発生せず、実用上問題ないレベル
2:ピッキングが発生するものの、実用上許容できるレベル
1:ピッキングが多く発生し、実用上許容できないレベル
(インク着肉性)
4:サンプル全体にインクが付着している
3:インクの濃淡・かすれが僅かに見られる
2:インクの濃淡・かすれが見られる
1:サンプル全体でインクが付着しない
(インク鮮明度)
4:インクが鮮やかに発色し、光沢も良好
3:インクが鮮やかに発色し、光沢はやや良好
2:インクが鮮やかに発色するが、光沢はやや不良
1:インクが鮮やかに発色するが、光沢は不良
(6)耐油度
TAPPI UM−557法(キット法)に準拠して、塗工面(CNF含有層側表面)の耐油度を測定した。耐油度0級は耐油性が発現されていないことを、耐油度1級以上は耐油性が発現されていることを示す。なお、一般的な耐油紙は5級以上を示す。
実施例1〜6から、CNF含有層の付与量や微細繊維状セルロースの重合度を調整することにより、顔料によらずパール調外観を有するシートが得られることがわかる。また、実施例7〜13から、CNF含有層にバインダーを含むシートは、良好なオフセット印刷適性が示され、実用化への適用可能性が示唆された。
本発明のシートは、上記特性から、包装紙、パッケージ分野や物流分野における箱や封筒、油脂成分を含有する食品の包装紙や容器、インクジェットプリンター等に用いることができる。

Claims (10)

  1. 紙基材および微細繊維状セルロース含有層を有し、微細繊維状セルロースは亜リン酸基を有し、着色剤により着色されていない場合の微細繊維状セルロース含有層側表面の、JIS Z 8722:2009に準拠して測定される波長領域380〜780nmにおける絶対反射率のリップル振幅が0.10%以上であるシート。
  2. 前記微細繊維状セルロース含有層の付与量が0.1g/m以上1.2g/m以下である、請求項1に記載のシート。
  3. 前記微細繊維状セルロース含有層に含まれる前記微細繊維状セルロースの重合度が400以上800以下である、請求項1または2に記載のシート。
  4. シート全体におけるパール顔料の含有量が10質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のシート。
  5. 前記微細繊維状セルロース含有層がバインダーをさらに含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のシート。
  6. 前記微細繊維状セルロース含有層がインク受容層である、請求項5に記載のシート。
  7. 前記微細繊維状セルロース含有層における前記微細繊維状セルロースの含有割合が60質量%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載のシート。
  8. 前記微細繊維状セルロース含有層側表面のJIS B 0601:2013に準拠して測定される算術平均粗さRaが100nm以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のシート。
  9. 前記微細繊維状セルロース含有層側表面のJIS P 8142:2005に準拠して測定される75°鏡面光沢度が30%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のシート。
  10. TAPPI UM−557法に準じて測定されるキット法による耐油度が1級以上である、請求項1〜9のいずれかに記載のシート。
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